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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】水素貯蔵用液体調合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 15/16 20060101AFI20231214BHJP
   C01B 3/24 20060101ALI20231214BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20231214BHJP
【FI】
C07C15/16
C01B3/24
H01M8/0606
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572354
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 FR2021052221
(87)【国際公開番号】W WO2022123165
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】2012920
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブラン, ジェローム
【テーマコード(参考)】
4G140
4H006
5H127
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4H006AA01
4H006AB80
4H006AD17
4H006DA10
5H127AB04
5H127BA02
5H127BA16
(57)【要約】
本発明は、50重量%以上の量のベンジルトルエン及び10重量ppmの量の、100g/mol-1以下のモル質量を有する少なくとも1つの炭化水素を含む液体調合物に関する。本発明はまた、10ppm以下の量の軽質炭化水素を含む水素の生成のためのLOHCとしての前記調合物の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体調合物であって、
調合物の全重量に対して50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より良好には80重量%以上、及び最も好ましくは90重量%以上の量のベンジルトルエン(BT)、及び、
10重量ppm以下の量の、100g/mol-1以下のモル質量を有する少なくとも1つの炭化水素、
を含む、液体調合物。
【請求項2】
98重量%以上の量のベンジルトルエンを含む、請求項1に記載の調合物。
【請求項3】
石油生成物から得られるか、及び/又は石油生成物から合成される生成物から得られる、あるいは再生可能な生成物から得られるか、及び/又は再生可能な生成物から合成される生成物から得られる、1つ又は複数の他のLOHC流体を含む、請求項1又は2に記載の調合物。
【請求項4】
ジベンジルトルエン、ジフェニルエタン、ジフェニルメタン、ジトリルエーテル、フェニルキシリルエタン、モノ-及びビキシリルキシレン、1,2,3,4-テトラヒドロ(1-フェニルエチル)ナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、モノイソプロピルビフェニル、フェニルエチルフェニルエタン、N-エチルカルバゾール、フェニルピリジン、トリルピリジン、ジフェニルピリジン、ジピリジルベンゼン、ジピリジントルエン、及びそれらの2つ以上の任意の割合の混合物から選択される1つ又は複数の他のLOHC流体を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項5】
ベンジルトルエン+ジベンジルトルエンの全重量に対して、少なくとも50重量%のベンジルトルエン及びジベンジルトルエン、好ましくは70重量%~80重量%のベンジルトルエン及び20重量%~30重量%のジベンジルトルエンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項6】
80重量%~99.9重量%のベンジルトルエン及び0.1重量%~20重量%のジベンジルトルエン(ベンジルトルエン+ジベンジルトルエンの全重量に対して)を含み、好ましくはベンジルトルエン+ジベンジルトルエンの全重量に対して、90重量%~99.9重量%のベンジルトルエン及び0.1重量%~10重量%のジベンジルトルエンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項7】
100g/mol-1以下のモル質量を有する少なくとも1つの炭化水素の量は、10重量ppm以下、好ましくは5重量ppm以下、より好ましくは2重量ppm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの炭化水素は、100g/mol-1以下のモル質量を有し、炭素、水素、並びに任意で酸素、硫黄及び窒素から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含む炭化水素化合物から選択され、好ましくは100g/mol-1以下のモル質量を有し、6、7又は8個の炭素原子を含む炭化水素化合物から選択され、より優先的には、限定はされないが、ベンゼン及びトルエンから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項9】
