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特表2023-553373光重合性組成物、それから形成された光学部材および表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】光重合性組成物、それから形成された光学部材および表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/46 20060101AFI20231214BHJP
   C08F 220/30 20060101ALI20231214BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20231214BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C08F2/46
C08F220/30
G02B1/14
G02B1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532727
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 KR2021017596
(87)【国際公開番号】W WO2022114837
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0162700
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0164737
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515068085
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ユン ヒョクミン
(72)【発明者】
【氏名】ヨ テフン
(72)【発明者】
【氏名】イ サンフン
(72)【発明者】
【氏名】オ ウラム
(72)【発明者】
【氏名】アン ヒョソン
【テーマコード(参考)】
2K009
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009CC24
4J011AA05
4J011AC04
4J011CA02
4J011CC10
4J011QA03
4J011QA12
4J011QA13
4J011SA05
4J011SA06
4J011SA14
4J011SA15
4J011SA16
4J011SA64
4J011SA65
4J011SA84
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J100AL05P
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL66P
4J100AL66Q
4J100BA02P
4J100BA02Q
4J100BA06P
4J100BA06Q
4J100BA08P
4J100BA08Q
4J100BA51P
4J100BA51Q
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100BC44P
4J100BC44Q
4J100BC48P
4J100BC48Q
4J100BC49P
4J100BC49Q
4J100BC83P
4J100BC83Q
4J100CA04
4J100CA23
4J100DA63
4J100JA43
(57)【要約】
本発明は、優れた高柔軟性、高屈折率、光透過性および低いヘイズを含む向上した光学特性を示す光学部材を形成することができ、インクジェット工程に適した粘度特性を含む光重合性組成物、それから形成された光学部材および表示装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)硬化前の液状屈折率が1.51以上である1種以上の高屈折率単量体と、
b)1種以上の高柔軟性単量体と、
c)光重合開始剤と、を含む、光重合性組成物。
【請求項2】
前記高屈折率単量体は、1以上の芳香族環または1以上のヘテロ原子を含む芳香族または脂環式光硬化性化合物である、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項3】
前記高屈折率単量体は、下記化学式1の構造を含む芳香族光硬化性化合物である、請求項1に記載の光重合性組成物:
[化学式1]
B-Z1-Z2-R
前記化学式1中、Bは炭素数6~30のアリール基、一つ以上の硫黄(S)が置換された5~7員環の脂肪族ヘテロ環構造または一つ以上の硫黄(S)が置換された5~7員環の芳香族ヘテロ環構造のうちのいずれか一つ以上の構造を含み、
Z1は直接結合または炭素数1~10のアルキル基であり、
Z2は直接結合または一つ以上の酸素(O)または硫黄(S)を含む炭素数1~10のアルキル基であり、
Rは光硬化性官能基である。
【請求項4】
前記高屈折率単量体は、Bが炭素数6~30のアリール基であり、Z1は直接結合であり、Z2は一つ以上の酸素(O)を含む炭素数1~10のアルキル基である化学式1の構造を含む、請求項3に記載の光重合性組成物。
【請求項5】
前記高屈折率単量体は、Bが炭素数6~30のアリール基であり、Z1は直接結合であり、Z2は一つ以上の酸素(O)および芳香族環構造を共に含む化学式1の構造を含む、請求項4に記載の光重合性組成物。
【請求項6】
前記高屈折率単量体は、Bが一つ以上の硫黄(S)が置換された5~7員環の芳香族ヘテロ環構造を含み、Z1は直接結合であり、Z2は一つ以上の硫黄(S)を含む炭素数1~10のアルキル基である化学式1の構造を含む、請求項3に記載の光重合性組成物。
【請求項7】
前記高屈折率単量体がベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、O-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニルエチル(メタ)アクリレートおよび化学式2~8からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の光重合性組成物:
[化学式2]
[化学式3]
[化学式4]
[化学式5]
[化学式6]
[化学式7]
[化学式8]
(前記化学式2~8中、Rはそれぞれ独立して、HまたはCHである)
【請求項8】
前記高柔軟性単量体は下記化学式9の構造を含む、請求項1に記載の光重合性組成物:
[化学式9]
(A)m-B-(A’)n
前記化学式9中、AおよびA’は光硬化性官能基であって、同一または異なり、
Bは一つ以上の酸素原子を含むかまたは含まない炭素数6~50の脂肪族構造であって、少なくとも炭素数6以上の直鎖アルキル構造を含み、
mおよびnは0または1の整数である。
【請求項9】
前記高柔軟性単量体は、Bが4~20個の酸素原子を含む化学式9の構造である、請求項8に記載の光重合性組成物。
