(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】車両のフロントガラス用の特有の破壊挙動を備えたガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 3/091 20060101AFI20231213BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C03C3/091
C03C27/12 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535683
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 US2021061966
(87)【国際公開番号】W WO2022125422
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】クリアリー,トーマス マイケル
(72)【発明者】
【氏名】グロス,ティモシー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジンシー
【テーマコード(参考)】
4G061
4G062
【Fターム(参考)】
4G061AA04
4G061BA02
4G061CB16
4G061CB19
4G061CB20
4G061CD18
4G062AA01
4G062BB05
4G062CC10
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4G062HH15
4G062HH17
4G062JJ01
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4G062JJ10
4G062KK01
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4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062NN29
4G062NN33
(57)【要約】
特に特有の破壊挙動に起因して、フロントガラス及び他の用途に有用となりうる、ホウケイ酸ガラス組成物の実施形態が本明細書に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウケイ酸ガラス組成物であって、
少なくとも75モル%のSiO
2;
少なくとも10モル%のB
2O
3;及び
SiO
2、B
2O
3、及びAl
2O
3の合計が少なくとも90モル%になるような量のAl
2O
3
を含み、ここで、
前記ホウケイ酸ガラス組成物が500kP超の液相粘度を含み;かつ
前記ホウケイ酸ガラス組成物が、1725℃以下の前記ホウケイ酸ガラス組成物の粘度が200Pとなる温度を含む、
ホウケイ酸ガラス組成物。
【請求項2】
約2モル%から約8モル%のNa
2Oをさらに含む、請求項1に記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【請求項3】
約1モル%から約4モル%のK
2Oをさらに含む、請求項1又は2に記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【請求項4】
Na
2OとK
2Oの総量が少なくとも4モル%である、請求項1又は2に記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【請求項5】
MgO又はCaOの少なくとも一方をさらに含み、MgOとCaOの総量が最大で5モル%である、請求項4に記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【請求項6】
Na
2O、K
2O、MgO、及びCaOの総量が少なくとも7モル%である、請求項5に記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【請求項7】
0.03モル%から0.50モル%のFe
2O
3をさらに含む、請求項1又は2に記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【請求項8】
2.4g/cm
3未満の密度を含む、請求項1又は2に記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【請求項9】
約500℃から約560℃の歪み点;及び
約550℃から約590℃のアニール点
を含む、請求項1又は2に記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【請求項10】
ガラス積層体であって、
請求項1から9のいずれか一項に記載のホウケイ酸ガラス組成物、第1の主面、及び前記第1の主面とは反対側の第2の主面を含む、第1のガラスプライ;
第3の主面と前記第3の主面とは反対側の第4の主面とを含む第2のガラスプライ;並びに
前記第1のガラスプライの前記第2の主面を前記第2のガラスプライの前記第3の主面に結合する中間層であって、前記第2のガラスプライが前記ホウケイ酸ガラス組成物とは異なる第2のガラス組成物を含み、前記第2のガラス組成物が、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物、アルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス組成物、アルカリアルミノリンケイ酸塩ガラス組成物、アルカリアルミノホウケイ酸ガラス組成物、及びそれらの組合せからなる群より選択される、中間層
を含む、ガラス積層体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、各々がその全体においてここに参照することによって本明細書に援用される、2020年12月10日出願の米国仮特許出願第63/123,863号、2021年5月3日出願の米国仮特許出願第63/183,292号、2021年5月3日出願の米国仮特許出願第63/183,271号、及び2021年6月30日出願の米国特許出願第17/363,266号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ガラス組成物及びそれから製造されるガラス物品に関し、より詳細には、比較的厚い厚さで溶融成形することができるホウケイ酸ガラス組成物及びそれから製造されるガラス物品に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラスは、その光学的透明性及び耐久性に起因して、窓に用いられる。自動車用及び建築用の窓は、単一のガラスプライ、又はポリマー材料の中間層が間に配置された2つのガラスプライを含む積層体を含みうる。特に自動車用途では、燃費及び/又は衝撃性能を向上させるために積層体を使用する傾向がある。ある特定の積層体設計では、より厚い外側ガラスプライと薄い内側ガラスプライを利用する場合がある。例えば、より厚いガラスプライはソーダ石灰ガラスであってもよく、これは熱衝撃を受けやすく、例えば道路から投げ込まれた石又は他の破片による衝撃によって亀裂が発生しやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、積層体のより厚い外側ガラスプライとして使用するための改良されたガラスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様によれば、本開示の実施形態はホウケイ酸ガラス組成物に関する。特に指定しない限り、本明細書に開示されるガラス組成物は、酸化物基準で分析した、モルパーセント(モル%)で記載される。1つ以上の実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、少なくとも74モル%のSiO2、少なくとも10モル%のB2O3、並びに、SiO2、B2O3、及びAl2O3の合計が少なくとも90モル%になるような量のAl2O3を含む。1つ以上の実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は500kPより大きい液相粘度を有する。1つ以上の実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、1725℃以下のホウケイ酸ガラス組成物の粘度が200Pになる温度を有する。
【0006】
別の態様によれば、本開示の実施形態は、ガラスプライに関する。ガラスプライは、第1の主面と、該第1の主面とは反対側の第2の主面とを有する。ガラスプライは、本明細書に記載されるホウケイ酸ガラス組成物の1つ以上の実施形態から作られる。
【0007】
さらに別の態様によれば、本開示の実施形態は、積層体に関する。積層体は、本明細書に記載されるガラスプライの1つ以上の実施形態による第1のガラスプライを含む。積層体はまた、第2のガラスプライ、及び第1のガラスプライを第2のガラスプライに結合する中間層も含む。
【0008】
さらに別の態様によれば、本開示の実施形態は、自動車用ガラスに関する。自動車用ガラスは、前述の積層体による積層体から製造される。
【0009】
さらなる態様によれば、本開示の実施形態は、車両に関する。車両は、車両の内部を画成する本体と、少なくとも1つの開口部と、該少なくとも1つの開口部に配置された上述の自動車用ガラスとを含む。車両において、第2のガラスプライは車両の内部に面して配置され、第1のガラスプライは車両の外部に面する。1つ以上の実施形態では、第1のガラスプライは車両の内部に面して配置され、第2のガラスプライは車両の外部に面する。
【0010】
さらなる態様によれば、本開示の実施形態は、ガラスプライを形成する方法に関する。ガラスプライは、第1の主面と第2の主面とを有する。該方法において、アイソパイプ内のトラフは、500kPより大きい液相粘度と、1725℃未満のガラス組成物の粘度が200Pになる温度とを有するホウケイ酸ガラス組成物の少なくとも2つの流れによって溢れる。1つ以上の実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、少なくとも74モル%のSiO2と、少なくとも10モル%のB2O3とを含む。さらには、1つ以上の実施形態では、組成物は、少なくとも90モル%のSiO2、B2O3、及びAl2O3の合計量を含む。該方法の1つ以上の実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物の少なくとも2つの流れがアイソパイプのルートで融着して、第1の主面と第2の主面との間に少なくとも2mmの厚さを有するガラスプライを形成する。
【0011】
さらに別の態様によれば、本開示の実施形態は、ガラスプライに関する。ガラスプライは、第1の主面と、該第1の主面とは反対側の第2の主面とを有する。ガラスプライは、ホウケイ酸ガラス組成物でできている。ガラスプライがビッカースの先端による準静的な2kgf(約19.6N)の押込荷重に供される場合、ガラスプライがリング状亀裂と複数の放射状亀裂とを示し、複数の放射状亀裂の各放射状亀裂がリング状亀裂によって境界付けられる。
【0012】
さらに別の態様によれば、本開示の実施形態は、ガラス積層体に関する。ガラス積層体は、第1のガラスプライ、第2のガラスプライ、及び中間層を含む。第1のガラスプライは、第1の主面と、該第1の主面とは反対側の第2の主面とを有する。第1のガラスプライは、ホウケイ酸ガラス組成物でできている。第2のガラスプライは、第3の主面と、該第3の主面とは反対側の第4の主面とを有する。中間層は、第1のガラスプライの第2の主面を第2のガラスプライの第3の主面に結合する。ホウケイ酸ガラス組成物は、少なくとも74モル%のSiO2、少なくとも10モル%のB2O3、及びSiO2、B2O3、及びAl2O3の合計が少なくとも90モル%になるような量のAl2O3を含む。
【0013】
さらなる実施形態によれば、本開示の実施形態は、センサとガラス積層体とを含むシステムに関する。ガラス積層体は、第1の主面と、該第1の主面とは反対側の第2の主面とを有する第1のガラスプライを含む。第1のガラスプライは、ホウケイ酸ガラス組成物でできている。ガラス積層体は、第3の主面と、該第3の主面とは反対側の第4の主面とを有する、第2のガラスプライを含む。中間層は、第1のガラスプライの第2の主面を第2のガラスプライの第3の主面に結合する。ホウケイ酸ガラス組成物は、少なくとも74モル%のSiO2、少なくとも10モル%のB2O3、及びSiO2、B2O3、及びAl2O3の合計が少なくとも90モル%になるような量のAl2O3を含む。センサは、ガラス積層体を介して信号を受信、送信、又は受信と送信の両方を行うように構成されており、信号は、400nmから750nmの範囲、又は1500nm以上の範囲のピーク波長を有する。
【0014】
別の態様によれば、本開示の実施形態は、ガラス積層体に関する。ガラス積層体は、第1の主面と、該第1の主面とは反対側の第2の主面とを有する、第1のガラスプライを含む。第1のガラスプライは、溶融成形されたホウケイ酸ガラス組成物である。ガラス積層体はまた、第3の主面と、該第3の主面とは反対側の第4の主面とを有する、第2のガラスプライも含む。さらには、ガラス積層体は、第1のガラスプライの第2の主面を第2のガラスプライの第3の主面に結合する中間層を含む。ガラス積層体を通る300~380nmの範囲の波長を有する紫外線の透過率は、75%以下である。ガラス積層体を通る可視スペクトルの光の透過率は73%以上であり、ガラス積層体を通る全日射透過率は61%以下である。
【0015】
別の態様によれば、本開示の実施形態は、約72モル%から約80モル%の範囲の量のSiO2、約2.5モル%から約5モル%の範囲の量のAl2O3、及び約11.5モル%から約14.5モル%の範囲の量のB2O3から構成されるガラス組成物に関する。ガラス組成物は500kPより大きい液相粘度を有し、かつガラス組成物は、1725℃以下のホウケイ酸ガラス組成物の粘度が200Pになる温度を有する。
【0016】
別の態様によれば、本開示の実施形態は、74モル%から80モル%のSiO2、2.5モル%から5モル%のAl2O3、11.5モル%から14.5モル%のB2O3、4.5モル%から8モル%のNa2O、0.5モル%から3モル%のK2O、0.5モル%から2.5モル%のMgO、及び0モル%から4モル%のCaOから構成されるガラス組成物に関する。
【0017】
追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部には、その説明から当業者に容易に明らかとなり、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含めた本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されよう。
【0018】
前述の概要及び後述する詳細な説明はいずれも、単なる例示であり、特許請求の範囲の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することが意図されていることが理解されるべきである。
【0019】
添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を例証しており、その説明とともに、さまざまな実施形態の原理及び動作を説明する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】1つ以上の実施形態によるガラス物品又は積層体を含む車両の図
【
図2】1つ以上の実施形態によるガラス物品の側面図
【
図3】1つ以上の実施形態によるガラス物品を含む積層体の側面図
【
図4】1つ以上の実施形態によるガラス物品を含む積層体の側面図
【
図5A】開示された溶融成形ホウケイ酸ガラス組成物についての押し込み試験から生じた亀裂の顕微鏡写真、並びにそれに関連するグラフ
【
図5B】比較のソーダ石灰ガラス組成物についての押し込み試験から生じた亀裂の顕微鏡写真、並びにそれに関連するグラフ
【
図5C】比較のフロート成形されたホウケイ酸ガラス組成物についての押し込み試験から生じた亀裂の顕微鏡写真、並びにそれに関連するグラフ
【
図6A】開示された溶融成形ホウケイ酸ガラス組成物についての熱衝撃試験の結果
【
図6B】比較のソーダ石灰ガラス組成物についての熱衝撃試験の結果
【
図7】例示的な実施形態による、ホウケイ酸ガラス組成物のガラスプライを溶融形成するための溶融形成装置を示す図
【
図8】例示的な実施形態による、さまざまなホウケイ酸ガラス組成物についての日射透過率のグラフ
【
図9】例示的な実施形態による、ホウケイ酸ガラス組成物でできた少なくとも1つのガラスプライを有するガラス積層体を通して信号を送受信するように構成されたセンサを含むシステムを示す図
【
図10】ガラス中の鉄含有量、例示的な実施形態による、ガラス中の鉄含有量の関数としての可視光線、全太陽光線、及び紫外線の透過率のプロットを示す図
【
図11】例示的な実施形態による、ガラス中の鉄含有量の関数としての可視光線、全太陽光線、及び紫外線の透過率のプロットを示す図
【
図12】例示的な実施形態による、ガラス組成物の全日射透過率に対する可視光線透過率のプロットを示す図
【
図13】例示的な実施形態による、ガラス組成物の全日射透過率に対する可視光線透過率のプロットを示す図
【
図14】例示的な実施形態による、ガラス物品の断面のデジタル画像
【
図15】例示的な実施形態による、2つの例示的な組成物についての透過測定値のプロット
【
図16】例示的な実施形態による、本明細書に記載される例示的な組成物を使用して構築された試料の熱衝撃前後の押し込み後の測定された保持強度のプロット
【
図17A】例示的な実施形態による、ヌープスクラッチ試験によるスクラッチを有する本明細書に記載される例示的な組成物に従って構築された試料の画像
【
図17B】例示的な実施形態による、ヌープスクラッチ試験によるスクラッチを有する本明細書に記載される対照例の組成物に従って構築された試料の画像
【
図17C】例示的な実施形態による、ヌープスクラッチ試験によるスクラッチを有する本明細書に記載される対照例の組成物に従って構築された試料の画像
【発明を実施するための形態】
【0021】
これより、添付の図面に例が示されている、さまざまな実施形態を詳細に参照する。本開示の実施形態は、少なくとも2mm、特に、少なくとも3mm、少なくとも3.3mm、又は少なくとも3.8mmの厚さを有するガラスプライへと溶融成形することができる、又は溶融成形された、ホウケイ酸ガラス組成物に関する。実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、少なくとも74モル%のSiO2、少なくとも10モル%のB2O3、及び少なくとも幾らかのAl2O3を含み、実施形態では、SiO2、B2O3、及びAl2O3の総量は少なくとも90モル%である。本明細書に記載されるホウケイ酸ガラス組成物は、少なくとも500キロポアズ(kP)の液相粘度と、1725℃以下の粘度が200ポアズ(P)になる温度(T200P)を示す。
【0022】
さらには、本明細書に開示されるホウケイ酸ガラス組成物の実施形態は、自動車用ガラス用途のための積層体での使用に特に適している。1つ以上の実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、このような積層体の外側プライとして用いられる。ソーダ石灰ガラスプライを含む従来の自動車用ガラスと比較して、本開示のホウケイ酸ガラス組成物で作られたガラスプライは、変形中に緻密化し、ガラスプライの強度を損なう傾向のある放射状又は中央の亀裂の形成(開始)又は広がり(伝播)を防ぐのに役立つ。さらには、本明細書に開示されるホウケイ酸ガラス組成物は、ソーダ石灰ガラスよりも熱衝撃に対する耐性が高く、亀裂の開始及び伝播を防ぐのにも役立つ。これらの性能上の利点は、ホウケイ酸ガラス組成物がガラス積層体の内側ガラスプライ又は外側ガラスプライとして用いられる場合に有用でありうる。場合によっては、これらの性能上の利点は、ホウケイ酸ガラス組成物が積層体の外側ガラスプライとして用いられる場合に特に有用である。本開示のホウケイ酸ガラス組成物及びそれから形成された物品のこれら及び他の態様及び利点については、以下でさらに詳しく説明する。本明細書で論じられる実施形態は、例示として提示されたものであり、限定するものではない。
【0023】
ホウケイ酸ガラス組成物に対する実施形態は、
図1に示される車両100に関連して本明細書で説明される。車両100は、内部を画成する本体110と、内部と連通する少なくとも1つの開口部120とを含む。車両100はさらに、開口部120に配置された、自動車用ガラス130、すなわち窓を含む。自動車用ガラスは、本明細書に記載されるホウケイ酸ガラス組成物の少なくとも1つのプライを含む。自動車用ガラス130は、車両100の側灯、フロントガラス、リアウインドウ、窓、及びサンルーフのうちの少なくとも1つを形成しうる。幾つかの実施形態では、自動車用ガラス130は、車両100の内部内に内部仕切り(図示せず)を形成することができ、あるいは、車両の外面に配置されて、エンジンブロックカバー、ヘッドライトカバー、テールライトカバー、ドアパネルカバー、又はピラーカバーを形成することができる。本明細書で用いられる場合、車両は、自動車(その一例が
図1に示されている)、鉄道車両、機関車、ボート、船、及び飛行機、ヘリコプター、ドローン、宇宙船などを含む。さらには、本開示は車両の観点から構成されているが、ホウケイ酸ガラス組成物は、建築用ガラス又は防弾ガラス用途などの他の状況で使用することもできる。
【0024】
図2に示されるように、実施形態では、自動車用ガラス130は、本明細書に記載されるホウケイ酸ガラス組成物の実施形態を含む、それからなる、又は実質的にそれからなる少なくとも1つのガラスプライ200を含む。1つ以上の実施形態では、自動車用ガラス130は、単一のガラスプライ200のみを含む(すなわち、単一のガラスプライは業界においてモノリスと呼ばれることがある)。
図2に見られるように、ガラスプライ200は、第1の主面202と第2の主面204とを有する。第1の主面202は第2の主面204の反対側にある。非主面206は、ガラスプライ200の周囲に延在し、第1の主面202と第2の主面204とを接続する
第1の厚さ210が第1の主面202と第2の主面204との間に画成される。実施形態では、第1の厚さ210は、少なくとも0.5mm、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも3.3mm、又は少なくとも3.8mmである。1つ以上の実施形態では、第1の厚さは、約0.1mmから約6mm、0.2mmから約6mm、0.3mmから約6mm、0.4mmから約6mm、0.5mmから約6mm、0.6mmから約6mm、0.7mmから約6mm、0.8mmから約6mm、0.9mmから約6mm、1mmから約6mm、1.1mmから約6mm、1.2mmから約6mm、1.3mmから約6mm、1.4mmから約6mm、1.5mmから約6mm、1.6mmから約6mm、約1.8mmから約6mm、約2mmから約6mm、約2.2mmから約6mm、約2.4mmから約6mm、約2.6mmから約6mm、約2.8mmから約6mm、約3mmから約6mm、約3.1mmから約6mm、約3.2mmから約6mm、約3.3mmから約6mm、約3.4mmから約6mm、約3.5mmから約6mm、約3.6mmから約6mm、約3.7mmから約6mm、約3.8mmから約6mm、約3.9mmから約6mm、約4mmから約6mm、約4.2mmから約6mm、約4.4mmから約6mm、約4.5mmから約6mm、約4.6mmから約6mm、約4.8mmから約6mm、約5mmから約6mm、約5.2mmから約6mm、約5.4mmから約6mm、約5.5mmから約6mm、約5.6mmから約6mm、約5.8mmから約6mm、約1.6mmから約5.8mm、約1.6mmから約5.6mm、約1.6mmから約5.5mm、約1.6mmから約5.4mm、約1.6mmから約5.2mm、約1.6mmから約5mm、約1.6mmから約4.8mm、約1.6mmから約4.6mm、約1.6mmから約4.4mm、約1.6mmから約4.2mm、約1.6mmから約4mm、約1.6mmから約3.9mm、約1.6mmから約3.8mm、約1.6mmから約3.7mm、約1.6mmから約3.6mm、約1.6mmから約3.5mm、約1.6mmから約3.4mm、約1.6mmから約3.3mm、約1.6mmから約3.2mm、約1.6mmから約3.1mm、約1.6mmから約3mm、約1.6mmから約2.8mm、約1.6mmから約2.6mm、約1.6mmから約2.4mm、約1.6mmから約2.2mm、約1.6mmから約2mm、約1.6mmから約1.8mm、約3mmから約5mm、又は約3mmから約4mmの範囲にある。他の実施形態では、ガラスプライは、2mmより薄くてもよく、又は6mmより厚くてもよい。
【0025】
幾つかの実施形態では、ガラスプライは、第1の主面が管の外部にあり、第2の主面が管の内面にある場合など、丸みを帯びた形状又は管状などの曲率を有しうる。幾つかの実施形態では、ガラスプライの周囲は概して直線的であり、他の実施形態では周囲は複雑である。第1の主面は、開口、スロット、穴、隆起、窪み、又は他の幾何学形状を有しうる。
【0026】
以下にさらに詳しく論じるように、1つ以上の実施形態では、ガラスプライ200は、少なくとも500kPの液相粘度と、1725℃以下のT200Pとを有する、溶融成形されたホウケイ酸ガラス組成物である。
【0027】
図3は、自動車用ガラス130が第1のガラスプライ310として
図2のガラスプライ200を含む積層構造300である、自動車用ガラス130の実施形態を示している。上で参照したように、ガラスプライ200は、本明細書に記載されるホウケイ酸ガラス組成物の実施形態を含むか、それからなるか、又は実質的にそれからなりうる。
図3に示される実施形態では、第1のガラスプライ310は中間層330によって第2のガラスプライ320に接合される。特に、第2のガラスプライ320は、第3の主面332と第4の主面334とを有する。第3の主面332は第4の主面334の反対側にある。非主面336は、第2のガラスプライ320の周囲に延在し、第3の主面332と第4の主面334とを接続する。
【0028】
第2の厚さ340が第3の主面332と第4の主面334との間に画成される。実施形態では、第2の厚さ340は、第1のガラスプライ310の第1の厚さ210より薄い。実施形態では、第2のガラス厚さは2mm以下である。実施形態では、ガラスの総厚(すなわち、第1の厚さ210+第2の厚さ340)は、8mm以下、7mm以下、6.5mm以下、6mm以下、5.5mm以下、又は5mm以下である。実施形態では、ガラスの総厚の下限は約2mmである。
【0029】
実施形態では、第2のガラスプライ320は、第1のガラスプライのホウケイ酸ガラス組成物310とは異なるガラス組成物を含む。実施形態では、第2のガラス組成物は、ソーダ石灰ケイ酸塩組成物、アルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス組成物、アルカリアルミノリンケイ酸塩ガラス組成物、又はアルカリアルミノホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0030】
さらには、実施形態では、第1のガラスプライ310及び/又は第2のガラスプライ320を強化することができる。例えば、第1のガラスプライ310及び/又は第2のガラスプライ320は、熱的、化学的、及び/又は機械的に強化されうる。特に、実施形態では、第1のガラスプライ310及び/又は第2のガラスプライ320は、イオン交換処理によって化学強化されている。1つ以上の実施形態では、第1のガラスプライ310及び/又は第2のガラスプライ320は、プライの部分間の熱膨張係数の不一致を利用して、圧縮応力領域と引張応力を示す中央領域を作り出すことによって機械的に強化される。幾つかの実施形態では、第1のガラスプライ310及び/又は第2のガラスプライ320は、ガラス転移点を超える温度へとガラスプライを加熱し、次いで急冷することによって、熱的に強化することができる。幾つかの実施形態では、化学的強化、機械的強化、及び熱的強化のさまざまな組合せを使用して、第2のガラスプライ320を強化することができる。1つ以上の実施形態では、第2のガラスプライ320は強化されているが、第1のガラスプライ310は強化されておらず(しかし、任意選択的にアニールされてもよい)、約3MPa未満、又は約2.5MPa以下、2MPa以下、1.5MPa以下、1MPa以下、又は約0.5MPa以下の表面圧縮応力を示す。
【0031】
1つ以上の実施形態では、中間層330は、第1のガラスプライ310の第2の主面204を第2のガラスプライ320の第3の主面332に結合する。実施形態では、中間層330は、ポリマー、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、遮音PVB(APVB)、アイオノマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)、及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのうちの少なくとも1つなどを含む。中間層の厚さは、約0.5mmから約2.5mm、特に約0.7mmから約1.5mmの範囲でありうる。他の実施形態では、厚さは、0.5mm未満又は2.5mm超でありうる。さらには、実施形態では、中間層330は、積層構造300にさまざまな機能を提供する、複数のポリマー層又は膜を含みうる。例えば、中間層330は、とりわけ、ディスプレイ機能、日射絶縁、消音、アンテナ、防眩処理、又は反射防止処理のうちの少なくとも1つを組み込むことができる。特定の実施形態では、中間層330は、紫外線(UV)吸収、赤外線(IR)吸収、IR反射、音響制御/減衰、接着促進、及び色合いを提供するように改質される。中間層330は、染料、顔料、ドーパントなどの適切な添加剤によって改質されて、所望の特性を与えることができる。
【0032】
1つ以上の実施形態では、第1のガラスプライ310又は第2のガラスプライ320は、中間層330の機能性膜又は装飾膜に加えて、又はその代わりに、機能性コーティング又は装飾コーティングを備えることができる。実施形態では、コーティングは、赤外線反射(IRR)コーティング、フリット、反射防止コーティング、又は顔料コーティングのうちの少なくとも1つである。IRRの例となる実施形態では、第1のガラスプライ310の第2の主面204又は第2のガラスプライ320の第3の主面332は、赤外線反射フィルム、及び任意選択的に透明な誘電体膜の1つ以上の層で、コーティングされる。実施形態では、赤外線反射フィルムは、コーティングされたプライ310、320を通る熱の伝達を低減する、銀、金、又は銅などの導電性金属を含む。実施形態では、任意選択的な誘電体膜を使用して、赤外線反射フィルムの反射を防止し、色及び耐久性などのコーティングの他の性質及び特性を制御することができる。実施形態では、誘電体膜は、とりわけ、亜鉛、スズ、インジウム、ビスマス、及びチタンのうちの1つ以上の酸化物を含む。例となる実施形態では、IRRコーティングは、透明な誘電体膜の2つの層の間にそれぞれ挟まれた、1つ又は2つの銀の層を含む。実施形態では、IRRコーティングは、例えば、物理蒸着又は化学蒸着を使用して、あるいは積層によって施される。
【0033】
実施形態では、第1のガラスプライ310及び第2のガラスプライ320の一方又は両方がフリットを含む。実施形態では、フリットは、例えば、第1のガラスプライ310の第2の主面204、第2のガラスプライ320の第3の主面332、及び/又は第2のガラスプライ320の第4の主面334に施される。実施形態では、フリットは、中間層330、又は車両本体110の開口部120を画成する接着面にガラス130を接合する接着剤などの接着剤に対して、強化された接着面を提供する。さらに、実施形態では、フリットは、ガラス130の装飾的な境界を提供する。さらには、実施形態では、フリットは、上記のIRRコーティングに加えて使用することができる。実施形態では、フリットはエナメルフリットである。他の実施形態では、フリットは、イオン交換可能であるように設計される。すなわち、イオン交換処理を受ける前に、イオン交換可能なガラスにフリットを施すことができる。このようなフリットは、ガラスと処理浴との間でイオンの交換を可能にするように構成される。実施形態では、フリットは、とりわけ、Bi-Si-Bアルカリ系、ZnベースのBi系、Bi-Zn系、Bi系、Biを含まないか又はBiが少ないSi-Zn-B-Ti系、Si-Bi-Zn-B-アルカリ系、及び/又はSi-Bi-Ti-B-Zn-アルカリ系である。着色剤を含む、イオン交換可能なフリットの一例は、45.11モル%のBi2O3、20.61モル%のSiO2、13.56モル%のCr2O3、5.11モル%のCuO、3.48モル%のMnO、3.07モル%のZnO、2.35モル%のB2O3、1.68モル%のTiO2、1.60モル%のNa2O、1.50モル%のLi2O、0.91モル%のK2O、0.51モル%のAl2O3、0.15モル%のP2O5、0.079モル%のSO3、0.076モル%のBaO、0.062モル%のZrO2、0.060モル%のFe2O3、0.044モル%のMoO3、0.048モル%のCaO、0018モル%のNb2O5、0.006モル%のCl、及び0.012モル%のSrOを含む。イオン交換可能なフリットの他の例は、米国特許第9,346,708号明細書(2012年5月4日出願の特許出願第13/464,493号明細書)及び米国特許出願公開第2016/0002104号明細書(2015年8月19日出願の特許出願第14/768,832号明細書)に開示されており、その両方とも、その全体がここに参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0034】
