IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インデックス・ファーマシューティカルズ・アクチエボラーグの特許一覧

<>
  • 特表-自己投与のためのコビトリモド用量 図1
  • 特表-自己投与のためのコビトリモド用量 図2
  • 特表-自己投与のためのコビトリモド用量 図3
  • 特表-自己投与のためのコビトリモド用量 図4
  • 特表-自己投与のためのコビトリモド用量 図5
  • 特表-自己投与のためのコビトリモド用量 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】自己投与のためのコビトリモド用量
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20231214BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20231214BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231214BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231214BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20231214BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61K31/7125
A61P1/04
A61P29/00
C12N15/115 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531702
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2021082627
(87)【国際公開番号】W WO2022112224
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】2018468.5
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520430033
【氏名又は名称】インデックス・ファーマシューティカルズ・アクチエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ツァルガリ、アレゾウ
(72)【発明者】
【氏名】サンドウォール、ペルニラ
(72)【発明者】
【氏名】アドマイヤー、シャルロット イヴォンヌ ビルギッタ
(72)【発明者】
【氏名】ニッテル、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ゼルホウニ、ピーター
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA56
4C086MA60
4C086NA05
4C086ZA66
(57)【要約】
本発明は、配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を含む、ヒト対象者の炎症性腸疾患の治療における使用のためのオリゴヌクレオチドであって、400mg~600mgの個々の用量の前記オリゴヌクレオチドを少なくとも2回別々の機会に対象者に投与し、前記別々の機会は3週間離れているオリゴヌクレオチドを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を含む、ヒト対象者の炎症性腸疾患の治療における使用のためのオリゴヌクレオチドであって、400mgから600mgの個々の用量の前記オリゴヌクレオチドを少なくとも2回の別々の機会に対象者に投与し、前記別々の機会は3週間離れている、オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎である、請求項1に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記潰瘍性大腸炎が活動性潰瘍性大腸炎である、請求項2に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記潰瘍性大腸炎が慢性活動性潰瘍性大腸炎である、請求項2または3に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
対象者が抗炎症療法に抵抗性、奏効が不十分、または不耐性であり、任意で前記対象者が結腸切除術に対して待機的である、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
少なくとも1つのCGジヌクレオチドがメチル化されていない、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つのヌクレオチドが、骨格修飾を含む、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
前記骨格修飾が、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾で表されるホスフェート骨格修飾である、請求項7に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
前記骨格修飾が、前記オリゴヌクレオチドの5’-および/または3’-末端に位置する、請求項7および8のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
前記オリゴヌクレオチドは配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を有し、CGジヌクレオチドがメチル化されていない、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
前記オリゴヌクレオチドは配列5'-G*G*A*ACAGTTCGTCCAT*G*G*C-3'(配列番号1)を有し、CGジヌクレオチドがメチル化されていない、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
前記オリゴヌクレオチドがコビトリモドである、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドの490mgから510mgの個々の用量を投与する、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
前記オリゴヌクレオチドの約500mgの個々の用量を投与する、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチドの個々の用量を2回のみの3週間離れている別々の機会に対象者に投与する、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
対象者が寛解するまで、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量を2回以上の3週間離れている別々の機会に対象者に投与する、請求項1から14のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
対象者が炎症性腸疾患、典型的には潰瘍性大腸炎の治療のための追加の治療剤を1つ以上受ける、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
前記オリゴヌクレオチドを粘膜に局所的に投与する、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
前記オリゴヌクレオチドを直腸に投与する、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
対象者は前記投与前に結腸洗浄を受けていない、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
前記局所投与が対象者による自己投与に適した浣腸を介して実施される、請求項18~20のいずれか1項に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
対象者はオリゴヌクレオチドによる治療の48時間前に、好ましくはオリゴヌクレオチドの治療の24時間前には結腸洗浄を受けていない、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
オリゴヌクレオチドがコビトリモドであり、約500mgの個々の用量のコビトリモドを2回のみの3週間離れている別々の機会に対象者に投与する、先行する請求項のいずれかに記載の使用のためのオリゴヌクレオチド。
【請求項24】
請求項1および6~12のいずれかに定義したオリゴヌクレオチドを1つ以上の医薬上許容される担体と一緒に含む、請求項1、5、17、20および22のいずれかに定義したヒト対象者の、請求項1~4のいずれかに定義した炎症性腸疾患の治療に使用するための医薬組成物であって、前記組成物の個々の投与を少なくとも2回別々の機会に対象者に投与し、前記別々の機会は3週間離れており、組成物の各投与は請求項1、13、14および23のいずれかに定義するオリゴヌクレオチドの量を送達する、組成物。
【請求項25】
請求項1、5、17、20および22のいずれかに定義したヒト対象者の、請求項1~4のいずれかに定義した炎症性腸疾患を治療する方法であって、請求項1および6~12に定義したオリゴヌクレオチドまたは請求項24に定義した組成物を前記対象者に投与することを含み、前記オリゴヌクレオチドまたは組成物の個々の投与を少なくとも2回の別々の機会に患者に投与し、前記別々の機会は3週間離れており、オリゴヌクレオチドまたは組成物の各投与は請求項1、13、14および23のいずれかに定義するオリゴヌクレオチドの量を送達する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化された投与計画に従ってオリゴヌクレオチド、とりわけコビトリモドを投与する、活動性潰瘍性大腸炎(UC)などの炎症性腸疾患を治療するための新療法に関する。
【背景技術】
【0002】
潰瘍性大腸炎(UC)は、直腸および結腸粘膜の慢性炎症により特徴付けられる疾患であり、第1のステージでは最も内側の膜に影響を与える。当該疾患は、病態、症状および治療の異なる活動期および非活動期の両方があり、再発する。UCの根本的原因はわかっていないし、何が疾患をトリガーし非活動性と活動性形態の間を繰り返させるかも知られていない(Irvine, E. J. (2008) Inflamm Bowel Dis 14(4): 554-565)。活動性UCの症状としては、血液を伴う進行性軟便および便通回数の増加が挙げられる。活動性粘膜炎症は内視鏡検査で診断される。
【0003】
便には膿、粘液および血液が含まれ、しばしば、排泄の切迫性(tenesmi)を伴う腹部のけいれんを伴う。下痢は潜行性の発症を伴う場合があり、まれに全く突然に発症することもある。重症の場合、症状として発熱や全身倦怠感を伴うこともある。重度の段階では、腹部の圧痛、頻脈、発熱および腸穿孔のリスクを伴う腸壁の深い炎症が発生しうる。さらに、UCの患者は、関節痛や関節炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症および眼の炎症などの腸外の症状に苦しむこともある。寛解または非活動性のUCの場合、患者は通常、腸の症状がない。
【0004】
炎症および損傷した粘膜の程度は、UCの患者の中でも異なる。直腸のみに影響を与えるUCは、潰瘍性直腸炎と呼ばれる。脾彎曲部まで結腸の左側に炎症性の変化が存在する場合、この状態は遠位または左側大腸炎と呼ばれる。広範囲のUCでは、横行結腸も影響を受け、全大腸炎は結腸全体が関与する疾患を示す。
【0005】
活動性粘膜炎症は内視鏡検査によって診断され、血管の透見像の喪失、浮腫、点状出血、自然出血および線維性滲出液を特徴とする。内視鏡画像は、直腸から始まり、結腸内にさまざまな程度まで近位に広がる連続的な炎症の画像である。内視鏡検査で得られ、組織学的検査を受けた生検は、状態の診断に役立つ。クロストリジウムディフィシル、カンピロバクター(camphylobacter)、サルモネラおよび赤痢菌などの感染症の原因は、UCに似ている可能性があり、便培養で除外することができる。
【0006】
UCの医学的管理は、活動性疾患の治療と寛解の維持に分けられる。
【0007】
活動性UCの患者の治療は、炎症を軽減し、結腸の治癒と粘膜の回復を促進することを目的とする。軽度の場合、スルファサラジン、5-アミノサリチル酸(5-ASA)(Sutherland, L., F. Martin, S. Greer, M. Robinson, N. Greenberger, F. Saibil, T. Martin, J. Sparr, E. Prokipchuk and L. Borgn (1987) Gastroenterology 92: 1894-1898)およびグルココルチコステロイド(GCS)(Domenech, E., M. Manosa and E. Cabre (2014). Dig Dis 32(4): 320-327)などの従来の薬剤で病気を制御しうる。
【0008】
GCSは通常、病気の再発を治療するために使用されるが、長期使用には重大な副作用があり、ステロイド依存性疾患が発生する可能性があるため、寛解の維持には推奨されない。グルココルチコイド薬は非選択的に作用するため、長期的には多くの健康的な同化プロセスを損なう可能性がある。結果として、全身GCSによる維持治療は薦められない(Prantera, C. and S. Marconi (2013) Therap Adv Gastroenterol 6(2): 137-156)。
【0009】
GCSに抵抗性になり、UCの重度または中等度の発作に苦しむ患者には、シクロスポリン、6-メルカプトプリンおよびアザチオプリンなどの追加の免疫調節剤を使用する場合がある。しかし、免疫調節薬は遅効性であり、これらの患者の寛解の導入はしばしば一時的である(Khan, K. J., M. C. Dubinsky, A. C. Ford, T. A. Ullman, N. J. Talley and P. Moayyedi (2011) Am J Gastroenterol 106(4): 630-642)。
【0010】
UCのさらなる治療の選択肢としては、生物学的薬剤が挙げられる(Fausel、R. and A. Afzali(2015)Ther Clin Risk Manag 11:63-73)。現在中等度から重度のUCの治療に承認されている3つのTNF-α阻害剤は、インフリキシマブ、アダリムマブおよびゴリムマブである。3つすべては、それらの使用に伴う潜在的なリスクを抱えており、特定の患者、例えば、制御されていない感染症、進行した心不全、神経性症状を伴う患者および腫瘍の成長を促進する潜在的リスクのために悪性腫瘍の履歴がある患者は避けるべきである。TNF-α阻害剤療法の他の潜在的な有害作用としては、好中球減少、肝毒性、血清病、白血球破砕性血管炎、乾癬様発疹などの発疹、自己免疫の誘発およびアナフィラキシー、痙攣および低血圧などの注射または注入部位反応が挙げられる。
【0011】
すべての3つのTNF-α阻害剤およびそれらに関連するバイオシミラー/誘導体の対応物を使用して、UC患者の臨床的奏効と寛解を導入および維持してもよい。アザチオプリンとの併用療法は、寛解の導入にも使用される。しかしながら、TNF-α阻害剤を投与された50%を超える患者が導入投与に奏効しないか、TNF-α阻害剤への奏効を経時的に失う(Fausel, R. and A. Afzali (2015) Ther Clin Risk Manag 11: 63-73)。
【0012】