【請求項10】
前記高柔軟性単量体としては、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、および下記化学式10からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
[化学式10]
(前記化学式10中、a+b=0~10であり、aとbは整数である。)
【請求項11】
前記化学式10中のaおよびbはそれぞれ1~5の整数である、請求項10に記載の光重合性組成物。
【請求項12】
前記高柔軟性単量体は、前記高屈折率単量体および高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として10~90重量部を含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項13】
前記高柔軟性単量体は、前記高屈折率単量体および高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として10~40重量部を含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項14】
前記高屈折率単量体と高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として、0.5~30重量部の光重合開始剤を含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項15】
前記光重合性組成物の絶対粘度(25℃で測定)が5cP~40cPである、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項16】
前記高屈折率単量体および高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として、0.1~10重量部のアミン共力剤をさらに含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項17】
前記アミン共力剤は、下記化学式11の化合物、エチルジメチルアミノベンゾエート、ブトキシエチルジメチルアミノベンゾエート、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-トルイジン、エチルヘキシル-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(ジイソプロピルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(アクリロイルオキシ)エチル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-エチルヘキシル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル2-(ジブチルアミノ)メチルアクリレート、および4,4-(オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ)ビス(ジメチルアニリン)からなる群より選択される1種以上を含む、請求項16に記載の光重合性組成物:
[化学式11]
前記化学式11中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基を示し、Rは炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のエーテル基、炭素数6~30のアリール基、アミン基または(メタ)アクリレート基を示す。
【請求項18】
前記高屈折率単量体および高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として、0.1~10重量部の光増感剤をさらに含む、請求項1に記載の光重合性組成物。
【請求項19】
前記光増感剤としては、イソプロピルチオキサントン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、3,7-ジメトキシアントラセン、9,10-ジプロピルオキシアントラセンからなる群より選択される1種以上である、請求項18に記載の光重合性組成物。
【請求項20】
基材と、
請求項1から19のいずれか一項に記載の高柔軟性インクジェット用光重合性組成物の硬化物を含む硬化膜と、を含む、光学部材。
【請求項21】
硬化膜のヘイズが3%以下であり、屈折率が1.58以上であり、伸び率(Elongation)が5%以上である、請求項15に記載の光学部材。
【請求項22】
請求項20に記載の光学部材を光学フィルムまたはパターンフィルムのうちの少なくとも一つ以上として含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた光透過性、低いヘイズおよび高い屈折率を含む光学特性はもちろん、高柔軟性および優れた曲げ信頼性を含む機械的物性特性が同時に向上する光重合性組成物、それから形成された光学部材および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
構造化されたプリズムを有する光透過性光学フィルムの場合、プリズム構造をなしている樹脂の屈折率によって輝度の上昇率が異なる。一般にプリズムを構成する樹脂の屈折率が増加するほど輝度の上昇率が増加する。したがって、前記光透過性光学フィルムについては、プリズム構造をなす樹脂の屈折率を上昇させる方向に研究開発が進められている。
【0003】
前記プリズムをなす高屈折率樹脂は、一般に高屈折率を確保するために有機化合物に金属酸化物を分散する形態で形成されるが、金属酸化物の使用により屈折率は高いが、ヘイズ(Haze)および反射率も高くなる問題がある。反射率が高いとディスプレイの野外視認性が低下する。
【0004】
前記金属酸化物分散の形態で形成された樹脂は分散安定性によって製品の賞味期間が決定されるが、これは大量生産を困難にして単価上昇の原因になる。また、前記金属酸化物を含む組成物の場合、粘度が高くなり、インクジェット工程性が低下するなどの問題を示すため、技術的に多くの制約を有する。
【0005】
しかも、既存の一般的な光重合性組成物を単量体組成物として使用して前記樹脂および光学フィルムを形成する場合、前記単量体組成物を光硬化する過程で空気中の酸素の影響により表面硬化が十分に起きないことが多かった。その結果、前記樹脂および光学フィルムはヘイズが増加し、紫外線の透過率などの光透過性や視認性が低下する問題が発生した。また、不足した表面硬化はフィルムの機械的物性を低下させ、フォルダブルデバイス(Foldable Device)に求められる高柔軟性および曲げ信頼性を顕著に低下させる原因になる。したがって、前記問題を考慮して窒素などの不活性ガス雰囲気下で硬化工程を行う方案が考慮されたが、これは大きな製造単価の上昇を招く。
