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特表2023-553204歯科処置における鎮静のためのクロニジン及びミダゾラムの経口製剤
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  • 特表-歯科処置における鎮静のためのクロニジン及びミダゾラムの経口製剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】歯科処置における鎮静のためのクロニジン及びミダゾラムの経口製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5517 20060101AFI20231213BHJP
   A61K 31/4168 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 31/4468 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
A61K31/5517
A61K31/4168
A61K31/4468
A61P1/02
A61P25/20
A61P23/02
A61P25/02
A61P29/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558305
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 US2021061960
(87)【国際公開番号】W WO2022120263
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/121,939
(32)【優先日】2020-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/217,189
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523215163
【氏名又は名称】トランスダーマル セデーション ソリューション,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TRANSDERMAL SEDATION SOLUTIONS, LLC
【住所又は居所原語表記】5508 Tulley Cove Little Rock, Arkansas 72223 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】523215174
【氏名又は名称】ウィルソン,パルマ
【氏名又は名称原語表記】WILSON, Pamala
【住所又は居所原語表記】7362 N. 195th East Avenue Owasso, Oklahoma 74055 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】523215185
【氏名又は名称】マカーレイ,ジェームス
【氏名又は名称原語表記】MCCARLEY, James
【住所又は居所原語表記】5508 Tulley Cove Little Rock, Arkansas 72223 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,パルマ
(72)【発明者】
【氏名】マカリー,ジェームス
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086BC38
4C086CB11
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA34
4C086MA52
4C086MA57
4C086NA05
4C086NA09
4C086NA10
4C086NA11
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA21
4C086ZA67
4C086ZC75
(57)【要約】
クロニジン、ミダゾラム、及びフェンタニルを含む固体薬物マトリックス製剤中の薬物組成。固体薬物マトリックス中に含まれる薬物の量は、臨床処置に備えて鎮静を誘導するのに十分である。経口投与した場合、薬物成分は経粘膜的通過により吸収される。この固体薬物マトリックス製剤は、小児歯科診療において特に有用であると考えられる。また、臨床処置を実施する前に固体薬物マトリックス製剤を患者に投与することによって患者に鎮静を誘導する方法も開示されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10-300μgの範囲の量のクロニジンと、
