(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】有機溶媒ナノろ過用の多結晶鉄含有有機金属構造体膜
(51)【国際特許分類】
B01D 71/06 20060101AFI20231213BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20231213BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20231213BHJP
B01D 69/04 20060101ALI20231213BHJP
B01D 69/06 20060101ALI20231213BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20231213BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20231213BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20231213BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B01D71/06
B01D69/00
B01D69/02
B01D69/04
B01D69/06
B01D69/08
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535980
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 SG2021050780
(87)【国際公開番号】W WO2022132045
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10202012516U
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ウェイドン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,シン
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA22
4D006MA31
4D006MA40
4D006MB06
4D006MB09
4D006MB20
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC05
4D006MC07X
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC45
4D006MC54
4D006MC57
4D006MC58
4D006MC59
4D006MC60
4D006MC63
4D006MC65
4D006MC75
4D006MC78
4D006MC81
4D006NA45
4D006NA49
4D006NA50
4D006NA64
4D006PA01
4D006PB12
4D006PB13
4D006PB14
(57)【要約】
本明細書において、有機溶媒ナノろ過のフィルター材料として使用するための、多孔質基材と多結晶有機金属構造体膜材料とを含む多結晶有機金属構造体膜が開示される。また、この多結晶有機金属構造体膜の調製方法も本明細書において開示される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面と第2の表面を有する多孔質基材;および
第1の表面上に形成された多結晶膜材料
を含む複合材料であって、該多結晶膜材料が、金属有機構造体(MOF)PCN-250(鉄アゾベンゼンテトラカルボン酸、別名:MIL-127(Fe)、soc-MOF(Fe))である、複合材料。
【請求項2】
前記多結晶膜材料がPCN-250である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記MOFの孔径が、5~10Åである、請求項1または2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記MOFの孔径が、5.8~9.2Åである、請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記MOFのBET表面積が、1000~2000m
2・g
-1、例えば、約1305m
2・g
-1である、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、0.1μm~20μmである、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、0.5μm~15μmである、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、1μm~10μm、例えば、2~5.4μm、例えば、2.6~5μm、例えば、約3.7μmである、請求項7に記載の複合材料。
【請求項10】
フィルター材料としての使用に適している、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項11】
有機溶媒ナノろ過のフィルター材料としての使用に適している、請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
水および分子直径が9Å以下、例えば8Å以下の有機溶媒の透過係数が、20L m
-2 h
-1 bar
-1より高い値であり、該透過係数が、25~140L m
-2 h
-1 bar
-1であってもよい、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項13】
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中のメチルブルーに対する色素阻止率が93.7%であり、NMPの透過流速が2.6L m
-2 h
-1 bar
-1である、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項14】
前記基材が、ポリマー、セラミック(例えば、アルミナ)、炭素布、金属および金属酸化物のうちの1種以上から選択される、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項15】
前記基材が、多孔質Al
2O
3基材であり、多孔質α-Al
2O
3基材であってもよい、請求項14に記載の複合材料。
【請求項16】
前記基材が、チューブ、メッシュもしくはシートの形態、中空糸(例えば、多孔質アルミナセラミック中空糸)の形態、または、チューブ、メッシュ、シートもしくは中空糸が折り畳まれた他の形態で提供される、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項17】
前記第1の表面上に形成された多結晶膜材料が欠陥のない多結晶膜材料である、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項18】
前記多結晶膜材料の表面に、金属有機構造体結晶の沈着が実質的に見られない、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項19】
水および分子直径が9Å以下、例えば8Å以下の有機溶媒の透過係数が、10L m
-2 h
-1 bar
-1より高い値であり、該透過係数が、15~350L m
-2 h
-1 bar
-1であってもよく、例えば、12~337L m
-2 h
-1 bar
-1である、請求項1~11および14~18のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項20】
pHが2の水溶液中で少なくとも2週間安定である、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項21】
(a)前記複合材料が、親水性で、水接触角が約7.6°であること;および/または
(b)前記複合材料が、親水性で、約543nmの粗さを有すること
を特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の複合材料を作製する方法であって、
(a)ラビング法による種付け操作により、多孔質基材の表面に金属有機構造体(MOF)PCN-250(鉄アゾベンゼンテトラカルボン酸、別名:MIL-127(Fe)、soc-MOF(Fe))の複数の結晶および/または粉末微粒子を種付けしたものを提供する工程;ならびに
(b)種付けした多孔質基材を、容器内で、該容器の底面に対して実質的に垂直に配置して、溶媒、有機配位子、金属前駆体化合物およびモジュレーター化合物を含む母液に浸漬し、得られた混合物を一定時間加熱して複合材料を提供する工程
を含む、方法。
【請求項23】
請求項1~21のいずれか1項に記載の複合材料を作製する方法であって、
(a)多孔質基材と、溶媒、有機配位子、金属前駆体化合物およびモジュレーター化合物を含む母液とを提供する工程;ならびに
(b)前記多孔質基材を前記母液に浸漬し、得られた混合物を一定時間加熱して複合材料を提供する工程
を含む、方法。
【請求項24】
流体をろ液と保持液に分離するプロセスにおいて、請求項1~21のいずれか1項に記載の多結晶有機金属構造体膜を使用する方法であって、
(a)分離が必要な流体を、請求項1~21のいずれか1項に記載の複合材料に提供する工程;
(b)前記複合材料に、前記流体の一部を通過させてろ液を得ることで、該ろ液を提供する工程;ならびに
(c)前記ろ液と保持液を回収する工程
を含む、方法。
【請求項25】
分離される流体が、気体の混合物;1種以上の無機材料を含む水溶液;1種以上の有機材料を含む水溶液;1種以上の無機材料と1種以上の有機材料とを含む水溶液;有機液体の混合物;1種以上の有機液体と水との混合物;1種以上の有機液体と1種以上の有機材料との混合物;1種以上の有機液体と1種以上の無機材料との混合物;1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料と、1種以上の無機材料との混合物;水と、1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料との混合物;水と、1種以上の有機液体と、1種以上の無機材料との混合物;および水と、1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料と、1種以上の無機材料との混合物から選択される、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶鉄含有有機金属構造体膜、および有機溶媒ナノろ過のフィルター材料としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で引用された既に公開されている一連の文献およびこれらに記載の考察は、当技術分野の技術水準の一部であることや技術常識であることを認めるものと解釈すべきではない。
【0003】
