(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】Tリンパ球結合アプタマー
(51)【国際特許分類】
C12N 15/115 20100101AFI20231213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231213BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231213BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20231213BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231213BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231213BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/7088
A61K47/68
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557840
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 IB2021000849
(87)【国際公開番号】W WO2022118077
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523209542
【氏名又は名称】アーミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ニーヴ, ガイ
(72)【発明者】
【氏名】カルミ-レヴィ, イリット
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィ, エレズ
(72)【発明者】
【氏名】ジロニー-ハニン, ネタ
(72)【発明者】
【氏名】ポード, ゾハール
(72)【発明者】
【氏名】レイス, ネリア
(72)【発明者】
【氏名】グレイチ, オハッド
(72)【発明者】
【氏名】ファーリ, ロニット
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076CC27
4C076EE59
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本明細書では、Tリンパ球を標的とするアプタマーおよびその使用方法が提供される。ある特定の態様では、アプタマーを作製する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、この方法は、配列番号1~21のいずれか1つ(例えば、配列番号1、20および21のいずれか1つ)と少なくとも60%同一(例えば、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも92%同一、少なくとも94%同一、少なくとも96%同一、少なくとも98%同一)の配列を含む核酸を合成すること(例えば、化学的に合成すること)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~21のいずれか1つと少なくとも80%同一の核酸配列を含むアプタマー。
【請求項2】
前記アプタマーが、配列番号1~21のいずれか1つと少なくとも90%同一の核酸配列を含む、請求項1に記載のアプタマー。
【請求項3】
前記アプタマーが、配列番号1~21のいずれか1つと少なくとも95%同一の核酸配列を含む、請求項1または2に記載のアプタマー。
【請求項4】
前記アプタマーが、配列番号1~21のいずれか1つと少なくとも98%同一の核酸配列を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項5】
前記アプタマーが、配列番号1~21のいずれか1の核酸配列を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項6】
前記アプタマーが、配列番号1~21のいずれか1の核酸配列を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項7】
配列番号1~21のいずれか1つの少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含むアプタマー。
【請求項8】
前記アプタマーが、配列番号1~21のいずれか1つの少なくとも30個の連続したヌクレオチドを含む、請求項7に記載のアプタマー。
【請求項9】
前記アプタマーが、配列番号1~21のいずれか1つの少なくとも40個の連続したヌクレオチドを含む、請求項7または8に記載のアプタマー。
【請求項10】
前記アプタマーが、配列番号1~21のいずれか1つの少なくとも50個の連続したヌクレオチドを含む、請求項7から9のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項11】
前記アプタマーが、配列番号1~21のいずれか1つの少なくとも50個の連続したヌクレオチドを含むか、または、配列番号1~21の少なくとも64個の連続したヌクレオチドを含む、請求項7から10のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項12】
前記アプタマーが、100ヌクレオチド長以下である、請求項1から11のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項13】
前記アプタマーが、90ヌクレオチド長以下である、請求項1から12のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項14】
前記アプタマーが、80ヌクレオチド長以下である、請求項1から13のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項15】
前記アプタマーが、73ヌクレオチド長以下である、請求項1から14のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項16】
前記アプタマーがT細胞に結合する、請求項1から15のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項17】
前記アプタマーがT細胞に結合する、請求項1から16のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項18】
前記アプタマーがT細胞抗原CD3に結合する、請求項1から17のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項19】
前記アプタマーが、
(a)T細胞媒介性細胞傷害;および/または
(b)T細胞媒介性細胞傷害による癌細胞の細胞死
を誘導する、請求項1から18のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項20】
前記アプタマーが、
(a)サイトカイン分泌;および/または
(b)T細胞活性化
を誘導する、請求項1から19のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項21】
前記アプタマーがインビトロで癌細胞の細胞死を誘導する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記アプタマーがインビボで癌細胞の細胞死を誘導する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞死がアポトーシスである、請求項20から22のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項24】
前記癌細胞が患者由来の癌細胞である、請求項20から23のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項25】
前記癌細胞が固形腫瘍細胞である、請求項20から24のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項26】
前記癌細胞が乳癌細胞または結腸直腸癌細胞である、請求項25に記載のアプタマー。
【請求項27】
前記アプタマーが化学修飾を含む、請求項1から26のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項28】
前記アプタマーがポリエチレングリコール(PEG)で化学修飾されている、請求項27に記載のアプタマー。
【請求項29】
前記PEGが前記アプタマーの前記5’末端に結合している、請求項28に記載のアプタマー。
【請求項30】
前記アプタマーが5’末端キャップを含む、請求項27から29のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項31】
前記アプタマーが3’末端キャップを含む、請求項27から30のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項32】
前記3’末端キャップが反転チミジンである、請求項31に記載のアプタマー。
【請求項33】
前記3’末端キャップがビオチンを含む、請求項31に記載のアプタマー。
【請求項34】
前記アプタマーが2’糖置換を含む、請求項27から33のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項35】
前記2’糖置換が2’-フルオロ、2’-アミノ、または2’-O-メチル置換である、請求項34に記載のアプタマー。
【請求項36】
前記アプタマーが、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(UNA)および/または2’デオキシ(deozy)-2’フルオロ-D-アラビノ核酸(2’-FANA)糖をその骨格に含む、請求項27から35のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項37】
メチルホスホネートヌクレオチド間結合および/またはホスホロチオエート(PS)ヌクレオチド間結合を含む、請求項27から36のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項38】
前記アプタマーが、トリアゾールヌクレオチド間結合を含む、請求項27から37のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項39】
コレステロールまたはジアルキル脂質で修飾されている、請求項27から38のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項40】
前記コレステロールまたはジアルキル脂質が、前記アプタマーの5’末端に連結されている、請求項39に記載のアプタマー。
【請求項41】
前記アプタマーが、5’ホスホロチオエート(PS)ヌクレオチド間結合および3’末端キャップ反転チミジンを含む、請求項27に記載のアプタマー。
【請求項42】
前記アプタマーが修飾された塩基を含む、請求項27から41のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項43】
前記アプタマーがDNAアプタマーである、請求項1から42のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項44】
前記アプタマーがD-DNAアプタマーである、請求項43に記載のアプタマー。
【請求項45】
前記アプタマーがエナンチオマーL-DNAアプタマーである、請求項43に記載のアプタマー。
【請求項46】
前記アプタマーがRNAアプタマーである、請求項1から42のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項47】
前記アプタマーがD-RNAアプタマーである、請求項46に記載のアプタマー。
【請求項48】
前記アプタマーがエナンチオマーL-RNAアプタマーである、請求項46に記載のアプタマー。
【請求項49】
癌細胞結合部分に連結されている、請求項1から48のいずれか1項に記載のアプタマーを含むアプタマーコンジュゲート。
【請求項50】
前記アプタマーが前記癌細胞結合部分に共有結合している、請求項48に記載のアプタマーコンジュゲート。
【請求項51】
前記アプタマーが前記癌細胞結合部分に非共有結合している、請求項49に記載のアプタマーコンジュゲート。
【請求項52】
前記アプタマーが前記癌細胞結合部分に直接連結されている、請求項49から51のいずれか1項に記載のアプタマーコンジュゲート。
【請求項53】
前記アプタマーがリンカーを介して前記癌細胞結合部分に連結されている、請求項49から51のいずれか1項に記載のアプタマーコンジュゲート。
【請求項54】
前記癌細胞結合部分が、癌細胞に発現した抗原に結合する、請求項49から53のいずれか1項に記載のアプタマーコンジュゲート。
【請求項55】
前記癌細胞結合部分が、癌細胞と接触すると細胞死を誘導する、請求項49から54のいずれか1項に記載のアプタマーコンジュゲート。
【請求項56】
前記細胞死がアポトーシスである、請求項49から55のいずれか1項に記載のアプタマーコンジュゲート。
【請求項57】
前記癌細胞が固形腫瘍細胞である、請求項49から56のいずれか1項に記載のアプタマーコンジュゲート。
【請求項58】
前記癌細胞が乳癌細胞または結腸直腸癌細胞である、請求項57に記載のアプタマーコンジュゲート。
【請求項59】
前記癌細胞結合部分が、インビトロで前記癌細胞と接触すると細胞死を誘導する、請求項49から58のいずれか1項に記載のアプタマーコンジュゲート。
【請求項60】
前記癌細胞結合部分が、インビボで前記癌細胞と接触すると細胞死を誘導する、請求項49から59のいずれか1項に記載のアプタマーコンジュゲート。
【請求項61】
前記癌細胞結合部分が、アプタマー、小分子、ポリペプチド、核酸、タンパク質、または抗体である、請求項49から60のいずれか1項に記載のアプタマーコンジュゲート。
【請求項62】
請求項1から48のいずれか1項に記載のアプタマーを含む医薬組成物。
【請求項63】
請求項49から62のいずれか1項に記載のアプタマーコンジュゲートを含む医薬組成物。
【請求項64】
薬学的に許容され得る担体をさらに含む、請求項62または63に記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記医薬組成物が非経口投与用に製剤化されている、請求項62から64のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項66】
癌の処置に使用するための、請求項62から65のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項67】
前記癌が固形腫瘍である、請求項66に記載の医薬組成物。
【請求項68】
前記癌が、乳癌、頭頸部扁平上皮癌、腺様嚢胞癌、膀胱癌、膵臓癌、肝細胞癌、黒色腫、メルケル細胞癌、または結腸直腸癌である、請求項67に記載の医薬組成物。
【請求項69】
癌を処置する方法であって、前記方法が、請求項1から48のいずれか1項に記載のアプタマーを対象に投与することを含む方法。
【請求項70】
癌を処置する方法であって、前記方法が、請求項49から62のいずれか1項に記載のアプタマーコンジュゲートを対象に投与することを含む方法。
【請求項71】
癌を処置する方法であって、前記方法が、62から68のいずれか1項に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項72】
前記投与が非経口投与である、請求項69から71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記投与が腫瘍内注射である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記癌が固形腫瘍である、請求項69から73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記癌が、乳癌、頭頸部扁平上皮癌、腺様嚢胞癌、膀胱癌、膵臓癌、肝細胞癌、黒色腫、メルケル細胞癌、または結腸直腸癌である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記対象が化学療法を受けたことがある対象である、請求項69から75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記対象が腫瘍を外科的に除去したことがある、請求項69から76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記対象に追加の癌治療を投与することをさらに含む、請求項69から77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記追加の癌治療が化学療法を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記追加の癌治療が放射線治療を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記追加の癌治療が腫瘍の外科的除去を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記追加の癌治療が前記対象への免疫チェックポイント阻害剤の投与を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項83】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、または抗CTLA4抗体である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
癌細胞を死滅させる方法であって、前記方法が、CTLを請求項1から48のいずれか1項に記載のアプタマーと接触させることによってCTL活性を誘導することを含む方法。
【請求項85】
癌細胞を死滅させる方法であって、前記方法が、前記癌細胞を請求項49から62のいずれか1項に記載のアプタマーコンジュゲートと接触させることを含む方法。
【請求項86】
前記癌細胞がアポトーシスによって死滅する、請求項84または85に記載の方法。