1-40mgの範囲の量のミダゾラムと、
10-300μgの範囲の量のフェンタニルと、を含む、固体薬物マトリックス製剤。
【請求項2】
フェンタニルの前記量が190μg未満である、請求項1記載の薬物製剤。
【請求項3】
フェンタニルの前記量が175μg未満である、請求項2に記載の薬物製剤。
【請求項4】
フェンタニルの前記量が150μg未満である、請求項3に記載の薬物製剤。
【請求項5】
薬用キャンディー又はロリポップの形態である、請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項6】
最も幅広の寸法に沿って少なくとも1.0cmの大きさを有する、請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項7】
最も幅広の寸法に沿って少なくとも1.5cmの大きさを有する、請求項6に記載の薬物製剤。
【請求項8】
最も幅広の寸法に沿って3.5cm未満の大きさを有する、請求項6に記載の薬物製剤。
【請求項9】
総重量が2.0-25グラムの範囲にある、請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項10】
総重量が15グラム未満である、請求項9に記載の薬物製剤。
【請求項11】
総重量が10グラム未満である、請求項10に記載の薬物製剤。
【請求項12】
甘味料又は風味増強剤をさらに含む、請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項13】
患者に鎮静を誘導する方法であって、
請求項1に記載の固体薬物マトリックス製剤を準備し、
前記固体薬物マトリックス製剤を患者に経口投与し、患者の口中に一定期間留置させ、
患者の口中で前記クロニジン、ミダゾラム、及びフェンタニルの経粘膜吸収のための時間を与える、ことを含む方法。
【請求項14】
経粘膜吸収のために与えられる前記時間が5-60分間である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
経粘膜吸収のために与えられる前記時間が10-45分間である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記鎮静が臨床処置の準備段階にある、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記固形薬物マトリックス製剤の前記患者への投与から10-45分間待ってから、前記臨床処置が実施される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記鎮静と前記臨床処置が、病院以外の環境で一緒に実施される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記臨床処置は歯科処置であり、前記鎮静は、前記歯科処置も行っている歯科開業医によって行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記鎮静が麻酔専門医によって行われない、請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科処置を行うために患者に鎮静を誘導することに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科診療の実践において、小児患者では恐怖及び不安がよくみられる問題である。歯科医はこの問題を管理するために多くの技術を用いることができる。特に、麻酔薬を用いた様々な鎮静技術がより広く用いられている。小児歯科の分野は、診療所での麻酔によって大幅に改善されてきており、小児の歯科医療へのアクセスを増やす手助けとなっている。これは病院ではなく、診療所で麻酔サービスを提供することで行われる。これにより、ストレスの少ない環境で小児を治療できるようになる。また、病院の予定を立てる必要性を避けることで、歯科治療の待ち時間を短縮し得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