【0006】
最近、ディスプレイ関連技術の発達と共に、折り畳んだり(Folding)、ロール(Roll)状に巻いたり、ゴムバンドのように伸ばすなど変形可能なディスプレイ装置が開発および量産化されている。これらのディスプレイは多様な形態に変形が可能であるので、使用される素材もまた、変形が可能な機械的物性を備えるように求められている。
【0007】
しかし、上述した諸般の問題により、インクジェット工程に適した粘度特性を示しながらも、優れた光学特性と高柔軟性などの面において満足できる水準までは開発が至らず、優れた光学および機械的特性を示す光学フィルムなどの形成を可能にする技術の開発は継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、インクジェット工程に適した粘度特性を示しながらも、硬化過程でのヘイズの増加などを抑制して、優れた光透過性、低いヘイズおよび高い屈折率を含む向上した光学特性とともに、高柔軟性(elongation)および優れた曲げ信頼性を含む機械的物性特性が同時に向上する光学部材の形成を可能にする光重合性組成物を提供することである。
【0009】
また、本発明は、前記光重合性組成物から形成され、優れた光透過性、低いヘイズおよび高い屈折率を含む向上した光学特性と高柔軟性および優れた曲げ信頼性の機械的物性を有する光学部材を提供することである。
また、本発明は、前記光学部材を含む表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
a)硬化前の液状屈折率が1.51以上である1種以上の高屈折率単量体と、
b)1種以上の高柔軟性単量体と、
c)光重合開始剤と、を含む、光重合性組成物を提供する。
また、本発明は、基材と、前記光重合性組成物の硬化物を含む硬化膜と、を含む、光学部材を提供する。
また、本発明は、前記光学部材を含む、表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る光重合性組成物は、インクジェット工程に適した粘度特性を示しながらも、高い屈折率を満たす硬化膜およびそれを含む光学部材の形成を可能にする。また、前記光重合性組成物に含まれる特定の高柔軟性単量体によって硬化物の柔軟性および曲げ信頼性などの機械的物性を改善することができる。また、前記光重合性組成物に含まれるアミン共力剤の作用により、酸素の影響による減少した表面硬化度の問題を大きく減らすことができ、その結果、低いヘイズ、優れた紫外線透過率などの光透過性および高い視認性を示す光学部材の形成が可能になる。
それに加えて、前記光重合性組成物の硬化過程で、窒素雰囲気などの適用が不要になるので、全体的な工程上の経済性もまた大きく高めることができる。
【0012】
したがって、前記光重合性組成物から形成された光学部材は、低い製造単価を有し、かつ、低いヘイズ、高い屈折率、優れた光透過性および視認性などを示し、柔軟性および曲げ特性に優れるためフォルダブルまたはフレキシブル表示装置の特性向上に大きく寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をより具体的に説明する。本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常的または辞典的な意味に限定して解釈されるべきではなく、発明者は、自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという原則に則して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきである。
【0014】
また、本発明の明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタクリレートを両方含む意味である。
【0015】
以下、当該技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように実施例について詳細に説明する。実施例は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する具体的な実施例のみに限定されない。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、a)硬化前の液状屈折率が1.51以上である1種以上の高屈折率単量体;b)1種以上の高柔軟性単量体;およびc)光重合開始剤;を含む光重合性組成物を提供することができる。
【0017】
一実施形態の光重合性組成物は、金属酸化物を含まずとも、高屈折率単量体だけでも高屈折の特性を実現することができ、柔軟性(elongation)に優れた高柔軟性単量体を含んで硬化膜のクラックを防止することができる。したがって、前記光重合性組成物によって形成された硬化膜を含む光学部材はフォルダブルまたはフレキシブル表示装置に適用して表示素子の性能を改善させることができる。また、前記光重合性組成物は、高屈折率単量体および高柔軟性単量体のみを含んでもインクジェット用への使用に適した粘度範囲を満たし、硬化物に対して優れた光学特性および機械的物性を実現することができる。
【0018】
前記光重合性組成物は金属酸化物を使用しないので、光硬化過程での表面硬化性に優れ、光学フィルムのヘイズ特性、光透過性および視認性を改善することができ、製造単価の上昇要因を防止することもできる。特に、前記高柔軟性単量体の使用により、上述したようにクラックを防止してフォルダブルまたはフレキシブル装置に求められる優れた高柔軟性および曲げ信頼性を確保することもできる。これに加えて、前記光重合性組成物の硬化過程で、窒素雰囲気などの適用が不要になるので、全体的な工程上の経済性もまた大きく高めることができる。
【0019】
また、前記光重合性組成物はアミン共力剤、光増感剤および界面活性剤などの成分を1種以上さらに含むことによって、硬化膜を提供するための表面硬化性を向上させることができる。例えば、前記光重合性組成物に含まれるアミン共力剤の作用により、酸素の影響による表面硬化度の減少の問題を大きく減らすことができることが確認された。これは硬化過程で、前記アミン共力剤に含まれたアミン基が空気中の酸素ラジカルを捉えることにより、重合開始剤の反応性をより高めることができるためと思われる。また、前記光増感剤の使用によって光重合時の重合反応を促進させることができる。また、前記界面活性剤の使用によって膜厚の均一性や表面平滑性を向上させるなどの効果を付与することができる。
【0020】
