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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ロール・ツー・ロール処理
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20231213BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C23C16/44 F
C23C16/455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558115
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 NL2021050749
(87)【国際公開番号】W WO2022124897
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】2027074
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523215266
【氏名又は名称】カルパナ テクノロジーズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】スピー,ディーデリック アドリアヌス
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA18
4K030BA02
4K030CA02
4K030CA07
4K030CA17
4K030EA04
4K030EA05
4K030EA11
4K030GA14
4K030HA01
(57)【要約】
ロール・ツー・ロール堆積の為のシステムが記載されており、該システムは、中央シリンダの周りに配置された可撓性基体の螺旋状搬送の為の静止した細長い該中央シリンダを備えている基体搬送システム、ここで、該中央シリンダが、該中央シリンダの表面の上での該可撓性基体の無摩擦又は低摩擦搬送の為に、該中央シリンダの該表面の内側に配置された又は該中央シリンダの該表面上に配置された軸受構造体を備えている;並びに、1以上の原子層堆積ALD堆積ヘッド、ここで、ALD堆積ヘッドは中空シリンダとして構成されており、処理ヘッドの内面が、原子層を該可撓性基体上に堆積させる為の堆積構造体を備えている、を備えており、ここで、該堆積ヘッドの内側半径が該中央シリンダの外側半径よりも大きく、該1以上の堆積ヘッドが、該中央シリンダの周りを回転するように構成されており、処理ヘッドの長手方向軸が該中央シリンダの長手方向軸と一致する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール・ツー・ロール堆積の為のシステムであって、
中央シリンダの周りに配置された可撓性基体の螺旋状搬送の為の静止した細長い前記中央シリンダを備えている基体搬送システム、ここで、前記中央シリンダが、該中央シリンダの表面の上での前記可撓性基体の無摩擦又は低摩擦搬送の為に、前記中央シリンダの前記表面の内側に配置された又は前記中央シリンダの前記表面上に配置された軸受構造体を備えている;並びに、
1以上の原子層堆積ALD堆積ヘッド、ここで、該ALD堆積ヘッドは中空シリンダとして構成されており、処理ヘッドの内面が、原子層を前記可撓性基体上に堆積させる為の堆積構造体を備えている、
を備えており、
ここで、前記堆積ヘッドの内側半径が前記中央シリンダの外側半径よりも大きく、前記1以上の堆積ヘッドが、前記中央シリンダの周りを回転するように構成されており、処理ヘッドの長手方向軸が前記中央シリンダの長手方向軸と一致する、
前記システム。
【請求項2】
前記基体の前記螺旋状搬送が第1の回転方向に関連付けられており、及び前記堆積ヘッドの前記回転が第2の回転方向に関連付けられており、ここで、前記第2の回転方向が前記第1の回転方向と反対である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記軸受構造体が、前記中央シリンダの前記表面の内側に配置された又は前記表面上に配置されたガス軸受構造体及び/又はローラ軸受構造体を備えており、前記ガス軸受構造体が、前記中央シリンダの前記表面の内側に複数のガス出口及び複数のガス排気口を備えている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記基体搬送システムが、
前記中央シリンダの上に互いに隣接して配置された複数の中空管セグメントを更に備えており、前記可撓性基体が前記中空管セグメントの周りに巻き付けられており、前記可撓性基体が処理チャンバを通じて搬送されるときに、前記管セグメントが前記中央シリンダの第1の端部から前記中央シリンダの第2の端部に向かって前記中央シリンダの上を移動する、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記基体搬送システムが、
第2の螺旋経路を介して前記中央シリンダの周りを移動するように構成された可撓性ベルト、好ましくは無端コンベヤベルト、を更に備えており、前記可撓性ベルトが前記可撓性基体の螺旋ベルト搬送構造体を形成し、前記可撓性基体が前記螺旋ベルト搬送構造体の周りに巻き付けられており、
前記可撓性ベルト構造体が前記第2の螺旋経路を介して前記中央シリンダの上を搬送されるときに、前記可撓性基体が堆積ヘッドを通じて前記第1の螺旋経路を介して搬送される、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記基体搬送システムが、
前記可撓性基体を前記中央シリンダ上に案内する為の基体案内構造体を更に備えており、前記基体案内構造体は、前記可撓性基体が前記中央シリンダの周りの前記第1の螺旋経路をたどるように配置されており、
前記基体案内構造体は、トルク又は力を前記ウェブ上に伝達して、前記ウェブを前記中央シリンダの上で移動させる為に、トルク装置、例えばモータ、に接続された1以上のローラ、好ましくは駆動ローラとして構成された1以上の第1のローラ、を備えている、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記可撓性基体が或る供給角度で前記中央シリンダ上に供給され、前記基体案内構造体が、前記中央シリンダに相対的に前記可撓性基体の位置及び/又は配向を調整する為に構成された調整可能な基体案内構造体であり、前記供給角度が、前記可撓性基体の前記長手方向軸と前記中央シリンダの前記長手方向軸との間の角度によって規定される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