診療所での鎮静は、まだ開発途上の実践である。診断及び治療行為のための小児患者における鎮静の目標は、(1)患者の安全と福祉を守ること、(2)身体的不快感と疼痛を最小限にすること、(3)不安をコントロールし、心理的外傷を最小限にし、健忘の可能性を最大限にすること、(4)行動又は動作を修正して安全に処置を完了できるようにすること、(5)患者を医学的監視から解放しても大丈夫な状態に戻すことである。これら全ての因子は、小児歯科において予測可能で、安全で、確実に効果的な意識下鎮静(conscious sedation)を送達するために管理されなければならない。歯科処置を行う患者、特に小児において、意識下鎮静を誘導する効果的な方法が継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一般に、本発明は、ベンゾジアゼピン及びクロニジンの混合物、及び任意選択で他の薬物成分を含む組成物に関する。これにより、患者に鎮静を誘導するために2つの有効成分を同時に投与し得る。この鎮静は、患者に臨床処置を実施するための準備として行われる。本発明で使用し得るベンゾジアゼピンには、種々の異なるタイプがある。作用持続時間が短いため、この状況で使用される最も一般的なベンゾジアゼピンはミダゾラムである。上記組成物は、オピオイド薬をさらに含み得る。使用可能なオピオイド薬の例としては、フェンタニル、スフェンタニル、メペリジンなどがある。
【0005】
液体組成物:一態様において、本発明は、クロニジン及びベンゾジアゼピンの混合物を含む液体組成物である。この組成物は液体であり、シロップ、エリキシル、溶液、懸濁液、エマルジョンなどの種々のタイプの液体混合物のいずれかの形態を有し得る。液体組成物は、鎮静を誘導するのに十分な量のクロニジン及びベンゾジアゼピン(例えば、ミダゾラム)を組み合わせて含む。
【0006】
液体組成物中に含まれる可能性のある薬物濃度は以下の通りである。クロニジン。いくつかの実施形態において、その中に含まれるクロニジンの量は、5.0-50μg/ml、場合によっては、8.0~35μg/mlの範囲である。ミダゾラム。いくつかの実施形態において、その中に含まれるミダゾラムの量は、0.5-10mg/ml、場合によっては、0.8-6.0mg/mlの範囲である。フェンタニル。液体組成物はまた、オピオイド薬としてフェンタニルを含むこともできる。いくつかの実施形態において、液体組成物は、5-70μg/ml、場合によっては15-50μg/mlの範囲の量のフェンタニルを含む。メペリジン。液体組成物はまた、オピオイド薬としてメペリジンを含むこともできる。いくつかの実施形態において、液体組成物は、10-25mg/ml、場合によっては2.0-10mg/mlの範囲の量のメペリジンを含む。ヒドロキシジン。液体組成物はまた、抗ヒスタミン剤を含むこともできる。抗ヒスタミン薬の例としては、ジフェンヒドラミン及びヒドロキシジンが挙げられる。いくつかの実施形態において、液体組成物は、1.0-40mg/ml、場合によっては2.0-25mg/mlの範囲の量のヒドロキシジンを含有する。
【0007】
薬剤成分に加えて、液体組成物は、甘味料(例えば、砂糖又は蜂蜜)及び風味増強剤(例えば、ブドウ、サクランボ、バブルガム、イチゴなど)などの他の賦形剤成分も含むことができる。いくつかの実施形態において、液体組成物は、クロニジン及びベンゾジアゼピン以外の鎮静剤を含まない。すなわち、液体組成物中の唯一の鎮静剤はクロニジンとベンゾジアゼピンである。いくつかの実施形態において、液体組成物は、いかなるオピオイド薬も含まない。
【0008】
液体組成物は、任意の適切な方法で経口投与することができる。例えば、液体は、飲料カップ、スプーン、注射器、又は投薬用滴下器によって投与し得る。液体組成物の投与容量は15ml未満である。いくつかの実施形態において、投与容量は、12ml未満の容量であり;場合によっては、7ml未満である。
【0009】
液体組成物は、多回使用分をまとめた容量(又は、集合的な多用体積)で提供され得る。例えば、液体組成物を含む大きなボトルを提供することができ、臨床医は、新しい注射器、投薬用滴下器、又は投薬用スプーンから特定の患者に適した量を引き出す。いくつかの実施形態において、本発明は、液体組成物25-400mlを含む容器(例えば、プラスチックボトル)である。
【0010】
あるいは、液体組成物は、患者一人だけを治療するために十分であることが意図され、残りの量が処分される、便利な単回使用形式で提供され得る。例えば、液体組成物の単回投与は、予め充填された注射器にて提供され得る。いくつかの実施形態において、本発明は、液体組成物2.0-20ml、場合によっては、液体組成物2.0-15mlを含む、単回使用の薬剤ディスペンサー(例えば、小型バイアル、予め充填された滴下器、又は予め充填された注射器)である。
【0011】
固形投与剤:別の態様では、組成物は、薬物送達の主要なモードとして、口腔内における経粘膜吸収のための固体薬物マトリックス製剤である。この固体製剤は、口腔内に少なくとも短時間(例えば、速崩壊性錠剤やフィルムのような場合、少なくとも5秒間)保持されるように設計されており、保持時間を延長させる(例えば、ロリポップのような場合、少なくとも3分間)こともできる。これは、完全に飲み込むことを意図したものではない(ただし、サイズが縮んだり、断片化した後に飲み込むこともある)。固体薬物マトリックス投与剤には、ロリポップ、崩壊性錠剤、崩壊性フィルム、薬用キャンディー、トローチなど、様々なタイプがある。
