IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ステイト オブ イスラエル ミニストリー オブ アグリカルチャー アンド ルーラル デベロップメント アグリカルチュラル リサーチ オーガナイゼイション (エーアールオー) (ヴォルカニ センター)の特許一覧 ▶ テル ハショメール メディカル リサーチ インフラストラクチャ アンド サービシーズ リミテッドの特許一覧

特表2023-553162眼疾患及び障害を処置するための化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】眼疾患及び障害を処置するための化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 311/30 20060101AFI20231213BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C07D311/30 CSP
A61K31/352
A61P27/02
A61P27/06
A61P25/00
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/06
A61K9/12
A61K9/51
A61P43/00 105
A61K36/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535628
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 IL2021051470
(87)【国際公開番号】W WO2022123573
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/123,835
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521158738
【氏名又は名称】ザ ステイト オブ イスラエル ミニストリー オブ アグリカルチャー アンド ルーラル デベロップメント アグリカルチュラル リサーチ オーガナイゼイション (エーアールオー) (ヴォルカニ センター)
(71)【出願人】
【識別番号】510077842
【氏名又は名称】テル ハショメール メディカル リサーチ インフラストラクチャ アンド サービシーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】エルマン,アナット
(72)【発明者】
【氏名】ロテンストレイチ,イーガル
(72)【発明者】
【氏名】シェール,イファット
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA31
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB16
4C076BB24
4C076BB31
4C076BB40
4C076CC10
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA38
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA58
4C086MA63
4C086MA66
4C086MA70
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC01
4C088AB26
4C088MA17
4C088MA23
4C088MA28
4C088MA38
4C088MA43
4C088MA52
4C088MA55
4C088MA66
4C088NA13
4C088NA14
4C088ZA33
4C088ZC01
(57)【要約】
本発明は、眼疾患若しくは障害の処置、防止、若しくは改善における使用のための、又は眼治療手技への補助処置を提供するための、3,5,4’-トリヒドロキシ-6,7,3’-トリメトキシフラボン(TTF)又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物に関する。本発明はまた、TTFを含む眼科用組成物に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼疾患若しくは障害を処置、防止、若しくは改善する際に使用するため、又は眼治療手技への補助処置を提供するための、3,5,4’-トリヒドロキシ-6,7,3’-トリメトキシフラボン(TTF)又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項2】
前記疾患又は障害が、網膜色素変性症(RP)、糖尿病性網膜症(DR)、脈絡網膜炎、脈絡膜炎、網膜炎、脈絡網膜炎、日光網膜症、脈絡膜変性、先天性脈絡膜欠如、高血圧性網膜症、網膜症、未熟児網膜症、加齢性黄斑変性症(AMD)、黄斑変性症、標的黄斑症、網膜上膜、周辺網膜劣化、遺伝性網膜ジストロフィー、網膜出血、中心性漿液性網膜症、緑内症、視神経症、レーベル遺伝性視神経症、視神経乳頭ドルーゼン、強膜炎、角膜炎、角膜潰瘍、光線角膜炎、タイゲソン点状表層角膜炎、角膜血管新生、角膜ジストロフィー、フックスジストロフィー、円錐角膜、乾性角結膜炎、ヘルペス、ドライアイ、虹彩炎、及びブドウ膜炎、視神経炎、細菌感染(例えば、ライム病)、ウイルス感染(例えば、麻疹、おたふく風邪)、サルコイドーシス、ループス視神経脊髄炎、薬剤(例えば、キニーネ、抗生物質)の使用に関連する眼合併症、視神経変性、虚血性視神経症(例えば、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)、前部虚血性視神経症(AION)、後部虚血性視神経症(PAION))からなる群から選択される、請求項1に記載の使用のためのTTF。
【請求項3】
前記眼治療手技が、眼、網膜下、硝子体内、又は脈絡膜上送達を含む、請求項1に記載の使用のためのTTF。
【請求項4】
前記眼、網膜下、硝子体内、又は脈絡膜上送達が、遺伝子治療、幹細胞治療、又はプロテーゼの送達を含む、請求項3に記載の使用のためのTTF。
【請求項5】
前記疾患又は障害が、AMD、DR、RP、及び視神経変性から選択される、請求項2に記載の使用のためのTTF。
【請求項6】
前記対象がヒトである、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのTTF。
【請求項7】
前記対象が、ヒツジ、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ラクダ、スイギュウ、ウサギ、ネコ、イヌ、及び霊長類からなる群から選択される哺乳動物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのTTF。
【請求項8】
前記TTFが、局所、皮膚、皮下、経皮、結膜、結膜下、角膜内、眼内、眼、経口、及び/又は非経口投与によって投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのTTF。
【請求項9】
前記TTFが、点眼溶液、懸濁液、クリーム、軟膏、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、フォーム、マイクロ粒子若しくはナノ粒子製剤、固体挿入物として投与されるか、又は眼科用デバイスを使用して投与される、請求項8に記載の使用のためのTTF。
【請求項10】
前記TTFが、約0.3ng/ml~120mg/mlの間の濃度で投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのTTF。
【請求項11】
前記TTFが、1日1回、2回、3回、又は4回投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのTTF。
【請求項12】
眼疾患若しくは障害を処置、防止、若しくは改善する方法における使用のための、又は眼治療手技への補助処置を、それを必要とする対象において提供するための、TTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物であって、前記方法が、前記対象に、治療有効量の前記TTF又はその塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、TTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項13】
網膜免疫細胞活性化の阻害又は低減における使用のためのTTF又はその薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物。
【請求項14】
前記網膜免疫細胞が、ミクログリア、マクログリア、及び単核単球から選択される、請求項11に記載の使用のためのTTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項15】
光受容体死の阻害若しくは低減における又は網膜細胞変性の防止における使用のための、TTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項16】
前記TTFが、植物(achillea fragranissimaなど)から単離されるか、又は合成により産生されるTTFである、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のためのTTF。
【請求項17】
TTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物と、眼科的に許容される担体と、を含む、眼科用組成物。
【請求項18】
前記眼科用組成物が点眼剤である、請求項17に記載の眼科用組成物。
【請求項19】
前記眼科用組成物が、溶液、懸濁液、軟膏、ペースト、スプレー、エアロゾル、フォーム、マイクロ粒子若しくはナノ粒子製剤、又はゲルの形態である、請求項17に記載の眼科用組成物。
【請求項20】
前記眼科用組成物が、緩衝剤、等張化剤、可溶化剤、保存剤、増粘剤、キレート剤、抗酸化剤、抗生物質、糖、又はpH調整剤のうちの1つ以上を含む、請求項19に記載の眼科用組成物。
【請求項21】
前記眼科的に許容される担体が、リン酸緩衝液ビヒクル系、等張性ホウ酸、等張性塩化ナトリウム、等張性ホウ酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、及び生理食塩水からなる群から選択される、請求項17~20のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項22】
前記眼科用組成物が、眼科用デバイス内に含まれる、請求項17~20のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項23】