処理ヘッドの前記ALD堆積構造体が、前記中央シリンダの周りに半径方向に配置されており、且つ複数の処理セクションに分割されており、好ましくは前記複数の処理セクションの少なくとも一部が、処理ヘッドの内面において前記中央シリンダの前記長手方向軸に平行な方向に延在する、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
処理セクションが、バッファセクション、例えばパージセクション、によって分離されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理ヘッドが前記可撓性基体を処理する為の処理構造体を更に備えており、前記処理構造体が処理ヘッドの前記内面に沿って半径方向に配置されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記処理ヘッドが処理構造体を更に備えており、該処理構造体が前記処理ヘッドの前記内面に沿って接線方向に配置されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
1以上のガス供給源及び/又は排気口が、1以上の回転ユニオン、好ましくは前記堆積ヘッドの片側又は両側に配置された1以上の中空シャフト回転ユニオン、を使用して前記回転可能な堆積ヘッドに接続されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記基体が前記堆積ヘッドを通じて前記中央シリンダの周りの第1の螺旋経路を介して搬送される間に、前記中央シリンダの前記表面と堆積ヘッドの内面との間の空間が、前記可撓性基体上に原子層を堆積させる為の堆積ゾーンを形成する、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール・ツー・ロール処理(roll-to-roll processing)に関し、排他的でないが、特に、ロール・ツー・ロール処理システム、例えば、ロール・ツー・ロール層堆積システム、及びそのようなロール・ツー・ロール層処理システムの為の基体搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール・ツー・ロール処理(ウェブ処理(web processing)又はリール・ツー・リール処理(reel-to-reel processing)としても知られる)は、薄膜構造体、例えば、ディスプレイ、光起電力又は電池電極の為の薄膜構造体、が、可撓性プラスチック基体又は金属箔のロール上に連続的に堆積され、エッチングされ、そして処理される方法を含む。現在、高スループットで原子レベルにおいてプロセスの制御を可能にするロール・ツー・ロール処理技術が開発されている。例えば、原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)は、薄膜材料を堆積させる為に基体の表面を2つ以上の交互の前駆体ガスに曝露することによって無機材料で逐次コーティングされる薄膜堆積プロセスである。これらのガスは、該材料の完全な単層が該基体上に形成されるように該表面と反応する。このプロセスは、前駆体ガスが単層コーティングに変換されると反応が停止し、高度にコンフォーマルコーティングを提供するという意味で自己制限的である。このようにして、ALDは高品質のコーティングの形成を可能にし、半導体産業における多くの用途、例えば、光起電力、電池電極、OLED等、の為の好ましい方法になった。
【0003】
慣用的なALD処理スキームにおいて、反応チャンバを半周期毎に排気しなければならない為に、堆積速度が非常に遅く、このプロセスは大規模用途の為にあまり適していない。その目的の為に、前駆体が連続的にしかし異なる物理的位置に堆積される空間ALDスキームが開発されている。空間ALD技術の概要は、Poodt et al,Spatial atomic layer deposition:a route towards further industrialisation of atomic layer deposition.,J.Vac.Sci.Technol.A30(1),February 2012による論文に記載されている。空間ALD概念はまた、可撓性基体上への層堆積の為のロール・ツー・ロールシステムにおいて使用されることができる。その場合、ガスの分離は困難であり、ロール・ツー・ロールシステムにおいて、該基体の正確な制御は非常に困難である。この問題に対処する為に、様々なスキームが開発されてきている。
【0004】
米国特許出願公開第2018/0037994号は、堆積ヘッドとして構成された回転ドラムの周りに可撓性基体が案内される空間的ロール・ツー・ロールALDシステムを記載する。堆積中、ウェブは、ガス軸受を使用して該回転ドラムの上を非接触で搬送される。同様に、国際公開第2012/028776号パンフレットは、堆積ヘッドが外側を移動している間に、基体が軸受装置の中央円筒状構成の周りにしっかりと巻き付けられるシステムを記載する。
【0005】
両方のスキームの場合に、ツール全体の基体位置を制御することは非常に困難である。該基体はガスを自身のスロット内に閉じ込めている故に、該基体を高精度で搬送することは極めて重要である。その上、両方のスキームにおいて、堆積ヘッドが該基体によって覆われていない領域がある。ここにおいて、ガスが制御されずに流出する可能性がある。これを回避する為に、該堆積ヘッドは、このゾーンに入る前に(少なくとも部分的に)パージされなければならない。そのような手段は、フラッシング/パージをしばらく前に開始する必要があり、従って該堆積領域の大部分が失われる故に、スループットを犠牲にする。更に、パージは決して完璧でなく、この領域において気相反応、すなわち汚染、を結果として生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、上記から、当技術分野において、改善されたロール・ツー・ロール層処理システムが必要とされることになる。特に、ロール・ツー・ロール処理システム、例えば、堆積ヘッドに相対的に基体の正確な位置制御を必要とする堆積技術、例えばALD技術、の為に適したロール・ツー・ロール層堆積システム、が当技術分野において必要とされている。特に、当技術分野において、堆積ヘッドを基体で常に完全に覆うことを可能にする、ロール・ツー・ロール処理の為の改善された基体搬送システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当業者によって理解されるように、本発明の観点は、システム又は方法として具現化されうる。
【0008】
