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特表2023-553356再循環固体酸化物形電解セルシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】再循環固体酸化物形電解セルシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20231214BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20231214BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20231214BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20231214BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231214BHJP
   H01M 8/04082 20160101ALI20231214BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20231214BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/042
C25B1/23
C25B9/00 Z
C25B15/08 302
H01M8/04 J
H01M8/04 H
H01M8/04082
H01M8/0656
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023532269
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 FI2020050804
(87)【国際公開番号】W WO2022112642
(87)【国際公開日】2022-06-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513042506
【氏名又は名称】コンヴィオン オサケユキチュア
【氏名又は名称原語表記】CONVION OY
【住所又は居所原語表記】Tekniikantie 12,FI-02150 Espoo, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】オーストレーム,キム
(72)【発明者】
【氏名】ハカラ,トゥオマス
【テーマコード(参考)】
4K021
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AB25
4K021BA02
4K021CA09
4K021CA12
4K021CA15
4K021DC03
4K021DC15
5H127AA07
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA15
5H127BA28
5H127BA36
5H127BA58
5H127BB02
(57)【要約】
本発明の目的は再循環固体酸化物形電解セルシステムであり、セルは燃料側(100)、酸素リッチ側(102)及び該燃料側と該酸素リッチ側との間の電解質素子(104)を含む。システムは、各セルの燃料側(100)から排出されたガスの一部を再循環(109)させ、所望の再循環流量の再循環された流れを提供するように構成された少なくとも1つの超音速エジェクタ(120)であって、該エジェクタは少なくとも1つのノズル(122)を有する、1つの超音速エジェクタと、エジェクタ(120)のノズルに少なくとも1つの一次原料燃料流体を提供するための手段(124)とを含み、該ノズルは、流体が初期の高圧から低圧に広がるラバル流路を有し、エジェクタ(120)と、可能性のある漏出源とは、非爆発性反応物を搬送する構造(144)内に収容されて漏出及び爆発に対して安全な構造を形成し、当該システムは、少なくとも1つのフィードイン経路(124)及び排気経路のための入れ子配置であって、該配置は非爆発性反応物を搬送する構造(144)内で入れ子になっている、入れ子配置と、構造(144)内に配置され、燃料側(100)及び酸素リッチ側(102)の両方の流れに熱を提供するトリムヒータ(148)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再循環固体酸化物形電解セルシステムであって、セルは燃料側、酸素リッチ側及び該燃料側と該酸素リッチ側との間の電解質素子を含み、当該システムは、各セルの燃料側から排出されたガスの一部を再循環させ、所望の再循環流量の再循環された流れを提供するように構成された少なくとも1つの超音速エジェクタであって、該エジェクタは少なくとも1つのノズルを有する、1つの超音速エジェクタと、前記エジェクタのノズルに少なくとも1つの一次原料燃料流体を提供するための手段とを含み、該ノズルは、前記流体が初期の高圧から低圧に広がるラバル流路を有し、
前記エジェクタと、可能性のある漏出源とは、非爆発性反応物を搬送する構造内に収容されて漏出及び爆発に対して安全な構造を形成し、当該システムは、少なくとも1つのフィードイン経路及び排気経路のための入れ子配置であって、該配置は非爆発性反応物を搬送する前記構造内で入れ子になっている、入れ子配置と、前記構造内に配置され、前記燃料側及び前記酸素リッチ側の両方の流れに熱を提供するトリムヒータとを含む、再循環固体酸化物形電解セルシステム。
