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特表2023-553302低い誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を有する液晶ポリエステル(LCP)及び熱可塑性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】低い誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を有する液晶ポリエステル(LCP)及び熱可塑性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/02 20060101AFI20231214BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20231214BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231214BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C08G63/02
C08L67/00
C08K3/013
C08K5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531048
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2021083421
(87)【国際公開番号】W WO2022117518
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/120,436
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21157098.1
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】モンシャイン, ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ポリーノ, ジョーエル
(72)【発明者】
【氏名】ボカユット, アンソニー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002CF031
4J002CF181
4J002DE106
4J002DE236
4J002DF016
4J002DJ006
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DL006
4J002EA017
4J002EF057
4J002EG037
4J002EH047
4J002FD016
4J002FD027
4J002FD047
4J002FD067
4J002FD097
4J002FD107
4J002FD177
4J002FD207
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GQ01
4J029AA04
4J029AA06
4J029AB01
4J029AB07
4J029AC02
4J029AD06
4J029AD10
4J029AE01
4J029BB05A
4J029BB09A
4J029BB10A
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CB10A
4J029CC06A
4J029CD03
4J029EB04A
4J029EB05A
4J029EC06A
4J029HA03A
4J029HB01
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE03
4J029KE05
(57)【要約】
本発明は、低い誘電率及び誘電正接を示し、携帯電子デバイス構成部品、例えばフィルム又は構造用部品に好適である、液晶ポリエステル(LCP)及びそのようなLPCを含む熱可塑性組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステル(LCP)であって、前記LCP中の総モル数を基準として、
- 40~98モル%の式(I):
【化1】
の繰り返し単位、
- 1~20モル%の式(II):
【化2】
の繰り返し単位、並びに
- 1~12モル%の式(III):
【化3】
の繰り返し単位を含む、LCP。
【請求項2】
- 0.1~15モル%の式(IV):
【化4】
の繰り返し単位、
- 0.1~15モル%の式(V):
【化5】
の繰り返し単位、及び/又は
- 0.1~15モル%の式(VI):
【化6】
の繰り返し単位を更に含む、請求項1に記載のLCP。
【請求項3】
- 0.1~15モル%の式(VII):
【化7】
の繰り返し単位、
- 0.1~15モル%の式(VIII):
【化8】
の繰り返し単位、
- 0.1~15モル%の式(IX):
【化9】
の繰り返し単位、
- 0.1~15モル%の式(X):
【化10】
の繰り返し単位、及び/又は
- 0.1~15モル%の式(XI):
【化11】
の繰り返し単位、及び/又は
- 0.1~15モル%の式(XII):
【化12】
の繰り返し単位を更に含む、請求項1及び2のいずれか一項に記載のLCP。
【請求項4】
- 40~90モル%の式(I)の繰り返し単位、
- 10~20モル%の式(II)の繰り返し単位、及び
- 2~12モル%の式(III)の繰り返し単位
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のLCP。
【請求項5】
- 65~85モル%の式(I)の繰り返し単位、
- 13~18モル%の式(II)の繰り返し単位、及び
- 3~11モル%の式(III)の繰り返し単位、
任意選択的に以下の繰り返し単位:
- 1~11モル%の式(IV)の繰り返し単位、
- 1~11モル%の式(V)の繰り返し単位、及び/又は
- 1~11モル%の式(VI)の繰り返し単位
のいずれか1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のLCP。
【請求項6】
繰り返し単位のモル数は、
- 式(I)+(II)+(III)=100モル%であり、
- 式(I)+(II)+(III)+(IV)=100モル%であり、
- 式(I)+(II)+(III)+(V)=100モル%であり、
- 式(I)+(II)+(III)+(VI)=100モル%であり、
- 式(I)+(II)+(III)+(IX)=100モル%であり、
- 式(I)+(II)+(III)+(X)=100モル%である
ものである、請求項1~5のいずれか一項に記載のLCP。
【請求項7】
-40~98モル%の6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)及び/又は6-アセトキシ-2-ナフトエ酸(AcHNA)、
- 1~20モル%の4,4’-ビフェノール(BP)、ヒドロキノン(HQ)、4,4’-ジアセトキシビフェニル(AcBP)及び/又は1,4-ジアセトキシベンゼン(AcHQ)、並びに
- 1~12モル%のシクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)、好ましくは1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(1,4-CHDA)
の縮合から生じる、請求項1~6のいずれか一項に記載のLCP。
【請求項8】
