(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】改善された液体タバコ抽出物の生産方法
(51)【国際特許分類】
A24B 15/167 20200101AFI20231214BHJP
A24B 15/26 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A24B15/167
A24B15/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023533917
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2021084390
(87)【国際公開番号】W WO2022122650
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ナスバウマー シモン
(72)【発明者】
【氏名】シボス アラン
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブーガート マルク アントニウス フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】フェデリ フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ホーイマンス モリス ケフィン
【テーマコード(参考)】
4B043
【Fターム(参考)】
4B043BA07
4B043BA19
4B043BA29
4B043BA80
4B043BC20
4B043BC22
(57)【要約】
液体タバコ抽出物の生産方法は、タバコ材料を調製する工程と、タバコ材料を、摂氏100度~摂氏160度の抽出温度で少なくとも15分間加熱する工程と、加熱工程中にタバコ材料から放出される揮発性化合物を収集する工程と、収集された揮発性化合物を含む液体タバコ抽出物を形成する工程とを含む。タバコ材料は、方法の少なくとも一つの工程の間にマイクロ波加熱される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体タバコ抽出物を生産する方法であって、
タバコ材料を調製する工程、
前記タバコ材料を摂氏100度~摂氏160度の抽出温度で少なくとも15分にわたって加熱する工程、
前記加熱工程中に、前記タバコ材料から放出された揮発性化合物を収集する工程、および
前記収集された揮発性化合物を含む液体タバコ抽出物を形成する工程を含み、
前記タバコ材料が、前記方法の少なくとも一つの工程中にマイクロ波加熱される、方法。
【請求項2】
前記タバコ材料を調製する工程が、前記加熱工程前に、マイクロ波加熱によって前記タバコ材料を前処理して、前記タバコ細胞を破裂させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タバコ材料を摂氏100度~摂氏160度の抽出温度まで加熱する前記工程が、従来の加熱によって実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タバコ材料を摂氏100度~摂氏160度の抽出温度まで加熱する前記工程が、前記タバコ材料をマイクロ波加熱することを含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記タバコ材料を摂氏100度~摂氏160度の抽出温度まで加熱する前記工程が、前記タバコ材料をマイクロ波加熱と従来の加熱の組み合わせによって加熱することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記タバコ材料が、存在する場合、前記加熱工程および前記前処理工程のうちの少なくとも一つの間に不活性ガスの流れの中で加熱される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記タバコ材料が、前記マイクロ波加熱の開始時に少なくとも10重量パーセントの含水率を有する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記タバコ材料の前記含水率を少なくとも10重量パーセントに増加させるために、前記マイクロ波加熱工程の前に前記タバコ材料に水を加える工程をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記タバコ材料が、前記マイクロ波加熱の間に連続的に循環される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記タバコ材料が、摂氏125度~摂氏160度の抽出温度で加熱される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記抽出温度が、乾燥質量基準で少なくとも0.2重量パーセントのニコチン含有量を有する液体タバコ抽出物を提供するように選択される、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記タバコ材料を、存在する場合、前記加熱工程の前かつ前記前処理工程の前にアルカリ処理に供する工程をさらに含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記加熱工程中に、前記タバコ材料上に霧化した水を噴霧する工程をさらに含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記収集された揮発性化合物を乾燥または濃縮する工程をさらに含む、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の方法によって生産される液体タバコ抽出物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体タバコ抽出物を生産する方法、およびこうした方法によって生産される液体タバコ抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
液体ニコチン製剤などの液体製剤から吸入可能なエアロゾルを発生させるように構成されたアトマイザーを備える、エアロゾルをユーザーに送達するためのエアロゾル発生システムが知られている。一部の公知のエアロゾル発生システムは、液体製剤を加熱し気化させてエアロゾルを発生させるように構成されている、電気ヒーターなどの熱アトマイザーを含む。一つの人気があるタイプの電気加熱式エアロゾル発生システムは電子タバコである。他の公知のエアロゾル発生システムは、例えば、衝突噴流、超音波、または振動メッシュ技術を使用して、液体製剤からエアロゾルを発生させるように構成された非熱アトマイザーを含む。
【0003】
タバコ材料から液体タバコ抽出物を生成するためのいくつかの方法が公知である。液体タバコ抽出物は、ニコチンおよび他の揮発性風味化合物がタバコ材料から抽出され、好適な溶媒中に収集されて天然液体タバコ抽出物を形成する高温抽出プロセスによって生成され得る。
【0004】
タバコ材料が、抽出液中で最大数週間または数か月もの期間、懸濁液中に保持される、浸軟法がまた公知である。得られたスラリーはその後濾過され、こうして収集された液相は、気化可能な液体製剤を製造するために使用され得る。そのような方法の一つ、いわゆる「冷浸法」では、一般的に抽出条件(例えば、温度および圧力)を制御する方式は存在しない。例えば、米国特許第2012/192880号に記載される浸軟法のバリアントでは、スラリーは、摂氏100度以上まで加熱される。
【0005】
スラリーの濾過時に収集された液相は、浸軟プロセスの一次生成物に相当し、高度に希釈され、無極性タバコ風味種の含有量が少ない傾向がある。さらに、液相は通常、ニコチンをほとんどまたは全く含まない。したがって、浸軟法によって得られた液体抽出物は、一般に、気化可能な液体製剤で使用する前に、ニコチン塩およびグリセリンなどの追加の成分を補充する必要がある。
【0006】
タバコ材料を、数時間または数日間にもわたり水中で実質的に煮沸して蒸気相を形成し、蒸気相の凝縮によって得られた蒸留物を容器内に連続的に収集する、代替プロセスが公知である。経時的に、高比率の無極性化合物を含有する油性ワックス状の層が蒸留物の表面上に蓄積する。
【0007】
一方で、ワックス状の層が蓄積し、ニコチンおよび他の水溶性化合物を含有する水性部分は、ボイラーにリサイクルされる。抽出収率を高めるために、無極性共溶媒を、任意選択的に水性部分とともにボイラーに供給してもよい。一方で、ワックス状の相が収集され、最終的にこのような水蒸気蒸留プロセスの一つの一次生成物を形成する。こうした生成物は、しばしば「タバコ精油」と呼称され、脂肪酸、ネオフィタジエンなどのタバコ中に存在する無極性化合物の割合が高い。一つのこのような方法によって得られたタバコの精油は、典型的にはニコチンを含有しない。
【0008】
また、タバコ材料を揮発性無極性溶媒の使用を伴う抽出プロセスにかけることも知られている。好適な溶媒の例としては、環状または非環状の短いアルカン、およびジクロロメタンのような塩素化溶媒が挙げられる。こうしたプロセスの一つでは、真空下で制御された加熱によって、過剰な溶媒は蒸発させることができる。典型的には、これは、抽出溶媒よりも高い沸点を有するエタノールの存在下で行われ、その結果、微量の抽出溶媒であっても検出され得る。
【0009】
このような溶媒支援抽出プロセスの一つの一次生成物は、しばしば「タバコアブソリュート」と呼ばれ、微量のエタノールを含有してもよい。これはワックス状の生成物であり、特定の溶媒で抽出できるほとんどの無極性化合物の高濃度混合物を含有し、一般的に比較的高濃度で存在するニコチンを含む。
【0010】
代替的な抽出プロセスは、超臨界二酸化炭素などの超臨界条件下で、タバコ材料を溶媒と接触させることを伴う。そのようなプロセスの一つは、米国特許第2013/160777号に開示されており、超臨界流体と接触した供給材料内の揮発性物質が超臨界相に分離され得るという原理に依存する。任意の可溶性材料の溶解後、溶解した物質を含有する超臨界流体を除去することができ、供給物質の溶解成分を超臨界流体から分離することができる。超臨界抽出プロセスの一次生成物は、より低い温度および圧力で実行される溶媒支援抽出プロセスの「タバコアブソリュート」と実質的に類似しており、残留溶媒を含有せず、典型的には、高レベルのワックス状の無極性化合物を有し、一般的に比較的高濃度で存在するニコチンを含む。
【0011】
しかしながら、当技術分野で既知の方法によって得られる全てのタバコ抽出物は、フラネオールなどの加熱式タバコの風味と関連する化合物のレベルが、あったとしても非常に低い傾向にある。