前記眼科用デバイスが、コンタクトレンズ、涙点プラグ、強膜パッチ、強膜リング、結膜嚢インサート、結膜下/強膜上インプラント、脈絡膜下インプラント、硝子体内インプラント、及び局所眼科用薬物送達デバイス(TODD)などの非侵襲的送達デバイスからなる群から選択される形態である、請求項22に記載の眼科用組成物。
【請求項24】
前記眼科用組成物が持続放出性組成物である、請求項17~23のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項25】
眼疾患若しくは障害を処置、防止、若しくは改善する方法における使用、又は眼治療手技への補助処置を対象において提供するためのものであり、前記眼疾患又は障害が、網膜色素変性症(RP)、糖尿病性網膜症(DR)、脈絡網膜炎、脈絡膜炎、網膜炎、脈絡網膜炎、日光網膜症、脈絡膜変性、先天性脈絡膜欠如、高血圧性網膜症、網膜症、未熟児網膜症、加齢性黄斑変性症(AMD)、黄斑変性症、標的黄斑症、網膜上膜、周辺網膜劣化、遺伝性網膜ジストロフィー、網膜出血、中心性漿液性網膜症、緑内症、視神経症、レーベル遺伝性視神経症、視神経乳頭ドルーゼン、強膜炎、角膜炎、角膜潰瘍、光線角膜炎、タイゲソン点状表層角膜炎、角膜血管新生、角膜ジストロフィー、フックスジストロフィー、円錐角膜、乾性角結膜炎、ヘルペス、ドライアイ、虹彩炎、ブドウ膜炎、視神経炎、細菌感染(例えば、ライム病)、ウイルス感染(例えば、麻疹、おたふく風邪)、サルコイドーシス、ループス視神経脊髄炎、薬剤(例えば、キニーネ、抗生物質)の使用に関連する眼合併症、視神経変性、虚血性視神経症(例えば、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)、前部虚血性視神経症(AION)、後部虚血性視神経症(PAION))からなる群から選択される、請求項17~24のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項26】
前記眼治療手技が、眼、網膜下、硝子体内、又は脈絡膜上送達を含む、請求項25に記載の使用のための眼科用組成物。
【請求項27】
前記眼、網膜下、硝子体内、又は脈絡膜上送達が、遺伝子治療、幹細胞治療、又はプロテーゼの送達を含む、請求項26に記載の使用のための眼科用組成物。
【請求項28】
前記疾患又は障害が、AMD、DR、RP、及び視神経変性から選択される、請求項27に記載の使用のための眼科用組成物。
【請求項29】
前記対象がヒトである、請求項25~28のいずれか一項に記載の使用のための眼科用組成物。
【請求項30】
前記対象が、ヒツジ、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ラクダ、スイギュウ、ウサギ、ネコ、イヌ、及び霊長類からなる群から選択される哺乳動物である、請求項25~28のいずれか一項に記載の使用のための眼科用組成物。
【請求項31】
前記眼科用組成物が、約0.3ng/ml~120mg/mlの間の濃度で投与される、請求項25~30のいずれか一項に記載の使用のための眼科用組成物。
【請求項32】
前記眼科用組成物が、1日1回、2回、3回、又は4回投与される、請求項25~31のいずれか一項に記載の使用のための眼科用組成物。
【請求項33】
網膜免疫細胞活性化の阻害又は低減における使用のための、請求項17~24のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項34】
前記網膜免疫細胞が、ミクログリア、マクログリア、及び単核単球から選択される、請求項33に記載の眼科用組成物。
【請求項35】
光受容体死の阻害若しくは低減における又は網膜細胞変性の防止における使用のための、請求項17~24のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項36】
前記眼科用組成物が、滴下、噴霧、若しくは眼内注射、又は眼科用デバイスからの放出によって投与される、請求項17~35のいずれか一項に記載の使用のための眼科用組成物。
【請求項37】
前記TTFが、植物(achillea fragranissimaなど)から単離されるか、又は合成により産生されるTTFである、請求項17~24のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項38】
眼疾患若しくは障害を処置する方法、又は眼治療手技への補助処置を提供する方法であって、治療有効量のTTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項39】
前記疾患又は障害が、網膜色素変性症(RP)、糖尿病性網膜症(DR)、脈絡網膜炎、脈絡膜炎、網膜炎、脈絡網膜炎、日光網膜症、脈絡膜変性、先天性脈絡膜欠如、高血圧性網膜症、網膜症、未熟児網膜症、加齢性黄斑変性症(AMD)、黄斑変性症、標的黄斑症、網膜上膜、周辺網膜劣化、遺伝性網膜ジストロフィー、網膜出血、中心性漿液性網膜症、緑内症、視神経症、レーベル遺伝性視神経症、視神経乳頭ドルーゼン、強膜炎、角膜炎、角膜潰瘍、光線角膜炎、タイゲソン点状表層角膜炎、角膜血管新生、角膜ジストロフィー、フックスジストロフィー、円錐角膜、乾性角結膜炎、ヘルペス、ドライアイ、虹彩炎、及びブドウ膜炎、視神経炎、細菌感染(例えば、ライム病)、ウイルス感染(例えば、麻疹、おたふく風邪)、サルコイドーシス、ループス視神経脊髄炎、薬剤(例えば、キニーネ、抗生物質)の使用に関連する眼合併症、視神経変性、虚血性視神経症(例えば、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)、前部虚血性視神経症(AION)、後部虚血性視神経症(PAION))からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記眼治療手技が、眼、網膜下、硝子体内、又は脈絡膜上送達を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記眼、網膜下、硝子体内、又は脈絡膜上送達が、遺伝子治療、幹細胞治療、又はプロテーゼの送達を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記疾患又は障害が、AMD、DR、RP、及び視神経変性から選択される、請求項38に記載の使用のための方法。
【請求項43】
前記対象がヒトである、請求項38~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、ヒツジ、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ラクダ、スイギュウ、ウサギ、ネコ、イヌ、及び霊長類からなる群から選択される哺乳動物である、請求項38~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記TTFが、局所、皮膚、皮下、経皮、結膜、結膜下、角膜内、眼内、眼、経口、及び/又は非経口投与によって投与される、請求項38~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記TTFが、点眼溶液、懸濁液、軟膏、ペースト、スプレー、エアロゾル、泡、マイクロ粒子若しくはナノ粒子製剤、ゲルとして、又は眼科用デバイスを使用して投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記組成物が、約0.3ng/ml~120mg/mlの濃度で投与される、請求項38~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記TTFが、1日1回、2回、又は3回投与される、請求項38~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記TTFが、植物(Achillea fragranissimaなど)から単離されるか、又は合成により産生されるTTFである、請求項38~48のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、眼疾患及び眼障害の新規処置に関する。
【0002】
本開示の主題の背景として関連すると考えられる参考文献を以下に列挙する。
[1]Wong,W.L.,Su,X.,Li,X.,Cheung,C.M.G.,Klein,R.,Cheng,C.-Y.,and Wong,T.Y.(2014).Global prevalence of age-related macular degeneration and disease burden projection for 2020 and 2040:a systematic review and meta-analysis.Lancet Glob.Health 2,e106-16.
[2]Sunness,J.S.(1999).The natural history of geographic atrophy,the advanced atrophic form of age-related macular degeneration.Mol.Vis.5,25.
[3]Bhutto,I.,and Lutty,G.(2012).Understanding age-related macular degeneration(AMD):relationships between the photoreceptor/retinal pigment epithelium/Bruch’s membrane/choriocapillaris complex.Mol.Aspects Med.33,295-317.
[4]Hartong,D.T.,Berson,E.L.,and Dryja,T.P.(2006).Retinitis pigmentosa.Lancet 368,1795-1809.
[5]Bravo-Gil,N.,Gonzalez-Del Pozo,M.,Martin-Sanchez,M.,Mendez-Vidal,C.,Rodriguez-de la Rua,E.,Borrego,S.,and Antinolo,G.(2017).Unravelling the genetic basis of simplex Retinitis Pigmentosa cases.Sci.Rep.7,41937.
[6]Patel,N.,Aldahmesh,M.A.,Alkuraya,H.,Anazi,S.,Alsharif,H.,Khan,A.O.,Sunker,A.,Al-Mohsen,S.,Abboud,E.B.,Nowilaty,S.R.,et al.(2016).Expanding the clinical,allelic,and locus heterogeneity of retinal dystrophies.Genet.Med.18,554-562.