実施形態では、第2のガラスプライ320に有機インクなどのインクからなる着色剤コーティングを施すことができる。このような着色剤コーティングに特に適した実施形態では、着色剤コーティングは、第2のガラスプライ320の第3の主面332又は第2のガラスプライ320の第4の主面334に施され、第2のガラスプライ320は第1のガラスプライ310に対して冷間成形される。有利には、このような着色剤コーティングは、第2のガラスプライ320が平面構成にある間に第2のガラスプライ320に施すことができ、次いで、着色剤コーティング、例えば有機インクコーティングを破壊することなく、第2のガラスプライ320を湾曲した構成へと冷間成形することができる。一実施形態では、着色剤コーティングは、少なくとも1つの顔料、少なくとも1つの無機充填剤、及びアルコキシシラン官能化イソシアヌレート又はアルコキシシラン官能化ビウレットを含む結合剤を含む。このような着色剤コーティングの実施例は、ここに参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、欧州特許第2617690号明細書に記載されている。他の適切な着色剤コーティング及び該着色剤コーティングを施す方法は、米国特許出願公開第2020/0171800号明細書(2019年11月12日出願の特許出願第16/613,010号明細書)及び米国特許第9,724,727号明細書(2015年2月10日出願の特許出願第14/618,398号明細書)に開示されており、その両方とも、その全体がここに参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0035】
実施形態では、コーティングは反射防止コーティングである。特定の実施形態では、反射防止コーティングは第2のガラスプライ320の第4の主面334に施される。実施形態では、反射防止コーティングは、低屈折率材料と高屈折率材料、又は低屈折率材料、中屈折率材料、及び高屈折率材料の複数の層を含む。例えば、実施形態では、反射防止コーティングは、シリカ(低屈折率)とニオビア(高屈折率)など、低屈折率材料と高屈折率材料が交互に重なった2から12の層を含む。別の例となる実施形態では、反射防止コーティングは、シリカ(低屈折率)、アルミナ(中屈折率)、及びニオビア(高屈折率)など、低屈折率材料、中屈折率材料、及び高屈折率材料を繰り返す3から12の層を含む。さらに他の実施形態では、スタック内の低屈折率材料は、フッ化マグネシウム又は多孔質シリカなどの超低屈折率材料でありうる。概して、スタック内により多くの層を有する反射防止コーティングは、スタック内により少ない層を有する反射防止コーティングよりも高い入射角で、より優れた性能を発揮するであろう。例えば、例えば60°超の入射角では、4つの層を有する反射防止コーティングスタックは、2つの層を有する反射防止コーティングスタックよりも優れた性能(反射が少ない)を発揮するであろう。さらには、実施形態では、超低屈折率材料を有する反射防止コーティングスタックは、低屈折率材料を有する反射防止コーティングスタックよりも優れた性能(反射が少ない)を発揮するであろう。当技術分野で知られている他の反射防止コーティングも積層体300への施用に適している可能性がある。
【0036】
実施形態では、ガラスプライ200又は積層体300は、少なくとも第1の軸に沿って300mmから約10mの範囲にある曲率半径を含む、少なくとも1つの曲率を示す。実施形態では、ガラスプライ200又は積層体300は、第1の軸に対して横方向、特に第1の軸に垂直な第2の軸に沿って300mmから約10mの範囲にある曲率半径を含む、少なくとも1つの曲率を示す。他の実施形態では、ガラスプライは曲率を示すが、この曲率は、300μm未満又は10m超の曲率半径を有する。幾つかの実施形態では、曲率は複雑であり、変化する。
【0037】
実施形態では、(一又は複数の)曲率が、熱プロセスを通じてガラスプライ200又はガラス積層体300の各ガラスプライ310、320に導入される。熱プロセスは、加熱時に重力を利用してガラスプライ200又はガラスプライ310、320を成形する、撓みプロセスを含みうる。撓み工程では、ガラスプライ200などのガラスプライは、開放内部を有する型上に配置され、加熱炉(例えば箱型炉又は徐冷炉)内で加熱され、重力の影響下、型の開放内部に徐々に撓むことを可能にする。1つ以上の実施形態では、熱プロセスは、加熱時又は加熱中に型を使用してガラスプライ200又はガラスプライ310、320を成形するプレスプロセスを含みうる。幾つかの実施形態では、ガラスプライ310、320などの2つのガラスプライは、「ペア成形」プロセスで一緒に成形される。このようなプロセスでは、あるガラスプライを別のガラスプライの上に配置して、スタック(介在する剥離層も含みうる)を形成し、これを型上に配置する。実施形態では、ペア成形プロセスを容易にするために、内側及び/又はより薄いガラスプライとして用いられるガラスプライ310、320は、外側及び/又はより厚いガラスプライ310、320よりも高いペア成形温度(1011ポアズの温度)を有する。
【0038】
1つ以上の実施形態では、型は、撓みプロセスで使用するための開放内部を有しうる。スタック及び型は両方とも加熱炉内に配置することによって加熱され、スタックはガラスプライの曲げ又は撓み温度まで徐々に加熱される。このプロセス中に、プライは一緒に湾曲した形状へと成形される。有利には、1011ポアズの粘度における、本開示のホウケイ酸ガラス組成物の少なくとも一部の粘度曲線は、従来のフロート成形されたホウケイ酸ガラス組成物と類似しており、ガラスプライ200又はプライ310、320を形成するために既存の装置及び技法利用することが可能である。
【0039】
例示的な実施形態によれば、加熱時間及び温度は、所望の曲率の程度及び最終形状が得られるように選択される。その後、一又は複数のガラスプライは、加熱炉から取り出され、冷却される。ペア成形されたガラスプライでは、2つのガラスプライを分離し、ガラスプライ間に中間層330などの中間層を用いて再度アセンブリし、例えば真空下で加熱して、ガラスプライと中間層を一緒に積層体へと封止する。
【0040】
1つ以上の実施形態では、一方のガラスプライのみが熱を使用して(例えば、撓みプロセス又はプレスプロセスによって)湾曲され、他方のガラスプライは、ガラス組成物の軟化温度よりも低い温度(特に、200℃以下、100℃以下、50℃以下の温度、又は室温)で既に湾曲したガラスプライに合わせて湾曲されるガラスプライをプレスすることによる、冷間成形プロセスを使用して湾曲される。ガラスプライを他方のガラスプライに対して冷間成形するための圧力は、例えば、真空、機械プレス、又は1つ以上のクランプによって提供することができる。冷間成形されたガラスプライは、中間層を介して湾曲したガラスプライに適合するように保持され、及び/又は中間層に機械的にクランプされるか、又は他の方法で結合されうる。
【0041】
図4は、湾曲したガラス積層体400の例示的な実施形態を示している。
図4に見られるように、第1のガラスプライ310の第2の主面204は、第2の主面204の平面(破線)からの最大深さとして定義される、第1の曲率深さ410を有する。第2のガラスプライ320が湾曲している実施形態では、第2のガラスプライ320の第4の主面334は、第4の主面334の平面(破線)からの最大深さとして定義される、第2の曲率深さ420を有する。
【0042】
実施形態では、第1の曲率深さ410及び第2の曲率深さ420の一方又は両方は、約2mm以上である。曲率深さは、表面が、該表面の周囲上の点によって画成される平面から直角に離れている最大距離として定義することができる。例えば、第1の曲率深さ410及び第2の曲率深さ420の一方又は両方は、約2mmから約30mmの範囲でありうる。実施形態では、第1の曲率深さ410及び第2の曲率深さ420は、互いに実質的に等しい。1つ以上の実施形態では、第1の曲率深さ410は、第2の曲率深さ420の10%以内、特に第2の曲率深さ420の5%以内である。説明のために、第2の曲率深さ420は約15mmであり、第1の曲率深さ410は、約13.5mmから約16.5mm(又は第2の撓み深さ420の10%以内)の範囲にある。
【0043】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラスプライ310及び第2の湾曲したガラスプライ330は、ドイツ国ブラウンシュヴァイク所在のGOM GmbH社が提供するATOS Triple Scanなどの光学三次元スキャナによって測定して、±5mm以下の第1の湾曲したガラスプライ310と第2の湾曲したガラスプライ320との間の形状偏差を含む。1つ以上の実施形態では、形状偏差は、第2の主面204と第3の主面332との間、又は第1の主面202と第4の主面334との間で測定される。1つ以上の実施形態では、第1のガラスプライ310と第2のガラスプライ320との間の形状偏差は、約±4mm以下、約±3mm以下、約±2mm以下、約±1mm以下、約±0.8mm以下、約±0.6mm以下、約±0.5mm以下、約±0.4mm以下、約±0.3mm以下、約±0.2mm以下、又は約±0.1mm以下である。本明細書で用いられる場合、形状偏差は、スタックされたガラスプライ(すなわち、中間層なし)に適用され、それぞれの第2の主面204と第3の主面332又は第1の主面202と第4の主面334上の調整位置間の所望の曲率からの最大偏差を指す。
【0044】
1つ以上の実施形態では、第1の主面202及び第4の主面334の一方又は両方は、最小の光学歪みを示す。例えば、第1の主面202及び第4の主面334の一方又は両方は、ASTM 1561に準拠した透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、約400ミリディオプタ未満、約300ミリディオプタ未満、約250ミリディオプタ未満、又は約200ミリディオプタ未満を示す。適切な光学歪み検出器は、ドイツ国ダルムシュタット所在のISRA VISIION AG社からSCREENSCAN-Faultfinderという商品名で提供されている。1つ以上の実施形態では、第1の主面202及び第4の主面334の一方又は両方が、約190ミリディオプタ以下、約180ミリディオプタ以下、約170ミリディオプタ以下、約160ミリディオプタ以下、約150ミリディオプタ以下、約140ミリディオプタ以下、約130ミリディオプタ以下、約120ミリディオプタ以下、約110ミリディオプタ以下、約100ミリディオプタ以下、約90ミリディオプタ以下、約80ミリディオプタ以下、約70ミリディオプタ以下、約60ミリディオプタ以下、又は約50ミリディオプタ以下を示す。本明細書で用いられる場合、光学歪みとは、それぞれの表面で測定した最大光学歪みを指す。
【0045】
ガラスプライ200又はプライ310、320の光学歪みの低減は、本明細書に開示されるホウケイ酸ガラス組成物と、本開示のホウケイ酸ガラス組成物によって可能になる溶融成形プロセスの両方に関連すると考えられる。成形プロセスに関しては、ホウケイ酸ガラス組成物を成形する従来のフロートガラス技法は、溶融ガラスを液状のスズの上に浮かべることを包含し、ガラスの厚さは、スズ上に浮かべると、必然的に6mm以上になる。より薄い厚さを生成するためには、ガラスは浮いている間に引き伸ばされるか、又は延伸され、これにより、ガラスの表面全体にドローラインとして知られる厚さの変化が生じ、内部応力が生じる。ドローライン及び内部応力は両方とも光学歪みの原因となる可能性がある。本開示によるホウケイ酸ガラス組成物を溶融成形することにより、このようなドローライン及び内部応力が実質的に回避される。さらには、ガラスプライ200又はプライ310、320の外面は、溶融成形中にいかなる構造とも接触せず、これにより、光学歪みも低減する。組成に関しては、本明細書に開示されるホウケイ酸ガラスは、少なくとも500kPの液相粘度及び1725℃以下のT200Pを提供することによって、ガラスプライ200又はプライ310、320の溶融成形を可能にする。さらには、本開示によるホウケイ酸ガラス組成物はまた、従来使用されているソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物と比較して、ガラスプライ200又はプライ310、320の表面にわたる屈折率変動も低減すると考えられる。屈折率の変動も光学歪みを引き起こすことが知られており、したがって、屈折率変動の減少により光学歪みが低減することが期待される。
【0046】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラスプライの第1の主面又は第2の主面は、低い膜引張応力を示す。膜引張応力は、湾曲したプライ及び積層体の冷却中に生じうる。ガラスが冷えると、主面とエッジ表面(主面に直交する)は、引張応力を示す中央領域によって相殺される、表面圧縮を発達させうる。このような応力は、ある特定の状況では、エッジ冷却効果によって応力を誘発し、曲げツールが応力を生成する熱勾配を生成する周辺部において、問題になる可能性がある。本開示のホウケイ酸ガラス組成物の実施形態に関連した低いCTEは、熱間成形のアニーリングプロセス中に発生しうる有害な残留応力を最小限に抑える。このような応力はCTEに比例し、したがって、ホウケイ酸ガラス組成物のCTEを低下させることにより、残留応力も低減する。
【0047】
曲げ又は成形により、追加の表面張力がエッジ付近に取り込まれる場合があり、中央の張力領域がガラス表面に近づく。したがって、膜引張応力は、エッジの近く(例えば、エッジ表面から約10~25mm)で測定された引張応力である。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラスプライの第1の主面又は第2の主面における膜引張応力は、ASTM C1279に準拠してエッジ応力計で測定して、約7メガパスカル(MPa)未満である。このような表面応力計の例は、エッジ応力計又はVRPである(両方ともStrainoptic Technologies社から市販されている)。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラスプライの第1の主面又は第2の主面における膜引張応力は、約6MPa以下、約5MPa以下、約4MPa以下、又は約3MPa以下である。1つ以上の実施形態では、膜引張応力の下限は、約0.01MPa又は約0.1MPaである。他の実施形態では、膜引張応力は無視できるほど小さい場合がある(例えば、約0)。本明細書に記載されるように、応力は圧縮又は引張のいずれかとして指定され、このような応力の大きさは絶対値として提供される。
【0048】
1つ以上の実施形態では、積層体300、400は、10mm以下、9mm以下、8mm以下、7mm以下、又は6mm以下の厚さを有することができ、該厚さは、第1のガラスプライ310、第2のガラスプライ320、及び中間層330の厚さの合計を含む。さまざまな実施形態では、積層体300、400は、約1.8mmから約10mmの範囲、又は約1.8mmから約9mmの範囲、又は約1.8mmから約8mmの範囲、又は約1.8mmから約7mmの範囲、又は約1.8mmから約6mmの範囲、又は約1.8mmから約5mmの範囲、又は2.1mmから約10mm、又は約2.1mmから約9mmの範囲、又は約2.1mmから約8mmの範囲、又は約2.1mmから約7mmの範囲、又は約2.1mmから約6mmの範囲、又は約2.1mmから約5mmの範囲、又は約2.4mmから約10mmの範囲、又は約2.4mmから約9mmの範囲、又は約2.4mmから約8mmの範囲、又は約2.4mmから約7mmの範囲、又は約2.4mmから約6mmの範囲、又は約2.4mmから約5mmの範囲、又は約3.4mmから約10mmの範囲、又は約3.4mmから約9mmの範囲、又は約3.4mmから約8mmの範囲、又は約3.4mmから約7mmの範囲、又は約3.4mmから約6mmの範囲、又は約3.4mmから約5mmの範囲の厚さを有しうる。他の実施形態では、積層体の厚さは、1.8mm未満又は10mm超でありうる。
【0049】
1つ以上の実施形態では、第2の湾曲したガラスプライ(又は、第2の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第2のガラスプライ)は、第1の湾曲したガラスプライ(又は、第1の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第1のガラスプライ)と比較して比較的薄い。言い換えれば、第1の湾曲したガラスプライ(又は、第1の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第1のガラスプライ)は、第2の湾曲したガラスプライ(又は、第2の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第2のガラスプライ)より厚い厚さを有する。1つ以上の実施形態では、第1の厚さ(又は、第1の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第1のガラスプライの厚さ)は、第2の厚さの2倍を超える。1つ以上の実施形態では、第1の厚さ(又は、第1の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第1のガラスプライの厚さ)は、第2の厚さの約1.5倍から約10倍の範囲である(例えば、約1.75倍から約10倍、約2倍から約10倍、約2.25倍から約10倍、約2.5倍から約10倍、約2.75倍から約10倍、約3倍から約10倍、約3.25倍から約10倍、約3.5倍から約10倍、約3.75倍から約10倍、約4倍から約10倍、約1.5倍から約9倍、約1.5倍から約8倍、約1.5倍から約7.5倍、約1.5倍から約7倍、約1.5倍から約6.5倍、約1.5倍から約6倍、約1.5倍から約5.5倍、約1.5倍から約5倍、約1.5倍から約4.5倍、約1.5倍から約4倍、約1.5倍から約3.5倍、約2倍から約7倍、約2.5倍から約6倍、約3倍から約6倍)。他の実施形態では、プライは、第2のプライを厚くするか、又は第1のプライと同じ厚さにするなど、別のサイズにすることもできる。
【0050】
1つ以上の実施形態では、第2の厚さ(又は、第2の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第2のガラスプライの厚さ)は、2.0mm未満である(例えば、1.95mm以下、1.9mm以下、1.85mm以下、1.8mm以下、1.75mm以下、1.7mm以下、1.65mm以下、1.6mm以下、1.55mm以下、1.5mm以下、1.45mm以下、1.4mm以下、1.35mm以下、1.3mm以下、1.25mm以下、1.2mm以下、1.15mm以下、1.1mm以下、1.05mm以下、1mm以下、0.95mm以下、0.9mm以下、0.85mm以下、0.8mm以下、0.75mm以下、0.7mm以下、0.65mm以下、0.6mm以下、0.55mm以下、0.5mm以下、0.45mm以下、0.4mm以下、0.35mm以下、0.3mm以下、0.25mm以下、0.2mm以下、0.15mm以下、又は約0.1mm以下)。厚さの下限は、0.1mm、0.2mm、又は0.3mmでありうる。幾つかの実施形態では、第2の厚さ(又は、第2の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第2のガラスプライの厚さ)は、約0.1mmから約2.0mm未満、約0.1mmから約1.9mm、約0.1mmから約1.8mm、約0.1mmから約1.7mm、約0.1mmから約1.6mm、約0.1mmから約1.5mm、約0.1mmから約1.4mm、約0.1mmから約1.3mm、約0.1mmから約1.2mm、約0.1mmから約1.1mm、約0.1mmから約1mm、約0.1mmから約0.9mm、約0.1mmから約0.8mm、約0.1mmから約0.7mm、約0.2mmから約2.0mm未満、約0.3mmから約2.0mm未満、約0.4mmから約2.0mm未満、約0.5mmから約2.0mm未満、約0.6mmから約2.0mm未満、約0.7mmから約2.0mm未満、約0.8mmから約2.0mm未満、約0.9mmから約2.0mm未満、又は約1.0mmから約2.0mmの範囲にある。他の実施形態では、第2のプライは、2.0mmより厚くてもよく、又は0.1mmより薄くてもよく、例えば、700μm未満、500μm未満、300μm未満、200μm未満、100μm未満、80μm未満、40μm未満、及び/又は少なくとも10μm未満である。
【0051】
幾つかの実施形態では、第1の厚さ(又は、第1の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第1のガラスプライの厚さ)は約2.0mm以上である。このような実施形態では、第1の厚さ(又は、第1の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第1のガラスプライの厚さ)及び第2の厚さ(又は、第2の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第2のガラスプライの厚さ)は、互いに異なる。例えば、第1の厚さ(又は、第1の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第1のガラスプライの厚さ)は、約2.0mm以上、約2.1mm以上、約2.2mm以上、約2.3mm以上、約2.4mm以上、約2.5mm以上、約2.6mm以上、約2.7mm以上、約2.8mm以上、約2.9mm以上、約3.0mm以上、約3.1mm以上、約3.2mm以上、約3.3mm以上、3.4mm以上、3.5mm以上、3.6mm以上、3.7mm以上、3.8mm以上、3.9mm以上、4mm以上、4.2mm以上、4.4mm以上、4.6mm以上、4.8mm以上、5mm以上、5.2mm以上、5.4mm以上、5.6mm以上、5.8mm以上、又は6mm以上である。幾つかの実施形態では、第1の厚さ(又は、第1の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第1のガラスプライの厚さ)は、約2.0mmから約6mm、約2.1mmから約6mm、約2.2mmから約6mm、約2.3mmから約6mm、約2.4mmから約6mm、約2.5mmから約6mm、約2.6mmから約6mm、約2.8mmから約6mm、約3mmから約6mm、約3.2mmから約6mm、約3.4mmから約6mm、約3.6mmから約6mm、約3.8mmから約6mm、約4mmから約6mm、約2.0mmから約5.8mm、約2.0mmから約5.6mm、約2.0mmから約5.5mm、約2.0mmから約5.4mm、約2.0mmから約5.2mm、約2.0mmから約5mm、約2.0mmから約4.8mm、約2.0mmから約4.6mm、約2.0mmから約4.4mm、約2.0mmから約4.2mm、約2.0mmから約4mm、約2.0mmから約3.8mm、約2.0mmから約3.6mm、約2.0mmから約3.4mm、約2.0mmから約3.2mm、又は約2.0mmから約3mmの範囲にある。他の実施形態では、第1のプライは、10.0mmより厚くてもよく、又は2.0mmより薄くてもよく、例えば、1.5mm未満、1.0mm未満、700μm未満、500μm未満、300μm未満、200μm未満、100μm未満、80μm未満、40μm未満、及び/又は少なくとも10μm未満である。
【0052】
1つ以上の具体的な例では、第1の厚さ(又は、第1の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第1のガラスプライの厚さ)は約2.0mmから約3.5mmであり、第2の厚さ(又は、第2の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第2のガラスプライの厚さ)は約0.1mmから約2.0mm未満の範囲にある。実施形態では、第1の厚さのガラスの総厚に対する比は、少なくとも0.7、又は少なくとも0.75、又は少なくとも0.8、又は少なくとも0.85、又は少なくとも0.9である。
【0053】
1つ以上の実施形態では、積層体300、400は、ASTM C1652/C1652Mで測定して、視覚的な歪みを実質的に含まない。特定の実施形態では、積層体である、第1の湾曲したガラスプライ及び/又は第2の湾曲したガラスプライは、ASTM C1652/C1652Mに準拠して、肉眼で視覚的に検出することができるしわ又は歪みを実質的に含まない。
【0054】
1つ以上の実施形態では、第1の主面202又は第2の主面204は、有限会社折原製作所(日本所在)の商標名FSM-6000で市販されている表面応力計(「FSM」)などの表面応力計で測定して3MPa未満の表面圧縮応力を含む。幾つかの実施形態では、第1の湾曲したガラスプライは、本明細書に記載されるように強化されておらず(しかしながら、任意選択的にアニールされていてもよい)、約3MPa未満、又は約2.5MPa以下、2MPa以下、1.5MPa以下、1MPa以下、又は約0.5MPa以下の表面圧縮応力を示す。幾つかの実施形態では、このような表面圧縮応力範囲が、第1の主面及び第2の主面の両方に存在する。
【0055】
1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラスプライ及び第2の湾曲したプライの形成に用いた第1及び第2のガラスプライは、第1の湾曲したガラスプライ及び第2の湾曲したガラスプライを形成するためにペア成形される前は、実質的に平面である。場合によっては、第1の湾曲したガラスプライ及び第2の湾曲したプライの形成に用いた第1のガラスプライ及び第2のガラスプライの一方又は両方は、3D又は2.5D形状を有してもよく、これは、所望の曲率深さを示さず、最終的にペア成形プロセス中に形成されて、得られる積層体中に存在することになる。追加的に又は代替的に、第1の湾曲したガラスプライ(又は、第1の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第1のガラスプライ)及び第2の湾曲したガラスプライ(又は、第2の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第2のガラスプライ)の一方又は両方の厚さは、美的及び/又は機能的理由のために、寸法の1つ以上に沿って一定であってもよく、又は該寸法の1つ以上に沿って変化してもよい。例えば、第1の湾曲したガラスプライ(又は、第1の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第1のガラスプライ)及び第2の湾曲したガラスプライ(又は、第2の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第2のガラスプライ)の一方又は両方のエッジは、ガラスプライのより中央の領域と比較してより厚くなりうる。
【0056】
第1の湾曲したガラスプライ(又は、第1の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第1のガラスプライ)及び第2の湾曲したガラスプライ(又は、第2の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第2のガラスプライ)の長さ(例えば、表面(例えば、第1の主面)の最長の中心線)、幅(例えば、長さに直交する表面の最長の寸法)、及び厚さ(例えば、長さ及び幅に直交するプライの寸法)の寸法も、物品の用途又は使用に応じて変化しうる。1つ以上の実施形態では、第1の湾曲したガラスプライ(又は、第1の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第1のガラスプライ)は、第1の長さ及び第1の幅を含み(第1の厚さは、第1の長さと第1の幅の両方に直交する)、第2の湾曲したガラスプライ(又は、第2の湾曲したガラスプライの形成に用いられる第2のガラスプライ)は、第2の長さと、該第2の長さに直交する第2の幅を含む(第2の厚さは、第2の長さと第2の幅の両方に直交する)。1つ以上の実施形態では、第1の長さ及び第1の幅のいずれか一方又は両方が約0.25メートル(m)以上である。例えば、第1の長さ及び/又は第2の長さは、約1mから約3m、約1.2mから約3m、約1.4mから約3m、約1.5mから約3m、約1.6mから約3m、約1.8mから約3m、約2mから約3m、約1mから約2.8m、約1mから約2.8m、約1mから約2.8m、約1mから約2.8m、約1mから約2.6m、約1mから約2.5m、約1mから約2.4m、約1mから約2.2m、約1mから約2m、約1mから約1.8m、約1mから約1.6m、約1mから約1.5m、約1.2mから約1.8m、又は約1.4mから約1.6mの範囲でありうる。幾つかの実施形態では、それぞれの表面(例えば、第1の表面、第2の表面、モノリス主面、プライ表面)の重心を通る外周から外周までの表面寸法は、少なくとも1mm、少なくとも1cm、少なくとも10cm、少なくとも1m、及び/又は10m以下であり、これにより、含まれている破砕によってそれぞれのプライが破損されることはないであろう。他の実施形態では、プライは別のサイズであってもよい。
【0057】
例えば、第1の幅及び/又は第2の幅は、約0.5mから約2m、約0.6mから約2m、約0.8mから約2m、約1mから約2m、約1.2mから約2m、約1.4mから約2m、約1.5mから約2m、約0.5mから約1.8m、約0.5mから約1.6m、約0.5mから約1.5m、約0.5mから約1.4m、約0.5mから約1.2m、約0.5mから約1m、約0.5mから約0.8m、約0.75mから約1.5m、約0.75mから約1.25m、又は約0.8mから約1.2mの範囲でありうる。他の実施形態では、プライは別のサイズであってもよい。
【0058】
1つ以上の実施形態では、第2の長さは第1の長さの5%以内である(例えば、約5%以下、約4%以下、約3%以下、又は約2%以下)。例えば、第1の長さが1.5mの場合、第2の長さは、約1.425mから約1.575mの範囲であってよく、依然として第1の長さの5%以内でありうる。1つ以上の実施形態では、第2の幅は第1の幅の5%以内である(例えば、約5%以下、約4%以下、約3%以下、又は約2%以下)。例えば、第1の幅が1mの場合、第2の幅は、約1.05mから約0.95mの範囲であってよく、依然として第1の幅の5%以内でありうる。
【0059】
ガラスプライ、その積層構造、及びその使用について説明してきたが、これよりホウケイ酸ガラス組成物についてさらに詳細に説明する。実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、少なくとも74モル%のSiO2、少なくとも10モル%のB2O3、及び少なくとも幾らかのAl2O3を含む。特定の実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、少なくとも0.03モル%の酸化鉄(例えば、Fe2O3又はFeO)を含む。より特定の実施形態では、SiO2、Al2O3、及びB2O3は、ホウケイ酸ガラス組成物の少なくとも90モル%を構成する。さらには、ホウケイ酸ガラス組成物は、少なくとも500キロポアズ(kP)の液相粘度と、1725℃以下の粘度が200ポアズ(P)になる温度(T200P)とを有する。
【0060】
実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、少なくとも約72モル%、より具体的には約72モル%から約80モル%、特に74モル%から80モル%の範囲の量のSiO2を含む。例えば、ホウケイ酸ガラス組成物は、SiO2を、約72モル%から約85モル%、約73モル%から約85モル%、約74モル%から約85モル%、約75モル%から約85モル%、約76モル%から約85モル%、約77モル%から約85モル%、約78モル%から約85モル%、約79モル%から約85モル%、約80モル%から約85モル%、約81モル%から約85モル%、約82モル%から約85モル%、約83モル%から約85モル%、約84モル%から約85モル%、約74モル%から約84モル%、約74モル%から約84モル%、約74モル%から約83モル%、約74モル%から約82モル%、約74モル%から約81モル%、約74モル%から約80モル%、約74モル%から約79モル%、約74モル%から約78モル%、約74モル%から約77モル%、約74モル%から約76モル%の範囲、並びにそれらの間のすべての範囲及び部分範囲の量で含む。他の実施形態では、ガラスは、74モル%未満のSiO2を有しうる。
【0061】
実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、B2O3を約10モル%から約16モル%、特に約11.5モル%から約14.5モル%の範囲の量で含む。さまざまな実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、B2O3を、約10モル%から約16モル%、約11モル%から約16モル%、約12モル%から約16モル%、約13モル%から約16モル%、約14モル%から約16モル%、約15モル%から約16モル%、約11モル%から約15モル%、約11モル%から約14モル%、約11モル%から約13モル%、約11モル%から約12モル%、約12モル%から約13モル%、約12モル%から約14モル%、約14モル%から約15モル%の範囲、又はそれらの間の任意の範囲及び部分範囲の量で含む。他の実施形態では、ガラスは、10モル%未満のB2O3又は16モル%超のB2O3を有しうる。
【0062】
実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、Al2O3を、約2モル%から約6モル%、特に約2.5モル%から約5モル%の範囲の量で含む。さまざまな実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、Al2O3を、約2モル%から約6モル%、約3モル%から約6モル%、約4モル%から約6モル%、約5モル%から約6モル%、約3モル%から約5モル%、約3モル%から約4モル%、約4モル%から約5モル%の範囲、又はそれらの間の任意の範囲及び部分範囲の量で含む。有利には、これらの量で存在するAl2O3は、ホウケイ酸ガラス組成物の相分離を防ぐのに役立つ。他の実施形態では、ガラスは、2モル%未満のAl2O3又は6モル%超のAl2O3を有しうる。
【0063】
実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、Na2Oを、約3モル%から約8モル%、特に約4.5モル%から約8モル%の範囲の量で含む。さまざまな実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、Na2Oを、約3モル%から約8モル%、約4モル%から約8モル%、約5モル%から約8モル%、約6モル%から約8モル%、約7モル%から約8モル%、約3モル%から約7モル%、約4モル%から約7モル%、約5モル%から約7モル%、約6モル%から約7モル%、約4モル%から約6モル%、約5モル%から約6モル%の範囲、又はそれらの間の任意の範囲及び部分範囲の量で含む。他の実施形態では、ガラスは、3モル%未満のNa2O又は8モル%超のNa2Oを有しうる。
【0064】
