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特表2023-553344SSZ-91及びZSM-12を使用した触媒及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】SSZ-91及びZSM-12を使用した触媒及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/80 20060101AFI20231214BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20231214BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231214BHJP
   C10G 45/64 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B01J29/80 M
B01J37/00 D
B01J37/08
C10G45/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532182
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 US2021060313
(87)【国際公開番号】W WO2022115371
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】17/105,614
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イーファ
(72)【発明者】
【氏名】オジョ、アデオラ フローレンス
(72)【発明者】
【氏名】レイ、グワン - ダオ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BB04A
4G169BC08A
4G169BC10A
4G169BC20A
4G169BC43A
4G169BC57A
4G169BC60A
4G169BC61A
4G169BC65A
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4G169CC14
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4G169FB65
4G169FC04
4G169FC07
4G169FC08
4G169ZA12A
4G169ZA12B
4G169ZA16A
4G169ZA16B
4G169ZA23A
4G169ZA32A
4G169ZA32B
4G169ZC04
4G169ZD06
4G169ZF02A
4G169ZF02B
4G169ZF05A
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4G169ZF07A
4G169ZF07B
4H129CA07
4H129CA08
4H129CA09
4H129CA10
4H129CA13
4H129CA17
4H129DA20
4H129KA11
4H129KB03
4H129KC03X
4H129KC03Y
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4H129KC07X
4H129KC16X
4H129KC16Y
4H129KD06X
4H129KD25X
4H129KD26Y
4H129NA25
4H129NA32
4H129NA37
(57)【要約】
改良された水素化異性化触媒、及びSSZ-91モレキュラーシーブ及びZSM-12モレキュラーシーブを含む触媒を使用して基油生成物を製造する方法。触媒および方法は、一般に、ZSM-12モレキュラーシーブと組み合わせたSSZ-91モレキュラーシーブを含む触媒を使用して、触媒を炭化水素原料と接触させることによって脱ろう基油生成物を生成することを含む。この触媒及び方法は、流動点や曇点などの基油の低温特性を改善し、その他の有益な基油特性も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された曇点及び流動点を有する基油を含む脱ろう生成物を製造するのに有用な水素化異性化触媒であって、
SSZ-91モレキュラーシーブ及びZSM-12モレキュラーシーブを含む触媒組成物を含み、
前記ZSM-12モレキュラーシーブは、約1.0~15.0重量%の量で存在する、
前記水素化異性化触媒。
【請求項2】
前記SSZ-91モレキュラーシーブ及びZSM-12モレキュラーシーブが、マトリックス材料と組み合わされて基材を形成し、前記触媒が、周期律表の第6族~第10族及び第14族から選択される少なくとも1種の改質剤をさらに含み、場合により第2族金属をさらに含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記モレキュラーシーブSSZ-91は、ZSM-48型ゼオライト材料を含み、前記モレキュラーシーブは、
前記ZSM-48型材料全体の少なくとも70%のポリタイプ6と、
0~3.5重量パーセントの量のEUO型相と、
1~8の平均アスペクト比を有する微結晶を含む多結晶凝集形態と、
を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記SSZ-91モレキュラーシーブ及び/または前記ZSM-12モレキュラーシーブの酸化ケイ素対酸化アルミニウムのモル比が、40~220または50~220または40~200または50~140の範囲である、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記モレキュラーシーブSSZ-91は、
前記ZSM-48型材料全体の少なくとも80%若しくは90%のポリタイプ6、
0.1~2重量%のEU-1、
1~5若しくは1~3の平均アスペクト比を有する微結晶、
