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特表2023-553333ピーク強度での腫瘍治療電場(TTFIELD)を時間の半分未満で印加することでTTFIELDの有効性を高めること
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  • 特表-ピーク強度での腫瘍治療電場(TTFIELD)を時間の半分未満で印加することでTTFIELDの有効性を高めること 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ピーク強度での腫瘍治療電場(TTFIELD)を時間の半分未満で印加することでTTFIELDの有効性を高めること
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/40 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
A61N1/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531678
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 IB2021060876
(87)【国際公開番号】W WO2022112945
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/118,411
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】モシェ・ギラディ
(72)【発明者】
【氏名】エイアル・ドル-オン
(72)【発明者】
【氏名】エイナヴ・ゼエビ
(72)【発明者】
【氏名】ロテム・エンゲルマン
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053FF01
(57)【要約】
交流電場が、生体における標的領域、または試験管における細胞に印加され得る。交流電場は、少なくとも1時間の長さである第1の時間の間隔の間に印加される。第1の時間の間隔は、1時間あたりに複数の(例えば、10回の)重ならない時間の部分間隔を含む。時間の部分間隔の各々において、(a)交流電場は50kHzから1MHz(例えば、50~500kHzまたは100~300kHz)の間の周波数を有し、(b)交流電場は、標的領域の少なくとも一部分において、少なくとも0.1V/cmのそれぞれのピーク強度を有し、(c)交流電場はその時間の75%未満(例えば、時間の25%または33%)でそれぞれのピーク強度に留まる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌細胞の増殖を抑制する方法であって、
少なくとも1時間の長さである第1の時間の間隔の間に交流電場を前記癌細胞に印加するステップを含み、
前記第1の時間の間隔は、1時間あたりに複数の重ならない時間の部分間隔を含み、
前記時間の部分間隔の各々において、(a)前記交流電場は50kHzから500kHzの間の周波数を有し、(b)前記交流電場は、前記癌細胞の少なくとも一部分において、少なくとも1V/cmのそれぞれのピーク強度を有し、(c)前記交流電場は前記時間の半分未満でそれぞれの前記ピーク強度に留まる、方法。
【請求項2】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は、それぞれの前記ピーク強度に先行する時間の間隔の間に、それぞれの前記ピーク強度へと上昇する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は、それぞれの前記ピーク強度に先行する前記時間の間隔の間に、それぞれの前記ピーク強度へと直線的に上昇する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は少なくとも前記時間の半分でオフに留まる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は前記時間の25%未満でそれぞれの前記ピーク強度に留まる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は前記時間の少なくとも75%でオフに留まる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は前記時間の少なくとも5%でそれぞれの前記ピーク強度の90%内に留まる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は前記癌細胞の少なくとも一部分において1~10V/cmのそれぞれのピーク強度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の時間の間隔は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない時間の部分間隔を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記交流電場は、前記部分間隔の第1の部分セットの間に、第1の方向で前記癌細胞に印加され、前記交流電場は、前記部分間隔の第2の部分セットの間に、第2の方向で前記癌細胞に印加され、前記第2の方向は前記第1の方向から少なくとも45°だけずらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は前記時間の25%未満でそれぞれの前記ピーク強度に留まり、
前記第1の時間の間隔は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない時間の部分間隔を含み、
前記交流電場は、前記部分間隔の第1の部分セットの間に、第1の方向で前記癌細胞に印加され、
前記交流電場は、前記部分間隔の第2の部分セットの間に、第2の方向で前記癌細胞に印加され、前記第2の方向は前記第1の方向から少なくとも45°だけずらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの制御入力を有する信号発生装置であって、前記信号発生装置は、50kHzから500kHzの間の周波数で第1の交流出力を発生させるように構成され、前記第1の交流出力は、前記少なくとも1つの制御入力の状態に依存する振幅を有する、信号発生装置と、
1時間あたりに複数の重ならない第1の時間の部分間隔の各々の間に制御信号の第1のセットを前記少なくとも1つの制御入力へと送るように構成される制御装置であって、前記制御信号の第1のセットは、各々のそれぞれの第1の時間の部分間隔の半分未満にわたって、前記第1の交流出力をそれぞれのピーク振幅で動作させるように構成される、制御装置と、
を備える、装置。
【請求項13】
前記制御信号の第1のセットは、前記第1の時間の部分間隔の各々の間で、それぞれの前記ピーク振幅に先行する時間の間隔の間に、前記制御信号の第1のセットが前記第1の交流出力をそれぞれの前記ピーク振幅へと上昇させるように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記制御信号の第1のセットは、前記第1の時間の部分間隔の各々の間で、それぞれの前記ピーク振幅に先行する前記時間の間隔の間に、前記制御信号の第1のセットが前記第1の交流出力をそれぞれの前記ピーク振幅へと直線的に上昇させるように構成される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記制御信号の第1のセットは、前記第1の時間の部分間隔の各々の間に、前記制御信号の第1のセットが前記第1の交流出力を少なくとも前記時間の半分でオフに留まらせるように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記制御信号の第1のセットは、前記第1の時間の部分間隔の各々の間に、前記制御信号の第1のセットが前記第1の交流出力を前記時間の25%未満でそれぞれの前記ピーク振幅に留まらせるように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記制御信号の第1のセットは、前記第1の時間の部分間隔の各々の間に、前記制御信号の第1のセットが前記第1の交流出力を前記時間の少なくとも75%でオフに留まらせるように構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記制御信号の第1のセットは、前記第1の時間の部分間隔の各々の間に、前記制御信号の第1のセットが前記第1の交流出力を前記時間の少なくとも5%でそれぞれの前記ピーク振幅の90%内に留まらせるように構成される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記制御信号の第1のセットは、前記第1の時間の部分間隔の各々の間に、前記制御信号の第1のセットが前記第1の交流出力に少なくとも50Vのそれぞれのピーク振幅を持たせるように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項20】
前記制御装置は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない第1の時間の部分間隔の各々の間、前記制御信号の第1のセットを前記少なくとも1つの制御入力へと送るように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項21】