【請求項2】
前記システムは、前記燃料側から周囲への制御可能な二次放出経路を含む、請求項1に記載の再循環固体酸化物形電解セルシステム。
【請求項3】
前記システムは、蒸気供給によって駆動され、出口ガス界面からの逆流に水素リッチ流体を取り込む補助エジェクタを含む、請求項1に記載の再循環固体酸化物形電解セルシステム。
【請求項4】
前記システムは、利用可能な圧力レベルに応じて、一次供給経路及び補助供給経路のうちの少なくとも1つを介して燃料フィードを供給する手段を含む逆動作のために構成されている、請求項1に記載の再循環固体酸化物形電解セルシステム。
【請求項5】
動作点の変動に関わらず、ホットコアのために、共有空気フィード及び排気経路への共通レーリングを行うための手段を含む、請求項1に記載の再循環固体酸化物形電解セルシステム。
【請求項6】
高温フィードスルーを除去するために、密閉及び内部絶縁されたホットコアを含む、請求項1に記載の再循環固体酸化物形電解セルシステム。
【請求項7】
前記システムは、高圧に対応可能な圧力容器形状に適合するための低温及び気密性のホットコアの外殻を含む、請求項1に記載の再循環固体酸化物形電解セルシステム。
【請求項8】
前記システムは、セルの一部がSOECモードで動作可能に配置され、セルの他の部分がSOFCモードで動作可能に配置されたセルスタックを含む、請求項1に記載の再循環固体酸化物形電解セルシステム。
【請求項9】
生成ガスラインと平行に配置された外部再燃焼装置を含む、請求項1に記載の再循環固体酸化物形電解セルシステム。
【請求項10】
再循環固体酸化物形電解セルの方法であって、当該方法では、各セルの燃料側から排出されたガスの一部を再循環させ、所望の再循環流量の再循環された流れを提供するために超音速で噴出され、エジェクタのノズルに少なくとも1つの一次原料燃料流体を提供して、該流体が初期の高圧から低圧に広げられ、当該方法では、前記エジェクタと、可能性のある漏出源が非爆発性反応物を搬送する構造内に収容されて漏出及び爆発に対して安全な構造が形成され、フィードイン経路及び排気経路のうちの少なくとも1つは、前記構造内の入れ子配置に位置し、前記方法では、前記構造内で、燃料側及び酸素リッチ側の両方の流れに熱が提供される、再循環固体酸化物形電解セルの方法。
【請求項11】
前記方法では、前記燃料側から周囲へ二次放出経路に反応物が制御される、請求項10に記載の再循環固体酸化物形電解セルの方法。
【請求項12】
前記方法では、出口ガス界面からの逆流に水素リッチ流体を取り込むために蒸気供給によって駆動される、請求項10に記載の再循環固体酸化物形電解セルの方法。
【請求項13】
前記方法では、利用可能な圧力レベルに応じて、一次供給経路及び補助供給経路のうちの少なくとも1つを介して燃料フィードを供給することによりセルシステムの動作が逆に動作される、請求項10に記載の再循環固体酸化物形電解セルの方法。
【請求項14】
前記方法では、動作点の変動に関わらず、ホットコアのために、共有空気フィード及び排気経路への共通レーリングが行われる、請求項10に記載の再循環固体酸化物形電解セルの方法。
【請求項15】
前記方法では、高温フィードスルーを除去するためにホットコアが密閉及び内部絶縁されている、請求項10に記載の再循環固体酸化物形電解セルの方法。
【請求項16】
前記方法では、低温及び気密性のホットコアの外殻が、高圧に対応可能な圧力容器形状に適合されている、請求項10に記載の再循環固体酸化物形電解セルの方法。
【請求項17】
前記方法では、セルの一部がSOECモードで動作し、セルの他の部分がSOFCモードで動作するようにセルスタックが配置されている、請求項10に記載の再循環固体酸化物形電解セルの方法。
【請求項18】
前記方法では、外部再燃焼装置が生成ガスラインと平行に配置されている、請求項10に記載の再循環固体酸化物形電解セルの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再循環固体酸化物形電解セルシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界のエネルギーのほとんどは、石油、石炭、天然ガス又は原子力によって生産されている。これらの生産方法の全ては、例えば入手可能性及び環境適用性に関する限り、それぞれ固有の問題を抱えている。環境に関する限り、とりわけ石油及び石炭はそれらが燃焼されると汚染の原因になる。原子力の問題は、少なくとも使用済み燃料の貯蔵である。
【0003】
特に環境問題から、上記のエネルギー源よりも環境に優しく、例えばより効率の良い新たなエネルギー源が開発されている。
【0004】
固体酸化物セルは、環境に優しいプロセスで化学反応を介して動作し、将来のエネルギー変換デバイスとして非常に有望である。再生可能エネルギー源の断続性は、電力網の安定性に課題をもたらし、需要及び供給側の柔軟性の向上と新たなエネルギー貯蔵及び変換技術が求められている。電気分解はこれらの目的に役立ち、再生可能電気を原動力として用いてクリーンな水素又は炭化水素を生成する方法を提供する。全ての電解技術のうちで、固体酸化物電解(SOEC)は最も高い効率を提供する。
【0005】
技術水準