またはそれらの組み合わせ、
のうちの1つ以上を含む、請求項3に記載の触媒。
【請求項6】
前記改質剤の含有量は、0.01~5.0重量%若しくは0.01~2.0重量%、または0.1~2.0重量%(全触媒重量基準)である、請求項2に記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒が、前記改質剤としてPt、またはPtとPdとの組み合わせを0.01~1.0重量%の量で含み、または0.3~0.8重量%のPt、またはPtとPdとの組み合わせを含み、場合によりさらにMgを含む、請求項2に記載の触媒。
【請求項8】
前記マトリックス材料は、アルミナ、シリカ、セリア、チタニア、酸化タングステン、ジルコニア、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の触媒。
【請求項9】
前記触媒が、0.01~5.0重量%の前記改質剤、0~99重量%の前記マトリックス材料、及び0.1~99重量%の前記SSZ-91及びZSM-12モレキュラーシーブを含む、請求項2に記載の触媒。
【請求項10】
前記触媒が、0.1~99重量%の前記SSZ-91モレキュラーシーブ及び約1~15重量%の前記ZSM-12モレキュラーシーブ、または約1~12重量%の前記ZSM-12モレキュラーシーブを含む、請求項9に記載の触媒。
【請求項11】
前記生成物が基油生成物であるか、または基油生成物を製造するために使用され、少なくとも約109の粘度指数及び/または約-12℃または-15℃または-20℃以下の流動点若しくは曇点を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項12】
基油流動点及び/または曇点が低減された基油生成物を製造する方法であって、炭化水素原料を、水素異性化条件下で請求項1に記載の前記水素異性化触媒と接触させて、基油生成物を製造することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記炭化水素原料は、軽油、真空軽油、ロングレジデュー(long residue)、真空残渣、大気圧留出物、重質燃料、油、ろう及びパラフィン、使用済み油、脱アスファルト残渣または原油、熱または触媒転化方法から得られるチャージ(charge)、シェールオイル、サイクルオイル、動物及び植物由来の脂肪、油及びろう、石油及びスラックろう、またはそれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の前記触媒を使用すると、前記基油流動点及び/または前記基油曇点が、前記SSZ-91モレキュラーシーブを含むが前記ZSM-12モレキュラーシーブを除く触媒を使用する同じ方法と比較して低下する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記基油流動点及び/または前記基油曇点が、前記SSZ-91モレキュラーシーブを含むが前記ZSM-12モレキュラーシーブを除く触媒を使用する同じ方法と比較して、請求項1に記載の触媒を使用して少なくとも約1℃または3℃または5℃または10℃低下する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生成物が、少なくとも約109の粘度指数及び/または約-12℃若しくは-15℃若しくは-20℃以下の流動点若しくは曇点を有する基油生成物であるか、または基油生成物を作製するために使用される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記SSZ-91モレキュラーシーブ、ZSM-12モレキュラーシーブ、任意の添加されたマトリックス材料、及び押出可能なペーストを形成するのに十分な液体を一緒に混合することと、前記ペーストを押し出して押出物ベースを形成することと、第6族から第10族及び第14族から選択される少なくとも1つの改質剤を含有し、場合により周期律表の第2族金属をさらに含む金属含浸溶液を前記押出物ベースに含浸させて、金属充填押出物を形成することと、前記金属充填押出物を乾燥及び焼成の後処理条件に供することと、を含む、請求項1に記載の水素異性化触媒の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
前記SSZ-91モレキュラーシーブ、前記ZSM-12モレキュラーシーブ、任意の添加マトリックス材料及び前記液体が、約20~80℃で約0.5~30分間混合され、
前記押出物は約20~80℃で形成され、約90~150℃で0.5~8時間乾燥され、
前記押出物は、十分な空気流の存在下、260~649℃(500~1200°F)で0.1~10時間焼成され、
前記押出物は、約20~80℃の範囲の温度で0.1~10時間、前記押出物を少なくとも1つの改質剤を含有する前記金属含浸溶液と接触させることによって、改質剤が含浸され、
金属を充填した押出物は、約90~150℃で0.1~10時間乾燥され、十分な空気流の存在下、260~649℃(500~1200°F)で0.1~10時間焼成される、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月26日に出願された米国特許出願第17/105,614号に対する優先権の利益を主張し、同出願は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
SSZ-91モレキュラーシーブ及びZSM-12モレキュラーシーブを含む触媒を使用して炭化水素原料から基油を製造するための改善された熱安定性を有する水素化異性化触媒及び方法。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
