(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】熱伝導真空計組立体
(51)【国際特許分類】
G01L 21/12 20060101AFI20231214BHJP
G01L 19/04 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G01L21/12
G01L19/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531005
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 GB2021052983
(87)【国際公開番号】W WO2022106822
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ロード ゲイリー マイケル ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ケイ マシュー ガレス
(72)【発明者】
【氏名】ハットン ニコラス ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】クロフト グレン
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA11
2F055BB08
2F055CC43
2F055DD20
2F055EE40
2F055FF02
2F055GG25
(57)【要約】
本開示は、熱伝導真空計組立体に関する。組立体は、作動ガスを受け入れる内部チャンバを画定する本体と、内部チャンバ内に配置される発熱素子とを備える。本体は、外向き壁面と反対側の内向き壁面とを有する壁によって画定される。熱補償素子は、外向き壁面と内向き壁面との間の壁の中に封入されている。本開示はまた、組立体を含む熱伝導真空計に関する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導真空計組立体であって、
作動ガスを受け入れる内部チャンバを画定し、外向き壁面と反対側の内向き壁面とを有する壁によって画定される本体と、
前記内部チャンバ内に配置される発熱素子と、
前記外向き壁面と前記内向き壁面との間の前記壁の中に封入される熱補償素子と、
を備える、熱伝導真空計組立体。
【請求項2】
前記熱補償素子は、抵抗温度検出器(RTD)である、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記熱補償素子は、サーミスタ、例えば正温度係数(PTC)サーミスタ又は負温度係数(NTC)サーミスタである、請求項1に記載の組立体。
【請求項4】
前記外向き壁面と前記内向き壁面との間の前記壁の中に空洞が封入され、前記熱補償素子は、前記空洞の中に配置されている、請求項1、2、又は3に記載の組立体。
【請求項5】
熱補償素子に取り付けられた電気接続部材をさらに備え、前記電気接続部材の第1の部分は、前記外向き壁面と前記内向き壁面との間の前記壁の中に封入され、前記電気接続部材の第2の部分は、前記壁から突出している、請求項1から4のいずれかに記載の組立体。
【請求項6】
前記第2の部分は、制御回路への接続のための電気コネクタを含む、請求項5に記載の組立体。
【請求項7】
前記電気接続部材は、プリント回路基板であり、前記熱補償素子は、前記プリント回路基板に取り付けられている、請求項5又は6に記載の組立体。
【請求項8】
前記本体は、基部と頂部との間に長手方向に延び、前記基部と前記頂部との間に延びる側壁を有し、
前記熱補償素子は、前記側壁の中に封入されている、請求項1から7のいずれかに記載の組立体。
【請求項9】
前記熱補償素子が内部に配置される空洞が、前記側壁を通って前記頂部の開口部まで軸方向に延びている、請求項8に記載の組立体。
【請求項10】
前記電気接続部材の第1の部分が、前記空洞内に封入され、前記電気接続部材の第2の部分が、前記頂部から軸方向に突出している、請求項8に記載の組立体。
【請求項11】
前記基部は、前記チャンバと流体連通する入口通路を画定し、シールを収容するための凹部をその中に有する半径方向に延びるフランジを含む、請求項8、9、又は10に記載の組立体。
【請求項12】
前記基部は、前記作動ガスを濾過するために入口通路を横切って配置されたフィルタ要素を含む、請求項11に記載の組立体。
【請求項13】
前記発熱素子は、電源による加熱のためのフィラメントである、請求項1から12に記載の組立体。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の組立体と、
前記本体を受け入れ、少なくとも部分的に取り囲むハウジングと、
を備える、熱伝導真空計。
【請求項15】
