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特表2023-553255パイプラインチューブを製造するためのニッケル基合金
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】パイプラインチューブを製造するためのニッケル基合金
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/30 20060101AFI20231214BHJP
   B23K 9/04 20060101ALI20231214BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20231214BHJP
   C22C 1/04 20230101ALI20231214BHJP
   C22C 19/05 20060101ALN20231214BHJP
   B23K 9/23 20060101ALN20231214BHJP
   B23K 9/00 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
B23K35/30 320Q
B23K9/04 G
B23K9/04 Z
B22F1/00 M
C22C1/04 B
C22C19/05 B
B23K9/23 C
B23K9/23 G
B23K9/00 501P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526408
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 IB2020060223
(87)【国際公開番号】W WO2022090781
(87)【国際公開日】2022-05-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512072614
【氏名又は名称】アペラム
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-ルイ・レイデ
(72)【発明者】
【氏名】ファニ・ジョヴェンソー
【テーマコード(参考)】
4E001
4E081
4K018
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB07
4E001BB08
4E001BB11
4E001CA01
4E001CA07
4E001CB03
4E001DC01
4E001EA05
4E081YX07
4E081YX15
4K018AA08
4K018BA04
4K018BD09
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
4K018KA58
(57)【要約】
本発明は、質量で下記の組成:16.5%≦Cr≦25.0%;11.0%≦Mo≦18.0%;2.0%≦W≦7.0%;Fe≦1.0%;Mo+W≦-0.5×(Cr+Fe)+30%;Mo+W≧-0.5×(Cr+Fe)+25%;Ti+Ta≦0.80%;0.01%≦Si≦0.75%;0.01%≦Al≦0.35%;0.01%≦Mn≦0.35%;Ca≦0.005%;Mg≦0.005%;Nb≦0.01%;0.001%≦C≦0.05%;0.001%≦N≦0.05%;S≦0.003%;P≦0.005%;必要に応じて、0.0010%≦希土類≦0.015%を有し、ケイ素含量が、0.0010%から0.015%の間の量の希土類の存在下で0.25%未満又はそれに等しく、残りがニッケル、及び処理から生じる回避できない不純物であり、ニッケル含量が54%よりも多く又はそれに等しい、合金に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量で下記の組成:
16.5%≦Cr≦25.0%
11.0%≦Mo≦18.0%
2.0%≦W≦7.0%
Fe≦1.0%
Mo+W≦-0.5×(Cr+Fe)+30%
Mo+W≧-0.5×(Cr+Fe)+25%
Ti+Ta≦0.80%
0.01%≦Si≦0.75%
0.01%≦Al≦0.35%
0.01%≦Mn≦0.35%
Ca≦0.005%
Mg≦0.005%
Nb≦0.01%
0.001%≦C≦0.05%
0.001%≦N≦0.05%
S≦0.003%
P≦0.005%、
必要に応じて0.0010%≦希土類≦0.015%
を有し、ケイ素含量が、0.0010%から0.015%の間を構成する含量の希土類の存在下で0.25%未満又はそれに等しく、
残りがニッケル、及び製造から生じる回避できない不純物であり、ニッケル含量が54%よりも多く又はそれに等しい、合金。
【請求項2】
鉄含量が0.5%未満又はそれに等しい、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
希土類が、イットリウム、セリウム、及びランタン、及びこれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の合金。
【請求項4】
希土類が、イットリウム、又はセリウム及びランタンの混合物から選択される、請求項3に記載の合金。
【請求項5】
ベース材料で作製された基材(28)と、請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製されたコーティング(30)とを含むコーティング付き部品(26)であって、ベース材料が、金属材料、好ましくは炭素鋼、例えばX56、X60、X65、X70鋼である、コーティング付き部品。
【請求項6】
コーティング付き部品(26)がチューブセクション(7)である、請求項5に記載のコーティング付き部品。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の組成を有する合金で作製される溶加線。
【請求項8】
請求項7に記載の溶加線の製造方法であって、下記の工程:
- 請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製された半仕上げ製品を提供する工程と、
- 中間体ワイヤーを形成するために、半仕上げ製品を高温変換する工程と、
- 中間体ワイヤーを、中間体ワイヤーの場合よりも小さい直径を持つ溶加線に変換する工程であり、延伸工程を含む、工程と
を含む、製造方法。
【請求項9】
部品の少なくとも2つの部分(3;12;7)を含む溶接済みアセンブリ(1;7;20)であって、そのそれぞれがベース材料で作製され、部品の部分(3;12;7)が、請求項7に記載の溶加線から得られた溶接継ぎ目(5;15);22)によって一緒に接合されており、ベース材料が、Fe-9Ni等の鉄-ニッケル合金、C-276、C-4又は22等のニッケル合金、及び炭素鋼、例えばX56、X60、X65、又はX70鋼から選択される、溶接済みアセンブリ。
【請求項10】
前記溶接済みアセンブリが、チューブの形状に曲げられた板金を含むチューブセクション(7)を形成し、その縦方向の縁(12)が、溶接ビーズ(15)により互いに接合される部品の部分(3)を形成する、請求項9に記載の溶接済みアセンブリ。
【請求項11】
チューブセクション(7)には、その内面の少なくとも一部分に、好ましくは全面に、請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製されたコーティング(30)が設けられる、請求項10に記載の溶接済みアセンブリ。
【請求項12】
前記溶接済みアセンブリが、少なくとも2つのチューブセクション(7)を含むチューブ(20)を形成し、チューブセクション(7)が部品の部分(3)を形成し、溶接継ぎ目(22)がチューブ(20)の円周に沿って延び、チューブセクション(7)が好ましくは、請求項10又は11のいずれか一項に記載のチューブセクション(7)である、請求項9に記載の溶接済みアセンブリ。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一項に記載の溶接済みアセンブリ(1;7;20)を生成するための方法であって、請求項7に記載の溶加線を用いて部品の2つの部分(3;12.7)を一緒に溶接する工程を含み、溶接する工程が、より詳細にはアーク溶接である、方法。
【請求項14】
請求項10又は11に記載の溶接済みアセンブリ(7)を生成する方法であって、溶接工程が、板金(9)の縦方向の縁(12)を一緒に溶接する工程であり、溶接部が好ましくは、縦方向突合せ溶接部である、方法。
【請求項15】
請求項12に記載の溶接済みアセンブリ(20)を生成する方法であって、溶接工程の前に、下記の逐次工程:
- それぞれが縦軸(M)に沿って延び且つベース材料で作製される、第1のチューブセクション(7)及び第2のチューブセクション(7)を供給する工程と、
- 第1のチューブセクション(7)の縦方向の端部(24)が、第1及び第2のチューブセクション(7)の縦軸(M)に沿って第2のチューブセクション(7)の縦方向の端部(24)に面して配置構成されるように、第1及び第2のチューブセクション(7)を位置決めする工程と
を含み、
溶接工程が、第1及び第2のチューブセクション(7)に面する2つの縦方向の端部(24)を一緒に溶接する工程であり、溶接する工程が、好ましくはオービタル突合せ溶接である、
方法。
【請求項16】
請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製される部品又は部品の部分であって、金属付加製造によって得られる、部品又は部品の部分。
【請求項17】
部品又は部品の部分を製造する方法であって、溶加材料として、請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製された溶加線、及び/又は請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製された粉末を使用して、金属付加製造プロセスにより前記部品又は部品の前記部分を製造する工程を含む、方法。
【請求項18】
請求項7に記載の溶加線の使用であって、
- Fe-9Ni等の鉄-ニッケル合金、C-276、C-4若しくは22等のニッケル合金、又は炭素鋼、例えばX56、X60、X65、若しくはX70鋼であるベース材料で作製された、部品の2つの部分を一緒に溶接するための溶接溶加線としての、及び/或いは