モル比([-OH]+[-OCOR])/[-COOH]が0.8~1.2の範囲である、[-OH]、[-OCOR]及び[-COOH]を有するモノマーの縮合から生じる、請求項1~7のいずれか一項に記載のLCP。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のLCPと、任意選択的に補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含む、熱可塑性組成物(C)。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のLCP又は請求項9に記載の熱可塑性組成物を含む、携帯電子デバイス物品又は構成部品。
【請求項11】
前記LCP又は前記熱可塑性組成物(C)は、
- ASTM D2520(5GHz)に従って測定されるように、3.5未満の5GHzでの誘電率Dk、及び/又は
- ASTM D2520(5GHz)に従って測定されるように、0.0060未満の5GHzでの誘電正接Df、及び/又は
- ASTM D2520(20GHz)に従って測定されるように、3.6未満の20GHzでの誘電率Dk、及び/又は
- ASTM D2520(20GHz)に従って測定されるように、0.0030未満の20GHzでの誘電正接Df
を有する、請求項10に記載の物品又は構成部品。
【請求項12】
フィルム、例えばフレキシブルプリント回路基板(FPC)の形態にある、請求項10又は11に記載の物品又は構成部品。
【請求項13】
携帯電子デバイス物品若しくは構成部品を調製するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル(LCP)又は請求項9に記載の熱可塑性組成物の使用。
【請求項14】
輸送機関、好ましくは自動車又は航空工学物品のために使用されるデバイス、物品又は構成部品を調製するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル(LCP)又は請求項9に記載の熱可塑性組成物の使用。
【請求項15】
少なくとも40~98モル%の6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)又は6-アセトキシ-2-ナフトエ酸(AcHNA)及び少なくとも1~20モル%の1種のジヒドロキシ芳香族化合物を含む液晶ポリエステル(LCP)を調製するためのシクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)の使用であって、CHDAが、前記LCP中の総モル数を基準として、1~12モル%の間で変わるモル比にある、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月2日出願の米国仮特許出願第63/120436に及び2021年2月15日出願の欧州特許出願第21157098.1号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、低い誘電率及び誘電正接を示し、携帯電子デバイス構成部品、例えばフィルム又は構造用部品に好適である、液晶ポリエステル(LCP)及びそのようなLCPを含む熱可塑性組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
それらの重量の低下及び高い機械的性能のために、ポリマー組成物は、携帯電子デバイス構成部品を製造するために幅広く使用されている。現在、改善された誘電性能(すなわち、低い誘電率及び誘電正接)を有する携帯電子デバイス構成部品を製造するために使用されるポリマー組成物に対して、市場からの高い需要がある。
【0004】
携帯電子デバイスにおいて、様々な構成部品及びハウジングを形成する材料は、1つ以上のアンテナを通して携帯電子デバイスによって送信される及び受信される無線信号(例えば、1MHz、2.4GHz、5.0GHz、20.0GHzの周波数)を著しく劣化させる可能性がある。誘電率は、材料が電磁線と相互作用して、材料を通って移動する電磁信号(例えば、無線信号)を破壊する能力を表すので、携帯電子デバイスにおいて使用される材料の誘電性能は、誘電率を測定することによって決定することができる。したがって、所与の周波数での材料の誘電率が低ければ低いほど、その周波数での材料による電磁信号の破壊は少なくなる。
【0005】
本出願人は、携帯電子デバイス構成部品のための材料として、とりわけ、それらを好適なものにする、改善された誘電性能を有する新しいクラスの液晶ポリエステル(LCP)を特定した。
【0006】
これらのLCPは、芳香族モノマー、並びにシクロヘキサンジカルボン酸モノマーなどの成分/モノマーの特定の組合せに由来する。
【0007】
米国特許出願公開第2020/017769号明細書(株式会社クラレ)は、高周波帯域における誘電正接を低減すること並びに融点の制御された上昇を有することができる熱可塑性LCPに関する。しかしながら、この公文書に記載されるLCPは、例えばCHDAなどの、いかなるシクロヘキサンジカルボン酸モノマーも含まない。
【0008】
米国特許第6,093,787号明細書(Eastman Chemical Company)は、シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)部分を含有するLCPに、及びそのようなLCP及びガラス繊維を含む成形組成物に関する。
【0009】
米国特許出願公開第2020/0102420号明細書(SK Chemicals)は、脂環式ジカルボン酸又はその誘導体を含むLCPを開示している。脂環式ジカルボン酸又はその誘導体は、液晶ポリマーの絶縁特性を改善するために、液晶ポリマー中へ導入される。脂環式ジカルボン酸又はその誘導体には、5~20個の炭素原子を有するシクロアルカンジカルボン酸又はそれのエステル化合物が含まれる。好ましくは、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)を使用することができる。これらの公文書に記載されるLCPは、ヒドロキノン及び4-ヒドロキシ安息香酸に由来する大量の繰り返し単位を有する。それらは、本発明の組成物と比較して期待される誘電性能を持たない。
【0010】
米国特許第4,355,133号明細書(Celanese Corp)及び米国特許第4,318,842号明細書(Celanese Corp)は両方とも、以下の繰り返し単位:
【化1】
から本質的になる、およそ350℃未満の温度で異方性融液相を形成することができる溶融加工可能なポリエステルを記載している。米国特許第4,318,842号明細書に記載されるポリマーは、10~40モル%、好ましくは15~25モル%、最も好ましくは20モル%の単位IIIを含む。この公文書の実施例は全て、15~30モル%の単位IIIを有するLCPポリマーを記載している。米国特許第4,355,133号明細書に記載されるポリマーは、10~45モル%の単位IIIを含む。この公文書のただ1つの実施例は、24.7モル%の単位IIIを含有するLCPポリマーを記載している。これらのポリマーは、本発明のポリエステルと比較して期待される誘電性能を持たない。
【0011】
米国特許第5,747,175号明細書(Hoechst)は、再生可能な色特性、自動車仕上剤に使用するための安定した温度及び高い耐薬品性を有するLCPブレンドを記載している。本公文書は、概して、LCPを調製するための芳香族構成成分の使用を記載しているが、脂肪族及び脂環式成分、例えばシクロヘキサンジカルボン酸を用いることが可能であるとも述べている。この公文書におけるたった1つの実施例は、合計10モル%になるモル含有量でのCHDAの使用を記載している。
【0012】
しかしながら、上に列挙された公文書のどれも、本発明のLCP及び携帯電子デバイスの構成部品としてのそれらの有利な特性を記載していない。
【発明の概要】
【0013】
本開示のある態様は、特定の組合せの繰り返し単位を含む液晶ポリエステル(LCP)を指向する。本出願人は、特定のモル量での幾つかの繰り返し単位の組合せが、フィルム及び携帯電子デバイス物品又は構成部品用の材料としてそれらを最も有用なものにする改善された誘電性能、並びに一連の熱遷移温度を有するLCP樹脂の調製につながることを見いだした。