低レベルの不純物を含む水素を生成するための、及び特に10重量ppm以下の量の少なくとも1つの軽質炭化水素、特に10重量ppm以下の量の、100g/mol-1以下のモル質量を有する少なくとも1つの炭化水素を含む水素を生成するためのLOHC流体としての、請求項1~8のいずれかに記載の調合物の使用。
【請求項10】
燃料電池において、又はマイクロプロセッサ、半導体などを製造するための電子機器分野において使用することができる水素を生成するための、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を輸送することができる液体調合物の分野に関し、より詳細には、水素を輸送することができるベンジルトルエン系調合物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の水素は、化石エネルギー源、天然エネルギー源又は電気エネルギー源の代替物の1つである。しかしながら、この水素エネルギー源を貯蔵及び輸送することは、このエネルギー源の迅速かつ利用可能な開発にとって依然として大きな課題である。
【0003】
この非常に揮発性が高く、非常に爆発性の高いガスをより容易に貯蔵及び輸送するための様々な手法が研究されており、加圧貯蔵、極低温貯蔵、及び支持体上での貯蔵が含まれる。企図され得る支持体の種類には、液体有機水素キャリア(LOHC)に基づく技術が含まれ、これは、大規模開発に完全に適合するコストを伴う長距離輸送において特に関心のある有望な技術である。
【0004】
このLOHC技術の原理は、水素化工程において、好ましくは、かつ最も多くの場合、常温で液体である支持体分子上に水素を固定し、次いで、脱水素化工程において、消費部位の近くで固定された水素を放出することにある。
【0005】
今日研究されているLOHC分子の中で、既に多くの研究及び特許出願の対象となっている2つ又は3つの環を有する芳香族液体、例えば、ベンジルトルエン(BT)及び/又はジベンジルトルエン(DBT)などは、この用途に特によく適した分子を表す。したがって、欧州特許第2925669号明細書は、LOHC技術におけるBT及び/又はDBTの使用を実証し、水素貯蔵及び放出におけるこれらの流体の水素化及び脱水素化操作を記載している。
【0006】
水素化及び脱水素化工程の瞬間的な性能品質を超えて、サイクルの順序及び性能品質(水素固定/放出収率)の維持、並びに脱水素化工程中に抽出(又は放出)される水素の純度は、この技術の経済的側面の重要なポイントである。
【0007】
これは、このLOHC技術から生じる水素が、例えば燃料電池、及び多様な産業プロセスなどの非常に多くの分野で、又は他に列車、ボート、トラック、自動車、航空機などのあらゆる輸送手段の燃料として使用されているためである。水素中に存在する任意の不純物は、微量であっても、収率に関して水素化/脱水素化プロセス、及び製造される生成物の品質、あるいはこの技術によって生成される水素の最終用途における収率の両方に悪影響を及ぼし得る。
【0008】
これらの潜在的な問題を克服するために、解決策の1つは、脱水素化工程中に放出される水素が可能な限り純粋であることである。しかしながら、脱水素化工程中に放出される水素は、脱水素化される有機液体中にしばしば存在する有機化合物に起因する不純物と不可避的に同伴する。
【0009】
これらの不純物は様々な種類のものであり、元のLOHC流体だけでなく、多くの水素化/脱水素化サイクルを経た後のLOHC流体(本明細書の残りの部分では「LOHC流体」と呼ばれる)にも、多かれ少なかれ存在し得る。したがって、貯蔵期間(水素化/脱水素化サイクル)における収率及び脱水素化工程中に放出される水素の純度の両方の観点から機能するLOHC流体が依然として必要とされている。さらに別の目的は、以下により詳細に記載される本発明の説明の続きにおいて明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0010】
本出願人は、ここで、脱水素化工程中に高純度水素を放出することができる水素の貯蔵及び輸送に完全に好適なLOHC流体調合物を見出した。
【0011】
したがって、第1の態様では、本発明は、ベンジルトルエンに基づき、非常に低レベルの軽質炭化水素を含有する液体調合物に関する。この種類の調合物は、特に、LOHC流体に関して先行技術において提起された欠点の一部又は全てを克服することを可能にし、最適な工業的及び経済的条件下で、特に水素の貯蔵、輸送及び抽出の要件を満たし、前記調合物の脱水化の工程の間に、高レベルの純度を有する水素、及び特に非常に低レベルの軽質炭化水素(後者は、例えば燃料電池などの多数の用途における水素の使用に特に有害である)を有する水素の放出を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
より具体的には、本発明は、
