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特表2023-553188改良された漏れ性能のための、O-リング圧力均等化チャネルを備えた、楕円形プランジャピストン
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  • 特表-改良された漏れ性能のための、O-リング圧力均等化チャネルを備えた、楕円形プランジャピストン 図1
  • 特表-改良された漏れ性能のための、O-リング圧力均等化チャネルを備えた、楕円形プランジャピストン 図2
  • 特表-改良された漏れ性能のための、O-リング圧力均等化チャネルを備えた、楕円形プランジャピストン 図3
  • 特表-改良された漏れ性能のための、O-リング圧力均等化チャネルを備えた、楕円形プランジャピストン 図4
  • 特表-改良された漏れ性能のための、O-リング圧力均等化チャネルを備えた、楕円形プランジャピストン 図5
  • 特表-改良された漏れ性能のための、O-リング圧力均等化チャネルを備えた、楕円形プランジャピストン 図6
  • 特表-改良された漏れ性能のための、O-リング圧力均等化チャネルを備えた、楕円形プランジャピストン 図7
  • 特表-改良された漏れ性能のための、O-リング圧力均等化チャネルを備えた、楕円形プランジャピストン 図8A
  • 特表-改良された漏れ性能のための、O-リング圧力均等化チャネルを備えた、楕円形プランジャピストン 図8B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】改良された漏れ性能のための、O-リング圧力均等化チャネルを備えた、楕円形プランジャピストン
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
A61M5/315 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535981
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 US2021062596
(87)【国際公開番号】W WO2022132559
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/125,603
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ピー.アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ニティーシュ クマル ヴァルマ クナパラジュ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066HH14
(57)【要約】
シリンジでの、特に、マイクロドージングシリンジポンプ用途での使用のための、プランジャピストンが開示される。プランジャピストンは、後面に対向する前面と、前面と後面との間に配置される少なくとも1つの環状溝とを含む。プランジャピストンは、前面から溝内に延びる複数のチャネルを含み、チャネルは、前面と溝との間の連通を提供する。O-リングは溝内に受容され、チャネルは、O-リングの第1の側の周りでの圧力を均一にするのに役立ち、プランジャピストンを利用するシリンジまたはマイクロドージングシリンジポンプの密封性能およびマイクロドージング精度を向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャピストンであって、
後面に対向する前面、および、前記前面と前記後面の間に配置される少なくとも1つの環状溝と、
前記前面から前記溝内に延在する複数のチャネルであって、前記チャネルは、前記前面と前記溝との間の連通を提供する、前記複数のチャネルと、
を含むことを特徴とするプランジャピストン。
【請求項2】
請求項1に記載のプランジャピストンであって、前記前面は、外側リムを含み、前記チャネルは、前記外側リム内に配置されることを特徴とするプランジャピストン。
【請求項3】
請求項2に記載のプランジャピストンであって、前記チャネルは、前記外側リムから前記溝の底部まで延びる深さを有することを特徴とするプランジャピストン。
【請求項4】
請求項2または3に記載のプランジャピストンであって、前記外側リムは楔形状を有することを特徴とするプランジャピストン。
【請求項5】