【0014】
本発明の他の態様は、そのようなLCPを含む熱可塑性組成物(C)、そのようなLCP及び組成物の調製方法、並びに携帯電子デバイス又は、自動車などの、輸送機関に使用される物品又は構成部品を調製するためのそのようなポリマー生成物の使用を指向する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
フィルム及び携帯電子デバイス物品又は構成部品用の材料としてそれらを、とりわけ、好適なものにする、改善された誘電特性を有する、液晶ポリエステル(LCP)及びそのようなLCPを含む熱可塑性組成物(C)が本明細書で開示される。本発明のLCPはまた、輸送機関(例えば、自動車、航空工学物品(aeronautics)、ドローン)に好適である。
【0016】
より具体的には、本発明のLCPは、芳香族成分の選択と組み合わせて、特定のモル量のシクロヘキサンジカルボン酸から製造され、成分のこの特定の組合せは、例えば、より大量のシクロヘキサンジカルボン酸構成成分を含有するLCPと比較して、LCP又はそのようなLCPを含む組成物に改善された誘電性能をもたらすことが示された。
【0017】
選択されたモル比のシクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)の導入はまた、様々な処理要件に対して望ましい、液晶性を維持しながら、LCPの溶融温度(Tm)及び結晶化温度(Tc)の制御を可能にすることが示された。
【0018】
より厳密には、本発明のLCPは、LCP中の総モル数を基準として、
- 40~98モル%の式(I):
【化2】
の繰り返し単位、
- 1~20モル%の式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び/又は(IId):
【化3】
の繰り返し単位、並びに
- 1~12モル%の式(IIIa)及び/又は(IIIb):
【化4】
の繰り返し単位
を含む。
【0019】
本明細書で記載されるLCPは、上述の繰り返し単位に本質的に存するLCP、又はそのような繰り返し単位を含む、任意選択的に以下に記載されるような追加の繰り返し単位を含むLCPであり得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明のLCPが追加の繰り返し単位を含む場合、これらの繰り返し単位は、
【化5】
からなる群の中で選択され得る。
【0021】
これらの繰り返し単位(IV)、(V)及び/又は(VI)のそれぞれは、LCP中の総モル数を基準として、0.1~15モル%、例えば0.5~13モル%、1~11モル%、2~9モル%又は3~8モル%の範囲のモル量でLCP中に存在し得る。
【0022】
いくつかの他の実施形態では、本発明のLCPが追加の繰り返し単位を含む場合、追加の繰り返し単位は、
【化6】
からなる群の中で選択され得る。
【0023】
これらの繰り返し単位(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)及び/又は(XI)のそれぞれは、LCP中の総モル数を基準として、0.1~15モル%、例えば0.5~13モル%、1~11モル%、2~9モル%又は3~8モル%の範囲のモル量でLCP中に存在し得る。
【0024】
本発明によれば、本発明のLCPが追加の繰り返し単位を含む場合、これらの追加の繰り返し単位は、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)及び(XI)からなる群から選択され得る。LPCは、これらの繰り返し単位の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ又は9つを含み得る。これらの繰り返し単位のそれぞれは、LCP中の総モル数を基準として、0.1~15モル%、例えば0.5~13モル%、1~11モル%、2~9モル%又は3~8モル%の範囲のモル量でLCP中に存在し得る。
【0025】
本出願では、
- たとえ特定の実施形態に関連して記載されていても、あらゆる記載が、本開示の他の実施形態に適用可能であり、及び他の実施形態と交換可能であり;
- 要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、及び/又はリストから選択されると言われる場合、本出願で明確に熟考される関連実施形態では、要素又は成分はまた、個別の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つであることができるか、又は明確に列挙された要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群から選択することができ;要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分も、そのようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり;
- 端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び同等物を含む。
【0026】
本出願では、用語「含む(comprising)」又は「含む(comprise)」は、「から本質的になる(consisting essentially of)」(又は「から本質的になる(consist essentially of)」及びまた「からなる(consisting of)」(又は「からなる(consist of)」を包含する。
【0027】
本明細書での単数形「1つ(a)」又は「1つ(one)」の使用は、特に明記しない限り複数形を包含する。
【0028】
本公文書の全体にわたって、全ての温度は、摂氏温度(℃)で与えられる。
【0029】
本発明のLCPは、繰り返し単位(I)、(II)及び(III)を含む。本出願の全体にわたって記載されるように、繰り返し単位(II)は、式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び/又は(IId)に従うことができる。これは、例えば、本発明のLCPがいくつかのはっきりと異なる繰り返し単位(II)、例えば(IIa)及び(IId)又は(IIa)、(IIb)及び(IIc)を含み得ることを意味する。好ましくは、本発明のLCPは、繰り返し単位(IIa)及び/又は(IId)を含む。式(IIIa)及び/又は(IIIb)に従うことができる、繰り返し単位(III)についても同じことが言える。好ましくは、本発明のLCPは、繰り返し単位(IIIa)を含む。
【0030】
より具体的には、本発明のLCPは、LCP中の総モル数を基準として、40~98モル%の式(I)の繰り返し単位、好ましくは40~90モル%、より好ましくは50~85モル%又は60~81モル%の式(I)の繰り返し単位を含む。本発明のLCPは、更に、LCP中の総モル数を基準として、1~22モル%の式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び/又は(IId)の繰り返し単位、好ましくは5~21モル%又は10~20モル%の式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び/又は(IId)の繰り返し単位を含む。本発明のLCPはまた、LCP中の総モル数を基準として、1~12モル%の式(IIIa)及び/又は(IIIb)の繰り返し単位、好ましくは2~12モル%、又は2~11モル%、又は3~11モル%、又は3~10モル%又は4~9.5モル%又は4.5~8.5モル%の式(IIIa)及び/又は(IIIb)の繰り返し単位を含む。