炭化水素原料から基油を作製する水素異性化触媒脱ろう方法は、水素の存在下で脱ろう触媒システムを含む反応器に原料を導入することを含む。反応器内で、原料は、水素異性化脱ろう条件下で水素異性化触媒と接触し、異性化流をもたらす。水素異性化は、芳香族化合物及び残留窒素並びに硫黄を除去し、直鎖パラフィンを異性化して基油冷特性を改善する。基油生成物から微量のいずれの芳香族化合物、オレフィンを除去し、色などを改善するために、第2の反応器内で、異性化流を水素化仕上げ触媒とさらに接触させてもよい。水素化仕上げユニットは、アルミナ担体及び貴金属、典型的にはパラジウム、またはパラジウムと組み合わせた白金を含む水素化仕上げ触媒を含み得る。
【0004】
典型的な水素異性化触媒脱ろう方法において一般的に直面する課題は、とりわけ、1つ以上の生成物についての曇点、流動点、粘度及び/または粘度指数限界などの関連生成物仕様を満たしながら、生成物収率のよい生成物(複数可)を提供することである。また、芳香族化合物を飽和させ、芳香族化合物の含有量を減らすことにより、例えば色及び酸化安定性に対して、生成物の品位をさらに改善するための、例えば水素化仕上げ中のさらなるアップグレードを使用し得る。しかしながら、上流の水素化処理及び水素化分解方法での残留有機硫黄及び窒素の存在は、下流の方法及び最終基油生成物の品位に重大な影響を与える可能性がある。
【0005】
直鎖パラフィンの脱ろうは、水素異性化、分岐の再分配、二次水素異性化など、多くの水素転換反応を含む。連続した水素異性化反応は、分岐の再分配を伴う分岐度の増加をもたらす。分岐の増加は、一般に連鎖分解の可能性を高め、燃料収率の増加をもたらし、基油/潤滑油の収率を低下させる。したがって、水素異性化遷移種の形成を含むこのような反応を最小限に抑えることで、基油/潤滑油の収率を高めることができる。
【0006】
したがって、ろう分子を異性化し、望ましくない分解及び水素異性化反応を低減することによって改善された基油/潤滑油生成物特性を提供するために、基油/潤滑油生成のためのより堅牢な触媒が必要である。したがって、良好な基油/潤滑油生成物特性及び生成物収率も提供しながら、基油/潤滑油生成物を生成するための触媒、触媒系、及び方法に対する継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
発明の要約
本発明は、ろう含有炭化水素原料を、一般に改善された基油生成物の低温特性を有する基油または潤滑油を含む高級な生成物に変換するための水素異性化触媒及び方法に関する。この触媒及び方法は、SSZ-91モレキュラーシーブ及びZSM-12モレキュラーシーブを含む触媒組成物を含む触媒を使用する。触媒組成物は、適切な炭化水素供給原料を提供し、触媒を供給原料と接触させて生成物を提供し、続いて第1段階生成物を他の触媒組成物と接触させて第2段階生成物を提供することによって方法で使用される。水素異性化方法において、脂肪族非分岐パラフィン系炭化水素(n-パラフィン)がイソパラフィン及び環状種に転化することで、基油生成物の流動点及び曇点が原料に比べて低下される。SSZ-91とZSM-12モレキュラーシーブの組み合わせから形成された触媒は、単独でSSZ-91触媒を使用して生成された基油生成物と比較して、改善された基油/潤滑油生成物の低温特性を有する基油生成物を有利に提供することが分かった。場合によっては、完成した水素化異性化触媒は、重質原料の水素化処理やブライトストックの製造に特に適している。
【0008】
一態様において、本発明は、好適な炭化水素供給流の水素化処理により、基油、特に1つ以上の生成物品位の基油生成物を含む脱ろう生成物を製造するのに有用な水素異性化触媒及び方法に関する。必ずしもこれに限定されるわけではないが、本発明の目的の1つは、流動点や曇点などの基油生成物の低温特性を改善すると同時に、他の有益な基油生成物特性も提供することである。
【0009】
触媒組成物は一般に、SSZ-91モレキュラーシーブ及びZSM-12モレキュラーシーブを含む。マトリックス材料並びに周期律表の第6族~第10族及び第14族から選択される少なくとも1つの改質剤もまた、触媒組成物中に存在し得る。改質剤は、周期律表の第2族金属をさらに含んでもよい。
【0010】
水素異性化方法は、一般に、炭化水素原料を水素異性化条件下で水素異性化触媒と接触させて、基油生成物または生成物流を生成することを含む。また、供給原料を最初に触媒組成物と接触させて第1の生成物を提供し、続いて第1の生成物を、必要に応じて、例えば水素化仕上げ及び/または他の触媒系を含む1つまたは複数の他の触媒組成物と接触させて第2の生成物を提供することもできる。供給原料はまた、他の触媒系、例えば前処理触媒系または保護触媒系と最初に接触させた後、そのような系からの1つ以上の流れを水素化異性化触媒と接触させてもよい。水素化異性化触媒からの生成物は、それ自体が基油生成物であってもよく、または基油生成物を製造するために使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、この方法は、少なくとも約109の粘度指数及び/または約-12℃若しくは-15℃以下の流動点若しくは曇点を有する基油生成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な記述
本明細書では、1つ以上の態様の例示的な実施形態が示されているが、開示された方法は、任意の数の技法を用いて実施されてもよい。本開示は、本明細書に例示及び記載されているいずれの例示的な設計及び実施形態も含め、本明細書に例示されている例示的または具体的な実施形態、図面、及び技法に限定されるものではなく、添付の請求項の範囲及びその均等物の全範囲内で改変してよい。
【0012】
別段に示されていない限り、本開示には、下記の用語、専門用語、及び定義を適用する。本開示で用語が使用されているが、本明細書で具体的に定義されていない場合、その定義が本明細書で適用される他の開示または定義と矛盾せず、またはその定義が適用される請求項を不定または無効にしない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminology,2nd ed (1997)の定義が適用され得る。参照により本明細書に援用されるいずれかの文献によって定められているいずれかの定義または用途が、本明細書に定められている定義または用途と矛盾する限りにおいては、本明細書に定められている定義または用途が適用されると理解されたい。