【0012】
概して、上で考察されたように、こうした既知の抽出プロセスによって得られた液体タバコ抽出物は、低レベルのニコチンを有し得る。さらに、こうした抽出プロセスによって得られた液体タバコ抽出物は、風味種のレベルが低く、かつ種類が少ない場合がある。こうした抽出プロセスによって得られた液体タバコ抽出物はまた、望ましくない化合物のレベルが高い場合もある。概して、こうした抽出プロセスによって得られたニコチン、風味種、および望ましくない化合物の濃度は、出発材料として使用されるタイプまたは複数のタイプのタバコによって著しく影響を受ける場合がある。
【0013】
本発明の目的は、公知のプロセスによって得られた液体タバコ抽出物の一つ以上の欠点を軽減することである。特に、新規で改善された液体タバコ抽出物の製造のための方法を提供することが望ましいであろう。既存のプロセスよりも効率的に実行できるような液体タバコ抽出物を生産するための方法を提供するのが特に望ましいであろう。
【発明の概要】
【0014】
本開示は、タバコ材料から液体タバコ抽出物を生産する方法に関する。方法は、タバコ材料を調製する工程を含み得る。タバコ材料は、摂氏約100度~約160度の抽出温度で加熱されてもよい。加熱は、少なくとも15分間実行され得る。方法は、加熱工程中にタバコ材料から放出される揮発性化合物を収集する工程をさらに含み得る。方法は、収集された揮発性化合物を含む液体タバコ抽出物を形成する工程をさらに含み得る。タバコ材料は、方法の少なくとも一つの工程の間にマイクロ波加熱され得る。
【0015】
本発明によれば、液体タバコ抽出物の生産方法が提供され、本方法は、タバコ材料を調製する工程と、タバコ材料を、摂氏約100度~摂氏約160度の抽出温度で少なくとも約15分間加熱する工程と、加熱工程中にタバコ材料から放出される揮発性化合物を収集する工程と、収集された揮発性化合物を含む液体タバコ抽出物を形成する工程と、を含む。本発明によると、タバコ材料は、方法の少なくとも一つの工程の間にマイクロ波加熱される。
【0016】
本発明によれば、上で定義した本発明の方法によって生産された液体タバコ抽出物がさらに提供される。
【0017】
本発明に関連して本明細書で使用される場合、用語「液体タバコ抽出物」は、タバコ材料に対して行われる抽出プロセスの直接的な生成物を表す。それ故に、タバコ抽出物は典型的に、タバコ抽出処理条件および技法を使用して、天然タバコ材料から分離された、天然タバコ材料から除去された、または天然タバコ材料に由来する天然構成成分の混合物を含む。したがって、一つのそのようなプロセスにおいて、抽出されたタバコ成分は、天然タバコ材料から除去され、抽出されていないタバコ成分から分離される。本発明によれば、液体タバコ抽出物を生産するための抽出プロセスは、特定の加熱条件下でタバコ材料を加熱し、生成された揮発性化合物を収集することを含む。揮発性化合物は、タバコ材料から放出されるとガス状になる。したがって、液体タバコ抽出物は、タバコ材料に由来し、抽出プロセス中に抽出または形成された天然タバコ成分の混合物から成り、典型的には、タバコ材料以外の一つまたは複数の材料、例えば抽出プロセス中に使用される非水性抽出溶媒などと組み合わせられる。以下でより詳細に説明するように、出発タバコ材料から放出される揮発性化合物は、揮発性化合物が非水性抽出溶媒中に閉じ込められる吸収技術を使用して収集され得る。一例として、揮発性化合物を含有する不活性ガス流を、非水性抽出溶媒の容器に方向付けてもよい。非水性抽出溶媒は、エアロゾル形成体であることが好ましい。
【0018】
本発明は、抽出方法中にいずれかの段階でタバコ材料をマイクロ波加熱する工程を含む、新規のマイクロ波抽出方法に関する。以下でより詳細に説明するように、タバコ材料は、加熱工程の前にマイクロ波加熱され得、その間、タバコ材料は、摂氏100度~摂氏160度の温度に加熱されるか、またはマイクロ波加熱が加熱工程の間に行われ得る。
【0019】
本発明の抽出方法にマイクロ波加熱工程を含めることにより、マイクロ波加熱工程なしでの同等の抽出方法と比較して、ニコチン抽出収率を著しく増加させることが見出され、場合によっては最大600パーセントまで増加させる。この効果は、マイクロ波が、タバコ細胞内の水分子を急速に加熱することによって、タバコを内部から加熱する方法によるものと考えられる。タバコ細胞内の水が沸騰すると、細胞内の体積が急速に膨張し、細胞壁が最終的に破裂する。これにより、植物材料の浸透性が上昇し、重要なことに、ニコチンなどの細胞壁内に含まれる成分が放出される。次に、これらの成分は、加熱工程の間に抽出されやすくなり、これらの成分の終了が増加する。
【0020】
マイクロ波加熱は、典型的には、従来の抵抗加熱法よりも高い浸透深度およびタバコ材料のより迅速な加熱を提供し、これは有利には、抽出方法を実施するために必要な時間の減少をもたらし得る。例えば、マイクロ波加熱工程を含めることにより、本発明者によって、加熱工程の持続時間において最大80パーセントの減少をもたらすことが見出された。さらに、最大40パーセントのエネルギー使用量の削減がもたらされ得る。全体として、マイクロ波加熱工程を含めることにより、抽出プロセスをエネルギーおよび時間の両方の観点から非常に効率的に実行できる。
【0021】
上述のように、マイクロ波がタバコ細胞内からタバコ材料を加熱する方法により、タバコ材料を外側からしか加熱することができない抵抗加熱などの従来の加熱方法と比較して、タバコ材料のより均一な加熱もまた達成することができる。
【0022】
タバコ材料のマイクロ波加熱は、比較的単純かつ低コストの装置を使用して実施することができ、これは既存の抽出装置および方法に容易に組み込まれ得る。
【0023】
マイクロ波加熱工程によってもたらされる利点に加え、本発明の抽出方法は、特定の範囲内の抽出温度を、特に定義された加熱時間と組み合わせて使用することで、望ましい化合物と望ましくない化合物とのバランスが大幅に改善された、改善された液体タバコ抽出物を有利に提供する。特に、本発明の抽出方法は、タバコ材料にとって望ましくない化合物と望ましい化合物との比率が最大化された液体タバコ抽出物を提供する。例えば、定義された抽出温度および時間の特定の組み合わせの使用により、ニコチン化合物のレベルを最適化すると同時に、フラン、カルボニル、フェノール、およびTSNAなどの望ましくない化合物のレベルも最小化することができる。
【0024】
本発明の発明者らは、上述の既存の抽出プロセスとは対照的に、本発明による方法は、例えば、フラネオールなどの加熱したタバコの風味に関連する化合物の含有量が著しく高い液体タバコ抽出物を有利に提供することを見出した。これらの化合物は、浸軟プロセスによって得られたタバコ抽出物に実質的に存在しないか、または微量に存在し、典型的にはニコチンをほとんどまたは全く含まない。これらの化合物はまた、超臨界条件下を含む、溶媒を使用して得られたタバコ抽出物中に、一般的に存在しないか、または微量に存在する。同様に、蒸留プロセスによって得られたタバコ精油もまた、典型的には、加熱したタバコの風味に関連するこのような化合物の含有量が、もしあったとしても非常に低い。
【0025】
本発明による方法によって得られる液体タバコ抽出物は、既存の抽出プロセスによって得られるタバコ抽出物と比較して、有意な組成の違いを示し、電子液体として、または加熱すると、現在利用可能な電子液体とは異なる組成および風味特性を有するエアロゾルを生成する電子液体の調製のために使用することができる。特に、本発明による方法によって得られる液体タバコ抽出物は、既存の液体ニコチン組成物から生成される利用可能なエアロゾルと比較して、従来のタバコによって生成されるエアロゾル、または加熱非燃焼装置でタバコを加熱する際に生成されるエアロゾルにより類似した加熱タバコの味覚を提供するエアロゾルを生成するために使用され得る。
【0026】
本発明の抽出方法は、抽出後にそのような化合物を追加することなく、最適化されたレベルのニコチンおよび風味化合物を有する液体タバコ抽出物を生産することを可能にする。したがって、得られた液体タバコ抽出物は、ニコチン組成物を提供するために有利に直接使用され得る。結果として生じる液体タバコ抽出物はまた、一つまたは複数のさらなる処理工程によって改変されてもよく、または一つまたは複数のさらなる成分と混合されてニコチン組成物を形成することもできる。ニコチン組成物は、電子タバコまたは他のエアロゾル発生システムで使用するためのものであってもよい。
【0027】
上記のように、液体ニコチン組成物などの液体製剤から吸入可能なエアロゾルを発生させるように構成されたアトマイザーを備える、エアロゾルをユーザーに送達するためのエアロゾル発生システムが知られている。
【0028】
本発明の液体タバコ抽出物を生産する方法は、バーレー種タバコ、火力乾燥タバコ、およびオリエント葉タバコを含む、すべての種類のタバコおよびグレードに効果的に使用することができる。本方法の工程は、タバコの種類の様々なブレンドに一貫した液体タバコ抽出物を提供するために、容易に調整することができる。抽出方法はさらに、様々な形態のタバコ材料に適している。
【0029】
場合によって、タバコ材料は、重要な前処理工程を必要とせずに加熱することができる。したがって、本方法は効率的に実施することができる。
【0030】
本発明による方法の間、タバコ材料は直接加熱され、多くのタイプの先行技術の抽出プロセスのように、加熱工程のために液体溶媒中に懸濁されない。これにより、タバコ材料の加熱条件に対する制御が強化され、抽出プロセスがより効率的になる。加熱中、揮発性化合物は、タバコ材料からガス状で放出される。
【0031】
上記で定義されるように、本発明による方法では、タバコ材料は、抽出中に何らかの段階でマイクロ波加熱される。マイクロ波加熱は、抽出収率に対するマイクロ波加熱の効果を最適化するため、加熱工程の前または間に実施されることが好ましい。
【0032】
本発明の特定の実施形態では、タバコ材料を調製する工程は、マイクロ波加熱によってタバコ材料を前処理して、加熱工程の前にタバコ細胞を破裂させることを含む。こうした実施形態による方法では、タバコ材料のマイクロ波加熱は、したがって、主抽出前の前処理工程として実施される。マイクロ波加熱は、上述のように、タバコ材料の細胞壁を破壊し、タバコ細胞内からニコチンを放出し、その結果、ニコチンは、以下の加熱工程の間により利用しやすくなる。
【0033】
好ましくは、前処理工程中、タバコ材料は、約摂氏90度~約摂氏160度、より好ましくは約摂氏95度~約摂氏110度の温度にマイクロ波加熱される。
【0034】
