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特表2023-553195造血細胞におけるBTKの治療的発現のためのレンチウイルスベクター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】造血細胞におけるBTKの治療的発現のためのレンチウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/54 20060101AFI20231213BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20231213BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20231213BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20231213BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALI20231213BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231213BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231213BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20231213BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20231213BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231213BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20231213BHJP
【FI】
C12N15/54 ZNA
C12N15/867 Z
C12N5/0781
C12N5/078
C12N5/0789
C12N15/12
C12Q1/02
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/12
A61P7/00
A61P43/00 105
A61K35/15
A61K35/17
A61K35/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557851
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 IL2021051455
(87)【国際公開番号】W WO2022123559
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/122,017
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/147,956
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/492,637
(32)【優先日】2021-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523215288
【氏名又は名称】ノガ セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】エルコビー,リロン
(72)【発明者】
【氏名】ディアマント,ノーム
(72)【発明者】
【氏名】シャチナイ‐ピンカス,リアット
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA29
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA51
4C084ZC01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA51
4C086ZC01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087BB44
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA51
4C087ZC01
(57)【要約】
本出願は、いくつかの実施形態では、(a)ヒト内因性ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)プロモーターの配列を含む第1の核酸分子と;(b)BTKまたはその機能的類似体をコードするコドン最適化配列を含む第2の核酸分子とを含むポリヌクレオチドに関する。その全てが本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター、細胞、および組成物、ならびに例えばそれを必要とする対象のX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)を処置するために、これらを使用する方法がさらに提供される。
図9B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ヒト内因性ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)プロモーターの799~1,533個の間のヌクレオチドの配列を含む第1の核酸分子と;
b.BTKまたはその機能的類似体をコードするコドン最適化配列を含む第2の核酸分子と
を含むポリヌクレオチドであって、
前記第1の核酸分子および前記第2の核酸分子が作動可能に連結されており、前記コドン最適化が、対象、それに由来する細胞、またはその両方におけるBTK発現のためのものである、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
少なくとも1つの発現調節エレメントの配列を含む第3の核酸分子をさらに含み、前記第3の核酸分子が前記第1の核酸分子に隣接している、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記第3の核酸分子が、前記第1の核酸分子と前記第2の核酸分子との間に位置する、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記発現が転写、翻訳、またはその両方を含む、請求項2または3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記調節エレメントが、ヒトBTK転写物の非翻訳領域(UTR)に由来する配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記第1の核酸分子が、配列番号1~7のいずれか1つに示される核酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記第2の核酸分子が、配列番号8~13のいずれか1つに示される核酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記ヒトBTK転写物のUTRに由来する配列が配列番号14に示される核酸配列を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
配列番号19~30、および32~33に示される核酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項11】
レンチウイルスベースの発現ベクターである、請求項10に記載の発現ベクター。
【請求項12】
a.請求項1~9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド;および
b.請求項10または11に記載の発現ベクター
のいずれか1つを含む細胞。
【請求項13】
B細胞である、請求項12に記載の細胞。
【請求項14】
骨髄細胞である、請求項12に記載の細胞。
【請求項15】
造血幹細胞である、請求項12に記載の細胞。
【請求項16】
a.請求項1~9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド;
b.請求項10または11に記載の発現ベクター;および
c.請求項12~15のいずれか一項に記載の細胞
のいずれか1つと、許容される担体とを含む組成物。
【請求項17】
それを必要とする対象への移植に使用するための、請求項12~16のいずれか一項に記載の細胞と、薬学的に許容される担体とを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記対象が、B細胞生存率の低下、B細胞増殖および/もしくは分化速度の低下、またはこれらの任意の組み合わせを特徴とする、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記対象がX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)に罹患している、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
それを必要とする対象において、B細胞の発達、生存力または活性を増強する方法であって、前記対象に由来するかまたは前記対象から得られる細胞を請求項10または11に記載の発現ベクターで形質導入し、それによって、前記対象におけるB細胞の発達、生存力または活性を増強することを含む方法。
【請求項21】
前記形質導入が、前記細胞を請求項10または11に記載の発現ベクターとエキソビボで接触させることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
B細胞の発達、生存力または活性の増強を必要とする対象を選択するステップをさらに含み、前記選択が、前記対象におけるB細胞生存、前記対象におけるB細胞増殖、前記対象におけるB細胞分化、およびこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つを決定することを含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記生存力または活性が、生存、増殖、分化、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項10または11に記載の発現ベクターで形質導入した前記細胞を前記対象に移植するステップをさらに含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞がB細胞である、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が骨髄細胞である、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が造血幹細胞である、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記造血幹細胞がCD34+造血幹細胞を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象がX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)に罹患している、請求項20~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、B細胞生存率の低下、B細胞増殖および/もしくは分化速度の低下、またはこれらの任意の組み合わせを特徴とする、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月7日に出願された「造血細胞におけるBTKの治療的発現のためのレンチウイルスベクター」と題する米国仮特許出願第63/122,017号、2021年2月10日に出願された「造血細胞におけるBTKの治療的発現のためのレンチウイルスベクター」と題する米国仮特許出願第63/147,956号、および2021年10月3日に出願された「造血細胞におけるBTKの治療的発現のためのレンチウイルスベクター」と題する米国特許出願第17/492,637号の優先権の利益を主張する。これらの全ての出願の内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、最適化BTKレンチウイルスベクターおよびX連鎖無ガンマグロブリン血症の遺伝子治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)遺伝子の突然変異に起因する原発性免疫不全症である。これらの突然変異は、罹患した個体が成熟B細胞を生成できないことならびにNK細胞および骨髄細胞などの他の免疫学的機能不全をもたらす。現在の治療は、50年以上にわたって変化しておらず、免疫グロブリン補充および標的化抗微生物剤からなる。この治療は不十分であり、処置されたXLA患者は、持続的な微生物感染症に起因する低い生活の質および再発性合併症に苦しみ続けている。
