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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】SARSの重症度を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526284
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 IB2020060314
(87)【国際公開番号】W WO2022096916
(87)【国際公開日】2022-05-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516173876
【氏名又は名称】アビオニック・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】デュランド, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】マルキ, イワン
(72)【発明者】
【氏名】ベンチュラ, フランソワ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045DA36
2G045JA03
(57)【要約】
本発明は、患者における重症急性呼吸器症候群(SARS)の重症度を評価する方法に関し;前記方法は、少なくとも以下:a)呼吸器系スコア、b)前記患者由来の体液試料中の膵石タンパク質/再生タンパク質(PSP/reg)のレベルによって決定されるスコアからなる重症度スコアに基づいている。本発明は、治療優先順位を決定するために患者を選別するために健康管理ユニットにおいて使用され得る。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における重症急性呼吸器症候群(SARS)の重症度を評価する方法であって、少なくとも以下:
a)呼吸器系スコア、
b)前記患者由来の体液試料中の膵石タンパク質/再生タンパク質(PSP/reg)のレベルによって決定されるスコア
から構成される重症度スコアに基づいている、方法。
【請求項2】
SARS-CoV-2(Covid-19)の重症度を評価するための請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下のステップ:
a)前記患者由来の体液試料を提供するステップ;
b)前記試料中の膵石タンパク質/再生タンパク質(PSP/reg)のレベルを決定するステップ;
c)PSP/regスコアを決定するステップ;
d)呼吸器スコアを決定するステップ;
e)PSP/regスコア及び呼吸器スコアを加算することにより、重症度スコアを決定するステップ
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記重症度スコアが、他のバイオマーカースコアも含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオマーカーがC-反応性タンパク質(CRP)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記体液試料が、血清、血漿、全血試料、唾液、尿、喀痰、脳脊髄液、涙液、汗、母乳、又は固体組織若しくは糞便からの抽出物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記呼吸器スコアが、患者が呼吸困難であり、酸素サポート又は機械的換気(侵襲的及び非侵襲的)を必要とする様子を評価することによって得られる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1未満の重症度スコアが、臨床的合併症及び/又は悪化のリスクが低いことを示す、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
3超の重症度スコアが、重症ウイルス性敗血症(重症サイトカインストーム)、細菌性敗血症、多臓器不全及び/又は死亡を発症するリスクが高いことを示す、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記PSP/regレベルが、ELISA、RIA、EIA、質量分析、マイクロアレイ解析又は任意の流体アッセイ方法によって決定される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
健康管理ユニットにおける患者のトリアージ、選別、方向付け、位置決定及び/又は層別化のための、請求項1~10のいずれか一項に定義される重症度スコアの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、重症急性呼吸器症候群(SARS)、特にSARS-CoV-2(Covid-19)の重症度を評価する方法に関する。このような方法は、治療優先順位を決定するために患者を選別するために健康管理ユニットにおいて使用され得る。
【背景技術】
【0002】