実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、K2Oを、約0.5モル%から約5モル%、特に約0.5モル%から約3モル%の範囲の量で含む。さまざまな実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、K2Oを、約0.5モル%から約5モル%、約0.6モル%から約5モル%、約0.7モル%から約5モル%、約0.8モル%から約5モル%、約0.9モル%から約5モル%、約1モル%から約5モル%、約2モル%から約5モル%、約3モル%から約5モル%、約4モル%から約5モル%、約2モル%から約4モル%、3モル%から4モル%の範囲、又はそれらの間の任意の範囲及び部分範囲の量で含む。他の実施形態では、ガラスは、0.8モル%未満のK2O又は5モル%超のK2Oを有しうる。
【0065】
Na2O及びK2Oの存在は、液相粘度に影響を与える。したがって、実施形態では、Na2O又はK2Oの少なくとも一方は、少なくとも4モル%の量で存在する。実施形態では、Na2OとK2Oの合計量は、他のアルカリ土類酸化物(例えば、CaO又はMgO)が少なくとも1.5モル%の量で存在する場合、少なくとも5.5モル%の量で存在する。他の実施形態では、Na2OとK2Oの合計量は、アルカリ土類酸化物に関係なく、少なくとも8モル%の量で存在する。ある特定の場合には、K2O及びNa2Oは液相線温度を低下させる傾向があり、それによって液体の粘度が増加すると考えられる。さらには、B2O3と、Al2O3、K2O、及びNa2Oとの組合せは、液相粘度を増加させる傾向がある。
【0066】
実施形態では、K2OのNa2Oに対する比は約0.1から約0.75である。実施形態では、K2OのNa2Oに対する比は、約0.15から約0.75、約0.20から約0.75、約0.25から約0.75、約0.30から約0.75、約0.35から約0.75、約0.40から約0.75、約0.45から約0.75、約0.50から約0.75、約0.55から約0.75、約0.60から約0.75、約0.65から約0.75、約0.70から約0.75、約0.1から約0.70、約0.1から約0.65、約0.1から約0.60、約0.1から約0.55、約0.1から約0.50、約0.1から約0.45、約0.1から約0.40、約0.1から約0.35、約0.1から約0.30、約0.1から約0.25、約0.1から約0.20、又は約0.1から約0.15である。
【0067】
実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、P2O5を、0モル%から約4モル%、約1モル%から約4モル%、約2モル%から約4モル%、約3モル%から約4モル%、約1モル%から約3モル%、約2モル%から約3モル%、約1モル%から約2モル%の範囲、又はそれらの間の任意の範囲及び部分範囲の量で含む。P2O5は、ホウケイ酸ガラス組成物の密度を低下させる傾向があり、その結果、後述するように、変形中に高密度化が増加しうる。さらには、P2O5は液相粘度を増加させる可能性があると考えられる。
【0068】
実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、CaOを、0モル%から約5モル%、0モル%から約4モル%、0モル%から約3モル%、0モル%から約2モル%、0モル%から約1モル%、約1モル%から約5モル%、約2モル%から約5モル%、約3モル%から約5モル%、約4モル%から約5モル%、約2モル%から約4モル%、約2モル%から約3モル%、約3モル%から約4モル%の範囲、並びにそれらの間のすべての範囲及び部分範囲の量で含む。
【0069】
実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、MgOを、0モル%から約5モル%、特に0.5モル%から2.5モル%の範囲の量で含む。さまざまな実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、MgOを、0モル%から約5モル%、0モル%から約4モル%、0モル%から約3モル%、0モル%から約2モル%、0モル%から約1モル%、約1モル%から約5モル%、約2モル%から約5モル%、約3モル%から約5モル%、約4モル%から約5モル%、約2モル%から約4モル%、約2モル%から約3モル%、約3モル%から約4モル%の範囲の量、並びにそれらの間のすべての範囲及び部分範囲で含む。
【0070】
実施形態では、CaOとMgOの総量は最大で5モル%である。実施形態では、CaOとMgOの総量は少なくとも1.5モル%であり、ここで、K2OとNa2Oの合計量は7モル%未満である。CaO及びMgOなどのアルカリ土類酸化物は、液相線温度を低下させ、液相粘度を増加させる傾向がある。
【0071】
実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、SnO2を、最大で約0.25モル%の量で含む。実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、SnO2を、0モル%から約0.25モル%、約0.05モル%から約0.25モル%、約0.10モル%から約0.25モル%、約0.15モル%から約0.25モル%、約0.20モル%から約0.25モル%、約0.05モル%から約0.20モル%、約0.05モル%から約0.15モル%、約0.05モル%から約0.10モル%、約0.10モル%から約0.15モル%、約0.10モル%から約0.20モル%、約0.15モル%から約0.20モル%の範囲、又はそれらの間のすべての範囲及び部分範囲の量で含む。幾つかの実施形態では、SnO2は、アンチモン、ヒ素、鉄、セリウムなどを含む多価又は他の酸素吸収剤など、別の清澄剤で置換されてもよい。
【0072】
実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、特に太陽光からの赤外線放射を吸収するために、例えば、酸化鉄(III)(Fe2O3)又は酸化鉄(II)(FeO;例えば、シュウ酸鉄(C2FeO4)源から供給される)の形態の1つ以上の鉄化合物を含む。実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、鉄化合物を、最大で約0.50モル%、特に約0.20から約0.40モル%の範囲の量で含む。実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、鉄化合物を、約0.03モル%から約0.50モル%、約0.10モル%から約0.50モル%、約0.15モル%から約0.50モル%、約0.20モル%から約0.50モル%、約0.25モル%から約0.50モル%、約0.30モル%から約0.50モル%、約0.35モル%から約0.50モル%、約0.40モル%から約0.50モル%、約0.45モル%から約0.50モル%の範囲、又はそれらの間のすべての範囲又は部分範囲の量で含む。他の実施形態では、鉄化合物に加えて、又は鉄化合物の代わりに、TiO2などの他の改質剤を使用して、紫外線放射の透過を低減することができる。実施形態では、TiO2は、約0.04モル%から約0.12モル%の量で提供することができる。
【0073】
実施形態では、ガラス組成物(又はそれから形成されたガラス物品)は、少なくとも500キロポアズ(kP)、最大で50,000kPの液相粘度を示す。有利には、1000kPを超える液相粘度を有するガラス組成物は、フュージョンドロー中、たるんだ反りの影響を受けにくい。本明細書で用いられる場合、用語「液相粘度」とは液相線温度における溶融ガラスの粘度のことを指し、ここで、用語「液相線温度」とは、溶融ガラスが融点(または温度が室温から上昇するにつれて最後の結晶が溶融する温度)から冷却するにつれて、結晶が最初に現れる温度を指す。
【0074】
少なくとも500kPの液相粘度を有する本明細書に記載されるホウケイ酸ガラス組成物は、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも3.3mm、又は少なくとも3.8mmの厚さで溶融成形可能である。幾つかの実施形態では、溶融成形されたガラスプライは、典型的なフロート成形されたガラス物品に存在するドローラインを実質的に含まない。液相粘度は以下の方法によって決定される。まず、ガラスの第1の液相線温度は、「勾配炉法によるガラスの液相温度の測定のための標準的技法(Standard Practice for Measurement of Liquidus Temperature of Glass by the Gradient Furnace Method)」と題されたASTM C829-81(2015)に準拠して測定される。次に、液相線温度におけるガラスの粘度は、「軟化点より上のガラスの粘度を測定するための標準プラクティス(Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Above the Softening Point)」と題されたASTM C965-96(2012)に準拠して測定される。
【0075】
実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、約480℃から約560℃、約490℃から約560℃、約500℃から約560℃、約510℃から約560℃、約520℃から約560℃、約530℃から約560℃、約540℃から約560℃、約550℃から約560℃、約480℃から約550℃、約480℃から約540℃、約480℃から約530℃、約480℃から約520℃、約480℃から約510℃、約480℃から約500℃の範囲、又はそれらの間のすべての範囲又は部分範囲の歪み点温度を示す。実施形態では、歪み点温度は、ASTM C598-93(2013)のビーム曲げ粘度法を使用して決定される。実施形態では、歪み点は、粘度が1014.68ポアズになる温度として定義される。
【0076】
実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、約520℃から約590℃、約530℃から約590℃、約540℃から約590℃、約550℃から約590℃、約560℃から約590℃、約570℃から約590℃、約580℃から約590℃、約520℃から約580℃、約520℃から約570℃、約520℃から約560℃、約520℃から約550℃、約520℃から約540℃、約520℃から約530℃の範囲、又はそれらの間のすべての範囲又は部分範囲のアニール点温度を示す。アニール点は、ASTM C598-93(2013)のビーム曲げ粘度法を使用して決定される。実施形態では、アニール点は、粘度が1013.18ポアズになる温度として定義される。
【0077】
実施形態では、ガラス組成物は、高温粘度(HTV)データ(すなわち、100kPから100ポアズまでのすべての温度測定値)にフィットするFulcherで測定して、最高で1725℃である、約200Pの粘度における温度(T200P)を示す。例えば、ガラス組成物は、約1500℃から約1725℃、約1525℃から約1725℃、約1550℃から約1725℃、約1575℃から約1725℃、約1600℃から約1725℃、約1625℃から約1725℃、約1650℃から約1725℃、約1675℃から約1725℃、約1700℃から約1725℃、約1500℃から約1700℃、約1500℃から約1675℃、約1500℃から約1650℃、約1500℃から約1625℃、約1500℃から約1600℃、約1500℃から約1575℃、約1500℃から約1550℃、約1500℃から約1525℃の範囲、又はそれらの間のすべての範囲又は部分範囲のT200Pを示しうる。
【0078】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物又はそれから形成されたガラス物品は、2.4g/cm3未満の20℃における密度を示す。実施形態では、20℃における密度は、2.39g/cm3以下、2.38g/cm3以下、2.37g/cm3以下、2.36g/cm3以下、2.35g/cm3以下、2.34g/cm3以下、2.33g/cm3以下、2.32g/cm3以下、2.31g/cm3以下、2.30g/cm3以下、2.29g/cm3以下、2.28g/cm3以下、2.27g/cm3以下、2.26g/cm3以下、2.25g/cm3以下、2.24g/cm3以下、2.23g/cm3以下、2.22g/cm3以下、2.21g/cm3以下、又は2.20g/cm3以下である。実施形態では、密度は、ASTM C693-93(2013)の浮力法によって決定される。有利には、2.4g/cm3未満の密度は、自動車用ガラス積層体に従来使用されているソーダ石灰ガラスの密度よりも小さい。
【0079】
言及したように、本開示によるホウケイ酸ガラス組成物は、溶融成形することができる。得られるガラスプライは、溶融成形されていると説明することができる。
図7は、ホウケイ酸ガラス組成物からガラスプライを溶融形成するための装置700の例示的な実施形態を示している。溶融形成装置700は、トラフ704、第1の成形面706、及び第2の成形面708によって画成されたアイソパイプ702を含む。第1の成形面706及び第2の成形面708は、トラフ704の下で内向きに傾斜し、アイソパイプ702のルート710で合流する。本開示のホウケイ酸ガラス組成物712は溶融状態でトラフ704に供給され、ホウケイ酸ガラス組成物712はトラフ704から溢れ、2つの流れを形成し、成形面706、708を流れ落ちる。溶融ガラスの流れはルート710で合流してガラスプライ714を形成し、これが冷却されて、流れている流れから切断される。
【0080】
実施形態では、溶融形成装置700は、第2のトラフ718、第3の成形面720、及び第4の成形面722を有する第2のアイソパイプ716を含む。ホウケイ酸ガラス組成物712と同じ組成又は異なる組成を有するガラス組成物724が、溶融状態で第2のトラフ718に提供され、第2のトラフ718から溢れ出る。溶融ガラス組成物724は、第3及び第4の成形面720、722を流れ落ち、そこでホウケイ酸ガラス組成物712の周りを外側に向かう。このようにして、ガラス組成物724は、ホウケイ酸ガラス組成物712の流れの外側で第1及び第2の成形面706、708を流れ落ちる。アイソパイプ702のルート710において、ホウケイ酸ガラス組成物7122の流れとガラス組成物7242の流れとの組合せは、クラッド層726a、726bを有するガラスプライ714を生成する。このようなクラッド層は、組成物712、724の間の異なる熱膨張係数に基づいて発生する残留応力に基づいて、ガラスを機械的に強化することができ、あるいはクラッド層は、イオン交換処理などによって化学的に強化することができる。クラッド層726a、726bはまた、この方法で成形されたガラスプライ714に特定の光学特性などの他の特徴を提供することもできる。
【0081】
溶融成形法は、チャネル上を流れる2つのガラスの流れが互いに融着することから、得られるガラス物品の外面はどちらも、装置のいずれの部分とも接触しないという利点をもたらす。よって、溶融延伸されたガラス物品の表面特性は、このような接触による影響を受けない。実施形態では、本開示の溶融成形されたホウケイ酸ガラス組成物は、ASTM 1561に準拠した透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、75ミリディオプタ以下の光学歪みを示す。500kP未満の液相粘度及び1725℃超のT200P温度を有する従来のホウケイ酸ガラス組成物は、フュージョンドロープロセスを使用して2mm以上の厚さに溶融成形することができず、その代わり、そのような厚さの従来のホウケイ酸ガラス組成物は、典型的にはフロートプロセスを使用して成形されていた。
【実施例】
【0082】
溶融成形可能なホウケイ酸ガラス組成物のさまざまな実施形態を以下の表に示す。
【0083】
【0084】
実施例1~6は、本開示の1つ以上の実施形態による例示的なガラス組成物である。表1から分かるように、これらのガラス組成物の液相粘度は、ガラス組成物の溶融形成に必要な500kPを十分に上回っている。さらには、これらのガラスのT200Pは1725℃を十分に下回っている。また、有利には、これらのガラスは、2.4g/cm3未満の密度を有する。従来の積層体は、密度が2.4g/cm3を超える、ソーダ石灰ガラスの厚い外側ガラスプライを利用する。したがって、以下に論じられるように機械的特性が強化されるだけでなく、本開示の溶融成形可能なホウケイ酸ガラス組成物は、2.4g/cm3未満、特に2.35g/cm3以下の密度に基づいて軽量化(したがって燃料効率の向上)をもたらす。得られるガラスプライの熱的特性は、0℃から300℃の間の温度でガラスの膨張を測定することによって得られる、低温熱膨張係数(LTCTE)によっても向上する。実施形態では、LTCTEは、5.6ppm/℃以下、特に、5.3ppm/℃以下、特に5.1ppm/℃以下である。ここで説明した特性の他に、表1には、歪み点温度、アニール点温度、高温CTE(HTCTE)、ヤング率、及びポアソン比に関する情報も含まれる。
【0085】
下記表2は、本開示による追加の例示的な組成物を提供する。
【0086】
【0087】
再び、表2から、本開示の溶融成形可能なホウケイ酸ガラス組成物の実施例7~9は、2mm超の厚さで溶融形成するのに必要な特性を示すことが分かる。さらには、ホウケイ酸ガラス組成物の特性は、密度及びLTCTEなど、ソーダ石灰ガラスの同じ特性よりも優れている。しかしながら、比較例10及び11から分かるように、溶融成形性に関して本明細書に開示されたもの以外の組成物は、比較的厚い厚さでの溶融成形に必要な特性を有していない。比較例10は、SiO2、B2O3、及びAl2O3の総量が90モル%未満になるように、8.47モル%の低いB2O3含有量を有し、比較例11は、上述したように液相粘度が上昇する傾向にある、K2O又はMgOを含まず、CaOもほとんど含まない。しかしながら、後述するように、幾つかの実施形態は、それぞれの組成物が溶融成形可能であるかどうかに関係なく、破壊挙動などに起因して、フロントガラス又は他の物品として有用でありうる。
【0088】
下記表3は、本開示によるホウケイ酸ガラス組成物のさらなる例示的な組成物を提供する。
【0089】
【0090】
表3のホウケイ酸ガラス組成物の実施例12~14及び18は、溶融形成に必要な液体粘度及びT200P温度を有し、また、本開示のホウケイ酸ガラス組成物を自動車用ガラス積層体の外側プライとして使用するための密度及びLTCTEの有利な特性も有する。さらには、見て分かるように、これらの実施例は、B2O3の量の増加が密度を減少させる効果があることを示している。実施例12~17の各々は、2.3g/cm3未満の密度を有し、ある特定の実施例は、2.250g/cm3以下の密度を有する。比較例15~17は、1725℃を上回るT200P温度を示す。実施例12~14及び18と比較して、比較例15~17は、本明細書に開示される溶融成形性特性の幾つかについて、アルカリ酸化物が少なすぎ、並びにアルカリ酸化物及びアルカリ土類酸化物(アルカリ土類金属酸化物とも呼ばれる)が少なすぎるが、後述するように、フロントガラス及び、ビッカース圧子からの横方向及び放射状の亀裂を含むループ亀裂を有する他の物品などの他の実施形態には十分なアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を有しうる。特に、実施例12~14及び15の各々は、少なくとも5.5モル%のNa2O+K2O、及び合計で少なくとも7.0モル%のNa2O+K2O+MgO+CaOを含む。表1~3の実施例から、本開示の実施形態は、Na2O+K2O+MgO+CaOの総量が少なくとも7.0モル%である場合、とりわけ、少なくとも5.5モル%のNa2O+K2O及び少なくとも1.5モル%のMgO+CaOが存在する場合、溶融形成に必要なT200P及び液相粘度を示すと考えられる。さらに、本開示の実施形態は、MgO及びCaOの量に関係なく、Na2O+K2Oが少なくとも8モル%である場合、溶融形成に必要なT200P及び液相粘度を示すと考えられる。
【0091】
表4は、太陽光線、特に車両内部の温度の上昇を引き起こす赤外線(IR)放射を吸収するために、鉄化合物(例えば、酸化鉄(II)又は酸化鉄(III)として)をさらに添加した、本開示のホウケイ酸ガラス組成物のさらなる例示的な組成物を提供する。したがって、IR吸収を提供することにより、本開示のホウケイ酸ガラス組成物の外側プライを有する積層体を含む自動車用ガラスは、車両内に蓄積する熱と空冷システムへの負担を軽減することにより、さらなる燃料効率及び快適性をもたらすことができる。表4は、鉄(Fe2O3)の量が0モル%から0.44モル%まで増加する、表4のホウケイ酸ガラス組成物の例及び主な鉄化合物として主として酸化鉄(II)(FeO)を含む1つの組成物(実施例25)を提供する。実施例25では、酸化鉄(II)は、シュウ酸鉄(C2FeO4)をバッチ材料源として使用することによって提供される。シュウ酸鉄の炭素は二酸化炭素(CO2)として残り、主に酸化鉄(II)と一部の酸化鉄(III)がガラス内に残る。
【0092】
【0093】
下記表5及び6は、それぞれ、3.3mm及び2.1mmの厚さを有するガラスプライについての表4のホウケイ酸ガラス組成物の透過率データを提供する。実施形態では、所与のホウケイ酸ガラスの組成物組成物では、鉄化合物の添加は、可視光線(すなわち、約400nmから約750nm)、全日射透過率、及びUV透過率を低下させるのに役立つ。透過率の値はすべて、垂直入射で測定した。実施例3は、ISO 13837A(A/2°)に準拠して測定して、92.4%の可視光線透過率(T
VIS)及び92.0%の全日射透過率(TTS)を有する。Fe
2O
3の増分を加えることにより、T
VIS及びTTSは段階的に減少する。表4に示されるように、0.07モル%(又は0.19質量%)のFe
2O
3を添加すると、T
VISが約3%、TTSが約6%低下する。0.37モル%(又は0.92質量%)のFe
2O
3を添加すると、T
VISが約44%、TTSが約33%低下する。ISO 13837によると、T
VISの最低要件は、道路車両のガラスでは73%である。
図8は、実施例3、19~24の透過率のグラフを提供している。見て分かるように、Fe
2O
3を添加すると全体の測定透過率が低下し、近赤外スペクトルに対応する約750nmから1500nmの間で測定された透過率に大幅な低下が生じる。実施形態では、本開示の溶融成形可能なホウケイ酸ガラス組成物の少なくとも1つのガラスプライを含む積層体300、400を備えた自動車用ガラスは、ISO 13837A(A/2°)に準拠して測定して、61%以下のTTS及び/又は少なくとも73%のT
VISを有する。このような実施形態では、本発明者らは、このようなガラス及び積層体を調製する以前の経験から、中間層及び他のガラスプライがT
VISに及ぼす影響は最小限であり(例えば、最大で約0.5%の減少)、TTSを例えば3~5%さらに減少させるであろうと考えている。これは、本開示の溶融成形可能なホウケイ酸ガラスプライが積層体ガラスのより厚い外側プライとして用いられる場合に、とりわけ当てはまる。
【0094】
【0095】
表5を見ても分かるように、鉄含有量を増加させると、T
VISとTTSが減少することに加えて、UVカットオフ波長(すなわち、UV透過率が10%未満になる波長)が増加し、300~380nmの範囲の総UV透過率が減少する。実施例3では、ガラス組成物は鉄含有量を含まない。UVカットオフ波長は300nm未満であり、UV透過率は85.7%である。鉄含有量が0質量%(又は0モル%)から0.92質量%(又は0.37モル%)に増加すると、UVカットオフ波長は365nmに増加し、T
UVは6.1%に減少する。上で参照したT
VIS及びTTS要件に加えて、少なくとも1つのガラスプライを含む積層体300、400の実施形態では、本開示の溶融成形可能なホウケイ酸ガラス組成物は、75%未満のT
UVを有する。有利なことに、積層体のUV透過率を減少させることは、ポリマー中間層の黄変を減少させるのに役立ちうる。
図10は、表5に含まれるデータに基づく、単一ガラスプライの鉄含有量の関数としての実施例3、19~23、及び25のT
VIS、T
UV、及びTTSのプロットを示している。
【0096】
表6は、表5に含まれる同じ組成のガラスプライの透過率データを示している(実施例24は例外で、含めなかった)。しかしながら、ガラスプライの厚さは3.3mmから2.1mmに減少した。表6から分かるように、プライの厚さが減少すると、UVカットオフ波長がわずかに減少し、T
UV、T
VIS、及びTTSはそれぞれ、表5のより厚い3.3mmのプライより増加している。しかしながら、表6は依然として、T
UV、T
VIS、及びTTSが鉄含有量の増加に伴って徐々に減少することを示している。
図11は、表6に含まれるデータに基づく、単一ガスプライの鉄含有量の関数としてのT
VIS、T
UV、及びTTSのプロットを示している。表5及び表6から、バッチに供給されたシュウ酸鉄に由来する酸化鉄(II)は、重量パーセントベースで考慮した場合、酸化鉄(III)と同等以上のUV及び太陽光放射吸収レベルをもたらすことも分かる。
【0097】
【0098】
図12及び13は、表5及び6に含まれるガラス組成についてT
VISに対するTTSをプロットしたグラフを示している。
図12及び13から分かるように、プロット点が右上から左下に進むにつれて鉄含有量が増加し、二次関係を定義している。
図12では、T
VISとTTSとの関係は、式TTS=0.0097(T
VIS)
2-0.6609(T
VIS)+68.688によって与えられる。
図13では、T
VISとTTSとの関係は、式TTS=0.014(T
VIS)
2-1.4278(T
VIS)+103.47によって与えられる。ホウケイ酸ガラスの鉄化合物の原料としてシュウ酸鉄を使用すると、曲線が右にシフトし、同じレベルのTTSのT
VISが増加すると考えられる。
【0099】
実施形態では、本明細書に記載される積層体300、400は、
図9に示すように、センサ810も含むシステム800において使用することができる。特に、前の議論は、積層体300、400が可視スペクトルの電磁放射を透過し、
図8に示すように、積層体は1500nmを超える波長の電磁放射(例えば、短波赤外線)も実質的に透過することを実証している。これらの範囲の電磁放射線で運ばれる信号は、積層体300、400を介して送信するするできる。
図9は、積層体300、400を介して入力信号820を受信し、出力信号830を送信するセンサ810を示している。例えば、1つ以上の実施形態では、積層体300、400は、
図1に示すように、車両100内のガラス130として含まれる。このような実施形態では、センサ810は車両100の内部に配置される。このようにして、信号820、830を車両100から送受信することができる。1つ以上の実施形態では、信号820、830は、可視光線(約400nmから約750nm)又は短波赤外線スペクトル(1500nm以上)のピーク波長を有する。実施形態では、このような信号は、他の可能性の中でもとりわけ、車両の自動運転又は半自動運転、公道の料金徴収、電気通信、交通の監視と制御、及び車両間通信などを容易にする。システム800において利用することができるセンサ810の一例は、可視光又は短波赤外線放射の一方又は両方を利用するLIDARである。IRRコーティングを含む積層体300、400の実施形態では、IRRコーティングは、積層体300、400を介して信号を送受信するように構成されている領域に施されるプライから剥離することができる。
【0100】
上述したように、本開示のホウケイ酸ガラス組成物は、従来のソーダ石灰ガラス組成物、さらには従来のホウケイ酸ガラス組成物と比較して、驚くほど改善された変形特性を有する。特に、本発明者らは、本明細書に開示されるホウケイ酸ガラス組成物から形成されたガラスプライが、変形すると驚くべきことに予想外に緻密化し、これにより、例えば岩石及び道路から飛来する他の破片によって生じる放射状亀裂の広がりを制限できることを発見した。
【0101】
図5A~5Cは、本開示のホウケイ酸ガラス組成物(
図5A)、従来のソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物(
図5B)、及び従来のホウケイ酸ガラス組成物(
図5C)から作られたガラスプライのビッカース圧痕チップを用いて2重量キログラム(kgf)を使用して形成された、準静的圧痕によって生成された亀裂の形成を示している。ビッカースチップを使用した準静的押し込み試験は、フロントガラスの外面に石などの飛来物が衝突したときのフロントガラスの性能を示す良い指標を提供すると考えられる。
【0102】
この試験では、成形性に関するより従来のホウケイ酸ガラス組成物は、83.60モル%のSiO2、1.20モル%のAl2O3、11.60モル%のB2O3、3.00モル%のNa2O、及び0.70モル%のK2Oを含んでいた。この従来のホウケイ酸ガラス組成物は、2.23g/cm3の密度、518℃の歪み点、560℃のアニール点、3.25 pm/℃のLTCTE、64GPaのヤング率、及び0.2のポアソン比を有していた。したがって、本開示のホウケイ酸ガラス組成物の実施形態と比較して、従来のホウケイ酸ガラス組成物は、少ないAl2O3、少ない総アルカリ含有量、とりわけK2O、及び少ない総アルカリ土類含有量を含む。このような従来のホウケイ酸ガラス組成物は、低い熱膨張係数(例えば、3.3ppm/℃以下)が望ましい状況で使用することができる。アルカリ及びアルカリ土類酸化物は、熱膨張係数を増加させる傾向がある。本明細書では、約5~6ppm/℃への熱膨張係数のわずかな増加は、液相粘度を増加させ、T200P温度を低下させることによって本開示のホウケイ酸ガラス組成物を溶融形成する能力とのバランスがとれている。さらには、以下に述べるように、本開示のホウケイ酸ガラス組成物は、該ホウケイ酸ガラス組成物から作られたガラスプライの破壊特性に驚くべき予期せぬ効果をもたらした。
【0103】
図5A~5Cに見られるように、各ガラス組成物は、ビッカース圧子先端がそれぞれプライに押し込まれた点から外側に延びる放射状亀裂510を示す。しかしながら、
図5Aに示されるように、本開示のホウケイ酸ガラス組成物のガラスプライは、放射状亀裂510を境界付け、そのさらなる成長を防止する、リング状亀裂520の形成を示す。特に、放射状亀裂510は、リング状亀裂520を横切らない(例えば、リング状亀裂520によって中断される)可能性が高いため(例えば、100の試料サイズのうち、5割を超える確率、統計的に起こりやすい、少なくとも51%の可能性、例えば少なくとも60%の可能性、少なくとも80%の可能性)、放射状亀裂510は放射状に広がり続けることはないであろう。有利には、放射状亀裂510の広がりを制限することによって、ガラスプライの全体的な強度に対する影響(強度を低下させる)が低減される。
【0104】
図5B及び5Cのグラフは、
図5B及び5Cの顕微鏡写真に示されている亀裂の線部分のトポグラフィーを示している。
図5Bに見られるように、放射状亀裂510は、グラフの中心に、谷530(表面下の深さが最も深い)を有する。
図5Bのソーダ石灰ケイ酸塩ガラスでは、ガラスの構造により、自由体積が比較的小さくなり、壊れたガラスネットワークが鋭い接触下でせん断され、これにより表面がピーク540まで積み重なる。したがって、
図5Bの顕微鏡写真に示されるように、放射状亀裂510の周囲の表面は盛り上がっている。
【0105】
図5Cの従来のホウケイ酸ガラス組成物では、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスよりも比較的大きい自由体積と、ガラス構造内に高度に接続されたネットワークとが存在し、鋭い接触下で優先的に緻密化する。放射状亀裂510は、依然としてグラフの中心に中心谷530を含むが、構造の緻密化(矢印550で示す)によって体積が保存されるため、放射状亀裂510のエッジには実質的なピークはなく、その結果、リング応力が高くなり、
図5Cの顕微鏡写真に示されるリング状亀裂のクラスターが生じる。
【0106】
図5Aに戻ると、
図5Cの従来のホウケイ酸ガラス組成物と本開示のホウケイ酸ガラス組成物との間には対比が見られる。
図5Aのグラフでは、リング亀裂応力が圧子の接触円からの距離の関数として示されている。従来のホウケイ酸ガラス組成物(曲線560で示される)では、接触円からの距離が増加するにつれてリング応力が減少し、接触円の周囲に最大リング亀裂応力が生じている。しかしながら、本開示のホウケイ酸ガラス組成物では、
図5A及び5Cの亀裂の応力場解析は、最大リング亀裂応力(星印570で示される)が驚くべきものであり、予想外に接触円の外周から離れたところにあることを示している。亀裂境界から離れた距離にリングを形成することにより、本開示のホウケイ酸ガラス組成物では、強度を制限する中央亀裂及び放射状亀裂510がリング状亀裂520内に含まれる。
【0107】
ビッカース押し込み試験は準静的荷重(すなわち、荷重の慣性効果が無視できるほどゆっくりと荷重が加えられる)を考慮するが、ビッカースダーツ落下試験を使用すると、溶融成形されたホウケイ酸ガラス組成物は、動的荷重に晒された場合に、従来のフロート成形ホウケイ酸ガラスと同様に性能を発揮し、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスよりも優れていることが判明した。ビッカースダーツ落下試験では、ビッカース圧子先端(136°)及び8.6gの重量を有するダーツを、ガラスプライに目に見える亀裂(すなわち、少なくとも10mmの長さを有する亀裂)が形成されるまで、高さを増加させながら(増分50mm)落下させた。ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスは、目に見える亀裂形成の平均高さが600mm未満であった。本開示のホウケイ酸ガラスは、目に見える亀裂の形成前の平均高さが600mmを超え、特に650mmを超えており、これは、従来のホウケイ酸ガラス組成物から予想される高さとほぼ同じであった。ダーツ落下試験は、本開示のホウケイ酸ガラス組成物におけるリング状亀裂の形成のためにガラスが緻密化する能力を超える、放射状亀裂の形成に必要な接触速度及び力の指標を提供すると考えられる。
【0108】
これも上で述べたように、本開示のホウケイ酸ガラス組成物から形成されるガラスプライは、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスよりも熱衝撃に対してより耐性がある。熱衝撃荷重の影響を
図6A及び6Bに示す。特に、本開示の溶融成形されたガラス組成物(
図6A)及びソーダ石灰ガラス(
図6B)の試験片を、
図5A及び5Bに関連して上述したように、ビッカース圧子を用いて2kgf(約19.6N)で押し込んだ。次に、試験片を最大で150℃まで加熱し、試験片がまだ熱いうちに水滴(25℃±5℃)を圧痕部位に滴下した。