石油化学産業や製薬産業では、製品の精製や濃縮、溶剤の回収、触媒のリサイクルなどの目的で、集約的な分離プロセスが有機溶媒の存在下で行われている。蒸留と晶析は、現在、液体-液体混合物および固体-液体混合物を分離するための最も一般的な分離技術である。しかし、蒸留プロセスでは、加熱冷却、乾燥、蒸発の繰り返しにより膨大なエネルギー損失が発生するため、多大なコストがかかる(D. S. Sholl & R. P. Lively, Nature 2016, 532, 435-437)。例えば、アメリカでは、総エネルギー消費量の45~55%を分離プロセスが占めており、そのうち、蒸留が49%、晶析が31%を占めている(D. S. Sholl & R. P. Lively, Nature 2016, 532, 435-437)。また、このような分離法は、エネルギー消費が大きいことに加え、共沸混合物や熱に敏感な化学物質の分離には不向きである。したがって、穏和な条件下で有機溶媒から化学物質を分離する効率的な方法が緊急に求められている。
【0004】
膜を利用した分離技術は、経済性と環境への影響の点で魅力的な技術である。液相分離用の新しい膜利用技術である有機溶媒ナノろ過(OSN)は、低コストで環境に優しいという特徴がある(W. R. Bowen & J. S. Welfoot, Chem. Eng. Sci. 2002, 57, 1121-1137; A. W. Mohammad et al., Desalination 2015, 356, 226-254; および X. Wang et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 2017, 9, 37848-37855)。現在、生化学産業で高分子を効率的に分離するために、有機溶媒に強く、規則的な孔径を有する膜が求められている。しかし、慣用のポリマー膜(F. M. Sukma & P. Z. Culfaz-Emecen, J. Membr. Sci. 2018, 545, 329-336)、セラミック膜(A. Buekenhoudt et al., J. Membr. Sci. 2013, 439, 36-47)やゼオライト膜は、膨潤性、漏出性、孔径が小さく不規則であるなどの点で、このような要件を満たすことができないのが現状である(Y. Cai et al., J. Membr. Sci. 2020, 615, 118551)。
【0005】
有機リンカーと配位結合した金属イオンからなる有機金属構造体(MOF)は、均一で制御可能な孔径を有し、様々な機能性を持つことから、触媒作用、薬物送達、ガス貯蔵、センシング、分離などへの応用に大きな可能性を秘めている。さらに、Zr4+、Al3+、Cr3+、Fe3+などの原子価の高い金属イオンを有するMOFや、Co2+/Zn2+をベースとするUiO-66、MIL-101、PCN、ZIFシリーズは、水や有機溶媒の存在下で化学的に安定である(M. Kandiah et al., Chem. Mater. 2010, 22, 6632-6640; G. Ferey et al., Science 2005, 309, 2040-2042; D. Feng et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 10307-10310; K. Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 13983-13986; および M. Ding, X. Cai & H.-L. Jiang, Chem. Sci. 2019, 10, 10209-10230)。特に、薄くて化学的に安定なMOF膜の調製における最近の進歩は、高度なOSN膜の開発につながることが期待される。例えば、Caiらは、OSN用のカルボキシル化炭素布上で合成したUiO-66-NH2(Zr)膜について(Y. Cai et al., J. Membr. Sci. 2020, 615, 118551)、ナイルレッドに対して非常に高い阻止率(>99.8%)を示すとともに、メタノール透過係数が0.30LMH/barであることを報告している。同様に、Linと共同研究者らは、水から水和イオンを分離することができる、植物ポリフェノールであるタンニン酸で修飾したポリエーテルスルホンフィルム上で成長させたZIF-8膜について報告している(Y. Xu et al., J. Membr. Sci. 2021, 618, 118726)。実際、このような連続的なMOF膜は、優れた分子ふるい特性と優れた耐薬品性を有することが実証されている。しかし、既存のMOF膜の透過係数は、工業用OSNの用途としては依然として非常に低いレベルである。例えば、エタノール(EtOH、dkinetic=0.45nm)のような一般的な工業用有機溶媒や、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、dkinetic=0.55nm)のような強い極性溶媒は、ナノメートルサイズの孔窓を有するUiO-66膜やZIF-8膜をほとんど透過することができない(ZIF-8では0.314nm(A. W. Thornton et al., Energy Environ. Sci. 2012, 5, 7637)、UiO-66では0.6nm(X. Li et al., Nat. Commun. 2019, 10, 2490))。
【0006】
したがって、工業用OSNの用途において、溶媒透過係数が高いMOF膜の開発が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明の態様および実施形態について、番号付けされた以下の項を参考にしながら説明する。
1. 第1の表面と第2の表面を有する多孔質基材;および
第1の表面上に形成された多結晶膜材料
を含む複合材料であって、該多結晶膜材料が、金属有機構造体(MOF)PCN-250(鉄アゾベンゼンテトラカルボン酸、別名:MIL-127(Fe)、soc-MOF(Fe))である、複合材料。
2. 前記多結晶膜材料がPCN-250である、項1に記載の複合材料。
3. 前記MOFの孔径が、5~10Åである、項1または2に記載の複合材料。
4. 前記MOFの孔径が、5.8~9.2Åである、項3に記載の複合材料。
5. 前記MOFのBET表面積が、1000~2000m2・g-1、例えば、約1305m2・g-1である、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
6. 前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、0.1μm~20μmである、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
7. 前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、0.5μm~15μmである、項6に記載の複合材料。
8. 前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、1μm~10μm、例えば、2~5.4μm、例えば、2.6~5μm、例えば、約3.7μmである、項7に記載の複合材料。
10. フィルター材料としての使用に適している、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
11. 有機溶媒ナノろ過のフィルター材料としての使用に適している、項10に記載の複合材料。
12. 水および分子直径が9Å以下、例えば8Å以下の有機溶媒の透過係数が、20L m-2 h-1 bar-1より高い値であり、該透過係数が、25~140L m-2 h-1 bar-1であってもよい、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
13. N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中のメチルブルーに対する色素阻止率が93.7%であり、NMPの透過流速が2.6L m-2 h-1 bar-1である、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
14. 前記基材が、ポリマー、セラミック(例えば、アルミナ)、炭素布、金属および金属酸化物のうちの1種以上から選択される、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
15. 前記基材が、多孔質Al2O3基材であり、多孔質α-Al2O3基材であってもよい、項14に記載の複合材料。
16. 前記基材が、チューブ、より具体的にはメッシュもしくはシートの形態、中空糸(例えば、多孔質アルミナセラミック中空糸)の形態、または、チューブ、より具体的にはメッシュ、シートもしくは中空糸が折り畳まれた他の形態で提供される、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
17. 前記第1の表面上に形成された多結晶膜材料が欠陥のない多結晶膜材料である、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
18. 前記多結晶膜材料の表面に、金属有機構造体結晶の沈着が実質的に見られない、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
19. 水および分子直径が9Å以下、例えば8Å以下の有機溶媒の透過係数が、10L m-2 h-1 bar-1より高い値であり、該透過係数が、15~350L m-2 h-1 bar-1であってもよく、例えば、12~337L m-2 h-1 bar-1である、項1~11および14~18のいずれか1項に記載の複合材料。
20. pHが2の水溶液中で少なくとも2週間安定である、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
21.(a)前記複合材料が、親水性で、水接触角が約7.6°であること;および/または
(b)前記複合材料が、親水性で、約543nmの粗さを有すること
を特徴とする、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
22. 項1~21のいずれか1項に記載の複合材料を作製する方法であって、
(a)ラビング法による種付け操作により、多孔質基材の表面に金属有機構造体(MOF)PCN-250(鉄アゾベンゼンテトラカルボン酸、別名:MIL-127(Fe)、soc-MOF(Fe))の複数の結晶および/または粉末微粒子を種付けしたものを提供する工程;ならびに
(b)種付けした多孔質基材を、容器内で、該容器の底面に対して実質的に垂直に配置し、溶媒、有機配位子、金属前駆体化合物およびモジュレーター化合物を含む母液に浸漬して、該多孔質基材が該母液に完全に覆われるようにし、得られた混合物を一定時間加熱して複合材料を提供する工程
を含む、方法。
23. 項1~21のいずれか1項に記載の複合材料を作製する方法であって、
