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特表2023-553289熱中症の現場治療用の装着可能冷却装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】熱中症の現場治療用の装着可能冷却装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/10 20060101AFI20231214BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61F7/10 300Z
A41D13/005 103
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530957
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 GB2021053027
(87)【国際公開番号】W WO2022106855
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】2018373.7
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523189381
【氏名又は名称】クライオジェネックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CRYOGENX LIMITED
【住所又は居所原語表記】Central Research Laboratory, 252-254 Blyth Road, Hayes Middlesex UB3 1HA (GB).
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン, マット
【テーマコード(参考)】
3B211
4C099
【Fターム(参考)】
3B211AA00
3B211AB09
3B211AC01
3B211AC12
3B211AC21
4C099AA02
4C099CA09
4C099CA11
4C099CA12
4C099EA01
4C099GA02
4C099HA03
4C099LA01
4C099LA07
4C099LA08
4C099LA14
4C099LA21
4C099NA02
4C099NA05
(57)【要約】
パッド(4)と、吸気弁(6)と、流路(8)と、熱伝導性の膜(10)と、を備える装着可能な冷却装置(2)。流路(8)は、パッド(4)の表面内に形成された、側面が開いた凹部であり、パッド(4)は、流路(8)の開いた側面が膜(10)によって被覆されるように、膜(10)に固定されている。被覆された流路(8)は、パッド(4)と膜(10)との間に配設された導管(11)を形成し、導管(11)の壁はパッド(4)の表面及び膜(10)の表面を含み、吸気弁(6)が導管(11)と流体連通して配設されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着可能な冷却装置(2)であって、
パッド(4)と、吸気弁(6)と、流路(8)と、熱伝導性の膜(10)と、
を備え、
前記流路(8)は、前記パッド(4)の表面内に形成された、側面が開いた凹部であり、前記パッド(4)は、前記流路(8)の前記開いた側面が前記膜(10)によって被覆されるように前記膜(10)に固定され、
前記被覆された流路(8)は、前記パッド(4)と前記膜(10)との間に配設された導管(11)を形成し、前記導管(11)の壁は前記パッド(4)の前記表面及び前記膜(10)の表面を含み、
前記吸気弁(6)は前記導管(11)と流体連通して配設されている、
冷却装置(2)。
【請求項2】
複数のパッド(4)が、前記パッド(4)が互いに対して関節運動するように接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記パッドはプレス加工されたシートである、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
シートが前記流路(8)の前記開いた側面を被覆し、前記膜(10)と前記パッド(4)との間に固定されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記流路(8)の前記開いた側面を被覆する前記シートは、前記シートが前記パッド(4)に固定されると導管が形成されるように、前記シート表面内に形成された相補的な流路を有する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記流路(8)は、前記膜(4)の前記表面内に形成された、側面が開いた凹部であり、前記パッド(4)は前記膜(10)に隣接して固定されて、前記流路(8)の前記開いた部分が前記隣接するパッド(4)によって被覆されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記流路(8)は、前記パッド(4)及び前記膜(10)の両方の前記表面内に配設された、側面が開いた凹部であり、前記流路(8)の前記開いた部分が前記隣接するパッド(4)及び前記隣接する膜(10)によって被覆されている、請求項1又は3に記載の装置。