図6Bに見られるように、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの亀裂は、この熱衝撃事象中に容易に伝播する。比較すると、溶融形成されたホウケイ酸ガラス組成物の亀裂は、
図6Aに示されるように、リング亀裂境界内に閉じ込められたままである。熱衝撃に対する耐性の理由の1つは、放射状亀裂の拡がりを防ぐリング亀裂境界である。熱衝撃に対する耐性の別の理由は、溶融成形されたホウケイ酸ガラス組成物のLTCTEがソーダ石灰ケイ酸塩よりもかなり低いことである(溶融成形可能なホウケイ酸ガラス組成物では5.6ppm/℃以下であるのに対し、ソーダ石灰ケイ酸塩では8.0ppm/℃)。
【0109】
特に明記しない限り、本明細書に記載の任意の方法は、その工程が特定の順序で実行されることを必要とすると解釈されることは、決して意図していない。したがって、方法クレームがその工程が従うべき順序を実際に列挙していないか、又は工程が特定の順序に限定されるべきであることが特許請求の範囲又は明細書に具体的に述べられていない場合には、いかなる特定の順序も、推測されることは、決して意図していない。加えて、本明細書で用いられる場合には、冠詞「a」は、1つ又は1つ以上の構成要素又は要素を含むことが意図されており、1つだけを意味すると解釈されることは意図されていない。
【0110】
開示される実施形態の精神又は範囲から逸脱することなく、さまざまな修正及び変更を加えることができることは、当業者にとって明白であろう。実施形態の精神及び本質を組み込んだ開示された実施形態の修正、組合せ、部分組合せ、及び変形が当業者に想起されうることから、本開示の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内のあらゆるものを含むと解釈されるべきである。
【0111】
例示的な実施形態によれば、上で開示された情報を促進するために、車両のフロントガラス又は他の物品は、第1の主面(例えば、外面、正面に面した表面)と該第1の主面とは反対側の第2の主面とを含む第1のプライ(例えば、外側プライ、ガラスシート;例えば、
図3の第1のガラス310のプライを参照)、第3の主面及び該第3の主面とは反対側の第4の主面を含む第2のプライ(例えば、外側プライ、ガラスシート;例えば、第2のガラスプライ320参照)、並びに第1のプライの第2の主面を第2のプライの第3の主面に結合する中間層(例えば、中間層330参照)を含みうる。企図される実施形態では、第1、第2、第3、及び/又は第4の表面のいずれかを、上に開示されるように、例えば、紫外線反射層、疎水性層、接着促進層などの機能層でコーティングすることができる。
【0112】
幾つかの実施形態では、第2のプライは強化されたソーダ石灰ガラスである。他の実施形態では、第2のプライは、イオン交換されたアルミノホウケイ酸ガラスである。さらに他の実施形態では、第2のプライはガラスセラミックである。幾つかの実施形態では、中間層は、ポリビニルブチラールなどのポリマーを含む。
【0113】
表1~3を参照すると、本明細書に開示される組成物の低温熱膨張係数は、4.4ppm/℃超から6.09ppm/℃未満、例えば、4.5ppm/℃から6ppm/℃、5.8ppm/℃、及び/又は5.6ppm/℃までなどの範囲でありうる。示されているように、LTCTEは、ASTM試験法E831(Ref4)に記載されている熱機械分析など、0℃から300℃の温度でガラスの膨張を測定することによって得られる。他の企図される実施形態では、本明細書に開示される特有の破壊挙動を有するガラスは、溶融成形のための粘度を有していなくてもよく、ガラスは、より低いLTCTE、又はより高いLTCTEを有しうる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物のLTCTEは、ソーダ石灰ガラスに関連しうる8.7ppm/℃未満、及び/又はより低いCTEのホウケイ酸塩に関連しうる3.25ppm/℃超である。したがって、本明細書に開示されるガラスは、一部の低CTEホウケイ酸塩よりも耐熱衝撃性が低い可能性があり、これは直感に反しうる。しかしながら、出願人らは、より高いCTE(例えば、3.25ppm/℃超)は、熱改質後のより高い表面圧縮をもたらすことを発見した。より低い熱衝撃耐性に関連する欠点は、以下でさらに論じる、本明細書に開示されるガラスの特有の破壊機構によって相殺することができる。その結果、本明細書に開示されるガラスは、8.7ppm/℃より低いLTCTEを有することにより、ソーダ石灰よりも耐熱性があり、また、他のホウケイ酸塩よりも鈍衝撃性能が向上している可能性がある。
【0114】
幾つかの実施形態では、第1のプライは、少なくとも200μmかつ1cm以下の厚さ、及び/又は0.1mmから約6mmなどの上記に開示された厚さを有する。他の企図される実施形態では、本明細書に開示されるホウケイ酸ガラスの第1のプライ、単一プライ、モノリスシート、基板、又は他の物品は、上に開示されるような厚さ、又は200μm未満及び/又は少なくとも20μm、若しくは少なくとも1cm及び/又は1m未満など他の厚さを有することができ、ここで、厚さは、それぞれの物品の平均厚さの100μm以内、例えば平均厚さの10μm以内など、物品(例えば、ガラスシート、プライ)全体にわたって一定又はほぼ一定であってよく、あるいは、厚さは、より厚いへり又は底部を有するガラス容器など、物品全体にわたって変化してもよい。
【0115】
例示的な実施形態によれば、中間層は第2のプライに対して第1のプライを緩衝し、それによってそれらの間の亀裂の伝達を軽減する。企図される実施形態では、中間層は、第1のプライ及び/又は第2のプライのガラスの剛性率よりも小さい、例えば0.7未満、例えば0.5未満の剛性率を有する。
【0116】
例示的な実施形態によれば、中間層は第1のプライに接着し、それによって第1のプライの破壊による破片の損失が抑制される。幾つかの実施形態では、中間層は、第1のプライに直接接触する。上で論じたように、幾つかの実施形態では、中間層は、第1のプライ、第2のプライ、及び/又は両方に接着し、第1のプライと第2のプライを結合する。例示的な実施形態によれば、第2のプライは、第1のプライを強化し、第1のプライをそれに印加される曲げ力に対して硬化させる。しかしながら、他の企図される実施形態では、第1のプライは、第2のプライ又は中間層から独立していてもよく、代わりに、例えばモノリスであってもよい。
【0117】
例示的な実施形態によれば、第1のプライは第2の主面が凹状に湾曲するような曲率を有し、第2のプライは第3の主面が凸状に湾曲して第2の主面と嵌合するような曲率を有し、上に開示されるように、その結果、第1のプライの第1の主面は、例えばフロントガラスなどの積層ガラスなどのガラスの外側に面する表面として構成され、車両に取り付けられたときに外側になるように構成される。
【0118】
例示的な実施形態によれば、第1のプライは、例えば本明細書に開示されるものなど、ホウケイ酸ガラス組成物を含む。構成酸化物に関して、第1のガラスプライのホウケイ酸ガラス組成物は、(i)SiO2、B2O3、及び/又はAl2O3;及び、(ii)1つ以上のアルカリ金属酸化物(アルカリ酸化物とも呼ばれる;例えば、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O)及び/又は1つ以上の二価カチオン酸化物(酸化亜鉛及び/又はアルカリ土類金属酸化物、またアルカリ土類酸化物とも呼ばれる、MgO、CaO、SrO、BaOなど)を含む。
【0119】
本明細書に開示される自己終端亀裂ループ挙動を示すような幾つかの実施形態によれば、SiO2、B2O3、1つ以上のアルカリ金属酸化物、及び、組成物中に含まれる場合にはAl2O3及び1つ以上の二価カチオン酸化物の酸化物基準のモルパーセント濃度は、次の関係の一部(例えば、1つ又はそれより多くの組合せ)又はすべてを満たす:(関係1)SiO2≧72モル%、例えばSiO2≧72.0、例えばSiO2≧73.0、例えばSiO2≧74.0、及び/又はSiO2≦92、例えばSiO2≦90;(関係2)B2O3≧10モル%、例えばB2O3≧10.0、例えばB2O3≧10.5、及び/又はB2O3≦20、例えばB2O3≦18;(関係3)(R2O+R’O)≧Al2O3、例えば(R2O+R’O)≧(Al2O3+1)、例えば(R2O+R’O)≧(Al2O3+2)、及び/又は(関係4)0.80≦(1-[(2R2O+2R’O)/(SiO2+2Al2O3+2B2O3)])≦0.93、ここで、R2Oは、1つ以上のアルカリ金属酸化物の濃度の合計であり、ホウケイ酸ガラス組成物中に含まれる場合には、R’Oは1つ以上の二価カチオン酸化物の濃度の合計である。R2Oは、例えば、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2Oの合計であってよく、R’Oは、例えば、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnOの合計でありうる。
【0120】
本明細書に開示される本発明のガラスは、追加の構成成分を含むことができる。幾つかの実施形態では、ホウケイ酸ガラス組成物は、P2O5をさらに含むことができる。特に、P2O5がガラスに添加される場合、それは、例えばR2O又はR’Oなどの関係(4)を考慮すると、回転不可能なネットワーク形成剤(u又はv)として扱う必要があり、ここで、関係(3)及び(4)は、(R2O+R’O+P2O5)≧Al2O3、及び0.80≦(1-[(2R2O+2R’O+2P2O5)/(SiO2+2Al2O3+2B2O3)])≦0.93のように改変することができる。例えばSnO2、Sb2O3、NaClなどの清澄剤の他の微量化学成分は、概して、回転可能性及び破壊挙動に関しては無視することができる。例えば着色剤などの他の微量化学成分は、例えば濃度が0.5モル%未満であれば、無視することができる。
【0121】
出願人らは、関係(3)及び(4)が、本明細書に開示されるホウケイ酸ガラス組成物の破壊挙動に関連し、それぞれ組成物の「回転可能性」の側面を特徴付けることができると考えている。SiO2・yAl2O3・zB2O3・uR2O・vROの形式の組成物の場合、x、y、z、u、vは、各タイプの酸化物のモル%又はモル分率を表すことができる。(u+v)≧yの場合、出願人らは、破壊挙動が回転可能性パラメータ(1-[(2R2O+2R’O)/(SiO2+2Al2O3+2B2O3)])に関連していると考えている。回転可能性パラメータの値が0.80から0.93の間である場合に、出願人は、ビッカース圧子試験により、小さい(直径1mm未満)亀裂ループ内に含まれる放射状及び横方向の亀裂が生成されることを発見した。結果として、この範囲内のガラスシートは、ビッカース圧子試験中に亀裂によって破損することがなく、他の亀裂を含む小さい丸みを帯びた亀裂が形成されるだけで、亀裂の広がりを防ぐことができる。
【0122】
同様に、出願人らは、密度が本明細書に開示されるホウケイ酸ガラス組成物の破壊挙動に関係する可能性があると考えている。例示的な実施形態によれば、ガラスの密度は、2.230g/cm3より大きいか、及び/又は2.397g/cm3未満であり、この亀裂挙動はこの範囲で観察されている。
【0123】
ビッカース圧子試験は、その両方がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、Gross et al., Crack-resistant glass with high shear band density, Journal of Non-Crystalline Solids, 494 (2018) 13-20; and Gross, Deformation and cracking behavior of glasses indented with diamond tips of various sharpness, Journal of Non-Crystalline Solids, 358 (2012) 3445-3452に論じられるように、ガラスの破壊挙動を特徴付けるために使用することができる。幾つかの実施形態では、第1のガラスプライのホウケイ酸ガラス組成物を有するガラスが、少なくとも2×2cm2の面積の主面を有する厚さ1mmの研磨された平らな、少なくとも10枚の試料(例えば、2cm×2cmの正方形)として形成され、かつ25℃、相対湿度50%で主面の中心に直角に向けられた、底面が正方形の136°の四角錐形をしたビッカース圧子を使用して試験され、圧子が最大で3kgf(約29.4N)まで60μm/秒の速度で準静的に変位され、押込荷重が10秒間保持される場合(試料の破壊による破損が最初に発生しない限り)、多くの場合(100回のうち少なくとも51回;10回のうち少なくとも6回)、試料を通じて圧子先端から放射状及び/又は横方向に延びる亀裂のすべて(すなわち、圧子の先端がガラスに接触した位置)が自己終端亀裂ループ(例えば、リング状亀裂)によって遮断され、それによってビッカース圧子による試料の破壊がループ内の亀裂に限定される。基本的に、圧子は、該圧子の下にあるガラスを押しつぶし、亀裂を生じさせる。しかしながら、亀裂ループが形成され、亀裂ループを超えた圧子の接触に起因する亀裂の広がりを停止する。対照的に、他のガラスでは、横方向又は放射状の亀裂がこのような亀裂ループに先立って形成される、及び/又は亀裂ループを通過する可能性があり(例えば、異常亀裂)、あるいは亀裂ループが形成されない可能性があり(例えば、正常な亀裂)、いずれの場合も、横方向又は放射状の亀裂は亀裂ループに含まれず、ガラス物品全体に伝播して、物品全体の破壊及び破損を引き起こす可能性がある。
【0124】
次の表100は、試験したさまざまなホウケイ酸ガラス組成物についての回転可能性パラメータ(1-[(2R2O+2R’O)/(SiO2+2Al2O3+2B2O3)])、密度、及びビッカース圧痕破壊挙動の値をまとめたものである。
【0125】
【0126】
表100では、一部の組成物について、破壊挙動は「異常」又は「正常」な破壊挙動ではなく、「含まれる」ものとして識別される。亀裂ループ内に含まれる半径方向及び横方向の亀裂(例えば、円形のリング状亀裂)は、押し込み試験後数時間経過しても(例えば、12時間、24時間、72時間後)、亀裂ループを超えて広がらなかった。このため、亀裂が含まれる試料は亀裂ループ内で局所的に亀裂が入るだけであり、亀裂ループを超えて破損することはなかった。表100に要約されているように、出願人は、破壊するまで、又は最大で3kgf(約29.4N)の押込荷重が10秒間保持されるまで、60μm/秒の速度で準静的に変位させた、底面が正方形の、136°の四角錐形をしたビッカース圧子を使用して試験した、厚さ1mmから3.3mmの研磨された平らな試料を観察した。さらには、対応する試料を冷水に入れて急速に冷却したときに、放射状及び横方向の亀裂が含まれていたという証拠として、亀裂は亀裂ループを超えて伝播することはなく、観察された試料は亀裂ループの外側で破損することはなかった。試料を急速に冷却した場合、亀裂ループ内に含まれていた放射状及び横方向の亀裂は、押し込み試験の数時間後(例えば、2時間、12時間、24時間、72時間後)でも亀裂ループを超えて広がることはなかった。
【0127】
表100でDUEとラベル付けされた組成物では、亀裂ループは、円形のリング又はリング状亀裂の形状であることが観察された(全体的に
図5A及び6A参照)。2kgf(約19.6N)の荷重がかかったとき、リングの半径は101~136マイクロメートルの範囲であった。3kgf(約29.4N)の荷重がかかったとき、リングの半径は119~229マイクロメートルの範囲であった。
【0128】
また、表100でDUEとラベル付けされた組成物については、厚さ1mmの試料に対して19の異なる押し込み試験を実施したところ、19の試験のうちの19が、圧子からの放射状及び横方向の亀裂を含む円形リング亀裂を有していたという結果が得られた。出願人らは、例えば、100の試料中、少なくとも90、例えば少なくとも95、少なくとも98など、より多くの試験で同様の結果を期待している。
【0129】
出願人らは、一部の試料では亀裂が遅れる可能性があるが、押し込み試験後約2時間以内に現れることを観察した。しかしながら、DUE試料の放射状及び横方向の亀裂は亀裂ループ内に含まれており、押し込み試験の数時間後でも(例えば、2時間、12時間、24時間、72時間後)、亀裂ループを超えて広がることはなかった。
【0130】
表100でDQSとラベル付けされた組成物については、厚さ1mmの試料に対して10の異なる押し込み試験を実施したところ、10の試料のうちの10が、圧子からの放射状及び横方向の亀裂を含む円形リング亀裂の形状で亀裂ループを生成したという結果が得られた。放射状及び横方向の亀裂は、押し込み試験の数時間後でも(例えば、2時間、12時間、24時間、72時間後)、亀裂ループを超えて広がることはなかった。出願人らは、例えば、100の試料中、少なくとも90、例えば少なくとも95、少なくとも98など、より多くの試験で同様の結果を期待している。
【0131】
同じDQS組成物を厚さ3.3mmの試料で試験したところ、20の異なる試験のうちの16が、圧子からの放射状及び横方向の亀裂を含む円形リング亀裂を生成したという結果が得られた。出願人らは、例えば、100の試料中、少なくとも50、例えば少なくとも60、少なくとも75など、より多くの試験で同様の結果を期待している。いかなる理論にも束縛されるものではないが、出願人らは、3.3mmの試料での発生率の減少は、厚さではなく、試料の不均一性によるものである可能性があると考えている。
【0132】
表100のDSX組成物の試料については、厚さ1mmの試料に対して21の異なる押し込み試験を実施したところ、19が、圧子からの放射状及び横方向の亀裂を含む円形リング亀裂を生成したという結果が得られた。出願人らは、例えば、100の試料中、少なくとも70、例えば少なくとも80、少なくとも90など、より多くの試験で同様の結果を期待している。これらの放射状及び横方向の亀裂は、押し込み試験の数時間後でも(例えば、2時間、12時間、24時間、72時間後)、亀裂ループを超えて広がることはなかった。
【0133】
図14に示されるように、出願人らは、本明細書に開示されるように、ホウケイ酸ガラスの試料の断面を観察し、フラクトグラフィによって試料の亀裂を観察することができた。画像は、圧痕位置の下にある正規円錐の亀裂を示しており、これは、その後、方向を変えて同じ面に戻り、おそらくは亀裂ループを形成するように見える。さらには、亀裂円錐は、試料を通って反対側の表面まで伸び続ける。出願人らは、これが、本開示のガラス及び構造について新たに発見された破壊挙動であると考えている。
【0134】
企図される実施形態では、本明細書に開示されるホウケイ酸ガラスのガラス物品(例えば、シート、プライ、膜、カバー、管、容器)は、上に開示されるように、例えば円形の外周など、ほぼ丸みを帯びた外周を有する1つ以上の亀裂ループを含む。亀裂ループは、ガラス物品の表面に沿った方向の断面寸法が10mm未満、例えば2mm未満、例えば1mm未満、例えば0.7mm未満(例えば
図6Aに示されるように)、及び/又は少なくとも10μm、例えば少なくとも50μm、例えば少なくとも100μm、例えば少なくとも200μmであるなど、特に小さくなりうる。
【0135】
物品の厚さ、物品の寸法の均一性、荷重速度、ホウケイ酸ガラスの組成及び微細構造、物品の下にある支持体、圧子の幾何学形状、又は他のパラメータが、破壊挙動に影響を与える可能性がある。例えば、出願人らは、上で論じたように、異なる荷重から生じる、DUE組成物による異なるサイズの亀裂ループを実証した。
【0136】
図14に示されるように、円錐が対向面まで延び、亀裂ループが円錐と交差する場合、円錐と組み合わせたリング状亀裂は、物品を完全に貫通する物品の亀裂で囲まれた部分を形成する可能性がある。亀裂で囲まれた部分の少なくとも一部は、例えば物品の表面などに丸みを帯びた外周を有しうる。亀裂で囲まれた部分は、概して、円錐形、砂時計形、又は別の形状を有していてもよい。本明細書に開示されるホウケイ酸ガラスの特有の破壊挙動に起因して、ガラス物品の意図的な機械的破壊を、穴を形成するため、又は円錐が物品を完全に貫通していない表面のくぼみなどの他の正確な形状を形成するために用いることができる。エッチング剤、レーザ、プラズマ、熱などを使用して、亀裂の阻止、亀裂に伴う鋭利なエッジの鈍化など、物品をさらに処理することができる。
【0137】
企図される実施形態では、物品は、上に開示されるように、少なくとも1つの亀裂ループ及び/又は関連構造(例えば、穴)を有することができ、あるいは、物品は、例えば少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000の亀裂ループなど、複数の亀裂ループを有してもよく、これが、亀裂ループに至るまでの(破壊した)ガラス内部が機械的に又は化学エッチング液などによって除去されるときに、円錐と結合してこのような物品を完全に通過し、穴を形成しうる。このような物品は、例えば、電池又は電子デバイスのふるい、メッシュ、パネル、基板、又は部品として有用でありうる。連続した小さい亀裂ループの線(例えば、ミシン目線)は、ループ間の誘導破壊を通じたシート又は形状の制御された分離に役立ちうる。物品に形成された穴により、物品の通気性、及び/又は液体、接着剤、流動状態のポリマー、導電性金属などが物品を通過できるようにすることができる。ループ亀裂は、物品上に一又は複数のパターンで配置されていてもよい。例えば1つより多くの亀裂ループを有する物品(例えば、シート)を用いた、幾つかの企図される実施形態では、亀裂ループは、例えば、同じ物品において、1つの亀裂ループが別の亀裂ループよりも少なくとも20%大きい直径を有するなど、サイズが変化してもよい。
【0138】
本明細書に開示される亀裂ループは、さまざまな方向に延びる多数のより小さい亀裂とは対照的に、単一の連続した亀裂リングでありうることから、例えば本明細書に開示されるホウケイ酸ガラスのシートなどの物品の制御された亀裂は、ガラスシートを亀裂させてビア又は他の穴若しくは特徴部を形成するためのレーザの使用とは異なる場合がある。本明細書に開示される試験によって実証されるように、亀裂ループは、ループを越えて伝播する可能性は低いであろう。幾つかの実施形態では、1つ以上の亀裂ループ又は関連構造を含む物品は、エッジ又は微小亀裂を鈍くするためのエッチング液又は他の手段を必要としないか、又は必要とすることが少ないであろう。
【0139】
とは言え、本明細書に開示される幾つかの本発明のガラスは、例えば、溶融成形することができるが、本明細書に開示されるようなビッカース圧痕試験において正常又は異常な亀裂を有する、ホウケイ酸ガラスであるガラスなど、従来の破壊挙動を有しうる。逆もまた同様であり、本明細書に開示される幾つかの本発明のガラスは、例えばホウケイ酸ガラスであるが溶融形成がより困難であるガラスなど、特有の亀裂ループ破壊挙動を有しうる。さらに他の実施形態は、特有の破壊挙動及び溶融成形性を有し、それによって積層フロントガラス又は本明細書に開示される他の物品の外側プライに特に有利なガラスを提供することができる。
【0140】
2020年5月12日出願の米国仮特許出願第63/023518号明細書、2021年5月24日出願の米国特許出願第17/327870号明細書、2020年10月7日出願の米国仮特許出願第63/088525号明細書、2020年10月12日出願の米国特許出願第17/068272号明細書、2021年1月12日出願の米国仮特許出願第63/136381号明細書、2021年2月19日出願の米国仮特許出願第63/151210号明細書、2021年4月21日出願の米国仮特許出願第63/177536号明細書、2021年5月11日出願の米国仮特許出願第63/209489号明細書の各々は、その全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる。2020年7月30日出願の米国仮特許出願第63/059105号明細書は、その全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる。2020年7月10日出願の米国仮特許出願第63/050181号明細書は、その全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0141】
例示的な実施形態に従って、上で開示された情報をさらに促進するために、さらなる例が本明細書に記載される。さらなる例を下記表200にまとめる。
【0142】
【0143】
表200に示されるように、実施例26の組成は、12モル%以上のB2O3、3モル%以上かつ5モル%以下の量のAl2O3、4モル%以上かつ6モル%以下の量のNa2Oを含み、かつ本明細書に記載される関係(1)、(2)、(3)、及び(4)を満たす。したがって、実施例26に従って構築されたガラスは、本明細書に記載される好ましい破壊挙動を示し、かつ本明細書に記載される用途に適したガラス物品を製造するために溶融成形することもできる。
【0144】
実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物は、次の関係:Na2O>Al2O3+1、(例えば、Na2O>Al2O3+1.25、Na2O>Al2O3+1.5、Na2O>Al2O3+1.75、Na2O>Al2O3+2.0)を満たす量のAl2O3とNa2Oとを含む。実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物のAl2O3含有量は、2.0モル%以上かつ5.0モル%以下(例えば、2.5モル%以上かつ5.0モル%以下、3.0モル%以上、又は5モル%以下)である。12.0モル%以上のB2O3(例えば、13.0モル%以上のB2O3、14.0モル%以上のB2O3、15.0モル%以上のB2O3かつ16モル%以下のB2O3)を有する組成物と組み合わせる場合、このようなAl2O3含有量は、ホウケイ酸ガラスの相分離を防ぐのに十分であるが、SiO2とB2O3がガラス内の主要なネットワーク形成剤になるように十分に低い。このようなレベルのAl2O3含有量では、Al2O3を超えるNa2O含有量がガラスの溶融中にシリカの溶解を助ける。実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物中のNa2O含有量は、6.25モル%以下(例えば、6.20モル%以下、6.15モル%以下、6.10モル%以下、6.05モル%以下、6.0モル%以下)であり、Na2Oがこの量を超えるとガラスのCTEが望ましくないほど高くなる可能性がある。このような実施形態では、Na2O含有量は少なくとも4.0モル%である。実施形態では、Na2O含有量がこれらの基準を満たす場合、K2Oが含まれる場合、K2Oは組成単位当たりのCTEをNa2Oよりも大幅に増加させる傾向があるため、K2Oは、Na2O未満の量、例えば、0.8モル%以上かつ5モル%以下の量であるが、Na2O未満の量で含まれる。例えば、実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物は、約0.1から約0.75のK2OのNa2Oに対する比を含む。前述の制約を満たすガラス組成物は、溶融成形に適しており、好ましい低いCTEを有しつつ、本明細書に記載される特有の破壊挙動を示すことができる。
【0145】
実施形態では、本開示のガラス組成物は、12.0モル%以上のB2O3、2.0モル%以上かつ5.0モル%以下のAl2O3又は3.0モル%以上かつ5.0モル%以下のAl2O3、4.0モル%以上かつ6.25モル%以下のNa2O、及び0.8モル%以上かつ5.0モル%以下のK2Oを含み、ここで、Na2OはAl2O3+1.0以上であり、K2O含有量のNa2O含有量に対する比は、0.1以上かつ0.75以下である。このような一連の組成範囲は、500kP以上の液相粘度を有し、本明細書に記載されるCTE要件(例えば、5.1ppm/℃以下のLTCTE)を満たす、本明細書に記載されるガラスの生成を容易にする。
【0146】
表300に提供される実施例26の組成を有する試料をさまざまな特性について試験した。試験の第1のセットでは、試料の化学的耐久性を決定するために、試料をさまざまな化学処理に供した。比較の基礎として、組成が異なる2つのガラス試料(2インチ(約5.08cm)×2インチ(約5.08cm))を同じ化学処理に供した。比較例26Aは、83.60モル%のSiO2、1.20モル%のAl2O3、11.60モル%のB2O3、3.00モル%のNa2O、及び0.70モル%のK2Oを含むホウケイ酸ガラスであった。比較例26Bは、着色されていないソーダ石灰ガラスであった。各試料を95℃の高温で5%w/wのHCl溶液に24時間浸漬した。同じ組成の試料を、95℃の高温で5%w/wのNaOH溶液に6時間浸漬した。浸漬後、試料を洗浄し、続いて乾燥させた。各試料の450nmにおける光透過率を測定した。ヘイズも測定した。結果を下記表300に示す。
【0147】
本明細書で用いられる場合、「透過ヘイズ」及び「ヘイズ」という用語は、その内容全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、「透明プラスチックのヘイズ及び光透過率の標準試験法(Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics)」と題されたASTM手順D1003に準拠して、約±2.5°の角円錐の外側で散乱する透過光のパーセンテージを指す。特に断りのない限り、本開示で報告されるヘイズの測定値はすべて、ヘイズガード透過率計(Paul N .Gardner Company社)で得られたものである。光学的に滑らかな表面では、透過ヘイズは概してゼロに近い。
【0148】
【0149】
表300に示されるように、本明細書に記載される実施例26による試料は、HCl溶液中での酸性化学処理の結果として、(約0.010mg/cm2の)比較的低い重量損失を有し、両方の比較例よりも優れた透過率を有する好ましい光学的品質を示した。NaOH溶液中での基本的な化学処理により、実施例26及び比較例26Aの両方の試料において比較的大きい重量損失が生じた。比較例26Bによる試料(ソーダ石灰ガラス)は、塩基性溶液中でより低い重量損失を経験したが、このような処理はヘイズの増加をもたらし、劣った光学的外観を示した。これらの結果は、本明細書に記載される組成物が、さまざまな液体のガラス容器(例えば、バイアル、注射器、アンプル、及びカートリッジなどの医薬品容器)などの用途に使用するための化学的耐久性を有しうることを示している。
【0150】
表200に示されるように、実施例26は0.1質量%のFe
2O
3を含んでいた。厚さ3.3mmの試料の透過スペクトルを、本明細書の表5に含まれる結果と比較するために測定した。
図15は、実施例26による試料、並びに0モル%のFe
2O
3を用いた別の実施例(上記表1の実施例3)について、ISO 13837に準拠して測定した、透過率のグラフを示している。見て分かるように、Fe
2O
3を添加すると、とりわけ赤外線スペクトル(750nm以上)における、全体的な測定透過率が低下する。UVカットオフ波長も300nmより大きく(約320nm)、鉄を含まない実施形態よりもUV吸収が大きいことが示唆され、透過率は可視スペクトル全体にわたって90%以上である。このような結果は、本明細書に記載されるガラスが、フロントガラスに使用するのに適しており、可視スペクトルにおける好ましい透過率を提供しつつ、太陽熱及びUV光線からの遮蔽を提供することを示している。実施例26による組成物は、可視スペクトル全体にわたって比較的高い透過率を有し、フロントガラスに使用するのに有利な透明性を提供すると同時に、太陽光のUV部分及びIR部分を遮断する。
【0151】
実施例26による組成を有する厚さ3.3mmの試料、及び実施例29による組成を有する厚さ2.1mmの試料を、光学試験用に調製した。各試料について、可視光線透過率(TVIS)及び全日射透過率(TTS)の透過率測定を行った。結果を下記表400に示す。
【0152】
【0153】
表400に示されるように、0.1質量%のFe2O3を含む試料は、より厚い厚さを有しているにもかかわらず、90%を超える可視透過率の値を有していたが、Fe2O3含有量がより多い試料ではそうではなかった。可視透過率の要件に応じて、本明細書に記載されるガラス組成物は、適切な量の酸化鉄を含んでいてもよい。
【0154】
図16を参照すると、厚さ2mmの試料と実施例26並びに対照例26a及び26bの組成物とを、熱衝撃を誘発する前後で、ビッカース圧子による押し込み後の曲げ強度試験に供した。曲げ強度試験はリング・オン・リング試験によって実施され、これは、周囲温度における、高性能セラミックの単調等二軸曲げ強度(Monotonic Equibiaxial Flexural Strength of Advanced Ceramics at Ambient Temperatures)についてのASTM C-1499-03標準試験方法に準拠して行った。特に、本明細書に記載される実施例26並びに対照例26a及び26bによる試料を、
図5A及び5Bに関連して上述したように、ビッカース圧子を用いて3kgf(約29.4N)で押し込んだ。次に、押し込み直後に一部の試験片に対してリング・オン・リング試験を実施した。押し込み後、125℃のホットプレート上で10分間試験片を加熱することにより、一部の試験片に熱衝撃を誘発させた。加熱後、試験片がまだ熱いうちに、水滴(25℃±5℃)を圧痕部位に滴下した。次に、冷却後の試料にリング・オン・リング試験を実施し、曲げ強度に対する熱衝撃の影響を決定した。
【0155】
図16に示されるように、実施例26による試料は、熱衝撃に供された後、対照例26aによる試料と同等のレベルの強度保持を示している。同等の結果は、リング・オン・リング試験手順の結果であると予想される。試験中、リングは圧痕の中心に置かれ、圧痕の反対側の表面でガラスに接触した。リングと圧痕の位置合わせにより、実施例26によるガラスによって示された内包破壊挙動(半径方向に延びる亀裂を含むリング亀裂)は、保持強度の測定値に最小限の影響しか与えなかったと考えられる。本開示のある特定のガラスのCTEが従来のボロフロートガラスより高いことを所与とすれば、熱衝撃を受けなかった試料と比較して、熱衝撃が曲げ強度の低下をもたらすことは驚くべきことではない。しかしながら、LTCTEが高いにもかかわらず、実施例26による試料は、対照例26aに従って構築された試料と同等レベルの保持強度を有していた。実施例26による試料は、対照例26bに従って構築された試料よりも高い保持強度レベルを有しており、これは、本明細書に記載されるガラスが、既存のガラス積層体に用いられるある特定の既存のガラス組成物よりも好ましい保持強度と熱性能を提供すること示している。
【0156】