したがって、上述した高屈折率単量体、高柔軟性単量体および光重合開始剤の組成だけでなく、さらに成分を含み得る一実施形態の光重合性組成物を光硬化して硬化膜および光学部材を形成すると空気雰囲気下でも高い表面硬化度を達成して、前記硬化膜などが低いヘイズ、優れた紫外線透過率などの光透過性および高い視認性を示すことができる。特に、前記光重合性組成物は、高柔軟性および曲げ特性が大きく改善され、インクジェット印刷に適した粘度を示して塗布およびフィルム形成などの工程性を向上させることができる。これに加えて、前記光重合性組成物の硬化過程で、窒素雰囲気などの適用が不要になるので、全体的な工程上の経済性もまた大きく高めることができる。
【0021】
そのため、前記光重合性組成物を使用すると、低い製造単価を有し、かつ、低いヘイズ、高い屈折率、高柔軟性、優れた光透過性および視認性などを示す光学部材の形成が可能になることによって、多様な形態の表示装置の特性向上に大きく寄与することができる。
以下、前記光重合性組成物に使用される各成分について具体的に説明する。
【0022】
一実施形態の光重合性組成物は、硬化膜マトリックスを形成するための基本的な単量体であって、硬化前の液状屈折率が1.51以上である1種以上の高屈折率単量体を含む。
【0023】
前記高屈折率単量体は後述する光硬化工程によって、前記光硬化性官能基が光重合開始剤を介して架橋重合され、硬化膜をなす基本的な樹脂を形成することができる。特に、前記高屈折率単量体は、特定の液晶屈折率範囲を満たすことによって、紫外線照射などによる硬化膜の屈折率を向上させることができる。より具体的には、前記高屈折率単量体の硬化前の液状屈折率は1.51~1.60であり得る。前記高屈折率単量体の液状屈折率が1.51以下であれば硬化膜の屈折率が1.58以下に低くなる問題がある。
前記高屈折率単量体は、1以上の芳香族環または1以上のヘテロ原子を含む芳香族または脂環式光硬化性化合物であり得る。
【0024】
具体的には、前記高屈折率単量体は1以上の芳香族環を含むか、または1以上のヘテロ原子を含む炭素数10~40の光硬化性官能基を有する芳香族または脂環式光硬化性化合物であり得る。
より具体的には、前記高屈折率単量体は、下記化学式1の構造を含む芳香族光硬化性化合物であり得る:
[化学式1]
B-Z1-Z2-R
【0025】
前記化学式1中、Bは炭素数6~30のアリール基、一つ以上の硫黄(S)が置換された5~7員環の脂肪族ヘテロ環構造または一つ以上の硫黄(S)が置換された5~7員環の芳香族ヘテロ環構造のうちのいずれか一つ以上の構造を含み、
Z1は直接結合または炭素数1~10のアルキル基であり、
Z2は直接結合または一つ以上の酸素(O)または硫黄(S)を含む炭素数1~10のアルキル基であり、
Rは光硬化性官能基である。
【0026】
前記高屈折率単量体は、Bが炭素数6~30のアリール基であり、Z1は直接結合であり、Z2は一つ以上の酸素(O)を含む炭素数1~10のアルキル基である化学式1の構造を含んでもよい。
【0027】
前記高屈折率単量体は、Bが炭素数6~30のアリール基であり、Z1は直接結合であり、Z2は一つ以上の酸素(O)および芳香族環構造を共に含む化学式1の構造を含んでもよい。
【0028】
前記高屈折率単量体は、Bが一つ以上の硫黄(S)が置換された5~7員環の芳香族ヘテロ環構造を含み、Z1は直接結合であり、Z2は一つ以上の硫黄(S)を含む炭素数1~10のアルキル基である化学式1の構造を含んでもよい。
前記高屈折率単量体は液状であり得るが、前記化学式で表記したアントラセンまたは硫黄を含む構造の場合、液状ではなく、粉形態で存在し得る。
【0029】
より具体的には、上述した前記高屈折率単量体は、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、O-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニルエチル(メタ)アクリレートおよび化学式2~8からなる群より選択される1種以上を含むことができる。
[化学式2]
[化学式3]
[化学式4]
[化学式5]
[化学式6]
[化学式7]
[化学式8]
(前記化学式2~8中、Rはそれぞれ独立して、HまたはCHである。)
特に、前記高屈折率単量体はアントラセン、硫黄を含む構造の場合、屈折率を1.61以上確保することができる。
【0030】
一方、本発明に係る前記高柔軟性単量体は、高屈折率単量体とともに硬化して、硬化膜の柔軟性および曲げ特性を大きく改善してクラックを防止することができる。
【0031】
具体的には、前記高柔軟性単量体は、最終硬化膜に対する伸び率(elongation)を少なくとも5%以上向上させることができる1種以上の光硬化性官能基を有する化合物を含むことができる。
【0032】
前記伸び率は、20μmの厚さのフィルムをベアガラスから脱落させ、Dog bone試験片(大きさ:28mm×4mm)を製作した後、Instron社製のUTMを用いて測定された引張応力-ひずみ曲線(Tensile stress strain curve)により測定されたものであり得る。
前記高柔軟性単量体は、下記化学式9の構造を含むことができる。
[化学式9]
(A)m-B-(A’)n
【0033】
前記化学式9中、AおよびA’は光硬化性官能基であって、同一または異なり、Bは一つ以上の酸素原子を含むかまたは含まない炭素数6~50の脂肪族構造であって、少なくとも炭素数6以上の直鎖アルキル構造を含み、
mおよびnは0または1の整数である。
前記高柔軟性単量体は、Bが4~20個の酸素原子を含む化学式9の構造であり得る。
【0034】
より具体的には、前記高柔軟性単量体は、炭素数6~30の脂肪族モノ(メタ)アクリレートおよび炭素数6~30の脂肪族ジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上であり得る。前記高柔軟性単量体の粘度は1~30cPであり得る。
【0035】
より具体的には、前記高柔軟性単量体は、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび下記化学式10からなる群より選択される1種以上を含むことができる。
[化学式10]
(前記化学式10中、a+b=0~10であり、aとbは整数である。)
前記化学式10中のaおよびbはそれぞれ、1~5の整数であり得る。
【0036】
このような高柔軟性単量体は、前記高屈折率単量体および高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として、少なくとも10重量部以上含むことができる。具体的には、前記高柔軟性単量体は、光重合性組成物中に10重量部以上で必ず含まなければならない硬化膜の柔軟性を改善することができる。
【0037】
より具体的には、前記高柔軟性単量体は、前記高屈折率単量体および高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として10~90重量部を含むことができる。また、前記高柔軟性単量体は、前記高屈折率単量体および高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として10~40重量部を含むことができる。