【0013】
「API比重」とは、ASTM D4052-11によって決定される、水に対する石油原料または生成物の比重を指す。
【0014】
「粘度指数」(VI)は、ASTM D2270-10 (E2011)により決定される、潤滑油の温度依存性を表する。
【0015】
「真空軽油」(VGO)は、原油の真空蒸留際の副産物であり、基油にアップグレードするために水素化処理装置または芳香族抽出に送ることができる。VGOは一般に、沸点範囲分布が、0.101MPaで343℃(649°F)から593℃(1100°F)間の炭化水素で構成されている。
【0016】
「処理」、「処理された」、「アップグレードする」、「アップグレーディング」、及び「アップグレードされた」とは、油原料と併せて使用するときには、水素化処理が施されているか、若しくは水素化処理を施した原料油、または得られた材料若しくは粗生成物であって、その原料油の分子量が低下しているか、その原料油の沸点範囲が縮小しているか、アスファルテンの濃度が低下しているか、炭化水素遊離基の濃度が低下しているか、及び/または硫黄、窒素、酸素、ハロゲン化物、及び金属などの不純物の量が減少しているものを説明するものである。
【0017】
「水素化処理」とは、望ましくない不純物を除去し、及び/または炭素質原料を所望の生成物に転化する目的で、その炭素質原料を高めの温度及び圧力で、水素及び触媒と接触させる方法を指す。水素化処理方法の例としては、水素化分解、水素化処理、接触脱ろう、及び水素化仕上げが挙げられる。
【0018】
「水素化分解」とは、水素化及び脱水素に、炭化水素の分解/破砕を伴う方法、例えば、より重質な炭化水素をより軽質な炭化水素に転化すること、あるいは芳香族化合物及び/またはシクロパラフィン(ナフテン)を非環状分岐パラフィンに転化することを指す。
【0019】
「水素化処理」とは、典型的には水素化分解と併せて、硫黄及び/または窒素含有炭化水素原料を、硫黄及び/または窒素含有量が減少した炭化水素生成物に転化し、硫化水素及び/またはアンモニア(それぞれ)を副生成物として生成する方法を指す。水素の存在下で行われるそのような方法またはステップには、炭化水素原料の成分(例えば、不純物)の水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属化、及び/または水素化脱芳香族化、及び/または原料中の不飽和化合物の水素化が含まれる。水素化処理の種類及び反応条件に応じて、水素化処理方法の生成物は、例えば、粘度、粘度指数、飽和分含有率、低温特性、揮発性、及び減極性が改善され得る。「保護層」及び「保護床」という用語は、本明細書では同義的かつ互換的に使用され得、水素化処理触媒または水素化処理触媒層を指す。保護層は、炭化水素脱ろう用触媒システムの成分であってもよく、少なくとも1つの水素異性化触媒の上流に配置されてもよい。
【0020】
「接触脱ろう」または水素異性化とは、水素の存在下で触媒と接触させることにより、直鎖パラフィンをより分岐した対応物に異性化する方法を指す。
【0021】
「水素化仕上げ」とは、微量の芳香族化合物、オレフィン、着色体、及び溶媒を除去することにより、水素化仕上げ生成物の酸化安定性、UV安定性、及び外観を改善することを目的とした方法を指す。UV安定性とは、UV光及び酸素にさらされたときの試験対象の炭化水素の安定性を指す。紫外線及び空気への曝露時に視認可能であり、通常は凝集塊または曇りとして見られる沈殿物が形成されるか、または着色の進行が生じた場合に不安定性が示される。水素化仕上げについての一般的な説明は、米国特許第3,852,207号及び同第4,673,487号において見つけることが可能である。
【0022】
「水素(Hydrogen)」または「水素(hydrogen)」という用語は、水素自体及び/または水素源となる化合物若しくは複数の化合物を指す。
【0023】
「カットポイント」とは、所定の分離度に達する真沸点(TBP)曲線上の温度を指す。
【0024】
「流動点」とは、制御された条件下で油が流れ始める温度を指す。流動点は、例えばASTM D5950によって決定し得る。
【0025】
「曇点」とは、特定の条件下で油を冷却したときに、潤滑油基油試料がヘイズを発生し始める温度を指す。潤滑油基油の曇点は、その流動点と相補的である。曇点は、例えばASTM D5773によって決定され得る。
【0026】
「TBP」とは、ASTM D2887-13による模擬蒸留(SimDist)によって決定された含炭化水素原料または生成物の沸点を指す。
【0027】
「含炭化水素」、「炭化水素」、及び類似の用語は、炭素原子及び水素原子のみを含む化合物を指す。その炭化水素に特定の基が存在する場合、別の識別子を用いて、当該特定の基の存在を示すことが可能である(例えば、ハロゲン化炭化水素とは、当該炭化水素中の水素原子と等しい数で置き換えた1つ以上のハロゲン原子が存在することを示す)。
【0028】