α4β7インテグリン阻害剤であるベドリズマブは、最近UCの治療に承認された。GEMINI1試験では、ベドリズマブはプラセボよりも臨床奏効、臨床的寛解および粘膜治癒の導入および維持により有効であることが判明した(Feagan, B. G., P. Rutgeerts, B. E. Sands, S. Hanauer, J. F. Colombel, W. J. Sandborn, G. Van Assche, J. Axler, H. J. Kim, S. Danese, I. Fox, C. Milch, S. Sankoh, T. Wyant, J. Xu, A. Parikh and G. S. Group (2013). "Vedolizumab as induction and maintenance therapy for ulcerative colitis." N Engl J Med 369(8): 699-710.)。
【0013】
潰瘍性大腸炎患者は、慢性的に活動的であり、既知の治療に抵抗性であり、深刻な医学的課題を提起し、しばしば唯一残っている治療方針は結腸切除術である。全結腸切除術は重度のUCで治癒する可能性のある選択肢であるが、ポーチ障害、回腸嚢炎、骨盤内敗血症、女性の不妊症および夜間の糞便による汚損などの合併症が後に続く可能性があるため、リスクを伴う人生が変わるような手術である。したがって、手術は通常、重度の難治性疾患、外科もしくは他の緊急事態の患者、または結腸直腸形成異常または癌の患者に残されている。
【0014】
UCの緊急の第三選択治療は、長さ19塩基の修飾された一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)ベースの合成オリゴヌクレオチドであるコビトリモド(Kappaproct / DIMS0150)である。コビトリモドは、配列5'-G*G*A*ACAGTTCGTCCAT*G*G*C-3'(配列番号1)を有し、CGジヌクレオチドはメチル化されていない。
【0015】
コビトリモドは、免疫細胞に存在するToll様受容体9(TLR9)を標的とすることにより、免疫調節剤として機能する。これらの免疫細胞(すなわち、B細胞および形質細胞様樹状細胞(pDC))は、結腸および鼻粘膜などの粘膜表面に豊富に存在する。免疫系はUCの変化の重要なメディエーターである。UC患者の結腸や直腸の粘膜は慢性的に炎症を起こしており、活動的な免疫細胞を含んでいる。コビトリモドは炎症の領域に局所的に投与される場合があり、これにより薬物が目的の多数の標的細胞と密接に接触し、TLR9発現細胞が豊富な領域に、薬物が到達することが保証される。コビトリモドによるこれらの細胞の活性化は、古典的な抗炎症性サイトカインであり、コビトリモドの臨床効果の重要な因子であると考えられているI型インターフェロンやインターロイキン10(IL-10)などの様々なサイトカインを誘導する。
【0016】
コビトリモドの臨床の有効性は、コビトリモド30mg用量を4週間間隔で患者に投与することに関与する「COLLECT」(CSUC-01/10)臨床試験、および異なる投与計画を試験することに関与する「CONDUCT」(CSUC-01/16)臨床試験で証明されている。「COLLECT」試験の詳細は、Journal of Crohns and Colitis(Atreya et al. J Crohns Colitis, 2016 May 20)に掲載されており、参考例1に要約されている。「CONDUCT」臨床試験の詳細は、The Lancet Gastroenterology and Hepatology (Atreya et al 2020. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2020 Dec;5(12):1063-1075)に掲載されており、参考例2に要約されている。全体として、コビトリモドに関するデータは、活動期にいる慢性UC患者(本明細書では時に「慢性活動性UC」という)に対する肯定的なベネフィットリスク評価を支持している。コビトリモドは安全で忍容性が高く、活動期にいる慢性UCの患者における臨床的奏効および寛解、ならびに治療抵抗性の中等度から重度の活動期にいる慢性UCの患者における症状的および内視鏡的寛解を導入する効果があることが示された。これまで得られた臨床試験結果にもかかわらず、コビトリモドの良好な有効性と安全性の両方を呈するさらなる有効投与量の必要性がいまだ存在する。
【0017】
コビトリモドの比較的低用量(30mg)の投与に関与するCOLLECT研究では、コビトリモドの局所投与はスプレーカテーテル装置を用いて実施され内視鏡検査中に投与された。これは、医療従事者が必ず行う侵襲的な医療行為である。さらに、患者にコビトリモドを局所投与する前に、各患者の結腸を洗浄して糞便物質を除去した。これは、コビトリモドが結腸内の腸管上皮細胞に到達し、内視鏡医が結腸粘膜を観察できるようにするために行われたものである。このように、コビトリモドのようなオリゴヌクレオチドが糞便のような有機物と結合することは、当分野ではよく知られている。したがって、コビトリモドが結腸内の標的腸管上皮細胞に到達できるように、結腸から糞便のコーティングや糞便材料などを除去することが必要であると考えられていた。
【0018】
前述のように、活動性疾患期にいて、既知の治療法に抵抗性を示す慢性潰瘍性大腸炎を患う患者は、深刻な医学的課題を抱えており、しばしば残された唯一の治療法は結腸切除術である。このため、かかる侵襲的な治療に伴う不便さや不快感にもかかわらず、患者は、糞便材料を除去するための結腸洗浄とスプレーカテーテルによる局所投与の両方を必要とする医療介入を、容認している。しかし、潰瘍性大腸炎患者に対して、糞便材料除去のための結腸洗浄を必要とせず、好ましくは患者が自己投与できる局所治療を提供することは、治療上望ましいことである。
【発明の概要】
【0019】
発明の要約
驚くべきことに、UCなどの炎症性腸疾患の治療のために、350mg超え、例えば351mgから650mg、典型的には400mgから600mg、好ましくは約500mgの投与量のコビトリモドを少なくとも2回、好ましくは2回の3週間離れている別々の機会に投与することが、例えば寛解を導入するおよび/または寛解に患者を維持する(すなわち維持療法として作用する)のに最適であることを見出した。500mgでの薬の有効性の増加は、より低い用量で実施された以前の臨床研究から予想されていた以上である。さらに、この投与量は安全で忍容性が高く、コビトリモドが糞便物質と結合する性質が知られているにもかかわらず、糞便物質が存在する場合でも有効であることが見いだされた。従って、この投与量は、結腸洗浄が行われていない患者への投与に適している。さらに、驚くべきことに、この投与量は、浣腸器による自己投与に適していることが見いだされている。したがって、内視鏡検査中にスプレーカテーテル装置を用いて有効成分を投与する必要はない。このため、医療従事者による投与の必要性および複雑な医療機器の使用およびより侵襲的な処置が回避される。そのため、患者は薬剤を受けるために医療センターや病院へ行く必要がなく、患者自身の自宅で自己投与できる。
【0020】
したがって、本発明は、ヒト対象者の炎症性腸疾患の治療に使用するための配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を含むオリゴヌクレオチドであって、前記オリゴヌクレオチド400mgから600mgの個々の用量を少なくとも2回の別々の機会に対象者に投与し、前記別々の機会は3週間離れている、オリゴヌクレオチドを提供する。
【0021】
また、本発明は、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドを1つ以上の医薬上許容される担体と一緒に含む、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される炎症性腸疾患の治療に使用するための医薬組成物であって、前記組成物の個々の投与を少なくとも2回の別々の機会に対象者に投与し、前記別々の機会は3週間離れており、組成物の各投与が本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドの量を送達する組成物を提供する。
【0022】
また、本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される炎症性腸疾患を治療する方法であって、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドまたは本明細書で定義される組成物を前記対象に投与することを含み、前記オリゴヌクレオチドまたは組成物の個々の投与を少なくとも2回の別々の機会に患者に投与し、前記別々の機会は3週間離れており、オリゴヌクレオチドまたは組成物の各投与は本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドの量を送達する方法を提供する。
【0023】
好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドは、CGジヌクレオチドがメチル化されていない配列5'-G*G*A*ACAGTTCGTCCAT*G*G*C-3'(配列番号1)を有する。したがって、好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドはコビトリモドである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明のオリゴヌクレオチド、またはプラセボ(標準治療(S.o.C.)に添加)の投与後、週ごとに血便=ゼロ(7日間の患者報告結果の最大)を報告する治療群およびプラセボ群の割合についてのプラセボ対照臨床試験の結果を示す。
図2図2は、本発明のオリゴヌクレオチド、またはプラセボ(標準治療(S.o.C.)に添加)の投与後、週ごとに週排便回数が18回未満(7日間の患者報告結果の合計)を報告する治療群およびプラセボ群の割合についてのプラセボ対照臨床試験の結果を示す。
図3図3は、本発明のオリゴヌクレオチド、またはプラセボ(標準治療(S.o.C.)に添加)の投与後、週ごとに週排便回数が35回未満(7日間の患者報告結果の合計)を報告する治療群およびプラセボ群の割合のプラセボ対照臨床試験の結果を示す。
図4図4は、本発明のオリゴヌクレオチド、またはプラセボ(標準治療(S.o.C.)に添加)の投与後、週ごとに1日の排便回数が3回未満(7日間の患者報告結果の1日の平均)を報告する治療群およびプラセボ群の割合のプラセボ対照臨床試験の結果を示す。
図5図5は、本発明のオリゴヌクレオチド、またはプラセボ(標準治療(S.o.C.)に添加)の投与後の週ごとに、1日の排便回数が4回未満(7日間の患者報告結果の1日の平均)を報告する治療群およびプラセボ群の割合のプラセボ対照臨床試験による結果を示す。
図6図6は、本発明のオリゴヌクレオチド、またはプラセボ(標準治療(S.o.C.)に添加)の投与後の週ごとに、1日の排便回数が5回未満(7日間の患者報告結果の1日の平均)を報告する治療群およびプラセボ群の割合のプラセボ対照臨床試験による結果を示す。
【0025】
発明の詳細な説明
本明細書で引用されたすべての特許、特許出願および刊行物は、参照によりその全体が取り込まれる。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「対象者」は、ヒトの対象者/患者を指す。用語「対象者」および「患者」は、本明細書では互換的に使用される。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語 炎症性腸疾患(IBD)は、結腸および胃腸管の炎症状態の一群を指す。IBDの主なタイプは、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病である。UCとクローン病の主な違いは、炎症性変化の場所と性質である。クローン病は、口から肛門まで、消化管のあらゆる部分に影響を及ぼすが、UCは結腸と直腸に限定される。場合によっては、症状の特異性のために、クローン病またはUCのいずれかの確定診断を下すことができない。これらの場合、不確定な大腸炎の診断が行われる場合がある。IBDの他の形態には、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、転用性大腸炎、ベーチェット病および不確定性大腸炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
典型的には、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎(UC)である。
【0029】
潰瘍性大腸炎(UC)という疾患は、当業者に周知である。本発明に従って治療される潰瘍性大腸炎としては、潰瘍性直腸炎、遠位または左側大腸炎、全大腸炎、汎大腸炎および回腸嚢炎の治療が挙げられうる。典型的には、患者は左側潰瘍性大腸炎を患っている。
【0030】
UCの患者は典型的には、寛解から重度の活動性に至るまで、疾患重症度のスペクトルを示す。臨床評価を使用して、UC患者をD’Haens, Gastroenterology 2007; 132: 763-786(その全体は参照により本明細書に組み込まれる)で定義されている4つの疾患活動性サブグループに分類できる:(1)寛解(2または3回以下の便/日、便中に血液および/または膿が存在せず、全身症状なし);(2)軽度の活動性疾患(3または4回の便/日および/または便中に血液および/または膿の存在が毎日ではない、発熱または体重減少の全身症状なし);(3)中等度の活動性疾患(4回を超える便/日および/または血液および/または膿が毎日存在)、全身症状が最小限;ならびに(4)重度の活動性疾患(6回を超える血便/日、および発熱、頻脈、貧血、または赤血球沈降速度ESRによって示される毒性の証拠)。
【0031】
典型的には、患者は中等度から重度のUCを患っている。好ましくは、患者は上記で定義される中等度から重度のUCを患っている。例えば、患者は中等度から重度の左側UCを患っていてもよい。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「治療」および「治療する」は、疾患もしくは状態の治療および/もしくは回復および/もしくは予防または疾患もしくは状態の症状の重篤化/悪化の軽減、ならびに疾患もしくは状態の原因の治療を包含すると理解されるべきであり、対象者の状態を改善または安定させる方法で、症状、臨床徴候および状態の根底にある病状を逆転、軽減または阻止することを含んでもよい。
【0033】
特に潰瘍性大腸炎の文脈において、「治療する」とは、典型的には、活動性潰瘍性大腸炎を有する患者に奏効または寛解を導入することを指す。したがって、典型的には、オリゴヌクレオチドは、患者の活動性潰瘍性大腸炎の奏効または寛解を導入するためのものである。奏効を導入するとは、例えば、活動性疾患の症状および臨床徴候の軽減および/または阻止によって、患者の状態を改善することを意味する。寛解の導入とは、患者が疾患の活動段階にあると考えられている状態から、寛解していると考えられる状態に移行することを意味する。
【0034】
UC患者の奏効または寛解の導入は、典型的には、内視鏡検査、組織学、患者記録の結果および生活の質の結果の1つ以上によって評価される。したがって、奏効または寛解の導入への言及には、内視鏡的寛解、内視鏡的奏効、組織学的寛解、組織学的奏効、医師または患者が記録した結果により決定された奏効または寛解、および生活の質によって決定された奏効または寛解の1つ以上の導入が挙げられる。これは、典型的には、1つ以上の標準指標を参照して評価できる。
【0035】
典型的には、潰瘍性大腸炎は、慢性活動性潰瘍性大腸炎であり、すなわち患者は、活動期にいる慢性潰瘍性大腸炎を患っている。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「慢性活動性潰瘍性大腸炎」は、活動性および慢性の両方である潰瘍性大腸炎の患者を指す。活動性潰瘍性大腸炎は、典型的には本明細書で定義されるとおりであり、すなわち、患者は寛解状態ではない。潰瘍性大腸炎は、典型的には、活動期と活動性の低い時期を繰り返す慢性(長期)状態である。当業者であれば理解できるように、慢性潰瘍性大腸炎を患う患者は、患者がより軽い症状を経験するか寛解状態にいる期間を挟みながら、より極端な症状を伴う活動期(「フレアーアップ(flare up)」または再燃)を体験する。したがって、用語「慢性活動性UC」という用語は、典型的には、活動的な疾患状態にある慢性UCの患者を指す。
【0037】