【0012】
固体薬物マトリックスは、クロニジン及びベンゾジアゼピン(例えば、ミダゾラム)、及び任意選択で他の薬物成分を、鎮静を誘導するのに十分な量で組み合わせたものを含む。固体薬物マトリックス製剤に含まれる可能性のある薬物量は以下のとおりである。クロニジン。いくつかの実施形態において、その中に含まれるクロニジンの量は、10-300μg、いくつかの場合においては、30-180μgの範囲である。ミダゾラム。いくつかの実施形態において、その中のミダゾラムの量は、2-80mg、いくつかの場合においては、5-40mgの範囲である。フェンタニル。固体薬物マトリックスはまた、オピオイド薬としてフェンタニルを含み得る。いくつかの実施形態において、その中のフェンタニルの量は、25-300μg、いくつかの場合においては、40-195mgの範囲である。
【0013】
制限された量のフェンタニル。フェンタニルの量を制限することは、呼吸抑制やオピオイド薬の他の不快な副作用(吐き気や嘔吐など)のリスクを減らすのに有用な場合がある。薬物組成もミダゾラムやクロニジンと相乗的に作用するため、より少ないフェンタニルを使用しながら十分な鎮静を誘導することが可能であろう。いくつかの実施形態において、フェンタニルの量は190μg未満であり、場合によっては175μg未満、場合によっては150μg未満である。ここでいうフェンタニルの量とは、フェンタニル部分の量そのもの(遊離塩基)を意味し、対応する塩又は対イオンの質量は含まれないことに注意。遊離塩基の分子量は337、クエン酸塩は529である。したがって、例えば、フェンタニルクエン酸塩100mgは64mgのフェンタニル(塩基換算量として)を与えるであろう。対照的に、本明細書に示す他の薬物については、その量は化合物の総質量として表される(例えば、ミダゾラムの量は、ミダゾラムHCI又は薬物組成物を作製する際に使用される他の塩形態の質量を意味する)。
【0014】
メペリジン。固体薬物マトリックスはまた、オピエート薬としてメペリジンを含有し得る。いくつかの実施形態において、その中に含まれるメペリジンの量は、10-400mg、いくつかの場合においては、15-250mgの範囲である。ヒドロキシジン。固体薬物マトリックスはヒドロキシジンも含み得る。いくつかの実施形態において、その中に含まれるヒドロキシジンの量は、10-180mg、いくつかの場合においては、15-100mgの範囲である。
【0015】
固形の経口投与剤は、全体を飲み込むことを意図したものではないため、典型的な錠剤やカプセルよりもサイズが大きい場合がある。いくつかの実施形態において、固形の経口投与剤のサイズは、その最も幅広の寸法に沿って少なくとも1.0cm、場合によっては少なくとも1.5cmである。たとえば、ロリポップの場合、この寸法は球形の直径であるか、又は円盤形の直径であってよい。別の例では、薬用キャンディーの場合、この寸法は、卵形の薬用キャンディーの長さ、又はドーナツ形の薬用キャンディーの直径であり得る。固形の経口投与剤は、あまり大きくならないようにする。ある場合には、その最も幅広の寸法に沿った固形の経口投与剤のサイズは3.5cm未満である。
【0016】
固形の投与剤は、風味増強剤、甘味料などの他の賦形剤成分を有し得る。経口投与剤は、全ての医薬品成分及び添加賦形剤(例えば、苦味をマスクするのに十分な)を含む十分な大きさのものとする。しかし、患者の口腔内で比較的速やかに崩壊させ得るほど小さくすべきである。いくつかの実施形態において、固体薬物マトリックスの全重量は2.0-25グラムの範囲にある。場合によっては、固体薬物マトリックス形態は、総重量が15グラム未満であり、場合によっては、10グラム未満である。
【0017】
鎮静の方法:別の態様では、本発明は、臨床処置の準備において患者に鎮静を誘導する方法である。本方法は、本明細書に記載の液体組成物又は固体マトリックス製剤を使用して行うことができる。この方法は、患者にベンゾジアゼピン(例えば、ミダゾラム)及びクロニジンを同時に投与することを含む。組み合わせて、患者に鎮静を生み出し臨床処置が効果的に実行され得るのに十分な2つの有効成分の任意の適切な量が使用され得る。これにより、臨床処置に関する患者の不安、易刺激性、ストレスによって悪化した医学的状態(喘息又はてんかんなどの)、行動上の問題、術後の易刺激性の低下、又は親と離れることの問題など、臨床処置に伴うあらゆる有害な心理的又は医学的影響を最小限に抑えることができる。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記方法は、患者において意識下鎮静を誘導する。