- 金属材料、好ましくは炭素鋼、例えばX56、X60、X65、又はX70鋼であるベース材料で作製された、部品又は部品の部分上にコーティングを生成するためのハードフェイシング線としての、及び/或いは
- 金属付加製造プロセスにおける溶加線としての、
使用。
【請求項19】
請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製される金属粉末。
【請求項20】
請求項19に記載の金属粉末を製造する方法であって、請求項7に記載の溶加線を提供する工程と、金属粉末を得るために、前記溶加線をプラズマ噴霧する工程とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に石油化学の及び石油生成物を抽出する分野で、より詳細にはガス又は油を輸送するためのパイプラインチューブの製造の部分として、使用されることが意図されるニッケル合金に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス及び油の開発は、洋上でのパイプラインの敷設を必要とする。生産性及び経済的収益性の目的で、パイプラインは約2km/日の敷設速度で敷設することが望まれる。現在、そのような生産性の要件を満たす3つの技術がある:
・ S-lay技術: 典型的には9m又は12mの長さのパイプセクションが、スプールベースと呼ばれるユニット内で陸上で製造され、次いで船で海上を輸送されて、艀上で水平に突合せ溶接される。敷設は、海底に接触する前にチューブがとる形状を思い起こすように、S-layと呼ばれる。S-lay技術は、2,000m未満の海底に適している。
・ J-lay技術: J-lay技術は、より最近のものであり、深海(2,000mから4,000m)に適合される。パイプセクションは、海上の垂直艀上(僅かな角度あり)で一緒に溶接され、海底に接触する前はJ字形を有する。
・ R-lay技術: 最も最近のR-lay技術は、小さい直径のチューブ且つ非大水深海域専用である。チューブのラインは、地上で一体的に溶接され、次いでホイールに巻き付けて海上で輸送され、その後、専用の艀を用いてホイールから巻き解かれる。R-lay技術は最も効率的である。
【0003】
そのような敷設技術は、チューブ、特にチューブセクション間のオービタル溶接に、特に敷設中のチューブの曲げの影響下及び海底に接触する前のチューブの重みの影響下で、機械的ストレスをかける。したがってチューブ、特に溶接部は、敷設段階中のチューブの変形を回避するために、そのようなストレスに耐えるように設計されなければならない。
【0004】
敷設速度に関する要件に加え、埋設物を利用可能なままにするために、敷設深さを増大させる必要もある。敷設深さは、約2,500mから3,000mの深さに達することができる。敷設深さのそのような増大は、チューブにかかる機械的ストレスを増大させ、したがって益々高くなる機械的性質を持つ炭素鋼の使用を必要とする。
【0005】
使用されるチューブセクションは、典型的には、鋼板を圧延し次いで鋼の縁部を、鋼溶加線でMIG/MAGプロセスを用いて縦方向に溶接することにより、工場で製造され、その組成は鋼板のグレードに応じて選択される。チューブセクションの肉厚は、典型的には25mm程度であり、その直径は25cmから130cmの間を構成する。
【0006】
代替例によれば、及び適用例に応じて、チューブセクションは、ビレット押出しにより製造される。チューブセクション並びにチューブセクションのオービタル溶接によって得られるチューブは、そのような場合、いかなる縦方向の溶接も用いない(シームレスチューブ)。
【0007】
鋼のグレードに従い指定されるパイプセクションの機械的強度を、パイプセクションの製造に使用することができる鋼グレードX56、X60、X65、X70、又はX80に関してAPI仕様5Lに従い以下に再現する。鋼グレードは、ksiを単位とする鋼板の降伏強度に対応する。
【0008】
【表1】
【0009】
鋼グレードX56、X60、X65、X70、又はX80は、the American Petroleum Instituteの「API Specification 5L」文書、第45版、2012年12月で定義されている。
【0010】
チューブセクションが縦方向の溶接部を含む場合、溶接部を考慮することなく、敷設条件(S、J、R)に応じて及びラインの動作タイプのみに応じて、例えばパイプセクションの厚さ及び使用される鋼のグレードを定めるため、パイプセクションを設計することができるようにベースプレート鋼の機械的性質に等しい又はそれよりも大きい機械的性質(オーバーマッチ)を持つ溶接部を得ることが、チューブセクションの製造中に求められる。
【0011】
例えばビレットの押出しによって縦方向の溶接なしに(「シームレス」技術)チューブセクションが製造される場合、縦方向の溶接に必要な仕様を省略することが可能である(「オーバーマッチ」)。
【0012】
チューブセクションが製造された後、任意の縦方向の溶接部を含むチューブセクションの内面は、溶加線で溶接することによってコーティング層でコーティングされる。このコーティング操作の目的は、多かれ少なかれ腐食性の石油生成物の輸送中にチューブの腐食耐性を確実にすることである。内部コーティングは、典型的にはInconel(登録商標)625合金で作製される。Inconel(登録商標)625合金は、質量で下記の組成を有する:
Cr: 20.0~23.0%
Fe≦5.0%
Mo: 8.0~10.0%
Nb+Ta: 3.15~4.15%
C≦0.10%
Mn≦0.50%
Si≦0.50%
P≦0.002%
S≦0.015%
Al≦0.40%
Ti≦0.40%
その他の元素≦0.5%、
残りがニッケル、及び製造から生じる回避できない不純物であり、Ni≧58%である。
【0013】
Inconel(登録商標)625合金は、AWS分類参照ERNiCrMo-3(番号UNS N06625)の下、「Chemical composition requirements for Nickel and Nickel-Alloy Electrodes and Rods(ニッケル及びニッケル合金電極及び棒に関する化学組成要件)」という名称の、規格AWS A5.14/A5.14M: 2018 (Specification for Nickel and Nickel-Alloy Bare Welding Electrodes and Rods(ニッケル及びニッケル合金裸溶接電極及び棒に関する仕様))の表1に定められている。
【0014】
チューブセクションが製造されると、それらは艀で輸送され、チューブが前述の技法の1つを使用して敷設されるときにオービタル溶接によって突合せ溶接される。
【0015】
どのような敷設技法が使用されようとも、チューブセクション間で作製された突合せ溶接(オービタル)は、敷設中のラインの曲げ応力及び海底に接触する前のラインの自重に耐えるべきである。したがってオービタル溶接の機械的強度は、敷設段階中の溶接変形を防止するのに非常に重要なものである。
【0016】
一般に、以下の性質が、パイプセクション間のオービタル溶接に求められている:
- オーバーマッチ: 卑金属(base metal)の、即ちパイプセクションの鋼の機械的強度よりも大きい又はそれに等しい機械的強度を持つオービタル溶接部を得ることを求める。パイプセクションの縦方向の溶接部に関して上記にて述べたように、オーバーマッチは、敷設条件(S、J、R)に応じて及び溶接部を考慮せずにラインの動作タイプに応じて、パイプを設計するのに使用され、特にパイプの厚さ及び使用される鋼のグレードを定めるのに使用される。
- オービタル溶接の存在を考慮することなく局部腐食耐性に関する要件に対してパイプを設計できるようにするために、内側における、パイプセクションのコーティングの腐食耐性よりも大きい又はそれに等しい局部腐食耐性。
【0017】
記述の全体を通して、局部腐食は、孔食メカニズムを発生しそうな腐食を指す。
【0018】
上述の要件の全てを満たすために、本発明者らは、Inconel(登録商標)625合金溶加線を使用してコーティングにルートパスが作製されるオービタル溶接部を生成すること、及び卑金属に等しいグレードの鋼を使用して溶加パスによる溶接を終了することを提案する。そのような溶接技法は、使用される材料のある特定の連続性を確実にするので、良好な機械的性質を提供する。一方、そのような溶接は、Inconel(登録商標)625合金の希釈に関係する高温割れ、したがって溶接可能性の、著しい問題を伴う。したがってそのような解決策は、完全に満足のいくものではない。特に、溶接中に出現する割れは修復しなければならず、かなりの追加コストを発生させる。更に、割れが修復されない場合、割れは、動作中のチューブ破壊を発生させるリスクを持つ。
【0019】
本発明者らは、Inconel(登録商標)625合金で作製された単線を使用して全溶接を行うことも提案してきた。そのような溶接の解決策は、事実、経済的である。更に前記溶接は、高温割れのいかなる問題も発生させず、コーティングの耐性に匹敵する、腐食に対する耐性をもたらす。また、前記溶接は、グレードX56まで又は更にX60のチューブを溶接するのに広く使用される。しかしながら、より高い鋼グレード(X65、X70、及びX80)にはもはや適していない。しかしながら前述の要件は、より詳細には敷設の速度及び深さに関し、グレードX60よりも高いグレードの鋼、特にグレードX65鋼又は更にグレードX70鋼の使用を益々必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】the American Petroleum Institute、「API Specification 5L」文書、第45版、2012年12月
【非特許文献2】AWS分類参照ERNiCrMo-3(番号UNS N06625)の下、「Chemical composition requirements for Nickel and Nickel-Alloy Electrodes and Rods(ニッケル及びニッケル合金電極及び棒に関する化学組成要件)」という名称の、規格AWS A5.14/A5.14M: 2018 (Specification for Nickel and Nickel-Alloy Bare Welding Electrodes and Rods(ニッケル及びニッケル合金裸溶接電極及び棒に関する仕様))
