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特表2023-553277粒子を分類するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】粒子を分類するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20231214BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20231214BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20231214BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20231214BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G01N15/14 K
C12M1/34 B ZNA
B01J19/00 B
G01N37/00 101
G01N35/08 A
G01N15/14 D
G01N15/14 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023530741
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2021083518
(87)【国際公開番号】W WO2022117547
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】PA202001365
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA202100916
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521325307
【氏名又は名称】サンプリックス エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ジャスト ミケルセン,マリー
(72)【発明者】
【氏名】クビスト,トマス
(72)【発明者】
【氏名】シェリー,ソレーヌ
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
4G075
【Fターム(参考)】
2G058DA07
2G058GA06
4B029AA07
4B029BB11
4G075AA13
4G075AA39
4G075AA61
4G075AA65
4G075BB05
4G075BD01
4G075CA05
4G075DA02
4G075EB50
4G075FA01
(57)【要約】
本発明は、光学的に検出されうる特性によって、粒子を分類するためのシステムに関連する。システムは、粒子を分類することができるマイクロ流体装置と、マイクロ流体装置を通して流体を駆動しおよび粒子により発せられる光信号に応答して分類事象を起こす器具とを、備える。本発明はまた、既知のヌクレオチド配列要素を含むヌクレオチド断片を、濃縮または単離するための方法に関連し、および複数のマイクロ流体装置と、エマルジョン液滴を分類するためにマイクロ流体装置と共に使用するように構成される複数の流体とを、備えるキットに関連する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体媒体内の粒子を分類するためのシステムであって:
少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを備えるカートリッジ;
ここで前記ユニットは、
(i)分類ジャンクションに試料流体を供給するための、少なくとも1の試料供給導管[1];
前記試料流体は、分類されるべき陽性および陰性粒子の混合物を含む;
(ii)前記分類ジャンクションから陽性粒子を含む流体を取り除くための、少なくとも1のマイクロ流体分類済み陽性粒子導管[4]、
(iii)前記分類ジャンクションから陰性粒子を含む廃棄物流体を取り除くための、少なくとも1のマイクロ流体廃棄物導管[5]、
および
(iv)前記分類ジャンクションに押出流体を供給するための、少なくとも1の押出流体導管[3]
を備え;
前記分類ユニットは、少なくとも4つのマイクロ流体導管(i)、(ii)、(iii)および(iv)が、前記分類ジャンクション[2]で会合することを特徴とし;
前記カートリッジは、前記分類ジャンクションの上流の前記試料供給導管(i)内の陽性粒子を検出するための、少なくとも1の検出ゾーンをさらに備え;
および
前記分類ジャンクションの上流の前記供給導管内の陽性粒子を検出するのに応答して、前記少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを通る流体の流れを制御し、および前記試料供給導管内の粒子の流速を統御する器具
を備える
システム。
【請求項2】
請求項1に記載されたシステムであって、
前記少なくとも1のマイクロ流体分類ユニット[9]は、
(v)分類されるべき前記粒子を含む前記試料流体内にスペーサ流体を供給するために、前記試料供給導管[1]内において前記分類ジャンクション[2]の上流に配置される、スペーサ流体導管[11]およびスペーサ流体ジャンクション[10]
をさらに備える
システム。
【請求項3】
請求項2に記載されたシステムであって、
少なくとも2つの別々の検出ゾーンを備え;
上流検出ゾーン[12]は、粒子を前記スペーサ流体ジャンクション[10]に達する前に検出するために、前記スペーサ流体ジャンクション[10]の上流に配置され、
および
下流検出ゾーン[13]は、陽性粒子を前記分類ジャンクション[2]に入る前に検出するために、スペーサ流体入口の下流に配置される;
システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記カートリッジは、前記試料流体、前記廃棄物流体、および分類済み陽性粒子流体を含む、前記分類を達成するために必要な流体の全体積を収容できる、流体のための1組のウェル(well)または容器を備える
システム。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記分類ジャンクションの上流で陽性粒子を検出するのに応答して、スペーサ流体入口[18]に空気圧を作用させることによって、分類事象を誘発するための手段を備える
システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記分類ジャンクションの上流で陽性粒子を検出した後、1秒以下の間一時的に、前記試料供給導管内の粒子の流速を減少させるための手段を備える
システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記粒子が液滴または細胞である
システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記押出流体および前記スペーサ流体の両方が、水性流体である
システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記分類済み陽性粒子導管[4]および前記廃棄物導管[5]に可変の負圧を加えるための手段を備える
システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記カートリッジは、2以上の分類レーンを備え、
および
前記2以上の分類レーンは、対で構成される
システム。
【請求項11】
請求項10に記載されたシステムであって、
前記少なくとも1の検出ゾーンは、分類レーン対の少なくとも2つの別々の粒子供給導管の部分を備える
システム。
【請求項12】
請求項10または11のいずれか一項に記載されたシステムであって、
分類レーンの各対は、上流検出ゾーン[12]および下流検出ゾーン[13]を備える
システム。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記器具は、前記上流検出ゾーンで、分類レーン対の2つの別々の液滴試料供給導管からの信号を検出し、
および
前記2つの試料供給導管の各々は、検出ループを備え、および前記2つの検出ループは、異なる長さである
システム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記下流検出ゾーンは、正しい分類が行われたかどうかを前記器具が検出できるように設計される
システム。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記2以上の分類レーンは、同じ圧力供給源に空気圧的に接続される
システム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記器具は、前記カートリッジにフィットし、前記カートリッジを通る前記流体を制御しおよび駆動するように設計されているのに加え、シングルエマルジョン液滴を生成するように作られたカートリッジ、およびダブルエマルジョン液滴を生成するように作られたカートリッジを通る前記流体にフィットし、制御しおよび駆動するようにも設計される
システム。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載された、少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを備える
カートリッジ。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載されたシステムの部分である
器具。
【請求項19】
請求項18に記載された器具であって、
前記器具は、2つの直線的な検出ゾーン、すなわち前記上流および前記下流検出ゾーンを形成する光学システムを備える一体型ユニットを形成する光学ヘッドを備え;
前記光学ヘッドは、陽性粒子の検出のために必要な光学系および検出器をさらに備える;
器具。
【請求項20】
請求項19に記載された器具であって、
陽性粒子がレーザー誘導蛍光信号によって検出される
器具。
【請求項21】
請求項20に記載された器具であって、
前記上流および前記下流検出ゾーン内の両方で陽性粒子から発せられる前記蛍光信号は、単一のレンズシステムを通して集められる
器具。
【請求項22】
請求項19~21のいずれか一項に記載された器具であって、
前記器具は、前記カートリッジを前記光学システムと位置合わせする(align)自動位置合わせ(alignment)システムを備え、
前記位置合わせシステムは、前記光学ヘッドをX-Y平面内で動かすことにより前記光学システムと前記カートリッジとを位置合わせする、3つのアクチュエータを備える
器具。
【請求項23】
請求項18~22のいずれか一項に記載された器具であって、
前記器具は、可変の正圧および可変の負圧の両方で操作する空気圧システムによって、前記少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを通る流体の流れを制御する
器具。
【請求項24】
請求項23に記載された器具であって、
前記空気圧システムは、マイクロ流体システムに高い正圧または低い正圧を供給することができる1組の方向制御バルブと、前記マイクロ流体システムに可変の負圧または周囲圧力を供給することができる別の1組の方向制御バルブとを備える
器具。
【請求項25】
請求項1~16のいずれか一項に記載されたシステムの使用を含む粒子を分類するための方法であって、以下の各ステップ:
i.粒子を含む試料流体を供給するステップ、
ii.請求項17に記載されたマイクロ流体カートリッジであって、以下を備えるカートリッジを供給するステップ;
押出流体の体積を備える供給ウェルまたは容器、
スペーサ流体の体積を備える供給ウェルまたは容器、
および
前記粒子試料流体の体積を備える供給ウェルまたは容器;
iii.前記カートリッジを前記器具内に挿入するステップ、
iv.前記システム上で前記分類を開始するステップ、
および
v.前記分類が完成した後に、前記分類済み陽性粒子を適切な容器内に移すステップ;
を含む方法。
【請求項26】
請求項25に記載された方法であって、
前記粒子が細胞である
方法。
【請求項27】
請求項25に記載された方法であって、
前記粒子がダブルエマルジョン液滴である
方法。
【請求項28】
請求項25~27のいずれか一項に記載された方法であって、
前記粒子が液滴内にカプセル封入された細胞である
方法。
【請求項29】
請求項25~28のいずれか一項に記載された方法であって、
粒子の流速は、前記カートリッジの前記上流検出ゾーン[12]で前記器具によって陽性信号が検出されるのに応答して、一時的に減少する
方法。
【請求項30】
混合核酸分子の試料から1または複数の標的核酸分子を濃縮するためのインビトロ方法であって、以下の各ステップ:
i.少なくとも1または複数の特定の標的核酸分子と、前記標的核酸分子の少なくとも1を特定的に検出するための少なくとも1の試薬とを含む、混合核酸分子の液体試料を供給するステップ、
ii.前記液体試料から、混合核酸分子を各々含む複数のダブルエマルジョン液滴を含むエマルジョンを、形成するステップ、
iii.少なくとも1の特定の標的核酸分子を含む液滴内で、特定の検出可能な反応を得るために、エマルジョン液滴をインキュベートするステップ、
iv.反応させた液滴を、請求項1~16のいずれか一項に記載された液滴を分類するためのシステム内に装填するステップ、
v.前記システムを使用して、マイクロ液滴を分類するステップ、
vi.分類済み液滴を適切な容器内に集め、前記分類済み液滴を合体させるステップ、
および
vii.ステップviからの合体され選択された液滴を、一般的な増幅手順に従わせるステップ;
を含む方法。
【請求項31】
請求項25~30のいずれか一項に記載された方法のうち、いずれかを実行するための部品のキットであって:
a)請求項17に記載された少なくとも1のカートリッジ、
b)粒子を分類するためのシステムの器具に前記少なくとも1のカートリッジをフィットさせるための、具体的には請求項1~16のいずれか一項に記載されたシステムの器具、または請求項18~24のいずれか一項に記載された器具にフィットさせるための、少なくとも1のガスケット、
および
c)前記少なくとも1のカートリッジによって準備される分類の数を行うのに十分な量のバッファ(buffer)流体の、少なくとも1のバイアル;
を備える
キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的に検出されうる特性によって、粒子(例えば、液滴)を分類するためのシステムに関連する。システムは、粒子を分類することができるマイクロ流体装置と、マイクロ流体装置を通して流体を駆動しおよび粒子により発せられる光信号に応答して分類事象を起こす器具とを、備える。
【0002】
本発明はまた、既知のヌクレオチド配列要素を含むヌクレオチド断片を、濃縮または単離するための方法に関連する。
【0003】
さらに本発明は、複数のマイクロ流体装置と、エマルジョン液滴を分類するためにマイクロ流体装置と共に使用するように構成される複数の流体とを、備えるキットに関連する。
【背景技術】
【0004】
欧州特許EP 3314012 B1は、混合DNA分子の試料から1または複数の標的DNA分子を濃縮するための、非常に効果的なインビトロ方法を記載する。その方法は、DNA試料を多数の粒子(液滴)に分離すること、および液滴により発せられる光信号に基づき液滴を物理的に選択することに、依拠する。物理的に選択することは、手動操作のマイクロ流体チップの使用、または蛍光活性化セルソーター(fluorescence activated cell sorter、FACS)の使用によって得られうる。いずれの場合も、その選択には時間がかかり、信号陽性の液滴は相対的に少ない結果となる。
【0005】
濃縮の収率を改善するために、本発明者らは、FACS分類に固有の試料粒子の損失を避けつつ、相対的に短時間で非常に多くの数の粒子をスキャンおよび選択できる自動システムの開発に着手した。
【0006】
様々なタイプの粒子(細胞、液滴、液滴に乗った粒子など)が、様々なタイプのマイクロ流体装置によって分類されうることが、従来報告されていた。例示的な装置または方法は、EP 3302801;US 10,697,007;US 8,691,164およびUS 8,623,295に記載されている。
【0007】
しかしながら、これらはいずれも、効果的な分類を得るために必要な粒子のスペーシングに必要とされる大量のバッファ(buffer)の使用を避けつつ、相対的に短時間で非常に多数の粒子の分類を与えるとは思われない。
【発明の概要】
【0008】
