(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】特殊マスクを使用した反復位相回復によるコヒーレント回折/デジタル情報再構築
(51)【国際特許分類】
G03H 1/22 20060101AFI20231213BHJP
G03H 1/02 20060101ALI20231213BHJP
G11B 7/0065 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G03H1/22
G03H1/02
G11B7/0065
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559967
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 US2021062178
(87)【国際公開番号】W WO2022132496
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523224774
【氏名又は名称】ガーチバーグ オフサルミック ディスペンシング,ピーエルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】オーカン エルソイ
【テーマコード(参考)】
2K008
5D090
【Fターム(参考)】
2K008AA01
2K008CC01
2K008FF27
5D090BB16
5D090LL03
(57)【要約】
トータグラムが、基準ビームを伴うことなしに、特殊なマスクを使用することにより、完全な情報回復を結果的にもたらす反復スペクトル位相回復プロセスによって生成されている。これらの特殊なマスキングシステムを使用することは、演算時間、マスクの数、及び反復の数を低減している。特殊なマスキングシステムは、(1)1及び-1に等しい要素を有する1つ又は複数のバイポーラバイナリマスクと共にユニティマスク、或いは、(2)1つ又は複数の位相マスクと共にユニティマスク、或いは、(3)ペア内のマスクが振幅との関係において互いに相補的である0及び1のバイナリ振幅を有するマスクの1つのペア又はマスクの複数のペアと共にユニティマスク、或いは、(4)ユニティマスクを有していない0と1のバイナリ振幅を有する相補型マスクの1つ又は複数のペアである。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポイントのアレイから位相情報を回復する方法であって、それぞれのポイントは、振幅を有する、方法において、
入力及びスペクトル出力を有する少なくとも1つの変換ユニット及びその1つがユニティマスクである少なくとも2つのマスクを提供するステップであって、前記少なくとも2つのマスクのそれぞれは、前記少なくとも1つの変換ユニットの前記入力に対して動作するように構成されている、ステップと、
前記マスクのそれぞれから変更された入力を生成するために、前記少なくとも2つのマスクのそれぞれに前記入力における前記ポイントのアレイを別個に適用するステップと、
前記少なくとも1つの変換ユニットにより、それぞれの変更された入力から変換された変更済みの入力を生成するために、それぞれの変更済みの入力に対して一般化フーリエ変換を実行するステップと、
フェーザグラムを生成するために、それぞれの変換された変更済みの入力のポイントのアレイにおける振幅値を記録するステップと、
複数の複素フェーザグラムを形成するために、位相値をそれぞれのフェーザグラム上のそれぞれのポイントと関連付けるステップと、
振幅及び位相情報を有する再構築された入力を構成するトータグラムを生成するために、収束が実現される時点まで前記複数の複素フェーザグラムを反復的に処理するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
それぞれのマスクは、外側境界を含み、前記外側境界は、前記外側境界と合致するポイントの位相及び振幅をゼロに設定している請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記入力は、波であり、且つ、前記マスクは、物理的空間マスクであり、且つ、前記入力が前記少なくとも2つの物理的空間的マスクのそれぞれによって時間において順番に個々に受け取られるように、前記少なくとも2つの物理的空間マスクの1つから前記少なくとも2つの物理的空間マスクの別のものに切り替わるステップを更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記入力は、波であり、且つ、前記マスクは、物理的空間マスクであり、且つ、前記少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれによって並行して個々に受け取られるように、前記入力された入力波を分割するステップを更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つのマスクは、前記ユニティマスク及び複素位相マスクから構成されている請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複素位相マスクは、バイポーラバイナリマスクを有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2つのマスクは、前記ユニティマスク及び相補型ユニポーラバイナリマスクのペアから構成されている請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記入力は、波を有し、且つ、前記少なくとも2つのマスクは、空間光変調器及びマイクロミラーアレイの任意のものを含む光学装置によってリアルタイムにおいて実装される物理的空間マスクを有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記入力された入力波の超分解能振幅及び位相情報を生成するために、(1)何回かにわたって前記少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれに前記入力波を通過させる前に前記入力波に対して線形位相変調を実行するステップ又は(2)何回かにわたって前記少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれに前記入力波を通過させた後に強度センサを空間的に運動させるステップを更に有する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
記録が強度センサによって実行されており、且つ、前記少なくとも1つの変換ユニットは、レンズシステムを有する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記入力を前記少なくとも2つのマスクのそれぞれに別個に適用する前に前記入力に対して一般化フーリエ変換を実行するステップを更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
完了の後に、前記入力の前記再構築された振幅及び位相内において埋め込まれた情報の表現を生成するために前記トータグラムを使用するステップを更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
入力された波から位相情報を回復するシステムであって、
入力プレーン及びスペクトル出力を有する光学レンズシステムと、
その1つがユニティマスクである少なくとも2つの物理的空間マスクであって、前記少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれは、前記入力された入力波を受け取るために前記光学レンズシステムの前記入力プレーンにおいて配設されており、
前記少なくとも2つの物理的空間マスクは、前記入力波を別個に変更するように構成されており、且つ、前記光学レンズシステムは、前記別個に変更された波のそれぞれから変換された波を生成するために、前記別個に変更された波のそれぞれに対する一般化フーリエ変換を実現している、物理的空間マスクと、
それぞれの変換された波からフェーザグラムを生成するために、スペクトルプレーンにおいてそれぞれの変換された波のポイントのアレイにおける振幅値を記録するように構成された少なくとも1つのセンサシステムと、
複数の複素フェーザグラムを形成するために、位相値をそれぞれのフェーザグラム上のそれぞれのポイントと関連付けるように、且つ、
振幅及び位相情報を有する再構築された入力波を構成するトータグラムを生成するために、収束が実現される時点まで前記複数の複素フェーザグラムを反復的に処理するように、
構成されたデジタルプロセッサと、
を有するシステム。
【請求項14】
前記少なくとも2つの物理的空間マスクは、ユニティマスク及びバイポーラバイナリマスクから構成されている請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも2つの物理的空間マスクは、前記ユニティマスク及び相補型ユニポーラバイナリマスクのペアから構成されている請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
それぞれの物理的空間マスクは、前記波を阻止する外側の境界によって取り囲まれ、これにより、前記境界と合致するポイントの位相及び振幅をゼロに設定している請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記複数の複素フェーザグラムを反復的に処理するステップは、
(a)逆一般化フーリエ変換を前記複素フェーザグラムに対して実行し且つ対応する場所におけるそれぞれのポイントにおいて複素情報を平均化することにより、前記入力波の単一推定値を取得するために前記複数の複素フェーザグラムを処理するステップと、
(b)複数の中間アレイを取得するために、前記物理的空間マスクのそれぞれを複製するプロセスに前記入力波の前記単一推定値を通過させるステップと、
(c)別の複数の複素フェーザグラムを生成するために、前記中間アレイのそれぞれに対して一般化高速フーリエ変換を実行し、且つ、前記変換された中間アレイ内のそれぞれのポイントにおける振幅値を対応する記録された振幅値によって置換するステップと、
(d)収束が実現される時点までステップ(b)及び(c)によって後続される前記別の複数の複素フェーザグラムについてステップ(a)を反復するステップであって、完了の際に、前記入力波の前記単一推定値は、前記トータグラムである、ステップと、
を有する請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
収束は、(1)連続的な単一推定値の間の差が既定の閾値に到達する際及び(2)ステップ(a)の反復の所与の数が完了した際の任意のものによって判定されている請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記少なくとも2つの物理的空間マスクは、前記入力が前記少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれによって順番に個々に受け取られるように、前記少なくとも2つの物理的空間マスクの1つから前記少なくとも2つの物理的空間マスクの別のものに切り替わるように構成されている請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれによって並行して個々に受け取られるように、前記入力波を分割するように構成されたビームスプリッタを更に有する請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
ポイントのアレイから位相情報を回復する方法であって、それぞれのポイントは、振幅を有する、方法において、
入力及びスペクトル出力を有する少なくとも1つの変換ユニット及びマスクの2つのペアを含む4つのマスクを提供するステップであって、前記ペア内のマスクは、振幅との関係において互いに相補的である、ステップと、
前記マスクのそれぞれから変更された入力を生成するために、前記入力を前記4つのマスクのそれぞれに別個に適用するステップと、
前記少なくとも1つの変換ユニットにより、変換された変更済みの入力を生成するために、それぞれの変更済みの入力に対して一般化フーリエ変換を実行するステップと、
フェーザグラムを生成するために、それぞれの変換された変更済みの入力のポイントのアレイにおける振幅値を記録するステップと、
複数の複素フェーザグラムを形成するために、位相値をそれぞれのフェーザグラム上のそれぞれのポイントと関連付けるステップと、
振幅及び位相情報を有する再構築された入力を構成するトータグラムを生成するために、収束が実現される時点まで前記複数の複素フェーザグラムを反復的に処理するステップと、
を有する方法。
【請求項22】
それぞれのマスクは、外側境界を含み、前記外側境界は、前記外側境界と合致するポイントの位相及び振幅をゼロに設定している請求項21に記載の方法。
【請求項23】
マスクのそれぞれのペアは、相補型ユニポーラバイナリマスクを含む請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相回復システム及び方法に関する。更に詳しくは、振幅及び位相が、スペクトル出力におけるその振幅の計測の後に、コヒーレント波について再構築されている。
【背景技術】
【0002】
コヒーレント波表現におけるように振幅及び位相の観点において埋め込まれた情報は、撮像におけるように1次元以上の用途をもたらしている。このようなシステムにおいては、しばしば、振幅よりも位相が重要である。多くのコヒーレントシステムにおいては、位相が失われており、その理由は、計測可能であるものが振幅の二乗に比例する強度であるからである。また、位相が意図的に失われている場合もあろう。また、発話認識、ブラインドチャネル推定、及びブラインド逆畳み込みなどのいくつかの用途においては、一次元信号の場合に、位相回復が重要である。位相問題は、レイリーが1892年にこれについて記述した時点まで遡る。位相回復は、これ以降、有名な問題であり続けており、且つ、このプロセスは、レーザー及びその他のコヒーレント放射のその他の重要なソースが発見された1960年代以降に加速している。
【0003】
3D情報を結果的にもたらす回折撮像においては、位相を回復し、且つ、これにより、例えば、完全な情報回復を実現する間接的な方法が存在している。Dennis Gaborによって発見されたホログラフィは、それらの1つであり、且つ、これは、基準波を導入することにより、3D撮像を実現している。これは、通信において使用されている変調原理と関係するものを多く有している。その他の方法は、オリジナルGerchberg-Saxtonアルゴリズムとも呼称される且つ本明細書において「GSA」として参照されているGerchberg-Saxtonアルゴリズム(1971~72)に密接に関係付けられており、これは、入力プレーン及び出力スペクトルプレーンという2つの関係するプレーンに関する計測を伴っている。科学及び技術のいくつかの分野における進歩は、1972年に公開されたGSAに関係している(R. W. Gerchberg, W. O. Saxton, “A practical algorithm for the determination of the phase from image and diffraction plane pictures,” Optik, Vol. 35, pp. 237-246, 1972)。