前記ハウジングは、前記発熱素子及び前記熱補償素子の電気的制御を行う制御回路を含む、請求項14に記載の真空計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱伝導真空計組立体に関する。また、本開示は、この組立体を含む熱伝導真空計にも関する。
【背景技術】
【0002】
真空計は、真空システム内の圧力を測定するために一般的に使用されている。圧力測定値は、システムがその所期の目的に対して十分に低い圧力の真空を有することを確認するために使用することができる。測定値がシステム内の真空圧は十分に低いことを示す場合、これは、システムの漏れ又は欠陥を示して検出するために、及び/又は、システムを排気する真空ポンプの制御を助けるフィードバックを行うために使用することができる。
【0003】
この目的に使用される一般的なタイプの真空計は、熱伝導真空計である。
【0004】
熱伝導真空計は、圧力測定のためにガスの熱伝導を利用し、熱損失真空計として知られる場合もある。一般的には、これらの真空計は、圧力測定値を得るためにガスの熱伝導と圧力の関係を利用する。
【0005】
1つのこのような熱伝導真空計は、ピラニ真空計である。
【0006】
ピラニ真空計において、発熱素子(通常はフィラメント又はワイヤの形態)は、真空システム内の作動ガスと接触した状態で配置され、発熱素子を電気エネルギーで加熱することを可能にするために電気回路に接続される。ガス分子が発熱素子と衝突すると、ガス分子は、発熱素子から外に熱を移送する(すなわち、伝導する)。ガスの圧力が高くなると、発熱素子と衝突する分子が多くなり、発熱素子から外に移送される熱が多くなる(すなわち、ガスの熱伝導率が高くなる)。
【0007】
発熱素子が一定の電流又は電圧に保持される場合、ガス圧力の変化に起因する発熱素子から移送される熱量の変化によって、発熱素子の温度(従って、抵抗値)は、比例した大きさで変化することになる。抵抗値のこの変化を測定することによって、ガスの圧力の変化を測定することができる。あるいは、発熱素子を一定の温度(従って、抵抗値)に保持することができ、ガスの圧力に応じてこの一定の温度を維持するために必要な電圧の変化を測定することができる。
【0008】
このようにして、ガスの圧力は、ガスの熱伝導率の関数として測定される。
【0009】
当業者によって理解されるように、ピラニ真空計においてこれを実施する一般的な方法は、発熱素子をホイートストンブリッジ回路内のアームとして含めることである。
【0010】
熱伝導真空計においてより正確な圧力測定値を求めるために、熱補償素子が一般的に必要である。
【0011】
熱補償素子は、熱伝導真空計自体の周囲温度を測定する素子又は構成要素である。これによって、圧力測定値を周囲温度に対して補正することができる。
【0012】
これは、例えば、発熱素子の周囲温度との比較のために熱伝導真空計の周囲温度に従って基準抵抗又は電圧をもたらすための熱補償素子を使用して達成することができる。これは、発熱素子の抵抗値又は電圧読み取り値に非意図的に影響を与える熱伝導真空計の周囲温度に関連する測定の不正確さ又は矛盾を最小限に抑えるのを助けることができる。
【0013】
当業者によって理解されるように、ピラニ真空計においてこの熱補償を実行する1つの方法は、発熱素子と同じホイートストンブリッジ回路内のアームとして熱補償素子(例えば、温度依存性抵抗器)を含めることである。
【0014】
熱補償素子は、熱伝導真空計組立体の本体又は管体の表面上に配置されることが知られている。
【0015】
本発明者らは、このような公知の配置は、熱補償測定において潜在的な不正確さ及び矛盾をもたらし、また要素の耐久性の問題も引き起こす可能性があることを見出している。
【0016】
例えば、素子を熱伝導真空計組立体の外面に配置することは、その測定値が熱伝導真空計組立体を取り囲む環境の周囲温度の望ましくない影響を受ける場合があり、素子が容易に損傷する場合があることになることが分かっている。また、素子を熱伝導真空計組立体の内面に配置することは、素子が熱伝導真空計組立体を通過する作動ガス/プロセスガスによって望ましくない影響を受ける場合があり、それによって腐食する場合があることも分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、そこに使用される熱補償素子のこれらの状況を改善する熱伝導真空計組立体を提供する必要性が存在する。
また、このような組立体を含む熱伝導真空計の改善されたモジュール性及び交換可能性を提供する一般的な必要性も存在する。
【0018】
本明細書では一般的にピラニ真空計組立体を例示するが、何らかの他の適切なタイプの熱伝導真空計組立体(発熱素子が使用され、温度補償素子を必要とする)も同様に本開示の恩恵を受けることができ、適宜、その範囲内にあることを理解されたい。このような他の熱伝導真空計としては、例えば、サーミスタ熱伝導真空計組立体又は熱電対熱伝導真空計組立体を挙げることができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