【請求項8】
前記膜(10)は、熱伝導を促進する材料を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記膜(10)は高含水化成皮膜を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記膜(10)はヒドロゲルを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記吸気弁(6)と流体連通した圧縮ガス(12)のキャニスタ(13)を更に含み、前記吸気弁(6)を介して圧縮ガス(12)を前記導管(11)に注入するように構成された、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記圧縮ガス(12)は二酸化炭素である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記キャニスタ(14)は軽量かつ持ち運び可能である、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記キャニスタ(14)は圧縮ガス(12)を高速で注入するように構成されている、請求項11~13に記載の装置。
【請求項15】
前記導管(11)に注入される前記ガス(12)の温度が、前記キャニスタ(14)からのガス(12)の流速によって制御される、請求項11~14に記載の装置。
【請求項16】
前記ガスキャニスタ(14)は、圧縮ガス(12)を放出するのに電力を必要としない、請求項11~15に記載の装置。
【請求項17】
前記流路(8)は断面がU字形である、請求項1~16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記流路(8)は前記パッド(4)又は前記膜(10)の前記表面内に成形されている、請求項1~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記流路(8)は螺旋状である、請求項1~18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記流路(8)は内向き螺旋状である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
複数の流路(8)を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記複数の流路(8)によって形成された前記螺旋は格子状に配設されている、請求項21と組み合わせた請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記流路(8)の経路は鋭角の曲がりを含まない、請求項1~22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記パッド(4)はポリウレタンを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記流路(8)の前記表面は滑らかである、請求項1~24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記パッド(4)は軟質フォームを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記軟質フォームは自己拡張式ポリウレタンを含む、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記パッド(4)は高強度の軟質ウレタン接着剤によって前記膜(10)に接着されている、請求項1~27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記膜(10)は、前記膜(10)と前記パッド(4)との間に位置する前記表面に接着された柔軟なメッシュを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記パッド(4)は、皮膚に接着する材料を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記パッド(4)は絶縁材料を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の装置。
【請求項32】
前記膜(10)は、ヒドロゲルの硬化シートである、請求項1~31のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
前記流路(8)内に配設された親水コロイドを更に含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
患者の胴部の周囲にフィットするように形成された、請求項1~33のいずれか一項に記載の装置。
【請求項35】
前記患者の胸部へのアクセスを可能にするように更に形成された、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
患者の腿の周囲にフィットするように形成された、請求項1~33のいずれか一項に記載の装置。
【請求項37】
前記吸気弁(6)は二方向スプリッタ弁である、請求項1~36のいずれか一項に記載の装置。