EP 3314012 B1の方法に固有の粒子(液滴)集団が、非常に多くの陰性粒子中の非常に少ない陽性粒子によって特徴づけられる、ということを認識することが、解決に達するための手段である。
【0009】
また他の粒子集団、例えば妊婦からの血液試料中の胎児細胞は、非常に多くの陰性粒子中の非常に少ない陽性粒子によって特徴づけられる。
【0010】
このことを認識して、本発明の発明者らは、液体媒体中の粒子を分類するためのシステムによって、多数の陰性粒子から相対的に少数の蛍光陽性粒子を選別する問題を解決した。システムは、少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットと、少なくとも1の検出ゾーンと、カートリッジを通る流体の流れを制御する器具とを備える、マイクロ流体装置(カートリッジ)を備える。
【0011】
本発明は、陽性粒子の陰性粒子に対する比率(または予期される比率)が、約1:10百万(mio、10)~約1:100の範囲にある、具体的には約1:1百万~約1:1000の範囲にある、陽性および陰性粒子を含む試料を分類するために、特に有用である。
【0012】
図11は、本発明のシステムを図示する。
【0013】
一実施形態において、システムは、複数の(例えば、8つの)個別の分類ユニットを備え、分類ジャンクションの上流の試料供給導管内で陽性粒子を検出するのに応答して、分類ユニットを通る流速を変更するように設計されており、分類中の粒子の損失を最小限にし、バッファの使用を最小限にしつつ、50百万(mill)(50×10)を超える粒子が2時間未満で分類されるようにできる。
【0014】
このように、本発明の第1の態様に従って、液体媒体中の液滴を含む様々なタイプの粒子を分類するためのシステムが提供される。システムは、以下のカートリッジおよび器具を備える。カートリッジは、少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを備え、ここでユニットは、(i)分類ジャンクションに試料流体(試料流体は、分類されるべき陽性および陰性粒子の混合物を含む)を供給するための少なくとも1の試料供給導管[1]、(ii)分類ジャンクションから陽性粒子を含む流体を取り除くための、少なくとも1のマイクロ流体分類済み陽性粒子導管[4]、および(iii)分類ジャンクションから陰性粒子を含む廃棄物流体を取り除くための、少なくとも1のマイクロ流体廃棄物導管[5]を備え、前記ユニットは、少なくとも3つのマイクロ流体導管(i)、(ii)および(iii)が、分類ジャンクションで会合することを特徴とし、
― 前記カートリッジは、分類ジャンクションの上流の試料供給導管(i)内の陽性粒子を検出するための、少なくとも1の検出ゾーンをさらに備える。
― 器具は、分類ジャンクションの上流の供給導管内の陽性粒子を検出するのに応答して、少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを通る流体の流れを制御し、および試料供給導管内の粒子の流速を統御する。
【0015】
本発明の第2の態様は、器具内にフィットするが、しかしそこから取り外し可能である、別々のマイクロ加工された分類装置(カートリッジ)である。カートリッジは、分類レーン[15]の不可欠な一部である、少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを備える。典型的には、カートリッジは2以上の分類レーンを備え、各々のレーンは、分類のために必要とされる押出流体、スペーサ流体、懸濁粒子の試料、廃棄物粒子、および分類済み陽性粒子のすべてを含む大きさの、ウェル(well)/容器を備える。本発明の第3の態様に従って、器具が提供され、その器具は、少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを通る流体の流れを制御することができ、および分類ジャンクションの上流の供給導管内で陽性粒子を検出するのに応答して、試料供給導管内の粒子の流速を統御し、2つの線形の(または横長の(oblong))検出ゾーン、すなわち上流および下流検出ゾーンを形成する光学システムを備える。
【0016】
本発明の第4の態様に従って、システムを使用するステップを含む、粒子を分類するための方法が提供される。その方法は、以下の各ステップを含む:
i.粒子を含む試料流体を供給するステップ、
ii.押出流体の体積を備える供給ウェルまたは容器と、スペーサ流体の体積を備える供給ウェルまたは容器と、粒子試料流体の体積を備える供給ウェルまたは容器とを備える、第2の態様に従ったマイクロ流体カートリッジを供給するステップ;
iii.カートリッジを器具内に挿入するステップ、
iv.器具上で分類を開始するステップ、および
v.分類が完成した後に、分類済み陽性粒子を適切な容器内に移すステップ。
【0017】
本発明の第5の態様に従って、以下の各ステップを含む、混合核酸分子の試料から1または複数の標的核酸分子をインビトロで濃縮するための方法が提供される:
i.少なくとも1または複数の特定の標的核酸分子と、前記標的核酸分子の少なくとも1を特定的に検出するための少なくとも1の試薬とを含む、混合核酸分子の液体試料を供給するステップ、
ii.前記液体試料から、混合核酸分子を各々含む複数のダブルエマルジョン液滴を含むエマルジョンを、形成するステップ、
iii.少なくとも1の特定の標的核酸分子を含む液滴内で、特定の検出可能な反応を得るために、エマルジョン液滴をインキュベートするステップ、
iv.反応させた液滴を、前記態様のいずれかに従って、液滴を分類するためのシステム内に装填するステップ、
v.システムの使用によって、マイクロ液滴を分類するステップ、
vi.分類済み液滴を適切な容器内に集め、分類済み液滴を合体させるステップ、および
vii.ステップviからの合体され選択された液滴を、一般的な増幅手順に従わせるステップ。
【0018】
本発明の第6の態様に従って、液滴を分類するための、および/または、1または複数の標的DNA分子をインビトロで濃縮するためのキットが提供され、そのキットは以下を備える:a)第2の態様に従った、少なくとも1のカートリッジ;b)カートリッジの開口部と器具の対応する開口部との間の必要なすき間のない接続を得るために、粒子を分類するためのシステムの、具体的には第1の態様に従ったシステムの、器具への少なくとも1のカートリッジのための、少なくとも1のガスケット;およびc)キットの1または複数のカートリッジによって供給される分類の数を行うのに十分な量の、押出バッファおよびスペースバッファの、1または複数のバイアル。
【0019】
本発明は、上記および以下で説明される装置および方法を含む、様々な態様に関連する。各態様は、他の態様の1または複数に関連して説明される利益および利点のうち、1または複数をもたらしうる。各態様は、他の態様の1または複数に関連して説明され、および/または添付の請求項において開示される、実施形態に対応する特徴のすべてまたは一部のみを有する、1または複数の実施形態を有しうる。
【0020】
本発明の他のシステム、方法および特徴は、以下の図面および詳細な説明を検討することにより、当業者であれば明らかである、または明らかになるであろう。そのような追加のシステム、方法、および特徴のすべてが本説明に含まれ、本発明の範囲内にあり、添付の請求項によって保護されることが意図される。
【0021】
[図面の簡単な説明]
図面は、実施形態の設計および実用性を図示する。これらの図面は、必ずしも縮尺通りに描かれない。図面は、典型的な実施形態を描きうるに過ぎず、それゆえ本発明の範囲を限定するものではないと考えられうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の分類ジャンクションの模式図。矢印は、流体の流れの方向を示す。
図2】本発明の分類ユニットの中央部の一実施形態の模式図。矢印は、流体の流れの方向を示す。粒子は、黒い球で示される。破線枠は、下流検出ゾーンを示す。
図3】分類レーン対および関連する入口および出口オリフィス(orifices)/ポートの一実施形態の模式図。2つの検出ゾーンもまた、示される。
図4図4A:分類ジャンクションの上流にある供給導管対の実施形態の拡大図で、2つのレーンを区別するために使用される短い検出ループおよび長い検出ループを示す。検出ゾーン1もまた、示される。図4BおよびCは、それぞれ長いレーンおよび短いレーンを通過する陽性粒子の、1回目と2回目の検出の間の時間間隔(時間デルタ)を図示する。図16も参照。
図5】第2の検出ゾーンを示す分類ユニット対の、好ましい一実施形態を示す拡大図。破線枠は、下流検出ゾーンを示す。例えば1と1′の使用は、類似の構造、ここでは1対の2つの別々の分類ユニットの試料供給導管を示すために使用される。
図6】1つのチップに4対の分類レーンが存在する実施形態。図6Aは、マイクロ流体部の等角図を模式的に図示する。図6bは、マイクロ流体部の上面図を示す。
図7】本発明に従ったマイクロ流体カートリッジの一実施形態。図7aは、カートリッジの等角図を模式的に図示する。図7bは、カートリッジの上面図である。図7cは、図7bのA-Aに沿った断面側面図を示す。
図8】液滴生成後、分類前の明視野および蛍光画像の重ね合わせ。液滴の小部分が、蛍光ビーズを含んでいた。この図において、ビーズを含んだ液滴は1つだけであり、矢印で示される。この液滴の拡大図が、挿入図として示される。
図9】分類済み液滴の明視野および蛍光顕微鏡画像の重ね合わせ。矢印は、ビーズを含むダブルエマルジョン液滴を指す。破線の矢印は、ビーズを含まないダブルエマルジョン液滴を指す。
図10】システムおよび方法の概要。矢印は、導管内の流体の流れの方向を示す。
図11】器具の好ましい実施形態が、本発明に従った粒子分類カートリッジと同様に、シングルエマルジョンおよびダブルエマルジョンの両方の液滴生成カートリッジを受け入れうることを示す模式図。
図12】器具の主要構成要素の模式図。
図13】器具の一実施形態の圧力統御構成要素の模式図。
図14】分類中の分類ジャンクションの一連の拡大写真を示す。図の左側は顕微鏡写真であり、右側は顕微鏡写真の白黒解釈である。 図14aは、ゲートが開く前の状況を図示する。 図14bは、ゲートが開くときの状況を図示する。 図14cは、分類されている液滴を図示する。 図14dは、ゲートが再び閉じるときの状況を図示する。 矢印は、導管内の流体の流れの方向を示す。なお、ダブルエマルジョン液滴を含む液滴試料バッファにメタクレゾールパープルが添加され、分類機能の操作を明視野顕微鏡で可視化した。 タイムスタンプ:図14a 0.780s;図14b 0.868s;図14c 1.111s;および図14d 1.404s。
図15】シリコン光電子増倍管を使用した陽性液滴の検出。グラフは、光電子増倍管(PMT)からの電圧読み出し(mV)を、時間(s)の関数として示す。
図16】異なるループ長を有する分類レーン対の、2つのレーンからの測定された遅延時間を示す。縦軸は、デュアルピーク間の時間間隔(ms)を示す。2つの枠は、75%信頼区間を示す。
図17】上流検出ゾーンで陽性粒子が観測されない場合の状況を図示する。この状況において、スペーサ流体の流入は無いか限られており、試料供給導管内の流体速度は速い。 図17aは、この段階中の分類ユニットの顕微鏡写真である。図17bは、分類ジャンクションの拡大図であり、図17cは、分類ジャンクションの白黒解釈である。
図18】本発明の器具とダブルエマルジョン産生カートリッジとを使用して生成された、ダブルエマルジョン液滴を示す。図18aは、6つの個々の調製物からの顕微鏡写真を示す。図18bは、図18aに示された部分の拡大図である。
図19】本発明の器具とシングルエマルジョン産生カートリッジとを使用して生成されたシングルエマルジョン液滴の一例である。
図20】押出バッファ入口を有する分類ジャンクションを、押出バッファ入口を有しないジャンクションと比較する。 図20パネルA~Dは、押出バッファ入口を有する分類ジャンクションを図示する。 図20パネルE~Hは、押出バッファ入口を有しない分類ジャンクションを図示する。 図20パネルAおよびEは、分類前の状況を図示する。 図20パネルBおよびFは、分類中の状況を図示する。 図20パネルCおよびGは、分類直後(分類後の時点1)の状況を図示する。 図20パネルDおよびHは、分類後のより後(分類後の時点2)の状況を図示する。 P1は、押出流体導管内の圧力を示す。 P2は、試料供給導管内の圧力を示す。 P3は、陰性粒子導管(廃棄物導管)内の圧力を示す。 P4は、陽性粒子導管(分類済み液滴導管)内の圧力を示す。 矢印は、流体の流れの方向を示す。 網掛けは、分類機能の操作を明視野顕微鏡で可視化するために、ダブルエマルジョン液滴を含む液滴試料バッファに、例えばメタクレゾールパープルが添加された場合の状況を図示する。
図21】実際の陽性液滴の分類を示す。パネルA、A′、A″は、分類が行われる前の状況を示す。パネルB、B′、B″は、陽性粒子[7]の分類が行なわれた直後の状況を示し、パネルC、C′、C″は、分類の約6ms後の状況を示す。 パネルA、B、Cは、実際の顕微鏡写真を示す。黒矢印は陽性粒子を指し、白矢印は陰性粒子を指す。パネルA′、B′、C′は、顕微鏡写真の強調を示し、パネルA″、B″、C″は、パネルA、B、Cの線画を示す。
図22】スペーサ流体および流体の流速の効果。図の左側は顕微鏡写真であり、右側は顕微鏡写真の白黒解釈である。矢印は、流体の流れの方向を示す。 パネルAは1.135sにタイムスタンプされ、パネルBは2.003sにタイムスタンプされ、パネルCは4.655sにタイムスタンプされ、パネルDは4.770sにタイムスタンプされた。 図22パネルAは、上流検出ゾーンで陽性粒子が検出される前の状況を図示する。この状況において、粒子試料入口には相対的に高い圧力が加えられ、スペーサ流体入口には圧力が加えられないか非常に限られた圧力のみ加えられる。結果として、試料供給導管内の流体速度は速くなり、スペーサ流体ジャンクションには非常に限られたスペーサ流体しか流入しない。 図22パネルBは、粒子試料入口には適度な圧力となるよう圧力が切り替えられ、スペーサ流体入口には相対的に高い圧力が加えられる場合の状況を図示する。結果として、試料供給導管内の流体速度は遅くなり、スペーサ流体ジャンクションでのスペーサ流体の流入が顕著になる。 図22パネルCは、粒子試料入口およびスペーサ流体入口への圧力が、図22パネルDに示される状況に切り替わる直前の状況を図示する。 図22パネルDは、粒子試料入口およびスペーサ流体入口への圧力が、粒子試料入口には相対的に高圧、スペーサ流体入口には相対的に低圧に切り替わった直後の状況を図示し、それによりパネルAにおいて示される、試料供給導管内の流体速度が速くなり、スペーサ流体ジャンクションには限られたスペーサ流体しか流入しない状況が回復する。
図23】器具の好ましい実施形態の、マニホールド(manifold)およびカートリッジ支持トレイの部分を示す断面図。
図24】器具の好ましい実施形態の、ガスケットを含むカートリッジが挿入された状態の、マニホールドおよびカートリッジ支持トレイの透視図。
図25】カートリッジが挿入されたマニホールドおよびカートリッジ支持トレイの部分を示す断面図。マニホールドは、カセットを器具に装填および器具から取り外しできる持ち上がった構成になっている。
図26】カートリッジが挿入されたマニホールドおよびカートリッジ支持トレイの部分を示す、器具の好ましい実施形態の平面図である。マニホールドは、持ち上がった構成になっている。
図27】空気圧システムの一実施形態の図。システムの方向性三方バルブは示されていないことに留意。
図28図27に示される空気圧システムの模式図(配管および器具図)。
図29】自動位置合わせ(alignment)手順を示すフロー図。
図30】光学ヘッドに備えられる光学システムの略図。
図31】ループ時間の概念を図示したもの。ループ時間とは、液滴が点aから点bまで達するのにかかる時間である。従って、状況Aにおけるループ時間は、相対的に長いループ時間であり、一方状況Bにおけるループ時間は、相対的に短い。矢印は、流れの方向を示す。
図32】マニホールド、カートリッジ支持トレイおよび光学ヘッドを、開(アンクランプ)位置で示す、器具の一実施形態の断面図。
図33】ガスケットを含むシングルエマルジョンカートリッジが挿入された状態の、マニホールドおよびカートリッジ支持トレイの一実施形態の断面図。アセンブリは、開(アンクランプ)位置にある。
図34】光ヘッド位置合わせ機構の一実施形態の透視図であり、3つのアクチュエータを示す。下方から見た機構。
図35】器具内に挿入されたマイクロ流体装置を通して流体を駆動する器具を含む、本発明に従った例示的なシステムの3D図。パネルAは、閉構成にある器具を示し、パネルBは、開構成にある器具を示す。