【請求項87】
前記癌細胞が固形腫瘍細胞である、請求項84から86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記癌細胞が結腸直腸癌細胞である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記癌細胞が乳癌細胞である、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
アプタマーを作製する方法であって、前記方法が、配列番号1~21のいずれか1つと少なくとも80%同一の配列を含む核酸分子を合成することを含む方法。
【請求項91】
前記核酸分子が、配列番号1~21のいずれか1つと少なくとも90%同一の核酸配列を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記核酸分子が、配列番号1~21のいずれか1つと少なくとも95%同一の核酸配列を含む、請求項90または91に記載の方法。
【請求項93】
前記核酸分子が、配列番号1~21のいずれか1つと少なくとも98%同一の核酸配列を含む、請求項90から92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記核酸分子が、配列番号1~21のいずれか1つの核酸配列を含む、請求項90から93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記核酸分子が、配列番号1~21のいずれか1つの核酸配列を含む、請求項90から94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
請求項1~18または21~48のいずれか1項に記載のアプタマーを対象に投与することを含む、前記対象の自己免疫障害を処置する方法。
【請求項97】
請求項1~18または21~48のいずれか1項に記載のアプタマーを対象に投与することを含む、前記対象の炎症性疾患を処置する方法。
【請求項98】
請求項1~18または21~48のいずれか1項に記載のアプタマーを対象に投与することを含む、前記対象の移植拒絶反応を処置する方法。
【請求項99】
請求項62に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、前記対象の自己免疫障害を処置する方法。
【請求項100】
請求項62に記載のアプタマーを対象に投与することを含む、前記対象の炎症性疾患を処置する方法。
【請求項101】
請求項62に記載のアプタマーを対象に投与することを含む、前記対象の移植拒絶反応を処置する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年12月3日に出願された米国仮特許出願第63/121,080号および2021年10月19日に出願された米国仮特許出願第63/257,402号に基づく優先権の利益を主張し、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
T細胞は、特にそれらの存在量、殺傷効果および増殖能力のために、癌免疫療法の中心的なエフェクターとして確立されている。T細胞エンゲージャーは、一端がT細胞/CD3複合体の定常成分、もう一端が腫瘍関連抗原(TAA)に対する二重特異性分子である。この構造および特異性により、二重特異性T細胞エンゲージャーは、T細胞を腫瘍細胞に物理的に連結させ、最終的にT細胞活性化とそれに続く腫瘍の殺傷を刺激することができる。(Huehls AMら(2015)Immunol Cell Biol 93(3):290-296;Ellerman D(2019)Methods 154:102-117)したがって、T細胞を利用して腫瘍細胞に向け直す二重特異性分子は、有望な治療薬である。過去30年の間に、無数のT二重特異性抗体が開発されてきた。現在までに、癌治療のための他の約30種のIgGベースの抗体薬物と比較して、T二重特異性抗体のブリナツモマブ1種類だけが、ヒトでの臨床使用について承認されている。この遅れは主に、これらの抗体の製造時のタンパク質工学の難しさと、これらの新規構築物の臨床毒性が不確実であることに起因する(Wu and Cheung(2018)Pharmacol.Ther.182:161-175)。
【0003】
アプタマーは、タンパク質、糖、および低分子有機化合物を含む様々な標的に特異的に結合することができる一本鎖オリゴヌクレオチドである。治療薬と診断薬の両方の開発のためにアプタマーを使用することに対する関心が高まっている。
【0004】
アプタマーは、抗体と同様に目的の標的を認識して結合するが、生成時間が短い、製造コストが低い、バッチ間の変動性が低い、修飾性が高い、熱安定性が良好である、免疫原性が低いなどの多くの利点を有する(Zhang、Lai、and Juhas(2019)Molecules 24:pii:E941.doi:10.3390/molecules24050941)。
【0005】
したがって、T細胞を標的にすることができるアプタマーは、抗癌治療薬として使用できる大きな可能性を有するであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Huehls AMら(2015)Immunol Cell Biol 93(3):290-296
【非特許文献2】Ellerman D(2019)Methods 154:102-117
【非特許文献3】Wu and Cheung(2018)Pharmacol.Ther.182:161-175
【非特許文献4】Zhang、Lai、and Juhas(2019)Molecules 24:pii:E941.doi:10.3390/molecules24050941
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
ある特定の態様では、T細胞に結合するアプタマー、ならびに/あるいはT細胞刺激および/またはT細胞媒介性細胞傷害を誘導するアプタマーが本明細書で提供される。いくつかの態様では、そのようなアプタマーを含む医薬組成物、そのようなアプタマーを用いて癌を処置する方法および/または癌細胞を死滅させる方法および/またはTリンパ球を刺激する方法、ならびにそのようなアプタマーを作製する方法が本明細書で提供される。
【0008】
特定の態様では、配列番号1~21のいずれか1つと少なくとも60%同一(例えば、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも92%同一、少なくとも94%同一、少なくとも96%同一、少なくとも98%同一)である核酸配列を含むアプタマーが本明細書で提供される。ある特定の実施形態では、アプタマーは、配列番号1~21のいずれか1つの少なくとも20(例えば、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、または少なくとも50)の連続したヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、アプタマーは、配列番号1~21のいずれか1つの少なくとも40(例えば、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63)の連続したヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、アプタマーは、配列番号1~21のいずれか1つ(例えば、配列番号1、20および21のいずれか1つ)の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、配列番号1~21のいずれか1つ(例えば、配列番号1、20または21のいずれか1つ)から本質的になる配列を有する。ある特定の実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、配列番号1~21のいずれか1つ(例えば、配列番号1、20または21のいずれか1つ)からなる配列を有する。
【0009】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、100ヌクレオチド長以下(例えば、90ヌクレオチド長以下、85ヌクレオチド長以下、80ヌクレオチド長以下、75ヌクレオチド長以下、73ヌクレオチド長以下、70ヌクレオチド長以下、長さ63以下、65ヌクレオチド長以下、60ヌクレオチド長以下、59ヌクレオチド長以下、58ヌクレオチド長以下、57ヌクレオチド長以下、56ヌクレオチド長以下、55ヌクレオチド長以下、54ヌクレオチド長以下、53ヌクレオチド長以下、52ヌクレオチド長以下、51ヌクレオチド長以下、または50ヌクレオチド長以下)である。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、T細胞に結合することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、T細胞表面タンパク質CD3(例えば、CD3ε鎖、CD3e)に結合する。いくつかの実施形態では、アプタマーは、T細胞媒介性細胞傷害を誘導することができる。いくつかの実施形態では、アプタマーは、T細胞媒介性細胞傷害を介して癌細胞(例えば、ヒト癌細胞)の細胞死を誘導することができる。いくつかの実施形態では、癌細胞は、患者由来癌細胞である。一部の実施形態では、癌細胞は固形腫瘍細胞である。ある特定の実施形態では、癌細胞は、結腸直腸癌細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞は肺癌細胞である。いくつかの実施形態では、アプタマーは、インビトロで癌細胞の細胞死を誘導する。ある特定の実施形態では、アプタマーは、インビボで(例えば、ヒトおよび/または動物モデルで)癌細胞の細胞死を誘導する。いくつかの実施形態では、アプタマーはT細胞刺激を誘導することができる。いくつかの実施形態では、アプタマーはT細胞増殖を誘導することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、1またはそれを超える化学修飾を含む。いくつかの実施形態では、アプタマーは、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、アプタマーの5’末端に結合する)で化学修飾されている。いくつかの実施形態では、アプタマーは5’末端キャップを含む。ある特定の実施形態では、アプタマーは3’末端キャップを含む(例えば、反転したチミジン、ビオチンである)。いくつかの実施形態では、アプタマーは、1またはそれを超える(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、または54の)2’糖置換(例えば、2’-フルオロ、2’-アミノ、または2’-O-メチル置換)を含む。ある特定の実施形態では、アプタマーは、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(UNA)および/または2’デオキシ(deozy)-2’フルオロ-D-アラビノ核酸(2’-FANA)糖をその骨格に含む。ある特定の実施形態では、アプタマーは、1またはそれを超える(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、または54個の)メチルホスホネートヌクレオチド間結合および/またはホスホロチオエート(PS)ヌクレオチド間結合を含む。ある特定の実施形態では、アプタマーは、1またはそれを超える(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、または54個の)トリアゾールヌクレオチド間結合を含む。ある特定の実施形態では、アプタマーは、コレステロールまたはジアルキル脂質で(例えば、それらの5’末端で)修飾されている。いくつかの実施形態では、アプタマーは、1またはそれを超える修飾された塩基を含む。
【0012】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、DNAアプタマー(例えば、D-DNAアプタマーまたはエナンチオマーL-DNAアプタマー)である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、RNAアプタマー(例えば、D-RNAアプタマーまたはエナンチオマーL-RNAアプタマー)である。いくつかの実施形態では、アプタマーは、DNAとRNAの混合物を含む。
【0013】
ある特定の態様では、癌細胞結合部分(例えば、小分子、別のアプタマー、ポリペプチド、核酸、タンパク質、および/または抗体)に連結された本明細書に提供されるアプタマーを含むアプタマーコンジュゲートが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、アプタマーは、癌細胞結合部分に共有結合している。いくつかの実施形態では、アプタマーは、癌細胞結合部分に非共有結合している。いくつかの実施形態では、アプタマーは、癌細胞結合部分に直接連結されている。いくつかの実施形態では、アプタマーは、リンカーを介して癌細胞結合部分に連結されている。いくつかの実施形態では、癌細胞結合部分は、癌細胞上に発現した抗原に結合する。いくつかの実施形態では、癌細胞で発現される抗原は、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺膜抗原(PSMA)、癌抗原15-3(CA-15-3)、癌胎児抗原(CEA)、癌抗原125(CA-125)、α-フェトプロテイン(AFP)、NY-ESO-1、MAGEA-A3、WT1、hTERT、チロシナーゼ、gp100、MART-1、メランA、Bカテニン、CDC27、HSP70-2-m、HLA-A2-R17OJ、AFP、EBV-EBNA、HPV16-E7、MUC-1、HER-2/neu、マンマグロビンAまたはMHC-TAAペプチド複合体から選択される。いくつかの実施形態では、癌細胞結合部分は、癌細胞(例えば、ヒト癌細胞)と接触すると、細胞死(例えば、アポトーシス)を誘導する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、患者由来癌細胞である。一部の実施形態では、癌細胞は固形腫瘍細胞である。ある特定の実施形態では、癌細胞は、結腸直腸癌細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞は、乳癌細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞結合部分は、インビトロで癌細胞に接触すると細胞死を誘導する。ある特定の実施形態では、癌細胞結合部分は、インビボで(例えば、ヒトおよび/または動物モデルで)癌細胞と接触させると細胞死を誘導する。
【0014】
ある特定の態様では、本明細書に提供されるアプタマー(例えば、治療有効量のアプタマー)を含む医薬組成物が本明細書で提供される。ある特定の態様では、本明細書に提供されるアプタマーコンジュゲート(例えば、治療有効量のアプタマーコンジュゲート)を含む医薬組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、薬学的に許容され得る担体をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、非経口投与用に製剤化されている。
【0015】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、癌の処置に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍である。ある特定の実施形態では、癌は、結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、癌は肺癌である。
【0016】
ある特定の態様では、対象の癌を処置する方法が本明細書において提供され、該方法は、本明細書で提供されるアプタマー(例えば、治療有効量のアプタマー)または医薬組成物を対象に投与することを含む。ある特定の態様では、対象の癌を処置する方法が本明細書において提供され、該方法は、本明細書で提供されるアプタマーコンジュゲート(例えば、治療有効量のアプタマーコンジュゲート)または医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの態様において、投与は非経口投与(例えば、皮下投与)である。投与は、腫瘍内注射、皮下注射または膀胱内注入であってよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍である。ある特定の実施形態では、癌は、結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、頭頸部扁平上皮癌、腺様嚢胞癌、基底細胞癌、膀胱癌、膵臓癌、肝細胞癌、黒色腫、またはメルケル細胞癌である。ある特定の実施形態では、対象は、化学療法を受けたことがある対象である。ある特定の実施形態では、対象は、腫瘍を外科的に除去した(例えば、乳癌腫瘍を外科的に切除した)対象である。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される治療方法は、対象に追加の癌治療を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、追加の癌治療は化学療法を含む。ある特定の実施形態では、追加の癌治療は、放射線治療を含む。いくつかの実施形態では、追加の癌治療は、腫瘍の外科的除去を含む。ある特定の実施形態では、追加の癌治療は、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗CTLA4抗体、抗TIGIT抗体、抗PVR抗体または抗ネクチン抗体)の対象への投与を含む。
【0019】
ある特定の態様では、癌細胞を死滅させる方法が本明細書において提供され、該方法は、癌細胞を本明細書に提供されるアプタマーまたはアプタマーコンジュゲートと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、癌細胞はアポトーシスによって死滅する。一部の実施形態では、癌細胞は固形腫瘍細胞である。ある特定の実施形態では、癌細胞は、結腸直腸癌細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞は、乳癌細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞は、インビトロで癌細胞と接触すると死滅する。ある特定の実施形態では、癌細胞は、インビボで(例えば、ヒトおよび/または動物モデルで)癌細胞と接触すると死滅する。