図1に示されているように、固体酸化物セル(SOC)は燃料側100と、酸素リッチ側102と、その間にある電解質材料104とを含む。固体酸化物燃料セル(SOFC)では、酸素リッチ側102に酸素106は供給され、酸素リッチ側から電子を受け取ることにより負の酸素イオンに還元される。負の酸素イオンは電解質材料104を通って燃料側100に行き、そこで燃料108と反応して水を生成し、典型的には二酸化炭素(CO2)も生成する。燃料側100及び酸素リッチ側102は、電気エネルギーをシステムから引き出す燃料セル動作モード用の負荷110を含む外部電気回路111を介して接続されている。燃料セルは、反応物の排気流に熱も生成する。電気分解動作モードでは、電流の流れが逆転し、固体酸化物セルは電気が供給される負荷として機能する。動作条件に応じて、セルの動作は吸熱、発熱又は熱中性であり得る。
【0006】
メタン、一酸化炭素及び水素燃料の場合の燃料セルの反応を以下に示す。
燃料側:CH+HO=CO+3H
CO+HO=CO2+H
+O2-=HO+2e
酸素リッチ側:O+4e=2O2-
正味の反応:CH+2O=CO+2H
CO+1/2O=CO
+1/2O=H
電解動作モード(固体酸化物電解セル(SOEC))では反応は逆になる。すなわち、電源110からの電気エネルギーはセルに供給され、そこでは水と、多くの場合二酸化炭素も燃料側で還元されて酸素イオンが形成され、これが電解質材料を通って酸化反応が起こる酸素リッチ側に移動する。SOFCモード及びSOECモードの両方で同じ固体酸化物セルを用いることができる。
【0007】
固体酸化物形電解セルは、高温の電解反応を行うこと可能にする温度で動作し、該温度は通常500~1000°Cであるが、1000°Cを超える温度も有用であり得る。これらの動作温度はSOFCの条件と同様である。正味のセル反応は水素及び酸素のガスを生成する。1モルの水に対する反応を以下に示す。
燃料側:HO+2e―――>2H+O2-
酸素リッチ側:O2-―――>1/2O+2e
正味の反応:HO―――>H+1/2O
共電気分解の場合、例えばフィッシャー・トロプシュ法に従って結果として得られるガスのその後の精製に有利な比率で、水蒸気に加えて炭素種が通常セルに供給される。二酸化炭素は一酸化炭素に直接還元できるか又は水-ガスシフト反応を介して水素と相互作用して一酸化炭素及び水蒸気を生成できる。
【0008】
固体酸化物燃料セル(SOFC)及び固体酸化物電解(SOE)スタックでは、各セル内の内部の酸素リッチ側ガスに対する燃料側ガスの流れの方向に加えて、隣接するセル間のガスの流れの方向もスタックの異なるセル層を介して結合される。また、燃料側ガス又は酸素リッチ側ガス又はその両方は、使い果たされる前に2つ以上のセルを通過でき、一次セルを通過した後で且つ二次セルを通過する前に、複数のガス流を分割又は統合できる。これらの組み合わせは電流密度を増加させ、セル及びスタック全体にわたって熱勾配を最小化するのに役立つ。
【0009】
SOCセル及びシステムにおける高い動作温度は、熱機械力、材料特性、化学的安定性及び動作条件の均一性に関して、材料に関連する課題をもたらす。これらの側面は、実現可能なSOCセル、スタック及びモジュールサイズに実際的な制約を課す。通常、SOEC用途のために、大規模な設置のためのスケーリングは主にセル、スタック及びSOCモジュールの増殖に依拠する。そのため、全てのレベルでの各増殖ユニットのコストを最小化することは、全体的なコストを削減するために重要である。
【0010】
SOCモジュールは、アプリケーション又は他のモジュールのインターフェイスする電気及び反応物だけでなく、数十から最大で数百のSOCスタック、サポート構造、断熱材、反応物伝達及び分配構造、計装を含む。高温インターフェイスはコストがかかり、スペースをとり、点火源を構成し得るため、反応物インターフェイスの温度を下げるためにモジュール内に熱交換を含めることも有益である。さらに、SOCモジュールは安全な起動及びシャットダウンを促進するための内部又は外部の手段を必要とする。
【0011】
燃料側電極の酸化を避けるために、電極入口に十分な量の水素が存在する必要がある。動作の間、これは燃料電極出口の流れの再循環を介して又は外部ソースからの水素で蒸気供給を補うことによって実現される。内部循環は、SOECが水素を能動的に生成する場合にのみ適用される。システムの始動又はホットスタンバイの間、外部水素源が必要になる。これは、SOCモジュール又はその供給構成に爆発性ガスの追加のインターフェイスを導入する。
【0012】
大規模な設置では、各モジュールと共に増加するコンポーネントの数を最小限に抑えるために、実用的な場合には、可能な限り多くの機能を集中させることが有益である。とりわけ、これは、高温環境との密接な熱的結合を必要としない機能に適用される。これは、空気供給、蒸気生成及び生成ガスの後処理に適用される。しかしながら、一般的な上流及び下流システムでは、それにもかかわらず、全ての動作を中断することなくモジュールのオーバーホールを可能にするために、モジュール固有の又は少なくともモジュールグループ固有の動作状態を促進する必要がある。
【0013】
燃料側生成ガスの後処理は、通常、少なくとも乾燥及び圧縮を含む。
【0014】