【0004】
過去10年間にわたって、第3世代自己不活性化(SIN)レンチウイルスベクター(LVV)が、様々な原発性免疫不全疾患を処置するための遺伝子治療ベクターとして使用されてきた。自己改変造血幹細胞に基づく治療は、いくつかの適応症にわたって処置された300人を超える対象で安全かつ有効な処置様式であることが証明されている。これまでのところ、重篤な有害事象(SAE)はほとんど記録されておらず、ほとんどの患者が、かなりの割合の遺伝子改変細胞で安全な確立および安定した長期造血再構築を実証した。
【0005】
過去10年間に、Btk発現を治療レベルまで上昇させることに焦点を当てて、様々なBTK LVVが開発された。これらの構築物は合成プロモーターを含み、一部は内因性BTKプロモーターおよび追加のシス作用性転写調節エレメントに基づく。さらに、BTK導入遺伝子をコドン最適化に供し、これが、場合によっては、Btkタンパク質レベルの有意な上昇をもたらした。
【0006】
Btk発現は、B細胞分化の異なる段階にわたって、および成熟B細胞におけるBCR活性化に応答して変化する。Btkはまた、NK細胞および骨髄細胞において発現され、それらの機能に必要である。驚くべきことに、Btk発現特異性の問題は、過去の研究の多くの焦点ではなかった。したがって、未解決のままの主な課題は、もっぱら標的細胞で産生されるBtkのレベルを厳密に制御する能力である。一方では、表現型の矯正に十分なBtkレベルを生成する必要がある。他方では、高レベルのBtkが自己免疫および発癌性に関連し得ることが示されている。
【0007】
内因性プロモーターは以前にLVV遺伝子治療臨床試験で使用されており、これは生理学的発現パターンを模倣する発現カセットを設計するための一般的なアプローチである。しかしながら、非改変BTK内因性プロモーターを使用する初期の試みは、CD34+細胞における不十分なBtk発現のために失敗している。これらの研究の結果として、現在の一般的な考えは、BTK内因性プロモーターを、一般的調節エレメントまたはB細胞特異的調節エレメントの付加によって改善して、治療的Btkレベルに達しなければならないというものである。この一般的概念は最近、Seymourら(Molecular Therapy:Methods&Clinical Development(2021))によって再確認され、専ら内因性BTKプロモーターLVVを用いた遺伝子治療はBTK-/TEC-マウスにおいてIgMまたはIgGの血清濃度を上昇させることができないが、改変BTKプロモーター構築物を使用した遺伝子治療は抗体産生および分泌の増加をもたらすことが示された。しかしながら、一般的調節エレメントを発現カセットの一部として含めることは、厳密なBtk調節の維持におけるリスクを保持する。
【0008】
有効かつ安全な発現パターンを有するBtk産生を確実にするBTK発現ベクター(例えば、LVV)に対する満たされていない必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Seymour et al.Molecular Therapy:Methods&Clinical Development(2021)
【発明の概要】
【0010】
第1の態様によると、(a)ヒト内因性ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)プロモーターの799~1,533個の間のヌクレオチドの配列を含む第1の核酸分子と;(b)BTKまたはその機能的類似体をコードするコドン最適化配列を含む第2の核酸分子とを含むポリヌクレオチドであって、第1の核酸分子および第2の核酸分子が作動可能に連結されており、コドン最適化が、対象、それに由来する細胞、またはその両方におけるBTK発現のためのものである、ポリヌクレオチドが提供される。
【0011】
別の態様によると、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターが提供される。
【0012】
別の態様によると、(a)本明細書に開示されるポリヌクレオチド;および(b)本明細書に開示される発現ベクターのいずれか1つを含む細胞が提供される。
【0013】
別の態様によると、(a)本明細書に開示されるポリヌクレオチド;(b)本明細書に開示される発現ベクター;および(c)本明細書に開示される細胞のいずれか1つと、許容される担体とを含む組成物が提供される。
【0014】
別の態様によると、それを必要とする対象においてB細胞の発達、生存力または活性を増強する方法であって、対象に由来するかまたは対象から得られる細胞を本明細書に開示される発現ベクターで形質導入し、それによって、対象におけるB細胞の発達、生存力または活性を増強するステップを含む方法が提供される。
【0015】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドが、少なくとも1つの発現調節エレメントの配列を含む第3の核酸分子をさらに含み、第3の核酸分子が第1の核酸分子に隣接している。
【0016】
いくつかの実施形態では、第3の核酸分子が、第1の核酸分子と第2の核酸分子との間に位置する。
【0017】
いくつかの実施形態では、発現が転写、翻訳、またはその両方を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、調節エレメントが、ヒトBTK転写物の非翻訳領域(UTR)に由来する配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の核酸分子が、配列番号1~7のいずれか1つに示される核酸配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、第2の核酸分子が、配列番号8~13のいずれか1つに示される核酸配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、ヒトBTK転写物のUTRに由来する配列が、配列番号14に示される核酸配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドが、配列番号19~30、および32~33に示される核酸配列を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、発現ベクターがレンチウイルスベースの発現ベクターである。
【0024】
いくつかの実施形態では、細胞がB細胞である。
【0025】
いくつかの実施形態では、細胞が骨髄細胞である。
【0026】
いくつかの実施形態では、細胞が造血幹細胞である。
【0027】
いくつかの実施形態では、造血幹細胞がCD34+造血幹細胞を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、組成物が、それを必要とする対象への移植に使用するための、本明細書に開示される細胞と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、対象が、B細胞生存率の低下、B細胞増殖および/もしくは分化速度の低下、またはこれらの任意の組み合わせを特徴とする。
【0030】
いくつかの実施形態では、対象がX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)に罹患している。
【0031】
いくつかの実施形態では、形質導入が、細胞を本明細書に開示される発現ベクターとエキソビボで接触させることを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、方法が、B細胞の発達、生存力または活性の増強を必要とする対象を選択するステップをさらに含み、選択が、対象のB細胞生存、対象のB細胞増殖、対象のB細胞分化、およびこれらの任意の組み合わせのいずれか1つを決定することを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、生存力または活性が、生存、増殖、分化、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、方法が、本明細書に開示される発現ベクターで形質導入した細胞を対象に投与するステップをさらに含む。
【0035】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等の方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0036】
本発明のさらなる実施形態および適用可能性の全範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、単なる例示として与えられていることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A図1A-1Dは、BTKコドン最適化発現カセットの比較を示すグラフを含む。導入遺伝子および転写物レベルを、2人の健康なドナーに由来するCD34+細胞における多重感染度(MOI)100での形質導入の5日後に測定した。図1Aは、試験したベクターの概略図である。
図1B図1Bは、リアルタイムqPCRによって測定されるNTX101に対するGFP mRNAレベルを示す縦棒グラフである。
図1C図1Cは、フローサイトメトリーによって測定されるGFP陽性細胞の百分率を示す縦棒グラフである。
図1D図1Dは、未形質導入細胞に対するBTK平均蛍光強度を示す縦棒グラフである。BTK、ブルトン型チロシンキナーゼ;5’UTR、5’非翻訳領域;タグ、FLAGタグ;GFP、緑色蛍光タンパク質;CO、コドン最適化;2A、T2A切断部位およびUN、未形質導入。
図2A図2A-2Dは、BTK最小プロモーター下のコドン最適化BTK発現カセットの比較を含む。形質導入の6日後(MOI25)にGFPおよびBtk導入遺伝子レベルを測定した。図2Aは、試験したベクターの概略図である。
図2B図2Bは、ドナー番号6の異なる発現カセットのドットプロットである。
図2C図2Cは、フローサイトメトリーによって測定される細胞のGFP%およびMFI。
図2D図2Dは、ELISAによって測定されるBtkレベル。
図3A図3A-3Dは、2人の健康なドナーに由来するCD34+細胞における異なるBTK最小プロモーターに由来するBTK発現カセットの比較を示すグラフを含む。形質導入の5日後(MOI100)に導入遺伝子発現レベルを測定した。図3Aは、試験したベクターの概略図である。
図3B図3Bは、ドナー番号5の異なる発現カセットのドットプロットである。
図3C図3Cは、フローサイトメトリーによって測定されるGFP陽性細胞の百分率を示す縦棒グラフである。
図3D図3Dは、GFP MFI(平均蛍光強度)を示す縦棒グラフである。
図4A図4A-4Dは、2人の異なるドナーに由来するCD34+細胞における異なるBTK最小プロモーター下のコドン最適化BTK発現カセットの比較を含む。形質導入の6日後(MOI12.5)に導入遺伝子および転写物発現レベルを測定した。図4Aは、試験したベクターの概略図である。
図4B図4Bは、ドナー番号5の異なる発現カセットのドットプロットである。
図4C図4Cは、相対転写物レベルを示す図である。
図4D図4Dは、フローサイトメトリーによって測定されるGFP MFIを示す図である。MFI;平均蛍光強度。
図5A図5A-5Eは、2人の異なるドナーの異なるBTK 5’UTR下のコドン最適化BTK発現カセットの比較を含む。形質導入の6日後(MOI12.5)に導入遺伝子および転写物発現レベルを測定した。図5Aは、試験したベクターの概略図である。
図5B図5Bは、ドナー番号5の異なる発現カセットのドットプロットである。