【非特許文献3】規格NF EN ISO 148-1(2011年1月)
【非特許文献4】欧州規格FD CEN ISO/TR 17641-3(2005年11月)
【非特許文献5】アメリカ石油協会、API仕様5L文書、第45版、2012年12月
【非特許文献6】AWS分類参照ERNiCrMo-4(番号UNS N10276)の下、「Chemical composition requirements for Nickel and Nickel-Alloy Electrodes and Rods(ニッケル及びニッケル合金電極及び棒に関する化学組成要件)」という名称の、AWS A5.14/A5.14M: 2018 (Specification for Nickel and Nickel-Alloy bare Welding Electrodes and rods(ニッケル及びニッケル合金裸溶接電極及び棒に関する仕様))
【非特許文献7】AWS分類参照ERNiCrMo-7(番号UNS N06455)の下、「Chemical composition requirements for Nickel and Nickel-Alloy Electrodes and Rods(ニッケル及びニッケル合金電極及び棒に関する化学組成要件)」という名称の、規格AWS A5.14/A5.14M: 2018 (Specification for Nickel and Nickel-Alloy bare Welding Electrodes and rods(ニッケル及びニッケル-合金裸溶接電極及び棒に関する仕様))
【非特許文献8】AWS分類参照ERNiCrMo-10(番号UNS N06022)の下、「Chemical composition requirements for Nickel and Nickel-Alloy Electrodes and Rods(ニッケル及びニッケル合金電極及び棒に関する化学組成要件)」という名称の、AWS A5.14/A5.14M: 2018 (Specification for Nickel and Nickel-Alloy bare Welding Electrodes and rods(ニッケル及びニッケル-合金裸溶接電極及び棒に関する仕様))
【非特許文献9】ASTM B214-07規格
【非特許文献10】規格NF EN ISO 6892-1(2019年12月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点を克服し、油又はガスを輸送することが意図され且つ深海、沖合い、特に深さ約3,000mよりも下で、高い生成速度、特に2km/日程度で敷設するのに適切な、パイプラインチューブを製造するための溶加材料として使用できる合金を提供することである。
【0022】
約3,000mよりも下の深さでの並びに高い敷設速度でのチューブの敷設は、非常に良好な機械的性質を持つ鋼の使用を必要とする。好ましくは、溶接済みアセンブリの機械的性質に関し、最低でも: 500MPaよりも大きい又はそれに等しい降伏強度Rp0.2と、100J/cmよりも大きい又はそれに等しいKCV弾性を得ること、有利には550MPaよりも大きい又はそれに等しい降伏強度RP0.2及び/又は120J/cmよりも大きい又はそれに等しいKCV弾性を得ることが求められる。
【0023】
更に、油又はガスの輸送のためのパイプラインとしてのチューブの使用は、溶加材料の良好な腐食耐性並びに良好な溶接可能性を必要とする。より詳細には、局部腐食耐性及び溶接可能性は、Inconel(登録商標)625合金の場合よりも大きい又はそれに等しいことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的を達成するために、本発明は、質量で下記の組成:
16.5%≦Cr≦25.0%
11.0%≦Mo≦18.0%
2.0%≦W≦7.0%
Fe≦1.0%
Mo+W≦-0.5×(Cr+Fe)+30%
Mo+W≧-0.5×(Cr+Fe)+25%
Ti+Ta≦0.80%
0.01%≦Si≦0.75%
0.01%≦Al≦0.35%
0.01%≦Mn≦0.35%
Ca≦0.005%
Mg≦0.005%
Nb≦0.01%
0.001%≦C≦0.05%
0.001%≦N≦0.05%
S≦0.003%
P≦0.005%
必要に応じて、0.0010%≦希土類≦0.015%
を有し、ケイ素含量が、0.0010%から0.015%の間を構成する含量の希土類の存在下で0.25%未満又はそれに等しく、
残りがニッケル、及び製造から生じる回避できない不純物であり、ニッケル含量が54%よりも多く又はそれに等しい、合金に関する。
【0025】
本発明による合金は、下記の特徴の1つ又は複数を、個別に得られた又は任意の技術的に可能性ある組合せに従い、含むことができる:
- 鉄含量が0.5%未満又はそれに等しい、
- 希土類が、イットリウム、セリウム、及びランタン、及びこれらの混合物から選択される、並びに
- 希土類が、イットリウム、又はセリウムとランタンとの混合物から選択される。
【0026】
本発明は更に、ベース材料で作製された基材と、請求項1から4のいずれかに記載の合金で作製されたコーティングとを含む、コーティング付き部品であって、ベース材料が金属材料であり、好ましくは炭素鋼であり、例えばX56、X60、X65、又はX70鋼である、コーティング付き部品に関する。
【0027】
特定の実施例によれば、コーティング付き部品はチューブセクションである。
【0028】
本発明は更に、上述の合金で作製される溶加線に関する。
【0029】
本発明は、上述の溶加線を製造するための方法であって、下記の工程:
- 上述の合金で作製された半仕上げの製品を供給する工程と、
- 中間体ワイヤーを形成するために、半仕上げの製品を高温変換する工程と、
- 中間体ワイヤーを、中間体ワイヤーの場合よりも小さい直径を持つ溶加線に変換する、延伸工程を含む工程と
を含む、方法に関する。
【0030】
本発明は更に、部品の少なくとも2つの部分を含む溶接済みアセンブリであって、そのそれぞれがベース材料で作製され、部品の部分が、上述の溶加線から得られた溶接ビーズによって一緒に接合されており、ベース材料が、Fe-9Ni等の鉄-ニッケル合金、C-276、C-4又は22等のニッケル合金、及び炭素鋼、例えばX56、X60、X65、又はX70鋼から選択される、アセンブリに関する。
【0031】
本発明による溶接済みアセンブリは更に、個別に得られた又は任意の技術的に可能性ある組合せに従う下記の特徴の1つ又は複数を含むことができる:
- 溶接済みアセンブリが、チューブの形状に曲げられた板金を含むチューブセクションを形成し、その縦方向の縁は、溶接ビーズにより一緒に接合される部品の部分を形成する、
- チューブセクションには、その内面の少なくとも一部分に、好ましくは全てに、上述の合金で作製されたコーティングが設けられる、及び
- 溶接済みアセンブリが、少なくとも2つのチューブセクションを含むチューブを形成し、チューブセクションは部品の部分を形成し、溶接ビーズがチューブの円周に沿って延び、チューブセクションは好ましくは、上述のチューブセクションである。
【0032】
本発明は更に、溶接済みアセンブリを製造するための方法であって、上述の溶加線を用いて部品の2つの部分を一緒に溶接する、特にアーク溶接で溶接する工程を含む、方法に関する。
【0033】
アセンブリによる製造方法は更に、個別に得られた又は任意の技術的に考えられる組合せに従う下記の特徴の1つ又は複数を有することができる:
- 溶接工程が、板金の縦方向の縁部を一緒に溶接する工程であり、溶接が好ましくは、縦方向突合せ溶接である、並びに
- 方法が、溶接工程の前に、下記の逐次工程:
- それぞれが縦軸に沿って延び且つベース材料で作製される第1のチューブセクション及び第2のチューブセクションを、供給する工程と、
- 第1のチューブセクションの縦方向の端部が、第1及び第2のチューブセクションの縦軸に沿って第2のチューブセクションの縦方向の端部に面して配置構成されるように、第1及び第2のチューブセクションを位置決めする工程と
を含み、
溶接工程が、第1及び第2のチューブセクションに面する2つの縦方向の端部を一緒に溶接する、好ましくはオービタル突合せ溶接で溶接する工程である。
【0034】
本発明は更に、上述の合金で作製される部品又は部品の部分であって、付加製造により生成されている、部品又は部品の部分に関する。
【0035】
付加製造プロセスは、より詳細には、溶加材料として、上述の合金で作製された溶加線及び/又は上述の合金で作製された粉末を使用する。
【0036】
付加製造プロセスは、溶加材料を融解させるためのエネルギー源として例えば電気アーク、レーザー光線、及び/又は電子線を使用する、付加製造プロセスである。
【0037】
例えば、付加製造プロセスは、ワイヤー-アーク、ワイヤー-レーザー、電子線-ワイヤープロセス、又はワイヤー-アーク及びレーザー-粉末又はワイヤー-アーク及びワイヤー-レーザー技術を組み合わせた混成付加製造プロセスである。
【0038】
本発明は更に、部品又は部品の部分を製造するための方法であって、溶加材料として、上述の合金で作製された溶加線及び/又は上述の合金で作製された粉末を使用する金属付加製造プロセスによって、前記部品又は部品の前記部分を製造する工程を含む、方法に関する。
【0039】
付加製造プロセスは、溶加材料を融解するためのエネルギー源として例えば、電気アーク、レーザー光線、及び/又は電子線を使用する、付加製造プロセスである。
【0040】
例えば、付加製造プロセスは、ワイヤー-アーク、ワイヤー-レーザー、電子線-ワイヤープロセス、又はワイヤー-アーク及びレーザー-粉末若しくはワイヤー-アーク及びワイヤー-レーザー技術を組み合わせる混成付加製造プロセスである。
【0041】
本発明は更に、上述の溶加線の使用であって、
- Fe-9Ni等の鉄-ニッケル合金、C-276、C-4若しくは22等のニッケル合金、又は炭素鋼、特にX56、X60、X65、若しくはX70鋼である、ベース材料で作製された部品の2つの部分を一緒に溶接するための溶接溶加線としての、及び/或いは
- 好ましくは炭素鋼である、例えばX56、X60、X65、又はX70鋼である、金属ベース材料で作製された、部品又は部品の部分上にコーティングを生成するためのハードフェイシング線としての、及び/或いは