患者は、慢性活動性中等度から重度のUCを患っていてもよい。患者は、慢性活動性中等度から重度の左側UCを患っていてもよい。
【0038】
好ましくは、本明細書で「治療する」への言及は、慢性の活動性潰瘍性大腸炎を有する患者に奏効または寛解を導入することを指す。したがって、典型的に、オリゴヌクレオチドは、患者の慢性活動性潰瘍性大腸炎の奏効または寛解を導入するためのものである。
【0039】
UC患者における奏効または寛解の導入は、1つ以上の標準的な疾患指標に従って決定されてもよい。典型的な疾患指標には、下記;(i)臨床的および生化学的疾患活動性により決定される疾患活動性、(ii)内視鏡的疾患活動性により決定される疾患活動性、(iii)複合臨床的および内視鏡的疾患活動性指標により決定される疾患活動性、(iv)生活の質、(v)組織学的疾患活動性が挙げられるが、これらに限定されない。これらの指標については、D'Haens(同上)で説明されている。
【0040】
臨床的および生化学的疾患活動性により決定される疾患活動性に基づく指標としては、トゥルーラブアンドウィッツ重症度指標(Truelove and Witts Severity Index; パウエル-トゥック(セントマルク)指標(Powell-Tuck(St. Mark’s) Index);臨床活動(ラハメルヴィッチ)指標(Clinical Activity (Rachmilewitz) Index);活動性(セオ)指標(Activity (Seo) Index);医師の総合評価(Physician Global Assessment);リチタイガー(修正トゥルーラブアンドウィッツ重症度)指標(Lichtiger (Modified Truelove and Witts Severity) Index);研究者の総合評価(Investigators Global Evaluation);シンプル臨床大腸炎活動性指標(Simple Clinical Colitis Activity Index);個々の症状スコアに基づく改善(Improvement Based on Individual Symptom Scores);潰瘍性大腸炎の臨床スコア(Ulcerative Colitis Clinical Score);および患者-明確な寛解(Patient-defined remission)が挙げられる。これらの指標については、D'Haens(同上)で説明されている。
【0041】
内視鏡的疾患活動性により決定される疾患活動性に基づく指標としては、トゥルーラブアンドウィッツS状結腸鏡評価(Truelove and Witts Sigmoidoscopic Assessment);バロンスコア(Baron score);パウエル-トゥックS状鏡評価(Powell-Tuck Sigmoidoscopic Assessment); 内視鏡的(ラハメルヴィッチ内視鏡的)指標(Endoscopic (Rachmilewitz Endoscopic) Index);S状結腸鏡指標(Sigmoidoscopic Index); S状結腸鏡炎症グレードスコア(Sigmoidoscopic Inflammation Grade Score);メイヨースコアフレキシブル直腸S状結腸鏡評価(Mayo Score Flexible Proctosigmoidoscopy Assessment);サザーランド粘膜状態評価(Sutherland Mucosal Appearance Assessment);および修正バロンスコア(Modified Baron Score)が挙げられる。これらの指標については、D'Haens(同上)で説明されている。
【0042】
複合臨床的および内視鏡的疾患活動性指標により決定される疾患活動性に基づく指標としては、メイヨースコア(メイヨークリニックスコア/疾患活動性指標)(Mayo Score (Mayo Clinic Score/Disease Activity Index));修正メイヨースコアおよびサザーランド指標(疾患活動性指標/UC疾患活動性指標)(Modified Mayo Score and Sutherland Index (Disease Activity Index/UC Disease Activity Index))が挙げられる。メイヨースコアとサザーランド指標については、D'Haens(同上)で説明されている。
【0043】
生活の質に基づく指標には、IBD患者の懸念の評価フォーム(Rating Form of IBD Patient Concerns);および炎症性腸疾患質問票(Inflammatory Bowel Disease Questionnaire (IBDQ))が挙げられる。これらの指標については、D'Haens(同上)で説明されている。
【0044】
組織学的疾患活動性に基づく指標には、ゲボーズ指標(Geboes Index)やリレイ指標(Riley Index)などのD'Haens(同上)で説明されている指標や、ナンシー指標(Nancy Index)やロバート指標(Robarts Index)などのその他の指標が挙げられる。
【0045】
UC患者を評価するための好ましい指標には、臨床活動性(ラハメルヴィッチ)指標(Clinical Activity (Rachmilewitz) Index)、メイヨースコアおよび修正メイヨースコアが挙げられる。
【0046】
臨床活動性(ラハメルヴィッチ)指標は、7つの変数:便の数、血便、症状状態の研究者の総合評価、腹痛またはけいれん、大腸炎による体温、腸管外症状、および検査所見を考慮した指標である。これについては、D'Haens(同上)およびRachmilewitz D., BMJ 1989; 298: 82-86(その全体は参照により本明細書に組み込まれる)でさらに説明されている。臨床活動性(ラハメルヴィッチ)指標の決定は、0~29ポイントの範囲の患者のスコアを生成する(スコアが高いほど、より重症の疾患を意味する)。
【0047】
臨床的寛解は、臨床活動性(ラハメルヴィッチ)指標のスコアが4ポイント以下と見なされる。臨床活動性(ラハメルヴィッチ)指標によって決定される奏効は、治療前よりも治療後の患者のスコアが低いことを意味する。
【0048】
メイヨースコアは、4つの項目:排便回数、直腸出血、下部GI内視鏡検査の結果、および医師の総合評価(PGA)を考慮した指標である。これについては、D’Haens(同上)およびSchroeder KW et al、N Engl J Med 1987; 317:1625-1629(その全体は参照により本明細書に組み込まれる)でさらに説明される。メイヨースコアの決定により、0~12ポイントの範囲のスコアが得られる(スコアが高いほど、より重症の疾患を意味する)。4つの特定の項目に加えて、患者の機能的評価も測定され、これは、12ポイント指標計算に含めることを意味するものではないが、PGAスコアを決定する際の一般的な幸福(well-being)の尺度として使用すべきである。
【0049】
4つの各項目のメイヨースコアリングは、以下の表に示すように決定される。
【0050】
【表1】
【0051】
各患者は、排便回数の異常の程度を確立するため自身を対照として扱う。
毎日の出血スコアは、最も重症の日の出血を表す。
医師の総合評価は、他の3つの基準、腹部不快感および一般的な幸福の感覚の患者の毎日の記録、身体所見および患者のパフォーマンスステータスなどの他の観察を認定する。
【0052】
メイヨースコアによる寛解は、(1)排便回数(正常な排便回数)、(2)直腸出血(直腸出血なし)、(3)患者の機能的評価スコア(一般的に良好)、(4)内視鏡検査所見(正常)の完全な解決、およびPGAスコア0として定義されうる。メイヨースコアによって決定される奏効は、典型的には、PGAスコアの改善(ベースラインから最小1ポイントの減少)および少なくとも1つの他の臨床評価(排便回数、直腸出血、患者の機能的評価、内視鏡検査所見)の改善および他の臨床評価で悪化がないことが要求される。
【0053】
あるいは、臨床的寛解は、メイヨースコアが0、ならびに臨床的改善(奏効)は、メイヨースコアが3ポイント以上のベースラインからの低下として定義されうる。
【0054】
あるいは、臨床的寛解は、メイヨースコアが0、そして臨床的改善(奏効)は、メイヨースコアのベースラインからの3ポイント以上の減少(またはメイヨースコアベースラインが3ポイント以下の場合、2ポイント以上の減少)として定義されうる。
【0055】
あるいは、メイヨースコアによって決定される寛解は、S状結腸鏡検査と直腸出血の両方について0のサブスコアを要求し、排便回数とPGAについて0または1のスコアを要求するものとして定義されうる。奏効は、メイヨースコアがベースラインからの3ポイント以上の減少として定義できる;臨床的奏効は、メイヨースコアがベースラインから2ポイント以上の減少として定義でき(部分的メイヨースコアとしても知られている内視鏡検査サブスコアなし)、内視鏡的奏効は、内視鏡検査サブスコアがベースラインから1ポイント以上の減少として定義されうる。
【0056】
あるいは、臨床的寛解は、メイヨースコアの合計が2ポイント以下、かつ個々のサブスコアが1ポイントを超えるものがないと定義され得、臨床的奏効は、ベースラインからのメイヨースコアの合計が3ポイント以上かつ30%以上の減少、および直腸出血サブスコアが1ポイント以上の減少または直腸出血サブスコアの絶対値が0または1と定義され得、また粘膜治癒は内視鏡サブスコア絶対値が0または1として定義され得る。
【0057】
一実施形態において、活動性潰瘍性大腸炎の患者は、メイヨースコアが2を超える。潰瘍性大腸炎の寛解期にある患者は、典型的に、メイヨースコアが2以下である。
【0058】
修正メイヨースコアは、上記で定義されるメイヨースコアに関連している。修正メイヨースコアは、大腸内視鏡検査/S状結腸内視鏡スコアリングでは脆弱性をあまり考慮しないという点で、メイヨースコアとは異なる。したがって、修正メイヨースコアのスコア表は以下のとおりである。
【0059】
【表2】
【0060】
各患者は、排便回数の異常の程度を確立するため自身を対照として扱う。
毎日の出血スコアは、最も重症の日の出血を表す。
医師の総合評価は、他の3つの基準、腹部不快感および一般的な幸福の感覚の患者の毎日の記録、身体所見および患者のパフォーマンス状態などの他の観察を認定する。
【0061】
修正メイヨースコアの寛解と奏効の値は、メイヨースコアについて上記で説明したとおりである。修正メイヨースコアは、典型的には、http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM515143.pdfで見られる、FDAのガイダンス文書ドラフト「潰瘍性大腸炎:業界向け臨床試験評価項目ガイダンス(Ulcerative Colitis: Clinical Trial Endpoints Guidance for Industry)」に従って評価される。
【0062】
あるいは、修正メイヨースコアは、大腸内視鏡検査/S状結腸鏡検査スコアリングが脆弱性をあまり考慮しないという点、また医師の総合評価が決定的ではないという点で、メイヨースコアと異なる場合がある。したがって、修正メイヨースコアのスコアリングの表は次のようにもなる。
【0063】
【表3】
【0064】
各患者は、排便回数の異常の程度を確立するため自身を対照として扱う。
毎日の出血スコアは、最も重症の日の出血を表す。
【0065】
この代わりの修正メイヨースコアの寛解と奏効の値は、典型的には、メイヨースコアについて上記で説明したとおりである。あるいは、寛解は、i)直腸出血0、ii)排便回数0または1(0週目であるベースラインから、少なくとも1ポイント減少)、およびiii)内視鏡検査スコア0または1(脆弱性を除く)のサブスコアによって、この代わりの修正メイヨースコアに従って定義されうる。
【0066】
UCの寛解の導入は、S. P. L. Travis, Aliment Pharmacol Ther 2011; 34: 113-124(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に定められた基準に従ってもよく、すなわち、直腸出血、切迫性、排便回数増加の完全な停止、好ましくは内視鏡的粘膜治癒により確認される基準に従ってもよい。
【0067】
あるいは、奏効または寛解の導入は、E.F. Stange, Journal of Crohn's and Colitis (2008) 2, 1-23; S.P.L. Travis, Journal of Crohn's and Colitis (2008) 2, 24-62; K Geboes, Gut 2000; 47: 404-409(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に定められた基準に従ってもよい。
【0068】
クローン病患者の奏効または寛解の導入は、1つ以上の標準的な疾患指標に従って決定してもよい。典型的な指標には、クローン病活動指数(CDAI)が挙げられる。CDAIは、Love, “Pharmacotherapy for Moderate to Severe Inflammatory Bowel Disease: Evolving Strategies”, Am J Manag Care. 2016;22:S39-S50; Peyrin-Biroulet et al “Defining disease severity in inflammatory bowel diseases: current and future directions” Clin Gastroenterol Hepatol. 2015; pii: S1542-3565(15)00787-00789. doi: 10.1016/j.cgh.2015.06.001;およびUngar et al “Advances in the development of new biologics in inflammatory bowel disease”, Annals of Gastroenterology (2016) 29, 243-248、で議論されている。クローン病患者を評価するための代替指標としては、ハーベイ-ブラッドシャウ指標(Harvey-Bradshaw index)および炎症性腸疾患質問票(Inflammatory Bowel Disease Questionnaire)が挙げられる。
【0069】
CDAIは、液体便または軟便の回数;腹痛;一般的な幸福;合併症の存在(関節の痛み(関節痛)または明白な関節炎の存在;虹彩またはブドウ膜炎の炎症;結節性紅斑、壊疽性膿皮症、またはアフタ性潰瘍の存在;肛門裂傷、瘻孔または膿瘍;その他の瘻孔;前週の発熱);下痢に対するロモチルまたはオピエートの使用;腹部腫瘤の存在;ヘマトクリット値;および標準重量からのパーセント偏差などの、クローン病に関連する多数の症状を考慮した複合スコアである。CDAIによる臨床的寛解は、典型的には、150未満のスコアで示される。
【0070】
典型的には、対象者は、0週にオリゴヌクレオチドによる治療の開始後、6週目に臨床的寛解にある。臨床的寛解は、本明細書に記載される臨床的寛解の定義のいずれでもよい。典型的には、対象者は、0週でのオリゴヌクレオチドによる治療の開始後、6週目に臨床的寛解にあり、臨床的寛解は、3要素メイヨースコア(3-component Mayo scores):i)直腸出血0、ii)排便回数0または1(ベースライン、0週目から少なくとも1ポイント減少)、およびiii)内視鏡検査スコア0または1によって定義される。
【0071】
典型的には、対象者は、0週にオリゴヌクレオチドによる治療を開始した後、6週目に内視鏡検査の改善を示す。典型的には、対象者は、0週にオリゴヌクレオチドによる治療の開始後、6週目に症候性寛解にある。症候性寛解は、典型的には、メイヨースコアリングシステムに従って、血便スコア0および排便回数スコア0または1として定義される。
【0072】