好ましくは、前処理工程中、マイクロ波加熱は、約1分~約5分間実施される。
【0035】
随意に、タバコ材料がマイクロ波加熱によって前処理される本発明による方法では、タバコ材料は、主加熱工程の効果を最適化するため、加熱工程の開始前に周囲温度(摂氏22度)まで冷却される。本発明によるいくつかの方法では、マイクロ波前処理と加熱工程との間の冷却工程は存在しない場合がある。これは、タバコ材料が高温で主加熱工程に入る場合があるため、プロセスの効率を改善し得る。
【0036】
随意に、タバコ材料は、窒素などの不活性ガスの流れの中で、前処理工程中にマイクロ波加熱される。これは、マイクロ波の伝播が最適化され得るように、湿度を比較的低レベルに保持すると考えられる。そのため、マイクロ波がニコチンやその他の化合物の抽出に与える正の影響を最大化することができる。
【0037】
上述のように、タバコ材料が、主加熱工程の前にマイクロ波加熱によって前処理される実施形態では、タバコ材料を摂氏100度~摂氏160度の温度に加熱する工程は、従来の加熱、例えば、抵抗加熱または蒸気による加熱によって実施され得る。従来的加熱は、例えば、従来的なオーブンまたは乾燥機で実施され得る。一部の実施形態では、タバコ材料は、以下でより詳細に説明するように、従来的な加熱の代わりに、または従来的な加熱と組み合わせて、加熱工程中にさらにマイクロ波加熱に供され得る。
【0038】
マイクロ波加熱を含む前処理工程の包含の代替または追加で、タバコ材料を摂氏100度~摂氏160度の温度に加熱する工程は、タバコ材料をマイクロ波加熱することを含み得る。こうした実施形態では、タバコ材料のマイクロ波加熱は、主抽出工程中に実施され、その間、揮発性化合物は、加熱によってタバコ材料から気体形態で抽出される。したがって、マイクロ波加熱は、タバコ材料の温度を上昇させてタバコ化合物を揮発させるとともに、上記のようにタバコ細胞を破裂させてタバコ細胞から成分を放出させるために使用される。
【0039】
こうした実施形態では、タバコ材料を摂氏100度~摂氏160度の温度に加熱する工程は、マイクロ波加熱のみによって実行され得る。
【0040】
あるいは好ましくは、タバコ材料を摂氏100度~摂氏160度の温度に加熱する工程は、マイクロ波加熱と、抵抗加熱または蒸気による加熱などの従来の加熱との組合せを含む。こうした方法では、マイクロ波加熱は、従来の加熱工程に追加して使用され、タバコ材料は、マイクロ波および抵抗加熱手段または蒸気などの従来的加熱手段によって同時に加熱される。この加熱方法の組み合わせは、マイクロ波加熱の効果を最適化するように見えるため、抽出収率(特にニコチン)の増加に特に効果的であることが見い出された。さらに、マイクロ波加熱を主加熱工程において従来の加熱と組み合わせることによって、有利には、加熱工程を著しく速くかつより少ないエネルギーで実施することができる。したがって、抽出プロセスの効率が最適化される。特定の方法では、マイクロ波加熱を単独で使用するよりも、従来の加熱手段を用いて特定の加熱工程を実施する方がより容易であり得るため、マイクロ波加熱との組み合わせで従来の加熱を保持することが有用である。例えば、タバコ材料が不活性ガスの流れの中で加熱される場合、不活性ガスを抵抗加熱手段で加熱する必要がある場合がある。
【0041】
好ましくは、加熱方法の組み合わせが使用される場合、マイクロ波加熱は、好ましくは、タバコ材料を所望の抽出温度まで加熱するための加熱電力の約50パーセント~約90パーセントを供給する。
【0042】
タバコ材料のマイクロ波加熱は、マイクロ波を生成するための任意の適切な手段を使用して実行され得る。タバコ材料のマイクロ波加熱に適した装置の一例は、SAIREMによるLABATRON(商標)ES3一体型リアクターおよびマイクロ波伝送システムであり、バッチまたは連続フローマイクロ波リアクターを用いてマイクロ波抽出プロセスを実施するために使用することができる。この装置は、上述のように、タバコ材料がマイクロ波および従来の加熱によって同時に加熱される実施形態に適している。
【0043】
マイクロ波電力は、加熱されるタバコ材料の質量に応じて、タバコ材料の所望の温度を達成するために制御されるべきである。
【0044】
好ましくは、タバコ材料は、マイクロ波加熱中に連続的に循環または攪拌される。これは、例えば、回転式乾燥機内でタバコ材料を加熱することによって達成され得る。タバコ材料の連続的な循環は、タバコ材料内のホットスポットの形成を回避し、それによって、抽出収率を最適化できるように加熱の均一性を改善する。
【0045】
好ましくは、マイクロ波加熱工程の開始時のタバコ材料の含水率は、少なくとも約10重量パーセント、より好ましくは少なくとも約20重量パーセントである。タバコ材料の含水率は、マイクロ波加熱工程の開始時に最大約70重量パーセント、より好ましくは最大約50重量パーセント、より好ましくは最大約40重量パーセント、より好ましくは最大約30重量パーセントであり得る。例えば、マイクロ波加熱工程の開始時のタバコ材料の含水率は、約10重量パーセント~約70重量パーセント、または約10重量パーセント~約50重量パーセント、または約10重量パーセント~約40重量パーセント、または約10重量パーセント~約20重量パーセントとし得る。
【0046】
当然のことながら、「タバコ材料中の含水率」は、タバコ材料中に本質的に存在する水ならびに任意の添加水の両方を含み得る。
【0047】
タバコ細胞中の水分子が煮沸することにより細胞が破裂し、ニコチンやその他の化合物が放出されるため、タバコ材料中の水の存在は、マイクロ波加熱による抽出効果を最適化する上で重要である。したがって、タバコ材料の含水率は、好ましくは、少なくとも10重量パーセントのレベルに保持される。特に、マイクロ波加熱前にタバコ材料を乾燥しない方が、細胞破裂メカニズムがより有効に作用することが見出されるので、マイクロ波加熱前にタバコ材料を乾燥させることは好ましくない。抽出方法の間のこの段階で乾燥工程を排除することは、抽出のためにタバコ材料を調製するために費やす時間とエネルギーを減少させ、それによって先行技術の抽出方法と比較して方法の全体的な効率をさらに改善するため、有利である。
【0048】
特定の実施形態において、本発明による方法は、マイクロ波加熱工程の前にタバコ材料に水を加える工程をさらに含み、タバコ材料の含水率を、好ましくは少なくとも10重量パーセントに増加させる。例えば、タバコ材料は、マイクロ波加熱の前に、液体水で噴霧したり、蒸気と接触させたりして、含水率を増加させ得る。
【0049】
主加熱工程前にタバコ材料がマイクロ波加熱によって前処理される本発明の実施形態では、上述のように、本発明による方法は、タバコ材料の含水率を好ましくは10重量パーセントまで増加させるために、マイクロ波加熱工程の後および主加熱工程前に、タバコ材料に水を加える工程をさらに含む。マイクロ波前処理工程は、加熱中のタバコ細胞内からの水の蒸発により、タバコ材料の含水率を減少させる可能性が高い。揮発性化合物を抽出するためのその後の加熱工程が最適化され、タバコ材料のいかなる燃焼も回避されるようにするために、タバコ材料から失われた水分を回復し、含水率を少なくとも10重量パーセントまで戻すことが有利である。
【0050】
随意に、本発明による方法では、マイクロ波前処理工程中に失われた水分は、前処理工程中に生成されたオフガスを凝縮工程に供することによって捕捉し得る。これは、有利には、前処理工程中に失われ得る、タバコの貴重な揮発性成分も捕捉し得る。次いで、収集された水および揮発性成分は、前処理されたタバコを再加湿するときに使用され得る。これにより、タバコを再加湿し、貴重な揮発性成分の損失の可能性を低減させることができる。
【0051】
上記で定義されるように、本発明の方法では、タバコ材料を特定の加熱条件下で加熱して揮発性タバコ成分を放出し、これらを収集して、液体タバコ抽出物に形成する。
【0052】
加熱工程中、タバコ材料を摂氏約100度~摂氏約160度の抽出温度に加熱する。この範囲を下回ると、不十分な濃度のニコチンおよびある特定の風味化合物がタバコ材料から放出され、これによって結果として得られた液体タバコ抽出物は所望の風味特性を欠く。一方で、タバコ材料がこの定義された範囲を超える温度に加熱される場合、許容できないほど高いレベルの特定の望ましくないタバコ化合物が放出される可能性がある。
【0053】
抽出温度は少なくとも摂氏約110度であることが好ましく、少なくとも摂氏約115度であることがより好ましく、少なくとも摂氏約120度であることがより好ましく、少なくとも摂氏125度であることがより好ましい。
【0054】
抽出温度は、摂氏約150度以下であることが好ましく、摂氏約145度以下であることがより好ましく、摂氏約140度以下であることがより好ましく、摂氏約135度以下であることが最も好ましい。
【0055】
例えば、抽出温度は、摂氏約110度~摂氏150度、または摂氏約120度~摂氏約140度、または摂氏約125度~摂氏約135度、または摂氏約130度であってもよい。摂氏約130度の抽出温度は、液体タバコ抽出物中の望ましい化合物と望ましくない化合物との特に最適化された比をもたらすことが見出された。
【0056】
抽出温度は、摂氏約110度~摂氏130度、または摂氏約115度~摂氏約125度、または摂氏約120度であり得る。
【0057】
抽出温度は、摂氏約125度~約155度、より好ましくは摂氏約135度~摂氏約145度、または摂氏約140度であり得る。
【0058】
タバコ材料は、抽出温度で少なくとも約15分間、好ましくは少なくとも約20分間、より好ましくは少なくとも約25分間、より好ましくは少なくとも約30分間、より好ましくは少なくとも約40分間、より好ましくは少なくとも約50分間、より好ましくは少なくとも約60分間加熱される。この抽出時間は、所望のタバコ風味化合物を効率的に抽出して、所望の風味特性を有するエアロゾルを生成することができる液体タバコ抽出物を提供することができるほどに十分に長い。上述したように、本発明の抽出方法にマイクロ波加熱工程を含めることにより、従来技術の抽出プロセスにおいて通常必要とされるよりも非常に短い加熱持続時間で加熱工程を比較的迅速に実施することができる。
【0059】
好ましくは、タバコ材料は、ある抽出温度で、180分以下、より好ましくは約120分以下にわたって加熱される。
【0060】
例えば、加熱時間は、約15分~約180分、または約15分~約120分、または約20分~約180分、または約20分~約120分、または約25分~約180分、または約25分~約120分、または約30分~約180分、または約30分~約120分、または約40分~約180分、または約40分~約120分、または約50分~約180分、または約50分~約120分、または約60分~約180分、または約60分~約120分であり得る。