(a)多孔質基材と、溶媒、有機配位子、金属前駆体化合物およびモジュレーター化合物を含む母液とを提供する工程;ならびに
(b)前記多孔質基材を前記母液に浸漬し、得られた混合物を一定時間加熱して複合材料を提供する工程
を含む、方法。
24. 流体をろ液と保持液に分離するプロセスにおいて、項1~21のいずれか1項に記載の多結晶有機金属構造体膜を使用する方法であって、
(a)分離が必要な流体を、項1~21のいずれか1項に記載の複合材料に提供する工程;
(b)前記複合材料に、前記流体の一部を通過させてろ液を得ることで、該ろ液を提供する工程;ならびに
(c)前記ろ液と保持液を回収する工程
を含む、方法。
25. 分離される流体が、気体の混合物;1種以上の無機材料を含む水溶液;1種以上の有機材料を含む水溶液;1種以上の無機材料と1種以上の有機材料とを含む水溶液;有機液体の混合物;1種以上の有機液体と水との混合物;1種以上の有機液体と1種以上の有機材料との混合物;1種以上の有機液体と1種以上の無機材料との混合物;1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料と、1種以上の無機材料との混合物;水と、1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料との混合物;水と、1種以上の有機液体と、1種以上の無機材料との混合物;および水と、1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料と、1種以上の無機材料との混合物から選択される、項24に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】OSNに使用した分離装置の概略図である。上部にある膜の膜間差圧は1~5barの範囲に制御した。
【0009】
【
図2】PCN-250膜の合成とOSNへの応用を示した概略図である。
【0010】
【
図3】(a)ブランク基材、(b)ラビング法による種付け後のシード層、および(c)ラビング法による種付け後、3時間、4時間または6時間二次成長させたシード層の光学画像である。
【0011】
【
図4】合成時間が2時間のPCN-250 MOFシードの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0012】
【
図5】(a)下地であるAl
2O
3支持体と(b)ラビング法による種付けにより作製したPCN-250シード層の電界放出走査型電子顕微鏡(FESEM)画像、(c、d)ラビング法で作製したシード層のエネルギー分散型X線分光法(EDX)マッピング、(e)ラビング法で作製したシード層の断面SEM画像、および(f)ソルボサーマル法により150℃で2時間加熱して調製したPCN-250シード層のSEM画像である。
【0013】
【
図6】ソルボサーマル法による種付けと二次成長による多結晶PCN-250膜のSEM画像である。(a)は表面図であり、(b)は断面図である。
【0014】
【
図7】種付けした支持体を水平(a1)および垂直(b1)に配置して行ったPCN-250膜の合成と、得られた膜のSEM画像(a2およびb2)を示したものである。
【0015】
【
図8】アルミナ支持体上のPCN-250シード層(a)とPCN-250膜(b-d)のFESEM画像;(e-f)アルミナ支持体上のPCN-250膜のEDXマッピング:FeおよびAl;ならびに(g)調製後の未処理のPCN-250粉末、PCN-250膜、および水または各種溶媒に2週間浸漬した後のPCN-250膜のX線回折(XRD)パターンである。
【0016】
【
図9】PCN-250膜の水接触角を示した図である。
【0017】
【
図10】Al
2O
3基材上のPCN-250膜の原子間力顕微鏡(AFM)画像である。3時間成長させた後、洗浄と乾燥を行い、膜を得た。粗さは543nmであった。
【0018】
【
図11】ラビング法による種付け後、(a)2時間、(b)4時間または(c)8時間二次成長させたPCN-250膜の厚さを示した図である。
【0019】
【
図12】2時間、3時間、4時間または8時間二次成長させたPCN-250膜の水透過係数とメチルブルー(MB)阻止率を示した図である。成長時間が2時間の膜の阻止率の低さは、欠陥の存在によるものと考えられる。
【0020】
【
図13】(a)25℃で測定したPCN-250膜における水および各種有機溶媒の透過係数、(b)PCN-250膜の溶媒透過係数と溶媒の組み合わせ特性(粘度:η、全溶解度パラメータ:δ
t、分子直径:d
m)との関係、(c)PCN-250膜の水透過係数と塩阻止率、(d)PCN-250膜の水透過係数と色素阻止率、(e)NMP中または(f)エタノール中のMBの紫外可視(UV-Vis)スペクトルを示したものである。
【0021】
【
図14】色素水溶液(供給液)(50ppm)と、室温(25℃)、3barの条件下、PCN-250膜で分離処理して得られたろ液のUV-Visスペクトルを示したものである。
【0022】
【
図15】室温(25℃)、5barの条件下で測定したPCN-250膜の水透過係数とポリエチレングリコール(PEG)阻止率を示した図である。PCN-250膜の分子量カットオフ値(MWCO)は、阻止率90%の値から約1300g/molと判定した。
【0023】
【
図16】N
2収着等温線を示した図である(中塗り:吸着、中抜き:脱着)。挿入図:PCN-250結晶粉末の細孔径分布(密度汎関数理論(DFT)法)。
【0024】
【
図17】繰り返し作製した10枚の膜に供給した供給液(メチルブルー水溶液、50ppm)と膜を通過したろ液のUV-Visスペクトルを示したものである(詳細は表5参照)。
【0025】
【
図18】PCN-250膜の水透過係数とNaCl阻止率(1000ppm)に関する長期安定性試験(25℃、3bar条件下)の結果である。
【0026】
【
図19】様々な条件下、PCN-250膜で分離処理したMB水溶液(供給液;ろ液)のUV-Visスペクトルである:(a)中性溶液;(b)塩酸水溶液(pH=2)2週間;(c)NaOH水溶液(pH=12)2時間。
【0027】
【
図20】(a)ジメチルホルムアミド(DMF);(b)エタノール;(c)NMP;(d)水;(e)塩酸(HCl)水溶液(pH=2);および(f)水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液(pH=12)の各種溶媒に2週間浸漬したPCN-250膜のSEM画像である。
【0028】
【
図21】処理前のPCN-250膜の水透過係数とMB阻止率、およびpH=2(HCl水溶液)で2週間またはpH=12(NaOH水溶液)で2時間処理した膜の水透過係数とMB阻止率を示したものである。いずれの処理も4bar、室温(25℃)で行った。耐pH試験に緻密で厚い膜(反応時間:8時間)を選択した理由は、PCN-250膜の本質的な品質を反映させるためである。
【0029】
【
図22】緻密な(反応時間:4時間)PCN-250膜の(a)NMP透過係数と(b)エタノール透過係数(エタノール透過係数/メチルブルー阻止率)に関する、室温、3bar条件下で行った長期連続試験の結果である。
【0030】
【
図23】PCN-250粉末(各0.3mg)を添加する前と後の色素水溶液(50ppm、各200mL)のUV-Visスペクトルである。
【0031】
【
図24】PCN-250膜の色素阻止率を他のOSN膜と比較したものである(詳細は表7参照)。試験に用いた溶媒は、(a)NMPと(b)エタノールである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の第1の態様では、
第1の表面と第2の表面を有する多孔質基材;および
第1の表面上に形成された多結晶膜材料を含む複合材料であって、該多結晶膜材料が、金属有機構造体(MOF)PCN-250(鉄アゾベンゼンテトラカルボン酸、別名:MIL-127(Fe)、soc-MOF(Fe))である、複合材料が提供される。
【0033】
本明細書の実施形態において、「含む(comprising)」という用語は、記載の特徴は必須であるが、他の特徴の存在については限定しないと解釈することができる。また、「含む(comprising)」という用語は、列挙された構成要素/特徴のみの存在を意図している状況に関することもある(例えば、「含む(comprising)」という語は、「からなる(consists of)」または「から本質的になる(consists essentially of)」という表現に置き換えることができる)。より広い解釈とより狭い解釈の両方が、本発明のすべての態様および実施形態に適用されることが明示的に想定されている。言い換えれば、「含む(comprising)」という用語およびその同義語は、「からなる(consisting of)」という用語または「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語またはこれらの同義語に置き換えることができ、その逆もまた然りである。
【0034】
本明細書において、「から本質的になる(consists essentially of)」という語句およびその変形(pseudonyms)は、微量な不純物が存在する可能性のある材料を意味すると解釈することができる。例えば、その材料の純度は、90%以上、例えば、95%より高い純度、例えば、97%より高い純度、例えば、99%より高い純度、例えば、99.9%より高い純度、例えば、99.99%より高い純度、例えば、99.999%より高い純度、例えば、100%であってもよい。
【0035】
本開示の複合材料は、高い機械的強度を有する。N=N結合の刺激応答性とFe-O結合の柔軟性を考慮すると、PCN-250は動的挙動を示す。PCN-250は、150MPaの機械的圧力下でもほとんど構造が変化しない(S. Yuan et al., Joule, 2017, 1, 806-815)。したがって、製造された多結晶PCN-250膜は、高い機械的強度を有すると考えられる。
【0036】
本開示の複合材料は、均一で大きな孔径を有する。PCN-250の孔径は、5~10Åであり、水(3.8Å)や多くの有機溶媒、例えば、メタノール(5.1Å)、アセトン(6.2Å)、トルエン(7.0Å)およびヘキサン(7.5Å)よりも大きい。これは、水や一般的な有機溶媒を優先的に透過させるのに好ましい条件であると考えられる。
【0037】
本開示の複合材料は、高い化学的安定性を有する。本開示のPCN-250膜は、幅広いpH(pH=1からpH=12まで)の水性環境下、およびほぼすべての種類の有機溶媒に対して安定である。したがって、PCN-250膜は、有機溶媒ナノろ過のような有機物が関与する実用的な用途に使用することができる。
【0038】
(本明細書の実施形態で報告されているような)欠陥のない多結晶MOFの製造により、さらに多くの利点が得られると考えられる。これについては、後述の実施例のセクションでさらに詳しく説明する。
【0039】