【請求項38】
前記吸気弁(6)は四方向スプリッタ弁である、請求項1~37のいずれか一項に記載の装置。
【請求項39】
排気弁(16)を更に含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の装置。
【請求項40】
前記排気弁(16)は、二酸化炭素捕捉用のソーダ石灰フィルタを含む、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記装置は持ち運び可能である、請求項1~40のいずれか一項に記載の装置。
【請求項42】
請求項1~41のいずれか一項に記載の装置を製造するための方法であって、
a)前記パッド(4)を成形型によって形成する工程と、
b)前記成形型に背圧を加えて、前記パッド(4)の前記表面を緻密化させる工程と、
を含む、方法。
【請求項43】
プレスを使用して前記流路(8)を形成する工程を更に含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
請求項1~43のいずれか一項に記載の装置の装着者の美容生理学的応答をもたらす方法であって、
a)前記装着者の生理学的局面を監視する工程と、
b)前記装着者の好みに合わせて前記装置の冷却効果を変更する工程と、
を含む、方法。
【請求項45】
前記生理学的局面は、皮膚温度、及び/又は皮膚の色、及び/又は皮膚の湿り気、及び/又は発汗量を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記装着者の前記好みは、前記監視された生理学的局面が所定のしきい値に達すると前記装置の前記冷却効果を増大させることである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記冷却効果は、前記装着者が赤ら顔であるように見えるか、及び/又は熱いか、及び/又は皮膚が乾いているか否かに基づいて変更される、請求項44~46のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱中症の現場治療用の冷却装置に関し、排他的ではないがより具体的には、熱中症の現場及びインサイチュでの早急な治療のための複数のシナリオに配備することの可能な、小型で持ち運び可能な軽量の応需型装着可能冷却装置に関する。この装置はまた、身体全体を冷やすことが有益な、また排他的ではないが具体的には、大型で持ち運びのできない全身冷却装置を提供することが困難な環境における、一般的な治療用途及び健康管理用途に使用可能であることも想定されている。
【背景技術】
【0002】
熱ストレス及び熱ストレスによって引き起こされる熱中症は、例えば、防衛、労働産業、スポーツ産業及び健康管理の分野を含む世界中の数多くのセクターの機能に重大な悪影響を及ぼす。
【0003】
熱中症は、重篤な疾患、障害及び死亡の原因であるものの、多くの場合は予防可能であり、リハビリの必要性もほとんどの場合は回避可能である。英国軍兵士の罹患事例の大多数は身体訓練中に発生し、特にリスクが高い短時間のタイムトライアルでの集中的な激しい運動では、兵士が非常に短時間で重篤な状態となるおそれがある。熱ストレスへの曝露は、体力評価や厳しい訓練などの陸上での身体運動の際に発生しやすい。しかし、高い熱ストレス環境での消防訓練、派兵先での建設作業、空軍基地での積載作業などの過酷な活動を実施している海軍では、三部門全てにまたがる明らかな必要性が示されている。
【0004】
熱中症は、環境負荷と代謝性の熱産生との組み合わせによって引き起こされる、広範囲にわたる疾患を構成する。熱中症は、身体から熱を効率的に放散させることができないために身体の温度調節系が打ち負かされた時に起こる。そのような状態は病態生理学的に複雑であり、その機序は完全には解明されていない。その発症、症状及び重篤度は、状況により、また多くのしばしば未知の要因に影響される個人の熱中症への感受性により様々である。
【0005】
しかしながら、熱中症が医療上の緊急事態であり、深部体温を低下させるための積極的な冷却措置によって迅速に治療しなければ数時間のうちに永続的な障害又は死を招くおそれがあることは、広く知られている。
【0006】
熱への心理学的耐性及び生理学的耐性に個人差があることは、単一のガイドライン又は手順のみでは全ての人の安全を確保するには不十分であることを意味している。心理的障壁は診断及び治療を更に複雑化させ、軽度の熱中症に「負けずに頑張る」ことは極めて危険であり、命を脅かす事態となりかねない。このことは主に、訓練及び評価中にとりわけ高いレベルの身体運動を強いられる兵士に当てはまる。
【0007】
身体運動時の熱射病として見なされることの多い重篤な熱中症は、医療上の緊急事態であり、数時間以内に身体の機能を永続的に損なう障害や死を招きかねない。特に治療に遅延がある場合は、短期及び長期双方の合併症の重大なリスクが存在する。熱中症の重篤度及び回復性は、深部体温の上昇の強度及び持続時間に直接に影響される。積極的な現場冷却による迅速な対応は、障害の重篤度と、後続の一次医療及びリハビリの要否の鍵である。
【0008】