【0038】
前記高柔軟性単量体の含有量が10重量部未満でその含有量が低いと、塗膜形成後の伸び率が5%未満になり、柔軟性を改善することができない。また、前記高柔軟性単量体の含有量が90重量部以上で過度に多いと、屈折率が低くなり、1.58以上の高屈折率を実現できない問題がある。
【0039】
上述した一実施形態の光重合性組成物は光重合開始剤を含む。このような光重合開始剤は上述した2種の特定の単量体の光硬化反応を開始および促進することができる。
【0040】
このような光重合開始剤としては、従来から(メタ)アクリレート基などの光硬化性官能基の光硬化反応を開始および促進できると知られている任意の開始剤を使用することができる。
【0041】
前記光重合開始剤の例としては、トリアジン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、イミダゾール系、キサントン系、オキシムエステル系およびアセトフェノン系化合物からなる群より選択される1種以上が挙げられる。前記光重合開始剤のより具体的な例としては、2,4-ビストリクロロメチル-6-p-メトキシスチリル-s-トリアジン、2-p-メトキシスチリル-4,6-ビストリクロロメチル-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-4-メチルナフチル-6-トリアジン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メチルメルカプトフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾイル-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、ベンゾフェノン、p-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,2-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,2-ビス-2-クロロフェニル-4,5,4,5-テトラフェニル-2-1,2-ビイミダゾール、(E)-2-(アセトキシイミノ)-1-(9,9-ジエチル-9H-フルオレン-2-イル)ブタノン、(E)-1-(9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)エタノンO-アセチルオキシム、(Z)-2-(アセトキシイミノ)-1-(9,9-ジエチル-9H-フルオレン-2-イル)プロパノン、Irgacure 369、Irgacure 651、Irgacure 907、Darocur TPO、Irgacure 819、OXE-01、OXE-02、OXE-03、OXE-04、アデカ社製のN-1919、NCI-831およびNCI-930からなる群より選択される化合物が挙げられ、その他にも当業界で知られている光重合開始剤を特に制限なく広く使用することができる。
【0042】
前記光重合性組成物は、前記高屈折率単量体と高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として0.5~30重量部の光重合開始剤を含むことができる。さらに他の一例として、前記光重合開始剤は、前記高屈折率単量体と高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として0.6~28重量%、1~25重量%を含むことができる。前記光重合開始剤の含有量が過度に低いと、光硬化がうまく起こらず、逆にその含有量が過度に高いと、硬化膜などの積算透過度が、例えば90%以下に低下する。
【0043】
一方、一実施形態の組成物は、金属酸化物を含まずとも上述した高屈折率単量体および高柔軟性単量体の使用によって、インクジェット工程に適した絶対粘度を有し得る。具体的には、前記光重合性組成物の絶対粘度(25℃で測定)が5cP~40cPであり得る。したがって、それを含む一実施形態の組成物はインクジェット工程性に非常に優れ、耐熱性および機械的物性に優れ、良好な塗膜特性を有する硬化膜の形成を可能にする。また、前記オレフィン系単量体と、後述する金属酸化物粒子などの相互作用によって、一実施形態の組成物から形成された硬化膜および光学部材は1.58以上の高い屈折率を有することができる。
【0044】
参考にして、本明細書に記載された絶対粘度は、25℃で測定された絶対粘度値を意味し、このような絶対粘度は該分野で良く知られている粘度測定装置、例えば、ブルックフィールド粘度計を用いて測定することができる。
【0045】
一方、一実施形態の光重合性組成物は、d)アミン基および光硬化性官能基を有するアミン共力剤、e)光増感剤およびf)界面活性剤からなる群より選択される1種以上をさらに含むことができる。上述したd)~f)成分のうちのいずれか一つ以上の添加剤をさらに含むことにより、光重合性組成物がより効果的に物性を実現することに寄与することができる。
【0046】
まず、一実施形態の光重合性組成物は、アミン基および光硬化性官能基を有するアミン共力剤(amine synergist)を含むことができる。このようなアミン共力剤は、一実施形態の組成物を光硬化して硬化膜および光学部材を形成する過程で、これに含まれたアミン基が空気中の酸素ラジカルなどを捉えて開始剤の反応を促進することができる。さらに、前記アミン共力剤中の光硬化性官能基が単量体とともに架橋結合を形成することができる。このようなアミン共力剤の作用により、一実施形態の組成物から形成された硬化膜および光学部材は高い表面硬化度を示すことができ、これに伴う低いヘイズおよび向上した光透過性など優れた光学特性を示すことができる。
前記アミン共力剤は、分子内に3級以上のアミン基および光重合性アクリレート基を有する化合物からなる群より選択される1種を含むことができる。
【0047】
具体的には、前記アミン共力剤としては分子中のアミン基とともに、光硬化性官能基、例えば、上述した単量体の光硬化性官能基と架橋結合を形成できる官能基、より具体的な例として、前記単量体と同種の光硬化性官能基である(メタ)アクリレート基を有する任意の化合物を使用することができる。また、前記酸素ラジカルなどをより効果的に捉えて硬化膜などの表面硬化度をさらに高めるために、前記アミン共力剤は、分子内に3級以上のアミン構造を含むことがより好ましい。
【0048】