【0020】
ある特定の態様では、アプタマーを作製する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、この方法は、配列番号1~21のいずれか1つ(例えば、配列番号1、20および21のいずれか1つ)と少なくとも60%同一(例えば、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも92%同一、少なくとも94%同一、少なくとも96%同一、少なくとも98%同一)の配列を含む核酸を合成すること(例えば、化学的に合成すること)を含む。ある特定の実施形態では、この方法は、配列番号1~21のいずれか1つ(例えば、配列番号1、20および21のいずれか1つ)の少なくとも20(例えば、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、または少なくとも50)の連続したヌクレオチドを含む配列を含む核酸を合成することを含む。ある特定の実施形態では、アプタマーは、配列番号1~21のいずれか1つ(例えば、配列番号1、20および21のいずれか1つ)の少なくとも40(例えば、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、少なくとも64、少なくとも65、少なくとも66、少なくとも67、少なくとも68、少なくとも69、少なくとも70、少なくとも71、少なくとも72、または少なくとも73)の連続したヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、この方法は、配列番号1~21のいずれか1つ(例えば、配列番号1、20および21のいずれか1つ)の配列を含む核酸を合成することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、配列番号1~21(例えば、配列番号1、20および21のいずれか1つ)から本質的になる配列を有する核酸を合成することを含む。ある特定の実施形態では、この方法は、配列番号1~21(例えば、配列番号1、20および21のいずれか1つ)からなる配列を有する核酸を合成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1Aおよび1Bは、結合SELEX法のスキームを示す。
【
図2A】
図2Aおよび2Bは、結合SELEX比較アッセイを示す。結合アッセイは、標的タンパク質CD3εビーズ複合体(黒色)または対照タンパク質IgGl(灰色)で、初期ランダムライブラリー(Rnd Lib)およびラウンド3(R3)、6(R6)、9(R9)、および11(R11)からのライブラリー濃縮プールを用いて実施された。インキュベーションおよび洗浄後、ライブラリーDNAを溶出し、上清中の濃度をリアルタイムPCRによって評価した。標準曲線は、ランダムライブラリー(上)を用いて行った。(B)Cy5蛍光標識ライブラリーのジャーカットT細胞株およびPan B細胞への結合はフローサイトメトリーで実証された。ドットプロットおよびヒストグラムグラフが示されている。Cy5蛍光強度中央値(MFI)のフローデータ定量化。
【
図2B】
図2Aおよび2Bは、結合SELEX比較アッセイを示す。結合アッセイは、標的タンパク質CD3εビーズ複合体(黒色)または対照タンパク質IgGl(灰色)で、初期ランダムライブラリー(Rnd Lib)およびラウンド3(R3)、6(R6)、9(R9)、および11(R11)からのライブラリー濃縮プールを用いて実施された。インキュベーションおよび洗浄後、ライブラリーDNAを溶出し、上清中の濃度をリアルタイムPCRによって評価した。標準曲線は、ランダムライブラリー(上)を用いて行った。(B)Cy5蛍光標識ライブラリーのジャーカットT細胞株およびPan B細胞への結合はフローサイトメトリーで実証された。ドットプロットおよびヒストグラムグラフが示されている。Cy5蛍光強度中央値(MFI)のフローデータ定量化。
【
図3A-3B】
図3A~3Cは、次世代シーケンシング(NGS)分析結果を示す。
図3Aは、実施例2で定義されるように、8回目、9回目、10回目、および11回目のSELEXラウンドの濃縮ライブラリーからの単一アプタマー配列の分析をドットプロットで示す。X軸は平均P陰性を表し、Y軸は平均P陽性を表す。対角線は、特異的な結合アプタマーと結合性の低い非特異的アプタマー配列との間の閾値を表す。さらなる調査のために選択された上位5つの候補を名称とともに示す。
図3Bは、上位14の特異的結合アプタマー(上)と上位4の選択されたアプタマー(下)の共有モチーフ(GLAM2ソフトウェアを使用)の配列LOGOディスプレイを示す。
図3Cは、選択された5つの候補の二次構造解析(mfold)を示す。モチーフヌクレオチドの位置は赤色のアスタリスクで示されている。
【
図3C】
図3A~3Cは、次世代シーケンシング(NGS)分析結果を示す。
図3Aは、実施例2で定義されるように、8回目、9回目、10回目、および11回目のSELEXラウンドの濃縮ライブラリーからの単一アプタマー配列の分析をドットプロットで示す。X軸は平均P陰性を表し、Y軸は平均P陽性を表す。対角線は、特異的な結合アプタマーと結合性の低い非特異的アプタマー配列との間の閾値を表す。さらなる調査のために選択された上位5つの候補を名称とともに示す。
図3Bは、上位14の特異的結合アプタマー(上)と上位4の選択されたアプタマー(下)の共有モチーフ(GLAM2ソフトウェアを使用)の配列LOGOディスプレイを示す。
図3Cは、選択された5つの候補の二次構造解析(mfold)を示す。モチーフヌクレオチドの位置は赤色のアスタリスクで示されている。
【
図4】
図4は、標的タンパク質に結合するアプタマー配列をHPLCで示す。折り畳まれ、Cy5標識されたアプタマー候補を、組換えヒトCD3ε(hCD3ε)結合についてアッセイした。アプタマーをhCD3eまたは陰性対照IIgG1とともに37℃で1時間インキュベートした。ポリTを陰性対照配列として使用した。
【
図5A】
図5A~5Cは、フローサイトメトリーによって実証されたT細胞へのCS6結合を示す。ジャーカット細胞とKami-1細胞をCpG’-Cy5標識CS6、CS7、CS8cとともにインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。(
図5A)。ジャーカット細胞とDaudi細胞をCpG’-Cy5標識CS6、CS7、CS8cとともにインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。MFI定量化を以下に示す(
図5B)。単離したpan T細胞とpan B細胞をCpG’-Cy5標識CS6とともにインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。T細胞およびB細胞のCy5(X軸)/SSC(Y軸)によるドットプロットの表示、ならびにMFI定量化を示す(
図5C)。
【
図5B】
図5A~5Cは、フローサイトメトリーによって実証されたT細胞へのCS6結合を示す。ジャーカット細胞とKami-1細胞をCpG’-Cy5標識CS6、CS7、CS8cとともにインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。(
図5A)。ジャーカット細胞とDaudi細胞をCpG’-Cy5標識CS6、CS7、CS8cとともにインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。MFI定量化を以下に示す(
図5B)。単離したpan T細胞とpan B細胞をCpG’-Cy5標識CS6とともにインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。T細胞およびB細胞のCy5(X軸)/SSC(Y軸)によるドットプロットの表示、ならびにMFI定量化を示す(
図5C)。
【
図5C】
図5A~5Cは、フローサイトメトリーによって実証されたT細胞へのCS6結合を示す。ジャーカット細胞とKami-1細胞をCpG’-Cy5標識CS6、CS7、CS8cとともにインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。(
図5A)。ジャーカット細胞とDaudi細胞をCpG’-Cy5標識CS6、CS7、CS8cとともにインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。MFI定量化を以下に示す(
図5B)。単離したpan T細胞とpan B細胞をCpG’-Cy5標識CS6とともにインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。T細胞およびB細胞のCy5(X軸)/SSC(Y軸)によるドットプロットの表示、ならびにMFI定量化を示す(
図5C)。
【
図6】
図6は、CS6有効濃度を示す。ジャーカット細胞を段階希釈濃度のCpG’-Cy5標識CS6とともにインキュベートし、フローサイトメトリーで分析して化合物のEC
50を決定した。
【
図7】
図7は、アプタマーコンジュゲートとしてのT細胞エンゲージャーアプタマーの例示的な使用の概略図を提供する。この例では、T細胞結合アプタマーを、癌を標的とする第2のアプタマーと連結して、二重特異性アプタマー実体が得られる。治療剤の3つの異なるドメインが示されている。
【
図8A-8B】
図8Aおよび
図8Bは、HCT116にハイブリダイズされたCS6アプタマー(配列番号21)、結腸癌細胞株標的化アプタマー配列(VS12と命名、配列番号22)で構成される、例示的な二重特異性T細胞エンゲージャーアプタマーのインビボ有効性を示す。雌NSGマウスに、ヒトPBMCと混合したHCT-116腫瘍細胞を皮下移植し、続いてT細胞エンゲージャー二重特異性個別化アプタマーによる処置を合計10用量皮下投与した。HCT116の腫瘍体積を、CS6-VS12処置群、ポリT-ポリTq(非特異p的DNAアプタマー)群およびビヒクルマウス群についてモニターした(A)。個々のマウス成長曲線を
図8Bに示す。
***は、有意差(p≦0.001)を示す。
【
図9】
図9は、処置マウスのカプラン・マイヤー生存分析を示す。
**は有意差(p≦0.01)を示す。
【
図11】
図11は、各患者の個別化プロセスにおける重要なステップを示す。
【
図12】
図12は、カスタマイズされた可変鎖を同定し、2つの確立された腫瘍マウスモデルで二重特異性アプタマーを試験するための研究デザインの概略図である。
【
図13】
図13は、二重特異性個別化アプタマーの腫瘍内投与が腫瘍増殖を有意に減弱させることを示す。パネル(A)は、投与後14日間、CS6-VS20、CS6-VS45、およびビヒクルで処置されたマウスのA549腫瘍体積を示す。パネル(B)は、投与後14日間、CS6-VS32およびビヒクルで処置したマウスの4T1腫瘍体積を示す。統計分析のために2元配置分散分析を実行した。
*は有意差(p≦0.05)を示し、
***は有意差(p≦0.001)を示す。
【
図14】
図14は、二重特異性個別化アプタマーCS6-VS32投与の全身効果を示す。パネル(A)では、実験の終了時に肺を採取し、細胞を6-チオグアニンにプレーティングし、12~14日後にコロニーを計数した。パネル(B)では、終了日に血清を採取し、マウスIL-6 ELISAアッセイを使用して分析した。それぞれの円は試験群(左)のマウスを表す。脾臓を終了時に採取し、秤量した。バーは平均±SEMを表す(右)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
一般
特定の態様では、T細胞に選択的に結合するアプタマー、ならびに/あるいはT細胞刺激および/またはT細胞媒介性細胞傷害を選択的に誘導するアプタマーが本明細書で提供される。いくつかの態様では、そのようなアプタマーを含む医薬組成物、そのようなアプタマーを用いて癌を処置する方法および/または癌細胞を死滅させる方法、ならびにそのようなアプタマーを作製する方法が本明細書で提供される。
【0023】
定義
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語をここに収載する。
【0024】
冠詞「a」および「an」は本明細書において、冠詞の文法的対象の1または2以上(例えば、少なくとも1つ)をさすために使用される。例として、「1つの(an)要素」とは、1つの要素または1よりも多い要素を意味する。
【0025】
「オリゴヌクレオチド」および「核酸分子」という用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体のいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有してもよく、既知または未知のどんな機能を果たしてもよい。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、連鎖解析から定義される1または複数の遺伝子座、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、合成ポリヌクレオチド、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾されたヌクレオチドを含んでよい。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの構築の前後に与えられてよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されることがある。ポリヌクレオチドは、標識成分とのコンジュゲーションなどにより、さらに修飾されていてもよい。
【0026】
本明細書で使用される場合、「アプタマー」という用語は、標的分子、例えばタンパク質もしくはペプチドに、または標的細胞のトポグラフィーの特徴に特異的に結合することができる短い(例えば、200塩基未満の)一本鎖核酸分子(ssDNAオリゴヌクレオチドおよび/またはssRNA)を指す。
【0027】
「結合」または「相互作用」という用語は、2つの分子間、例えばアプタマーとターゲットの間の、例えば生理学的条件下での静電相互作用、疎水性相互作用、イオン性相互作用、πスタッキング相互作用、配位相互作用、ファンデルワールス相互作用、共有結合相互作用、および/または水素結合相互作用による、安定した会合であり得る会合を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、2つの核酸配列が各位置で互いに塩基対を形成する場合、それらは互いの「補体」であるか、または互いに「相補的」である。
【0029】
「調節」または「調節する」という用語は、機能的特性または生物学的活性もしくはプロセス(例えば、酵素活性または受容体結合)に関して使用される場合、アップレギュレートする(例えば、活性化または刺激する)か、ダウンレギュレートする(例えば、阻害または抑制する)か、またはそうでなければそのような特性、活性もしくはプロセスの品質を変化させる能力を指す。ある特定の例では、そのような調節は、シグナル伝達経路の活性化などの特定の事象の発生を条件とする可能性があり、かつ/または特定の細胞型においてのみ発現する可能性がある。
【0030】
本明細書で使用される場合、「特異的結合」は、アプタマーが所定の標的に結合する能力を指す。典型的には、アプタマーは、約10-7Mまたはそれ未満、約10-8Mまたはそれ未満、または約10-9Mまたはそれ未満のKDに対応する親和性でその標的に特異的に結合し、非特異的で無関係な標的(例えば、IgG1グロブリン、BSA、カゼイン、または無関係な細胞、例えばHEK293細胞もしくは大腸菌細胞)への結合に対する親和性または同族標的に対する異なるアプタマー配列の親和性よりも有意に低い(例えば、少なくとも2倍未満、少なくとも5倍未満、少なくとも10倍未満、少なくとも50倍未満、少なくとも100倍未満、少なくとも500倍未満、または少なくとも1000倍未満の)KDで標的に結合する。
【0031】
アプタマー
ある特定の態様では、T細胞に結合するアプタマー、ならびに/あるいはT細胞刺激を誘導し、および/またはT細胞媒介性細胞傷害を誘導するアプタマーが本明細書で提供される。いくつかの態様では、そのようなアプタマーを含む医薬組成物、そのようなアプタマーを用いて癌を処置する方法および/または癌細胞を死滅させる方法、ならびにそのようなアプタマーを作製する方法が本明細書で提供される。
【0032】
ある特定の態様では、配列番号1~21のいずれか1つと少なくとも60%同一(例えば、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも92%同一、少なくとも94%同一、少なくとも96%同一、少なくとも98%同一)である核酸配列を含むアプタマーが本明細書で提供される。ある特定の実施形態では、アプタマーは、配列番号1~21のいずれか1つの少なくとも20(例えば、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50)の連続したヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、アプタマーは、配列番号1~21のいずれか1つの少なくとも40(例えば、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、少なくとも64、少なくとも65、少なくとも66、少なくとも67、少なくとも68、少なくとも69、少なくとも70、少なくとも71、少なくとも72、または少なくとも73)の連続したヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、アプタマーは、配列番号1~21のいずれか1つの核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、配列番号1~21のいずれか1つから本質的になる配列を有する。ある特定の実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、配列番号1~21のいずれか1つからなる配列を有する。
【0033】