本明細書中で使用される「意識下鎮静」とは、患者が、言語又は触覚刺激に対して意図的な反応を行うことができ、自発呼吸があり、気道開存を維持するための介入が必要ない、中枢神経系の抑うつ状態を意味する。これは、患者から意図的な反応を得るために、あるいは自発呼吸が不十分であるために、繰り返しの言語的又は痛みを伴う刺激が必要となる深い鎮静とは対照的である。臨床現場で鎮静の深さを評価するにはさまざまな方法がある。例として、Houpt尺度、Ramsay尺度、ASA「鎮静の継続」尺度、「修正観察者覚醒/鎮静スケール(Modified Observer's Assessment of Alertness/Sedation Scale)」(MOASS)などがある。
【0019】
この鎮静法は、任意の適切な診断的又は治療的臨床処置と併せて使用し得る。本発明が使用され得る臨床処置の例としては、歯科処置(口腔外科を含む)、放射線処置、小手術処置、小創ケア処置、小整形外科処置、緊急医療などが挙げられる。いくつかの実施形態において、本方法は、患者において所望のレベルの鎮静を達成した後に、臨床処理を実施することをさらに含む。すなわち、本発明は、本発明の鎮静技術を含む臨床処置を実施する方法とみなすことができる。
【0020】
本発明は、小児、すなわち小児患者において特に有用であり得る。いくつかの実施形態において、患者は16歳未満の小児であり、場合によっては13歳未満の小児であり、場合によっては11歳未満の小児である。一部の症例では、患者は少なくとも1歳の小児である。
【0021】
本発明では、投与量を患者の体重に応じて与えられる成分薬剤の量として記載することができた。これは、本明細書に記載されたいずれかの薬物製剤の投与にも適用できる。クロニジン。いくつかの実施形態において、クロニジンは、1-10μg/kg(患者体重)の範囲で、場合によっては2-7μg/kg(体重)の範囲で投与される。ミダゾラム。いくつかの実施形態において、ミダゾラムは、0.1-4.0mg/kg(体重)の範囲の用量で投与され、場合によっては、0.2-2.0mg/kgの範囲で投与される。
【0022】
いくつかの実施形態において、本方法は、患者にオピオイド薬を同時に投与することをさらに含む。フェンタニル。薬物組成物がフェンタニルを含む場合には、フェンタニルの投与量は1.0-20μg/kg(体重)の範囲であり得、場合によっては3.0-10μg/kgの範囲であり得た。メペリジン。薬物組成物がメペリジンを含む場合、メペリジンの投与量は、0.5-5.0mg/kg(体重)の範囲にあり得、場合によっては、1.0-4.0mg/kgの範囲にあり得た。
【0023】
患者に投与できる最大量が存在することがある。例えば、ミダゾラムの小児の最大用量は20-25mg、クロニジンの小児の最大用量は200μg、メペリジンの小児の最大用量は100mg、ヒドロキシジンの小児の最大用量は50mgであり得る。これらの最大投与量は、患者の身体的及び精神的特性等、患者によって異なる可能性がある。また、最大用量制限は、上記の薬物組成物又は体重投与に適用できる。
【0024】
薬物組成物は、臨床処置を開始する前に投与される。いくつかの実施形態において、薬物組成物は、臨床処置を開始する20-90分前に、場合によっては30-60分前に、1回(又は、一度に)投与される。いくつかの実施形態において、臨床処置は、薬物組成物を投与してから20-90分後、場合によっては30-60分後に実施される。いくつかの実施形態において、薬物組成物は、臨床処置を開始する5-60分前に、場合によっては10-45分前に1回(又は、一度に)投与される。いくつかの実施形態において、臨床処置は、薬物組成物を投与してから5-60分後、場合によっては10-45分後に実施される。
【0025】
いくつかの実施形態において、臨床処置は、診療所、外来ケア施設、サブスペシャルティプロシージャスイート(subspecialty procedure suite)、独立した撮像施設などの、病院以外の環境で実施される。いくつかの実施形態において、臨床処置は歯科処置であり、鎮静は、歯科処置も実施している歯科開業医(例えば、歯科医、口腔外科医、又はそのための臨床助手)によって実施される。いくつかの実施形態において、鎮静は、麻酔学の専門家(麻酔科医、看護麻酔科医、又は臨床麻酔学の訓練又は認定を受けた他の臨床医など)によって行われない。いくつかの実施形態において、鎮静は、麻酔学の専門家の存在なしに実施される。
【0026】