このようなアミン共力剤の具体的な例としては、下記化学式11の化合物、エチルジメチルアミノベンゾエート、ブトキシエチルジメチルアミノベンゾエート、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-トルイジン、エチルヘキシル-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(ジイソプロピルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(アクリロイルオキシ)エチル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-エチルヘキシル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル2-(ジブチルアミノ)メチルアクリレート、および4,4-(オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ)ビス(ジメチルアニリン)からなる群より選択される1種以上が挙げられ、その他にもアミン基および光硬化性官能基を有する多様な化合物を使用することもできることはもちろんである:
[化学式11]
【0049】
前記化学式11中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基を示し、Rは炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のエーテル基、炭素数6~30のアリール基、アミン基または(メタ)アクリレート基を示す。
【0050】
また、商用化されているアミン系光硬化性化合物を前記アミン共力剤として使用することもでき、このような商用化されている化合物の例としては、P115(エスケイサイテック社製)、MIRAMER AS2010(ミウォン商社製)またはMIRAMER AS5142(ミウォン商社製)などが挙げられる。
【0051】
また、前記光重合性組成物は、前記高屈折率単量体および高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として、0.1~10重量部のアミン共力剤をさらに含むことができる。さらに他の一例として、前記d)アミン共力剤は、前記高屈折率単量体および高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として、0.5~9重量部の含有量で含まれ得る。前記アミン共力剤の含有量が過度に低いと、表面硬化度が低下して硬化膜および光学部材のヘイズが高くなり、逆にその含有量が過度に高くなると、光重合性組成物の粘度が過度に高くなり、工程性が低下するか、硬化膜などの屈折率が低くなる。
【0052】
前記e)光増感剤は、光重合性組成物に含まれ、高屈折率単量体および高柔軟性単量体の硬化性をさらに増大させることができ、Haze特性に優れるようにし、感度を速くする効果を付与することができる。
【0053】
前記光増感剤としては、イソプロピルチオキサントン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、3,7-ジメトキシアントラセン、9,10-ジプロピルオキシアントラセンからなる群より1種以上を選択することができる。
【0054】
前記光重合性組成物は、前記高屈折率単量体および高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として、0.1~10重量部の光増感剤をさらに含むことができる。さらに他の一例として、前記e)光増感剤は、前記高屈折率単量体および高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として、0.5~9重量部を含むことができる。前記光増感剤の含有量が過度に低いと、表面硬化度の向上に寄与できず、逆にその含有量が過度に高いと、光重合性組成物の粘度が過度に高くなり、工程性が低下するか、硬化膜などの透過度が低下する問題がある。
【0055】
前記f)界面活性剤は、膜厚の均一性や表面平滑性を向上させるなどの効果を付与することができる。
前記界面活性剤としては、シリコン系、フッ素系からなる群より選択される1種以上を含むことができる。
【0056】
前記f)界面活性剤は、前記高屈折率単量体および高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として、0.1~5重量部を含むことができる。前記界面活性剤の含有量が過度に低くなると膜厚の均一性や表面平滑性が悪くなる問題があり、逆にその含有量が過度に高くなると膜内部に気泡が生じるか、またはインクジェット吐出特性が低下する問題がある。
【0057】
一方、一実施形態の光重合性組成物は必要に応じて、上述した各成分以外に分散剤をさらに含むことができる。このような分散剤は上述した光重合性組成物に含まれ、他の成分の分散安定性を向上させることができる。
【0058】
このような分散剤の種類は特に限定されず、分散性の向上のために使用できると知らされている任意の分散剤を使用することができる。このような分散剤の例としては、アクリル系分散剤、エポキシ系分散剤およびシリコン系分散剤からなる群より選択される1種以上が挙げられる。
【0059】
前記分散剤は、前記高屈折率単量体および高柔軟性単量体の総和100重量部を基準として、0.1~30重量部、あるいは0.5~20重量部の含有量で含まれる。前記分散剤の含有量に応じて各成分がより均一に分散して、所望する硬化膜の屈折率範囲などをより効果的に達成することができる。ただし、分散剤の含有量が過度に高くなると、光重合性組成物の粘度が高くなり、インクジェット工程性が低下する。
【0060】
また、上述した一実施形態の組成物は、別途の溶媒または液状媒質を含まない無溶剤型に製造することができる。これにより、前記一実施形態の組成物を使用した工程性がさらに向上する。
【0061】
上述した各成分を含む一実施形態の光重合性組成物は上述の通り、絶対粘度(25℃で測定)が5~40cPあるいは5cP~30cPであり得る。前記絶対粘度は、従来から知られている粘度測定装置、例えば、ブルックフィールド粘度計などを用いて測定することができる。一実施形態の光重合性組成物がこのような粘度範囲を満たすことによって、耐熱性および機械的物性に優れた硬化膜の形成が可能になり、かつインクジェット工程性に優れるだけでなく、インクジェット工程による良好な塗膜形成が可能になる。
【0062】
もし、最終組成物の粘度が過度に低いと、ノズル乾燥、詰まりの発生により吐出特性の低下が生じ得る。また、組成物の粘度が過度に高いと、吐出量の低下やパターンおよび面形成ができない問題がある。
【0063】
一方、本発明の他の実施形態によれば、上述した光重合性組成物の硬化物を含む硬化膜およびそれを含む光学部材が提供される。このような光学部材は、基材と、基材上に形成された前記硬化膜とを含むことができる。また、前記硬化膜は、一実施形態の光重合性組成物がインクジェット工程により基材上に塗布された後、光硬化され形成されることによって、前記オレフィン系単量体およびアミン共力剤の光硬化性官能基が架橋結合された単位を含む重合体と、前記重合体上に分散した分散剤および金属酸化物を含む硬化物を主に含むことができる。
【0064】