請求項1、2、3、または4に記載のプランジャピストンであって、前記プランジャピストンは、楕円形状を有することを特徴とするプランジャピストン。
【請求項6】
請求項5に記載のプランジャピストンであって、前記チャネルは、前記楕円形状の中心線に対して垂直に配向されることを特徴とするプランジャピストン。
【請求項7】
請求項1、2、3、または4に記載のプランジャピストンであって、前記前面は、前記後面の直径よりも小さい直径を有することを特徴とするプランジャピストン。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、6、または7に記載のプランジャピストンであって、前記後面は、少なくとも1つの戻り止めを含むことを特徴とするプランジャピストン。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、6、7、または8に記載のプランジャピストンであって、さらに、前記溝内に配置される、O-リングを含むことを特徴とするプランジャピストン。
【請求項10】
請求項9に記載のプランジャピストンであって、前記O-リングは、前記前面の外径よりも大きい外径を有することを特徴とするプランジャピストン。
【請求項11】
シリンジであって、
バレル、および、前記バレル内に受容されるプランジャピストンであって、前記プランジャピストンは、後面に対向する前面と、前記前面と前記後面との間に配置される少なくとも1つの環状溝とを備える、前記プランジャピストンと、
前記前面から前記溝内に延在する複数のチャネルであって、前記チャネルは、前記前面と前記溝との間の連通を提供する、前記複数のチャネルと、
を含むことを特徴とするシリンジ。
【請求項12】
請求項11に記載のシリンジであって、前記前面は、外側リムを含み、前記チャネルは、前記外側リム内に配置されることを特徴とするシリンジ。
【請求項13】
請求項12に記載のシリンジであって、前記チャネルは、前記外側リムから前記溝の底部まで延びる深さを有することを特徴とするシリンジ。
【請求項14】
請求項12または13に記載のシリンジであって、前記外側リムは、楔形状を有することを特徴とするシリンジ。
【請求項15】
請求項11、12、13、または14に記載のシリンジであって、前記プランジャピストンは楕円形状を有し、前記バレルは、合致する楕円形状を備える内壁を有することを特徴とするシリンジ。
【請求項16】
請求項15に記載のシリンジであって、前記チャネルは、前記楕円形状の中心線に対して垂直に配向されることを特徴とするシリンジ。
【請求項17】
請求項11、12、13、または14に記載のシリンジであって、前記前面は、前記後面の直径よりも小さい直径を有することを特徴とするシリンジ。
【請求項18】
請求項11、12、13、14、15、16、または17に記載のシリンジであって、前記後面は、少なくとも1つの戻り止めを含むことを特徴とするシリンジ。
【請求項19】
請求項11、12、13、14、15、16、17または18に記載のシリンジであって、さらに、前記溝内に配置されるO-リングを含むことを特徴とするシリンジ。
【請求項20】
請求項19に記載のシリンジであって、前記O-リングは、前記前面の外径よりも大きい外径を有することを特徴とするシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年12月15日に出願された、米国仮特許出願第63/125,603号からの米国特許法119条(e)に基づく優先権を主張し、その内容(それとともに提出されたすべての付属物を含む)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
開示分野
本開示は、概して、薬物送達装置用のピストンプランジャに関し、より詳細には、ピストンプランジャに関連するO-リングでの圧力を均等化するための、圧力均等化チャネルを有するピストンプランジャに関する。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
このセクションは、本開示に関連する発明概念に対する、必ずしも従来技術ではない背景情報を提供する。
【0003】