前記信号発生装置は、50kHzから500kHzの間の周波数で第2の交流出力を発生させるようにさらに構成され、前記第2の交流出力は、前記少なくとも1つの制御入力の状態に依存する振幅を有し、
前記制御装置は、1時間あたりに複数の重ならない第2の時間の部分間隔の各々の間に制御信号の第2のセットを前記少なくとも1つの制御入力へと送るようにさらに構成され、前記制御信号の第2のセットは、各々のそれぞれの第2の時間の部分間隔の半分未満にわたって、前記第2の交流出力をそれぞれのピーク振幅で動作させるように構成され、前記第2の時間の部分間隔の各々は、前記第1の時間の部分間隔のそれぞれ1つに続く、請求項12に記載の装置。
【請求項22】
前記制御信号の第1のセットは、前記第1の時間の部分間隔の各々の間に、前記制御信号の第1のセットが前記第1の交流出力を前記時間の25%未満でそれぞれの前記ピーク振幅に留まらせるように構成され、前記制御信号の第2のセットは、前記第2の時間の部分間隔の各々の間に、前記制御信号の第2のセットが前記第2の交流出力を前記時間の25%未満でそれぞれの前記ピーク振幅に留まらせるように構成される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記制御装置は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない第1の時間の部分間隔の各々の間、前記制御信号の第1のセットを前記少なくとも1つの制御入力へと送るように構成され、前記制御装置は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない第2の時間の部分間隔の各々の間、前記制御信号の第2のセットを前記少なくとも1つの制御入力へと送るように構成される、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記制御信号の第1のセットは、前記第1の時間の部分間隔の各々の間に、前記制御信号の第1のセットが前記第1の交流出力に少なくとも50Vのそれぞれのピーク振幅を持たせるように構成され、前記制御信号の第2のセットは、前記第2の時間の部分間隔の各々の間に、前記制御信号の第2のセットが前記第2の交流出力に少なくとも50Vのそれぞれのピーク振幅を持たせるように構成される、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
電場を生体における標的領域へと印加する方法であって、
少なくとも1時間の長さである第1の時間の間隔の間に交流電場を前記標的領域に印加するステップを含み、
前記第1の時間の間隔は、1時間あたりに複数の重ならない時間の部分間隔を含み、
前記時間の部分間隔の各々において、(a)前記交流電場は50kHzから1MHzの間の周波数を有し、(b)前記交流電場は、前記標的領域の少なくとも一部分において、少なくとも0.1V/cmのそれぞれのピーク強度を有し、(c)前記交流電場は前記時間の75%未満でそれぞれの前記ピーク強度に留まる、方法。
【請求項26】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は、それぞれの前記ピーク強度に先行する時間の間隔の間に、それぞれの前記ピーク強度へと上昇する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は、それぞれの前記ピーク強度に先行する前記時間の間隔の間に、それぞれの前記ピーク強度へと直線的に上昇する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は前記時間の少なくとも75%でオフに留まる、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は前記時間の50%未満でそれぞれの前記ピーク強度に留まる、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は前記時間の少なくとも50%でオフに留まる、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は前記時間の少なくとも5%でそれぞれの前記ピーク強度の90%内に留まる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は前記標的領域の少なくとも一部分において1~10V/cmのそれぞれのピーク強度を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の時間の間隔は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない時間の部分間隔を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記交流電場は、前記部分間隔の第1の部分セットの間に、第1の方向で前記標的領域に印加され、前記交流電場は、前記部分間隔の第2の部分セットの間に、第2の方向で前記標的領域に印加され、前記第2の方向は前記第1の方向から少なくとも45°だけずらされる、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記時間の部分間隔の各々の中で、前記交流電場は前記時間の半分未満でそれぞれの前記ピーク強度に留まり、
前記第1の時間の間隔は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない時間の部分間隔を含み、
前記交流電場は、前記部分間隔の第1の部分セットの間に、第1の方向で前記標的領域に印加され、
前記交流電場は、前記部分間隔の第2の部分セットの間に、第2の方向で前記標的領域に印加され、前記第2の方向は前記第1の方向から少なくとも45°だけずらされる、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月25日に出願された米国仮特許出願第63/118,411号の利益を主張し、この仮特許出願は、本明細書において参照によりその全体が組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
腫瘍治療電場すなわちTTFieldは、癌細胞増殖を抑制する中間周波数範囲(例えば、100~500kHz)内での交流電場である。この非侵襲的治療は、固形腫瘍を標的とし、本明細書において参照によりその全体が組み込まれている特許文献1に記載されている。200kHzのTTFieldは、膠芽細胞腫(GBM)の治療についてFDAに認可されており、先行技術のOptune(商標)システムなどを介して、送達され得る。Optune(商標)は、電場発生装置と、患者の毛を剃った頭に置かれる二対の変換器配列(つまり、電極配列)とを備える。一方の対の配列(左/右)が腫瘍の左右に位置決めされ、他方の対の配列(前/後)が腫瘍の前後に位置決めされる。前臨床段階において、TTFieldは、例えば、先行技術のInovitro(商標)のTTField実験台システムを使用して、試験管内で印加させることができる。Optune(商標)とInovitro(商標)との両方において、電場発生装置は、(a)1秒間にわたって左/右変換器配列(または電極)の間に交流電圧を印加し、次に、(b)1秒間にわたって前/後変換器配列(または電極)の間に交流電圧を印加し、次に、その2ステップのシーケンス(a)および(b)を治療の期間にわたって繰り返す。
【0003】
図1は、Optune(商標)における左/右チャンネルおよび前/後チャンネルの交流出力振幅の概略図である。注目すべきことに、前/後変換器配列または左/右変換器配列のいずれかへの信号が、任意の所与の1秒間の間隔の間にオンにされるとき、交流電圧の振幅はそのピーク値へとすぐには急変しない。代わりに、交流電圧の振幅は50msの期間の経過にわたってゼロからそのピークへと上昇する。同様に、信号が任意の所与の1秒間の間隔の間にオフにされるとき、交流電圧の振幅は50msの期間の経過にわたってそのピークからゼロへと下降する。各々の1秒間の間隔が50msの上昇の期間と50msの下降の期間とを含むため、交流電圧は、各々の1秒間の間隔のうちの900msにわたって、そのピーク値に留まる。
【0004】
図1における詳細AおよびBは、上昇期間および下降期間の間の瞬間的な出力電圧の概略図である。これらの詳細の各々が、50msの上昇期間および下降期間における9回の周期だけを描写しているが、これらの期間の各々が、実際には約10,000周期を含むことになることに(200kHzのTTFieldが送達されると仮定して)留意されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,565,205号明細書
【特許文献2】米国特許第9,910,453号明細書
【特許文献3】米国特許第10,967,167号明細書
【特許文献4】米国特許第11,103,698号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、癌細胞の増殖を抑制する第1の方法に向けられている。第1の方法は、少なくとも1時間の長さである第1の時間の間隔の間に交流電場を癌細胞に印加するステップを含み、第1の時間の間隔は、1時間あたりに複数の重ならない時間の部分間隔を含む。時間の部分間隔の各々において、(a)交流電場は50kHzから500kHzの間の周波数を有し、(b)交流電場は、癌細胞の少なくとも一部分において、少なくとも1V/cmのそれぞれのピーク強度を有し、(c)交流電場は時間の半分未満でそれぞれのピーク強度に留まる。
【0007】