1つの態様では、本開示は、熱伝導真空計組立体を提供する。この組立体は、作動ガスを受け入れるための内部チャンバを画定する本体を備え、本体は、外向き壁面と反対側の内向き壁面とを有する壁によって画定される。発熱素子が内部チャンバ内に配置され、熱補償素子が、外向き壁面と内向き壁面との間の壁の中に封入されている。
【0020】
熱補償素子を本体の壁の中に封入することにより、熱補償素子と本体との間の接触面積が大きくなる。これにより、本体の中に固定された熱補償素子の耐久性及び寿命が向上し、その温度測定値が本体をより代表し、より正確になる。また、この配置は、熱補償素子が壁自体の中(すなわち、外壁面と内壁面の間)で保護され、本体110の周囲及び内部の外部環境及び内部環境からそれほど悪影響を受けないことを意味する。
【0021】
一般に、この熱補償素子の配置は、組立体100によって可能にされるガス圧測定をより正確にし、組立体100の耐久性を高める。
【0022】
上記態様の一実施形態では、熱補償素子は抵抗温度検出器(RTD)である。別の実施形態では、熱補償素子はサーミスタである。サーミスタは、正温度係数(PTC)サーミスタ又は負温度係数(NTC)サーミスタとすることができる。別の代替実施形態では、熱補償素子は半導体温度センサである。
【0023】
これらのタイプの熱補償素子は、他に優る特定の耐久性、コスト、精度の利点がある。
【0024】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、外向き壁面と内向き壁面との間の壁の中に空洞が封入され、熱補償素子は空洞の中に配置される。
【0025】
空洞は、熱補償素子を外向き壁面と反対側の内向き壁面との間の壁の中に配置するための好都合な製造経路(例えば、機械加工による)を提供する。
【0026】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、電気接続部材が熱補償素子に取り付けられる。電気接続部材の第1の部分は、外向き壁面と内向き壁面との間の壁の中に封入され、電気接続部材の第2の部分は、壁から突出している。さらなる実施形態では、第2の部分は、制御回路への接続のための電気コネクタを含む。
【0027】
電気接続部材は、熱補償素子を壁に取り付けて支持し、他の構成要素との間の電気的通信を提供するための好都合な手段を提供する。また、第2の部分及び電気コネクタは、熱補償素子と他の構成要素との間の、よりモジュール化された/取り外し可能な電気的接続を助長する。
【0028】
上記のさらなる実施形態では、電気接続部材はプリント回路基板(PCB)であり、熱補償素子はその上に表面実装される。
【0029】
熱補償素子の表面実装と組み合わせたPCBは、熱補償素子への接続の耐久性を向上させる一体型構成要素を提供する。
【0030】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、本体は、基部と頂部との間に長手方向に沿って延び、基部と頂部との間に延びる側壁を有する。熱補償素子は側壁の中に封入されている。
【0031】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、熱補償素子が配置される空洞は、側壁を通って頂部の開口部まで軸方向に延びている。
【0032】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、電気接続部材の第1の部分が空洞内に配置され、電気接続部材の第2の部分が頂部から軸方向に突出している。
【0033】
これらの構成は、交換可能な電気的接続を(例えば、頂部を介して)容易にする組立体構成要素の向きを提供し、その好都合な取り付けを可能にする。
【0034】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、基部は、チャンバと流体連通する入口通路を画定し、随意的にシール(Oリングシール又は金属シールなど)を収容するための凹部をその中に含むことができる半径方向に延びるフランジを含む。
【0035】
このフランジは、真空システムに対する組立体のより確実な嵌合を可能にし、凹部は、使用時に組立体と真空システムとの間に形成されるより良好なシールを提供する。
【0036】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、基部は、作動ガスを濾過するために入口通路を横切って配置されたフィルタ要素を含む。
【0037】
フィルタ要素は、組立体を損傷する又は圧力測定を妨害する可能性のある汚染物質がチャンバ内に侵入しないようにするのを助けることができる。