【0004】
その後に、R. W. Gerchbergは、特に位相マスクを使用することによって2つのプレーン上においてN個の独立した計測システムを導入することにより、GSAに対する改善を実施している。この改善は、本明細書においては、「Gerchbergの第2の方法」又は「G2」と呼称されている。G2については、R. W. Gerchbergの「“A New Approach to Phase Retrieval of a Wave Front,” Journal of Modern Optics, 49:7, 1185-1196, 2002」において公開されており、この文献は、引用により、そのすべてが本明細書に包含される。G2の更なる態様については、米国特許第6,369,932号、第6,545,790号、及び第8,040,595号明細書において記述されており、これらの文献のすべては、引用により、そのすべてが本明細書に包含される。
【0005】
ホログラフィとは異なり、G2は、基準波を必要としていない。むしろ、G2は、N個の独立した方法において対象の量を計測し、且つ、次いで、結果の間において平均化を実行することに類似している。これらの特許は、波を使用する際に実際にこれを実現する方法を示している。G2は、確実な位相回復のために複数の計測値を使用する第1のこの種の方法であると考えられる。位相回復のためのいくつかのその他の周知の方法は、ER(Error Reduction)アルゴリズム(J, R, Fienup, ’Reconstruction of an object from its Fourier transform,’ Optics Letters, Vol. 3, No 1, pp.27-29, July 1978; J. R. Fienup, ’Phase retrieval algorithms, a comparison,’ Applied Optics, Vol. 21, No. 15, pp. 2758-2769, 1 August, 1982)、ASR(Averaged Successive Relaxation)(J. C. H. Spence, ’Diffractive (lensless) imaging,’ Ch. 19, Science of Microscopy, edited by P. W. Hawkes, J. C. H. Spence, Springer, 2007)、HPR(Hybrid Projection Reflection)(H. H. Bauschke, P. L. Combettes, D. Russell Luke, ’Hybrid projection-reflection method for phase retrieval,’ J. Optical Soc. Am. A, Vol. 20, No. 6, pp. 1025-1034, June 2003)、RAAR(Relaxed Averaged Alternating Reflection)(D. Russell Luke, ’Relaxed averaged alternating reflections for diffraction imaging,’ Inverse Problems, Vol. 21, pp. 37-50, 2005)、OSS(Oversampling Smoothness)(J.A.Rodriguez,R.Xu,C.-C.Chen, Y.Zou ,and J.Miao,’Oversampling smoothness: an effective algorithm for phase retrieval of noisy diffraction intensities,’ J. Applied Crystallography, Vol. 46, pp. 312-318 , 2013)、及びDM(Difference map)(V. Elser, ‘Solution of the crystallographic phase problem by iterated projections,’ Acta Crystallography. Section A: Foundations Crystallography, Vol.59, pp. 201-209, 2003)である。かなり最近ではあるが、SO2D及びSO4D(Stefano Marchesini, ’Phase retrieval and saddle-point optimization,’ J. Optical Soc. Am. A, Vol. 24, No. 10, pp. 3289-3296, October 2007)などの相対的に効果的な最適化方法を利用するいくつかのアルゴリズムが存在している。PhasePack(R.Chandra, T.Goldstein, C.Studer,’Phasepack: a phase retrieval library,’ IEEE 13th international conference on sampling theory and applications, pp.1-5, 2019)には、多くの一般的な位相取得アルゴリズムの新しいベンチマーク研究について記述されている。この研究においては、G2におけると同一の方式により、12個の反復位相回復方法と共に、システム入力における8つのバイポーラバイナリマスクを伴う平均化及びマスキングが使用されている。
【0006】
すべてのこれらのアルゴリズムにおいて共通しているテーマは、事前の情報及び制約を使用することにより、最良の位相回復を実現するという点にある。入力マスクの使用が、このような事前情報をもたらしている。また、非負性、サポート情報、及び振幅情報も、事前情報として一般に使用されている。サポート情報が特に重要である。これは、しばしば、合計サイズ2N×2Nを生成するために、ゼロによって取り囲まれたウィンドウの中心にサイズN×Nの(複素)画像が位置することを意味している。また、これは、デジタル実装形態において連続フーリエ変換を近似するために高速フーリエ変換(FFT)を使用する際にも重要である。
【0007】
実験的研究は、通常、完全な位相及び画像回復のためのフーリエドメインにおける振幅の単一計測の場合には、十分な事前情報が存在していないことを示している。換言すれば、いくつかの方法の場合には、所与のデータによる回復結果がその他のものよりも良好であり得るが、回復は、通常、完全ではなく、即ち、それは、しばしば、更なる情報を伴わない場合には、近似である。以上において概説されている入力マスクを使用することによる複数の計測を伴う研究は、この欠点を補っている。
【0008】
最近、機械学習及び特に深層学習法が、しばしば、従来の位相回復方法によって得られた結果を改善するために利用されている。例えば、位相回復結果を改善するために、2つの深層ニューラルネットワーク(DNN)がHIO方法と共に使用されている(C. ISll, F. S. Oktem, and A. Koc, ‘Deep iterative reconstruction for phase retrieval,’ Applied Optics, Vol. 58, pp. 5422-5431, 2019)。
【0009】
まず、再構築を改善するために、DNNがHIO方法と共に反復的に使用されている。次いで、残りのアーチファクトを除去するために、第2DNNがトレーニングされている。
【0010】
研究コミュニティにおいては、高品質の位相及び画像回復が必要とされる際には、複数の計測値が必要とされるという認識が拡大している。ごく最近になって、いくつかのこのような方法が文献において公開されている。以下、GerchbergのG2法に対するある程度の類似性を有する複数の計測値を有するいくつかの方法について説明する。
【0011】
Candes他の(E. J. Candes, Y. Eldar, T. Strohmer, V, Voroninski, ’Phase Retrieval via Matrix Completion,’ preprint, August 2011; E. J. Candes, X. Li, M. Soltanolkotabi, ’Phase Retrieval from Coded Diffraction Patterns,’ Stanford University, Technical Report No. 2013-12, December 2013)による位相リフト法においては、最初の方式は、GerchbergのG2法におけるものと同一である。換言すれば、いくつかのマスクを使用することにより、いくつかの計測値が取得されている。また、彼らは、マスクの代替物として、光学格子、タイコグラフィ、及び傾斜照明の使用に言及している。但し、マスクが、彼らの文献において使用されている主要なメカニズムである。G2における平均化ステップが凸最適化法によって置換されており、これも、マトリックス完了又はマトリックス回復問題に関係している。
【0012】
また、Sicairos及びFienupの(M. Guizar-Sicairos, J. R. Fienup, ’Phase Retrieval with Fourier-Weighted Projections,’ J. Optical Soc. Am. A, Vol.25, No. 3, pp. 701-709, March 2008)によるフーリエ重み付けプロジェクション法においても、高品質位相回復を実現するために、マスクが使用されている。彼らは、これを目的として異なるタイプのマスクを提案している。
【0013】
タイコグラフィは、複数の回折強度計測を利用した別の方法である(J. M. Rodenburg, ’Ptychography and Related Imaging Methods,’ Advances in Imaging and Electron Physics, Vol. 150, pp. 87-184, 2008)。これは、1968~1973年の期間において、特にX線撮像のために、Hoppeによって最初に導入されたものである。タイコグラフィは、マスクに依存する代わりに撮像対象の物体との関係において照明関数又はアパーチャ関数を既知の量だけシフトさせることによる少なくとも2つの回折強度の記録に依存している。従って、一度に物体を照明する運動するプローブが存在している。十分な量のオーバーラップが照明の異なる部分の間に存在している際には、位相回復を反復位相取得アルゴリズムによって実現することができる。最近、既知の照明パターンとの関係において物体を平行運動させた後に取得されるダイバースファーフィールド計測に基づいて別の関係するアルゴリズムがSicairos及びFienupによって開発されている(M. Guizar-Sicairos, J. R. Fienup, ’Phase Retrieval with Transverse Translation Diversity: A Nonlinear Optimization Approach,’ Optics Express, Vol.16, No. 10, pp. 7264-7278, 12 May, 2008)。この研究においては、非線形最適化が使用されている。
【0014】
要すれば、研究コミュニティにおいては、例えば、回折(レンズなし)撮像に結び付く位相及び画像回復問題を解決するために、現時点においては、複数の回折強度計測値が使用されている(B. Abbey et al, ’Lensless Imaging Using Broadband X-Ray Sources,’ Nature Photonics, pp. 420-424, 26 June 2011)。これは、レンズが非常に高価であるX線及び遠赤外線撮像などのエリアにおいては、特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の実施形態は、優れたスペクトル位相及びこれによる完全な情報回復を目的として特別に選択された最小数のマスクを使用することにより、従来技術の方法を改善している。この結果、演算の速度も増大している。振幅をそれぞれが有するポイント(例えば、ピクセル)のアレイから位相情報を回復する方法によれば、入力及びスペクトル出力を有する少なくとも1つの変換ユニットが提供されている。ポイントのアレイは、光学的にコヒーレント波をもたらし得るか又は電子的にデータをもたらし得る。アレイは、一次元以上のものであってよく、二次元用途が相対的に一般的である。振幅情報がスペクトルポイントにおいて記録されている。変換ユニットは、1つ又は複数のレンズを有するレンズシステム、又は自由空間波伝播、又はデジタル処理ユニットであってよい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
変換ユニットに対する入力に作用しているのが、少なくとも2つの特別に選択されたマスクである。2つのマスキングバージョンが存在している。第1バージョンにおいては、マスクの1つは、ユニティマスクである(すべてのその要素が1に等しい状態にあり、透明マスクとも呼称される)。第2のバージョンにおいては、その要素が振幅において0又は1に等しい相補型ユニポーラマスクの少なくとも1つのペアが存在している。入力は、変更された入力をマスクのそれぞれから生成するために、少なくとも2つのマスクのそれぞれに対して別個に印加されている。光学的実施形態又はこれに類似したものによれば、マスクは、物理的空間マスクである。このような実施形態においては、入力は波である。波に対して動作するマスクは、入力が少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれによって順番に別個に個々に受け取られるように、マスクの1つから別のものへと切り替えることができる。このような切り替えは、例えば、空間光変調器又はマイクロミラーアレイなどの光学装置により、リアルタイムで実現することができる。或いは、この代わりに、入力波は、物理的空間マスクのそれぞれによって並行して個々に受け取られるように、分割することもできよう。
【0017】
実施形態の任意のものにおいて、境界と合致する任意のポイントの振幅をゼロに設定するそれぞれのマスクを取り囲む外側境界を含むことが有利であり得る。
【0018】
本発明の実施形態によれば、必要とされるマスクの数を2つ又は3つに低減することができる。一実施形態において、マスクは、ユニティマスク及び位相マスクから構成されている(
図1C-I)。具体的には、位相は、量子化された位相値を伴い得る。従って、特定の実施形態において、位相マスクは、0又はπに等しい位相値に対応するバイポーラ(1及び-1を意味する)バイナリマスクである(