図36】ガスケットを含むカートリッジが挿入された状態の、カートリッジがマニホールドにクランプされた閉位置にある、マニホールドおよびカートリッジ支持トレイの一実施形態。 パネルAは透視図であり、パネルBは断面図である。
図37】分類サイクル中に器具により記録された信号の一例。 パネルAおよびBは、1秒間の記録を示し、一方パネルCおよびDは、20秒間の信号の記録を示す。後者は、4回の成功した分類サイクルを示す。 パネルAおよびCは、器具のバルブ段階を時間の関数としてミリ秒単位で示し、異なる時間スケールに留意。 各バルブは、2段階(低圧または高圧)でありうる。「I.」と記された曲線は、押出バッファ[608]、スペーサバッファ[612]、および液滴バッファ[613]導管内の圧力を指す、バルブの段階を示す。 「II.」と記された曲線は、分類導管[617]内の圧力を指す、バルブの段階を示す。 「III.」と記された曲線は、廃棄物導管[618]内の圧力を指す、バルブの段階を示す。 パネルBおよびDは、バルブ段階および時間の関数として器具により検出された信号を示し、BとDの2つの異なる時間スケールに留意。 「DZ1」は、上流検出ゾーン1[12/801]で検出器により検出された信号を示す。「DZ2」は、下流検出ゾーン2[13/802]で検出器により検出された信号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[定義]
本発明の詳細な実施形態の議論の前に、本発明の主な態様に関連する特定の用語の定義が与えられる。
【0024】
本明細書で使用される「増幅(amplification)」という用語は、鋳型分子の少なくとも1のセグメントの、複数のコピーを形成する反応を指しうる。
【0025】
本明細書において、「オイル(oil)」、「エマルジョンオイル(emulsion oil)」および「キャリア流体(carrier fluid)」という用語は、シングルエマルジョン液滴の場合と同義に使用されうる。ダブルエマルジョン液滴の場合、キャリア流体は、典型的には水性流体である。
【0026】
「供給導管(feeding conduit)」とは、試料入口ウェルまたは容器を分類ジャンクションと接続する導管(すなわち、試料入口ウェルから分類ジャンクションへ延びる導管)である。
【0027】
「dMDA」とは、液滴内で行われる多重置換増幅(multiple displacement amplification、MDA)技術(Blanco et al (1989) J. Biol. Chem. 264: 8935-40; Zanoli et al (2013) Biosensors 3, 18-43)を指す。
【0028】
本明細書で使用される「液滴(droplet)」という用語は、エマルジョンの連続相などの非混和性流体によって囲まれた、典型的には球形の小さい体積の液体を指す。本開示を通じて、「液滴」および「マイクロ液滴(micro-droplet)」という用語は、同義に使用される。それは、液滴のエマルジョンを形成する液滴を指し、その各々は、マイクロ流体装置の寸法と同等である。
液滴は、外部環境によって、球状または他の形状でありうる。
【0029】
典型的には、液滴は1μL以下、好ましくは1nL以下、例えば0.0001nL~1nLの体積を有する。シングルエマルジョン液滴は、通常ダブルエマルジョン液滴よりも大きい。
【0030】
「ダブルエマルジョン液滴(double emulsion droplet)」という用語は、水中オイル中水の液滴(w/o/w液滴ともいう)を指し、オイル液滴の内部の水性液滴からなり、すなわち水性コアとオイルシェルとが水性キャリア流体に囲まれている。
【0031】
好ましくは、ダブルエマルジョンは、単分散エマルジョン、すなわちほぼ同じ体積の液滴からなるエマルジョンである。典型的には、w/o/w液滴は、1000pL未満、好ましくは100pL未満の体積を有する。好ましくは、w/o/w液滴は、0.1pL~50pL、より好ましくは0.25pL~25pL、さらに好ましくは0.5pL~10pL、具体的には1pL~5pLの範囲の体積を有する。
【0032】
哺乳動物細胞が液滴内にカプセル封入される場合など、いくつかの応用のために、w/o/w液滴は、3pL~500pLの体積を有しうる。好ましくは、w/o/w液滴は、5pL~200pL、より好ましくは30pL~150pLの範囲の体積を有する。
【0033】
「シングルエマルジョン液滴(single emulsion droplet)」という用語は、オイル相によって完全に囲まれた水相の孤立した部分を指す。
【0034】
好ましくは、オイル中水エマルジョンは、単分散エマルジョン、すなわち同じ体積の液滴からなるエマルジョンである。直径のそのような均質な分布を生成するための技術は、当業者にはよく知られている(例えば、WO 2004/091763参照)。
【0035】
「下流(downstream)」という用語は、マイクロ流体システム内の所与の基準点から流体の流れの方向にある構成要素またはモジュールを指し、本文脈において基準点は、分類ジャンクションである。
【0036】
「上流(upstream)」という用語は、マイクロ流体システム内の所与の基準点から流体の流れと反対方向にある構成要素またはモジュールを指し、本文脈において基準点は、例えばスペーサ流体ジャンクションまたは分類ジャンクションでありうる。
【0037】
「フルオロカーボンオイル(fluorocarbon oil)」、ペルフルオロカーボン(perfluorocarbons)またはPFCは、典型的には水よりも高い密度を有する有機フッ素系オイルである。使用可能なオイルの例には、Fluorinert(商標)FC-40(シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)、セントルイス、ミズーリ州、米国); Krytox(商標)(ケマーズ(Chemours)、ウィルミントン(Wilmington)、 デラウェア州、米国);およびNovec(商標)オイル(スリーエム(3M Co.)、メープルウッド(Maplewood)、ミネソタ州、米国)がある。
【0038】
本明細書で使用される「識別特性(Identifying characteristics)」という用語は、実体を識別するために使用されうる実体の任意の特性を指す。それは、光学的に検出可能な信号(例えば、蛍光信号)、または任意の他の信号(例えば、磁気または放射性信号)でありうる。
【0039】
「マイクロ加工(microfabricated)」という用語は、マイクロスケールである1または複数の流体導管または特徴を備える装置を、結果として得る加工方法を説明するために使用される。
【0040】
本文を通して、「マイクロ加工装置(microfabricated device)」、「マイクロ流体装置(microfluidic device)」、および「カートリッジ(cartridge)」は、同義に使用される。それは、適切な流体が供給され、マイクロ流体ネットワークを通る流れを促進する条件が与えられる場合に、粒子の懸濁液を分類することができるマイクロ流体ネットワークを備える、システムの部分を指しうる。それはまた、マイクロ流体ネットワークを備え器具内にフィットする、液滴形成装置をも指しうる。典型的には、そのような装置(カートリッジ)は、PMMA(ポリ(メチルメタクリレート))、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、例えばTOPASをも含むCOC環状オレフィンコポリマー(COC)、ZEONOR(登録商標)を含むCOP環状オレフィンポリマー(COP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはネガティブフォトレジストSU-8などの、1または複数のタイプのポリマーから作られる、2以上の部分から作られる。加えてカートリッジは、ガラス、シリコン、または親水性を有する他の材料を含む材料から作られた部分を含みうる。
【0041】
「マイクロ流体(microfluidic)」という用語は、それぞれの装置/ユニットの少なくとも一部が、幅および/または高さなど少なくとも1の寸法が1mmより小さい、および/または断面積が1mmより小さいなど、マイクロスケールである1または複数の流体導管を備える、ということを意味する。導管、開口部、またはジャンクションなどの流体導管ネットワークの少なくとも一部のうち、高さまたは幅などの最小の寸法は、500μm未満、例えば200μm未満、例えば20μm未満でありうる。
【0042】
「収集オリフィス(collection orifice)」は、オリフィスであって、そこを通って分類済み陽性粒子収集ウェルが、陽性粒子導管と流体連通している。
【0043】
「粒子(particle)」は、液滴または細胞を含むがそれらに限定されない、物質の離散的な単位として定義される。粒子という用語は、細胞だけでなく、他の粒子、例えばビーズ、核、ヌクレオチド、ウイルス、タンパク質複合体、またはタンパク質、生化学的または化学的化合物を含み、および液滴内に含まれる粒子を含む。本文脈において、すべての液滴は、それらがシングルエマルジョン液滴であれダブルエマルジョン液滴であれ、大であれ小であれ、球状であれ細長形であれ、液滴と呼ばれる。従って本特許において、液滴という用語は、球状液滴、プラグ(plugs)、およびスラグ(slugs)を含むように使用される。
【0044】
「陽性粒子(positive particle)」という用語は、特性が光学的に検出可能でありうるか、例えば特定の蛍光、紫外線または色の変化信号でありうるか;特性光散乱、発光または吸収でありうるか、または、放射線源、電気機械源または磁気源などによって媒介される信号により検出可能でありうるかにさえ関わらず、選択された識別特性を発現する、または発現するためにもたらされうる粒子を説明するために使用される。
【0045】
「PCR」は、例えばUS4683195に記載されているようなポリメラーゼ連鎖反応技術を指す。
【0046】
「負圧(negative pressure)」という用語は、導管の流体に加えられる圧力が、周囲の圧力よりも低い状況を示すために使用される。
【0047】
「正圧(positive pressure)」という用語は、導管の流体に加えられる圧力が、周囲の圧力よりも大きい状況を示すために使用される。
【0048】
本明細書で使用される「試薬(reagent)」という用語は、化合物またはそれらのセット、および/または組成物を指し、それらは試料に対して特定の試験を行うための試料に関連付けられる。例えば反応試薬は、増幅試薬であってもよく、具体的には、標的核酸を増幅するためのプライマー、増幅生成物を検出するためのプローブおよび/または色素、ポリメラーゼ、ヌクレオチド(例えば、dNTP)、マグネシウムイオン、塩化カリウム、バッファ、またはそれらの任意の組合せであってもよい。
【0049】
本明細書で使用される「試料(sample)」という用語は、それが分類されるべき検体を含む限り、具体的に限定されない。試料は、多数の粒子を含む任意の液体体積でありうる。例えば試料は、生物学的流体、生物学的実体、または任意のそのような品目の抽出物などの、生物学的試料でありうる。生物学的流体の例には、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、糞便、痰、脳脊髄液、涙液、粘液、羊水などを含む。生物学的実体は、細菌およびウイルスを含む、細胞または細胞の集合物を指す。
【0050】
本明細書で使用される「ループ時間(loop time)」という用語は、検出ループの入側アーム内のある点から、検出ループの出側アーム内の対応する点まで、粒子が移動するのにかかる時間である。この概念は、図31に図示されるように、ループ時間が、検出ループ内で点aから点bまで、粒子が達するのにかかる時間であることを示す。
【0051】
「XdropSort」:本文を通して、XdropSortシステム、器具、分類カートリッジまたは方法は、システム、器具、分類カートリッジ、またはシステムを使用することにより分類する方法の、好ましい実施形態を指すために使用されうる。
【0052】
同様に「Xdrop」は、シングルエマルジョン産生カートリッジ(Samplix社 アイテム番号 CA20100)またはダブルエマルジョン産生カートリッジ(Samplix社 アイテム番号 CA10100)のいずれかの、好ましい実施形態を指すために使用されうる。
【0053】
「X-Y平面(X-Y plane)」という用語は、図34のXYZ座標系により示される平面を指す。
【0054】
「陰性キャリア粒子(negative carrier particles)」という用語は、試料を含まず、本発明の検出システムによって検出可能でない粒子を指す。そのような陰性キャリア粒子の一例として、水中オイルの液滴がある。別の例として、内部水相がシステム内で信号を発生する化合物を含まない、水-オイル-水の液滴がある。
【0055】
[詳細な説明]
本発明はこれより、本発明の例示的な実施形態が示される添付の図面を参照して、以下でより十分に説明される。しかしながら本発明は、異なる形態で実施されてもよく、本明細書に記載された実施形態に限定して解釈されるべきではない。むしろこれらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供される。同様の参照数字は、全体を通して同様の要素を指す。同様の要素は従って、各図の説明に関して詳細に説明されない。
【0056】
本発明に従って、3つのマイクロ流体導管が分類ジャンクションで会合する、機能的な分類ジャンクションを設計することが可能である。本発明者らは、少なくとも4つのマイクロ流体導管を有するジャンクションが、より効果的な分類、および陽性粒子の有意に低い損失を備えることを見出した。従って好ましくは、本発明は、4つのマイクロ流体導管が分類ジャンクション[8]で会合し、少なくとも1つの前記導管が押出流体[3]を分類ジャンクション内に供給する、実施形態に関連する。図1参照。
【0057】
押出流体は、可変の正圧で供給されてもよく、陰性粒子導管(廃棄物)から陽性粒子導管(分類済み陽性粒子)内への、陰性粒子のありうる「逆」流を最小化する重要な機能を有する。実施例7参照。分類機能は、分類済み陽性粒子導管[4]および廃棄物導管[5]に可変の負圧を加えることによりさらに強化されてもよく、その両方が器具によって注意深く制御される。
【0058】
本発明は、粒子の総数に対する陽性粒子の比率(陽性粒子の頻度)が低い~非常に低いことを特徴とする粒子の集団の分類に、主に関連する。
【0059】
従って、非常に多数の粒子を相対的に短時間で分類することを達成するために、多くの手段がとられてきた。
【0060】
一つの手段として、試料供給導管[1]内に高濃度で粒子を装填することがありうる。しかしながら、ジャンクション点[2]で効果的な分類を達成するために、粒子は、主として1つずつ検出ゾーンを通過し分類ジャンクション[2]に入るように、間隔を空けるべきであることを、本発明者らは認識した。好ましい実施形態において、このことは、1または複数のマイクロ流体分類ユニットが、分類ジャンクション点の上流に配置されたスペーサ流体導管およびスペーサ流体ジャンクションを備えて、分類されるべき粒子の流体内にスペーサ流体を供給するように、設計することにより得られる。実施例8参照。
【0061】
スペーサ流体は、器具によって注意深く監視および制御される、可変の正圧で供給されうる。
【0062】
図2は、上流スペーサ流体導管[11]およびスペーサ流体ジャンクション[10]を示す、分類ユニット[9]の中央部の一実施形態の模式図である。矢印は、流体の流れの方向を示す。粒子は、黒い楕円で示される。
【0063】
システムは、スペーサ流体ジャンクション[10]の下流に配置された検出ゾーンで、陽性粒子を検出するように設計される。点線[13]は、一実施形態におけるこの検出ゾーンの位置を示す。この下流検出ゾーン[13]の機能は、検出ゾーン内で陽性粒子を検出するのに応答して、ジャンクション点[2]での分類事象を引き起こすことである。
【0064】
陽性粒子は、任意の識別特性に基づいて検出されうるが、陽性粒子の識別特性は、光学的に検出されうることが好ましい。
【0065】
好ましい実施形態において、陽性粒子の検出は、レーザー誘導蛍光信号を意味する。
【0066】
交換可能な単回使用カートリッジを有するシステムを促進するために、レーザーおよび蛍光信号検出システムの両方が、器具の部分であるシステムが好ましい。
【0067】
分類ジャンクションの上流で陽性粒子を検出するのに応答して、スペーサ流体入口[18]にもたらされる空気圧によって引き起こされる、効率的な分類を可能にするための、粒子間に十分な空間のある状態での粒子の1つずつの通過は(図22参照)、他の手段がとられなければ、許容できないほど長い分類時間につながるであろう。