図5C図5Cは、相対転写物レベルを示す図である。
図5D図5Dは、フローサイトメトリーによって測定されるGFP陽性細胞の百分率を示す図である。
図5E図5Eは、フローサイトメトリーによって測定されるGFP MFIを示す図である。
図6A図6A-6Cは、2人の健康なドナーに由来するCD34+細胞における国際特許出願番号PCT/US2018/028331に開示されている先行技術とのコドン最適化BTK発現カセットの比較を含む。図6Aは、試験したベクターの概略図である。
図6B図6Bは、2人のドナーの異なる発現カセットのドットプロットである。
図6C図6Cは、フローサイトメトリーによって測定されるGFP MFIを示す図である。
図7A図7A-7Dは、2人の健康なドナーに由来するCD34+細胞におけるNTX109用量反応を含む。形質導入の6日後に導入遺伝子発現レベルを測定した。図7Aは、異なるMOIでのGFPレベルのドットプロットである。
図7B図7Bは、絶対ベクターコピー数を示す図である。
図7C図7Cは、フローサイトメトリーによって測定されるGFP陽性細胞の百分率を示す図である。
図7D図7Dは、BTKタンパク質レベルを示す図である。
図8A図8A-8Dは、NTX101およびNTX109による形質導入後のXidマウスに由来するLin-細胞のFACS分析の散布図および縦棒グラフを含む。形質導入の7日後にGFPレベルを測定した。図8Aは、フローサイトメトリーによって測定されるGFP陽性細胞の百分率を示す図である。
図8B図8Bは、フローサイトメトリーによって測定されるGFP MFIを示す図である。
図8C図8Cは、形質導入の17日後にXid lin細胞のB細胞へのインビトロ分化を示す、B細胞でゲーティングしたFACSプロット分析を示す図である。
図8D図8Dは、形質導入の17日後にXid lin細胞のB細胞へのインビトロ分化を示す、IgM陽性細胞でゲーティングしたFACSプロット分析を示す図である。
図9A図9A-9Gは、NTX109形質導入Xid Lin-細胞のXidマウスへの移植を含む。NTX109を12.5~50MOIでXid Lin-細胞に形質導入し、形質導入の24時間後に致死線量照射Xidマウス(n=8)に移植した。図9Aは、非限定的な試験設計の概略説明を示す図である。
図9B図9Bは、エキソビボおよび骨髄において、形質導入の6日後および移植の14週間後にそれぞれ測定したVCN/細胞を示す図である。
図9C図9Cは、骨髄組織に由来するPBMCサブタイプのGFP発現を示す図である。
図9D図9Dは、脾臓組織に由来するPBMCサブタイプのGFP発現を示す図である。
図9E図9Eは、脾臓組織中のT/B GFP+細胞比を示す図である。
図9F図9Fは、フローサイトメトリーによって測定される様々なB細胞集団中のGFP陽性細胞の百分率を示すプロットである。
図9G図9Gは、脾臓中の成熟B細胞(B220IgMlow)の百分率を示す図である。
図10A図10A-10Dは、XidNTX109移植の15週間後のリポ多糖(LPS)によるインビトロ脾細胞刺激後の抗体分泌分析を含む。図10Aは、脾細胞刺激手順の非限定的な説明を示す概略図である。
図10B図10Bは、ELISAによって測定される刺激前のIgMレベルを示す図である。
図10C図10Cは、ELISAによって測定される刺激後のIgMレベルを示す図である(n=8)。
図10D図10Dは、刺激後の平均IgMレベル(pg)/NTX109応答B細胞を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、いくつかの実施形態では、ヒト内因性ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)プロモーターの最適な配列を含む核酸分子の調節下でBTKまたはその機能的類似体をコードする配列を含む核酸分子を含むポリヌクレオチドに関する。
【0039】
本発明はさらに、いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター、例えばウイルスベースの発現ベクター、およびこれを使用する方法であって、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)に罹患した対象を処置するために細胞を形質導入するステップを含む方法に関する。
【0040】
BTKの発現は、BTK遺伝子座に由来する、非BTK遺伝子座に由来する、またはこれらの組み合わせの1つまたは複数の転写調節配列の付加によって、BTK調節をより良く模倣するように改善され得る。このようなエレメントは、本明細書に記載される発現モジュールを最適化するために、本明細書中に開示される最小プロモーターまたは最適プロモーターに隣接し得る。
【0041】
本発明は、内因性BTKプロモーターに基づくレンチウイルスベクター(LVV)を利用すると、持続的かつ特異的なBTK発現を有するXLAマウスモデルにおいて、CD34+HSCにおける生理学的Btk発現レベルおよびBtkの機能的回復が得られるという知見に部分的に基づく。このアプローチは、処置されたXLA患者における調節されていないBTK発現に起因するリスクを最小限に抑えながら、治療上の利益を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態では、方法が、対象から細胞を得るステップと、細胞をエキソビボまたはインビトロで形質導入するステップと、ベクターコピー数(VCN)が選択された閾値未満であることを決定するステップと、形質導入細胞を、それを得た対象に再導入または移植して戻すステップとを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、細胞が5~30のMOIで、本発明の発現ベクターで形質導入される。
【0044】
いくつかの実施形態では、形質導入細胞が、本発明のベクターの3以下のVCNを特徴とする。
【0045】
いくつかの実施形態では、方法が、細胞を5~30のMOIで、本発明の発現ベクターでインビトロまたはエキソビボで形質導入するステップと、VCNが3以下であると決定するステップと、次いで、形質導入細胞を、それを得た対象に再導入または移植して戻すステップとを含む。
ポリヌクレオチド
【0046】
いくつかの実施形態によると、(a)ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)プロモーターに由来する配列を含む第1の核酸分子と;(b)BTK導入遺伝子またはその機能的類似体をコードする配列を含む第2の核酸分子とを含むポリヌクレオチドが提供される。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1の核酸分子および第2の核酸分子が作動可能に連結されている。
【0048】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼ、すなわちRNAポリメラーゼIIの開始部位の周りにクラスター化している転写制御モジュールの群を指す。プロモーターは、それぞれがおよそ7~20bpのDNAからなり、転写活性化因子またはリプレッサータンパク質の1つまたは複数の認識部位を含有する、別々の機能的モジュールで構成される。
【0049】
本明細書で使用される「最適なBTKプロモーター」という用語は、治療的BTK発現レベルを誘発し、T細胞での発現を最小限に抑えながらB細胞および骨髄細胞で特異的発現を示す、BTK遺伝子の転写開始部位に隣接するヌクレオチド配列を指す。いくつかの実施形態では、治療的BTK発現レベルが、本明細書に開示される臨床的に関連するVCNである。
【0050】
本明細書で使用される場合、「治療的BTK発現」という用語は、XLA患者の状態の改善を提供もしくは誘発するため、またはXLA患者の非病的状態を維持する、持続させる、保存する、もしくはこれらの任意の組み合わせに必要なBTKの発現レベルを指す。
【0051】
いくつかの実施形態では、治療的BTK発現が、過小発現、下方制御、非機能的BTKの発現もしくはBTKの非発現を有するかまたはこれを特徴とする対象において必要とされる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される、必要とする対象が、過小発現、下方制御、非機能的BTKの発現またはBTKの非発現を有することを特徴とする。
【0053】
いくつかの実施形態では、治療的BTK発現が、本発明のベクターを含まない類似の細胞の内因性BTK発現レベルよりも少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍高い。いくつかの実施形態では、治療的BTK発現が、CD34+またはB細胞などの特異的細胞型の平均健康集団の内因性BTK発現レベルよりも少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍高い。いくつかの実施形態では、治療的BTK発現が、本発明のベクターを含まない類似の細胞の内因性BTK発現レベルの1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍を超えない。いくつかの実施形態では、治療的BTK発現が、本発明のベクターを含まないCD34+またはB細胞などの特異的細胞型の平均健康集団の内因性BTK発現レベルの1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍を超えない。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療的BTK発現が、1~100、5~95、10~80、15~90、10~70、15~65、20~95、10~50、5~50、6~70、10~40、5~30、4~35、10~35、または10~30のMOIで形質導入される本発明の発現ベクターで形質導入した細胞によって提供される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療的BTK発現が、本明細書に開示されるように形質導入され、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2、最大で1、またはこれらの間の任意の値および範囲のVCNを有すると特性評価または決定される本発明の発現ベクターで形質導入した細胞によって提供される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療的BTK発現が、本明細書に開示されるように形質導入され、1~2、1~3、または2~3のVCNを有すると特性評価または決定される本発明の発現ベクターで形質導入した細胞によって提供される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療的BTK発現が、1~100、5~95、5~80、15~90、10~70、15~65、20~95、10~50、5~50、6~70、10~40、5~30、4~35、5~35、または5~30のMOIで形質導入され、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2、最大で1、またはこれらの間の任意の値および範囲のVCNを有すると決定される本発明の発現ベクターで形質導入した細胞によって提供される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0058】
いくつかの実施形態では、最適なBTKプロモーターが治療的BTK発現レベルを誘発する。いくつかの実施形態では、最適なBTKプロモーターが、造血幹細胞(HSC)、B細胞、骨髄細胞、またはこれらの任意の組み合わせにおいて、BTK発現を特異的にまたは優勢に指示する、誘導する、促進する、活性化する、これらの任意の等価物、またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、最適なBTKプロモーターが、T細胞における最小のBTK発現、無視できるBTK発現、または無BTK発現を指示する、誘導する、促進する、活性化する、これらの任意の等価物、またはこれらの任意の組み合わせである。
【0059】