【0003】
本明細書における上記の参考文献の承認は、これらが本開示の主題の特許性に関連することを意味するとしてなんら推測されるべきでない。
【背景技術】
【0004】
加齢性黄斑変性(Age-Related Macular Degeneration、AMD)は、産業界における失明及び重度の視力障害の主な原因である。
【0005】
AMDの有病率は、飛躍的な人口の高齢化に起因して増加し、2040年には2億8800万人に達すると予測されている。[1]これは、最終的に網膜上皮細胞(retinal epithelial cell、RPE)のタンパク質損傷、凝集、及び変性、並びに付随する光受容体細胞の喪失をもたらす、老化、慢性酸化ストレス、及び炎症の十分に確立した疾患である。
【0006】
この疾患状態の顕著な特徴は、主に、我々の視力に関与する網膜の一部である黄斑と呼ばれる網膜の中心領域のエリアにおける、脂質及びタンパク質の黄色沈着物であるドルーゼンと呼ばれる細胞外沈着物の存在である。
【0007】
RPEとその下にある基底膜との間にドルーゼンが蓄積すると、光受容体変性をもたらすRPE細胞死が加速する。AMDの進行及び重症度は、ドルーゼンの数及びサイズに直接相関する。進行性AMDは、(i)RPE及び上にある光受容体の地図状萎縮(geographic atrophy、GA)、ドルーゼンを含む乾燥型AMD、及び(ii)脈絡膜血管新生(choroidal neovascularization、CNV、これは「湿潤型」AMDとも呼ばれる)という2つの形態で生じる。乾燥型(GA)AMDは、光受容体及びRPE細胞死の融合エリアを特徴とし、AMDによって引き起こされる法的盲の10%の原因となっている。[2]
【0008】
米国では約100万人が現在乾燥型AMDに罹患しており、患者の半分以上が左右に発症している。「湿潤型」(血管新生)AMDは、AMDによって引き起こされる急性失明の残り90%を占め、黄斑下の異常な血管成長を特徴とする。これらの新しい血管は、大部分が奇形であり、不適切な血管完全性をもたらし、好ましくない血管系が浸潤した破壊された組織内に望ましくない流体漏出を引き起こす。[3]
【0009】
血管新生を減少させ、視力を向上させる「湿潤型」AMDの処置があるが、光受容体細胞死は進行し続け、網膜ニューロンの変性を減速又は停止させる有効な処置はない。更に、この疾患の有病率にもかかわらず、その病因はほとんど不明のままである。
【0010】
網膜色素変性症(Retinitis pigmentosa、RP)は、桿体及び錐体光受容体の進行性変性を特徴とする不治の遺伝性網膜ジストロフィーの複雑な群である。
【0011】
RPの世界的な有病率はおよそ3500人に1人であり、合計で150万人を超える罹患者がいる。[4]
【0012】
この疾患は、常染色体劣性(症例の約50~60%)、常染色体優性(30~40%)、又はX連鎖(5~15%)形質として遺伝し得る。81個の既知の原因遺伝子及び数千個の突然変異がこれまでに同定されている。[5]
【0013】
RPの最初の臨床所見は夜盲症であり、多くの場合、青年期に始まり、その後、周辺視力が徐々に失われ、多くの場合、中年期に中心視力が失われ、完全に失明する。これらの視覚症状は、桿体の漸進的な変性を反映し、これにより、無色の夜間視力が媒介され、その後、高視力の中心視力に重要である錐体が失われる。
【0014】
現在、RP患者の約7%に見られるRPE65遺伝子の突然変異を有する患者のために最近FDAにより承認された単一遺伝子治療処置を除いて、RPに対する処置は承認されていない。[6]特に、この処置の非常に高いコスト(患者当たり約950,000米国ドル)は、これらの患者の大部分がこれを利用できないことを示唆している。
【0015】
現在、世界中で何百万人もの患者が罹患しているAMD、RP、及び糖尿病性網膜症などにおける網膜変性及び他の網膜細胞損傷の処置はない。最近、遺伝子治療がRPの原因遺伝子80個のうちの1つに対して承認されたが、これは、その遺伝子に突然変異を担持する少数のRP患者にしか有益でない。これらの疾患は、既知の原因遺伝子が何十もあることで、極めて不均一である。多くの患者は遺伝的に診断することができず、疾患の進行は、罹患した遺伝子にかかわらず個体間で異なる。よって、遺伝子治療は、全ての患者にとって効率的かつ合理的ではない。よって、失明を防止し、これらの失明疾患の莫大な社会的及び経済的負担を低減するために、網膜ニューロンの変性を遅延又は停止させることができる処置を開発する緊急の必要性がある。
【0016】
国際公開第2015/079390号は、Achillea Fragrantissimaから単離された3,5,4’-トリヒドロキシ-6,7,3’-トリメトキシフラボン及びアチロリド(achillolid)Aを開示し、アストロサイト、ニューロン細胞、及びミクログリアに対するこれらの化合物のインビトロ効果を示し、アルツハイマー疾患、パーキンソン疾患、及び更なる脳関連神経変性疾患の処置におけるそれらの使用を示唆している。
【発明の概要】
【0017】
本発明の第1の態様では、本発明は、眼疾患若しくは障害の処置、防止、若しくは改善における使用のための、又は眼治療手技への補助処置を提供するための、3,5,4’-トリヒドロキシ-6,7,3’-トリメトキシフラボン(3,5,4’-trihydroxy-6,7,3’-trimethoxyflavone、TTF)又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、眼疾患若しくは障害を処置、防止、若しくは改善する方法における使用のための、又は眼治療手技への補助処置を、それを必要とする対象において提供するための、TTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物であって、本方法が、対象に、治療有効量の当該TTF又はその塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、TTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0019】
他の態様では、本発明は、網膜免疫細胞活性化の阻害若しくは低減における、光受容体死の阻害若しくは低減における、又は網膜細胞変性の防止における使用のための、TTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、TTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物と、眼科的に許容される担体と、を含む、眼科用組成物を提供する。
【0021】
一実施形態では、本発明に従う眼科用組成物は、眼疾患若しくは障害を処置、防止、若しくは改善する方法における使用、又は眼治療手技への補助処置を対象において提供するためのものであり、当該眼疾患又は障害は、網膜色素変性症(RP)、糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy、DR)、脈絡網膜炎、脈絡膜炎、網膜炎、脈絡網膜炎、日光網膜症、脈絡膜変性、先天性脈絡膜欠如、高血圧性網膜症、網膜症、未熟児網膜症、加齢性黄斑変性症(AMD)、黄斑変性症、標的黄斑症、網膜上膜、周辺網膜劣化、遺伝性網膜ジストロフィー、網膜出血、中心性漿液性網膜症、緑内症、視神経症、レーベル遺伝性視神経症、視神経乳頭ドルーゼン、強膜炎、角膜炎、角膜潰瘍、光線角膜炎、タイゲソン点状表層角膜炎、角膜血管新生、角膜ジストロフィー、フックスジストロフィー、円錐角膜、乾性角結膜炎、ヘルペス、ドライアイ、虹彩炎、ブドウ膜炎、視神経炎、細菌感染(例えば、ライム病)、ウイルス感染(例えば、麻疹、おたふく風邪)、サルコイドーシス、ループス視神経脊髄炎、薬剤(例えば、キニーネ、抗生物質)の使用に関連する眼合併症、視神経変性、虚血性視神経症(例えば、非動脈炎性前部虚血性視神経症(Non-Arteritic Anterior Ischemic Optic Neuropathy、NAION)、前部虚血性視神経症(Anterior Ischemic Optic Neuropathy、AION)、後部虚血性視神経症(Posterior Ischemic Optic Neuropathy、PAION))からなる群から選択される。
【0022】
別の態様では、本発明は、眼疾患若しくは障害を処置する方法、又は眼治療手技への補助処置を提供する方法であって、治療有効量のTTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本明細書に開示される主題をよりよく理解し、実際にその主題をどのように実施することができるのかを例示するために、ここで添付の図面を参照しながら単なる非限定的な例によって実施形態について説明する。
図1】RPE65/rd12マウスから得られた、網膜1mm当たりのM錐体オプシン陽性染色細胞の数を示す。8nMの天然TTF(natural TTF、nTTF)、8nMの合成TTF(synthetic TTF、sTTF)、又はビヒクル(対照)を補充した培地中で、網膜をインキュベートした。データは、平均±SEとして示す。pは、nTTF又はsTTFと対照との間の差の統計的有意性を表し、pは、nTTFとsTTFとの間の差の統計的有意性を表す。
図2】HPLC分析により決定した、眼へのTTF適用後の示された時点(45分又は3時間)で除去した前房タップ(眼液)中のTTF濃度(pg/ml)を示す(nM単位でも示す)。
図3A】ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色したRPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスの網膜フラットマウントにおける代表的なRPEを示す。A~C及びG~Iは、視覚神経入口の周囲3mm領域を示す(4倍)。D~F及びJ~Lは、より高い倍率(10倍)を示す。
図3B】ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色したRPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスの網膜フラットマウントにおける代表的なRPEを示す。A~C及びG~Iは、視覚神経入口の周囲3mm領域を示す(4倍)。D~F及びJ~Lは、より高い倍率(10倍)を示す。
図3C】ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色したRPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスの網膜フラットマウントにおける代表的なRPEを示す。A~C及びG~Iは、視覚神経入口の周囲3mm領域を示す(4倍)。D~F及びJ~Lは、より高い倍率(10倍)を示す。