シリンジは、インスリン、抗生物質、ワクチン、化学療法薬、鎮痛剤、多くの他の薬剤などの薬剤を投与するために一般的に使用される。一般的な設計は、針または他の接続具を受容するための分配端と、その反対側の、流体薬剤をバレルから分配端を通して押し出す、プランジャ機構を受容するための開放端を有する、バレルまたはリザーバを含む。最も基本的な形式のプランジャ機構は、間にシャフトを備える、一端のプランジャピストンと、対向端の駆動機構の配置を含む。最も単純な形式の駆動機構は、ユプランジャ機構をバレル内に押して薬剤を分配するための、使用者の親指であり得る。マイクロドージングシリンジポンプでは、駆動機構は、実際のモータを含み得、このモータは、薬剤を投与するために、バレル内でのプランジャピストンの移動を駆動する。そのようなシリンジの設計は、当業者にはよく知られる。プランジャピストンは、通常、ピストンプランジャとバレルの内壁との間に密封を提供するO-リングを受容するために、少なくとも1つの環状溝またはグランドを含み、プランジャピストンがバレル内で前進させられるときに、バレル内の流体薬剤は、分配端を出て、プランジャピストンの背部には入らない。
【0004】
プランジャピストンの設計における一般的な問題は、O-リングとバレルの内壁の間の摩擦力に対して、O-リングの密封圧力をバランスさせることの必要性である。これらの問題は、この環境では、密封が、静的密封に対立する動的密封であることを必要とするために生じる。O-リングは、プランジャピストンとバレルの内壁の間のギャップをシールするようにも、正確な投与が生じ得るように、プランジャピストンのスムーズな動きを、なお可能にするようにも設計される必要がある。2つの力は互いに直接対向し、適切なバランスを達成することが困難であり得る。さらに、これらの問題のいずれかを悪化させ得る不均一な歪みを防ぐために、O-リングの形状は、プランジャピストンの動きの下で、限定された方法で制御される必要がある。従来の設計では、O-リングの不均一な変形により生じる摩擦力の増加によってもたらされる動力の損失を受け入れることが必要とされた。これらは、プランジャ機構の前進によってもたらされる、O-リングに対する圧力が、O-リング全体に均等に分散されない場合に生じる。他の動的密封用途に対する従来の解決策の1つは、O-リングと溝の側面との間にギャップが存在するように、幅を有する環状溝を設けることであった。そのような設計では、圧力を均一にするために、O-リングは、溝の側壁の1つに向かって偏向させられ得る。しかし、この設計は、不十分な密封性能、ギャップ幅とO-リングのサイズを慎重に調バランスさせる必要性、溝内のO-リングの緩みの点から、別の問題を提起する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環状溝の側壁とO-リングとの間の任意のギャップを最小限にしながら、なお、優れた密封特性とシリンジからの正確な投与を提供する、解決策を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示内容の概要
このセクションは、本開示の一般的な概要を提供し、その全範囲、または、すべての特徴、態様、および、目的の包括的な開示として解釈されることを意図されない。
【0007】
本開示の一態様は、後面に対向する前面と、前面と後面との間に配置される少なくとも1つの環状溝と、前面から溝内に延在する複数のチャネルであって、複数のチャネルは前面と溝との間の連通を提供する、複数のチャネルと、を備えるプランジャピストンを提供することである。
【0008】
別の態様では、本開示は、バレルと、バレル内に受容されるプランジャピストンであって、プランジャピストンは、後面に対向する前面と、前面と後面との間に配置された少なくとも1つの環状溝とを備える、プランジャピストンと、前面から溝内に延在する、複数のチャネルであって、複数のチャネルは前面と溝との間の連通を提供する、複数のチャネルと、を備えるシリンジである。
【0009】
本開示の、これら、および、他の特徴ならびに利点は、本明細書における詳細な説明から当業者により明らかになるであろう。以下、詳細な説明に付随する図面が説明される。
図面の簡単な説明
本明細書で説明される図面は、選択された態様の例示目的のみのためであって、すべての実装のためではなく、実際に示されるもののみに本開示を限定することを意図されない。これを念頭に置いて、本開示の例示的な態様の様々な特徴および利点は、添付の図面との組み合わせで考慮されると、以下の書面による説明、および、添付の特許請求の範囲から、当技術分野において通常の技術を有する者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】O-リングを有し、リザーバ内に配置された、従来のプランジャピストンの部分断面図であり、上方パネルは、初期の低い静圧が適用される図を示し、下方パネルは、より大きな動的圧力の適用とO-リングの変形中の同じ図を示す。