【0038】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、発熱素子は、電源による加熱のためのフィラメントである。例では、フィラメントは白金又はタングステン製とすることができる。このような組立体は、一般にピラニ真空計組立体として知られている場合がある。
【0039】
別の態様において、本開示は、熱伝導真空計を提供する。この真空計は、上記の態様のいずれかの実施形態の組立体と、本体を受け入れて少なくとも部分的に取り囲むハウジングとを備える。
【0040】
ハウジングと組立体の実施形態によって促進されるハウジングへの接続部は、熱伝導真空計のモジュール性及び交換可能性の向上を可能にする。
【0041】
上記の一実施形態において、ハウジングは、発熱素子及び熱補償素子の電気的制御を提供するための制御回路を含む。
【0042】
制御回路は、ハウジングが、組立体の圧力測定の問い合わせを可能にする、組立体に対する交換可能なモジュール式アドオンとして機能するのを可能にすることができる。
【0043】
上記において、特定の利点が特定の特徴に関連して説明されるが、特定の特徴の他の利点は、本開示に従って当業者に明らかになるであろう。
以下、1又は2以上の非限定的な実施例が例示的に添付の図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本開示の一実施形態による熱伝導真空計組立体の外側等角図を示す。
【
図2A】線A-Aに沿った
図1の組立体の断面を示す。
【
図2B】線B-Bに沿った
図1の組立体の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1を参照すると、熱伝導真空計組立体100が示されている。組立体100は、基部114と頂部116との間で長手方向軸Xに沿って軸方向に延びる側壁112を有する本体110を含む。
【0046】
図示の実施形態において、本体110は、略環状であるが、円周の一部の周りに面取り部分111を有する。後述するように、この面取り部分111は、熱伝導真空計の他の構成要素(例えば、ハウジング又はカバー(図示せず))を有する組立体の取り付けを助けることができる。
【0047】
本体110の特定の形状が示されているが、本開示の範囲内で、本体110の何らかの他の適切な形状(例えば、正方形又は長方形の断面)を使用することができることを理解されたい。
【0048】
基部114は、長手方向軸Xを中心としてそこから半径方向に延びるフランジ115を含む。1つの実施例では、フランジ115は1、6mmの公称内径仕様を有する。
【0049】
頂部116は、端部キャップ118を含み、電気コネクタ132及び発熱素子130のための支持特徴部136(
図2A及び2Bを参照して詳細に後述)は、端部キャップ118を貫通して突出し、そこに固定される。
端部キャップ118は、頂部116に画定された開口部117内に固定される。
【0050】
一部の実施形態において、端部キャップ118は、例えば、開口部117内に溶接することによって又はそこに圧入することによって、頂部116に固定的に取り付けることができる。他の実施形態において、端部キャップ118は、ねじ係合によって頂部116に取り外し可能に固定することができる。このような取り外し可能な固定方法は、発熱素子130及び接続部及び支持特徴部の修理及び交換を容易にすることができる。さらに別の実施形態において、端部キャップ118は省略することができ、本体110の壁122は、その中に開口部117を有することなく頂部116を横切って半径方向に延びる。このような実施形態において、接続部及び支持特徴部は、頂部116自体を貫通して延びることになる。
【0051】
図示の実施形態において、端部キャップ118は、マーキング領域119を含み、これは、組立体の製造に関連する様々な番号又はコード(例えば、部品番号/バーコード、バッチ番号など)をマーキングするための領域を提供する。本開示の範囲内で、このようなマーキング領域119は、代替的に、組立体100の何らかの他の適切な部分に存在することができること又は全て省略することができることを理解されたい。
【0052】
図2Aは、長手方向軸Xに沿った(矢印A-Aによって規定されるラインに沿った)、矢印A-Aの方向で見た組立体100の断面を示す。
図2Bは、長手方向軸Xに沿った(矢印B-Bによって規定されるラインに沿った)、矢印B-Bの方向で見た組立体100の断面を示す。
図2A及び2Bは、後述するように、本体110内の内部構造及び構成要素を示す。
【0053】
本体110は、組立体100の使用時に作動ガス又はプロセスガス(例えば、真空システムからの)を受け入れるように構成された内部チャンバ120を画定する。「作動ガス又はプロセスガス」とは、組立体が圧力を測定しようとするガス(複数可)を意味する。「作動ガス」は、通常、真空システムによって作動される(例えば、排気される)ガス(複数可)である。このガスの圧力は、システム内の一般的な真空圧力の指標をもたらすことができる。