英国及び諸外国で熱中症の結果として起こる生命及び健康への重大な影響のほぼ全ては、リスク要因を十分に検討して適切に対処すれば予防可能である。熱中症への適切な対処は、積極的な冷却技術によって深部体温を迅速に低下させる能力を必要とする。
【0009】
深部体温を低下させる最も有効な治療方法は、0.35℃/分の冷却速度を実現可能な全身氷水浸漬(ice water immersion、IWI)であると考えられる(Journal of Athletic Training)。2℃での30分間の全身IWIには、一人当たりおよそ300Lの水及び100Lの氷が必要とされることに加えて、貯蔵及び運搬に係る要件も存在する。IWIはきわめて有効な方法であるが、資源の量及び物流計画のレベルから、ほとんどのシナリオでは実施不可能である。
【0010】
より容易ではあるが、効果及び信頼性の点でかなり劣る治療方法に、気化冷却がある。気化冷却では、皮膚に冷水を噴霧するか又はスポンジで当て、送風する。気化法の冷却速度は0.035℃/分~0.175℃/分であることが報告されている(Journal of Athletic Training)。これは、複数の国内医学雑誌に述べられている0.15℃/分の最も短い実行可能な冷却速度を包含する。気化冷却法のほとんどは、0.15℃/分の最も短い実行可能な冷却速度を達成できない。IWIと同様に、気化冷却には効果的に配備することのできる環境条件に制約がある。例えば湿度が高い場合には、蒸発による放熱が大きく減少し、プロセスの効果が大幅に低下する。
【0011】
気化冷却は、IWIと比較して効果が劣るために、熱中症がより重篤となって医療施設に避難し、必要なリハビリが長期化するケースが多くなる。資源が不足しているか又は入手できない場合には、効果の低い間に合わせの冷却方法が用いられ、そのために患者の予後に深刻な影響が長期にわたって残るおそれがある。
【0012】
熱中症の現場治療に使用される既知の持ち運び可能な冷却用製品は非常に少ない。例えば、英国国防省の熱中症及び凍傷医療管理ガイダンス(Ministry of Defence Heat Illness and Cold Injury Medical Management guidance)のSection 1.4、JSP 539 v3.1に詳述されているように、気化冷却(噴霧及び送風)の使用が推奨されているが、これは上述のように、IWIと比較すると効果がかなり劣る方法である。気化冷却は、水の蓄えと、個人に対する対流を生じさせる能力とに依存する。加えて、気化冷却は、効果的に配備できる環境条件に制約がある。湿度が高いと、蒸発による放熱が大幅に少なくなり、プロセスの効果が大きく低下する。更に、この技術は、傷病者の初期救護活動(傷病者の空輸による避難)中にはほぼ実施不可能である。環境条件及び資源の入手可能性が多様であるために、治療の質が大きく変動する。
【0013】
臨床環境では、高熱の患者の治療用に体温管理療法が用いられており、例えば米国特許出願公開第2019151141号明細書に開示の病院又は類似の環境で投与される熱治療装置では、熱を患者の身体から奪って冷やすことができるように、患者の身体にパッドを巻き付けて液体又は圧縮ガスを流す。しかし、そのような装置を入院治療パラメータの範囲外で配備することは全く不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
熱中症を治療するための既知の持ち運び可能かつ装着可能な一体型冷却システムが、米国特許第2020281284号明細書に開示されている。これには、冷却流体が管路及びポンプによって衣服に送り込まれる、持ち運び可能かつ装着可能な冷却システムが記載されている。冷却流体は、取り外し可能かつ交換可能なカートリッジに入れて供給され、ポンプが、管路を介して装着者に冷却効果を与える袋体へと冷却流体(例えば水)を流入させる。
【特許文献1】米国特許第2020-281284号公開公報
【0015】
この装置は、「高体温症の発症を防止するために」激しい運動を行っている間装着されるように設計され、従って軽量で持ち運び可能であり、装着者は装着中も自由に動くことができる。この装置の交換可能なカートリッジは、液体式であってもゲル式であってもよく、又は膨張すると冷える圧縮ガスで満たされていてもよい。
【0016】
別の既知の装着可能な装置は、深部体温を低下させるための吸熱性の体温低下装置であるCAERvest(登録商標)である。
【0017】
CAERvest(登録商標)は、1時間の最大冷却能力を有し、1個当たりの価格が約500英ポンドの使い捨て製品である。この製品は、米国軍、ロンドンマラソン、ロンドン航空救急サービス、並びに米国、オーストラリア、シンガポール及びアラブ諸国における複数の建設会社を含む複数の市場の数多くの知名度の高い顧客向けに提供されている。しかしCAERvest(登録商標)には、その有効性及び用途を限定する多くの重大な欠点がある。例えば、特にCAERvest(登録商標)の冷却能力は、多くのケースで効果を発揮するのに十分な程には有効でない。
【0018】