いくつかの実施形態において、ベンゾジアゼピン及びクロニジン以外の鎮静剤は患者に与えられない。すなわち、患者に投与される唯一の鎮静薬は、ベンゾジアゼピンとクロニジンである。いくつかの実施形態において、患者にはいかなるオピオイド薬も投与しない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、薬用シロップを含むマルチドーズボトルを示す。
図2図2は、薬用シロップを予め充填した単回使用シリンジを示す。
図3図3は、薬用ロリポップを示す。
図4図4は、薬用キャンディーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
薬剤組成の実際の作業例を作成し、臨床試験設定で試験した。まず、薬用シロップ製剤を作製し、臨床試験を行った。第二に、薬用ロリポップ製剤を作製し、臨床試験を行った。
【0029】
薬用シロップ:以下は、経口シロップ製剤の製造工程の一例である。濃度16μg/mlでクロニジンHCIの原料調製を行う。これは塩酸クロニジンを微粉末に粉砕して行う。粉末を5mlの風味ショ糖シロップと混ぜ、16mg/mlの濃度でクロニジンペーストを得る。さらに100mlの香味ショ糖シロップを加えて、16μg/mlの濃度でクロニジン溶液を得た。ミダゾラムの原料調製には、市販のミダゾラム液シロップと塩酸ミダゾラム2.0mg/ml濃度を併用する。2つの原料調製物を、所望の薬物濃度量に対する適切な比率で混合する(例えば、1:1混合比は、クロニジン8μg/ml及びミダゾラム2mg/mlとなる)。
【0030】
この薬用シロップは、抜歯、歯の充填、根管、歯冠などの日常的な歯科処置を受けている小児患者で試験された。歯科処置を開始する前に、患者に薬用シロップを経口投与した。患者には薬用シロップを飲み込むように指示した。その後、患者の鎮静レベルの進行をHouptスケールに従って評価した。十分な鎮静レベルが得られた時点で、歯科処置を開始した。十分な鎮静レベルが達成されなかったか、又は鎮静が歯科処置を進行させるのに効果がなかった場合は、その患者について試験プロセスを終了した。
【0031】
臨床試験成績の概要は表1のとおりであった。「時間」は、薬用シロップ投与後、歯科処置開始までの待ち時間を示す。鎮静レベルは、軽い(mild)、中程度(mod)、又は深い(deep)と評価される。患者のHouptスコアも表示される(「abt」は歯科治療処置が中断されたことを意味する)。
【0032】
表1:臨床成績、薬用シロップ
【0033】
患者#3、8、10では、処置が完了するまで継続するのに鎮静が十分であった。他の患者では、達成された鎮静のレベルは、処置が完了まで継続するのに十分ではなかった。これらの症例は、配合技術が最適でなかったためである可能性が高く、これが製剤の不安定性及び製品中の薬物の不均質な分布を引き起こしたと考えられる。この不均質な調製物は、薬物濃度の臨床的に有意な変動を引き起こした。バイタルサインは全例安定していた。
【0034】
薬用ロリポップ:以下は、ロリポップ製剤を作成するために用いられた一例のプロセスである。フェンタニルクエン酸塩を、1%トリチュレーション(粉末をかき混ぜて粒子の大きさを小さくして均質な混合物を得ること/trituration)を得るのに十分な量の、同粒径の賦形剤粉末材料(ステビオール配糖体、砂糖など)と、同粒径の選択した食用色素に加えて、フェンタニルクエン酸塩を細かく粉砕した(トリチュレーション)1%の粉末混合物にする。パウダーブレンダー(例えば、V-ブレンダー又は他の薬用パウダーブレンダー)を用いて混合し、均質な粉末混合物を製造する。アリコートから正確な重量を得る。クロニジン塩酸塩を、1%トリチュレーションを得るのに十分な量の、同粒径の賦形剤粉末材料(ステビオール配糖体、砂糖など)と同粒径の選択した食用色素に加えて、クロニジン塩酸塩を細かく粉砕した(トリチュレーション)1%粉末混合物にする。パウダーブレンダー(例えば、V-ブレンダー又は他の薬用パウダーブレンダー)を用いて混合し、均質な粉末混合物を製造する。アリコートから正確な重量を得る。ミダゾラム塩酸塩粉末を準備する。
【0035】
他のすべての成分と合わせたときに総重量8.0グラム(作製される各ロリポップにつき)にするのに必要なソルビトールベースの量を計算する(例えば、各ロリポップにつき7.9グラムのソルビトールベースを計算結果とし得る)。計算された量のソルビトールベースをガラスビーカーに入れ、ホットプレート上で約160℃に加熱する。任意選択で、水分活性を測定し、水分活性が0.6を下回るまで160℃の温度を維持する。これはソルビトールベースが無水であることを保証するためである。ソルビトールベースをゆっくりと約90℃に冷却し、ビーカーに攪拌棒を入れ、ゆっくりと混合を開始する。作製される各ロリポップにつきフェンタニル1%粉砕粉末13.8mgを加える。作製される各ロリポップにつきクロニジン1%粉砕粉末11mgを加える。作製される各ロリポップにつきミダゾラム粉末20.6mgを加える。作製される各ロリポップにつきステビオール配糖体12mgを加える。作製される各ロリポップにつきバブルガム風味の原料を160μl加える。代替のプロセス技術では、混合物の均質化の改善と、ベースに粉末を加えたときに形成し得る粉体凝集の減少のために、ロータ‐ステータホモジナイザー(攪拌棒の代わり)を用いることができた。これは微細な粒子と均質な混合物(懸濁液)を形成する。