第1の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は、それぞれのピーク強度に先行する時間の間隔の間に、それぞれのピーク強度へと上昇する。任意選択で、これらの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は、それぞれのピーク強度に先行する時間の間隔の間に、それぞれのピーク強度へと直線的に上昇する。
【0008】
第1の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は少なくとも時間の半分でオフに留まる。
【0009】
第1の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の25%未満でそれぞれのピーク強度に留まる。任意選択で、これらの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の少なくとも75%でオフに留まる。任意選択で、これらの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の少なくとも5%でそれぞれのピーク強度の90%内に留まる。
【0010】
第1の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は癌細胞の少なくとも一部分において1~10V/cmのそれぞれのピーク強度を有する。
【0011】
第1の方法のいくつかの例において、第1の時間の間隔は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない時間の部分間隔を含む。第1の方法のいくつかの例において、交流電場は、部分間隔の第1の部分セットの間に、第1の方向で癌細胞に印加され、交流電場は、部分間隔の第2の部分セットの間に、第2の方向で癌細胞に印加され、第2の方向は第1の方向から少なくとも45°だけずらされる。
【0012】
第1の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の25%未満でそれぞれのピーク強度に留まり、第1の時間の間隔は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない時間の部分間隔を含み、交流電場は、部分間隔の第1の部分セットの間に、第1の方向で癌細胞に印加され、交流電場は、部分間隔の第2の部分セットの間に、第2の方向で癌細胞に印加され、第2の方向は第1の方向から少なくとも45°だけずらされる。
【0013】
本発明の他の態様は、信号発生装置と制御装置とを備える第1の装置に向けられている。信号発生装置は、少なくとも1つの制御入力を有し、50kHzから500kHzの間の周波数で第1の交流出力を発生させるように構成される。第1の交流出力は、少なくとも1つの制御入力の状態に依存する振幅を有する。制御装置は、1時間あたりに複数の重ならない第1の時間の部分間隔の各々の間に制御信号の第1のセットを少なくとも1つの制御入力へと送るように構成され、制御信号の第1のセットは、各々のそれぞれの第1の時間の部分間隔の半分未満にわたって、第1の交流出力をそれぞれのピーク振幅で動作させるように構成される。
【0014】
第1の装置のいくつかの実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間で、それぞれのピーク振幅に先行する時間の間隔の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力をそれぞれのピーク振幅へと上昇させるように構成される。任意選択で、これらの実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間で、それぞれのピーク振幅に先行する時間の間隔の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力をそれぞれのピーク振幅へと直線的に上昇させるように構成される。
【0015】
第1の装置のいくつかの実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力を少なくともその時間の半分でオフに留まらせるように構成される。
【0016】
第1の装置のいくつかの実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力をその時間の25%未満でそれぞれのピーク振幅に留まらせるように構成される。
【0017】
任意選択で、先の段落の実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力をその時間の少なくとも75%でオフに留まらせるように構成される。
【0018】
任意選択で、先の段落の実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力をその時間の少なくとも5%でそれぞれのピーク振幅の90%内に留まらせるように構成される。
【0019】
第1の装置のいくつかの実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力に少なくとも50Vのそれぞれのピーク振幅を持たせるように構成される。
【0020】
第1の装置のいくつかの実施形態において、制御装置は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない第1の時間の部分間隔の各々の間、制御信号の第1のセットを少なくとも1つの制御入力へと送るように構成される。
【0021】
第1の装置のいくつかの実施形態において、信号発生装置は、50kHzから500kHzの間の周波数で第2の交流出力を発生させるようにさらに構成され、第2の交流出力は、少なくとも1つの制御入力の状態に依存する振幅を有し、制御装置は、1時間あたりに複数の重ならない第2の時間の部分間隔の各々の間に制御信号の第2のセットを少なくとも1つの制御入力へと送るようにさらに構成され、制御信号の第2のセットは、各々のそれぞれの第2の時間の部分間隔の半分未満にわたって、第2の交流出力をそれぞれのピーク振幅で動作させるように構成され、第2の時間の部分間隔の各々は、第1の時間の部分間隔のそれぞれ1つに続く。
【0022】
任意選択で、先の段落の実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力をその時間の25%未満でそれぞれのピーク振幅に留まらせるように構成され、制御信号の第2のセットは、第2の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第2のセットが第2の交流出力をその時間の25%未満でそれぞれのピーク振幅に留まらせるように構成される。
【0023】
任意選択で、先の段落の実施形態において、制御装置は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない第1の時間の部分間隔の各々の間、制御信号の第1のセットを少なくとも1つの制御入力へと送るように構成され、制御装置は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない第2の時間の部分間隔の各々の間、制御信号の第2のセットを少なくとも1つの制御入力へと送るように構成される。
【0024】
任意選択で、先の段落の実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力に少なくとも50Vのそれぞれのピーク振幅を持たせるように構成され、制御信号の第2のセットは、第2の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第2のセットが第2の交流出力に少なくとも50Vのそれぞれのピーク振幅を持たせるように構成される。
【0025】
本発明の他の態様は、電場を生体における標的領域へと印加する第3の方法に向けられている。この方法は、少なくとも1時間の長さである第1の時間の間隔の間に交流電場を標的領域に印加するステップを含み、第1の時間の間隔は、1時間あたりに複数の重ならない時間の部分間隔を含む。時間の部分間隔の各々において、(a)交流電場は50kHzから1MHzの間の周波数を有し、(b)交流電場は、標的領域の少なくとも一部分において、少なくとも0.1V/cmのそれぞれのピーク強度を有し、(c)交流電場はその時間の75%未満でそれぞれのピーク強度に留まる。
【0026】
第3の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は、それぞれのピーク強度に先行する時間の間隔の間に、それぞれのピーク強度へと上昇する。任意選択で、これらの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は、それぞれのピーク強度に先行する時間の間隔の間に、それぞれのピーク強度へと直線的に上昇する。
【0027】
第3の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の少なくとも75%でオフに留まる。
【0028】
第3の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は、例えばその時間の25%未満といった、その時間の50%未満で、それぞれのピーク強度に留まる。任意選択で、これらの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の少なくとも50%でオフに留まる。任意選択で、これらの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の少なくとも5%でそれぞれのピーク強度の90%内に留まる。