本発明に従って治療される対象者は、典型的には、抗炎症療法に対して抵抗性、奏効が不十分もしくは不耐性であり、および/または少なくとも1つの免疫調節薬、TNF-α阻害剤、抗インテグリン、JAK阻害剤またはIL-12/IL-23阻害剤に対して、不十分な奏効、奏効の喪失、または不耐性を示すまたは以前に示した。本発明に従って治療される対象者は、典型的には、抗炎症療法に対して抵抗性または奏効が不十分または不耐性である。本発明に従って治療される対象者は、典型的には、少なくともひとつの免疫調節薬に対して抵抗性または奏効が不十分または不耐性である。本発明に従って治療される対象者は、典型的には、少なくとも1つのTNF-α阻害剤に対して、抵抗性または奏効が不十分または不耐性である。
【0073】
したがって、対象者は、典型的には、抗炎症療法、好ましくはUCのための抗炎症療法、および/または免疫調節薬、TNF-α阻害剤または抗インテグリン療法、好ましくはUCのためのかかる療法を以前に受けたか、または現在受けている。
【0074】
UCの抗炎症療法については本明細書で考察するが、典型的には、経口コルチコステロイドおよびグルココルチコステロイド(GCS)、スルファサラジンおよび5-ASAが挙げられる。したがって、本発明に従って治療される対象者は、典型的には、GCS、スルファサラジンおよび/または5-ASAに対して抵抗性または奏効が不十分または不耐性である。典型的には、本発明に従って治療される対象者は、典型的には、経口コルチコステロイドに対して、抵抗性または奏効が不十分または不耐性である。
【0075】
免疫調節薬、TNF-α阻害剤、および抗インテグリンは本明細書で考察され、典型的には、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、ならびにTNF-α阻害剤であるインフリキシマブならびにそのバイオシミラーおよび誘導体、ゴリムマブならびにそのバイオシミラーおよび誘導体、アダリムマブならびにそのバイオシミラーおよび誘導体、ならびに抗インテグリンであるベドリズマブならびにそのバイオシミラーおよび誘導体などの生物学的製剤が挙げられる。したがって、本発明に従って治療される対象者は、典型的には、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、インフリキシマブならびにそのバイオシミラーおよび誘導体、ゴリムマブならびにそのバイオシミラーおよび誘導体、アダリムマブならびにそのバイオシミラーおよび誘導体、ならびに抗インテグリンであるベドリズマブならびにそのバイオシミラーおよび誘導体に対して抵抗性または奏効が不十分または不耐性である。典型的には、本発明に従って治療される対象者は、アザチオプリン、および/または6-メルカプトプリンに対して抵抗性または奏効が不十分または不耐性である。典型的には、本発明に従って治療される対象者は、インフリキシマブおよび/またはアダリムマブに対して抵抗性または奏効が不十分または不耐性である。本発明に従って治療される対象者は、JAK阻害剤(例えばトファシチニブ)に対して抵抗性または奏効が不十分または不耐性でありうる。本発明に従って治療される対象者は、IL-12/IL-23阻害剤(例えばウステキヌマブ)に対して抵抗性または奏効が不十分または不耐性でありうる。
【0076】
療法に対して抵抗性疾患または十分に奏効しない疾患は、典型的には、本発明の文脈における少なくとも1コースの療法(例えば抗炎症療法または免疫調節療法)の履歴にもかかわらず活動性疾患の徴候および症状が持続する疾患である。典型的には、UCの治療の文脈では、抗炎症療法または免疫調節療法の2つ以上のコースの履歴にもかかわらず、活動性疾患の徴候と症状が持続する。UCの抗炎症療法または免疫調節療法による典型的な治療コースは、当業者によく理解されており、典型的には、典型的な患者に寛解を導入するのに十分な投与量で十分な回数の投与を伴う。
【0077】
本発明の文脈においては抗炎症療法または免疫調節療法などの療法に対する不耐性とは、療法が、許容されない対象者の副作用、例えば、典型的には、療法の中止につながる副作用、を引き起こすことを意味する。
【0078】
典型的には、対象者は、アミノサリチル酸(5-ASA)、好ましくはUCのための5-ASA療法を以前に受けたことがあるか、現在受けている。
【0079】
典型的には、対象者は経口グルココルチコステロイド(GCS)、好ましくはUCのための経口GCS療法を以前に受けたことがあるか、現在受けている。
【0080】
典型的には、対象者はブデソニド、例えば経口MMXブデソニド療法を以前に受けたことがあるか、現在受けている。
【0081】
典型的には、対象者は、5-アミノサリチル酸および/またはサラゾピリン化合物を以前に受けたことがあるか、現在受けている。
【0082】
典型的には、対象者は、アザチオプリンおよび/または6-メルカプトプリンを以前に受けたことがあるか、現在受けている。
【0083】
典型的には、抗炎症療法に対して抵抗性または奏効が不十分または不耐性である対象者は、直腸、経口、および/または非経口のGCS治療(以前の副作用によるGCS治療なしを含む)に対して、不十分な奏効、または奏効の喪失(すなわち抵抗性)または不耐性を示しているか、以前に示した。
【0084】
典型的には、抗炎症療法に対して抵抗性または奏効が不十分または不耐性である対象者は、GCS治療に対して、不十分な奏効(例えばステロイド抵抗性)、またはステロイド依存、または奏効の喪失、または不耐性の履歴または現在の状態を有する。ステロイド/GCSは、典型的に、潰瘍性大腸炎の治療中に対象者に投与される。
【0085】
ステロイド抵抗性とは、典型的に、意味のある臨床的奏効を欠く、すなわち、例えば、30日の期間にわたる経口投与、または7~10日の期間にわたる静脈内(IV)投与で、毎日40~60mgのプレドニンに相当する用量を含む導入計画などの少なくとも1コースのステロイド治療の履歴があるにもかかわらず、持続的に活動性潰瘍性大腸炎の徴候と症状を示す対象者を指す。
【0086】
ステロイド依存とは、典型的には、再発性の活動性潰瘍性大腸炎を伴わずに、ステロイドを開始してから3か月以内にプレドニゾロン10mg/dに相当するステロイド量以下に減らすことができない患者か、ステロイドを止めてから3か月以内に再燃する患者を指す。
【0087】
GCS治療の不耐性とは、典型的には、対象者が、限定されないが、クッシング症候群、骨減少症/骨粗鬆症、高血糖、不眠症、または感染症など、GCS治療後に対象者が許容できない副作用を経験したことを意味する。
【0088】
典型的には、免疫調節薬に対して抵抗性または奏効が不十分または不耐性である対象者は、免疫調節薬に対して、不十分な奏効、または奏効の喪失(すなわち抵抗性)、または不耐性を示しているか、以前に示した。例えば、TNF-α阻害剤に対して抵抗性または奏効が不十分または不耐性である対象者は、TNF-α阻害剤に対して、不十分な奏効、または奏効の喪失(すなわち抵抗性)、または不耐性を示しているか、以前に示した。
【0089】
免疫調節薬に対する不十分な奏効または奏効の喪失は、典型的には、少なくとも1つの免疫調節薬、例えば経口アザチオプリン(1.5mg/kg以上)もしくは経口6-メルカプトプリン(0.75mg/kg以上)の8週間計画での以前の治療にもかかわらず、活動性潰瘍性大腸炎の徴候および症状が持続することを意味する。
【0090】
免疫調節薬に対する不耐性とは、典型的には、対象者が、吐き気/嘔吐、腹痛、膵炎、肝機能検査(LFT)異常、リンパ球減少症、チオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)遺伝子突然変異、または免疫調節薬を投与した後の感染またはその他の副作用を経験したことを意味する。
【0091】
TNF-α阻害剤に対する不十分な奏効または奏効の喪失とは、インフリキシマブ(5mg/kg(IV)、少なくとも2週間間隔で2用量)またはそのバイオシミラーもしくは誘導体;ゴリムマブ(200/100mg(SC)、少なくとも2週間間隔で2用量)またはそのバイオシミラーもしくは誘導体;またはアダリムマブ(160/80mg(SC)、少なくとも2週間間隔で2用量)またはそのバイオシミラーもしくは誘導体、の4週間の導入計画(または現在のラベルに従った推奨用量)などの少なくとも1つのTNF-α阻害剤による以前の治療にもかかわらず、活動性潰瘍性大腸炎の徴候および症状が持続すること、あるいは以前の臨床的ベネフィットに続く維持投与中の症状の再発を意味する。
【0092】
TNF-α阻害剤に対する不耐性とは、TNF-α阻害剤を受けた後の注入に関連する反応、脱髄、うっ血性心不全、感染症またはその他の副作用を意味する。
【0093】
抗インテグリンに対する不十分な奏効または奏効の喪失とは、例えば、ベドリズマブ300mg(IV)またはそのバイオシミラーもしくは誘導体の少なくとも10週間計画、あるいは現在のラベルで推奨されているような抗インテグリンによる以前の治療にもかかわらず、活動性潰瘍性大腸炎の徴候および症状が持続すること、あるいは以前の臨床的ベネフィットに続く維持投与中の症状の再発を意味する。
【0094】
典型的には、対象者は左側潰瘍性大腸炎、すなわち直腸S状結腸炎を含む遠位大腸炎と診断されている。例えば、対象者は中等度から重度の左側潰瘍性大腸炎と診断されていてもよい。
【0095】
典型的には、前記対象者は結腸切除術に対して待機的である。
【0096】
本明細書で使用される用語「結腸切除術」は、大腸(結腸)のあらゆる範囲の外科的切除を指す。本明細書において、結腸切除術には、右半結腸切除術、左半結腸切除術、拡張型半結腸切除術、横断結腸切除術、S状結腸切除術、直腸S状結腸切除術、ハルトマン手術、「ダブルバレル」またはミクリッツ人工肛門、総結腸切除術(レーン手術とも呼ばれる)、直腸結腸全切除術および結腸亜全摘術などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、フレーズ「結腸切除術に対して待機的」は、医師および外科医の評価に基づいて非緊急結腸切除の処置を受けることを選択できる対象者を指す。結腸切除術に待機的な対象者は、(潰瘍性大腸炎のための)利用可能な治療に抵抗性の患者または(潰瘍性大腸炎のための)利用可能な治療に不耐性であり得るが、これらに限定されない。これは、急性の病気や怪我を抱え、すぐに医師の診察を必要とする対象者に対する急性介入である緊急の結腸切除術とは異なる。このフレーズには、結腸切除術に選出された対象者も含まれる。
【0097】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」は、複数の連結された個々のヌクレオシド単位から形成されるポリヌクレオシドを指す。かかるオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNAまたはcDNA、プラスミド、ベクター、または細菌DNAを含む既存の核酸源から得ることができるが、好ましくは合成法によって産生される。ヌクレオシド残基としては、多数の既知のヌクレオシド間結合のいずれかによって互いに結合することができる。かかるヌクレオシド間結合としては、限定されないが、天然のヌクレオシド間ホスホジエステル結合、またはホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、アルキルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、シロキサン、カーボネート、カルボアルコキシ、アセトアミデート、カルバメート、モルホリノ、ボラノ、チオエーテル、架橋ホスホルアミデート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロチオエートおよびスルホンヌクレオシド間結合など、これらに限定されないが、実際の修飾ヌクレオシド間結合が挙げられる。また用語「オリゴヌクレオチド」は、1つ以上の立体特異的ヌクレオシド間結合(例えば、(Rp)-または(Sp)-ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、またはホスホトリエステル結合)を有するポリヌクレオシドを包含する。本明細書で使用する場合、用語「オリゴヌクレオチド」および「ジヌクレオチド」は、結合がリン酸基を含むかどうかにかかわらず、任意のかかるヌクレオシド間結合を有するポリヌクレオシドおよびジヌクレオシドを含むことを明確に意図している。特定の好ましい実施形態では、これらのヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、またはホスホロジチオエート結合、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0098】
また用語「オリゴヌクレオチド」は、限定されないが、プロテイン基、親油性基、挿入剤、ジアミン、葉酸、コレステロールおよびアダマンタンなどのさらなる置換基を有するポリヌクレオシドも包含する。用語「オリゴヌクレオチド」は、限定されないが、ペプチド核酸(PNA)、リン酸基を持つペプチド核酸(PHONA)、ロックされた核酸(LNA)、モルホリノ骨格オリゴヌクレオチド、およびアルキルリンカーまたはアミノリンカーを含む骨格セクションを有するオリゴヌクレオチドなどのポリマーを含むいかなる他の核酸塩基も包含する。アルキルリンカーは、分岐または非分岐、置換または非置換、およびキラル的に純粋なまたはラセミ混合物であってもよい。
【0099】
本発明のオリゴヌクレオチドとしては、天然に存在するヌクレオシド、修飾ヌクレオシド、またはそれらの混合物を挙げることができる。本明細書で使用される用語「修飾ヌクレオシド」は、修飾複素環式塩基、修飾糖部分、またはそれらの組み合わせを含むヌクレオシドである。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオシドは、本明細書に記載されるように、非天然ピリミジンまたはプリンヌクレオシドである。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、2’-置換リボヌクレオシド、アラビノヌクレオシドまたは2’-デオキシ-2’-置換アラビノシドである。
【0100】
本明細書で使用される場合、用語「ハイブリッドオリゴヌクレオチド」は、1つよりも多いタイプのヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドである。
【0101】
本明細書において、用語「オリゴヌクレオチド」には、ハイブリッドおよびキメラオリゴヌクレオチドが含まれる。「キメラオリゴヌクレオチド」は、その配列構造内に1つよりも多いタイプのヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドである。かかるキメラオリゴヌクレオチドの好ましい一例は、ホスホロチオエート、ホスホジエステルまたはホスホロジチオエート領域およびアルキルホスホネートまたはアルキルホスホノチオエート結合(US5635377およびUS5366878)などの非イオン結合を含むキメラオリゴヌクレオチドである。
【0102】
本明細書において、用語「オリゴヌクレオチド」には、環状化変異体および環状オリゴヌクレオチドも含まれる。
【0103】
好ましくは、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの天然に存在するホスホジエステル、または1つの修飾ホスホロチオエート、またはホスホロジチオエートヌクレオシド間結合を含むが、好ましくは、限定されないが、メチルホスホネート、メチルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホチオトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、トリエステルプロドラッグ、スルホン、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール(formacetal)、N-メチルヒドロキシルアミン、2’OMe(2’位のオキシメチル基)、カーボネート、カルバメート、モルホリノ、ボラノホスホネート、ホスホルアミデートなどの連結または実際の骨格修飾を含み、特に第一級アミノ-ホスホルアミデート、N3ホスホルアミデートおよびN5ホスホルアミデート、および立体特異的結合(例、(Rp)-または(Sp)-ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、またはホスホトリエステル結合)も想定される。
【0104】