SOEC動作における電極の反応ストリームは組み合わせられないため、全ての動作状況において電解質に対する過度の圧力差が回避されることを保証することが不可欠である。反応物の流れ及び圧力制御の構成に関連する全ての潜在的な障害状況を考慮する必要がある。とりわけ、システムの内部圧力レベルに影響を与える外部の上流又は下流の機器の場合、特定の障害の組み合わせを保護するために、モジュール固有の安全リリース機構が必要になり得る。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、流れの条件が改善され、安全条件が改善された高度な固体酸化物セルシステムを実現することである。これは、再循環固体酸化物形電解セルシステムであって、セルは燃料側、酸素リッチ側及び該燃料側と該酸素リッチ側との間の電解質素子を含む、再循環固体酸化物形電解セルシステムによって実現される。システムは、各セルの燃料側から排出されたガスの一部を再循環させ、所望の再循環流量の再循環された流れを提供するように構成された少なくとも1つの超音速エジェクタであって、該エジェクタは少なくとも1つのノズルを有する、1つの超音速エジェクタと、前記エジェクタのノズルに少なくとも1つの一次原料燃料流体を提供するための手段とを含み、該ノズルは、前記流体が初期の高圧から低圧に広がるラバル流路(convergent-divergent flow channel)を有し、エジェクタと、可能性のある漏出源とは、非爆発性反応物を搬送する構造内に収容されて漏出及び爆発に対して安全な構造を形成し、当該システムは、少なくとも1つのフィードイン経路及び排気経路のための入れ子配置であって、該配置は非爆発性反応物を搬送する前記構造内で入れ子になっている、入れ子配置と、前記構造内に配置され、前記燃料側及び前記酸素リッチ側の両方の流れに熱を提供するトリムヒータとを含む。
【0016】
本発明の焦点は、再循環固体酸化物形電解セルの方法でもある。当該方法では、各セルの燃料側から排出されたガスの一部を再循環させ、所望の再循環流量の再循環された流れを提供するために超音速で噴出され、エジェクタのノズルに少なくとも1つの一次原料燃料流体を提供して、該流体が初期の高圧から低圧に広げられ、当該方法では、前記エジェクタと、可能性のある漏出源が非爆発性反応物を搬送する構造内に収容されて漏出及び爆発に対して安全な構造が形成され、フィードイン経路及び排気経路のうちの少なくとも1つは、前記構造内の入れ子配置に位置し、前記方法では、前記構造内で、燃料側及び酸素リッチ側の両方の流れに熱が提供される。
【0017】
本発明は、各セルの燃料側から排出されたガスの一部を再循環させ、所望の再循環流量の再循環された流れを提供するように構成された超音速エジェクタの使用に基づく。少なくとも1つの一次原料燃料流体がエジェクタのノズルに提供され、ノズルは、流体が初期の高圧から低圧に広がるラバル流路を有する。本発明は、エジェクタ及び可能性のある漏出源が非爆発性の副反応物を搬送する構造内に収容されて、漏出及び爆発性に対して安全な構造を形成することと、非爆発性の反応物を搬送する構造内での少なくとも1つのフィードイン経路及び排気経路のための入れ子配置と、構造内に配置され、燃料側及び酸素リッチ側の両方の流れに熱を提供するトリムヒータとに基づく。
【0018】
本発明の利点は、高い再循環速度が得られることであり、これは濃度勾配が小さく、熱分布がより均一になり、劣化がより低くなることを意味する。また、本発明によれば爆発のリスクを排除できる。さらに、本発明は、SOCモジュールに関連する複雑さ、インターフェイスの数及び潜在的な漏出源を最小限に抑えることができ、アプリケーションレベルのコスト削減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は単一セル構造を示す。
図2図2は、本発明に係る例示のSOCシステムを示す。図2において、他の線を越えるように描かれた線は、当該線に接続されていない。
図3図3は、本発明に係る例示の熱交換器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による実施形態では、図1に示すように、セルが燃料側100、酸素リッチ側102、及び燃料側と酸素リッチ側との間の電解質要素104とを含む、再循環固体酸化物形電解セルシステムを示す。本発明に係る例示のシステムを図2に示し、各セルの燃料側から排出されたガスの一部を再循環109し、再循環流の望ましい再循環流量を提供するように構成された少なくとも1つの超音速エジェクタ120を含む。エジェクタには少なくとも1つのノズル122を有する。システムは、少なくとも1つの一次原料一次原料流体をエジェクタ120のノズルに供給するための手段124を含み、このノズルは、流体が初期の高圧から低圧に広がるラバル流路を含む。手段124は、例えば、ガス供給原料用の供給ライン若しくは貯蔵装置又は液体原料用の供給ラインであり、液体を蒸発させることにより気体流体を形成するための蒸発装置等の手段に加えて、平行な供給原料供給線を、エジェクタ一次ノズルに接続されたパイプ内の共通の供給源に接続する必要な配管である。熱交換器105、152は、燃料側及び酸素リッチ側の供給ルートの両方に位置する。例示の実施形態では、本発明に係るシステムは、超音速エジェクタ120に接続された熱交換器153を含み得る(図2及び図3)。図3は、熱交換器が出し入れする流れを示す。熱交換器153のシステム位置を図2に示す。生成された水素及び蒸気は、図3に示すように電気分解から流れ得る(146、図2)。低圧では、加熱された蒸気は電気分解循環109に流れることができ、蒸気は熱交換器153に流れる124ことができる。生成されたガス及び残留蒸気はライン134を通じて流れ出ることができる。この構成は、システム内の熱回収と組み合わせた二重配管構造の利点を説明する。
【0021】