【0029】
第3の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は標的領域の少なくとも一部分において1~10V/cmのそれぞれのピーク強度を有する。
【0030】
第3の方法のいくつかの例において、第1の時間の間隔は、1時間あたりに少なくとも3回または少なくとも10回の重ならない時間の部分間隔を含む。第3の方法のいくつかの例において、交流電場は、部分間隔の第1の部分セットの間に、第1の方向で標的領域に印加され、交流電場は、部分間隔の第2の部分セットの間に、第2の方向で標的領域に印加され、第2の方向は第1の方向から少なくとも45°だけずらされる。
【0031】
第3の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は時間の半分未満でそれぞれのピーク強度に留まり、第1の時間の間隔は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない時間の部分間隔を含み、交流電場は、部分間隔の第1の部分セットの間に、第1の方向で標的領域に印加され、交流電場は、部分間隔の第2の部分セットの間に、第2の方向で標的領域に印加され、第2の方向は第1の方向から少なくとも45°だけずらされる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】先行技術のOptune(商標)システムにおける左/右チャンネルおよび前/後チャンネルの交流出力振幅の概略図である。
図2】交流出力の上昇時間および下降時間が制御され得る交流電圧信号で変換器配列のセットを駆動するためのシステムのブロック図である。
図3】上昇時間および下降時間が遅くされるときの左/右チャンネルおよび前/後チャンネルの交流出力の振幅の図である。
図4】上昇時間および下降時間がさらに遅くされるときの左/右チャンネルおよび前/後チャンネルの交流出力の振幅の図である。
図5】上昇時間および下降時間を変更することが試験管内のU87細胞において細胞毒性にどのように影響するかを決定するために実施された実験の結果の図である。
図6図5の実験の間に印加されたピーク電流の図である。
図7】短い上昇時間および下降時間を伴うパルスモードで動作する左/右チャンネルおよび前/後チャンネルの交流出力振幅の図である。
図8】上昇間隔および下降間隔が全体として排除されるときの左/右チャンネルおよび前/後チャンネルの交流出力の振幅の図である。
図9】様々なパラメータを変更することが試験管内のGL261細胞において細胞毒性にどのように影響するかを決定するために実施された実験の結果の図である。
図10図9の実験の間に印加されたピーク電流の図である。
図11】様々なパラメータを変更することが試験管内のU118細胞において細胞毒性にどのように影響するかを決定するために実施された実験の結果の図である。
図12図11の実験の間に印加されたピーク電流の図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
様々な実施形態が、同様の符号が同様の要素を表している添付の図面を参照して、以下で詳細に記載されている。
【0034】
当業者は、TTFieldができるだけ多くの時間にわたってピーク強度で印加されるとき、TTFieldが最も効果的に成ると以前に推定している。しかし、上昇期間および下降期間が先行技術に関して拡張されたときに何が起こるかを見るために実験が実施されたとき、驚くべき結果が観察された。より明確には、データは、上昇期間および下降期間が、先行技術において使用された50msの期間から350msへとそれぞれ拡張されたとき(これは、交流電圧が各々の1秒間の間隔のうち300msにわたってそのピーク値で動作するだけであることを意味する)、TTFieldの細胞毒性(つまり、殺傷力)が実際には増加させられることを明らかにした。また、上昇期間および下降期間が400msへとそれぞれ拡張されたとき(これは、交流電圧が各々の1秒間の間隔のうちの200msにわたってそのピーク値で動作するだけであることを意味する)、TTFieldの細胞毒性はさらにより増加した。
【0035】
図2は、交流出力の上昇時間および下降時間が制御され得る交流電圧信号で変換器配列のセットを駆動するためのシステムのブロック図である。システムは、50kHzから500kHzの間の周波数で第1および第2の交流出力を発生させるように設計される交流信号発生装置20を備える。システムが(図2に示されているように)TTFieldを人の身体に印加するために使用されるとき、第1の交流出力が、腫瘍の左右に位置決めされた電極10Lおよび10Rの第1の対にわたって印加され、第2の交流出力が、腫瘍の前後に位置決めされた電極10Aおよび10Pの第2の対にわたって印加される。交流信号発生装置20は、Inovitro(商標)の皿の左壁および右壁に位置決めされた電極に第1の交流出力を印加し、Inovitro(商標)の皿の前壁および後壁に位置決めされた電極に第2の交流出力を印加することで、試験管内培養(図示略)にTTFieldを印加するために使用することもできる。いずれの場合でも、交流信号発生装置20によって発生させられる電圧は、癌細胞の少なくとも一部分において少なくとも1V/cmの電場を誘導するのに十分である。いくつかの実施形態において、交流信号発生装置20によって発生させられる電圧は、癌細胞の少なくとも一部分において1V/cmから10V/cmの間の電場を誘導するのに十分である。
【0036】
先行技術のOptune(商標)システムおよびInovitro(商標)システムにおけるように、(a)第1の交流出力が1秒間の時間の部分間隔にわたって左/右電極に印加され、(b)第2の交流出力が1秒間の時間の部分間隔にわたって前/後電極に印加され、2ステップのシーケンス(a)および(b)が治療の期間にわたって繰り返される。しかし、Optune(商標)と対照的に、上昇時間および下降時間は50msに設定されなかった。代わりに、交流信号発生装置20は、少なくとも1つの制御入力の状態に依存する振幅を第1の交流出力と第2の交流出力とが有するように、第1の交流出力および第2の交流出力を発生させるように構成されている。
【0037】
制御装置30が、各々の1秒間の部分間隔の間に少なくとも1つの制御入力に制御信号を連続的に送り、これらの制御信号は、第1および第2の交流出力を、各々のそれぞれの1秒間の時間の部分間隔の半分未満にわたって、それらのそれぞれのピーク振幅において動作させるように、ならびに、第1および第2の交流出力に、本明細書に記載されているような振幅プロファイルを発生させるように、構成されている。これらの波形が電極10に印加されるとき、癌細胞に印加される交流電場は、時間の半分未満でそれらのそれぞれのピーク強度に留まることになる。図2は、制御装置30および交流信号発生装置20を2つの別々のブロックとして描写しているが、それらの2つのブロックが単一のハードウェアデバイスへと組み込むことができることに留意されたい。
【0038】
制御装置30の構造の詳細と制御信号の性質とは、交流信号発生装置20の設計に依存することになる。一例において、交流信号発生装置20の設計は、本明細書において参照によりその全体が組み込まれている特許文献2に記載されている交流信号発生装置と同様である。この具体的な交流信号発生装置は2つの出力チャンネル(つまり、左/右のための第1のチャンネルおよび前/後のための第2のチャンネル)を有する。いずれかのチャンネルにおける瞬間的な交流出力電圧はDC-DCコンバータの瞬間的な出力電圧に依存し、DC-DCコンバータの出力電圧は、制御語をデジタル/アナログ変換器(DAC)へ書き出すことで制御される。そのため、この交流信号発生装置は、任意の所与の1秒間の部分間隔の最初の50msの間に1msごとに制御語を一回更新することで、交流出力電圧をゼロから所望のレベルへと50msで上昇させ、任意の所与の1秒間の部分間隔の最後の50msの間に1msごとに制御語を一回更新することで、交流出力電圧を下降させてゼロに戻すために、使用できる。
【0039】
このまったく同じ交流信号発生装置は、制御語がDACへと書き出される速さを調整することで交流出力電圧をより速い速さまたはより遅い速さで上昇および下降させるために、変更することができる。例えば、交流出力電圧は、任意の所与の1秒間の部分間隔の最初の400msの間に8msごとに制御語を一回更新することで、ゼロから所望のレベルへと400msで直線的に上昇させることができ、任意の所与の1秒間の部分間隔の最後の400msの間に8msごとに制御語を一回更新することで、直線的に下降させてゼロに戻すことができる。図3は、この状況における左/右チャンネルおよび前/後チャンネルの交流出力振幅を描写している。この例では、全体で800msが上昇および下降のために使用されるため、出力は、任意の所与の1秒間の部分間隔のうちの200msにわたって、そのピーク振幅に留まるだけとなる。
【0040】
図4は、上昇時間および下降時間がさらに遅くされるときの左/右チャンネルおよび前/後チャンネルの交流出力の振幅を描写している。より明確には、交流出力電圧は、例えば、任意の所与の1秒間の部分間隔の最初の500msの間に10msごとに制御語を一回更新することで、ゼロから所望のレベルへと500msで直線的に上昇させ、例えば、任意の所与の1秒間の部分間隔の最後の500msの間に10msごとに制御語を一回更新することで、直線的に下降させてゼロに戻す。この例では、全体で1000msが上昇および下降のために使用されるため、出力は、任意の所与の1秒間の部分間隔のうちの1ms未満にわたって、そのピーク振幅に留まることになる。