図17A~17Cを参照すると、実施例26並びに対照例26a及び26bによる組成物を有する試料を、その表面に対して横方向ヌープスクラッチ試験に供して、耐スクラッチ性を決定した。ヌープダイヤモンドを保持した機械試験機を使用して、約23℃、相対湿度約50%で試料の表面を引っ掻いた。試料を24mm/分の速度で引っ掻き、各試料の引っ掻き傷の長さは5.0mmであった。
図17Aは、実施例26による組成物を有し、5N及び7Nの荷重で引っ掻かれた試料の画像を示している。
図17Bは、対照例26aによる組成物を有し、5N及び7Nの荷重で引っ掻かれた試料の画像を示している。
図17Cは、対照例26bによる組成物を有し、5N及び7Nの荷重で引っ掻かれた試料の画像を示している。示されるように、実施例26に従って構築された試料は、対照例よりも好ましい引っ掻き性能を示した。5Nの荷重を用いて試料を引っ掻くと、これらの試料の引っ掻き傷の横方向亀裂幅は、67.7μmの最大値を有していた。対照例26a及び26bに従って構築された試料は、それぞれ、337.44μm及び485μmの最大横方向亀裂幅を有していた。このような結果は、本明細書に記載されるガラス組成物が、現在、さまざまな用途(例えば、自動車用ガラス)で使用されているある特定のガラスよりも優れた有益な耐引っ掻き性能を提供することができることを示している。実施形態では、本開示によるガラス組成物を含むガラス物品は、ヌープダイヤモンドを使用して24mm/分の引っ掻き速度で引っ掻いた場合に、80μm以下(例えば、75μm以下、70μm以下)の最大横方向亀裂幅を示しうる。
【0157】
図3~4に関して本明細書で説明されるように、本明細書に記載されるガラス組成物は、湾曲したガラス積層体などの湾曲したガラス物品に使用することができる。例えば、本開示によるガラスは、
図3~4に示される第1のガラスプライ310として使用することができるが、異なる組成を有するガラス(例えば、アニールされたソーダ石灰ガラス、イオン交換されたアルミノホウケイ酸ガラスなど)を第2のガラスプライ310として使用することができる。湾曲したガラス積層体400の製造中(
図4参照)、例えば、ガラスプライ310、320は、共撓みプロセスに供されることがあり、ここで、ガラスプライ310、320は、最初は平面状態にあるが、適切な曲率深さまで湾曲させるために、適切な撓み温度まで加熱することができる。本明細書で用いられる場合、「撓み温度」とは、ガラス基板の粘度が約10
11ポアズである温度を意味する。撓み温度は、Vogel-Fulcher-Tamman(VFT)の式を当てはめることにより決定される:Log h=A+B/(T-C)、式中、Tは温度であり、A、B及びCはフィッティング定数であり、hは、曲げビーム粘度(BBV)測定を使用して測定されたアニール点データ、繊維の伸びによって測定された軟化点データに対する、動的粘度である。実施形態では、ガラスプライ310、320に用いられるガラス組成物は、互いに、5℃以上、約10℃以上、約15℃以上、約20℃以上、約25℃以上、約30℃以上、又は約35℃以上異なる撓み温度を含む。
【0158】
実施形態では、本明細書に記載されるガラス(本明細書に記載される実施例によるものなど)は、590℃以上かつ630℃以下の温度で1011ポアズの粘度を含む。このような粘度は、同じ温度でガラス積層体に用いられる、ある特定のソーダ石灰組成物に匹敵する。結果として、本開示によるガラスは、既存の方法及びプロセスを使用する共撓みに適しており、本明細書に記載される好ましい光学歪み及び形状整合性能を備えた積層体を形成することができる。
【0159】
適切な撓み温度まで加熱し、所望の湾曲形状へと撓ませた後、ガラスプライ310、320は適切な冷却速度で冷却されうる。冷却の結果、ガラスプライ310(本明細書に記載される実施例によるガラス組成物で形成されうる)の表面は、ガラスプライ310の中央領域よりも速い速度で冷却され、その結果、ガラスプライ310の表面から圧縮深さまで内側に延びる圧縮応力と、圧縮深さから内側に延びる中央領域の引張応力とが生じうる。このような引張応力及び圧縮応力は「アニーリング応力」である。実施形態では、撓み後の冷却による圧縮応力がガラスプライ310内に延びる圧縮深さは、ガラスプライ310の厚さ210の0.21倍に等しい(
図2参照)。このような実施形態における撓み後の冷却によって誘発される引張応力の大きさは、次のように近似することができる:
【0160】
【0161】
式中、Eはガラスプライ310のヤング率、αは冷却の温度範囲におけるガラスの熱膨張係数、tはガラスプライ310の厚さ、Rは冷却速度、Kはガラスの熱拡散率、νはガラスのポアソン比である。圧縮深さからガラスプライ26の表面まで積分した圧縮応力は、-2*σCTとして計算することができる。本明細書に記載される実施例26並びに対照例26a及び26bに従って構築されたガラスについて、膜応力を計算した。結果は下記表500に含まれる。
【0162】
【0163】
示されるように、アニールされた中央張力(表500に「CT」で示される)及び実施例26の圧縮応力(表500に「CS」で示される)の大きさは、対照例26b(ソーダ石灰ガラス)と対照例26a(既存のホウケイ酸ガラス)の値の間である。CS及びCTの値を、厚さ2.1mm及び3.8mmで計算した。2.1mmは、自動車用ガラスの外側プライに通常用いられる厚さである。示されるように、厚さ2.1mmでは、実施例26に従って構築された試料は、0.19MPaのアニールされた引張応力を含み、これは既存のホウケイ酸ガラスで達成される0.13MPaよりも大きく、ソーダ石灰ガラスで達成される0.52MPaよりも小さい。厚さ3.8mmでは、実施例26に従って構築された試料は、0.62MPaのアニールされた引張応力を含み、これは、既存のホウケイ酸ガラスで達成される0.42MPaよりも大きく、ソーダ石灰ガラスで達成される1.69MPaよりも小さい。アニーリング応力は、SCALPデバイスを使用して測定することができる。
【0164】
例示的な実施形態に従って、上に開示された情報をさらに促進するために、これより、本明細書に記載される例示的なガラス組成物のさらなる態様を説明する。
【0165】
以下の段落では、「トランプ」という用語は、ガラス組成物中の特定の構成成分を説明するために用いられる場合には、ガラス組成物に意図的には添加されていない、0.10モル%未満の量で存在する構成成分を指す。トランプ成分は、別の構成成分中の不純物として、及び/又はガラス組成物の処理中のトランプ成分の組成物への移動を通じて、ガラス組成物に意図せずに添加されうる。
【0166】
以下の段落では、「含まない」及び「実質的に含まない」という用語は、本明細書では互換的に用いられ、ガラス組成物に意図的に添加されているのではない、ガラス組成物中の特定の成分の量及び/又は不存在を指す。ガラス組成物は、微量の特定の構成成分を汚染物質又はトランプとして0.10モル%未満の量で含むことができるものと理解されたい。
【0167】
以下の段落では、「ガラス形成剤」という用語は、本明細書では、ガラス組成物中に単独で存在し(すなわち、トランプを除いて他の成分を含まず)、溶融物を約300℃/分以下の速度で冷却するときにガラスを形成することができる成分を指すために用いられる。
【0168】
以下の段落では、「改質剤」という用語は、一価又は二価の金属の酸化物、すなわちR2O又はROを指し、ここで「R」はカチオンを表す。改質剤をガラス組成物に添加して、溶融物及び得られるガラスの原子構造を変化させることができる。幾つかの実施形態では、改質剤は、ガラス形成剤中に存在するカチオン(例えば、B2O3のホウ素)の配位数を変化させる可能性ことができ、これにより、より重合した原子ネットワークが形成され、その結果、より良好なガラス形成を提供することができる。
【0169】
以下の段落では、「希土類金属」という用語は、IUPAC周期表のランタニド系に列挙されている金属に、イットリウム及びスカンジウムを加えたものを指す。本明細書で用いられる場合、「希土類金属酸化物」という用語は、例えば、La2O3のランタンの「+3」、CeO2のセリウムの「+4」、EuOのユウロピウムの「+2」など、さまざまな酸化還元状態にある希土類金属の酸化物を指すのに用いられる。概して、酸化物ガラス中の希土類金属の酸化還元状態は変化する可能性があり、特に酸化還元状態は、ガラスが溶融及び/又は熱処理(例えば、アニール)される加熱炉内のバッチ組成物及び/又は酸化還元条件に基づいて、溶融中に変化する可能性がある。特に明記しない限り、希土類金属酸化物は、本明細書では、希土類金属が「+3」の酸化還元状態を有する、正規化された式を指す。したがって、「+3」以外の酸化還元状態を有する希土類金属がガラス組成物バッチに添加される場合、化学量論を維持するために、酸素を添加又は除去することによってガラス組成物を再計算する。例えば、CeO2(「+4」の酸化還元状態のセリウム)をバッチ成分として使用する場合、得られるバッチ組成物は、2モルのCeO2が1モルのCe2O3に等しいと仮定して再計算され、得られるバッチ組成物はCe2O3で表される。本明細書で用いられる場合、「REmOn」という用語は、存在するすべての酸化還元状態における希土類金属酸化物の総含有量を指すために用いられ、「RE2O3」という用語は、「三価当量」とも指定される、「+3」の酸化還元状態にある希土類金属酸化物の総含有量を指すために用いられる。
【0170】
以下の段落で用いられる数式において、「min(A、B)」という用語は、値A及びBの最小値を意味し、「max(A、B)」という用語は、量A及びBの最大値を意味し、ここで、「A」及び「B」は任意の量(成分の濃度、特性値など)でありうる。「abs(X)」という用語は、量Xの絶対値(符号なし)を意味する。
【0171】
本明細書に記載されるガラス組成物では、SiO2は、主要なガラス形成剤の役割を果たしうる。理論に縛られはしないが、四面体[SiO4]は、ガラスの構造ネットワークの一部として、特に、四面体[AlO4]及び三角形[BO3]などの回転可能でありうる他の構造単位と接続されると考えられる。四面体と三角形との間のこのような接続は、本明細書に記載される異常な破壊挙動を引き起こすことができる。加えて、SiO2はガラス形成溶融物の粘度を増加させ、液相粘度を増加させ、熱膨張係数を減少させ、ヤング率を増加させ、したがって、機械的特性を改善することが判明した。次に、高いシリカ含有量では、ガラスの化学的耐久性が高くなりうる。しかしながら、ガラス組成物中のSiO2の含有量が高くなりすぎると、高温粘度が許容できないほど大きくなり、例えばガラス溶融タンク内の耐火物の腐食など、溶融に何らかの困難が生じる可能性がある。また、SiO2の含有量が非常に高い場合、ガラスの構造ネットワークに含まれる回転可能ユニットの量が不十分になる可能性があり、異常な破壊挙動が失われる可能性がある。したがって、実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物は、本明細書に記載される他の範囲のSiO2含有量に加えて、SiO2を、60.0モル%以上かつ96.0モル%以下、60.0モル%以上かつ80.0モル%以下、60.0モル%以上かつ77.5モル%以下、72.0モル%以上かつ78.0モル%以下、73.0モル%以上かつ77.0モル%以下、73.4モル%以上かつ76.8モル%以下、73.8モル%以上かつ76.4モル%以下、74.62モル%以上かつ75.88モル%以下、65.0モル%以上かつ75.9モル%以下、72.0モル%以上かつ75.9モル%以下、73.0モル%以上かつ96.0モル%以下、74.6モル%以上かつ75.9モル%以下の量で含むことができる。
【0172】
本明細書に記載されるガラス組成物において、B2O3は、SiO2及びAl2O3とともにネットワーク形成剤の役割を果たしうる。ガラスの構造ネットワークの一部として、酸化ホウ素は、他の成分の含有量に応じて、四面体[BO4]又は三角形[BO3]のいずれかを形成しうる。特定の理論に束縛されることは望まないが、特定のガラス組成物中の改質剤(一価金属酸化物R2O及び二価金属酸化物RO)の含有量がアルミナの量を超えると、四面体[BO4]の量が増加すると考えられる。実施形態では、三角形[BO3]及び四面体[BO4]の両方が、本明細書に記載されるガラス組成において重要な役割を果たしうる。四面体[BO4]は構造ネットワークの接続性を高めることができ、とりわけ低温でのネットワークの剛性を高めることができ、粘度を増加させることができ、溶融物からの耐火性鉱物の望ましくない沈殿を引き起こさないであろう。三角形[BO3]は、本明細書に記載される異常な破壊挙動をもたらしうる、回転可能な構造単位でありうる。したがって、本開示のガラス組成物は酸化ホウ素を含む。しかしながら、B2O3の含有量が高すぎると、液相粘度が低下する可能性があり、ガラス内に耐火性鉱物の沈殿を潜在的に生じさせる可能性がある。また、酸化ホウ素の含有量が高いと、ガラス組成物がアルカリ及び酸に対して十分に耐久性ではない可能性があり、あるいはガラスを形成する溶融物が液液相分離を起こしやすく、それにより、ガラスが不透明になる場合がある。実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物は、本明細書に記載される他の範囲のB2O3含有量に加えて、B2O3を、1.0モル%以上かつ25.0モル%以下、5.0モル%以上かつ20.0モル%以下、5.0モル%以上かつ17.0モル%以下、10.5モル%以上かつ19.0モル%以下、11.75モル%以上かつ17.75モル%以下、12.07モル%以上かつ13.8モル%以下の量で含むことができる。
【0173】
調査において、本明細書に記載されるガラス組成物にたとえ少量の希土類金属酸化物を添加しても、液相線温度の上昇と耐火性鉱物の沈殿を引き起こす可能性があることが経験的に判明した。また、希土類酸化物の添加により、得られるガラスの化学的耐久性、とりわけ酸に対する耐久性が低下する可能性があることも経験的に判明した。そのようなわけで、本開示の幾つかの実施形態では、ガラス組成物中の希土類金属酸化物の含有量は制限されるか、又はガラス組成物は、希土類金属酸化物を含まない(若しくは実質的に含まない)ことが好ましい場合がある。
【0174】
本開示のガラス組成物はまた、酸化リチウム(Li2O)を含みうる。酸化リチウムは、他のアルカリ金属酸化物と同様に、改質剤の役割を果たしうる。しかしながら、本開示のガラス組成物にLi2Oを添加すると、液相線温度が上昇し、液相粘度が低下する可能性があることが経験的に判明した。また、Li2Oを含むガラスは、同量の他のアルカリ金属酸化物を含むガラスと比較して、より低い化学的耐久性を有しうる。Li2Oは、本明細書に記載される異常な破壊挙動の減少を潜在的に引き起こすことも判明した。理論に縛られはしないが、Li2Oを添加すると、カチオンの充填密度が高くなり、密度が増加して異常な破壊挙動が減少する可能性があると考えられる。したがって、実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物中のLi2Oの含有量は制限される場合があるか、又はガラス組成物は、Li2Oを含まない(若しくは実質的に含まない)ことが好ましい場合がある。
【0175】
本開示のガラス組成物はまた、マグネシア(MgO)を含みうる。実施形態では、マグネシアをガラス組成物に添加して、得られるガラスのヤング率を増加させることができ、及び/又は他の機械的特性を改善することができる。マグネシアは、有利なことに、他のガラス改質剤と同じ程度までガラスの密度を増加させず、また、熱膨張係数も増加させない可能性がある。本開示のガラス組成物に少量のマグネシアを添加すると、異常な破壊挙動を改善することができることも判明した。しかしながら、ガラス組成物中のMgOの含有量が多すぎると、ガラス形成溶融物が耐火性鉱物を沈殿させ、これが液相線温度を上昇させ、及び/又はガラス物品に結晶欠陥を生じさせたりする可能性がある。したがって、実施形態では、本開示のガラス組成物は、マグネシア(MgO)を、0.0モル%以上から5.0モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含むことができる。実施形態では、ガラス組成物は、MgOを、5.0モル%以下、2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.8モル%以下、又は1.75モル%以下の量で含むことができる。実施形態では、ガラス組成物は、MgOを、0.0モル%以上かつ5.0モル%以下、0.0モル%以上かつ2.0モル%以下、0.0モル%以上かつ1.8モル%以下、0.35モル%以上かつ1.75モル%以下、0.68モル%以上かつ1.75モル%以下、0.0モル%以上かつ1.75モル%以下の量で含むことができる。
【0176】
本開示のガラス組成物はまた、酸化カルシウム(CaO)を含みうる。酸化カルシウムをガラス組成物に添加すると、化学的耐久性が向上し、ヤング率が増加し、したがって、機械的特性が向上する。また、CaO及びMgOなどのアルカリ土類酸化物は、液相線温度を低下させ、液相粘度を増加させる傾向がある。少量のCaOを添加すると、異常な破壊挙動が改善されうることが経験的に判明した。しかしながら、CaOの含有量が高いと、耐火性鉱物の沈殿を引き起こす可能性があり、その結果、ガラス物品に結晶欠陥が現れる可能性がある。また、B2O3の含有量が高いガラス組成物に多量のCaOを添加すると、溶融物の液液相分離が生じ、光透過率の低下をもたらす可能性がある。したがって、実施形態では、ガラス組成物は、酸化カルシウム(CaO)を、0.0モル%以上から5.0モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含むことができる。幾つかの他の実施形態では、ガラス組成物は、CaOを、5.0モル%以下、2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.9モル%以下、1.7モル%以下、1.5モル%以下、又は1.0モル%以下の量で含むことができる。幾つかのさらなる実施形態では、ガラス組成物は、CaOを、0.0モル%以上かつ2.0モル%以下、0.0モル%以上かつ1.9モル%以下、0.0モル%以上かつ1.7モル%以下、0.0モル%以上かつ1.5モル%以下、0.02モル%以上かつ1.02モル%以下、0.0モル%以上かつ5.0モル%以下、0.0モル%以上かつ1.0モル%以下の量で含むことができる。
【0177】
実施形態では、本開示のガラス組成物は、5.0モル%以下、又は2.5モル%以下のCaOとMgOの合計量(CaO+MgO)を有しうる。実施形態では、CaO+MgOは、0.0モル%以上かつ5.0モル%以下、又は0.0モル%以上かつ2.5モル%以下である。
【0178】
本開示のガラス組成物はまた、ジルコニア(ZrO2)を含みうる。ジルコニアは、機械的特性を改善するため及び/又はガラス形成溶融物の粘度を高めるために、本開示のガラス組成物に添加することができる。しかしながら、本開示の幾つかの実施形態では、とりわけアルカリ金属酸化物の総含有量(モル%単位)がアルミナの含有量(モル%単位)を超えないか、又はわずかに超えるだけである場合、ガラス組成物にジルコニアを添加すると、場合によっては非常に少量であっても、液相線温度が上昇するか、及び/又はガラス形成溶融物からの耐火性鉱物の沈殿を生じさせる可能性があることが経験的に判明した。したがって、本開示の幾つかの実施形態では、ガラス組成物中のジルコニアの含有量は制限されるか、又はガラス組成物はZrO2を実質的に含まない場合がある。実施形態では、ガラス組成物は、ジルコニア(ZrO2)を、0.0モル%以上から5.0モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含むことができる。幾つかの他の実施形態では、ガラス組成物は、ZrO2を、5.0モル%以下、2.5モル%以下、1.5モル%以下、1.35モル%以下、1.2モル%以下、又は1.0モル%以下の量で含むことができる。幾つかのさらなる実施形態では、ガラス組成物は、ZrO2を、0.0モル%以上かつ1.5モル%以下、0.0モル%以上かつ1.35モル%以下、0.0モル%以上かつ1.2モル%以下、0.01モル%以上かつ1.01モル%以下、0.0モル%以上かつ5.0モル%以下、0.0モル%以上かつ1.0モル%以下の量で含むことができる。
【0179】
本開示のガラス組成物は、酸化バリウム(BaO)を含みうる。酸化バリウムは、他の原材料の不純物としてガラス組成物中に意図せずに添加される可能性があり、あるいは、より低い溶融温度又はより高い化学的耐久性を優先して意図的に添加される場合もある。本開示のガラス組成物にBaOを添加すると、液相線温度が上昇し、冷却及び成形時にガラス形成溶融物の結晶化を引き起こす可能性があることが経験的に判明した。また、大きいカチオンとしてのバリウムは異常破壊挙動を軽減しうる。したがって、本開示のガラス組成物において、BaOの含有量は制限され、ガラス組成物は、BaOを含まないことが好ましい可能性がある。実施形態では、ガラス組成物は、酸化バリウム(BaO)を、0.0モル%以上から0.2モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含むことができる。幾つかの他の実施形態では、ガラス組成物は、BaOを、0.2モル%以下、又は0.1モル%以下の量で含むことができる。幾つかのさらなる実施形態では、ガラス組成物は、BaOを、0.0モル%以上かつ0.2モル%以下、0.0モル%以上かつ0.1モル%以下の量で含むことができる。
【0180】
本開示のガラス組成物は、酸化カリウム(K2O)を含みうる。酸化カリウムは、他の原材料中の不純物としてガラス組成物に意図せずに添加される可能性があり、あるいは、例えばガラス形成溶融物を液-液相分離から保護するために意図的に添加される場合もある。K2Oを添加すると、ガラスの化学的耐久性が向上する、及び/又は液相線温度が低下する可能性がある。理論に縛られはしないが、K2Oは、酸化ホウ素によって生成される構造単位を三角形[BO3]から四面体[BO4]へと変換し、これによりガラス組成物におけるこれらの構造単位間のバランスが改善され、その結果、異常な破壊挙動を改善することができると考えられる。しかしながら、本開示のガラス組成物にK2Oを添加すると、ガラスのヤング率が低下する可能性があり、これによりガラス物品の機械的特性が低下する可能性がある。また、大量のK2Oを添加すると、ガラスの熱膨張係数が許容できないほど増加する可能性がある。したがって、本開示の幾つかの実施形態では、ガラス組成物中のK2Oの含有量は制限されるか、又はガラス組成物はK2Oを実質的に含まない場合がある。実施形態では、ガラス組成物は、酸化カリウム(K2O)を、0.0モル%以上から10.0モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含むことができる。実施形態では、ガラス組成物は、K2Oを、0.0モル%以上かつ3.0モル%以下、0.3モル%以上かつ2.8モル%以下、0.6モル%以上かつ2.5モル%以下、0.92モル%以上かつ2.18モル%以下、0.0モル%以上かつ10.0モル%以下、0.3モル%以上かつ2.2モル%以下、0.6モル%以上かつ10.0モル%以下、0.6モル%以上かつ2.2モル%以下、0.8モル%以上かつ2.2モル%以下、0.9モル%以上かつ2.2モル%以下、5.0モル%以上かつ7.0モル%以下の量で含むことができる。
【0181】
本開示のガラス組成物はまた、アルミナ(Al2O3)を含みうる。本開示のガラス組成物では、アルミナは、B2O3及びSiO2とともにネットワーク形成剤の役割を果たす。ネットワーク形成剤としてのアルミナは、ガラス形成溶融物の粘度を増加させ、液相粘度を増加させ、結晶化からより良く保護することができる。また、アルミナを添加すると、たとえ少量であっても、溶融物の相分離を防ぐことができる。その結果、アルミナはガラスの化学的耐久性を向上させることができる。したがって、本開示のガラス組成物は、ある程度の量のアルミナを含む。しかしながら、アルミナを多量に添加すると、溶融物から耐火性鉱物の沈殿を引き起こす可能性があり、これによりガラス物品に結晶欠陥が生じる可能性がある。また、アルミナの含有量が多くなると、粘度が高くなりすぎ、ガラス溶解槽内の耐火物の腐食を引き起こす場合がある。したがって、本開示の幾つかの実施形態では、アルミナの含有量は、制限される。実施形態では、ガラス組成物は、アルミナ(Al2O3)を、0.3モル%以上から5.3モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含むことができる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、Al2O3を、0.3モル%以上、2.0モル%以上、2.2モル%以上、2.4モル%以上、2.5モル%以上、3.45モル%以上、3.8モル%以上、4.3モル%以上、4.8モル%以上、又は5.0モル%以上の量で含むことができる。幾つかの他の実施形態では、ガラス組成物は、Al2O3を、5.3モル%以下、5.0モル%以下、4.8モル%以下、4.3モル%以下、4.0モル%以下、3.9モル%以下、3.8モル%以下、3.65モル%以下、3.53モル%以下、又は2.5モル%以下の量で含むことができる。幾つかのさらなる実施形態では、ガラス組成物は、Al2O3を、0.3モル%以上かつ5.3モル%以下、2.0モル%以上かつ4.0モル%以下、2.2モル%以上かつ3.9モル%以下、2.4モル%以上かつ3.65モル%以下、3.45モル%以上かつ3.53モル%以下、0.3モル%以上かつ2.5モル%以下、2.0モル%以上かつ5.3モル%以下、2.0モル%以上かつ2.5モル%以下、2.2モル%以上かつ2.5モル%以下、2.4モル%以上かつ2.5モル%以下、2.5モル%以上かつ5.3モル%以下、3.8モル%以上かつ3.9モル%以下の量で含むことができる。
【0182】
本開示のガラス組成物はまた、酸化ナトリウム(Na2O)を含みうる。酸化ナトリウムは改質剤の役割を果たし、アルミニウムとホウ素のカチオンによって形成される構造単位を四面体型([AlO4]及び[BO4])に変換することができ、その結果、回転可能及び回転不可能であると想定される構造単位間により良好なバランスがもたらされ、ガラスの異常な破壊挙動が改善される可能性がある。また、Na2Oを添加すると、ガラスの化学的耐久性が向上し、液相線温度が低下し、液相粘度が増加しうるため、ガラス形成溶融物を結晶化からより良好に保護することができる。しかしながら、Na2Oを大量に添加すると、ヤング率が許容できないほど低下し、したがって、ガラス物品の機械的特性が悪化する可能性がある。また、ガラス組成中に大量のNa2Oが含まれると、熱膨張係数が許容できないほど増加し、場合によってはガラスの化学的耐久性が低下する可能性がある。したがって、本開示の幾つかの実施形態では、ガラス組成物中の酸化ナトリウムの含有量が制限されるか、又はガラス組成物はNa2Oを実質的に含まない場合がある。実施形態では、ガラス組成物は、酸化ナトリウム(Na2O)を、0.0モル%以上から10.0モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含むことができる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、Na2Oを、0.0モル%以上、2.0モル%以上、2.5モル%以上、2.9モル%以上、3.4モル%以上、4.55モル%以上、5.0モル%以上、7.0モル%以上、8.0モル%以上、又は9.0モル%以上の量で含むことができる。幾つかの他の実施形態では、ガラス組成物は、Na2Oを、10.0モル%以下、9.7モル%以下、9.0モル%以下、8.0モル%以下、7.0モル%以下、6.0モル%以下、5.5モル%以下、5.45モル%以下、5.3モル%以下、5.2モル%以下、又は5.0モル%以下の量で含むことができる。幾つかのさらなる実施形態では、ガラス組成物は、Na2Oを、0.0モル%以上かつ5.2モル%以下、2.0モル%以上かつ8.0モル%以下、2.0モル%以上かつ6.0モル%以下、2.5モル%以上かつ5.3モル%以下、2.9モル%以上かつ5.5モル%以下、3.4モル%以上かつ6.0モル%以下、4.55モル%以上かつ5.45モル%以下、0.0モル%以上かつ10.0モル%以下、2.0モル%以上かつ5.0モル%以下、2.5モル%以上かつ5.0モル%以下、3.4モル%以上かつ5.0モル%以下、4.55モル%以上かつ5.0モル%以下の量で含むことができる。
【0183】
本開示のガラス組成物は、フッ素(F)を含みうる。フッ素は、清澄剤の成分として、又は液相線温度を低下させる成分として、本開示のガラス組成物に少量添加することができる。しかしながら、ガラス組成物にフッ素を加えると、環境問題を引き起こす可能性がある。そのようなわけで、本開示の幾つかの実施形態では、フッ素の含有量は制限され、好ましくは、ガラス組成物はフッ素を含まない場合がある。
【0184】
実施形態では、本開示のガラス組成物は、1.0モル%以下又は0.5モル%以下である、鉄、クロム、モリブデン、バナジウム、銅、及びコバルトの合計量(Fe+Cr+Mo+V+Cu+Co)を含みうる。実施形態では、Fe+Cr+Mo+V+Cu+Coは、0.0モル%以上かつ1.0モル%以下、又は0.0モル%以上かつ0.5モル%以下である。
【0185】
実施形態では、本開示のガラス組成物は、0.5モル%以下又は0.25モル%以下である、酸化鉄(II)と酸化鉄(III)の合計量(FeO+Fe2O3)を含むことができる。実施形態では、FeO+Fe2O3は、0.0モル%以上かつ0.5モル%以下、又は0.0モル%以上かつ0.25モル%以下である。
【0186】
実施形態では、本開示のガラス組成物は、1.0モル%以下、又は0.5モル%以下である、酸化ランタンと酸化イットリウム(III)の合計量La2O3+Y2O3を有しうる。実施形態では、La2O3+Y2O3は、0.0モル%以上かつ1.0モル%以下、又は0.0モル%以上かつ0.5モル%以下である。
【0187】
実施形態では、本開示のガラス組成物は、0.0モル%以上、5.0モル%以上、又は6.11モル%以上の酸化ナトリウムと酸化カリウムの合計量(Na2O+K2O)を有しうる。実施形態では、Na2O+K2Oは、6.84モル%以下、又は5.0モル%以下である。実施形態では、Na2O+K2Oは、0.0モル%以上かつ6.84モル%以下、又は0.0モル%以上かつ5.0モル%以下である。
【0188】
実施形態では、本開示のガラス組成物は、0.0モル%以上、5.0モル%以上、又は7.7モル%以上の酸化ナトリウムとアルミナの合計量(Na2O+Al2O3)を有しうる。実施形態では、Na2O+Al2O3は、9.7モル%以下、8.9モル%以下、又は5.0モル%以下である。実施形態では、Na2O+Al2O3は、0.0モル%以上かつ9.7モル%以下、0.0モル%以上かつ8.9モル%以下、又は0.0モル%以上かつ5.0モル%以下、5.0モル%以上かつ9.7モル%以下、5.0モル%以上かつ8.9モル%以下、又は7.7モル%以上かつ9.7モル%以下である。
【0189】
実施形態では、本開示のガラス組成物は、95.0モル%以上である、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ホウ素、及びシリカの合計量(Na2O+K2O+MgO+CaO+ZnO+Al2O3+B2O3+SiO2)を有しうる。
【0190】
実施形態では、本開示のガラス組成物は、0.000以上、又は0.95以上である、比(Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)/(R2O+RO)の値を有しうる。ナトリウム及びカリウムの酸化物、並びにアルカリ土類金属酸化物及び酸化亜鉛は、得られるガラス物品の光透過率を低下させず、本開示のガラス溶融物中によく溶解するため、改質剤(R2O及びRO)の最も一般的な選択肢である。例えば、MnO、NiO、CuO、Ag2O、PbOなどの他の一価及び二価金属酸化物は、溶解性が低いか、又は望ましくない着色をもたらすか、又は環境への懸念を引き起こすか、又はより高価である可能性がある。
【0191】
実施形態では、本開示のガラス組成物は、Na2O/Al2O3の比の値を有しうる。Na2Oがガラス組成物に添加される場合、それを、異なるネットワーク形成剤によって形成される構造単位と結合させることが望ましい場合がある。これが起こると、ナトリウムイオンの移動度が低下し、ガラスの化学的耐久性が若干向上する可能性がある。理論に縛られはしないが、このような結合は、ガラス組成物中のNa2Oの含有量がAl2O3の含有量以上である場合に起こりうると考えられる。したがって、本開示の幾つかの実施形態では、Na2O/Al2O3比(モルパーセント単位)が約1.0以上であることが望ましい場合がある。一方、Na2O/Al2O3比が高くなりすぎると、本明細書に記載される異常な破壊挙動が抑制される可能性がある。したがって、実施形態では、Na2O/Al2O3は、1.0モル%以上、1.01モル%以上、1.1モル%以上、又は1.5モル%以上である。実施形態では、Na2O/Al2O3は、1.67モル%以下、1.6モル%以下、1.5モル%以下、又は1.35モル%以下である。実施形態では、Na2O/Al2O3は、1.0モル%以上かつ1.35モル%以下、1.01モル%以上かつ1.67モル%以下、1.0モル%以上かつ1.67モル%以下、1.0モル%以上かつ1.6モル%以下、1.0モル%以上かつ1.5モル%以下、1.01モル%以上かつ1.6モル%以下、1.01モル%以上かつ1.5モル%以下、又は1.01モル%以上かつ1.35モル%以下、1.1モル%以上かつ1.67モル%以下、1.1モル%以上かつ1.6モル%以下、1.1モル%以上かつ1.5モル%以下、又は1.1モル%以上かつ1.35モル%以下である。
【0192】
実施形態では、本開示のガラス組成物は、ある特定の数値範囲内のパラメータB2O3+3.5*Al2O3を含みうる。本明細書に記載される異常な破壊挙動は、(B2O3+3.5*Al2O3)の合計が約25モル%である場合に、好ましく観察されることが経験的に判明した。したがって、実施形態では、B2O3+3.5*Al2O3は、20.3モル%以上、24.2モル%以上、又は25モル%以上である。実施形態では、B2O3+3.5*Al2O3は、27.5モル%以下、25.9モル%以下、又は25モル%以下である。実施形態では、B2O3+3.5*Al2O3は、20.3モル%以上かつ27.5モル%以下、20.3モル%以上かつ25.9モル%以下、又は20.3モル%以上かつ25モル%以下、24.2モル%以上かつ27.5モル%以下、24.2モル%以上かつ25.9モル%以下、又は24.2モル%以上かつ25モル%以下、25モル%以上かつ27.5モル%以下、又は25モル%以上かつ25.9モル%以下である。