いくつかの実施形態では、最適なプロモーターが内因性BTKプロモーターからのヌクレオチドを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、最適なBTKプロモーターが内因性BTKプロモーターからのヌクレオチドからなる。
【0061】
いくつかの実施形態では、プロモーターが内因性BTKプロモーターの799~1533個の間のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、プロモーターが内因性BTKプロモーターの1,033~1,533個の間のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、プロモーターが、転写開始部位の上流の、内因性BTKプロモーターの少なくとも789個のヌクレオチド、少なくとも800個ヌクレオチド、少なくとも1,000個のヌクレオチド、少なくとも1,250個のヌクレオチド、少なくとも1,500個のヌクレオチド、少なくとも2,000個のヌクレオチド、少なくとも2,500個のヌクレオチド、少なくとも2,750個のヌクレオチド、もしくは少なくとも2,900個のヌクレオチド、またはこれらの間の任意の値および範囲を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、本発明のプロモーターが790~3,100ヌクレオチド長を含むか、または790~3,100ヌクレオチド長である。
【0062】
いくつかの実施形態では、プロモーターが、少なくとも1つの潜在的メチル化部位を排除することによってさらに最適化される。メチル化部位は、プロモーター配列中のCまたはGの置き換えによって排除される。
【0063】
いくつかの実施形態では、第1の核酸分子が、配列番号1~4、および6~7のいずれか1つに示される核酸配列を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるプロモーターが、以下の表1に列挙される核酸配列を含む。
【表1】
【0065】
いくつかの実施形態では、より長いプロモーターの使用が遺伝子発現の調節を改善し得る。対照的に、レンチウイルスベクターのサイズの増加は、レンチウイルス産生効率を有意に低下させ、したがって、このようなレンチウイルスベクターの商業性(commerciality)に影響を及ぼし得る。したがって、リードBTKレンチウイルスベクターの選択のためには両側面が最適化されるべきである。
【0066】
いくつかの実施形態では、第1の核酸分子が第2の核酸分子の5’末端に位置する。いくつかの実施形態では、第1の核酸分子の3’末端が第2の核酸分子の5’の前にある。
【0067】
いくつかの実施形態では、第2の核酸分子が、BTKタンパク質をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2の核酸分子が、宿主細胞またはこれを含む対象における発現のために最適化されるBTK導入遺伝子をコードする核酸配列を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、コドン最適化が、部分的、限定的、指向的、または調整されたコドン最適化である。いくつかの実施形態では、第2の核酸分子全体がコドン最適化される。いくつかの実施形態では、第2の核酸分子の一部がコドン最適化される。いくつかの実施形態では、第2の核酸分子が、核酸配列レベルで調節されているか、または核酸配列レベルでの調節のために構成されている配列が、例えば野生型対立遺伝子としてコドン最適化されないようにコドン最適化される。
【0069】
宿主細胞のコドン選好性に従ってコドンを最適化する方法は一般的であり、当業者に明らかであろう。コドン最適化は、導入遺伝子発現を増加させるのに有用であり得るが、元の配列に対する塩基変化も導入する。このような変化は、導入遺伝子内の重要な調節配列を排除するおそれがあり、慎重に設計されるべきである。選択されたコドン最適化BTK配列は、WT BTKヌクレオチド配列との高い類似度を保持すべきである。いくつかの実施形態では、本発明のコドン最適化BTKが、WT BTKヌクレオチド配列に対して少なくとも95%、90%、85%、80%、75%またはその間の任意の値を保持する。いくつかの実施形態では、第2の核酸分子が、配列番号8~12のいずれか1つに示される核酸配列を含む。
【表2】
【0070】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドが第3の核酸分子をさらに含む。いくつかの実施形態では、第3の核酸分子が少なくとも1つの発現調節エレメントの配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の核酸分子が第3の核酸分子の5’末端に位置する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドが、5’から3’に以下の順序で互いに隣接する核酸分子を含む:第3の核酸分子の5’末端に隣接する第1の核酸分子の3’末端、および第2の核酸分子の5’末端に隣接する第3の核酸分子の3’末端。
【0071】
いくつかの実施形態では、第3の核酸分子が、第1の核酸分子と第2の核酸分子との間に位置する。
【0072】
本明細書で使用される場合、「発現調節エレメント」 という用語は、遺伝子の発現を修正することができ、したがって、そこからコードされるタンパク質産物の量に影響を及ぼす、内因性であろうと外因性であろうと、任意の化合物または作用因子を指す。いくつかの実施形態では、修正が増加または減少である。いくつかの実施形態では、発現が、遺伝子転写(例えば、RNAに)、mRNA翻訳(例えば、ペプチドに)、またはその両方を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、調節エレメントが、BTK転写物の非翻訳領域(UTR)に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、調節エレメントが、BTK転写物の5’UTRに由来する配列、BTK転写物の3’UTRに由来する配列、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、調節エレメントが、配列番号14に示される完全長天然BTK転写物に由来する5’UTRに由来する配列であるか、またはその部分配列が、配列番号15~16のいずれか1つに示される核酸配列を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、ヒトBTK転写物のUTRに由来する配列が、配列番号14~17に示される核酸配列を含む。
【表3】
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドが第4の核酸分子をさらに含む。いくつかの実施形態では、第4の核酸分子がタンパク質翻訳開始モチーフの配列を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質翻訳開始モチーフが、哺乳動物、例えばヒトのタンパク質翻訳開始モチーフを含む。
【0076】
タンパク質翻訳開始モチーフのタイプは、それらの配列を回収または取得するための手段を含めて、当業者に明らかであろう。いくつかの実施形態では、タンパク質翻訳開始モチーフがコザックコンセンサス配列を含む。いくつかの実施形態では、第4の核酸分子が、コザックコンセンサス配列またはその任意の機能的等価物を含む。いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドが、コザックコンセンサス配列またはその任意の機能的等価物を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるコザックコンセンサス配列が、核酸配列:GCCRCCAUG(配列番号34)(式中、RはAまたはGである)を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、第4の核酸分子が、第3の核酸分子と第2の核酸分子との間に位置する。いくつかの実施形態では、第4の核酸分子が第3の核酸分子に隣接している。いくつかの実施形態では、第4の核酸分子が第2の核酸分子の5’末端に位置する。いくつかの実施形態では、第4の核酸分子が第2の核酸分子の5’末端に位置する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドが、5’から3’に以下の順序で核酸分子を含む:第1の核酸分子、第3の核酸分子、第4の核酸分子、および第2の核酸分子。
【0078】
いくつかの実施形態では、第1の核酸分子の3’末端が第3の核酸分子の5’の前にある。いくつかの実施形態では、第3の核酸分子の3’末端が第4の核酸分子の5’の前にある。いくつかの実施形態では、第4の核酸分子の3’末端が第2の核酸分子の5’の前にある。いくつかの実施形態では、第2の核酸分子が第4の核酸分子に隣接している。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドが、5’から3’に以下の順序で互いに隣接する核酸分子を含む:第3の核酸分子の5’末端に隣接する第1の核酸分子の3’末端、第4の核酸分子の5’末端に隣接する第3の核酸分子の3’末端、および第2の核酸分子の5’末端に隣接する第4の核酸分子の3’末端。
【0079】
いくつかの実施形態では、第3の核酸分子が第1の核酸分子に隣接している。いくつかの実施形態では、第3の核酸分子が第2の核酸分子の5’末端に位置する。いくつかの実施形態では、第3の核酸分子が第1の核酸分子の3’末端に位置する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドが、5’から3’に以下の順序で核酸分子を含む:第1の核酸分子、第3の核酸分子、および第2の核酸分子。
【0080】
いくつかの実施形態では、第1の核酸分子の3’末端が第3の核酸分子の5’の前にある。いくつかの実施形態では、第3の核酸分子の3’末端が第2の核酸分子の5’の前にある。いくつかの実施形態では、第2の核酸分子が第3の核酸分子に隣接している。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドが、配列番号19~33のいずれか1つに示される核酸配列を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドがBTK発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、発現カセットが、最適なBTKプロモーターおよびBTKコード配列を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットが、最適なBTKプロモーターおよびBTKコード配列からなる。
【0083】
いくつかの実施形態によると、最適なBTKプロモーターおよびコドン最適化BTKコード配列を含む発現カセットが提供される。いくつかの実施形態では、発現カセットが、発現調節エレメント、タンパク質翻訳開始モチーフの配列、またはその両方をさらに含む。いくつかの実施形態では、調節配列がBTK転写物5’UTRに由来する。いくつかの実施形態では、調節が完全なBTK転写物5’UTRを含む。いくつかの実施形態では、発現カセットが、最適なBTKプロモーター、コドン最適化BTKコード配列、発現調節エレメント、およびタンパク質翻訳開始モチーフの配列からなる。いくつかの実施形態では、発現カセットが、5’から3’に以下の順序の以下のエレメント:最適なBTKプロモーター(例えば、ヒト内因性BTKプロモーター)、発現調節エレメント、タンパク質翻訳開始モチーフの配列、およびコドン最適化BTKコード配列からなる。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるBTK発現カセットが本明細書の以下の表4に列挙される。
【表4】