【0041】
任意の所与のチャンネル(つまり、左/右チャンネルまたは前/後チャンネル)について、交流出力電圧がそのピークへと上昇する各々の時間の部分間隔は、そのピークに留まり、そのピークからの下降は、交流出力電圧がそのピークへと上昇し、そのピークに留まり、そのピークから下降する次の時間の部分間隔と重ならないことに留意されたい。例えば、図3および図4において、t=0とt=1との間の時間の部分間隔は、t=2とt=3との間の時間の部分間隔と重ならない。同様に、t=1とt=2との間の時間の部分間隔は、t=3とt=4との間の時間の部分間隔と重ならない。
【0042】
図2に戻って、制御装置30は、交流信号発生装置20を所望の出力波形で発生させるために、各々の1秒間の部分間隔のうちの適切なときに、交流信号発生装置20内のDACに制御語の適切なシーケンスを書き出すことで、交流信号発生装置20を制御する。
【0043】
交流信号発生装置20および制御装置30についての幅広い様々な代替の設計が、制御装置30が交流信号発生装置20を制御する能力を有する限り、先に提供されている例について代用され得る。例えば、交流信号発生装置がアナログ制御信号に応答するように設計されている場合、制御装置30は、交流信号発生装置20に所望の波形を出力させるために、必要とされるアナログ制御信号のどんなシーケンスも発生させなければならない。この状況において、制御装置30は、適切な制御語をデジタル-アナログ変換器へと書き出すようにプログラムされたマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを使用して実施でき、そのデジタル-アナログ変換器の出力は、交流信号発生装置20に所望の波形を発生させるアナログ制御信号を発生させる。代替で、制御装置30は、制御信号(後で交流信号発生装置の制御入力に印加される)の適切なシーケンスを自動的に発生させるアナログ回路を使用して実施されてもよい。
【0044】
図5は、上昇時間および下降時間を変更することが試験管内のU87細胞において細胞毒性にどのように影響するかを決定するために実施された実験の結果を描写している。データは、上昇時間および下降時間にわたって制御を提供するように変更されたInovitro(商標)システムを使用して得られた。(上昇時間および下降時間が、図では「調整する」時間または「調整」時間と称されていることに留意されたい)。棒#1は、TTFieldで治療されていない対照群を表している。棒#2は、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔の開始においてゼロからピークへとすぐに急変し、各々の1秒間の部分間隔の終了においてピークからゼロへとすぐに急変したときの細胞毒性の結果を表している。棒#3は、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔の最初の50msにおいてゼロからピークへと上昇し、各々の1秒間の部分間隔の最後の50msにおいてピークからゼロへと下降したときの細胞毒性の結果を表している。これは、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔において、900msにわたってそのピーク値に留まることを意味する。
【0045】
棒#4は、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔の最初の100msにおいてゼロからピークへと上昇し、各々の1秒間の部分間隔の最後の100msにおいてピークからゼロへと下降したときの細胞毒性の結果を表している。これは、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔において、800msにわたってそのピーク値に留まることを意味する。棒#5は、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔の最初の300msにおいてゼロからピークへと上昇し、各々の1秒間の部分間隔の最後の300msにおいてピークからゼロへと下降したときの細胞毒性の結果を表している。これは、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔において、400msにわたってそのピーク値に留まることを意味する。
【0046】
棒#6は、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔の最初の350msにおいてゼロからピークへと上昇し、各々の1秒間の部分間隔の最後の350msにおいてピークからゼロへと下降したときの細胞毒性の結果を表している。これは、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔において、300msにわたってそのピーク値に留まることを意味する。注目すべきことに、これらの状況の下での細胞毒性の結果は、50msの上昇時間が使用されるとき(棒#3参照)より良好であった。棒#7は、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔の最初の400msにおいてゼロからピークへと上昇し、各々の1秒間の部分間隔の最後の400msにおいてピークからゼロへと下降したときの細胞毒性の結果を表している。これは、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔において、200msにわたってそのピーク値に留まることを意味する。ここでもまた、細胞毒性の結果は、50msの上昇時間が使用されるときよりも良好であった。
【0047】
棒#2~#7について、(a)第1の交流出力が1秒間にわたって左/右電極に印加され、(b)第2の交流出力が1秒間にわたって前/後電極に印加され、2ステップのシーケンス(a)および(b)が120時間の実験の期間にわたって繰り返されたことに留意されたい。
【0048】
ピーク強度におけるTTFieldをその時間の50%未満(例えば、図3に描写されているようなその時間の20%)で印加するだけであるシステムが、ピーク強度におけるTTFieldをその時間の90%(例えば、図1に描写されているような時間)で印加するシステムを上回る性能をどのように発揮することができるのかと思われる可能性がある。
【0049】
Optune(商標)とInovitro(商標)との両方が、過熱を防止するために電極に印加される交流電圧の振幅を自動的に制御するフィードバックループを含むことが、分かっている。より明確には、Inovitro(商標)は、試料皿を37℃で維持するために、電極に印加される交流電圧の振幅を自動的に調節することになる。また、Optune(商標)は、電極に印加される交流電圧の振幅を、電極を過熱させない可能な最も高いレベルへと自動的に調節することになる。これらのフィードバックループが整っているため、交流電圧がよりゆっくりと上昇および下降させられるとき(例えば、図3および図4に描写されているように)、システムは、交流信号発生装置20のピーク出力電圧を、(ピーク出力電圧において動作するより高い割合の時間を費やすシステムと比較して)より高いレベルへと自動的に設定することになる。
【0050】
図6は、調節可能な上昇速さおよび下降速さを図5の実験の間に提供するために変更されたInovitro(商標)システムによって印加されたピーク電流を描写している。図6における番号付けされた棒の各々は、図5におけるそれぞれの番号付けされた棒に対応している。図6におけるデータは、システムが各々の1秒間の部分間隔の間にそのピーク電圧(および電流)を費やす時間が短くなるにつれて、(先の段落に記載されているように、システムが、過熱を引き起こさないレベルまでピーク電圧を自動的に設定した後に)その1秒間の部分間隔の間のピーク電流がより高くなることを明らかにしている。例えば、図6における棒#3は、交流電圧(および電流)が各々の1秒間の部分間隔において900msにわたってそのピーク値に留まったとき、ピーク電流が約100mAであったことを示しているが、棒#7は、交流電圧(および電流)が各々の1秒間の部分間隔において200msにわたってそのピーク値に留まったとき、ピーク電流がおおよそ50%高くなったことを示している。また、電圧は電流に比例するため、棒#7と関連付けられるピーク出力電圧が、棒#3と関連付けられるピーク出力電圧より約50%高くなったことも考えることができる。
【0051】
このデータは、各々の1秒間の部分間隔における時間のうちのより小さい割合(例えば、20%、30%、または50%未満)にわたって印加されるより高いピーク強度(測定されたより高いピーク電流に対応する)を伴うTTFieldが、各々の1秒間の部分間隔における時間のうちのより大きい割合(例えば、100%、90%、または少なくとも50%)にわたって印加されるより低いピーク強度を伴うTTFieldより大きい細胞毒性であることを示している。
【0052】
先に記載されている例において、制御装置30は、交流信号発生装置20に、図3および図4に描写されているような振幅を伴う第1および第2の出力を発生させる。これらの2つの例は、異なる期間(図3における200msおよび図4における1ms未満)を伴うピークを有するが、両方の例において、上昇は各々の1秒間の部分間隔の開始に始まり、下降は各々の1秒間の部分間隔の終了まで続く。しかし、代替の実施形態において、上昇は、各々の1秒間の部分間隔の中でより後の時間に開始してもよく、各々の1秒間の部分間隔の中でより早い時間に終了してもよい。