本発明は、改善されたロール・ツー・ロール堆積システム、及び堆積中に堆積ヘッドに相対的に基体の正確な制御を可能にするそのような堆積システムの為の基体搬送システムを提供することを目的とする。該堆積システムは、高速又は高スループットのロール・ツー・ロール空間ALD処理に特に適している。工業プロセスにおいて、基体が幅数メートル及び厚さ10~200マイクロメートルであることができることを考慮すると、該基体は通常非常に柔軟であり、それらの正確な位置を制御することは複雑である。多くの堆積プロセスにおいて、堆積ヘッドと基体との間の距離を正確に制御することが最も重要である。特に、空間ALD堆積において、十分なガス閉じ込めを確実にする為に、200マイクロメートル以下、好ましくは50マイクロメートル以下、の基体と堆積ヘッドとの間の距離が必要である。
【0009】
1つの観点において、本発明は、ロール・ツー・ロール処理の為のシステムに関し得、該システムは、中央シリンダの周りに配置された可撓性基体の螺旋状搬送の為の静止した細長い該中央シリンダを備えている基体搬送システム、ここで、該中央シリンダが、該中央シリンダの表面の上での該可撓性基体の無摩擦又は低摩擦搬送の為に、該中央シリンダの該表面の内側に配置された又は該中央シリンダの該表面上に配置された軸受構造体を備えている;並びに、1以上の原子層堆積ALD堆積ヘッド、ここで、該ALD堆積ヘッドは中空シリンダとして構成されており、処理ヘッドの内面が、原子層を該可撓性基体上に堆積させる為の堆積構造体を備えている、を備えており、ここで、該堆積ヘッドの内側半径が該中央シリンダの外側半径よりも大きく、該1以上の堆積ヘッドが、該中央シリンダの周りを回転するように構成されており、処理ヘッドの長手方向軸が該中央シリンダの長手方向軸と一致する。
【0010】
1つの実施態様において、該基体が該堆積ヘッドを通じて該中央シリンダの周りの第1の螺旋経路を介して搬送される間に、該中央シリンダの該表面と堆積ヘッドの内面との間の空間が、該可撓性基体上に原子層を堆積させる為の堆積ゾーンを形成する。
【0011】
回転堆積ヘッド(rotating deposition head)を有する空間ALDシステムにおける螺旋搬送システムは、下記の事実を含む、従来技術を超える様々な利点を提供する:効率的な堆積が達成されることができるように該堆積ヘッドがウェブに連続的に面すること;該堆積中に、該堆積ヘッドが回転し、それによって、堆積領域を通じて移動する間に該基体が曝露されるところのALDサイクル(1つの原子層を形成する1つのALDサイクル)の数を増加させること;及び、ガス軸受中央シリンダが、堆積領域全体にわたって該基体の半径方向位置の安定し且つ正確な画定を可能にすること。このことにより、該堆積領域において前駆体ガスの良好な分離が提供される。
【0012】
1つの観点において、本発明は、ロール・ツー・ロール処理システムに関し得、該ロール・ツー・ロール処理システムは、中央シリンダの周りに巻き付けられた可撓性基体の螺旋状搬送の為の細長い該中央シリンダを備えている基体搬送システム;中空シリンダとして構成された処理ヘッド、ここで、該堆積ヘッドの内面が、1以上の物質を該可撓性基体の表面上に堆積させる為の処理構造体、例えば前駆体ガス出口、を備えている、を備えており、ここで、該処理ヘッドの内側半径が該中央シリンダの外側半径よりも大きく、該中央シリンダが中空の第1の堆積ヘッドの内側に配置されており、該処理ヘッドの長手方向軸が該中央シリンダの長手方向軸と一致し、該中央シリンダの表面と該処理ヘッドの内面との間の空間が処理ゾーンを画定し、該基体搬送システムが、該中央シリンダの周りの、該処理ヘッドを通る第1の螺旋経路を介して、可撓性基体を搬送するように構成されており、並びに該処理ヘッドが該中央シリンダの周りを回転するように構成されている。
【0013】
従って、本発明は、筒状の中央シリンダの周りの、該処理ヘッドを通る螺旋経路を介して搬送されるところの可撓性基体、例えばウェブ又は箔、に相対的に移動する処理ヘッドを備えている。
【0014】
このようにして、該基体の全ての位置が、多くの前駆体サイクル(異なる前駆体ガス)に可能な限り速く曝露されることができる。更に、従来技術の解決策と比較して、本発明は、複数の前駆体が混合しないように、改善されたガス閉じ込めを提供し、それによって気相反応、該システム(処理チャンバ)又は該基体の汚染及びダスト/粒子形成を回避する。加えて、本発明は、堆積されたコーティングが該堆積システムの表面に接触しうるリスクを排除し、又は少なくとも最小化し、それによって、該コーティングの損傷又は該コーティング上の粒子形成の可能性を回避する。
【0015】
提案されたロール・ツー・ロール処理システムがもたらす重要なプロセス上の利点は、完全な堆積ヘッドが常に該基体によって覆われることである。従って、ガス漏れ及び汚染が発生する可能性がある覆われていないスロットは決して存在しない。加えて、ガススロットが覆われていない領域に入る前に該ガススロットをパージする必要がなく、堆積面積/効率が有意に増加する。基体位置の連続的な制御は、常に、該基体に触れるリスク無しに良好なガス閉じ込めを可能にする。堆積領域に面する該基体のインフィード(in feed)又はアウトフィード(out feed)の点がない故に、堆積条件の乱れはどこにも発生しない。
【0016】
本発明の更なる利点は、堆積シーケンス、例えばALD堆積シーケンス、において開始又は仕上げ前駆体を選択する可能性に関する。既知の空間ALDプロセスにおいて、該基体の全ての部分の複数の前駆体のシーケンスは、該複数の前駆体の別の(ランダムな)1つで開始又は終了する。対照的に、本発明は、プロセスを開始又は終了する為の1以上の所定の前駆体の選択を可能にし、従って既存のプロセスに新しい堆積の可能性を追加する。例えば、幾つかの堆積スキームにおいて、該基体上でのALD成長の均一な核形成を確実にする為に、(酸化剤とは対照的に)常に金属前駆体を用いて堆積プロセスを開始することが望ましい場合がある(例えば、トリメチルアルミニウム曝露を用いて酸化アルミニウム成長を常に開始する)。他の堆積スキームにおいて、仕上げ前駆体を選択することができることは有益でありうる(例えば、環境において不安定であり、分子層堆積を通じて堆積された有機層を、金属前駆体で常に仕上げ、又はそれを薄い無機層でキャップする為の一連のサイクルによっても不動態化する)。
【0017】
1つの実施態様において、該基体の該螺旋搬送が第1の回転方向に関連付けられており、及び該第1の堆積ヘッドの回転が第2の回転方向に関連付けられており、ここで、該第2の回転方向は該第1の回転方向と反対である。
【0018】
1つの実施態様において、該中央シリンダは、第1の堆積チャンバを通じて可撓性基体の無摩擦又は低摩擦搬送を提供する為に、該中央シリンダの表面の内側に配置された又は表面上に配置された軸受構造体、好ましくはガス軸受構造体及び/又はローラ軸受構造体、を備えている。
【0019】