[0004]SARS-CoV-2及び関連するCovid-19感染爆発の急速かつ世界的な広がりは、公衆衛生システムに対して複数の課題を提起している。これは特に集中治療室(ICU)に当てはまり、侵襲的な呼吸補助を必要とする患者数の急増により、ICUの医療従事者、インフラ、材料、治療の必要性に深刻な負担がかかっている。過去数カ月間に発表された印象的な量のデータによって、重症疾患及び死亡の危険因子を含む、Covid-19患者の臨床的特徴が明らかにされた。Covid-19 ICU患者についての種々の研究によって、死亡率には違いが見られるものの、61~97%の範囲で高い数値が一貫して報告されている(F. Zhouら、The Lancet 2020)。一般的に「リスクあり」と定義されるSARS-CoV-2に感染した患者(高齢及び/又は心血管疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患、高血圧、癌等の併存疾患を有する患者(R.E.Jordanら、BMJ 2020))は、Covid-19の合併症、主に重症肺炎、敗血症ショック、及び多臓器機能障害に陥る可能性が高くなる。最近の研究では、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症したCovid-19患者の11%が短期間で悪化し、後に多臓器不全で死亡した(N.Chenら、The Lancet 2020、10223:507-513)。
【0003】
[0005]敗血症は現在、「感染に対する宿主応答の調節不全によって引き起こされる生命を脅かす臓器機能障害」(Sepsis-3)と定義されている(M.Singerら、JAMA 2016、315:801-810)。臨床的には、臓器機能障害は逐次臓器不全評価(sequential organ failure assessment;SOFA)スコアが2点以上であることと定義されている。敗血症患者のサブセットは、敗血症ショックに進行する。これらの敗血症ショック患者は、臨床的には、平均動脈圧65mmHg超を維持するために血管圧迫薬を必要とする持続的な低血圧を有し、十分な量の蘇生処置にもかかわらず血清乳酸値が2mmol/L(18mg/dL)超であると定義されている。これらの定義から、肺不全のために侵襲的な機械的換気を必要とした全てのSARS-CoV-2感染患者は、SOFAの呼吸点が2以上であるため、「敗血症」と定義されるものとすることは明らかである。
【0004】
[0006]この文脈では、敗血症ショック及び多臓器機能障害等のCovid-19合併症の早期発症の識別子を特定することが重要である。SOFAスコアを構成する複数のパラメータのために測定が面倒であること、及び全てのデータを収集するための中央検査室が必要であることを除けば、SOFAスコアは、所与の時点における臓器機能障害を予測するものではなく、むしろ臓器機能障害の程度を表すものである。したがって、臓器機能障害及び敗血症ショックの早期警報シグナル(複数可)が必要であり、これらの機能障害の影響を軽減し、速やかに恒常性をリセットするための患者管理のためのデータを臨床医に折よく提供する必要がある。敗血症ショック及び多臓器機能障害は、集中治療室(ICU)に入院した重症のCovid-19患者の主要な合併症であり、高い死亡率に関連している。したがって、これらの状態を予測するバイオマーカーは、患者の管理戦略を最適化するために、早期診断に必須である。
【0005】
[0007]現在では、診断は、複数の臨床徴候、複雑な逐次臓器不全評価スコア(SOFAスコア)、及び論争の的となっているSepsis-3定義(S. Sinhaら、J Anaesthesiol Clin Pharmacol.2018、34:4:542-543)の組合せによってのみ行うことができ、単純な血液検査によって行うことはできない。他のバイオマーカー、プロカルシトニンPCT及びC反応性タンパク質CRPは広範囲に研究されているが、今日、それらのいずれも敗血症を十分に迅速に、十分に高い診断精度で検出する能力を示していない(C.Rheeら、Critical care 2016、6:20:89)。
【0006】
[0008]膵石タンパク質(pancreaticstone protein)/再生タンパク質(regenerating protein)(PSP/reg)は、レクチン結合タンパク質のファミリーに属し、医学会の国際ガイドライン(C.S.Singerら、JAMA 2016、315:8:801-810)で提案されている他の全ての現在の解決法よりもはるかに早い敗血症、敗血症ショック及び臓器機能障害の診断を可能にするものである。
【0007】
[0009]13のPSP/reg研究を要約した文献概説(P.Eggimannら、Biomarkers 2019、13:02:135-145)は2019年に発表され、2020年1月にチューリッヒ大学病院のBurnセンターから有望な研究(H.J.Kleinら、Ann Surg.2020)が発表された。
【0008】
[0010]これらの多数の出版物は、PSP/regアッセイが、ICU成人(M.Llewlynら、Crit.Care 2013、17:2:R60)、小児(Z.Jiriら、Cytokine 2014、66:2:106-111)、新生児(A.Rassら、BioMed.Res.Int 2016、1-8)及び熱傷(H.J.Kleinら、World Journal of Surgery 2020、44:3000-3009)患者において、敗血症、敗血症ショック及び多臓器不全の早期診断についての他のバイオマーカーよりも特異的かつ高感度であることを示す。PSP/regは、心臓手術後の患者における敗血症の特定を可能にし(H.Kleinら、PLoS ONE 2015、10:3:e0120276)、PSP/regはICUにおいて腹膜炎の患者の転帰を予測し(R.Gukasjanら、Crit.Care Med 2013、41:4:1027-1036)、PSP/regは、人工呼吸器関連肺炎VAPにおける臓器不全のバイオマーカー(L.Boeckら、Chest 2011、140:4:925-932)、並びに成人(Y.-A.Queら、Crit.Care 2012、16:4:R114)及び子供(Q.Wuら、Med.Sci.Monit 2017、23:1533-1539)における死亡率を予測するバイオマーカーである。