正常体温の個人を対象とした2014年の臨床前試験におけるCAERvest(登録商標)の冷却速度は、0.01℃/分であった。これは、熱中症で必要な最低冷却速度よりも10倍遅い。更に、参加者は全員が男性であった。この製品を女性に対して使用する際の有効性に関しては重大な疑義が存在する。乳房組織の周囲にあまりフィットしないために、皮膚表面を覆う面積が少なくなり、その結果、冷却能力が低下する。2015年に、CAERvest(登録商標)がロンドンマラソンで高体温症の男性の個人に対して使用されたが、冷却速度は0.1℃/分であり、とりわけIWIと比較した場合に効果が著しく低かった。このケースでは、冷却を開始するのに他の冷却方法が既に使用されていたため、CAERvest(登録商標)の性能は更に疑わしい。
【0019】
更に、装置の設計上、冷却の有効性が使用者の体格及び体型によって変動する。畝のある構造が皮膚との接触を少なくし、熱伝導、ひいては放熱を制限する。
【0020】
この製品は、一部の状況では適切な冷却方策を提供するが、冷却能力が乏しく、製品機能の有効性が低いために、性能が一貫せず、活用シナリオが限られる装置となってしまっている。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、CAERvest(登録商標)及び他の既知の従来技術の全ての短所に対処する。本発明は、様々な体型で使用可能であり、かつ男性と女性との双方で等しく有効であるように設計されている。また、本発明の冷却持続時間は1時間に限定されない。以下に詳述するように、本発明は、十分なガス供給が得られる場合には単一のセットで一定のレベルの冷却を行うことの可能なパッドを使用する。
【0022】
本発明の目的は、従来の治療の上述の欠点を克服する、熱中症の現場治療用の装着可能かつ持ち運び可能な急速冷却装置を提供することである。
【0023】
本発明によれば、添付の独立装置請求項に記載の装着可能な冷却装置が提供される。導管の壁が膜及びパッドの双方によって形成されている。従って、導管に沿って注入された流体は、熱伝導によってパッド及び膜の双方と同時に相互作用する。
【0024】
本発明の更なる好適な特徴は、添付の従属装置請求項において定義される。例えば、流路が(パッドではなく)膜のみの表面内に形成され、流路の開いた側面が(膜ではなく)パッドで被覆されていてもよい。そのような配置は、導管に沿って注入された流体が熱伝導によってパッド及び膜の双方と同時に相互作用することを可能にするのと同じ効果を有する。
【0025】
本発明の更なる態様によれば、添付の独立方法請求項に記載の上記の装置の製造方法も提供される。この方法の更なる好適な特徴は、添付の従属方法請求項において定義され得る。
【0026】
本発明の装置を、例えば人前でパフォーマンスを行う時などの暑いか又はストレスの多い状況で、装着者が過剰に汗をかいたり、赤ら顔になったりすることを防ぐために使用することも可能である。本発明の装置は、衣服の下に装着して、その存在が分からないように完全に覆い隠すことができる程度に十分に軽量で持ち運び可能である。本発明の装置を、強いストレスのかかる状況で、かつ汗をかくことがパフォーマンスの差し障りとなるようなプロフェッショナルな場面で、なるべく緊張しているように見えないようにするため、又は汗をかかないようにするために使用すると有利であろう。
【0027】
熱中症に罹患している個人は、様々な美容症状を呈する。例えば、脱水症状、異常な心理状態、錯乱、めまい、及び/又はけいれんなどを起こしていると考えられる個人の場合、発汗及び皮膚状態を見分けることは難しい。皮膚の生理機能は、熱中症の様々な段階及び重篤度(熱失神、熱けいれん、熱性疲労、熱射病)を通して変化する。典型的には、熱性疲労に罹患している個人は、皮膚が冷たく青ざめて湿り、大量に発汗している。対照的に、熱射病に罹患している個人は、皮膚が熱く赤らんで乾き、発汗しなくなる。本発明の装着者の上述の生理学的局面はいずれも監視可能であり、冷却効果は適切に、又は装着者の好みに合わせて増減させることができる。
【0028】
従って、本発明の更なる局面によれば、本発明の装置の装着者の美容生理学的応答をもたらす方法であって、a)装着者の生理学的局面を監視する工程と、b)装着者の好みに合わせて装置の冷却効果を変更する工程と、を含む方法も提供される。この方法の更なる好適な特徴は、添付の従属美容方法請求項で定義される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら以下に記載する。添付の図面において、
図1】患者に固定された本発明のパッドの斜視図である。
図2】冷媒ガスをパッド内に注入することができるように吸気弁に取り付けられたガスキャニスタを示す、本発明によるパッドの一部分の斜視図である。
図3】患者に使用されている本発明のパッドの一実施形態の一例の図である。
図4】本発明のパッドの一実施形態の斜視図である。
図5】パッド内に成形された流路のネットワークの経路及び四方向スプリッタ弁の使用を示すために最上面を取り除いた、図4のパッドである。
図6図5のパッドの上面図である。
図7】パッド内に成形された流路のU字形の輪郭及び上面に貼付されたヒドロゲル膜を示す、本発明によるパッドの部分斜視図である。
図8図8aは、本発明のパッドの別の一実施形態の斜視図である。図8bは、パッド内に成形された流路のネットワークの経路を示すために最上面を取り除いた、図8aのパッドである。