【0061】
上記に示した加熱時間は、タバコ材料が抽出温度にて加熱される時間の持続時間に対応し、タバコ材料の温度を抽出温度まで上昇させるのにかかる時間を含まない。
【0062】
抽出温度および加熱時間は、タバコの種類、タバコ材料の他の可能性のある成分、ニコチンの所望のレベル、または液体タバコ抽出物の所望の組成などの要因に応じて、上記に定義された範囲内で選択され得る。抽出温度および時間の組み合わせを制御することによって、液体タバコ抽出物の組成は、液体タバコ抽出物から生成されるエアロゾルの所望の特性に応じて調整することができる。特に、液体タバコ抽出物内の特定のタバコ化合物の割合は、液体タバコ抽出物内の望ましいタバコ化合物と望ましくないタバコ化合物との比率を最大化するために、抽出パラメータの選択を通してある程度調整することができる。
【0063】
特定のタバコ化合物の場合、抽出プロセス中の抽出温度を有する化合物の放出レベルの変動は、任意の所与のタバコ材料について容易に決定することができる。例えば、タバコ材料から放出されるニコチンのレベルは、抽出温度の上昇とともに典型的には増加することが明らかにされている。増加率は、タバコのタイプによって変化することが見出されている。
【0064】
また、タバコ材料から放出されるβ-ダマセノンおよびβ-イオノンなどの望ましいタバコ風味化合物のレベルは、抽出温度が特定のピーク抽出温度まで上昇するにつれて増加し、その後はレベルが減少し始めることも見出されている。そのような風味化合物のピーク抽出温度は、本発明の抽出方法で望ましい風味化合物のレベルを効果的に最適化できるように、典型的には、摂氏100度~摂氏160度の範囲内である。
【0065】
多くの望ましくないタバコ化合物は、抽出温度が閾値温度まで上昇すると共にゆっくりと増加することが見出され、それを超えると急速な増加が観察される。これは、例えば、フェノール化合物、TSNA、およびピラジンのレベルに当てはまり、ブライト種タバコの場合は、フランおよびホルムアルデヒドのレベルに当てはまる。多くの場合、閾値温度は、摂氏100度~摂氏160度の範囲内であり、したがって、望ましくない化合物のレベルは、本発明の抽出方法において効果的に制御され得る。
【0066】
好ましくは、抽出温度および抽出時間は、少なくとも0.1重量パーセント、より好ましくは少なくとも約0.2重量パーセントの液体タバコ抽出物中のニコチン含量を提供するように選択される。
【0067】
好ましくは、抽出温度、または抽出時間、または抽出温度および抽出時間の両方は、液体タバコ抽出物中の少なくとも約0.25の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比を提供するように選択される。
【0068】
β-ダマセノンおよびβ-イオノンは、タバコの風味と関連する望ましい化合物である。タバコ材料から放出されたβ-ダマセノンおよびβ-イオノンの量は、抽出温度が特定のピーク抽出温度まで上昇するにつれて増加し、その後はレベルが減少し始めることも見出されている。そのような風味化合物のピーク抽出温度は、抽出方法で望ましい風味化合物のレベルを効果的に調整および制御できるように、典型的には、摂氏100度~摂氏160度の範囲内である。
【0069】
好ましくは、抽出温度、または抽出時間、または抽出温度および抽出時間の両方は、液体タバコ抽出物中の少なくとも約5x10-4の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比を提供するように選択される。
【0070】
上述のように、加熱工程は、従来の加熱、マイクロ波加熱、または従来の加熱とマイクロ波加熱の組み合わせによって実行され得る。
【0071】
タバコ材料の従来の加熱を実施するための好適な加熱方法は、当業者に公知であり、限定されるものではないが、乾留、水蒸気蒸留、真空蒸留、フラッシュ蒸留、および薄膜水蒸気蒸留を含む。
【0072】
加熱する工程は、不活性雰囲気中で実施されることが好ましい。窒素などの不活性ガスの流れは、加熱する工程中にタバコ材料を通過することが好ましい。一部の事例では、不活性ガスと水または蒸気との組み合わせの流れが使用され得る。抽出中のタバコへの水または蒸気の添加は、抽出された成分の収率を増加させることが見出された。しかしながら、水または蒸気を過剰に加えると、タバコ材料のべたつきなどの加工困難につながる。
【0073】
揮発性タバコ化合物は、不活性ガス(または不活性ガスと水または蒸気との組み合わせ)が揮発性成分の担体として作用するように、加熱工程中に不活性ガスの流れに放出される。不活性ガス流量は、抽出チャンバのスケールおよび形状に基づいて最適化されてもよい。不活性ガスの比較的高い流量は、タバコ材料からの抽出の効率を有利に改善し得る。
【0074】
概して、タバコ材料を加熱すると、タバコ材料中に存在する任意の水分も、蒸気の形態の揮発性化合物とともに放出される。
【0075】
不活性ガスの流れは、タバコ材料の水分含有量の蒸発によって生成される蒸気、および特にニコチンもしくは風味関連化合物またはその両方を含む揮発性化合物を、抽出機器から運び出すのに役立つ。さらに、この工程中にタバコ材料がマイクロ波加熱によって加熱される方法において、不活性ガスの流れは、抽出チャンバ内の湿度を比較的低いレベルに有利に保持し、その結果、タバコ材料を通したマイクロ波の伝播が最大化されることが見出された。
【0076】
さらに、抽出設備内の軽い過圧下での不活性ガス(窒素など)の流れの使用は、抽出設備内の酸素の存在を防止するという利点がある。これは、加熱工程中にタバコ材料がたとえ部分的にであっても燃焼するリスクを防止するという点で望ましい。タバコ材料の制御されていない燃焼は、製造環境内の主要な安全上のリスクを呈することになるため、明らかに望ましくないことになる。しかしながら、発明者らは、タバコ材料の限定的かつ部分的な燃焼でさえ、本方法によって得ることができるタバコ抽出物の品質の低下につながる場合がある(これは望ましくないであろう)ことを見いだした。
【0077】
理論に束縛されることを望むものではないが、タバコ材料の燃焼を防止することによって、あらゆる望ましくない燃焼副産物の形成も防止されることが理解される。さらに、タバコ材料の燃焼を助長することになる条件が防止されると、タバコ材料は、タバコ含有基体(例えば、均質化したタバコ材料)が典型的に「加熱非燃焼式」物品中で加熱される条件を、ある程度模倣する条件下で効果的に加熱される。結果として、消費者が加熱式タバコと関連する味に関与する風味を持つ揮発性種を選択的に抽出することが有利に支持される。
【0078】
したがって、不活性雰囲気中で加熱工程を実行することによって、抽出効率、製品品質、および製造安全性が有利に強化される。
【0079】
不活性ガスの流れにおけるタバコ材料の加熱は、揮発性化合物を含有する不活性ガスの流れが、非水性抽出液体溶媒などの抽出溶媒を含有する容器に、より容易に向けられ得るという追加の利益を有する。
【0080】
任意選択的に、加熱する工程は、真空下で実施され得る。これにより、抽出チャンバ内に存在するいかなる酸素も除去され、これは有利には、タバコ材料、またはタバコ材料の加熱時に生成される揮発性化合物の酸素との反応を防止し得る。酸素の除去はまた、上述のように、タバコ材料のいかなる燃焼も防止する。
【0081】
本発明による方法は、加熱工程中に、霧化された水を抽出チャンバ内に噴霧する工程をさらに含み得る。これは、加熱工程の間の熱交換を改善することが見出されており、これは、霧化された水の蒸発の結果として抽出チャンバ内に発生する乱流に起因すると考えられる。熱交換が改善された結果、加熱工程中に抽出チャンバに水を噴霧する工程を含めることが、ニコチン収率のさらなる改善、ならびにタバコ材料由来の特定の望ましい風味化合物の収率増加をもたらすことが見出された。加熱工程がマイクロ波加熱を含む場合、上述のように、水の存在は、マイクロ波がタバコ材料に与える影響も最適化する。
【0082】
霧化した水の噴霧は、任意の適切な手段を使用して生成され、抽出チャンバ内に吐出され得る。
【0083】
霧化した水が抽出チャンバ内に噴霧される流量は、例えば、抽出チャンバ内のタバコ材料の流量に応じて調整され得る。例えば、霧化した水が抽出チャンバ内に噴霧される平均流量は、タバコ材料の流量の約3パーセント~約30パーセントであり得る。
【0084】
好ましくは、霧化した水は、少なくとも約1バール、より好ましくは少なくとも約2バール、より好ましくは少なくとも約3バールの圧力で噴霧される。
【0085】
水の霧化方法は、当業者に公知であろう。一部の実施形態では、水は、空気などの圧縮不活性ガスの流れで霧化され得る。他の実施形態では、水は、噴霧ノズル内の圧力のために、気体の流れがなくても霧化され得る。
【0086】
液体タバコ抽出物は、単一タイプの天然タバコからなるタバコ材料から生成され得る。あるいは、タバコ材料は、二種以上の天然タバコのブレンドを含み得る。異なるタバコの種類の比は、液体タバコ抽出物から生成されるエアロゾルの所望の特徴に応じて調整され得る。例えば、比較的高レベルのニコチンを提供することが所望される場合、バーレー種タバコの割合は増加し得る。
【0087】
「天然タバコ」という用語は本明細書において、本発明に関連して、葉、中肋、茎および葉柄を含むがこれらに限定されない、ニコチアナ属の任意の植物メンバーの任意の部分を説明するために使用される。特に、天然タバコは、火力乾燥タバコ材料、バーレー種タバコ材料、オリエント葉タバコ材料、メリーランド種タバコ材料、暗色タバコ材料、暗色火干しタバコ材料、Rusticaタバコ材料、ならびに他の希少または特殊タバコ由来の材料、またはそれらのブレンドを含んでもよい。以下でより詳細に説明するように、タバコ材料は、そのまま(例えば、タバコの葉そのまま)か、細断、切断、または粉砕され得る。
【0088】
二つ以上の異なる種類のタバコの組み合わせから液体タバコ抽出物を生産することが所望される場合、タバコの種類は、摂氏100度~摂氏160度の定義された範囲内で異なる抽出温度で別々に加熱されてもよく、またはタバコの種類の混合物は、その範囲内で単一の抽出温度で一緒に加熱されてもよい。
【0089】
タバコ材料は、粉末、葉のスクラップもしくは断片、または無傷の葉などの固体のタバコ材料であってもよい。別の方法として、タバコ材料は、ドウ、ゲル、スラリー、または懸濁液などの液体タバコ材料であってもよい。
【0090】