「周期律表」という用語は、IUPAC Periodic Table of the Elements dated Jun.22,2007の版を指し、周期律表の族番号表示は、Chemical and Engineering News,63 (5),26-27 (1985)に記載されているとおりである。「第2族」とは、IUPACの第2族元素、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第6族」とは、IUPACの第6族元素、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)を指す。「第7族」とは、IUPACの第7族元素、例えば、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第8族」とは、IUPACの第8族元素、例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第9族」とは、IUPACの第9族元素、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第10族」とは、IUPACの第10族元素、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第14族」とは、IUPACの第14族元素、例えば、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。
【0029】
「担体」という用語は、特に、「触媒担体」という用語で使用する場合には、典型的には、表面積の大きい固体である従来の材料のうち、触媒材料を担持する材料を指す。担体材料は、不活性または触媒反応に関与することが可能であり、多孔性または非多孔性であり得る。典型的な触媒担体としては、様々な種類の炭素、アルミナ、シリカ、及びシリカ-アルミナ、例えば、非晶質シリカアルミネート、ゼオライト、アルミナ-ボリア、シリカ-アルミナ-マグネシア、シリカ-アルミナ-チタニア、並びにそれらに他のゼオライト及び他の複合酸化物を加えることによって得られる物質が挙げられる。
【0030】
「モレキュラーシーブ」とは、フレームワーク構造内に、細孔の均一な分子寸法を有しており、モレキュラーシーブの種類に応じて、ある特定の分子のみが、そのモレキュラーシーブの細孔構造に到達できる一方で、その他の分子が、例えば分子のサイズ及び/または反応性により排除されるようになっている物質を指す。「モレキュラーシーブ」及び「ゼオライト」という用語は、同義語であり、(a)中間体並びに(b)最終または標的モレキュラーシーブ、及び(1)直接合成または(2)結晶化後処理(二次修飾)によって生成されるモレキュラーシーブを含む。二次合成技術では、ヘテロ原子格子置換またはその他の技術により、中間材料から標的材料を合成できる。例えば、アルミノケイ酸塩は、中間体ホウケイ酸塩からBのAlへの結晶化後ヘテロ原子格子置換により合成することができる。このような技術は公知であり、例えば米国特許第6,790,433号に記載されている。ゼオライト、結晶性アルミノリン酸塩、及び結晶性シリコアルミノリン酸塩は、モレキュラーシーブの代表例である。
【0031】
本開示では、組成物、及び方法(method)または方法(process)が、各種の成分またはステップを「含む」という観点で説明されている場合が多いが、その組成物及び方法は、別段の記載のない限り、その各種の成分若しくはステップ「から本質的になって」もよいし、またはその各種の成分若しくはステップ「からなって」もよい。
【0032】
「a」、「an」、及び「the」という用語は、複数の選択肢、例えば、少なくとも1つを含むことを意図している。例えば、「遷移金属」または「アルカリ金属」の開示は、特に明記しない限り、遷移金属またはアルカリ金属の1つ、または2つ以上の混合物若しくは組み合わせを包含することを意味する。
【0033】
本明細書における詳細な説明及び特許請求の範囲内のいずれの数値も、示されている値が「約」または「およそ」によって修飾されており、当業者であれば予測するであろう、実験での誤差及び変動が考慮されている。
【0034】
一態様では、本発明は、基油/潤滑油を含む脱ロウ生成物を製造するのに有用な水素化異性化触媒系であり、触媒は、SSZ-91モレキュラーシーブ及びZSM-12モレキュラーシーブを含む触媒組成物を含む。触媒組成物は、炭化水素原料を最初に水素異性化触媒組成物と連続的に接触させて第1の生成物を提供し、続いて第1の生成物を他の触媒組成物(複数可)と接触させて第2の生成物を提供するか、または他の触媒組成物(複数可)と連続的に接触させ、続いてそのような他の触媒からの1つ以上の生成物流を水素異性化触媒と接触させることができるように、他の触媒と組み合わせて配置することができる。水素化異性化触媒組成物は、一般に、SSZ-91モレキュラーシーブ及びZSM-12モレキュラーシーブを、例えば、マトリックス(担体)材料並びに 周期律表の第6族~第10族及び第14族から選択される少なくとも1種の改質剤を含む他の成分と共に含む。改質剤は、周期律表の第2族金属をさらに含んでもよい。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、基油を含む脱ロウ生成物を製造するのに有用な水素異性化方法に関し、この方法は、水素異性化条件下で炭化水素原料を水素異性化触媒系と接触させて、基油生成物または生成物流を生成することを含む。上述したように、供給原料は、最初に水素化異性化触媒組成物と接触させて第1の生成物を提供し、続いて、必要に応じて第1の生成物を1つ以上の他の触媒組成物と接触させて第2の生成物を製造してもよく、または最初にそのような他の触媒組成物と接触させてもよい。必要に応じて、その後、そのような触媒組成物からの1つ以上の生成物流を水素化異性化触媒と接触させる。このような構成からの第1及び/または第2の生成物は、それ自体が基油生成物であってもよく、または基油生成物を製造するために使用されてもよい。
【0036】