【0085】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドが、ウイルスベクターの配列を含むかまたはウイルスベクターに由来する第5の核酸分子をさらに含む。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターがレンチウイルスベクター骨格を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターが第3世代レンチウイルスベクター骨格を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターが自己不活性化レンチウイルスベクター骨格を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターが第3世代自己不活性化レンチウイルスベクター骨格を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドが、BTK遺伝子座に由来しない一般的な調節エレメントを欠いている。いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドが、ユビキタスクロマチンオープニングエレメント(ubiquitous chromatin opening element)(UCOE)を欠いている。
発現ベクター
【0087】
いくつかの実施形態によると、ポリヌクレオチド本発明を含む発現ベクターが提供される。
【0088】
いくつかの実施形態では、発現ベクターがウイルスベクターであるか、またはウイルスベクターを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、発現ベクターがレンチウイルスベースの発現ベクターであるか、またはレンチウイルスベースの発現ベクターを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスベースのベクターが第3世代レンチウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベースのベクターが自己不活性化レンチウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベースのベクターが、転写のトランス活性化因子をコードする遺伝子(Tat)を欠いている。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベースのベクターが、1つまたは複数のウイルスアクセサリータンパク質を欠いている。いくつかの実施形態では、ウイルスアクセサリータンパク質が、vif、vpr、vpu、nef、またはこれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベースのベクターが、ヒト治療に適した任意のレンチウイルスベースのベクターを含む。いくつかの実施形態では、適切なものが、ヒトの健康に安全なものを含む。
【0091】
レンチウイルスベースのベクター、具体的には、ヒト対象の治療に使用するのに安全なレンチウイルスベースのベクターは一般的であり、当業者に明らかであろう。
【0092】
いくつかの実施形態では、遺伝子がプロモーターに作動可能に連結している。「作動可能に連結した」という用語は、目的のヌクレオチド配列が、(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、またはベクターが宿主細胞に導入される場合、宿主細胞において)ヌクレオチド配列の発現を可能にするように1つまたは複数の調節エレメントに連結されていることを意味することを意図している。
【0093】
挿入されたコード配列(ポリペプチドをコードする)の転写および翻訳に必要なエレメントを含有すること以外に、本発明の発現構築物が、発現されたポリペプチドの安定性、産生、精製、収率または活性を最適化するように操作された配列も含み得ることが理解されるであろう。
【0094】
核酸の増幅(例えば、PCR、等温法、ローリングサークル法等)または定量的in situハイブリダイゼーションなどによって1つまたは複数の遺伝子の発現レベルを測定するための多数の方法が当技術分野で公知である。特定の遺伝子を増幅するためのプライマーの設計は、当技術分野で周知である。
【0095】
RT-qPCR:RNA存在量を測定するために使用される一般的な技術は、逆転写(RT)の後にリアルタイム定量的PCR(qPCR)が続くRT-qPCRである。逆転写が、最初にRNAからDNA鋳型を生成する。この一本鎖鋳型はcDNAと呼ばれる。次いで、cDNA鋳型を定量ステップで増幅し、その間、標識ハイブリダイゼーションプローブまたはインターカレーティング色素によって発せられる蛍光が、DNA増幅プロセスが進行するにつれて変化する。定量的PCRは、元のRNAのコピーの増加または減少の測定値を提供し、同等の健康な組織と比較したがん組織における遺伝子発現の変化を定義しようと試みるために使用されている。
【0096】
ドロップレットデジタルポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR):標的DNAの絶対的かつ直接的な定量化を提供する技術。ddPCRは、油滴区画中の20,000の水に封入された核酸分子を計数することによって絶対量を測定する。PCR増幅は、熱サイクルを使用して各ドロップレット内で行われる。PCRの後、ドロップレットがドロップレットリーダー上に単一ファイルでストリーミングされ、蛍光陽性ドロップレットおよび蛍光陰性ドロップレットを計数して標的DNA濃度を計算する。
細胞
【0097】
いくつかの実施形態によると、(a)本発明のポリヌクレオチド;(b)本明細書に開示される発現ベクター(例えば、本発明のポリヌクレオチドを含む);または(c)(a)と(b)の任意の組み合わせを含む細胞が提供される。
【0098】
いくつかの実施形態では、細胞が幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞が造血幹細胞または前駆細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞が免疫細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞が骨髄細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞がB細胞、Bリンパ球、または形質細胞を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、細胞がCD34+細胞である。
【0100】
いくつかの実施形態では、細胞がCD34+造血幹細胞であるか、またはCD34+造血幹細胞を含む。
【0101】
細胞の型を決定する方法ならびに特定の細胞、例えばCD34+を単離する方法は一般的であり、当業者に明らかであろう。このような方法の非限定的な例としては、それだけに限らないが、親和性精製およびフローサイトメトリーセルソーティング(例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS))が挙げられる。
【0102】
いくつかの実施形態では、細胞が対象から得られるか、または対象に由来する。いくつかの実施形態では、細胞が細胞株もしくは培養物から得られるか、または細胞株もしくは培養物に由来する。いくつかの実施形態では、細胞が、本発明のポリヌクレオチドまたはこれを含むベクターを増殖および/または増加させるために使用される。いくつかの実施形態では、細胞が、本発明のポリヌクレオチドまたはこれを含むベクターの発現に使用される。
【0103】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドまたはこれを含む組成物を含む細胞が、対照細胞における内因性BTK発現レベルと同等または等価のBTK発現レベルを有することを特徴とする。
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドまたはこれを含む組成物を含む細胞が、内因性BTKレベルと類似のBTK発現レベルを有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、細胞が、本発明のポリヌクレオチドもこれを含む発現ベクターも含まない類似の細胞における内因性BTK発現レベルよりも1~2倍、1~3倍、1~4倍、1~5倍、1~6倍、1~7倍、1~8倍、1~9倍、もしくは1~10倍の間高いBTK発現レベル、またはそれらの間の任意の値および範囲を有することを特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチド、またはこれを含む組成物を含む細胞が、本発明のポリヌクレオチドを含まない類似の細胞における内因性BTK発現レベルと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは類似のレベルのBTK発現レベル、またはそれらの間の任意の値および範囲を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドまたはこれを含む組成物を含む細胞が、最大150%、200%、300%、400%、500%または1,000%のBTK発現レベルを有することを特徴とする。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細胞中の本発明のポリヌクレオチドを含む本明細書に開示されるベクターのベクターコピー数(VCN)が、最大で10、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2、もしくは最大で1、またはそれらの間の任意の値および範囲である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細胞中の本発明のポリヌクレオチドを含む本明細書に開示されるベクターのVCNが、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、または1~2である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0108】
いくつかの実施形態では、対照細胞が正常B細胞を含む。いくつかの実施形態では、対照細胞が正常骨髄細胞を含む。いくつかの実施形態では、対照細胞が正常造血幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、対照細胞が、健康な対象から得られたまたは健康な対象に由来するB細胞を含む。いくつかの実施形態では、対照細胞が、健康な対象から得られたまたは健康な対象に由来する骨髄細胞を含む。いくつかの実施形態では、対照細胞が、B細胞、骨髄細胞、およびその両方のいずれか1つを含み、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)に罹患していない対象から得られるか、またはXLAに罹患していない対象に由来する。
組成物
【0109】
いくつかの実施形態によると、(a)本発明のポリヌクレオチド;(b)本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター;(c)本発明のポリヌクレオチド;これを含む発現ベクター、およびこれらの任意の組み合わせのいずれか1つを含む細胞;またはこれらの任意の組み合わせを含む組成物が提供される。
【0110】
いくつかの実施形態では、組成物が許容される担体をさらに含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、担体が薬学的に許容される担体を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0113】
いくつかの実施形態では、細胞が形質導入細胞である。
【0114】
いくつかの実施形態では、形質導入が本発明の発現ベクターで形質導入されることを含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、形質導入細胞が、1~2のVCNを有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、細胞が、2未満、または3未満のVCNを有することを特徴とする。
【0116】
いくつかの実施形態では、医薬組成物が、それを必要とする対象への移植に使用するためのものである。
【0117】
いくつかの実施形態では、医薬組成物が、BTK遺伝子の機能喪失型変異、B細胞活性化率の低下、B細胞増殖および/もしくは分化速度の低下、またはこれらの任意の組み合わせを特徴とする対象への移植に使用するためのものである。
【0118】