図9図9aは、本発明のパッドの別の一実施形態の斜視図である。図9bは、パッド内に成形された流路のネットワークの経路及び二方向スプリッタ弁の使用を示すために最上面を取り除いた、図9aのパッドである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の持ち運び可能な冷却装置2が、添付の図面の図1に示されている。冷却装置2は、患者の身体の様々な部位にフィットするように設計された様々な形状及びサイズの柔軟なパッド4の選択肢を含む。例えば、図1には、患者の腿の周囲の2つのパッド4と、患者の胴部の周囲のパッド4とが示されている。
【0031】
各パッド4は、流路8のネットワークと流体連通した吸気弁6を含む。
【0032】
流路8は、断面がU字形であり、すなわち上側が開いており、流路8は、パッド4の表面内に切り込まれた凹部又は溝から形成されている。熱伝導性のヒドロゲル膜10がパッド4の上面に貼付されて、流路8を被覆して密封し、導管11(図7に最も明瞭に図示されている)を形成しており、導管11の壁はパッド8及び膜10を含む。流路8は、ポリウレタン製のパッド4内に成形されている。冷却装置2は、流路8のネットワークと、パッド4に組み込まれ、胴部及び上脚部に貼付される熱伝導性のヒドロゲル膜10との使用によって、IWIに匹敵する。代替的な一実施例では、陥凹した流路8がヒドロゲル膜10内に切り込まれ、その上に固定されたパッド4の表面によって密封される。流路8は、パッド4と膜10との双方に凹部を形成することによって作製されてもよい。必要とされるのは、パッド4と膜10とが流路8の壁を形成することである。側面が開いた流路8をパッド4内に形成し、開いた側面上に熱伝導性膜の平坦なシートを固定して、ガスをその中に注入することの可能な、側面が閉じた導管11を設けることによって、これらの流路8をパッド4で覆うことは、装置2を大規模製造するための実行可能な方法を意味している。
【0033】
図2に最もよく示されているように、圧縮ガス冷媒12のキャニスタ14が吸気弁に接続され、ガス12は吸気弁6を介してパッド4内へと注入される。ガス12は、U字形の流路8内を通過し、U字形の流路8の「蓋」を形成するヒドロゲル膜10に曝露される。次いで、ヒドロゲル膜10の迅速かつ持続可能な冷却が起こる。冷媒12は軽量で持ち運び可能な圧縮ガスキャニスタ14内に貯蔵され、長期にわたって持続するモダリティを提供すると共に、事前準備又は専門家による保管を必要とすることなく瞬時に作動させることが可能である。
【0034】
流路8は、使用時に、注入されたガスが直接にパッド4上に流れるように、ウレタンパッド4の表面内に成形されている。ガス流が妨げられて、氷の結晶、ひいてはコールドスポットが形成されないように、パッド4の表面仕上げが粗くないことが重要である。本発明のパッド4は、自己拡張式の軟質ポリウレタンフォームを含む。本発明のパッド4の製造中に、パッド4の表面を大幅に緻密化させることができるように、成形型に背圧がかけられる。このことにより、典型的なエラストマーに匹敵する特性となる一方で、フォームの重量は保持される。この結果、ガスがその上を流れる表面がより滑らかになり、氷の結晶、ひいてはコールドスポットの形成が大幅に軽減される。
【0035】
ガスキャニスタ14、及び更に冷却装置2全体の機能は、電力に依存しない。圧縮キャニスタ14は、無期限に保管可能であり、必要に応じて冷却を行う。米国特許出願公開第2020281284号明細書、米国特許出願公開第2019151141号明細書、及び米国特許出願公開第2004064171号明細書に記載されたものなどの従来技術の冷却用衣服は、電池パック又は主電源のいずれかに依存するので、一部のシナリオでは用途が限定される可能性がある。
【0036】
本発明のガスキャニスタ14は、圧力下で何百リットルものガスを液体の形で保持する。医療用COキャニスタは、大量のガスを保持するにもかかわらず、小型、軽量で持ち運び可能である。例えば、900リットルのCOを収容するキャニスタは、重量わずか5kgであり、本発明で使用される実行可能かつ持ち運び可能な熱中症治療オプションである。
【0037】
パッド4が生体の監視又は生体への介入を妨げたり制限したりすることはない。患者の胸部は、必要な場合には、心臓の常時監視、外部式除細動及びCPRを冷却と同時に行うこと可能にするために、意図的に露出される。パッド4はまた、乳房組織にフィットし、常に皮膚にしっかりと付着できるようになっている。パッド4は更に、ストレスが多く時間的に逼迫した状況においても装着させる者に指示を与えることができるように、可能な限り直観的な外観に設計されている。本発明の冷却装置2は、一人で持ち運び、貼付及び操作可能であり、緊急車両内で使用することができる。
【0038】
パッド4は、皮膚にしっかりと付着する軽量の絶縁材料から作製される。
【0039】
パッド4の本体は、軟質ウレタンフォームから製造される。この材料は、優れた断熱性を付与し、身体の輪郭の周囲に良好にフィットし、非常に軽量である。例えば、250mm×250mmのウレタン製のパッド試作品は、重量わずか31gである。ウレタン製のパッド4内に成形された流路8のネットワークは、接続されたガスキャニスタ14からの圧縮ガス12(CO)がその中を通って流れる経路を提供し、パッド4全体への効果的な分散を可能にする。流路8の経路(以下に詳述する)は、膜の「蓋」内に収容されているヒドロゲル10のうちの可能な限り多くがガスに曝露される一方で、パッド4は十分な構造的剛性を保つようになっている。