【0068】
この障害は、分類ジャンクションの上流の供給導管内で陽性粒子を検出するのに応答して、マイクロ流体分類ユニットを通る流体の流れを制御し、および供給導管内の粒子の流速を統御する、器具を用いて克服された。革新的な概念は、分類ジャンクションの上流の検出ゾーンで陽性粒子を検出した後、試料供給導管内の粒子の流速が、一時的にのみ減少するということである。
【0069】
具体的な実施形態に依存して、供給導管内の粒子の流速は、分類ジャンクションの上流で陽性粒子を検出した後、短時間だけ一時的に減少する。ほとんどの実施形態において、この時間は5秒よりもはっきりと短く、例えば1sまたは500ms未満、または50ms未満でさえあり、その後すぐに流速の増加が続く。実施例4、5および8参照。
【0070】
試料供給導管内に投入されるスペーサ流体は、可変の正圧で供給される。それは分類ユニットを通る流速の決定的な変化の重要な一部を含み、器具によって注意深く監視および制御される。
【0071】
その結果、多数の粒子を効果的に分類するようになる。カートリッジが8つの分類レーンを備える実施形態の場合、システムの分類能力は計算上、28000粒子/秒を超えうる。実施例5に示されたデータは、多くの陰性粒子の中の相対的に少ない陽性粒子を特徴とする粒子集団に対して、さらに高い分類率さえ期待されうることを示す。
【0072】
空気圧分類システムのスイッチング周波数は、例えば誘電泳動装置または光ピンセットで得られるスイッチング周波数よりも低いが、空気圧によって分類事象が起こされるシステムには、大きな利点がある。
【0073】
一つの利点は、システムが、可動部分または内蔵アクチュエータのないより単純なカートリッジを備えてもよく、市販のバルブおよびポンプなどの標準構成要素に基づく器具のために開かれていることである。
【0074】
空気圧分類システムはまた、可動構成要素のない低コストの分類カートリッジに適応でき、従って異なる実行の間に器具の広範な洗浄を必要としない単回使用カートリッジ設計に適応できるため、有利である。さらに、それは標準構成要素から組み立てられることができ、それによりコストが減少する。
【0075】
好ましい実施形態において、システムは、器具から取り外し可能であり単回使用に適応する、低コストのカートリッジを備える。そのようなカートリッジは、器具の持ち越しまたは汚染を全くないか最小限にすることを保証するように設計されて、例えばFACSソーターで知られる時間のかかる洗浄サイクルを時代遅れにしうる。
【0076】
器具の持ち越しまたは汚染を最小限にするために、カートリッジは、試料、廃棄物、バッファおよび分類済み陽性粒子の全体積を含む、分類に必要なすべての流体を含むのに十分な大きさの、ウェルのセットを備えうる。
【0077】
そのようなカートリッジの一実施形態が、図7に図示される。好ましい実施形態において、カートリッジは、2以上の分類レーンを備え、分類レーンは、対で構成されうる。
【0078】
図3は、分類レーン対の一設計を示す[14]。
重要なことにその図はまた、この好ましい実施形態において、各1の検出ゾーンが、分類レーン対の2つの別々の粒子供給導管の部分を備えることも示す。
【0079】
図3に示される実施形態はまた、押出流体ウェル、スペーサ流体ウェル、および懸濁粒子ウェルからの入口は、ダスト(durst)などがマイクロ流体システムに入るのを避けるためのフィルタ[22]を備えうることを示す。
【0080】
いくつかのタイプのフィルタがこの目的を務めうるが、例えば各柱の外周間の距離が15~100μmであるタイプの柱状フィルタ(pillar filter)が好ましい。各柱の断面は、円形、正方形、三角凧形、または台形など、任意の形状でありうる。
【0081】
分類レーンを対で構成することは、1の検出ゾーンが2つの別々の液滴分類レーンからの信号を検出するように設計されうるという、重要な効果を有する。
【0082】
陽性粒子の検出がレーザー誘導蛍光信号を意味し、レーザーおよび蛍光信号検出システムの両方が器具の部分である好ましい状況において(図32参照)、レーザーおよび信号検出システムの光学系の単なる物理的広がりは、システムのマイクロ流体部分の小型化にとって課題でありうる。具体的には、複数の(例えば、8つの)個別の分類ユニットを備える実施形態において、大きさが重要である。分類レーンを対で構成することは、1のレーザーおよび検出システムが2つの別々の液滴分類レーンを監視できるようにして、空間を節約する。さらにデュアルレーン検出ゾーンはまた、より単純かつ安価な器具を実現する。さらに器具をより単純かつ安価にさえするために、より多くの並列分類レーンが、同じ圧力供給源に空気圧的に接続されうる(図27および28参照)。
【0083】
図3に示されるように、分類レーンの各対は、2つの別々の検出ゾーンを備え、一方の上流検出ゾーン[12]は、液滴を分類ジャンクション[2]に達する前に検出するために、スペーサ流体入口[10]の上流に配置され、他方の下流検出ゾーン[13]は、陽性液滴を分類ジャンクション[2]に入る前に検出するために、スペーサ流体入口の下流に配置される。さらなる詳細は、図5に示されうる。
【0084】
上流検出ゾーンは、陽性粒子を検出するために使用され、検出に応答して器具は、a)分類ユニットを通る流速を一時的に下方調整し;およびb)陽性信号がどちらのレーンから来たかを決定する。
【0085】
陽性信号がどちらのレーンから来たかの識別は、2つの試料供給導管の各々が検出ループを備え、2つの検出ループが異なる長さでありうる設計によって、もたらされる。
【0086】
識別のための原理は、図4に図示される。
簡単に言うと粒子は、分類レーン対の2つの試料供給導管[1]から上流検出ゾーン[12]内に流れている。器具は、粒子が両方の導管内に(ほぼ)同等の流速で流れるように圧力を与えている。2つの検出ループ[23、および24]の長さが異なる結果として、検出ゾーンを通る1回目(下向き)の通過と2回目(上向き)の通過との間の時間差は、2つのループ(長いものと短いもの)で異なる。1回目(検出ゾーンに入る途中)と2回目(検出ゾーンから出る途中)に検出された粒子の間の時間差は、「ループ時間デルタ」と呼ばれうる。
【0087】
「ループ時間デルタ」におけるこの差は、図4Bおよび4Cに図示されるように、粒子が検出ループの長いほうか短いほうかで観察されたかを、決定するために使用される。一方「ループ時間」、すなわち検出ループの入側アーム内のある点から、検出ループの出側アーム内の対応する点まで、粒子が移動するのにかかる時間は、図31に図示されており、分類カートリッジ[25]/[201]と光学ヘッド[1201]とを位置合わせする(align)ために使用される。
【0088】
典型的な実施形態において、この情報は、陽性粒子が検出された分類レーンの流体の流れを遅くするために使用され、一方反対側(粒子が検出されなかった側)は変更せずに、最初の高速で操作するのを継続する。
【0089】
短い検出ループを備える供給導管に、追加のループ[34]を備えるオプションの設計は、1対の2つの粒子供給導管の合計長さを同じにする。
【0090】
図3はまた、本発明の一実施形態の下流検出ゾーン[13]の位置および範囲を示す。図5は、最も好ましい実施形態におけるカートリッジの、この部分の拡大図である。
【0091】
下流検出ゾーン[13]の機能は、2つある。
1)試料供給導管[1、および1′]を通ってこの検出ゾーンに入る陽性粒子を検出するのに応答して、ジャンクション点[2]で分類事象を引き起こすこと、および2)正しい分類が行なわれたかどうかを検出することもまた、下流検出ゾーンは務めうる。1回目(下流検出ゾーンに入る途中)と、うまく分類している場合における2回目(検出ゾーンから出る途中)に検出された粒子の間の時間差は、分類事象が成功したことを識別するために使用され、他の価値あるデータも同様に与えうる。それは例えば、試料中の様々な化合物(例えば、特定の核酸)の量を定量化するために使用されうる。
【0092】
分類速度は、本発明にとって最も重要である。分類レーンを対で構成することで、複数の(例えば、8つの)個別の分類ユニットを備えるカートリッジの実施形態が、可能となる。一実施形態は、図6および7に示され、カートリッジが4対で構成された8つの分類レーンを備える。そのようなカートリッジを備えるシステムは、1秒間に28000を超える粒子を分類しうる。
【0093】
システムは、多くのタイプの物質の離散的な単位を、例えば液滴および細胞(例えば哺乳類細胞などの真核細胞を含む)を、および、他の粒子(例えばウイルス、タンパク質複合体、またはタンパク質、および液滴に含まれる粒子を含む)を、分類するために使用されうる。
【0094】
特に好ましい実施形態は、液滴を分類するために特に適応させたシステムである。液滴は、シングルまたはダブルエマルジョン液滴であってよく、細胞などの特定の物質をカプセル封入しているもの、またはしていないものの両方の液滴であってよい。
【0095】
いずれにせよ、液滴エマルジョンは、分類するためのシステム内に液滴が装填される前に、別の動作で形成される。
【0096】
シングルまたはダブルエマルジョン液滴を形成するための、より多くの方法および装置がある。シングルまたはダブルエマルジョン液滴のいずれかを形成するための、2つの特に関連するアプローチは、PCT/EP2020/052409およびPCT/EP2020/052400に記載されている。PCT/EP2020/052409およびPCT/EP2020/052400の両方において、液滴を産出するためのシステムは、単回使用カートリッジおよび器具を意味し、これらはすべてSamplix社(ヘアレウ(Herlev)、デンマーク)から現在販売され、市販されている。Xdrop器具(アイテム番号 IN00100、Samplix社、ヘアレウ、デンマーク)は、シングルエマルジョン産生カートリッジ(Samplix社 アイテム番号 CA20100)またはダブルエマルジョン産生カートリッジ(Samplix社 アイテム番号 CA10100)のいずれかと組み合わせて、この作業を行うよう設計されている。
【0097】
ある実施形態における本発明の使用をさらに改善するために、本発明の器具は、カートリッジにフィットさせ、カートリッジを通して流体を制御および駆動することに加えて、PCT/EP2020/052409およびPCT/EP2020/052400に記載され、Samplix社(ヘアレウ、デンマーク)によって販売されるカートリッジなどの、シングルエマルジョン液滴を生成するように作られたカートリッジ、およびダブルエマルジョン液滴を生成するために作られたカートリッジにもフィットさせ、カートリッジを通して流体を制御および駆動する。この「多目的」機能は、図11および実施例5においてさらに説明される。
【0098】
実施例に現れるようなシステムのいくつかの重要な実施形態は、ダブルエマルジョン液滴の分類に関連する、システムおよび方法である。そのようなシステムにおいて、好ましい押出流体およびスペーサ流体の両方が、水性である。
【0099】
本発明の好ましい実施形態において、カートリッジ(図6および7参照)は、4対で構成された少なくとも8つの分類レーンを備える。分類済み液滴の損失を最小限にし、回収を促進するために、分類済み陽性粒子収集ウェル[29]は、収集ウェルのオリフィスが前記収集ウェルの最下部に備えられる、傾斜面を持つ底部を有する。
【0100】
一般に、分類ジャンクション[8]の流体導管は、マイクロスケールであり、すなわち導管は、幅200μm未満かつ深さ200μm未満、好ましくは幅100μm未満かつ深さ100μm未満、さらには幅50μm未満かつ深さ50μm未満である部分を備える。
【0101】
カートリッジが器具内に正しく挿入されることを保証するために、正しく挿入されたときのみ器具内にフィットするように、カートリッジは非対称に設計されうる。図7参照。
【0102】
システムの器具部分の好ましい実施形態は、図35に示される。パネルAは、ドア[1504]が閉じた状態の器具を示す。パネルBは、ドアが開かれ、引き出しが引き出され、およびXdropSortカートリッジ[25]/[201]がカートリッジ支持トレイ[108]内に挿入された状態の器具を示す。
【0103】
器具は、一体型ユニットを形成する光学ヘッドを備えうる(図32参照)[1201]。光学ヘッドは、上流および下流検出ゾーンと呼ばれる、またはDZ1およびDZ2と呼ばれる、2つの直線的な検出ゾーンを形成する光学システムを備える。光学ヘッドは、陽性粒子の検出のために必要な光学系および検出器をさらに備える。
【0104】
一方粒子は、検出ゾーンにおいて任意のタイプの光によって検出されうる。陽性粒子は、レーザー誘導蛍光信号によって検出されることが好ましい。
【0105】
空間を節約し光学システムを小型化するために、上流および下流検出ゾーンの両方で陽性粒子から発せられる蛍光信号が、少なくとも1の同じ単一レンズを通して収集される光学ヘッドを、器具は装備しうる。図30参照。
【0106】
好ましい実施形態において、約488nmのレーザー光は、光ガイド[1205]を通って2つのレンズシステム[1206]に導かれ、その各々がマイクロ流体部上に約250×2000μmのレーザー光のラインを作り、2つの検出ゾーン[801]および[802]を形成する。フィルタは、約488nm以外の波長の光を減少させることを保証する。
【0107】
この配置により、両方の検出ゾーンに対して1つの収集レンズのみを持つ配置が可能になる。検出側のフィルタ[1203]は、515nmの光を通過させ、他の波長の光を減少させる。
【0108】
カートリッジは、精密生成されたプラスチックでできているが、各実行前に光学システムとカートリッジとが、位置合わせされる必要がある。従って器具は、カートリッジを光学システムと位置合わせする、位置合わせシステムを備えうる。
【0109】
位置合わせは、光学ヘッドをX-Y平面内で動かすことにより光学システムとカートリッジとを位置合わせする、3つのアクチュエータを備える位置合わせシステムによって、達成されうる(図32および34参照)。
【0110】
使用者の利便性は、器具の開発において重視されており、従って好ましい実施形態において、位置合わせシステムは、光学ヘッドとカートリッジとを自動的に位置合わせする。これを管理するアルゴリズムは、図29のフロー図に図示される。
【0111】
位置合わせ過程の中心は、図31に示される「ループ時間」の概念である。簡単に言うと「ループ時間」とは、液滴が検出ループ[24]の入側部分内の「点a」から検出ループの出側部分内の「点b」まで達するのにかかる時間である。検出ゾーン[12]は、ループ時間の概算ができるように設計される。光学システムの感度は、試料中のすべての粒子を検出するように(自動的に)調整されうる。状況Aにおけるループ時間は相対的に長いループ時間であり、一方状況Bにおけるループ時間は相対的に短いことが理解されうる。それから、少なくとも2つのレーンにおける(典型的にはレーン1(または2)およびレーン7(または8)の)ループ時間が、両方とも事前選択された制限内になるまで、光ヘッドとカセットとの位置合わせをすることにより、位置合わせが起こる。
【0112】
器具は、可変の正圧および可変の負圧の両方で操作する空気圧システムによって、少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを通る流体の流れを制御する。好ましい実施形態において、空気圧システムは、マニホールド[106]を介して、分類カートリッジ[201]のマイクロ流体システムに接続される(図27参照)。ガスケット[202]は、カートリッジおよびガスケットがカートリッジ支持トレイ[108]内に挿入され、器具が閉構成にあるとき、接続が気密であることを保証する(図35)。この構成においてカートリッジは、マニホールドに気密的にクランプされる。
【0113】
閉構成において、図36に示されるように、マニホールドは、カートリッジのガスケット上に下ろされて、カートリッジをマニホールドにクランプする。
【0114】
器具内に挿入されたマイクロ流体装置を通る流体の流れを方向づけるために、器具の空気圧システムは、マイクロ流体装置内の流体に高い可変の正圧または低い可変の正圧を掛けることができる1組の方向制御バルブと、マイクロ流体装置内の流体に可変の負圧または周囲圧力を掛けることができる別の1組の方向制御バルブとを備える。
【0115】
図28は、空気圧システムの一実施形態を図示する。カートリッジの粒子試料入口[19]、スペーサ流体入口[18]、および押出流体入口[17]の3つの入口は(例えば、図3参照)、マニホールドを介して、6つの異なる正圧からなる圧力システムに、操作可能に接続される(図28参照)。3つの圧力導管の1組は、相対的に高い圧力(例えば、600~1800mbarg)で操作される。3つの圧力導管のもう1組は、相対的に低い圧力(例えば、100~500mbarg)で操作される。6つの圧力導管内すべての単位圧力(specific pressure)は、圧力空気容器[605]に接続される6つの電子圧力統御器[606]によって細かく統御される。