- 金属付加製造プロセスにおける溶加線としての、
使用に関する。
【0042】
本発明は更に、上述の合金で作製される金属粉末に関する。
【0043】
本発明は更に、上述の合金で作製される金属粉末を製造するための方法に関する。
【0044】
本発明は、単なる例として与えられた以下の記述を読むことによって、及び同封の図面を参照することによって、より良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明による溶接済みアセンブリの概略断面図である。
図2】本発明によるチューブセクションの概略斜視図である。
図3】チューブセクションを製造するためのプロセスを実施するときに使用される板金の概略上面図である。
図4】本発明によるチューブの概略斜視図である。
図5】本発明によりコーティングされた部品の概略斜視図である。
図6】本発明による付加製造によって生成された部品の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以後、記述において、全ての含量は質量パーセンテージとして表される。
【0047】
本発明による合金は、質量で以下の組成を有する:
16.5%≦Cr≦25.0%
11.0%≦Mo≦18.0%
2.0%≦W≦7.0%
Fe≦1.0%
Mo+W≦-0.5×(Cr+Fe)+30%
Mo+W≧-0.5×(Cr+Fe)+25%
Ti+Ta≦0.80%
0.01%≦Si≦0.75%
0.01%≦Al≦0.35%
0.01%≦Mn≦0.35%
Ca≦0.005%
Mg≦0.005%
Nb≦0.01%
0.001%≦C≦0.05%
0.001%≦N≦0.05%
S≦0.003%
P≦0.005%
必要に応じて0.0010%≦希土類≦0.015%
を有し、ケイ素含量が、0.0010%から0.015%の間を構成する含量の希土類の存在下、0.25%未満又はそれに等しく、
残りが、ニッケル、又は製造から生じる回避できない不純物であり、そのニッケル含量が54%よりも多く又はそれに等しい。
【0048】
製造から生じる回避できない不純物は、合金を作製するのに使用される原材料中に存在する又は合金を作製するのに使用される設備から、例えば炉の耐火物から来る元素を指す。そのような残留元素は、合金に対して冶金効果がない。
【0049】
合金中、54質量%よりも大きい又はそれに等しいニッケル含量は、母材の良好な展延性及び応力腐食に対する良好な耐性を提供する。
【0050】
16.5%から25.0質量%の間を構成する含量で、クロムは、一般化された腐食に対して良好な耐性を提供し、合金の機械的性質を改善する。より詳細には、本発明者等は、クロム含量が16.5質量%未満であるときに、一般化された腐食に対する耐性が不十分であることを見い出した。更に、25.0質量%よりも高いクロム含量は、展延性の損失及び高温亀裂に対して増大する感受性に関連するσ相の沈殿をもたらし、したがって合金の劣化した機械的性質をもたらす。
【0051】
好ましくは、クロム含量は、17.0%よりも大きく又は等しく、且つ23.0%未満又はそれに等しい。
【0052】
11.0%から18.0質量%の間を構成する含量で存在する場合、モリブデンは、局部腐食に対する耐性を改善する。
【0053】
更にモリブデンは、機械的性質をかなり改善する。本発明者等は、11.0質量%未満のモリブデン含量に関し、局部腐食に対する耐性及び機械的性質が不十分であり、それに対して18%よりも高いモリブデン含量は、望ましくない相の沈殿をもたらし、その結果、展延性の損失及び高温亀裂に対して増大した感受性をもたらすことを見い出した。
【0054】
好ましくは、モリブデン含量は、11.5%よりも大きく又は等しく、且つ16.5%未満又はそれに等しい。
【0055】
タングステン含量は、2.0%から7.0質量%の間である。そのような含量で存在する場合、タングステンは、局部腐食に対する耐性も改善する。更にタングステンは、機械的性質を改善する。本発明者等は、2.0%未満のタングステン含量では、局部腐食に対する耐性が不十分であることを見い出した。更に、7.0%よりも高いタングステン含量は、望ましくない相の沈殿をもたらし、その結果、展延性の損失及び高温亀裂に対して増大した感受性をもたらす。
【0056】
鉄含量は、1.0質量%未満又はそれに等しい。鉄の添加は、一般化された腐食に対する耐性を劣化させる。1.0質量%未満又はそれに等しい鉄含量は、残留鉄分を含有するスクラップ材料から合金を生成させ、その結果、製造コストが削減される。1.0質量%よりも高い含量では、鉄は、望ましくない相の沈殿も増強し、その結果、展延性の損失及び高温亀裂に対して増大した感受性をもたらす。
【0057】
好ましくは、鉄含量は0.5質量%未満又はそれに等しい。
【0058】
チタン及びタンタル含量の合計は、0.80質量%未満又はそれに等しい。特許請求の範囲に記載されるレベルで存在するチタン及びタンタルは、機械的性質を大幅に改善するが、Ni-Cr合金におけるその低い溶解度は、望ましくない相の沈殿を発生させる。したがって、これらの元素の含量は、低い含量に限定されなければならない。しかしながらこれらの元素は、製造中の合金の脱酸化に寄与する。本発明者等は、Ti+Taが0.80質量%よりも大きいとき、望ましくない相の沈殿が観察され、その結果、展延性の損失及び高温亀裂に対して増大した感受性をもたらすことを見い出した。
【0059】
本発明によれば、Mo+W≦-0.5×(Cr+Fe)+30質量%である。本発明者等は、上記関係を満足させることで、特に破壊エネルギーKCV≧100J/cmによって表される満足のいく展延性、並びに20mm未満又はそれに等しい全亀裂長さによって表される良好な溶接可能性を、得ることに繋がることを観察した。
【0060】
破壊エネルギーKCVは、J/cmを単位として表される。破壊エネルギーKCVは、部品の弾性を反映する。例えば、規格NF EN ISO 148-1(2011年1月)に従い室温で実施される弾性試験によって決定される。
【0061】
亀裂長さは、特に、欧州規格FD CEN ISO/TR 17641-3(2005年11月)によるVarestraint試験によって、3.2%の塑性変形の下で決定される。
【0062】
更に、Mo+W≧-0.5×(Cr+Fe)+25質量%である。本発明者等は、上記関係を満足させることにより、満足のいく機械的強度、特に500MPaよりも大きい又はそれに等しい降伏強度Rp0.2を得ることに繋がることを見い出した。
【0063】
前述のレベルで、合金製造中に、ケイ素及びアルミニウムは脱酸化を増強し、マンガンは脱硫化を増強する。
【0064】
合金中のカルシウム及びマグネシウム含量は、溶接可能性を劣化させないように、それぞれ0.005質量%に制限される。より詳細には、カルシウム及びマグネシウム含量は、溶接の継ぎ目の品質、特にアークで及び液体浴で不安定性をもたらす表面でのスラグの形成を劣化させないように制限される。
【0065】
ニオブ含量は、0.01質量%未満又はそれに等しい。合金中のニオブ含量は、高温亀裂に対する耐性を劣化させないように制限される。特に、ニオブは樹脂状晶間空間内で強力に偏析され、望ましくない相の沈殿を増強する。
【0066】
合金は更に、0.001から0.05質量%の間を構成する含量で炭素及び窒素を含有する。炭素は、合金製造中の脱酸化を容易にするために制御される。更に炭素及び窒素は、チタンの添加に関連する場合にTi-(C,N)炭窒化物の沈殿によるミクロ構造の精製も確実にする。
【0067】
高温亀裂に対する耐性を改善するため、S及びP含量は可能な限り制限される。前記含量は、それぞれ、上述の合金中で0.003質量%及び0.005質量%未満又はそれに等しい。
【0068】
必要に応じて、合金は、0.0010から0.015質量%の間を構成する含量で希土類を含む。希土類は、硫黄及び残留酸素を捕獲する。希土類は、溶加線よりも高い残留S+O含量を含有する卑金属を溶接するとき、高温亀裂に対する耐性を改善する。しかしながら0.015%よりも多い含量では、低融点で共晶相の沈殿が、特にケイ素の存在下で増強され、その結果、展延性の損失及び高温亀裂に対して増大した感受性がもたらされる。
【0069】
希土類は、好ましくはイットリウム、セリウム、及びランタンから、又は前記元素の混合物から選択される。
【0070】
一実施例によれば、希土類はイットリウムからなる。そのような場合、合金は、0.0010から0.015質量%の間のイットリウムを含む。
【0071】
一変形例によれば、希土類は、セリウム及びランタンの混合物からなる。そのような場合、合金中のCe+Laの含量は、0.0010から0.015質量%の間を構成する。
【0072】
0.0010から0.015質量%の間を構成する含量での希土類の存在下、ケイ素含量は0.25質量%に、好ましくは0.20質量%に制限される。したがってそのような場合、ケイ素含量は、0.01から0.25質量%の間、好ましくは0.01から0.20質量%の間を構成する。事実、ケイ素は、希土類を含有する相の形成を増強し、その結果、希土類が残留硫黄及び酸素を捕獲する可能性が低減する。
【0073】
本発明による合金は、500MPaから600MPaの間を構成する降伏強度Rp0.2及び100J/cmよりも大きい又はそれに等しいKCV弾性を有し、X56、X60、X65、又はX70鋼で作製されたベース材料と比較して機械的性質のオーバーマッチを示す展延性の溶接部を得るために、使用することができる。
【0074】
上述のように、鋼グレードX56、X60、X65、X70、又はX80は、アメリカ石油協会のAPI仕様5L文書、第45版、2012年12月に定められている。
【0075】
更に、本発明による合金は、
- 腐食に対する良好な耐性、特に比較例のInconel(登録商標)625合金の耐性よりも大きい又はそれに等しい局部腐食に対する耐性、
- 比較例のInconel(登録商標)625合金の溶接可能性よりも大きい又はそれに等しい溶接可能性
を有する。
【0076】
それによって、縦方向及び/又はオービタル溶接の特徴は、500MPaよりも大きい又はそれに等しい降伏強度Rp0.2及び100J/cmよりも大きい又はそれに等しいKCV弾性を有するように設計された、及び特にX56、X60、X65、及びX70鋼をベース材料として含む、溶接済み接合部の設計に関して無視できる。
【0077】