図2】本開示に従って設計されたプランジャピストンの部分断面図である。
図3】本開示に従って設計されたプランジャピストンの上面図である。
図4】本開示に従って設計されたプランジャピストンの下面図である。
図5】本開示に従って設計されたプランジャピストンの側面図である。
図6】本開示に従って設計されたプランジャピストンの別の側面図である。
図7】本開示に従って設計された、プランジャピストン、および、プランジャピストンに配置されたO-リングの上面図である。
図8A】本開示によらないプランジャピストンの部分断面を示す概略図である。
図8B】本開示の例示的な実施形態によるプランジャピストンの部分断面、および、例示的な実施によるプランジャピストンの、特定の圧力および密封の利点を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
開示の詳細な説明
以下の説明では、本開示の理解を提供するために詳細が説明される。
【0012】
明確にするために、関連分野の当業者に本開示の範囲を伝えるために、本明細書では、例示的な態様が説明される。本開示の様々な態様の完全な理解を提供するために、特定の構成要素、装置、および、方法の例などの、多くの特定の詳細が説明される。周知のプロセス、周知の装置構造、周知の技術などの、特定の詳細は、それらが、当業者にはすでによく理解されているため、本明細書で説明される必要がないこと、そして、例示的な実施形態は多くの異なる形態で具体化され得ること、および、いずれも本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことが、当業者には明らかであろう。
【0013】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な態様のみを説明することを目的としており、限定であることを意図されない。本明細書で使用される場合、単数形「一つ(a)」、「一つ(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確にそうではないと指示しない限り、複数形を、なお含むことを意図され得る。「備える」、「備えている」、「含んでいる」、および「有している」という用語は、包括的であり、したがって、記載された特徴、完全体、ステップ、操作、要素、および/または、構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の機能、完全体、ステップ、操作、要素、構成要素、および/または、それらの群の存在または追加を排除しない。本明細書に記載される方法工程、プロセス、および、操作は、実行の順序として特に特定されない限り、説明または図示された特定の順序でのそれらの実行を、必ず必要とすると解釈されるべきではない。また、追加の、または、代替の工程が、採用され得ることが、理解されるであろう。
【0014】
要素または態様が、別の要素または態様に、「接する(on)」、「係合される」、「接続される」、「結合される」、「動作可能に接続される」、または、「動作可能に連絡している」と言及される場合、それは、直接、他の要素または層に、接し、係合され、接続され、または、結合され得、あるいは、介在する要素または態様が、存在し得る。対照的に、ある要素が、別の要素または態様に「直接接し」、「直接係合され」、「直接接続され」、または、「直接結合され」と言及される場合、介在する要素または層が存在しなくてもよい。要素間の関係を説明するために使用される他の単語は、同様に解釈されるべきである(例えば、「間に」と「直接、間に」、「隣接」と「直接、隣接」など)。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つまたは複数の、任意の、および、全ての組み合わせを含む。
【0015】
第1、第2、第3などの用語は、本明細書では、様々な要素、構成要素、領域、層、および/または、部分を説明するために使用され得るが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/または、部分は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、または、部分を、別の要素、構成要素、領域、層、または、部分から区別するためにのみ使用され得る。「第1」、「第2」などの用語、および、その他の数値的用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって明確かつ明示的に示されていない限り、連続や順序を意味しない。したがって、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、以下で説明される第1の要素、構成要素、領域、層、または、部分は、第2の要素、構成要素、領域、層、または、部分と称され得る。