【0040】
周知のように、ヒドロゲルは、水中で膨張可能であり、大量の水を保持する一方で、個々のポリマー鎖の化学的又は物理的架橋によって構造を維持する、親水性ポリマーの三次元(3D)ネットワークである。
【0041】
本発明のヒドロゲル膜10は、硬化シートの形態に作製される。本発明の別の一実施形態では、ヒドロゲルの硬化シートではなく親水コロイドを使用してもよい。
【0042】
本発明における熱膜としてのヒドロゲル10の使用は、患者の皮膚と冷媒ガスとの間の優れた熱伝導を可能にする。このことは特に、高い冷却速度を達成可能にし、技術の根本的な効率を高める。更に、ヒドロゲル10は、冷媒ガスのより効率的な使用及びパッド4全体にわたる温度放散を可能にする。
【0043】
パッド4をヒドロゲル膜10に接着して強く耐久性の高い化学結合を作り出すために、高強度の軟質ウレタン接着剤が使用される。
【0044】
ガスが比較的高速でパッド4内に注入されるので、漏れを防ぐ一方で身体の輪郭の周囲にフィットした形状を保つことができるように、パッド4の層とヒドロゲル膜10の層との間に強力で耐久性の高い柔軟な結合が存在することが重要である。
【0045】
本発明のヒドロゲル膜10は、製造中にヒドロゲル膜10の上面/底面に接着された「ドライトップ」、すなわち、薄く柔軟な織物メッシュ(図には示さず)を有する。ドライトップは、接着剤による強力な接着を可能にする。ヒドロゲル膜の「ドライトップ」に接着する軟質ウレタン接着剤が、ヒドロゲル膜10とパッド4との柔軟で耐久性の高い結合を作り出す。
【0046】
パッド4内の流路8の経路の様々な実施形態が、図5図6図8b及び図9bに示されている。
【0047】
流路8の曲がり具合が、例えば鋭角などのように急すぎる場合、流路8内のこれらの箇所で固体二酸化炭素の氷結晶形成(ドライアイス)が生じる。これは主に、注入された圧縮ガス12の圧力及び方向の変化に起因する。本発明の流路8は、ガス流が極力乱されないように、鋭角の曲がり量が最小限である。図5及び図6は、流路8のパターンが、内向き螺旋状の流路8によって形成された2×2個の正方形の格子である実施形態を示している。図8b及び図9bは、流路8が中心に向かう螺旋状になった円形のパッド4を示している。
【0048】
上述のように、冷たい圧縮ガス12が吸気弁6から流路8に供給され、ガス12は、ヒドロゲル膜10上を通過した後に、1つ又は複数の排気弁16から放出される。このため、新たな冷媒ガス12の注入を停止させる背圧がない。ガス12は、その本来の熱能力は低いが、ヒドロゲル膜10上を通過して流れるように常に付勢されるので、ヒドロゲルの外表面から熱を奪い、これを効果的に冷却する。
【0049】
パッド4の絶縁フォーム製の外層は、(室温の)周囲空気がガス12の効果を妨げることを防止し、すなわち、冷媒ガスはヒドロゲル膜10によってのみ温められる。
【0050】
ガス12そのものは、圧力容器(例えばガスキャニスタ)14内に収容されている。このことにより、大気圧では大量のガス12を、非常に小さな非断熱性の容器内に室温で収容することが可能である。圧縮ガス12は、ノズルを介して外へと急激に膨張させることにより、ジュールトムソン効果に従って急激に冷たくなる。すなわち、ガス12がノズルを介して外へと膨張するのに伴って、その温度が低下する。このようにして、室温よりも低い温度のガスを、装置2の中の流路8内に注入することができる。
【0051】
ジュールトムソン効果(又はジュールケルビン効果)は、エアコン、ヒートポンプ、及び液化機などの様々な冷凍プロセス及び冷却プロセスで周知であり、日常的に使用されている。
【0052】
ノズルを介して外へと圧縮ガス12を膨張させることは、そのプロセスが断熱性である(すなわち、ガスへの熱エネルギーの出入りがない)と見なされ得る程度に十分に迅速に行われる。ガス12が膨張の際に行わなければならない仕事がない場合(すなわち真空への自由膨張)、ガス12の内部エネルギーは一定に保たれ得る。最も単純な場合には、ガス12の内部エネルギーは、その「熱動力学的エネルギー」(その温度によって測定される)に等しい。従って、ガス12が膨張時に何の仕事も行わなければ、その温度は一定に保たれる。
【0053】
しかし、ガスの「内部エネルギー」は、ガスの「熱動力学的エネルギー」(その温度によって測定された)のみによって構成されているのではなく、その「熱位置エネルギー」によっても構成されている。
【0054】
ここでも、ガス12が膨張の際に何の仕事も行わず(例えば真空への自由膨張など)、したがってガス12の内部エネルギーが一定に保たれ得る場合、ガスの熱位置エネルギーの変化は、熱動力学的エネルギー(及びガス12の温度)によって相殺されなければならない。特に、ほとんどのガスが膨張すると、熱位置エネルギーが増加し、その結果、熱動力学的エネルギー(及び温度)は減少する。
【0055】
本発明の装置2内では、ガス12は膨張している(例えば大気を外に押し出している)時には仕事をしない。この仕事を行うエネルギーは、ガス12の「内部エネルギー」から生じなければならない。最も単純なケースで上述したように、内部エネルギーが(仕事を行うためにエネルギーが引き出されたことに起因して)減少すると、「熱動力学的エネルギー」(及び温度)も減少する。