【0193】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物は、5.5以上から8.0以下である、液相粘度(Log(etaliqP))の十進対数、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲を示しうる。実施形態では、Log(etaliqP)は、5.5以上、5.9以上、6.0以上、6.5以上、7.4以上、7.5以上、7.6以上、又は7.8以上である。実施形態では、Log(etaliqP)は、8.0以下、7.8以下、7.7以下、7.6以下、7.5以下、7.4以下、6.5以下、又は6.0以下である。実施形態では、Log(etaliqP)は、5.5以上かつ8.0以下、5.9以上かつ7.7以下、5.5以上かつ6.0以下、5.9以上かつ6.0以下、6.0以上かつ8.0以下、6.0以上かつ6.5以下、7.4以上かつ8.0以下、7.4以上かつ7.5以下である。
【0194】
実施形態では、本開示によるガラス組成物は、次の関係に従って計算される改質剤過剰パラメータMexcを示しうる:
Mexc=max(0、(Alk2O+RO)-(Al2O3+B2O3))、(式2)
ここで、Alk2Oはアルカリ金属酸化物の総和であり、ROは二価金属酸化物の総和であり、化学式はガラス組成物中の対応する成分の量を意味する。Mexcは、ネットワーク形成剤Al2O3及びB2O3に対する改質剤R2O及びROの過剰を表す。Al2O3+B2O3の総含有量がR2O+ROの総含有量を超える場合、改質剤の過剰パラメータはゼロに等しいと定義される。理論に縛られはしないが、Mexcの値は、ガラスの構造ネットワーク内の非架橋酸素原子の量と相関すると考えられる。
【0195】
実施形態では、本開示によるガラス組成物は、次の関係に従って計算される総多面体パラメータPtotalを示しうる:
Ptotal=SiO2+2*Al2O3+2*B2O3、(式3)
ここで、化学式はガラス組成物中の対応する成分の量を意味する。Ptotalは、ガラス組成物中に存在する酸化物の合計100モル当たりのグラム原子で表したネットワーク形成カチオンSi4
+、Al3
+及びB3
+の総数を表すことができる。
【0196】
実施形態では、本開示によるガラス組成物は、次の関係に従って計算されるホウ素の過剰パラメータBexcを示しうる:
Bexc=max(0、B2O3-max(0,R2O+RO-Al2O3))、(式4)
ここで、R2Oは一価金属酸化物の総和であり、ROは二価金属酸化物の総和であり、化学式はガラス組成物中の対応する成分の量を意味する。Bexcは、ガラス組成物中のアルミナの含有量(モル%単位)を差し引いた後の、改質剤R2O及びROの含有量(モル%単位)に対する過剰の酸化ホウ素をモル%で表している。アルミナの含有量がR2O及びROの合計含有量以上である場合、ホウ素の過剰パラメータは、ガラス組成中の酸化ホウ素の含有量に等しいと仮定される。
【0197】
実施形態では、本開示によるガラス組成物は、次の関係に従って計算されるシリカの過剰パラメータSexcを示しうる:
Siexc=SiO2-6*min(Alk2O,Al2O3)-2*min(Alk2O+RO-Al2O3,B2O3)、(式5)
ここで、Alk2Oはアルカリ金属酸化物の総和であり、ROは二価金属酸化物の総和であり、化学式はガラス組成物中の対応する成分の量を意味する。Sexcは、アルミニウムとホウ素のカチオンによって形成される構造多面体と関連していないと想定される、シリカの含有量を近似している。
【0198】
実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物のパラメータPtotal、Mexc、Bexc、及びSexcは、次の関係を満たすことができる:
(abs(2*Mexc+2*min(B2O3,R2O+RO-Al2O3)+0.65*Ptotal-80))-- 0.5*(abs(Siexc-max(24+2*Bexc,44))))≦0.000
実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物のパラメータPtotal、Mexc、Bexc、及びSexcは、次の関係を満たすことができる:
(abs(2*Mexc+2*min(B2O3,R2O+RO-Al2O3)+0.65*Ptotal-80))-(2.8-0.5*(abs(Siexc-max(24+2*Bexc,44))))≦0.000。
【0199】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物を含むガラスは、0.83以上である、1-2*(Alk2O+RO)/Ptotalの量を有しうる。
【0200】
本明細書に記載される組成物を含むガラスはまた、次のように計算される回転不可能な多面体パラメータPnrを含みうる:
Pnr=2*max(0,(Alk2O+RO)-(Al2O3+B2O3))+2*min(B2O3,R2O+RO-Al2O3)、(式6)
ここで、Alk2Oはアルカリ金属酸化物の総和であり、ROは二価金属酸化物の総和であり、R2Oは一価金属酸化物の総和であり、化学式はガラス組成物中の対応する成分の量を意味する。理論に縛られはしないが、Pnrは、ガラス組成物中に存在する酸化物の合計100モルあたりの回転不可能なネットワーク形成カチオンのグラム原子数で、上記のように回転することができないネットワーク形成カチオンSi4
+、Al3
+及びB3
+の概数を表すと考えられる。
【0201】
本明細書に記載される組成物を含むガラスはまた、次式によって計算される量のネットワーク回転可能性比Rnrを含みうる:
Rnr=1-2*(Alk2O+RO)/(SiO2+2*Al2O3+2*B2O3)、(式7)
ここで、Alk2Oはアルカリ金属酸化物の総和であり、ROは二価金属酸化物の総和であり、化学式はガラス組成物中の対応する成分の量を意味する。出願人らは、Rnrが本明細書に開示されるホウケイ酸ガラス組成物の破壊挙動に関係し、それぞれの組成物の「回転可能性」の側面を特徴付けることができると考えている。xSiO2・yAl2O3・zB2O3・uR2O・vROの形式の組成物の場合、x、y、z、u、vは、各タイプの酸化物のモル%又はモル分率を表すことができる。(u+v)≧yの場合、出願人らは破壊挙動が式7によって決定されるネットワーク回転可能性比Rnrに関連していると考えている。Rnrが約0.80から約0.93の間にある場合に、出願人は、ビッカース圧子試験により、小さい(直径1mm未満)亀裂ループ内に含まれる放射状及び横方向の亀裂が生じることを発見した。結果として、この範囲内のガラスシートはビッカース圧子試験中に亀裂が発生して破損することはなく、他の亀裂を含む小さい丸い亀裂が形成されるだけで、亀裂の広がりを防ぐことができる。
【0202】
実施形態では、本開示によるガラス組成物は、次のように計算されるネットワークバランス基準Cnbを含みうる:
Cnb=abs(SiO2-6*min(Alk2O,Al2O3)-2*min(Alk2O+RO-Al2O3,B2O3)-max(24+2*max(0,B2O3-max(0,R2O+RO-Al2O3)),44))、 式(8)
ここで、Alk2Oはアルカリ金属酸化物の総和であり、ROは二価金属酸化物の総和であり、R2Oは一価金属酸化物の総和であり、化学式はガラス組成物中の対応する成分の量を意味する。Cnbは、本明細書に記載されるパラメータSiexcとBexcとの関係を表す。本明細書に記載される例示的な組成物について、Siexcパラメータの値をBexcパラメータの関数としてプロットする場合、例は、線y=24-x及びy=44-3*xを中心にグループ化されており、ここで、yはパラメータSiexcに対応し、xはパラメータBexcに対応する。本明細書に記載される実施例は、これらの式で計算した最高値付近に位置しており、次のように表すことができる:
Siexc=max(24-Bexc、44-4*Bexc)、 (式9)
理論に縛られはしないが、Siexcと式9の右側に定められている式max(24-Bexc、44-4*Bexc)との差が、構造ネットワークにおけるケイ素とホウ素の結合性のバランスを特徴づけることができると考えられる。当該差の絶対値をSiexcとBexcの式に代入すると、最終的にCnbの式が得られる。言い換えれば、ネットワークバランス基準は、Siexc及びBexcを用いて次のように表現することができる:
Cnb=abs(Siexc-max(24-Bexc、44-4*Bexc))(式10)
異常な及び中間的な破壊挙動を示す本明細書に記載される例示的な組成物は、例えば、5.0以下、又は4.5以下、又は4.0以下、又は3.5以下、又は3.0以下、又は2.5以下、又はさらに2.0以下など、比較的小さい値のCnbによって特徴付けられる。
【0203】
「破壊カテゴリ」という用語は、ビッカース圧子試験の実施中に観察される破壊挙動のタイプを指し、次の3つのカテゴリを用いて説明される:「正常」、「異常」、及び「中間」。前記ビッカース圧子試験は、その両方がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、Gross et al., Crack-resistant glass with high shear band density, Journal of Non-Crystalline Solids, 494 (2018) 13-20;及び、Gross, Deformation and cracking behavior of glasses indented with diamond tips of various sharpness, Journal of Non-Crystalline Solids, 358 (2012) 3445-3452で論じられているように、ガラスの破壊挙動を特徴付けるために使用することができる。幾つかの実施形態では、第1のガラスプライのホウケイ酸ガラス組成物を有するガラスが、少なくとも2×2cm2の面積(例えば、2cm×2cmの正方形)の主面を有する厚さ1mmの少なくとも10の研磨された平らな試料(例えば、100の試料)として形成され、かつ25℃、相対湿度50%で主面の中心に直角に向けられた、底面が正方形の136°の四角錐形をしたビッカース圧子を使用して試験され、圧子が最大3kgf(約29.4N)で60μm/秒の速度で準静的に変位され、押込荷重が10秒間保持される場合(試料の破壊による破損が最初に発生しない限り)、多くの場合(100回中少なくとも51回;10回中少なくとも6回)、試料を通じて圧子先端から放射状及び/又は横方向に延びる亀裂のすべて(すなわち、圧子先端圧子の先端がガラスに接触した位置)が自己終端亀裂ループ(例えば、リング状亀裂)によって遮断され、それによってビッカース圧子による試料の破壊がループ内の亀裂に限定される。この場合、破壊のカテゴリは「中間」として識別される。基本的に、圧子は、該圧子の下にあるガラスを押しつぶし、亀裂を生じさせる。しかしながら、亀裂ループが形成され、亀裂ループを超えた圧子の接触から生じる亀裂の広がりを阻止する。対照的に、他のガラスでは、横方向又は放射状の亀裂がこのような亀裂ループに先立って形成され、及び/又は亀裂ループを通過する可能性があり(例えば、異常な亀裂)、あるいは亀裂ループが形成されない場合があり(例えば、正常な亀裂)、いずれの場合も、横方向又は放射状の亀裂は、亀裂ループに含まれず、ガラス物品全体に伝播して、物品全体の破壊及びその破損を引き起こす可能性がある。このタイプの破壊挙動は「正常」として認識される。
【0204】
実施形態では、本開示によるガラス組成物は、次のように計算される量の回転可能性バランス基準Crbを含みうる:
Crb=abs(2*max(0,(Alk2O+RO)-(Al2O3+B2O3))+2*min(B2O3,R2O+RO-Al2O3)+0.65*(SiO2+2*Al2O3+2*B2O3)-80)、 (式11)
ここで、Alk2Oはアルカリ金属酸化物の総和であり、ROは二価金属酸化物の総和であり、R2Oは一価金属酸化物の総和であり、化学式はガラス組成物中の対応する成分の量を意味する。Crbは、本明細書に記載される量PtotalとPnrとの間の関係を表す。本明細書に記載される実施例について、Pnrパラメータの値をPtotalパラメータの値の関数としてプロットすると、本開示の実施例のPnr値は、線y=80-0.65*xの付近に位置し、ここで、yはパラメータPnrに対応し、xはパラメータPtotalに対応し、これは次のように数学的に表すことができる:
Pnr=80-0.65*Ptotal, (式12)
ここで、Ptotal及びPnrは、本明細書に記載される総多面体パラメータ及び回転不可能な多面体パラメータを指す。理論に束縛されるわけではないが、Pnrと式12の右側に定められている式、80-0.65*Ptotalとの差は、回転可能な構造多面体と回転不可能な構造多面体との間のバランスを特徴付けることができると考えられる。前記差の絶対値を、Pnr及びPtotalの式に代入すると、最終的にCrbの式が得られる。言い換えれば、ネットワークバランス基準は、Siexc及びBexcを用いて次のように表現することができる:
Crb=abs(Pnr-(80-0.65*Ptotal)。(式13)
室温における密度(本明細書では「dRT」という用語を使用して参照する)は、ガラス組成から予測することができるガラスの特性である。本開示の実施例並びにある特定の既存の組成物の線形回帰分析を実施して、さまざまなガラス組成物の密度の組成依存性を予測するために使用することができる式を生成した。
【0205】
既存のガラス組成の中から選択するために、下記表600に記載される基準を使用して、SciGlass Information Systemを検索した。
【0206】
【0207】
約100のガラス組成物を、検索結果、及び本明細書に提示される実施形態に由来する例示的なガラスから無作為に選択した。上で指定したデータセットに対する線形回帰分析を使用して、重要でない変数及び外れ値を除外して式を決定した。得られた式を以下の表700に示す。
【0208】
【0209】
表600の基準を満たす別の組成セットを検証セットとして使用して、本明細書の式14が、表700に指定された標準偏差に対応する事前定義された組成限界内で補間する能力を評価した。これもまたSciGlass Information Systemデータベースから無作為に選択された、従来技術のガラス組成物の外部データセットを使用して、指定された組成限界外の特性を妥当な精度で予測する能力を評価した。表700で指定されている上記回帰式に対応する、各特性の最適な確率変数を決定するために、このプロセスを複数回繰り返した。
【0210】
トレーニングデータセット、検証データセット、及び外部データセットを含む線形回帰モデリングで用いられる組成のデータは、公的に利用可能なSciGlass Information Systemデータベースから取得した。下記式14は線形回帰分析から得られ、これをガラスの密度の予測に使用した:
Pd=2.487-0.0068998*B2O3+0.041371*BaO+0.13897*Bi2O3+0.011637*CaO+0.055366*Cs2O+0.025420*Fe2O3+0.10294*Gd2O3+0.0051134*K2O+0.079903*La2O3+0.0041594*Li2O+0.0084582*MgO+0.019720*MnO+0.0064419*Na2O+0.018282*NiO+0.065781*PbO-0.002953*SiO2+0.027682*SrO+0.0055367*TiO2+0.0068497*V2O5+0.048699*Y2O3+0.021527*ZnO+0.026527*ZrO2+0.011033*(min(B2O3,max(0,Alk2O+RO-Al2O3)))。(式14)
式14において、密度パラメータPdは、モル%で表されるガラス組成物の成分から計算した、室温における密度[g/cm3]を予測するパラメータである。式14において、ガラス組成物の各成分が化学式で列挙されており、ここで、化学式は、モル%単位で表される成分の濃度を指す。例えば、式14の目的で、B2O3とは、モル%単位で表した、ガラス組成物中のB2O3の濃度を指す。式14に列挙されたすべての成分が特定のガラス組成物中に必ずしも存在するわけではなく、式14は、当該式に列挙された成分のすべてよりは少ない成分を含むガラス組成物にも等しく有効であるものと理解されたい。さらに、式14は、当該式に列挙された成分に加えて成分を含む、本開示の範囲及び特許請求の範囲内のガラス組成物にも有効であるものと理解されたい。式14に列挙された成分が特定のガラス組成物中に存在しない場合、ガラス組成物中のその成分の濃度は0モル%であり、式から計算される値に対するその成分の寄与はゼロになる。式14を使用して、本明細書に記載される実施例並びに従来技術に見られるガラスの密度の予測値を生成した。予測値を、室温dRTでの測定密度の関数としてプロットした。式14は、実際の測定密度を±0.024g/cm3の誤差内で正確に予測することが分かった。
【0211】
出願人は、本明細書に含まれる実施例によるある特定のガラス組成物について、各組成物の組成成分からの密度の予測値を表す密度パラメータPdが、Na2O/Al2O3比の関数としての関係を満たすことを発見した。本明細書に記載される実施例の第1のセットを、下記表800に列挙される次の基準を満たすものとして選択した。表800において、「制限なし」とは、組成物を選択するときに考慮しなかった制限を指す。
【0212】
【0213】
実施例の第1のセットでは、密度パラメータPd値を各組成物のNa2O/Al2O3の値の関数としてプロットしました。実施例の第1のセットが次の関係を満たすことが分かった:
Pd-(2.58-0.2*Na2O/Al2O3)<0.0 (式15)。
【0214】
実施例の第1のセットのサブセットは、次の関係を満たすことが分かった:
Pd-(2.54-0.2*Na2O/Al2O3)<0.0 (式16)。
【0215】
ある特定の既存のガラス組成物は、式15によって定義された関係を満たさない(したがって、式16によって定義された関係も満たさない)。すなわち、本明細書に記載される実施例によるガラス組成物は、同等のNa2O/Al2O3比を有するある特定の既存のガラス組成物より低い密度パラメータ値(及び、より低い測定dRT値)を示す。本明細書に記載されるように、このような低い密度は、本開示によるガラスが本明細書に記載される特有の破壊挙動を示すのを容易にしうる。
【0216】
本明細書に記載される実施例の第2のセットは、以下の表900に列挙される以下の基準を満たすものとして選択した。
【0217】
【0218】
実施形態では、実施例の第2のセットは、次の条件の各々も満たすことができる:1.01≦Na2O/Al2O3[モル%]≦1.67、B2O3+3.5*Al2O3[モル%]≦27.5、Crb-(3.4-0.5*Cnb)<0.000であり、ここで、Crbは本明細書で定義される回転可能性バランス基準であり、Cnbは本明細書で定義されるネットワークバランス基準であるか、又はCrb-(2.8-0.5*Cnb)<0.000、及び1-2*(Alk2O+RO)/Ptotal>0.83であり、ここで、Ptotalは総多面体パラメータである。ある特定の既存の組成物は上記条件を満たしていないことが判明した。
【0219】
本明細書に記載される実施例の第3のセットを、以下の表1000に列挙される以下の基準を満たすものとして選択した。
【0220】
【0221】
実施例の第3のセットは、次の各条件を満たすことが判明した:20.3≦B2O3+3.5*Al2O3[モル%]≦27.5、dRT-(2.58-0.2*(Na2O/Al2O3))<0.00、dRTは室温における密度であるか、又は、ある場合には、dRT-(2.54-0.2*(Na2O/Al2O3))<0.000である。ある特定の既存の組成物は上記条件を満たしていないことが判明した。
【0222】
本明細書に記載される実施例の第4のセットを、下記表1100に列挙される次の基準を満たすものとして選択した。
【0223】
【0224】
第4のセットの各実施例について、Crbパラメータを計算し、Cnbパラメータの関数としてプロットした。第4のセットの各実施例についてのCrbパラメータとCnbパラメータが次の関係を満たすことが判明した:
Crb-(3.4-0.5*Cnb)<0.00。 (式17)
本開示によるガラスは、式17が満たされるという点で、ある特定の既存の組成物とは区別されることが判明した。
【0225】
第4のセットの実施例のサブセットでは、Crb及びCnbのパラメータの値も次の関係を満たすことが判明した:
Crb-(2.8-0.5*Cnb)<0.00。 (式16)
このようなガラスは、式16が満たされるという点で、ある特定の既存の組成物とはさらに区別されることが判明した。
【0226】
本開示の実施形態は、次の態様を考慮するとさらに理解することができる。
【0227】
本開示の第1の態様は、少なくとも74モル%のSiO2;少なくとも10モル%のB2O3;並びに、SiO2、B2O3、及びAl2O3の合計が少なくとも90モル%になるような量のAl2O3を含む、ホウケイ酸ガラス組成物を含み、ここで、ホウケイ酸ガラス組成物は500kP超の液相粘度を含み;かつ、ホウケイ酸ガラス組成物は、1725℃以下のホウケイ酸ガラス組成物の粘度が200Pになる温度を含む。
【0228】
本開示の第2の態様は、約2モル%から約8モル%のNa2Oをさらに含む、第1の態様に記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0229】
本開示の第3の態様は、約0.8モル%から約4モル%のK2Oをさらに含む、第1の態様から第2の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0230】
本開示の第4の態様は、Na2OとK2Oの総量が少なくとも4モル%である、第1の態様から第3の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0231】
本開示の第5の態様は、MgOとCaOの総量が最大で5モル%である、第1の態様から第4の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0232】
本開示の第6の態様は、P2O5をさらに含み、P2O5が最大で4モル%の量で存在する、第1の態様から第5の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0233】
本開示の第7の態様は、約0.05モル%から約0.25モル%のSnO2をさらに含む、第1の態様から第6の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0234】
本開示の第8の態様は、0.05モル%から0.50モル%の鉄化合物をさらに含む、第1の態様から第7の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0235】
本開示の第9の態様は、ISO 13837Aに準拠して測定した全日射透過率が90%以下である、第1の態様から第8の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0236】
本開示の第10の態様は、ISO 13837Aに準拠して測定した可視透過率が少なくとも73%である、第1の態様から第9の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0237】
本開示の第11の態様は、0℃から300℃の温度範囲にわたって測定して5.6ppm/℃以下の熱膨張係数を含む、第1の態様から第10の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0238】
本開示の第12の態様は、2.4g/cm3未満の密度を含む、第1の態様から第11の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0239】
本開示の第13の態様は、約480℃から約560℃の歪み点を含む、第1の態様から第12の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0240】
本開示の第14の態様は、約520℃から約590℃のアニール点を含む、第1の態様から第13の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0241】
本開示の第15の態様は、ガラスプライが、第1の態様から第14の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む、第1の態様から第14の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0242】
本開示の第16の態様は、ビッカースの先端による準静的な2kgf(約19.6N)の押込荷重に供した場合に、ガラスプライがリング状亀裂と複数の放射状亀裂とを示し、複数の放射状亀裂の各放射状亀裂がリング状亀裂によって境界付けられる、第1の態様から第15の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0243】
本開示の第17の態様は、ガラスプライがフュージョンドローによって形成され、第1の主面と第2の主面との間の厚さが2mmより大きい、第1の態様から第16の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0244】
本開示の第18の態様は、厚さが少なくとも3mmである、第1の態様から第17の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラスを含む。
【0245】
本開示の第19の態様は、第1の態様から第18の態様のいずれかに記載の第1のガラスプライ、第2のガラスプライ、及び第1のガラスプライを第2のガラスプライに結合する中間層を含む、積層体を含む。
【0246】
本開示の第20の態様は、第1のガラスプライが第2のガラスプライより厚い、第19の態様に記載の積層体を含む。
【0247】
本開示の第21の態様は、第2のガラスプライが強化されている、第19の態様から第20の態様のいずれかに記載の積層体を含む。
【0248】
本開示の第22の態様は、第1のガラスプライと第2のガラスプライとが対の形状をしており、第1のガラスプライが少なくとも2mmの第1の曲率深さを含み、第2のガラスプライが少なくとも2mmの第2の曲率深さを含み、第1の曲率深さが第2の曲率深さの10%以内である、第19の態様から第21の態様のいずれかに記載の積層体を含む。
【0249】
本開示の第23の態様は、第1のガラスプライが撓んでおり、かつ少なくとも2mmの曲率深さを含み、第2のガラスプライが第1のガラスプライに適合するように冷間成形される、第19の態様から第22の態様のいずれかに記載の積層体を含む。
【0250】
本開示の第24の態様は、第19の態様から第24の態様のいずれかに記載の積層体を含む、自動車用ガラスを含む。
【0251】
本開示の第25の態様は、車両の内部を画成する本体及び少なくとも1つの開口部;少なくとも1つの開口部に配置された第24の態様に記載される自動車用ガラス;を備えた車両を含み、ここで、第2のガラスプライは車両の内部に面して配置され、第1のガラスプライは車両の外部に面している。
【0252】
本開示の第26の態様は、自動車用ガラスが、側灯、フロントガラス、リアウインドウ、窓、又はサンルーフのうちの少なくとも1つである、第25の態様に記載の車両を含む。
【0253】
本開示の第27の態様は、ガラスプライを形成する方法を含み、該ガラスプライは第1の主面と第2の主面とを含み、該方法は、500kPより大きい液相粘度と1725℃以下のホウケイ酸ガラス組成物の粘度が200Pになる温度とを含むホウケイ酸ガラス組成物の少なくとも2つの流れでアイソパイプ内のトラフを溢れさせる工程であって、ホウケイ酸ガラス組成物が少なくとも74モル%のSiO2と少なくとも10モル%のB2O3を含み、SiO2、B2O3、及びAl2O3の合計量が少なくとも90モル%である、工程;ホウケイ酸ガラス組成物の少なくとも2つの流れをアイソパイプのルートで融着させて第1の主面と第2の主面との間に少なくとも2mmの厚さを有するガラスプライを形成する工程を含む。
【0254】
本開示の第28の態様は、ガラスプライが、0℃から300℃の温度範囲にわたって測定して、5.6ppm/℃以下の熱膨張係数を含む、第27の態様に記載の方法を含む。
【0255】
本開示の第29の態様は、ガラスプライが2.4g/cm3未満の密度を含む、第27から第28の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0256】
本開示の第30の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が約2モル%から約8モル%のNa2Oをさらに含む、第27から第29の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0257】
本開示の第31の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が約0.8モル%から約4モル%のK2Oをさらに含む、第27から第30の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0258】
本開示の第32の態様は、Na2OとK2Oの総量が少なくとも4モル%である、第27から第30の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0259】
本開示の第33の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物がMgO又はCaOの少なくとも一方をさらに含み、MgOとCaOの総量が最大で5モル%である、第27から第32の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0260】
本開示の第34の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が約0.05モル%から約0.25モル%のSnO2をさらに含む、第27から第33の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0261】
本開示の第35の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が0.05モル%から0.50モル%の鉄化合物をさらに含む、第27から第34の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0262】
本開示の第36の態様は、P2O5をさらに含み、P2O5が最大で4モル%の量で存在する、第27から第35の態様のいずれかに記載の方法を含む。
【0263】
本開示の第37の態様は、第1の主面と該第1の主面とは反対側の第2の主面とを含むガラスプライを含み、該ガラスプライは、ホウケイ酸ガラス組成物を含み;かつ、ビッカースの先端による準静的な2kgf(約19.6N)の押込荷重に供した場合に、ガラスプライがリング状亀裂と複数の放射状亀裂とを示し、ここで、複数の放射状亀裂の各放射状亀裂は、リング状亀裂によって境界付けられる。
【0264】
本開示の第38の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が、少なくとも74モル%のSiO2;少なくとも10モル%のB2O3;及び、SiO2、B2O3、及びAl2O3の合計が少なくとも90モル%になるような量のAl2O3を含む、第37の態様に記載のガラスプライを含む。
【0265】
本開示の第39の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が500kP超の液相粘度を含む、第38の態様に記載のガラスプライを含む。
【0266】
本開示の第40の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が、1725℃以下のホウケイ酸ガラス組成物の粘度が200Pになる温度を含む、第38から第39の態様のいずれかに記載のガラスプライを含む。
【0267】
本開示の第41の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が約2モル%から約8モル%のNa2Oを含む、第38から第40の態様のいずれかに記載のガラスプライを含む。
【0268】
本開示の第42の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が約0.8モル%から約4モル%のK2Oを含む、第38から第40の態様のいずれかに記載のガラスプライを含む。
【0269】
本開示の第43の態様は、ホウケイ酸塩組成物が、少なくとも4モル%のNa2OとK2Oの総量を含む、第38から第42の態様のいずれかに記載のガラスプライを含む。
【0270】
本開示の第44の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物がMgO又はCaOの少なくとも一方を含み、MgOとCaOの総量が最大で5モル%である、第38から第43の態様のいずれかに記載のガラスプライを含む。
【0271】
本開示の第45の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が、P2O5を最大で4モル%の量で含む、第38から第44の態様のいずれかに記載のガラスプライを含む。
【0272】
本開示の第46の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が約0.05モル%から約0.25モル%のSnO2を含む、第38から第45の態様のいずれかに記載のガラスプライを含む。
【0273】
本開示の第47の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が0.05モル%から0.50モル%の鉄化合物を含む、第38から第46の態様のいずれかに記載のガラスプライを含む。
【0274】
本開示の第48の態様は、ISO 13837Aに準拠して測定したガラスプライを通る全日射透過率が90%以下である、第38から第47の態様のいずれかに記載のガラスプライを含む。
【0275】
本開示の第49の態様は、ISO 13837Aに準拠して測定したガラスプライを通る可視透過率が少なくとも73%である、第38から第48の態様のいずれかに記載のガラスプライを含む。
【0276】