2またはそれを超える核酸の文脈における「同一」または「同一性パーセント」という用語は、以下に記載されるデフォルトパラメータを用いてBLASTもしくはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用して、または手動アライメントおよび目視検査によって測定した場合に(例えば、NCBIウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/などを参照)、同じであるか、または指定された百分率の同じヌクレオチド(すなわち、比較ウィンドウまたは指定された領域で最大の一致を得るように比較し整列させた場合、指定された領域で約60%の同一性、好ましくは 65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも高い同一性)を有する2またはそれを超える配列または部分配列を指す。
【0034】
ある特定の実施形態では、アプタマーは、100ヌクレオチド長以下(例えば、90ヌクレオチド長以下、85ヌクレオチド長以下、80ヌクレオチド長以下、75ヌクレオチド長以下、70ヌクレオチド長以下、65ヌクレオチド長以下、60ヌクレオチド長以下、59ヌクレオチド長以下、58ヌクレオチド長以下、57ヌクレオチド長以下、56ヌクレオチド長以下、55ヌクレオチド長以下、54ヌクレオチド長以下、53ヌクレオチド長以下、52ヌクレオチド長以下、51ヌクレオチド長以下、または50ヌクレオチド長以下である。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、T細胞に結合することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、分化3(CD3)(例えば、CD3ε鎖)のクラスターに結合する。いくつかの実施形態では、アプタマーはT細胞刺激を誘導することができる。いくつかの実施形態では、アプタマーは、T細胞媒介性細胞傷害を誘導することができる。いくつかの実施形態では、アプタマーは、T細胞媒介性細胞傷害を介して癌細胞(例えば、ヒト癌細胞)の細胞死を誘導することができる。いくつかの実施形態では、癌細胞は、患者由来癌細胞である。一部の実施形態では、癌細胞は固形腫瘍細胞である。ある特定の実施形態では、癌細胞は、結腸直腸癌細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞は、肺癌細胞である。いくつかの実施形態では、アプタマーは、インビトロで癌細胞の細胞死を誘導する。ある特定の実施形態では、アプタマーは、インビボで(例えば、ヒトおよび/または動物モデルで)癌細胞の細胞死を誘導する。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、1またはそれを超える化学修飾を含む。例示的な修飾を表1に示す。
【0037】
【0038】
ある特定の実施形態では、アプタマーは末端修飾を含む。いくつかの実施形態では、アプタマーは、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、0.5~40kDa)で化学修飾されている(例えば、アプタマーの5’末端に結合する)。いくつかの実施形態では、アプタマーは5’末端キャップ(例えば、反転チミジン、ビオチン、アルブミン、キチン、キトサン、セルロース、末端アミン、アルキン、アジド、チオール、マレイミド、NHSである)を含む。ある特定の実施形態では、アプタマーは3’末端キャップ(例えば、反転チミジン、ビオチン、アルブミン、キチン、キトサン、セルロース、末端アミン、アルキン、アジド、チオール、マレイミド、NHSである)を含む。
【0039】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、1またはそれを超える(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、または54個の)修飾糖を含む。いくつかの実施形態では、アプタマーは、1またはそれを超える2’糖置換(例えば、2’-フルオロ、2’-アミノ、または2’-O-メチル置換)を含む。ある特定の実施形態では、アプタマーは、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(UNA)および/または2’デオキシ(deozy)-2’フルオロ-D-アラビノ核酸(2’-FANA)糖をその骨格に含む。
【0040】
ある特定の実施形態では、アプタマーは、1またはそれを超える(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30 31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、または54個の)メチルホスホネートヌクレオチド間結合および/またはホスホロチオエート(PS)ヌクレオチド間結合を(例えば、その5’末端に)含む。ある特定の実施形態では、アプタマーは、1またはそれを超える(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、または54個の)トリアゾールヌクレオチド間結合を含む。ある特定の実施形態では、アプタマーは、コレステロールまたはジアルキル脂質で修飾されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、1またはそれを超える修飾された塩基(例えば、BzdU、ナフチル、トリプタミノ、イソブチル、5-メチルシトシン、アルキン(ジベンゾシクロオクチン)、アジド、マレイミド)を含む。
【0042】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、DNAアプタマー(例えば、D-DNAアプタマーまたはエナンチオマーL-DNAアプタマー)である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、RNAアプタマー(例えば、D-RNAアプタマーまたはエナンチオマーL-RNAアプタマー)である。いくつかの実施形態では、アプタマーは、DNAとRNAの混合物を含む。
【0043】
アプタマーは、当業者に周知の方法によって合成することができる。例えば、アプタマーは、例えば固体支持体上で化学的に合成することができる。固相合成は、ホスホラミダイト化学を使用することができる。手短に言えば、合成サイクルは、有機酸によるUV制御処置によって、末端の支持体結合ヌクレオシドのヒドロキシル官能基から酸に不安定な5’-ジメトキシトリチル保護基(DMT、「トリチル」)を除去することから始まる。次いで、露出した高反応性ヒドロキシル基は、カップリング段階で次の保護されたヌクレオシドホスホラミダイト構成要素と反応するために利用可能であり、亜リン酸トリエステル骨格を形成する。次に、酸に不安定な亜リン酸トリエステル骨格が酸化されて安定な5価のリン酸トリエステル(trimester)になる。特定の骨格位置でホスホロチオエート修飾が望まれる場合は、酸に不安定な亜リン酸トリエステル(trimester)骨格を酸化プロセスの代わりにこの段階で硫化して、P=OではなくP=S結合を生成する。続いて、次のカップリング段階中にこれらの部位をブロックし、内部ミスマッチ配列を回避するために、すべての未反応の5’-ヒドロキシル基はアセチル化される(「キャップされる」)。キャッピング段階の後、DMT保護基の除去および所望の配列に従った次の塩基の連続的なカップリングによってサイクルを再び開始する。最後に、オリゴヌクレオチドを固体支持体から切断し、全ての保護基を骨格および塩基から除去する。
【0044】
アプタマーコンジュゲート
特定の態様では、癌細胞結合部分に連結された本明細書に提供されるアプタマーを含むアプタマーコンジュゲートが本明細書に提供される。癌細胞結合部分は、例えば、アプタマー、小分子、ポリペプチド、核酸、タンパク質または抗体であってよい。いくつかの実施形態では、アプタマーは、癌細胞結合部分に共有結合している。いくつかの実施形態では、アプタマーは、癌細胞結合部分に非共有結合している。いくつかの実施形態では、アプタマーは、癌細胞結合部分に直接連結されている。いくつかの実施形態では、アプタマーは、リンカーを介して癌細胞結合部分に連結されている。
【0045】
いくつかの実施形態では、癌細胞結合部分は、癌細胞上に発現した抗原に結合する。いくつかの実施形態では、癌細胞結合部分は、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺膜抗原(PSMA)、癌抗原15-3(CA-15-3)、癌胎児抗原(CEA)、癌抗原125(CA-125)、α-フェトプロテイン(AFP)、NY-ESO-1、MAGEA-A3、WT1、hTERT、チロシナーゼ、gp100、MART-1、メランA、Bカテニン、CDC27、HSP70-2-m、HLA-A2-R17OJ、AFP、EBV-EBNA、HPV16-E7、MUC-1、HER-2/neu、マンマグロビンAまたはMHC-TAAペプチド複合体から選択される癌抗原に結合する。
【0046】
いくつかの実施形態では、癌細胞結合部分は、癌細胞(例えば、ヒト癌細胞)と接触すると、細胞死(例えば、アポトーシス)を誘導する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、患者由来癌細胞である。一部の実施形態では、癌細胞は固形腫瘍細胞である。ある特定の実施形態では、癌細胞は、結腸直腸癌細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞は、乳癌細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞結合部分は、インビトロで癌細胞に接触すると細胞死を誘導する。ある特定の実施形態では、癌細胞結合部分は、インビボで(例えば、ヒトおよび/または動物モデルで)癌細胞と接触させると細胞死を誘導する。
【0047】
二重特異性個別化アプタマー
ある特定の態様では、(a)癌細胞に発現した抗原に特異的に結合する癌細胞結合鎖;(b)CpGモチーフ;および(c)CD3結合鎖(例えば、本明細書に開示のCD3結合アプタマー)含み、癌細胞結合鎖がCpGモチーフによってCD3結合鎖に連結されている二重特異性個別化アプタマーが本明細書で提供される。
【0048】
いくつかの実施形態では、癌細胞結合鎖は、癌細胞(例えば、ヒト癌細胞)と接触すると、癌細胞の細胞死(例えば、アポトーシス)を誘導することができる。いくつかの実施形態では、癌細胞は、患者由来癌細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞は、固形腫瘍細胞(例えば、乳癌細胞)である。ある特定の実施形態では、癌細胞は、癌細胞(例えば、結腸直腸癌細胞)である。いくつかの実施形態では、アプタマーは、インビトロで癌細胞に接触すると細胞死を誘導する。ある特定の実施形態では、アプタマーは、インビボで(例えば、ヒトおよび/または動物モデルで)癌細胞と接触すると細胞死を誘導する。いくつかの実施形態では、癌細胞結合鎖は、前立腺膜抗原(PSMA)、癌抗原15-3(CA-15-3)、癌胎児抗原(CEA)、癌抗原125(CA-125)、チロシナーゼ、gp100、MART-l/メランA、HSP70-2-m、HLA-A2-R17OJ、HPV16-E7、MUC-1、HER-2/neu、マンマグロビンAまたはMHC-TAAペプチド複合体から選択される癌抗原に結合する。
【0049】
ある特定の実施形態では、癌細胞結合鎖は、配列番号64~87のいずれか1つと少なくとも60%同一(例えば、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも92%同一、少なくとも94%同一、少なくとも96%同一、少なくとも98%同一)である核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、癌細胞結合鎖は、配列番号64~87のいずれか1つの核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、癌細胞結合鎖は、配列番号64~83のいずれか1つの少なくとも30(例えば、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、少なくとも64、少なくとも65、少なくとも66、少なくとも67、少なくとも68、少なくとも69)の連続したヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、癌細胞結合鎖は、配列番号64~87から本質的になる配列を有する。ある特定の実施形態では、癌細胞結合鎖は、配列番号64~87からなる配列を有する。
【0050】
【0051】
2またはそれを超える核酸の文脈における「同一」または「同一性パーセント」という用語は、以下に記載されるデフォルトパラメータを用いてBLASTもしくはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用して、または手動アライメントおよび目視検査によって測定した場合に(例えば、NCBIウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/などを参照)、同じであるか、または指定された百分率の同じヌクレオチド(すなわち、比較ウィンドウまたは指定された領域で最大の一致を得るように比較し整列させた場合、指定された領域で約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも高い同一性)を有する2またはそれを超える配列または部分配列を指す。
【0052】
ある特定の実施形態では、癌細胞結合鎖は、120ヌクレオチド長以下(例えば、115ヌクレオチド長以下、110ヌクレオチド長以下、105ヌクレオチド長以下、100ヌクレオチド長以下、95ヌクレオチド長以下、90ヌクレオチド長以下、85ヌクレオチド長以下、80ヌクレオチド長以下、75ヌクレオチド長以下、70ヌクレオチド長以下、69ヌクレオチド長以下、68ヌクレオチド長以下、67ヌクレオチド長以下、66ヌクレオチド長以下、65ヌクレオチド長以下、64ヌクレオチド長以下、または63ヌクレオチド長以下)である。ある特定の実施形態では、癌細胞結合鎖は約63ヌクレオチド長である。
【0053】
いくつかの実施形態では、CD3結合鎖は、配列番号1~21のいずれか1つと少なくとも60%同一(例えば、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも92%同一、少なくとも94%同一、少なくとも96%同一、少なくとも98%同一)である核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合鎖は、配列番号1~21のいずれか1つの核酸配列を含む。
【0054】
ある特定の実施形態では、CD3結合鎖は、配列番号1~21のいずれか1つの少なくとも20(例えば、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53)の連続したヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるCD3結合鎖は、配列番号1~21から本質的になる配列を有する。ある特定の実施形態では、本明細書に提供されるCD3結合鎖は、配列番号1~21からなる配列を有する。ある特定の実施形態では、CD3結合は、120ヌクレオチド長以下(例えば、115ヌクレオチド長以下、110ヌクレオチド長以下、105ヌクレオチド長以下、100ヌクレオチド長以下、95ヌクレオチド長以下、90ヌクレオチド長以下、85ヌクレオチド長以下、80ヌクレオチド長以下、75ヌクレオチド長以下、74ヌクレオチド長以下、または73ヌクレオチド長以下)である。ある特定の実施形態では、CD3結合鎖は、約73ヌクレオチド長である。
【0055】
癌細胞結合鎖とCD3結合鎖は、癌細胞結合鎖の5’配列とCD3結合鎖の5’配列のハイブリダイゼーションによって互いに連結することができる。ある特定の実施形態では、癌細胞結合鎖の5’配列は、CD3結合鎖の5’配列にハイブリダイズして、CpGリッチモチーフ、TLR9アゴニスト配列を形成する。癌細胞結合鎖およびCD3結合鎖は、二本鎖配列の2つの末端(例えば、5’末端)のそれぞれに直接ライゲーションすることによって互いに連結することができる。ある特定の実施形態では、二本鎖配列は、TLR9アゴニスト配列であるCpGモチーフである。
【0056】
いくつかの実施形態では、TLR9アゴニスト配列は、少なくとも1つの(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の)CpGモチーフヌクレオチドを含む二本鎖領域を含む。いくつかの実施形態では、CpGモチーフは、TLR9媒介性抗原提示細胞(APC)刺激および/または腫瘍抗原の取込み増加を誘導する。いくつかの実施形態において、TLR9アゴニスト配列は、抗腫瘍応答を誘導する。いくつかの実施形態において、TLR9アゴニスト配列は、サイトカイン産生を誘導する。
【0057】
いくつかの実施形態では、CPGモチーフ配列は、配列番号88~91のいずれか1つと少なくとも60%同一(例えば、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも92%同一、少なくとも94%同一、少なくとも96%同一、少なくとも98%同一)である配列を含む二本鎖核酸配列である。いくつかの実施形態では、CPGモチーフ配列は、配列番号88~91のいずれか1つの配列を含む二本鎖核酸配列である。
【0058】
ある特定の実施形態では、CpGモチーフ配列は、配列番号88~91のいずれか1つの少なくとも12(例えば、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22)の連続したヌクレオチドを含む二本鎖核酸配列である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるCpGモチーフ配列は、配列番号88~91から本質的になる配列を有する。ある特定の実施形態では、本明細書に提供されるCpGモチーフ配列は、配列番号88~91からなる配列を有する。
【0059】
ある特定の実施形態では、CpGモチーフ配列は、35ヌクレオチド長以下(例えば、34ヌクレオチド長以下、33ヌクレオチド長以下、32ヌクレオチド長以下、31ヌクレオチド長以下、30ヌクレオチド長以下、29ヌクレオチド長以下、28ヌクレオチド長以下、27ヌクレオチド長以下、26ヌクレオチド長以下、25ヌクレオチド長以下、24ヌクレオチド長以下、23ヌクレオチド長以下、または22ヌクレオチド長以下)である。