【0036】
軽い油(又は、軽油/light oil)で金属のロリポップモールドをコーティングし、90℃まで加熱する。排液し、余分な油を除去する。高温の90℃の混合物(ソルビトールベース、活性医薬成分、及び不活性成分の)をロリポップモールドに注ぐ(又は20mlの経口注射器を使用して混合物を吸い上げ、モールドに分配する)。ロリポップモールドを満たした後、12時間かけて室温まで冷却する。冷却後、モールドを冷凍庫に約30分入れ、モールドから薬用のロリポップを取り除く。
【0037】
これらの薬用ロリポップは、抜歯、歯の充填、根管、及び歯冠などの通常の歯科処置を受けている小児患者で試験された。歯科処置を始める前に、ロリポップを患者の口に入れ、適切な待ち時間の間、そこに入れておいた。その後、患者の鎮静レベルの進行をHouptスケールに従って評価した。十分な鎮静レベルが得られた時点で、歯科処置を開始した。十分な鎮静レベルが達成されなかったか、又は鎮静が歯科処置を進行させるのに効果がなかった場合は、その患者について試験プロセスを終了した。
【0038】
臨床試験成績の概要は表2のとおりであった。「時間」は、薬用シロップを投与した後、歯科処置を開始するまでの待ち時間を示す。鎮静レベルは、軽い(mild)、中程度(mod)、又は深い(deep)と評価される。患者のHouptスコアも表示する。
【0039】
表2:臨床成績、薬用ロリポップ
【0040】
ロリポップを受け入れている児童には100%適合した。特に、これは、飲み込んだ経口薬の適合率よりも高い。親と離れることは患者#16、29、31を除いて優れていた。患者#12-15、18、22-24、27、28、30、33、及び38では、処置が完了するまで継続するのに鎮静は十分であった。他の患者では、達成された鎮静のレベルは、処置が完了するまで継続するのに十分ではなかった。全例、バイタルサインは安定しており、処置の記憶はなかった(健忘)。
【0041】
オピオイド薬と比較して、ベンゾジアゼピン(ミダゾラムなど)の安全性プロファイル(又は、安全性)ははるかに良好である。したがって、フェンタニルの量を減らすことができることは重要な利点である。クロニジン及びミダゾラムとの相乗効果により、ロリポップは、ACTIQ(登録商標)ロリポップ製品と比較してフェンタニルの量が減少したにもかかわらず、効果的な鎮静をもたらすことができた。
【0042】
製品例:図に示すのは、本発明を実施し得る製剤形態のいくつかの例である。図1は、薬用シロップを含むマルチドーズボトル10を示す。ボトル10から投与量を経口投与するためのスプーン12がある。患者は薬用のシロップを飲み込む。図2は、薬用シロップを予め充填した単回使用の注射器20を示す。分配スパウトはキャップ22で閉じられている。使用時には、キャップ22を取り除き、注射器20の内容物を患者の口の中に絞り込む。患者は薬用のシロップを飲み込む。図3は、スティック32上の薬用ロリポップ30を示す。患者はロリポップ30を口に入れ、その中に留めて経粘膜吸収させる。図4は、薬用のキャンディー40を示す。患者は、薬用キャンディー40を口に入れ、その中に留めて経粘膜吸収させる。
【0043】
本明細書に記載される記載及び例は、単に本発明を説明することを意図したものであり、限定するものではない。本発明の開示された態様及び実施態様の各々は、個別に、又は本発明の他の態様、実施態様、及び変形と組み合わせて検討し得る。さらに、特に明記しない限り、本発明の方法の工程は、特定の順序の性能に限定されない。
本発明の精神及び物質を組み込んだ開示された実施形態の修正は当業者に起こり得るものであり、そのような修正は本発明の範囲内である。
【0044】
本明細書中の「又は」という言葉の使用はいずれも包括的であることを意図しており、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、表現「及び/又は」と同等である。例えば、表現「A又はB」はA、又はB、又はAとBの両方を意味する。同様に、例えば、発現「A、B、又はC」は、A、又はB、又はC、又はそれらの任意の組合せを意味する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】