【0009】
[0011]PSP/regの値は、2015年に健常者において決定された(E.Schlapbachら、BMC Anesthesiol 2015、15:168)。PSP/regは、外傷を負った患者(M.Keelら、Crit.Care Med 2009、37:5:1642-1648)、救急診療部(L.Garcia de Guardinia-Romualdoら、Eur.J.Clin.Invest 2017、47:4:297-304)、小児急性骨髄炎(C.Cuiら、Med.Sci.Monit 2017、23:5211-5217)、及び発熱性好中球減少症を有する癌患者(L.Garcia de Guadiana-Romualdoら、Clin Chem Lab Med 2019、57:4:540-548)における早期感染及び敗血症を検出する。
【0010】
[0012]PSP/regの病態生理学的機構はまだ明確に定義されていないが(R.Graf、Pancreatology 2020、20:3:301-304)、ラットの研究により、敗血症患者の血清PSP/regが主に膵臓の急性期反応を通じて由来することを示唆している(T.Redingら、Oncotarget 2017、8:30162-30174)。ヒトでは、PSP/REGは顆粒球好中球を活性化し(M.Keelら、Crit.Care Med 2009、37:51642-1648)、これによりPSP/regが急性期タンパク質として機能する可能性が確認されたと考えられる。
【0011】
[0013]敗血症(細菌性及びウイルス性)、敗血症ショック及び多臓器機能障害の発症におけるバイオマーカー濃度の変化間の関連を本発明において評価し、Covid-19患者の合併症を早期に特定するための新しい診断戦略を特定した。
【0012】
[0014]現在、入院中のSARS患者、特にCovid-19患者の臨床的な悪化を特定することは非常に困難であり、これは、ほとんどがウイルス感染及び呼吸困難による敗血症を有するためである。さらに、サイトカインストームが複雑な臨床像を作り出しているため、実務者が臨床状況の重症度を評価することが困難になっている。
【0013】
[0015]さらに、臨床医が患者を選別し、より良い治療のために方向付けるのに役立つスコアは、現在のところ存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
[0016]したがって、SARSの重症度の評価を迅速化、及び改善するための解決法が強く必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[0017]本発明者らは、SARS、特にSARS-CoV-2の重症度評価が、少なくとも以下:
a.呼吸器系スコア(respiratory system score)、
b.前記患者由来の体液試料中の膵石タンパク質/再生タンパク質(PSP/reg)のレベルによって決定されるスコア
から構成される重症度スコアの使用により容易になり、その質が向上し得ることを見出した。
【0016】
[0018]本発明の好ましい実施形態によれば、本方法は、以下のステップ:
a.前記患者由来の体液試料を提供するステップ;
b.前記試料中の膵石タンパク質/再生タンパク質(PSP/reg)のレベルを決定するステップ;
c.PSP/regスコアを決定するステップ;
d.呼吸器スコア(respiratory score)を決定するステップ;
e.PSP/regスコア及び呼吸器スコアを加算することにより、重症度スコアを決定するステップ
を含む。
【0017】
[0019]重症度スコアはまた、C-反応性タンパク質(C-Reactive Protein;CRP)等の他のバイオマーカースコアを都合の良いように含んでいてもよい。
【0018】
[0020]重症度スコアは、多臓器不全、細菌性敗血症及び重症ウイルス性敗血症を含む臨床的合併症及び/又は悪化の発生を示すものである。
【0019】
[0021]PSP/regスコアは、逐次臓器不全評価スコア(SOFAスコア)と相関している。
【発明の効果】
【0020】
[0022]本発明は、重症度レベルにしたがった、患者のトリアージ、選別、方向付け、位置決定及び/又は層別化を可能にする。
【0021】
[0023]本発明は、本章において、以下の図の支援を受けて、より正確な方法で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】Covid-19患者の重症度スコアがどのように決定されるかを示す図である。Covid-19逐次臓器不全評価スコア(cSOFA)と呼ばれる重症度スコアは、呼吸器スコア(RESPSCORE)及びPSPスコア(PSPSCORE)の合計で構成される。RESPSCOREは、表に示すように医師が設定し、SOFAスコアの呼吸機能障害構成要素として知られるPaO/FiO測定に直接的に関連している。PSPSCOREは、測定されたPSP/regレベルから、表に示すように得られる。RESPSCORE+PSPSCORE=cSOFA(Covid-19逐次臓器不全評価スコア)。