【0116】
この実施形態において、押出流体[608]/[17]、スペーサバッファ[612]/[18]および液滴バッファ/粒子試料[613]/[19]のための各入口は、高圧または低圧のいずれかで供給され、1組の3/2方向バルブにより制御される。
【0117】
また分類済み陽性粒子[617]/[20]および廃棄物[618]/[21]のための出口は、1組の3/2方向バルブによりまた制御される、周囲圧力(0bar)または中程度の負圧(例えば、-100~-400mbarg)の、2つの異なる圧力を受けうる。負圧側のバルブもまた、検出システムからの信号によって制御される。
【0118】
この構成(図13にも図示される)は、分類カートリッジの様々な出入口に対する圧力が圧力統御器によって調整される構成と比較して、有意により短い応答時間を与える。実施例9は、器具および粒子分類カートリッジの好ましい実施形態を使用する、陽性液滴の濃縮を説明する。器具およびカートリッジはXdropSort器具およびカートリッジと、一方システム全体はXdropSortシステムと、呼ばれうる。
【0119】
興味深いことに、XdropSort器具およびカートリッジはまた、液滴内にカプセル封入されない単細胞懸濁液中の細胞(真核細胞、例えば哺乳類細胞を含む)をも分類しうる(実施例10参照)。
【0120】
上述のシステムは、以下の各ステップを含む方法によって、粒子を、具体的には液滴を分類するために、具体的に設計される:1)粒子の試料を供給するステップ、粒子は例えばダブルエマルジョン液滴でありうる、2)押出流体、スペーサ流体および粒子試料の体積を、マイクロ流体カートリッジの3つの関連する供給ウェル内にピペット注入することにより、マイクロ流体カートリッジを準備するステップ、3)カートリッジを器具内に挿入するステップ、4)器具をセットし、分類を開始するステップ、および5)分類が完成した後に、分類済み陽性粒子を適切な容器内に移し、カートリッジを廃棄するステップ。
【0121】
方法の概要は、図10に示される。
【0122】
本システムの利点を得るために、カートリッジの上流検出ゾーン[12]で器具により陽性信号が検出されるのに応答して、粒子の流速が一時的に減少するように、器具が設定されることが推奨される。
【0123】
実施例3、4、および7に示されるように、流速の一時的な減少は、2~0.1秒の間続きうる。流速を一時的に減少するための最適の時間は、粒子の試料の粘度に依存し、実験的に確立される必要がある。
【0124】
スペーサ流体ジャンクションを通して供給されるスペーサ流体が、陰性キャリア液滴または粒子を含む場合、方法はさらに改善されうることを実験は示す。陰性キャリア液滴または粒子はまた、空洞および表面を埋めるためにカートリッジの任意のウェルに加えられてもよく、それにより陽性液滴または粒子の損失を減少させる。一実施形態において、1~20μLの間の陰性キャリア液滴が、カートリッジの少なくとも1の分類済み粒子出口に加えられる。
【0125】
システムの主な応用の1つは、混合試料から1または複数の標的分子を濃縮するための、以下の各ステップを含むインビトロ方法に使用することである:1)混合分子の試料を供給し、前記標的分子の少なくとも1を特定的に検出するための試薬と接触させるステップ、2)試料から混合分子を含む粒子状物質の懸濁液を形成するステップ、3)1または複数の特定の標的分子を含む粒子内で、本発明の器具により検出可能な特定の反応を得るために、懸濁液をインキュベートするステップ、4)反応させた粒子をシステム内に装填するステップ、5)本発明のシステムを使用して、粒子を分類するステップ、および6)さらなる分析のために、分類済み陽性粒子を適切な容器内に集めるステップ。
【0126】
インビトロ濃縮方法の特に好ましい実施形態は、混合核酸分子の試料からの1または複数の標的DNA分子の濃縮に関連し、以下の各ステップを含む:1)1または複数の特定の標的DNA分子と、前記標的DNA分子の少なくとも1を特定的に検出するための試薬とを含む、混合核酸分子の液体試料を供給するステップ、2)前記液体試料から、混合核酸分子を各々含む複数のダブルエマルジョン液滴のエマルジョンを形成するステップ、3)1または複数の特定の標的核酸分子を含む液滴内で、特定の検出可能な反応を得るために、エマルジョン液滴をインキュベートするステップ、4)反応させた液滴を、液滴を分類するためのシステム内に装填するステップ、5)本発明のシステムを使用して、マイクロ液滴を分類するステップ、6)分類済み液滴を適切な容器内に集め、分類済み液滴を合体させるステップ、および7)ステップ6)から選択され合体された液滴を、一般的な増幅手順に従わせるステップ。
【0127】
この方法において、核酸分子は、好ましくはDNA分子である。特定の検出のための好ましい試薬は、PCR試薬であり、前記1または複数の標的核酸分子の特定の検出は、PCR(または逆転写PCR)によって行われ、一般的な増幅手順のための好ましい方法は、多置換増幅(Multiple Displacement Amplification)である。
【0128】
本発明の機能は、実際のカートリッジおよび使用される試薬に決定的に依存するため、従って方法を実施するための部品のキットが提供される、ということが理解されるであろう。
【0129】
好ましい一実施形態において、部品のキットは、本発明に従った少なくとも1のカートリッジ;少なくとも1のカートリッジを本発明のシステムに、具体的には器具の空気圧システムに、すき間なくフィットさせるための少なくとも1のガスケット;キットの少なくとも1のカートリッジによって供給される分類の数を行うのに十分な量の、バッファ流体(例えば、押出バッファ)のバイアル、および/またはスペーサ流体のバイアル、を備える。
【0130】
押出バッファとスペーサ流体とは同一であってもよく、1つのバイアルで供給されてもよい。
【0131】
上記開示の任意の関連部分は、開示された図面と組み合わせて、以下の参照リストを考慮して理解されうる。
【0132】
[1] 試料供給導管
[2] ジャンクション点
[3] 押出流体導管
[4] 陽性粒子導管(分類済み陽性粒子)
[5] 陰性粒子導管(廃棄物)
[6] 陰性粒子
[7] 陽性粒子
[8] 分類ジャンクション
[9] 分類ユニット
[10] スペーサ流体ジャンクション
[11] スペーサ流体導管
[12] 上流検出ゾーン(ゾーン1)
[13] 下流検出ゾーン(ゾーン2)
[14] 分類レーン
[15] 分類レーン対
[16] 分類レーン対
[17] 押出流体入口
[18] スペーサ流体入口
[19] 粒子試料入口
[20] 分類済み陽性粒子出口
[21] 廃棄物(陰性粒子)出口
[22] フィルタ
[23] 短い検出ループ
[24] 長い検出ループ
[25] カートリッジ、等角図
[26] 押出流体供給ウェルまたは容器
[27] スペース流体供給ウェルまたは容器
[28] 粒子試料供給ウェルまたは容器
[29] 分類済み陽性粒子収集ウェルまたは容器
[30] 廃棄物収集ウェルまたは容器
[31] ガスケットを取り付けるための取り付け機能
[32] 位置合わせ機能
[33] マイクロ流体部
[34] 試料供給導管の追加のループ
[35] 粒子
[36] 押出流体導管ジャンクション
[37] 三方バルブ
[38] タイムスタンプ
[100] マニホールドおよびカートリッジ支持トレイの部分を示す断面図
[101] 電気システムへのコネクタ
[102] 取り付け部、マニホールドをクランプシステムに取り付ける
[103] 3/2バルブ
[104] 圧力供給導管(リザーバ)
[105] 圧力供給導管(リザーバ)
[106] マニホールド
[107] 圧力供給導管
[108] カートリッジ支持トレイ
[200] ガスケットを含むカートリッジが挿入された状態のマニホールドおよびカートリッジ支持トレイの透視図
[201] 分類カートリッジ
[202] ガスケット
[203] クランプモーターの取り付け点
[204] カートリッジのためのガイド
[205] 位置合わせピン。マニホールドが閉じられるとき、マニホールドの穴にフィットする。
[300] カートリッジが挿入された状態のマニホールドおよびカートリッジ支持トレイの部分を示す断面図。
[400] ガスケットを含むカートリッジを有するマニホールドおよびカートリッジ支持トレイの側面図。
[402] 位置合わせバネ。それらはカートリッジが引き出し内の所定の位置に行くのを助け、カートリッジの位置がより固定される。
[500] 空気圧システムの略図
[501] 排気消音器
[502] 圧力導入バルブ
[503] 圧力解放バルブ
[504] 排気バルブ
[505] 真空または負圧バルブ
[601] フィルタ
[602] ポンプ
[603] バルブ
[604] 圧力センサ/スイッチ
[605] 圧力空気容器
[606] 圧力統御器
[607] 正圧統御
[608] 押出バッファ空気圧
[609] 3/2方向バルブ
[610] 高圧調整
[611] 低圧調整
[612] スペーサバッファ空気圧
[613] 液滴バッファ空気圧
[614] 真空ポンプ
[615] 真空容器
[616] 真空調整
[617] 分類器(真空)
[618] 廃棄物(真空)
[800] 2つの検出ゾーンを形成する光学システムの略図。
[801] 検出ゾーン1
[802] 検出ゾーン2
[1200] マニホールド、カートリッジ支持トレイ、および光学ヘッドの断面図。開位置にある。
[1201] 光学ヘッド
[1202] 収集レンズ
[1203] ロングパス検出フィルタおよびレンズシステム(ロングパスは約515nm以上の長波長の光を通過させる)
[1204] 検出器
[1205] レーザー光供給光ガイド
[1206] ライン産生レンズシステムおよびショートパスフィルタ(ショートパスは約488nm以下の短波長の光を通過させる)
[1207] アクチュエータ、器具内に挿入されたカートリッジに対して光学ヘッドを位置合わせするために使用される3つのアクチュエータのうちの1つ。
[1208] カートリッジを器具の内部に配置するために使用される引き出し機構の部分。
[1300] ガスケットを含むシングルエマルジョンカートリッジが挿入された状態のマニホールド、カートリッジ支持トレイの断面図。
[1301] シングルエマルジョンカートリッジホルダー
[1302] シングルエマルジョンカートリッジ
[1400] 3つのアクチュエータを示す位置合わせ機構の透視図。下方から見た機構。
[1401] 光学ヘッド支持板
[1402] 引き出し機構を操作するモーター
[1501] タッチスクリーン
[1502] 開始ボタン
[1503] 引き出し機構
[1504] ドア
【0133】
[実施形態の形で示される発明]
本発明の好ましい態様および実施形態は、本明細書の項目として示されうる。これらは以下で与えられる。
【0134】
1. 液体媒体内の粒子を分類するためのシステムであって:
少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを備えるカートリッジ;
ここでユニットは、
(i)分類ジャンクションに試料流体を供給するための、少なくとも1の試料供給導管[1];
前記試料流体は、分類されるべき陽性および陰性粒子の混合物を含む;
(ii)前記分類ジャンクションから陽性粒子を含む流体を取り除くための、少なくとも1のマイクロ流体分類済み陽性粒子導管[4]、
および
(iii)前記分類ジャンクションから陰性粒子を含む廃棄物流体を取り除くための、少なくとも1のマイクロ流体廃棄物導管[5]、
を備え;
前記ユニットは、少なくとも3つのマイクロ流体導管(i)、(ii)および(iii)が、前記分類ジャンクションで会合することを特徴とし;
前記カートリッジは、前記分類ジャンクションの上流の前記試料供給導管(i)内の陽性粒子を検出するための、少なくとも1の検出ゾーンをさらに備え;
および
前記分類ジャンクションの上流の前記供給導管内の陽性粒子を検出するのに応答して、前記少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを通る流体の流れを制御し、および前記試料供給導管内の粒子の流速を統御する器具
を備える
システム。
【0135】
2. 項目1に記載されたシステムであって、
前記少なくとも1のマイクロ流体分類ユニット[9]は、
(iv)前記分類ジャンクションに押出流体を供給するための、少なくとも1の押出流体導管[3]
をさらに備え、
前記ユニットは、少なくとも4つのマイクロ流体導管が、前記分類ジャンクション[2]で会合することを特徴とする
システム。
【0136】
3. 項目1または2に記載されたシステムであって、
前記少なくとも1のマイクロ流体分類ユニット[9]は、
(v)分類されるべき前記粒子を含む前記試料流体内にスペーサ流体を供給するために、前記試料供給導管[1]内において前記分類ジャンクション[2]の上流に配置される、スペーサ流体導管[11]およびスペーサ流体ジャンクション[10]
をさらに備える
システム。
【0137】
4. 項目3に記載されたシステムであって、
少なくとも2つの別々の検出ゾーンを備え;
上流検出ゾーン[12]は、液滴を前記スペーサ流体ジャンクション[10]に達する前に検出するために、前記スペーサ流体ジャンクション[10]の上流に配置され、
および
下流検出ゾーン[13]は、陽性液滴を前記分類ジャンクション[2]に入る前に検出するために、スペーサ流体入口の下流に配置される;
システム。
【0138】
5. 項目1~4のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記カートリッジが、前記器具から取り外し可能である
システム。
【0139】
6. 項目1~5のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記カートリッジは、前記試料流体、前記廃棄物流体、および分類済み陽性粒子流体を含む、前記分類を達成するために必要な流体の全体積を収容できる、流体のための1組のウェルまたは容器を備える
システム。
【0140】
7. 項目3~6のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記分類ジャンクションの上流で陽性粒子を検出するのに応答して、スペーサ流体入口[18]に空気圧を作用させることによって、分類事象を誘発するための手段を備える
システム。
【0141】
8. 項目1~7のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記分類ジャンクションの上流で陽性粒子を検出した後、1秒以下の間一時的に、前記試料供給導管内の粒子の流速を減少させるための手段を備える
システム。
【0142】
9. 項目1~8のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記器具は、前記カートリッジの前記少なくとも1の検出ゾーン内で、陽性粒子に特徴的な少なくとも1の光学信号を識別するための、光学検出器を備える
システム。
【0143】
10. 項目9に記載されたシステムであって、
前記少なくとも1の検出ゾーンは、陽性粒子に特徴的な少なくとも1の蛍光信号を識別するための、蛍光検出器を備える
システム。
【0144】
11. 項目9または10に記載されたシステムであって、
前記少なくとも1の検出ゾーンは、陽性粒子に特徴的なレーザー誘導蛍光信号を識別するための、蛍光検出器を備える
システム。
【0145】
12. 項目1~11のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記少なくとも1の検出ゾーンは、レーザーと、陽性粒子を検出するための蛍光検出器とを備える
システム。
【0146】
13. 項目1~12のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記粒子が液滴である
システム。
【0147】
14. 項目1~13のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記粒子がダブルエマルジョン液滴である
システム。
【0148】
15. 項目1~14のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記押出流体および前記スペーサ流体の両方が、水性流体である
システム。
【0149】
16. 項目1~15のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記押出流体を可変の正圧で供給するための手段を備える