これらの実施形態では、LCPは、以下のモノマー:6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)(若しくは誘導体、例えば6-アセトキシ-2-ナフトエ酸(AcHNA))、ビフェノール(BP)(若しくは誘導体、例えばジアセトキシビフェニル(AcBP))、ヒドロキノン(HQ)(若しくは誘導体、例えばジアセトキシベンゼン(AcHQ))、並びにシクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)から製造され得る。CHDAモノマーは、一般に、シス/トランス異性体ブレンドであり、ここで、シス/トランス比は、1:99~99:1の間で変わり得、例えば10:90~90:10の間で変わる。例えば、LCPは、ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)(若しくは誘導体)、ビフェノール(BP)(若しくは誘導体)及び/又はヒドロキノン(HQ)(若しくは誘導体)、及びシクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)から製造され得る。例えば、LCPは、もっぱら、これらの3つ又は4つのモノマーから製造され得る。ビフェノール(BP)の様々な異性体を、本発明のLCPを調製するために使用することができる。ビフェノール(BP)は、例えば、4,4’-ビフェノール(4,4’-BP)、3,4’-ビフェノール(3,4’-BP)又は3,3’-ビフェノール(3,3’-BP)の形態にあり得る。これらの異性体の1つ又は幾つかを使用することができる。好ましくは、少なくとも4,4’-ビフェノールは、本発明のLCPを調製するために使用される。ヒドロキノン(HQ)の様々な異性体も、本発明との関連で使用することができる。
【0031】
本発明のLCPは、その上、繰り返し単位(IV)、(V)及び/又は(VI)を含み得る。これらの実施形態では、LCPは、以下のモノマー:2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)(若しくは誘導体)及びビ安息香酸(BB)(若しくは誘導体)から製造され得る。ビ安息香酸(BB)の様々な異性体を、本発明のLCPを調製するために使用することができる。ビ安息香酸(BB)は、4,4’-ビ安息香酸(4,4’-BB)及び/又は3,4’-ビ安息香酸(3,4’-BB)の形態にあり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明のLCPは、
- 65~75モル%の式(I)の繰り返し単位、
- 13~18モル%の式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び/又は(IId)の繰り返し単位、並びに
- 3~9モル%の式(IIIa)及び/又は(IIIb)の繰り返し単位、
任意選択的に以下の繰り返し単位:
- 3~11モル%の式(IV)の繰り返し単位、
- 3~11モル%の式(V)の繰り返し単位、及び/又は
- 3~11モル%の式(VI)の繰り返し単位
の少なくとも1つ
を含む。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明のLCPは、
- 65~75モル%の式(I)の繰り返し単位、
- 13~18モル%の式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び/又は(IId)の繰り返し単位、
- 3~9モル%の式(IIIa)及び/又は(IIIb)の繰り返し単位、並びに
- 任意選択的に3~11モル%の式(IV)の繰り返し単位
を含む又はそれらから本質的になる。
【0034】
本発明のLCPは、その上、繰り返し単位(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)及び/又は(XII)を含み得る。これらの実施形態では、LCPは、以下のモノマー:ヒドロキシ安息香酸(HBA)(若しくは誘導体、例えばアセトキシ安息香酸(AcHBA))、テレフタル酸(TPA)(若しくは誘導体)、イソフタル酸(IPA)(若しくは誘導体)、レゾルシノール(RS)(若しくは誘導体)及び/又はカテコール(CT)(若しくは誘導体)から製造され得る。これらの実施形態では、LCPは、以下のモノマー:6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)(若しくは誘導体、例えば6-アセトキシ-2-ナフトエ酸(AcHNA))、ビフェノール(BP)(若しくは誘導体、例えばジアセトキシビフェニル(AcBP))、ヒドロキノン(HQ)(若しくは誘導体、例えばジアセトキシベンゼン(AcHQ))、シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)、テレフタル酸(TPA)(若しくは誘導体)及び/又はイソフタル酸(IPA)(若しくは誘導体)から製造され得る。例えば、LCPは、もっぱら、HNA(若しくは誘導体)、BP若しくは(誘導体)、HQ(若しくは誘導体)、CHDA(若しくは誘導体)、及びTPA(若しくは誘導体)から製造され得る。LCPはまた、もっぱら、HNA(若しくは誘導体)、BP(若しくは誘導体)、HQ(若しくは誘導体)、CHDA(若しくは誘導体)、及びIPA(若しくは誘導体)から製造され得る。LCPはまた、もっぱら、HNA(若しくは誘導体)、BP(若しくは誘導体)、HQ(若しくは誘導体)、CHDA(若しくは誘導体)、TPA(若しくは誘導体)及びIPA(若しくは誘導体)から製造され得る。
【0035】
ヒドロキシ安息香酸(HBA)の様々な異性体を、本発明のLCPを調製するために使用することができる。とりわけ、HBAは、4-ヒドロキシ安息香酸(4-HBA)及び/又は3-ヒドロキシ安息香酸(3-HBA)の形態にあることができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明のLCPは、繰り返し単位のモル数が以下のとおりであるようなものである:
- 式(I)+(II)+(III)+(IV)+(V)+(VI)+(VII)+(VIII)+(IX)+(X)+(XI)+(XII)=100モル%であり、ここで、式(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)及び/又は(XII)の繰り返し単位のモル数≧0モル%であり、
- 式(I)+(II)+(III)+(IV)+(V)+(VI)=100モル%であり、ここで、式(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位のモル数≧0モル%であり、並びに
- 式(I)+(II)+(III)+(VII)+(VIII)+(IX)+(X)+(XI)+(XII)=100モル%であり、ここで、式(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)及び/又は(XII)の繰り返し単位のモル数≧0モル%である。
【0037】
これらの実施形態では、LCPは、もっぱら、以下のモノマー:6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)(若しくは誘導体)、ビフェノール(BP)(若しくは誘導体)、ヒドロキノン(HQ)(若しくは誘導体)、シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)(若しくは誘導体)、2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)(若しくは誘導体)、ビ安息香酸(BB)(若しくは誘導体)から製造され得る。
【0038】
例えば、本発明のLCPは、繰り返し単位のモル数が以下のとおりであるようなものである:
- 式(I)+(II)+(III)=100モル%、例えば式(I)+(IIa)+(IIIa)=100モル%であり、
