(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】フルニキシンを口腔投与することによる疼痛の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/44 20060101AFI20231214BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20231214BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231214BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231214BHJP
A61K 47/16 20060101ALI20231214BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61K31/44
A61K31/455
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/16
A61P29/00
A61P25/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531039
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2021082742
(87)【国際公開番号】W WO2022112277
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ティリー,ジュリアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076BB22
4C076CC01
4C076DD37N
4C076DD46N
4C076DD60A
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC18
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA57
4C086ZA08
4C086ZA21
4C086ZC61
(57)【要約】
フルニキシンの口腔投与方法は、現在、家畜(例えば、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギなど)における痛みを軽減させる使いやすく効果的な方法を提供するために開発された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の疼痛を治療する方法であって、そのような治療を必要とする動物にフルニキシン又はその塩及び薬学的に許容される担体を含んでいる組成物を口腔投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記フルニキシンが、フルニキシンメグルミンである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記薬学的に許容される担体が、1以上の浸透促進剤、非プロトン性一次溶媒又はそれらの混合物を含んでいる、請求項1-2のいずれか1項の方法。
【請求項4】
前記浸透促進剤が、メントール、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレートカプレート又はそれらの混合物である、請求項3の方法。
【請求項5】
前記非プロトン性一次溶媒が、ピロリドン溶媒である、請求項3-4のいずれか1項の方法。
【請求項6】
前記非プロトン性一次溶媒が、2-ピロリドンである、請求項3-5のいずれか1項の方法。
【請求項7】
前記動物が、家畜である、請求項1-6のいずれか1項の方法。
【請求項8】
前記家畜が、ブタ、ヤギ、ヒツジ又はウシ科動物である、請求項1-7のいずれか1項の方法。
【請求項9】
前記動物が、ブタである、請求項1-8のいずれか1項の方法。
【請求項10】
前記疼痛が、去勢、断尾又は針歯の除去の結果である、請求項1-9のいずれか1項の方法。
【請求項11】
前記口腔投与が、動物の頬の内側に対するものである、請求項1-10のいずれか1項の方法。
【請求項12】
疼痛を治療する方法であって、そのような治療を必要とする動物に、
(a) フルニキシンメグルミン、
(b) 2-ピロリドン、
(c) メントール、
(d) プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレートカプレート、及び、
(e) グリセリルモノカプリレート
を含んでいる組成物を口腔投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記動物がブタである、請求項12の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
畜産の操業では、一般に、そして、特に動物に苦痛を与える可能性のある特定の活動中において、動物のウェルビーイングに関心がある。去勢、断尾及び針歯の除去などの活動中の痛みを軽減する方法が求められている。
【0002】
フルニキシンは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である。通常、フルニキシンは、メグルミン塩として入手可能である。フルニキシンは、ウシ種において、鎮痛薬として、並びに、発熱を治療するために、乳腺炎及び呼吸器疾患(BRD)に関連する炎症の臨床症状を緩和させるために、並びに、急性炎症状態による痛み及び腫れを軽減させるために、使用される。ブタでは、フルニキシンは、ブタの呼吸器疾患に適応される。米国では、ブタにおける疼痛管理を目的としては、フルニキシンを含んでいる動物医薬品は販売されていない。
【化1】