タバコ材料は、タバコ葉、タバコ茎、再構成タバコ、キャストタバコ、押出成形タバコ、またはタバコ由来ペレットを含むがこれらに限定されない、任意の適切なタバコ材料に由来してもよい。
【0091】
タバコ材料を調製する工程において、タバコは、タバコ材料内のタバコ粒子のサイズを減少させるために粉砕または切断されることが好ましい。これは有利なことに、タバコ材料の加熱の均質性、および抽出の効率を改善する場合がある。
【0092】
タバコ材料は、タバコ材料の含水率を減少させるために、加熱する工程の前に随意に乾燥してもよい。タバコ材料の乾燥は、任意の適切な化学的または物理的乾燥プロセスによって実行されてもよい。あるいは、好ましくは、特にこの段階でマイクロ波加熱が使用される場合、タバコ材料の含水率を増加させるために、加熱工程の前にタバコ材料に水を添加し得る。
【0093】
本発明の特定の実施形態では、タバコ材料を調製する工程は、タバコ材料をエアロゾル形成体で含浸させる工程を含み得る。タバコ材料のこの含浸が、加熱する工程の前に実行される場合、これは有利なことに、加熱に伴いタバコ材料から放出される特定の望ましいタバコ化合物の量を増加させる場合がある。例えば、タバコ材料のグリセリンを用いた含浸は有利なことに、タバコ材料から抽出されるニコチンの量を増加させることが分かっている。別の実施例では、プロピレングリコール、ベジタルグリセリン、1,3-プロパンジオール、トリアセチン、またはそれらの混合物などのエアロゾル形成体でもある非水性抽出溶媒を用いたタバコ材料の含浸は、タバコ材料から抽出される風味化合物の量を有利に増加させることが見出されている。
【0094】
一部の実施形態では、タバコ材料は、例えば、含水率を調整するために、いかなる前処理工程にも供されていない天然タバコからなる。このように、タバコ材料の含水率は、約10~20重量パーセント(通常、天然タバコ材料に見られる含水率)であり得る。他の実施形態では、タバコ材料は、上述したように、添加された水を含み得る。
【0095】
代替的にまたは追加で、タバコ材料は、例えば、非水性溶媒のような一つ以上の追加成分を含み得る。適切な溶媒の例としては、プロピレングリコールが挙げられる。
【0096】
したがって、タバコ材料は、少なくとも約40重量パーセントの天然タバコ材料、または少なくとも約60重量パーセントの天然タバコ材料、または少なくとも約80重量パーセントの天然タバコ材料、または少なくとも約90重量パーセントの天然タバコ材料、または少なくとも約95重量パーセントの天然タバコ材料を含み得る。
【0097】
一部の実施形態では、非水性溶媒含有量は、少なくとも約5重量パーセント、または少なくとも約10重量パーセント、または少なくとも約15重量パーセント、または少なくとも約20重量パーセント、または少なくとも約25重量パーセント、または少なくとも約30重量パーセント、または少なくとも約35重量パーセント、または少なくとも約40重量パーセントであってもよい。
【0098】
随意に、タバコ材料は、加熱する工程の前に酵素的に消化されてもよい。これは、タバコ材料からの特定の風味化合物の収率の著しい増加を提供することが分かっている。
【0099】
特定の実施形態では、タバコ材料を調製する工程において、タバコは、タバコのpHを変化させるように適合されたいかなる処理にも供されないことが好ましい。特に、タバコ材料を調製する工程において、タバコは、タバコのpHを著しく増加させるために適合されたいかなる処理にも供されない。
【0100】
他の実施形態では、方法は、加熱工程の前に、タバコ材料にアルカリ処理を施す工程をさらに含む。方法が、タバコ材料のマイクロ波加熱の前処理工程を含む場合、アルカリ処理は、マイクロ波加熱の前に実施されることが好ましい。アルカリ処理の間、好ましくは、アルカリ溶液をタバコ材料に適用してアルカリ化したタバコ材料を提供し、アルカリ化タバコ材料を次に抽出に使用する。
【0101】
タバコ材料の加熱前にアルカリ処理工程を含むことにより、抽出中に得られるニコチンの収率のさらなる顕著な増加がもたらされることが見出された。
【0102】
好ましくは、アルカリ化したタバコ材料のpHは、少なくとも約8.5、より好ましくは少なくとも約9.0、より好ましくは少なくとも約9.5である。好ましくは、アルカリ化したタバコ材料のpHは、11以下である。
【0103】
「アルカリ化したタバコ材料のpH」は、1:20の比率で水中にアルカリ化されたタバコ材料を懸濁させることによって形成される、アルカリ化したタバコ材料の水性懸濁液のpHを指す。懸濁液のpHは、30分の浸漬時間の後に測定される。
【0104】
上述のように、アルカリ処理工程では、加熱前にタバコ材料にアルカリ溶液を適用する。好適なアルカリ溶液は、例えば、タバコ材料の所望のpHに応じて選択され得る。アルカリ溶液は、アルカリ剤の水溶液であることが好ましい。アルカリ処理工程に好適なアルカリ溶液の好ましい例は、炭酸カリウムの水溶液である。本発明で使用するための他の好適なアルカリ溶液には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、および過酸化水素が含まれるが、これらに限定されない。
【0105】
タバコ材料は、組成物、例えば、アルカロイドの還元糖の含有量を決定するために、加熱する工程の前に随意に分析されてもよい。組成物に関するこの情報は、適切な抽出温度を選択するために有用に使用され得る。
【0106】
タバコ材料の加熱中、揮発性化合物は、タバコ材料からガス状で放出される。揮発性化合物は、任意の好適な技術を使用して収集される。上述のように、タバコ材料が不活性ガスの流れの中で加熱される場合、揮発性化合物は、不活性ガスの流れから収集される。異なる収集方法は、当業者に周知であろう。
【0107】
特定の好ましい実施形態では、揮発性化合物を収集する工程は、揮発性化合物を非水性抽出液体溶媒中に閉じ込める吸収技術を使用する。例えば、揮発性化合物を含有する不活性ガス流は、非水性抽出液体溶媒の容器内に向けられてもよい。非水性抽出液体溶媒は、トリアセチン、グリセリン、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、またはそれらの組み合わせなどのエアロゾル形成体であることが好ましい。液体溶媒としてエアロゾル形成体を使用することは、エアロゾル形成体を最終的な液体タバコ抽出物中の希釈剤として保持することができるため、潜在的に有益である。これは、非水性抽出溶媒を除去するための追加の工程が必ずしも必要でないことを意味する。
【0108】
本発明に関して本明細書で使用される場合、「エアロゾル形成体」という用語は、使用において、エアロゾルの形成を容易にし、好ましくは実質的にエアロゾル発生物品または装置の使用温度にて熱分解に対して抵抗性である化合物または化合物の混合物を指す。適切なエアロゾル形成体の例には、多価アルコール(プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセリンなど)、多価アルコールのエステル(グリセロールモノアセテート、ジアセテートまたはトリアセテートなど)、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸またはポリカルボン酸の脂肪族エステル(ドデカン二酸ジメチル、テトラデカン二酸ジメチルなど)が挙げられる。
【0109】
非水性液体溶媒は、揮発性化合物の液体溶媒への移動を最適化するため、摂氏0度未満の温度で保持されることが好ましい。非水性抽出溶媒は、摂氏-10度以上の温度で保持されることが好ましい。こうした値を下回る温度は、望ましくない凍結現象をもたらし得る。
【0110】
代替的な好ましい実施形態では、揮発性化合物を収集する工程は、揮発性化合物が凝縮され、かつ凝縮物が収集される凝縮技術を使用して行われてもよい。揮発性化合物の凝縮は、例えば、冷却カラム内の任意の好適な装置を使用して行われてもよい。好ましくは、得られた凝縮物は、液体エアロゾル形成体、好ましくはプロピレングリコールに添加される。
【0111】
収集工程における液体エアロゾル形成体の添加、特にプロピレングリコールの添加は、一部のタバコ成分にその傾向があるように、凝縮された揮発性化合物が二相に分かれ、またはエマルションを形成するのを有利に防ぐことができる。理論に拘束されることを意図するものではないが、発明者らは、水性抽出物(hydrolate)(すなわち、天然由来の液体タバコ抽出物の水性画分)におけるタバコ成分の溶解度は、主にその極性、その濃度、および水性抽出物(hydrolate)のpHに依存し、これはタバコのタイプによって変化し得ることを観察した。結果として、エアロゾル形成体の量が不十分である場合、天然由来の液体タバコ抽出物の表面に油性層が形成される傾向がある。こうした油性物質は、方法の第三の工程およびさらなる工程がそれぞれ実施される、捕捉および乾燥機器の異なる位置で凝集する可能性がある。プロピレングリコールなどの液体エアロゾル形成体の添加は、このような層の形成を防ぐのに役立ち、天然由来の液体タバコ抽出物の均質化に有利である。これは、次いで、第四の(乾燥)工程中に望ましい風味関連化合物が失われることを防ぐのに役立ち、その間、こうした化合物は機器表面上に不必要に堆積し得る。
【0112】
さらに、液体エアロゾル形成体は、その極性および揮発性とは無関係に、風味関連化合物を捕捉するのに有利に役立つ。さらに、その後の任意の乾燥工程中、液体エアロゾル形成体は、最も揮発性の高い画分の損失を防ぐのに役立つとともに、天然由来の液体タバコ抽出物から過剰な水分を選択的に除去して、濃縮タバコ抽出物を得るのに有利である。
【0113】
収集工程のエアロゾル形成体としてのプロピレングリコールの使用は、水溶液の水分活性を低下させることによって、プロピレングリコールが抗菌活性を発揮するというさらなる利点を有する。したがって、液体タバコ抽出物中のプロピレングリコールの含有量を調整することによって、抽出物が実質的に微生物活性を全く受けないことを保証することも可能である。
【0114】
さらなる代替として、揮発性化合物を収集する工程は、揮発性化合物が、活性炭などの固体吸着材料の表面上に吸着される吸着技術を使用して実施され得る。次いで、吸着された化合物を液体溶媒中に移動させる。
【0115】
本発明の方法では、次の工程は、収集された揮発性化合物から液体タバコ抽出物を形成することである。この工程の性質は、収集方法に依存し得る。「収集された揮発性化合物」は、典型的には、液体溶媒または担体中のタバコ由来の揮発性化合物の溶液を含む。
【0116】