いくつかの実施形態では、低下が対照と比較される。いくつかの実施形態では、対照が健康な対象を含む。いくつかの実施形態では、対照が、変異BTK遺伝子関連疾患に罹患していない対象、またはBTK遺伝子の機能喪失型変異を有する対象を含む。いくつかの実施形態では、対照が、BTK遺伝子の機能喪失型変異に罹患していない対象を含む。いくつかの実施形態では、対照が、変異BTK遺伝子関連疾患に罹患していない対象を含む。いくつかの実施形態では、対照が、特定の細胞型におけるBTK発現に関する公開データに基づく。いくつかの実施形態では、対照が、数人の健康な対象からの細胞集団で測定され、ベースラインとして設定された平均BTK発現に基づく。
【0119】
いくつかの実施形態では、変異BTK遺伝子関連疾患が、その発病および/または病態生理学の一部として変異BTK遺伝子を伴う任意の疾患を含む。いくつかの実施形態では、変異BTK遺伝子関連疾患が、減少した、阻害された、微小な、存在しないB細胞、骨髄細胞、ナチュラルキラー細胞(NK)、もしくはこれらの任意の組み合わせ、生存力および/もしくは活性、またはこれらの任意の組み合わせを特徴とする。
【0120】
いくつかの実施形態では、変異BTK遺伝子関連疾患がX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)を含むか、またはXLAである。いくつかの実施形態では、XLA罹患対象がBTK遺伝子に機能喪失型変異を有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、「減少した」 または 「減少」 が、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、もしくは100%の減少、またはそれらの間の任意の値および範囲を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、「減少した」 または 「減少」が、1~20%、10~50%、35~75%、20~97%、15~80%、1~75%、または10~100%の減少を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0122】
いくつかの実施形態では、所定の閾値以下の細胞中のBTK発現カセットVCNが、細胞が対象への移植に適していることを示す。いくつかの実施形態では、所定の閾値を上回るBTK発現カセットVCNが、細胞が対象への移植に適していないことを示す。いくつかの実施形態では、VCNが細胞集団(pVCN)の平均として測定される。いくつかの実施形態では、VCNが単一細胞レベル(sVCN)で測定される。
【0123】
いくつかの実施形態では、VCNの所定の閾値が、最大で1、最大で2、最大で3、または最大で5のVCNであり、それらの間の任意の値および範囲を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0124】
いくつかの実施形態では、所定の閾値以上のBTK発現が、細胞が対象への移植に適していることを示す。いくつかの実施形態では、所定の閾値未満のBTK発現が、細胞が対象への移植に適していないことを示す。
【0125】
いくつかの実施形態では、所定の閾値が、対象への移植に適している導入遺伝子由来BTK(trBTK)発現の内因性BTK(enBTK)発現に対する比を含む。いくつかの実施形態では、細胞が対象への移植に適していることを示すtrBTK/enBTK発現比が、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、またはそれらの間の任意の値および範囲のtrBTK/enBTK発現比を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、細胞が対象への移植に適していることを示すtrBTK/enBTK発現比が、2:1~5:1、2:1~3:1、2:1~10:1のtrBTK/enBTK発現比を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0126】
いくつかの実施形態では、所定の閾値が、対象への移植に適しているB細胞における導入遺伝子の発現(bcBTK)のT細胞における導入遺伝子の発現(tcBTK)に対する比を含む。いくつかの実施形態では、細胞が対象への移植に適していることを示すbcBTK/tcBTK発現比が、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも20:1、少なくとも30:1、少なくとも40:1、少なくとも50:1、少なくとも60:1、少なくとも70:1、少なくとも80:1、少なくとも90:1、少なくとも100:1、少なくとも200:1、少なくとも350:1、少なくとも500:1、少なくとも700:1、少なくとも850:1、少なくとも1,000:1、またはそれらの間の任意の値および範囲のbBTK/tBTK発現比を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
使用方法
【0127】
いくつかの実施形態によると、それを必要とする対象において細胞生存力または活性を増強する方法であって、対象に由来するかまたは対象から得られる細胞を本発明のLVVと接触させ、それによって、対象における細胞生存力または活性を増強するステップを含む方法が提供される。
【0128】
いくつかの実施形態では、細胞が造血幹細胞である。いくつかの実施形態では、細胞が骨髄細胞である。いくつかの実施形態では、細胞がB細胞である。
【0129】
いくつかの実施形態によると、細胞のBTK活性または機能性を提供または回復する方法であって、細胞を本発明のLVVと接触させ、それによって、細胞のBTK活性または機能性を提供または回復するステップを含む方法が提供される。
【0130】
いくつかの実施形態では、方法が、形質導入細胞におけるBTKの発現レベルを決定することを含むステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、形質導入細胞におけるBTKの発現レベルを決定することを含むステップが、対象への細胞の移植の前にある。
【0131】
いくつかの実施形態では、方法が、それを必要とする対象のXLAを処置または予防するためのものである。
【0132】
いくつかの実施形態では、方法が、XLAを負う対象に由来するかまたはXLAを負う対象から得られる細胞を用意するステップをさらに含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、方法が、XLAを負う対象から細胞を得るステップをさらに含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、接触がエキソビボで接触させることを含むか、またはエキソビボで接触させることである。
【0135】
本明細書で使用される場合、「エキソビボ」 という用語は、細胞が生物から取り出され、生物の外部で増殖および/または操作されるプロセスを指す。
【0136】
いくつかの実施形態では、接触が、細胞を本発明のLVVで形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、接触が、本発明のLVVを細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、形質導入が、本発明のLVVを細胞に導入することを含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、形質導入および/または導入が、ポリヌクレオチド分子を含むLVVを標的細胞に移入することを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、形質導入および/または導入が、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、またはそれらの間の任意の値および範囲の多重感染度(MOI)である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0139】
いくつかの実施形態では、形質導入および/または導入が、5~50、10~50、5~40、5~30、5~25、15~50、15~40、15~35、20~40、15~30、または20~30のMOIである。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0140】
いくつかの実施形態では、方法が、用量決定のステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、用量選択が、XLA患者細胞、例えばHSCにおけるBtk発現を測定することによって、またはXLA患者HSCにおけるVCNを測定することによって、または形質導入HSCのインビトロB細胞発達を測定することによって行われる。
【0141】
B細胞の機能、増殖および/または分化を決定する方法は一般的であり、当業者に明らかであろう。このような方法の非限定的な例としては、それだけに限らないが、FACS、抗体特異的染色(例えば、抗CD34+抗体を用いる)、MTTアッセイ、XTTアッセイ、ELISAアッセイ、刺激に応答したIgM分泌が挙げられ、これらのいくつかは本明細書に例示される。
【0142】
いくつかの実施形態では、方法が、形質導入細胞におけるBTK発現カセットのベクターコピー数(VCN)を決定することを含むステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、形質導入細胞におけるBTKのVCNを決定することを含むステップが、対象への細胞の移植の前にある。
【0143】
いくつかの実施形態では、それを必要とする対象を処置する方法であって、対象に由来する複数の細胞を含む組成物を対象に投与するステップを含み、細胞が、本明細書に開示される方法に従って処置される前の対象のbcBTK/tcBTKと比較して、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも20:1、少なくとも30:1、少なくとも40:1、少なくとも50:1、少なくとも60:1、少なくとも70:1、少なくとも80:1、少なくとも90:1、少なくとも100:1、少なくとも200:1、少なくとも350:1、少なくとも500:1、少なくとも700:1、少なくとも850:1、少なくとも1,000:1、またはそれらの間の任意の値および範囲のbcBTK/tcBTK発現比を有することを特徴とするように、インビトロ、エキソビボ、またはインビボで操作される、方法が提供される。
【0144】
いくつかの実施形態では、投与が移植であるか、または移植を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、所定の閾値が、対象への移植に適しているB細胞における導入遺伝子の発現(bcBTK)の骨髄細胞における導入遺伝子の発現(mcBTK)に対する比を含む。いくつかの実施形態では、細胞が対象への移植に適していることを示すbcBTK/mcBTK発現比が、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも20:1、少なくとも30:1、少なくとも40:1、少なくとも50:1、少なくとも60:1、少なくとも70:1、少なくとも80:1、少なくとも90:1、少なくとも100:1、少なくとも200:1、少なくとも350:1、少なくとも500:1、少なくとも700:1、少なくとも850:1、少なくとも1,000:1、またはそれらの間の任意の値および範囲のbcBTK/mcBTK発現比を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0146】
いくつかの実施形態では、対象が変異BTK遺伝子関連疾患に罹患している。いくつかの実施形態では、対象が、免疫不全または免疫不全疾患もしくは障害に罹患している。いくつかの実施形態では、対象がX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)に罹患している。