【0016】
本明細書での説明を目的として、「上方」、「下方」、「右」、「左」、「後」、「前」、「垂直」、「水平」という用語、および、その派生語は、図において方向づけられるものとして、本開示に関連するであろう。しかしながら、本開示は、そうでないと明示的に特定される場合を除き、様々な代替の向き、および、工程順序を想定し得ることが、理解されるべきである。また、添付の図面に示され、以下の明細書に記載される、特定の装置およびプロセスは、添付の特許請求の範囲に規定される発明の概念の例示的な態様であることが、理解されるべきである。したがって、特許請求の範囲が、明示的にそうではないと説明しない限り、本明細書に開示される態様に関連する、特定の寸法および他の物理的特徴は、限定しているとみなされるべきではない。
【0017】
図面を、より詳細に参照すると、図1は、本明細書で説明されるように、上部パネルおよび下部パネルにおいて、2つの状態における、従来のシステムの部分断面図を示す。上部パネルには、リザーバ壁10の部分断面図が示され、前面28を有するプランジャピストン20の部分断面図が示される。本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて、リザーバおよびリザーバ壁という用語は、それぞれ、シリンジバレルおよびシリンジバレル壁に置き換えられ得る。プランジャピストン20は、O-リング30を受容するための、O-リンググランドとして、また、知られる、環状溝22を含む。溝22は、一対の対向する側壁24および底部26を含む。理解され得るように、プランジャピストン20の外側とリザーバ壁10の内側との間に配置される、環状ギャップ15が存在する。O-リング30は、典型的には、上部パネルに示されるように、プランジャピストン20が、停止して静止しているときに、リザーバ壁10の内側部分とともに溝22の両側壁24および底部26の一部に接触するような大きさとされる。また、プランジャピストン20がリザーバ内で一方向に長手方向に、ここでは、図の右側に移動させられるとき、リザーバ内の流体または薬剤(不図示)によって、プランジャピストン20の前面28およびO-リング30に印加されるであろう、圧力の方向が示される。上部パネルでは、プランジャピストン20は停止しており、最小限の圧力が、プランジャピストン20とO-リング30には印加される。
【0018】
図1の下部パネルでは、流体(不図示)に対して移動するプランジャピストン20が示され、流体によって加えられる圧力が矢印で示される。この動きが起こると、ギャップ15を介してO-リング30の第1の側32に圧力が印加される。圧力は、O-リング30を変形させ、O-リング30が、圧力に面するO-リングの第1の側32に隣接する側壁24から、離れて移動することをもたらし、これは、O-リング30の第2の側34が、溝22の隣接する側壁に対して変形し、図に示されるようにギャップ15内に変形することを引き起こす。したがって、プランジャピストン20がリザーバ内で長手方向に移動させられるとき、O-リング30は、リザーバ壁10とプランジャピストン20との間のギャップ15を密封するように機能する。本明細書で説明されるように、このシステムで生じる1つの問題は、圧力がO-リング30の第1の側32全体に常に均等に加えられるわけではなく、これは、O-リング30の局所的な不均一な変形、摩耗、密閉不良、マイクロドージングシリンジポンプシステムでの不完全な投薬をもたらし得るということである。摩耗は、O-リング30の第1の側32での圧力の不均衡な印加によって引き起こされる過剰な摩擦からのものであり得る。この摩擦は、また、マイクロドージングの精度面での課題を引き起こし得る。プランジャピストン20の円滑な動きと、ギャップ15の良好な密封を提供するために、溝22のサイズ、溝22の深さ、幅と形状、および、その他の溝22の特性に対して、O-リング30のサイズをバランスさせることは、困難であり得る。本開示は、これらの課題を克服することに向けられ、例えば、インスリン、抗生物質、ワクチン、化学療法薬、および、鎮痛剤の投与のためなどの、マイクロドージングシリンジポンプシステムなどでの適用において特別な用途を見出す。この種のマイクロドージングシリンジポンプシステムは、プランジャピストン20が非常に小さな増分で移動させられる場合でも、滑らかな動きと高い密封能力を有することを必要とする。