図1C-II)。更なる実施形態において、マスクは、ユニティマスク及び相補型ユニポーラバイナリマスク(切り替えられる状態において、一方のマスクが要素1及び0を有し、且つ、その他のものが1及び0を有する)の少なくとも1つのペアから構成されている(
図1C-III)。更には、マスクは、ユニティマスク及び1に等しい振幅との関係において相補的であるマスクのペアから構成することもできる。
【0019】
また、ユニティマスクの使用を含まない実施形態においては、マスクの効率的な選択を実現することができる。この更なる実施形態によれば、マスクの2つのペアを含む4つのマスクが存在している(
図2)。それぞれのペアにおいて、マスクは、振幅との関係において互いに相補的である。従って、このようなマスク上のユニティ要素は、位相が0~2πの連続的値又は量子化された位相値を伴い得る位相因子を更に含むことができる。更に特定の実施形態においては、マスクは、相補型ユニポーラバイナリマスクの2つのペアから構成されている。
【0020】
本明細書において使用されている一般化フーリエ変換(FT)という用語は、物理的又はデジタル的に実行される変換を包含している。一般化FTは、変換された変更済みの入力を生成するために、それぞれのマスクから受け取られた変更済みの入力に対して変換ユニットによって実行されている。スペクトルプレーン(出力)は、一般化FTの出力(プレーン)として定義されている。当然のことながら、一般化FTは、コヒーレント波伝播に起因して且つ/又は変更済みの入力がレンズシステムを通過する際に発生している。これは、更なる位相因子を伴っている。顕著な例は、コヒーレントオプティクスにおけるフレネル回折である。
【0021】
デジタル処理ユニットである変換ユニットの場合には、一般化FTは、一般化高速フーリエ変換(FFT)であってよい。変換ユニットのスペクトル出力においては、変換された変更済みの入力のそれぞれからフェーザグラム(phasorgram)を生成するために、振幅値がポイントのアレイにおいて記録されている。光学的実施形態においては、記録は、レンズシステムのスペクトルプレーン(出力)においてカメラなどの強度センサによって実行することができる。スペクトル出力における結果的に得られる振幅情報は、フェーザグラムと呼称されている。
【0022】
方法は、複数の複素フェーザグラムを形成するために、位相値をそれぞれのフェーザグラム上のポイントと関連付けるステップを更に含む。実施形態の任意のものにおいて、位相値は、当初、ランダム位相値であってよい。複素フェーザグラムは、振幅及び位相情報を有する再構築された入力を構成するトータグラム(totagram)を生成するために収束が実現される時点まで稼働する反復プロセスに供給されている。トータグラムは、任意の数の方法で使用され得る完全な且つ価値ある情報を含む。例えば、実施形態の任意のものにおいて、トータグラムは、振幅及び位相を有する再構築された入力の表現を表示するために使用することができる。
【0023】
反復処理を実行する一実施形態によれば、複数の複素フェーザグラムは、逆一般化フーリエ変換及び恐らくはその他の最適化ステップによって処理されている。それぞれの入力ポイントにおける複素情報を平均化することにより、入力の単一推定値が取得されている。ポイントの複数の中間アレイを得るために、入力の単一推定値は、マスクのそれぞれを複製するプロセスを通過させられている。別の複数の複素フェーザグラムを生成するために、一般化高速フーリエ変換が中間アレイのそれぞれに対して実行され、且つ、次いで、変換された中間アレイ内のそれぞれのポイントにおける振幅値が、対応する当初記録された振幅値によって置換されている。ここでは、更なる最適化ステップが存在することもできる。反復プロセスは、収束が実現される時点まで、生成された複素フェーザグラムによって反復されており、この場合に、完了の際の入力の単一推定値がトータグラムである。
【0024】
実施形態の任意のものにおいて、収束を判定するために、任意の数の方法を使用することができる。単純な1つの方法は、所与の反復の数までカウントアップするというものである。或いは、この代わりに、収束は、連続的な単一推定値の間の絶対差が既定の閾値に到達した際に実現されている。
【0025】
光学的実施形態の任意のものにおいて、少なくとも1つの変換ユニットは、0.7以上である開口数(NA)を有する低域通過フィルタを含む。
【0026】
少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれに入力波を通過させる前に入力波に対して線形位相変調を適用することにより、或いは、強度センサを空間的に運動させることにより、任意の実施形態が入力波面の超分解能振幅及び位相情報を生成することができる。
【0027】
任意の実施形態が、例えば、離れた物体のレンズなし撮像のために、少なくとも2つのマスクのそれぞれに入力を別個に適用する前に入力に対して先行する一般化フーリエ変換(FT)を実行するステップを含み得る。
【0028】
任意の実施形態において、少なくとも2つの物理的空間マスクは、相対的に容易な実装を目的として、(i)8×8ピクセル以下又は(ii)16×16ピクセル以下のいずれかのもののアパーチャサイズをそれぞれが有する要素を有することができる。マスクのそれぞれの要素は、マスクのその要素を通過したピクセル又はポイントのそれぞれに適用される関連付けられた一定の振幅及び/又は位相を有する。
【0029】
本発明のシステム実施形態は、方法実施形態の1つ又は複数に従って動作している。システムは、変換ユニットを含み、これは、1つ又は複数のレンズを有するレンズシステムであってもよく、或いは、デジタル処理ユニットであってもよい。システムは、少なくとも2つのマスクを更に含む。いくつかの実施形態によれば、少なくとも2つのマスクは、ユニティマスクを含む。一実施形態において、マスクは、ユニティマスク及び位相マスクから構成されている(
図1C-I)。位相マスクは、量子化された位相値を有することができる。具体的には、マスクは、ユニティマスク及びバイポーラバイナリマスクから構成することができる(
図1CーII)。更なる実施形態において、マスクは、ユニティマスク及び相補型ユニポーラバイナリマスクのペアから構成されている(
図1C-III)。更に一般的には、マスクは、ユニティマスク及びバイナリ振幅との関係において相補的であるマスクの1つのペア又はマスクの複数のペアから構成することもできる。
【0030】
更なる実施形態によれば、マスクは、ユニティマスクを伴うことなしに振幅との関係において相補的であるマスクの1つのペア又は複数のペアから構成することができる。具体的には、マスクの2つのペアを含む4つのマスクが存在していてもよく、この場合に、それぞれのペア内のマスクは、振幅との関係において互いに相補的である。これは、1つのマスク内の値1及び0が、第2マスク内においては、それぞれ、0及び1になることを意味している(
図2)。このようなマスク上のユニティポイントは、位相因子を更に含むことができる。更に特定の実施形態においては、マスクは、相補型ユニポーラバイナリマスクの2つのペアから構成されている。
【0031】
実施形態の任意のものにおいて、境界と合致する任意のポイントの振幅をゼロに設定するそれぞれのマスクを取り囲む外側境界を含むことが有利であり得る。実際に、更なる実施形態によれば、マスクは、境界と合致する任意のポイントの振幅をゼロに設定する外側境界をそれぞれが有する相補型ユニポーラバイナリマスクの1つのペアから構成されている。
【0032】
光学的実施形態において、マスクは、光学レンズシステムの入力プレーンにおいて配設された物理的空間マスクである。波に対して動作するマスクは、入力が少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれによって順番に別個に個々に受け取られるように、マスクの1つから別のものに切り替え可能である。このような切り替えは、例えば、空間光変調器又はマイクロミラーアレイなどの光学装置によってリアルタイムで実現することができる。或いは、この代わりに、入力波は、物理的空間マスクのそれぞれによって並行して個々に受け取られるように、ビームスプリッタによって分割することもできる。
【0033】
マスクのそれぞれによって別個に変更された入力は、変換ユニットを通過させられている。フェーザグラムを生成するために、変換された変更済みの入力のポイントのアレイにおいて振幅値が記録されている。光学的実施形態においては、振幅値の記録は、少なくとも1つのセンサシステムによって実行されている。センサシステムは、カメラなどの強度センサであってよい。
【0034】
システムは、(1)複数の複素フェーザグラムを形成するために、初期位相値をそれぞれのフェーザグラム上のそれぞれのポイントと関連付けるように、且つ、(2)振幅及び位相情報を有する再構築された入力を構成するトータグラムを生成するために、収束が実現される時点まで複数の複素フェーザグラムを反復的に処理するように、構成されたプロセッサを更に含む。
【0035】
以上の実施形態の特徴については、以下のとおりである添付図面を参照して提供される以下の詳細な説明を参照することより、更に容易に理解することができよう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】
図1Aは、本発明によるシステムの一実施形態の概略図である。
【0037】
【
図1B-I】
図1B-Iは、本発明による別のシステムの一実施形態の概略図である。
【0038】
【
図1B-II】
図1B-IIは、本発明による別のシステムの一実施形態の概略図である。
【0039】
【
図1C-I】
図1C-Iは、本発明によるユニティマスク及び位相マスクを有する一システムの実施形態の概略図である。
【0040】
【
図1C-II】
図1C-IIは、本発明によるユニティマスク及びバイポーラバイナリマスクを有するシステムの一実施形態の概略図である。
【0041】
【
図1C-III】
図1C-IIIは、本発明によるユニティマスク及びユニポーラマスクのペアを有するシステムの一実施形態の概略図である。
【0042】
【
図2】
図2は、本発明によるユニポーラマスクの2つのペアを有するシステムの一実施形態の概略図である。
【0043】
【
図3A】
図3Aは、本発明の実施形態による位相回復の方法のフロー図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の実施形態による位相回復の方法のフロー図である。
【0044】
【
図4】
図4は、アパーチャサイズが16×16ピクセルである際のバイナリ空間マスクである。
【0045】
【
図5】
図5は、アパーチャサイズが8×8ピクセルである際のバイナリ空間マスクである。
【0046】
【
図6】
図6は、1つのユニティマスク及び1つのバイポーラバイナリマスクを有するG2を使用した再構築結果を示す。
【0047】
【
図7】
図7は、アパーチャサイズが16×16ピクセルである際の1つのユニティマスク及び1つのバイポーラバイナリマスクに伴う誤差低減曲線を示す。
【0048】
【
図8】
図8は、相補型ユニポーラバイナリマスクの1つのペアを有するG2を使用した再構築結果を示す。
【0049】
【
図9A】
図9Aは、Fienup反復位相回復方法による2つのバイポーラバイナリマスクを使用した再構築結果を示す。
【0050】
【
図9B】
図9Bは、Fienup反復位相回復方法による3つのバイポーラバイナリマスクを使用した再構築結果を示す。
【0051】
【
図10】
図10は、Fienup反復位相回復方法による1つのユニティマスク及び1つのバイポーラバイナリマスクを使用した本発明の一実施形態の再構築結果を示す。
【0052】
【
図11】
図11は、Fienup反復位相回復方法による相補型ユニポーラバイナリマスクの2つのペアを使用した本発明の一実施形態の再構築結果である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
定義:本説明及び添付の請求項において使用されている以下の用語は、文脈がそうではない旨を必要としていない限り、示されている意味を有するものとする。
【0054】
「トータグラム」という用語は、本明細書においては、マスクを使用した反復スペクトル位相回復プロセスからの結果的に得られる入力位相及び振幅情報として定義されている。情報は、一次元又は多次元であってよい。特定の実施形態において、トータグラムは、特定の波長における入力コヒーレント波の再構築された振幅及び位相である。
【0055】
「トータグラフィ」又は「トータグラフィ法」という本明細書における用語は、本明細書においては、トータグラムを取得するプロセスとして定義されている。
【0056】
「トラグラフィ撮像」は、画像情報の記録が画像プレーン上においてカメラによって実行されているその他の撮像システムとは対照的に、スペクトルプレーン上におけるセンサ/カメラによるスペクトル振幅の記録を伴っている。
【0057】
「ホログラフィ」は、物体波とホログラムを生成する基準波の混合に起因した干渉パターンの物理的記録を伴っている。その一方で、トータグラフィは、ホログラフィにおけるような物体波と基準波の間の干渉パターンの記録を置換しており、且つ、その代わりに、本明細書において定義されている方法及びシステムを使用することにより、トータグラムを生成するために反復的に処理される特殊なマスクを使用していくつかの計測を実行している。
【0058】
「フェーザグラム」は、本明細書においては、特定の入力マスクとの関係において変換ユニット(例えば、一般化フーリエ変換)によって入力波を処理した後の計測又は記録されたスペクトル振幅情報を含む情報として定義されている。フェーザグラムは、入力波に対する類似性をほとんど又はまったく有しておらず、その理由は、スペクトル位相情報が破棄され、且つ、スペクトル振幅が記録されているからである。
【0059】
序論
図1Aは、本発明と共に使用されるシステム100の一実施形態の概略図である。システム100は、コヒーレント入力波102から位相及び振幅情報を回復している。入力波102は、物体120から生成することができる。物体120は、照明された物体であってよい。システム100は、スペクトルプレーン(SP)及び入力プレーン(IP)を有する少なくとも1つの変換ユニット110と、少なくとも2つのマスク108と、を含む。システムは、入力波102がマスクのそれぞれに対して連続的に別個に適用されるように構成されている。光学的実施形態において、マスクは、物理的空間マスクである。このような物理的マスクは、空間光変調器又はマイクロミラーアレイなどの光学装置によって1つのマスクから別のものにリアルタイムで変化するように実装することができる。少なくとも2つの物理的空間マスクは、少なくとも1つの変換ユニット110のIPにおいて配置することができる。いくつかの実施形態において、変換ユニットは、1つ又は複数のレンズを有するレンズシステムであってよい。また、光学的実施形態の任意のものにおいて、少なくとも1つの変換ユニットは、0.7以上の開口数(NA)を有する低域通過フィルタとして機能することができる。その他の実施形態において、変換ユニットは、デジタルプロセッサにおいて実装することができる。