したがってその性質を考慮して、本発明による合金は、油又はガスの輸送が意図される並びに公海の深海で、特に約3,000mよりも低い深さで高い生成速度、特に2km/日程度で敷設するのに適切な、パイプラインチューブを製造するための溶加材料としての使用に特に適している。
【0078】
したがってそのような合金は、X56、X60、X65、又はX70鋼で作製された並びにかなりの深さ、例えば3,000mよりも低い深さ及び高い敷設速度で敷設することが意図される、パイプラインチューブの縦方向及び/又はオービタル溶接のための溶加材料として有利に使用することができる。
【0079】
腐食に対する耐性の良好な性質が得られたので、合金は、そのようなチューブの腐食に対する耐性を改善することが意図される内部コーティングを生成するのに使用することもできる。
【0080】
本発明による合金は、当業者に公知の任意の適切な方法によって得ることができる。
【0081】
例として、第1の工程では、出発材料が電気アーク炉内に供給される。出発材料は、1.0質量%未満の鉄を含有する合金を得るように選択される。上記は特に、新材料である。次いで出発材料は、電気アーク炉で融解され、次いで真空酸素脱炭法(VOD)を、通常の方法により、
- 酸素吹込み及び真空ポンプ送出による脱炭法(数mbar程度で)、
- 石灰スラグ下での脱酸化及び脱硫化、並びに
- Ti及びAl等の還元元素の調節
を得るために実施する。
【0082】
本発明は更に、上述の組成を有する合金で作製される溶加線に関する。
【0083】
そのような溶加線は、特に、溶加線によるTIG若しくはプラズマ溶接プロセス、又はMIG/MAG溶接プロセスでの使用に適している。
【0084】
例えば溶加線は、
- ベース材料で作製された、部品の2つの部分を一緒に溶接するための溶接溶加線であって、ベース材料が特にFe-9Ni等の鉄-ニッケル合金である、即ち5%から10質量%の間を構成する含量でニッケルを、又はC-276、C-4若しくは22等のニッケル合金を、又は炭素鋼、特にX56、X60、X65、又はX70鋼を含有する、溶加線として、及び/或いは
- ベース材料で作製された、特に部品又は部品の部分でコーティングを生成するためのハードフェイシング線であって、ベース材料が炭素鋼、特にX56、X60、X65、又はX70鋼であるハードフェイシング線として
使用されることが意図される。
【0085】
合金C-276は、AWS分類参照ERNiCrMo-4(番号UNS N10276)の下、「Chemical composition requirements for Nickel and Nickel-Alloy Electrodes and Rods(ニッケル及びニッケル合金電極及び棒に関する化学組成要件)」という名称の、AWS A5.14/A5.14M: 2018 (Specification for Nickel and Nickel-Alloy bare Welding Electrodes and rods(ニッケル及びニッケル合金裸溶接電極及び棒に関する仕様))の表1に定められている。
【0086】
合金C-4は、AWS分類参照ERNiCrMo-7(番号UNS N06455)の下、「Chemical composition requirements for Nickel and Nickel-Alloy Electrodes and Rods(ニッケル及びニッケル合金電極及び棒に関する化学組成要件)」という名称の、規格AWS A5.14/A5.14M: 2018 (Specification for Nickel and Nickel-Alloy bare Welding Electrodes and rods(ニッケル及びニッケル-合金裸溶接電極及び棒に関する仕様))の表1に定められている。
【0087】
合金22は、AWS分類参照ERNiCrMo-10(番号UNS N06022)の下、「Chemical composition requirements for Nickel and Nickel-Alloy Electrodes and Rods(ニッケル及びニッケル合金電極及び棒に関する化学組成要件)」という名称の、AWS A5.14/A5.14M: 2018 (Specification for Nickel and Nickel-Alloy bare Welding Electrodes and rods(ニッケル及びニッケル-合金裸溶接電極及び棒に関する仕様))の表1に定められている。
【0088】
部品又は部品の部分は特に、ベース材料で作製された、チューブセクション、チューブ及び/又は金属シート若しくは金属シートの部分である。
【0089】
例えば溶加線は、金属付加製造プロセスにおける溶加線として使用されることも意図される。
【0090】
付加製造プロセスは、例えば、電気アーク、レーザー光線、及び/又は電子線を、溶加線を融解するためのエネルギー源として使用する付加製造プロセスである。
【0091】
付加製造プロセスは特に、指向性エネルギー堆積付加製造プロセスである。そのようなプロセス中、溶加材料は、特にノズルを介して堆積され、即座に集中熱エネルギーによって、特にレーザー光線、電子線、及び/又は電気アークによって融解される。
【0092】
例として、付加製造プロセスは、ワイヤー-アーク(WAAM又は「ワイヤーアーク付加製造」)、ワイヤー-レーザー、電子線-ワイヤー(「電子線自由形状製作」又は「電子線付加製造」)プロセス、又はワイヤー-アーク及びレーザー-粉末技術又はワイヤー-アーク及びワイヤー-レーザー技術を組み合わせた混成付加製造プロセスである。
【0093】
混成ワイヤー-アーク及びレーザー-粉末プロセスの場合、使用される粉末は、ワイヤーと同じ組成を有する。
【0094】
スクリーニング後のその粒径分布が20μmから150μmの間にあるような粉末は、例えば、本発明による溶加線から、プラズマ噴霧技術を用いて得られる。好ましくは、粉末を製造するのに使用される溶加線は、約3mmの直径を有する。
【0095】
粉末の粒径分布は、特に、下記の測定方法によって決定される。超音波振動ステンレス鋼スクリーンを用い、粉末バッチを複数の粉末サイズ分布に分離する。スクリーニングから得られる粉末のサイズ分布の分析は、ASTM B214-07規格に従い実施する。スクリーニングは、5つのサイズ分類:<20μm - 20μmから45μm - 45μmから75μm - 75μmから105μm - >105μmを得るために使用される。
【0096】
ワイヤーから粉末を製造するためのプラズマ噴霧技術は、それ自体が公知であり、したがってより詳細に記述しない。
【0097】
部品又は部品の部分は、特に、航空、輸送、又はエネルギー市場が意図される。部品又は部品の部分は、例えば、ケース、フレーム、複雑な形状のチューブ、弁、取付けラグ、又は特定の機能を有する部品の部分を形成する。例として、そのような部品の一部は、例えば支持部品上での付加製造により形成された、流体の循環用のチャネルを含む熱交換素子を形成し、この支持部品は例えば、熱交換素子の材料とは異なる材料で作製されるものである。
【0098】
本発明は更に、上述の合金で作製される溶加線を製造するための方法に関する。
【0099】
方法は、第1の工程において、前記合金で作製された半仕上げ製品の供給を含む。このために、合金は、特に連続鋳造、特に回転鋳造を用いて、インゴットに鋳造され又はビレットに直接鋳造される。したがって、そのような工程の終わりに得られた半仕上げ製品は、有利にはインゴット又はビレットであり、例えば130から230mmの間を構成する、より詳細には約150mmに等しい直径を有する。
【0100】
次いで半仕上げ製品を、中間体ワイヤーを形成するように、高温変換によって変換する。
【0101】
特に、高温変換工程中、半仕上げ製品、即ち特にインゴット又はビレットは、特にガス炉で1180℃から1220℃の間を構成する温度に加熱される。
【0102】
次いでそれらを、例えば辺が約100mmから200mmの正方形の断面を半仕上げ製品に与えることによってその断面を低減させるため、高温粗面化に供する。断面が低減した半仕上げ製品が、それによって得られる。断面が低減した半仕上げ製品の長さは、特に10メートルから20メートルの間を構成する。
【0103】
次いで断面が低減した半仕上げ製品を、中間体ワイヤーを得るために、再び1050から1150℃の間を構成する温度で高温変換に供する。中間体ワイヤーは、特に、マシンワイヤーである。ワイヤーは、例えば5mmから21mmの間を構成する、特に5.5mmのほぼ等しい直径を有する。有利には、そのような工程中、中間体ワイヤーは、ワイヤーミルトレインでの熱間圧延によって生成される。
【0104】
次いで必要に応じて、1150℃から1220℃の間を構成する温度で60分から120分の間を構成する時間の長さにわたるガス炉での熱処理後、中間体ワイヤーをプール内でのハイパークエンチ処理に供する。
【0105】
次いで中間体ワイヤーを酸で洗い、次いでコイルに巻く。
【0106】
必要に応じて、溶加線を得るために、そのように得られた中間体ワイヤーを、公知のタイプのワイヤー延伸設備を用いて引き出す。溶加線は、出発ワイヤーの直径よりも小さい直径を有する。その直径は、特に0.5mmから3.5mmの間を構成する。その直径は、有利には0.8mmから2.4mmの間を構成する。
【0107】
ワイヤー延伸工程は、到達する最終直径に応じて、1つ又は複数のワイヤー延伸パスを含み、好ましくは2つの連続するワイヤー延伸パスの間でアニールが行われる。アニールは、例えば、1150℃程度の温度の還元雰囲気下で通過する間に実施される。
【0108】
ワイヤー延伸工程は、好ましくは、その後、延伸されたワイヤーの表面の清浄化、次いでワイヤーの巻取りが続く。
【0109】
ワイヤー延伸パスは、冷間パスである。
【0110】
本発明による合金を製造する、及び当業者に公知の合金で作製された完成品を製造する任意のその他の方法を、この目的のため使用することができる。
【0111】
本発明は更に、上述の溶加線から得られた溶接ビーズ5により一緒に接合された、卑金属で作製された、部品3の少なくとも2つの部分を含む、溶接済みアセンブリ1に関する。上述の溶接済みアセンブリは、図1に概略的に示される。
【0112】
溶接中のワイヤーの希釈度は、例えば1%から10%の間を構成し、特に5%にほぼ等しい。
【0113】