システム。
【0150】
17. 項目1~16のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記スペーサ流体を可変の正圧で供給するための手段を備える
システム。
【0151】
18. 項目1~17のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記分類済み陽性粒子導管[4]および前記廃棄物導管[5]に可変の負圧を加えるための手段を備える
システム。
【0152】
19. 項目1~18のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記分類ユニットは、分類レーン[15]の不可欠な一部である
システム。
【0153】
20. 項目1~19のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記カートリッジは、前記器具から取り外し可能であり、かつ単回使用に適応する
システム。
【0154】
21. 項目1~20のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記カートリッジは、2以上の分類レーンを備える
システム。
【0155】
22. 項目21に記載されたシステムであって、
前記2以上の分類レーンは、対で構成される
システム。
【0156】
23. 項目21または22に記載されたシステムであって、
前記少なくとも1の検出ゾーンは、分類レーン対の少なくとも2つの別々の粒子供給導管の部分を備える
システム。
【0157】
24. 項目21~23のいずれか一項に記載されたシステムであって、
分類レーンの各対は、上流検出ゾーン[12]および下流検出ゾーン[13]を備える
システム。
【0158】
25. 項目21~24のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記器具は、分類レーン対の2つの別々の試料供給導管からの信号を検出し;
前記2つの試料供給導管の各々は、検出ループを備える;
システム。
【0159】
26. 項目25に記載されたシステムであって、
前記2つの検出ループは、異なる長さである
システム。
【0160】
27. 項目1~26のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記下流検出ゾーンは、正しい分類が行われたかどうかを前記器具が検出できるように設計される
システム。
【0161】
28. 項目21~27のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記2以上の分類レーンは、少なくとも実質的に並列である
システム。
【0162】
29. 項目21~28のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記2以上の分類レーンは、同じ圧力供給源に空気圧的に接続される
システム。
【0163】
30. 項目1~29のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記器具は、前記カートリッジにフィットし、前記カートリッジを通る前記流体を制御しおよび駆動するように設計されているのに加え、シングルエマルジョン液滴を生成するように作られたカートリッジ、およびダブルエマルジョン液滴を生成するように作られたカートリッジを通る前記流体にフィットし、制御しおよび駆動するようにも設計される
システム。
【0164】
31. 項目13~30のいずれか一項に記載されたシステムであって、
分類されるべき前記液滴は、細胞を含まない
システム。
【0165】
32. 項目1~31のいずれか一項に記載された、少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを備える
カートリッジ。
【0166】
33. 項目32に記載されたカートリッジであって、
前記カートリッジは、前記試料流体、前記廃棄物流体、および前記分類済み陽性粒子流体を含む、前記分類を達成するために必要な流体の全体積を収容できる、流体のための1組のウェルまたは容器を備える
カートリッジ。
【0167】
34. 項目32または33のいずれか一項に記載されたカートリッジであって、
前記カートリッジは、4対で構成された少なくとも8つの分類レーンを備える
カートリッジ。
【0168】
35. 項目32~34のいずれか一項に記載されたカートリッジであって、
前記分類済み陽性粒子を収集する前記ウェルまたは容器は、傾斜面を有する底部を有し、
および
前記収集ウェルまたは容器のオリフィスは、前記収集ウェルまたは容器の最下部に備えられる
カートリッジ。
【0169】
36. 項目32~35のいずれか一項に記載されたカートリッジであって、
前記分類ジャンクション[8]で会合する前記導管は、100μm以下の幅および100μm以下の深さを有する
カートリッジ。
【0170】
37. 項目32~36のいずれか一項に記載されたカートリッジであって、
少なくとも前記押出流体、前記スペーサ流体、および懸濁粒子流体のための前記ウェルまたは容器の入口は、具体的には各柱の外周間の距離が15~100μmである柱状フィルタを備える
カートリッジ。
【0171】
38. 項目32~37のいずれか一項に記載されたカートリッジであって、
前記器具内への正しい挿入を保証するために、前記カートリッジは非対称に設計される
カートリッジ。
【0172】
39. 項目1~31のいずれか一項に記載されたシステムの部分である
器具。
【0173】
40. 項目39に記載された器具であって、
前記器具は、2つの直線的な検出ゾーン、すなわち前記上流および前記下流検出ゾーンを形成する光学システムを備える一体型ユニットを形成する光学ヘッドを備え;
前記光学ヘッドは、陽性粒子の検出のために必要な光学系および検出器をさらに備える;
器具。
【0174】
41. 項目40に記載された器具であって、
陽性粒子がレーザー誘導蛍光信号によって検出される
器具。
【0175】
42. 項目41に記載された器具であって、
前記上流および前記下流検出ゾーン内の両方で陽性粒子から発せられる前記蛍光信号は、単一のレンズシステムを通して集められる
器具。
【0176】
43. 項目39~42のいずれか一項に記載された器具であって、
前記器具は、前記カートリッジを前記光学システムと位置合わせする位置合わせシステムを備える
器具。
【0177】
44. 項目43に記載された器具であって、
前記位置合わせシステムは、前記光学ヘッドをX-Y平面内で動かすことにより前記光学システムと前記カートリッジとを位置合わせする、3つのアクチュエータを備える
器具。
【0178】
45. 項目44に記載された器具であって、
前記位置合わせシステムは、自動的に前記光学ヘッドと前記カートリッジとを位置合わせする
器具。
【0179】
46. 項目39~45のいずれか一項に記載された器具であって、
前記器具は、可変の正圧および可変の負圧の両方で操作する空気圧システムによって、前記少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを通る流体の流れを制御する
器具。
【0180】
47. 項目46に記載された器具であって、
前記空気圧システムは、マイクロ流体システムに高い正圧または低い正圧を供給することができる1組の方向制御バルブと、前記マイクロ流体システムに可変の負圧または周囲圧力を供給することができる別の1組の方向制御バルブとを備える
器具。
【0181】
48. 項目1~30のいずれか一項に記載されたシステムの使用を含む粒子を分類するための方法であって、以下の各ステップ:
i.粒子を含む試料流体を供給するステップ、
ii.項目32~38のいずれか一項に記載されたマイクロ流体カートリッジであって、以下を備えるカートリッジを供給するステップ;
押出流体の体積を備える供給ウェルまたは容器、
スペーサ流体の体積を備える供給ウェルまたは容器、
および
前記粒子試料流体の体積を備える供給ウェルまたは容器;
iii.前記カートリッジを、項目39~47のいずれか一項に記載された器具内に挿入するステップ、
iv.前記器具上で前記分類を開始するステップ、
および
v.前記分類が完成した後に、前記分類済み陽性粒子を適切な容器内に移し、前記カートリッジを廃棄するステップ;
を含む方法。
【0182】
49. 項目48に記載された方法であって、
前記粒子が、例えば哺乳類細胞などの真核細胞を含む細胞である
方法。
【0183】
50. 項目48または49に記載された方法であって、
前記試料流体は、単細胞懸濁液、例えばカプセル封入されない細胞の懸濁液を含む
方法。
【0184】
51. 項目48~50のいずれか一項に記載された方法であって、
前記粒子が液滴内にカプセル封入された細胞である
方法。
【0185】
52. 項目48~51のいずれか一項に記載された方法であって、
前記粒子がダブルエマルジョン液滴である
方法。
【0186】
53. 項目48~52のいずれか一項に記載された方法であって、
粒子の流速は、前記カートリッジの前記上流検出ゾーン[12]で前記器具によって陽性信号が検出されるのに応答して、一時的に減少する
方法。
【0187】
54. 項目48~53のいずれか一項に記載された方法であって、
スペーサ流体は、スペーサ流体ジャンクションを通して前記試料供給導管内に供給される
方法。
【0188】
55. 項目48~54のいずれか一項に記載された方法であって、
陰性キャリア粒子は、前記カートリッジの任意のウェルに加えられる
方法。
【0189】
56. 混合核酸分子の試料から1または複数の標的核酸分子を濃縮するためのインビトロ方法であって、以下の各ステップ:
i.少なくとも1または複数の特定の標的核酸分子と、前記標的核酸分子の少なくとも1を特定的に検出するための少なくとも1の試薬とを含む、混合核酸分子の液体試料を供給するステップ、
ii.前記液体試料から、混合核酸分子を各々含む複数のダブルエマルジョン液滴を含むエマルジョンを、形成するステップ、
iii.少なくとも1の特定の標的核酸分子を含む液滴内で、特定の検出可能な反応を得るために、エマルジョン液滴をインキュベートするステップ、
iv.反応させた液滴を、項目1~30のいずれか一項に記載された液滴を分類するためのシステム内に装填するステップ、
v.前記システムを使用して、マイクロ液滴を分類するステップ、
vi.分類済み液滴を適切な容器内に集め、前記分類済み液滴を合体させるステップ、
および
vii.ステップviからの合体され選択された液滴を、一般的な増幅手順に従わせるステップ;
を含む方法。
【0190】
57. 項目56に記載された方法であって、
前記少なくとも1の標的核酸分子は、標的DNA分子である
方法。
【0191】
58. 項目56または57に記載された方法であって、
特定的に検出するための前記少なくとも1の試薬は、PCR試薬であり、
および
前記1または複数の標的核酸分子の特定的な検出は、PCRによって行われる
方法。
【0192】
59. 項目56~58のいずれか一項に記載された方法であって、
ステップ(vii)の前記一般的な増幅手順は、多置換増幅によって行われる
方法。
【0193】
60. 項目48~59のいずれか一項に記載された方法のうち、いずれかを実行するための部品のキットであって:
a)項目32~38のいずれか一項に記載された少なくとも1のカートリッジ、
b)粒子を分類するためのシステム、具体的には項目1~31のいずれか一項に記載されたシステムの器具に、前記少なくとも1のカートリッジをフィットさせるための、少なくとも1のガスケット、
および
c)前記少なくとも1のカートリッジによって供給される分類の数を行うのに十分な量のバッファ流体の少なくとも1のバイアル;
を備える
キット。
【実施例
【0194】
[実施例1:Xdrop Sortシステムを使用する濃縮]
[ビーズ入り液滴の調製]
最初の水性試料は、3μl(Alignflow(商標)青色レーザーのためのフローサイトメトリー用アライメントビーズ(Flow Cytometry Alignment Beads)、2.5μm、ThermoFisher)を、試料反応混合物に混合して、補充された。Madsen et al., 2020(Human mutation doi: 10.1002/humu.24063)に記載されているように、Xdrop dPCR独自の液滴生成技術を使用して、ダブルエマルジョン液滴の試料が作成された。dPCR液滴は、Xdrop装置(アイテム番号 IN00100、Samplix社、ヘアレウ、デンマーク)上で、ダブルエマルジョン産生カートリッジ(Samplix社 アイテム番号 CA10100)および標準実行パラメータ(生成時間40分)を使用して、生成された。
液滴生成に続いて、液滴中のビーズの頻度が、FACS解析によって定量化された。頻度は、0.3%と決定された(図8)。液滴生成の結果、ダブルエマルジョン液滴(水-オイル-水)とシングルエマルジョン液滴(オイル-水)との約50:50の混合物となった。生成された液滴は、図8に示される。
【0195】
[分類]
合計2725の陽性液滴が、マイクロ流体装置と流体速度を交互に変化させることができない初期バージョンの器具とを使用して、分類された。従って、平均42液滴/秒の低速でしか、分類が処理されなかった。分類時間の合計は、6時間であった。
【0196】
分類後、液滴は収集され、ビーズ入りダブルエマルジョン液滴を、ダブルエマルジョン液滴の総量と比較することによって、分類効率が算出された。分類後の試料の純度(ビーズ陽性液滴の頻度)は、53.8%(総液滴数に対するビーズ入り液滴数)であった。
【0197】
[結論]
低速(約42液滴/秒)で、システムの予備的バージョンにおいて合計6時間、分類が実行された。その間、2725の液滴が分類され、分類後の純度は53.8%と算出された。液滴中のビーズの頻度が0.3%から始まり、分類手順の結果、180倍に濃縮された。
【0198】
[実施例2:分類システムは、ダブルエマルジョン液滴を分類することができ、フィードバックループを使用して、正しい分類が定量化されうる。]
この実施例において、本発明(Xdrop Sortシステム)は、ダブルエマルジョン液滴を蛍光に基づいて1/2に分類しうることが、実証される。
【0199】
[材料および方法]
蛍光染色されたDNAを含むダブルエマルジョン液滴が、Madsen et al., 2020(Human Mutation doi: 10.1002/humu.24063)の方法を使用して、生成された。加えて、分類機能の操作を明視野顕微鏡で可視化できるように、液滴試料バッファ(すなわち、ダブルエマルジョンを含む外部バッファ)に、メタクレゾールパープルが添加された。
【0200】
Samplix dPCRバッファ(Madsen et al., 2020)が、押出バッファおよびスペーサバッファの両方として使用された。
【0201】
マイクロ流体チップ(図2および3参照)は、粒子試料入口[19]および試料供給導管[1];スペーサ流体入口[18]およびスペーサ流体導管[11];押出流体入口[17]および押出流体導管[3]を備えていた。さらにチップは、分類済み陽性粒子出口[20]および陽性粒子導管[4]、陰性粒子導管(廃棄物)[5]および廃棄物(陰性粒子)出口[21]を備えていた。3つの入口(粒子試料入口[19]、スペーサ流体入口[18]、および押出流体入口[17])は、6つの異なる正圧(0.1barg~5barg)からなる圧力システムに、操作可能に接続された。2つの出口導管(分類済み陽性粒子出口[20]、および廃棄物(または陰性粒子)出口[21])は、4つの周囲圧力または負圧(-1barg~0barg)からなる圧力システムに、操作可能に接続された。各々の入口または出口は、2つの異なる圧力を受けるように配置された。各入口は、図13および図28に示されるように、電子式3/2方バルブ[37]/[609]に、空気圧的に接続された。三方バルブに接続された2つの圧力統御器は、圧力統御器とバルブとの間に挿入された、接続されたリザーバ内の圧力を統御する(図13および28参照)。各入口への圧力は、2つの検出ゾーンで信号を検出するのに基づく入力を受けるバルブによって、統御された。バルブが作動または停止されるとき、圧力供給はそれゆえ、ある圧力リザーバから別の圧力リザーバへ変更した。圧力統御器への直接接触ではなくバルブを使用することで、より多くの個々のライン間で圧力統御器が共有されうるため、圧力統御器が少なくて済むという利点がある。それにより、コストが減少する。加えてバルブの応答時間は、圧力統御器が新しい圧力に達するために必要な時間よりも、著しく短くされうる。これは、圧力を測定し調整する必要がなく、バルブがすぐに代替の圧力リザーバに開くためである。図14からわかるように、シングル液滴は分類され、圧力は1秒未満で「廃棄物」設定に戻った。