図2図2aは、cSOFAスコアと、一般的に知られているSOFAスコアとの間の相関を示す。各点は、各患者のICU滞在期間にわたる平均化されたcSOFA-SOFA比較を表す。この分析には、ICUにいる96人の患者が含まれている。白色領域は、cSOFAスコアとSOFAスコアの差が最大で2クラスであることを表す。薄灰色領域は、cSOFAスコアとSOFAスコアの間の差が最大3クラスであることを表し、濃灰色領域は、cSOFAスコアとSOFAスコアの間の差が4クラス以上であることを表す。図2bは、分析に含まれる患者の分布を示し、cSOFAスコアとSOFAスコアのクラス差を示す。
図3】cSOFAが、患者の臨床的重症度とその方向の決定のために、そのレベルにしたがって解釈される方法を示す図である。ゼロに等しいcSOFAスコアは、臨床的悪化のリスクが低いことを示し、したがって、患者を家に送るという方向性を考慮すべきである。1~3のcSOFAスコアは、中程度の臨床的悪化のリスクを示すため、入院を考慮する必要がある。3超のcSOFAスコアは、臨床的悪化のリスクが高いことを示し、したがって、中間治療室又は集中治療室に患者を移すことを考慮すべきである。
図4図3に示されるようなcSOFAスコアレベルにしたがった患者のトリアージ及び方向付けのための決定ツリーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[定義]
[0002]本明細書で定義するように、SARS-CoV-2に感染した患者とは、SARS-CoV-2の存在を特定する任意の方法で試験が陽性であった患者を指す。
【0024】
[0003]「PSP/reg」は、再生遺伝子(REG)Iタンパク質又はリトスタチン又は膵臓糸タンパク質(pancreatic thread protein;Grossら、J.Clin.Invest.1985、76:2115-2126)とも呼ばれ、アイソフォームα(Uniprot配列番号:P05451、ここで配列番号1としても同定)又はβ(Uniprot配列番号:P48304、ここで配列番号2としても同定)であり得るヒト膵石タンパク質を指す。
【0025】
[0028]SARS-CoV-2に言及する図示された実施例において定義されるように、重症度スコアは、Covid-19逐次臓器不全評価(cSOFA)と呼ばれ、呼吸器スコア(RESPSCORE)とPSPスコア(PSPSCORE)との合計によって構成される。RESPSCOREは、SOFAスコアの呼吸機能障害構成要素と同一である。RESPSCOREは、図1に示すように、施術者の評価によって確立されてもよい、及び/又は、利用可能であれば、SOFAスコアのスコア付けシステムにしたがってPaO/FiO測定値から直接得られてもよい。PSPSCOREは、図1に示された表にしたがって、体液中の膵石タンパク質/再生タンパク質PSP/regの測定された患者レベルに基づいて確立される。
【0026】
[0029]PSP/regレベルの決定に有用な体液は、例えば全血、血清、血漿、尿、喀痰、脳脊髄液、涙液、唾液、汗、母乳、又は固体組織若しくは糞便からの抽出物である。
【0027】
[0030]体液中のPSP/regのレベルの決定には、任意の公知の方法を使用することができる。考慮される方法は、例えばELISA、RIA、EIA、質量分析、又はマイクロアレイ分析、及び任意の流体アッセイ方法である。
【0028】
[0031]0~10までの得られたcSOFAスコアは、図2に示すように、Covid-19患者の0~10までのよく確立されたSOFAスコアとよく相関している。SOFAスコアは、所与の時間における臓器機能障害の程度を表すものであり、臓器不全、敗血症及び敗血症ショックを評価するために今日広く使用されている。このスコアは複雑で、複数の臨床パラメータに基づき、そのため確立が面倒であり、これが集中治療室で主に使用されている理由である。cSOFAスコアは、迅速に測定及び算出することができる2つのパラメータのみに基づいている。cSOFAスコアは医療従事者であれば誰でも簡単に決定できるため、SOFAスコアの代替となる。特に、SOFAスコアは通常集中治療状況で使用されているため、cSOFAスコアは、SOFAスコアが現在容易に利用可能ではない、又は算出されない他の全ての状況(救急診療部、一般病棟、プライマリケア、検査センター等)における解決法となる。結果として、これらの他の状況におけるcSOFAスコアの使用によって、Covid-19患者の臨床的合併症、悪化、トリアージ及び方向性を決定することが可能になる。
【0029】
[0032]図3に記載されているように、0に等しいcSOFAスコアは、臨床的悪化のリスクが低いことを示し、したがって、患者を家に帰すことが考慮されるべきである。1~3のcSOFAスコアは、臨床的悪化のリスクが中程度であることを示し、したがって、入院を考慮する必要がある。3超のcSOFAスコアは、多臓器不全、細菌性敗血症及び重症ウイルス性敗血症(重症サイトカインストーム)のリスクを含む臨床的悪化の高リスクを示し、したがって、中間治療室又は集中治療室への患者の移送が考慮されるべきである。
【0030】
[0033]cSOFAスコアの説明された分類(図3を参照)に基づき、Covid-19患者のトリアージ、選別及び方向付けのための決定ツリーが、図4に示すように確立される。救急診療部、プライマリケア状況、又はトリアージセンターでは、トリアージ及び臨床的重症度の識別を目的として、cSOFAスコアは入院時に一度設定される。入院中、cSOFAスコアは、同じ目的のために少なくとも毎日設定される。
【0031】
[0034]本発明は、SARS-CoV-2の評価に限定されるものではなく、あらゆる種類のSARSに感染した患者にも好都合に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】