エジェクタ120は、SOCセルに影響を与える入口蒸気圧のスパイクをブロックすることができる。生成ガス出口は、機械的又は電気化学的圧縮器に連結されることが有益である。圧縮器は、SOC出口圧力を固定値に又はSOC制御システムによって提供される設定値に従って調整すべきである。圧縮器及び圧力制御のダイナミクスによっては、その間にバッファボリューム及び流量制限要素が必要になり得る。差圧を許容範囲内で維持するために1つ以上の反応物出口ルートをスロットルで調整するために受動圧力平衡装置を用いることができる。複数のモジュールから生成ガスを収集するガス収集パイプラインネットワークはバッファボリュームとして有益に機能し得る。
【0022】
SOC出口空気を流入空気を混合するために亜音速エジェクタを用いる空気再循環装置を用いて、熱自給率及び空気供給のコストをさらに改善することができる。
【0023】
システム制御では、エジェクタは可動部品なしで~1:3の調節範囲に対して寸法を有することが有益である。操作ウィンドウは、一次原料の一部を高い供給速度でエジェクタを通過させるバイパスラインを提供することによって拡張できる。本発明に係るシステムは、炭素質原料及び/又は他の還元性化合物で補われる一次原料流体及び/又はバイパスライン128を含むことができる。このシステムは、加熱された空気及び/又は放射熱要素で加熱できる。電子燃料側保護による再酸化のための保護スタックは、オープンセル電圧(OCV)条件付近の電圧制御モードで小さな電解電流を供給することにより行うことができる。加えて又は代替的に、原料蒸気供給は、始動時に、例えば製油所環境で容易に入手可能な少量の水素又は他の還元化合物で補うことができる。このシステムは熱的に自己平衡しており、セルの抵抗率が所与の電流密度で熱的中性を提供する温度に向かって収束する。とりわけ蒸気電解では、このメカニズムは過剰な加熱を避けるために有益に用いることができる。共電解では、システムを始動して蒸気電解モードで公称動作温度にすることができ、炭素生成温度範囲が回避されると、炭素質原料を一次又はバイパス原料として導入する。SOFC動作モードとは異なり、SOECモードにおけるSOCセルの熱管理は空気供給速度に影響されない。これにより、始動及び停止を含む動作点の変動に関係なく、多数のホットコアを共有の空気供給及び排気ルートにコモンレーリング(common-railing)できる。そのため、本発明に係る一実施形態では、システムは、動作点の変動に関係なく、共有の空気供給132及び排気ルートにホットコアコモンレーリングを行う手段130を含むことができる。共通の蒸気供給及び生成ガス抽出ルートと組み合わせて、これは全てのコモンレールされたホットコアの共有の圧力平衡装置を可能にし、大規模な設置におけるコストをさらに低減する。これは、加圧SOECモジュールの場合にとりわけ有益である。
【0024】
本発明に係る再循環固体酸化物形電解セルシステムでは、エジェクタ120及び考えられる漏れの発生源は、例えば空気又は蒸気ガス等の非爆発性の副反応物を搬送する構造144内に収容され、漏れ及び爆発性に対して安全な構造を形成する。システムは、少なくとも1つのフィードイン経路124と、非爆発性の反応物を搬送する構造144内にネストされた排気経路のネスト化された構成を含むことができる。さらに、本発明に係るシステムは、燃料側100及び酸素リッチ側102の両方の流れに熱を供給するトリムヒータ148を含む。高い表面温度を伴う流体搬送構造及び熱交換器の全ては、非爆発性反応物を搬送する構造144内に配置できる。例示の図2は、熱交換器105が任意で構造144内にあることができる145ことを示す。
【0025】
可動部品を除く全ての高温機器、高温が最小の/非高温のフィードスルー及び最小構成要素数を含むホットコアは大規模システムに向けた優れた構成要素である。冷気供給、蒸気供給、生成ガスの後処理及び電源ルートは、複数のコアに仕えるために、メガワット範囲になるよう集中管理できる。低又は中温度のインターフェイス又は個々のホットコアは、コンパクトで、安価であり、取り扱いが容易であり、個々のホットコアの取り外し及び「ホット」スワップが容易である。大規模システムの増殖するハードウェア(SOCスタック+プラントの専用バランス)に関連するコスト、複雑さ及びコンポーネントの数が最小限に抑えられるため、設備及び運用コストの双方が最適化される。エジェクタ再循環統合ホットコアの利点は、大気圧又は加圧動作点の場合の双方で明らかである。大気圧動作は、SOECモジュール構造及び空気供給の複雑さを回避し、コストを最小限に抑えることができる。次に、加圧システムは、生成ガス加圧の点で明らかな利点を提供する。対称統合ホットコアの低温で気密性の高い外殻は、高圧に対応可能な圧力容器形状に容易に適合できる。小さな差圧しか存在しない高温の内部部品は、実質的に加圧の影響を受けずに維持できる。
【0026】
本発明に係るシステムは、一次原料の一部を高い供給速度でエジェクタ120を越えて提供することにより、システムの操作ウィンドウを拡張するためのバイパスライン128を含むことができる。バイパスラインは、非爆発性供給内で爆発性混合物を収容するために、排気経路132と同軸に128を配置できる。エジェクタ構造の三次元印刷を用いて、流れの経路の望ましい整列を容易にできる。本発明に係るシステムは、高温のフィードスルー(hot feedthroughs)を取り除くために、密閉され内部絶縁されたホットコアを含むことができる。高温のフィードスルーを有さない密閉され内部絶縁されたホットコアは、モジュール外部の高温表面のリスクを取り除く。ホットコアは、例えば製油所環境で柔軟に配置できるようにEX分類(EX-classified)できる。この構造は、大気圧動作及び加圧動作の両方に有益である。