【0060】
本明細書に提供される二重特異性個別化アプタマーは、本明細書に記載の癌細胞結合鎖とCD3結合鎖の任意の組み合わせを含み得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される二重特異性個別化アプタマーは、1またはそれを超える化学修飾を含む。例示的な修飾を表3に示す。
【0062】
【0063】
ある特定の実施形態では、二重特異性個別化アプタマーは末端修飾を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性個別化アプタマーは、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、0.5~40kDa)で化学修飾されている(例えば、アプタマーの5’末端に結合する)。いくつかの実施形態では、二重特異性個別化アプタマーは5’末端キャップ(例えば、反転チミジン、ビオチン、アルブミン、キチン、キトサン、セルロース、末端アミン、アルキン、アジド、チオール、マレイミド、NHSである)を含む。ある特定の実施形態では、二重特異性個別化アプタマーは3’末端キャップ(例えば、反転チミジン、ビオチン、アルブミン、キチン、キトサン、セルロース、末端アミン、アルキン、アジド、チオール、マレイミド、NHSである)を含む。
【0064】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される二重特異性個別化アプタマーは、1またはそれを超える(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、または54個の)修飾糖を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性個別化アプタマーは、1またはそれを超える2’糖置換(例えば、2’-フルオロ、2’-アミノ、または2’-O-メチル置換)を含む。ある特定の実施形態では、二重特異性個別化アプタマーは、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(UNA)および/または2’デオキシ(deozy)-2’フルオロ-D-アラビノ核酸(2’-FANA)糖をその骨格に含む。
【0065】
ある特定の実施形態では、二重特異性個別化アプタマーは、1またはそれを超える(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、または54個の)メチルホスホネートヌクレオチド間結合および/またはホスホロチオエート(PS)ヌクレオチド間結合を含む。
【0066】
特定の実施形態では、二重特異性個別化アプタマーは、二本鎖領域内にPS修飾を含み得る(例えば、CpGモチーフ配列)。例えば、二重特異性個別化アプタマーの二本鎖領域(例えば、CpGモチーフ配列)は、一方または両方の鎖に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23個のホスホロチオエート(PS)ヌクレオチド間結合を含み得る。いくつかの実施形態では、二重特異性個別化アプタマーの二本鎖領域(例えば、CpGモチーフ配列)は、部分的なPS修飾を含み得る。特定の実施形態では、二本鎖CpGモチーフ配列の5’末端から5ヌクレオチドが修飾される。他の実施形態では、二本鎖CpGモチーフ配列の5’および3’末端から5ヌクレオチドが修飾される。ある特定の実施形態では、二本鎖CpGモチーフ配列は、完全なPS修飾を含む。
【0067】
ある特定の実施形態では、アプタマーは、1またはそれを超える(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30 31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、または54個の)トリアゾールヌクレオチド間結合を含む。ある特定の実施形態では、アプタマーは、コレステロールまたはジアルキル脂質で(例えば、それらの5’末端で)修飾されている。
【0068】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、1またはそれを超える修飾された塩基(例えば、BzdU、ナフチル、トリプタミノ、イソブチル、5-メチルシトシン、アルキン(ジベンゾシクロオクチン)、アジド、マレイミド)を含む。
【0069】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、DNAアプタマー(例えば、D-DNAアプタマーまたはエナンチオマーL-DNAアプタマー)である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアプタマーは、RNAアプタマー(例えば、D-RNAアプタマーまたはエナンチオマーL-RNAアプタマー)である。いくつかの実施形態では、アプタマーは、DNAとRNAの混合物を含む。
【0070】
薬学的組成物
ある特定の態様では、本明細書に提供されるアプタマー(例えば、治療有効量のアプタマー)を含む医薬組成物が本明細書で提供される。ある特定の態様では、本明細書に提供されるアプタマーコンジュゲート(例えば、治療有効量のアプタマーコンジュゲート)を含む医薬組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、薬学的に許容され得る担体をさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、非経口投与(例えば、皮下投与)用に製剤化されている。投与は、腫瘍内注射または皮下注射または膀胱内注入であってよい。
【0071】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、癌の処置に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍である。ある特定の実施形態では、癌は、癌腫(例えば、結腸直腸癌)である。一部の実施形態では、癌は肺癌である。
【0072】
「薬学的に許容され得る担体」とは、対象への活性薬剤の投与および対象による吸収を補助し、患者に重大な有害な毒性作用を引き起こすことなく本明細書に記載の組成物に含めることができる物質を指す。薬学的に許容され得る賦形剤の非限定的な例としては、水、NaCl、生理食塩水、リン酸緩衝溶液、MgCl2、KCl、CaCl2、乳酸リンゲル液、通常のスクロース、通常のグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング、甘味料、香料、塩溶液(リンゲル液など)、アルコール、油、ゼラチン、ラクトース、アミラーゼまたはデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、脂質、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、および着色料などが挙げられる。そのような調製物は、滅菌し、必要に応じて、本明細書に記載の組成物と有害に反応しない潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝剤、着色剤、および/または芳香物質などの補助剤と混合することができる。当業者は、他の医薬賦形剤が有用であることを認識するであろう。
【0073】
治療方法
いくつかの態様では、本明細書に提供される1またはそれを超えるアプタマーを含む医薬組成物の投与を含む、癌を処置する方法が本明細書で提供される。
【0074】
いくつかの態様では、本明細書に提供される1またはそれを超えるアプタマーコンジュゲートを含む医薬組成物の投与を含む、癌を処置する方法が本明細書で提供される。
【0075】
いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍である。ある特定の実施形態では、癌は、結腸直腸癌である。一部の実施形態では、癌は肺癌である。したがって、特定の態様では、本明細書に記載のアプタマー、アプタマーコンジュゲート、および/または医薬組成物を対象に送達する方法が本明細書で提供される。
【0076】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物、アプタマーおよびアプタマーコンジュゲートは、例えば、放射線治療および腫瘍の外科的切除などの任意の他の従来の抗癌処置と併せて投与することができる。これらの処置は、必要に応じておよび/または示されるように適用されてよく、本明細書に記載の医薬組成物、アプタマー、アプタマーコンジュゲート、剤形、およびキットの投与前、投与と同時、または投与後に行うことができる。
【0077】
ある特定の実施形態では、本方法は、アプタマーまたはアプタマーコンジュゲートの複数回用量の投与を含む。別々の投与には、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、20、21、22、23、24、または25回の投与を含む任意の数の2回またはそれを超える投与(例えば、用量)が含まれ得る。いくつかの実施形態では、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、または15回の投与が含まれる。当業者であれば、治療方法をモニタリングするための当技術分野で公知の方法および本明細書に提供される他のモニタリング方法に従って、実施すべき投与回数、または1またはそれを超える追加の投与を実施することの望ましさを容易に決定することができる。したがって、本明細書に提供される方法は、本明細書に記載のアプタマー、アプタマーコンジュゲートおよび/または医薬組成物の1またはそれを超える投与を対象に提供する方法を含み、投与回数は、対象をモニタリングし、モニタリングの結果に基づいて、1またはそれを超える追加投与を提供するかどうかを決定することによって決定することができる。1またはそれを超える追加投与を提供するかどうかの決定は、限定されるものではないが、T細胞の刺激、T細胞の細胞傷害活性、腫瘍増殖の指示または腫瘍増殖の抑制、新たな転移の出現または転移の抑制、対象の抗腫瘍抗体価、対象の全体的な健康状態および/または対象の体重を含む、多様なモニタリング結果に基づいて行うことができる。
【0078】
投与と投与の間の期間は、様々な期間のいずれであってもよい。いくつかの態様では、投与は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30日、あるいは1、2、3、または4週間の間隔を空けて行うことができる。投与と投与の間の期間は、投与回数、対象が免疫応答を開始するまでの期間および/または対象がアプタマーまたはアプタマーコンジュゲートを正常組織から除去するための時間に関連して記載されるように、モニタリング段階をはじめとする多様な因子のいずれかの関数であり得る。一例では、この期間は、対象が免疫応答を開始するまでの期間の関数であり得る;例えば、この期間は、対象が免疫応答を開始するまでの期間より長くてもよく、例えば約1週間超、約10日超、約2週間超、または約1か月超であってもよく;別の例では、この期間は、対象が免疫応答を開始するまでの期間よりも短くてよく、例えば約1週間未満、約10日未満、約2週間未満、または約1か月未満であってよい。別の例では、この期間は、対象が正常組織からアプタマーまたはアプタマーコンジュゲートを除去するための期間の関数であり得る;例えば、この期間は、対象がアプタマーまたはアプタマーコンジュゲートを正常組織から除去するための期間より長くてもよく、例えば、約1時間超、約1日超、約2日超、約3日超、約5日超、または約1週間超であってよい。別の例では、この期間は、対象が正常組織からアプタマーまたはアプタマーコンジュゲートを除去するための期間よりも短くてよく、例えば約1時間未満、約1日未満、約2日未満、約3日未満、約5日未満、または約1週間未満であってよい。
【0079】
本明細書に記載のアプタマーまたはアプタマーコンジュゲートの投与用量は、特定の患者、組成物、および投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効なアプタマーまたはアプタマーコンジュゲートの量であり、患者に対する毒性は最小であるか、または実現可能な最大用量である。有効投与量レベルは、本明細書に記載の方法を使用して同定することができ、投与される特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、用いる特定の化合物の排出速度、処置の期間、用いる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、症状、全体的な健康状態および以前の病歴、ならびに医学分野で周知の同様の因子をはじめとする様々な薬物動態的および薬力学的因子に依存する。一般に、癌治療薬の有効量は、治療効果をもたらすのに有効な最小用量である治療薬の量である。そのような有効量は、一般に、上記の因子に依存する。
【0080】
投与経路の例としては、経口投与、直腸投与、局所投与、吸入(経鼻)または注射が挙げられる。注射による投与には、静脈内(IV)、腫瘍内(IT)、病巣内、腫瘍周囲、筋肉内(IM)および皮下(SC)投与が含まれる。本明細書に記載の組成物は、限定されるものではないが、経口、非経口、経腸、静脈内、腫瘍内、腹腔内、局所、経皮(例えば、任意の標準的なパッチを使用)、皮内、眼、経鼻(鼻腔内)、局所、非経口、例えばエアロゾル、吸入、皮下、筋肉内、頬側、舌下、(経)直腸、膣、動脈内、および髄腔内、経粘膜(例えば、舌下、舌、(経)頬、(経)尿道、膣(例えば、経膣および膣周囲)、埋め込み、膀胱内、肺内、十二指腸内、胃内、および気管支内を含む任意の有効な経路によって任意の形態で投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアプタマーまたはアプタマーコンジュゲートは、経口に、直腸に、局所に、膀胱内に、排出リンパ節内またはそれの近くの注射により、静脈内に、吸入もしくはエアロゾルにより、または皮下に投与される。いくつかの態様において、投与は非経口投与(例えば、皮下投与)である。投与は、腫瘍内注射または腫瘍周囲注射であり得る。
【0081】
投与計画は、様々な方法および量のいずれであってもよく、公知の臨床因子に従って当業者によって決定されてよい。医学分野で知られているように、1人の患者に対する投与量は、対象の種、サイズ、体表面積、年齢、性別、免疫能、腫瘍の大きさ、一般的な健康状態および特定のバイオマーカー、投与される特定の微生物、投与期間および投与経路、疾患の種類および病期(例えば腫瘍サイズ)、ならびに同時に投与される薬物などの他の化合物をはじめとする多くの因子に依存し得る。
【0082】
本明細書に記載の処置方法は、原発性腫瘍、続発性腫瘍または転移の処置、ならびに再発性腫瘍または癌の処置に適し得る。本明細書に記載の医薬組成物の用量は、剤形、投与経路、標的疾患の程度または病期等に応じて適宜設定または調整することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、対象に投与される用量は、癌を予防する、その発症を遅延させる、またはその進行を遅らせるもしくは停止させる、または癌の再発を予防する、腫瘍量を減少させる、または対象の無病生存期間、腫瘍増殖停止時間もしくは全生存期間に寄与するのに十分な量である。当業者は、投与量が、用いられる特定の化合物の強度、ならびに対象の年齢、種、症状および体重をはじめとする様々な因子に依存することを認識するであろう。また、用量のサイズも、投与の経路、タイミングおよび頻度、ならびに特定の化合物の投与および所望の生理学的効果に付随し得る有害な副作用の存在、性質および程度によって決定される。
【0084】
適切な用量および投与計画は、当業者に公知の従来の範囲設定技術によって決定することができる。一般に、処置は、化合物の最適用量よりも少ない少量で開始される。その後、その状況下で最適な効果に達するまで、投与量を少しずつ増加させる。有効な投薬量および処置プロトコルは、例えば、実験動物において低用量で開始し、次いで、効果をモニタリングしながら投薬量を増加させ、同様に投与計画を体系的に変化させる、日常的かつ従来の手段によって決定することができる。動物実験は、体重1キログラムあたりの生理活性剤の最大耐容量(「MTD」)を決定するために一般的に使用されている。当業者は、ヒトを含む他の種において、毒性を回避しながら有効性について用量を定期的に外挿する。
【0085】
上記に従って、治療用途における、本明細書で提供されるアプタマーまたはアプタマーコンジュゲートの投与量は、選択された投薬量に影響を及ぼす他の因子の中でも、特定のアプタマーまたはアプタマーコンジュゲート、レシピエント患者の年齢、体重、および臨床症状、ならびに治療を投与する臨床医または開業医の経験および判断に応じて異なることがある。一般に、用量は、腫瘍の成長を遅らせ、好ましくは後退させ、最も好ましくは癌の完全な退縮を引き起こすのに十分でなければならない。
【0086】