- 式(I)+(II)+(III)+(IV)=100モル%、例えば式(I)+(IIa)+(IIIa)+(IV)=100モル%であり、
- 式(I)+(II)+(III)+(V)=100モル%であり、
- 式(I)+(II)+(III)+(VI)=100モル%であり、
- 式(I)+(II)+(III)+(IX)=100モル%であり、又は
- 式(I)+(II)+(III)+(X)=100モル%である
ようなものであり得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、LCPは、もっぱら、以下のモノマー:6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)(若しくは誘導体)、ビフェノール(BP)(若しくは誘導体)、シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)、好ましくは1,4-CHDA、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)(若しくは誘導体)から製造され得る。
【0040】
本発明のLPCは、それらのいくつかがジオール、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、エステル又はジエステルである、様々な存在物から調製される。用語「ジオール」は、2個のヒドロキシル基を有する、好ましくは、エステル結合を形成することができる他の官能基を持たない有機化合物を言う。用語「ジカルボン酸」は、2個のカルボキシル基を有する、好ましくは、エステル結合を形成することができる他の官能基を持たない有機化合物を言う。用語「ヒドロキシカルボン酸」は、1個のヒドロキシル基及び1個のカルボキシル基を有する、好ましくは、エステル結合を形成することができる他の官能基を持たない有機化合物を言う。用語「エステル」又は「ジエステル」は、カルボン酸から誘導される1つ又は2つのカルボキシル基(RCO-、ここで、Rは、アルキル又は置換アルキルである)を有する有機化合物を言う。言い換えれば、本発明のLPCは、[-OH]、[-OCOR]及び[-COOH]を有するモノマーから調製される。いくつかの実施形態では、LCPは、0.8~1.2の、好ましくは0.9~1.1の、更にいっそう好ましくは0.95~1.05の範囲のモル比([-OH]+[-OCOR])/[-COOH]から調製される。例として、これらの実施形態によれば、繰り返し単位([II]+[XI]+[XII])/繰り返し単位([III]+[IV]+[V]+[VI]+[IX]+[X])のモル比は、1±0.2、好ましくは1±0.1、より好ましくは1±0.05、更にいっそう好ましくは1±0.01に等しい。
【0041】
ある実施形態によれば、本明細書で記載されるLCPは、ASTM D3418(冷却、20℃/分の加熱/冷却速度)に従って示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定されるように、260℃超、例えば260~320℃の、例えば270~310℃の、又は280~300℃範囲の溶融温度(Tm)を有する。
【0042】
ある実施形態によれば、本明細書で記載されるLCPは、ASTM D3418(冷却、20℃/分の加熱/冷却速度)に従って示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定されるように、260℃未満、例えば150~260℃の範囲、例えば155~250℃の、又は160~246℃の、又は160~240℃の範囲の結晶化温度(Tc)を有する。
【0043】
ある実施形態によれば、LCP又は熱可塑性組成物(C)、本発明の物体は、好ましくは、ASTM D2520(5GHz)に従ってスプリットシリンダ共振器(Split Cylinder Resonator)(SCR法)を用いて、「成形時のままに乾燥した(dry-as-molded)」圧縮成形フィルムから得られた4cm×4cm×150μm(厚さ)フィルムに関して面内方向で測定されるように、3.5未満、好ましくは3.4未満、又は3.3以下の5GHzでの誘電率Dkを有する。
【0044】
ある実施形態によれば、LCP又は熱可塑性組成物(C)、本発明の物体は、好ましくは、ASTM D2520(5GHz)に従ってスプリットシリンダ共振器(SCR法)を用いて、「成形時のままに乾燥した」圧縮成形フィルムから得られた4cm×4cm×150μm(厚さ)フィルムに関して面内方向で測定されるように、0.0060未満、好ましくは0.0058未満、又は0.0055以下の5GHzでの誘電正接Dfを有する
【0045】
ある実施形態によれば、LCP又は熱可塑性組成物(C)、本発明の物体は、好ましくは、ASTM D2520(20GHz)に従ってスプリットシリンダ共振器(SCR法)を用いて、「成形時のままに乾燥した」圧縮成形フィルムから得られた4cm×4cm×150μm(厚さ)フィルムに関して面内方向で測定されるように、3.6未満、好ましくは3.5未満、又は3.4以下の20GHzでの誘電率Dkを有する。
【0046】
ある実施形態によれば、LCP又は熱可塑性組成物(C)、本発明の物体は、好ましくは、ASTM D2520(20GHz)に従ってスプリットシリンダ共振器(SCR法)を用いて、「成形時のままに乾燥した」圧縮成形フィルムから得られた4cm×4cm×150μm(厚さ)フィルムに関して面内方向で測定されるように、0.0030未満、好ましくは0.0025未満、又は0.0020以下の20GHzでの誘電正接Dfを有する。LCP又は熱可塑性組成物(C)、本発明の物体は、より好ましくは、0.0010~0.0020又は0.0011~0.0019の20GHzでの誘電正接Dfを有する。
【0047】
本明細書で記載されるLCPは、ポリエステル、より厳密にはLCPの合成に適応した任意の従来法によって調製することができる。
【0048】
本明細書で記載されるLCPは、例えば、モノマー及びコモノマーの熱重縮合によって調製することができる。LCPは、連鎖リミッターであって、ヒドロキシル又はカルボン酸部分と反応することができる一官能性分子であり、LCPの分子量を制御するために使用される連鎖リミッターを含有し得る。例えば、連鎖リミッターは、酢酸、プロピオン酸及び/又は安息香酸であることができる。触媒も使用することができる。触媒の例は、亜リン酸、オルト-リン酸、メタ-リン酸、次亜リン酸ナトリウムなどのアルカリ金属次亜リン酸塩及びフェニルホスフィン酸である。ホスファイトなどの、安定剤も使用され得る。
【0049】
本明細書で記載されるLCPはまた、無溶媒プロセス、すなわち、溶媒の不在下に、溶融体で行われるプロセスによって有利に調製することができる。縮合が無溶媒である場合、反応は、モノマーに対して不活性な材料でできた装置で実施することができる。この場合に、装置は、モノマーの十分な接触を提供するために選択され、この装置では、揮発性反応生成物の除去が実行可能である。好適な装置としては、撹拌反応器、押出機及び混錬機が挙げられる。
【0050】
熱可塑性組成物(C)
本明細書で記載されるLCPは、熱可塑性組成物(C)の総重量を基準として、30重量%超、35重量%超、40重量%超又は45重量%超の総量で熱可塑性組成物(C)中に存在し得る。
【0051】
LCPは、熱可塑性組成物(C)の総重量を基準として、99.95重量%未満、99重量%未満、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満又は60重量%未満の総量で熱可塑性組成物(C)中に存在し得る。
【0052】
LCPは、例えば、熱可塑性組成物(C)の総重量を基準として、30~90重量%、例えば40~80重量%の範囲の量で熱可塑性組成物(C)中に存在し得る。
【0053】