水素異性化触媒及び方法で使用されるモレキュラーシーブSSZ-91は、例えば、米国特許第9,802,830号、同第9,920,260号、同第10,618,816号、及びWO2017/034823に記載されている。モレキュラーシーブSSZ-91は、一般に、ZSM-48型ゼオライト材料を含む。当該モレキュラーシーブは、ZSM-48型材料全体の少なくとも70%のポリタイプ6、0~3.5重量パーセントの量のEUO型相、及び平均アスペクト比が1~8の微結晶を含む多結晶集合体形態を有する。モレキュラーシーブSSZ-91の酸化ケイ素対酸化アルミニウムのモル比は、40~220または50~220または40~200の範囲であってよい。場合によっては、SSZ-91モレキュラーシーブは、全ZSM-48型材料の少なくとも70%のポリタイプ6、0~3.5%(重量基準)の間の量のEUO型相、及び1~8の平均アスペクト比を有する結晶子を含む多結晶凝集体形態を有し得る。いくつかの場合において、SSZ-91材料は、生成物に存在するZSM-48型材料全体の少なくとも90%がポリタイプ6で構成されている。ポリタイプ6の構造には、国際ゼオライト協会の構造委員会によって、骨格コード*MREが付与されている。「*MRE型モレキュラーシーブ」及び「EUO型モレキュラーシーブ」という用語には、Atlas of Zeolite Framework Types, eds. Ch. Baerlocher, L.B. Mccusker and D.H. Olson, Elsevier,6th revised edition, 2007及び国際ゼオライト協会のウェブサイト(http://www.iza-online.org)上のゼオライト構造のデータベースに記載されているように、国際ゼオライト協会の骨格に割り当てられている全てのモレキュラーシーブ及びそのアイソタイプが含まれる。
【0037】
前述の特許では、モレキュラーシーブSSZ-91、その作製方法、及びそれから形成される触媒に関する追加の詳細が提供される。
【0038】
有用なZSM-12モレキュラーシーブは特許及び技術文献から知られており、例えば米国特許第8,101,811号、第8,679,451号、第5,558,851号、第9,802,831号、第3,832,449号及び第4,391,785号等に記載されているように、水素化異性化触媒及び方法に使用することができる。ZSM-12モレキュラーシーブは、一般に、さまざまな触媒反応を含む多くの方法で有用な既知のMTWフレームワークモレキュラーシーブで、Clariant、Zeolyst、China Catalyst Corpなどの商業ソースから入手できる。場合によっては、ZSM-12モレキュラーシーブの酸化ケイ素対酸化アルミニウムのモル比は、40~220または50~220または40~200の範囲であり得る。
【0039】
触媒組成物のSSZ-91及びZSM-12モレキュラーシーブは、一般に、マトリックス材料と組み合わされて、基材を形成する。基材は、例えば、モレキュラーシーブをマトリックス材と組み合わせ、混合物を押出して成形押出物を形成し、続いて押出物の乾燥及び焼成によってベース押出物として形成することができる。触媒組成物はまた、典型的には、周期律表の第6族~第10族及び第14族から選択される少なくとも1つの改質剤をさらに含み、場合により第2族金属をさらに含む。改質剤は、改質剤化合物を含む含浸溶液の使用を通じて添加することができる。
【0040】
触媒は、アルミナ、シリカ、セリア、チタニア、酸化タングステン、ジルコニア、またはそれらの組み合わせから選択される追加のマトリックス材料をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、触媒組成物及び方法のためのアルミナはまた、参照により本明細書に組み込まれる2020年11月11日に出願された米国特許出願第17/095,010号に記載されている「HNPV」アルミナと略称される「高ナノ細孔容積」アルミナであってもよい。適切なアルミナは市販されており、例えば、Sasol社のCatapal(登録商標)アルミナ及びPural(登録商標)アルミナ、またはUOP社のVersal(登録商標)アルミナが挙げられる。一般に、アルミナは、触媒ベースのマトリックス材料として使用されることが知られている任意のアルミナであり得る。例えば、アルミナは、ベーマイト、バイヤライト、γ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ、δ-アルミナ、χ-アルミナ、またはそれらの混合物であり得る。
【0041】
適切な改質剤は、周期律表(IUPAC)の第6族~第10族及び第14族から選択される。好適な第6族の改質剤は、第6族元素、例えばクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)、並びにそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第7族の改質剤は、第7族元素、例えば、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第8族の改質剤は、第8族元素、例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第9族の改質剤は、第9族元素、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第10族の改質剤は、第10族元素、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第14族の改質剤は、第14族元素、例えば、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。また、任意の第2族の改質剤は、第2族元素、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含んで存在してもよい。
【0042】