1つの実施態様において、該基体搬送システムが、該中央シリンダの上に互いに隣接して配置された複数の中空管セグメントを更に備えており、該可撓性基体が該中空管セグメントの周りに巻き付けられており、該可撓性基体が該第1の堆積チャンバを通って搬送されるときに、該管セグメントが該中央シリンダの端部に向かって該中央シリンダの上を移動する。
【0020】
1つの実施態様において、該基体搬送システムが、第2の螺旋経路を介して該円筒状中央シリンダの周りを移動するように構成された可撓性ベルト、好ましくは無端コンベヤベルト、を更に備えており、該可撓性ベルトが該可撓性基体の螺旋ベルト搬送構造体を形成し、該可撓性基体が該螺旋ベルト搬送構造体の周りに巻き付けられており、該可撓性ベルト構造体が該第2の螺旋経路を介して該中央シリンダの上を搬送されるときに、該可撓性基体が処理チャンバを通じて該第1の螺旋経路を介して搬送される。
【0021】
1つの実施態様において、該基体搬送システムが、該可撓性基体を該中央シリンダ上に案内する為の搬送案内構造体を更に備えており、該案内構造体は、該可撓性基体が該中央シリンダの周りの第1の螺旋経路をたどるように配置されている。
【0022】
1つの実施態様において、該堆積構造体が複数の処理ゾーン内に配置され、ここで、各処理ゾーンは該処理ヘッドの内面において軸方向に延在し、各処理ゾーンは、処理、例えば基体上に材料を堆積させる、為の処理構造体を備えている。
【0023】
1つの実施態様において、該複数の処理ゾーンの各々は、パージゾーン及び/又は排気ゾーンによって分離されていてもよい。
【0024】
1つの実施態様において、該処理構造体は、化学蒸着技術、例えば、プラズマ加速化学蒸着(PECVD:plasma enhanced chemical vapour deposition)、ホットワイヤ化学蒸着(HWCVD:hot wire chemical vapour deposition)、又は金属有機化学蒸着(MOCVD:metal organic chemical vapour deposition)、原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)に基づく化学蒸着、分子層堆積(MLD:molecular layer deposition)、物理蒸着(PVD:physical vapour deposition)技術、又は印刷技術、例えばスロットダイコーティング、若しくはインクジェット印刷、に基づいて該基体上に1以上の層を堆積するように構成された1以上の堆積構造体を備えていてもよい。
【0025】
更なる観点において、本発明は、ロール・ツー・ロール処理システムの為の基体搬送システムに関し得、該基体搬送システムは、中央シリンダの周りに巻き付けられた可撓性基体を螺旋状に搬送する為の細長い静止中央シリンダ、ここで、該中央シリンダが、可撓性基体の無摩擦又は低摩擦搬送を提供する為に、該中央シリンダの表面の内側に配置された又は該表面上に配置された軸受構造体、好ましくはガス軸受構造体及び/又はローラ軸受構造体、を備えている;並びに、該可撓性基体を中央シリンダ上に案内する為の搬送案内構造体、ここで、該可撓性基体が該中央シリンダの周りの第1の螺旋経路を辿るように配置されている、を備えている。
【0026】
該システムは、該処理ヘッドを通じて該基体の連続的な無摩擦搬送を可能にする。
【0027】
1つの実施態様において、該基体搬送システムは、該中央シリンダの上に互いに隣接して配置された複数の中空管セグメントを更に備えており、該可撓性基体が該中空管セグメントの周りに巻き付けられており、ここで、該可撓性基体が該処理チャンバを通じて搬送されるときに、該管セグメントは該中央シリンダの端部に向かって該中央シリンダの上を移動する。
【0028】
1つの実施態様において、該基体搬送システムは、第2の螺旋経路を介して該円筒状中央シリンダの周りを移動するように構成された可撓性ベルト、好ましくは無端コンベヤベルト、を更に備えており、該可撓性ベルトが該可撓性基体の螺旋ベルト搬送構造体を形成し、該可撓性基体が該螺旋ベルト搬送構造体の周りに巻き付けられており、該可撓性ベルト構造体が該第2の螺旋経路を介して該中央シリンダの上を搬送されるときに、該可撓性基体が該処理チャンバを通じて第1の螺旋経路を介して搬送される。
【0029】
提案された搬送システムの重要なプロセス上の利点は、最新技術のロール・ツー・ロール搬送システムと比較して、該搬送シリンダが該基体と永続的に接触していることである。この密着により、真空環境において使用される場合であっても、該搬送シリンダそれ自体を冷却又は加熱することによって該基体の温度を正確に制御することができる。加えて、該基体は全ての点において該中央シリンダの周りにしっかりと巻き付けられている故に、変形(例えば、基体の加熱/冷却によるしわ)の可能性が最小限に抑えられる。
【0030】
その上に、基体の永続的な支持は、非常に薄く且つ脆弱な基体の使用を可能にし、それは非常に望ましいが、多くの最新技術のロール・ツー・ロールツール及びプロセスにおいて事実的に不可能である。
【0031】
可撓性基体を処理する生産ラインの中心構成要素として提案された搬送シリンダは、該基体が該中央シリンダを離れる必要がない故に、1つのシステムにおいて複数のプロセス(CVD、ALD、スロットダイコーティング、硬化等)を適用する為に便利である。
【0032】
複数のプロセス間にステアリングユニット/追加のローラが必要とされない故に、完全なツール/ラインのフットプリントは非常に小さくなることができる。
【0033】
中央搬送シリンダに面して互いに隣接して配置された処理機器、例えば堆積機器、の構成により、保守、修理、又は清掃の為に全ての機器が容易にアクセス可能になる。全てのプロセス機器がラインの中心に次々に配置されている最先端の生産ラインとは対照的である。
【0034】
搬送システムの重要な実用的利点は、特に研究開発の状況において、1つのシステムを使用して様々な基体幅を処理する為に使用されることができることである。該基体が該中央シリンダに入る角度を調整することによって、第1の螺旋経路のピッチは、該基体幅に一致するように選択されることができる。
【0035】
本発明は、本発明の実施態様を概略的に示す添付の図面を参照して更に説明されるであろう。本発明は、これらの特定の実施態様に決して限定されないことが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール層堆積システムの概略図を図示する。
図1B】本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール層堆積システムの概略図を図示する。
図1C】本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール層堆積システムの概略図を図示する。