図3D】ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色したRPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスの網膜フラットマウントにおける代表的なRPEを示す。A~C及びG~Iは、視覚神経入口の周囲3mm領域を示す(4倍)。D~F及びJ~Lは、より高い倍率(10倍)を示す。
図3E】ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色したRPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスの網膜フラットマウントにおける代表的なRPEを示す。A~C及びG~Iは、視覚神経入口の周囲3mm領域を示す(4倍)。D~F及びJ~Lは、より高い倍率(10倍)を示す。
図3F】ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色したRPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスの網膜フラットマウントにおける代表的なRPEを示す。A~C及びG~Iは、視覚神経入口の周囲3mm領域を示す(4倍)。D~F及びJ~Lは、より高い倍率(10倍)を示す。
図3G】ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色したRPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスの網膜フラットマウントにおける代表的なRPEを示す。A~C及びG~Iは、視覚神経入口の周囲3mm領域を示す(4倍)。D~F及びJ~Lは、より高い倍率(10倍)を示す。
図3H】ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色したRPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスの網膜フラットマウントにおける代表的なRPEを示す。A~C及びG~Iは、視覚神経入口の周囲3mm領域を示す(4倍)。D~F及びJ~Lは、より高い倍率(10倍)を示す。
図3I】ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色したRPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスの網膜フラットマウントにおける代表的なRPEを示す。A~C及びG~Iは、視覚神経入口の周囲3mm領域を示す(4倍)。D~F及びJ~Lは、より高い倍率(10倍)を示す。
図3J】ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色したRPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスの網膜フラットマウントにおける代表的なRPEを示す。A~C及びG~Iは、視覚神経入口の周囲3mm領域を示す(4倍)。D~F及びJ~Lは、より高い倍率(10倍)を示す。
図3K】ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色したRPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスの網膜フラットマウントにおける代表的なRPEを示す。A~C及びG~Iは、視覚神経入口の周囲3mm領域を示す(4倍)。D~F及びJ~Lは、より高い倍率(10倍)を示す。
図3L】ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色したRPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスの網膜フラットマウントにおける代表的なRPEを示す。A~C及びG~Iは、視覚神経入口の周囲3mm領域を示す(4倍)。D~F及びJ~Lは、より高い倍率(10倍)を示す。
図3M】浸潤ミクログリアの定量化を示すグラフである。両方の群、すなわち、RPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスについて、両側t検定を行った(P<0.001)。
図4】プラセボ(DMSO、n=9)又はTTF(n=10)を含有する点眼剤によりインビボで処置したRPE65/rd12マウスにおける浸潤性網膜下ミクログリアの定量化を示すグラフである。網膜をミクログリア特異的マーカーIba-1で染色した。プラセボ及びTTF処置群についての両側t検定のp値を示す。
図5】ビヒクル(DMSO)又はTTF点眼剤により処置したRPE65/rd12マウスから得た網膜溶解物中のIL-1ベータ濃度(網膜タンパク質1mg当たりのpg)を示す。より低いレベルのIL-1ベータが、TTF処置網膜において実証された。
図6】光受容体細胞アポトーシスの指標として、光受容体細胞層におけるTUNEL陽性細胞の数を示す。本グラフは、対照群(ビヒクルDMSOで処置したRPE65/rd12マウス)対TTF点眼剤で処置したRPE65/rd12マウスの群についての結果を示す。
図7】網膜電図検査及び最大暗順応ERG a波及びb波振幅(μV)の記録により測定した網膜機能の評価を提示す。RPE65/rd12マウスの2つの群を評価し、一方をDMSO中のTTF点眼剤で処置し、他方をDMSO単独(対照)で処置した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、3,5,4’-トリヒドロキシ-6,7,3’-トリメトキシフラボン(TTF)がインビトロ及びインビボの両方で細胞死から網膜光受容体を保護し、網膜色素変性症のマウスモデルにおいて網膜機能を保存するという驚くべき発見に基づく。
【0025】
このため、第1の態様では、本発明は、対象において眼疾患若しくは障害を処置、防止、若しくは改善するための、又は眼治療手技への補助処置を提供するための、3,5,4’-トリヒドロキシ-6,7,3’-トリメトキシフラボン(TTF)又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は、眼疾患若しくは障害を処置、防止、若しくは改善することを、それを必要とする対象において行う方法における使用のためのTTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を提供し、本方法は、対象に、治療有効量の当該TTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む。
【0027】
TTF化合物の構造を式VIIIに示し、
【0028】
【化1】

式中、Meはメチル基を表す。
【0029】
TTFは、例えば国際公開第2015/079390号に記載されているように、植物、例えば、伝統医学に使用される砂漠植物であるAchillea fragrantissima(Af)から単離されてもよい。このような単離されたTTFはまた、本明細書では「天然TTF」と称される。
【0030】
以下は、天然TTFの単離のための例示的な手順である:Achillea fragrantissimaは、種々の砂漠地域で収集され得る。非限定的な例として、これはArava Valley,Israelで収集され得る。
【0031】
日光又は空気又はオーブン又は凍結乾燥させたAf(1kg)を均質化し、石油エーテル(3×500ml、24時間)、続いて酢酸エチル(3×500ml、24時間)で抽出する。後者の溶媒を蒸発させた後、残留ガム状物質を、MeOH/CH2C12(1:1)で溶出させるSephadex LH-20カラムでのクロマトグラフィーにかける。TLCプレートに従って、TTFを含む画分を、再度、Sephadex LH-20カラム及びシリカゲルで2回、溶出液として酢酸エチルの割合を漸増させたヘキサンを用いてクロマトグラフィーにかける。ヘキサン中40%酢酸エチルで溶出させることによりTTFを得る。赤外(IR)スペクトルを、Brukerフーリエ変換赤外スペクトル(fourier transform infra-red spectra、FTIR)Vector22分光計を用いて得る。H及び13C NMRスペクトルを、Bruker Avancc-500分光計で記録した。相関分光法(correlation spectroscopy、COSY)、異種核単一量子コヒーレンス分光法(heteronuclear single quantum coherence spectroscopy、HSQC)、及び異種核多重結合相関分光法(heteronuclear multiple-bond correlation spectroscopy、HMBC)実験を、標準的なBrukerパルスシーケンスを使用して記録する。高分解能エレクトロスプレー質量分析(high resolution electrospray mass spectroscopy、HRESIMS)測定は、機器Waters Micromass SYNAPT HDMS質量分析計、飛行時間(time of flight、TOF)を使用して行う。
【0032】
TTFはまた、その生合成経路の上方調節によって植物中で発現され得る。
【0033】
本発明の一実施形態、TTFは、当業者に既知の方法を使用して合成により産生される。このような合成により産生されたTTFは、本明細書では「合成TTF」と称される。
【0034】
以下は、合成TTFを産生させるための例示的なスキームである。
【0035】
【化2】
【0036】
合成TTFを調製するための例示的な手順は、以下の実施例に示される。
【0037】
一実施形態では、本発明によるTTFは、上記のように産生させた合成TTFである。
【0038】
一実施形態では、本発明は、合成TTFを産生させる方法を提供し、本方法は、以下の実施例に示される工程を含む。
【0039】
本発明の一実施形態では、TTFはプロドラッグとして投与される。
【0040】
「処置すること」、「防止すること」、「改善すること」などという用語は、概して、所望の薬理学的及び/又は生理学的及び/又は生物学的効果を得ることを意味するために本明細書で使用される。効果は、眼疾患若しくはその症状を完全に若しくは部分的に防止するという点で予防的であってもよく、並びに/又は眼疾患及び/若しくはその疾患に起因する有害作用を部分的に若しくは完全に治癒させるという点で治療的であってもよい。本明細書で使用される「処置」という用語は、哺乳動物、特にヒトにおける眼疾患の任意の処置を含み、(a)疾患に罹りやすい可能性があるが、まだそれを有するとは診断されていない対象において疾患が発生するのを防止すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を停止又は遅延させること、(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすこと、又は(d)様々な眼治療手技に補助処置を提供すること、を含む。本発明は、眼の医学的状態を有する患者を処置することを対象とする。