【0056】
この装置で使用されるガス12に及ぼされる総体的な効果は、放出されるガス12の温度を双方が低下させる、これら2つの寄与的効果である。したがって、本実施形態で使用されるガス12は、高圧かつ室温で貯蔵可能であるが、使用時には極めて迅速に室温よりも冷たくなる。
【0057】
(様々な温度での)任意の所与の圧力変化に対する冷却の量は、様々なガスについて確立されている。これは、ジュールトムソン(又はジュールケルビン)係数と呼ばれ、一定のエンタルピーでの圧力Pに対する温度変化率として定義される。ジュールトムソン係数の値が高いほど、冷却量が大きい。
【0058】
二酸化炭素は、安価であり、高圧で安全に貯蔵できるため、この装置での使用に適しているが、二酸化炭素はまた、一般的に入手可能なガスの中でも最も高いジュールトムソン係数を有するものの1つであり、例えば、窒素、酸素、水素、ヘリウム及びアルゴンよりも何倍も高いジュールトムソン係数を有する。したがって、二酸化炭素を膨張させることで達成される冷却は、他のガスよりもはるかに強力である。二酸化炭素を使用することで得られる冷却のレベルが高いことから、上述の他のガスを使用した場合と比較して、冷却キャニスタを小型かつ軽量とすることができる。より小型かつ軽量のガスキャニスタの使用は、装置の持ち運びやすさに大きく貢献する。
【0059】
流路8の鋭角の曲がりの数をできるだけ少なくして逆流の可能性を最小限に抑えることを目的としたものである限り、パッド4の様々な形状に対応する数多くの内向き螺旋状の流路レイアウトが可能であることが理解されよう。
【0060】
吸気弁6は、使用の際に狭い導管の中を非常に冷たいガスが通るために弁6の周囲のヒドロゲルにコールドスポットが形成されないような設計となっている。
【0061】
本発明は、二方向及び四方向スプリッタ弁6を使用することでコールドスポットの形成を緩和する。
【0062】
四方向スプリッタ弁は、図5及び図6に最もよく示され、二方向スプリッタ弁は図9bに最もよく示されている。
【0063】
スプリッタ弁6を使用することにより、冷却効果をパッド4の複数の部分により効果的に分散させ、また弁6の周囲にコールドスポットが形成される可能性を低減することができる。
【0064】
本発明の冷却装置2は、排気弁16を更に備える。排気弁16は、使用時に患者及び/又は冷却装置2を投与している人員がCOに過剰に曝露されるリスクを最小限にするために、CO捕捉用のソーダ石灰フィルタを含む。
【0065】
吸気弁6を介してパッド4内に注入された圧縮ガス冷媒12は、圧縮COである。このことにより、最小限の資源で強力な冷却能力が得られ、製品を持ち運び可能かつ応需型とすることができる。COを圧縮キャニスタから大気中に放出する際の液体から気体への相変化は、環境から熱を引き出す。パッド4内のガス12の温度は、キャニスタ14からの流速によって制御可能である。ヒドロゲル10の高い熱伝導性とウレタンパッド4の優れた絶縁性能との組み合わせが、非常に低いCO流速での大きな冷却能力を可能にする。圧縮COキャニスタ14は、安価に市販されており、試作品の試験及び最終製品の納入のための実行可能なオプションを提供する。一連の異なるサイズのキャニスタをシナリオに応じて選択可能である。例えば、基幹医療センター内の固定ステーションでは比較的大きなキャニスタ及び大量のガスを利用する一方で、地上戦には小型で持ち運び可能なキャニスタ14に入れたより少量のガスを携帯してもよい。
【0066】
本発明は、上記の特定の実施形態に限定されない。上述のように、パッド4を通る流路8の代替的な経路も企図され得る。パッド4におけるコールドスポットの形成及び不均一な冷却の発生の可能性が最小限となるように、パッド4の全ての部分が覆われ、パッド4の構造的な一体性が損なわれず、流路8の急な鋭角の曲がりの数ができるだけ少なくなっていればよい。
【0067】
冷却装置そのものは、互いに対して関節運動可能に接続された2つ以上の別個のパッドから形成されていることにより、柔軟かつ患者にフィットするように作製することができる。
【0068】
パッドの表面内に流路(8)を形成している、側面が開いた凹部を、打ち抜き加工又はプレス加工を使用して形成してもよく、例えば、パッドがプレス加工されたシートであってもよく、流路の開いた側面を、プレス加工されたシートと類似の又は同じ材料の実質的に平坦なシートによって被覆してもよい。次いで、ヒドロゲル膜をシートに固定して、パッド(4)の表面内の流路(8)の開いた側面を更に被覆する。あるいは、プレス加工されたシートを、対向する相補的にプレス加工された(すなわち、実質的に平坦ではない)シートで被覆して、流路を有するこれら2枚のシートが合わさった時に実質的に管状の導管が形成されるようにしてもよい。流路は、例えば、断面がO字形の導管を作り出すU字形の断面を有してもよい。流路(8)を被覆するプレス加工されたシートが単に流路の鏡像反転されたバージョンであってもよいが、被覆シートの流路の断面形状がパッド(4)の流路(8)の断面形状とは異なってもよい。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】