上記の利点を総合すると、本開示の複合材料は、その高い分離性能と優れた安定性により、攻撃的な有機溶媒中で高分子を分離できること、また、製造が容易であることが示唆される。
【0040】
本明細書に記載の有機金属構造体(MOF)は、いずれも金属カチオンと多座有機リンカーとの間の結合(すなわち配位結合)を含む材料であり、複数の空隙を有する多孔質構造を形成していることは理解されるであろう。上述したように、前記多結晶膜材料は、PCN-250である。
【0041】
前述したように、前記MOFは、多孔質構造体として記載されることもある。よって、前記MOFは細孔を有し、その孔径は、5~10Åであってもよい。本明細書に記載の特定の実施形態において、前記MOFの孔径は、5.8~9.2Åであってもよい。前記MOFは、所望の機能を果たすことができる適切な表面積を有していればよい。例えば、前記MOFのBET表面積は、1000~2000m2・g-1であってもよく、例えば、約1305m2・g-1であってもよい。
【0042】
前記基材の表面に付着した多結晶有機金属構造体は、該基材上に厚みを有する層を成していることは理解されるであろう。この膜材料の厚さは適切なものであればよく、例えば、前記基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さは、0.1μm~20μmであってもよい。例えば、前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さは、0.5μm~15μmであってもよい。あるいは、または、さらに、本発明の特定の実施形態は、前記多孔質基材の第1の表面上に形成された、厚さが5μm以下である多結晶膜材料であってもよい。これは、厚さ5.4μmのPCN-250膜が2.6L m-2 h-1 bar-1の水透過係数を示した結果に基づいている。よって、本明細書に記載される本発明の実施形態は、前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが1μm~10μm、例えば、2~5.4μm、例えば、2.6~5μm、例えば、約3.7μmであるものであってもよい。前記複合材料中のPCN-250の厚さが3.7μmであれば、18.9L m-2 h-1 bar-1の水透過係数が得られることに留意されたい。
【0043】
疑義を避けるために付言すると、本明細書で同じ特徴に関する複数の数値範囲が挙げられている場合、各範囲の端点を任意の順序で組み合わせた範囲も、さらに想定される(かつ暗に開示される)範囲として提供されることが明示的に想定されている。したがって、多結晶膜として、0.1~0.5μm、0.1~1μm、0.1~2μm、0.1~2.6μm、0.1~3.7μm、0.1~5μm、0.1~5.4μm、0.1~10μm、0.1~15μm、0.1~20μm;0.5~1μm、0.5~2μm、0.5~2.6μm、0.5~3.7μm、0.5~5μm、0.5~5.4μm、0.5~10μm、0.5~15μm、0.5~20μm;1~2μm、1~2.6μm、1~3.7μm、1~5μm、1~5.4μm、1~10μm、1~15μm、1~20μm;2~2.6μm、2~3.7μm、2~5μm、2~5.4μm、2~10μm、2~15μm、2~20μm;2.6~3.7μm、2.6~5μm、2.6~5.4μm、2.6~10μm、2.6~15μm、2.6~20μm;3.7~5μm、3.7~5.4μm、3.7~10μm、3.7~15μm、3.7~20μm;5~5.4μm、5~10μm、5~15μm、5~20μm;5.4~10μm、5.4~15μm、5.4~20μm;10~15μm、10~20μm;または15~20μmの厚さを有する多結晶膜が開示される。
【0044】
上記の範囲は、特に断りのない限り、本明細書で列挙された実施形態の任意の組み合わせに適用することができる。
【0045】
前記複合材料は、任意の適切な用途に使用することができる。しかし、本開示の複合材料は、特にフィルター材料としての使用に適していると考えられる。より具体的には、前記複合材料は、有機溶媒ナノろ過のフィルター材料としての使用に適していると考えられる。
【0046】
特定の実施形態において、前記複合材料における、水および分子直径が9Å以下、例えば8Å以下の有機溶媒の透過係数は、20L m-2 h-1 bar-1より高い値であってもよい。より具体的には、前記複合材料における、水および分子直径が9Å以下、例えば8Å以下の有機溶媒の透過係数は、25~140L m-2 h-1 bar-1であってもよい。別の実施形態において、前記複合材料における、水および分子直径が9Å以下、例えば8Å以下の有機溶媒の透過係数は、10L m-2 h-1 bar-1より高い値であってもよい。より具体的には、前記複合材料における、水および分子直径が9Å以下、例えば8Å以下の有機溶媒の透過係数は、15~350L m-2 h-1 bar-1、例えば、12~337L m-2 h-1 bar-1であってもよい。
【0047】
ジクロロメタン中のメチレンブルーに対する本開示の複合材料の色素阻止率は、78%より高い値であってもよく、ジクロロメタンの透過流束は、79.2L m-2 h-1 bar-1であってもよい。さらに、または、あるいは、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中のメチルブルーに対する前記複合材料の色素阻止率は、93.7%であってもよく、NMPの透過流束は、2.6L m-2 h-1 bar-1であってもよい。
【0048】
本明細書で使用される多孔質基材は、適切な多孔質材料であればよい。例えば、前記基材は、ポリマー、セラミック(例えば、アルミナ)、炭素布、金属および金属酸化物のうちの1種以上から選択されたものであってよい。
【0049】
前記基材は、以下に限定されないが、メッシュ、シートまたは中空糸(多孔質アルミナセラミック中空糸など)などの形態、さらにこれらの一次形態が折り畳まれた他の形態などの任意の適切な形態とすることができる。
【0050】
シート状の基材の例としては、ポリマーフィルムおよび炭素フィルム/炭素布が挙げられるが、これらに限定されない。メッシュとしては、金属メッシュおよび金属酸化物メッシュが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の中空糸構造としては、セラミック(例えば、アルミナ)およびポリマーフィルムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
特定の基材(例えば、炭素フィルム/炭素布またはステンレスメッシュ)は、カルボキシル化またはアミノ化によって官能基化することができ、それにより種結晶の成長が促進されることに留意されたい。さらに、前記基材としての炭素フィルム/炭素布の柔軟性により、得られる膜に良好な機械的特性を与えることができる。
【0052】
前記基材として使用できるポリマーの例としては、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルイミド(Ultem(商標) 1000)、ポリ(エーテル-ブロック-アミド)(PEBA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(アミド酸)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ペバックス(Pebax)、マトリミド(Matrimid(商標))、6FDA-DAM、6FDA/BPDA-DAM、ポリ(アミド-イミド)、ポリドーパミン(PDA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書に記載の特定の実施形態において、前記基材は、多孔質Al2O3基材であってもよく、多孔質α-Al2O3基材であってもよい。好適な多孔質α-Al2O3基材の例としては、最大孔径70nm、直径(基材)18mm、厚さ1mmの多孔質非対称α-Al2O3支持体が挙げられ、これはドイツのFraunhofer Institut fur Keramische Technologien and Systeme(IKTS)社から購入することができる。孔径の異なる複数種の材料を使用することも可能であり、例えば、最大孔径が30~200nmの範囲であってもよいことは理解されるであろう。
【0054】
前記基材は、任意の適切な形態で提供されてもよい。例えば、前記基材は、チューブ、より具体的にはメッシュ、シートの形態、中空糸(例えば、多孔質アルミナセラミック中空糸)の形態、または、チューブ、より具体的にはメッシュ、シートもしくは中空糸が折り畳まれた他の形態で提供されてもよい。
【0055】
本開示の複合材料は、欠陥のない多結晶膜材料が第1の表面上に形成された複合材料であってもよい。本明細書において、欠陥のない膜は、水中でのメチルブルーの阻止率が90%以上の膜と定義することができる(この実験の実施方法の詳細については、例えば、後述の実施例のセクションを参照されたい)。あるいは、または、さらに、欠陥のない膜は、本明細書において、エタノール中でのメチルブルーの阻止率が84%以上の膜と定義することができる(この実験の実施方法の詳細については、例えば、後述の実施例のセクションを参照されたい)。
【0056】
本開示の複合材料は、前記多結晶膜材料の表面に、金属有機構造体結晶の沈着が実質的に見られないものであってもよい。すなわち、前記多結晶膜材料の表面には、その平面に金属有機構造体結晶の沈着が全く見られない場合もあれば、FESEMによりサンプル領域を観察したときにごく僅かに表面被覆が含まれる場合もある(例えば、被覆率は、5%未満、例えば、1%未満、例えば、0.1%未満、例えば、0.01%未満であってもよい)。
【0057】
本明細書における複合材料は、酸性条件下で長期間安定な複合材料であってもよい。例えば、本開示の複合材料は、pHが2の水溶液中で少なくとも2週間安定な複合材料であってもよい。
【0058】
本開示の複合材料は、本質的に親水性の複合材料であってもよい。よって、本開示の複合材料の水接触角は、約7.6°であってもよい。水接触角は、静的水滴試験により測定できる。
【0059】
本発明のさらなる一態様では、本明細書に記載の複合材料を作製する方法であって、
(a)ラビング法による種付け操作により、多孔質基材の表面に金属有機構造体(MOF)PCN-250(鉄アゾベンゼンテトラカルボン酸、別名:MIL-127(Fe)、soc-MOF(Fe))の複数の結晶および/または粉末微粒子を種付けしたものを提供する工程;ならびに
(b)種付けした多孔質基材を、容器内で、該容器の底面に対して実質的に垂直に配置して、溶媒、有機配位子、金属前駆体化合物およびモジュレーター化合物を含む母液に浸漬し、得られた混合物を一定時間加熱して複合材料を提供する工程
を含む、方法が提供される。
【0060】
この方法では、MOF PCN-250の種結晶を採取し、これを軟質ゴム素材を用いて多孔質基材表面に一方向に擦り付けることにより、種付けされた多孔質基材が提供される。このラビング処理(擦り付け処理)の工程は、1~10回、例えば、3回繰り返してもよい。上記の方法に記載の「浸漬」は、多孔質基材全体をMOFの成長に使用できるように、種付けされた多孔質基材全体を母液に浸漬させることを意味することは理解されるであろう。