ヌクレオシドの糖部分は、天然に存在しない糖部分であり得る。本明細書において、「天然に存在する糖部分」は、例えば、リボースおよび2’-デオキシリボースなどの、核酸の一部として天然に存在する糖部分であり、「天然に存在しない糖部分」は、核酸の一部として天然には存在しないが、オリゴヌクレオチドの骨格に使用できる任意の糖である。例えばヘキソースであるがこれに限定されない。アラビノースおよびアラビノース誘導体は、好ましい糖部分の例である。
【0105】
修飾または置換されたオリゴヌクレオチドは、例えば、細胞取り込みの強化、核酸標的に対する親和性の強化およびヌクレアーゼの存在下での安定性の向上などの望ましい特性のため、天然の形態よりもしばしば好まれる。オリゴヌクレオチドは通常、10を超え100までまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドで構成されるが、約8から約40の間が好ましく、約8から約20の間が最も好ましい。正確なサイズは、多くの要因に依存し、次にオリゴヌクレオチドの最終的な機能または用途に依存する。オリゴヌクレオチドは、化学合成、DNA複製、逆転写、またはそれらの組み合わせなどの任意の方法で生成してもよい。
【0106】
本発明で使用するためのオリゴヌクレオチドは、配列
5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3'(配列番号2)を含む。典型的には、少なくとも1つのCGジヌクレオチドはメチル化されていない。
【0107】
典型的には、前記オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオチドは、骨格修飾を有する。典型的には、前記オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオチドはリン酸骨格修飾を有する。骨格修飾は、典型的にはホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾である。
【0108】
ホスホロチオエート結合は、配列中、例えば、配列:
5'-G*G*A*ACAGTTCGTCCAT*G*G*C-3'(配列番号1)(ここでCGジヌクレオチドはメチル化されていない)中のアスタリスク(*)で示すことができる。
【0109】
好ましくは、前記オリゴヌクレオチドは配列
5'-G*G*A*ACAGTTCGTCCAT*G*G*C-3'(配列番号1)(ここでCGジヌクレオチドはメチル化されていない)、を有する。したがって、好ましくは、前記オリゴヌクレオチドはコビトリモドである。
【0110】
したがって、本発明は、好ましくは、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される活動性潰瘍性大腸炎の治療に使用するためのコビトリモドを提供し、ここでコビトリモドの本明細書で定義される個々の用量を、少なくとも2回の別々の機会に対象者に投与し、前記別々の機会は3週間離れている。
【0111】
本発明の療法において、400mgから600mgの前記オリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドの個々の用量を投与する。典型的には、オリゴヌクレオチドの同じ投与量を各個々の用量/投与で投与するが、異なる投与量も使用され得る。
【0112】
通常、350mgを超える前記オリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドの個々の用量を投与する。例えば、典型的には、350mgを超える、例えば351から650mgの前記オリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドの個々の用量を投与する。
【0113】
典型的には、前記オリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドを425mgから575mg、好ましくは450mgから550mg、より好ましくは460から540、さらにより好ましくは470から530、さらにより好ましくは480から520、さらにより好ましくは490から510、さらにより好ましくは495から505、さらにより好ましくは499から501mgの各用量/投与で投与する。
【0114】
好ましくは、約500mgの前記オリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドを投与する。したがって、約500mgの前記オリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドを少なくとも2回の機会のそれぞれで投与する。
【0115】
活性薬剤の投与量の文脈において、本明細書で使用される「約」は、+/-10%、典型的には+/-5%、好ましくは+/-1%を意味する。
【0116】
より好ましくは、500mgの前記オリゴヌクレオチド、好ましくはコビトリモドを投与する。
【0117】
本発明の療法において、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量(本明細書で特定される量)は、少なくとも2回の別々の機会に患者に投与され、前記別々の機会は3週間離れている。これは、3週間離れている特定の用量/投与の間に患者が追加のオリゴヌクレオチドを受けないことを意味する。3週間離れている特定の用量/投与の間の3週間の長さのウインドウでは、患者は本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドを受けないが、潰瘍性大腸炎の治療のための1つ以上の追加の治療剤を受けてもよい。
【0118】
前記オリゴヌクレオチドの用量を患者に2回の機会よりも多く投与する場合には、その時典型的には、それぞれの機会は前の機会の3週間後である。典型的には、前記オリゴヌクレオチドの(本明細書で特定される量の)用量は、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10回の別々の機会に患者に投与され、各機会は前の機会の3週間後である。典型的には、上に定義のように患者が寛解するまで、前記オリゴヌクレオチドの用量が患者に投与される。いくつかの実施形態において、個々の用量は、2回の別々の機会のみ対象者に投与され、別々の機会は3週間離れている。
【0119】
少なくとも2回の別々の機会での投与への言及は、前記別々の機会が3週間離れている場合、寛解を導入するための単一の治療計画を指すことを理解すべきである。したがって、本発明による一連の治療に続いて、オリゴヌクレオチドによるさらなる治療は、将来、例えば寛解後の活動性疾患状態への再燃後、に除外されない。
【0120】
患者が2回用量のみを受けるという文脈では、最初の用量は0日目に送達され、2回目の用量はその3週間後に送達される。患者が3回の用量を受けるという文脈では、最初の用量は0日目に送達され、2回目の用量はその3週間後に送達され、3回目の用量はさらにその3週間後、すなわち0日目から6週間後に送達される。
【0121】
本明細書で使用する場合、用語「3週間離れている」は、特定の実施形態において、正確に21日間離れた用量の投与を意味する、すなわち、最初の用量が0日目に投与され、さらなる用量が21日目に投与される。しかしながら、これからのわずかな変形が依然として本発明の範囲内であることは理解されるであろう。かかる小さな変形は、例えば患者の病気または薬物の入手不能のために避けられないかもしれない。したがって、本明細書で使用される場合、「3週間離れている」とは、14~28日離れている、典型的には18~24日離れている、あるいは19~23日離れている、または20~22日離れている投与を意味する。
【0122】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される潰瘍性大腸炎の治療に使用するための本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドを提供し、ここで、前記オリゴヌクレオチドの本明細書で定義される量の個々の用量は、少なくとも2回、例えば2回別々の機会に患者に投与され、前記別々の機会は18~24日離れて、19~23日離れて、または20~22日離れている。
【0123】
以下でより詳細に説明するように、本発明における使用のための薬剤は、適応症のための単独療法治療として、または適応症のための補助療法として他の薬剤(単数または複数)と一緒に投与してもよい。補助(または「アドオン(add-on)」)療法の場合、本発明で使用する薬剤は、他の薬剤(単数または複数)と同時に、別々に、または連続して、例えば固定用量の組み合わせまたは別々の用量で投与してもよい。
【0124】
本明細書で使用される場合、用語「アドオン」は、現在の療法または薬物計画を中断することなく、現在の療法または薬物計画に加えて前記オリゴヌクレオチドを投与することを指す。
【0125】
したがって、オリゴヌクレオチドは、単独療法として、または潰瘍性大腸炎の治療のための1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて投与してもよい。典型的には、オリゴヌクレオチドは、単独療法として、または抗炎症剤、免疫調節薬、抗TNF療法薬、または潰瘍性大腸炎を治療するための他の適切な薬剤から選択される1つ以上の潰瘍性大腸炎の治療のための追加の治療剤と組み合わせて投与してもよい。
【0126】
前記オリゴヌクレオチドと組み合わせて使用するのに適したかかる薬物の例としては、GCSまたは誘導体;プレドニゾロン、デコルチン、抗TNFまたは誘導体;インフリキシマブならびにそのバイオシミラーおよび誘導体、アダリムマブならびにそのバイオシミラーおよび誘導体、ゴリムマブならびにそのバイオシミラーおよび誘導体、抗インテグリンまたは誘導体;ベドリズマブならびにそのバイオシミラーおよび誘導体、天然IFN-β、チオプリンまたは誘導体;アザチオプリン、6-メルカプトプリン、5-ASA、スルファサラジン、メトトレキサート、シクロスポリン、並びにそれらの同等物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
典型的には、前記オリゴヌクレオチドを受ける対象者は、GCS、デコルチン、5-ASA、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、スルファサラジン、メトトレキサート、プレドニゾロンおよびそれらの同等物または誘導体から選択される1つ以上の他の薬剤も受ける。
【0128】
好ましくは、前記オリゴヌクレオチドを受ける対象者は、GCS、5-ASA、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、スルファサラジンおよびメトトレキサートから選択される1つ以上の他の薬物も受ける。
【0129】
より好ましくは、前記オリゴヌクレオチドを受ける対象者は、経口GCS、経口5-ASA、経口MMXブデソニド、アザチオプリン、6-メルカプトプリンおよび経口メトトレキサートから選択される1つ以上の他の薬物も受ける。
【0130】
いくつかの実施形態では、前記オリゴヌクレオチドを受ける対象者は、例えばコルチコステロイドおよびグルココルチコステロイドなどの1つ以上のステロイド薬も受ける。
【0131】
本発明の目的のために、用語「と組み合わせて」および「アドオン」は、同じ患者の同じ疾患を治療する過程を意味し、オリゴヌクレオチドおよび1つ以上の追加の治療剤を同時投与、および数ヶ月までの時間的に間隔をあけるなど任意の順序で投与することを含む。
【0132】
典型的には、前記オリゴヌクレオチドは、粘膜への局所など、局所的に投与される。
【0133】
典型的には、前記オリゴヌクレオチドは結腸内投与される。結腸内投与は、典型的には、直腸で行われる。したがって、好ましくは、前記オリゴヌクレオチドは直腸投与される。結腸内投与は、典型的には、浣腸またはカテーテルを使用して行われる。結腸内投与としては、直腸浣腸による投与を含んでもよい。結腸内投与は、例えば、結腸内視鏡生検チャネルを通して挿入されたスプレーカテーテルまたは他の適切な医療機器の補助を用いて結腸内視鏡検査中に局所的に行われてもよい。
【0134】
好ましくは、オリゴヌクレオチドは、直腸浣腸により結腸内投与される。直腸浣腸は、典型的には、対象者による自己投与に適している。このように、オリゴヌクレオチドは、医療従事者の存在なしに対象者の家でのオリゴヌクレオチドの投与を可能にし、クリニックや病院へ行き来することなく投与しうる。さらにこれにより内視鏡検査中のスプレーカテーテル装置などのより複雑で高価な機器の使用を回避する。
【0135】
好ましくは、オリゴヌクレオチドは、対象者により直腸に自己投与される。例えば、オリゴヌクレオチドは、対象者により直腸浣腸により自己投与されてもよい。したがって典型的には局所投与は対象者による自己投与に適した浣腸を介してなされる。
【0136】
好ましくは、対象者は前記投与の前に結腸洗浄を受けていない。したがって、本明細書に記載のあらゆる対象者に対しても本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのあらゆる量に対しても、典型的には対象者は前記投与の前に結腸洗浄を受けていない。
【0137】
本明細書で使用する場合、「結腸洗浄を受けていない」対象者への言及は、オリゴヌクレオチドで治療した結腸内の糞便物質の量を減少させるために、オリゴヌクレオチドの投与前の時間において結腸洗浄を受けていない対象者を定義することを意図する。したがって、典型的には、対象者は、オリゴヌクレオチドによる治療の1時間前、典型的にはオリゴヌクレオチドによる治療の4時間前、好ましくはオリゴヌクレオチドによる治療の8時間前、より好ましくはオリゴヌクレオチドによる治療の12時間前、より好ましくはオリゴヌクレオチドによる治療の24時間前、最も好ましくはオリゴヌクレオチドによる治療の48時間前には結腸洗浄を受けていない。
【0138】
典型的には、前記結腸洗浄は、当該技術分野で公知の任意の方法、例えば下剤の投与によって実施することができる。
【0139】
典型的には、前記対象者は、管腔の糞便物質を有する。典型的には、前記対象者は、オリゴヌクレオチドで治療される結腸上皮細胞を被覆する、またはその近傍にある糞便物質を有する。前記対象者は、オリゴヌクレオチドで治療される結腸上皮細胞と直接接触していない管腔内に糞便物質を有する場合がある。前記対象者は、オリゴヌクレオチドで治療される結腸上皮細胞を被覆する、またはその近傍にある管腔内の糞便物質、およびオリゴヌクレオチドで治療される結腸上皮細胞と直接接触していない管腔内の糞便物質とを有していてもよい。より好ましくは、前記糞便物質の量は、結腸洗浄を受けたことのない患者において予想される通常の量である。
【0140】
好ましくは、前記局所投与は、患者による自己投与に適している浣腸を介して実施される。典型的には、浣腸は、直腸への挿入を可能にするように構成された細長い先端を有する。典型的には、前記先端は、長さ4から15cm、典型的には長さ4から10cm、好ましくは長さ5から6cmである。したがって、典型的には、コビトリモドは、長さ4から15cm、好ましくは長さ4から10cmの細長い浣腸の先端のみを直腸内に挿入することを含む方法を介して投与される。
【0141】
前記オリゴヌクレオチドは、下行結腸の上部または結腸の横断領域に送達されてもよい;しかし適していれば他の領域も可能である。消化管の他の領域への局所投与も可能である。
【0142】
まだこの態様の別の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドは、限定されないが、吸入、鼻腔内、非経口、経口、皮内、皮下、膣および直腸投与などの任意の適切な投与経路によって投与することができる。さらに、特定の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドの全身投与を使用してもよい。
【0143】
オリゴヌクレオチドは、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドを1つ以上の医薬上許容される担体とともに含む医薬組成物の形態で投与してもよい。本明細書で使用する場合、用語「担体」は、任意の、賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、水、安定剤、可溶化剤、脂質または医薬製剤で使用するための当技術分野で周知の他の材料を包含する。担体の特性は、特定の適用の投与経路に依存することは理解されるであろう。