上述のように、揮発性化合物が非水性抽出溶媒での吸収によって収集される場合、抽出方法は、液体タバコ抽出物の重量に基づいて、約25重量パーセント超の非水性抽出溶媒を含み得る、液体タバコ抽出物を提供する。一部の実施形態では、液体タバコ抽出物は、液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約30重量パーセント超、または液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約35重量パーセント超を含んでもよい。
【0117】
液体タバコ抽出物は、液体タバコ抽出物の重量に基づいて、約65パーセント以下の非水性抽出溶媒を含んでもよい。一部の実施形態では、液体タバコ抽出物は、液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の60重量パーセント以下、または液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の55重量パーセント以下を含んでもよい。
【0118】
一部の実施形態では、液体タバコ抽出物は、液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約25重量パーセントから液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約65重量パーセントを含んでもよい。液体タバコ抽出物は、液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約25重量パーセントから液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約60重量パーセントを含んでもよい。液体タバコ抽出物は、液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約25重量パーセントから液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約55重量パーセントを含んでもよい。
【0119】
他の実施形態では、液体タバコ抽出物は、液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約30重量パーセントから液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約65重量パーセントを含んでもよい。液体タバコ抽出物は、液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約30重量パーセントから液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約60重量パーセントを含んでもよい。液体タバコ抽出物は、液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約30重量パーセントから液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約55重量パーセントを含んでもよい。
【0120】
さらなる実施形態では、液体タバコ抽出物は、液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約35重量パーセントから液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約65重量パーセントを含んでもよい。液体タバコ抽出物は、液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約35重量パーセントから液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約60重量パーセントを含んでもよい。液体タバコ抽出物は、液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約35重量パーセントから液体タバコ抽出物の重量に基づく非水性抽出溶媒の約55重量パーセントを含んでもよい。非水性抽出溶媒は、トリアセチン、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、またはそれらの混合物であることが好ましい。
【0121】
好ましい実施形態では、液体タバコ抽出物中の(β-イオノン+β-ダマセノン)対(フェノール)の重量比は、少なくとも約0.25である。
【0122】
好ましい実施形態では、液体タバコ抽出物中の(フラネオール+(2,3-ジエチル-5-メチルピラジン)*100))対(ニコチン)の重量比は、少なくとも約5x10-4である。
【0123】
上述のように、揮発性化合物が液体溶媒中の吸収によって収集される場合、液体タバコ抽出物を形成する工程は、溶液を濃縮するために、液体溶媒中の揮発性化合物の溶液を乾燥することを含むことが好ましい。これは、例えば、ニコチンまたは風味化合物の所望の濃度に到達するために実施され得る。乾燥は、乾燥(desiccation)、分子ふるい、凍結乾燥、相分離、蒸留、膜透過、水の制御された結晶化および濾過、逆吸湿性、超遠心分離、液体クロマトグラフィー、逆浸透または化学乾燥を含むがこれらに限定されない、任意の適切な手段を使用して実施され得る。
【0124】
好ましい実施形態では、液体溶媒中の揮発性化合物の溶液は、乾燥によって濃縮される。
【0125】
言い換えれば、液体溶媒中の揮発性化合物の溶液を加熱して、少なくとも一部の水を蒸発させ、濃縮タバコ抽出物を得る。この目的のために、液体溶媒中の揮発性化合物の溶液は、タバコ抽出物中の含水率が少なくとも約60パーセント減少するように、ある温度までかつ一定時間加熱されてもよい。
【0126】
部分的に乾燥した濃縮タバコ抽出物は、本発明による方法の一次生成物とみなすことができる。第二の工程中の加熱時に、揮発性種および水分含有量の大部分が抽出された、枯渇したタバコ材料は、本方法の副産物とみなされ得る。こうした枯渇したタバコ材料は、典型的には、約1~5重量パーセント、好ましくは約2~3重量パーセントの水分含有量を有し得る。
【0127】
一実施形態では、液体溶媒中の揮発性化合物の溶液は、真空下で、好ましくは少なくとも約摂氏70度の温度で加熱される。別の実施形態では、液体溶媒中の揮発性化合物の溶液は、空気流、好ましくは比較的低い湿度を有する空気流下で、少なくとも摂氏約35度の温度で加熱される。したがって、天然由来の濃縮タバコ抽出物は、本発明による方法によって取得することができる。そのような天然由来の濃縮タバコ抽出物の一つは、典型的には約20重量パーセント未満の水を含有する。
【0128】
あるいは、揮発性化合物が凝縮によって収集される場合、液体タバコ抽出物を形成する工程は、凝縮物をエアロゾル形成体などの液体溶媒に添加することを含み得る。
【0129】
随意に、液体タバコ抽出物を形成する工程は、濾過工程を含む。
【0130】
随意に、液体タバコ抽出物を形成する工程は、異なるタバコ材料に由来する抽出物が組み合わされるブレンドする工程を含む。
【0131】
随意に、液体タバコ抽出物を形成する工程は、揮発性化合物の溶液に、有機酸などの一つまたは複数の添加剤を添加することを含む。しかしながら、多くの場合、液体タバコ抽出物は、添加剤を含まずに使用することに適している。
【0132】
本発明は、上で詳細に説明した本発明の第一の態様による方法によって生産された液体タバコ抽出物をさらに提供する。上述のように、本発明の方法は、ニコチンおよび風味化合物などの所望のタバコ化合物と望ましくないタバコ化合物との非常に望ましい比を有する天然液体タバコ抽出物を有利に生産する。
【0133】
液体タバコ抽出物は、エアロゾル発生システムで使用するための、液体ニコチン組成物またはゲルニコチン組成物などのニコチン組成物の生産に特に好適である。こうしたエアロゾル発生システムでは、ニコチン組成物は、典型的には、エアロゾル発生デバイス内で加熱される。
【0134】
本明細書で使用される場合、用語「エアロゾル発生装置」は、本発明による方法によって取得されてエアロゾルを生産するなど、液体タバコ抽出物を組み込んだニコチン組成物と相互作用するヒーター要素を含む装置を指す。使用中、揮発性化合物は、熱伝達によってニコチン組成物から放出され、エアロゾル発生装置を通して引き込まれた空気に取り込まれる。放出された化合物は冷めるにつれて凝縮してエアロゾルを形成し、これを消費者が吸い込む。
【0135】
本発明による液体タバコ抽出物を含むニコチン組成物の加熱に伴い、抽出プロセス中にタバコ材料から収集された揮発性化合物を含有するエアロゾルが放出される。抽出パラメータのパラメータの制御を介して液体タバコ抽出物の組成を制御することによって、液体タバコ抽出物から生産され、消費者に送達される、得られたエアロゾルの組成および特性を調整することが可能である。
【0136】
ニコチン組成物は、さらなるニコチンの添加なしに、本発明による抽出プロセスから生じる液体タバコ抽出物であってもよい。ニコチン組成物は、さらなる風味化合物の添加なしに、本発明による抽出プロセスから生じる液体タバコ抽出物であってもよい。ニコチン組成物は、さらなるフラネオールの添加なしに、本発明による抽出プロセスから生じる液体タバコ抽出物であってもよい。ニコチン組成物は、さらなる溶媒の添加なしに、本発明による抽出プロセスから生じる液体タバコ抽出物であってもよい。
【0137】
あるいは、液体タバコ抽出物は、ニコチン組成物を形成するために追加の処理工程に供されてもよい。こうした追加の工程に供される場合でも、ニコチン組成物は、さらなるニコチン化合物または風味化合物を追加する必要なく形成され得る。
【0138】
好ましくは、液体タバコ抽出物は、上述の乾燥工程で濃縮されて、濃縮タバコ抽出物を形成してもよく、濃縮タバコ抽出物を使用してニコチン組成物を形成してもよい。
【0139】
好ましくは、濃縮タバコ抽出物は、濃縮タバコ抽出物の重量に基づいて、8重量パーセント~15重量パーセントの水を含む。
【0140】
乾燥工程は、約65重量パーセント~約95重量パーセント、好ましくは約65重量パーセント~85重量パーセント、最も好ましくは約75重量パーセント~約85重量パーセントの非水性抽出溶媒含有量を有し得る濃縮タバコ抽出物を提供する。非水性抽出溶媒は、トリアセチン、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、またはそれらの混合物であることが好ましい。
【0141】
乾燥工程は、少なくとも約0.2重量パーセントのニコチン、好ましくは約0.5重量パーセント~約12重量パーセントのニコチン、最も好ましくは約2重量パーセント~約8重量パーセントのニコチンのニコチン含有量を有し得る、濃縮タバコ抽出物を提供する。