【0060】
少なくとも2つのマスクのそれぞれは、マスクを取り囲む個々の不透明な境界から形成された入力ウィンドウ106を含むことができる。それぞれの不透明境界は、境界と合致する入力波内のピクセルを阻止し、これにより、それらのピクセルの振幅をゼロに設定するように構成されている。少なくとも2つのマスク108は、その別個に受け取られた入力波の位相又は振幅を変更するように構成されている。少なくとも1つの変換ユニットは、変更された別個に受け取られた入力波に対して一般化フーリエ変換(FT)を実行するように構成されている。
【0061】
システム100は、SPにおけるそれぞれの変換された変更済みの入力のポイントのアレイにおいて振幅値を記録するように構成された少なくとも1つのセンサ112を更に含む。少なくとも1つのセンサは、計測又は記録されたスペクトル振幅情報を含むフェーザグラム152を生成している。フェーザグラム152は、入力波102に対する類似性をほとんど又はまったく有していない場合があり、その理由は、位相情報が破棄されているからである。センサ112は、カメラであってもよく、これは、強度センサである。振幅値は、強度から直接的に導出されている。強度は、振幅の二乗に線形比例しているものと理解されたい。
【0062】
システム100は、デジタルプロセッサ128を更に含む。フェーザグラム152は、トータグラム158を生成するために、プロセッサ128によって反復的に処理されている。プロセッサ128は、複数の複素フェーザグラムを形成するために位相値をそれぞれのフェーザグラム上のそれぞれのポイントと関連付けるように、且つ、振幅及び位相情報を有する再構築された入力波を構成するトータグラム158を生成するために収束が実現される時点まで複数の複素フェーザグラムを反復的に処理するように、構成されている。スペクトル位相は、記録された振幅値と整合するように回復されている。入力振幅及び位相は、適宜、一般化IFFTの使用を通じてスペクトル位相及び振幅から取得することができる。プロセッサ128は、更なる処理162のためにトータグラム158を提供することができる。コンピュータ処理162は、画像処理、機械学習、及び/又は深層学習を含むことができる。処理された結果178は、ユーザーインターフェイス118によってアクセス可能なディスプレイ170において画像172を形成することができる。
【0063】
図1B-I及び
図1B-IIは、複数の物理的空間マスクに並行して入力を別個に適用する実施形態による、それぞれ、システム150A及び150Bの概略図である。システム150A及び150Bは、それぞれ、入力波102から位相及び振幅情報を回復している。入力波102は、物体120から生成することができる。物体120は、照明された物体であってよい。システム150A及び150Bは、それぞれ、対応する変換ユニット110の入力プレーンにおいてそれぞれが配設された少なくとも2つの物理的空間マスク108を含む。
【0064】
システム150A及び150Bは、それぞれ、入力波102を2つ以上の別個の波に分割するように構成されたスプリッタ130A(本明細書においては、「ビームスプリッタ」とも呼称される)を更に含む。スプリッタからの別個の波のそれぞれは、変更された波を生成するために、少なくとも2つの物理的空間マスク108の対応するものを通過している。少なくとも1つの変換ユニット110は、変更された入力波102に対して一般化フーリエ変換(FT)を実行するように構成されている。システム150A及び150Bは、それぞれの変換ユニットごとにスペクトルプレーンにおける変換された別個の波のスペクトル振幅画像を記録するように構成されたセンサ112を含む。システム150A及び150Bは、
図1Aとの関係において上述したように動作するプロセッサ128を含む。
【0065】
これに加えて、
図1B-IIに示されているように、システム150Bは、スプリッタ130Aに入力波102を個々に通過させる前に、変換ユニット107を介して、先行する一般化フーリエ変換(FT)を入力波102に対して実行することができる。特定の実施形態においては、変換ユニット107は、入力マスク108への途上において入力波を受け取るレンズである。変換ユニット107の先行する一般化フーリエ変換は、初期入力プレーン画像(波)を第2画像(波)に変換している。このプレーン上において、入力マスク108は、強度センサ112を照明するための以前と同様の変換ユニット110を通じた一般化フーリエ変換に伴って、第2画像と共に使用されている。
【0066】
反復位相回復プロセスは、第2画像(波)のみを含む。位相回復が完了したら、初期入力プレーン画像(波)が、最終的な逆一般化フーリエ変換によって回復されている。
【0067】
本発明の実施形態によれば、
図1C-I、
図1C-II、
図1C-III、及び
図2のそれぞれは、多数の更に多くのマスクを有するシステムよりも迅速且つ効率的に完全な位相回復を実現するマスクの最小の組を示している。
図1C-I、
図1C-II、及び
図1C-IIIは、透明マスクとも呼称され得るユニティマスク108tを利用している。入力波は、妨げのない状態においてユニティマスクを通過しており、従って、物理的に、ユニティマスクは、任意の妨げられていない光経路によって実現することができる。任意選択により、演算プロセスの効率性を更に改善するために、図示されているように、不透明な外側境界がユニティマスクを取り囲むことができる。境界は、外側境界と合致する波上のポイントの振幅をゼロに設定している。複数のマスクがシステムに追加され得るが、本発明のこれらの実施形態によれば、ユニティマスクの包含は、1つ又は複数程度に少ない数の更なるマスクにより、望ましいトータグラムを実現することができる。更に多くのマスクが使用される場合に、マスクの1つがユニティマスクである際には、最終的な情報回復は、更に高い品質を有する。
【0068】
図1C-Iは、ユニティマスク108t及び位相マスク108cを有するシステムの一実施形態の概略図である。位相マスク108cは、マスクを通過するポイントに対して位相シフトを付与している。マスクのそれぞれのピクセル又は要素(ピクセルのグループ)は、要素ごとに変化し得るその独自の指定された位相シフトを付与し得る。二次元マスクにおいては、要素は、通常、一側におけるピクセルの数によって計測されるアパーチャサイズを有するピクセルからなる正方形である。位相マスクは、有利には、量子化された位相値を伴うことにより、単純化することができる。例えば、2レベル量子化によれば、量子化された位相値は、0及びπであり、その結果、1又は-1に等しい位相因子が得られる。このような位相マスクは、バイポーラバイナリマスクと呼称されている。
【0069】
図1C-IIに示されているように、ユニティマスク108t及びバイポーラバイナリマスク108bは、本発明の一実施形態によれば、2つのマスクのみであることが可能である。これらの2つの単純なマスクでさえ、トータグラムを効率的に生成している。ユニティマスクは、基本的にすべてが1であり、且つ、バイポーラバイナリマスクは、ランダムに分散した1及び-1の「チェッカーボード」である。効率性を更に改善するために、不透明な外側境界がマスクを取り囲むことができる。
【0070】
図1C-IIIは、ユニポーラバイナリマスク108uを活用した本発明の一実施形態である。ユニポーラバイナリマスクのピクセル又は要素は、開放(通過を意味する1の振幅)又は閉鎖(非通過を意味する0の振幅)である。ピクセル又は要素は、ランダムパターンにおいて構成されている。ユニポーラバイナリマスクは、マスクが振幅との関係において互いに相補的であるペアとして使用されている。これは、1の振幅を有する一方のマスク内の要素の場所の場合に、他方のマスク内の対応する要素が0の振幅を有することを意味している。トータグラムを効率的に生成するための最小マスク構成は、ユニタリマスク108t及びユニポーラバイナリマスク108uの相補型ペアを含む。
【0071】
図2は、相補型バイナリマスク108vの2つのペアを使用する本発明の一代替実施形態の概略図であり、この場合には、ユニタリマスクが不要である。この実施形態によれば、トータグラムは、少なくとも4つのマスクを使用して判定することができる。4つのマスクは、マスクの2つのペアを含み、この場合に、1つのペア内のマスクは、振幅との関係において互いに相補的である。具体的には、4つのマスクは、いずれも、ユニポーラバイナリマスクであってよい。マスク要素の振幅は、1又は0である一方で、マスクを複素化する1の要素内においてランダム位相因子を含むことも可能である。
【0072】
本発明の更なる実施形態においては、マスク108vは、相補型バイナリマスクの1つのペアのみに低減することができる。このようなマスクの構成は、入力が0~2πの位相変動の範囲全体を有する際には、トータグラムの生成において困難を有し得る。但し、0~πなどの更に狭い範囲の位相において制限されている入力の場合には、相補型マスクの1つのペアで十分であり得る。この場合にも、ペア内のマスクは、振幅との関係において互いに相補的である。具体的には、両方のマスクは、ユニポーラバイナリマスクであってよい。このケースは、不透明境界がマスクを取り囲んでいる場合に更に改善されることになろう。従って、特定の用途の場合には、2つのペアの代わりに、この相補型バイナリマスクの単一のペアを使用することができる。
【0073】
以下、
図3A及び
図3Bとの関係において、本発明の実施形態のマスクと共に使用される位相回復システムについて更に詳細に説明する。システムに対する入力102は、ポイントのアレイであり、それぞれのポイントは、振幅を有する。アレイは、一次元以上であってよい。光学的環境においては、入力は、ピクセル(ポイント)の二次元アレイとしてキャプチャされたコヒーレント波である。システムは、その入力を物体120から入力画像(波)を介して受け取ることができる。物体120は、照明された物体であってよい。フルカラーの波情報を回復するために、いくつかの位相回復システムを並行して稼働するように構成することができる。例えば、それぞれのシステムは、3つの原色(波長)の1つについて、その独自のコヒーレント波に対して動作することができる。これは、3つ超の波長を有するマルチスペクトル且つハイパースペクトル画像(波)に一般化することができる。
【0074】
入力は、マスクのそれぞれに対して別個に提示される必要がある。これは、複数のマスクのそれぞれを通じて別個に入力アレイを処理するデジタル実施形態において容易に実行されている。光学的実施形態においては、マスクのそれぞれごとに入力ポイントアレイを複製するために、スプリッタ130Bを使用することができる。或いは、この代わりに、
図1Aとの関係において記述されているように、入力マスクを空間光変調器又はマイクロミラーアレイによって連続的に切り替えることもできる。
【0075】
システムは、
図1C-I、
図1C-II、
図1C-III、及び
図2との関係において上述した実施形態の任意のものに従って複数のマスク188によって構成されている。また、更なるマスクも使用され得るが、マスクの数と、従って、演算の量及び実装の困難性(Ddifficulty)と、を極小化することが有利である。任意選択により、反復的演算プロセスの効率及び精度を更に促進するために、マスクを取り囲んでいる外側境界を使用することができる。それぞれのマスクによって変更された入力は、一般化フーリエ変換182を実行するために、変換ユニット110を通過させられている。光学的実施形態においては、変換ユニットは、レンズ又はレンズのシステムであってよい。デジタル実施形態においては、一般化フーリエ変換182が演算されている。一般化フーリエ変換は、一般化FFTであってよい。
【0076】
変換された変更済みの入力は、それぞれ、それぞれの変換された変更済みの入力のポイントのスペクトルアレイにおいて振幅値を記録するセンサ112に供給されている。振幅値のアレイは、フェーザグラムと呼称されている。センサ112は、位相に対する感度を有していない。従って、スペクトルプレーン(出力)上の位相変動としてモデル化され得る任意の位相収差がセンサにおいて除去されている。光学的実施形態においては、センサ112は、カメラなどの強度センサであってよい。強度は、振幅の二乗に線形比例している。
【0077】
方法は、デジタルプロセッサ128内において、複数の複素フェーザグラムを形成するために、位相値196をそれぞれのフェーザグラム上のそれぞれのポイントと関連付けるステップを更に含む。好ましい実施形態においては、ランダムに選択された位相値がそれぞれのポイントと関連付けられている。位相の包含は、複素フェーザグラムをもたらしている。
【0078】
複素フェーザグラムは、反復的プロセスに進入している。当技術分野においては、いくつかの方式が知られている。1つのこのようなプロセスは、G2である。その他の方式は、例えば、Phasepackにおいて示されている。システム内において実装されているプロセスに応じて、複素フェーザグラムは、それぞれ、任意選択により、(反復的システムの入力及び/又は出力に位置し得る)最適化プロセス198を通過することができる。次いで、それぞれの複素フェーザグラムは、逆一般化フーリエ変換186を通じて処理されている。FFTの場合には、逆はIFFTであり、且つ、逆もまた真である。
【0079】
逆一般化フーリエ変換の出力は、任意選択により、実装されているプロセスに応じて最適化され、且つ、次いで、入力の単一推定値を生成するために、それぞれの対応するポイントにおける複素情報が平均化されている178。任意選択により、別の最適化プロセスが、反復的プロセスの出力側において含まれ得る。単一推定値が取得されるごとに、プロセスは、収束が発生したかどうかを判定している172。1つの収束試験に従って、処理は、連続的な単一推定値の間の差が既定の閾値に到達する時点まで継続している。別の方式によれば、収束は、単一の推定値を判定する所与の数の反復が完了した後に、到達したものと仮定されている。いくつかの実施形態によれば、既定の閾値には、分数誤差、即ち、2つの連続的反復の間のすべてのN個の画像にわたって二乗された振幅(合計エネルギー)によって除算された逆一般化フーリエ変換からのすべてのN個の画像出力にわたる二乗誤差の合計(SSE)、が、限定を伴うことなしに、0.0001などの値未満である際に、到達している。SSEは、N個の現時点の波形と最後の推定値の間の二乗差を表している。或いは、この代わりに、SSEは、平均化の後の現時点の推定値及び最後の推定値の観点において定義することもできる。収束が実現されたら、入力振幅及び位相の最後の推定値がトータグラムを構成している。
【0080】