【0041】
ある特定の実施形態では、疾患又は障害は、網膜変性疾患から選択される。
【0042】
実施形態では、疾患又は障害は、網膜色素変性症(RP)、糖尿病性網膜症(DR)、脈絡網膜炎、脈絡膜炎、網膜炎、脈絡網膜炎、日光網膜症、脈絡膜変性、先天性脈絡膜欠如、高血圧性網膜症、網膜症、未熟児網膜症、加齢性黄斑変性症(AMD)、黄斑変性症、標的黄斑症、網膜上膜、周辺網膜劣化、遺伝性網膜ジストロフィー、網膜出血、中心性漿液性網膜症、緑内症、視神経症、レーベル遺伝性視神経症、視神経乳頭ドルーゼン、強膜炎、角膜炎、角膜潰瘍、光線角膜炎、タイゲソン点状表層角膜炎、角膜血管新生、角膜ジストロフィー、フックスジストロフィー、円錐角膜、乾性角結膜炎、ヘルペス、ドライアイ、虹彩炎、及びブドウ膜炎、視神経炎、細菌感染(例えば、ライム病)、ウイルス感染(例えば、麻疹、おたふく風邪)、サルコイドーシス、ループス視神経脊髄炎、薬剤(例えば、キニーネ、抗生物質)の使用に関連する眼合併症、視神経変性、虚血性視神経症(例えば、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)、前部虚血性視神経症(AION)、後部虚血性視神経症(PAION))からなる群から選択される。
【0043】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、RP、AMD、DR、及び視神経変性から選択される。
【0044】
一実施形態では、当該処置することは、眼治療手技のための補助処置を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、「補助処置」又は「補助療法」という用語は、一次処置、例えば、網膜下、硝子体内、又は脈絡膜上の治療送達手術を補助する二次処置としてのTTFの使用を指す。
【0046】
したがって、一実施形態では、眼治療手技は、眼、網膜下、硝子体内、又は脈絡膜上の治療送達手術を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、当該網膜下、硝子体内、又は脈絡膜上治療送達手術は、遺伝子治療、幹細胞治療の送達、及び/又はプロテーゼ送達を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0049】
いくつかの他の実施形態では、対象は、ヒツジ、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ラクダ、スイギュウ、ウサギ、ネコ、イヌ、及び霊長類から選択される。
【0050】
TTF又は本発明に記載される組成物は、種々の経路で、例えば、非限定的に、局所、皮膚、皮下、経皮、結膜、結膜下、角膜内、眼内、眼、経口、及び/又は非経口投与により投与することができる。
【0051】
本明細書で使用される場合、結膜投与という用語は、眼瞼の内側を覆い、眼球の露出表面を覆うダイ繊細な膜である結膜への投与を指す。
【0052】
いくつかの実施形態では、TTF又は本発明に記載される組成物は、点眼剤溶液、懸濁物、クリーム、軟膏、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、フォーム、マイクロ粒子若しくはナノ粒子製剤、固体挿入物の形態での眼に投与されるか、又はそのような投与のために適合されるか、あるいは眼科用デバイスを使用して投与される。
【0053】
TTF又は本明細書に記載される組成物は、治療有効量で対象に投与される。「治療有効量」という用語は、本開示の文脈では、所望の処置レジメンに従って投与された場合に、所望の治療効果若しくは応答を誘発するか、又は所望の利益を提供する、本明細書に記載の化合物又は組成物の量を指す。具体的には、このような有効量は、眼疾患の処置、防止、又は改善に適した量に関する。
【0054】
以下の実施例に示されるように、8nMのTTF濃度(例えば、実施例1を参照されたい)又は12.5mg/mlのTTF濃度(例えば、実施例4~7を参照されたい)は、網膜錐体光受容体をアポトーシスからインビトロで保護することにおいて、及び動物モデルにおける網膜機能を救済することにおいて、プラスに有効であった。当業者は、このような有効濃度が製剤の成分及び投与様式に従って調整され得ることを理解するであろう。例えば、組成物が、例えば注射によって又はインプラントを使用して網膜の近くに投与される場合、濃度はng/ml範囲であってもよく、一方で組成物が点眼剤又はインプラント/注入の形態で網膜から更に離れた位置に投与される場合(例えば、テノン嚢下注入)、必要な濃度はより高く、mg/ml範囲であってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、TTF又は本発明に記載される組成物は、約0.3ng/ml~120mg/ml、例えば、限定されないが、0.36ng/ml、2.5ng/ml、3.6ng/ml、36ng/ml、100ng/ml、0.36mg/ml、1.25mg/ml、4mg/ml、12.5mg/ml、又は120mg/mlの濃度で投与される。
【0055】
いくつかの実施形態では、TTF又は本発明に記載される組成物は、眼疾患の性質に応じて、及び医師の推奨に従って、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回投与され、各々が本発明の実施形態である。
【0056】
非限定的な例として、患者が慢性眼疾患に罹患している場合、TTF又は本発明の組成物は、所定の時間量又は無制限の時間量にわたって1日1回投与されてもよい。患者が急性状態に罹患している他の場合には、TTF又は本発明の組成物は、医師の推奨に従って、1日2回、1日3回、又は1日4回、又はそれ以上投与されてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、投与は1日おきである。
【0058】
別の実施形態では、投与は週1回である。いくつかの他の実施形態では、投与は月1回である。
【0059】
患者が遺伝子治療、又は網膜下、硝子体内、若しくは脈絡膜上の処置送達を含む任意の他の手術を受ける一実施形態では、TTF又は本発明の組成物は、処置の前後に1~4週間投与される。
【0060】
いくつかの他の実施形態では、例えば、本組成物が眼科用デバイス(例えば、再充填され得る徐放性眼科用デバイス)を介して投与されるとき、投与は、年1回、数か月に1回、月1回、又は数週間に1回である。本組成物はまた、ゲル(例えば、ヒドロゲル、シルクゲル)又は徐放に好適な任意の他の化学製剤を使用して投与されてもよい。
【0061】
「薬学的に許容される」という用語に言及するとき、本開示の文脈における一般的な意味は、毒性又は危険でない、ヒトを含む哺乳動物への投与に対する担体/材料の好適性である。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬/眼科用組成物は、点眼、噴霧、眼内注射によって、又は眼科用デバイスからの放出によって投与される。
【0063】
いくつかの更なる実施形態では、本発明は、別の活性薬剤と一緒した本発明の化合物の同時投与を提供する。
【0064】
いくつかの実施形態では、活性薬剤は、アチロイドA、アセタゾールアミド、アセチルシステイン、アシクロビル、アンタゾリン、キシロメタゾリン、アプラクロニジン、アトロピン、アゼラスチン、アジトロマイシン、ベタメタゾン、ベタキソロール、ビマトプロスト、ブリモニジン、ブリンゾラミド、ブロムフェナク、液体カルボマー、カルメロースナトリウム、カルテオロール、クロランフェニコール、シプロフロキサシン、シクロペンタノレート、デキサメタゾン、ジクロフェナク、ドルゾラミド、エメダスチン、エピナスチン、フルオロメトロン、フルロボプロフェン(flurboprofen)、フシジン酸(fisuduc acid)、ガンシクロビル、ゲンタマイシン、ホマトロピン、ヒプロメロース、ケトロラク、ケトチフェン、ラタノプロスト、レボブノロール、レボフロキサシン、ロドキサミド、ロテプレドノール、モキシフロキサシン、ネドクロミルナトリウム、ネパフェナク、オフロキサシン、オロパタジン、ピロカルピン、ポリビニルアルコール、プレドニゾロン、リメキソロン、クロモグリク酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ダイズ油、タフルプロスト、チモロール、トブラマイシン、トラボプロスト、トロピカミド、ビタミンA、ビタミンE、オメガ3、ビタミンC、ベータカロチン、酸化亜鉛、スタチン、VEGF阻害剤及び阻害剤様薬物からなる群から選択される。
【0065】
実施形態では、VEGF阻害剤及び阻害剤様薬物は、ラニビズマブ、ベバシズマブ、ペガプタニブ、アフリベルセプト、及びブロルシズマブから選択される。
【0066】
いくつかの他の実施形態では、本発明の化合物は、光線力学治療、レーザー治療、放射線治療、アジュバント治療、外科手術、又は幹細胞治療と一緒に与えられる。
【0067】
別の態様では、本発明は、3,5,4’-トリヒドロキシ-6,7,3’-トリメトキシフラボン(TTF)又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物と、1つ以上の薬学的に許容される担体とを含む、対象における眼疾患又は障害を処置、防止、又は改善するための医薬組成物を提供する。
【0068】
別の態様では、本発明は、TTF又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物と、眼科的に許容される担体と、を含む、眼科用組成物を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態では、本眼科用組成物は、溶液、懸濁液、軟膏、ペースト、スプレー、エアロゾル、フォーム、マイクロ粒子若しくはナノ粒子製剤、又はゲルの形態である。
【0070】
特定の実施形態では、当該眼科用組成物は点眼剤である。
【0071】