図2A】本発明の様々な実施態様に従うロール・ツー・ロール層堆積システムの断面の概略図を図示する。
図2B】本発明の様々な実施態様に従うロール・ツー・ロール層堆積システムの断面の概略図を図示する。
図2C】本発明の様々な実施態様に従うロール・ツー・ロール層堆積システムの断面の概略図を図示する。
図3】本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール堆積の為の基体搬送システムの概略図を図示する。
図4】本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール層堆積システムの断面の概略図を図示する。
図5】本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール堆積の為の基体搬送システムの概略図を図示する。
図6】本発明の1つの実施態様に従う基体案内構造体を図示する。
図7A】本発明の1つの実施態様に従う基体案内構造体の供給角の効果を図示する。
図7B】本発明の1つの実施態様に従う基体案内構造体の供給角の効果を図示する。
図8】本発明の更なる実施態様に従うロール・ツー・ロール層堆積システムの概略図を図示する。
図9】本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール層堆積システムの為の堆積ヘッドの概略図を図示する。
図10A】本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール堆積の為の基体搬送システムの概略図を図示する。
図10B】本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール堆積の為の基体搬送システムの概略図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1A図1Cは、本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール処理システムの概略図を図示する。特に、図1Aは、当技術分野においてウェブ又は箔としても知られている細長い可撓性基体106を受け入れる為の軸受面を有する細長い静止中央シリンダ102を備えているロール・ツー・ロール層処理システム100、例えばロール・ツー・ロール堆積システム、の概略図を示す。該ウェブ材料は、金属、例えばステンレス鋼、又は有機材料でありうるが、ウェブ幅は、数センチメートルまで小さくすることができ、2メートル以上であることもでき、10~200マイクロメートルの厚さを有する。
【0038】
図1B及び図1Cは、該システムの2つの異なる側面図(夫々、長手方向軸105に平行及び中央シリンダの長手方向軸に垂直)を図示する。該システムは、搬送中に可撓性基体が該中央シリンダの上の螺旋経路を辿るように、該ウェブを螺旋状に中央シリンダの周りに巻き付けるように構成されていてもよい。更に、該システムは、中空シリンダとして構成された処理ヘッド104を備えていてもよく、ここで、該中空シリンダの内側半径は、中央シリンダの半径よりも大きい。更に、堆積中、円筒状堆積ヘッドは、該中央シリンダの周りを回転するように構成されていてもよい。
【0039】
図面に示されているように、該中央シリンダは、該中空シリンダの長手方向軸が該中央シリンダの長手方向軸と一致するように中空円筒状処理ヘッドの内側に配置されていてもよい。該中空シリンダの内面は、該中央シリンダの周りに配置された基体の外面に直接的に面する処理構造体、例えば堆積構造体、前処理構造体及び/又はエッチング構造体、を備えていてもよい。螺旋経路は、該基体のインフィード領域(in-feed area)108及びアウトフィード領域(out-feed area)108が堆積ヘッドの外側に配置されることを可能にする。該中央シリンダは、可撓性基体が該堆積ヘッドを通じて螺旋経路に沿って移動することを可能にするように構成されている為に、該堆積ヘッド内の全ての点におけるウェブ位置が明確に画定され、従って、従来技術のシステムに関連する問題が生じずに連続層が堆積されることができる。該ウェブの該インフィード領域及び該アウトフィード領域はドラムの外側にある故に、堆積中のいつでも該処理ヘッドは常に該基体に面している(該基体によって覆われている)。該処理ヘッドのパージ又はフラッシングは必要とされない。該処理ヘッドの内面と該基体の表面との間の距離の正確な制御が可能であるように、該ウェブは、内面シリンダの周りにしっかりと巻き付けられていてもよい。このようにして、この距離は非常に小さく、例えば50マイクロメートル~200マイクロメートル、にされることができ、従って、該基体に触れる危険を冒すこと無しにガスの交差を回避することができる。従って、該システムは、汚染のリスクを排除しながら高い堆積速度を提供する。
【0040】
該処理ヘッドを通る該ウェブの該螺旋経路は、様々な方法で実現されうる。例えば、1つの実施態様において、該中央シリンダは、該中央シリンダの上の該基体の無摩擦搬送を可能にするように構成されていてもよい。従って、その場合、回転ドラムは、該基体が該回転ドラムの周りに巻き付けられたときにガスが該回転ドラムの表面と該基体の第1の表面(裏面)との間に空間を形成するように、或る圧力でガスを放出する為の複数の孔又は多孔質層を該回転ドラムの表面に備えているガス軸受構造体を備えていてもよい。
【0041】
図2A図2Cは、本発明の様々な実施態様に従うロール・ツー・ロール層堆積システムの断面の概略図を図示する。特に、図2Aは、本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール処理システムの断面を図示する。特に、この図は、ロール・ツー・ロール原子層堆積層(ALD)システム200の非限定的な例を図示する。該システムは、ガス軸受面204を備えている中央シリンダ202を備えていてもよい。該ガス軸受は、該中央シリンダの外面におけるガス(例えば、窒素ガス)出口構造体によって実現されてもよい。更に、該中央シリンダは、中空円筒状の堆積ヘッド210内に配置されている。該堆積ヘッドの中央シリンダの外径及び中空シリンダの内径は、堆積チャンバとして云われうる円筒状空間を形成するように寸法決めされている。
【0042】