【0061】
前記基材は、前記容器の底面に対して垂直に配置される。これは、垂直に配置することで、驚くべきことに、前記基材の第1の表面上に欠陥のない多結晶膜材料が形成された結果に基づいている。前記膜材料の1つの表面のみをMOF成長溶液に接触させることが意図されているため、任意の適切な方法で他の表面をマスクしてもよいことは理解されるであろう。例えば、2つの基材を同時に準備するか、あるいは、裏面(すなわち、ラビング法による種付けされていない面)を膜保持体のカードスロットの裏面と向かい合うように配置することで、溶液と接触しないようにすることができる。このようにすることで、ラビング法による種付けにより調製された面のみがMOF成長溶液と接触する。「垂直」とは、容器の底面に対して90°を成す配置のみを意味するものではなく、所望の結果が得られる任意の向きを意味するものであってもよいことは理解されるであろう。よって、90°から、±0.1°~±5°、例えば、±0.5°~±2°、例えば、±1°~±1.5°のばらつきがあってもよい。
【0062】
反応終了後、反応容器を(例えば、周囲温度まで)冷却し、得られた複合材料を使用前に適切な溶媒で洗浄してもよい。この洗浄工程に適した溶媒の例としては、DMFおよび/またはアセトンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
また、本明細書に記載の複合材料を作製する方法は、
(a)多孔質基材と、溶媒、有機配位子、金属前駆体化合物およびモジュレーター化合物を含む母液とを提供する工程;ならびに
(b)前記多孔質基材を前記母液に浸漬し、得られた混合物を一定時間加熱して複合材料を提供する工程
を含んでいてもよい。
【0064】
本明細書に記載の方法は、単純なソルボサーマル反応を利用するものであるが、この方法により、高品質の多結晶PCN-250膜(例えば、欠陥のない多結晶PCN-250膜)が得られる。これにより、このような多結晶MOF膜のスケールアップ製造が可能になる。
【0065】
母液には、任意の適切な溶媒を使用することができる。適切な溶媒の例としては、DMFが挙げられるが、これに限定されない。また、母液には、任意の適切な有機配位子を使用することができる。適切な有機配位子の例としては、3,3',5,5'-アゾベンゼンテトラカルボン酸(H4ABTC)が挙げられるが、これに限定されない。母液には、任意の適切な金属前駆体化合物を使用することができる。適切な金属前駆体化合物の例としては、塩化第二鉄が挙げられるが、これに限定されない。母液には、任意の適切なモジュレーター化合物を使用することができる。適切なモジュレーター化合物の例としては、酢酸が挙げられるが、これに限定されない。
【0066】
上記の膜は、流体内の流体と物質の分離に広く利用できる。したがって、流体をろ液と保持液に分離するプロセスにおいて、本明細書に記載の多結晶有機金属構造体膜を使用する方法であって、
(a)分離が必要な流体を、本明細書に記載の複合材料に提供する工程;
(b)前記複合材料に、前記流体の一部を通過させてろ液を得ることで、該ろ液を提供する工程;ならびに
(c)前記ろ液と保持液を回収する工程
を含む、方法も開示される。
【0067】
本発明が効果を奏すると考えられる分離として、複数の種類が挙げられる。例えば、分離される流体は、気体の混合物;1種以上の無機材料を含む水溶液;1種以上の有機材料を含む水溶液;1種以上の無機材料と1種以上の有機材料とを含む水溶液;有機液体の混合物;1種以上の有機液体と水との混合物;1種以上の有機液体と1種以上の有機材料との混合物;1種以上の有機液体と1種以上の無機材料との混合物;1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料と、1種以上の無機材料との混合物;水と、1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料との混合物;水と、1種以上の有機液体と、1種以上の無機材料との混合物;および水と、1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料と、1種以上の無機材料との混合物から選択される。
【0068】
本明細書に記載される、上記の膜の具体的な用途としては、有機/水混合物または有機系の分離、脱塩および廃水浄化(すなわち、廃水からのイオンまたは色素の除去、有機溶媒ナノろ過として知られている)、ガス分離などが挙げられるが、これらに限定されない。以下の実施例において、これらの技術に適用される本発明の各種の膜について、詳細な説明と結果を提供する。他の分離方法への適用は、本開示の方法から推定することができ、当業者であれば、本明細書で提供される教示と一般的な知識に基づいて容易に達成できることは理解されるであろう。
【0069】
以下の非限定的な実施例において、本発明のさらなる態様および実施形態を提供する。
【実施例】
【0070】
材料
試薬はすべて市販のものを入手し、精製せずに使用した。無水塩化鉄(III)(FeCl3、98%)は、FISHER UK社から購入した。HCl(37%)、酢酸(HAc、99.5%)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA、>99.0%)、キシレン異性体(p-、m-、o-キシレン、AR、>98%)、ローズベンガル(RB)、メチルオレンジ(MO、>98%)、PEG(200、400、600、1000、2000、4000g/mol、ACS試薬)は、いずれもTCI社から購入した。塩化ナトリウム(NaCl、>99.0%)、NaOH(>98%)、5-ニトロイソフタル酸(98%)およびD-グルコース(99.5%)は、Sigma社から購入した。メチルブルー(MB、62%)、アシッドフクシン(AF)、アシッドブルー25(45%)およびクロラニル酸(>98%)は、Sigma-Aldrich社から購入した。メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、アセトン、NMP、DMF、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、1-プロパノール(NPA)、2-プロパノール(IPA)などのACS試薬溶媒(99.5%)は、Fisher Chemical社から購入した。すべての実験で、Millipore-Q System(Millipore, Billerica, MA, USA)で製造した脱イオン水(H2O)を使用した。最大孔径70nm、直径18mm、厚さ1mmの多孔質非対称α-Al2O3支持体は、Fraunhofer Institut fur Keramische Technologien and Systeme(IKTS)社から購入した。
【0071】
分析法
PXRD
PXRDパターンは、密封Cu管(λ=1.540598Å)を備えた粉末X線回折装置Rigaku Miniflex 600を用いて、スキャン速度2°/minで測定した。pH値は、pHメーター(VWR pH 1100L)で測定した。
【0072】
エネルギー分散型X線分光法(EDX)およびFESEM
多結晶PCN-250膜の組成と形態は、EDXとFESEM(JSM-7610F、日本電子)で調べた。観察に先立って、すべてのサンプルにスパッタコーター(Cressington 208 HR)を用いて、20mAの電流を流しながら60秒間、Ptをスパッタした。
【0073】
原子間力顕微鏡法(AFM)
膜の粗さは、原子間力顕微鏡(Bruker Dimension Icon)で測定した。
【0074】
細孔径分布
N2収着等温線は、77Kで収集し(Micromeritics, ASAP 2020)、DFT法により細孔径分布を求めた。
【0075】
塩濃度の測定
塩分濃度は、導電率計(SI analytics, Lab 955)で測定した。
【0076】
紫外可視分光法
色素溶液のUV-Vis吸収スペクトルは、UV-Vis分光光度計(Cary 60、Agilent)で測定した。
【0077】
全有機炭素(TOC)の測定
有機炭素濃度は、全有機炭素計(島津製作所、TOC-L CSH)で測定した。
【0078】
実施例1
OSN性能試験
単一溶媒透過試験
OSNに使用する分離装置を
図1に示す。図中の通り、分離装置100は、溶媒、色素および高分子111を含む保持液コンパートメント110と、溶媒、色素および高分子113を含む供給液コンパートメント112と、撹拌棒115、膜モジュール116および膜117を含む磁気撹拌機114とを含み、該保持液コンパートメント、該供給液コンパートメントおよび該磁気撹拌機は、背圧レギュレーター119および圧力計120を含む流体通路118により流体連通している。使用時には、適切なポンプシステム(例えば、プランジャーポンプ121)の使用などの任意の適切な手段により、流体を流体通路を通じて循環させることができることは理解されるであろう。また、磁気撹拌機114は、溶媒および低分子123を含む透過液コンパートメント122を含み、該透過液コンパートメントは、適切な流体通路124によって磁気撹拌機114に接続されている。これは膜の安定性を評価する簡単な方法である。
【0079】
OSN測定
次の実施例で調製するPCN-250膜の有機溶媒ナノろ過性能(溶媒(分析グレード)透過性)を、室温、膜間差圧1~5barの条件下で、クロスフローシステム(
図1)を用いて評価した。水または一般的な単一の有機溶媒(MeOH、EtOH、IPA、NPA、ヘキサン、DMF、DMA、トルエン、p-キシレン、m-キシレン、o-キシレン、THF、アセトン、DCMまたはNMP)を、調製したPCN-250膜を設置したデバイスに注ぎ、その透過流束を調べた。分子量200、400、600、1000、2000または4000g/molのPEGをろ過し、膜の分子量カットオフ値(MWCO)を調べた。色素(MB、AF、MO、RB、アシッドブルー25、クロラニル酸)またはPEGの分離は、調製した色素(50ppm)またはPEG(1000ppm)の水溶液をPCN-250膜を備えたクロスフロー撹拌式セル膜モジュールに供給し、色素阻止率を調べることにより評価した。各溶液をプランジャーポンプにより室温で供給した。供給側の圧力は、約2.0barで維持した。システムを安定させるために6時間経過した後に、サンプルを回収した。各有機溶媒を回収し、透過ろ液量を測定した。色素阻止率は、UV-Vis分光計を用いてろ液中の色素濃度を測定することにより求めた。膜の性能は、阻止率と有機溶媒の透過流束を計算することにより評価した。
【0080】
透過流束fは、式1で計算した。
【数1】
式中、V(L)は、透過液側で回収した溶液の全容量、A(m
2)は、膜の有効分離面積、t(h)は、試験時間、P(bar)は、膜間差圧(1~5bar)である。膜の有効面積は、正確に測定した。透過液サンプルを3回採取し、平均値を求めた。
【0081】
PCN-250膜の色素阻止性能またはPEG阻止性能(R