本発明による組成物は、非毒性の薬学的有機担体又は非毒性の薬学的無機担体と簡便に混合され得る。薬学的に許容される担体には、例えば、水、水と低級アルカノール又はアラルカノールなどの水混和性溶媒との混合物、落花生油、植物油、ポリアルキレングリコール、オレイン酸エチル、エチルセルロース、石油ベースのゼリー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、生理食塩水、ポリビニルアルコール、及び他の従来の薬学的に許容される担体が含まれ得る。
【0072】
本組成物はまた、非毒性賦形剤(例えば、乳化剤、保存剤、湿潤剤、増粘剤など)、例えば、ポリエチレングリコール、カーボワックス、抗菌剤(例えば、第四級アンモニウム化合物、フェニル水銀塩、フェニルエタノール、メチルパラベン及びプロピルパラベン、ベンジルアルコール、チメロサール)、緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコネート緩衝液)、及び他の従来の薬剤(例えば、オレエート、トリエタノールアミン、チオソルビトール、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチレート、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノチオグリセロール、ソルビタンモノラウレート、エチレンジアミン四酢酸など)を含んでもよい。
【0073】
「眼科的に許容される担体」という用語に言及するとき、本開示の文脈における一般的な意味は、毒性又は危険でない、眼への投与に対する担体/材料の好適性である。
【0074】
好適な眼科的に許容される担体を本目的のための適切な担体として使用することができ、これには、リン酸緩衝液ビヒクル系、等張性ホウ酸、等張性塩化ナトリウム、等張性ホウ酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、及び生理食塩水が含まれる。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明の眼科用組成物は、緩衝剤、等張化剤、可溶化剤、保存剤、増粘剤、キレート剤、抗酸化剤、抗生物質、糖、pH調整剤のうちの1つ以上を更に含む。
【0076】
いくつかの特定の実施形態では、本医薬組成物/眼科用組成物はまた、マイクロ粒子製剤及びナノ粒子製剤の形態であってもよい。
【0077】
更なる特定の実施形態では、本医薬組成物又は眼科用組成物はまた、ヒドロゲル又はシルクゲルなどであるがこれらに限定されない化学的化合物を使用して制御/持続放出形態で投与されてもよい。
【0078】
したがって、一実施形態では、本眼科用組成物は持続放出性組成物である。
【0079】
更なる特定の実施形態では、本医薬組成物又は眼科用組成物はまた、眼科用デバイスで投与されてもよい。
【0080】
例えば、固体水溶性ポリマーを、眼科用デバイス中で化合物のための担体として使用してもよい。眼科用デバイスを形成するために利用され得る好適なポリマーは、任意の水溶性非毒性ポリマー、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、(ヒドロキシ低級アルキルセルロース)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどセルロース誘導体;ポリアクリル酸塩、エチルアクリレート、ポリアセチルアミドなどのアクリレート;ゼラチン、アルギネート、ペクチン、トラガカント、カラヤ、ツノマタ、寒天、アカシアなどの天然産物;キトサン及びキトサン誘導体、多糖ベースのナノ担体、酢酸デンプン、ヒドロキシメチルデンプンエーテル、ヒドロキシプロピルデンプンなどのなどのデンプン誘導体、並びにポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、中和カルボポール及びキサンタンガム、ジェランガムなどの他の合成誘導体、並びに当該ポリマーの混合物であってもよい。
【0081】
いくつかの更なる実施形態では、眼科用デバイスは、生分解性又は非生分解性送達デバイスである。
【0082】
実施形態では、デバイスは、制御/持続放出デバイスである。いくつかの他の実施形態では、デバイスは、即時様式で薬物を放出する。
【0083】
特定の実施形態では、眼科用デバイスは、コンタクトレンズ、涙点プラグ、強膜パッチ、強膜リング、結膜嚢インサート、結膜下インプラント、強膜上インプラント、脈絡膜下インプラント、及び硝子体内インプラントからなる群から選択される形態である。
【0084】
いくつかの実施形態では、デバイスは、局所眼科用薬物送達デバイス(topical ophthalmic drug delivery device、TODD)などの非侵襲的薬物送達デバイスである。
【0085】
本医薬調製物は、使用時に無害である抗菌成分、例えば、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、メチル及びプロピルパラベン、臭化ベンジルドデシニウム、ベンジルアルコール、又はフェニルエタノールなどの非毒性補助物質;塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、又はグルコネート緩衝液などの緩衝成分;及びソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチレート、エチレンジアミン四酢酸などといった他の従来の成分を含んでもよい。
【0086】
局所的眼投与のためには、本発明の新規な組成物は、単位用量が治療有効量の活性成分又は併用治療の場合にはそのなんらかの倍数を含むように製剤化される。
【0087】
以下の実施例に示すように、発明者らは、ナノモル濃度でのTTFの補充により、RPのRPE65/rd12マウスモデルに由来する網膜培養物において錐体光受容体が変性からインビトロで救済されることを実証した。
【0088】
更に、RPのRPE65/rd12マウスモデルにおいて実施したインビボ研究において、TTFを含む点眼剤による毎日の処置(1日2回)により、以下の有意な効果が得られた。
(i)網膜におけるミクログリア活性化が低減した。
(ii)網膜中のIL-1β濃度が低減した。
(iii)光受容体細胞死が防止された。
(iv)ビヒクル単独で処置した対照マウスに対してTTF処置マウスにおいて有意に高い平均最大暗順応網膜電図(electroretinogram、ERG)a波及びb波の結果によって実証されるように、処置によりインビボで網膜機能が救済された。
(v)TTF点眼剤による12週間の毎日の処置の後に、副作用は観察されなかった(動物の一般的健康、並びに網膜及び角膜構造を観察することによって示されるとおり)。
【0089】
理論に束縛されることを望むものではないが、光受容体を変性から救済することに対するTTFのプラスの効果及び網膜機能に対するそのプラスの効果は、網膜ニューロンにおける酸化ストレスを低減し、光受容体細胞死を媒介するシグナル伝達経路を阻害するTTF活性によって媒介され得る。加えて、TTFの効果はまた、網膜における免疫活性の阻害又は低減によっても少なくとも部分的に媒介され得る。
【0090】
網膜細胞の変性に関係する疾患は、網膜免疫細胞の活性化に関連することが多い。
【0091】
ほとんどの場合、眼の炎症プロセスに関与する網膜免疫細胞、特に網膜細胞及び光受容体の分解に関与するものは、ミクログリア、マクログリア、及び単核単球である。
【0092】
このため、更に別の態様では、本発明は、網膜免疫細胞活性化の阻害又は低減における使用のための、TTF、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又はそれを含む眼科用組成物を提供する。
【0093】
いくつかの実施形態では、網膜免疫細胞は、ミクログリア、マクログリア、及び単核単球から選択される。
【0094】
更に別の態様では、本発明は、眼におけるサイトカインのレベルを低減することに使用するための、TTF、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又はそれを含む眼科用組成物を提供する。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-6、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IFN-γ、GRO-α、及びI-309から選択される。いくつかの特定の実施形態では、サイトカインは、IL-6及び/又はIL-1βである。
【0095】
更に別の態様では、本発明は、光受容体死を阻害若しくは低減することに使用するため、及び網膜細胞分解を阻害、低減、若しくは防止するための、TTF、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又はそれを含む眼科用組成物を提供する。
【0096】
種々の眼の病理の顕著な特徴の1つは、主に網膜の中心領域における、ドルーゼンと呼ばれる脂質及びタンパク質の細胞外沈着物の存在である。
【0097】
したがって、更に別の態様では、本発明は、ドルーゼンの分解又は解体に使用するための、TTF、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又はそれを含む眼科用組成物を提供する。
【0098】
更なる態様では、本発明は、眼疾患又は障害を処置、防止、又は改善することに使用するための、構造式Iを有する化合物を提供し、
【0099】
【化3】

式中、R1、R2、及びR3は、各々独立して、-H、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-C(=O)H、-C(=O)-OH、-C(=O)-(C1~C4)アルキル、-C(=O)-(C1~C4)アルケニル、-C(=O)-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)ハロアルキル、-(C1~C4)アルコキシから選択され、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つは、-Hではない。
【0100】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3は、各々独立して、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、及び-(C1~C4)アルコキシから選択される。
【0101】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3は、各々独立して、-(C1~C4)アルコキシである。
【0102】
他の実施形態では、構造式II:を有する化合物が提供され、
【0103】
【化4】