調合物の全重量に対して50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より良好には80重量%以上、及び最も好ましくは90重量%以上の量のベンジルトルエン(BT)、及び、
10重量ppm以下の量の、100g/mol-1以下のモル質量を有する少なくとも1つの炭化水素、
を含む液体調合物に関する。
【0013】
本発明による調合物は、常温及び周囲圧力、すなわち25℃及び1気圧(1013mbar又は1013hPa)で液体である調合物である。
【0014】
先に示したように、本発明による調合物は、50重量%以上の量のBT、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より良好には80重量%以上、及び最も好ましくは90重量%以上の量のBTを含む。特に好ましい1つの実施形態では、本発明による調合物は、98重量%以上の量のベンジルトルエン(BT)を含む。
【0015】
本発明による調合物は、好ましくは、ベンジルトルエンを単独で含むか、又は後に示すように、任意で、1つ又は複数の他のLOHC流体と一緒に含み、換言すれば、微量形態の不純物、特に少なくとも1つの軽質炭化水素(100g/mol-1以下のモル質量)以外の成分を含まないが、10重量ppm以下の量で存在する。したがって、及び好ましい1つの実施形態では、本発明による調合物は、99.99重量%以下の量のBT、好ましくは99.95重量%以下のBT、より好ましくは99.9重量%以下のBTを含む。
【0016】
先に示したように、調合物はまた、石油生成物から得られるもの及び/又は石油生成物から合成される生成物から得られるもの、あるいは再生可能な生成物から得られるもの及び/又は再生可能な生成物から合成される生成物から得られるものなど、当業者に周知の1つ又は複数の他のLOHC流体を含み得る。
【0017】
そのような他のLOHC流体は、例えば、限定されないが、ジベンジルトルエン(DBT)、ジフェニルエタン(DPE)、ジフェニルメタン(DPM)、ジトリルエーテル(DT)、フェニルキシリルエタン(PXE)、モノ-及びビキシリルキシレン、1,2,3,4-テトラヒドロ(1-フェニルエチル)ナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、モノイソプロピルビフェニル、フェニルエチルフェニルエタン(PEPE)、N-エチルカルバゾール、フェニルピリジン、トリルピリジン、ジフェニルピリジン、ジピリジルベンゼン、ジピリジントルエン、及びそれらの2つ以上の任意の割合の混合物から選択されるものであり、本発明の文脈において使用することができる主な既知の有機流体のみを示す。
【0018】
本発明の好ましい1つの実施形態によれば、調合物は、少なくとも50重量%のベンジルトルエン(BT)、及びジベンジルトルエン(DBT)を含む。本発明の1つの実施形態によれば、調合物は、(BT+DBTの全重量に対して)70重量%~80重量%のBT及び20重量%~30重量%のDBTを含む。別の実施形態によれば、調合物は、(BT+DBTの全重量に対して)80重量%~99.9重量%のBT及び0.1重量%~20重量%のDBTを含み、調合物は、好ましくは(BT+DBTの全重量に対して)90重量%~99.9重量%のBT及び0.1重量%~10重量%のDBTを含み、調合物は、より好ましくは(BT+DBTの全重量に対して)90重量%~99.5重量%のBT及び0.5重量%~10重量%のDBTを含む。
【0019】
先に示したように、本発明による調合物は、10重量ppm以下、好ましくは5重量ppm以下、より好ましくは2重量ppm以下の量の、100g/mol-1以下のモル質量を有する少なくとも1つの炭化水素を含む。実際、炭化水素、特に「軽質」炭化水素、及びより正確には100g/mol-1以下のモル質量を有する炭化水素は、LOHC調合物が供される水素化/脱水素化の操作中であっても、脱水素化の操作中に放出される水素においても、その目的の用途に必要な純度を有し得ない水素においても、多くの欠点の原因となることが非常に多いことが観察されている。
【0020】
その理由は、軽質炭化水素が、典型的には、使用される触媒の少なくとも一部の劣化及び/又は不活性化(全部又は一部)によって、水素化/脱水素化サイクルの収率を低下させることによって、又は前記水素化/脱水素化サイクルの操作条件を妨害する任意の他の作用によって、水素化/脱水素化反応を妨害し得るからである。
【0021】
さらに、より具体的には、本発明による調合物の脱水素の操作中に放出される水素の品質に関して、水素の貯蔵及びその後の水素の放出を意図した調合物中の軽質炭化水素の存在は、放出される水素中に少なくとも同量の前記軽質炭化水素の存在を生じさせることが観察されている。既に先に示したように、水素中、特に10ppmを超える量のこのような不純物の存在は、例えば燃料電池などの用途、及びマイクロプロセッサ、半導体などを製造するための電子機器部門などの高純度水素の使用を必要とする任意の他の産業用途において、破壊的又は禁止的でさえあることが判明する可能性がある。
【0022】