現在、フルニキシンは、注射用溶液、経皮溶液又はペーストとして入手可能である。これらの製品の使用は、適応症及び種類に応じて異なる。
【0003】
市販されているフルニキシン経皮製品は、ウシにおけるウシ呼吸器疾患及び急性乳腺炎に伴う発熱を軽減させるために使用される。(以下のものを参照されたい:Health Products Regulatory Authority (HPRA) Publicly Available Assessment Report for a Veterinary Medicinal Product Finadyne Transdermal 50 mg/mL pour on solution for cattle, CRN 7023803, January 23, 2017)。この製剤は、米国特許第9,006,727B2号に記載されている。
【0004】
フルニキシンは、口腔内で溶解する錠剤としても知られている。例えば、US10022361、WO2007061529及びWO2003066029を参照されたい。これらの経口錠剤製品は、多くの場合、動物では経口で完全に溶解するまで保持されないので、動物に使用するのは困難である。
【0005】
これらの参考文献は、いずれも、フルニキシンの口腔投与に関しては開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第9,006,727B2号
【特許文献2】US10022361
【特許文献3】WO2007061529
【特許文献4】WO2003066029
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
子ブタは、一般的な農作業(これは、とりわけ、去勢、断尾又は針歯の切断などを包含する)に際して、大きな痛みを経験し得る。他の動物も同様の処置中に痛みを経験する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
フルニキシンの口腔投与法は、現在、家畜(例えば、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギなど)における痛みを軽減させる使いやすく効果的な方法を提供するために開発された。
【0009】
疼痛を治療する方法であって、疼痛の治療を必要とする動物にフルニキシン又はその塩を含んでいる組成物を口腔投与することを含む、前記方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
口腔投与とは、薬剤を頬の口腔領域に投与して、口腔粘膜を通して拡散させ、直接血流中に入るようにすることを意味する。それは、局所投与経路と考えられる。口腔投与では、薬物が消化器系を通過しないために代謝が回避されるので、経口投与と比較して、一部の薬物の生物学的利用能が向上し、より迅速に作用が発現する。
【0011】
舌下投与では、薬物を舌下に置いて、薬物はそこで溶解し、そこの組織を通って血液中に吸収される。
【0012】
口腔粘膜は、口の内側を覆っている組織である。頬粘膜は、頬の内側を覆っている組織である。
【0013】
薬学的に許容される担体は、薬物投与の選択性、有効性及び安全性を改善する物質である。薬学的担体は、多くの場合、患者体内への薬物の全身放出を制御するために使用される。
【0014】
経皮組成物は、皮膚を介して薬物を投与するために使用される医薬組成物である。
【0015】
会陰は、肛門と陰嚢又は外陰部の間の領域である。
【0016】
Banamine(登録商標) Transdermalは、フルニキシンを含んでいる経皮製剤であり、その組成は以下の表に記載されている。
【表1】
フルニキシン経皮製剤の組成及び形成は、米国特許第9,006,727B2号に記載されている。
【0017】
Banamine(登録商標)-S Injectable Solutionは、フルニキシンを含んでいる注射可能な製品である。1ミリリットルのBanamine(登録商標)-S Injectable Solutionは、以下のものを含んでいる:50mgのフルニキシンに相当するフルニキシンメグルミン、0.1mgのエデト酸二ナトリウム、2.5mgのホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、4.0mgのジエタノールアミン、207.2mgのプロピレングリコール;防腐剤として5.0mgのフェノール、塩酸、適量の注射用水(Banamine(登録商標)-S Injectable Solutionの製品速報を参照されたい)。
【0018】
Banamine(登録商標)-pasteは、米国でウマ用に承認された非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である。該ペーストは、プロピレングリコール、カルメロースナトリウム、トウモロコシデンプン及び精製水を含んでいる。該ペーストは、シリンジのノズルを歯間隙に挿入し、プランジャーを押し下げて必要量のペーストを舌の裏側に付着させることによって、経口投与される。
【0019】
浸透促進剤は、吸収促進剤(absorption promoters)又は吸収促進剤(absorption accelerants)とも称され、受動的拡散と比較して、経皮薬物送達における経皮流量を増加させるいくつかの利点を有する。それらは、通常、無痛性及び非侵襲性である。浸透促進剤の例は、メントール、カンファー、d-リモネン、1-8シネオール、キシレン、ミリスチン酸イソプロピル、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、デカン酸、デシルアルコール、オレイン酸又はそれらの混合物である。メントールとプロピレングリコールジカプリレート/ジカプレートの混合物が好ましい。
【0020】