【0144】
本明細書で使用する場合、用語「医薬上許容される」は、免疫調節オリゴヌクレオチドの有効性を妨げず、細胞、細胞培養、組織、器官、または生体などの生体系と適合する材料を指す。好ましくは、生体系は、脊椎動物などの生物である。
【0145】
典型的には、組成物は液体担体中のオリゴヌクレオチドの溶液である。
【0146】
典型的には、担体は水、好ましくは滅菌水である。したがって、典型的には、組成物は、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドおよび水を含む。
【0147】
好ましくは、担体は水であり、オリゴヌクレオチド(組成物の形態で)は、例えば直腸浣腸として結腸内に投与される。
【0148】
医薬組成物中のオリゴヌクレオチドの濃度は、投与されるオリゴヌクレオチドの投与量などいくつかの要因に応じて変化する。溶液である組成物中のオリゴヌクレオチドの典型的な濃度は、1mg/mlから20mg/ml、好ましくは5から15mg/ml、好ましくは8mg/mlから12mg/ml、より好ましくは約10mg/mlである。
【0149】
好ましくは、本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される潰瘍性大腸炎の治療に使用するためのコビトリモドを提供し、約500mgのコビトリモドの個々の用量を2回のみの別々の機会に患者に投与し、前記別々の機会は3週間離れている、コビトリモドを提供する。
【0150】
あるいは、本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される潰瘍性大腸炎の治療に使用するためのコビトリモドを提供し、約500mgのコビトリモドの個々の用量を対象者が寛解になるまで、典型的には、本明細書で定義される指標によって決定される寛解まで、2回以上の、3週間離れている別々の機会に患者に投与するコビトリモドを提供する。
【0151】
より好ましくは、本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される活動性潰瘍性大腸炎の治療で使用するためのコビトリモドであって、約500mgのコビトリモドの個々の用量を2回のみの別々の機会に患者に投与され、前記別々の機会は3週間離れており、コビトリモドはコビトリモドおよび水を含む医薬組成物の形態で投与するコビトリモドを提供する。
【0152】
例えば、本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される活動性潰瘍性大腸炎の治療で使用するためのコビトリモドであって、約500mgのコビトリモドの個々の用量を2回以上の、3週間離れている別々の機会に患者に投与し、結腸内または直腸に投与されるコビトリモドを提供する。好ましくは、本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される活動性潰瘍性大腸炎の治療で使用するためのコビトリモドであって、約500mgのコビトリモドの個々の用量を2回以上の、3週間離れている別々の機会に患者に投与し、対象者により直腸に自己投与されるコビトリモドを提供する。例えば、本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される慢性活動性潰瘍性大腸炎の治療で使用するためのコビトリモドであって、約500mgのコビトリモドの個々の用量を2回以上の、3週間離れている別々の機会に患者に投与し、対象者により直腸浣腸で自己投与されるコビトリモドを提供する。
【0153】
より好ましくは、本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される活動性潰瘍性大腸炎の治療で使用するためのコビトリモドであって、約500mgのコビトリモドの個々の用量を2回のみ別々の機会に患者に投与し、前記別々の機会は3週間離れており、結腸内または直腸に投与されるコビトリモドを提供する。例えば、本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される活動性潰瘍性大腸炎の治療で使用するためのコビトリモドであって、約500mgのコビトリモドの個々の用量を2回のみ別々の機会に患者に投与し、前記別々の機会は3週間離れており、対象者により直腸に自己投与されるコビトリモドを提供する。例えば、本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される慢性活動性潰瘍性大腸炎の治療で使用するためのコビトリモドであって、約500mgのコビトリモドの個々の用量を2回のみの別々の機会に患者に投与し、前記別々の機会は3週間離れており、対象者により直腸浣腸で自己投与されるコビトリモドを提供する。
【0154】
より好ましくは、本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される活動性潰瘍性大腸炎の治療で使用するためのコビトリモドであって、約500mgのコビトリモドの個々の用量を2回のみ別々の機会に患者に投与し、前記別々の機会は3週間離れており、コビトリモドおよび水を含む医薬組成物の形態で結腸内または直腸に投与されるコビトリモドを提供する。
【0155】
さらにより好ましくは、本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される慢性活動性潰瘍性大腸炎の治療で使用するためのコビトリモドであって、約500mgのコビトリモドの個々の用量を2回のみ別々の機会に患者に投与し、前記別々の機会は3週間離れており、コビトリモドおよび水を含む医薬組成物の形態で結腸内または直腸に投与されるコビトリモドを提供する。
【0156】
また本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される炎症性腸疾患の治療で使用するための、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドを1つ以上の医薬上許容される担体と一緒に含む医薬組成物であって、前記組成物の個々の投与は、少なくとも2回別々の機会に3週間離して対象者に投与し、組成物の各投与は、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドの量を送達する医薬組成物を提供する。
【0157】
上記定義される使用のためのオリゴヌクレオチドの好ましい特徴は、使用のための組成物の好ましい特徴でもある。
【0158】
本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される炎症性腸疾患の治療で使用するための医薬の製造における、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドまたは本明細書で定義される医薬組成物の使用であって、前記オリゴヌクレオチドまたは組成物の個々の投与は、少なくとも2回の別々の機会に患者に投与され、前記別々の機会は3週間離れており、オリゴヌクレオチドまたは組成物の各投与は本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドの量を送達する使用も提供する。
【0159】
上記定義される使用のためのオリゴヌクレオチドの好ましい特徴は、オリゴヌクレオチドまたは組成物の使用の好ましい特徴でもある。
【0160】
本発明はまた、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドまたは本明細書で定義される組成物を本明細書で定義されるヒト対象者に投与することを含む、前記対象者の本明細書で定義される炎症性腸疾患を治療する方法であって、前記オリゴヌクレオチドまたは組成物の個々の投与は、少なくとも2回の別々の機会に患者に投与され、前記別々の機会は3週間離れており、オリゴヌクレオチドまたは組成物の各投与は、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドの量を送達する、方法を提供する。
【0161】
また本発明は、本明細書で定義されるヒト対象者の本明細書で定義される炎症性腸疾患を治療する方法を提供し、該方法は以下を含む:
(a)本明細書で定義される患者を選択すること;および
(b)前記患者に本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドまたは本明細書で定義される組成物を投与し、前記オリゴヌクレオチドまたは組成物の個々の投与は、少なくとも2回別々の機会に患者に投与され、別々の機会はそれぞれ3週間離れており、オリゴヌクレオチドまたは組成物の各投与は、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドの量を送達すること。
【0162】
上記定義される使用のためのオリゴヌクレオチドの好ましい特徴は、クレームされた方法の好ましい特徴でもある。
【0163】
維持療法
本発明は、患者の活動性潰瘍性大腸炎の再発の予防に使用するためのオリゴヌクレオチドも提供し、オリゴヌクレオチドは、配列5'-GGAACAGTTCGTCCATGGC-3' (配列番号2)を含む。オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載の配列番号2の任意のオリゴヌクレオチドであってもよい。好ましくは、前記オリゴヌクレオチドはコビトリモドである。
【0164】
したがって、オリゴヌクレオチドは、維持療法として使用するためのものであってもよい。本発明のこの態様の文脈では、活動性潰瘍性大腸炎の再発を防止するという言及は、疾患の活動期の再発を予防すること、すなわち、患者を寛解に維持し、維持療法を提供することを指すことが意図される。したがって、本発明は、潰瘍性大腸炎の活動期の再発または該活動期への再燃を予防するための、本明細書で定義されるオリゴヌクレオチドの使用に関する。本明細書の上記のオリゴヌクレオチドは、活動性潰瘍性大腸炎に関連する症状の再発または再燃を予防するための維持療法として、および/または患者の状態を改善するために使用することができる。
【0165】
患者は、本明細書に記載されるあらゆる患者または対象者でもよい。例えば、患者は、本明細書に記載されるあらゆるタイプの潰瘍性大腸炎を患っていてもよい。典型的には、対象者は、左側潰瘍性大腸炎、すなわち、直腸S状結腸炎を含む遠位結腸炎と診断されている。
【0166】
典型的には、患者は以前に活動性潰瘍性大腸炎の治療を受けており、例えば、患者は以前に活動性潰瘍性大腸炎の治療のための1つ以上の治療剤を受けていてもよい。1つ以上の治療剤は、本明細書に記載される配列番号2のオリゴヌクレオチドを含んでもよい。したがって、患者は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドを受けたことがあり、ここで、前記オリゴヌクレオチドの400mgから600mgの個々の用量が、少なくとも2回の別々の機会に対象者に投与され、前記別々の機会は、患者を寛解に導くために(すなわち、活動性潰瘍性大腸炎を治療するために)3週間離れている。1つ以上の治療剤は、本明細書に記載されるように、潰瘍性大腸炎を治療するために使用される任意の他の治療剤を含んでもよい。
【0167】
典型的には、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量は、それらの個々の用量の間に定期的に患者に投与される。個々の用量の間隔は、1週間から12ヶ月間であってもよく、例えば、個々の用量の間隔は、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、12週間、6ヶ月間または12ヶ月間である。好ましくは、個々の用量の間隔は3週間である。
【0168】
個々の用量は、前記オリゴヌクレオチドの10mgから600mgの用量である。例えば、個々の用量は、前記オリゴヌクレオチドの150mgから350mgであってよい。例えば、個々の用量は、前記オリゴヌクレオチドの約250mgであってもよい。個々の用量は、前記オリゴヌクレオチドの350から600mgであってもよく、好ましくは前記オリゴヌクレオチドの400から600mgである。例えば、個々の用量は、前記オリゴヌクレオチドの425mgから575mg、450mgから550mg、460から540、470から530、480から520、好ましくは490から510、より好ましくは495から505、さらにより好ましくは499から501mgであってもよい。典型的には、個々の用量は、前記オリゴヌクレオチドの約500mgであり得る。
【0169】
患者を寛解に維持するためには、より長い期間にわたってオリゴヌクレオチドを繰り返し投与することが必要である場合がある。上記の投与計画、すなわち、一定の間隔で患者に前記オリゴヌクレオチドの個々の用量を投与する計画は、継続的な維持療法を提供するような時間にわたって継続される。潰瘍性大腸炎が治癒できない慢性状態であることを考慮すると、これは、実際には、患者が一般に、長期間、典型的には少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも1年または2年間、例えば少なくとも5年または10年間、本明細書に記載の計画を受けることを意味する。実際には、一部の患者は、必要な限り(例えば医師によって決定される)または無期限に、本明細書に記載の計画を投与される必要がある場合がある。したがって、患者は、少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも1年または2年間、より好ましくは少なくとも5年または10年間、あるいは無期限に、定期的に個々の用量を投与され得る。
【0170】
患者は、定期的に前記オリゴヌクレオチドの複数用量を受けることができ、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量は150と350mの間であり、それらの個々の用量の間隔は1週間、2週間、3週間または4週間である。したがって、本発明の好ましい態様において、患者は、定期的に前記オリゴヌクレオチドの複数用量を受け、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量は約250mgであり、それらの個々の用量の間隔は3週間である。これらの計画は、典型的には少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも1年または2年間、例えば少なくとも5年または10年間、あるいは無期限で継続される。
【0171】
患者は、定期的に前記オリゴヌクレオチドの複数用量を受けることができ、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量は400と600mgの間であり、それらの個々の用量の間隔は1週間、2週間、3週間または4週間であるが、3週間が好ましい。本発明の別の好ましい態様において、患者は、定期的に前記オリゴヌクレオチドの複数用量を受け、前記オリゴヌクレオチドの個々の用量は約500mgであり、それらの個々の用量の間隔は3週間である。これらの計画は、典型的には少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも1年または2年間、例えば少なくとも5年または10年間、あるいは無期限で継続される。
【0172】
上記の投与計画において、前記オリゴヌクレオチドの(本明細書で規定される量の)個々の用量は、特定の数週で間隔をあけられた複数の機会で患者に投与される。これは、患者が、特定の期間によって分けられた特定の用量/投与の間に、追加のオリゴヌクレオチドを受けないことを意味する。
【0173】