該堆積チャンバは、ウェブ206を受け入れて且つ位置決めするように構成されていてもよく、ここで、該中央シリンダの外面と該基体の裏面との間の距離は、該ウェブの両面側で該堆積チャンバ内の圧力を制御することによって制御されてもよい。ウェブ案内システム(図6及び図7を参照して以下においてより詳細に記載されている)を備えている搬送機構が、堆積チャンバを通じてウェブを搬送する為に使用されてもよい。図面に示されているように、搬送中、上面は該堆積ヘッドの内面に面しうる。該円筒形状の該堆積ヘッドは、1以上の堆積構造体2121~4を備えている機能セクション、例えば前駆体出口を備えているセクション、に分割されてもよい。各前駆体セクションは、該基体と反応することができるように、該基体の一部を前駆体ガスに曝露するように構成されていてもよい。該堆積ヘッドは、その軸の周りを第1の接線方向210に回転してもよく、一方、該ウェブは、堆積チャンバを通じて搬送され、ここで、螺旋搬送方向は、該第1の接線方向とは反対の第2の接線方向208を含む。
【0043】
従って、該堆積ヘッドが該基体の上を移動している間に該ウェブが該堆積チャンバを通じて或る速度で搬送されるときに、前駆体ガスが各前駆体セクションにおいて該基体に曝露される。該堆積ヘッドは、堆積構造体を備えている堆積セクション2121~4、例えば前駆体出口、を備えていてもよい。該堆積ヘッドの該堆積構造体は、ガスが排出されることができるように、窒素の入口及び出口(排気開口部)を備えていてもよいバッファセクション2141~3によって分離されうる。該回転堆積ヘッドへガスを供給すること及び該回転堆積ヘッドからガスを抽出することは、回転ユニオン又は回転ジョイントを使用して実現されてもよく、それらは、固定された(静止)部分から該回転部分へ供給媒体(気体、液体)を可能にする周知のユニオン構造体である。それは、固定供給通路(例えば、パイプ又は配管)と回転部分(例えば、ドラム、シリンダ、又はスピンドル)との間に密封を提供して、該回転部分に入る及び/又は回転部分から出る流体又はガスの流れを可能にする。幾つかの実施態様において、該堆積ヘッドへのガスの供給は、該堆積ヘッドの片側又は両側の該中央搬送シリンダの周りに配置された1以上の中空シャフト回転ユニオンによって実現されうる。
【0044】
堆積中、窒素が、バッファセクションの位置において該堆積チャンバ内に導入されてもよい。このようにして、該ウェブと該堆積ヘッド堆積ゾーン(1以上の前駆体ガスを含む)との間の空間において、バッファゾーン(窒素ガスを含む)によって分離された堆積ゾーンが形成されうる。該バッファゾーンは例えば、異なる前駆体セクションの異なる前駆体の間の相互汚染を防止しうる。該ゾーンは、各前駆体セクションにおける該基体との前駆体反応の正確な制御を可能にする。ガス軸受の圧力とバッファゾーン及び堆積構造体の圧力とを制御することにより、該ウェブを該堆積チャンバ内の所定の位置において「吊り下げる」ことを可能にする。このようにして、該ウェブは、全ての前駆体セクションにおいて層が該ウェブ上に堆積されている間に、該堆積チャンバを通じて、摩擦なしで又は少なくとも低摩擦で搬送されることができる。
【0045】
図2B及び図2Cは、中央シリンダ202のガス軸受面204の間に配置されたウェブ206を備えている該中央シリンダ202を備えているロール・ツー・ロール原子層堆積層(ALD)システムの更なる断面を図示する。該堆積ヘッドは半径方向に配置された複数の堆積モジュール216を備えていてもよく、従って、堆積中に該ウェブの表面が常に該堆積モジュールに面している。堆積モジュール間にガス出口(排気口)が配置されていてもよい。図2Cに示されているように、該堆積モジュールは、バッファゾーンを形成する為に、1以上の前駆体の為の1以上の出口2201、2、及びガス、例えば窒素、の為の出口を備えていてもよい。この図は、該堆積モジュールを備えている、堆積ヘッドの内面が、該ウェブの近くに配置されていることを示している。
【0046】
図1及び図2は、効率的な堆積が達成されることができるように該堆積ヘッドが該ウェブに連続的に面していることを備えていてもよい回転堆積ヘッドを有する空間ALDシステムにおける螺旋ウェブ搬送システムの利点を明確に示す。更に、堆積中、該堆積ヘッドが回転し、それによって、堆積領域を通じて移動しながら該基体が曝露されるALDサイクルの数が増加する。加えて、ガス軸受中央シリンダは、該堆積領域全体にわたって該基体の半径方向位置の安定し且つ正確な画定を可能にする。このことは、該堆積領域における前駆体ガスの良好な分離を確実にする為に必要である。
【0047】
図3は、本発明の1つの実施態様に従う基体搬送システムの一部の概略図を図示する。特に、該図は、第1の端部305と第2の端部305と軸受面、好ましくは低摩擦又は無摩擦の軸受面、例えばガス軸受面、とを備えている静止中央シリンダ302を備えている基体搬送システム300を図示する。更に、中空シリンダの形状の管セグメント3041~nは、該中央シリンダの外径よりもわずかに大きい内径を有する。例えば、該管セグメントが該中央シリンダの上をスライドするときに、該中央シリンダの外面と該管セグメントの内面との間の小さな空間は、該中央シリンダの上の該管セグメントの実質的に無摩擦の移動を可能にするガス軸受構造体を形成しうる。該管セグメントは、該ウェブを受け入れる為に滑らかな表面を形成する為に中央シリンダの上に互いに隣接して配置されていてもよい。ウェブ案内構造体(例えば、図6を参照して以下において記載されている)が、螺旋の様式で該中央シリンダセグメントによって形成された表面の周りにウェブ3061、2をしっかりと巻き付ける為に使用されうる。該基体搬送システムは、図1を参照して記載されているロール・ツー・ロール処理システムにおいて使用されうる。
【0048】
従って、軸受構造体、例えばガス軸受構造体、を有する静止中央シリンダが堆積チャンバ内の特定の位置(「懸架」)において該ウェブを保ちうる図2の基体搬送シリンダとは対照的に、この実施態様において、該ウェブは、該中央シリンダの軸受面の上を移動する管セグメントと直接接触している。直接接触により、該ウェブの位置決め及び搬送の正確な制御が提供される。加えて、該ウェブと該管セグメントとの直接接触は、堆積プロセスにおける重要なプロセスパラメータである、該ウェブの改善された温度制御を可能にする。
【0049】
該中央シリンダ及び該ウェブ案内構造体の位置が静止している故に、該管セグメントは、第1の端部305から該シリンダの第2の端部305に向かって該中央シリンダの上を移動する。言い換えれば、該セグメントは、図面に示されているように、該堆積ヘッドを通って該中央シリンダの端部に向かって螺旋経路の上を搬送されるウェブと同一の螺旋パターンに従う。該セグメントは、該ウェブそれ自体によって引っ張られるか又は追加の駆動要素によって搬送される。中央シリンダの端部において、搬送機構が、タブ要素をシリンダの開始部に戻して搬送する為に使用されうる。このようにして、該堆積ヘッドを通じて該ウェブの連続的な(「無端」)搬送が保証されることができる。
【0050】