テキストの全体を通して、一緒に溶接された「部品の部分」は、一緒に溶接された部品が最初は2つに分離した部品に属する場合、及び部品がそれ自体の上に折り畳まれた同じ部品の2つの部品である場合、例えばチューブを形成するよう溶接された板金の縦方向の2つの縁である場合の、両方を指す。
【0114】
卑金属は、特に、X56、X60、X65、若しくはX70鋼等の炭素鋼、又はFe-9%Ni等の鉄-ニッケル合金、即ち5から10質量%の間を構成するニッケル含量を有するもの、又はC-276、C-4若しくは22等のニッケル合金である。
【0115】
本発明は更に、図1に例示される溶接済みアセンブリ5を生成するように、上記にて定められた卑金属で作製された、部品3の少なくとも2つの部分を一緒に溶接するための溶接方法に関する。
【0116】
第1の工程では、上述の溶加線が提供される。溶接プロセスにより一緒に溶接される卑金属で作製された部品12の部分も提供される。
【0117】
次いで部品12の部分を、溶接溶加線として溶加線を使用して一緒に溶接する。そのような工程中、突合せ溶接が好ましくは実施される。
【0118】
溶接工程は、1つ又は複数の溶接パスを含むことができる。従来、溶接工程は、ルートパスと呼ばれる第1の溶接パス、及びその後の、溶加パスと呼ばれる追加の溶接パスの1つ又は複数を含む。全ての溶接パスは、上述の本発明による溶加線を使用することによって実施される。したがって溶加線の希釈は、溶接から得られた融解卑金属による希釈に限定される。
【0119】
溶接中のワイヤーの希釈度は、例えば1%から10%の間を構成し、特に5%にほぼ等しい。
【0120】
溶接は、例えばアーク溶接によって、例えば溶加線を用いたプラズマ溶接によって、MIG(金属不活性ガス)溶接によって、又はMIG/MAG(金属活性ガス)溶接によって行われる。
【0121】
一実施形態によれば、図2に示されるように、溶接済みアセンブリ1は、チューブの形に折り畳まれた板金9を含むチューブセクション7であり、その縦方向の縁12は、上記にて定められた溶加線から得られた溶接ビーズ15によって一緒に接合される。そのような場合、部品3の部分は、板金9の縦方向の縁12を含む。
【0122】
チューブセクション5の壁は、例えば、3mmから60mmの間を構成する厚さを有する。
【0123】
チューブセクション5は特に、腐食性製品、より詳細にはガス又は油を輸送することが意図される。より詳細には、パイプラインの部品を形成すること、特に海底に、より詳細には3,000m程度の深さに至る深さで敷設することが意図される。
【0124】
本発明の更なる対象は、そのようなチューブセクション5に関する製造方法である。
【0125】
方法は、卑金属で作製された板金9を提供する工程を含む。そのような板金9を、図3に示す。板金9は、縦方向Lに沿って延び、縦方向Lに実質的に並行な縦方向の縁12を有する。例えば板金は、3mmから60mmの間を構成する厚さを有する。
【0126】
方法は更に、2つの縦方向の縁12が互いに面するように板金9を折り畳むことにある工程と、その後、上記にて定められた溶接方法を使用して、2つの縦方向の縁12を互いに面するように溶接することにある工程を含む。そのような場合、溶接プロセスの文脈で記述される部品3の部分は、板金9の縦方向の縁12を含む。
【0127】
そのような工程中に生成された溶接部は、縦方向の溶接部である。好ましくは溶接部は、突合せ溶接部である。
【0128】
そのようなプロセスの終わりに、図2に示されるようにチューブセクション7が得られる。板金9はチューブの形状に折り畳まれ、板金9の縦方向の縁12は、上記にて定められた溶加線から得られる溶接ビーズ15によって一緒に接合される。
【0129】
別の実施形態によれば、図4に示されるように、溶接済みアセンブリはチューブ20であり、部品3の部分は、上記にて定められた溶加線から得られた溶接ビーズ22によって一緒に接続されたチューブセクション7である。そのような実施形態では、溶接ビーズ22は、チューブセクション7を一緒に連結させるようにチューブ20の円周に沿って延びる。
【0130】
溶接部は特に、突合せ溶接部であり、好ましくはオービタル溶接部である。オービタル溶接は、溶接ツール、即ち、より詳細には溶接トーチを、溶接されることになるチューブセクション7に対して回転させることによって生成された溶接部を指す。
【0131】
壁20は例えば、3mmから60mmの間を構成する厚さを有する。
【0132】
一実施形態によれば、チューブセクション7は、上述のチューブセクションである。
【0133】
変形例によれば、部品3の部分は、いかなる縦方向の溶接部も含まない且つ例えばビレット押出しによって得られるチューブセクションである。
【0134】
チューブ20は特に、腐食性製品、より詳細にはガス又は油を輸送することが意図される。より詳細には、パイプラインの部品を形成すること、特に海底で、より詳細には3,000m程度の深さに至る深さで敷設することが意図される。
【0135】
それによって、本発明の更なる対象は、上記にて定められたチューブ20に関する製造方法である。
【0136】
そのようなプロセス中、少なくとも2つのチューブセクション7が提供される。各チューブセクション5は、実質的に円筒状であり、軸Mと、軸Mの方向に沿って間隔を空けて設けられた2つの縦方向の端部24を有する。
【0137】
次いで2つのチューブセクション7を、その縦方向の端部24がチューブセクションの軸Mの方向に沿って互いに面するように配置構成される手法で位置決めし、次いで2つのチューブセクション7に面する縦方向の端部24を、上記にて定められた溶接方法を用いて一緒に溶接する。そのような場合、溶接プロセスの文脈で定められる部品3の部分は、チューブセクション7の縦方向の端部24を含む。
【0138】
有利には、そのような工程中、突合せ溶接部が、チューブセクション7に面する縦方向の端部24の間に生成される。溶接部は、好ましくはオービタル溶接部である。
【0139】
好ましくは溶接工程は、チューブセクション7を一緒に接合する前に、一緒に溶接されることになるチューブセクション7の端部24に面取りを機械加工する工程を含む。
【0140】
溶接工程は、チューブ20を形成するよう溶接されることになるチューブセクション7の数から1を差し引いた値に等しいいくつかの回数で実施される。
【0141】
一実施形態では、チューブセクション7は、上述のチューブセクション7である。
【0142】
変形例において、方法は、チューブセクションを得る方法がどのようなものであっても、その縦方向の端部が卑金属で作製された任意のタイプのチューブセクションで実施することができる。より詳細には、方法は、縦方向の溶接部を含まない、及びより詳細にはビレット押出しによって得られる、チューブセクションで実施される。
【0143】
方法は、より詳細には、例えばチューブ20が設置される場所に据えられた艀上で実施される。
【0144】
溶接工程の終わりに、チューブ20が得られる。チューブ20は、上記にて定められた溶加線から生成された溶接ビーズ22によって一緒に組み立てられた、少なくとも2つの連続するチューブセクション7を含む。
【0145】
本発明は更に、上述の合金で作製されたコーティング30によりコーティングされたベース材料で作製された基材28を含む、図5に示されるコーティング付き部品26に関する。ベース材料は、金属材料である。
【0146】
ベース材料は、特に炭素鋼である。好ましくは、ベース材料はX56、X60、又はX65、又はX70鋼である。
【0147】
コーティング30は、より詳細には、上述の組成を有する溶加線を用いて溶接することによる硬質表面化のプロセスによって、基材28に適用される。
【0148】
コーティング30は、より詳細には、2mmから20mmの間を構成する厚さを有する。
【0149】
そのようなコーティング30は、コーティング付き部品26の腐食に対する、より詳細には石油製品等の腐食性製品の存在下で、耐性を改善する。
【0150】
コーティング付き部品26は、特に、コーティング付きチューブセクション7であり、コーティング30がチューブセクション7の内壁に形成され、特に存在する場合には溶接ビーズ12を含むその全表面にわたってチューブセクション7の内壁を覆う。
【0151】
本発明は更に、上述のコーティング付き部品26を生成するための方法であって、ベース材料で作製された基材28を提供する工程と、その後の、上述の組成を有する溶加線を使用した溶接硬質表面化プロセスによって基材の表面にコーティング30を付着させる工程とを含む、方法に関する。
【0152】
コーティング付き部品26がコーティング付きチューブ7のセクションである場合、製造方法は、より詳細には、上述の方法を実現することによってチューブセクション7を製造する工程と、その後の、上述の組成を有する溶加線を使用した溶接による硬質表面化のプロセスによってチューブセクション7の内面にコーティング30を付着する工程とを含む。
【0153】
コーティング30は、例えば変化し易い腐食性石油製品の輸送中の、チューブセクション7の腐食に対する耐性を改善する。
【0154】
特定の実施形態によれば、上述のチューブ20は、溶接ビーズ22により一緒に接合される、上述のコーティング30でコーティングされた2つのチューブセクション7を含む。
【0155】
本発明は更に、上述の合金で作製された図6に概略的に示される部品40を製造するための方法であって、
- 合金で作製された溶加線を供給する工程と、
- 溶加材料として、上述の合金で作製された溶加線及び/又は上述の合金で作製された粉末を使用する、金属付加製造プロセスによって、部品40を製造する工程と
を含む、方法に関する。
【0156】
付加製造プロセスは例えば、電気アーク、レーザー光線、及び/又は電子線を、溶加材料を融解させるためのエネルギー源として使用する、付加製造プロセスである。
【0157】
付加製造プロセスは、特に、指向性エネルギー堆積付加製造プロセスである。そのようなプロセス中、溶加材料は、特にノズルを介して堆積され、即座に集中熱エネルギーによって、特にレーザー光線、電子線、及び/又は電気アークによって融解される。
【0158】
例として、付加製造プロセスは、ワイヤー-アーク、ワイヤー-レーザー、電子線-ワイヤー(「電子線自由形状製作」)プロセス、又はワイヤー-アーク及びレーザー-粉末技術又はワイヤー-アーク及びワイヤー-レーザーを組み合わせた混成付加製造プロセスである。
【0159】