本明細書に記載の方法によって処置され得る癌の例としては、限定されないが、血液悪性腫瘍、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性顆粒球白血病、慢性顆粒球白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血病性白血病、白血球白血病(leukocythemic leukemia)、好塩基球性白血病、芽球性白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚白血病、胚性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、リーダー細胞白血病、シリング白血病、幹細胞性白血病、亜白血性白血病、未分化細胞白血病、ヘアリーセル白血病、血液芽細胞性白血病、血球芽細胞性白血病、組織球性白血病、肝細胞性白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、リンパ原性白血病、リンパ様白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、肥満細胞性白血病、巨核球性白血病、微小骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄球性白血病、骨髄顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、Naegeli白血病、形質細胞白血病、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、腺房細胞癌、腺房癌、腺嚢胞癌、腺様嚢胞癌、腺腫癌、副腎皮質癌、肺胞癌、肺胞細胞癌、基底細胞癌、基底細胞癌(carcinoma basocellulare)、類基底細胞癌、基底扁平細胞癌、気管支肺胞上皮癌、細気管支癌、気管支原性肺癌、大脳様癌、胆管細胞癌、絨毛癌、コロイド癌、面皰癌、体癌、篩状癌、鎧状癌、皮膚癌、円柱癌、円柱細胞癌、腺管癌、デュラム癌(carcinoma durum)、胚性癌、脳様癌、類表皮癌(epiennoid carcinoma)、腺様上皮癌(carcinoma epitheliale adenoides)、外方増殖癌、潰瘍癌、線維性癌、膠様癌(gelatiniform carcinoma)、膠様癌(gelatinous carcinoma)、巨細胞癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、ソラノイド癌、球状細胞癌、紡錘細胞癌、海綿体癌(carcinoma spongiosum)、扁平上皮癌、有棘細胞癌、ストリング癌(string carcinoma)、血管拡張性癌(carcinoma telangiectaticum)、毛細血管拡張性癌(carcinoma telangiectodes)、移行上皮癌、結節癌(carcinoma tuberosum)、結節癌(tuberous carcinoma)、疣状癌、絨毛癌(carcinoma villosum)、巨細胞癌(carcinoma gigantocelle)、腺癌、顆粒膜細胞癌、毛母癌、血様癌、肝細胞癌、Hurthle細胞癌、ヒアリン癌、副腎様癌(hypemephroid carcinoma)、小児胎児性癌(infantile embryonal carcinoma)、上皮内癌、表皮内癌、上皮内癌、Krompecher癌、Kulchitzky細胞癌、大細胞癌、水晶体癌(lenticular carcinoma、carcinoma lenticulare)、脂肪腫性癌、リンパ上皮癌、髄質癌、髄様癌、黒色癌、軟性癌、粘液性癌、ムシパルム癌(carcinoma muciparum)、粘液細胞癌、粘表皮癌、粘膜癌(carcinoma mucosum、mucous carcinoma)、粘液腫癌、上咽頭癌、燕麦細胞癌、骨化性癌、類骨癌、乳頭癌、門脈周囲癌、前浸潤癌、有棘細胞癌、髄質様癌、腎臓の腎細胞癌、予備細胞癌、肉腫様癌、シュナイダー癌、スキルス癌、陰嚢癌、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、子宮内膜肉腫、間質肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、Abernethy肉腫、脂肪肉腫(adipose sarcoma、liposarcoma)、胞状軟部肉腫、エナメル芽細胞肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫肉腫、絨毛膜肉腫(chorio carcinoma)、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、顆粒球肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血肉腫、B細胞の免疫芽細胞肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽細胞肉腫、Jense肉腫、カポジ肉腫、クップファー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉腫肉腫、傍骨性肉腫、網状赤血球肉腫、横紋筋肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫、血管拡張性骨肉腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、結腸直腸癌、横紋筋肉腫、血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺腫瘍、原発性脳腫瘍、胃癌、結腸癌、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド、前悪性皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽細胞腫、食道癌、泌尿生殖器癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、Harding-Passey黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子黒色腫、悪性黒色腫、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、良性若年性黒色腫、Cloudman黒色腫、S91黒色腫、結節性メラノーマ、爪甲下黒色腫、表在拡大型黒色腫、形質細胞腫、結腸直腸癌、直腸癌が挙げられる。
【0087】
いくつかの態様において、本明細書で提供される方法および組成物は、肉腫の処置に関する。「肉腫」という用語は、一般に、胚性結合組織のような物質で構成されており、線維性、不均一または均一な物質に埋め込まれた密集した細胞で一般に構成される腫瘍を指す。
【0088】
肉腫には、限定されるものではないが、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、子宮内膜肉腫、間質肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、Abernethy肉腫、脂肪肉腫(adipose sarcoma、liposarcoma)、胞状軟部肉腫、エナメル芽細胞肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫肉腫、絨毛膜肉腫(chorio carcinoma)、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、顆粒球肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血肉腫、B細胞の免疫芽細胞肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽細胞肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クップファー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉腫肉腫、傍骨性肉腫、網状肉腫、ラウス肉腫、漿膜肉腫、滑膜肉腫、および血管拡張性骨肉腫が含まれる。
【0089】
本明細書に記載の方法および組成物を使用して処置され得るさらなる例示的な新生物には、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺腫瘍、原発性脳腫瘍、胃癌、結腸癌、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド、前悪性皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽細胞腫、食道癌、非尿生殖器癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、および副腎皮質癌が含まれる。
【0090】
いくつかの実施形態では、処置される癌は黒色腫である。用語「黒色腫」は、皮膚および他の器官のメラノサイト系から生じる腫瘍を意味すると解釈される。黒色腫の非限定的な例は、ハーディング-パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子黒色腫、悪性黒色腫、先端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、結節性黒色腫、乳腺下黒色腫、および表在拡大黒色腫である。
【0091】
本明細書に記載の方法および組成物を使用して処置され得る腫瘍の特定のカテゴリーには、リンパ増殖性障害、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、骨癌、肝臓癌、胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、甲状腺癌、頭頸部癌、中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、皮膚癌、腎臓癌、ならびに上記のすべての転移が含まれる。特定の種類の腫瘍には、肝細胞癌、肝細胞腫、肝芽腫、横紋筋肉腫、食道癌、甲状腺癌、神経節芽細胞腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、浸潤性乳管癌、乳頭状腺癌、黒色腫、肺扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)、基底細胞癌、腺癌(高分化型、中分化型、低分化型または未分化型)、細気管支肺胞上皮癌、腎細胞癌、グラヴィッツ腫瘍、副腎様腺癌(hypernephroid adenocarcinoma)、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、精巣腫瘍、小細胞、非小細胞および大細胞肺癌を含む肺癌、膀胱癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、結腸癌、直腸癌、造血性悪性腫瘍(急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、肥満細胞白血病、多発性骨髄腫、骨髄性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫を含むすべての種類の白血病およびリンパ腫を含む)が含まれる。
【0092】
特定の実施形態で処置される癌には、前癌性病変、例えば光線性角化症(日光角化症)、ほくろ(異形成母斑)、光線性口唇炎(農夫の唇)、皮角、バレット食道、萎縮性胃炎、先天性角化異常症、鉄欠乏性嚥下障害、扁平苔癬、口腔粘膜下線維症、光線性(日光)弾力線維症および子宮頸部異形成症も含まれる。
【0093】
いくつかの実施形態で処置される癌には、例えば、内胚葉、外胚葉または間葉起源の非癌性腫瘍または良性腫瘍が含まれ、それには、限定されるものではないが、胆管腫、結腸ポリープ、腺腫、乳頭腫、嚢胞腺腫、肝細胞腺腫、胞状奇胎、腎尿細管腺腫、扁平上皮乳頭腫、胃ポリープ、血管腫、骨腫、軟骨腫、脂肪腫、線維腫、リンパ管腫、平滑筋腫、横紋筋腫、星状細胞腫、母斑、髄膜腫、および神経節神経腫が含まれる。
【0094】
ある特定の実施形態では、癌は、固形腫瘍(例えば、乳癌、頭頸部扁平上皮癌、腺様嚢胞癌、膀胱癌、膵臓癌、肝細胞癌、黒色腫、メルケル細胞癌、または結腸直腸癌)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は腫瘍内投与に利用可能である。ある特定の実施形態において、癌は、肉腫(例えば、軟部組織肉腫)である。特定の実施形態では、癌は血液癌(例えば、リンパ腫)である。
【0095】
免疫障害の処置
特定の実施形態では、本明細書で提供されるアプタマーは、T細胞活性化を遮断することによって免疫応答を阻害することができる。いくつかの態様では、本明細書で提供される1またはそれを超えるアプタマーを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、自己免疫または炎症性疾患を処置する方法および/または移植拒絶を阻害する方法が本明細書で提供される。
【0096】
本明細書に記載の方法は、処置を必要とする対象を処置するために使用することができる。本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」には、炎症性疾患、免疫障害を有する、かつ/または臓器および/もしくは組織の移植を受けたことのある対象、ならびにそのような疾患もしくは障害を獲得する可能性またはそのような移植を受ける可能性が高い対象が含まれる。
【0097】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、自己免疫疾患、例えば慢性炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、乾癬、マッカルウェルズ症候群、関節リウマチ、多発性硬化症、または橋本病など;アレルギー性疾患、例えば食物アレルギー、花粉症、または喘息など;感染症、例えばClostridium difficileによる感染;TNF媒介性炎症性疾患などの炎症性疾患(例えば、回腸嚢炎などの胃腸管の炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症などの心血管の炎症症状、または慢性閉塞性肺疾患などの炎症性肺疾患)に関連する炎症を予防または処置する(これらの有害事象を部分的にまたは完全に軽減する)ための医薬組成物として;臓器移植または組織拒絶が起こり得る他の状況において拒絶を抑制するためのための医薬組成物として;免疫機能を改善するためのサプリメント、食品、または飲料として;あるいは、免疫細胞の増殖もしくは機能を抑制するための試薬として使用することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、炎症の処置に有用である。ある特定の実施形態では、身体のあらゆる組織および器官の炎症には、筋骨格系の炎症、血管の炎症、神経の炎症、消化器系の炎症、眼球の炎症、生殖器系の炎症、および以下に論じるその他の炎症が含まれる。
【0099】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、筋骨格系の免疫障害に関連する炎症を予防または処置する(これらの有害事象を部分的にまたは完全に軽減する)ための医薬組成物として使用することができる。筋骨格系の免疫障害としては、限定されないが、手、手首、肘、肩、顎、脊椎、首、股関節、膝(knew)、足首、および足の関節を含む骨格関節に影響を及ぼす症状、ならびに腱などの筋肉と骨を繋ぐ組織に影響を及ぼす症状が含まれる。本明細書に記載の方法および組成物で処置することができるそのような免疫障害の例としては、限定されるものではないが、関節炎(例えば、変形性関節症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、急性および慢性感染性関節炎、痛風および偽痛風に関連する関節炎、および若年性特発性関節炎を含む)、腱炎、滑膜炎、腱滑膜炎、滑膜炎、滑液包炎、結合織炎(線維筋痛症)、上顆炎、筋炎および骨炎(例えば、パジェット病、恥骨骨炎、および嚢胞性線維性骨炎を含む)が挙げられる。
【0100】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、眼免疫障害に関連する炎症を予防または処置する(これらの有害事象を部分的にまたは完全に軽減する)ための医薬組成物として使用することができる。眼免疫障害とは、眼瞼を含む眼のあらゆる構造に影響を及ぼす免疫障害を指す。本明細書に記載の方法および組成物で処置することができる眼免疫障害の例としては、限定されるものではないが、眼瞼炎、眼瞼皮膚弛緩症、結膜炎、涙腺炎、角膜炎、乾性角結膜炎(ドライアイ)、強膜炎、睫毛乱生症、およびブドウ膜炎が挙げられる。
【0101】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、神経系免疫障害に関連する炎症を予防または処置する(これらの有害事象を部分的にまたは完全に軽減する)ための医薬組成物として使用することができる。本明細書に記載の方法および組成物で処置することができる神経系免疫障害の例としては、限定されるものではないが、脳炎、ギラン・バレー症候群、髄膜炎、神経性筋強直症、ナルコレプシー、多発性硬化症、脊髄炎および統合失調症が挙げられる。
【0102】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、血管系またはリンパ系に関連する炎症を予防または処置する(これらの有害事象を部分的にまたは完全に軽減する)ための医薬組成物として使用することができる。本明細書に記載の方法および組成物で処置することができる血管系またはリンパ系の炎症の例としては、限定されるものではないが、関節硬化症、関節炎、静脈炎、血管炎、およびリンパ管炎が挙げられる。
【0103】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、消化器系免疫障害に関連する炎症を予防または処置する(これらの有害事象を部分的にまたは完全に軽減する)ための医薬組成物として使用することができる。本明細書に記載の方法および組成物で処置することができる消化器系免疫障害の例としては、限定されるものではないが、胆管炎、胆嚢炎、小腸炎、小腸結腸炎、胃炎、胃腸炎、炎症性腸疾患、回腸炎、および直腸炎が挙げられる。炎症性腸疾患には、例えば、関連症状群の当該分野で認識されている特定の形態が含まれる。炎症性腸疾患にはいくつかの主要な形態が知られており、クローン病(局所腸疾患、例えば不活性型および活性型)および潰瘍性大腸炎(例えば、不活性型および活性型)がこれらの障害の中で最も一般的である。さらに、炎症性腸疾患は、過敏性腸症候群、顕微鏡的大腸炎、リンパ球性-形質細胞性腸炎、セリアック病、コラーゲン大腸炎、リンパ球性大腸炎および好酸球性腸炎を含む。他のあまり一般的でない形態のIBDとしては、分類不能大腸炎、偽膜性大腸炎(壊死性大腸炎)、虚血性炎症性腸疾患、ベーチェット病、サルコイドーシス、強皮症、IBD関連異形成、異形成に関連する腫瘤または病変、および原発性硬化性胆管炎が挙げられる。
【0104】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、生殖器系免疫障害に関連する炎症を予防または処置する(これらの有害事象を部分的にまたは完全に軽減する)ための医薬組成物として使用することができる。本明細書に記載の方法および組成物で処置することができる生殖系免疫障害の例としては、限定されるものではないが、子宮頸管炎、絨毛膜羊膜炎、子宮内膜炎、精巣上体炎、臍炎、卵巣炎、精巣炎、卵管炎、卵管卵巣膿瘍、尿道炎、膣炎、外陰炎および外陰痛が挙げられる。