図4は、本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール層堆積システムの断面の概略図を図示する。特に、この図面は、図3を参照して記載された基体(ウェブ)搬送システムを備えているロール・ツー・ロール層堆積システムの断面を図示する。該図は、中央(静止)シリンダ402と、軸受構造体404、例えば、ガス軸受構造体又は機械軸受構造体、に基づいて該中央シリンダの表面の上方に持ち上げられた中空管セグメント405とを図示する。図3を参照して記載されているように、ウェブは、該管セグメントの外面の周りにしっかりと巻き付けられていてもよい。該ウェブが該中央シリンダの上を搬送されるときに、該管セグメントは、該静止中央シリンダに相対的に一方向に移動(回転)しうる。更に、堆積ヘッド410は、該中央シリンダ及び管要素の周りに配置され、且つ画得ウェブを担持する該管セグメントの移動方向とは反対の方向に回転するように構成されていてもよい。中央シリンダと堆積ヘッドの内面との間の空間は、該堆積チャンバを画定してもよく、ここで、該堆積ヘッドの内面は、1以上の物質を該可撓性基体の表面上に堆積させる為の堆積構造体4121~4、例えば前駆体ガス出口、を備えていてもよい。加えて、該堆積ヘッドの内面は、バッファゾーン4141~3、例えばガスパージゾーン、を備えていてもよい。堆積中、これらのバッファゾーンは、各堆積構造体において行われる化学プロセスを分離する。この図面に示されているように、ウェブ搬送機構は、該堆積チャンバを通じて該ウェブを搬送中に該堆積ヘッドに関して該ウェブの正確な位置決めを提供する。
【0051】
図5は、本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール処理システムの為の基体搬送システムの概略図を図示する。特に、この図は、軸受面を備えている中央静止シリンダ502を図示する。更に、ベルト案内構造体は、(半)可撓性ベルト504、例えば、適切な(半)可撓性材料又はウェブの材料と同様の材料のベルト、を案内し及び搬送するように構成された複数のローラ5081、2を備えているローラシステムを、螺旋状に該中央シリンダの上に備えていてもよい。更に、該可撓性ベルトは、該中央シリンダ上に案内され、そして、該中央シリンダに沿って螺旋状に移動して、該ウェブを受け入れる為の滑らかな表面を形成しうる。該ベルトは閉ループを形成し、それによって、図3を参照して記載された実施態様と同様のウェブ用の「無端」搬送面を形成する。ウェブ案内構造体(例えば、図6を参照して以下に記載されている)が、該半可撓性ベルトによって螺旋の様式で形成された表面の周りにウェブ5061、2をしっかりと巻き付ける為に使用されうる。該可撓性ベルトは、該中央シリンダの周りに第2の螺旋経路を形成しうる。従って、この実施態様においてまた、該ウェブ該はベルトと直接接触し、該堆積チャンバ内の該ウェブの位置の正確な制御及び堆積中の該ウェブの温度の正確な制御を可能にする。
【0052】
この実施態様において、該中央シリンダ、該ベルトを案内する為のローラシステム、及び該ウェブ案内システムの位置は、静止していてもよく、すなわち固定された位置であってもよく、及び該ウェブは、該ベルトの滑らかな表面の周りにしっかりと巻き付けられている。それ故に、該ウェブが該中央シリンダの上を螺旋状に一旦搬送されるときに、該ウェブと該ベルト及び/又は追加の駆動機構(例えば、ドライバローラ)との間の摩擦により、該ベルトが該中央シリンダの上を移動し、ここで、該ローラシステムは、本出願における実施態様を参照して記載されたロール・ツー・ロール処理システムの為の無端基体(ウェブ)搬送システムを形成する。該基体搬送システムは、図1を参照して記載されたロール・ツー・ロール処理システムにおいて使用されうる。その場合、該システムの断面図は、図4を参照して記載されたものと同様である。
【0053】
図6は、本発明の1つの実施態様に従う基体案内構造体を図示する。特に、この図は、可撓性基体6031、2を中央シリンダ602上に、例えば中央シリンダの軸受面上に、又は中央シリンダの軸受面の上を移動する中央シリンダセグメント又は螺旋ベルトによって形成された表面上に案内する為の第1の基体案内構造体600を図示する。更なる第2の基体案内構造体(図示せず)は、該基体を該中央シリンダから離れるように案内するように構成されていてもよい。基体案内構造体は、駆動ローラとして構成されうる1以上の第1のロール6061、2を備えている1以上の機械的ロール604、6061、2を備えていてもよく、該駆動ローラは、トルク装置、例えばモータ、に接続されて、該ウェブ上にトルク又は力を伝達して、該ウェブを該シリンダの上で或る速度で移動させることができる。該ローラは、該ウェブの張力を監視及び制御する為の張力制御システムを更に備えていてもよい。センサが、該ウェブの該張力を測定する為に使用されうる。更に、該ウェブの該張力は、(従動ローラ又は破断部を使用して)2つのローラを加速する若しくは減速するのいずれかによって、又は張力を機構、例えばダンサー、に直接施与することによって制御されてもよい。更なるローラ604は、該ウェブが螺旋経路を辿るように該中央ローラ上に該ウェブを適用するように構成されていてもよい。その目的の為に、該基体案内構造体は、該ウェブを該中央シリンダ上に或る供給角度において供給する。この角度は、該ウェブの長手方向軸と該中央シリンダの長手方向軸との間の角度によって定義されうる。
【0054】
図7A及び図7Bは、本発明の1つの実施態様に従う基体案内構造体を図示する。特に、これらの図は、静止中央シリンダに相対的に基体案内構造体の位置が変更されて該ウェブの供給角度を変更することができる基体案内構造体を記載した。図7Aにおいて示されているように、小さい送り角度が、相対的に広い幅のウェブを螺旋の様式で中央シリンダ上へと案内する為に使用されてもよい。供給角度を増加させることにより、より小さい幅のウェブの搬送が可能にされうる。この機能により、該基体搬送システムを異なるサイズのウェブの為に使用されることが可能である。
【0055】
このようにして、単一の基体搬送システムが様々なウェブ幅の為に使用されうる。該ウェブが該中央(搬送)シリンダに入る角度を調整することを通じて、該システムは、該中央シリンダの直径によって制限される広範囲のウェブサイズを処理することができる。該ウェブ幅は、45度超の供給角度である必要がある前に、該中央シリンダの直径の2倍超であってもよい。この実施態様は、特に研究開発の状況において、1つのシステムが様々な基体幅を処理する為に使用されうるという利点を有する。該基体が該中央シリンダに入る角度を調整することによって、第1の螺旋経路のピッチは、該基体幅に一致するように選択されることができる。
【0056】