改質剤は、有利には、1つ以上の第10族金属を含む。第10族金属は、例えば、白金、パラジウム、またはそれらの組み合わせであり得る。白金は、いくつかの態様において、別の第6族~第10族及び第14族の金属とともに、好適な第10族の金属である。これらに限定されるものではないが、第6族~第10族及び第14族の金属は、Pt、Pd、Ni、Re、Ru、Ir、Sn、またはそれらの組み合わせからさらに絞り込んで選択され得る。第1及び/または第2の触媒組成物中の第1の金属としてのPtと併せて、触媒組成物中の任意の第2の金属はまた、第6族~第10族及び第14族金属、例えばPd、Ni、Re、Ru、Ir、Sn、またはそれらの組み合わせからより狭く選択されてもよい。より具体的な例として、触媒は、第10族金属として、0.01~5.0重量%若しくは0.01~2.0重量%、または0.1~2.0重量%、より具体的には0.01~1.0重量%または0.3~0.8重量%のPtを含む。第6族~第10族及び第14族の金属として、Pd、Ni、Re、Ru、Ir、Sn、またはそれらの組み合わせから選択される任意の第2の金属は、0.01~5.0重量%若しくは0.01~2.0重量%、または0.1~2.0重量%、より具体的には0.01~1.0重量%及び0.01~1.5重量%の量で存在し得る。
【0043】
触媒組成物中の金属含有量は、有用な範囲にわたって変動されてもよく、例えば、触媒中の修飾金属の全含有量は、0.01~5.0重量%若しくは0.01~2.0重量%、または0.1~2.0重量%(全触媒重量基準)であり得る。いくつかの例において、触媒組成物は、修飾金属の1つとして、0.1~2.0重量%のPt及び第6族~第10族及び第14族から選択される0.01~1.5重量%の第2の金属、または0.3~1.0重量%のPt及び0.03~1.0重量%の第2の金属、または0.3~1.0重量%のPt及び0.03~0.8重量%の第2の金属を含む。いくつかの場合において、第6族~第10族及び第14族から選択される任意の第2の金属に対する第1の金属の第10族の比率は、5:1~1:5、または3:1~1:3、または1:1~1:2、または5:1~2:1、または5:1~3:1、または1:1~1:3、または1:1~1:4の範囲であり得る。より具体的な場合には、触媒組成物は、0.01~5.0重量%の修飾金属、1~99重量%のマトリックス材料、及び0.1~99重量%のSSZ-91及びZSM-12モレキュラーシーブを含む。場合によっては、ZSM-12モレキュラーシーブは、SSZ-95モレキュラーシーブの量と比較して、触媒組成物の少量成分として使用される。特に、ZSM-12の含有量は、約1重量%~約15重量%以下(全触媒重量基準)の範囲、より具体的には約1重量%~約12重量%の範囲であり、流動点及び曇点特性を改善(低下)させるのに有用であることがわかっている。場合によっては、約1重量%~約8重量%(触媒総重量基準)の範囲のZSM-12含有量が有利な低温特性を提供する。
【0044】
ベース押出物は、任意の好適な方法に従って作製し得る。例えば、ベース押出物は、複数の成分を一緒に混合し、十分に混合されたSSZ-91+ZSM-12マトリックス材料混合物を押出して、ベース押出物を形成することによって都合よく製造し得る。次に、押出物を乾燥及びか焼し、続いてベース押出物に任意の改質剤を充填する。好適な含浸技術を使用し、改質剤をベース押出物上に分散し得る。しかしながら、ベース押出物を作製する方法は、特定の方法条件または技術に従って特に限定されることを意図するものではない。
【0045】
これに限定されないが、例示的な方法条件には、SSZ-91モレキュラーシーブ、ZSM-12モレキュラーシーブ、任意の添加マトリックス材料、及び任意の添加液体を約20~80℃で約0.5~30分間混合する場合が含まれ得る。押出物は約20~80℃で形成され、約90~150℃で0.5~8時間乾燥される。押出物は、十分な空気流の存在下、260~649℃(500~1200°F)で0.1~10時間焼成される。約20~80℃の範囲の温度で0.1~10時間、押出物を少なくとも1つの改質剤を含有する金属含浸溶液と接触させることによって、押出物に改質剤を含浸させる。そして、金属を充填した押出物を約90~150℃で0.1~10時間乾燥し、十分な空気流の存在下、260~649℃(500~1200°F)で0.1~10時間焼成する。
【0046】
炭化水素原料は、一般に、様々な基油原料から選択されてもよく、有利には、軽油、真空軽油、ロングレジデュー(long residue)、真空残渣、大気圧留出物、重質燃料、油、ろう及びパラフィン、使用済み油、脱アスファルト残渣または原油、熱または触媒転化方法から得られるチャージ(charge)、シェールオイル、サイクルオイル、動物及び植物由来の脂肪、油及びろう、石油及びスラックろう、またはそれらの組み合わせを含む。炭化水素原料はまた、400~1300°F、または500~1100°F、または600~1050°Fの蒸留範囲の原料炭化水素留分を含んでもよく、及び/または炭化水素原料は、約3~30cStまたは約3.5~15cStの範囲でKV100(100℃での動粘度)を有する。
【0047】
場合によっては、この方法は、SSZ-91及びZSM-12触媒組成物がPt修飾金属、またはPtと別の改質剤との組み合わせを含む炭化水素原料として、真空軽油(VGO)などの軽質または重質中性基油原料に有利に使用され得る。
【0048】
生成物(複数可)または生成物流は、1つ以上の基油生成物の製造、例えば、約2~30cStの範囲でKV100を有する複数の品位の製造に使用され得る。いくつかの場合において、そのような基油生成物は、約-12℃、または-15℃、または-20℃以下の流動点を有し得る。
【0049】
水素化異性化触媒及び方法はまた、追加の方法ステップと組み合わせてもよく、またはシステム成分、例えば、炭化水素原料を水素化異性化触媒組成物と接触させる前に、原料を水素化処理触媒でさらに水素化処理条件に供してもよく、場合により、水素化処理触媒は、約0.1~1重量%のPt及び約0.2~1.5重量%のPdを含有する耐火性無機酸化物材料を含むガード層触媒を含む。
【0050】
本発明の方法及び水素化異性化触媒によってもたらされる利点の中には、SSZ-91モレキュラーシーブとZSM-12モレキュラーシーブの組み合わせを使用して製造される基油生成物の低温特性が、SSZ-91モレキュラーシーブのみを使用する同じ方法と比較して改善される。例えば、SSZ-91及びZSM-12モレキュラーシーブの組み合わせが触媒組成物に使用される場合、同じ方法における触媒組成物中のSSZ-91モレキュラーシーブのみの使用と比較して、基油流動点及び/または曇点は、少なくとも約1℃または3℃または5℃または10℃だけ著しく減少し得る。