オリゴヌクレオチドは、単独療法として使用するためのものであってもよい。あるいは、患者は、活動性潰瘍性大腸炎の再発を予防するための1つ以上の追加の治療剤を受けることができる。追加の治療剤は、潰瘍性大腸炎の治療に用いられる本明細書に記載の任意の治療剤であり得る。例えば、患者は、活動性潰瘍性大腸炎の再発を予防するために、1つ以上の追加の抗炎症剤を受けることができる。したがって、オリゴヌクレオチドは、抗炎症剤、免疫調節薬、抗インテグリン療法剤、TNF-α阻害剤、免疫抑制剤、JAK阻害剤または潰瘍性大腸炎の治療に適した他の薬剤または潰瘍性大腸炎の治療に適した他の薬剤から選ばれる活動性潰瘍性大腸炎の再発防止のための1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて投与され得る。前記オリゴヌクレオチドと組み合わせて使用するのに適したかかる薬剤の例としては、限定されないが、アミノサリチル酸(5-ASA[メサラミンとしても知られている]、スルファサラジン、オルサラジンおよびバルサラジド)、GCS (プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾンおよびブデソニドなど)、アザチオプリン(AZA)、6-メルカプトプリン(6-MP)、タクロリムス、メトトレキサート、シクロスポリン、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、エタナーセプト (ENBREL(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、セルトリズマブ(CIMZIA(登録商標))、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))、ウステキヌマブ(STELARA(登録商標))、ベドリズマブ(ENTYVIO(登録商標))、SMAD7 アンチセンスオリゴヌクレオチド(Mongersen)、天然 IFN-β、デコルチン、トファシチニブ(XELJANZ(登録商標))、エトロリズマブ、オザニモド、SHP647、フィルゴチニブ、ミリキズマブ、アプレミラスト(OTEZLA(登録商標))、エストラシモド(estrasimod)、AJM300、ウパダシチニブ、リサンキズマブ、BI655130、PF-06700841、PF-06651600およびIMU-83ならびにそれらの同等物が挙げられる。
【0174】
本発明の目的のために、用語「と組み合わせて」および「アドオン」は、同じ患者の同じ疾患を治療する過程を意味し、オリゴヌクレオチドおよび1つ以上の追加の治療剤を同時投与、および数ヶ月までの時間的に間隔をあけるなど任意の順序で投与することを含む。
【0175】
オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載される任意の投与経路を介して投与され得る。典型的には、前記オリゴヌクレオチドは、粘膜への局所的な投与など、局所的に投与される。 典型的には、前記オリゴヌクレオチドは、結腸内投与される。 結腸内投与は、典型的には、直腸で行われる。結腸内投与は、典型的には、浣腸またはカテーテルを使用して行われる。結腸内投与は、好ましくは、浣腸による(すなわち、直腸浣腸による)投与を含む。 典型的には、直腸浣腸によって投与されるオリゴヌクレオチド、好ましくは、オリゴヌクレオチドは、直腸浣腸によって自己投与される。
【0176】
好ましくは、本発明のこの態様のために、対象者は、前記投与の前に結腸洗浄を受けていない。
【0177】
以下の非限定的な実施例は本発明を説明する。
【実施例
【0178】
参考例1:最適な投与頻度を示す臨床試験結果
無作為化二重盲検プラセボ対照試験において、中等度から重度の活動性潰瘍性大腸炎患者131名を、ベースラインおよび4週目での下部GI内視鏡検査の間に局所投与されるコビトリモド/カッパプロクト(Kappaproct)(30mg)またはプラセボの2回の単回用量を受けるように無作為した。
【0179】
治療群およびプラセボ群の患者は、週ごとの便中の最大血液量(なし、少量、多量)、週ごとの排便回数(18回未満、18~35回、36~60回、61回以上)、および、毎日の排便回数(1回未満、1~1.99回、2~2.99回、3~3.99回、4~4.99回、5~5.99回、6~6.99回、7~7.99回、8回以上)を、電子日誌(e-diary)を用いて12週間モニターした。
【0180】
結果を集計し、プラセボ群に対する治療群の治療差分(treatment delta)を算出した。これらの結果から、初回投与から3週間後に特に高い治療差分があることがわかる。
【0181】
治療群およびプラセボ群の結果を以下の図に示す。
【0182】
図1は、血便=ゼロ(7日間の患者報告結果の最大)を報告する治療群およびプラセボ群の週ごとの割合を示す。
【0183】
図2は、1週間の排便回数が18回未満(7日間の患者報告結果の合計)を報告する治療群およびプラセボ群の週ごとの割合を示す。
【0184】
図3は、1週間の排便回数が35回未満(7日間の患者報告結果の合計)を報告する治療群およびプラセボ群の週ごとの割合を示す。
【0185】
図4は、1日の排便回数が3回未満(7日間の患者報告結果の1日の平均)を報告する治療群およびプラセボ群の週ごとの割合を示す。
【0186】
図5は、1日の排便回数が4回未満(7日間の患者報告結果の1日の平均)を報告する治療群およびプラセボ群の週ごとの割合を示す。
【0187】
図6は、1日の排便回数が5回未満(1日の7日間の患者報告結果の平均)を報告する治療群およびプラセボ群の週ごとの割合を示す。
【0188】
本試験で評価された様々な臨床結果に対する治療差分は、以下の表に示されている。
【0189】
【表4】
【0190】
【表5】
【0191】
【表6】
【0192】
【表7】
【0193】
参考例2-臨床試験研究
無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、確立された方法に従って、中等度から重度の活動性潰瘍性大腸炎患者における局所コビトリモドの有効性と安全性を評価する。
【0194】
方法:以下のものを含む当該分野の標準的組み入れ基準に従って、男性と女性が試験のために選択される:
【0195】
1.年齢18歳以上の男性または女性
2.UCの確定診断、診断から最低限3か月以上
3.修正メイヨースコア(内視鏡サブスコアのグレード1での脆弱性を除く)6から12、スクリーニング来院1b(-7日から-10日-スクリーニング来院)に行われた内視鏡検査の中央読影によって評価された内視鏡サブスコア2以上、および他の個々のサブスコア1未満はない、によって決定される中等度から重度の活動性の左側UC(疾患は、肛門縁から15cm以上、脾彎曲部を超えない範囲に広がる)
4.現在経口5-ASA/SPの使用または経口5-ASA/SP使用の履歴
5.現在のGCSの使用、またはGCS依存症、抵抗性、もしくは不耐性の履歴(早期の副作用によるGCS治療中止など(GCS基準の1つのみを満たす必要がある。欧州クローン病および大腸炎組織(ECCO)ガイドライン上の定義参照)
6.次の薬剤の少なくとも1つに対する不十分な奏効、奏効の喪失、または不耐性の提示:
●免疫調節薬、例えば、シクロスポリン、メトトレキサート、AZA/6-MP、タクロリムス
○たとえば、経口AZA(1.5mg/kg以上)または6-MP(0.75mg/kg以上)の少なくとも1つの8週間計画あるいは不耐性によって促された低用量またはチオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)欠損での以前の治療にもかかわらず、持続性活動性疾患の徴候と症状、あるいは
○たとえば、少なくとも1つの免疫調節薬に対する以前の不耐性(限定されないが、吐き気/嘔吐、腹痛、膵炎、肝機能検査(LFT)異常、リンパ球減少症、TPMT遺伝子突然変異、感染症など)
●TNF-α阻害剤および/または抗インテグリン:
○例えば:
■インフリキシマブ5mg/kg(静脈内(IV))または
■ゴリムマブ200/100mg(皮下(SC))または
■アダリムマブ160/80mg(SC)または
■ベドリズマブ300mg(IV)
の少なくとも2週間間隔で2用量(または現在のラベルに従って推奨される用量)での少なくとも1つの導入計画による以前の治療にもかかわらず、持続性活動性疾患の徴候と症状:あるいは
○不耐性の履歴(限定されないが、注入に関連する反応、脱髄、うっ血性心不全、感染症など)
以前の臨床的ベネフィットに続く上記薬剤のいずれかを使用した維持投薬中の症状の再発(二次的失敗)[臨床的ベネフィットにもかかわらず中止は適格ではない]
7.研究中に以下のUC薬の治療用量の投与を許可:
a)経口GCS療法(プレドニゾン20mg以下または同等/日)、ただし用量が来院1a前の2週間(-14日目)安定な場合
b)経口MMXブデソニド療法(9mg/日)、来院1aの少なくとも8週間前に開始される
c)経口5-ASA/SP化合物、ただし用量が来院1aの2週間前から安定しており、来院1aの少なくとも8週間前に開始されている場合
d)AZA/6-MP、ただし、用量は来院1bの8週間前から安定しており、来院1aの少なくとも3か月前に開始されている場合
8.治療を理解する能力、すべての研究要件を順守する意思、およびインフォームドコンセントを提供する能力
【0196】
以下のものを含む当該分野の既知の除外基準に従って、患者は試験から除外される場合がある:
【0197】
1.次のような鑑別診断の疑い;クローン腸炎、虚血性大腸炎、放射線大腸炎、不確定性大腸炎、感染性大腸炎、憩室疾患、関連大腸炎、顕微鏡的大腸炎、巨大偽ポリポーシスまたは非通過性狭窄
2.急性劇症UCおよび/または全身毒性の徴候
3.直腸に限られたUC(肛門縁から15cm未満に広がる疾患)
4.以下を除く悪性腫瘍の履歴:
・治療(治癒)された基底細胞または扁平上皮内癌
・スクリーニング来院1aの前5年以内に再発の証拠もなく治療(治癒)された子宮頸部上皮内腫瘍または子宮頸部上皮内癌
5.研究者の意見では、プロトコルおよびプロトコル手順を遵守する患者の可能性に影響を与える、あるいは研究結果を混乱させる、または患者の安全性を損なう臨床的に重大な障害の履歴または存在
6.シクロスポリン、メトトレキサート、タクロリムス、TNF-α阻害剤、抗インテグリンまたは同様の免疫抑制剤および登録時の免疫調節薬による併用治療。かかる薬剤による以前の治療は、来院1aの少なくとも8週間前に中止されているか、測定不可能な血清濃度レベルでなければならない
7.来院1b前の2週間以内の直腸GCS、5-ASA/SPまたはタクロリムスによる治療
8.来院1aの2週間以内の抗生物質または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による長期治療(抗生物質およびNSAIDの時々の使用に対する1つの短期治療計画は許可される)
9.重篤な活動性感染
10.クロストリジウム・ディフィシル便検査陽性などの胃腸感染症
11.現在、非経口栄養または血液の輸血を受けている
12.授乳中の女性、またはスクリーニング期間中に血清妊娠検査陽性の女性
13.研究期間中、信頼できる避妊法を使用しない出産の可能性のある女性(信頼できる方法は、バリア保護、ホルモン避妊、子宮内器具または禁欲)
14.治験療法と一緒に別の臨床研究への同時参加あるいは登録前の実験製品の最後の治療から5半減期内かつ少なくとも30日以内の治験療法の先の使用
15.コビトリモドへの以前の暴露
【0198】
試験に選ばれた患者は、下記に設定された研究アームに従って、コビトリモドまたはプラセボを含む治療シーケンスに無作為化される。コビトリモドまたはプラセボは自己投与に適した直腸浣腸を介して結腸に局所投与された。COLLECT研究と異なり、浣腸投与の前に結腸が清浄であることを確認するための特別な工程はとらなかった。
【0199】
研究アーム:
- 0および3週目に2回のコビトリモド31mg用量(1週および2週目にプラセボ);
- 0および3週目に2回のコビトリモド125mg用量(1週および2週目にプラセボ);
- 0および3週目に2回のコビトリモド250mg用量(1週および2週目にプラセボ);
- 0、1、2、3週目に4回のコビトリモド125mg用量。
【0200】
主要評価項目は以下のように設定された:
- 以下の3つの基準:i) 直腸出血0、ii) 排便回数0または1(ベースラインから少なくとも1ポイント減少)、iii) 内視鏡検査スコア0または1(脆弱性を除く)の全てを満足する修正メイヨーサブスコアにより定義される、6週目に臨床的寛解を示す患者の割合。
【0201】
副次的な評価項目は以下のとおりである:
・4または6週目に、メイヨーサブスコア、i) 直腸出血0、ii) 排便回数0または1(ベースラインから少なくとも1ポイント減少)で定義される症状の寛解が誘発された患者の割合
・4または6週目にメイヨーサブスコア、直腸出血0で定義される直腸出血がなかった患者の割合
・4または6週目にメイヨーサブスコア排便回数0または1(ベースラインから少なくとも1ポイント減少)で定義される排便回数が正常または改善した患者の割合
・6週目に修正メイヨー内視鏡サブスコア0または1で定義されるの内視鏡的寛解
・6週目に臨床的寛解またはベースラインからの3ポイントおよび30%以上の減少として定義される臨床的奏効を示す患者の割合
・6週目にナンシー組織学的指標で定義される組織学的寛解を示す患者の割合
・6週目にナンシー組織学的指標スコアで定義される組織学的奏効を示した患者の割合
・排便の切迫性スコアが減少した患者の割合
・0週目と比較した1、2、3および6週目の便中カルプロテクチンの平均変化量
・0週目と比較した6週目の炎症性腸疾患質問票(IBDQ)の各サブドメインの平均変化量
【0202】
結果
【0203】
【表8】
【0204】
結論
中等症から重症の潰瘍性大腸炎を患う患者に対して、コビトリモド250mgを3週間間隔で2回の用量で治療することで、プラセボと比較して6週目に高い割合で臨床的寛解に至る。また、コビトリモド250mgの2回の用量を受けた患者の6週目での寛解患者の割合は、他の投与計画(2×31mg、2×125mgおよび4×125mg)の寛解患者の割合よりも高かった。特に、コビトリモド250mgの2回の用量を受けた寛解患者の割合は、コビトリモド125mgの4回の用量を受けた寛解患者の割合より高かった。これは、有効成分の同じ総量を、より高い用量を低回数で投与することにより、改善された臨床結果を提供することを示すことにおいて、驚くべき結果である。
【0205】
また、驚くべきことに、結果は、結腸および/または結腸上皮細胞から糞便物質を除去することなく臨床的有効性を得ることができることが実証された。さらに、自己投与に適した浣腸器からの投与により、臨床的有効性を達成することができる。
【0206】
実施例1
本研究では、2x250mgの用量に加え、2x500mgの用量も評価する。コビトリモドは、薬を多くの目的とする標的細胞と密接に接触するように配置する予め充填された浣腸により直腸投与される。
【0207】
潜在的なリスクとベネフィット
コビトリモドは、直腸投与される治療抵抗性のUC患者において研究されている。治療標的群は、従来の薬剤による以前の治療で十分な奏効が得られなかった慢性活動性左側UCの患者である。臨床研究の結果は、コビトリモドはこれらの患者において寛解を誘導することができることを示した。
【0208】
齧歯類およびカニクイザルでの非臨床安全性研究は、コビトリモドの忍容性が良好であり、全身または局所毒性のエビデンスは見いだせなかったことを示している。コビトリモドを用いた5つのプラセボ対照試験の安全性評価では、重大な毒性は示されていない。コビトリモドの投与は簡単で、服薬コンプライアンスは優秀であると報告されている。全体として、コビトリモドの忍容性は良好であった。
【0209】
コビトリモドに関する総合的なデータ、および類似のオリゴヌクレオチドに関する広範な臨床経験は、したがって、中等度から重度の活動性左側UC患者に対して提案されたプロトコルに沿って投与した場合の肯定的ベネフィットリスク評価を支持する。コビトリモドの既知および予想されるベネフィットおよびリスク、ならびに合理的に予想される有害事象についてのより詳細な情報は、研究者のパンフレットに見出されうる。
【0210】
研究目的
主要な客観的導入研究
中等度から重度の活動性左側潰瘍性大腸炎(UC)の参加者において、臨床的寛解導入におけるコビトリモド治療の有効性をプラセボと比較して評価する。
【0211】
副次的客観的導入研究