【0027】
例示の実施形態では、システムは、高圧に対処可能な圧力容器形状に適合された、ホットコアの低温で気密性の外殻も含むことができる。起こり得る圧力制御異常から守るために、大気又は空気出口ラインに向けて圧力を素早く解放する及び/又は圧力バランスを行うために圧力除去アレンジメントを含むことができる。システムの始動又はシャットダウン条件の間にウェイストゲートを用いることもできる。
【0028】
本発明に係るシステムは、急速な圧力変化を回避するために制御された空気供給132の圧縮器-タービンアレンジメント142を含むことができる。このような場合、圧力差リリース機構は、圧力制御異常の場合に燃料側及び酸素リッチ側の出口ストリームを接続できる。
【0029】
本発明に係る一実施形態では、セルスタック103は、セルの一部がSOECモードで動作し、セルの別の一部がSOFCモードで動作するように配置できる。可逆(SOFC)モードでは、蒸気供給は、SOEC供給ガスと同じ供給及び予熱手段を用いて、水素又は好ましくは炭化水素供給に置き換えられる。同じエジェクタは、両方のモードで必要な再循環を提供できる。一次フローの差を平衡するために、SOECモードではバイパスが用いられる。
【0030】
システムの始動の間に、エジェクタで一次的に適切な体積流量を維持し、酸素と炭素の比率を管理するために、燃料供給を蒸気で補完できる。あるいは、触媒部分酸化(CPOx)作業を促進するために、空気を補助的な供給原料として用いることができる。
【0031】
上記の補助的な蒸気供給ラインは、炭素含有、例えばCO2供給原料で補うこともできる。これにより、システムを純粋な蒸気電解モードで始動できるようにしながら、システムを共電解モードで動作させることができる。そのため、始動時の低温に関連する炭素生成の問題を回避することができる。生成ガスの温度低下において炭素生成を防止するために、生成ガス抽出ラインに補助蒸気が注入され得る。注入のためにエジェクタ構造を用いることができるため、下流のコンポーネントの圧力損失を克服するために圧力を高めることを可能にするとともに効率的な混合を提供し、よりコンパクトな設計を可能にする。
【0032】
本発明に係る例示のシステムは、生成ガスライン134(図2)と平行に配置された外部の再燃焼装置(afterburner)を含むことができる。エジェクタ再循環設計の良好な熱自給性により、再燃焼装置を圧力除去ラインに、すなわちホットコアの外に配置できるため、ホットバルブ配置及び追加の機器を回避できる。再燃焼装置は、例えば単純な簡素な逆流防止弁156(図2)を用いることによりSOEC生成ガス加圧ステージと平行に135配置して、圧縮が停止したときに流れの向きを変えることができる。別の逆流防止弁155は平行な生成ガスライン134に配置できる。
【0033】
CO2は、再燃焼装置の上流の燃料側出口流から取り込むことができる。再燃焼装置に代えて、残留H2及びCOはシステムフィードに再循環させるか又は他の目的のために回収することもできる。そのため、システムは、バイオガスが原料源として用いられる場合、炭素排出量ゼロ又は負のネット炭素排出量を実現できる。
【0034】
あるいは、SOFCモードで部分的な又は完全な熱燃焼を促進するために高温環境で受動的な戻り弁機能を実施できるのに対して、SOECモードでは、経路が閉じられるように圧力が調整される。
【0035】
SOCセル及びスタックは、産業用DC又はAC配電レベルにコスト効率の高い接続を可能にするために、直列に接続され、数百のセルを含むことが好ましい。
【0036】
本発明に係る好ましい実施形態では、外部の水素インターフェイスを必要とせずに爆発安全な始動水素補給を促進するためにモジュール内部エジェクタ再循環の概念を利用できる。燃料側の再循環ループから二次放出経路を配置することにより、生成ガスラインから水素リッチな混合物を連行するためにエジェクタにおける取り込み力(entraining force)として蒸気を用いることができる。二次放出経路は、圧力制御異常が起きた場合に固体酸化物セルの圧力状態への悪影響を回避するための安全機構としても機能することができる。
【0037】
本発明に係る例示の実施形態では、システムは、燃料側から周囲への制御可能な二次的放出経路134を含むことができる。この放出経路は、圧力制御異常の場合に安全機構として機能する。始動の間、放出経路は開いたままで、蒸気はエジェクタに一次的に供給される。それによって生成された水素抽出ラインへの吸引は、当該ライン内で逆(内向き)の流れをもたらすため、ガス分配ネットワークの適用側の結果からの水素リッチ混合物で再循環ループ内の蒸気が補われる。水素抽出ラインは、通常動作の間の圧力バランスのために固定又は制御可能な流量制限要素を含み得る。逆流構成での流量制限は、同行蒸気及び同行水素の非爆発性混合物を受動的に発生させるように設計されていてもよく、外部蒸気供給及び外部水素収集ネットワークが引き続き動作することを考慮すると、緊急停止の間に再循環ループ内で爆発安全条件を完全に受動的に維持できる。これにより、モジュール固有の始動水素供給接続の必要性のみならず、能動的なモジュール固有のシャットダウン再酸化保護手段の必要性も排除される。