本開示の第50の態様は、第1の主面が、ASTM 1561に準拠した透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、最大で200ミリディオプタの光学歪みを示す、第38から第49の態様のいずれかに記載のガラスプライを含む。
【0277】
本開示の第51の態様は、第1の主面と該第1の主面とは反対側の第2の主面とを含む第1のガラスプライであって、ホウケイ酸ガラス組成物を含む、第1のガラスプライ;第3の主面と該第3の主面とは反対側の第4の主面とを含む第2のガラスプライ;及び、第1のガラスプライの第2の主面を第2のガラスプライの第3の主面に結合する中間層;を備えた、ガラス積層体を含み、ここで、ホウケイ酸ガラス組成物は、少なくとも74モル%のSiO2;少なくとも10モル%のB2O3;及び、SiO2、B2O3、及びAl2O3の合計が少なくとも90モル%になるような量のAl2O3を含む。
【0278】
本開示の第52の態様は、第1のガラスプライが第2のガラスプライより厚い、第52の態様に記載のガラス積層体を含む。
【0279】
本開示の第53の態様は、第2のガラスプライが強化されている、第51又は第52の態様に記載のガラス積層体を含む。
【0280】
本開示の第54の態様は、第2のガラスプライがイオン交換処理によって化学強化されている、第51から第53の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0281】
本開示の第55の態様は、ガラス積層体が、内部を画成する本体と開口部とを有する車両において使用するように構成されており、ガラス積層体が開口部内に配置されるように構成されており、かつ第1のガラスプライが車両の外部に面して配置され、第2のガラスプライが車両の内部に面して配置される、第51から第54の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0282】
本開示の第56の態様は、第1のガラスプライが、少なくとも2mmの第1の主面と第2の主面との間の第1の厚さを有し、第2のガラスプライが、2mm未満の第3の主面と第4の主面との間の第2の厚さを有する、第51から第55の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0283】
本開示の第57の態様は、ガラス積層体が第1の厚さと第2の厚さの合計に等しいガラスの総厚を含み、第1のガラス厚さのガラスの総厚に対する比が少なくとも0.7である、第51から第56の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0284】
本開示の第58の態様は、第1のガラス厚さが少なくとも3mmであり、第2のガラス厚さが1.1mm以下である、第51から第57の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0285】
本開示の第59の態様は、第1のガラス厚さが少なくとも3.3.mmであり、第2のガラス厚さが0.7mm以下である、第51から第58の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0286】
本開示の第60の態様は、第2のガラスプライが第2のガラス組成物を含む、第51から第59の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0287】
本開示の第61の態様は、第2のガラス組成物がホウケイ酸ガラス組成物とは異なる、第51から第60の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0288】
本開示の第62の態様は、第2のガラス組成物が、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物、アルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス組成物、アルカリアルミノリンケイ酸塩ガラス組成物、アルカリアルミノホウケイ酸ガラス組成物、及びそれらの組合せからなる群より選択される、第51から第61の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0289】
本開示の第63の態様は、ISO 13837Aに準拠して測定したガラス積層体を通る可視透過率が少なくとも73%である、第51から第62の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0290】
本開示の第64の態様は、ISO 13837Aに準拠して測定したガラス積層体を通る全日射透過率が90%以下である、第51から第62の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0291】
本開示の第65の態様は、第1の主面、第4の主面、又は第1の主面と第4の主面の両方が、ASTM 1561に準拠した透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、最大で200ミリディオプタの光学歪みを示す、第51から第64の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0292】
本開示の第66の態様は、中間層が、ポリビニルブチラール(PVB)、遮音PVB(APVB)、アイオノマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル(Pe)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びそれらの組合せからなる群より選択される、第51から第65の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0293】
本開示の第67の態様は、中間層が約0.5mmから約2.5mmの範囲の厚さを含む、第51から第62の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0294】
本開示の第68の態様は、中間層が少なくとも1つの機能層又は膜を含む、第51から第67の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0295】
本開示の第69の態様は、機能層又は膜が、紫外線吸収、赤外線吸収、赤外線反射、音響減衰、着色、アンテナ、接着促進、アンチグレア処理、反射防止処理、及びそれらの組合せからなる群より選択される機能を提供する、第51から第68の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0296】
本開示の第70の態様は、第1のガラスプライと第2のガラスプライとが対の形状をしており、第1のガラスプライが少なくとも2mmの第1の曲率深さを含み、第2のガラスプライが少なくとも2mmの第2の曲率深さを含み、第1の曲率深さが第2の曲率深さの10%以内である、第51から第69の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0297】
本開示の第71の態様は、第1のガラスプライが撓んでおり、かつ少なくとも2mmの曲率深さを含み、第2のガラスプライが第1のガラスプライに適合するように冷間成形される、第51から第70の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0298】
本開示の第72の態様は、センサと、第1の主面と該第1の主面とは反対側の第2の主面とを含む第1のガラスプライであって、ホウケイ酸ガラス組成物を含む、第1のガラスプライ;第3の主面と該第3の主面とは反対側の第4の主面とを含む第2のガラスプライ;及び、第1のガラスプライの第2の主面を第2のガラスプライの第3の主面に結合する中間層;を備えたガラス積層体と、を含む、システムを含み、ここで、ホウケイ酸ガラス組成物は、少なくとも74モル%のSiO2、少なくとも10モル%のB2O3、並びにSiO2、B2O3、及びAl2O3の合計が少なくとも90モル%になるような量のAl2O3を含み;センサは、ガラス積層体を介して信号を受信、送信、又は受信と送信の両方を行うように構成されており;信号は、400nmから750nmの範囲、又は1500nm以上の範囲のピーク波長を含む。
【0299】
本開示の第73の態様は、センサがLIDARである、第72の態様に記載のシステムを含む。
【0300】
本開示の第74の態様は、ガラス積層体が車両用のガラスである、第72から第73の態様のいずれかに記載のシステムを含む。
【0301】
本開示の第75の態様は、ISO 13837Aに準拠して測定したガラス積層体を通る可視透過率が少なくとも73%である、第72から第74の態様のいずれかに記載のシステムを含む。
【0302】
本開示の第76の態様は、ISO 13837Aに準拠して測定したガラス積層体を通る全日射透過率が90%以下である、第72から第75の態様のいずれかに記載のシステムを含む。
【0303】
本開示の第77の態様は、第1の主面、第4の主面、又は第1の主面と第4の主面の両方が、ASTM 1561に準拠した透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、最大で200ミリディオプタの光学歪みを示す、第72から第76の態様のいずれかに記載のシステムを含む。
【0304】
本開示の第78の態様は、第1のガラスプライが第2のガラスプライより厚い、第72から第77の態様のいずれかに記載のシステムを含む。
【0305】
本開示の第79の態様は、第2のガラスプライが強化されている、第72から第78の態様のいずれかに記載のシステムを含む。
【0306】
本開示の第80の態様は、第2のガラスプライがイオン交換処理によって化学強化されている、第72から第79の態様のいずれかに記載のシステムを含む。
【0307】
本開示の第81の態様は、第1の主面と該第1の主面とは反対側の第2の主面とを含む第1のガラスプライであって、溶融成形されたホウケイ酸ガラス組成物を含む、第1のガラスプライ;第3の主面と該第3の主面とは反対側の第4の主面とを含む第2のガラスプライ;及び、第1のガラスプライの第2の主面を第2のガラスプライの第3の主面に結合する中間層;を備えた、ガラス積層体を含み、ここで、ガラス積層体を通る300~380nmの範囲の波長を有する紫外線の透過率は75%以下であり;ガラス積層体を通る可視スペクトルの光の透過率は73%以上であり;かつ、ガラス積層体を通る全日射透過率は61%以下である。
【0308】
本開示の第82の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が、少なくとも74モル%のSiO2、少なくとも10モル%のB2O3、並びに、SiO2、B2O3、及びAl2O3の合計が少なくとも90モル%になるような量のAl2O3を含む、第81の態様に記載のガラス積層体を含む。
【0309】
本開示の第83の態様は、第1のガラスプライが第2のガラスプライより厚い、第81又は第82の態様に記載のガラス積層体を含む。
【0310】
本開示の第84の態様は、第2のガラスプライが強化されている、第81から第83の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0311】
本開示の第85の態様は、第2のガラスプライがイオン交換処理によって化学強化されている、第81から第84の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0312】
本開示の第86の態様は、第2のガラスプライが、第3の主面、第4の主面、又は第3の主面と第4の主面の両方に施されたイオン交換可能なフリットを含む、第81から第85の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0313】
本開示の第87の態様は、第1のガラスプライが少なくとも2mmの第1の主面と第2の主面との間の第1の厚さを有し、第2のガラスプライが2mm未満の第3の主面と第4の主面との間の第2の厚さを有する、第81から第86の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0314】
本開示の第88の態様は、ガラス積層体が第1の厚さと第2の厚さの合計に等しいガラスの総厚を含み、第1のガラス厚さのガラスの総厚に対する比が少なくとも0.7である、第81から第87の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0315】
本開示の第89の態様は、第1のガラス厚さが少なくとも3mmであり、第2のガラス厚さが1.1mm以下である、第81から第88の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0316】
本開示の第90の態様は、第1のガラス厚さが少なくとも3.3mmであり、第2のガラス厚さが0.7mm以下である、第81から第89の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0317】
本開示の第91の態様は、第2のガラスプライが第2のガラス組成物を含む、第81から第90の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0318】
本開示の第92の態様は、第2のガラス組成物がホウケイ酸ガラス組成物とは異なる、第81から第91の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0319】
本開示の第93の態様は、第2のガラス組成物が、アルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス組成物、アルカリアルミノリンケイ酸塩ガラス組成物、アルカリアルミノホウケイ酸ガラス組成物、及びそれらの組合せからなる群より選択される、第81から第92の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0320】
本開示の第94の態様は、中間層が、ポリビニルブチラール(PVB)、遮音PVB(APVB)、アイオノマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル(Pe)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びそれらの組合せからなる群より選択される、第81から第93の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0321】
本開示の第95の態様は、中間層が約0.5mmから約2.5mmの範囲の厚さを含む、第81から第93の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0322】
本開示の第96の態様は、中間層が少なくとも1つの機能層又は膜を含む、第81から第95の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0323】
本開示の第97の態様は、機能層又は膜が、紫外線吸収、赤外線吸収、赤外線反射、音響減衰、着色、アンテナ、接着促進、アンチグレア処理、反射防止処理、及びそれらの組合せからなる群より選択される機能を提供する、第81から第96の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0324】
本開示の第98の態様は、第1のガラスプライと第2のガラスプライとが対の形状をしており、第1のガラスプライが少なくとも2mmの第1の曲率深さを含み、第2のガラスプライが少なくとも2mmの第2の曲率深さを含み、第1の曲率深さが第2の曲率深さの10%以内である、第81から第97の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0325】
本開示の第99の態様は、第1のガラスプライが、該第1のガラスプライの粘度が1011ポアズになる第1の温度を含み、第2のガラスプライが、該第2のガラスプライの粘度が1011ポアズになる第2の温度を含み、かつ第1の温度が第2の温度とは異なる、第81から第98の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0326】
本開示の第100の態様は、第1のガラスプライが第2のガラスプライより厚く、第2の温度が第1の温度より高い、第81から第99の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0327】
本開示の第101の態様は、第1のガラスプライが撓んでおり、かつ少なくとも2mmの曲率深さを含み、第2のガラスプライが第1のガラスプライに適合するように冷間成形される、第81から第100の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0328】
本開示の第102の態様は、第2のガラスプライが第3の主面に顔料コーティングを含む、第81から第101の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0329】
本開示の第103の態様は、第1のガラスプライ又は第2のガラスプライがコーティングを含む、第81から第102の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0330】
本開示の第104の態様は、コーティングが、少なくとも1つの金属層と、任意選択的に少なくとも誘電体層とを有する赤外線反射コーティングを含む、第81から第103の態様のいずれかに記載のガラス積層体を含む。
【0331】
本開示の第105の態様はガラス組成物を含み、該ガラス組成物は、約72モル%から約80モル%の範囲の量のSiO2;約2.5モル%から約5モル%の範囲の量のAl2O3;及び、約11.5モル%から約14.5モル%の範囲の量のB2O3;を含み、ここで、ガラス組成物は500kP超の液相粘度を含み;かつ、ガラス組成物は、1725℃以下のホウケイ酸ガラス組成物の粘度が200Pになる温度を含む。
【0332】
本開示の第106の態様は、約4モル%から約8モル%の範囲の量のNa2Oをさらに含む、第105の態様に記載のガラス組成物を含む。
【0333】
本開示の第107の態様は、Na2Oの量が約4.5モル%から約8モル%の範囲にある、第105から第106の態様のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0334】
本開示の第108の態様は、約0.5モル%から約3モル%の範囲の量のK2Oをさらに含む、第105から第107の態様のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0335】
本開示の第109の態様は、約0.5から約2.5モル%の範囲の量のMgOをさらに含む、第105から第108の態様のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0336】
本開示の第110の態様は、最大で約4モル%のCaOをさらに含む、第105から第109の態様のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0337】
本開示の第111の態様は、SiO2の量が少なくとも74モル%である、第105から第110の態様のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0338】
本開示の第112の態様は、ガラス組成物を含み、該ガラス組成物は、74モル%から80モル%のSiO2;2.5モル%から5モル%のAl2O3;11.5モル%から14.5モル%のB2O3;4.5モル%から8モル%のNa2O;0.5モル%から3モル%のK2O;0.5モル%から2.5モル% MgO;及び、0モル%から4モル%のCaOを含む。
【0339】
本開示の第113の態様は、Na2OとK2Oの合計量が少なくとも5.5モル%である、第112の態様に記載のガラス組成物を含む。
【0340】
本開示の第114の態様は、MaOとCaOの合計量が少なくとも1.5モル%である、第112から第113の態様のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0341】
本開示の第115の態様は、Na2O、K2O、MaO、及びCaOの合計量が少なくとも7モル%である、第112から第114の態様のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0342】
本開示の第116の態様は、Na2OとK2Oの合計量が少なくとも8モル%である、第112から第114の態様のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0343】
本開示の第117の態様は、0.03モル%から0.5モル%のFe2O3とFeOの総量を含む、第112から第116の態様のいずれかに記載のガラス組成物を含む。
【0344】
本開示の第118の態様は、物品において、第1の主面と該第1の主面とは反対側の第2の主面とを含む第1のガラスプライであって、ホウケイ酸ガラス組成物を含む、第1のガラスプライ;第3の主面と該第3の主面とは反対側の第4の主面とを含む第2のガラスプライ;及び、第1のガラスプライの第2の主面を第2のガラスプライの第3の主面に結合する中間層;を備えた、物品を含み、ここで、(A)第1のガラスプライのホウケイ酸ガラス組成物は、(i)SiO2、B2O3、及び、任意選択的に、Al2O3及び/又はP2O5;並びに、(ii)1つ以上のアルカリ金属酸化物、及び任意選択的に、1つ以上のアルカリ土類金属酸化物及び/又はZnO;を含み、ここで、SiO2、B2O3、1つ以上のアルカリ金属酸化物、及び、組成物中に含まれる場合には、Al2O3、P2O5、及び1つ以上のアルカリ土類金属酸化物及び/又はZnOの酸化物基準のモルパーセント濃度は、次の関係を満たす:SiO2≧72;B2O3≧10;(R2O+R’O+P2O5)≧Al2O3;及び、0.80≦(1-[(2R2O+2R’O+2P2O5)/(SiO2+2Al2O3+2B2O3)])≦0.93;式中、R2Oは、1つ以上のアルカリ金属酸化物の濃度の合計であり、ホウケイ酸ガラス組成物中に含まれる場合には、R’Oは1つ以上のアルカリ土類金属酸化物及び/又はZnOの合計である;(B)第1のガラスプライのホウケイ酸ガラス組成物を有するガラスを、準静的な2kgf(約19.6N)の押込荷重及び136°のビッカース圧子を使用してビッカース圧子試験した場合に、ガラスは複数の放射状亀裂と該放射状亀裂の広がりを制限するリング亀裂とを示す;並びに、(C)物品が車両に取り付けられる場合に、第1のガラスプライは第2のガラスプライの外側にある。
【0345】
本開示の第119の態様は、第1のガラスプライが第2のガラスプライより厚く、第2のガラスプライがイオン交換処理によって化学強化されている、第118の態様に記載の物品を含む。
【0346】
本開示の第120の態様は、第1のガラスプライが、少なくとも2mmの第1の主面と第2の主面との間の第1の厚さを有し、第2のガラスプライが、2mm未満の第3の主面と第4の主面との間の第2の厚さを有する、第118から第119の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0347】
本開示の第121の態様は、第1の厚さの第1の厚さと第2の厚さの合計に対する比が少なくとも0.7である、第118から第120の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0348】
本開示の第122の態様は、第1の厚さが少なくとも3.3mmであり、第2の厚さが0.7mm以下である、第118から第121の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0349】
本開示の第123の態様は、第2のガラスプライが第1のガラスプライのホウケイ酸ガラス組成物とは異なる第2のガラス組成物を含み、第2のガラス組成物が、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物、アルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス組成物、アルカリアルミノリンケイ酸塩ガラス組成物、及びアルカリアルミノホウケイ酸ガラス組成物からなる群より選択される、第118から第122の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0350】
本開示の第124の態様は、ISO 13837Aに準拠して測定した物品の可視透過率が少なくとも73%であり、ISO 13837Aに準拠して測定した物品の全日射透過率が90%以下である、第118から第123の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0351】
本開示の第125の態様は、第1の主面、第4の主面、又は第1の主面と第4の主面の両方が、ASTM 1561に準拠した透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、最大で200ミリディオプタの光学歪みを示す、第118から第124の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0352】
本開示の第126の態様は、中間層が、ポリビニルブチラール(PVB)、遮音PVB(APVB)、アイオノマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル(Pe)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びそれらの組合せからなる群より選択され;中間層が0.5mmから2.5mmの範囲の厚さを有し;中間層が少なくとも1つの機能層又は膜を含み、かつ該機能層又は膜が、紫外線吸収、赤外線吸収、赤外線反射、音響減衰、着色、アンテナ、接着促進、アンチグレア処理、反射防止処理、及びそれらの組合せからなる群より選択される機能を提供する、第118から第125の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0353】
本開示の第127の態様は、第1のガラスプライと第2のガラスプライとが対の形状をしており、第1のガラスプライが少なくとも2mmの第1の曲率深さを含み、第2のガラスプライが少なくとも2mmの第2の曲率深さを含み、第1の曲率深さが第2の曲率深さの10%以内である、第118から第126の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0354】
本開示の第128の態様は、第1のガラスプライが撓んでおり、かつ少なくとも2mmの曲率深さを含み、第2のガラスプライが第1のガラスプライに適合するように冷間成形される、第118から第127の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0355】
本開示の第129の態様は、第1のガラスプライがダウンドロープロセスによって作られ、該ダウンドロープロセスがフュージョンダウンドロープロセスであり、第1のガラスプライのホウケイ酸ガラス組成物を有するガラスが500キロポアズ以上の液相粘度を有し、かつ第1のガラスプライのホウケイ酸ガラス組成物を有するガラスが1725℃以下の200ポアズ温度を有する、第118から第128の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0356】
本開示の第130の態様は、物品において、ホウケイ酸ガラスを含み、かつ少なくとも200μmかつ1cm以下の厚さを有する外側プライであって、構成酸化物に関して、ホウケイ酸ガラスの組成物が、SiO2、B2O3、Al2O3、1つ以上のアルカリ金属酸化物、並びにMgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOからなる群の1つ以上の二価カチオン酸化物を含み、ここで、SiO2、B2O3、1つ以上のアルカリ金属酸化物、Al2O3、及び1つ以上のアルカリ土類金属酸化物の酸化物基準のモルパーセント濃度が次の関係を満たす:(R2O+R’O)≧Al2O3、0.80<(1-[(2R2O+2R’O)/(SiO2+2Al2O3+2B2O3)])<0.93[式中、R2Oは1つ以上のアルカリ金属酸化物の濃度の合計であり、R’Oは1つ以上のアルカリ土類金属酸化物の濃度の合計である]、外側プライ;該外側プライのホウケイ酸ガラスの組成物とは異なる第2のガラスを含む、内側プライであって、該内側プライが、外側プライを強化し、印加される曲げ力に対して外側プライを硬化させ、かつ第2のガラスの組成物が、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物、アルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス組成物、アルカリアルミノリンケイ酸塩ガラス組成物、及びアルカリアルミノホウケイ酸ガラス組成物からなる群より選択される、内側プライ;該内側プライと外側プライとを結合する中間層であって、該中間層がポリマーであり、外側プライから内側プライへの亀裂の伝達を減衰させる、中間層、を含む、物品を含む。
【0357】
本開示の第131の態様は、外側プライのホウケイ酸ガラスの組成物を有するガラスが2×2cm2の面積の主面を有する厚さ1mmの研磨された平らな試料100枚として形成され、かつ25℃、相対湿度50%で主面の中心に直角に向けられた、底面が正方形の136°の四角錐形をしたビッカース圧子を使用して試験され、該圧子が最大3kgf(約29.4N)まで60μm/秒の速度で準静的に変位され、押込荷重が10秒間保持される場合、大抵、試料を通じて圧子から放射状及び/又は横方向に延びる亀裂のすべてが亀裂ループ内に含まれる、第130の態様に記載の物品を含む。
【0358】
本開示の第132の態様は、試料を冷水に入れることによって25℃から1℃まで急速に冷却する場合、大抵、試料を通じて放射状及び/又は横方向に延びる亀裂が亀裂ループを超えて伝播しない、第130から第131の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0359】
本開示の第133の態様は、試料の亀裂ループの大部分が円形であり、1mm未満の半径を有する、第130から第132の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0360】
本開示の第134の態様は、物品において、第1の主面と該第1の主面とは反対側の第2の主面とを含む第1のガラスプライであって、該第1のガラスプライがホウケイ酸ガラスを含み、構成酸化物に関して、ホウケイ酸ガラスの組成物が、SiO2、B2O3、Al2O3、1つ以上のアルカリ金属酸化物、並びにMgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOからなる群の1つ以上の二価カチオン酸化物を含み、ここで、SiO2、B2O3、1つ以上のアルカリ金属酸化物、Al2O3、及び1つ以上の二価カチオン酸化物の酸化物基準のモルパーセント濃度が次の関係を満たす:(R2O+R’O)≧Al2O3、0.80<(1-[(2R2O+2R’O)/(SiO2+2Al2O3+2B2O3)])<0.93[式中、R2Oは1つ以上のアルカリ金属酸化物の濃度の合計であり、R’Oは1つ以上の二価カチオン酸化物の濃度の合計である]、第1のガラスプライ;第3の主面と該第3の主面とは反対側の第4の主面とを含む第2のガラスプライ;及び、第1のガラスプライの第2の主面を第2のガラスプライの第3の主面に結合する中間層;を含む、物品であって、該物品を通る300~380nmの範囲の波長を有する紫外線の透過率が75%以下であり;物品を通る可視スペクトルの光の透過率が73%以上であり;かつ、物品を通る全日射透過率が61%以下である、物品を含む。
【0361】
本開示の第135の態様は、ホウケイ酸ガラス組成物が、少なくとも74モル%のSiO2、少なくとも10モル%のB2O3、及びSiO2、B2O3、及びAl2O3の合計が少なくとも90モル%になるような量のAl2O3を含む、第134の態様に記載の物品を含む。
【0362】
本開示の第136の態様は、物品において、ホウケイ酸ガラスであって、構成酸化物に関して、ホウケイ酸ガラスの組成物が、SiO2、B2O3、Al2O3、1つ以上のアルカリ金属酸化物、並びにMgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOからなる群の1つ以上の二価カチオン酸化物を含み、ここで、SiO2、B2O3、1つ以上のアルカリ金属酸化物、Al2O3、及び1つ以上の二価カチオン酸化物の酸化物基準のモルパーセント濃度が次の関係を満たす:(R2O+R’O)≧Al2O3、0.80<(1-[(2R2O+2R’O)/(SiO2+2Al2O3+2B2O3)])<0.93[式中、R2Oは1つ以上のアルカリ金属酸化物の濃度の合計であり、R’Oは1つ以上の二価カチオン酸化物の濃度の合計である]、ホウケイ酸ガラスと、該ホウケイ酸ガラスに形成された亀裂ループとを含む、物品であって、亀裂ループと交差し、亀裂ループを越えて外側に延びる放射状又は横方向の亀裂を含まない、物品を含む。
【0363】
本開示の第137の態様は、亀裂ループが円形の周囲を有する、第136の態様に記載の物品を含む。
【0364】
本開示の第138の態様は、円形の周囲が1mm未満の直径を有する、第136から第137の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0365】
本開示の第139の態様は、ホウケイ酸ガラスが少なくとも200μmかつ1cm以下の厚さを有する、第136から第138の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0366】
本開示の第140の態様は、ホウケイ酸ガラスが3.25ppm/℃超かつ8.7ppm/℃未満の低温熱膨張係数を有する、第136から第139の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0367】
本開示の第141の態様は、厚さが2.0mm以上である、第136から第140の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0368】
本開示の第142の態様は、ホウケイ酸ガラスの組成物が4モル%以上かつ6モル%以下のNa2Oを含む、第136から第141の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0369】