非プロトン性溶媒は、O-H結合又はN-H結合を有さない溶媒である。非プロトン性溶媒の例は、ピロリドン溶媒、例えば、2-ピロリドン若しくはN-メチル-2-ピロリドン若しくはそれらの混合物、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、DMSO、アセトン、グリセロールホルマール、乳酸エチル、及び、グリコールエーテル、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル若しくはジプロピレングリコールモノエチルエーテル、又は、それらの混合物である。特に、該非プロトン性溶媒は、ピロリドン溶媒、好ましくは、2-ピロリドンである。
【0021】
ブリッジングビヒクルは、他の製剤成分の間の溶解性を促進する賦形剤である。その例は、グリセリルモノカプリレートEP(モノ-及びジグリセリドNF)である。
【0022】
子ブタは、小さな、通常は若い、ブタである。
【0023】
本発明の一実施形態は、動物の疼痛を治療する方法であり、ここで、該方法は、そのような治療を必要とする動物にフルニキシン又はその塩を含んでいる組成物を口腔投与することを含む。
【0024】
別の実施形態では、該組成物は、経皮組成物である。
【0025】
別の実施形態では、該組成物は、さらに、1以上の浸透促進剤及び/又は非プロトン性一次溶媒を含んでいる。
【0026】
別の実施形態では、該フルニキシンは、フルニキシンメグルミンである。
【0027】
別の実施形態では、該浸透促進剤は、メントール、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレートカプレート又はそれらの混合物である。
【0028】
別の実施形態では、該非プロトン性一次溶媒は、ピロリドン溶媒、好ましくは、2-ピロリドンである。
【0029】
別の実施形態では、該動物は、家畜である。
【0030】
別の実施形態では、該家畜は、ブタ、ヤギ、ヒツジ又はウシ科動物である。
【0031】
別の実施形態では、該動物は、子ブタである。
【0032】
別の実施形態では、該疼痛は、去勢、断尾又は針歯の除去の結果である。
【0033】
別の実施形態では、該口腔投与は、動物の頬の内側に対するものである。
【0034】
本発明の一実施形態は、疼痛を治療する方法であり、ここで、該方法は、そのような治療を必要とする動物に、
(a) フルニキシンメグルミン、
(b) 2-ピロリドン、
(c) メントール、
(d) プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレートカプレート、及び、
(e) グリセリルモノカプリレート
を含んでいる組成物を口腔投与することを含む。
【実施例】
【0035】
実施例
子ブタにおける痛みを管理するためのフルニキシンの投与が研究された。薬物動態学的研究により、充分なレベルのフルニキシンが口腔投与によって達成され得ることが実証された。
【0036】
若い子ブタに口腔投与、筋肉内投与、IV投与、並びに、会陰、外耳道、直腸及び正中線を介した経皮経路で投与した場合のフルニキシンの生物学的利用能を比較するために、薬物動態学的研究を実施した。
【0037】
子ブタに、生後5~6日目に、Banamine(登録商標) Transdermal(口腔、会陰、外耳道、直腸、及び、正中線)又はBanamine(登録商標)-S Injectable Solution(静脈内及び筋肉内)のいずれかを投与した。Banamine(登録商標) Transdermalで処置された子ブタについては、5分、15分、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、36時間及び48時間後に血液サンプルを採取し、並びに、Banamine(登録商標)-S Injectable Solutionで処置された子ブタについては、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、36時間、48時間、60時間及び72時間後に血液サンプルを採取した。GLPで検証されたLC/MS-MS法を使用して、血漿サンプルをフルニキシン濃度に関して分析した。ブタ血漿(K2EDTA)を、内部標準(フルニキシン-d3)のアセトニトリル溶液を用いたタンパク質沈殿によって抽出する。次いで、そのサンプルを遠心分離し、得られた上清を、ネガティブエレクトロスプレーイオン化モードでの選択的反応モニタリングを使用するLC-MS/MSで分析する。モニターされるイオン性転移は、フルニキシンの場合は、m/z295~m/z251であり、内部標準の場合は、m/z298~m/z254である。
【0038】
以下の主要な薬物動態学的パラメータを、各グループについて計算した(平均±標準誤差)。
【表2】
生じた結果は、フルニキシンの最大の曝露及び生物学的利用能(%F)が筋肉内投与グループで観察された(71%)ことを示した。しかしながら、口腔投与の生物学的利用能(40%)が、フルニキシン経皮溶液に関する他の投与方法よりも優れていたことは予想外であった。これらのグループの生物学的利用能は、直腸(17%)、外耳道(11%)、正中線(5%)及び会陰(3%)であった。
【0039】
ブタにおける正中線投与で観察された生物学的利用能(5%)は、同じ製剤を用いてウシ種で測定された生物学的利用能(44%)を考慮すると、非常に期待外れであった。しかしながら、口腔投与で観察された生物学的利用能(40%)は、極めて有望であった。さらに、フルニキシンの口腔投与は、他の投与モード(例えば、注射、直腸、外耳道、会陰又は正中線)と比較して、ブタ種に対して投与するのがより便利であるという利点を有する。
【0040】
全体として、これらのデータは、いくつかの痛みを伴う処置(例えば、去勢)を受けているブタにおいて痛みを制御するための最初の鎮痛剤として、フルニキシンの口腔投与の開発を支持している。
【国際調査報告】