より具体的には、前記硬化物は、高屈折率単量体および高柔軟性単量体の硬化により架橋形成されたオレフィン樹脂を含み、前記オレフィン樹脂は選択的に前記アミン共力剤の光硬化性官能基と追加架橋され得る。また、前記オレフィン樹脂は、上述した光増感剤および界面活性剤からなる群より選択される1種以上と共に光重合性の改善および膜特性を改善することができる。この時、前記オレフィン樹脂は、1種以上の光硬化性官能基を有する高屈折率単量体および1種以上の高柔軟性単量体から架橋重合された重合体であって、その形態は特に限定されず、上述した単量体の種類および重合反応のメカニズムにより、ホモ共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体またはグラフト共重合体などの多様な形態を有することができる。
一方、本発明の他の実施形態により、基材と、上述した高柔軟性インクジェット用光重合性組成物の硬化物を含む硬化膜とを含む光学部材が提供され得る。
【0065】
上述した硬化物を含む硬化膜は、インクジェット工程に適した粘度を有する一実施形態の光重合性組成物から形成されることによって、優れた耐熱性および機械的物性と、良好な塗膜特性を示すことができる。また、前記硬化膜はヘイズが3%以下であり、屈折率が1.58以上であり、伸び率(Elongation)が5%以上であり得る。
【0066】
具体的には、前記硬化膜は565nmの波長を基準として、光重合後の屈折率が1.58以上であり得る。より具体的には、前記硬化膜の屈折率は1.6以上、あるいは1.6~2.0、あるいは1.6~1.65の高い屈折率を有する。この時、前記屈折率は、エリプソメータ(ellipsometer)を用いて555~575nm(平均)の波長に対して測定された値を意味する。
【0067】
また、前記アミン共力剤の作用により高い表面硬化度を示し、例えば、ヘイズが3%以下、あるいは1%以下、あるいは0~1%、あるいは0.01~0.8%、あるいは0.1~0.3%の低いヘイズおよび優れた紫外線透過率などの光透過性および視認性を示すことができる。
【0068】
また、前記硬化膜は、20μmの厚さのフィルムをベアガラスから脱落させ、Dog bone試験片(大きさ:28mm×4mm)を製作した後、Instron社製のUTMを用いて測定された引張応力-ひずみ曲線(Tensile stress strain curve)による伸び率(Elongation)が5%以上あるいは5~10%あるいは10%以上であり得る。
上述した光学部材で、前記基材としてはベアガラスなどのよく知られている基材を使用することができる。
【0069】
また、前記光学部材は、Mayer bar、コート用アプリケータまたはインクジェット装置などを用いて、前記基材上に上述した一実施形態の光重合性組成物を塗布し、例えば、空気雰囲気下でLEDランプまたはメタルハライドランプなどを用いて露光して光硬化を行う方法で製造することができる。この時、前記光重合性組成物は、単膜形態で塗布された後に光硬化され、一般的な光学フィルム形態の光学部材で形成されてもよいが、必要に応じて前記インクジェット装置を用いて一定のパターン形態を有するように塗布された後に光硬化されてもよい。この場合、前記光学部材は基材上に、例えば、プリズム構造などの多面体形態でパターン化された硬化膜が形成されたパターンフィルムの形態であり得る。
【0070】
上述した光学フィルムまたはパターンフィルムなどの光学部材は、その種類や適用される表示素子の構造による一般的な厚さを有することができ、例えば、0.01μm~1000μmの範囲内で調整される厚さを有することができる。
【0071】
また、前記光学部材は、感度値が3J以下であり、光透過度は90%以上であり得る。前記感度測定は、FT-IR spectrophotometerを用いて露光前後の吸光度の測定結果を比較して測定することができる。より具体的には、1650~1750cm-1のC=Oピークと780~880cm-1のC=Cピークを積分して転換率を求め、感度は転換率が80%以上で飽和する露光量を意味する。また、前記光透過度は、光学フィルムなどの光学部材に対してUV-VIS spectrophotometerを用いて380~780nmの波長で測定した平均透過率を意味する。
【0072】
そして、前記光学フィルムは、常温から900℃まで分当たり10℃ずつ昇温してTGAで測定された5重量%Loss温度が270℃以上になることができ、優れた耐熱性を示すことができる。
【0073】
上述した光学フィルムまたはパターンフィルムなどの他の実施形態の光学部材は、優れた光学特性、耐熱性および機械的特性などを満たすので、各種表示装置に適用され、その特性の向上に大きく寄与することができる。
これにより、本発明のさらに他の実施形態によれば、前記光学部材を含む表示装置が提供される。
【0074】
前記光学フィルムまたはパターンフィルムなどの光学部材が適用された表示装置の構成は、上述した他の実施形態の光学部材が適用されることを除いては当業界で公知の通常の構成に従うことができるので、これに関する追加的な説明は省略する。
【0075】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明を例示したものに過ぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
[実施例1~309、比較例1~44および参考例1~9]
光重合性組成物および光学フィルムの製造
まず、実施例、比較例および参考例の光重合性組成物の製造のために使用される成分としては、下記表1~5の単量体および成分を使用した。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
そして、下記表6~14の組成で、各成分を混合して実施例および比較例の光重合性組成物を製造した。表6~14中、各含有量の単位は重量部を示す。
インクジェット装置に各光重合性組成物を投入した後、ベアガラス(Bare Glass)に塗布して厚さが20μmになるように単一膜を形成した。
【0083】
その後、LED385nmの硬化装置を用いて、1.5J/cmの露光量を単一膜に照射して、光重合性組成物の硬化物を含むコートフィルムを製造した。このようなコートフィルム(厚さ:20μm)を光学フィルムとして提供した。ただし、屈折率測定の場合、Spin Coatingして2μmのコートフィルムを提供した。
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
【表10】
【0089】
【表11】
【0090】
【表12】
【0091】
【表13】
【0092】
【表14】
【0093】
[実験例]
上記で製造された実施例、比較例および参考例の光学フィルムに対して、以下の方法で屈折率、ヘイズおよび粘度などの物性を測定して、その結果を表15~22に示す。
*光学フィルムの物性測定方法