【0053】
例えば、制御装置30は、(a)交流信号発生装置20に、各々の1秒間の部分間隔の最初の350msにわたってオフに留まるように命令し、次に、(b)交流信号発生装置20に、次の50msの間に1msごとに制御語を一回更新することで、その出力電圧を50msにおいてゼロから所望のピークレベルへと直線的に上昇させるように命令し、次に、(c)交流信号発生装置20に、その出力電圧を次の200msの間にピークレベルのままとさせるように命令し、次に、(d)交流信号発生装置20に、次の50msの間に1msごとに制御語を一回更新することで、その出力電圧を50msにおいてピークレベルからゼロへと直線的に下降させるように命令し、次に、(e)交流信号発生装置20に、各々の1秒間の部分間隔の最後の350msにわたってオフに留まるように命令することで、図7に描写されている振幅プロファイルを伴う波形を交流信号発生装置20に発生させることができる。図7における詳細AおよびBは、上昇期間および下降期間の間の瞬間的な出力電圧の概略図であることに留意されたい。また、これらの詳細の各々が、50msの上昇期間および下降期間における9回の周期だけを描写しているが、これらの期間の各々が、実際には約10,000周期を含むことになる(200kHzのTTFieldが送達されると仮定して)。
【0054】
他の実施形態では、上昇間隔および下降間隔が全体として排除さえされる可能性がある。例えば、制御装置30は、(a)交流信号発生装置20に、各々の1秒間の部分間隔の最初の400msにわたってオフに留まるように命令し、次に、(b)交流信号発生装置20に、その出力電圧をピークレベルに設定させ、次の200msにわたって継続させるように命令し、次に、(c)交流信号発生装置20に、オフにさせ、各々の1秒間の部分間隔の最後の400msにわたってオフに留まるように命令することで、交流信号発生装置20に、図8に描写されている振幅プロファイルを伴う波形を発生させることができる。
【0055】
図7および図8の例では、第1および第2の交流出力は、各々の1秒間の時間の部分間隔の半分未満(または、いくつかの実施形態において、各々の1秒間の部分間隔の25%未満)にわたって、それぞれのピーク振幅で動作する。加えて、これらの例では、第1および第2の交流出力は、各々の1秒間の時間の部分間隔内の少なくとも時間の半分(または、いくつかの実施形態において、各々の1秒間の部分間隔の少なくとも75%)にわたって、オフに留まる。また、出力電圧がその時間の大部分にわたってオフに留まるため、出力電圧は、過熱することなくオンである短い時間にわたって、より高いレベルへと駆動させることができる。図5および図6との関連で先に記載されている成果に基づいて、本発明者は、これらの例の実施形態が先行技術の図1の波形が使用されるときに達成される細胞毒性の結果より良好となる細胞毒性の結果を期待する。
【0056】
任意の所与のチャンネル(つまり、左/右チャンネルまたは前/後チャンネル)について、交流出力電圧が時間の半分未満にわたってそのピークに留まる各々の時間の部分間隔は、交流出力電圧が時間の半分未満にわたってそのピークに留まる次の時間の部分間隔と重ならないことに留意されたい。例えば、図7および図8において、t=0とt=1との間の時間の部分間隔は、t=2とt=3との間の時間の部分間隔と重ならない。同様に、t=1とt=2との間の時間の部分間隔は、t=3とt=4との間の時間の部分間隔と重ならない。
【0057】
図3図7、および図8に描写されている実施形態を含め、いくつかの実施形態において、第1および第2の交流出力は、時間の少なくとも5%の各々の1秒間の部分間隔において、それぞれのピーク振幅の90%内に留まることに留意されたい。
【0058】
追加の試験管内実験が、様々なパラメータを変更することが細胞毒性にどのように影響を与えるかを見るために、さらに2つの細胞株(GL261およびU118)において実施された。これらの実験において変化させられたパラメータには、各々の1秒間の時間の部分間隔の間に信号がアクティブになった時間の合計、上昇および下降が実施されたかどうか、ならびに、上昇時間および下降時間の期間が含まれる。これらの実験において、任意の所与の1秒間の部分間隔の間の場の方向は、事前の1秒間の部分間隔の間に使用された方向に対して切り替えられた。各々の実験の期間(生存する細胞の数を決定する前)は、GL261およびU118の細胞株について、それぞれ72時間および120時間であった。これらの実験の結果は図9図12に描写されている。
【0059】
図9は、GL261細胞におけるこれらの実験の結果を描写している。データは、上昇時間および下降時間にわたって制御を提供するように変更されたInovitro(商標)システムを使用して得られた。棒#1は、TTFieldで治療されていない対照群を表している。棒#2は、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔の開始においてゼロからピークへとすぐに急変し、各々の1秒間の部分間隔の終了においてピークからゼロへとすぐに急変したときの細胞毒性の結果を表している。棒#3は、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔の最初の400msにおいてゼロからピークへと上昇し、各々の1秒間の部分間隔の最後の400msにおいてピークからゼロへと下降したときの細胞毒性の結果を表している。これは、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔において、200msにわたってそのピーク値に留まることを意味する。
【0060】
棒#4は、各々の1秒間の部分間隔の間の500msにわたって交流電圧がそのピーク値にあり、オン状態とオフ状態との間で瞬時移行を伴う(つまり、上昇下降がない)、各々の1秒間の部分間隔の残りにわたってオフであったときの細胞毒性の結果を表している。棒#5は、交流電圧が、100msでゼロからピークへと上昇し、300msにわたってピークに留まり、次に、各々の1秒間の部分間隔の100msにおいてピークからゼロへと下降したときの細胞毒性の結果を表している。交流電圧は、各々の1秒間の部分間隔の残りの500msにわたってオフに留まった。棒#6は、交流電圧が、100msでゼロからピークへと上昇し、450msにわたってピークに留まり、次に、各々の1秒間の部分間隔の100msにおいてピークからゼロへと下降したときの細胞毒性の結果を表している。交流電圧は、各々の1秒間の部分間隔の残りの350msにわたってオフに留まった。注目すべきことに、振幅が時間のその全体の値の100%に留まらないすべての4つの場合についての細胞毒性の結果(つまり、棒#3~#6)が、振幅が時間のその全体の値の100%に留まったときの結果より良好であった。
【0061】
図10は、調節可能な上昇速さおよび下降速さを図9の実験の間に提供するために変更されたInovitro(商標)システムによって印加されたピーク電流を描写している。図10における番号付けされた棒の各々は、図9におけるそれぞれの番号付けされた棒に対応している。
【0062】
図11は、U118細胞におけるこれらの実験の結果を描写している。データは、上昇時間および下降時間にわたって制御を提供するように変更されたInovitro(商標)システムを使用して得られた。棒#1は、TTFieldで治療されていない対照群を表している。棒#2は、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔の開始においてゼロからピークへとすぐに急変し、各々の1秒間の部分間隔の終了においてピークからゼロへとすぐに急変したときの細胞毒性の結果を表している。棒#3は、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔の最初の400msにおいてゼロからピークへと上昇し、各々の1秒間の部分間隔の最後の400msにおいてピークからゼロへと下降したときの細胞毒性の結果を表している。これは、交流電圧が、各々の1秒間の部分間隔において、200msにわたってそのピーク値に留まることを意味する。棒#4は、各々の1秒間の部分間隔の間の250msにわたって交流電圧がそのピーク値にあり、オン状態とオフ状態との間で瞬時移行を伴う(つまり、上昇下降がない)、各々の1秒間の部分間隔の残りにわたってオフであったときの細胞毒性の結果を表している。注目すべきことに、振幅が時間のその全体の値の100%に留まらない両方の場合についての細胞毒性の結果(つまり、棒#3~#4)が、振幅が時間のその全体の値の100%に留まったときの結果より良好であった。
【0063】
図12は、調節可能な上昇速さおよび下降速さを図11の実験の間に提供するために変更されたInovitro(商標)システムによって印加されたピーク電流を描写している。図12における番号付けされた棒の各々は、図11におけるそれぞれの番号付けされた棒に対応している。
【0064】
先に記載されている試験管内実験において、交流電場の周波数は200kHzであった。しかし、代替の実施形態において、交流電場の周波数は、例えば、約200kHz、または50kHzから500kHzの間といった、他の周波数であり得る。
【0065】