【0202】
タイムスタンプは、図14a 0.780秒;図14b 0.868秒;図14c 1.111秒;および図14d 1.404秒、すなわち0.624秒で全サイクルがなされることに留意。
【0203】
押出流体導管[3]の圧力は、押出流体の小部分が廃棄物の流れ内に入ることができるように設定され、液滴が陽性粒子導管(分類済み液滴導管)[4]に入るのを防ぐ。
【0204】
分類を可能にするために、分類済み陽性粒子出口[20]の圧力は、相対的に低圧に変えられ、陰性粒子出口[21]の圧力は、相対的に高圧に変えられた。陰性粒子導管(廃棄物)[5]内の圧力に対する陽性粒子導管(分類済み液滴)[4]内の相対圧力が、より低くなったため、陽性粒子導管[4]内への流れが可能となる。
【0205】
試料供給導管[1]内の液滴は、488nmにピーク強度を持つレーザーラインを検出ゾーンで導管に照射することにより、分析された。導管からの信号は、514.5±0.2nmのバンドパスフィルターを持つシリコン光電子増倍管を使用して検出され、検出器は、レーザーラインと重なる円形領域からの信号を、検出するように指示された。レーザーおよび検出器の両方が、マイクロ流体導管の下に配置された。陰性液滴よりも多くの量のDNAを含む陽性液滴は、インターカレーター性色素(intercalating dye)で染色された後、より多くの蛍光を発するため、より高い信号が検出される。閾値を超える信号の存在は、陰性粒子導管(廃棄物)に接続されたバルブが、約-150mbargの圧力から周囲圧力に変わるトリガーとなり、同時に陽性粒子導管(分類済み液滴導管)に接続されたバルブが、周囲圧力から約-150mbargの圧力に変わるトリガーとなった。試料供給導管[1]および押出流体導管[3]内は、正圧が維持された。しばらくして、陰性粒子導管(廃棄物導管)[5]および陽性粒子導管(分類済み液滴導管)[4]の圧力は、バルブを「廃棄物」位置に戻すことにより、「廃棄物モード」に戻された。液滴は、陰性粒子導管(廃棄物導管)[5]内への流れを再開した。押出流体は、「廃棄物」モードの間、陽性粒子導管(分類済み液滴導管)内に少量の押出流体を供給し続けるため、分類済み陽性液滴は、分類済み陽性粒子出口[20]および分類済み陽性粒子収集ウェルまたは容器[29]へ、陽性粒子導管(分類済み液滴導管)[4]内を前方に流れ続けた。
【0206】
分類前の陽性液滴の純度(全液滴に対する陽性液滴の割合)は、セルソーターで決定され、0.41%(全液滴4.1百万中)であった。液滴は、ダブルエマルジョン液滴とオイル液滴との混合物である。純度計算において、オイル液滴は蛍光を含まないためカウントされない。
【0207】
陽性分類済み液滴の純度は、蛍光写真と明視野写真との比較から決定された。オイル液滴の数もまた、明視野写真解析に基づく純度計算には含まれない。検出されたすべての液滴について(100%)、デュアルピーク(短い時間間隔内の2つの連続するピーク)が検出され、検出閾値を超える陽性液滴が100%回収されたことを示す。表1は、16回の個々の分類事象の結果を示し、いずれも分類前の初期純度は0.41%である。

【0208】
【0209】
[実施例3:2つの並列する分類ラインからの検出信号は、導管ループ領域での遅延時間を観察することによって区別されうる。]
図15は、下流検出ゾーン[13]を通過する陽性液滴からシリコン光電子増倍管を使用して得られた、検出信号を示す。図は、光電子増倍管(PMT)からの電圧出力を、時間の関数として示す。陽性液滴が検出ゾーンを通過して、液滴からの蛍光が検出された。ほとんどの事象において、高いピークに続いて低いピークが現れたことは、液滴が正しく分類されたため、陽性分類導管を通って検出ゾーンに再び入ったことを示す。1つの事例では、液滴が正しく分類されなかったため、1つのピークのみが検出された。この情報を基に、分類効率の純度を概算することができた。
【0210】
レーザーおよび検出器は高価な構成要素であるため、システム内のこれらの構成要素の数を最小限にすることが利点となる。そのため、液滴が上流検出ゾーン[12]を1回目に通過してから、ループを通過したあと検出ゾーンに再び入るまでの事象の遅延を観察することによって、システムが2つの異なる分類ラインからの信号を区別できるマイクロ流体装置が、設計された(図4参照)。2つの並列するラインのループが異なる長さを有するため、1回目の通過から2回目の通過までの移動時間が異なる(図4a参照)。このことは、検出器からのピーク間の時間間隔が異なるデュアルピークとして観察されうる(図4bおよび4c参照)。図16は、図4aに示されるように異なるループ長を有する2つのラインからの、測定された遅延時間を示す。2つの導管からのデュアルピーク間の時間間隔は、明らかに異なっており(枠は75%信頼区間を示す)、粒子が第1または第2のラインを通過しているかを区別するために使用されうる。この試験では、1秒間に5000液滴を超える速度で、液滴が上流検出ゾーンを通過した。
【0211】
[実施例4:液滴が検出される場合に流速を変えることで、より速い分類を達成することが可能となる。]
試料供給導管[1]が入口導管で正圧に、および出口導管で負圧に接続される、現在のシステムにおける液滴流速が、液滴入口導管内1950mbarg、スペーサ導管内650mbarg、押出バッファ導管内325mbarg、陽性分類導管内0mbargおよび廃棄物導管内-140mbargの圧力で、決定された。これらの圧力設定で、5百万液滴の試料は、16分で廃棄物導管内に処理されることができ、液滴の流速は5200液滴/秒に相当し、分類ジャンクションで正圧および負圧の両方で操作する利点を示した。図17参照。
【0212】
ゲートで正圧および負圧の両方で操作する別の利点は、液滴の流速が押出バッファ導管内の流速に対して統御されうることである。液滴[28]およびバッファ[26]および[27]を含む入口ウェル内の体積は限られうるため、2つの入口導管での互いに対する圧力を調整することによって、2つの液体の相対的処理体積が調整されうることは利点である。
【0213】
[実施例5:陽性事象が検出されない場合に速度を増加させることで、合計分類時間が減少する。]
実施例4で説明されたように、分類が行われず、すべての液滴が陰性粒子導管(廃棄物)[5]を通過した場合、最大5200液滴/秒の流速が得られた。上流検出ゾーン[12]で陽性液滴が検出される場合、高い分類効果を得るために液滴流速が下げられる。上流検出ゾーン[12]で陽性液滴を検出するのに応答して、試料供給導管[1]に加わる圧力を制御するバルブは、低圧を供給するように一時的に切り替えられて、液滴流速を急速に下方調整する。減速時間は約0.8秒と測定された。高い液滴流速に戻るための加速時間は、0.1秒と概算された。液滴を分類するために必要な時間は0.1秒と概算され、分類の合計時間は約1秒となる。試料中の陽性液滴の数および全液滴の数に依存するが、2速システムは、以下の表2に示されるように合計分類時間を著しく短縮するであろう。
【0214】
【0215】
[実施例6:器具(Xdrop Sort)は、シングルエマルジョンおよびダブルエマルジョン液滴をも生成しうる。]
ダブルエマルジョン液滴産生カートリッジ(アイテム番号 CA10100、Samplix社、ヘアレウ、デンマーク)に、Madsen et al., 2020に記載されているように、8ラインのうち6ラインに、試料、オイル、およびdPCRバッファが装填された。ガスケットはカートリッジの上に配置され、アセンブリはそれから、本発明の器具(Xdrop Sort)内に挿入された。開始を押すと、Xdrop Sort器具は、液体を含む6×3ウェルに圧力を供給した。液体はそれから、ダブルエマルジョン液滴産生カートリッジのマイクロ流体エマルジョン形成部分を通って押し出され、ダブルエマルジョンが生成された。
【0216】
図18は、Xdrop Sort器具を使用して、装填された6ラインのうち6ラインで生成された、ダブルエマルジョン液滴を示す。
【0217】
シングルエマルジョン液滴産生カートリッジ(アイテム番号 CA20100、Samplix社、ヘアレウ、デンマーク)に、Madsen et al., 2020に記載されているように、8ラインのうち8ラインに、試料、オイル、およびdPCRバッファが装填された。ガスケットはカートリッジの上に配置され、アセンブリはそれから、Xdrop Sort器具内に挿入された。開始を押すと、Xdrop Sort器具は、液体を含む8ウェルに圧力を供給した。液体はそれから、シングルエマルジョン液滴産生カートリッジのマイクロ流体を通って押し出され、シングルエマルジョン液滴が生成された。
【0218】
図19は、Xdrop Sort器具を使用して生成された、シングルエマルジョン液滴の一例を示す。
【0219】
[実施例7:押出流体により、陽性液滴が分類ジャンクションから離れるように運ばれることを保証する。]
蛍光染色されたDNAを含むダブルエマルジョン液滴が、Madsen et al., 2020(Human Mutation doi: 10.1002/ humu.24063)の方法を使用して、生成された。
【0220】
Samplix dPCRバッファ(Madsen et al., 2020)が、押出流体およびスペーサ流体の両方として使用された。
【0221】
マイクロ流体チップは、試料供給導管のための入口である粒子試料入口[19]、スペーサ流体入口[18]、押出流体入口[17]、さらに分類済み陽性粒子出口[20]、および廃棄物(陰性粒子)出口[21]を備えていた(図3参照)。
【0222】
3つの入口は、対応するウェルを介して、すなわち押出流体供給ウェルまたは容器[26]、スペース流体供給ウェルまたは容器[27]、粒子試料供給ウェルまたは容器[28]、分類済み陽性粒子収集ウェルまたは容器[29]、および廃棄物収集ウェルまたは容器[30]を介して、6つの異なる正圧(0.1barg~5barg)および4つの周囲圧力または負圧(-1barg~0barg)からなる圧力システムに、操作可能に接続された。
【0223】
各入口または出口は、実施例2で説明されたように、2つの異なるレベルの圧力を受けるように配置された。
【0224】
押出入口の圧力は、押出バッファの小部分が廃棄物の流れ内に入ることができるように設定され、液滴が「分類」導管に入るのを防ぐ。
【0225】
分類を可能にするために、分類済み陽性粒子出口[20]の圧力は、相対的に低圧に変えられ、陰性粒子出口[21]の圧力は、相対的に高圧に変えられた。陰性粒子導管(廃棄物)[5]内の圧力に対する陽性粒子導管(分類済み液滴)[4]内の相対圧力が、より低くなったため、陽性粒子導管[4]内への流れが可能となる。
【0226】
ジャンクション点[2]に押出流体導管ジャンクション[36]を有するまたは有しない分類ユニットの機能は、図20に模式的に図示される。図は、押出流体が常にジャンクション内に流れ、分類済み陽性粒子が分類レーン内にさらに移動することができる状況を図示する(図の上段)。代わりに押出バッファシステムを有しないジャンクションが使用される場合、分類済み陽性粒子はゲート(陽性粒子導管のジャンクション点)に留まるであろう。このことは、分類済み陽性粒子が廃棄物の流れ内に引き戻されるリスクを、著しく増加させる(図の下段(図20E~H)参照)。
【0227】
図21は、押出流体導管ジャンクションを有するジャンクション点を備える、本発明に従った分類ユニットにおける、陽性液滴のリアルタイム分類を図示する。図は、液滴が廃棄物導管内への流れを再開した後も、陽性液滴が分類レーン内に移動し続ける様子を示す。上段と下段のパネルは、液滴が下段のパネルでベタの白黒に塗られていることを除いて同じである。写真は6msの時間間隔で撮影される。
【0228】
[実施例8:速度変化およびスペースバッファの追加は、1秒未満で達成されうる。]
速い全体の分類時間を達成するために、高速から低速へおよび低速から高速への変化が、短時間で達成されうることが不可欠である。速い流速変化を実証するために、実施例7に記載されたシステムが採用された。
【0229】
液滴は、約5000液滴/秒で供給導管を通過した。上流検出ゾーンで陽性粒子を検出するのに応答して、分類済み陽性粒子出口[20]の圧力は、相対的に高圧から相対的に低圧に変えられ、同時にスペーサ流体出口の圧力は、相対的に低いレベルから相対的に高いレベルに変えられた(圧力の例について表4参照)。その結果、図22のパネルAおよびBに図示されるように、試料供給導管の下流部分で、粒子の間隔が急速に広がる。パネルAは1.135sにタイムスタンプされ、パネルBは2.003sにタイムスタンプされた。タイムスタンプにより、液滴の流速が18液滴/秒の遅い値に達した時を、正確に知ることができた。
【0230】
短時間での流速増加の速さを実証するために、分類済み陽性粒子出口を相対的に低圧から相対的に高圧に変え、同時にスペーサ流体出口の圧力を相対的に高圧から相対的に低圧に変えることによって、圧力は速い流れ操作に回復した。この結果、供給導管内の流速は全体的により高くなり、スペーサ導管内の流速はより低くなる。図22パネルCは4.655sにタイムスタンプされ、パネルDは4.770sにタイムスタンプされた。
【0231】
表3は、速度変化の結果を要約する。
【0232】


【0233】
【0234】
[実施例9:Xdrop Sortシステムを使用する濃縮]
[液滴の調製]
Madsen et al., 2020(Human mutation doi: 10.1002/humu.24063)に記載されているように、Xdrop dPCR独自の液滴生成技術を使用して、ダブルエマルジョン液滴の8つの試料が作成された。ダブルエマルジョン液滴は、本発明に従った器具、すなわちXdrop Sort器具の実施形態上で、ダブルエマルジョン産生カートリッジ(Samplix社 アイテム番号 CA10100)および標準実行パラメータ(生成時間40分)を使用して、生成された。
【0235】
簡単に言うと、PCR試薬および酵素、両方ともヒトTP53に向けられた0.2μMのPCRフォワードプライマー(TP53_D_F1)および0.2μMのPCRリバースプライマー(TP53_D_R3)、および10ngヒトゲノムDNAを含む、8つの試料の各々40μLが、カートリッジの試料ウェル内に装填され、オイルがオイルウェル内に装填され、および外部水性バッファがバッファウェル内に装填された。カートリッジがXdrop Sort器具内に挿入され、ダブルエマルジョン生成プログラムを使用して、器具のスクリーンから液滴生成が開始された。Xdrop Sort器具はそれから、8つのレーンに正圧を加え、それにより3つの液体をカートリッジ下のマイクロ流体構造内に送り、1レーンあたり800万~1000万のダブルエマルジョン液滴を産生した。液滴は、ダブルエマルジョン液滴産生カートリッジの出口ウェルから収集され、PCRチューブに移された。エマルジョン試料は、下記のプログラムでPCRサイクルが行われた:1×[94℃、2分]、40×[(94℃、3秒)、(60℃、30秒)]。
【0236】
TP53_D_F1: GGTGTGATGGGATGGATAAA (SEQ ID NO:1)
TP53_D_R3: CCCTGCATTTCTTTTGTTTG (SEQ ID NO:2)
【0237】
液滴生成に続いて、TP53 PCR反応陽性の液滴の頻度が、FACS解析により定量化された。頻度は、約0.01%であると決定された。液滴生成の結果、ダブルエマルジョン液滴(水-オイル-水)とシングルエマルジョン液滴(オイル-水)との約50:50の混合物となった。
【0238】
[分類]
200μLのダブルエマルジョン液滴は、それらを40μLのSYTO24色素(Thermo Fisher Scientific)を含む液滴生成のための外部バッファ1mL溶液に加え、それらを暗所で5分間インキュベートすることにより、蛍光染色された。
【0239】
8試料分類カートリッジは、2μLのフルオロカーボン水中オイル液滴(直径16μm)を出口ウェル([29]図7)に装填することにより、2つの並行する試料を分類するために、準備された。これらの液滴は、カートリッジ内の空隙および表面を埋めることによって、分類済みダブルエマルジョン液滴の回収率を改善する。それから600μLおよび300μLの外部ダブルエマルジョン液滴バッファが、分類カートリッジの対応する入力ウェルに加えられた。手順は、2番目の試料について繰り返された。最後に、200μLのダブルエマルジョン試料が、粒子試料供給ウェル([28]図7)に加えられた。未使用のレーンは、薄いカバーフィルムによって覆われた。カートリッジは、ガスケット内の専用穴を通してカートリッジの個々のウェルと器具との間の圧力接続を可能にしたまま、カートリッジと器具との間の圧力密着を保証するために作られた、ゴム製ガスケット[202]によって覆われた。分類は、器具のスクリーンから分類ボタンを押すことにより開始された。圧力およびレーザーの設定は、以下の通りであった:
【0240】
【0241】
【0242】
器具の設定は、ある事象が真の陽性事象(陽性液滴)とみなされる限度を設定し、検出ゾーン1(上流検出ゾーン)および検出ゾーン2(下流検出ゾーン)での検出からバルブ応答までの遅延を決定する。
【0243】
器具のタッチスクリーン[1501]から閾値が調整され、これにより分類は自動的に1時間進行し、各レーンについて合計800万~1000万液滴を分類した。器具は、それぞれ678個と1022個の陽性分類済み液滴を数えた。
【0244】
液滴は分類後にカートリッジから回収され、回収されたエマルジョンは破壊溶液(break solution)を加えることにより脱エマルジョン化され(合体され)、濃縮されたTP53領域DNAを含む水相は、Madsen et al., 2020(Human mutation doi: 10.1002/humu.24063)に記載されているように、濃縮のMDA増幅およびqPCR定量のために使用された。2つの試料でそれぞれ、120倍および258倍の濃縮が達成された。
【0245】
試料の小部分を顕微鏡により検査したところ、陽性液滴が正しく回収されていることが確認された。
【0246】
[実施例10:XdropSortシステムを使用する哺乳類細胞の分類]
本実施例は、液滴内にカプセル封入されない単細胞懸濁液として懸濁された細胞を、システムが分類できることを示す。
【0247】
[方法]
Ramos B細胞が、細胞密度1×10細胞/mLに達するまで、培地(20%HI FBS入りRPMI-1640)で培養された。15×10の細胞が20μm細胞濾過器を通して濾過され、それから300×gで10分間遠心分離された。上澄みが除去され、細胞が320μlのXdropSortingバッファに再懸濁された。これらの懸濁液から100000細胞(20μl)が分取され、180μlの培地および20μlのCalceinAM染色(40nM)を加えた。染色した細胞は、37℃、5%COで30分間保持され、その後残りの染色は、1mlの培地で細胞を洗浄することにより除去され、300×gで10分間遠心分離され、1mlのXdropSortingバッファに再懸濁された。染色された細胞は、染色されていない細胞と~1:10000の割合で混合された。
【0248】
XdropSortカートリッジは、2μLのブランク液滴を陽性液滴ウェルに、600μLの分類バッファを押出流体供給ウェル[26]に、300μLの分類バッファをスペース流体供給ウェル[27]に加えることにより、装填された。最後に、150μLの細胞懸濁液が、粒子試料供給ウェル[28]に加えられた。器具が開始され、検出ゾーン1および検出ゾーン2の両方で、細胞には応答するがバックグラウンドには応答しないように、スクリーン上で閾値が調整された。器具の読み出しから、検出への応答として、器具が対応するバルブを正しく切り替えたことを知ることができた。器具は、42の陽性事象が陽性液滴ウェル内に分類されたことを示した。陽性液滴ウェルの内容物がピペットで収集され、スライドガラスに移された。
【0249】
[結果]
図37は、分類サイクル中に器具により記録された信号の一例を示す。
【0250】
パネルBおよびDは、検出ゾーン1および2でそれぞれ細胞により産生される信号を描く。パネルAおよびCは、対応するバルブ段階を示す。
【0251】
はじめに、細胞が上流検出ゾーン1(DZ1)に入り、信号が器具によって記録された(DZ1信号のダブルピーク)。定められた遅延の後、圧力バルブは、高いスクリーニング圧力から低い分類圧力に切り替えられた(線が上昇する)。この時点で、器具は下流検出ゾーン2(DZ2)から信号を受けるのを待っていた。細胞がDZ2に達したとき、信号が記録され、それが分類(II.)および廃棄物(III.)の作動を引き起こし、細胞が流れから陽性分類済みチャネル内に引き出された。チャネルの設計上、細胞はDZ2を2回通過しそれが記録された(2回目のDZ2ピーク)。この2回目の信号は、分類事象が成功したことを確認する。
【0252】
分類および廃棄物バルブの作動後、分類サイクルが完了し、次の陽性事象を探索するために、器具は高圧のスクリーニングモードに戻る(線I、II、およびIIIが下降する)。
【0253】
顕微鏡では、30個の非蛍光細胞につき約1個の蛍光細胞が観察された。試料中の染色細胞の濃度が1:10000であったので、このことは、染色細胞が約330倍に濃縮され、うまく分類されたことを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図20
図21
図22
図23
図24
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図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
【配列表】
2023553277000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体媒体内の粒子を分類するためのシステムであって:
少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを備えるカートリッジ;
ここで前記ユニットは、
(i)分類ジャンクションに試料流体を供給するための、少なくとも1の試料供給導管[1];
前記試料流体は、分類されるべき陽性および陰性粒子の混合物を含む;
(ii)前記分類ジャンクションから陽性粒子を含む流体を取り除くための、少なくとも1のマイクロ流体分類済み陽性粒子導管[4]、
(iii)前記分類ジャンクションから陰性粒子を含む廃棄物流体を取り除くための、少なくとも1のマイクロ流体廃棄物導管[5]、
および
(iv)前記分類ジャンクションに押出流体を供給するための、少なくとも1の押出流体導管[3]
を備え;
前記分類ユニットは、少なくとも4つのマイクロ流体導管(i)、(ii)、(iii)および(iv)が、前記分類ジャンクション[2]で会合することを特徴とし;
前記カートリッジは、前記分類ジャンクションの上流の前記試料供給導管(i)内の陽性粒子を検出するための、少なくとも1の検出ゾーンをさらに備え;
および
前記分類ジャンクションの上流の前記供給導管内の陽性粒子を検出するのに応答して、前記少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを通る流体の流れを制御し、および前記試料供給導管内の粒子の流速を一時的に減少させる器具
を備え
前記粒子は、ダブルエマルジョン液滴である
システム。
【請求項2】
請求項1に記載されたシステムであって、
前記少なくとも1のマイクロ流体分類ユニット[9]は、
(v)分類されるべき前記粒子を含む前記試料流体内にスペーサ流体を供給するために、前記試料供給導管[1]内において前記分類ジャンクション[2]の上流に配置される、スペーサ流体導管[11]およびスペーサ流体ジャンクション[10]
をさらに備える
システム。
【請求項3】
請求項2に記載されたシステムであって、
少なくとも2つの別々の検出ゾーンを備え;
上流検出ゾーン[12]は、粒子を前記スペーサ流体ジャンクション[10]に達する前に検出するために、前記スペーサ流体ジャンクション[10]の上流に配置され、
および
下流検出ゾーン[13]は、陽性粒子を前記分類ジャンクション[2]に入る前に検出するために、スペーサ流体入口の下流に配置される;
システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記カートリッジは、前記試料流体、前記廃棄物流体、および分類済み陽性粒子流体を含む、前記分類を達成するために必要な流体の全体積を収容できる、流体のための1組のウェル(well)または容器を備える
システム。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記分類ジャンクションの上流で陽性粒子を検出するのに応答して、スペーサ流体入口[18]に空気圧を作用させることによって、分類事象を誘発するための手段を備える
システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記分類ジャンクションの上流で陽性粒子を検出した後、1秒以下の間一時的に、前記試料供給導管内の粒子の流速を減少させるための手段を備える
システム。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記押出流体および前記スペーサ流体の両方が、水性流体である
システム。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記分類済み陽性粒子導管[4]および前記廃棄物導管[5]に可変の負圧を加えるための手段を備える
システム。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記カートリッジは、2以上の分類レーンを備え、
および
前記2以上の分類レーンは、対で構成される
システム。
【請求項10】
請求項に記載されたシステムであって、
前記少なくとも1の検出ゾーンは、分類レーン対の少なくとも2つの別々の粒子供給導管の部分を備える
システム。
【請求項11】
請求項または10のいずれか一項に記載されたシステムであって、
分類レーンの各対は、上流検出ゾーン[12]および下流検出ゾーン[13]を備える
システム。
【請求項12】
請求項11のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記器具は、前記上流検出ゾーンで、分類レーン対の2つの別々の液滴試料供給導管からの信号を検出し、
および
前記2つの試料供給導管の各々は、検出ループを備え、および前記2つの検出ループは、異なる長さである
システム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記下流検出ゾーンは、正しい分類が行われたかどうかを前記器具が検出できるように設計される
システム。
【請求項14】
請求項13のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記2以上の分類レーンは、同じ圧力供給源に空気圧的に接続される
システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記器具は、前記カートリッジにフィットし、前記カートリッジを通る前記流体を制御しおよび駆動するように設計されているのに加え、シングルエマルジョン液滴を生成するように作られたカートリッジ、およびダブルエマルジョン液滴を生成するように作られたカートリッジを通る前記流体にフィットし、制御しおよび駆動するようにも設計される
システム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載された少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを備えるカートリッジであって、
前記ユニットは:
(i)分類ジャンクションに試料流体を供給するための、少なくとも1の試料供給導管[1];
前記試料流体は、分類されるべき陽性および陰性粒子の混合物を含む;
(ii)前記分類ジャンクションから陽性粒子を含む流体を取り除くための、少なくとも1のマイクロ流体分類済み陽性粒子導管[4]、
(iii)前記分類ジャンクションから陰性粒子を含む廃棄物流体を取り除くための、少なくとも1のマイクロ流体廃棄物導管[5]、
および
(iv)前記分類ジャンクションに押出流体を供給するための、少なくとも1の押出流体導管[3]
を備え;
前記分類ユニットは、少なくとも4つのマイクロ流体導管(i)、(ii)、(iii)および(iv)が、前記分類ジャンクション[2]で会合することを特徴とし;
前記カートリッジは、前記分類ジャンクションの上流の前記試料供給導管(i)内の陽性粒子を検出するための、少なくとも1の検出ゾーンをさらに備え;
前記粒子は、ダブルエマルジョン液滴である
カートリッジ。
【請求項17】
請求項1~15に記載されたシステムであって、
前記器具は、2つの直線的な検出ゾーン、すなわち前記上流および前記下流検出ゾーンを形成する光学システムを備える一体型ユニットを形成する光学ヘッドを備え;
前記光学ヘッドは、陽性粒子の検出のために必要な光学系および検出器をさらに備える;
システム
【請求項18】
請求項17に記載されたシステムであって、
前記器具は、陽性粒子レーザー誘導蛍光信号によって検出するように適応される
システム
【請求項19】
請求項18に記載されたシステムであって、
前記器具は、前記上流および前記下流検出ゾーン内の両方で陽性粒子から発せられる前記蛍光信号、単一のレンズシステムを通して集めるように適応される
システム
【請求項20】
請求項1719のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記器具は、前記カートリッジを前記光学システムと位置合わせする(align)自動位置合わせ(alignment)システムを備え、
前記位置合わせシステムは、前記光学ヘッドをX-Y平面内で動かすことにより前記光学システムと前記カートリッジとを位置合わせする、3つのアクチュエータを備える
システム
【請求項21】
請求項1~15および17~20のいずれか一項に記載されたシステムであって、
前記器具は、可変の正圧および可変の負圧の両方で操作する空気圧システムによって、前記少なくとも1のマイクロ流体分類ユニットを通る流体の流れを制御する
システム
【請求項22】
請求項21に記載されたシステムであって、
前記空気圧システムは、マイクロ流体システムに高い正圧または低い正圧を供給することができる1組の方向制御バルブと、前記マイクロ流体システムに可変の負圧または周囲圧力を供給することができる別の1組の方向制御バルブとを備える
システム
【請求項23】
請求項1~15および17~22のいずれか一項に記載されたシステムの使用を含む粒子を分類するための方法であって、
前記粒子は、ダブルエマルジョン液滴であり、
前記方法は以下の各ステップ:
i.粒子を含む試料流体を供給するステップ、
ii.請求項16に記載されたマイクロ流体カートリッジであって、以下を備えるカートリッジを供給するステップ;
押出流体の体積を備える供給ウェルまたは容器、
スペーサ流体の体積を備える供給ウェルまたは容器、
および
前記粒子試料流体の体積を備える供給ウェルまたは容器;
iii.前記カートリッジを前記器具内に挿入するステップ、
iv.前記システム上で前記分類を開始するステップ、
および
v.前記分類が完成した後に、前記分類済み陽性粒子を適切な容器内に移すステップ;
を含み;
粒子の流速は、前記カートリッジの前記上流検出ゾーン[12]で前記器具によって陽性信号が検出されるのに応答して、一時的に減少する
方法。
【請求項24】
混合核酸分子の試料から1または複数の標的核酸分子を濃縮するためのインビトロ方法であって、以下の各ステップ:
i.少なくとも1または複数の特定の標的核酸分子と、前記標的核酸分子の少なくとも1を特定的に検出するための少なくとも1の試薬とを含む、混合核酸分子の液体試料を供給するステップ、
ii.前記液体試料から、混合核酸分子を各々含む複数のダブルエマルジョン液滴を含むエマルジョンを、形成するステップ、
iii.少なくとも1の特定の標的核酸分子を含む液滴内で、特定の検出可能な反応を得るために、エマルジョン液滴をインキュベートするステップ、
iv.反応させた液滴を、請求項1~15および17~22のいずれか一項に記載された液滴を分類するためのシステム内に装填するステップ、
v.前記システムを使用して、マイクロ液滴を分類するステップ、
vi.分類済み液滴を適切な容器内に集め、前記分類済み液滴を合体させるステップ、
および
vii.ステップviからの合体され選択された液滴を、一般的な増幅手順に従わせるステップ;
を含む方法。
【請求項25】
請求項23~24のいずれか一項に記載された方法のうち、いずれかを実行するための部品のキットであって:
a)請求項16に記載された少なくとも1のカートリッジ、
b)粒子を分類するためのシステムの器具に前記少なくとも1のカートリッジをフィットさせるための、具体的には請求項1~15または17~22のいずれか一項に記載されたシステムの器具にフィットさせるための、少なくとも1のガスケット
前記粒子は、ダブルエマルジョン液滴である;
および
c)前記少なくとも1のカートリッジによって準備される分類の数を行うのに十分な量のバッファ(buffer)流体の、少なくとも1のバイアル;
を備える
キット。
【国際調査報告】