図3Bには、反復プロセスが更に示されている。単一推定値は、それぞれのマスクから1つずつ、複数の中間アレイを取得するために入力マスクのそれぞれを複製するプロセス189を通過させられている。換言すれば、対応するマスク内のそれぞれの要素の位相シフト及び/又は振幅因子は、この結果、中間アレイをもたらすために入力を変更している。一般化高速フーリエ変換183が中間アレイのそれぞれに対して実行されている。変換された中間アレイ内のそれぞれのポイントにおいて、振幅値が、センサ112によって当初記録された対応する振幅値によって置換され170、これにより、複素フェーザグラムの別の反復が生成されている。複素フェーザグラムは、実装されている反復プロセスに適用可能である場合には、最適化されている。次いで、第1反復におけると同様に、それぞれの複素フェーザグラムは、逆一般化フーリエ変換を通じて処理されている186。FFTの場合に、逆はIFFTであり、且つ、逆もまた真である。逆一般化フーリエ変換の出力は、任意選択により、実装されているプロセスに応じて最適化され、且つ、次いで、入力の単一推定値を生成するために、それぞれの対応するポイントにおける複素情報が平均化されている178。プロセスは、収束が発生する時点まで反復的に継続している172。
【0081】
任意選択により、位相回復方法は、少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれに入力波を通過させる前に何回かにわたって入力波に対して線形位相変調を実行することにより、或いは、何回かにわたって少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれに入力波を通過させた後に強度センサを空間的に運動させることにより、入力波から超分解能振幅及び位相情報を生成することができる。また、これは、何回かにわたってスペクトル出力の場所を運動させることにより、実現することもできる。
【0082】
少なくとも2つのマスクの任意の実施形態において、非ユニティマスクのそれぞれの要素は、8×8ピクセル以下のアパーチャサイズを有することができる。少なくとも2つのマスクから構成されている任意の実施形態においては、非ユニティマスクは、16×16ピクセル以下のアパーチャサイズを有することができる。非ユニティマスクのそれぞれの要素は、そのマスクの要素を通過させられたピクセル又はポイントのそれぞれに対して適用される関連する一定の振幅及び/又は位相を有する。
【0083】
任意の実施形態は、タスクに対する解決策を提供するためにトータグラムを処理するステップを含むことができる。これらのタスクは、顕微鏡法、エンコーディング、信号処理、波面検知、及び/又は光演算を含むことができる。トータグラム内の情報は、回復された振幅及び/又は位相情報を使用することにより、ホログラムに変換することができる。結果は、デジタルホログラム又はコンピュータ生成ホログラムと呼称されている。また、トータグラムの3D情報は、コンピュータグラフィクス、立体ディスプレイ、仮想現実、拡張現実、又は混合現実によるなどのデジタル技法により、その他の方式で視覚化することができる。任意の実施形態がディスプレイ上において解決策の結果又は表現を表示するステップを含むことができる。
【0084】
本発明のシステム及び方法の有効性は、様々な入力について示されている。入力がゼロ位相を有する場合には、これは、入力が振幅変動のみを有することを意味している。これは、最も単純なケースである。最も一般的なケースは、0と2πラジアンの間において変化する入力フェーズを有する。
【0085】
本発明の実施形態による適切なマスク組合せの2つの主要なカテゴリが存在している。第1のカテゴリにおいて、第1マスクは、ユニティ(すべての要素が+1に等しい状態において、クリア、透明である)マスクである。第2のマスクは、(1)0~2πラジアンの間において変化する位相マスク、(2)量子化された位相値に等しい要素を有する量子化された位相マスク、(3)0及びπラジアンとして選択された量子化された位相に対応する+1と-1に等しい要素を有するバイポーラバイナリマスク、(4)相補型マスクのペアであって、これは、1つのマスクが0及びexp(jθ1)を有し、θ1は、量子化された又は連続的な位相であり、且つ、第2マスクが、exp(jθ2)に等しい対応する要素を有し、θ2は、それぞれ、量子化された又は連続的な位相及び0であることを意味している、相補型マスクのペア、であってよい。換言すれば、マスクは、振幅との関係において相補的である。一方のマスクの要素が値0を有する場合には、ペアの他方のマスク内の対応する要素は、1の振幅及び関連する位相因子を有する。特定のケースにおいて、θ1及びθ2が0に等しくなるように選択されている際には、マスクは、0及び1に等しい要素を有するユニポーラバイナリマスクの相補型ペアとなる。別の特定のケースにおいては、θ1及びθ2が0又はπに限定されている際には、マスクは、0及び±1に等しい要素を有するバイナリマスクの相補型ペアとなる。バイナリは、0又は1である2つの振幅値を意味している。
【0086】
第2のカテゴリにおいては、透明マスクが必要とされておらず、むしろ、好ましくは2つ以上のペアである相補型マスクのペアが存在している。具体的には、相補型ユニポーラ(+1及び0)バイナリマスクの2つのペアを事実上使用することができる。更に多くのマスクが使用されている場合には、通常、位相回復反復の数が低減されている。
【0087】
カテゴリ1及び2において記述されているすべてのケースにおいて、ゼロによって充填された外側境界を使用することが可能である。例えば、マスクサイズを二倍にし且つゼロによってマスクの外側境界を充填することによる境界の使用は、通常、相対的に正確な再構築結果又は低減された数の位相回復反復を付与している。
【0088】
G2によるコヒーレント位相/振幅回復
コヒーレント位相/振幅回復の主要な用途は、2D、3D、又は更に高次の次元であり得る撮像である。多次元撮像を実現するには、振幅及び位相から構成された完全な波情報を有することが必要である。以下、コヒーレント位相/振幅回復用のいくつかの候補方法の一例として、G2について説明する。
【0089】
定数z(長手方向)を仮定することにより、コヒーレント空間波は、次式として記述することが可能であり、
【数1】
ここで、A(x,y)は、(x,y,z)における入力空間振幅であり、且つ、α(x,y)は、入力空間位相である。
【0090】
このポイントにおいて、本発明者らは、波が一般化フーリエ変換されるものと仮定する。デジタル実装形態においては、これは、波が一般化FFTによって処理されることを意味している。光学実装形態においては、波は、焦点距離Fを有するレンズシステムを通過している。この結果、初期波は、z=-Fにあるものと仮定される。スペクトルプレーンは、z=Fにある。スペクトルプレーン上においては、波は、入力波のフーリエ変換に比例することが知られており(O. K. Ersoy, Diffraction, Fourier Optics and Imaging, J. Wiley, November 2006)、この文献は、引用により、そのすべてが本明細書に包含される。これは、後述するケースである。
【0091】
スペクトルプレーン上において、対応する波は、次式として記述することが可能であり、
【数2】
ここで、
【数3】
は、スペクトル振幅であり、且つ、
【数4】
はスペクトル位相である。
【数5】
は、空間周波数に対応している。レンズシステムによれば、これらは、次式によって付与され、
【数6】
ここで、λは、波長であり、且つ、
【数7】
は、スペクトルプレーン上の空間座標である。
【0092】
センサがスペクトルプレーン上において配置されているものと仮定することにより、或いは、意図的に、スペクトル位相が失われ、且つ、スペクトル振幅が、次式としてのスペクトル強度
【数8】
を介して得られる。
【数9】
【0093】
コンピュータによる後続の反復において、
【数10】
は、高速フーリエ変換(FFT)技法によって更に処理されている。
【0094】
以下、離散フーリエ変換(DFT)及びその逆(IDFT)を有するデジタル処理、それらの高速アルゴリズムである高速フーリエ変換(FFT)及び逆高速フーリエ変換(IFFT)の詳細について更に説明する。以下のものが定義されることになる。
【数11】
【0095】
θiは、位相回復の際に第1反復において範囲[0,2π]においてランダムに選択されている。
【0096】
入力空間と出力空間の間の第1反復における初期変換は、次式のとおりであり、
【数12】
ここで、演算・及び/は、ポイントごとの乗算及び除算をそれぞれ表記している。次の反復は、次式のように、
【数13】
を平均化した後に開始されている。
【数14】
【0097】
次いで、現時点の反復における式(6~10)が反復されている。反復は、
【数15】
が無視可能に変化しているかどうか、或いは、規定された最大数の反復が完了したかどうか、をチェックすることにより、停止されている。
【0098】
1DのケースにおけるDFT及び逆DFTは、次式によって付与される。
【数16】
【0099】
式(11)及び(12)は、2Dのケースに容易に拡張することができる。
【0100】
デジタル/光学実装形態用の設計
反復位相回復方法のデジタル実行形態は、コンピュータシステム内において実行することができる。
【0101】
また、反復位相回復方法のデジタル/光学実装形態は、後続の反復処理のためにデジタルセンサ/カメラの出力によって供給されるデジタルシステムと結合される光学システムを製造することにより、実行することもできる。
【0102】
デジタル/光学実装形態の場合には、高分解能カメラ及び空間光変調器などのリアルタイム電子位相/振幅マスクを有するスペクトル撮像が使用されている。後続のデジタル処理は、高精度を有するコンピュータシステムによって実行されている。FFT技法は、その独自のサンプリングインターバルを必要としている。これらは、カメラと共にピクセルインターバルにマッチングさせることを要する。
【0103】
振幅及び位相回復が光学/デジタルシステムにおいて完了したら、情報は、トータグラムと呼称される。
【0104】
任意の実施形態が解決策をタスクに提供するためにトータグラムを処理するステップを含むことができる。これらのタスクは、顕微鏡法、エンコーディング、信号処理、波面検知、及び/又は光演算を含み得る。トータグラム内の情報は、回復された振幅及び位相情報を使用することにより、ホログラムに変換することができる。結果は、デジタルホログラム又はコンピュータ生成ホログラムと呼称されている。トータグラムの3D情報は、コンピュータグラフィクス、立体ディスプレイ、仮想現実、拡張現実、又は混合現実によるなどのデジタル技法により、その他の方法で視覚化することができる。
【0105】
光学/デジタルシステムにおける実験結果は、純粋にデジタル実装形態の結果と同程度に完全なものではない場合がある。差について補償するように、結果を改善するために、機械学習(ML)及び深層学習(DL)技法を使用することができる。このような技法は、位相回復及び回折撮像を支援するために報告されており(Y. Rivenson, Y. Zhang, H. Gunaydin, Da Teng and A. Ozcan, ‘Phase Recovery and Holographic Image Reconstruction Using Deep Learning in Neural Networks,’ Light: Science & Applications, Vol. 7, 17141, 2018、G. Barbastatis, A. Ozcan, G. Situ, ‘On the Use of Deep Learning for Computational Imaging,’ Optica, Vol. 6, No. 8, pp. 921-943, August 2019)、これらの文献は、引用により、そのすべてが本明細書に包含される。ML及びDLは、画像の非常に大きなデータベースを利用している。例えば、システムに対する入力画像は、実験的に実現されるものであることが可能であり、且つ、出力される望ましい画像は、理想的にそうあるべきものである。このような画像の非常に大きなデータベースによってトレーニングすることにより、ML及びDL方法は、良好な結果を実現することが報告されている。
【0106】
回折制限された光学コンポーネントを有する反復位相回復方法
変換ユニット110は、少なくとも回折制限された且つ点拡がり関数及びそのフーリエ変換であるコヒーレント伝達関数(CTF)によって制御されるコヒーレント光学システムであってよい。システムは、レンズシステムの開口数NAによって制御されるカットオフ周波数を有する理想的な低域通過フィルタとして機能している。この節においては、本発明者らは、十分に大きなNA(~0.7)によれば、反復位相回復が回折によって妨げられないことを示し且つ主張している。
【0107】
回折制限されたレンズシステムは、点広がり関数h(x,y)及びh(x,y)のフーリエ変換であるコヒーレント伝達関数
【数17】
を有する線形システムとして機能している。空間ドメインにおける線形システム式は、次式によって付与され、
【数18】
ここで、*は、線形2D畳み込みを表記し、且つ、
【数19】
は、出力空間波である。畳み込み理論による対応するスペクトル式は、次式によって付与され、
【数20】
ここで、
【数21】
は、出力空間波のフーリエ変換である。
【0108】
3D物体上のコヒーレント波照明を仮定する。これは、レーザー又は高品質発光ダイオード(LED)によって実現することができる。例えば、He-Neレーザーは、0.6386ミクロン(μ=10-6m)に等しい波長λにおいて動作し、且つ、LEDは、λ=0.5μあたりにおいて動作している。
【0109】
対象のいくつかの量は、以下のとおりである。
【数22】
【0110】
回折に起因して、光学撮像システムは、次式によって付与されるカットオフ周波数を有する。
【数23】
【0111】
スペクトルプレーン上のサンプリング周波数は、次式として記述されることになり、
【数24】
ここで、N
1の場合には、x及びy方向に沿ったサンプリングポイント
【数25】
は、次式として選択することができる。
【数26】
【0112】
次いで、コヒーレント伝達関数は、次式によって付与され、
【数27】
ここでは、kxs及びkysのそれぞれの成分ごとに、次式のとおりである。
【数28】
【0113】
本発明者は、完全な再構築を許容するNAの値を発見するために実験を実施した。NA=0.7以上によれば、再構築された画像が視覚的にオリジナルと同程度に良好であることが判定された。
【0114】
収差
収差は、その理想的形態からのレンズシステムの射出瞳における理想的波の逸脱である。コヒーレント撮像システムにおいては、これは、位相因子による光学伝達関数の乗算としてモデル化することができる。この節においては、位相収差が反復位相回復方法の性能に対して悪影響を有していないことが示され且つ主張されている。
【0115】
回折制限されたシステムは、対象の波が射出瞳において完全であり、且つ、唯一の不完全性が有限なアパーチャサイズであることを意味している。収差は、その理想的形態からの射出瞳における理想的波の逸脱である。位相収差を含むために、射出瞳関数を次式として変更することが可能であり、
【数29】
ここで、P(x,y)は、収差を有していない射出瞳関数であり、且つ、
【数30】
は、収差に起因した位相誤差である。
【0116】
位相関数
【数31】
は、しばしば、
【数32】