【0105】
本明細書に記載の方法および医薬組成物は、自己免疫症状を処置するために使用することができる。そのような症状としては、限定されないが、急性汎発性脱毛症、ベーチェット病、シャーガス病、慢性疲労症候群、自律神経障害、脳脊髄炎、強直性脊椎炎、再生不良性貧血、化膿性汗腺炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、セリアック病、クローン病、1型糖尿病、2型糖尿病、巨細胞性動脈炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、川崎病、紅斑性狼瘡、顕微鏡的大腸炎、顕微鏡的多発性動脈炎、混合組織病、マッカルウェルズ症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎、天疱瘡、結節性多発動脈炎、多発筋痛、関節リウマチ、ライター症候群、シェーグレン症候群、側頭動脈炎、ウェジナー肉芽腫症、温自己免疫性溶血性貧血、間質性膀胱炎、ライム病、モルフェア、乾癬、サルコイドーシス、強皮症、潰瘍性大腸炎および白斑が挙げられる。
【0106】
本明細書に記載の方法および医薬組成物は、T細胞媒介性過敏症疾患を処置するために使用することができる。そのような症状には、限定されるものではないが、接触過敏症、接触皮膚炎(ツタウルシによるものを含む)、蕁麻疹、皮膚アレルギー、呼吸器アレルギー(花粉症、アレルギー性鼻炎、ハウスダストダニアレルギー)およびグルテン過敏性腸症(セリアック病)が含まれる。
【0107】
炎症性成分を有し、本方法および医薬組成物により処置され得る他の免疫障害としては、例えば、虫垂炎、皮膚炎、皮膚筋炎、心内膜炎、結合織炎、歯肉炎、舌炎、肝炎、化膿性汗腺炎、虹彩炎、喉頭炎、乳腺炎、心筋炎、腎炎、耳炎、膵炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、間質性肺炎、前立腺炎、腎盂腎炎、および口内炎、移植拒絶反応(腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓(例えば、膵島細胞)、骨髄、角膜、小腸、皮膚同種移植片(skin allografts,skin homografts)、および心臓弁移植片(xengrafts)などの臓器、血清病(sewrum sickness)、および移植片対宿主病を含む)、急性膵炎、慢性膵炎、急性呼吸窮迫症候群、セザリー症候群(Sexary’s syndrome)、先天性副腎過形成、非化膿性甲状腺炎、癌に関連する高カルシウム血症、天疱瘡、ヘルペス状水泡性皮膚炎、重度の多形性紅斑、剥離性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、季節性または通年性アレルギー性鼻炎、気管支喘息、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、薬剤過敏症反応、アレルギー性結膜炎、角膜炎、帯状疱疹眼炎、虹彩炎および虹彩毛様体炎(oiridocyclitis)、脈絡網膜炎、視神経炎、症候性サルコイドーシス、劇症または播種性肺結核化学療法、成人の特発性血小板減少性紫斑病、成人の続発性血小板減少症、後天性(自己免疫性)溶血性貧血、限局性腸炎、自己免疫性血管炎、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患、固形臓器移植拒絶、敗血症が挙げられる。好ましい処置には、移植拒絶、関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、1型糖尿病、喘息、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、および感染症状に伴う炎症(例えば、敗血症)の処置が含まれる。
【実施例】
【0108】
実施例1-実施例2~3の材料および方法
A.材料
a.ランダムライブラリー
ランダムライブラリー9.0(「Lib9.0」)はIDTから購入した。このライブラリーは、SELEX手順中にPCR増幅のためのプライマーとして作用する3’および5’の2つの20ntの特有の配列が隣接する、約10
15個の異なる40nt長のランダム配列の膨大なレパートリーを含む。凍結乾燥したライブラリーを超純水(UPW)中で再構成して、最終濃度を1mMとした。ランダムライブラリー配列は、5’-TCACTATCGGTCCAGACGTA-40N-TATTGCGCCGAGGTTCTTAC-3’(配列番号23)であり、ここでNは、等しく表されるT、A、C、およびGヌクレオチドの混合物(1:1:1:1の比)から選択されるランダムオリゴヌクレオチドを表す。
SELEXの事前準備
再構成後、ライブラリーは、HPLC ProSEC 300S カラム(Agilent)を使用してサイズ排除のQC検証を受けた。
b.ライブラリーのプライマーおよびキャップ
20ntのプライマーとキャップのセットをIDTから購入した(表4)。細胞とのインキュベーション中に、プライマー配列がランダムな40nt配列部位と相互作用する可能性を避けるために、キャップを使用してライブラリーのプライマー部位にハイブリダイズさせた。各SELEXラウンドにおける3’キャップと5’キャップの混合物(表4)を、3:1のキャップ対ライブラリー比で使用した。
フォワードプライマーは、蛍光アッセイで検出された配列増幅のために、5’部位をCy-5で標識したIDTから購入した。凍結乾燥したプライマーを超純水(UPW)中で再構成して、最終濃度を100μMとした。
【表4】
c.アプタマー・フォールディング緩衝液
リン酸緩衝生理食塩水(マグネシウムとカルシウムを除く)に1mM塩化マグネシウム(MgCl
2)を補充した。フォールディング緩衝液をPVDF膜フィルターユニット0.22μmで滅菌し、4℃で維持した。
d.PBMC
PBMCは、フィコール(Lymphoprep、Axis-Shield)密度勾配遠心分離を使用して、製造業者のプロトコルに従って単離した。
凍結されたカニクイザルのPBMC(NHP-PC001)は、Creative Biolabsより購入した。
e.ヒトPan T細胞のヒトPan T細胞およびB細胞の単離は、Pan T細胞単離キット(Miltenyi Biotec,130-096-535)を用いて、製造元のプロトコルに従って行った。ヒトPan B細胞の単離は、Pan B細胞単離キット(Miltenyi Biotec、130-101-638)を用いて、製造業者のプロトコルに従って行った。
f.抗体、タンパク質および酵素
αCD3ε-FITC(カタログ番号130-113-690)/APC(カタログ番号130-113-687)/VioBlue(カタログ番号130-114-519)/APC-Vio770(カタログ番号130-113-688)、αCD4-FITC(カタログ番号130-114-531)、αCD8-FITC(カタログ番号130-113-719)/PE-Vio770(カタログ番号130-113-159)および一致するアイソタイプ対照は、Miltenyi Biotecから購入した。αCD3εOKT3クローン(カタログ番号317302)は、BioLegendから購入した。
組換えヒトCD3イプシロンタンパク質(FcキメラHisタグ)(ab220590)、組換えカニクイザルCD3イプシロンタンパク質(FcキメラHisタグ)(ab220531)、および組換えマウスCD3イプシロンタンパク質(Hisタグ)(ab240841)は、Abeamから購入した。ヒトIgG1アイソタイプを陰性カウンター選択として使用した(InVivoMAb、BE0297)。
プロテインG磁気ビーズはThermoFisher(88847)から購入した。
非対称PCR(A-PCR)に使用されるHerculase II Fusion DNA Polymerase(600675)は、Agilentから購入し、リアルタイムPCR iTaq Universal SYBRGreen Supermix(1725124)は、BIO-RADから購入した。
g.細胞株
ジャーカット、DaudiおよびKasumi-1細胞株は、ATCCから購入した。ジャーカット細胞(ATCC TIB-152)、Daudi細胞(ATCC CCL-213)およびKasumi-1(ATCC CRL-2724)を、10%ウシ胎児血清(FCS)と、1%ペニシリンおよびストレプトマイシン(Pen/Strep)とを補充したRPMI-1640で増殖させた。すべての細胞を37℃および5%CO
2で培養した。
g.アプタマー
各アプタマーをフォールディング緩衝液で所望の濃度に希釈した。アプタマーを95℃で5分間加熱した後、氷上で10分間急冷し、室温(RT)で10分間インキュベートした。次いで、折り畳まれたアプタマーを培地懸濁細胞に添加した。
凍結乾燥したアプタマーは、RTの暗所で保管した後、100μMの濃度になるように1mM MgCl
2を補充したPBSで再構成し、暗所で-20℃で保存した。
【0109】
B.実験方法
a.結合SELEXプロトコル
結合SELEXは、プロテインG磁気ビーズに結合したCD3ε-Fcタンパク質(陽性選択)、プロテインG磁気ビーズに結合したIgG1タンパク質、またはビーズのみ(陰性選択、ラウンド3以降から開始)を使用して、11回の連続ラウンドで実施した。
【0110】
A.ビーズ-タンパク質複合体の調製
磁気プロテインGビーズをボルテックスし、PBSで1回洗浄した後、穏やかな振盪条件下で100ulのタンパク質とRTで10分間混合した。次に、ビーズを磁石で分離し、上清を廃棄し、2%BSAを含有する350ulのフォールディング緩衝液(1倍)でビーズを再懸濁した。
ビーズ-タンパク質複合体形成を検証するために、少量のサンプル(DNA添加前)をFCブロッカー(Miltenyi)で処置し、αCD3εで染色し、フローサイトメトリーで分析した。
【0111】
B.初期ライブラリーおよび濃縮ラウンドライブラリーの調製およびフォールディング・プロトコル
ライブラリーは最初に1mMに再構成される。第1ラウンドの作業濃度は14.3μMであったが、第2~11ラウンドでは、0.25~0.5μMの濃度の濃縮ライブラリーが使用された。各ラウンドでは、以下の成分を使用した。
【表5】
ライブラリーを以下のプロトコルに従ってDNAフォールディングに供した:95℃で5分間加熱した後、氷上で10分間急速冷却し、使用するまで4℃で維持した。
【0112】
C.SELEX
濃縮ライブラリーが折り畳まれたら、350ulの濃縮ライブラリーラウンドを350ulのCD3ε-FC-ビーズ(陽性選択ラウンド1~11)に添加するか、またはビーズのみ/IgG1-ビーズ複合体(カウンター選択、ラウンド3~11)に添加した。インキュベーション時間、タンパク質量および洗浄工程はSELEXラウンドによって異なっていた。
陽性選択では、「陽性に結合していない」画分の上清を除去し、NGS調製まで-20℃に保った。洗浄のために、ビーズを磁石で沈殿させ、上清を廃棄し、1mlのフォールディング緩衝液(1倍)でビーズを再懸濁した。洗浄工程の後、ビーズを300ulの超純水(UPW)に懸濁させ、DNAを95℃で10分間溶出させた。最後に、磁石をビーズで沈殿させ、「陽性に結合した」上清をPCR段階のために回収した。
陰性SELEXラウンドを実施した場合、350ulの濃縮ライブラリーラウンドを、350ulのビーズのみ/IgGビーズ複合体に添加し、回収した上清画分を陽性選択段階に進めた。「陰性に結合した」と呼ばれる陰性試料への結合画分を溶出し、NGS調製まで-20℃に保った。
【0113】
D.PCR増幅プロトコル
溶出したDNA画分(「結合」および「非結合」)は、それぞれ、非対称PCR(A-PCR)増幅の鋳型として使用した。PCR反応は、ラウンドごとに調整された。PCR成分および増幅プロトコルをそれぞれ表6および表7に示す。
【表6】
【表7】
【0114】
E.PCR ssDNA精製
PCR産物を、10K Amicon(Millipore、UFC5010BK)で濃縮し、HLPC ProSEC 300Sサイズ排除カラム(Agilent)を使用して精製した。精製後、DNAをssDNAクリーンキット(ZYMO、D7011)で緩衝液交換し、NanoDropを使用して濃度を測定し、DNAを新しいSELEXラウンド用に希釈した。
【0115】
b.リアルタイムPCRによる標的タンパク質に結合するライブラリープールの評価
磁気プロテインGビーズをボルテックスし、PBSで1回洗浄した後、穏やかな振盪条件下でタンパク質(CD3εまたはIgG1)とともにRTで10分間再懸濁した。次いで、ビーズを磁石で沈殿させ、上清を廃棄し、ビーズを125ulのフォールディング緩衝液(1倍)および2%BSAで再懸濁した。次に、ラウンド3、6、9、11からのライブラリープール、および最初のランダムライブラリーを折り畳んだ(95℃5分、氷10分、4℃で維持)。125ulのそれぞれの折り畳まれたDNAライブラリーを、ビーズ-タンパク質複合体と穏やかに振盪しながら4℃で1時間混合した。インキュベーションの後、ビーズを磁石で沈殿させ、1mlのフォールディング緩衝液で3回洗浄した。最後に、DNA結合画分を100ul UPWを用いて95℃で10分間溶出し、その後SYBRGreen Supermix(BIO-RAD)を用いたリアルタイムPCRで鋳型として使用した。
【0116】
c.標的タンパク質に結合する個々のアプタマーの評価 HPLCによるタンパク質-アプタマー結合アッセイ
1μMの折りたたまれたCy5標識アプタマーを5μMのタンパク質と混合して最終体積を60μlとし、4℃または37℃で1時間インキュベートした。次に、Cy標識アプタマーを検出するために、試料をHPLC ProSEC 300Sサイズ排除カラム(Agilent)を介して570nmの吸収で分析した。
【0117】
d.フローサイトメトリーによる、細胞に結合する個々のアプタマーの評価
0.5~2×106個の細胞(単離されたPan T細胞、B細胞、hPBMC、カニクイザルPBMC、ジャーカット、およびDaudi)を洗浄し、0.1%BSAおよび0.01%tRNAを含有する0.2~1mlのフォールディング緩衝液に再懸濁した。
0.25~1.25uMの単一のDNA候補を、CpG’-Cy5タグ(1:1比)と混合することによって蛍光標識し、折り畳んだ(95℃5分、氷10分、4℃で維持)。次に、標識されたDNAアプタマーを、V字型96ウェルプレート中、穏やかな振盪条件下で細胞とともに4℃または37℃で1時間インキュベートした(hPBMCおよびCyno PBMCSは、インキュベーションの最後の15分間にαCD8/αCD4を添加した)。インキュベーション後、細胞をフォールディング緩衝液(1倍)で3回洗浄し、各洗浄後にフローサイトメトリー(CytoFlex)を使用して分析した。
【0118】
e.競合的CD3イプシロンエピトープ結合アッセイ
0.25×106個のジャーカット細胞を1回洗浄し、0.1%BSAおよび0.01%tRNAを含有するフォールディング緩衝液(1倍)に再懸濁し、1:20希釈のαCD3クローンOKT3(BioLegend、317302)またはαCD3クローンREA613(Miltenyi、130-114-519)または緩衝液とともに15分間インキュベートした。次に、0.25uMの折り畳まれたCy5標識アプタマーを、穏やかな振盪条件下、37℃で1時間、細胞とともにインキュベートした。インキュベーション後、細胞をフォールディング緩衝液(1倍)で3回洗浄し、各洗浄後にフローサイトメトリー(CytoFlex)を使用して分析した。
【0119】
f.CS6有効濃度50(EC50)の定量化
5×104個のジャーカット細胞を洗浄し、0.1%BSAおよび0.01%tRNAを含有する1倍のフォールディング緩衝液に再懸濁した。0.1~80nMのCS6アプタマーを、CpG’-Cy5タグ(1:1比)で標識し、折り畳んだ(950℃5分、氷10分、40℃で維持)。次に、DNAアプタマーを細胞と混合し、穏やかな振盪条件下、V字型96ウェルプレート中、370℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をフォールディング緩衝液(1倍)で2回洗浄し、フローサイトメトリー(CytoFlex)によって分析した。
【0120】
実施例2-結合SELEXによるCD3標的化アプタマーの同定
CD3結合アプタマーの選択は本明細書に記載されている。T細胞を標的とするアプタマーは、それぞれ組換えCD3eタンパク質と組換えタンパク質+T細胞を使用した、結合SELEXおよびハイブリッド結合細胞-SELEXによって同定された。最終的なリードは、その標的タンパク質およびT細胞への結合について特徴づけられた。
【0121】
本開示は、新規用途においてSELEX方法論を使用して、1015個の潜在的アプタマーのランダムライブラリーからのT細胞係合アプタマーの同定および特徴付けを記載する。このアプタマー部分は、二重特異性治療実体の一部として、異なる患者間で一定となるように設計された。
【0122】
結合SELEXは、組換えヒトCD3イプシロンタンパク質Fcキメラを使用して合計11ラウンド実施した。カウンター陰性選択では、磁気ビーズまたは組換えタンパク質のFc成分(
図1)に非特異的に結合するすべてのアプタマーを取り除くために、ビーズのみ(ラウンド1~6)またはヒトIgG
1にコンジュゲートしたビーズ(ラウンド7~11)のいずれかを使用した。ラウンド11のSELEXの後、濃縮されたアプタマーライブラリーを、配列決定および、特定のアルゴリズムによる分析に供する。単一候補が特定され、検証が行われる。
【0123】
図1Bは、SELEXの段階を示す:カウンター選択は、(1)プロテインG磁気ビーズから始まり、(2)これをIgG1にコンジュゲートさせ、(3)前の段階からのDNAアプタマーライブラリープールとともにインキュベートする。次に、(4)非結合DNAアプタマーをポジティブ選択のために収集し、(5)ここではFC-CD3εにコンジュゲートしたビーズとともにインキュベートし、結合画分は、(6)次のラウンドのためにPCR増幅およびHPLC精製を受ける。
【0124】
1.SELEXラウンド比較アッセイ
オリジナルのランダムライブラリー「No.9.0」とラウンド3、6、9、および11から溶出したライブラリープールを、hCD3aへの結合について試験した。Bcads-Fc-CD3ε複合体と共に4℃で1時間インキュベートした後、Cy-5で標識した5’プライマーを使用して、PCRによって各ラウンドを増幅した。陰性対照として、変異体プールをビーズ-IgG1複合体とインキュベートした(