【0142】
好ましくは、追加の非水性溶媒を、液体タバコ抽出物または濃縮タバコ抽出物に添加して、ニコチン組成物を形成してもよい。
【0143】
ニコチン組成物は、液体ニコチン組成物またはゲルニコチン組成物であってもよい。
【0144】
ニコチン組成物は、少なくとも約10重量パーセントの液体タバコ抽出物を含んでもよい。好ましくは、ニコチン組成物は、少なくとも約20重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。より好ましくは、ニコチン組成物は、少なくとも約30重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。好ましい実施形態では、ニコチン組成物は、少なくとも約40重量パーセントの液体タバコ抽出物、より好ましくは少なくとも約50重量パーセントの液体タバコ抽出物、さらにより好ましくは少なくとも約60重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。特に好ましい実施形態では、ニコチン組成物は、少なくとも約65重量パーセントの液体タバコ抽出物、より好ましくは少なくとも約70重量パーセントの液体タバコ抽出物、さらにより好ましくは少なくとも約75重量パーセントの液体タバコ抽出物、最も好ましくは少なくとも約80重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。
【0145】
一部の実施形態では、液体タバコ抽出物は、濃縮タバコ抽出物である。ニコチン組成物は、少なくとも約10重量パーセントの濃縮タバコ抽出物、少なくとも約20重量パーセントの濃縮タバコ抽出物、少なくとも約30重量パーセントの濃縮タバコ抽出物、少なくとも約40重量パーセントの濃縮タバコ抽出物、少なくとも約50重量パーセントの濃縮タバコ抽出物、好ましくは少なくとも約60重量パーセントの濃縮タバコ抽出物、より好ましくは少なくとも約70重量パーセントの濃縮タバコ抽出物、さらにより好ましくは少なくとも約75重量パーセントの濃縮タバコ抽出物、最も好ましくは少なくとも約80重量パーセントの濃縮タバコ抽出物を含み得る。
【0146】
一部の実施形態では、ニコチン組成物は、約40重量パーセント~約95重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。より好ましくは、ニコチン組成物は、約40重量パーセント~約95重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。さらにより好ましくは、ニコチン組成物は、約50重量パーセント~約95重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。最も好ましくは、ニコチン組成物は、約60重量パーセント~約95重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。一部の特に好ましい実施形態では、ニコチン組成物は、約70重量パーセント~約95重量パーセントの液体タバコ抽出物、さらにより好ましくは約80重量パーセント~約95重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。
【0147】
一部の実施形態では、ニコチン組成物は、約40重量パーセント~約90重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。より好ましくは、ニコチン組成物は、約40重量パーセント~約90重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。さらにより好ましくは、ニコチン組成物は、約50重量パーセント~約90重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。最も好ましくは、ニコチン組成物は、約60重量パーセント~約90重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。一部の特に好ましい実施形態では、ニコチン組成物は、約70重量パーセント~約90重量パーセントの液体タバコ抽出物、さらにより好ましくは約80重量パーセント~約90重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。
【0148】
一部の実施形態では、ニコチン組成物は、約40重量パーセント~約85重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。より好ましくは、ニコチン組成物は、約40重量パーセント~約85重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。さらにより好ましくは、ニコチン組成物は、約85重量パーセント~約90重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。最も好ましくは、ニコチン組成物は、約60重量パーセント~約85重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。一部の特に好ましい実施形態では、ニコチン組成物は、約70重量パーセント~約85重量パーセントの液体タバコ抽出物、さらにより好ましくは約80重量パーセント~約85重量パーセントの液体タバコ抽出物を含む。
【0149】
ニコチン組成物は、最大約100重量パーセントの液体タバコ抽出物を含んでもよい。一部の実施形態では、ニコチン組成物は、追加の非水性溶媒、風味剤、またはニコチンの添加を必要とせずに、液体タバコ抽出物から直接形成され得る。つまり、ニコチン組成物は、100重量パーセントの液体タバコ抽出物を含んでもよい。一部の実施形態では、液体タバコ抽出物は、濃縮タバコ抽出物であり、ニコチン組成物が100重量パーセントの濃縮タバコ抽出物を含み得る。ニコチン組成物が、100重量パーセントの液体タバコ抽出物または100重量パーセントの濃縮タバコ抽出物を含む実施形態では、追加の非水性溶媒は存在しない。
【0150】
あるいは、一部の実施形態では、液体タバコ抽出物を含むニコチン組成物は、追加の非水性溶媒を含んでもよい。追加的な非水性溶媒は、抽出工程後に添加された非水性溶媒である。追加的な非水性溶媒は、液体タバコ抽出物中に存在する非水性抽出溶媒を補足する溶媒である。液体タバコ抽出物が濃縮タバコ抽出物である実施形態では、濃縮タバコ抽出物を含むニコチン組成物は、追加の非水性溶媒を含んでもよい。
【0151】
追加的な非水性溶媒は、エアロゾル形成体であってもよい。好ましくは、追加的な非水性溶媒は、トリアセチン、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、またはそれらの混合物である。
【0152】
ニコチン組成物が追加の非水性溶媒を含む実施形態では、ニコチン組成物は、追加の非水性溶媒の90重量パーセント以下を含み得る。好ましくは、ニコチン組成物は、追加の非水性溶媒の80重量パーセント以下を含む。より好ましくは、ニコチン組成物は、追加の非水性溶媒の70重量パーセント以下を含む。好ましい実施形態では、ニコチン組成物は、追加の非水性溶媒の約60重量パーセント以下、より好ましくは追加の非水性溶媒の約50重量パーセント以下、さらにより好ましくは追加の非水性溶媒の約40重量パーセント以下を含む。特に好ましい実施形態では、ニコチン組成物は、追加の非水性溶媒の約35重量パーセント以下、より好ましくは追加の非水性溶媒の約30重量パーセント以下、さらにより好ましくは追加の非水性溶媒の約25重量パーセント以下、最も好ましくは液体タバコ抽出物の約20重量パーセント以下を含む。
【0153】
本発明による方法の手段によって調製されるニコチン組成物において、ニコチン組成物中のニコチン含有量の、ニコチン組成物の総重量に基づいて少なくとも50重量パーセントは、抽出後に添加されるのではなく、タバコ抽出物から得ることができる。好ましい実施形態では、ニコチン組成物中のニコチン含有量の、ニコチン組成物の総重量に基づいて少なくとも80重量パーセントは、抽出後に添加されるのではなく、タバコ抽出物から得られる。さらにより好ましくは、ニコチン組成物中のニコチン含有量の、ニコチン組成物の総重量に基づいて少なくとも90重量パーセントは、抽出後に添加されるのではなく、タバコ抽出物から得られる。
【0154】
本発明による方法の手段によって調製されるニコチン組成物において、ニコチン組成物中の非水性抽出溶媒含有量の、ニコチン組成物の総重量に基づいて少なくとも50重量パーセントは、抽出後に添加されるのではなく、タバコ抽出物から得ることができる。好ましい実施形態では、ニコチン組成物中の非水性抽出溶媒含有量の、ニコチン組成物の総重量に基づいて少なくとも80重量パーセントは、抽出後に添加されるのではなく、タバコ抽出物から得られる。さらにより好ましくは、ニコチン組成物中の非水性抽出溶媒含有量の、ニコチン組成物の総重量に基づいて少なくとも90重量パーセントは、抽出後に添加されるのではなく、タバコ抽出物から得られる。
【0155】
本発明による方法の手段によって調製されるニコチン組成物において、ニコチン組成物中の含水率の、ニコチン組成物の総重量に基づいて少なくとも50重量パーセントは、抽出後に添加されるのではなく、タバコ抽出物から得ることができる。好ましい実施形態では、ニコチン組成物中の含水率の、ニコチン組成物の総重量に基づいて少なくとも80重量パーセントは、抽出後に添加されるのではなく、タバコ抽出物から得られる。さらにより好ましくは、ニコチン組成物中の含水率のニコチン組成物の総量に基づく少なくとも90重量パーセントは、抽出後に添加されるのではなく、タバコ抽出物に由来する。
【0156】
本発明による方法の手段によって調製されるニコチン組成物において、ニコチン組成物中の所望のタバコ風味種含有量の、ニコチン組成物の総重量に基づいて少なくとも50重量パーセントは、抽出後に添加されるのではなく、タバコ抽出物から得ることができる。好ましい実施形態では、ニコチン組成物中の所望の風味種含有量の、ニコチン組成物の総重量に基づいて少なくとも80重量パーセントは、抽出後に添加されるのではなく、タバコ抽出物から得られる。さらにより好ましくは、ニコチン組成物中の所望の風味種含有量の、ニコチン組成物の総重量に基づいて少なくとも90重量パーセントは、抽出後に添加されるのではなく、タバコ抽出物から得られる。
【0157】