【0051】
実際には、水素化脱ろうは主に、基油からろうを除去することによって基油の流動点を低下させるため、及び/または基油の曇点を低下させるために使用される。典型的には、脱ろうは、ろうを処理するための触媒方法を用い、脱ろう原料は、一般に、脱ろうの前にアップグレードされて粘度指数を増加させ、芳香族及びヘテロ原子含有量を減少させ、脱ろう原料中の低沸点成分の量を減少させる。いくつかの脱ろう触媒は、ろう分子を低分子量分子に分解することにより、ろう転換反応を完結する。他の脱ろう方法は、炭化水素原料に含まれるろうをろう異性化による方法に転換し、異性化されていない分子対応物よりも低い流動点を有する異性化分子を生成し得る。本明細書で使用される場合、異性化は、接触水素異性化条件下でろう分子の異性化に水素を使用する水素異性化方法を包含する。
【0052】
好適な水素化脱ろう条件は、一般に、使用される原料、使用される触媒、所望の収率、及び基油の所望の特性によって決まる。典型的な条件としては、500°F~775°F(260℃~413℃)の温度、15psig~3000psig(0.10MPa~20.68MPaゲージ)の圧力、0.25hr-1~20hr-1のLHSV、2000SCF/bbl~30,000SCF/bbl(356~5340m/m原料)の原料に対する水素の比率が挙げられる。一般に、水素は、生成物から分離され、異性化ゾーンへ再循環される。一般に、本発明の脱ろう方法は、水素の存在下で行われる。典型的には、炭化水素に対する水素の比率は、炭化水素1バレル当たり約2000~約10,000標準立方フィートHの範囲内であり、通常、炭化水素1バレル当たり約2500~約5000標準立方フィートHである。上記の条件は、水素化処理ゾーンの水素化処理条件、並びに第1及び第2の触媒の水素異性化条件に適用し得る。好適な脱ろう条件及び方法は、例えば、米国特許第5,135,638号、同第5,282,958号、及び同第7,282,134号に記載されている。
【0053】
触媒系及び方法は、一般に、SSZ-91及びZSM-12モレキュラーシーブを含む水素化異性化触媒組成物に関して記載されているが、層状触媒及び処理ステップを含む追加の触媒、例えば、水素化処理触媒(複数可)/ステップ、ガード層及び/または水素化仕上げ触媒(複数可)/ステップを含む追加の触媒が存在してもよいことを理解されたい。
【0054】

SSZ-91は米国特許第10,618,816号に従って合成され、ZSM-12は商業的供給源、例えばクラリアント、ゼオリスト、チャイナ触媒グループから提供された。SSZ-91は、米国特許第10,618,816号に従って合成され、アルミナは、SasolのCatapal(登録商標)アルミナ及びPural(登録商標)アルミナ、及びUOPのVersal(登録商標)アルミナとして提供された。モレキュラーシーブSSZ-91のアルミナに対するシリカの比率(SAR)は、120以下であった。
【0055】
例1-水素異性化触媒Aの作製
水素化異性化触媒A(比較例)を以下のように調製した:結晶子SSZ-91をSasol Catapal(登録商標)アルミナと複合化して、65重量%のSSZ-91ゼオライトを含む混合物を得た。混合物を押出し、乾燥及びか焼し、乾燥及びか焼した押出物を、白金を含む溶液に含浸させた。全体的な白金の充填量は0.6重量%であった。
【0056】
例2-水素異性化触媒Bの作製
触媒Aについて記載されるように水素化異性化触媒Bを調製して、64重量%のSSZ-91、1重量%のZSM-12及び35重量%のSasol Catapal(登録商標)アルミナを含有する混合物を得た。乾燥及び焼成した押出物に白金を含浸させ、全体の白金充填量を0.325重量%とした。
【0057】
例3-水素異性化触媒Cの作製
触媒Aについて記載されるように水素化異性化触媒Cを調製して、60重量%のSSZ-91、5重量%のZSM-12及び35重量%のSasol Catapal(登録商標)アルミナを含有する混合物を得た。乾燥及び焼成した押出物に白金を含浸させ、全体の白金充填量を0.325重量%とした。
【0058】
例4-触媒A及びBの水素異性化性能
触媒A、B及びCを使用して、表1に示す特性を有する中性真空軽油(VGO)水素化分解物原料を水素異性化した。
【表1】
【0059】
水素異性化反応は、ストレートスルーマイクロユニット固定床反応器(リサイクルなし)内で、反応器に供給される原料と水素のみを用いて実行された。実験は、全圧2100psigで実施した。供給原料を、触媒A、BまたはCの1つを含む水素化異性化反応器に、1.2hr-1の液体空間速度(LHSV)で通過させた。油に対する水素の比率は、約3000scfbであった。反応器の温度範囲は590~650°Fであり、触媒A、B及びCを使用した各実験はほぼ同じ反応器温度で行われた。潤滑油生成物は、蒸留部を通して燃料から分離された。流動点及び曇点の結果は、触媒A、B、及びCを使用して製造された基油生成物ごとに収集された。
【0060】
表2は、触媒組成と流動特性及び曇点低温特性をまとめたものである。
【表2】
【0061】
触媒A(SSZ-91のみ)と比較して、触媒Cは流動点や曇点を含む基油の低温特性を大幅に改善した。
【0062】
本発明の1つ以上の実施形態の上記の説明は、主に例示のためのものであり、変形形態を用いてよく、その上、その変形形態が、本発明の本質に組み込まれることは認識されている。本発明の範囲を判断する際には、下記の請求項を参照すべきである。
【0063】
米国特許の実施慣行の目的上、及び認められる場合には、その他の特許庁においては、本発明の上記の説明で引用したいずれの特許及び刊行物も、それらに含まれるいずれかの情報が、上記の開示内容と整合し及び/または上記の開示内容を補う限りにおいては、参照により、本明細書に援用される。
【国際調査報告】