本発明の好ましい1つの実施形態では、軽質炭化水素は、調合物中に0.01重量ppm~10重量ppm、好ましくは0.01重量ppm~5重量ppm、より好ましくは0.01重量ppm~2重量ppmの量で存在する。別の好ましい実施形態によれば、軽質炭化水素は、調合物中に0.05重量ppm~10重量ppm、好ましくは0.05重量ppm~5重量ppm、より好ましくは0.05重量ppm~2重量ppmの量で存在する。別の好ましい実施形態によると、軽質炭化水素は、調合物中に0.1重量ppm~10重量ppm、好ましくは0.1重量ppm~5重量ppm、より好ましくは0.1重量ppm~2重量ppmの量で存在する。
【0023】
本発明の意味における「軽質炭化水素」は、100g/mol-1以下のモル質量を有する炭化水素である。炭化水素は、一般的に言えば、広義の炭化水素化合物であり、当業者に周知である。「軽質炭化水素」は、100g/mol-1以下のモル質量を有し、炭素、水素、及び任意で、酸素、硫黄及び窒素から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含む炭化水素化合物である。別の好ましい実施形態によれば、軽質炭化水素は、100g/mol-1以下のモル質量を有し、6、7又は8個の炭素原子を含む炭化水素化合物であり、より好ましくは、軽質炭化水素は、ベンゼン及びトルエンから選択されるが、これらに限定されないものである。
【0024】
好ましい実施形態を形成しないが、本発明による調合物は、当業者に周知であり、例えば、限定されないが、抗酸化剤、顔料、染料、香料、臭気マスキング剤、粘度調整剤、不動態化剤、流動点降下剤、分解阻害剤、及びそれらの混合物から選択される1つ又は複数の添加剤及び/又は充填剤をさらに含み得る。
【0025】
本発明の調合物に有利に使用され得る抗酸化剤としては、非限定的な例として、フェノール系抗酸化剤、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロール、及びこれらのフェノール系抗酸化剤の酢酸塩なども挙げられる。さらなる例には、例えばフェニル-α-ナフチルアミンのようなアミン型の抗酸化剤、例えばN,N’-ジ(2-ナフチル)-パラ-フェニレンジアミンのようなジアミン型の抗酸化剤だけでなく、単独で、又はそれらの2つ以上の混合物として、又は例えば緑茶抽出物及びコーヒー抽出物のような他の成分と共に用いられる、アスコルビン酸及びその塩、アスコルビン酸のエステルがある。
【0026】
1つの実施形態では、本発明は、
50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より良好には80重量%以上、及び最も好ましくは90重量%以上の量のベンジルトルエン(BT)と、
任意でBT以外の少なくとも1つの他のLOHC流体であって、好ましくは任意でジベンジルトルエン(DBT)である少なくとも1つの他のLOHC流体と、
10重量ppm以下、好ましくは0.01重量ppm~10重量ppmの量の、100g/mol-1以下のモル質量を有する少なくとも1つの炭化水素と、
任意で先に定義した少なくとも1つの添加剤、と
を含む調合物に関する。
【0027】
1つの実施形態では、本発明は、
50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より良好には80重量%以上、及び最も好ましくは90重量%以上の量のベンジルトルエン(BT)と、
前記調合物に存在するLOHC流体の全重量に対して、0.1重量%~30重量の量のジベンジルトルエン(DBT)と、
10重量ppm以下、及び好ましくは0.01重量ppm~10重量ppmの量の、100g/mol-1以下のモル質量を有する少なくとも1つの炭化水素、及び好ましくは6、7又は8個の炭素原子を含むものから選択され、好ましくは、ベンゼン及びトルエン並びにそれらの任意の割合の混合物から選択される少なくとも1つの炭化水素と、
任意で先に定義した少なくとも1つの添加剤及び/又は充填剤、と
を含む調合物に関する。
【0028】
ベンジルトルエン(BT)は、周知の市販の化合物であり、その調製方法も同様に当業者に周知である。例えば、BTは、現在当業者に周知の技術により、特に欧州特許第0435737号明細書に記載されているように、トルエンとクロロトルエンとの触媒反応により容易に調製可能である。
【0029】
したがって、粗BT合成生成物だけでなく、水素化/脱水素化サイクルに関与しているBT系LOHC流体も、先に記載したように、可変量の少なくとも1つの軽質炭化水素を含有し得る。したがって、本発明による調合物は、例えば、典型的には、これらの粗合成生成物又はBT系LOHC液体から、当業者に周知の任意の方法によって調製され得る。
【0030】
したがって、非限定的な例として、本発明による調合物は、少なくとも50%のBT及び少なくとも1つの軽質炭化水素を10重量ppmを超える量で含む調合物を、蒸留、再結晶、薄膜エバポレーション、及び他の方法、又はこれらの方法の1つ又は複数の組み合わせによって処理することによって有利に調製され得る。
【0031】
当業者に周知の他の方法もまた、本発明による調合物を調製するための上記の方法を補完又は置換するために使用されてよく、非限定的な例として、濾過剤及び/又は吸着剤での処理が挙げられる。
【0032】