上記の試験管内実験において、交流電場の方向は、2つの直交する方向の間で1秒ごとに切り替えられており、これは、各々の部分間隔が1秒間の長さであることを意味する。しかし、代替の実施形態では、交流電場の方向は、より速い速さで(例えば、1~1000msごとに)、または、より遅い速さで(例えば、1~360秒ごとに)、切り替えられてもよく、その場合、各々の部分間隔の期間が1秒間より短いかまたは長くなる。好ましくは、1時間あたり少なくとも10回の部分間隔があり、いくつかの実施形態では、1時間あたり少なくとも100回の部分間隔がある。治療の期間は、好ましくは少なくとも1時間の長さであり、より好ましくは、少なくとも100時間の長さ、または少なくとも1000時間の長さである。任意選択で、治療の全体の期間は休止によって中断されてもよい。例えば、100日間で1日あたり15時間にわたって交流場を被験者に印加することは(被験者が寝ている夜ごとに治療からの休止がある)、1500時間の治療の全体の期間をもたらす。
【0066】
上記の試験管内実験において、交流電場の方向は、二次元空間において互いから90°離して配置された電極の2つの対に交互のシーケンスで交流電圧を印加することで、2つの直交する方向の間で切り替えられた。しかし、代替の実施形態では、交流電場の方向は、電極の対を再位置決めすることで、直交しない2つの方向の間で、または、3つ以上の方向の間で(追加の電極の対が提供されると仮定して)、切り替えられてもよい。例えば、交流電場の方向は、電極のそれ自体の対の配置によってそれぞれが決定される3つの方向の間で切り替えられてもよい。任意選択で、これらの3つの電極の対は、結果として生じる場が三次元空間において互いから90°離して配置されるように位置決めされてもよい。他の代替の実施形態では、電極は対で配置される必要がない。例えば、本明細書において参照により組み込まれている特許文献1に記載されている電極位置決めを参照されたい。他の代替の実施形態では、場の方向は一定のままである(この場合、交流信号発生装置20は単一の出力のみを有し得る)。
【0067】
先に記載されている試験管内実験において、電場は、変更されたInovitro(商標)システムが、皿の側壁の外面に配置された導電性電極を使用し、側壁のセラミック材料が誘電体として作用するため、培養物へと容量結合された。しかし、代替の実施形態では、電場は、(例えば、導電性電極が側壁の外面の代わりに側壁の内面に配置されるように、Inovitro(商標)システム構成を変更することで)容量結合なしで細胞に直接的に印加されてもよい。
【0068】
本明細書に記載されている方法は、膠芽細胞腫細胞と他の種類の癌細胞との両方について、交流電場を生体被験者の身体の標的領域に印加することで、生体内の状況で印加されてもよい。これは、例えば、電極のうちの選択された部分セット同士の間の交流電圧の印加が、被験者の身体の標的領域に交流電場を課すことになるように、被験者の皮膚上または下に電極を位置決めすることで遂行され得る。
【0069】
例えば、関連する細胞が被験者の肺に位置させられている状況において、一対の電極が被験者の胸部の前後に位置決めでき、電極の第2の対が被験者の胸部の右側および左側に位置決めできる。いくつかの実施形態において、電極は被験者の身体に容量結合される(例えば、導電性の板を含み、導電性の板と被験者の身体との間に配置される誘電層も有する電極を使用することで)。しかし、代替の実施形態では、誘電層が省略されてもよく、その場合、導電性の板は被験者の身体と直接的に接触させられる。他の実施形態では、電極は患者の皮膚の皮下に挿入され得る。交流電圧発生装置が、第1の時間の期間(例えば、1秒間)にわたって、右電極と左電極との間に、選択された周波数(例えば、200kHz)での交流電圧を印加し、これは、力線の最も有意な成分が被験者の身体の横軸と平行である交流電場を誘導する。次に、交流電圧発生装置は、第2の時間の期間(例えば、1秒間)にわたって、前電極と後電極との間に、同じ周波数(または異なる周波数)での交流電圧を印加し、これは、力線の最も有意な成分が被験者の身体の矢状軸と平行である交流電場を誘導する。次に、この2ステップのシーケンスが治療の期間にわたって繰り返される。任意選択で、熱センサが電極に含まれてもよく、交流電圧発生装置は、電極における感知された温度が高くなりすぎる場合に、電極に印加される交流電圧の振幅を低減するように構成され得る。いくつかの実施形態において、電極の1つ以上の追加の対が、追加されてもよく、シーケンスに含まれてもよい。代替の実施形態では、電極の単一の対だけが使用され、この場合、力線の方向は切り替えられない。この生体内の実施形態についてのパラメータのいずれも(例えば、周波数、場強度、期間、方向切替速さ、および電極の配置)、試験管内の実施形態との関連で先に記載されているように、変化させることができることに留意されたい。しかし、電場が常に被験者にとって常に安全なままであることを確保するために、生体内の状況では注意が払われなければならない。
【0070】
先に記載されている例では、上昇間隔と下降間隔とは合致している。しかし、代替の実施形態および例では、それらの2つの間隔は異なってもよい。例えば、上昇時間は100msとでき、下降時間は50msとできる。または、上昇時間は100msとでき、下降時間は全体で排除できる。
【0071】
先に記載されている例では、L/R電極に印加される信号のタイミングは、A/P電極に印加される信号のタイミングと合致している。しかし、代替の実施形態および例では、それらの2つの信号のタイミングは異なってもよい。例えば、L/R電極に印加される信号は、各々の1秒間の部分間隔の500msにわたってアクティブとでき、一方、A/R電極に印加される信号は、各々の1秒間の部分間隔の300msにわたってアクティブとできる。
【0072】
本明細書に記載されている方法および装置を使用することで、癌細胞の増殖は、先行技術に対して向上した増殖の抑制を伴って、抑制できる。
【0073】
先に記載されている実施形態では、時間の部分間隔の各々において、(a)交流電場は50kHzから500kHzの間の周波数を有し、(b)交流電場は、癌細胞の少なくとも一部分において、少なくとも1V/cmのそれぞれのピーク強度を有し、(c)交流電場は時間の半分未満でそれぞれのピーク強度に留まる。しかし、代替の実施形態では、それらのパラメータは、(a)交流電場は50kHzから1MHzの間の周波数を有し、(b)交流電場は、癌細胞の少なくとも一部分において、少なくとも0.1V/cmのそれぞれのピーク強度を有し、(c)交流電場はその時間の75%未満でそれぞれのピーク強度に留まるように、ある程度まで緩められ得る。
【0074】
したがって、本発明の他の態様は、癌細胞の増殖を抑制する第2の方法に向けられている。第2の方法は、少なくとも1時間の長さである第1の時間の間隔の間に交流電場を癌細胞に印加するステップを含み、第1の時間の間隔は、1時間あたりに複数の重ならない時間の部分間隔を含む。時間の部分間隔の各々において、(a)交流電場は50kHzから1MHzの間の周波数を有し、(b)交流電場は、癌細胞の少なくとも一部分において、少なくとも0.1V/cmのそれぞれのピーク強度を有し、(c)交流電場はその時間の75%未満でそれぞれのピーク強度に留まる。
【0075】
第2の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は、それぞれのピーク強度に先行する時間の間隔の間に、それぞれのピーク強度へと上昇する。任意選択で、これらの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は、それぞれのピーク強度に先行する時間の間隔の間に、それぞれのピーク強度へと直線的に上昇する。
【0076】
第2の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の少なくとも75%でオフに留まる。
【0077】
第2の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の25%未満でそれぞれのピーク強度に留まる。任意選択で、これらの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の少なくとも75%でオフに留まる。任意選択で、これらの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の少なくとも5%でそれぞれのピーク強度の90%内に留まる。
【0078】
第2の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は癌細胞の少なくとも一部分において1~10V/cmのそれぞれのピーク強度を有する。
【0079】
第2の方法のいくつかの例において、第1の時間の間隔は、例えば1時間あたりに少なくとも10回といった、少なくとも3回の重ならない時間の部分間隔を含む。第2の方法のいくつかの例において、交流電場は、部分間隔の第1の部分セットの間に、第1の方向で癌細胞に印加され、交流電場は、部分間隔の第2の部分セットの間に、第2の方向で癌細胞に印加され、第2の方向は第1の方向から少なくとも45°だけずらされる。
【0080】
第2の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の25%未満でそれぞれのピーク強度に留まり、第1の時間の間隔は、1時間あたりに少なくとも10回といった、少なくとも3回の重ならない時間の部分間隔を含み、交流電場は、部分間隔の第1の部分セットの間に、第1の方向で癌細胞に印加され、交流電場は、部分間隔の第2の部分セットの間に、第2の方向で癌細胞に印加され、第2の方向は第1の方向から少なくとも45°だけずらされる。
【0081】