【0147】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるBTK遺伝子の変異が機能喪失型変異である。いくつかの実施形態では、変異がナンセンス変異である。いくつかの実施形態では、変異がミスセンス変異である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるナンセンス変異またはミスセンス変異のいずれか1つが、変異BTK遺伝子の部分的、非機能的、またはその両方のタンパク質産物をもたらす。
【0148】
いくつかの実施形態では、処置が、対象においてBTKの発現を誘導することを含む。いくつかの実施形態では、処置が、対象のB細胞においてBTKの発現レベルを誘導することを含む。いくつかの実施形態では、処置が、対象の骨髄細胞においてBTKの発現レベルを誘導することを含む。いくつかの実施形態では、対象が、BTK発現なしまたは無視できるBTK発現を特徴とする。いくつかの実施形態では、対象、非機能的BTK遺伝子またはそのタンパク質産物を有することを特徴とする。
【0149】
いくつかの実施形態では、発現を増加させることが、対照B細胞、造血幹細胞(HSC)、または対照骨髄細胞における内因性BTK発現と比較して、101% ~150%、150~200%、200~300%、101~300%、101~500%、101~1000%、200~1000%のレベル、またはそれらの間の任意の値および範囲までである。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
実施例
【0150】
上記で本明細書に描写され、以下の特許請求の範囲の節で特許請求される本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的裏付けを見出す。ここで、上記の説明と共に本発明のいくつかの実施形態を非限定的に示す以下の実施例を参照する。
【0151】
一般に、本明細書で使用される命名法、および本発明で利用される実験室手順には、化学、分子、生化学、および細胞生物学の技術が含まれる。このような技術は文献で十分に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A laboratory Manual」 Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」第I~III巻 Ausubel,R.M.編(1994);「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、第I~III巻 Cellis,J.E.編(1994);The Organic Chemistry of Biological Pathways by John McMurry and Tadhg Begley(Roberts and Company、2005);Organic Chemistry of Enzyme-Catalyzed Reactions by Richard Silverman(Academic Press、2002);Organic Chemistry(第6版)Leroy “Skip” G Wade;Organic Chemistry T.W.Graham SolomonsおよびCraig Fryhleを参照されたい。
【実施例1】
【0152】
健康なドナーに由来するヒト造血幹細胞におけるBTKおよびGFP発現に基づくベクター候補のスクリーニング
【0153】
スクリーニング系は、動員末梢血細胞(MPBC)に由来するCD34ヒト造血幹細胞(HSC)を利用する。これらの細胞は、HSCが臨床設定における標的細胞集団であるので、最も関連性のある発現系である。BTKがCD34細胞で発現されることが以前に示された(Rushworthら、2014)。したがって、BTK LVVによる形質導入は、この細胞集団においてBTK発現をもたらすはずである。最初に、全ての発現カセットのコード配列はBTK-T2A-GFP配列を含む。形質導入CD34細胞および未形質導入CD34細胞のBTK mRNAレベルおよびGFPタンパク質レベルの比較は、さらなるスクリーニング系によってさらに評価される候補発現カセットの初期設定の選択を可能にする。
【0154】
G-CSF MPBCを、Ezer Mizion骨髄採取部位で健康なドナーからアフェレーシスによって採取した。CD34+細胞をCD34陽性選択マイクロビーズ(Miltenyi)によって精製し、選択プロセスの純度を、フローサイトメトリーを使用して決定した。
【0155】
形質導入のために、ヒトG-CSF MPBC由来CD34+細胞を、サイトカイン:IL-3、TPO、SCF、およびFLT-3L(PeproTech)のカクテルを補充した無血清SCGM培地(CellGenix)中で、形質導入前に16~24時間前培養する。ウイルスをLentiBOOST(Sirion)形質導入エンハンサーと適切な組織培養皿に混合することによって、形質導入を行う。CD34+細胞を0.5~1×10細胞/mlの高濃度でウェルに添加する。24時間後、細胞を洗浄して培地中に残っているビリオンを除去する。細胞を維持し、形質導入後5~15日目に分子および生化学試験のために回収する。
【0156】
BTK mRNAレベルについては、PureLink RNA miniキット(Invitrogen)を使用して0.5×10個のCD34形質導入細胞から全RNAを抽出し、引き続いてHigh-capacity RNA to cDNAキット(Applied biosystems)を使用してRT反応を行う。5 ngのcDNAをリアルタイムqPCR反応(CFX96タッチディープウェル、Bio-rad)に使用する。ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)を参照遺伝子として使用する。異なる転写物を特定するために使用されるプライマー配列を表5に記載する。
【表5】
【0157】
GFPタンパク質レベルについては、0.1~0.5×10個の細胞を回収し、7AAD生存色素(Beckman Culture)とインキュベートして死細胞を除去した。細胞を濾過し、CytoFlexフローサイトメトリーを使用してGFPレベルについてスクリーニングした。CytExpertを使用してフローサイトメトリー分析を行った。ベクターコピー数(VCN)レベルについては、QiaAmp DNAマイクロキット(Qiagen)を使用してCD34形質導入細胞からgDNAを抽出する。各ddPCR反応については、フルオレセインアミダイト(FAM)で標識された1つのレンチウイルス標的、およびHEXで標識されたPCBP2ヒト/マウス参照遺伝子を含むマルチプレックスアッセイ反応として60 ngのDNAを使用する。特注のプライマーを、プライマーについては900 nM、加水分解プローブについては250 nMの濃度に相当する20倍濃度でストックする。異なる転写物を特定するために使用される配列を表6に記載する。



【表6】
【0158】
各LVVについて、BTK発現レベルを、数人の健康なドナーのHSCにおいて測定した。CD34+細胞において高い発現レベルを示すLVV候補を、さらなる特性評価のために選択した。さらに、導入遺伝子由来BTK(trBTK)発現の内因性BTK(enBTK)発現に対する比を測定し、最適なLVV候補の選択に使用する。異なる細胞型におけるBTKレベルを測定するために、ヒトBTK ELISA Kitを使用した(Abcam)。抽出緩衝液に希釈した50μlの細胞溶解物および50μlの抗体カクテルをプレコーティングした96ウェルELISAプレートに添加し、1時間インキュベートした。プレートを1×PT洗浄緩衝液で3回洗浄し、TMB展開溶液を10分間添加した。反応を停止させ、ELISAプレートリーダーを使用してODを450 nmで読み取った。滴定されたBTK標準との比較によってBTKレベルを定量化した。
【0159】
本発明者らは、配列番号9~12に示される配列を有するいくつかのコドン最適化BTKコード配列を試験した。配列番号13(さらなる特徴を発現ベクターの一部として含む場合、本明細書中でNTX112と呼ばれる;配列番号26)は、国際特許出願番号PCT/US2018/028331に開示されるコドン最適化BTK ORFである。配列番号12は、wt BTK配列と高い相同性(相同性90.9%)を有するコドン最適化BTKである。比較のために、配列番号9に対するwt BTKの相同性は77.7%であり、配列番号13については78.5%である。これらの配列を1,033 bpのBTKプロモーターの制御下でクローニングし、発現レベルをWT BTKコード配列(配列番号8)を有する構築物の発現レベルと比較した。WT BTKコード配列と異なるコドン最適化発現カセットを比較するために、ヒトCD34+細胞を、MOI 100で、異なるBTK LVVで形質導入した。形質導入の5日後、リアルタイムqPCRを使用してGFP mRNAレベルを比較し、フローサイトメトリーを使用してBTKおよびGFPタンパク質レベルを測定した(図1A図1D)。1,033 bpのBTKプロモーター下のNTX143を、25のMOIでヒトCD34+細胞中のNTX109と比較した。形質導入の6日後、GFPおよびBtkタンパク質レベルを、それぞれフローサイトメトリーおよびELISAを使用して比較した(図2A図2C)。
【0160】
本明細書でNTX109とも呼ばれる配列番号23は、全ての試験対象(2人のヒトドナー)にわたって配列番号22よりも高いBTKレベルを示した。この試験の相対的VCNは、様々な構築物間で1~2倍の差を示した。これらの結果は、NTX109がXLA遺伝子治療のための発現カセットとしての使用に適し得ることを示唆している。
【0161】
この目的のために、200~300 bpの最小プロモーターが遺伝子転写を誘導するのに十分であることが一般に受け入れられる。さらに、これまでに報告されている最も長い組換えBTKプロモーターである798 bp長のBTKプロモーターがBTK遺伝子の発現には必要であることが以前に報告されている。
【0162】
この点に関して、本発明者らは、配列番号1~4に示される配列を有する4つの最小BTKプロモーターおよび配列番号8に示される配列を有するBTKコード配列を含むLVVのセットを設計および試験した。最小BTKプロモーター発現カセットから誘導される発現レベルを特性評価するために、ヒトCD34細胞を、MOI 100で、異なるLV_NTXで形質導入した。リアルタイムqPCRを使用して相対的VCNを決定したところ、様々な構築物間で1~2倍の差を示した。形質導入の6日後、フローサイトメトリーを使用してGFPタンパク質レベルを測定した(図3)。本明細書でNTX101とも呼ばれる配列番号22は、2人の健康なヒトドナーにおいて配列番号19~21よりも高いBTKレベルを示した。BTKプロモーターの特性評価を拡大するために、1,033 bpプロモーターを配列番号5~7の様々な長さの他のBTKプロモーターとさらに比較した。プロモーター設計には、長いバージョンのBTKプロモーター(1,533 bp)、開示された国際特許出願番号PCT/US2018/028331で使用されたような798 bpの中間サイズバージョン、および内部の409 bpが除去された合成プロモーターが含まれる。この記載の場合、コドン最適化BTK導入遺伝子から誘導される発現を測定した(NTX 132~NTX 134)。これらの構築物について測定された組み込み事象は、細胞1個当たり0.4~1 VCNの間であった。以前の結果と同様に、1,033 bpプロモーター長から誘導される発現レベルは、試験した2人の健康なヒトドナーにおいて他の試験したプロモーターと比較して高かった(図4)。
【0163】
これらの結果は、1,033 bpの配列番号4のプロモーターが、BTK発現レベルに関して最適なBTKプロモーターとして配列番号1~3および5~7を上回ることを示唆している。
【0164】
したがって、本発明者らは、出願時の先行技術とは対照的に、内因性BTK発現レベルと比較して2~3倍高い発現レベルを提供するように、本明細書に開示されるコドン最適化BTK構築物(NTX109を使用して本明細書に例示される;配列番号23)の発現を制御するためには、より長いバージョンのBTKプロモーター、例えば1,033 bp長が必要であることを示した。発現のこの2~3倍の上昇が、治療目的に最適であることがさらに見出された。この目的のために、このようなBTK発現レベルの上昇は前例がなく、内因性プロモーターを使用した場合、以前に報告されていなかった。