・コビトリモド250mgおよびコビトリモド500mgのプラセボに対する最も効果的かつ臨床的に適切な用量と安全性に対するバランスを探索する
・コビトリモドの安全性および忍容性を評価する
・臨床症状および内視鏡的改善におけるコビトリモド治療の有効性を評価する
・その他の評価項目において、プラセボと比較したコビトリモド治療の有効性を評価する
・健康関連の生活の質(QOL)および健康経済を評価する
【0212】
導入研究
導入研究は、中等度から重度の活動性左側UCで、従来または生物学的治療法では十分な奏効を示さないまたは忍容性がない参加者を標的とする。研究は2部(1aおよび1b)からなり、第1部の目的は、コビトリモド250mgおよび500mgとプラセボとの間で、臨床的に適切かつ最も有効な用量を探索することである。
【0213】
十分な数の参加者(~150)が無作為化され、主要評価項目の適格なデータが得られた後、中間解析が行われ、「勝利(winning)」用量が評価される。どの用量が最も有効であるかが決定された後、勝利用量が残りの参加者の無作為化に使用される。「敗北(losing)」用量を受けた参加者は、全体的な安全性評価に含まれる。
【0214】
最初の導入研究では、450名の適格な参加者は、コビトリモド250mgもしくは500mgまたはプラセボのいずれかの直腸用量を受けるかを1:1:1の割り付けで無作為に割り当てられる。年齢が少なくとも18歳、3要素メイヨースコア5~9、内視鏡的サブスコア2以上、他の個別サブスコア1未満はない活動性左側UC患者は登録に適格である。
【0215】
2つの導入研究における無作為化は、下記の参加者のカテゴリーで層別化されるだろう:グルココルチコステロイド(GCS)治療の併用(あり/なし)ならびに生物学的製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、ベドリズマブ、ウステキヌマブ)およびJAK 阻害剤 (トファシチニブ)により以前に治療(あり/なし)。
【0216】
研究治療は、浣腸を用いて直腸投与される。
【0217】
導入研究において、2回のスクリーニング来院がある。最初のスクリーニング来院1aでは、他の研究手順を行う前に、書面によるインフォームドコンセントを取得する。参加者には参加者識別番号が割り当てられ、登録手続きが開始される。2回目のスクリーニング来院1bでは、完全な大腸内視鏡検査が実施される。導入研究のための来院は、-14日目、-5-7日目、0、3、6週間目に実施される。参加者は、導入後研究(post-induction studies)を自己投与で継続する場合、参加者が適切に研究薬を投与できるように、研究スタッフの監督の下、クリニックで研究薬を自己投与する。
【0218】
GCS、5-ASA、AZA/6-MPなど、すべてのUC特有の内科的治療は、導入研究終了(6週目)まで安定した用量で維持されなければならない。
【0219】
研究評価基準
メイヨーのサブスコアである血便と排便回数などの評価項目は、電子日誌データを用いて導き出される。
【0220】
導入研究1および2-主要有効性評価項目導入研究1および2
・6週目に臨床的寛解を得た参加者の割合(3要素メイヨースコア、i)直腸出血0、ii)排便回数0または1(ベースライン(0週目)から少なくとも1ポイント減少)、およびiii)内視鏡スコア0または1によって定義される)
【0221】
主な副次的評価項目導入研究1および2
・6週目に内視鏡的改善を示す参加者の割合
・6週目に症候性寛解を示す参加者の割合
【0222】
副次的評価項目導入1および2
・6週目に臨床的奏効を示す参加者の割合
・6週目に組織学的改善を示す参加者の割合
・6週目に排便回数が正常またはベースラインから1ポイント以上の減少を示す参加者の割合
・6週目に直腸出血が存在しない参加者の割合
・6週目に内視鏡的改善と組織学的改善の複合を示す参加者の割合
・ベースライン(0週目)と比較した6週目の排便回数の平均変化量
・6週目で切迫性の改善を示す参加者の割合
・ベースライン(0週目)と比較した6週目の炎症性腸疾患質問票(IBDQ)の総スコアの平均変化量
・ベースライン(0週目)と比較した6週目のln変換便中カルプロテクチンの平均変化量
【0223】
探索的評価項目導入1および2
・6週目で便中カルプロテクチン値が250mg/kg以下を示した参加者の割合
・6週目でCRPが5mg/L以下を示した参加者の割合
・6週目で内視鏡的寛解を示した参加者の割合
・6週目で組織学的寛解を示した参加者の割合
・6週目で組織学的奏効を示した参加者の割合
・6週目で内視鏡的寛解と組織学的寛解の複合を示した参加者の割合
・4要素メイヨースコア(4-component Mayo score)に基づき、6週目で臨床的寛解を示した参加者の割合
・4要素メイヨースコアに基づき、6週目で臨床的奏効を示した参加者の割合
・6週目で炎症性腸疾患質問票(IBDQ)の総スコアが閾値170を超えた参加者の割合
・6週目の炎症性腸疾患質問票(IBDQ)の総スコアがベースライン(0週目)と比較して16ポイントを超えて増加した参加者の割合
・2および4週目に症候性寛解を示した参加者の割合
・IBDQサブスコア
・EQ-5D-5L
・ベースライン(0週目)と比較した6週目のln変換CRP値の平均変化量
【0224】
安全性
・有害事象(AE)発生率
・重篤な有害事象(SAE)の発生率
・バイタルサイン
・身体検査
・検査所見
【0225】
研究集団
特定の参加者が本研究に参加するのに適しているかどうかを決定する際には、関連するすべての医学的および非医学的条件が考慮されるべきである。参加者の適格性は、研究への参加の前に、研究者の研究チームの適切な資格を有するメンバーによって検討され、文書化されるべきである。内視鏡的適格性およびPRO2 基準の適格性は、最終的な無作為化が行われる前に中央で承認され、研究者に通知される。参加者が参加/除外基準を満たさない場合、参加者が、適格であれば、後日、再選別されることを検討することができる。
【0226】
組み入れ基準導入研究1および2
参加者は、研究において無作為化されるためには以下のすべての組み入れ基準に合致しなければならない:
1.年齢が18歳以上の男性または女性
2.UCの確定診断、診断から最低時間が来院1aの少なくとも3ヶ月前である
3.3要素メイヨースコアが5から9(内視鏡検査の中央読影によって評価された内視鏡サブスコアが2以上(S状部または下行部)、ならびに電子日誌により評価された排便回数および直腸出血サブスコアがそれぞれ1以上)により決定された中等度から重度の活動性左側UC(疾患は、肛門縁から15cm以上、脾彎曲部を超えない範囲に広がる)
4.以下の治療のうち少なくとも1つに失敗したことがあるか、または忍容性でない:
a.経口コルチコステロイド薬
b.アザチオプリンまたは6-メルカプトプリン(6-MP)
c.抗TNF療法:インフリキシマブまたはアダリムマブ
5.研究中に以下のUC薬の療法用量を受けることが許可される:
a.経口GCS療法(20mg以下のプレドニゾンまたは同等物/日)、ただし用量が来院1b前の2週間安定な場合
b.経口MMXブデソニド療法(9mg/日)、来院1bの少なくとも8週間前に開始される
c.経口5-ASA/SP化合物、ただし用量が来院1aの2週間前から安定しており、来院1bの少なくとも8週間前に開始されている場合
d.AZA/6-MP、ただし、用量は来院1bの8週間前から安定しており、来院1bの少なくとも3か月前に開始されている場合
6.治療を理解する能力、すべての研究要件を順守する意思、およびインフォームドコンセントを提供する能力
【0227】
除外基準
以下のいずれかを呈する参加者は、研究において無作為化されるべきでない:
1.クローン腸炎、虚血性大腸炎、放射線大腸炎、不確定性大腸炎、感染性大腸炎、憩室疾患、関連大腸炎、顕微鏡的大腸炎、巨大偽ポリポーシスまたは非通過性狭窄などの鑑別診断の疑い
2.急性劇症UC、中毒性巨大結腸症および/または全身毒性の徴候
3.直腸に限られたUC(肛門縁から15cm未満に広がる疾患)
4.2つの異なるクラスの薬剤(抗TNF、抗インテグリン、抗IL12/23またはJAK阻害剤)の3つよりも多い先進治療(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、ベドリズマブ、ウステキヌマブまたはトファシチニブ)による治療が無効である
5.UCの治療で手術を受けたことがある
6.以下を除く悪性腫瘍の履歴:
・治療(治癒)された基底細胞または扁平上皮内癌
・最後の治療から5年以上治療(治癒)された
7.研究者の意見では、プロトコルおよびプロトコル手順を遵守するための参加者の可能性に影響を与える、あるいは、研究結果を混乱させる、または患者の安全性を損なう臨床的に重大な障害の履歴または存在
8.登録時のシクロスポリン、メトトレキサート、タクロリムス、近代/標的療法(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、ベドリズマブ、ウステキヌマブ、トファシチニブ)もしくは類似の免疫抑制剤および免疫調節薬による併用治療。
かかる薬剤による以前の治療は、来院1bの少なくとも12週間前に中止されているか、測定不可能な血清濃度レベルでなければならない。
来院1b前の2週間以内の直腸GCS、5-ASA/SPまたはタクロリムスによる治療
9.来院1b前の2週間以内の抗生物質または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による長期治療(抗生物質およびNSAIDの時々の使用および予防療法である低用量のNSAIDに対する1つの短期治療計画は許可される)
10.重篤な活動性感染(潜伏性または活動性の結核の履歴、過去または現在の結核の記録履歴、活動性の結核患者と同居または頻繁に密接な接触を持つ参加者、あるいは無作為化前の12週間に現行の規則に従って結核検査が陽性であった者。慢性ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、またはC型肝炎ウイルス(HCV)感染症を含む)
11.クロストリジウム・ディフィシル便検査陽性などの胃腸感染症
12.授乳中の女性、またはスクリーニング期間中に血清妊娠検査陽性の女性
13.研究期間中、効果の高い(失敗率1%未満)避妊法を使用しない出産の可能性のある女性。
14.治験療法と一緒に別の臨床研究への同時参加あるいは登録前の実験製品の最後の治療から5半減期内かつ少なくとも30日以内の治験療法の先の使用
15.コビトリモドへの以前の暴露
【0228】
無作為化および層別化
導入研究1の参加者は、最初に1:1:1の比率で3つの治療アームのひとつに無作為化される。中間解析および「勝利」用量を選択した後、1:1の比率で無作為化が行われる。無作為化は以下の要因で層別化される:GCS治療の併用(あり/なし)、ならびに「近代」/標的療法(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、ベドリズマブ、ウステキヌマブ)およびJAK阻害薬(トファシチニブ)による以前の治療(あり/なし)。コンピュータで作成された無作為化スケジュールを用いて、参加者を治療順序に割り当てる。治療割り当ては、双方向音声応答システム(IVRS)を通じて得られる。治療割り当てに関する情報は、安全に保管される。
【0229】
併用薬
参加者に処方され、研究中に服用したすべての薬は、eCRFに記録されなければならない。いかなる変更もeCRFに報告する必要がある。
【0230】
以下の併用UC薬が許可されている:
・経口GCS療法(20mg以下のプレドニゾンまたは同等物/日)、ただし用量が来院1b前の2週間安定であり、主要評価項目(6週目)まで安定を維持する必要がある場合
・経口MMXブデソニド療法(9mg/日)は、スクリーニング来院1bの少なくとも8週間前に開始され、主要評価項目(6週目)まで安定を維持する必要がある。参加者が寛解にある場合、漸減は、6週目の来院後に開始すべきであり、以下の推奨漸減スキームを参照。
・経口5-ASAおよび/またはSP化合物、ただし用量は来院1b前の2週間安定であり、来院1bの少なくとも8週間前に開始されている場合。安定用量は研究の終了まで(54週目)。
・AZA/6-MP、ただし用量は来院1b前の8週間は安定であり、来院1aの少なくとも3か月前に開始されている場合。安定用量は研究の終了まで(54週目)。
【0231】
禁止薬
研究期間中、以下の併用薬は禁止される:
・シクロスポリン
・メトトレキサート
・タクロリムスまたは類似の免疫抑制剤/免疫調節薬。
・インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、ベドリズマブおよびウステキヌマブなどの生物学的製剤
・JAK阻害剤
・抗IL23
これらの薬剤による前治療は、来院1bの少なくとも8週間前に中止しているか、血清濃度レベルが測定不能でなければならない。
【0232】
実施例2-デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎マウスモデル
材料および方法
マウス:Balb/cマウスは、Charles River Laboratories、Research Models and Services(Sulzfeld、ドイツ)から入手した。8週齢の雌Balb/cマウスを実験に使用し、動物福祉法に従って個別に換気されたケージで飼育した。水とえさは自由に与えた。
【0233】
DSS誘発大腸炎:2%または3%(w/v)デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を8週齢の雌Balb/cマウスの飲料水に10日間投与する。完全に未処置のマウスの追加の対照群も実験設定の一部であった。食物摂取と体重をモニターする。
【0234】
コビトリモドの直腸投与:マウスあたり1000μg、2000μgまたは4000μgのコビトリモドを2回(4日目と8日目)直腸投与した。マウスでの1000μgの用量は、ヒトでの250mgの用量にほぼ相当する(参照、「産業の手引き-成人健康ボランティアの治療薬の初期臨床試験における最大安全開始用量の推定(Guidance for Industry - Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Health Volunteers)」、2005年7月、医薬品評価および研究のための保健福祉省食品医薬品局管理センター(US Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research))。このマウスモデルで観察された結果は、2回の3週間離れている別々の機会に250mg、500mgおよび1000mgのコビトリモドの個々の用量を投与されたヒトで観察される効果の予測と見なすことができる。
【0235】
コビトリモドを含まないビヒクルを、対照群のマウス(プラセボ)に直腸に適用した。比較可能な実験条件を確保するために、実験を開始する前に、異なる処置グループのマウスをケージごとに無作為に混合した。
【0236】
各研究アームの詳細は以下に提供する:
ビヒクル/DSS 2%
ビヒクル/DSS 3%
コビトリモド A /DSS 2%
コビトリモド A /DSS 3%
コビトリモド B/DSS 2%
コビトリモド B/DSS 3%
コビトリモド C /DSS 2%
コビトリモド C /DSS 3%
コビトリモド C/ DSSなし
用量 A= 1000 μg (ヒト250 mgに相当)
用量 B= 2000 μg (ヒト500 mgに相当)
用量 C= 4000 μg (ヒト1000 mgに相当)
【0237】
DSS誘発大腸炎の評価:実験中以下のパラメータがモニターされる:
1)疾患活動性指標(DAI)スコア/グローバルスコア=体重減少、便の硬さおよび血便の合計スコア、(0、2、4、6、7、8、9および10日目)(疾患活動性指標(DAI)は、初期体重と比較した体重減少、便の硬さ、および便中の目に見える血液の合計スコアである。マウスあたりの最大スコアは12である)
2)臨床行動スコアリング(0、2、4、6、7、8、9および10日目)
3)体温測定(2回)
【0238】
【表9】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2023553336000001.app
【国際調査報告】