【0019】
図2に示されるように、本開示によるプランジャピストン50は、O-リング30を収容するための溝54を備え、プランジャピストン50の前面56に複数のチャネル52を含む。チャネル52は、前面56から溝54まで延び、O-リング30を収容する溝54の前側壁58を通過する。溝54は、前側壁58、後側壁60、および底部62を有する。複数のチャネル52は、流体の圧力が、ギャップ15を通してだけでなく、プランジャピストン50の前面56の複数の点で、チャネル52を通しても印加されることを可能にする。これらのチャネル52は、O-リング30の第1の側32全体の周りでの流体の圧力を均一にする。これは、O-リング30が、O-リング30とリザーバ壁10の内側との間の摩擦を低減するための、より適切なサイズとされ、一方で、なお、優れたシール特性を提供し得ることを意味する。また、本設計は、O-リング30と側壁58、60との間にギャップを提供する、側壁58、60の間の、溝54の幅を設ける必要性をなくす。他の理由で必要な場合には、そのようなギャップが組み込まれ得るが、必須ではない。圧力の均一化は、O-リング30の不均一な変形の可能性をなくし、O-リング30の第1の側32の周りに圧力を均一に分散させる。減少した摩擦は、特に、プランジャピストン50がマイクロドージングシリンジポンプシステムで使用される場合、投与の精度を向上させる。チャネル52の数、それらのサイズ、および、プランジャピストン50の前面56の周りでの配置は、O-リング30の第1の側32への圧力の均一な印加を提供するために、所望に応じて変更され得る。好ましくは、チャネル52は、前面56の外側リム64の周りで互いに等間隔に配置され、O-リング30の第1の側32に対する圧力を、完全に均等にする。好ましくは、チャネル52の深さは、図に示されるように、前面56の外側リム64の外径から溝54の底部まで延びる(特に図6を参照)。プランジャピストン50は、当技術分野で知られているような、プラスチック、エラストマー、および、ポリマー材料を含む、様々な材料から形成され得る。
【0020】
図3は、本開示に従って設計されたプランジャピストン50の上面図である。前面56は、前面56に切り込まれた4つのチャネル52とともに示される。チャネル52は、前面56の中心線66に対してほぼ垂直であるように示されるが、これは必須ではない。チャネル52は、プランジャピストン50の中心線66に対して任意の向きであり得る。チャネル52の数は、また、O-リング30の第1の側32での圧力を均一にするために、必要に応じて変更され得る。示されるように、好ましくは、チャネル52は、溝54の深さと等しい深さに切り込まれる。また、この実施形態では、プランジャピストン50は、楕円形の外形として示されるが、当技術分野で知られるように、また、円形であり得るであろう。当業者に知られるように、楕円形の外形を有するプランジャピストン50を使用する場合、リザーバ壁10の内側部分は、また、適合する楕円形状を有するであろう。プランジャピストン50の外形は、リザーバ壁10の内側部分の形状と、まさに合致する必要がある。プランジャピストン50の楕円形の外形は、プランジャピストン50がリザーバ壁10に沿ってリザーバ内を移動するときの、プランジャピストン50の回転に対する抵抗、および、減少したリザーバ壁10の変形などの利点を提供し得る。前面56は、好ましくは楔形の形状とされた外側リム64を有する(特に、図6を参照)。この楔形は、プランジャピストン50がリザーバ内の流体圧力に抗してスムーズに移動するのに役立つ。この発明の概念では、外側リム64は、楔形を有さなくてもよい。さらに、理解され得るように、楕円形の前面56の直径は、プランジャピストン50の楕円形の後面68の直径よりわずかに小さい。
【0021】
図4は、本開示に従って設計された、プランジャピストン50の底面図である。理解されるように、プランジャピストン50の後面68は、また、楕円形であり、少なくとも1つの戻り止め70、好ましくは、複数の戻り止め70を含む。当業者に知られるように、戻り止め70は、図示されない駆動機構と係合して、リザーバ内のプランジャピストン50を駆動するために使用される。駆動機構は、通常、シャフトを含み、直線シャフト、ネジ付きシャフト、一組の伸縮式駆動シャフトの、鋏型の駆動装置、および、プランジャピストン用の他の種類の既知の駆動機構を含む、さまざまな設計の任意のものを含み得る。マイクロドージングシリンジポンプの最も一般的なタイプは、ネジ付きシャフトと伸縮式駆動装置を含み、通常は、一組のネジ駆動シャフトを含む。