図8は、本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール処理堆積システムの概略図を図示する。特に、この図は、図1Cと同様のロール・ツー・ロール処理システムの側面図に関する。しかしながら、この場合、中央シリンダ802は、複数の異なる処理ヘッド804,806及び808の為の基体搬送システムを形成しうる。従って、ウェブは、本開示において記載された実施態様のいずれかに基づいて、該中央シリンダに沿って螺旋状に搬送されてもよい。従って、該中央シリンダの周りを回転する円筒状の処理ヘッドと組み合わせて中心シリンダに沿って螺旋経路に沿ってウェブを搬送することにより、複数の処理ヘッド、例えば堆積ヘッド、の使用が可能になり、ここで、各処理ヘッドは、該ウェブを処理する為に、例えば特定の組成の1以上の層を堆積させる為に、及び/又は特定の化学反応に従ってウェブを処理する為に、構成されていてもよい。このようにして、多層構造体が該ウェブ上に効率的に形成されうる。
【0057】
図9は、本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール処理システムの概略図を図示する。特に、この図は、中央シリンダ902の周りに配置された第1の側面901及び第2の側面901を有する処理ヘッド、例えば堆積ヘッド、を備えているロール・ツー・ロール処理システム900の断面図を図示する。該処理ヘッドの内面は、バッファゾーン(例えば、図2及び図4を参照して記載されたバッファゾーン)によって分離されていてもよい、中央シリンダの長手方向軸に平行な方向に配置された異なる処理構造体9081~n、例えば堆積構造体、を備えていてもよい。これらの処理構造体は、長手方向処理構造体として云われうる。図面において示されているように、該堆積ヘッドは、該堆積ヘッドの内面に沿って接線方向に配置された処理構造体904及び906を更に備えていてもよい。処理構造体904及び906は、該堆積ヘッドの円筒状内面にわたって接線方向に延在し、完全な円を形成する。これらの接線方向の処理構造体は、堆積構造体、前処理構造体、又はエッチング構造体であってもよい。これらの堆積構造体は、接線処理構造体として云われてもよい。例えば、第1の接線処理構造体は、処理ヘッドの第1の側に配置されていてもよく、第2の接線処理構造体は、処理ヘッドの第2の側に配置されていてもよい。1つの実施態様において、該長手方向処理構造体は、2つの接線方向処理構造体(例えば、該図面に示されている)の間に配置されていてもよい。従って、この実施態様は、例えば、堆積シーケンス、例えばALD堆積シーケンス、を開始又は終了する為に使用されてもよい前駆体の選択を可能にする。既知の空間ALDプロセスにおいて、該基体の全ての部分の為の前駆体のシーケンスは、該前駆体の別の(ランダムな)1つで開始又は終了する。対照的に、本発明は、プロセスを開始又は終了する為の所定の前駆体の選択を可能にし、従って既存のプロセスに新しい堆積の可能性を追加する。例えば、幾つかの堆積スキームにおいて、該基体上でのALD成長の均一な核形成を確実にする為に、(酸化剤とは対照的に)金属前駆体を常に用いて堆積プロセスを開始することが望ましい場合がある(例えば、トリメチルアルミニウム曝露を用いて常に酸化アルミニウム成長を開始する)。他の堆積スキームにおいて、仕上げ前駆体を選択することができることが有益でありうる(例えば、環境中で不安定であり、分子層堆積を通じて堆積された有機層を、金属前駆体で常に仕上げ、又はそれを薄い無機層でキャップする為の一連のサイクルによっても不動態化する)。
【0058】
図10A及び図10Bは、本発明の1つの実施態様に従うロール・ツー・ロール堆積の為の基体搬送システムの概略図を図示する。特に、これらの図は、その表面の内側に及び/又はその表面上にガス軸受構造体を備えている中央搬送シリンダの非限定的な例を描く。図10Aは、ガス軸受構造体を備えている中央搬送シリンダ1000の3D概略図を図示し、及び図10Bは、そのような中央搬送シリンダの断面1001を示し、該中央搬送シリンダは、中空(内側)シリンダ1003、並びに、矩形断面と中空シリンダの外径と一致する内径を有する複数の中空トロイダル要素10021~3を備えており、従って、それらは、ウェブ1010のガス軸受面を集合的に形成する為に、中空シリンダの上に配置されることができる。その目的の為に、各トロイダル要素は、配管を介してガス源(図示せず)に接続されてもよく、及び各トロイダル要素は、ガス軸受面を形成する為に、その外面にガス出口1006を備えていてもよい。更に、各トロイダル要素間の空間10041~3は、ガス排気口として機能してもよく、ここで、各空間の位置において、ガス排気構造体を提供する1以上の開口部が存在し、ここで、ガス出口1006を出てウェブ1010の為のガス軸受を形成するガスは、ガス出口10041~3を介して出てもよい。このようにして、該中空(内側)シリンダは、該ガス軸受の為に使用される該ガスの為の中央ガス排気口として機能しうる。空気軸受面と排気口との所定の組み合わせが、該中央シリンダの表面の上に該ウェブの安定した半径方向の位置決めを提供する為に選択されてもよい。
【0059】
本明細書において使用されている用語は、特定の実施態様のみを説明する為のものであり、本発明を限定することを意図するものでない。本明細書において使用される場合、単数形「1つ」(a)、「1つ」(an)及び「該」(the)は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。語「備えている」(comprises)及び/又は「備えている」(comprising)は、本明細書において使用される場合、記載された特徴、整数、工程、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、1以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものでないことが更に理解されるであろう。
【0060】
以下の特許請求の範囲における全ての手段又はステップ及び機能要素の対応する構造体、材料、動作、及び均等物は、具体的に特許請求される他の特許請求される要素と組み合わされて機能を実行する為の任意の構造体、材料、又は動作を含むことが意図される。本発明の説明は、例示及び説明の目的で提示されているが、網羅的であること、又は開示された形態の本発明に限定されることが意図されるものでない。本発明の範囲及び趣旨から逸脱すること無しに、多くの修正及び変形が当業者には明らかであろう。実施態様は、本発明の原理及び実際の用途を最もよく説明する為に、且つ当業者が企図される特定の用途に適した様々な修正を伴う様々な実施態様について本発明を理解することを可能にする為に選択され及び記載された。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B-2C】
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
【国際調査報告】