式中、R及びR2は、各々独立して、-H、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-C(=O)H、-C(=O)-OH、-C(=O)-(C1~C4)アルキル、-C(=O)-(C1~C4)アルケニル、-C(=O)-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)ハロアルキル、-(C1~C4)アルコキシから選択され、R1及びR2のうちの少なくとも一方は、-Hではない。本化合物は、眼疾患又は障害を処置、防止、又は改善することに使用するためのものである。
【0104】
いくつかの実施形態では、本化合物は、本明細書に記載のとおりであり、R1及びR2は、各々独立して、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、及び-(C1~C4)アルコキシから選択される。
【0105】
他の実施形態では、R1及びR2は、各々独立して、-(C1~C4)アルコキシである。
【0106】
なお更なる実施形態では、本発明は、構造式IIIを有する化合物を提供し、
【0107】
【化5】

式中、R1及びR3は、各々独立して、-H、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-C(=O)H、-C(=O)-OH、-C(=O)-(C1~C4)アルキル、-C(=O)-(C1~C4)アルケニル、-C(=O)-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)ハロアルキル、-(C1~C4)アルコキシから選択され、R1及びR3のうちの少なくとも一方は、-Hではない。本化合物は、眼疾患又は障害を処置、防止、又は改善することに使用するためのものである。
【0108】
実施形態では、本化合物は、本明細書に記載のとおりであり、R1及びR3は、各々独立して、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、及び-(C1~C4)アルコキシから選択される。
【0109】
他の実施形態では、R1及びR3は、各々独立して、-(C1~C4)アルコキシである。
【0110】
なお更なる実施形態では、本発明は、構造式IVを有する化合物を提供し、
【0111】
【化6】

式中、R2及びR3は、各々独立して、-H、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-C(=O)H、-C(=O)-OH、-C(=O)-(C1~C4)アルキル、-C(=O)-(C1~C4)アルケニル、-C(=O)-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)ハロアルキル、-(C1~C4)アルコキシから選択され、R2及びR3のうちの少なくとも一方は、-Hではなく、本化合物は、眼疾患又は障害を処置、防止、又は改善することに使用するためのものである。
【0112】
いくつかの実施形態では、R2及びR3は、各々独立して、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、及び-(C1~C4)アルコキシから選択される。
【0113】
なお他の実施形態では、R2及びR3は、各々独立して、-(C1~C4)アルコキシである。
【0114】
なお更なる実施形態では、本発明は、
構造式Vを有する化合物を更に提供し、
【0115】
【化7】

式中、R3は、-H、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-C(=O)H、-C(=O)-OH、-C(=O)-(C1~C4)アルキル、-C(=O)-(C1~C4)アルケニル、-C(=O)-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)ハロアルキル、-(C1~C4)アルコキシから選択され、本化合物は、眼疾患又は障害を処置、防止、又は改善することに使用するためのものである。
【0116】
いくつかの実施形態では、R3は、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、及び-(C1~C4)アルコキシから選択される。
【0117】
いくつかの実施形態では、R3は、-(C1~C4)アルコキシである。
【0118】
補足的な実施形態では、本発明は、構造式VIを有する化合物を提供し、
【0119】
【化8】

式中、R2は、-H、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-C(=O)H、-C(=O)-OH、-C(=O)-(C1~C4)アルキル、-C(=O)-(C1~C4)アルケニル、-C(=O)-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)ハロアルキル、-(C1~C4)アルコキシから選択され、本化合物は、眼疾患又は障害を処置、防止、又は改善することに使用するためのものである。
【0120】
更なる補足的な実施形態では、R2は、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、及び-(C1~C4)アルコキシから選択される。
【0121】
実施形態では、R2は、-(C1~C4)アルコキシである。
【0122】
ある特定の実施形態では、本発明は、眼疾患又は障害を処置、防止、又は改善することに使用するための、以下の構造を有する化合物を規定し、
【0123】
【化9】

式中、R1は、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-C(=O)H、-C(=O)-OH、-C(=O)-(C1~C4)アルキル、-C(=O)-(C1~C4)アルケニル、-C(=O)-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、-(C1~C4)ハロアルキル、-(C1~C4)アルコキシから選択される。
【0124】
実施形態では、R1は、-(C1~C4)ヒドロキシアルキル、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルケニル、-(C1~C4)アルキニル、及び-(C1~C4)アルコキシから選択される。
【0125】
他の実施形態では、R1は、-(C1~C4)アルコキシである。
【0126】
以下の実施例は、本発明の態様を実行する際に発明者らが用いた技法を代表するものである。これらの技法は本発明の実施のための例示的な実施形態ではあるが、当業者であれば、本開示を考慮して、本発明の趣旨及び意図された範囲から逸脱することなく、多数の改変がなされ得ると認識することが理解される。
【0127】
実施例
実験手順
合成TTFの調製
【0128】
【化10】
【0129】
工程A:
氷酢酸(10mL)中の化合物1(3.00g、13.3mmol)の溶液に、BF-EtO(6mL、48.6mmol)を滴加した。TLC分析(30%酢酸エチル/石油エーテル)により反応の完了が示されるまで、反応混合物を70℃で撹拌した(およそ2時間)。次に、反応混合物を水でクエンチし、濾過して、次の工程に十分なほど純粋な、1.90g(8.40mmol、48%)の化合物2を黄色固体として得た。
【0130】
工程B:
0℃に冷却した、エタノール(800~1000mL)中の化合物2(20.0g、88.4mmol)及びアルデヒド3(17.8g、73.8mmol)の撹拌溶液に、新たに粉末化したKOH(19.3g、344mmol)を加えた。混合物をゆっくりと室温に温まらせ、96時間撹拌した。溶媒を元の体積のおよそ5分の1まで蒸発させた。氷冷水(約2mL)を加え、混合物を2N塩酸で中和した。次に、MTBE(600mL)を加え、混合物を濾過した。沈殿物を酢酸エチル/MTBE混合物(300/300mL)から再結晶させて、18.0g(40.0mmol、54%)の化合物4を橙色固体として得た。
【0131】
工程C:
0℃に冷却した、エタノール(50mL)中の化合物4(0.450g、0.999mmol)及びPIDA(0.390g、1.20mmol)の撹拌溶液に、新たに粉末化したKOH(0.170g、3.03mmol)を加えた。混合物をゆっくりと室温に温まらせ、96時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、混合物を2N塩酸で中和した。MTBE(20mL)を加え、得られた懸濁液を濾過した。得られた固体を酢酸エチル/MTBE混合物(1/1mL)から再結晶させて、0.200g(0.446mmol、45%)の化合物5を黄色固体として得た。
【0132】
工程D:
アセトニトリル(50mL)中の化合物5(5.00g、11.1mmol)の氷冷撹拌溶液に、A1CL(25.0g、187mmol)を少量ずつ加え、反応混合物を一晩室温で撹拌した。溶媒を蒸発させ、混合物を2%塩酸水溶液で中和した。生成物をジクロロメタン(100mL)で抽出した。有機相を分離させ、NaSOで乾燥させ、蒸発させて、次の工程に十分なほど純粋な3.20g(7.37mmol、60%)の化合物6を得た。
【0133】
工程E:
CHCN(150mL)中の化合物6(3.20g、7.37mmol)の溶液に、KCO(3.00g、22.2mmol)及び臭化ベンジル(1.75mL、14.7mmol)を加え、反応混合物を一晩還流させた。溶媒を蒸発させ、粗生成物をシリカゲルカラムに充填した。カラムを50%酢酸エチル/石油エーテルで溶出させて、1.20g(2.29mmol、31%)の化合物7を得た。
【0134】
工程F:
アセトン/DCM/HO混合物(15mL/20mL/10mL)中の化合物7(0.500g、0.953mmol)、NaHCO(1.00g、11.9mmol)、及びNaCO(2g)の氷冷撹拌溶液に、水(30mL)中のオキソン(7.50g、49.3mmol)の溶液をゆっくりと加え、反応混合物を一晩室温で撹拌した。次に、水(100mL)及びジクロロメタン(100mL)を加えた。有機相を分離させ、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で蒸発させて、0.500gの粗化合物8を得た。
【0135】
工程G:
前の工程で得られたCHCN(50mL)中の化合物8の溶液に、触媒量のPTSA水和物を加え、反応塊を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、粗生成物をシリカゲルカラムに充填した。カラムを40%酢酸エチル/石油エーテルで溶出させて、0.100g(0.185mmol、2工程で19%)の化合物9を得た。
【0136】
工程H:
メタノール/酢酸エチルの1:1混合物(400mL)中の化合物9(5.00g、9.26mmol)及び触媒量のPd/C(10重量%)の混合物を、水素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。触媒を濾別し、濾液を減圧下で蒸発させた。粗生成物をメタノールから再結晶させて、2.00g(5.55mmol、60%)の最終化合物を粘着性の黄色がかった固体として得た。
【0137】
眼杯培養物の調製
21日齢のRPE65/rd12マウスから眼を得て、手術用顕微鏡下で、後眼部を角膜、水晶体、虹彩及び毛様体から分離させた。眼杯を、微多孔膜(直径30、Millicell-CM、Millipore、Bedford,MA)に置き、神経節細胞層(ganglion cell layer、GCL)を上に向け、強膜を6ウェル培養プレート中のフィルターに向けた状態にした。各ウェルは、200pM L-グルタミン及び5.75mg/mlグルコース及び8nM天然TTF(nTTF)若しくは合成TTF(sTTF)又は同じ体積のビヒクル溶液(0.0115%DMSO、対照)を補充した、50%最小必須培地/HEPES(Sigma、St.Louis,MO)、25%HBSS(Invitrogen、USA)、及び25%熱不活性化ウシ胎仔血清(Invitrogen、USA)からなる1mlの培養培地を含んた。眼杯を、37℃、5%CO2のインキュベーターで18時間培養に維持した。
【0138】
組織切片の調製
眼杯を4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde、PFA)で固定し、凍結保存のためにスクロースに包埋した。視神経を通る眼の垂直経線に沿った8マイクロメートルの切片を、クリオスタットを用いて切断した。
【0139】
Iba-1抗体による染色
眼を4%PF A中で軽く固定した。角膜、虹彩、及び水晶体を除去し、神経網膜を剥がし、RPEフラットマウントをIba-1抗体(Wako chemicals、USA、PBS及び0.1%トリトン-X中1:200)とともに16時間4℃でインキュベートした後、二次Alexa Fluor(登録商標)488-AffiniPure Donkey Anti-Mouse IgG抗体(Jackson Immuno Research;USA、0.2% DAPIを含むPBS中1:400)とともに2時間室温でインキュベートした。試料を、蛍光顕微鏡(Olympus BX51)を使用して可視化し、Olympus DP71カメラを使用して記録した。
【0140】
実施例1
TTFにより、網膜錐体光受容体がインビトロでアポトーシスから保護される
本実施例は、増殖培地にTTFを補充することにより、インビトロで培養されたRPE65/rd12マウス由来の網膜の培養物における錐体光受容体細胞死が減弱することを実証する(図1)。
【0141】
上記の実験手順に記載したように、21日齢RPE65/rd12マウスの眼杯から培養物を調製し、8nM天然TTF(nTTF)若しくは合成TTF(sTTF)又は同体積のビヒクル溶液(0.0115%DMSO、対照)を補充した培地中で18時間インキュベートした。nTTFは、国際公開第2015/079390号に記載されているように産生させた。
【0142】
sTTFは、以下のプロセスを使用して合成した。
これらの眼杯からの切片を、1%BSA(Sigma)で1:100に希釈した抗体とともに16時間4℃でインキュベートした後、PBSで十分に洗浄し、488-AffiniPure Donkey Anti-Mouse IgG抗体(Jackson Immuno Research)とともに室温で1時間インキュベートすることによって、M-錐体オプシン(Milipore、USA)に対する抗体で染色した。切片をDAPI(Bar-Naor、Israel)で対比染色した。網膜1mm当たりの陽性染色された細胞数を記録した。データを平均±SEとして示す。
【0143】
実施例2
TTFは、角膜関門を通過して前眼部に入る
本実施例は、TTFが角膜関門を通過し、眼に浸透できることを実証する。TTF点眼剤(12.5mg/ml=DMSO中34.7mM)又はビヒクル(DMSO)を、ウサギの眼に10秒ごとに滴下させた(眼当たり50μLの10点眼剤-総体積0.5mL)。眼液を45分後又は3時間後に採取した。約100マイクロリットルの前眼房液を各眼から採取した。同じウサギの両眼からの眼液をプールし、角膜に浸透したTTFの量をHPLC分析により決定した。20マイクロリットルのプールした眼液を濾過し、Kinetex 5μm EVO C18カラム(2504.6mm)を備えたAgilent UHPLC Infinity II 1290装置に注入した。運転条件は以下のとおりである:10分勾配を流速1mL/分で送達した(0.5%酢酸(蒸留水中)からなる二元移動相で5分、DDW中のアセトニトリルで5分)。非処理ウサギ又はDMSOのみを含む点眼剤を与えたウサギから取得した眼液では、測定に干渉する350nmでのバックグラウンドがなかったことを理由に、検出を350nmの波長で行った。これらの条件下で、TTFの保持時間は5.086分である。
【0144】
図2に示されるように、TTFの最大濃度は、点眼剤の滴下後45分に示された。
【0145】
実施例3
RPE65/rd12 RPマウスモデルにおける網膜変性の間のミクログリア活性化
本実施例は、レチノイドサイクル欠損に起因する網膜色素変性症(RP)のモデルであるRPE65/rd12マウスにおけるミクログリア細胞活性化と光受容体変性との間の関連性を示す。RPE65/rd12マウス及び野生型C57BLマウスの網膜フラットマウントを上記のように調製し、ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色した。図3に見られるように、C57BLマウスの網膜とは対照的に、RPE65/rd12マウスの網膜では、網膜下へのミクログリア細胞の活性化及び浸潤が見られる。
【0146】
実施例4
TTF点眼剤処置により、RPE65/rd12 RPマウスモデルにおけるミクログリア細胞の活性化及び遊走が防止される
3週齢RPE65/rd12マウスを、DMSO中12.5mg/ml(34.7mM)のTTF(10μl/点眼剤)又はビヒクル単独(DMSO)を含む点眼剤を用いて、1日2回(6日/週)3週間処置した。各処置は、1回の点眼剤からなった。処置及び対照RPE65/rd12マウスの網膜フラットマウントを上記のように調製し、ミクログリア特異的マーカーIba-1について染色した。図4に示すように、TTF処置(n=10マウス)は、プラセボ処置と比較して、ミクログリア活性化及び網膜下への遊走を有意に低減させた(n=9マウス、平均±SD:42±14ミクログリア細胞/網膜対143±28ミクログリア細胞/網膜、p=0.0063)。
【0147】
実施例5
TTF点眼剤処置により、RPE65/rd12 RPマウスモデルの網膜におけるIL-1β濃度が低減する
3週齢RPE65/rd12マウスを、DMSO中12.5mg/ml(34.7mM)のTTF(10μl/点眼剤)又はビヒクル単独(DMSO)を含む点眼剤を用いて、1日2回(6日/週)3週間処置した。
【0148】
同じマウスからの網膜の各対を、同じ試験管中、10mM TRIS pH7.5、100mM NaCl、1mM EDTA、及び0.01% TRITON X-100を含む120μl溶解緩衝液中で均質化した。各試料中のタンパク質濃度を、市販のキットであるPierce(商標)BCA Protein Assay Kit(23227)、Thermo Fisher Scientific、IL,USA.を使用して二連で決定した。市販のサンドイッチELISAキットであるMouse IL-1 beta/IL-1F2 DuoSet ELISA(DY401)R&D Systems,Inc.、MN,USAを使用して、IL-1βレベルを試験した。
【0149】
図5に示すように、TTF処置により、網膜におけるIL-1β濃度が低減し、これは、炎症のレベルがより低いことを示唆する。
【0150】
実施例6
TTF点眼剤処置により、網膜光受容体がRPE65/rd12 RPマウスモデルにおけるアポトーシスから保護される
3週齢RPE65/rd12マウスを、DMSO中12.5mg/ml(34.7mM)のTTF(10μl/点眼剤)又はビヒクル単独(DMSO)を含む点眼剤を用いて、1日2回(6日/週)3週間処置した。
【0151】
CO2を使用してマウスを安楽死させ、眼を得て、10%ホルマリン中で固定した。凍結切片を、製造業者の指示に従ってTUNEL-TMRキットで染色した。外核層におけるTUNEL陽性核の数及び網膜切片の長さを計数した。結果を、網膜1mm当たりのTUNEL陽性核の数として図6に示す。
【0152】
図6に示すように、TTF処置により、光受容体がアポトーシスから保護された。このため、光受容体層におけるTUNEL陽性細胞の数は、プラセボで処置した対照マウス(n=6)と比較して、TTF点眼剤を受けたマウス(n=7)において有意に低かった(平均±SE:網膜1mm当たり2±0.4アポトーシス細胞対6±0.8アポトーシス細胞/mm、p=0.0013)。
【0153】
実施例7
TTF点眼剤処置により、RPE65/rd12 RPマウスモデルにおいて網膜機能が保存される
3週齢RPE65/rd12マウスを、12.5mg/ml(34.7mM)のTTF(n=6)又はビヒクル単独(DMSO、n=6)を含む点眼剤(10μl/点眼剤)を用いて、1日2回(6日/週)12週間処置した。
【0154】
暗順応ERGのために、マウスを検査前に少なくとも12時間完全暗所に置いた。動物を、75mg/kgケタミン及び10mg/kgキシラジンを含む腹腔内注射で麻酔した。局所1%トロピカミド及び10%フェニレフリンHClで瞳孔を散大させた。各角膜上に位置付けた金ワイヤループ電極を使用して、両眼から同時にERGを記録した。塩化銀電極を、参照として側眼角付近に皮下挿入した。追加の接地電極を尾に配置した。暗順応(暗所視)及び明順応(明所視)条件下で試験を行った。強度を増加させた5つの光刺激を使用した(0.0023、0.25、2.4、4.4、23.5cd-s/m2)。暗順応ERGについては、刺激光強度に応じて1~30秒の刺激間隔で応答を平均した。
【0155】
図7に示されるように、TTF処置により、プラセボ点眼剤を受けたマウスと比較して、TTF点眼剤処置を受けたマウスにおいて記録された有意に高い最大暗順応b波振幅及びa波振幅を有する光受容体機能が保存され、TTF点眼剤処置後の網膜光受容体及び双極細胞のより良好な機能を示した。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】