ワイヤー-アーク及びレーザー-粉末技術又はワイヤー-アーク及びワイヤー-レーザー技術を組み合わせた混成付加製造プロセスが使用される場合、粉末及び溶加線は、上述の合金から作製される。
【0160】
上述の付加製造プロセスは、それ自体が公知であり、したがって詳細に記述しない。
【0161】
溶加材料が、特に混成ワイヤー-アーク及びレーザー-粉末プロセスの文脈において粉末を含む場合、プロセスは更に、部品40の製造前に、上述の合金で作製された粉末を供給する工程を含む。スクリーニング後のその粒径分布が20μmから150μmの間である粉末は、例えば、上述の合金で作製されたワイヤー、より詳細には約3mmの直径を有するワイヤーからのプラズマ噴霧によって製造される。
【0162】
プラズマ噴霧プロセスは、それ自体が公知であり、したがって詳細に記述しない。
【0163】
本発明は、金属付加製造によって生成された、上述の合金で作製された部品40又は部品の部分にも関する。
【0164】
金属付加製造プロセスは、より詳細には、溶加材料として、上述の合金で作製された溶加線及び/又は上述の合金で作製された粉末を使用する。
【0165】
付加製造プロセスは、例えば電気アーク、レーザー光線、及び/又は電子線を、溶加材料を融解させるためのエネルギー源として使用する付加製造プロセスである。
【0166】
付加製造プロセスは、特に、指向性エネルギー堆積付加製造プロセスである。そのようなプロセス中、溶加材料は、特にノズルを介して堆積され、即座に集中熱エネルギーによって、特にレーザー光線、電子線、及び/又は電気アークによって融解される。
【0167】
例として、付加製造プロセスは、ワイヤー-アーク、ワイヤー-レーザー、電子線-ワイヤー(「電子線自由形状製作」)プロセス、又はワイヤー-アーク及びレーザー-粉末技術又はワイヤー-アーク及びワイヤー-レーザーを組み合わせた混成付加製造プロセスである。
【0168】
ワイヤー-アーク及びレーザー-粉末技術又はワイヤー-アーク及びワイヤー-レーザー技術を組み合わせた混成付加製造プロセスが使用される場合、粉末及び溶加線は、上述の合金から作製される。
【0169】
部品40等、金属付加製造プロセスによって得られた部品又は部品の部分は、凝固されたままである。したがって部品又は部品の部分は、考えられるニッケル合金に典型的な凝固ミクロ構造を有し、そのようなミクロ構造は典型的には、互いの上にエピタキシャル成長する柱状デンドライトを含み、且つその配向は、生成される金属壁の幅に依存する。更に、付加製造プロセスによって得られた部品は、その付加製造プロセスにより、重なり合った一連の凝固層を有する。堆積された融解金属の液滴の凝固によって得られた各層は、冶金的な連続性を発生させるために、先行する層のスキンを融解し、引き続き、下方の層の残りを加熱する。再加熱温度は、問題となっている層が、融解及び凝固を受けるゾーンから離れているので、全て低くなる。そのような特定のミクロ構造は、部品の金属組織学的セクションの金属組織学的観察によって観察することができる。
【0170】
したがって、金属付加製造プロセスにより生成された部品40又は部品の部分は、その他の方法により生成された部品と区別することができ、特に均質な粒をもつ再結晶化構造を生成する従来の冶金学によって生成された部品と区別することができる。
【0171】
部品40又は部品の部分は、特に、航空、輸送、又はエネルギー市場が意図される。部品又は部品の部分は例えば、ケース、フレーム、複雑な形状を持つチューブ、弁、取付けラグ、又は特定の機能を有する部品の部分を形成する。例として、そのような部品の一部は、例えば支持部品上での付加製造により形成された、流体の循環用のチャネルを含む熱交換素子を形成し、この支持部品は例えば、熱交換素子の材料とは異なる材料で作製されるものである。
【0172】
試験
第1の一連の試験では、本発明者等は、上記にて定められた組成を有する合金、並びに上述の組成とは異なる組成を有する比較用の合金を有するインゴットを生成するために、実験室での鋳造を実施した。
【0173】
合金は真空下で生成し、そのように生成されたインゴットは、寸法が10×50×300mmであるシート棒を得るために熱間圧延によって変換した。
【0174】
試験をしたシート棒のそれぞれの合金組成を、以下のTable 1(表2)に示す。
【0175】
次いで本発明者等は、そのように生成されたシート棒に対して下記の試験を実施した。
【0176】
シート棒のいくつかにおいて、本発明者等は、非希釈条件下、TIG又はMIG溶接により生成された構造と同等のシート棒の厚さで凝固構造を発生させるために、TIGトーチを用いて前後に接合融着ラインを生成し、融解領域から引張り及び弾性試験片をサンプル採取した。
【0177】
次いで本発明者等は、下記を実施した:
- 規格NF EN ISO 6892-1(2019年12月)に従う上述の引張り試験片に関して20℃で0.2%の伸び率Rp0.2での降伏強度を測定するための、室温(20℃)での機械的平坦引張り試験。試験の結果を、以下のTable 2(表3)の「Rp0.2」欄にまとめる。
- 規格NF EN ISO 148-1(2011年1月)に従う衝撃破壊エネルギー(KCVと示す)の測定と共に、上述の弾性試験片に関する室温(20℃)での弾性試験。破壊エネルギーは、J/cmを単位として表される。破壊エネルギーは、部品の弾性を反映する。試験の結果を、以下のTable 2(表3)の「KCV」欄にまとめる。
【0178】
本発明者等は、シート棒の融解ゾーンにおいて、TIGトーチの通過の下で融解金属の凝固中に沈殿した相の表面割合も測定する。沈殿した相の表面割合は、走査型電子顕微鏡(SEM)で得られたシート棒の画像に関する画像解析によって決定される。事実、沈殿相は、画像の白色領域に該当し、グレースケール解析を用いて白色領域を検出し次いで白色領域により占有された表面割合を決定する、画像処理ソフトウェアによって検出される。測定の結果を、以下のTable 2(表3)の「FS」欄にまとめる。
【0179】
本発明者等は、接合融着ラインに供されていないシート棒に関し、試験中に発生した亀裂の全長の測定と共に高温亀裂に対するその耐性を評価するために、3.2%の塑性変形の下、欧州規格FD CEN ISO/TR 17641-3(2005年11月)によるVarestraint試験も実施した。試験の結果を、以下のTable 2(表3)の「L合計亀裂」にまとめる。
【0180】
最後に本発明者等は、局部腐食に対する合金の耐性を試験するため、電位差滴定試験を実施した。このために本発明者等は、pH 5.4及び温度30℃で、11.9mol.l-1でのLiCl媒体における孔食電位Vを測定し、その孔食電位を、Inconel(登録商標)625の孔食電位(VInconel 625/SCE<120mV)と比較し、ここでSCEは、飽和カロメル電極に対する参照電位である。
【0181】
以下のTable 1(表2)及びTable 2(表3)では、本発明によらない試験について下線が引いてある。
【0182】
【表2A】
【0183】
【表2B】
【0184】
Table 1(表2)の合金において、Al含量は0.01から0.35%の間であり、N含量は0.001から0.05%の間を構成し、Mg及びCa含量は0.005%未満又はそれに等しく、P含量は0.005%未満又はそれに等しい。更に、合金はニオブを含有しない。
【0185】
Table 1(表2)の合金に関し、残りはニッケル並びに製造から生じる不純物である。
【0186】
更に、全ての組成は、質量パーセンテージとして示される。
【0187】
【表3A】
【0188】
【表3B】
【0189】
更に、電位差滴定試験中、Table 1(表2)の合金A1からA28は、150mVよりも大きい又はそれに等しい、飽和カロメル電極に対する参照電位に対しての孔食電位Vを発生させた。したがって合金は、Inconel(登録商標)625合金よりも、局所腐食に対して良好な耐性を有する。
【0190】
上述のように、好ましくは、下記の性質:
- 500MPaよりも大きい又はそれに等しい降伏強度Rp0.2
- 100J/cmよりも大きい又はそれに等しいKCV弾性、
- 20mm未満又はそれに等しい亀裂の全長、
- 1.5%未満又はそれに等しい沈殿相FSの表面割合、
- Inconel(登録商標)625合金の耐性よりも大きい又はそれに等しい、局所腐食に対する耐性
が、組み合わされて求められる。
【0191】
上記パラメーターの中で、全亀裂長は、合金の溶接可能性を表す。Inconel(登録商標)625合金に関する全亀裂長は20mmに等しいので、20mm未満又はそれに等しい全亀裂長は、Inconel(登録商標)625合金の溶接可能性よりも大きい又はそれに等しい溶接可能性に相当し、したがって考慮される適用例に対して満足のいくものである。
【0192】
そのような性質は、実施例A2からA4、A8からA11、A14からA16、A19からA21、A25及びA26の場合に得られ、これらは上述の組成を有する合金に該当する。
【0193】
一方、降伏強度Rp0.2は、比較例A1、A7、A18、A24の場合に500MPa未満又はそれに等しいが、KCV弾性は不十分であり、及び/又は亀裂長は、比較例A5、A6、A12、A13、A17、A22、A23、A27、A28の場合に長過ぎる。反例の文脈において、関係式-0.5×(Cr+Fe)+25%≦Mo+W≦-0.5×(Cr+Fe)+30%は満たされないことに留意されたい。
【0194】
更に、比較例A6、A13、A17、A23、及びA28により示されるように、1.0%よりも大きい含量で鉄を含有する合金は、劣化した展延性、及び高温亀裂に対して増大した感受性を示す。
【0195】
一般に本発明者等は、1.5%よりも大きい沈殿相FSの表面割合が、100J/cm未満のKCV弾性及び/又は20mmよりも大きい亀裂長をもたらすことを見い出した。
【0196】
本発明者等は、第1の一連の試験に関して述べたものと同じであるがシート棒はTable 3(表4)にまとめた組成を有する合金で作製されたものである条件下で、第2の一連の試験も実施した。更に、シート棒に関して実施された試験の結果を、Table 4(表5)に示す。
【0197】
【表4】
【0198】
Table 3(表4)の合金において、Al含量は0.01から0.35%の間であり、N含量は0.001から0.05%の間を構成し、Mg及びCa含量は0.005%未満又はそれに等しく、P含量は0.005%未満又はそれに等しい。更に合金は、ニオブを含有しない。