1)は、式2で計算した。
【数2】
式中、C
pは、UV-Vis分光計とTOCで測定した透過液中の色素(またはPEG)濃度、C
fは、供給液中の色素(またはPEG)濃度である。
【0082】
PCN-250膜の塩阻止性能(R
2)は、式3で計算した。
【数3】
式中、e
pは、導電率計で測定した透過液中の塩濃度、e
fは、供給液中の塩濃度である。
【0083】
実施例2
高品質多結晶PCN-250膜の調製
3,3',5,5'-アゾベンゼンテトラカルボン酸(H
4
ABTC)の合成
H4ABTC配位子は、既報の手順にしたがって合成した(Y. Feng et al., J. Mater. Chem. A 2020, 8, 13132-13141)。
【0084】
PCN-250シード(種結晶)の合成
無水FeCl3(175mg、1.08mmol)とH4ABTC(150mg、0.419mmol)を無水DMF(20mL、99.5%)とHAc(10mL、99.5%)に加え、超音波処理により溶解させた。得られた懸濁液をオートクレーブ(テフロン加工、ステンレス蓋付き)に入れて密封し、150℃のオーブンで2時間加熱した。冷却・静置した後、PCN-250の粉末状シードを得た。これをDMFで洗浄し、DMFをアセトンに置換するために、アセトンに浸漬した。次いで、得られたシードを遠心分離し、80℃の真空下で1日間乾燥させて溶媒を除去した。このようにして合成した粉末結晶を用いて、ラビング法による種付けにより、基材上にシード層を形成した。
【0085】
ラビング法による種付けによるPCN-250膜の合成
図2に、PCN-250膜の合成を示す。簡潔に述べると、PCN-250のシードを、α-Al
2O
3膜表面に、軟質ゴムで一方向に数回擦り付けるようにして塗布した。次いで、ソルボサーマル反応(シード調製と同じ母液)により150℃で3時間二次成長させた後、室温まで冷却し、DMFとアセトンで洗浄して、PCN-250膜を得た。
【0086】
一般的で単純なin-situソルボサーマル法によるPCN-250膜の合成
多結晶PCN-250膜を、単純なソルボサーマル反応により、多孔質Al2O3基材表面に作製した。基材を、平滑面を上にしてテフロン加工のステンレス製オートクレーブに水平に置き、H4ABTC(20mg)、FeCl3(30mg)、DMF(660μL)およびHAc(330μL)の分子組成で構成される母液に浸漬した。混合溶液と基材を入れたオートクレーブを密封し、150℃で12時間加熱した。室温まで冷却した後、PCN-250膜をDMF、エタノールでよく洗浄し、室温で一晩乾燥させた。
【0087】
結果と考察
PCN-250膜のシード調製と二次成長に使用した溶液は同じである。ここでは、MOFシード層を、従来のMOFシードのソルボサーマル成長とは異なる、ラビングコーティングにより調製した。ラビング法による種付けは、膜の品質と厚さを均一に制御できるため、ゼオライト膜合成の一般的な方法である(X. Wang et al., J. Membr. Sci. 2014, 455, 294-304; S. Li, J. L. Falconer & R. D. Noble, Adv. Mater. 2006, 18, 2601-2603)。そこで、PCN-250のシードをα-Al2O3膜の表面に、軟質ゴムで一方向に数回擦り付けるように塗布した。単純なin-situソルボサーマル反応による製造プロセスでは、150℃の温度で、十分に相互成長した多結晶PCN-250膜を得るのに12時間を要した。
【0088】
実施例3
シード層の特性評価
実施例2で調製した材料の特性評価を各種分析法により行った。
【0089】
結果と考察
配位子としてH
4ABTCを用い、モジュレーターおよび構造規定剤として酢酸を用いたPCN-250構造を
図2に示す。
図3に、ブランク基材、シード層および緻密なMOF層を示す。MOFシード(
図4)を擦り付けることにより、同じようなシード層(
図3b)を容易に形成することができた。
図3cに、反応時間の長さの違いによる膜表面の色を示す。簡潔に述べると、反応時間を一定に保つことで、同じような表面を持つ膜が合成されており、均一なシード層を有していることから、再現性の高い製膜が可能であることが示された(
図5c-d)。
【0090】
これと比較して、150℃で2時間、一般的なソルボサーマル反応によって調製したシード層(
図5f)では、結晶粒子は大きいが不連続であり、このような粒子は、連続的で薄い多結晶MOF層の形成には不利であった。ソルボサーマル反応の開始から8時間後のMOF層の厚さは15.4μmであり(
図6)、水透過係数は0.1L m
-2 h
-1 bar
-1未満であった。したがって、効率的な透過には、MOF層の厚さを薄くすることが重要である。また、ラビング法による種付けにより、種付け時間が1分に短縮されたことも注目に値する。例えば、ソルボサーマル法やディップコーティング法で作製された、UiO-66(Zr)やMOF-5のようなMOFのシード層は、工程で溶媒を使用する必要があり、製膜に12~24時間を要する場合がある(Y. Sun et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 2019, 12, 4494-4500; F. Wu et al., J. Membr. Sci. 2017, 544, 342-350; R. Ranjan & M. Tsapatsis, Chem. Mater. 2009, 21, 4920-4924; および Z. Zhao et al., Ind. Eng. Chem. Res. 2013, 52, 1102-1108)。したがって、ラビング法による種付けは、効果的で、迅速で、省エネルギーであり、追加の薬品を必要としない方法であると言える。
【0091】
図7は、オートクレーブ内で基材を垂直に置くことにより、製膜中の基材上の粒子沈着を回避できることを示している。オートクレーブに入れて3時間後、垂直に置かれた膜基材は、欠陥のない連続的な多結晶PCN-250層を有し、その厚さは約3.7μm(
図8d)、水接触角は約7.6°(
図9)、表面粗さは約543nm(
図10)であった。特に、この膜が親水性であり(
図9)、他の方法(例えば、熱合成法、Y. Cai et al., J. Membr. Sci. 2020, 615, 118551; X. Wang et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 2017, 9, 37848-37855; および X. Wu et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 2018, 57, 15354-15358)で調製したMOF膜の膜厚と同程度の薄い膜厚を有していることは注目に値する。
【0092】
基材上でのMOFの形成についてさらに検討を行うため、2時間、4時間および8時間成長させて調製した膜をSEMで観察した。MOF層の厚さは、二次成長時間による影響を強く受けた(2.6~20μm、
図11)。二次成長時間の異なる膜の透過係数と阻止率を考慮すると(
図12)、最適な反応時間は3時間であると結論づけられた。EDXマッピングにより、アルミナ支持体上のPCN-250膜の形成が確認された(
図8e-f)。支持体(Al)からMOF層(Fe)への速やかな変化が見られ、よって、セラミック支持体内で核生成したMOF結晶は検出されなかった。
図8gに示すように、PCN-250膜サンプルおよびPCN-250粉末サンプルのXRDパターンは、シミュレーションパターンと良い一致を示しており(Y. Feng et al., J. Mater. Chem. A 2020, 8, 13132-13141)、PCN-250膜の製造が成功したことを示している。PXRDパターンは、明確な回折ピークを示し、240℃で10時間加熱しても構造が安定していることが分かった。
【0093】
実施例4
PCN-250膜の透過係数および安定性
実施例2でラビング法による種付けにより調製したPCN-250膜を、実施例1のプロトコルに従い、透過性試験と安定性試験に供した。OSN測定の前に、膜の安定性を評価するために、単一溶媒透過試験を室温で実施した。
【0094】
結果と考察
図13aに示すように、この膜のMeOH透過係数は337.9L m
-2 h
-1 bar
-1と優れていたが、EtOH、DMF、NMPの透過係数は、それぞれ69.2L m
-2 h
-1 bar
-1、31.7L m
-2 h
-1 bar
-1、17.2L m
-2 h
-1 bar
-1であった。溶媒透過係数の違いは、分子直径、誘電率および全ハンセン溶解度の観点から見た組み合わせ特性とも一致する(
図13b、表1、S. Karan, Z. Jiang & A. G. Livingston, Science 2015, 348, 1347-1351)。また、PCN-250膜の水中での各種色素および各種塩の分離能力を調べた(
図13c-d)。この膜は、RB(Mw=1017.7g/mol)とMB(Mw=799.8g/mol)に対して98.8%と92.9%という高い阻止率を示し、水透過係数は約20L m
-2 h
-1 bar
-1であった(
図14、表2)。MO(327.33g/mol)のような低分子量の色素は、分子サイズが比較的小さいため、一部は阻止された(阻止率:約10%、表3)。有機色素に加えて、PCN-250膜のMWCOを測定するプローブとして、様々な分子量のPEGも使用した(
図15)。PCN-250膜のMWCOは、PEG阻止率90%の値から約1300g/molと判定した。また、塩水溶液におけるこの膜の水透過係数は非常に高い値であった。例えば、NaCl水溶液の水透過流束は約83.3L m
-2 h
-1 bar
-1であった(表4)。しかし、NaClの阻止率は、わずか4.4%であった。膜の孔径が大きい(0.6~1.0nm、
図16)ため、他の塩の阻止率も低かった(<13%)。DMFとアセトンで洗浄した後、活性化したPCN-250膜は、77KでI型のN
2収着等温線を示し、ブルナウアー・エメット・テラー(BET)表面積は、1305m
2・g
-1であった(
図16)。さらに、ガス吸着データから計算した結晶の孔径は、5.8~9.2Åであり(
図16挿入図)、この値は、水(3.8Å)や多くの有機溶媒、例えば、メタノール(5.1Å)、アセトン(6.2Å)、トルエン(7.0Å)、ヘキサン(7.5Å)よりも大きい。この結果より、調製したPCN-250膜は、水や一般的な有機溶媒の優先的輸送に利用できる可能性があることが示された。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
PCN-250膜の再現性を評価するため、ラビング法による種付けを行った後二次成長(3時間)させた膜を10枚作製した。
図17と表5に、透過係数とMB/H
2O阻止率を示す。繰り返し作製した10枚の膜のうち7枚が90%以上のMB阻止率を達成したことは注目に値する。この結果より、再現性が良好であることが示された。
【0100】
【0101】