1)感度
FT-IR spectrophotometerを用いて露光前、後の吸光度の測定結果を比較して測定した。1650~1750cm-1のC=Oピークと780~880cm-1のC=Cピークを積分して転換率を求め、感度は転換率が80%以上で飽和する露光量を意味する。
判定
○:感度値が3J以下である場合
X:感度値が3J超である場合
2)屈折率
前記2μmのコートフィルムが形成されたベアガラスに対して、エリプソメータを用いて屈折率(555~575nm、平均:565nmの波長)を測定した。
判定
◎:コートフィルムの屈折率測定値が1.61以上である場合
○:コートフィルムの屈折率測定値が1.58以上1.61未満の場合
X:コートフィルムの屈折率測定値が1.58未満の場合
3)透過度
形成されたコート膜をUV-VIS spectrophotometer(Cary4000、Agilent)を用いて380~780nmでの平均透過率を測定した。
判定
○:平均透過度値が90%以上である場合
X:平均透過度値が90%未満である場合
4)ヘイズ
NIPPON DENSHOKU社製のヘイズメーターCOH 400を用いてヘイズを測定した。
判定
◎:ヘイズ測定値が1.0未満の場合
○:ヘイズ測定値が1.0~3.0以下である場合
X:ヘイズ測定値が3.0超である場合
5)粘度(絶対粘度)
【0094】
前記参考例および実施例の各光重合性組成物、あるいはオレフィン単量体に対して、25℃の温度で粘度測定装置(商品名:Brook Field viscometer)を用いて粘度を測定した。
判定
○:粘度値が5~40cPである場合
X:粘度値が上記範囲を外れる場合
6)インクジェット特性
インクジェット装置のノズル温度を変更しながら面形成できるかどうかを確認した。
判定
ノズル温度25~35℃未満で面形成=◎
ノズル温度35~50℃で面形成=○
ノズル温度25~50℃で面形成できない=X
7)柔軟性
柔軟性は、Instron社製のUTMを用いて測定した。すなわち、前記20μmの厚さで28mm×4mm)を製作し、Instron社製のUTMを用いて引張変形率(Tensile Strain)を測定した。その後、前記引張変形率により得られた引張応力-ひずみ曲線(Tensile stress strain curve)から伸び率(Elongation)を評価した。
判定
◎:Tensile Strain 10%以上である場合(引張応力-ひずみ曲線(Tensile stress strain curve)により測定された伸び率(Elongation)が10%以上である場合を意味する。)
○:Tensile Strain 5%以上10%未満である場合(引張応力-ひずみ曲線(Tensile stress strain curve)により測定された伸び率(Elongation)が5%以上10%未満である場合を意味する。)
△:Tensile Strain 1%以上5%未満である場合(引張応力-ひずみ曲線(Tensile stress strain curve)により測定された伸び率(Elongation)が1%以上5%未満である場合を意味する。)
X:Tensile Strain 1%未満である場合(引張応力-ひずみ曲線(Tensile stress strain curve)により測定された伸び率(Elongation)が1%未満である場合を意味する。)
【0095】
【表15】
【0096】
【表16】
【0097】
【表17】
【0098】
【表18】
【0099】
【表19】
【0100】
【表20】
【0101】
【表21】
【0102】
【表22】
【0103】
上記表15~22の結果から見ると、実施例1~309は、高屈折特性の単量体およびクラックを防止できる高柔軟性単量体を高屈折率単量体および光開始剤などと共に最適な構成で含むことにより、比較例および参考例に比べて、屈折率が高く、粘度が良好で、かつ、低いヘイズを示すことが確認された。特に、前記実施例は、比較例および参考例に比べて柔軟性にさらに優れ、かつ感度、透過度および耐熱性だけではなく、インクジェット工程性にも優れ、フォルダブルまたはフレキシブル表示装置で光学部材として適用時に性能改善に寄与できるものとみなされる。特に、比較例1で高柔軟性の単量体を使用しない場合、柔軟性特性を示すことができないことが分かった。また、比較例2および3は光開始剤の含有量が過度に少ないかまたは多いので、感度を測定できないか、または開始剤が析出して物性測定ができなかった。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
【表9】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
前記参考例および実施例の各光重合性組成物、あるいはオレフィン単量体に対して、25℃の温度で粘度測定装置(商品名:Brook Field viscometer)を用いて粘度を測定した。
判定
○:粘度値が5~40cPである場合
X:粘度値が上記範囲を外れる場合
6)インクジェット特性
インクジェット装置のノズル温度を変更しながら面形成できるかどうかを確認した。
判定
ノズル温度25~35℃未満で面形成=◎
ノズル温度35~50℃で面形成=○
ノズル温度25~50℃で面形成できない=X
7)柔軟性
柔軟性は、Instron社製のUTMを用いて測定した。すなわち、前述の20μmの厚さの試験片(大きさ:28mm×4mm)を製作し、Instron社製のUTMを用いて引張変形率(Tensile Strain)を測定した。その後、前記引張変形率により得られた引張応力-ひずみ曲線(Tensile stress strain curve)から伸び率(Elongation)を評価した。
判定
◎:Tensile Strain 10%以上である場合(引張応力-ひずみ曲線(Tensile stress strain curve)により測定された伸び率(Elongation)が10%以上である場合を意味する。)
○:Tensile Strain 5%以上10%未満である場合(引張応力-ひずみ曲線(Tensile stress strain curve)により測定された伸び率(Elongation)が5%以上10%未満である場合を意味する。)
△:Tensile Strain 1%以上5%未満である場合(引張応力-ひずみ曲線(Tensile stress strain curve)により測定された伸び率(Elongation)が1%以上5%未満である場合を意味する。)
X:Tensile Strain 1%未満である場合(引張応力-ひずみ曲線(Tensile stress strain curve)により測定された伸び率(Elongation)が1%未満である場合を意味する。)
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
【表18】
【国際調査報告】