【0165】
BTK発現に対するBTK 5’UTRの調節効果を試験するために、本発明者らは、完全長(合計160 bp)を、31bpのみを含むBTK 5’UTRの解体バージョンと比較した。参照として、国際特許出願番号PCT/US2018/028331では、使用した5’UTRの長さは41 bpであった。また、変更された熱力学的特性を有する改変5’UTRが含まれた。このバージョンは、wt 5’UTRと比較して14個のミスマッチ変異を含有し、RNAfold熱力学的アンサンブル予測因子(http://rna.tbi.univie.ac.at/cgi-bin/RNAWebSuite/RNAfold.cgi)に基づいて設計された。全ての構築物は、1,033 bpのBTKプロモーター、ならびにT2Aによって分離されたGFPおよびコドン最適化BTK導入遺伝子を含有していた。CD34細胞への形質導入の6日後、GFPタンパク質レベルおよびmRNA転写物レベルを測定した(図5)。短い5’UTRバージョンを含有するNTX137から誘導される発現は、NTX109よりも低かった(タンパク質レベルで0.7倍および転写物レベルで0.4倍)。5’UTRをミスセンス変異で改変した場合、発現の有意な低下が測定された(NTX109と比較してタンパク質レベルで0.19倍および転写物レベルで0.06倍)。NTX109、NTX137およびNTX142の組み込み事象を形質導入の15日後に測定したところ、それぞれ1、0.5および0.1 VCN/細胞に対応していた。この試験は、BTK発現レベルおよび調節を維持するために完全長BTK 5’UTRを含めることの重要性を実証する。
【0166】
最後に、本発明者らは、本明細書でNTX109とも呼ばれる配列番号23を、本明細書でNTX141とも呼ばれる配列番号31の国際特許出願番号PCT/US2018/028331に開示される発現カセットと比較した。CD34細胞への形質導入の6日後、GFPタンパク質レベルをMOI(5~50)の範囲で測定した(図6A図6C)。25のMOIでは、NTX141から誘導される発現がNTX109よりも低かった(陽性GFPレベルの百分率で0.6倍および平均蛍光強度で0.23倍)。NTX109およびNTX141の組み込み事象を形質導入の13日後に測定したところ、それぞれ平均2.6および1.15に対応していた。
【実施例2】
【0167】
ヒトHSCにおけるNTX109の用量反応試験
【0168】
安全性の観点から、治療効果に必要な形質導入ビリオンの最小数を定義することが重要である。この試験では、本発明者らは、100、50、25、12.5および5の減少するMOIで、ヒトCD34+細胞をNTX109で形質導入した。この試験で測定されたVCN/細胞は、用量反応設計との一貫性を示し、最低用量(MOI 5)では0.3±0.15であり、最高用量(MOI 100)では最大1.5±0.16に達した(図7B)。形質導入の6日後、GFPおよびBtk導入遺伝子タンパク質レベルを、フローサイトメトリーおよびELISAを使用して比較した(図7A図7Cおよび図7D)。これらの結果は、25のMOIで、NTX109で形質導入されたCD34+細胞が、陽性導入遺伝子細胞の数と総BTKの量の両方においてほぼ飽和レベルに達したことを実証した。
【実施例3】
【0169】
X連鎖免疫不全(Xid)マウスに由来するBTK欠損細胞におけるBTK機能回復に基づく選択
【0170】
LVV候補を、いくつかのアッセイを使用してBtk機能回復について試験することができる。例えば、B細胞受容体刺激は、インビトロでのB細胞の発達および成熟の回復、培養中のB細胞増殖、Ca2+流動の測定、ならびに下流エフェクターのリン酸化によって評価される。
【0171】
さらに、さらなる選択が、Btk欠損細胞におけるBtk発現および機能を試験することによって行われる。マウスX連鎖免疫不全(Xid;CBA/CaHN-Btk xid/J、Jackson Laboratories)の骨髄に由来する系統陰性HSPC(Lin)をこれらの試験のために選択した。
【0172】
Xidマウスは、PHドメインに自然ミスセンス変異を有する。変異タンパク質は、原形質膜に非効率的に動員され、BCRシグナロソームに進入することができない。XidとBTK-/-の両方のマウスの表現型は、おそらく他のTecキナーゼの冗長性のために、XLAの表現型よりも重症度が低い。Xidマウスは、いくつかのタンパク質抗原に応答して正常量の抗体を産生するが、胸腺非依存性II型抗原に対する抗体応答を開始することができない。これらのマウスは、血清IgMおよびIgG3が低く、B細胞の数が減少している。さらに、存在するB細胞は、表面IgM対IgD比が低下しており、B細胞成熟の障害を示唆している。BTK欠損移行期2(T2)未成熟B細胞は、成熟B細胞を産生するのに必要なBCR依存性、生存促進性、増殖、および分化シグナルを生成することができない。これらの知見と一致して、BCR依存性カルシウムシグナルは、BTK欠損B細胞では著しく低下する(Ngら、2010;Yuら、2004)。
【0173】
Xid Lin細胞におけるBtkの発現と機能の両方を回復させるLVV候補をスクリーニングするために、LVV形質導入細胞を、B細胞分化を支持する条件で培養する。B細胞サブタイプ発達の免疫表現型検査分析をフローサイトメトリーによって行う。これらの細胞のB細胞活性を実証するために、分化B細胞をインビトロで、リポ多糖(LPS)で3~4日間刺激し、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して培地へのIgM抗体の分泌を検出する。これらの細胞アッセイは、これらの結果が遺伝子改変細胞から必然的に生じるので、Btk機能およびB細胞分化能力を正確に測定することを可能にするので、LVV候補のさらなる評価のための手段を提供する。
【0174】
BTK LVV候補NTX101およびNTX109を、インビトロでXid Lin細胞におけるB細胞発達欠陥を修正するそれらの能力について上記のようにアッセイした。NTX101とNTX109の両方が、図8A図8Bに示されるように、Xid Lin細胞におけるGFP発現を駆動し、NTX109は、より高い百分率の細胞で、より高い平均蛍光強度(MFI)で発現した。さらに、図8Cに示されるように、NTX101とNTX109の両方が、Xid Lin細胞のB細胞へのインビトロ分化速度を改善し、B細胞の百分率を、未形質導入Xidにおける5.2%から、XidNTX101において28.4%およびXidNTX109において42.6%にした。さらに、図8Dに示されるように、IgM陽性細胞が、XidNTX101形質導入細胞およびXidNTX109形質導入細胞において、未形質導入細胞における2.2%からそれぞれ19.8%および25.6%に上昇し、NTX109がXidマウスのB細胞分化欠損を修正する能力をさらに証明した。
【実施例4】
【0175】
インビボでのマウスXidモデルにおけるBTK活性の機能回復に基づく最適化LV_NTXベクターの効力試験
【0176】
Xidマウスモデルを使用して、本明細書に開示されるリードLVV候補NTX109がBTK機能を回復させるインビボ能力を評価した。重要なことに、この試験は、形質導入LVVの有効性および特異性の測定を容易にした。NTX109を、Xidドナーマウスのコホートの骨髄に由来するHSPC(Lin-)にエキソビボで形質導入した。形質導入細胞を、致死線量照射Xidレシピエントマウスの第2のコホートに移植した。
【0177】
NTX109の機能をXidマウスにおいてインビボで試験するために、XidNTX109 Lin細胞を8匹の致死線量照射Xidマウスに移植した。試験を移植後14週間で終了し、血液、BMおよび脾臓からの細胞単離物を各移植マウスおよび対照動物から回収した(図9A)。陰性対照については、Xidマウスに、BTKを含まないLVVで形質導入したXid細胞を移植した。CBA/Caナイーブマウスを陽性対照とした。造血系統(B、Tおよび骨髄)の再構成ならびにこれらの系統におけるBtk導入遺伝子の発現を評価した。VCN/細胞を形質導入の6日後にエキソビボで測定したところ、1.17±0.2であることが分かった。終了時に、骨髄中のVCN/細胞は、2.3±0.5 VCN/細胞に達する中程度の増加を示した(図9B)。この臨床的に関連するVCN値は、治療の安全性を実証する。
【0178】
Btk導入遺伝子発現は、GFP発現細胞の百分率によって提示され、図9Cおよび図9Dから分かるように、GFP発現は、移植後15週目でBMおよび脾臓において検出された。NTX109発現パターンの特異性は、骨髄細胞およびB細胞で測定された高いGFPレベルに基づいて決定されたように内因性Btk発現パターンと一致したが、T細胞はGFP陽性細胞の百分率が非常に低かった。GFPを発現するT細胞対GFPを発現するB細胞の比(T/B GFP+)は、脾臓において0.1であることが分かった。この低い値は、NTX109がXidマウスにおいてBTK発現を生理学的に調節することを示す(図9C図9E)。
【0179】
以前公開されたように、Xid脾臓B細胞は、B細胞成熟の遮断を示し、成熟B細胞の有意な減少および移行期細胞(T2)の増加を伴う。したがって、B細胞機能性の回復を、プロB細胞とプレB細胞との間ならびに未成熟B細胞と成熟B細胞との間の比を比較することによって試験した。実際、XidNTX109 Lin-細胞の移植がT2期の遮断を除去し、B細胞集団を成熟状態に移行させたので、NTX109はこの表現型を救済する能力を有する(図9F図9G)。
【0180】
最終的に、抗体分泌を試験するために、脾細胞を形質導入の14週間後に単離し、リポ多糖(LPS)を使用してインビトロで刺激した。IgMレベルを刺激前および後に測定した(図10 A)。血清中の総IgMレベルを測定するために、MABTECH IgM ELISAキットを使用した。96ウェルELISAプレート(Danyel Biotech)を100μlの捕捉抗マウスIgMでコーティングし、PBS中2μg/mlの濃度に希釈した。プレートを4℃で一晩インキュベートした。次に、ELISAプレートを、RTで、0.05% Tween 20+0.1% BSAを含有するPBS(インキュベーション緩衝液)中で1時間ブロッキングし、0.05% Tweenを含むPBS(洗浄緩衝液)中で5回洗浄した。血清を新たなインキュベーション緩衝液に添加し、RTで2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、検出ビオチン化抗体を添加し、引き続いてインキュベーション緩衝液中1:1,000に希釈したストレプトアビジンHRPを添加した。RTで1時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、TMB基質を添加した(Mabtech)。0.2M HSOの添加によって反応を停止させ、ELISAプレートリーダーを使用してODを450 nmで読み取った。滴定されたIgM標準との比較によってIgMレベルを定量化した。LPS刺激に応答したXidNTX109 Lin-細胞の移植後の抗体分泌活性が、全臓器レベルで部分的に救済された(図10B図10C)。Xid動物におけるこの部分的救済は、XidマウスがXLAをモデル化するのに役立った以前の刊行物と一致した。この部分的救済は、XLA患者とは対照的に、Xidマウスがほぼ正常な初期B細胞発達を示し、したがって初期B細胞選択的利点を欠くという事実によって説明することができるだろう。その理由から、細胞レベルで抗体分泌について試験することが重要である。この計算のために、NTX109応答性B細胞(細胞の67%)のみを考慮に入れ、Xidmock処置動物よりも有意に高い抗体分泌活性およびwtに匹敵する分泌を実証した(図10D)。これらの測定に基づいて、本発明者らは、NTX109が治療域に達し、XLA患者の治療として使用される可能性を有すると結論付けた。
【0181】
本発明のある特定の特徴を本明細書で例示および説明してきたが、多くの修正、置換、変更、および等価物がここで当業者に思い浮かぶであろう。したがって、添付の特許請求の範囲が、本発明の真の精神の範囲内に入る全てのこのような修正および変更を網羅することを意図していることを理解すべきである。

図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図10A
図10B
図10C
図10D
【国際調査報告】