熱可塑性組成物(C)はまた、充填剤(補強剤などの)、強化剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤からなる群から選択される1種以上の成分を含み得る。
【0054】
充填剤(補強剤などの、補強繊維又は補強充填剤とも呼ばれる)の豊富な品揃えが、本発明による組成物(C)に添加され得る。それらは、繊維状補強剤及び微粒子補強剤から選択することができる。繊維状補強充填剤は、平均長さが幅及び厚さの両方よりも著しく大きい、長さ、幅及び厚さを有する材料であると本明細書では考えられる。一般に、そのような材料は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20又は少なくとも50の長さと最大の幅及び厚さとの間の平均比として定義される、アスペクト比を有する。充填剤は、一般に、鉱物充填剤(例えばタルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維及びウォラストナイトから選択され得る。充填剤は、例えば、低誘電率繊維充填剤又は中空充填剤であり得る。充填剤は、窒化ホウ素、酸化亜鉛又はグラフェンなどの、導電性及び非導電性の熱伝導性充填剤であり得る。いくつかの実施形態では、熱可塑性組成物(C)は、窒化ホウ素か、又は酸化亜鉛かのどちらかを含む。1つのそのような実施形態では、熱可塑性組成物(C)は、窒化ホウ素を含み、酸化亜鉛を含まない。他の実施形態では、熱可塑性組成物(C)は、酸化亜鉛を含み、窒化ホウ素を含まない。本明細書で用いるところでは及び特に明確に述べない限り、成分を「含まない」は、その成分の濃度が、熱可塑性組成物(C)の総重量を基準として、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下又は0.05重量%以下であることを意味する。
【0055】
充填剤(補強剤などの)は、熱可塑性組成物(C)の総重量を基準として、5重量%超、10重量%超、15重量%超、又は20重量%超の総量で熱可塑性組成物(C)中に存在し得る。充填剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、65重量%未満、60重量%未満、55重量%未満又は50重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0056】
充填剤は、例えば、組成物(C)の総重量を基準として、5~65重量%、例えば10~55重量%の範囲の量で熱可塑性組成物(C)中に存在し得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物(C)は、低誘電率繊維充填剤、具体的には、低誘電率ガラス繊維充填剤を含み得る。低誘電率充填剤が低誘電正接Dfを有することが望ましい。とりわけ、低誘電率充填剤は、1メガヘルツ(MHz)~1GHzの周波数で5.0未満(約4.5)のDk及び1MHz~1GHzの周波数で約0.002未満のDfを有し得る。ある種の例では、低誘電率充填剤は、1MHz~1GHzの周波数で5.0未満のDk及び1MHz~1GHzの周波数で約0.002未満のDfを有する誘電性ガラス繊維である。
【0058】
例示的な態様では、組成物(C)は、ガラス繊維、例えば低誘電率繊維充填剤を含み、それらは、E-ガラス、S-ガラス、AR-ガラス、T-ガラス、D-ガラス R-ガラス、及びそれらの組合せから選択され得る。例として、ガラス繊維は、石灰-アルミノ-ホウケイ酸ガラスに含まれる繊維状ガラスフィラメントのグラスである「E」ガラス型であることができる。
【0059】
本発明の組成物(C)に使用され得る、ガラス繊維、例えば低誘電率ガラス繊維は、様々な形状を有することができる。繊維は、ミルにかけた又は刻んだガラス繊維を含み得る。それらは、ウィスカ又はフレークの形態にあり得る。更なる例では、それらは、短ガラス繊維又は長ガラス繊維であり得る。ガラス繊維は、約4mm(ミリメートル)以上の長さを有し得、長繊維と言われ、これよりも短い繊維は、短繊維と言われる。一態様では、ガラス繊維の直径は、10μm(ミクロン)、又は2μm~15μm、又は5μm~12μmであることができる。
【0060】
低誘電率ガラス繊維などの、ガラス繊維は、円形の、フラットな、又は不規則な断面を有し得る。非円形断面を有するガラス繊維が、本発明の組成物に使用され得る。代わりに、ガラス繊維は、円形断面を有し得る。ガラス繊維の直径は、例えば、約1~約15μmであり得る。より具体的には、低誘電率ガラス繊維の直径は、例えば、約4~約10μmであり得る。フラットガラス繊維、例えば、日東紡績株式会社製のフラットガラス繊維(CSG 3PA-830)も使用され得る。
【0061】
本発明の組成物(C)中に存在し得る充填剤は、ポリマーベース樹脂への接着性を改善するためのカップリング剤を含有する表面処理剤で表面処理され得る。好適なカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤又はそれらの混合物を上げることができるが、それらに限定されない。適用可能なシラン系カップリング剤には、アミノシラン、エポキシシラン、アミドシラン及びアクリルシランが含まれる。有機金属カップリング剤、例えば、チタン又はジルコニウム系有機金属化合物も使用され得る。
【0062】
本発明の組成物(C)はまた、中空充填剤を含み得る。中空充填剤は、例えば、中空ガラス球、中空ガラス繊維、又は中空セラミック球であり得る。具体的な例では、中空充填剤は、中空ガラス球であり得る。例示的な中空ガラス球は、1立方センチメートル当たり0.2グラム(g/cm)からの密度を有する。例えば、好適な中空ガラス球は、約0.46g/cmの密度を有する。更なる例では、好適な中空ガラス球は、約0.6g/cmの密度を有する。中空ガラス球は、5μm~50μmの直径を有し得る。例えば、好適な中空ガラス球は、約30μm±2、又は約20μm±2の直径を有する。別の好適な中空ガラス球は、約10μm±2の直径を有し得る。
【0063】
本発明の熱可塑性組成物(C)はまた、耐衝撃性改良剤とも呼ばれる、強化剤を含み得る。強化剤は、一般に、例えば室温未満、0℃未満又は-25℃未満さえのTgの、低いガラス遷移温度(Tg)ポリマーである。その低いTgの結果として、強化剤は、典型的には、室温でエラストメリックである。強化剤は、官能化されたポリマー骨格であることができる。
【0064】
強化剤は、例えば、シロキサン系強化剤であり得る。
【0065】
強化剤のポリマー骨格は、ポリエチレン及びそれらのコポリマー、例えばエチレン-ブテン、エチレン-オクテン;ポリプロピレン及びそれらのコポリマー;ポリブテン;ポリイソプレン;エチレン-プロピレンゴム(EPR);エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM);エチレン-アクリレートゴム;ブタジエン-アクリロニトリルゴム、エチレン-アクリル酸(EAA)、エチレン-酢酸ビニル(EVA);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム(ABS)、ブロックコポリマー スチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS);ブロックコポリマー スチレンブタジエンスチレン(SBS);メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)タイプのコア-シェルエラストマー、又は上記の1つ以上の混合物を含むエラストメリック骨格から選択することができる。
【0066】
強化剤が官能化される場合、骨格の官能化は、官能化を含むモノマーの共重合から又は更なる成分でのポリマー骨格のグラフト化から生じることができる。
【0067】