膜の溶媒に対する安定性を確かめるため、NMPおよびエタノールの透過係数とMBの阻止率を経時的に測定した(
図13e-f)。ここでは、MB阻止率は、NMP中で約93.7%、NMP透過係数は、2.6L m
-2 h
-1 bar
-1であった。これは、微多孔質結晶性PCN-250 MOF膜を用いたOSNの検討に関する初めての報告である。エタノールでは、MB阻止率は84.7%で、エタノール透過係数は27.5L m
-2 h
-1 bar
-1であった。また、MOF材料の優れた化学的安定性による膜の安定性も明らかになった。水中のMBの電荷反発による分離メカニズムとは異なり、エタノール中のMBはサイズ排除に基づいて分離されたことは注目に値する(F. M. Sukma & P. Z. Culfaz-Emecen, J. Membr. Sci. 2018, 545, 329-336; および C. Wang et al., J. Mater. Chem. A 2020, 8, 15891-15899)。
【0102】
PCN-250膜の安定性を様々な条件下でさらに調べ、得られたPCN-250膜とPCN-250粉末の微細構造特性について、いくつかの方法で評価した。この膜は、NaCl阻止において50時間にわたって安定した水透過係数を示し(
図18)、水中で高い安定性を示すことが確認された。また、PCN-250膜を備えた透過セルに、HCl(pH=2)水溶液またはNaOH(pH=12)水溶液を供給した。HCl水溶液を用いて、3barの条件下で2週間連続透過試験を行った後も、膜はほぼ同じ透過係数を示した。また、この膜は、99%のMB阻止率を維持していたことから(
図19、表6)、高い酸安定性を有することが確認された。水、酸(pH=2、HCl水溶液)、有機溶媒(例えば、DMF、エタノールおよびNMP)を用いた2週間の連続安定性試験では、XRDピーク(
図8g)も形態(
図20)もほとんど変化しなかったことから、PCN-250膜の優れた安定性が確認された。しかし、NaOH水溶液に2時間浸漬すると、透過係数は急激に増加し(
図21、表6)、MB阻止率は76.3%に低下した(表6)。これは、アルカリ条件下でMOFの結晶構造が損なわれたことにより、より大きな細孔が形成され、その結果、透過係数が上昇し、阻止率が低下したためと考えられる。さらに、70時間を超える連続運転(
図22)でも膜は良好に機能し、膜粗さが543nmである(
図10)にもかかわらず、優れた耐溶剤性と防汚性能を示した。pH=12(NaOH水溶液)では、XRDのピークが弱く、膜の形態が変化していることから、塩基性条件に曝されると結晶性が失われることが示唆された(J.-B. Tan & G.-R. Li, J. Mater. Chem. A 2020, 8, 14326-14355)。
【0103】
【0104】
さらに、この膜は溶剤に100時間より長い時間浸漬しても良好な性能を示したことから(
図22)、優れた耐溶剤性を有することが分かる。上記の試験から、PCN-250膜は、MOのような低分子色素に対する阻止率が低く、化学製品や医薬品の精製における塩類や酵素の回収のように、攻撃的な有機溶液中の高分子から低分子や塩類を分離するのに適していることが分かった(J. F. Jenck, F. Agterberg & M. J. Droescher, Green Chem. 2004, 6, 544-556; および P. A. Marrone et al., J. Supercrit. Fluids 2004, 29, 289-312)。
【0105】
実施例5
色素の物理吸着
物理吸着試験
膜マトリックス内部での色素の物理吸着の可能性を定量的に確認するため、PCN-250粉末を添加する前と添加して一定時間経過した後の色素水溶液(各色素水溶液の容量は200mL)のUV-Visスペクトルを収集した。そのため、各種色素を用いた物理吸着試験に使用するPCN-250粉末の量は、膜層中のPCN-250の量(0.278mg、有効膜直径10mm、膜厚3.7μm、PCN-250結晶密度1.011g cm-3に基づく)に近い質量(0.3mg)とした。
【0106】
結果と考察
UV-Visピークは、試験で用いたすべての色素溶液でほとんど変化が見られず(
図23)、物理吸着した色素が存在するとしてもその量はほとんど無視でき、PCN-250膜で実証された色素の透過阻止は、主に平衡条件下でのサイズ排除によるものであることが示された。
【0107】
比較例1
PCN-250膜が、研究室で作製した他のMOF膜、無機膜、ポリマー膜、薄膜複合膜や混合マトリックス膜と比較して、高い透過係数と色素阻止率を示したことは特質すべき点である(
図24、凡例の詳細な説明は後述)。この膜のMB阻止率は、ポリマー膜や薄膜複合膜と同等か、それ以上である。特に、NMP透過係数とエタノール透過係数は、従来の膜よりも顕著に高い。この性能は、PCN-250膜の大きく規則的な細孔を通る輸送経路に起因すると考えられる。
【0108】
図24の凡例の詳細な説明
[1] Z. Si et al., Sep. Purif. Technol. 2020, 241, 116545; Z. F. Gao et al., J. Membr. Sci. 2019, 574, 124-135; S. Hermans et al., J. Membr. Sci. 2015, 476, 356-363; M. H. D. A. Farahani et al., Sep. Purif. Technol. 2017, 186, 243-254; A. Karimi et al., Sep. Purif. Technol. 2020, 237, 116358; A. A. Tashvigh et al., J. Membr. Sci. 2018, 545, 221-228; H. Marien & I. F. J. Vankelecom, J. Membr. Sci. 2017, 541, 205-213; L. Perez-Manriquez, P. Neelakanda & K.-V. Peinemann, J. Membr. Sci. 2018, 554, 1-5; K. Vanherck et al., J. Membr. Sci. 2010, 353, 135-143; L. Perez-Manriquez, P. Neelakanda & K.-V. Peinemann, J. Membr. Sci. 2017, 541, 137-142; A. Zhou et al., Sep. Purif. Technol. 2018, 193, 58-68; Y. C. Xu et al., Chem. Eng. J. 2016, 303, 555-564; P. He et al., Chem. Eng. J. 2021, 420, 129338; Y. Li et al., J. Mater. Chem. A 2018, 6, 22987-22997; D. Hua & T.-S. Chung, Carbon 2017, 122, 604-613; Y. Xu et al., ACS Sustain. Chem. Eng. 2017, 5, 5520-5528; S. Hermans et al., J. Membr. Sci. 2020, 476, 356-363; Y. Li et al., Chem. Commun. 2015, 51, 918-920; and D. Ma et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 2019, 11, 45290-45300.
[2] Z. Wang et al., Sep. Purif. Technol. 2019, 227, 115687; and E. Fontananova et al., J. Appl. Polym. Sci. 2013, 129, 1653-1659.
[3] S. M. Dutczak et al., Sep. Purif. Technol. 2013, 102, 142-146.
[4] T. S. Anokhina et al., Pet. Chem. 2017, 56, 1085-1092; H. M. Tham et al., J. Membr. Sci. 2017, 542, 289-299; D. Y. Xing, S. Y. Chan & T.-S. Chung, Green Chem. 2014, 16, 1383-1392; and A. V. Volkov et al., J. Membr. Sci. 2009, 333, 88-93.
[5] A. A. Tashvigh & T.-S. Chung, J. Membr. Sci. 2018, 560, 115-124; and S.-P. Sun et al., AlChE J. 2014, 60, 3623-3633.
[6] J. H. Aburabie et al., J. Membr. Sci. 2020, 596, 117615.
[7] A. Zhou et al., Sep. Purif. Technol. 2015, 263, 118394.
[8] L. Perez-Manriquez, P. Neelakanda & K.-V. Peinemann, J. Membr. Sci. 2017, 541, 137-142.
[9] E. Fontananova et al., J. Appl. Polym. Sci. 2013, 129, 1653-1659.
[10] J. Aburabie & K.-V. Peinemann, J. Membr. Sci. 2017, 523, 264-272; K. Vanherck et al., J. Phys. Chem. C 2012, 116, 115-125; and L. Perez-Manriquez, P. Neelakanda & K.-V. Peinemann, J. Membr. Sci. 2018, 554, 1-5.
[11] Z. Si et al., Sep. Purif. Technol. 2020, 241, 116545.
[12] L. Chen et al., Chem. Eng. J. 2018, 345, 536-544; K. Vanherck et al., J. Phys. Chem. C 2012, 116, 115-125; H. Marien & I. F. J. Vankelecom, J. Membr. Sci. 2017, 541, 205-213; Z. Zhou et al., J. Membr. Sci. 2020, 601, 117932; and Y. Xu et al., ACS Sustain. Chem. Eng. 2017, 5, 5520-5528.
[13] C. Li et al., J. Membr. Sci. 2018, 564, 10-21; Y. Sun et al., Sep. Purif. Technol. 2021, 273, 118956; and S. Yang et al., RSC Adv. 2017, 7, 42800-42810.