本発明の文脈において使用することができる濾過剤は、任意の種類のものであってよく、当業者に周知である。最も好適であることが判明している濾過剤は、吸着濾過剤であり、より具体的には、ケイ酸塩、炭酸塩、石炭に基づく鉱物、及び任意の割合のこれらの鉱物の2つ以上の混合物から選択される1つ又は複数の化合物を含む濾過剤である。
【0033】
非限定的な例としては、鉱物又は有機濾過剤、及び特に粘土、ゼオライト、珪藻土、セラミック、炭酸塩、及び石炭誘導体から選択されるもの、並びに任意の割合のそれらの2つ以上の混合物も挙げられる。
【0034】
濾過剤、吸着剤、及び濾過吸着剤として、以下:
ケイ酸塩、及び例えば、限定されないが、アタパルジャイト、モンモリロナイト、セレナイト、ベントナイト、タルクなどのケイ酸マグネシウムを含む粘土、
天然又は合成ケイ酸アルミニウム、特にカオリン、カオリナイト、ゼオライト、
炭酸塩、例えば炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウム、及びより具体的には石灰石又はチョークの名称で知られているもの、
石炭、木材、例えばココナッツの殻、オリーブの種又は殻などの殻の誘導体、及びより一般的には活性炭の名称で知られているもの、
及びその他、並びにそれらの混合物、
を挙げることができる:。
【0035】
ケイ酸塩、特に粘土及びゼオライトは、本発明の調合物を調製するのに特に有効であることが判明している。実際、ケイ酸塩は、50重量%以上の量のベンジルトルエン(BT)を含む調合物中に存在する1つ又は複数の軽質炭化水素を除去するか、又は少なくとも実質的に低減するのに特に好適であることが判明している。
【0036】
本発明の特に好ましい1つの実施形態によれば、本発明の調合物を調製するために有利に使用することができる濾過剤の例としては、BASFからのアタパルジャイトMicrosorb(登録商標)16/30LVM(化学式(Mg,Al)Si22(OH),SiOを有するマグネシウム-アルミニウム粘土の例)、Minerals TechnologiesからのAmcol Rafinol 900 FF、Minerals TechnologiesからのAmcol Rafinol 920 FF、Minerals TechnologiesからのAmcol Mineral Bent(アルミニウムヒドロシリケート)、及びArkemaからのSiliporite(登録商標)製品、特にMK30B0及びMK30B2(アルミノケイ酸塩ゼオライトに基づく調製物)が挙げられる。
【0037】
本発明の特に好ましい1つの実施形態では、10重量ppm以下の少なくとも1つの軽質炭化水素の含有量を含む調合物を調製するために使用される濾過剤は、モレキュラーシーブ(「ゼオライト吸着剤」とも呼ばれる)、特に、軽質炭化水素、特に100g/mol-1以下のモル質量を有する炭化水素を可能な限り選択的に吸着させることができるモレキュラーシーブから選択される。
【0038】
最も適切なゼオライト吸着剤材料、すなわち、1つ又は複数のゼオライトを含む材料は、有利には、合成ゼオライトに基づくモレキュラーシーブから選択され、これは、それらが調製される多種多様なプロセスのために、想定される使用のために必要とされる特定の基準を満たすために、例えば、熱安定性、機械的強度、又は再生のための能力などの微調整が可能な非常に多様なパラメータを提供する。
【0039】
好ましい1つの実施形態によれば、本発明の文脈での使用に最も好適なゼオライト吸着剤材料としては、天然又は合成ゼオライト、及びより具体的には、天然ゼオライト、例えばチャバサイト、及び合成ゼオライト、特にLTA型ゼオライト、FAU型ゼオライト、EMT型ゼオライト、MFI型ゼオライト、及びBEA型ゼオライトから選択されるゼオライト吸着剤材料が挙げられる。
【0040】
これらの様々な種類のゼオライトは、当業者には商業的に容易に入手可能であるか、又は科学文献及び特許文献で入手可能な既知の手順によって容易に合成可能である。さらに、様々な種類のゼオライトが明確に定義されており、例えば、「Atlas of Zeolite Framework Types」、第5版、(2001年)、Elsevierに記載されている。
【0041】
別の態様によれば、本発明は、低レベルの不純物を含む水素を生成するための、特に10重量ppm以下の量の少なくとも1つの軽質炭化水素、特に100g/mol-1以下のモル質量を有する少なくとも1つの炭化水素を含む水素を生成するための、LOHC流体としての上記で定義した調合物の使用に関する。
【0042】
本発明の調合物により、特に、本発明のLOHC調合物は、上記のように、水素化/脱水素化反応において現在使用されている触媒に対して毒であることが知られている微量の軽質炭化水素のみを含有するため、連続サイクルにわたる触媒の劣化の低減によって、水素化/脱水素化サイクルの性能レベルが促進/向上する。
【0043】
さらに、脱水素化工程中に貯蔵され、次いで放出される水素は、高純度水素であり、したがって、非常に多数の用途、特に燃料電池、及びマイクロプロセッサ、半導体などを製造するための電子機器部門などの高純度水素の使用を必要とする他の全ての産業用途に使用することができる。
【国際調査報告】