官能化された強化剤の具体的な例は、とりわけ、エチレンと、アクリル酸エステルとグリシジルメタクリレートとのターポリマー、エチレンとブチルエステルアクリレートとのコポリマー;エチレンと、ブチルエステルアクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマー;エチレン-無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたEPR;無水マレイン酸でグラフトされたスチレンコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたSEBSコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたスチレン-アクリロニトリルコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたABSコポリマーである。
【0068】
強化剤は、熱可塑性組成物(C)の総重量を基準として、1重量%超、2重量%超又は3重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。強化剤は、熱可塑性組成物(C)の総重量を基準として、30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満又は10重量%未満の総量で熱可塑性組成物(C)中に存在し得る。
【0069】
熱可塑性組成物(C)はまた、可塑剤、着色剤、顔料(例えば、カーボンブラック及びニグロシンなどの黒色顔料)、帯電防止剤、染料、潤滑剤(例えば、線状低密度ポリエチレン、ステアリン酸カルシウム若しくはマグネシウム又はモンタン酸ナトリウム)、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤、離型剤及び酸化防止剤などの、当技術分野において一般に使用される他の従来の添加剤を含み得る。
【0070】
様々な態様では、熱可塑性組成物(C)は、離型剤を含むことができる。例示的な離型剤としては、例えば、金属ステアレート、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、蜂ろう、モンタンワックス、パラフィンワックス等、又は前述の離型剤の少なくとも1つを含む組合せを挙げることができる。離型剤は、一般に、いかなる充填剤も除いて、全熱可塑性組成物(C)の100重量部を基準として、約0.1~約1.0重量部の量で使用される。
【0071】
熱可塑性組成物(C)はまた、1種以上の他のポリマー、例えば本発明のLCPとははっきりと異なるLCP、又は例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、若しくはポリエチレンナフタレート(PEN)を含み得る。
【0072】
熱可塑性組成物(C)の調製
上で詳述されたような熱可塑性組成物(C)の製造方法がまた、本明細書で記載される。実際に、本発明の熱可塑性組成物(C)は、様々な方法に従って調製することができる。本開示の組成物は、材料と調合物中に望まれる任意の追加の添加剤との均質混合/混ぜ合わせを含む様々な方法によって前述の原料とブレンドする、配合する、又はさもなければ組み合わせることができる。前記調製方法は、例えば、LCPと、特定の成分、例えば充填剤、強化剤、安定剤、及びあらゆる他の任意選択の添加剤とを溶融ブレンドすることを含む。
【0073】
任意の溶融ブレンド法が、本発明に関連するポリマー原料と非ポリマー原料とを混合するために用いられ得る。例えば、ポリマー原料及び非ポリマー原料は、一軸スクリュー押出機若しくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、一軸スクリュー若しくは二軸スクリュー混錬機、又はバンバリーミキサーなどの、溶融ミキサーへ供給され得、添加ステップは、全ての原料の同時添加又はバッチ式の漸次添加であり得る。ポリマー原料及び非ポリマー原料がバッチ式に徐々に添加される場合、ポリマー原料及び/又は非ポリマー原料の一部がまず添加され、次いで、十分に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー原料及び非ポリマー原料と溶融混合される。補強剤が長い物理的形状(例えば、長ガラス繊維)を示す場合、延伸押出成形が補強された熱可塑性組成物(C)を調製するために用いられ得る。
【0074】
物品及び最終使用用途
本発明は、本明細書で記載されるLCP又は熱可塑性組成物(C)を含む物品に関する。
【0075】
本発明のLCP又は熱可塑性組成物(C)は、様々な形態にあることができる。例えば、それらは、粉末形態、繊維形態又は粒子形態にあることができる。それらはまた、液体形態にあることができる。
【0076】
LCPの粉末、繊維又は粒子を製造するために、機械的、溶液、及び溶融方法などの、当業者に公知の任意のプロセスを用いることができる。機械的プロセスには、LCPのすり潰し及びミリング(例えば、極低温すり潰し、ジェットミリング、ボールミリング等)が含まれる。溶液処理には、可溶性又は半可溶性LCPの凝固/沈殿(例えば、溶液凝固又はプリル化)が含まれる。繊維は、溶融紡糸、溶液紡糸等によって製造することができる。繊維は、モノフィラメントか、又はコア-シース及びサイド-バイ-サイドなどの、二成分フィラメントかのどちらかであることができる。
【0077】
本発明のLCP又は熱可塑性組成物(C)は、分散系、溶液、フィルム及び射出成形試験片中の充填剤又は添加物として使用することができる。
【0078】
例えば、粉末は、分散系、とりわけ、ポリアミド/ポリイミド溶液、LCP溶液又はポリスルホン溶液の分散系中の添加物として使用することができる。それらはまた、フィルム又は3D物体へ融合するためのマトリックスとして使用することができる。それらはまた、例えば狭ピッチで、コネクタ、薄壁部品、ケース、マイクロスイッチ、カメラ用構造材料を射出成形するための材料として使用することができる。それらはまた、構造用部品、アンテナ及び基地局物品などの、射出成形部品用の樹脂への充填剤/添加物として使用することができる。
【0079】
繊維は、スパンボンディング法で、ステープルファイバーとして使用する、及び補強剤/充填剤として切り刻むことができる。繊維に関しては、繊維を製造するための潜在的なプロセスには、溶融紡糸、溶液紡糸等が含まれる。それらは、モノフィラメントか、又は二成分フィラメント(例えば、コア-シース、サイド-バイ-サイド)かのどちらかであることができる。
【0080】
本発明のLCP又は熱可塑性組成物(C)は、フィルム、例えばフレキシブルプリント回路基板(FPC)の形態に造形され得る。
【0081】
LCP又は熱可塑性組成物(C)はまた、マイクロエレクトロニクス及びスマートデバイス、携帯電子デバイス、すなわち便利に運び、様々な場所で使用することを意図する電子デバイスの構造用部品のために射出成形され得る。携帯電子デバイスとしては、携帯電話、携帯情報端末(「PDA」)、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス(例えば、スマートウォッチ、スマートグラス等)、カメラ、携帯オーディオプレーヤー、携帯ラジオ、全地球測位システム受信機、及び携帯ゲームコンソールを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0082】
本明細書で記載されるLCP及び熱可塑性組成物(C)は、LCP構成成分間の相乗効果に帰することができる誘電性能を達成する。本発明のLCP及び熱可塑性組成物(C)はまた、液晶モルフォロジを維持しながら、有利なセットの熱特性(例えばTm及びTc)を示す。これは、とりわけ、LCPのフィルムを形成するのに望ましい。より厳密には、本発明者らは、本発明のLCPが、それらをフィルムの形態で加工されるのに好適にするセットのTc及びTmを示すことを実現した。とりわけ、上に記載されたように、それらのTcは、好ましくは260℃未満であり、それらのTmは260℃超である。本発明のLCPは、マイクロエレクトロニック空間において組立加工ステップに耐えることができる。様々な積層/表面実装技術(SMT)は、260℃超の温度を用いる;したがって、本LCPが260℃超、例えば約280℃~300℃のTmを有することは、明らかに利点である。