本開示の第143の態様は、ホウケイ酸ガラスの組成物が、3モル%以上かつ5モル%以下のAl2O3;及び、12モル%以上かつ16モル%以下のB2O3を含む、第136から第142の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0370】
本開示の第144の態様は、ホウケイ酸ガラスの組成物が0.03モル%以上かつ0.5モル%以下のFe2O3を含むか、厚さが3.3mm以下であるか、外側プライが、可視スペクトル全体にわたって、90%以上かつ92.5%以下の透過率を有する、のうちの少なくとも1つである、第136から第143の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0371】
本開示の第145の態様は、外側ガラスプライがホウケイ酸ガラスからなる、第136から第144の態様のいずれかに記載の物品を含む。
【0372】
本開示の第146の態様は、60モル%以上かつ96.0モル%以下のSiO2;1.0モル%以上かつ25.0モル%以下のB2O3、0.3モル%以上のAl2O3;0.0モル%以上かつ0.3モル%以下のLi2O;非ゼロ量のNa2O;及び、1つ以上の二価金属酸化物ROを含むホウケイ酸ガラス組成物を含み、ここで、各成分の分子式で表される各成分のモル%単位の組成量は、B2O3+3.5*Al2O3≦27.5モル%の関係を満たし、次のうちの少なくとも1つに該当する:(A)各成分の組成量が次の条件の両方を満たす:(i)Crb-(3.4-0.5*Cnb)<0.000;及び、(ii)1-2*(Alk2O+RO)/Ptotal>0.83、ここで、(a)Crbは、次式に従って成分のモル%単位で表される組成から計算される回転可能性バランスパラメータの値である:Crb=abs(2*max(0,(Alk2O+RO)-(Al2O3+B2O3))+2*min(B2O3,R2O+RO-Al2O3)+0.65*(SiO2+2*Al2O3+2*B2O3)-80)、(b)Cnbは、次式に従って成分のモル%単位で表される組成から計算されるネットワークバランスパラメータの値である:Cnb=abs(SiO2-6*min(Alk2O,Al2O3)-2*min(Alk2O+RO-Al2O3,B2O3)-max(24+2*max(0,B2O3-max(0,R2O+RO-Al2O3)),44))、(c)Alk2Oは、組成物中に存在する場合、1つ以上のアルカリ金属酸化物を表し、(d)Ptotalは、次式に従って成分のモル%単位のガラス組成から計算される、総多面体パラメータの値である:Ptotal=SiO2+2*Al2O3+2*B2O3、及び(B)各成分の組成量が次の条件を満たす:Pd-(2.58-0.2*(Na2O/Al2O3))<0.000、ここで、Pdは、次式に従って成分のモル%単位のガラス組成から計算される、密度パラメータの値である:Pd=2.487-0.0068998*B2O3+0.041371*BaO+0.13897*Bi2O3+0.011637*CaO+0.055366*Cs2O+0.025420*Fe2O3+0.10294*Gd2O3+0.0051134*K2O+0.079903*La2O3+0.0041594*Li2O+0.0084582*MgO+0.019720*MnO+0.0064419*Na2O+0.018282*NiO+0.065781*PbO-0.002953*SiO2+0.027682*SrO+0.0055367*TiO2+0.0068497*V2O5+0.048699*Y2O3+0.021527*ZnO+0.026527*ZrO2+0.011033*(min(B2O3,max(0,Alk2O+RO-Al2O3)))。
【0373】
本開示の第147の態様は、各成分の組成量が次の条件の両方を満たす、第146の態様に記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む:(i)Crb-(3.4-0.5*Cnb)<0.000;及び、(ii)1-2*(Alk2O+RO)/Ptotal>0.83、該組成物が9.7モル%以下のNa2OとAl2O3の合計量を含み、該組成物がBaO、フッ素、及び希土類酸化物を実質的に含まない。
【0374】
本開示の第148の態様は、組成物が、60.0モル%以上かつ78モル%以下のSiO2、5.0モル%以上かつ17.0モル%以下のB2O3、2.5モル%以上かつ5.3モル%以下のNa2O、0.3モル%以上かつ5.3モル%以下のAl2O3、0.0モル%以上かつ3.0モル%以下のK2O、0.0モル%以上かつ1.5モル%以下のCaO、0.0モル%以上かつ0.2モル%以下のLi2O、5.0モル%以上のNa2O+K2Oを含み、各成分の組成量が、次の条件:20.3≦B2O3+3.5*Al2O3≦27.5を満たす、第146から第147の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0375】
本開示の第149の態様は、組成物が、0.0モル%以上かつ5.0モル%以下のMgO;0.0モル%以上かつ4.0モル%以下のP2O5、0モル%以上かつ0.25モル%以下のSnO2、95.0モル%以上の(Na2O+K2O+MgO+CaO+ZnO+Al2O3+B2O3+SiO2)の合計量、0.0モル%以上かつ5.0モル%以下の(CaO+MgO)の合計量、及び0.0モル%以上かつ0.5モル%以下の(FeO+Fe2O3)の合計量を含み、ここで、組成物の各成分の組成量が次の条件:(C)(Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)/(R2O+RO)≦0.95、及び(D)1.01≦Na2O/Al2O3≦1.35の両方を満たす、第146から第148の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0376】
本開示の第150の態様は、組成物が、72.0モル%以上かつ78.0モル%以下のSiO2、5.0モル%以上かつ20.0モル%以下のB2O3、2.0モル%以上かつ8.0モル%以下のNa2O、2.0モル%以上かつ4.0モル%以下のAl2O3、0.0モル%以上かつ3.0モル%以下のK2O、0.0モル%以上かつ2.0モル%以下のCaO、0.0モル%以上かつ2.0モル%以下のMgO、及び0.0モル%以上かつ0.2モル%以下のSnO2を含む、第146から第149の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0377】
本開示の第151の態様は、組成物が、0.0モル%以上かつ0.5モル%以下のMnO2、0.0モル%以上かつ0.5モル%以下のMnO、0.0モル%以上かつ0.5モル%以下のTiO2、及び0.0モル%以上かつ1.0モル%以下の(Fe+Cr+Mo+V+Cu+Co)の合計量を含み、ここで、該組成物が、Li2Oを実質的に含まず、かつPbOを実質的に含まない、第146から第150の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0378】
本開示の第152の態様は、組成物の各成分の組成量が次の条件を満たす、第146から第151の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む:(E)0.0≦2*Mexc+2*min(B2O3,R2O+RO-Al2O3)+0.65*Ptotal-80≦3.0、ここで、Mexcは、次式に従って成分のモル%単位のガラス組成から計算される、改質剤の過剰パラメータの値である:Mexc=max(0,(Alk2O+RO)-(Al2O3+B2O3))、及び、(F)0.0≦abs(Siexc-3*((B2O3+Al2O3)-(Alk2O+RO))-max(24-Bexc,44-3*Bexc))≦3.0、ここで、(i)Siexcは、次式に従って成分のモル%単位のガラス組成から計算される、シリカの過剰パラメータの値である:Siexc=SiO2-6*min(Alk2O,Al2O3O3)-2*min(Alk2O+RO-Al2O3O3,B2O3)、及び、(ii)Bexcは、次式に従って成分のモル%単位のガラス組成から計算される、ホウ素の過剰パラメータの値である:Bexc=max(0,B2O3-max(0,R2O+RO-Al2O3))。
【0379】
本開示の第153の態様は、各成分の組成量が次の条件:Pd-(2.58-0.2*(Na2O/Al2O3O3))<0.000を満たす、第146から第152の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0380】
本開示の第154の態様は、組成物が、60.0モル%以上かつ77.5モル%以下のSiO2、5.0モル%以上かつ17.0モル%以下のB2O3、2.5モル%以上かつ5.3モル%以下のNa2O、0.3モル%以上かつ5.3モル%以下のAl2O3、0.0モル%以上かつ3.0モル%以下のK2O、0.0モル%以上かつ0.2モル%以下のLi2O、0.0モル%以上かつ0.2モル%以下のBaO、及び5.0モル%以上の(Na2O+K2O)の合計量を含む、第146から第153の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0381】
本開示の第155の態様は、組成物が、5.0モル%以上かつ5.2モル%以下のNa2O、0.3モル%以上のMgO、及び0.0モル%以上かつ0.3モル%以下のTiO2を含み、該組成物がフッ素を実質的に含まない、第146から第154の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0382】
本開示の第156の態様は、各成分の組成量が次の条件:1-2*(Alk2O+RO)/Ptotal>0.83を満たす、第146から第155の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0383】
本開示の第157の態様は、各成分の組成量が次の条件:(G)77≦(2*Mexc+2*min(B2O3,R2O+RO-Al2O3))+0.65*Ptotal≦82、ここで、Mexcは、次式に従って成分のモル%単位のガラス組成から計算される、改質剤の過剰パラメータの値である:Mexc=max(0,(Alk2O+RO)-(Al2O3+B2O3))、及び(H)0.84≦1-2*(Alk2O+RO)/Ptotal≦0.90を満たす、第146から第156の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0384】
本開示の第158の態様は、組成物が、0.0モル%以上かつ4.0モル%以下のP2O5、0モル%以上かつ0.25モル%以下のSnO2、95.0モル%以上の(Na2O+K2O+MgO+CaO+ZnO+Al2O3+B2O3+SiO2)の合計量、0.0モル%以上かつ5.0モル%以下の(CaO+MgO)の合計量、及び、0.0モル%以上かつ0.5モル%以下の(FeO+Fe2O3)の合計量を含み、組成物の各成分の組成量が次の条件:(I)(Na2O+K2O+MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)/(R2O+RO)≦0.95、及び(J)1.01≦Na2O/Al2O3≦1.35の両方を満たす、第146から第157の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0385】
本開示の第159の態様は、組成物が、72.0モル%以上かつ77.5モル%以下のSiO2、2.0モル%以上かつ4.0モル%以下のAl2O3、0.0モル%以上かつ2.0モル%以下のCaO、0.0モル%以上かつ2.0モル%以下のMgO、及び0.0モル%以上かつ0.2モル%以下のSnO2を含む、第146から第158の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0386】
本開示の第160の態様は、組成物が、0.0モル%以上かつ0.5モル%以下のMnO2、0.0モル%以上かつ0.5モル%以下のMnO、0.0モル%以上かつ0.5モル%以下のTiO2、0.0モル%以上かつ1.0モル%以下の合計量(Fe+Cr+Mo+V+Cu+Co)、及び0.0モル%以上かつ1.0モル%以下の合計量(La2O3+Y2O3)を含む、第146から第159の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0387】
本開示の第161の態様は、組成物が、フッ素、BaO、LiO2、及びPbOを実質的に含まない、第146から第160の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0388】
本開示の第162の態様は、組成物の各成分の量が次の条件を満たす、第146から第161の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む:(K)0.0≦2*Mexc+2*min(B2O3,R2O+RO-Al2O3)+0.65*Ptotal-80≦3.0、ここで、Mexcは、次式に従って成分のモル%単位のガラス組成から計算される、改質剤の過剰パラメータの値である:Mexc=max(0,(Alk2O+RO)-(Al2O3+B2O3))、及び(L)0.0≦abs(Siexc-3*((B2O3+Al2O3)-(Alk2O+RO))-max(24-Bexc,44-3*Bexc))≦3.0、ここで、(i)Siexcは、次式に従って成分のモル%単位のガラス組成から計算される、シリカの過剰パラメータの値である:Siexc=SiO2-6*min(Alk2O,Al2O3O3)-2*min(Alk2O+RO-Al2O3O3,B2O3)、及び、(ii)Bexcは、次式に従って成分のモル%単位のガラス組成から計算される、ホウ素の過剰パラメータの値である:Bexc=max(0,B2O3-max(0,R2O+RO-Al2O3))。
【0389】
本開示の第163の態様は、組成物が、11モル%以上かつ16モル%以下のB2O3、2モル%以上かつ6モル%以下のAl2O3、及び7.0モル%以上のNa2O、K2O、MgO、及びCaOの総量を含む、第146から第162の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0390】
本開示の第164の態様は、組成物が4モル%以上かつ6モル%以下のNa2Oを含む、第146から第163の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0391】
本開示の第165の態様は、ホウケイ酸ガラスの組成物が、3モル%以上かつ5モル%以下のAl2O3;及び、12モル%以上かつ16モル%以下のB2O3を含む、第146から第164の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含む。
【0392】
本開示の第166の態様は、第146から第165の態様のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物を含むガラス物品を含む。
【0393】
本開示の第167の態様は、ガラス物品が、2.5g/cm3未満の20℃で測定した密度を含む、第166の態様に記載のガラス物品を含む。
【0394】
本開示の第168の態様は、20℃で測定した密度が2.3g/cm3未満である、第167の態様に記載のガラス物品を含む。
【0395】
本開示の第169の態様は、ホウケイ酸塩組成物を有するガラスが2×2cm2の面積の主面を有する厚さ1mmの研磨された平らな試料100枚として形成され、25℃、相対湿度50%で主面の中心に直角に向けられた、底面が正方形の136°の四角錐形をしたビッカース圧子を使用して試験され、該圧子が最大3kgf(約29.4N)まで60μm/秒の速度で準静的に変位され、押込荷重が10秒間保持される場合、大抵、試料を通じて圧子から放射状及び/又は横方向に延びる亀裂のすべてが亀裂ループ内に含まれる、第167又は第168の態様に記載のガラス物品を含む。
【0396】
本開示の第170の態様は、試料の亀裂ループの大部分が円形であり、1mm未満の半径を有する、第169の態様に記載のガラス物品を含む。
【0397】
さまざまな例示的な実施形態に示される組成物、アセンブリ、及び構造の構築及び配置は、単なる例示である。本開示では、幾つかの実施形態のみが詳細に説明されているが、本明細書に記載される主題の新規な技術及び利点から実質的に逸脱することなく、多くの修正(例えば、さまざまな要素のサイズ、寸法、構造、形状、及び比率のバリエーション、パラメータの値、取り付け配置、材料の使用、色、向き)が可能である。本明細書に開示されるグレージングなどの材料は、建築用途(例えば、窓、パーティション)のグレージングに使用することができ、又は包装(例えば、容器)などの他の用途に使用することもできる。任意のプロセス、論理アルゴリズム、又は方法ステップの順序又は順番は、代替的な実施形態に従って変更又は再順序付けすることができる。本発明の技術の範囲から逸脱することなく、さまざまな例示的な実施形態の設計、動作条件、及び配置において、他の置換、修正、変更、及び省略を行うこともできる。
【0398】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0399】
実施形態1
ホウケイ酸ガラス組成物であって、
少なくとも75モル%のSiO2;
少なくとも10モル%のB2O3;及び
SiO2、B2O3、及びAl2O3の合計が少なくとも90モル%になるような量のAl2O3
を含み、ここで、
前記ホウケイ酸ガラス組成物が500kP超の液相粘度を含み;かつ
前記ホウケイ酸ガラス組成物が、1725℃以下の前記ホウケイ酸ガラス組成物の粘度が200Pとなる温度を含む、
ホウケイ酸ガラス組成物。
【0400】
実施形態2
約2モル%から約8モル%のNa2Oをさらに含む、実施形態1に記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【0401】
実施形態3
約1モル%から約4モル%のK2Oをさらに含む、実施形態1又は2に記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【0402】
実施形態4
Na2OとK2Oの総量が少なくとも4モル%である、実施形態1から3のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【0403】
実施形態5
MgO又はCaOの少なくとも一方をさらに含み、MgOとCaOの総量が最大で5モル%である、実施形態4に記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【0404】
実施形態6
Na2O、K2O、MgO、及びCaOの総量が少なくとも7モル%である、実施形態5に記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【0405】
実施形態7
P2O5をさらに含み、P2O5が最大で4モル%の量で存在する、実施形態1から6のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【0406】
実施形態8
約0.05モル%から約0.25モル%のSnO2をさらに含む、実施形態1から7のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【0407】
実施形態9
0.05モル%から0.50モル%のFe2O3をさらに含む、実施形態1から8のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【0408】
実施形態10
2.4g/cm3未満の密度を含む、実施形態1から9のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【0409】
実施形態11
約500℃から約560℃の歪み点を含む、実施形態1から10のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【0410】
実施形態12
約550℃から約590℃のアニール点を含む、実施形態1から11のいずれかに記載のホウケイ酸ガラス組成物。
【0411】
実施形態13
物品において、
ホウケイ酸ガラスを含み、少なくとも200μmかつ1cm以下の厚さを有する外側プライであって、構成酸化物に関して、前記ホウケイ酸ガラスの組成物が、SiO2、B2O3、Al2O3、1つ以上のアルカリ金属酸化物、MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOからなる群の1つ以上の二価カチオン酸化物を含み、ここで、SiO2、B2O3の酸化物基準のモルパーセント濃度が、
11モル%以上かつ16モル%以下のB2O3、
2モル%以上かつ6モル%以下のAl2O3、及び
7.0モル%以上のNa2O、K2O、MgO、及びCaOの総量
であり、ここで、
前記1つ以上のアルカリ金属酸化物、Al2O3、及び前記1つ以上のアルカリ土類金属酸化物が次の関係を満たし:
(R2O+R’O)≧Al2O3
0.80<(1-[(2R2O+2R’O)/(SiO2+2Al2O3+2B2O3)])<0.93、
式中、R2Oは前記1つ以上のアルカリ金属酸化物の濃度の合計であり、R’Oは前記1つ以上のアルカリ土類金属酸化物の濃度の合計である、
外側プライ、
前記外側プライの前記ホウケイ酸ガラスの組成物とは異なる第2のガラスを含む内側プライであって、前記内側プライが前記外側プライを強化し、印加される曲げ力に対して前記外側プライを強化し、前記第2のガラスの組成物が、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物、アルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス組成物、アルカリアルミノリンケイ酸塩ガラス組成物、及びアルカリアルミノホウケイ酸ガラス組成物からなる群より選択される、内側プライ、
前記内側プライと前記外側プライを結合する中間層であって、前記中間層がポリマーであり、前記外側プライから前記内側プライへの亀裂の伝達を減衰させる、中間層
を含む、物品。
【0412】
実施形態14
前記外側プライの前記ホウケイ酸ガラスの組成物を有するガラスが、面積2×2cm2の主面を有する厚さ1mmの研磨された平らな試料100枚として形成され、かつ25℃、相対湿度50%で前記主面の中心に直角に向けられた、底面が正方形の136°の四角錐形をしたビッカース圧子を使用して試験され、前記圧子が最大3kgf(約29.4N)まで60μm/秒の速度で準静的に変位され、押込荷重が10秒間保持される場合、大抵、前記圧子から前記試料を通じて放射状及び/又は横方向に延びる亀裂のすべてが亀裂ループ内に含まれる、実施形態13に記載の物品。
【0413】
実施形態15
前記試料が冷水中に置かれることによって25℃から1℃まで急速に冷却される場合、大抵、前記試料を通じて放射状及び/又は横方向に延びる亀裂が前記亀裂ループを超えて伝播しない、実施形態14に記載の物品。
【0414】
実施形態16
前記試料の前記亀裂ループの大部分が円形であり、1mm未満の半径を有する、実施形態14に記載の物品。
【0415】
実施形態17
前記外側プライの前記ホウケイ酸ガラスが少なくとも74モル%のSiO2と少なくとも10モル%のB2O3とを含み;かつ、前記外側プライの前記ホウケイ酸ガラスが少なくとも90モル%のSiO2、B2O3、及びAl2O3の合計を含む、実施形態13から16のいずれかに記載の物品。
【0416】
実施形態18
前記外側プライが前記内側プライより厚く、前記内側プライの前記第2のガラスがイオン交換処理によって化学強化される、実施形態13から17のいずれかに記載の物品。
【0417】
実施形態19
前記外側プライの厚さが第1の厚さであり、前記第1の厚さが少なくとも2mmであり、前記内側プライが2mm未満の第2の厚さを有する、実施形態13から18のいずれかに記載の物品。
【0418】
実施形態20
前記第1の厚さと第2の厚さの合計に対する前記第1の厚さの比が少なくとも0.7である、実施形態13から19のいずれかに記載の物品。
【0419】
実施形態21
前記第1の厚さが少なくとも3.3mmであり、前記第2の厚さが0.7mm以下である、実施形態13から20のいずれかに記載の物品。
【0420】
実施形態22
ISO 13837Aに準拠して測定した前記物品の可視透過率が少なくとも73%であり;かつ、ISO 13837Aに準拠して測定した前記物品の全日射透過率が90%以下である、実施形態13から21のいずれかに記載の物品。
【0421】
実施形態23
前記内側プライから最も遠い前記外側プライの主面及び前記外側プライから遠い前記内側プライの主面が、両方とも、ASTM 1561に準拠した透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、最大で200ミリディオプタの光学歪みを示す、実施形態13から22のいずれかに記載の物品。
【0422】
実施形態24
前記中間層が、ポリビニルブチラール(PVB)、遮音PVB(APVB)、アイオノマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル(Pe)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びそれらの組合せからなる群より選択され;かつ、前記中間層が0.5mmから2.5mmの範囲の厚さを有する、実施形態13から23のいずれかに記載の物品。
【0423】
実施形態25
前記外側プライと前記内側プライが対の形状をしており、前記外側プライが少なくとも2mmの第1の曲率深さを含み、前記内側プライが少なくとも2mmの第2の曲率深さを含み、前記第1の曲率深さが前記第2の曲率深さの10%以内である、実施形態13から24のいずれかに記載の物品。
【0424】
実施形態26
前記外側プライが少なくとも2mmの曲率深さを含み、前記内側プライが、前記外側プライに適合するように冷間成形されることによる応力を有する、実施形態13から25のいずれかに記載の物品。
【0425】
実施形態27
前記外側プライの前記ホウケイ酸ガラス組成物を有するガラスが500キロポアズ以上の液相粘度を有し、かつ前記外側プライの前記ホウケイ酸ガラス組成物を有するガラスが1725℃以下の200ポアズ温度を有する、実施形態13から26のいずれかに記載の物品。
【0426】
実施形態28
前記物品が車両に取り付けられる場合、前記外側プライが前記内側プライの外側になるように構成される、実施形態13から27のいずれかに記載の物品。
【0427】
実施形態29
前記物品を通る300~380nmの範囲の波長を有する紫外線の透過率が75%以下であり;前記物品を通る可視スペクトルの光の透過率が73%以上であり;かつ、前記物品を通る全日射透過率が61%以下である、実施形態13から28のいずれかに記載の物品。
【0428】
実施形態30
前記ホウケイ酸ガラスが3.25ppm/℃超かつ8.7ppm/℃未満の低温熱膨張係数を有する、実施形態13から29のいずれかに記載の物品。
【0429】
実施形態31
前記厚さが2.0mm以上である、実施形態13に記載の物品。
【0430】
実施形態32
前記ホウケイ酸ガラスの前記組成物が、4モル%以上かつ6モル%以下のNa2Oを含む、実施形態13に記載の物品。
【0431】
実施形態33
前記ホウケイ酸ガラスの前記組成物が、
3モル%以上かつ5モル%以下のAl2O3;及び
12モル%以上かつ16モル%以下のB2O3
を含む、実施形態32に記載の物品。
【0432】
実施形態34
前記ホウケイ酸ガラスの前記組成物が、0.03モル%以上かつ0.5モル%以下のFe2O3を含む、及び
前記厚さが3.3mm以下であり、前記外側プライが前記可視スペクトル全体にわたって90%以上かつ92.5%以下の透過率を有する
のうちの少なくとも一方である、実施形態13に記載の物品。
【0433】
実施形態35
前記外側ガラスプライが前記ホウケイ酸ガラスからなる、実施形態13に記載の物品。
【0434】
実施形態36
ガラス積層体が、
第1の主面と前記第1の主面とは反対側の第2の主面とを含む第1のガラスプライであって、ホウケイ酸ガラス組成物を含む、第1のガラスプライ;
第3の主面と前記第3の主面とは反対側の第4の主面とを含む第2のガラスプライ;及び
前記第1のガラスプライの前記第2の主面を前記第2のガラスプライの前記第3の主面に結合する中間層
を含み、
前記ホウケイ酸ガラス組成物が、
少なくとも74モル%のSiO2;
少なくとも10モル%のB2O3;並びに
SiO2、B2O3、及びAl2O3の合計が少なくとも90モル%になるような量のAl2O3
を含む、ガラス積層体。
【0435】
実施形態37
前記第1のガラスプライが前記第2のガラスプライより厚い、実施形態36に記載のガラス積層体。
【0436】
実施形態38
前記第2のガラスプライが強化されている、実施形態36又は37に記載のガラス積層体。
【0437】
実施形態39
前記第2のガラスプライがイオン交換処理によって化学強化されている、実施形態38に記載のガラス積層体。
【0438】
実施形態40
前記ガラス積層体が、内部を画成する本体と開口部とを有する車両において使用するように構成されており、前記ガラス積層体が前記開口部内に配置されるように構成されており、かつ前記第1のガラスプライが前記車両の外部に面して配置され、前記第2のガラスプライが前記車両の前記内部に面して配置される、実施形態36から39のいずれかに記載のガラス積層体。
【0439】
実施形態41
前記第1のガラスプライが、少なくとも2mmの前記第1の主面と前記第2の主面との間の第1の厚さを有し、前記第2のガラスプライが、2mm未満の前記第3の主面と前記第4の主面との間の第2の厚さを有する、実施形態36から40のいずれかに記載のガラス積層体。
【0440】
実施形態42
前記ガラス積層体が、前記第1の厚さと前記第2の厚さの合計に等しいガラスの総厚を含み、前記第1のガラス厚さの前記ガラスの総厚に対する比が少なくとも0.7である、実施形態41に記載のガラス積層体。
【0441】
実施形態43
前記第1のガラス厚さが少なくとも3mmであり、前記第2のガラス厚さが1.1mm以下である、実施形態41又は42に記載のガラス積層体。
【0442】
実施形態44
前記第1のガラス厚さが少なくとも3.3mmであり、前記第2のガラス厚さが0.7mm以下である、実施形態41から43のいずれかに記載のガラス積層体。
【0443】
実施形態45
前記第2のガラスプライが第2のガラス組成物を含む、実施形態36から44のいずれかに記載のガラス積層体。
【0444】
実施形態46
前記第2のガラス組成物が前記ホウケイ酸ガラス組成物とは異なる、実施形態45に記載のガラス積層体。
【0445】
実施形態47
前記第2のガラス組成物が、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物、アルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス組成物、アルカリアルミノリンケイ酸塩ガラス組成物、アルカリアルミノホウケイ酸ガラス組成物、及びそれらの組合せからなる群より選択される、実施形態45又は46に記載のガラス積層体。
【0446】
実施形態48
ISO 13837Aに準拠して測定した前記ガラス積層体を通る可視透過率が少なくとも73%である、実施形態36から47のいずれかに記載のガラス積層体。
【0447】
実施形態49
ISO 13837Aに準拠して測定した前記ガラス積層体を通る全日射透過率が90%以下である、実施形態36から48のいずれかに記載のガラス積層体。
【0448】
実施形態50
前記第1の主面、前記第4の主面、又は前記第1の主面と前記第4の主面の両方が、ASTM 1561に準拠した透過光学系を使用する光学歪み検出器で測定して、最大で200ミリディオプタの光学歪みを示す、実施形態36から49のいずれかに記載のガラス積層体。
【0449】
実施形態51
前記中間層が、ポリビニルブチラール(PVB)、遮音PVB(APVB)、アイオノマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル(Pe)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びそれらの組合せからなる群より選択される、実施形態36から50のいずれかに記載のガラス積層体。
【0450】
実施形態52
前記中間層が約0.5mmから約2.5mmの範囲の厚さを含む、実施形態36から41のいずれかに記載のガラス積層体。
【0451】
実施形態53
前記中間層が少なくとも1つの機能層又は膜を含む、実施形態36から52のいずれかに記載のガラス積層体。
【0452】
実施形態54
前記機能層又は膜が、紫外線吸収、赤外線吸収、赤外線反射、音響減衰、着色、アンテナ、接着促進、アンチグレア処理、反射防止処理、及びそれらの組合せからなる群より選択される機能を提供する、実施形態53に記載のガラス積層体。
【0453】
実施形態55
前記第1のガラスプライ及び前記第2のガラスプライが対の形状をしており、前記第1のガラスプライが少なくとも2mmの第1の曲率深さを含み、前記第2のガラスプライが少なくとも2mmの第2の曲率深さを含み、前記第1の曲率深さが前記第2の曲率深さの10%以内である、実施形態36から54のいずれかに記載のガラス積層体。
【0454】
実施形態56
前記第1のガラスプライが撓んでおり、かつ少なくとも2mmの曲率深さを含み、前記第2のガラスプライが前記第1のガラスプライに適合するように冷間成形される、実施形態36に記載のガラス積層体。
【符号の説明】
【0455】
100 車両
110 車両本体
120 開口部
130 自動車用ガラス
200 ガラスプライ
202 第1の主面
204 第2の主面
206 非主面
210 第1の厚さ
300 積層体/積層構造
310 第1のガラスプライ
320 第2のガラスプライ
330 中間層
332 第3の主面
334 第4の主面
336 非主面
340 第2の厚さ
400 湾曲したガラス積層体
410 第1の曲率深さ
420 第2の曲率深さ
510 放射状亀裂
520 リング状亀裂
700 溶融形成装置
702 アイソパイプ
704 トラフ
706 第1の成形面
708 第2の成形面
710 ルート
712 ホウケイ酸ガラス組成物
714 ガラスプライ
716 第2のアイソパイプ
718 第2のトラフ
720 第3の成形面
722 第4の成形面
724 溶融ガラス組成物
726a,726b クラッド層
800 システム
810 センサ
820 入力信号
830 出力信号
【国際調査報告】