として極座標の観点において記述されている。Seidel収差と呼称されるものは、例えば、rにおける多項式として
【数33】
という表現である。
【数34】
【0117】
更に高次の項をこの関数に追加することができる。式(19)の右手側の項は、以下を表している。
【数35】
【0118】
Zernicke多項式
また、光学システム内に存在している位相収差は、単位半径の円内において直交する且つ正規化されたZernicke多項式の観点において表すこともできる(V. N. Mahajan, “Zernike circle polynomials and optical aberrations of systems with circular pupils,” Engineering and Laboratory Notes, R. R. Shannon, editor, supplement to Applied Optics, pp. 8121-8124, December 1994)。このプロセスにおいて、位相関数
【数36】
は、Zernike多項式
【数37】
における拡張の観点において表されており、ここで、ρは、単位円内の動径座標であり、且つ、θは、極角である。
【0119】
それぞれのZernike多項式は、通常、以下の形態において表現されており、
【数38】
ここで、n、mは、非負整数であり、
【数39】
は、次数nの多項式であり、且つ、m未満のnの累乗を含んではいない。これに加えて、
【数40】
は、mが偶数(奇数)である際には、それぞれ、偶数(奇数)である。
【数41】
の表現は、次式として記述することができる。
【数42】
【0120】
係数Anmは、最小二乗により、n及びmの有限値について判定されている。そして、
【数43】
は、次式として記述することができ、
【数44】
ここで、Kは、37などの整数である。係数wkは、最小二乗によって見出されている。それぞれの連続的Zernike項は、すべての先行する項との関係において正規直交していることから、それぞれの項は、平均平方収差に対して独立的に寄与している。これは、収差起因した二乗平均平方根誤差
【数45】
が次式として記述され得ることを意味している。
【数46】
【0121】
射出瞳が円形である際には、収差のZernike表現は有効であることに留意されたい。さもなければ、Zernike多項式は直交していない。
【0122】
コヒーレント光学システムは、収差を有する。これらは、通常、システムのスペクトルプレーン上の位相因子としてモデル化されている。例えば、このようなモデル化は、Seidel収差などの収差及びZernicke多項式に起因した位相を表現する多項式の観点において実行することができる。スペクトルプレーン上においては、強度が計測され、且つ、すべての位相が失われている。これは、収差に起因した位相を含む。カメラは、すべての位相を除去し、且つ、その結果、スペクトルプレーン上の位相因子として表現され得る位相収差は、
図3A及び
図3Bによる反復位相回復方法の性能に対して悪影響を有していない。
【0123】
反復位相回復方法に伴う超分解能
以前の節においては、3D撮像などの用途の場合に、完全な位相再構築が実現されている。これは、高NAの回折制限されたレンズシステム及び高ダイナミックレンジの高分解能カメラにより、可能とされている。この節においては、低NA、低視野、及び収差を有する所与のレンズシステムを改善するために、物体波の線形位相変調及び反復位相回復方法を含むシステムについて説明する。
【0124】
低NAは、スペクトルプレーン上の高空間周波数をフィルタリングによって除去することを意味する。低視野は、カメラによる検出の小さなエリアを意味している。収差は、以前の節において記述されているようにスペクトルプレーン上における位相変調としてモデル化することができる。これらの問題をバイパスするために且つ/又は所与のレンズシステム及びカメラによって可能であるものよりも高い分解能を実現するために、本発明者らは、合成アパーチャ顕微鏡において使用されているものに類似した方法(Terry M. Turpin, Leslie H. Gesell, Jeffrey Lapides, Craig H. Price, “Theory of the synthetic aperture microscope,“ Proc. SPIE 2566, Advanced Imaging Technologies and Commercial Applications, doi:10.1117/12.217378, 23 August 1995)及びフーリエタイコグラフィ撮像(G. Zheng, R. Horstmeyer, C. Yang, “Wide-field, high-resolution Fourier ptychographic microscopy,” Nature Photonics, pp. 739-745, Vol. 7, September 2013)を検討する。これを目的として、入力物体波は、次式によって付与されるいくつかのプレーン波によって変調(乗算)されることになる。
【数47】
【0125】
これは、いくつかの方法で実現することができる。例えば、LEDマトリックスアレイは、角度が変化するプレーン波によって対象の3D物体を照明することができる。或いは、この代わりに、空間光変調器(SLM)によって回折格子のリアルタイム再構成可能アレイを生成することもできる(S. Ahderom, M. Raisi, K. Lo, K. E. Alameh, R. Mavaddah, “Applications of Liquid crystal light modulators in optical communications,” Proceedings of 5th IEEE International Conference on High Speed Networks and Multimedia Communications, Jeju Island, Korea, 2002)。
【0126】
それぞれのmごとに、線形撮像システムは、次式によって付与される出力画像を有する。
【数48】
【0127】
回折制限された撮像システムを仮定することにより、コヒーレント伝達関数は、撮像を制御しているものであり、且つ、スペクトルドメインにおける式(24)は、次式となる。
【数49】
【0128】
例えば、波長λが0.5ミクロンである際に、波数は次式となる。
【数50】
【0129】
CTF用のカットオフ周波数は、次式のとおりである。
【数51】
【0130】
NA=0.1であり且つDFT(画像)サイズが256×256である際に、DFTスペクトルポイントの32×32ウィンドウは、
【数52】
に等しい半径
【数53】
を有するCTF円にちょうどフィットしている。KxKが入力波を変調するために必要とされるプレーン波の数であるとしよう。この例においては、本発明者らは、K=256/32=8を得る。
【0131】
同様にNA=0.2であり且つDFT(画像)サイズが256×256である際に、DFTスペクトルポイントの64×64ウィンドウは、
【数54】
に等しい半径
【数55】
を有するCTF円にちょうどフィットしている。このケースにおいては、入力波を変調するために必要とされるプレーン波の数KxKの場合に、本発明者らは、K=256/64=4を得る。
【0132】
8Kカメラなどの最近の高分解能カメラは、8192×4320ピクセルなどの格段に大きな数のピクセルをサポートしている(https://www.usa.canon.com/internet/portal/us/home/products/details/cameras/eos-dslr-and-mirrorless-cameras/dslr/eos-5ds-r)。
【0133】
FFTは、2の累乗によって最良に機能することから、4096×4096ピクセルのサイズを仮定しよう。NA=2であり且つDFT(画像)サイズが16384×16384である際には、DFTスペクトルポイントの4096×4096ウィンドウは、
【数56】
に等しい半径
【数57】
を有するCTF円にちょうどフィットしている。このケースにおいては、入力波を変調するために必要とされるプレーン波の数KxKの場合に、本発明者らは、K=16384/4096=4を得る。換言すれば、このシステムは、16384×16384ピクセルを有する超分解能を実現することになろう。すべてのKxK個のプレーン波を使用することにより、16384×16384ピクセルにおける振幅がそれぞれの入力マスクによって取得される。残りの部分は、反復位相回復方法反復を伴う処理である。
【0134】
マスク
主要な検討事項は、受け入れ可能な性能を結果的にもたらすために反復位相回復方法に必要とされるマスクの数である。それぞれのマスクは計測の別のセットを意味していることから、マスクの数が少ないほど良い。これに加えて、使用されるマスクは、情報再構築の品質に対して大きな影響を及ぼしている。情報の回復は、入力画像の振幅回復、位相回復、或いは、好ましくはこれらの両方の観点において検討することができる。これは、スペクトルドメイン内における位相回復とは異なっている。換言すれば、スペクトルドメイン内の回復された位相は、正しい入力画像の振幅回復を付与し得るが、必ずしも、正しい入力画像の位相回復であるわけではなく、即ち、不完全な入力画像の位相回復である。文献において通常報告されているものは、入力(波)振幅回復である。回復された入力(波)位相が十分に正しくない可能性が大きい。本発明の実施形態によれば、完全な入力画像振幅回復のみならず、入力位相回復が求められている。
【0135】
別の検討事項は、使用されるマスクのタイプである。本発明の実施形態に従って、マスクの数の低減を実現可能である。上述のように、第1カテゴリにおいては、第1マスクは、ユニティ(すべての要素が+1に等しい状態においてクリア、透明である)マスクである。第2マスクは、(1)0~2πラジアンにおいて変化する位相を有する位相マスク、(2)量子化された位相値に等しい要素を有する量子化された位相マスク、(3)0及びπラジアンとして選択された量子化された位相に対応する+1及び-1に等しい要素を有するバイポーラバイナリマスク、(4)相補型マスクのペアであって、ペア内のそれぞれのマスクの対応する要素は、振幅との関係において相補的である相補型マスクのペアであってよい。第2のカテゴリにおいては、透明マスクが必要とされておらず、むしろ、好ましくは2つ以上のペアである相補型バイナリマスクのペアが存在している。具体的には、相補型ユニポーラ(+1及び0)バイナリマスクの2つのペアを使用することができる。相対的に多くの数のマスクが使用されている場合に、位相回復反復の数を低減することができる。
【0136】
本発明の実施形態は、1つ又は複数の更なるマスクに加えてユニティマスク(バージョン1)又は振幅との関係において相補的であるユニポーラマスクのペア(バージョン2)を有する反復位相回復を実装している。
【0137】
ユニポーラバイナリマスクは、もはや、位相マスクではなく、バイナリ振幅マスクである。従来の考え方によれば、振幅マスクは一般的に機能しない。その一方で、ユニポーラバイナリマスクは、多くの用途において望ましものとなるが、その理由は、これらが、実装を相対的に容易にするからである。本発明の実施形態によれば、ユニポーラバイナリマスクは、ペアとして生成されている。第2マスクは、第1マスクの相補体である。換言すれば、第2マスクを生成するために、0と1が第1マスクのすべてのコンポーネントにおいて交換されている。これは、その振幅が1に等しい位相因子によって1が置換されているユニポーラバイナリマスクのペアにも当て嵌まる。
【0138】
マスクにおけるそれぞれの要素は、有限サイズを有する。従って、特に光学実装形態の場合には、有限のサイズを有する要素が性能を低減しないことが重要である。本発明者らは、反復位相回復方法は、十分に小さい場合には、有限要素サイズによって同様に良好に機能することを主張している。十分に小さいとは、バイナリバイポーラケースにおいては、16×16であり、且つ、ユニポーラバイナリケースにおいては、8×8である。
図4には、16×16に等しいアパーチャサイズ用のバイナリマスクが示されている。
図5には、8×8に等しいアパーチャサイズを有するバイナリマスクが示されている。
【0139】
提案されたマスクを使用した複素波に伴う実験結果
図6、
図7、及び
図8には、振幅(画像)及び位相(画像)を有する複素波に伴ういくつかの実験的結果が提供されている。
図6は、1つのユニティマスク及び1つのバイポーラバイナリマスクが使用された際のG2を使用した複素波に伴う再構築結果を示している。オリジナル振幅画像は、(a)において示されている。再構築された振幅画像は、(b)において示されている。オリジナルの位相画像は、(c)において示されている。再構築された位相画像は、(d)において示されている。
図7は、反復の際の対応する誤差低減曲線を示している。
【0140】
図8は、相補型ユニポーラバイナリマスクの1つのペアが使用された際のG2を使用した同一の複素波に伴う再構築結果を示している。オリジナル振幅画像は、(a)において示されている。再構築された振幅画像は、(b)において示されている。オリジナルの位相画像は、(c)において示されている。再構築された位相画像は、(d)において示されている。
【0141】
離れた物体の撮像
この節においては、本発明者らは、撮像レンズシステムから相当に離れた物体のコヒーレント撮像用の反復位相回復について説明する。このようなケースにおいては、撮像レンズシステムの入口におけるフィールドは、撮像対象の薄い物体から到来する波のフーリエ変換に直接的に関係付けられている。これは、離れた波伝播用のFraunhofer近似において特に当て嵌まり、且つ、以下の参考文献におけるフレネル近似に伴うあまり離れていない伝播にも拡張することができる(A. Eguchi, J. Brewer, T. D. Milster, “Optimization of random phase diversity for adaptive optics using an LCoS spatial light modulator,” Optics Letters, Vol. 44, No. 21, 1 November 2019, pp. 6834-6840及びA. Eguchi, T. D. Milster, “ Single shot phase retrieval with complex diversity,” Optics Letters, Vol. 44, No. 21, 1 November 2019, pp. 5108-5111)。以前の節においては、レンズシステムに対する入力は、複素画像であった。いまや、これは、基本的には、スペクトル画像である。本発明者らは、逆転された物体画像をもたらすことになる、例えば、レンズによる、別の一般化フーリエ変換によって後続される、以前に実行されたように入力マスクに入力波を通過させることを検討することができる。この結果、カメラは、画像を記録することになろう。この形状において、システムは、以前のシステムとは反対であり、これは、画像プレーンとスペクトルプレーンが交換されることを意味している。残念ながら、反復位相回復は、これらの条件下においては良好に機能しない場合がある。物体画像のフーリエ変換は、通常、非常に小さな周波数において濃縮され、且つ、フーリエプレーン情報の残りの部分は、小さな成分を有するノイズ様であり、これにより、入力マスクを非効果的なものとしている。