【0083】
ある実施形態によれば、携帯電子デバイス構成部品は、例えば、無線アンテナ及び組成物(C)を含み得る。この場合に、無線アンテナは、WiFiアンテナ又はRFIDアンテナであることができる。携帯電子デバイス構成部品はまた、アンテナハウジングであり得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、携帯電子デバイス構成部品は、アンテナハウジングである。いくつかのそのような実施形態では、無線アンテナの少なくとも一部は、熱可塑性組成物(C)上に配置される。加えて又は代わりに、無線アンテナの少なくとも一部は、熱可塑性組成物(C)に取って代わられ得る。いくつかの実施形態では、デバイス構成部品は、取付け穴又は他の締結デバイス(それ自体と、回路基板、マイクロホン、スピーカー、ディスプレイ、バッテリー、カバー、ハウジング、電気若しくは電子コネクタ、ヒンジ、無線アンテナ、スイッチ、又はスイッチパッドを含むが、それらに限定されない、携帯電子デバイスの別の構成部品との間のスナップフィットコネクタを含むが、それらに限定されない)を持った取付け構成部品のものであることができる。いくつかの実施形態では、携帯電子デバイスは、入力デバイスの少なくとも一部であることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、携帯電子デバイス部品又は構成部品は、輸送機関、例えば自動車(例えばスマートカー/5G能力の知的自動車)、航空工学物品及びドローンに使用される。
【0086】
更なる態様では、成形品は、輸送機関分野、とりわけ自動車分野において物品、デバイス又は構成部品を製造するために使用することができる。更なる態様では、本開示のブレンドされた熱可塑性組成物(C)を車両の内部に使用することができる自動車分野におけるそのようなデバイスの非限定的な例としては、適応走行制御、ヘッドライトセンサー、フロントガラスワイパーセンサー、及びドア/窓スイッチが挙げられる。更なる態様では、本開示のブレンドされた熱可塑性組成物(C)を車両の外部に使用することができる自動車分野におけるデバイスの非限定的な例としては、エンジン管理用の圧力及び流量センサー、エアコン、衝突検出、及び外部照明治具が挙げられる。
【0087】
本明細書に引用される全ての特許出願、及び刊行物の開示は、それらが本明細書に記載されるものを補完する例示的な、手続上の又は他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書によって援用される。参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0088】
これらの実施例は、発明の又は比較のLCPの熱的及び誘電性能を実証する。
【0089】
原材料
AcHNA:6-アセトキシ-2-ナフトエ酸、TCI(東京化成工業)から市販されている。
AcBP:4,4’-ジアセトキシビフェニル、TCIから市販されている。
CHDA:1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、Sigma Aldrichから市販されている(シス/トランス比は78.5:21.5である)
NDA:2,6-ナフタレンジカルボン酸、TCIから市販されている。
4,4’-BB:4,4’-ビ安息香酸、TCIから市販されている。
【0090】
比較LCP樹脂1
反応は、オーバーヘッド攪拌機、窒素注入口、及び受取フラスコに取り付けられた蒸留ネックを備えた乾燥100mL丸底フラスコにおいて行った。33.68gのAcHNA(70モル%)、5.40gのCHDA(15モル%)及び8.47g(15モル%)のAcBPを添加した。真空及びNガスパージング(3×)でのその後の脱ガスは、酸素を含まない環境を生み出した。初期温度は220℃又は全てのモノマーが溶融物を形成する温度であり、この温度を保持し、0.5h撹拌した。温度を、開始温度から335℃まで1.0℃/分で上げ、そこで1h保持した。次いでハウス真空を、0.5~1h酢酸凝縮物の除去を促進するために適用し、これに、0.1~2mmHgに達する、高真空の適用が続いた。反応から出る目立った凝縮が見られず、ポリマーサンプルが撹拌羽根周りに固化するまで反応を高真空下に保持した。サンプルをその後冷却し、撹拌羽根から回収した。LCPを使用前に100℃で一晩乾燥させた。
【0091】
発明LCP樹脂2
この例は、モノマー装入物として33.07g(70モル%)のAcHNA、3.11g(7モル%)のNDA、2.83g(8モル%)のCHDA、及び8.32g(15モル%)のAcBPを使って前の手順に従う。
【0092】
比較LCP樹脂3
この例は、モノマー装入物として29.02g(60モル%)のAcHNA、7.24g(20モル%)のCHDA、及び11.36g(20モル%)のAcBPを使って前の手順に従う。
【0093】
発明LCP樹脂4
この例は、モノマー装入物として32.72g(70モル%)のAcHNA、3.44g(7モル%)の4,4’BB、2.80g(8モル%)のCHDA、及び8.23g(15モル%)のAcBPを使って前の手順に従う。
【0094】
発明LCP樹脂5
この例は、発明LCP樹脂2でのように、しかしモノマー装入物として70モル%のAcHNA、15モル%のAcBP、10モル%のNDA及び5モル%のCHDAを使って前の手順に従う。
【0095】
フィルムの調製
圧縮成形は、Kaptonフィルム及び厚さ(0.004インチ)を制御するためのアルミニウムシムと層状に重ねられた2つのステンレス鋼プレートを利用した。一番上のプレートを置く前に、サンプルをTm+20℃でおよそ3分間加熱した。サンドイッチをプレスの中心に置き、それを閉じて上下のプレートの両方との接触を確実にした。Tm+20℃での加熱の2分後に、最初の2サイクルに関しては2トンの力及び最後の2サイクルに関しては4トンの力での4プレス-解除-プレスサイクルで、フィルム圧縮成形手順は終わった。サンドイッチを直ちにプレスから取り出し、冷たい卓上に置き、少なくとも1hにわたって周囲温度に戻らせた。次いでフィルムをサンドイッチから取り外し、Nガスを使用する不活性オーブンに入れ、200℃で18hアニールした。
【0096】
試験
熱遷移(Tg、Tm)
様々なLCPのガラス遷移温度及び溶融温度を、20℃/分の加熱及び冷却速度を用いてASTM D3418に従って示差走査熱量分析を使用して測定した。3つの走査:340℃までの第1加熱、続いて30℃への第1冷却、続いて350℃までの第2加熱を各DSC試験に関して用いた。Tmは、第2加熱から決定し、Tcは、冷却から決定した。溶融温度を下の表1に一覧にする。
【0097】
圧縮成形及び誘電性能
4インチ×4インチ×0.006インチ正方形の圧縮成形を、Carver 8393 Laboratory Pressを用いて乾燥粒状ポリマーで行った。誘電率Dk及び誘電正接Dfを、「成形時のままに乾燥した」圧縮成形フィルムから得られた4cm×4cm×150μm(厚さ)フィルムに関して測定した。面内方向での誘電率Dk及び誘電正接Dfを、ASTM D2520に従ってスプリットシリンダ共振器(SCR法)を用いて測定した。
【0098】
結果
発明樹脂2、4、5(5~8モル%CHDAを使った)から製造されたフィルムは、0.0011~0.0019の20GHzでの誘電正接を有したが、比較樹脂1及び3(15及び20モル%CHDを使った)から製造されたフィルムは、0.0031及び0.0046の20GHzでのより高い誘電正接Dfを有した。
【0099】
【表1】
【国際調査報告】