【0054】
図示の実施例において、本体110は、略管状であり、「本体管体」と理解することもできる。従って、内部チャンバ120は、本体110内で長手方向軸Xの周りで略円筒形である。
【0055】
本体110は、壁122によって画定又は形成される。壁122は、外向き壁面122aと反対側の内向き壁面122bとの間に画定される。壁面122a及び122bは、本体110の図示形状に従って略環状である。外向き壁面122aは、内向き壁面122bの半径方向外方にあり、組立体100の外側に向いている。内向き壁面122bは、組立体100の内側に向いており、内部チャンバ120を画定する(又は取り囲む)。
【0056】
本体110は、何らかの適切な材料、例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム合金、又はプラスチック材料(動作条件及び温度が許す場合)で作ることができる。また、本体110は、成型/鋳造、固体ブロックからの機械加工、3D印刷など、何らかの適切な製造方法で作ることができる。
基部114は、チャンバ120のための入口通路124を画定する。
【0057】
入口通路124は、基部114からチャンバ120内に軸方向に延びる。入口通路124は、チャンバ120と流体連通し、作動ガス(例えば、真空システムからの)が使用中にチャンバ120に出入りすることを可能にする。
【0058】
作動ガスがチャンバ120に入る前に作動ガスを濾過するフィルタ要素126は、入口通路124を横切って配置される。フィルタ要素126は、長手方向軸Xに対して半径方向に入口通路124を横切って通過する。フィルタ要素126は、汚染物質がチャンバ120に入らないことを保証するために使用される。このような汚染物質は、組立体100を損傷する場合があり(例えば、チャンバ120内の発熱素子130、壁面122b、又は電気接続部を腐食させるか又はこれらの上に堆積することによって)、及び/又は、圧力測定プロセスを妨げてその中に不正確さをもたらす場合がある。1つの実施例において、フィルタ要素126は、ステンレス鋼メッシュであるが、フィルタ要素126用の何らかの他の適切なタイプ(例えば、膜)又は材料を、本開示の範囲内で使用することができる。
【0059】
基部114のフランジ115は、その中に形成された凹部又は溝128を含む。凹部128は、長手方向軸Xの周りに環状であり、シールがその中に着座することを可能にする。これは、使用時に組立体100と真空システムとの間でより良好なシールを形成するのを可能にし、シールはフランジ115を介して基部114の所定の位置に固定される。シールは、Oリングシール又は金属シールなど、何らかの適切なタイプのシールとすることができる。他の実施形態において、代わりにフランジ115とシステムとの間にガスケット構成(例えば、金属製)を使用することができる。
【0060】
発熱素子130は、チャンバ120内に配置される。図示の実施例において、発熱素子130は、頂部116から基部114に向かってチャンバ120内に略軸方向に延びる。
【0061】
図示の実施形態における発熱素子130は、電源によって加熱されるフィラメントである。フィラメントは、タングステン又は白金など、何らかの適切な材料から作製することができる。特にプラチナは、より腐食性の強い化学物質及び/又は作動ガスを含むことが知られている真空システム環境又は用途において使用することができる。
【0062】
電気コネクタ又はピン132a、132b、132cは、端部キャップ118を貫通して突出してその中に固定される。発熱素子130は、発熱素子130を制御するためのその間の電気通信を可能にするために電気コネクタ132a、132b、132cのうちの特定のコネクタに接続される。図示の実施例において、コネクタ132a、132cは、発熱組立体130の2つの反対側の端部に接続されるが、コネクタ132bは、接地目的に使用される。コネクタ132a、132b、132cは、その後、組立体100の使用時に発熱組立体130を加熱及び制御するために電力を供給することができる別個の制御回路(図示せず)に接続することができる。
【0063】
発熱素子130は、例えば、コネクタの基部に巻き付けること又はコネクタに溶接又ははんだ付けすることなどで、コネクタ132a、132cに何らかの適切な方法で接続することができる。
【0064】
発熱素子130は、支持構造体によってチャンバ120内に支持される。図示の実施例において、支持構造体は、ばねアーム134及びバー136の形態である。
【0065】
バー136は、端部キャップ118を貫通して突出し、それに固定される。バー136は、頂部116から基部114に向かって、発熱素子130と実質的に平行に、チャンバ120内に軸方向に延びる。図示の実施形態において、バー136は、円筒形ロッドである。
【0066】
ばねアーム134は、基部114に最も近いバー136の端部に固定され、発熱素子130を支持するために半径方向(長手方向軸Xに対して)に延びる。