図2A)。標的タンパク質で沈殿した増幅DNAの量は、結合SELEXで使用されたランダムな初期ライブラリーよりもラウンド6、9および11のライブラリーではるかに高いことが分かった。結果は、初期ライブラリーと比較して、ラウンド6の時点で特異的かつ強い濃縮を示した。さらに、ラウンド11で観察された特異的結合には別の増加があった。
組換えCD3タンパク質を使用したラウンド間濃縮を実証した後、本発明者らは、そのような濃縮が全細胞の状況でも観察されるかどうかを試験した。ジャーカットT細胞を同じCy5タグ付きライブラリープールとともにインキュベートし、洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。陰性対照として、単離されたPan B細胞を使用した(
図2B)。
タンパク質データと同様に、標的細胞の特異的かつ強力なラウンド間濃縮が実証された。
【0125】
2.NGS結果
ラウンド8、9、10、および11で溶出した濃縮ライブラリー(「結合」)、ならびに陽性選択ラウンドの上清(「非結合」)を、ハイスループットNGS Illumina NextSeq500を使用した配列決定に供した。
配列決定後、下流結合アッセイに単一候補を割り当てるアルゴリズムによってデータを解析した。このアルゴリズムは、統計的推定量、試験、およびメトリクスを利用する。
最後のラウンドで最も豊富だった上位100のアプタマーの平均P陽性スコアとP陰性スコアをプロットし(
図3A)、#6で上述したように有意な結合対非結合比(p<0.05;ポアソン検定、すべてのラウンドで一致)をもつアプタマーを強調表示し、実験的検証に選択した(CD3-CS6-9、配列番号1~5と呼ぶ)。高い平均P陽性値(P陽性>0.5)を有するさらに9つのアプタマーに識別子(CD3_Ppos10~18 配列番号6~14)が割り当てられた。同定されたCD3結合アプタマーを表8に列挙する。
【表8】
次に、高い平均P陽性値(P陽性>0.5)を有する14個のアプタマー(表8参照)に多重配列アラインメントを行い、共通モチーフを見出した(
図3B上側)。比較すると、強調表示された候補(CS6~9)も整列され、より堅牢なモチーフが発見された(
図3B下側)。さらに、解析ソフト(mfold、NUPACK)により、構造予測解析を行った(
図3C)。この解析は、候補が主にモチーフ領域の周りで複雑な二次構造に折り畳まれることを実証した。この結果を受け、最適化の試みとして、CS_CD8で提示されたモチーフの周りの二次構造の形成に無関係と思われる最初の9ヌクレオチド(CD3_CS8cutと表記)をトリミングすることによってCD3 CS8をさらに編集した。上位5つの候補は、負のΔGスコアを有することがさらに確認され、個々の結合アッセイに選択された。
上記の結合SELEXに加えて、プロセスに全細胞のSELEXラウンドも含まれるハイブリッド方法論が実施された。
【表9】
【0126】
実施例3-個々のCD3結合アプタマーの検証
a.アプタマー候補は、HPLCを介してヒトCD3aへの結合を実証する
上位5つの候補(CS6、CS7、CS8、CS8c、およびCS9、配列番号1~5)を、5(5’)ホスホロチオエート化CpGモチーフを用いて合成し、HPLCサイズ排除カラムを介してヒトCD3ε(hCD3ε)結合についてアッセイした。この方法では、アプタマーをCpG部位に相補的なCy5配列で標識した(Cy5-CpG’)。次に、折り畳まれて標識された候補を、CD3ε-組換えタンパク質とともに、または陰性対照IgG1とともにインキュベートし(37℃および4℃で1時間)、HPLC ProSEC 300Sサイズ排除カラム(Agilent)によって570nmの吸収で分析する。タンパク質が結合すると、アプタマー-タンパク質複合体は遊離アプタマーよりも大きな質量を有し、その結果、カラムでの保持時間(RT)が短くなることが予想される。逆に、非結合アプタマーの場合、タンパク質の存在下でのRTは、タンパク質の非存在下でのRTと同じになる。対照として、ポリT配列を使用した。5つの候補はすべて、様々なレベルでCD3イプシロン標的タンパク質への結合を実証した(
図4)。
【0127】
b.アプタマー候補はジャーカットT細胞株および初代ヒトPan T細胞への特異的結合をフローサイトメトリーによって実証する。
CS6、CS7およびCS8c候補がCD3e組換えタンパク質への特異的結合を示した後、未変性の全細胞の状況でT細胞表面でのそれらの標的への結合について、これらをフローサイトメトリーによってアッセイした。この目的のために、TCR発現を示すことが以前に報告されているジャーカットTリンパ球細胞株(急性T細胞白血病、ATCC TIB-152)を使用した。細胞を用いた最初の結合アッセイは、4℃で1時間行った。陰性対照として、骨髄芽球Kasumi-1細胞株を使用した(急性骨髄芽球性白血病、ATCC CRL-2724)。3つの候補はすべて、対照細胞と比較して標的細胞に示差的に結合することが見出されたが、CS6およびCS7はCS8cよりも良好な特異性を示した。(
図5A)
次に、生理学的条件をよりよく模倣するために、3つの候補を37℃でジャーカットへの結合についてアッセイした。ここでは、陰性対照として、Bリンパ芽球Daudi細胞株(リンパ芽球、ATCC CCL-213)を使用した(
図5B)。この実験では、CS6が最も高い結合レベルを示したときに、3つの候補が標的細胞に結合した。
CS6を、さらなる調査および特徴づけのために選択した。それは、ブロッキング条件下、37℃で正常な初代Pan T細胞に結合し、Pan B細胞には結合しないことが分かった(
図5C)。
続いて、CS6有効濃度50(EC
50)を評価した。-Cy5標識アプタマーの段階希釈を、Jurkat細胞とともに37℃で1時間インキュベートし、フローサイトメトリーにより結合について評価した(
図6)。計算されたEC
50値は19.65nMであった。
【0128】
実施例4-実施例5の材料および方法
A.材料
a.動物
7~8週齢の雌NSGマウスをJackson Labsから購入した。
b.細胞株および末梢単核細胞(PBMC)
HCT-116ヒト結腸直腸細胞株(ATCC(登録商標)CCL-247(商標))をATCCの説明書に従って培養した。
PBMCは、Lymphoprep(商標)(Axis-Shield)を製造業者のプロトコルに従って使用し、健康なドナーの末梢血からフィコール密度勾配遠心分離によって単離された。単離したPBMCをFBS+20%DMSOの培地で凍結させた。
細胞生存力試験とリンパ球部分集団(DuraClone)および活性化マーカーの免疫表現型検査は、単離後および注射日の解凍時に実施した。
c.アプタマー
癌標的化アプタマーアームである可変鎖12(VS12、配列番号22)は、HCT-116結腸癌細胞株を標的細胞として使用して、PCT出願番号PCT/IB19/01082号に記載されているような機能的濃縮プロセスから誘導した。CS6T細胞エンゲージャー配列(配列番号21)は、実施例2~3に記載されるようなSELEX結合プロセスから誘導した。アプタマーを1つのオリゴヌクレオチド鎖として合成し、カラム精製した。相補的なCpGモチーフ配列を、癌標的化アプタマーと免疫エンゲージャーアプタマーの両方に付加して、ハイブリダイゼーションと二重特異性アプタマーコンジュゲートの生成を可能にした。
非特異的なポリTオリゴヌクレオチドを対照として使用した。2本のポリT鎖もハイブリダイズして二重鎖を形成したが、この場合、ハイブリダイゼーションドメインは機能性ドメインではない。全長配列を表10に示す。
【表10】
c.製剤緩衝液/ビヒクル
1mM塩化マグネシウム(MgCl
2)を補充したリン酸緩衝生理食塩水(マグネシウムとカルシウムを除く)。フォールティング緩衝液は、濾過によって滅菌され、直ちに使用される。
【0129】
B.実験方法
a.二重特異性個別化アプタマー製剤
製剤化手順には以下のステップが含まれる;
1.再構成
それぞれの鎖を製剤緩衝液中で所望の濃度に希釈/再構成する(凍結乾燥する場合)。
2.アプタマーの折り畳み:
a.鎖を95℃で5分間加熱する。
b.氷上で10分間急冷する。
c.RTで10分間インキュベートする。
3.二重特異性実体の形成
b.次いで、2本鎖(癌標的化可変鎖および免疫エンゲージャー鎖)を一緒に混合し、回転装置内でRTで30分間インキュベートする。
【0130】
異種移植モデルの導入および介入
雌NSGマウスに、2×10
6個のHCT-116腫瘍細胞と0.5×10
6個の解凍ヒトPBMCをCultrex(登録商標)で1:4の割合で混和したものを、マウスの右脇腹に皮下(SC)注射した。7日目に、同じドナーのPBMCのIV再ブーストを行い、8×10
5細胞を各マウスに注射した。
SC介入のレジメンを表11に詳述する。
【表11】
【0131】
a.腫瘍体積の評価方法
腫瘍体積の変化を週に3回ノギスによってモニターした。腫瘍体積は、を以下のように推定した:腫瘍体積(mm3)=(長さ×幅2)/2
【0132】
b.統計的手法
すべての定量的データは平均±SEMとして表される。群間の差の有意性を評価するために、必要に応じて、分散分析またはスチューデントt検定のいずれかを使用した。
【0133】
実施例5-新規な二重特異性T細胞エンゲージャーの効果に関する概念実証(POC)
1.二重特異性コンジュゲートアプタマーの代表的な構造
いくつかの態様では、本明細書に記載の個別化癌治療薬は、3つの別個のドメインを有するヘテロ二量体構造で構成される(
図7)。
いくつかの実施形態では、二重特異性個別化コンジュゲートアプタマーは、患者の癌細胞によって提示される特異的ネオ抗原および表面分子を標的とし、癌細胞の直接的致死性ならびに免疫関連応答の両方を促進するように設計されている。いくつかの実施形態では、有効性は、以下に記載されるように、単一の治療実体に組み込まれた3つの別個の作用様式(MoA)によって達成される。
【0134】
A.可変鎖:個別化されたアプタマーによる癌細胞の直接殺傷
いくつかの実施形態では、この部分は、1015個の潜在的なリードのランダムプールから開始するプロセスを通じて選択され、PCT出願番号PCT/IB19/01082号に詳細に記載されている。手短に言えば、個別化プロセスは、健康な細胞に害を及ぼさずに癌細胞の標的化殺傷を最も促進するアプタマーを同定するように設計されている。患者特異的鎖は、結合および機能強化プロセス(Cell and Functional SELEX)を実施し、ハイスループット顕微鏡法で候補をスクリーニングし、選択性試験を含めてオフターゲット効果を除外することを試みながら、上位候補の活性および特異性を確認することによって同定される。
【0135】
B.定常鎖:T細胞エンゲージャーアプタマー
いくつかの実施形態では、このアプタマーアームはT細胞を標的とし、免疫細胞と係合することによって標的癌細胞の溶解を媒介するように設計されている。
【0136】
C.TLR9-アゴニスト活性をもつCpGモチーフ
二重特異性構造の2本のアプタマーアームは、相補的配列の一本鎖オーバーハングの核酸-塩基ハイブリダイゼーションによって互いに架橋される。このハイブリダイゼーションドメインは、CpGに富み、TLR9媒介性抗原提示細胞(APC)刺激および腫瘍抗原の取り込み増加を誘導するように設計されている。刺激されたAPCはその後、腫瘍排出リンパ節に移動し、貪食された腫瘍抗原を細胞傷害性Tリンパ球に交差提示し、適応的な全身性の抗腫瘍免疫応答をもたらす。
【0137】
2.HCT116腫瘍異種移植モデルにおけるCD3を標的とする二重特異性アプタマーコンジュゲートのインビボPOC
HCT-116細胞およびヒトPBMCミックス(E:T 1:4比)を混合方式で共注射し、続いて二重特異性個別化アプタマー(CS6-VS12、配列番号21および22)、ポリT二重鎖またはビヒクルを投与した。
図8Aは、HCT116腫瘍増殖動態を説明する。二重特異性アプタマーCS6-VS12による処置では、合計10回の介入後にHCT116腫瘍の増殖が大幅に減弱したが、非特異的オリゴヌクレオチドポリTによる処置では減弱しなかった。30日目の時点で、エンドポイントの倫理的量のためにマウスは屠殺され始めた。
個々のマウスの腫瘍体積は、41日目(最後の介入から31日後)まで表示される。腫瘍増殖の阻害は、全てのCS6-VS12処置マウスで実証された(
図8B)。
腫瘍増殖の低下は、ビヒクルと比較して、二重特異性処置群の生存期間の利益に変換された。
図9は、実験の41日目まで、CS6-VS12群の8匹のマウスのうち8匹が生存したのに対し、ビヒクル群およびポリT群ではそれぞれ9匹のマウスのうち2匹(22.2%)および8匹のマウスのうち3匹(37.5%)であったことを示す。
総合すると、このモデルのインビボ結果は、CS6-VS12処置の有効性および効力を示している。
【0138】
実施例6-二重特異性個別化アプタマー
F.二重特異性個別化アプタマーの代表的構造
いくつかの態様では、本明細書に記載の個別化癌治療薬は、3つの別個のドメインを有するヘテロ二量体構造で構成される(
図7)。
ある特定の態様では、本明細書に記載のプラットフォームは、患者の腫瘍の新鮮な試料組織に反映されるように、それぞれの患者が提示する固有の一連の症状および潜在的な薬物標的に対して最適化された、個別化された解決策で患者を処置する、患者に合わせた癌治療薬が得られるように設計されている。いくつかの実施形態では、二重特異性個別化アプタマーは、患者の癌細胞によって提示される特異的ネオ抗原および表面分子を標的とし、癌細胞の直接的致死性ならびに免疫関連応答の両方を促進するように設計されている。いくつかの実施形態では、有効性は、以下に記載されるように、単一の治療実体に組み込まれた3つの別個の作用様式(MoA)によって達成される。
【0139】
1.個別化鎖:個別化アプタマーによる癌細胞の直接殺傷
いくつかの実施形態では、この部分は、10
15個の潜在的なリードのランダムプールから開始するプロセスを通じて選択され、PCT出願番号PCT/IB19/01082号に詳細に記載されている。手短に言えば、個別化プロセスは、健康な細胞に害を及ぼさずに癌細胞の標的化殺傷を最も促進するアプタマーを同定するように設計されている。患者特異的鎖は、結合および機能強化プロセス(Cell and Functional SELEX)を実施し、ハイスループット顕微鏡法で候補をスクリーニングし、選択性試験を含めてオフターゲット効果を除外することを試みながら、上位候補の活性および特異性を確認することによって同定される。(
図10A)。
【0140】
2.免疫調節鎖:TまたはNK細胞媒介性細胞毒性による癌細胞の溶解
いくつかの実施形態では、このアプタマーアームは、本明細書に開示されるCD3結合アプタマー(例えば、配列番号1~21のいずれか1つの配列を含む)である(
図10B)。この免疫調節アームは、異なる患者間で共有されるように設計され得る。
【0141】
3.TLR9-アゴニスト活性をもつCpGモチーフ
いくつかの実施形態では、二重特異性構造の2本のアプタマーアームは、相補的配列の一本鎖オーバーハングの核酸-塩基ハイブリダイゼーションによって互いに架橋される。このハイブリダイゼーションドメインは、CpGに富み、TLR9媒介性抗原提示細胞(APC)刺激および腫瘍抗原の取り込み増加を誘導するように設計されている(
図10C)。刺激されたAPCはその後、腫瘍排出リンパ節に移動し、貪食された腫瘍抗原を細胞傷害性Tリンパ球に交差提示し、適応的な全身性の抗腫瘍免疫応答をもたらす(
図10D)。
【0142】
G.それぞれの患者に個別化されたプロセス
いくつかの実施形態では、癌治療プラットフォームとして、個別化されたプロセスは、いくつかの重要なステップを含む(
図11):
1.2種類の一次適合試料を対象から入手
a.腫瘍生検
b.生検部位の正常組織または末梢血単核細胞(PBMC)のいずれかからなる、陰性対照として使用される健康な組織。
2.健康な細胞を無傷のまま残しながら腫瘍細胞死を誘導する個別化アプタマーを同定するための、本明細書に記載の選択プロセスの実施;
3.二重特異性個別化アプタマーを得るための両方の鎖の製造およびハイブリダイゼーション;
4.二重特異性個別化アプタマーは、それぞれの個々の対象に投与される。
【0143】
実施例7-二重特異性アプタマーのインビボ有効性
二重特異性アプタマーの腫瘍内投与を試験した。2つの腫瘍細胞株を使用して、本明細書に開示のアプタマー同定プロセスを使用して可変鎖として機能する腫瘍特異的アプタマーを同定した。具体的には、ヒト肺胞腺癌A549細胞を用いて殺腫瘍性アプタマーVS20およびVS45を同定し、マウストリプルネガティブ乳癌4T1細胞を用いて殺腫瘍性アプタマーVS32を同定した。続いて、CS6 CD3e標的化アプタマーを各殺腫瘍アプタマーにハイブリダイズさせた。これらのアプタマーのそれぞれの配列を表12に示す。これらの3の二重特異性化合物のそれぞれを、
図12に例示されるプロセスを使用してインビボで機能性について試験した。
【表12】
図13に例示されるように、試験した二重特異性実体(CS6-VS20、CS6-VS45、およびCS6-VS32)の各々は、確立された腫瘍(50~100mm
3)に2mgの総用量で腫瘍内投与されると、インビボで対応する腫瘍増殖の有意な減弱を効果的にもたらした。
4T1同系免疫担当マウスモデルでは、CS6-VS32(2mg)の腫瘍内投与は、注射された腫瘍病変の局所増殖阻害を超える効果をさらに実証した。4T1腫瘍は、肝臓および肺を含む様々な臓器に自然に転移する能力を有する。4T1細胞は6-チオグアニン耐性があるため、クローン原性アッセイを使用して、処置マウスの肺の転移巣を測定した。「エラー!参照元が見つかりません。A」、に見られるように、肺転移の減少が観察された。
さらに、CpGモチーフ/TLR9活性化の適応症を評価し、循環IL-6および脾臓重量のわずかな増加が処置マウス群についても報告された(
図14B)。
【0144】
参照による組み込み
本明細書で言及されているすべての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合には、本明細書中の定義を含む本出願が優先する。
【0145】
等価物
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識するか、または日常的な実験のみを使用して確認できるであろう。そのような同等物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】