【0199】
Table 3(表4)の全ての合金に関し、残りはニッケル、並びに製造から生じる不純物である。
【0200】
更に、全ての組成は、質量パーセンテージとして示される。
【0201】
【表5A】
【0202】
【表5B】
【0203】
更に、電位差滴定試験中、Table 3(表4)の合金B1からB28は、150mVよりも大きい又はそれに等しい、飽和カロメル電極に対する参照電位に対しての孔食電位Vを発生させた。したがって合金は、Inconel(登録商標)625合金よりも、局所腐食に対する良好な耐性を有する。
【0204】
したがって、降伏強度、弾性、溶接可能性、沈殿相の表面割合、及び局所腐食に対する耐性に関する所望の性質は、上述の組成を有する合金に該当する実施例B2からB4、B8からB11、B14からB16、B19からB21、B25及びB26の場合に得られることが見い出された。
【0205】
その他の結果は、Table 2(表3)から引き出された結論を確認する。
【0206】
詳細には、降伏強度Rp0.2は、比較例B1、B7、B18、B24の場合、500MPa未満又はそれに等しく、一方、KCV弾性は、比較例B5、B6、B12、B13、B17、B22、B23、B27、B28の場合に不十分である。反例の文脈において関係式-0.5×(Cr+Fe)+25%≦Mo+W≦-0.5×(Cr+Fe)+30%は満たされないことに留意されたい。
【0207】
更に、溶接可能性及び弾性は、合金が鉄を1.0%よりも多い含量で含有する場合に劣化する。
【0208】
したがって更に、Tables 2(表3)及びTable 4(表5)の結果を比較することにより、希土類の添加が、高温亀裂に対する合金の耐性を改善することがわかる。
【0209】
希土類の添加は、溶接されることになる卑金属が、溶加線よりも高い硫黄及び/又は酸素含量を有するとき、特に有利である。事実、本発明者等は、希土類が、溶接操作中に融解溜まりの脱酸化及び/又は脱硫化に寄与し、したがって高温亀裂に対する耐性の改善に寄与することを見い出した。
【0210】
本発明による合金は、500MPaよりも大きい又はそれに等しい降伏強度Rp0.2と、100J/cmよりも大きい又はそれに等しいKCV弾性を有し、これらは合金X56、X60、X65、及びX70等の500MPa未満の降伏強度Rp0.2を持つ卑金属に対する機械的性質のオーバーマッチを得るために使用することができる。したがって溶接部の特徴は、ベース材料のような合金で作製された溶接済みアセンブリの設計に関して無視することができる。
【0211】
更に、合金は、下記を提示する:
- 比較のInconel(登録商標)625合金の耐性よりも大きい又はそれに等しい腐食に対する耐性、
- 比較のInconel(登録商標)625合金の溶接可能性よりも大きい又はそれに等しい溶接可能性。
【0212】
したがってその性質を考慮して、本発明による合金は特に、油又はガスの輸送が意図される、並びに沖合いの深海、特に約3,000mに至る深さで高い生成速度、特に2km/日程度で敷設するのに適切な、パイプラインチューブを製造するための溶加材料として使用するのに適している。
【0213】
その良好な性質が与えられたことにより、本発明による合金は、上述のような部品の文脈において有利に使用することもできる。
【符号の説明】
【0214】
1 溶接済みアセンブリ
3 部品
5 溶接ビーズ
7 チューブセクション
9 板金
12 縦方向の縁
15 溶接ビーズ
20 チューブ
22 溶接ビーズ
24 縦方向の端部
26 コーティング付き部品
28 基材
30 コーティング
40 部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-06-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量で下記の組成:
16.5%≦Cr≦25.0%
11.0%≦Mo≦18.0%
2.0%≦W≦7.0%
Fe≦1.0%
Mo+W≦-0.5×(Cr+Fe)+30%
Mo+W≧-0.5×(Cr+Fe)+25%
Ti+Ta≦0.80%
0.01%≦Si≦0.75%
0.01%≦Al≦0.35%
0.01%≦Mn≦0.35%
Ca≦0.005%
Mg≦0.005%
Nb≦0.01%
0.001%≦C≦0.05%
0.001%≦N≦0.05%
S≦0.003%
P≦0.005%、
必要に応じて0.0010%≦希土類≦0.015%
を有し、ケイ素含量が、0.0010%から0.015%の間を構成する含量の希土類の存在下で0.25%未満又はそれに等しく、
残りがニッケル、及び製造から生じる回避できない不純物であり、ニッケル含量が54%よりも多く又はそれに等しい、合金。
【請求項2】
鉄含量が0.5%未満又はそれに等しい、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
希土類が、イットリウム、セリウム、及びランタン、及びこれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の合金。
【請求項4】
希土類が、イットリウム、又はセリウム及びランタンの混合物から選択される、請求項3に記載の合金。
【請求項5】
ベース材料で作製された基材(28)と、請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製されたコーティング(30)とを含むコーティング付き部品(26)であって、ベース材料が、金属材料である、コーティング付き部品。
【請求項6】
コーティング付き部品(26)がチューブセクション(7)である、請求項5に記載のコーティング付き部品。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の組成を有する合金で作製される溶加線。
【請求項8】
請求項7に記載の溶加線の製造方法であって、下記の工程:
- 請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製された半仕上げ製品を提供する工程と、
- 中間体ワイヤーを形成するために、半仕上げ製品を高温変換する工程と、
- 中間体ワイヤーを、中間体ワイヤーの場合よりも小さい直径を持つ溶加線に変換する工程であり、延伸工程を含む、工程と
を含む、製造方法。
【請求項9】
部品の少なくとも2つの部分(3;12;7)を含む溶接済みアセンブリ(1;7;20)であって、そのそれぞれがベース材料で作製され、部品の部分(3;12;7)が、請求項7に記載の溶加線から得られた溶接継ぎ目(5;15);22)によって一緒に接合されており、ベース材料が、鉄-ニッケル合金、ニッケル合金、及び炭素鋼から選択される、溶接済みアセンブリ。
【請求項10】
前記溶接済みアセンブリが、チューブの形状に曲げられた板金を含むチューブセクション(7)を形成し、その縦方向の縁(12)が、溶接ビーズ(15)により互いに接合される部品の部分(3)を形成する、請求項9に記載の溶接済みアセンブリ。
【請求項11】
チューブセクション(7)には、その内面の少なくとも一部分に、請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製されたコーティング(30)が設けられる、請求項10に記載の溶接済みアセンブリ。
【請求項12】
前記溶接済みアセンブリが、少なくとも2つのチューブセクション(7)を含むチューブ(20)を形成し、チューブセクション(7)が部品の部分(3)を形成し、溶接継ぎ目(22)がチューブ(20)の円周に沿って延びる、請求項9に記載の溶接済みアセンブリ。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一項に記載の溶接済みアセンブリ(1;7;20)を生成するための方法であって、請求項7に記載の溶加線を用いて部品の2つの部分(3;12.7)を一緒に溶接する工程を含、方法。
【請求項14】
請求項10又は11に記載の溶接済みアセンブリ(7)を生成する方法であって、溶接工程が、板金(9)の縦方向の縁(12)を一緒に溶接する工程である、方法。
【請求項15】
請求項12に記載の溶接済みアセンブリ(20)を生成する方法であって、溶接工程の前に、下記の逐次工程:
- それぞれが縦軸(M)に沿って延び且つベース材料で作製される、第1のチューブセクション(7)及び第2のチューブセクション(7)を供給する工程と、
- 第1のチューブセクション(7)の縦方向の端部(24)が、第1及び第2のチューブセクション(7)の縦軸(M)に沿って第2のチューブセクション(7)の縦方向の端部(24)に面して配置構成されるように、第1及び第2のチューブセクション(7)を位置決めする工程と
を含み、
溶接工程が、第1及び第2のチューブセクション(7)に面する2つの縦方向の端部(24)を一緒に溶接する工程である
方法。
【請求項16】
請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製される部品又は部品の部分であって、金属付加製造によって得られる、部品又は部品の部分。
【請求項17】
部品又は部品の部分を製造する方法であって、溶加材料として、請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製された溶加線、及び/又は請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製された粉末を使用して、金属付加製造プロセスにより前記部品又は部品の前記部分を製造する工程を含む、方法。
【請求項18】
請求項7に記載の溶加線の使用であって、
-ニッケル合金、ニッケル合金、又は炭素鋼であるベース材料で作製された、部品の2つの部分を一緒に溶接するための溶接溶加線としての、及び/或いは
- 金属材料であるベース材料で作製された、部品又は部品の部分上にコーティングを生成するためのハードフェイシング線としての、及び/或いは
- 金属付加製造プロセスにおける溶加線としての、
使用。
【請求項19】
請求項1から4のいずれか一項に記載の合金で作製される金属粉末。
【請求項20】
請求項19に記載の金属粉末を製造する方法であって、請求項7に記載の溶加線を提供する工程と、金属粉末を得るために、前記溶加線をプラズマ噴霧する工程とを含む、方法。
【国際調査報告】