【0067】
ばねアーム134は、発熱素子130がその周りに通るフック135を特徴とする。ばねアーム134及びバー136は、使用中にコネクタ132a、132cの間で発熱素子130をピンと張った状態で支持する張力をもたらすために使用される。
【0068】
理解できるように、図示の実施形態において、発熱組立体130は、フック135を介してコネクタ132a、132cの間に吊るされる場合に実質的にV字形状又はU字形状を規定する。
【0069】
発熱素子130、電気コネクタ132a、132b、132c、及びそれらの支持構造体の1つの特定の構成が示されているが、本開示の範囲内で、何らかの他の適切な構成を使用することができることを理解されたい。例えば、電気コネクタ132a、132b、132cの異なる数及びタイプ、発熱素子130の異なるタイプ(例えば、サーミスタ)、及び、バー136及びばねアーム134に対する構成要素の異なる数又はタイプを使用することができる。
【0070】
熱補償素子140は、本体110の壁122の中に封入されている。より詳細には、熱補償素子140は、外向き壁面122aと内向き壁面122bとの間の壁122の中に封入されている。このように、熱補償素子140は、壁122自体の厚さの中に封入されており、壁の厚さ部分によって外向き壁面122a及び内向き壁面122bから相隔たっている。
【0071】
このような配置は、熱補償素子140を外向き壁面122a又は内向き壁面122bの一方に依然として配置するように、熱補償素子140が単に壁122に設けられた凹部又は窪み(すなわち、外向き壁面122a及び内向き壁面122bの一方に設けられた凹部又は窪み)に配置されるのとは異なることを理解されたい。
【0072】
熱補償素子140は、例えば、熱補償素子140が内部に配置される壁122の周囲温度を示す抵抗及び/又は電圧を提供することができる何らかの適切なタイプとすることができる。1つの実施例において、熱補償素子140は、モリブデン又は白金RTDなどの、抵抗温度検出器(RTD)である。別の実施例において、熱補償素子140は、粉末金属酸化物又はポリマーで作製された正温度係数サーミスタ(PTC)又は負温度係数サーミスタ(NTC)などのサーミスタである。別の実施例において、熱補償素子140は、固体温度センサとすることができる。
【0073】
他のタイプの熱補償素子140が本開示の範囲に該当するが、上記は、他のものに優る耐久性、コスト、精度に関する特定の利点を有すると考えられる。
【0074】
図示されるように、本体110の壁122の中に熱補償素子140を封入することは、先行技術の配置に優る特定の利点を提供すると考えられることを理解されたい。
【0075】
例えば、このことは、組立体100の熱補償素子140のより頑丈で耐久性のある固定を可能にし、これはその耐用年数を改善することができる。また、熱補償素子140と本体110との間の物理的接触量を大きくすることができるため、その温度測定がより代表的なものとなり、より正確な補償を提供することができる。
熱補償素子140が壁122の中に封入されることは、組立体100の周りの外部環境又は内部環境の影響を受けにくいことを意味し、このことは、同様に本体110の温度測定をより代表的かつ正確にするのを助ける。
【0076】
このように、熱補償素子140を壁122の中に封入することで、組立体100によって可能になるチャンバ120の作動ガスの全体的な圧力測定をより正確にすることができる。また、組立体100を概してより耐久性のあるものにすることもできる。
【0077】
電気接続部材142は、熱補償素子140に取り付けられている。電気接続部材142は、熱補償素子140とこの要素に接続可能な制御回路(図示せず)との間の電気通信を可能にする。
【0078】
図示の実施形態において、電気接続部材142は、FR-4仕様のプリント回路基板(PCB)であるが、代わりに、何らかの適切なタイプの電気接続部材142(例えば電線)、又は、何らかの他の適切な仕様のPCBを使用することができる。図示の実施形態においてPCBを使用することによって、電気接続部材142はまた、熱補償素子140を壁面122aに接して保持するために、熱補償素子140に対してある程度の機械的支持を与える耐久性/剛性の基材をもたらす。
【0079】
電気接続部材142の第1の部分は、壁122の中に封入される(壁面122a、122bの間)。第2の部分は、頂部116から壁面122の外に軸方向に突出する。
【0080】
第2の部分は、電気接続部材142と制御回路(図示せず)との間の電気接続部をもたらし、組立体100によって得られる圧力測定値を通知するためにこのような制御回路と熱補償素子140との間の電気通信を可能にするのに適する電気コネクタ143を含む。
【0081】
図示の実施形態において、熱補償素子140は、電気接続部材142に表面実装される。