【0142】
これらの課題に対処するために、薄い離れた物体のコヒーレント撮像の場合には、
図1B-IIに示されているシステムを使用することができる。図示のように、レンズシステムは、1つのフーリエ変換ではなく、2つのフーリエ変換を提供するように設計することができる。第1フーリエ変換107は、入力画像(波)を別の画像(波)に変換している。次いで、以前のシステムが使用されている。入力をその出力が以前と同様にマスクに送信される1つ又は複数のスプリッタに通過させている。第2フーリエ変換110は、画像センサ112を照明するためのマスキングに起因した変更されたスペクトル情報を再生成している。従って、マスク含むレンズシステム画像プレーン及び画像センサプレーンによって表記された部分は、以前に使用されたシステムと同一である。
【0143】
マスキングを有する反復位相回復方法
いくつかの反復位相回復方法は、マスキングと共に使用されている。本発明の実施形態によれば、マスクの1つとしてユニティ(クリア)マスクを使用することは、バイポーラバイナリマスク又は位相マスクを使用した際の反復位相回復方法の性能を大幅に改善している。また、このようなシステム内における相補型バイナリマスクのペアの(恐らくは、ユニティマスクを有していない)使用は、非常に効果的である。
【0144】
本発明の一実施形態の有効性をデジタル的に評価した。境界を有していないデジタル的に実装されたマスクを有する単純なFFTシステムを使用した。一般性を失うことなしに、コヒーレント入力は、振幅画像のみであり、これは、入力位相がそれぞれのピクセルにおいてゼロであると仮定されることを意味していた。
図9Aは、2つのバイポーラバイナリマスクが使用された際のFienup方法に伴う画像回復を示している。画像が回復されていないことが観察される。すべてのその他の方法に伴う対応する結果が同一であった。結果は、3つのバイポーラバイナリマスクを使用した際に多少改善されている。これは、Fienup方法に伴う
図9Bにおいて示されている。但し、結果は、依然として満足できるものではない。1つのバイポーラバイナリマスクをクリアマスクによって置換することは、
図10に示されているように、劇的な改善を結果的にもたらしており、この場合には、1つのクリアマスク及び1つのバイポーラバイナリマスクが画像回復を結果的にもたらしている。
【0145】
相補型ユニポーラバイナリマスクのペアに伴う結果は、これらが、ユニティマスクを有していない状態において自給自足状態にあることを示している。
図11は、Fienup方法を使用した相補型ユニポーラバイナリマスクの2つのペアに伴う画像回復結果を示している。相補型マスクの2つペアが、相補型マスクの1つのペアよりも良好な結果を生成したことが観察される。マスクの2つ超のペアの場合には、更なる結果の改善は、わずかなものである。
【0146】
その他の反復位相回復法の場合に、性能は、非常に類似したものであった。但し、このような方法は、表1に列挙されているものを含むが、これらに限定されるものではない。
【表1】
【0147】
表2は、3つのバイポーラバイナリマスク対1つのクリアマスク及び2つのバイポーラバイナリマスクを使用した際のすべての方法による平均二乗誤差性能を示している。1つのバイポーラバイナリマスクをクリアマスクによって置換した後に、クリアマスクを有していない大きなMSE誤差を有する誤差性能(Fineup、G2、TAF、Wirtflow)が大幅に改善していることが観察される。
【0148】
表3は、反復の数及び演算時間が、例えば、RAF方法を有する相補型ユニポーラバイナリマスクのペアの数の関数として変化する方式を示している。マスクのペアの数がその方法について3まで増大するのに伴って、性能が演算の速度の観点において相当に良好になっていることが観察される。
【0149】
表4は、最良の視覚的性能を目的として相補型ユニポーラマスクのペアの最適な数を示している。この数は、2(ほとんどの場合)又は3である。
【表2】
【表3】
【表4】
【0150】
結言
反復位相回復方法は、例えば、コンピュータなどのデジタルプロセッサ内においてデジタル的に実装することができる。入力は、例えば、事前記録された画像又はその他のポイントのアレイであってよい。このケースにおいては、一般化FFT及び逆一般化FFT(IFFT)を使用することができる。また、すべての波を包含するために一般的な意味において「光学的」という用語を使用することにより、反復位相回復方法は、コヒーレント光学システムにより、或いは、コヒーレント光学/デジタルシステムにより、実装することもできる。これらのケースにおいては、初期フーリエ変換演算及び振幅検出は、通常、レンズ/カメラシステムによって実行されている。コヒーレント光学/デジタルシステムのケースにおいては、レンズ/カメラシステムによって得られた波振幅情報は、反復位相回復方法に従ってFFT及びIFFTによる反復を実行するためにコンピュータシステムに入力されている。これは、3D画像の生成などの可能なその他の動作により、後続され得る。
【0151】
デジタル実装形態においては、入力マスクは、恐らくは複素入力情報と共に、コンピュータ内において生成することができる。コヒーレント光学又はコヒーレント光学/デジタル実装形態においては、これらは、空間光変調器及びマイクロミラーアレイなどの光学装置によってリアルタイムで実装することができる。
【0152】
コヒーレント光学システムは、少なくとも回折制限されている。これは、レンズシステムが、開口数NAによって特徴付けられた低域通過フィルタとして機能することを意味している。反復位相回復機能は、システムのNAが十分に大きいことを必要としている。本発明の実施形態によれば、NA≧0.7が十分であるものと見出されている。
【0153】
コヒーレント光学システムは、収差を有する。これらは、通常、システムのスペクトルプレーン上において位相因子としてモデル化されている。例えば、このようなモデル化は、Seidel収差などの収差及びZernecke多項式に起因した位相を表現する多項式の観点において実行することができる。コヒーレントシステムにおいて、収差位相因子は、フーリエプレーン上において入力スペクトル位相に追加される更なる位相として出現している。カメラは、振幅にのみ感度を有し、これにより、スペクトルプレーン上において位相変動としてモデル化され得るすべての収差を除去している。従って、スペクトル位相収差は、スペクトル反復位相回復方法の性能に対して悪影響を有してはいない。
【0154】
限られたNA及び収差を有する光学システムは、反復位相回復方法を使用することにより、且つ、何回かの入力情報に伴う線形位相変調を含むことにより、超分解能を実現するために使用することができる。線形位相変調部分は、合成アパーチャ顕微鏡法及びフーリエタイコグラフィ撮像において実行されているものに類似している。反復位相回復は、超分解能振幅及び位相情報を結果的にもたらすために、それぞれのマスクによって入力情報の線形位相変調された部分のすべてから得られたスペクトル振幅に伴って動作している。同様の結果は、何回かにわたって少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれに入力波を通過させた後に、線形位相変調の代わりに、強度センサを空間的に運動させることにより、実現することができる。
【0155】
入力マスクは、例えば、サイズが十分に小さい場合には、有限のサイズを有する要素などの要素によって生成することができる。ユニポーラバイナリマスクのケースにおいては、8×8要素以下が、デジタル実験において満足できる性能を結果的にもたらしている。バイポーラバイナリマスクのケースにおいては、16×16要素以下が、デジタル実験において満足できる性能を結果的にもたらしている。従って、バイポーラバイナリマスクは、ユニポーラバイナリマスクよりも許容度が大きい。いずれのケースにおいても、有限サイズの要素の使用は、相対的に単純な実装形態を意味している。
【0156】
反復位相回復は、ノイズにおいて良好に稼働している。ノイズによってひどく破壊された画像は、ノイズ内において出現することから、回復することができる。クリア画像を生成するために、更なるノイズ除去を使用することができる。
【0157】
コヒーレントな離れた物体の撮像を反復位相回復処理によって実行することができる。この場合には、入力画像(波)は、コヒーレント波伝播に起因して、既にフーリエ変換されており、且つ、圧縮されていてもよい。その結果、もう1回のフーリエ変換は、圧縮解除された画像(波)情報を生成する。システムの残りの部分は、マスク及び位相回復の反復プロセスに伴って以前に本発明者らが利用したものと同一である。
【0158】
入力が振幅画像のみである際には、位相は、それぞれの入力ポイントにおいてゼロである。その結果、入力ウィンドウを取り囲むゼロから構成された境界領域を伴うことなしに、優れた結果を実現することができる。
【0159】
反復位相回復方法の性能は、(1)1及び-1に等しい要素を有する1つ又は複数のバイポーラバイナリマスクと共にユニティマスク、或いは、(2)1つ又は複数の位相マスクと共にユニティマスク、或いは、(3)ペア内のマスクが振幅との関係において互いに相補的である0と1のバイナリ振幅を有するマスクの1つのペア又はマスクの複数のペアと共にユニティマスク、或いは、(4)ユニティマスクを必要とすることなしに0と1のバイナリ振幅を有する相補型マスクの1つ又は複数のペアを使用することにより、演算時間を低減するために、マスクの数を低減するために、反復の数を削減するために、再構築の品質を増大するために、且つ、実装の容易性を増大させるために、特許請求された方法及びシステムを使用することにより、大幅に増大されている。すべてのケースにおいて、ゼロによって充填された外側境界を使用することが可能である。例えば、マスクサイズを二倍にする且つゼロによってマスクの外側境界を充填することによる境界の使用は、結果を改善することができる。特別に選択されたマスクのこれらの組合せの任意のものの使用は、再構築の品質を増大させることが可能であり且つ実装を単純化することができる。
【0160】
潜在的な請求項
本発明の様々な実施形態は、この段落に後続する段落において(且つ、本出願の末尾において提供されている実際の請求項の前において)列挙されている潜在的請求項を特徴とし得る。これらの潜在的請求項は、本出願の記述されている説明の一部分を形成している。従って、以下の潜在的請求項の主題は、本出願又は本出願に基づいた優先権を主張する任意の出願に伴う後の審理において実際の請求項として提示され得る。このような潜在的請求項の包含は、実際の請求項が潜在的な請求項の主題をカバーしていないことを意味するものと解釈してはならない。従って、後の審理においてこれらの潜在的な請求項を提示しないという決定は、一般の人々に対する主題の寄付として解釈してはならない。
【0161】
限定を伴うことなしに、(添付されている実際の請求項との間の混乱を回避するように文字「P」によって前置きされた)特許請求され得る潜在的な主題は、以下のものを含む。
【0162】
P1.ポイントのアレイから位相情報を回復する方法であって、それぞれのポイントは、振幅を有し、方法は、
入力及びスペクトル出力を有する少なくとも1つの変換ユニット及びその1つがユニティマスクである少なくとも2つのマスクを提供するステップであって、少なくとも2つのマスクのそれぞれは、少なくとも1つの変換ユニットの入力に対して動作するように構成されている、ステップと、
マスクのそれぞれから変更された入力を生成するために、少なくとも2つのマスクのそれぞれに対して入力を別個に適用するステップと、
少なくとも1つの変換ユニットにより、変換された変更済みの入力を生成するために、それぞれの変更された入力に対して一般化フーリエ変換を実行するステップと、
フェーザグラムを生成するために、それぞれの変換された変更済みの入力のポイントのアレイにおける振幅値を記録するステップと、
複数の複素フェーザグラムを形成するために、位相値をそれぞれのフェーザグラム上のそれぞれのポイントと関連付けるステップと、
振幅及び位相情報を有する再構築された入力を構成するトータグラムを生成するために、収束が実現される時点まで複数の複素フェーザグラムを反復的に処理するステップと、
を有する。
【0163】
P2.P1の方法であって、ポイントのアレイは、コヒーレント光波である。
【0164】
P3.P1の方法であって、ポイントのアレイは、デジタルデータである。
【0165】
P4.P1又はP3の方法であって、少なくとも1つの変換ユニットは、デジタルプロセッサ上において稼働する一般化フーリエ変換プロセスである。
【0166】
P5.P1、P3、又はP4の方法であって、少なくとも2つのマスクは、デジタルプロセッサ上において実装されている。
【0167】
P6.P1又はP2の方法であって、少なくとも1つの変換ユニットは、レンズシステムである。
【0168】
P7.P1、P2、又はP6の方法であって、マスクは、物理的空間マスクであり、且つ、
入力が少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれによって順番に個々に受け取られるように、少なくとも2つの物理的空間マスクの1つから少なくとも2つの物理的空間マスクの別のものに切り替わるステップと、
少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれによって並行して個々に受け取られるように、入力波を分割するステップと、
の少なくとも1つを更に有する。
【0169】
P8.P1、P2、P6、又はP7の方法であって、少なくとも2つのマスクは、空間的光変調器及びマイクロミラーアレイの任意のものを含む光学装置によってリアルタイムで実装される物理的空間マスクを有する。
【0170】
P9.P1、P2、P6、P7、又はP8の方法であって、記録が強度センサによって実行されている。
【0171】
P10.P1、P2、P6、P7、P8、又はP9の方法であって、(1)何回かにわたって少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれに入力波を通過させる前に入力波に対して線形位相変調を実行するステップ又は(2)何回かにわたって入力波の超分解能振幅及び位相情報を生成するために少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれに入力波を通過させた後に強度センサを空間的に運動させるステップを更に有する。
【0172】
P11.P1、P2、P6、P7、P8、P9、又はP10の方法であって、入力を少なくとも2つのマスクのそれぞれに別個に適用する前にレンズを通じて入力に対して一般化フーリエ変換を実行するステップを更に有する。
【0173】