ニコチン組成物中の非水性溶媒の総含有量は、非水性抽出溶媒、および存在する場合には追加の非水性溶媒を含む。ニコチン組成物は、約10重量パーセント~約95重量パーセントの非水性溶媒の総含有量を含み得る。ニコチン組成物は、好ましくは、約50重量パーセント~約95重量パーセント、例えば、約65重量パーセント~約95重量パーセント、より好ましくは約70重量パーセント~約90重量パーセント、最も好ましくは約80重量パーセント~約90重量パーセントの非水性溶媒の総含有量を含む。非水性溶媒は、トリアセチン、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、またはそれらの混合物であることが好ましい。
【0158】
ニコチン組成物は、約10重量パーセント~約95重量パーセントのプロピレングリコールの総含有量を含み得る。ニコチン組成物は、約20重量パーセント~約95重量パーセント、例えば約50重量パーセント~約95重量パーセント、または約65重量パーセント~約95重量パーセント、約70重量パーセント~約90重量パーセント、または約80重量パーセント~約90重量パーセントのプロピレングリコールの総含有量を含み得る。
【0159】
ニコチン組成物は、約10重量パーセント~約95重量パーセントのトリアセチンの総含有量を含み得る。ニコチン組成物は、約20重量パーセント~約95重量パーセント、例えば約50重量パーセント~約95重量パーセント、約70重量パーセント~約90重量パーセント、または約65重量パーセント~約95重量パーセント、または約80重量パーセント~約90重量パーセントのトリアセチンの総含有量を含み得る。
【0160】
ニコチン組成物は、約10重量パーセント~約95重量パーセントのグリセリンの総含有量を含み得る。ニコチン組成物は、約20重量パーセント~約95重量パーセント、例えば約50重量パーセント~約95重量パーセント、または約65重量パーセント~約95重量パーセント、約70重量パーセント~約90重量パーセント、または約80重量パーセント~約90重量パーセントのグリセリンの総含有量を含み得る。
【0161】
ニコチン組成物は、約10重量パーセント~約95重量パーセントの1,3-プロパンジオールの総含有量を含み得る。ニコチン組成物は、約20重量パーセント~約95重量パーセント、例えば約50重量パーセント~約95重量パーセント、または約65重量パーセント~約95重量パーセント、または約80重量パーセント~約90重量パーセントの1,3-プロパンジオールの総含有量を含み得る。
【0162】
本発明のニコチン組成物は、少なくとも0.2重量パーセントのニコチンを含む。ニコチン組成物液体タバコ抽出物中のニコチン含有量は、少なくとも約0.4重量パーセントであることがより好ましい。ニコチン組成物は、約12重量パーセント以下、例えば約10重量パーセント以下、好ましくは約8重量パーセント以下、より好ましくは約5重量パーセント以下、好ましくは約3.6重量パーセント以下のニコチン含有量を有し得る。最も好ましくは、ニコチン組成物は、ニコチン組成物の重量に基づいて、約0.4重量パーセント~3.6重量パーセントのニコチンを含む。
【0163】
ニコチン組成物は、1重量パーセント~85重量パーセントの水を含んでもよい。ニコチン組成物は、2重量パーセント~50重量パーセントの水を含んでもよい。ニコチン組成物は、3重量パーセント~30重量パーセントの水を含んでもよい。ニコチン組成物は、5重量パーセント~25重量パーセントの水を含んでもよい。ニコチン組成物は、8重量パーセント~20重量パーセントの水を含んでもよい。ニコチン組成物は、好ましくは、10重量パーセント~15重量パーセントの水を含む。
【0164】
一部の実施形態では、ニコチン組成物は、一つ以上の水溶性有機酸を含んでもよい。本発明に関連して本明細書で使用される場合、「水溶性有機酸」という用語は、20℃で約500mg/ml以上の水溶性を有する有機酸を表す。
【0165】
一つ以上の水溶性有機酸は、有利なことに、一つ以上のニコチン塩の形成により液体タバコ抽出物中のニコチンに結合し得る。一つ以上のニコチン塩は、有利なことに、液体タバコ抽出物中または非水性溶媒中に存在する水中に溶解され、安定化され得る。これは、有利なことに、上で考察されたように、上部気道におけるニコチン吸着を減少させ、肺のニコチン送達および保持を強化し得る。
【0166】
好ましくは、ニコチン組成物の水溶性有機酸含有量は、約2重量パーセント以上である。より好ましくは、ニコチン組成物の水溶性有機酸含有量は、約3重量パーセント以上である。
【0167】
水溶性有機酸は、酢酸であってもよい。
【0168】
外因性酢酸は、タバコ植物材料以外の供給源から添加された酢酸であり、抽出処理条件および技術を使用して、タバコ植物材料から分離、除去、または導出されたタバコ植物に天然に存在する酢酸ではない。
【0169】
酢酸が液体タバコ抽出物に添加されてニコチン組成物を形成する場合、外因性および内因性の酢酸の両方を含む、ニコチン組成物中の酢酸の総含有量は、好ましくは約0.01重量パーセント~約8重量パーセント、例えば、約0.03重量パーセント~約8重量パーセント、約0.3重量パーセント~約8重量パーセント、約2重量パーセント~約8重量パーセント、または約3重量パーセント~約8重量パーセントである。より好ましくは、酢酸の総含有量は、約0.01重量パーセント~約6重量パーセント、例えば約0.03重量パーセント~約6重量パーセント、約0.3重量パーセント~約6重量パーセント、約2重量パーセント~約6重量パーセント、または約3重量パーセント~約6重量パーセントである。
【0170】
好ましくは、ニコチン組成物の水溶性有機酸含有量は、約8重量パーセント以下である。より好ましくは、ニコチン組成物の水溶性有機酸含有量は、約6重量パーセント以下である。
【0171】
好ましくは、ニコチン組成物の水溶性有機酸含有量は、約2重量パーセント~約8重量パーセントである。例えば、ニコチン組成物の水溶性有機酸含有量は、約2重量パーセント~約6重量パーセントであってもよい。
【0172】
より好ましくは、ニコチン組成物の水溶性有機酸含有量は、約3重量パーセント~約8重量パーセントである。例えば、ニコチン組成物の水溶性有機酸含有量は、約3重量パーセント~約6重量パーセントであってもよい。
【0173】
ニコチン組成物は、一つ以上の非タバコ由来風味剤を含んでもよい。好適な非タバコ由来風味剤としては、メントールが挙げられるが、これに限定されない。
【0174】
好ましくは、ニコチン組成物は、約4重量パーセント以下の非タバコ由来風味剤を有する。ニコチン組成物は、約3重量パーセント以下の非タバコ由来風味剤を有することがより好ましい。例えば、本発明の方法によって生産される液体タバコ抽出物を使用して、ニコチンの添加を必要とせずに、1ミリリットル当たり10~20mgのニコチンを含むニコチン組成物を作製することができる。
【0175】
エアロゾル発生システムでの使用に適したニコチン組成物は、水および追加のエアロゾル形成体と組み合わせて、本発明による方法で生産された液体タバコ抽出物を含んでもよい。ニコチン組成物は、例えば、約10重量パーセント~約20重量パーセントの水を含んでもよい。
【0176】
本発明による液体タバコ抽出物を含むニコチン組成物は、エアロゾル発生システムで使用するためのカートリッジ内に提供されてもよい。カートリッジは、ニコチン組成物からエアロゾルを発生させるように構成されたアトマイザーを備えてもよい。霧化器は、ニコチン組成物を加熱してエアロゾルを発生するように構成された熱霧化器であってもよい。熱霧化器は、例えばヒーターと、ニコチン組成物をヒーターに移動するように構成された液体搬送要素とを備えてもよい。液体搬送要素は毛細管芯を含んでもよい。あるいは、アトマイザーは、加熱以外の手段によって、ニコチン組成物からエアロゾルを生成するように構成される、非熱アトマイザーであってもよい。非熱アトマイザーは、例えば、衝突噴流アトマイザー、超音波アトマイザー、または振動メッシュアトマイザーであってもよい。
【0177】
本発明の液体タバコ抽出物から形成されるニコチン組成物を含有するカートリッジは、カートリッジの少なくとも一部分を受けるように構成されたハウジングを含む、任意の好適なエアロゾル発生デバイスと併せて使用され得る。エアロゾル発生デバイスは、電池および制御電子機器を含んでもよい。
【0178】
本発明の特定の実施形態を、例証としてのみではあるが、ここでさらに説明する。
【0179】
第一の実施形態による抽出方法では、タバコ材料は、煙管硬化されたブライトタバコ材料から調製される。タバコ材料は、2.5ミリメートル×2.5ミリメートルの最大寸法を有するタバコ細断片を形成するように切断され、タバコ細断片は、タバコ細胞が破裂するまでマイクロ波加熱によって前処理される。前処理されたタバコ細断片を冷却し、次いで湿度室に入れ、含水率を約10重量パーセントに増加させる。次いで、タバコ細断片を圧縮せず、一時間当たり30kgのタバコ流量で抽出チャンバに供給する。タバコ材料は、抽出チャンバ内で2時間にわたり、摂氏130度の温度に加熱される。加熱中に、窒素の流れが、一分当たり約20リットルの流量で抽出チャンバを通過する。
【0180】
加熱工程中にタバコ材料から放出された揮発性化合物は、摂氏0度で凝縮して収集され、ポリプロピレングリコールで形成された液体溶媒に加えられる。
【0181】
収集された揮発性化合物を有するプロピレングリコールの溶液を、乾燥プロセスで濃縮して、液体タバコ抽出物の水分レベルを約15パーセントに低減する。
【0182】
第二の実施形態による抽出方法では、タバコ材料は、煙管硬化されたブライトタバコ材料から調製される。タバコ材料は、2.5ミリメートル×2.5ミリメートルの寸法を有するタバコ細断片を形成するように切断され、水をタバコ材料に加えて、含水率を約20重量パーセントまで増加させる。タバコ細断片は、圧縮せずに抽出チャンバに装填される。タバコ材料は、抽出チャンバ内で30分間にわたって摂氏130度の温度に加熱される。加熱は、マイクロ波加熱および抵抗加熱の組み合わせによって行われ、マイクロ波加熱は、タバコ材料を加熱する電力の少なくとも50パーセントを提供する。加熱中に、窒素の流れが、約40リットル/分の流量で抽出チャンバを通過する。
【0183】
加熱工程中にタバコ材料から放出された揮発性化合物は、摂氏0度で凝縮して収集され、ポリプロピレングリコールで形成された液体溶媒に加えられる。収集された揮発性化合物を有するプロピレングリコールの溶液を、乾燥プロセスで濃縮して、液体タバコ抽出物の水分レベルを約15パーセントに低減する。
【国際調査報告】