【0109】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面と第2の表面を有する多孔質基材;および
第1の表面上に形成された多結晶膜材料
を含む複合材料であって、該多結晶膜材料が、金属有機構造体(MOF)PCN-250(鉄アゾベンゼンテトラカルボン酸、別名:MIL-127(Fe)、soc-MOF(Fe))である、複合材料。
【請求項2】
前記多結晶膜材料がPCN-250である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記MOFの孔径が、5~10Åである、請求項1または2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記MOFの孔径が、5.8~9.2Åである、請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記MOFのBET表面積が、1000~2000m
2・g
-1、例えば、約1305m
2・g
-1である、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、0.1μm~20μmである、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、0.5μm~15μmである、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、1μm~
10μmである、請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、2~5.4μm、例えば、2.6~5μm、例えば、約3.7μmである、請求項8に記載の複合材料。
【請求項10】
フィルター材料としての使用に適している、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項11】
有機溶媒ナノろ過のフィルター材料としての使用に適している、請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
水および分子直径が9Å以下、例えば8Å以下の有機溶媒の透過係数が、20L m
-2 h
-1 bar
-1より高い値であり、該透過係数が、25~140L m
-2 h
-1 bar
-1であってもよい、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項13】
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中のメチルブルーに対する色素阻止率が93.7%であり、NMPの透過流速が2.6L m
-2 h
-1 bar
-1である、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項14】
前記基材が、ポリマー、セラミック(例えば、アルミナ)、炭素布、金属および金属酸化物のうちの1種以上から選択される、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項15】
前記基材が、多孔質Al
2O
3基材であり、多孔質α-Al
2O
3基材であってもよい、請求項14に記載の複合材料。
【請求項16】
前記基材が、チューブ、メッシュもしくはシートの形態、中空糸(例えば、多孔質アルミナセラミック中空糸)の形態、または、チューブ、メッシュ、シートもしくは中空糸が折り畳まれた他の形態で提供される、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項17】
前記第1の表面上に形成された多結晶膜材料が欠陥のない多結晶膜材料である、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項18】
前記多結晶膜材料の表面に、金属有機構造体結晶の沈着が実質的に見られない、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項19】
水および分子直径が9Å以下、例えば8Å以下の有機溶媒の透過係数が、10L m
-2 h
-1 bar
-1より高い値であり、該透過係数が、15~350L m
-2 h
-1 bar
-1であってもよく、例えば、12~337L m
-2 h
-1 bar
-1である、請求項1~11および14~18のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項20】
pHが2の水溶液中で少なくとも2週間安定である、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項21】
(a)前記複合材料が、親水性で、水接触角が約7.6°であること;および/または
(b)前記複合材料が、親水性で、約543nmの粗さを有すること
を特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の複合材料を作製する方法であって、
(a)ラビング法による種付け操作により、多孔質基材の表面に金属有機構造体(MOF)PCN-250(鉄アゾベンゼンテトラカルボン酸、別名:MIL-127(Fe)、soc-MOF(Fe))の複数の結晶および/または粉末微粒子を種付けしたものを提供する工程;ならびに
(b)種付けした多孔質基材を、容器内で、該容器の底面に対して実質的に垂直に配置して、溶媒、有機配位子、金属前駆体化合物およびモジュレーター化合物を含む母液に浸漬し、得られた混合物を一定時間加熱して複合材料を提供する工程
を含む、方法。
【請求項23】
請求項1~21のいずれか1項に記載の複合材料を作製する方法であって、
(a)多孔質基材と、溶媒、有機配位子、金属前駆体化合物およびモジュレーター化合物を含む母液とを提供する工程;ならびに
(b)前記多孔質基材を前記母液に浸漬し、得られた混合物を一定時間加熱して複合材料を提供する工程
を含む、方法。
【請求項24】
流体をろ液と保持液に分離するプロセスにおいて、請求項1~21のいずれか1項に記載の多結晶有機金属構造体膜を使用する方法であって、
(a)分離が必要な流体を、請求項1~21のいずれか1項に記載の複合材料に提供する工程;
(b)前記複合材料に、前記流体の一部を通過させてろ液を得ることで、該ろ液を提供する工程;ならびに
(c)前記ろ液と保持液を回収する工程
を含む、方法。
【請求項25】
分離される流体が、気体の混合物;1種以上の無機材料を含む水溶液;1種以上の有機材料を含む水溶液;1種以上の無機材料と1種以上の有機材料とを含む水溶液;有機液体の混合物;1種以上の有機液体と水との混合物;1種以上の有機液体と1種以上の有機材料との混合物;1種以上の有機液体と1種以上の無機材料との混合物;1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料と、1種以上の無機材料との混合物;水と、1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料との混合物;水と、1種以上の有機液体と、1種以上の無機材料との混合物;および水と、1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料と、1種以上の無機材料との混合物から選択される、請求項24に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
以下、本発明の態様および実施形態について、番号付けされた以下の項を参考にしながら説明する。
1. 第1の表面と第2の表面を有する多孔質基材;および
第1の表面上に形成された多結晶膜材料
を含む複合材料であって、該多結晶膜材料が、金属有機構造体(MOF)PCN-250(鉄アゾベンゼンテトラカルボン酸、別名:MIL-127(Fe)、soc-MOF(Fe))である、複合材料。
2. 前記多結晶膜材料がPCN-250である、項1に記載の複合材料。
3. 前記MOFの孔径が、5~10Åである、項1または2に記載の複合材料。
4. 前記MOFの孔径が、5.8~9.2Åである、項3に記載の複合材料。
5. 前記MOFのBET表面積が、1000~2000m2・g-1、例えば、約1305m2・g-1である、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
6. 前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、0.1μm~20μmである、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
7. 前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、0.5μm~15μmである、項6に記載の複合材料。
8. 前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、1μm~10μmである、項7に記載の複合材料。
9. 前記多孔質基材の第1の表面上の多結晶膜材料の厚さが、2~5.4μm、例えば、2.6~5μm、例えば、約3.7μmである、項8に記載の複合材料。
10. フィルター材料としての使用に適している、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
11. 有機溶媒ナノろ過のフィルター材料としての使用に適している、項10に記載の複合材料。
12. 水および分子直径が9Å以下、例えば8Å以下の有機溶媒の透過係数が、20L m-2 h-1 bar-1より高い値であり、該透過係数が、25~140L m-2 h-1 bar-1であってもよい、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
13. N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中のメチルブルーに対する色素阻止率が93.7%であり、NMPの透過流速が2.6L m-2 h-1 bar-1である、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
14. 前記基材が、ポリマー、セラミック(例えば、アルミナ)、炭素布、金属および金属酸化物のうちの1種以上から選択される、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
15. 前記基材が、多孔質Al2O3基材であり、多孔質α-Al2O3基材であってもよい、項14に記載の複合材料。
16. 前記基材が、チューブ、より具体的にはメッシュもしくはシートの形態、中空糸(例えば、多孔質アルミナセラミック中空糸)の形態、または、チューブ、より具体的にはメッシュ、シートもしくは中空糸が折り畳まれた他の形態で提供される、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
17. 前記第1の表面上に形成された多結晶膜材料が欠陥のない多結晶膜材料である、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
18. 前記多結晶膜材料の表面に、金属有機構造体結晶の沈着が実質的に見られない、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
19. 水および分子直径が9Å以下、例えば8Å以下の有機溶媒の透過係数が、10L m-2 h-1 bar-1より高い値であり、該透過係数が、15~350L m-2 h-1 bar-1であってもよく、例えば、12~337L m-2 h-1 bar-1である、項1~11および14~18のいずれか1項に記載の複合材料。
20. pHが2の水溶液中で少なくとも2週間安定である、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
21.(a)前記複合材料が、親水性で、水接触角が約7.6°であること;および/または
(b)前記複合材料が、親水性で、約543nmの粗さを有すること
を特徴とする、先行する項のいずれか1項に記載の複合材料。
22. 項1~21のいずれか1項に記載の複合材料を作製する方法であって、
(a)ラビング法による種付け操作により、多孔質基材の表面に金属有機構造体(MOF)PCN-250(鉄アゾベンゼンテトラカルボン酸、別名:MIL-127(Fe)、soc-MOF(Fe))の複数の結晶および/または粉末微粒子を種付けしたものを提供する工程;ならびに
(b)種付けした多孔質基材を、容器内で、該容器の底面に対して実質的に垂直に配置し、溶媒、有機配位子、金属前駆体化合物およびモジュレーター化合物を含む母液に浸漬して、該多孔質基材が該母液に完全に覆われるようにし、得られた混合物を一定時間加熱して複合材料を提供する工程
を含む、方法。
23. 項1~21のいずれか1項に記載の複合材料を作製する方法であって、
(a)多孔質基材と、溶媒、有機配位子、金属前駆体化合物およびモジュレーター化合物を含む母液とを提供する工程;ならびに
(b)前記多孔質基材を前記母液に浸漬し、得られた混合物を一定時間加熱して複合材料を提供する工程
を含む、方法。
24. 流体をろ液と保持液に分離するプロセスにおいて、項1~21のいずれか1項に記載の多結晶有機金属構造体膜を使用する方法であって、
(a)分離が必要な流体を、項1~21のいずれか1項に記載の複合材料に提供する工程;
(b)前記複合材料に、前記流体の一部を通過させてろ液を得ることで、該ろ液を提供する工程;ならびに
(c)前記ろ液と保持液を回収する工程
を含む、方法。
25. 分離される流体が、気体の混合物;1種以上の無機材料を含む水溶液;1種以上の有機材料を含む水溶液;1種以上の無機材料と1種以上の有機材料とを含む水溶液;有機液体の混合物;1種以上の有機液体と水との混合物;1種以上の有機液体と1種以上の有機材料との混合物;1種以上の有機液体と1種以上の無機材料との混合物;1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料と、1種以上の無機材料との混合物;水と、1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料との混合物;水と、1種以上の有機液体と、1種以上の無機材料との混合物;および水と、1種以上の有機液体と、1種以上の有機材料と、1種以上の無機材料との混合物から選択される、項24に記載の方法。
【国際調査報告】