P12.P1~P11のいずれか1項の方法であって、それぞれのマスクは、外側境界と合致するポイントの振幅をゼロに設定する外側境界を含む。
【0174】
P13.P1~P12のいずれか1項の方法であって、少なくとも2つのマスクは、ユニティマスク及び複素位相マスクから構成されている。
【0175】
P14.P13の方法であって、複素位相マスクは、バイポーラバイナリマスクを有する。
【0176】
P15.P1~P12の潜在的請求項のいずれか1項の方法であって、少なくとも2つのマスクは、ユニティマスク及びマスクのペアから構成されており、ペア内のマスクは、0又は1に等しい振幅との関係において互いに相補的である。
【0177】
P16.P15の方法であって、マスクのペアは、相補型ユニポーラバイナリマスクである。
【0178】
P17.P15の方法であって、マスクのペアは、位相因子を有するユニティ要素を含む。
【0179】
P18.P1~P17のいずれか1項の方法であって、完了の後に、入力の再構築された振幅及び位相内において埋め込まれた情報の表現を生成するためにトータグラムを使用するステップを更に有する。
【0180】
P19.P1~P18のいずれか1項の方法であって、複数の複素フェーザグラムを反復的に処理するステップは、
(a)逆一般化フーリエ変換を複素フェーザグラムに対して実行し且つ入力プレーンのそれぞれのポイントにおいて複素情報を平均化することにより、入力の単一推定値を取得するために複数の複素フェーザグラムを処理するステップ、並びに、恐らくは、いくつかのその他の更なる最適化ステップと、
(b)複数の中間アレイを取得するために、マスクのそれぞれを複製するプロセスに入力の単一推定値を通過させるステップと、
(c)別の複数の複素フェーザグラムを生成するために、中間アレイのそれぞれに対して一般化高速フーリエ変換を実行し、且つ、変換された中間アレイ内のそれぞれのポイントにおける振幅値を対応する記録された振幅値によって置換するステップ、並びに、恐らくは、いくつかのその他の更なる最適化ステップと、
(d)収束が実現される時点まで、ステップ(b)及び(c)によって後続される別の複数の複素フェーザグラム用のステップ(a)を反復するステップであって、完了の際に、入力の単一推定値がトータグラムである、ステップと、
を有する。
【0181】
P20.P19の方法であって、収束は、(1)連続的な単一推定値の間の二乗差が既定の閾値に到達した際及び(2)ステップ(a)の反復の所与の数が完了した際の任意のものによって判定されている。
【0182】
P21.ポイントのアレイから位相情報を回復する方法であって、それぞれのポイントは、振幅を有し、方法は、
入力及びスペクトル出力を有する少なくとも1つの変換ユニット及び振幅においてバイナリであるマスクの少なくとも1つのペアを含む少なくとも2つのマスクを提供するステップであって、ペア内のマスクは、振幅との関係において互いに相補的であり、少なくとも2つのマスクのそれぞれは、少なくとも1つの変換ユニットの入力に対して動作するように構成されている、ステップと、
マスクのそれぞれから変更された入力を生成するために、少なくとも2つのマスクのそれぞれに入力を別個に適用するステップと、
少なくとも1つの変換ユニットにより、変換された変更済みの入力を生成するために、それぞれの変更済みの入力に対して一般化フーリエ変換を実行するステップと、
フェーザグラムを生成するために、それぞれの変換された変更済みの入力のポイントのアレイにおいて振幅値を記録するステップと、
複数の複素フェーザグラムを形成するために、位相値をそれぞれのフェーザグラム上のそれぞれのポイントと関連付けるステップ、並びに、恐らくは、いくつかのその他の更なる最適化ステップと、
振幅及び位相情報を有する再構築された入力を構成するトータグラムを生成するために、収束が実現される時点まで複数の複素フェーザグラムを反復的に処理するステップと、
を有する。
【0183】
P22.P21の方法であって、ポイントのアレイは、コヒーレント光波である。
【0184】
P23.P21の方法であって、ポイントのアレイは、デジタルデータである。
【0185】
P24.P21又はP23の方法であって、少なくとも1つの変換ユニットは、デジタルプロセッサ上において稼働する一般化フーリエ変換プロセスである。
【0186】
P25.P21、P23、又はP24に記載の方法であって、少なくとも2つのマスクは、デジタルプロセッサ上において実装されている。
【0187】
P26.P21又はP22の方法であって、少なくとも1つの変換ユニットは、レンズシステムである。
【0188】
P27.P21、P22、又はP26の方法であって、マスクは、物理的空間マスクであり、且つ、
入力が少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれによって順番に個々に受け取られるように、少なくとも2つの物理的空間的マスクの1つから少なくとも2つの物理的空間的マスクの別のものに切り替わるステップと、
少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれによって並行して個々に受け取られるように、入力波を分割するステップと、
の少なくとも1つを更に有する。
【0189】
P28.P21、P22、P26、又はP27の方法であって、少なくとも2つのマスクは、空間的光変調器及びマイクロミラーアレイの任意のものを含む光学装置によってリアルタイムにおいて実装される物理的空間マスクを有する。
【0190】
P29.P21、P22、P26、P27、P28、又はP29の方法であって、記録が強度センサによって実行されている。
【0191】
P30.P21、P22、P26、P27、P28、又はP29の方法であって、(1)何回かにわたって少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれに入力波を通過させる前に入力波に対して線形位相変調を実行するステップ又は(2)入力波の超分解能振幅及び位相情報を生成するために何回かにわたって少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれに入力波を通過させた後に強度センサを空間的に運動させるステップを更に有する。
【0192】
P31.P21、P22、P26、P27、P28、P29、又はP30の方法であって、少なくとも2つのマスクのそれぞれに入力を別個に適用する前にレンズを通じて入力に対して一般化フーリエ変換を実行するステップを更に有する。
【0193】
P32.P1~P31のいずれか1項の方法であって、それぞれのマスクは、外側境界と合致するポイントの位相及び振幅をゼロに設定する外側境界を含む。
【0194】
P33.P21~P32のいずれか1項の方法であって、少なくとも2つのマスクは、相補型ユニポーラバイナリマスクの1つのペアから構成されている。
【0195】
P34.P21~P32のいずれか1項の方法であって、マスクのペアは、位相因子を有するユニティ要素を含む。
【0196】
P35.P21~P32のいずれか1項の方法は、少なくとも2つのマスクは、相補型ユニポーラバイナリマスクの2つのペアから構成されている。
【0197】
P36.P1~P36のいずれか1項の方法であって、完了の後に、入力の再構築された振幅及び位相内において埋め込まれている情報の表現を生成するためにトータグラムを使用するステップを更に有する。
【0198】
P37.P1~P36のいずれか1項の方法であって、複数の複素フェーザグラムを反復的に処理するステップは、
(a)複素フェーザグラムに対して逆一般化フーリエ変換を実行し且つ対応する場所においてそれぞれのポイントにおいて複素情報を平均化することにより、入力の単純推定値を取得するために複数の複素フェーザグラムを処理するステップ、並びに、恐らくは、いくつかのその他の更なる最適化ステップと、
(b)複数の中間アレイを取得するために、マスクのそれぞれを複製するプロセスに入力の単一推定値を通過させるステップと、
(c)別の複数の複素フェーザグラムを生成するために、中間アレイのそれぞれに対して一般化高速フーリエ変換を実行し、且つ、変換された中間アレイ内のそれぞれのポイントにおける振幅値を対応する記録された振幅値によって置換するステップ、並びに、恐らくは、いくつかのその他の更なる最適化ステップと、
(d)収束が実現される時点まで、ステップ(b)及び(c)によって後続される別の複数の複素フェーザグラムについてステップ(a)を反復するステップであって、完了の際に、入力の単一推定値は、トータグラムである、ステップと、
を有する。
【0199】
P38.P37の方法であって、収束は、(1)連続的な単一推定値の間の二乗差が既定の閾値に到達した際及び(2)ステップ(a)の反復の所与の数が完了した際の任意のものによって判定されている。
【0200】
P39.入力波から位相情報を回復するシステムであって、
入力及びスペクトル出力を有する光学レンズシステムと、
少なくとも2つの物理的空間マスクであって、少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれは、入力波を受け取るために光学レンズシステムの入力において配設されており、
少なくとも2つの物理的空間マスクは、入力波を別個に変更するように構成されており、且つ、光学レンズシステムは、変換された波を生成するために別個に変更された波に対する一般化フーリエ変換を実現している、物理的空間マスクと、
フェーザグラムを生成するために、スペクトルプレーンにおいてそれぞれの変換された波のポイントのアレイにおける振幅値を記録するように構成された少なくとも1つのセンサシステムと、
複数の複素フェーザグラムを形成するために、位相値をそれぞれのフェーザグラム上のそれぞれのポイントと関連付けるように、且つ、
振幅及び位相情報を有する再構築された入力波を構成するトータグラムを生成するために、収束が実現される時点まで複数の複素フェーザグラムを反復的に処理するように、
構成されたデジタルプロセッサと、
を有する。
【0201】
P40.P39のシステムであって、並行して少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれに入力波を提供するように構成されたビームスプリッタを更に有する。
【0202】
P41.P39のシステムであって、入力が少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれによって順番に個々に受け取られるように、マスクの1つのものから少なくとも2つの物理的空間マスクの別のものに切り替わる少なくとも2つの物理的空間マスクを実装するように構成された空間光変調器を更に有する。
【0203】
P42.P39のシステムであって、入力が少なくとも2つの物理的空間マスクのそれぞれによって順番に個々に受け取られるように、マスクの1つから少なくとも2つの物理的空間マスクの別のものに切り替わる少なくとも2つの物理的空間マスクを実装するように構成されたマイクロミラーアレイを更に有する。
【0204】
P43.P39~P42のいずれか1項のシステムであって、少なくとも1つのセンサシステムは、強度センサである。
【0205】
P44.P39~P43のシステムであって、少なくとも2つの物理的空間マスクへの途上において入力波を受け取るように位置決めされた第2レンズを更に有する。
【0206】
P45.P39~P44のいずれか1項のシステムであって、それぞれのマスクは、外側境界と合致するポイントの位相及び振幅をゼロに設定する外側境界を含む。
【0207】
P46.P39~P45のいずれか1項のシステムであって、少なくとも2つのマスクは、ユニティマスクを含む。
【0208】
P47.P46のシステムであって、少なくとも2つのマスクは、ユニティマスク及び複素位相マスクから構成されている。
【0209】
P48.P47のシステムであって、複素位相マスクは、バイポーラバイナリマスクを有する。
【0210】
P49.潜在的請求項P39~P46のいずれか1項のシステムであって、少なくとも2つのマスクは、ユニティマスク及びマスクのペアから構成されており、ペア内のマスクは、振幅との関係において互いに相補的である。
【0211】
P50.P49のシステムであって、マスクのペアは、相補型ユニポーラバイナリマスクである。
【0212】
P51.P49のシステムであって、マスクのペアは、位相因子を有するユニティ要素を含む。
【0213】
P52.潜在的請求項P39~P45のいずれか1項のシステムであって、少なくとも2つのマスクは、マスクの少なくとも1つのペアを有し、ペア内のマスクは、振幅との関係において互いに相補的である。
【0214】
P53.P52のシステムであって、マスクのペアは、相補型ユニポーラバイナリマスクである。
【0215】
P54.P53のシステムであって、少なくとも2つのマスクは、相補型ユニポーラバイナリマスクのペアから構成されている。
【0216】
P55.P52のシステムであって、マスクのペアは、位相因子を有するユニティ要素を含む。
【0217】
P56.P39~P55のいずれか1項のシステムであって、複数の複素フェーザグラムを反復的に処理するステップは、
(a)複素フェーザグラムに対して逆一般化フーリエ変換を実行することにより、対応する場所においてそれぞれのポイントにおいて複素情報を平均化することにより、且つ、恐らくは、いくつかのその他の更なる最適化ステップにより、入力波形の単一推定値を取得するために複数の複素フェーザグラムを処理するステップと、
(b)複数の中間アレイを取得するために、マスクのそれぞれを複製するプロセスに入力の単一推定値を通過させるステップと、
(c)別の複数の複素フェーザグラムを生成するために、中間アレイのそれぞれに対して一般化高速フーリエ変換を実行し、且つ、変換された中間アレイ内のそれぞれのポイントにおける振幅値を対応する記録された振幅値によって置換するステップ、並びに、恐らくは、いくつかのその他の更なる最適化ステップと、
(d)収束が実現される時点まで、ステップ(b)及び(c)によって後続される別の複数の複素フェーザグラムについてステップ(a)を反復するステップであって、完了の際に、入力の単一推定値は、トータグラムである、ステップと、
を有する。
【0218】
P57.P56のシステムであって、収束は、(1)連続的な単一推定値の間の二乗差が既定の閾値に到達した際及び(2)ステップ(a)の反復の所与の数が完了した際の任意のものによって判定されている。
【0219】
P58.P15の方法であって、マスクのペアは、相補型バイポーラバイナリマスクである。
【0220】
P59.P21~P32のいずれか1項の方法であって、少なくとも2つのマスクは、相補型バイポーラバイナリマスクの1つのペアから構成されている。
【0221】
P60.P49のシステムであって、マスクのペアは、相補型バイポーラバイナリマスクである。
【0222】
上述の本発明の実施形態は、例示を目的としたものに過ぎず、当業者には、多数の変更及び変形が明らかとなろう。すべてのこのような変形及び変更は、任意の添付の請求項において定義されている本発明の範囲に含まれるものと解釈されたい。
【国際調査報告】