【0022】
図5および図6は、本開示に従って設計されたプランジャピストン50の側面図である。理解されるように、前面56の外側リム64は、チャネル52の1つに見られ得るように、楔72を有する。この形状は、圧力を前面56全体にわたって、および、チャネル52に分散させるのに有利であるが、他の形状が、利用され得るであろう。好ましくは、図5および図6に示されるように、チャネル52は、溝54の底部62まで延びる深さを有する。前面56と前側壁58との間の外側リム64の厚さは、特定の用途で経験されることが予想される圧力によって、必要に応じて調整され得る。同様に、プランジャピストン50の後側壁60と後面68との間の厚さは、O-リング30およびプランジャピストン50に適切な剛性および支持を提供するように、必要に応じて調整され得る。
【0023】
図7は、本開示に従って設計された、プランジャピストン50、および、溝54内に配置されたO-リング30の上面図である。O-リング30は、外側リム64の外径よりも大きく、ギャップ15を埋めて、リザーバ壁10の内側部分に接触するのに十分な外径を有する。O-リング30は、ゴム、エラストマー、および、他の典型的なO-リング材料から形成され得る。それは、圧縮率、伸長率、溝54とギャップ15に対する体積率の特性、および、プランジャピストン50のタイプ、そのサイズ、および、使用中にリザーバ内でプランジャピストン50に作用させられる力によって必要とされる、その他の既知の特性を備えて設計される、典型的なO-リングである。当業者は、それが使用されるであろう、環境のニーズを満たすように、これらの特性を調整し得る。
【0024】
図8Aは、図8Bの隣の左側に、本開示によらないプランジャピストン20の部分断面図を示し、図8Bは、右側に、本開示の例示的な実施形態によるプランジャピストン50と、本開示の例示的な実施形態による、プランジャピストン50の圧力および密封の利点の例を示す、部分断面図である。プランジャピストン20または50が、リザーバ内で移動させられるときに、流体によって印加される圧力が、小さな矢印で示される。従来のプランジャピストン20について理解されるように、圧力は、プランジャピストン20とリザーバ壁10の内側部分との間のギャップ15を通ってのみ通過し、密封はその領域で低減させられる。力は、O-リング30の第1の側32全体に広がらない。対照的に、例示的な実施形態によるプランジャピストン50は、力が、ギャップ15およびチャネル52を通って印加されることを可能にし、力が、O-リング30の第1の側32全体にわたって、均一に分布することを可能にする。したがって、サークルによって示されるように、リザーバ壁10の内側部分、後側壁60、および溝54の底部62に対して、より良好なシールが提供され得る。
【0025】
本明細書で説明されたように、従来の設計は、O-リングの密封効果に対して投与精度をバランスさせることが必要とされた。このトレードオフは、それが、O-リング30の第1の側32全体にわたる圧力を均一にするので、本発明の概念においては排除され、これは、単一設計での投与精度と密封効果を向上させる。
【0026】
前述の開示は、関連する法的基準に従って説明されており、したがって、説明は、本質的に、限定的であるよりはむしろ例示的である。例示的な実施形態は、本開示が完全なものとなり、当業者に範囲を十分に伝えようとするために提供される。本開示の実施形態の完全な理解を提供するために、特定の構成要素、装置、および方法の例などの、多くの特定の詳細が説明される。当業者には、特定の詳細が採用される必要はないこと、例示的な実施形態は多くの異なる形態で具現化され得ること、いずれも本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことが、明らかであろう。いくつかの例示的な実施形態では、周知のプロセス、周知の装置構造、および、周知の技術は、詳細に説明されない。したがって、この開示に与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
【手続補正書】