1つの例示の実施形態では、システムは、出口ガスインターフェイスから水素リッチ流体を逆流に同行させるために蒸気供給によって駆動される補助的なエジェクタ154を含むことができる。好ましい実施形態は、このエジェクタを主燃料再循環エジェクタ120と直列に配置することである。そのため、補助エジェクタは、主エジェクタを駆動するのに依然十分な中間圧力レベルまで水素リッチ流体を高める。図2に、二次放出経路150に流れを導く手段158、すなわち弁を示す。同じ手段は、通常動作の間に燃料及び酸素側の圧力差を制御するために用いることができる。エジェクタ154を介して生成ガスラインから水素が取り込まれる場合に、燃料側出口流134の一部を当該エジェクタに再循環させることにより、手段158を燃料側再循環における水素比率(hydrogen fraction)を制御するために用いることもできる。制御弁160、164は、二次放出経路150で逆流を可能にするために用いることができる。例えば、3~3.5bar(g)の蒸気供給圧力の場合、中間圧力は1~1.5bar(g)の範囲とすることができるため、両方のエジェクタで超臨界状態を得ることができ、非常に予測可能な性能を与える。特に、0.05~0.2の範囲で固定された低エントレインメント用に設計された補助エジェクタでは、水素と蒸気との混合比は非常に予測可能となり且つ吸引側の圧力レベルの小さな変動に依存しなくなる。この実施形態では、二次放出ルートは、生成ガスライン又は(存在する場合は)補助蒸気供給ラインに沿って配置できる。両方の実施形態の利点は、安全ガスの供給を受動的に提供できることであり、単一の装置が故障して危険な混合物が生成される可能性が排除される。空気側の供給が中断した場合に、搬送構造内の燃料側から漏れた水素が蓄積する可能性を防止するために、モジュール内での緊急の換気を促進するために、追加の蒸気駆動エジェクタを利用してもよい。例えば、ホットコアモジュールの上部からの排気経路は、高引き込みモードの蒸気駆動エジェクタを通過して周囲に至るように配置できる。通常動作では、モジュールが例えば酸素側反応物によって能動的にフラッシングされる場合、起こり得る漏れからの少量の水素のみがコンパートメント上部に蓄積されることが予想される。そのため、エジェクタの一次フィードをオフで維持できるため、モジュール内部の過圧によって駆動される小さな排気流が得られる。緊急モードでは、一次蒸気フィードを受動的に活性化できるため、外向きの流れが増幅され、蓄積された水素を除去する能力が高まる。この流れを、前述の蒸気駆動水素エジェクタによって取り込まれる水素の量に合わせることで、100%の漏れの場合でも、十分な水素の除去を受動的に保護することができる。水素供給及び除去の双方は同じ一次エネルギー源、すなわち蒸気に依存しているため、この組み合わせには危険な故障モードがない。
【0038】
この配置のさらなる利点は、SOCモジュール内及び周囲の爆発ゾーンを回避できることである。別個の水素供給ラインが回避されるため、爆発性の種は低圧パイプラインにのみ存在する。生成ガス収集ラインに適した圧力レベルは、例えば30mbargである。このような低い圧力は、漏洩源の周りに生じ得る爆発性混合物の体積の範囲を制限するため、自然換気は爆発領域を「無視できる範囲」として分類するのに十分となり、高価な爆発保護の配置及び機器の必要性が回避される。これは、例えば、隣接するモジュール又は動作を続けるパイプラインが爆発のリスクを引き起こさない場合に、個々のモジュールのメンテナンスを行うことの規定を大幅に簡素化する。
【0039】
例えば、製油所の設定において、モジュールが爆発性ガスを含み得る領域で動作する場合、本発明は、爆発安全な分類を得るのに有益である。インターフェイスの低温は、例えば、水素の点火温度に対する固有の保護を提供し、モジュール固有の装置の数が最小限に抑えられていることにより、直接的な爆発保護を可能にする。ホットモジュール外部のコンポーネントの数が最小限に抑えられていることで、換気要件も最小限に抑えられる。供給された空気が非爆発性である空気供給は、コンパートメントの換気及び過圧に利用することができるため、コンポーネントのEX分類に加えて、換気の存在を監視する別の手段を省略できる。高い換気を必要とする電気機器は、非爆発性の環境でモジュールの外部に配置することも、液冷式の密閉過圧キャビネットに配置することもできる。
【0040】
本発明に係る別の例示の実施形態では、システムは、利用可能な圧力レベルに応じて、一次フィード経路124と、補助フィード経路128、すなわちバイパスラインとのうちの少なくとも一方を介して燃料を供給するための手段を含む逆方向動作(reverse operation)のために構成できる。燃料供給のための手段は、例えば、高効率及び高取り込み比のために一次フィードエジェクタ120の寸法を構成することにより行うことができる。そのため、このエジェクタは、SOFCモードで蒸気を補わなくても、両方の動作モードで必要な循環を提供できる。バイオガス等の低圧原料の場合、必要な循環は一次エジェクタに蒸気を供給することによって得られる。SOFC動作の場合、燃料側出口ガスは、生成ガスライン又は二次放出経路のいずれかに注入できる。燃料側再循環での熱損失の排除を可能にするエジェクタベースの循環は、反応物の予熱を支援する再燃焼装置がない場合でも、プラントのホットバランスの良好な熱自給を促進する。そのため、補足的な加熱を必要とせずに燃料電池モード動作を行うことができる。電力変換段階では、SOEC動作で高電流密度用に寸法が構成されていることから、それらはSOFCモードでも本質的に高電流密度が可能であるため、寿命初期の状態でも熱自給に十分な高電流密度を実現できる。燃料側の再循環を蒸気で補う能力は、不十分な再循環率の場合に炭素生成に関連する問題を克服する。