【0082】
これによって、熱補償素子140を、コスト、設置、及び耐久性の面で利点を有する一体部品の構成要素として電気接続部材142と一体的に作製することができる。
【0083】
それにもかかわらず、本開示の範囲内で、熱補償素子140を部材142に取り付ける何らかの他の適切な方法、例えば、貫通孔技術又ははんだ付け技術を使用することができる。
【0084】
図示の実施形態では、空洞144は、壁122の中に画定される。空洞144は、頂部116で壁122を貫通する開口部146を有し、壁122を貫通して基部114に向かって軸方向に延びる。空洞144は、壁面122a、122bの間で壁122の中に封入される。
【0085】
電気接続部材142及び熱補償素子140は、空洞144の中に配置され、その中に軸方向に挿入される。電気接続部材142は、接着剤などの何らかの適切な手段を用いて空洞144内に固定することができる、又は固定手段なしで所定位置に(例えば、自重で)空洞144内に緩く保持することができる。
【0086】
熱補償素子140及び電気接続部材142を空洞144内に配置することにより、熱補償素子140/電気接続部材142の検査、修理及び/又は交換のためのアクセス性を改善することができる。
【0087】
他の実施形態(図示せず)では、空洞144は省略することができる。代わりに、熱補償素子140及び電気接続部材142は、その周りに空洞144を画定することなく、壁122の中に一体的に封入される(例えば、インサート成形/鋳造/付加製造によって)。これにより、容易な交換可能性を犠牲にして、壁122の中の熱補償素子140及び電気接続部材142の寿命/耐久性を改善すること、並びに(改善された温度補償のために)熱補償素子140と壁122との間の接触量を改善することができる。
【0088】
図示の実施形態は、全体として本体110の側壁112に配置された熱補償素子140、電気接続部材142、及び空洞144を示すが、それらは、特定の用途又は真空システムに適することができるように、本体の壁122によって画定された本体の何らかの他の適切な一部又は部分(例えば、基部114又は頂部116)に配置することができることを理解されたい。
【0089】
1つの実施例において、熱伝導真空計(図示せず)は、組立体100を使用して形成され、組立体100は、本体110を少なくとも部分的に取り囲むハウジング又はカバー(図示せず)内に収容することができる。ハウジングは、一般的に、熱補償素子140と組み合わせて発熱素子130を制御して動作させるために、組立体100に接続することができる制御回路及び/又は電子回路(例えば、ホイートストンブリッジ回路の残り)を含むことができる。
【0090】
組立体100から突出する電気コネクタ132a、132b、132c、143は、ハウジングとの一体化のしやすさを促進することができ、その理由は、コネクタは、ハウジングが組立体100を収容する際にハウジング内でポートに単純に接続及び切断することができるからである。また、これは、ハウジング及び組立体100のモジュール性及び交換可能性を助けることができる。
【0091】
ハウジングは、必要に応じて、制御回路/電子機器及び組立体100に給電及び問い合わせするのを可能にすることができる独自の電気接続部/コネクタを特徴とすることができる。
【0092】
また、ハウジングは、その上の画面/読み出し装置を特徴とすることができる。この画面/読み出し装置は、圧力測定値、又は、熱伝導真空計/組立体100に関連する他のパラメータ(抵抗、温度、電圧など)及びこれが測定している真空システムに関連する他のパラメータを表示する/示すことができる。
【0093】
簡単に上述したように、面取り部分111を含む、本体110の形状は、ハウジングの取り付けを助けるために使用することができる。例えば、面取り部分111は、本体110上のハウジングの挿入及び装着を助ける平らな軸方向表面をもたらす。また、これは、ハウジングが要素200及び本体110上方に正しい配向で挿入されることを保証するための簡単な視覚的基準をもたらすことができる。
【符号の説明】
【0094】
100 熱伝導真空計組立体
110 本体
111 面取り部分
112 側壁
114 基部
115 フランジ
116 頂部
117 (頂部116の)開口部
118 端部キャップ
119 マーキング領域
120 内部チャンバ
122 壁
122a 外向き壁面
122b 内向き壁面
124 入口通路
126 フィルタ要素
128 凹部(又は溝)
130 発熱素子(又はフィラメント)
132a 電気コネクタ(又はピン)
132b 電気コネクタ(又はピン)
132c 電気コネクタ(又はピン)
134 ばねアーム
135 フック
136 バー
140 熱補償素子
142 電気接続部材
143 電気コネクタ
144 空洞
146 (空洞144の)開口部
X 長手方向軸
A 断面視線
B 断面視線
【国際調査報告】