【提出日】2023-08-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャピストンであって、
後面に対向する前面、および、前記前面と前記後面の間に配置される少なくとも1つの環状溝であって、前記環状溝は、一対の対向側壁と底部を含む、前記環状溝と、
前記溝内に配置されたO-リングであって、前記O-リングは、前記対向側壁および前記底部の少なくとも一部と接触するような大きさとされた、前記O-リングと、
前記前面から前記溝内に延在する複数のチャネルであって、前記チャネルは、前記前面と前記O-リングとの間の連通を提供し、前記プランジャピストンの前記前面が流体に対して移動させられるとき、前記O-リングへの圧力を均一化する、前記複数のチャネルと、
を含むことを特徴とするプランジャピストン。
【請求項2】
請求項1に記載のプランジャピストンであって、前記前面は、外側リムを含み、前記チャネルは、前記外側リム内に配置されることを特徴とするプランジャピストン。
【請求項3】
請求項2に記載のプランジャピストンであって、前記チャネルは、前記外側リムから前記溝の底部まで延びる深さを有することを特徴とするプランジャピストン。
【請求項4】
請求項2または3に記載のプランジャピストンであって、前記外側リムは楔形状を有することを特徴とするプランジャピストン。
【請求項5】
請求項1、2、3、または4に記載のプランジャピストンであって、前記プランジャピストンは、楕円形状を有することを特徴とするプランジャピストン。
【請求項6】
請求項5に記載のプランジャピストンであって、前記チャネルは、前記楕円形状の中心線に対して垂直に配向されることを特徴とするプランジャピストン。
【請求項7】
請求項1、2、3、または4に記載のプランジャピストンであって、前記前面は、前記後面の直径よりも小さい直径を有することを特徴とするプランジャピストン。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、6、または7に記載のプランジャピストンであって、前記後面は、少なくとも1つの戻り止めを含むことを特徴とするプランジャピストン。
【請求項9】
請求項に記載のプランジャピストンであって、前記O-リングは、前記前面の外径よりも大きい外径を有することを特徴とするプランジャピストン。
【請求項10】
シリンジであって、
バレル、および、前記バレル内に受容されるプランジャピストンであって、前記プランジャピストンは、後面に対向する前面と、前記前面と前記後面との間に配置される少なくとも1つの環状溝とを備え、前記環状溝は、一対の対向側壁および底部を含む、前記プランジャピストンと、
前記溝内に配置されたO-リングであって、前記O-リングは、前記対向側壁および前記底部の少なくとも一部と接触するような大きさとされた、前記O-リングと、
前記前面から前記溝内に延在する複数のチャネルであって、前記チャネルは、前記前面と前記溝との間の連通を提供し、前記プランジャピストンの前記前面が流体に対して移動させられるとき、前記O-リングへの圧力を均一化する、前記複数のチャネルと、
を含むことを特徴とするシリンジ。
【請求項11】
請求項10に記載のシリンジであって、前記前面は、外側リムを含み、前記チャネルは、前記外側リム内に配置されることを特徴とするシリンジ。
【請求項12】
請求項11に記載のシリンジであって、前記チャネルは、前記外側リムから前記溝の底部まで延びる深さを有することを特徴とするシリンジ。
【請求項13】
請求項11または12に記載のシリンジであって、前記外側リムは、楔形状を有することを特徴とするシリンジ。
【請求項14】
請求項101112、または13に記載のシリンジであって、前記プランジャピストンは楕円形状を有し、前記バレルは、合致する楕円形状を備える内壁を有することを特徴とするシリンジ。
【請求項15】
請求項14に記載のシリンジであって、前記チャネルは、前記楕円形状の中心線に対して垂直に配向されることを特徴とするシリンジ。
【請求項16】
請求項101112、または13に記載のシリンジであって、前記前面は、前記後面の直径よりも小さい直径を有することを特徴とするシリンジ。
【請求項17】
請求項101112131415、または16に記載のシリンジであって、前記後面は、少なくとも1つの戻り止めを含むことを特徴とするシリンジ。
【請求項18】
請求項10に記載のシリンジであって、 前記O-リングは、前記前面の外径よりも大きい外径を有することを特徴とするシリンジ。
【国際調査報告】