同様に、本発明の他の態様は、信号発生装置と制御装置とを備える第2の装置に向けられている。信号発生装置は、少なくとも1つの制御入力を有し、50kHzから1MHzの間の周波数で第1の交流出力を発生させるように構成される。第1の交流出力は、少なくとも1つの制御入力の状態に依存する振幅を有する。制御装置は、1時間あたりに複数の重ならない第1の時間の部分間隔の各々の間に制御信号の第1のセットを少なくとも1つの制御入力へと送るように構成され、制御信号の第1のセットは、各々のそれぞれの第1の時間の部分間隔の75%未満にわたって、第1の交流出力をそれぞれのピーク振幅で動作させるように構成される。
【0082】
第2の装置のいくつかの実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間で、それぞれのピーク振幅に先行する時間の間隔の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力をそれぞれのピーク振幅へと上昇させるように構成される。任意選択で、これらの実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間で、それぞれのピーク振幅に先行する時間の間隔の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力をそれぞれのピーク振幅へと直線的に上昇させるように構成される。
【0083】
第2の装置のいくつかの実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力をその時間の少なくとも75%でオフに留まらせるように構成される。
【0084】
第2の装置のいくつかの実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力をその時間の25%未満でそれぞれのピーク振幅に留まらせるように構成される。
【0085】
任意選択で、先の段落の実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力をその時間の少なくとも75%でオフに留まらせるように構成される。
【0086】
任意選択で、先の段落の実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力をその時間の少なくとも5%でそれぞれのピーク振幅の90%内に留まらせるように構成される。
【0087】
第2の装置のいくつかの実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力に少なくとも50Vのそれぞれのピーク振幅を持たせるように構成される。
【0088】
第2の装置のいくつかの実施形態において、制御装置は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない第1の時間の部分間隔の各々の間、制御信号の第1のセットを少なくとも1つの制御入力へと送るように構成される。
【0089】
第2の装置のいくつかの実施形態において、信号発生装置は、50kHzから1MHzの間の周波数で第2の交流出力を発生させるようにさらに構成され、第2の交流出力は、少なくとも1つの制御入力の状態に依存する振幅を有し、制御装置は、1時間あたりに複数の重ならない第2の時間の部分間隔の各々の間に制御信号の第2のセットを少なくとも1つの制御入力へと送るようにさらに構成され、制御信号の第2のセットは、各々のそれぞれの第2の時間の部分間隔の75%未満にわたって、第2の交流出力をそれぞれのピーク振幅で動作させるように構成され、第2の時間の部分間隔の各々は、第1の時間の部分間隔のそれぞれ1つに続く。
【0090】
任意選択で、先の段落の実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力をその時間の25%未満でそれぞれのピーク振幅に留まらせるように構成され、制御信号の第2のセットは、第2の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第2のセットが第2の交流出力をその時間の25%未満でそれぞれのピーク振幅に留まらせるように構成される。
【0091】
任意選択で、先の段落の実施形態において、制御装置は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない第1の時間の部分間隔の各々の間、制御信号の第1のセットを少なくとも1つの制御入力へと送るように構成され、制御装置は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない第2の時間の部分間隔の各々の間、制御信号の第2のセットを少なくとも1つの制御入力へと送るように構成される。
【0092】
任意選択で、先の段落の実施形態において、制御信号の第1のセットは、第1の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第1のセットが第1の交流出力に少なくとも50Vのそれぞれのピーク振幅を持たせるように構成され、制御信号の第2のセットは、第2の時間の部分間隔の各々の間に、制御信号の第2のセットが第2の交流出力に少なくとも50Vのそれぞれのピーク振幅を持たせるように構成される。
【0093】
上記の検討は、試験管内および/または生体内の癌細胞に交流電場を印加する状況において提示されているが、同じ概念は、限定されることはないが、本明細書において参照によりその全体がそれぞれ組み込まれている特許文献3および特許文献4に記載されているように、血液脳関門の浸透性を増加させること、および、細胞膜の浸透性を増加させることを含め、他の目的のために交流電場を被験者の身体に印加するときに使用できる。
【0094】
これらの状況において、電場を生体における標的領域に印加する第3の方法が使用され得る。第3の方法は、少なくとも1時間の長さである第1の時間の間隔の間に交流電場を標的領域に印加するステップを含み、第1の時間の間隔は、1時間あたりに複数の重ならない時間の部分間隔を含む。時間の部分間隔の各々において、(a)交流電場は50kHzから1MHzの間の周波数を有し、(b)交流電場は、標的領域の少なくとも一部分において、少なくとも0.1V/cmのそれぞれのピーク強度を有し、(c)交流電場はその時間の75%未満でそれぞれのピーク強度に留まる。
【0095】
第3の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は、それぞれのピーク強度に先行する時間の間隔の間に、それぞれのピーク強度へと上昇する。任意選択で、これらの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は、それぞれのピーク強度に先行する時間の間隔の間に、それぞれのピーク強度へと直線的に上昇する。
【0096】
第3の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の少なくとも75%でオフに留まる。
【0097】
第3の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は、例えばその時間の25%未満といった、その時間の50%未満で、それぞれのピーク強度に留まる。任意選択で、これらの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の少なくとも75%でオフに留まる。任意選択で、これらの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場はその時間の少なくとも5%でそれぞれのピーク強度の90%内に留まる。
【0098】
第3の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は標的領域の少なくとも一部分において1~10V/cmのそれぞれのピーク強度を有する。
【0099】
第3の方法のいくつかの例において、第1の時間の間隔は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない時間の部分間隔を含む。第3の方法のいくつかの例において、交流電場は、部分間隔の第1の部分セットの間に、第1の方向で標的領域に印加され、交流電場は、部分間隔の第2の部分セットの間に、第2の方向で標的領域に印加され、第2の方向は第1の方向から少なくとも45°だけずらされる。
【0100】
第3の方法のいくつかの例において、時間の部分間隔の各々の中で、交流電場は時間の半分未満でそれぞれのピーク強度に留まり、第1の時間の間隔は、1時間あたりに少なくとも10回の重ならない時間の部分間隔を含み、交流電場は、部分間隔の第1の部分セットの間に、第1の方向で標的領域に印加され、交流電場は、部分間隔の第2の部分セットの間に、第2の方向で標的領域に印加され、第2の方向は第1の方向から少なくとも45°だけずらされる。
【0101】
本発明は、特定の実施形態を参照して開示されてきたが、記載された実施形態の数々の修正、改変、および変更が、添付の特許請求の範囲において定められているような本発明の領域および範囲から逸脱することなく可能である。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の文言によって定められる完全な範囲、およびその均等物を有することが、意図されている。
【符号の説明】
【0102】
10 電極
10A 電極
10L 電極
10P 電極
10R 電極
20 交流信号発生装置
30 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】