【0041】
本発明に係る例示の実施形態では、SOCモジュールの数が増えることに関する複雑さをさらに最小限に抑えるために、システムへのスイープ空気(酸素リッチ側反応物)の供給を集中させることが有益である。そのため、加圧、ろ過及び可能性がある乾燥がより大規模に実施されるため、コスト削減及び信頼性向上が可能になる。低温では、SOCモジュールのための低圧空気供給ネットワークを低コストで実施できる。さらに、集中的に供給される空気は、コンパートメントの過圧、爆発安全換気及び例えば自動装置の冷却にも用いることができるため、モジュール固有の手段及び関連する故障検出セーフガードが上記の機能を実行する必要がなくなる。
【0042】
本発明に係る実施形態では、SOEC動作において、セルの活性領域の利用を最大化するために、セルを温度プロファイルが均一な状態で、すなわち熱中性条件に近い状態で動作させることが有益である。これは、エジェクタベースの循環で得られる比較的高い燃料側再循環率によって実現できる。さらに、循環は燃料側電極にわたって濃度勾配を減少させ、セルにわたって電流密度のより均等な分布を促進する。動作条件の近くで両側の流入反応物を加熱することが有益である。エジェクタベースの統合概念により、SOCスタックを中心軸の周りで本質的に対称な構成で配置することができ、反応物供給のための等しい流路を提供し、それ故に全てのセルに均一な条件を提供する。さらに、搬送構造内の燃料側及び酸素側両方の反応物の加熱を提供するために、ヒーター要素又は一連の要素の配列を対称に配置できるため有益である。スタックの入口領域は、反応物に熱を伝達するための熱交換面として用いることができる。スタックの金属相互接続プレートは、通常、外部からセルの活性領域に延びて、非常に大きな熱伝達領域を共に構成し、例えば電気発熱体からの放射を通じて該領域から熱を効果的に伝達できる。対称的な配置は、全ての場所への均等な熱伝達を促進する。そのため、専用の熱伝達構造を用いることなく、所望の熱伝達を得ることができる。スタックの温度を管理するために、物理的な温度測定は配置において誤解を招く兆候を提供し得るため、熱平衡をリアルタイムに計算するモデルベースのアプローチが有益であり、好ましい。
【0043】
酸素リッチ側にも再循環を適用することにより、システム動作のさらなる最適化を得ることができる。酸素リッチ側入口に出口反応物を再循環させて、セルの入口と出口との間の酸素濃度勾配を減らしながら、酸素反応物の新たな供給の必要性を減らすために、1つ以上の亜音速エジェクタを用いることができる。純粋な酸素が必要な場合は、酸素リッチ出口ガスから酸素を分離することができる。分離は、例えば分離膜を用いて実現できる。その後、分離により酸素が枯渇した、窒素リッチな残留物は、空気と混合してSOCシステムに戻され得る。酸素濃度が減少したこのようなフィードは、セル電圧に有益な影響を与える。窒素リッチな流れは別の供給源から来てもよい。
【0044】
本発明に係る実施形態では、SOCシステムを燃料電池モードで動作させる場合、燃料側電極からの出口ガスを生成ガス配分に送ることができ、そこで再燃焼装置で燃焼させるか又は二酸化炭素が分離されることにより、残留水素及び一酸化炭素を再利用するか又はシステムガス供給源に再度循環させることができる。燃料電池モードと同様に、酸素リッチ側の反応物と混合することなく燃料側電極上に二酸化炭素が生成されるため、燃料側出口ガスにおけるその濃度は高く、分離が魅力的となる。バイオガス等のカーボンニュートラル燃料で動作する場合、出口二酸化炭素を捕捉ことで、負のカーボンフットプリント動作が得られる。捕捉された二酸化炭素は、その後、例えば、e燃料又は他の合成炭化水素の生産のための原料として用いることができる。
【0045】
本発明に係る実施形態では、燃料電池動作モードの後処理は、出口ガスを生成ガス収集ライン又は二次放出経路のいずれかに沿って実現できるように行うことができる。いずれの場合も、並列に接続された全てのモジュールが同じ方向に動作していれば、これらの機能を集中させることができる。
【0046】
結論として、本発明に係る蒸気駆動エジェクタ再循環SOCによっていくつかの利点が得られると述べることができる。高い再循環速度は、小さな濃度勾配、より均等な熱分布及びより低い劣化を促進する。共電気分解では、高い再循環速度は、SOC出口での局所的な濃度分散の減少を通じて炭素が生成されるリスクを低減する。高温のフィードスルーがなく、水素再循環で熱損失がないことから、熱管理及び変調範囲を改善することができるため、圧力容器への配置に自然に適した形状でコンパクト且つ対称的な配置を実現できる。固有の二重配管、ホットパーツ内でのリークフラッシング、密閉されたシステムコア外での高温表面の回避、高圧爆発性ガス界面の回避及びコンパートメントの換気及び過加圧のための中央供給清浄空気の使用によって、爆発のリスクの除去を実現できる。蒸気入口は、有益な熱伝達を促進し、二重配管が供給源まで拡張されるため、生成ガス出口と同軸に配置できる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】