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特表2023-553422ウイルスゲノムを切断するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ウイルスゲノムを切断するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/04 20060101AFI20231214BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231214BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20231214BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231214BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20231214BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20231214BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20231214BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20231214BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20231214BHJP
   C12N 9/22 20060101ALN20231214BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
C12N7/04 ZNA
A61K48/00
A61K38/46
A61K31/7088
A61P31/20
A61P31/22
A61P31/18
C12N15/09 110
C12N9/16 Z
C12N9/22
C12N15/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534383
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 US2021061398
(87)【国際公開番号】W WO2022119919
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/120,089
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518399047
【氏名又は名称】ユナイテッド ステイツ ガバメント アズ リプレゼンテッド バイ ザ デパートメント オブ ベテランズ アフェアーズ
【氏名又は名称原語表記】UNITED STATES GOVERNMENT AS REPRESENTED BY THE DEPARTMENT OF VETERANS AFFAIRS
(71)【出願人】
【識別番号】515147139
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ ダートマス カレッジ
(71)【出願人】
【識別番号】523207881
【氏名又は名称】ダートマス-ヒッチコック クリニック アンド マリー ヒッチコック メモリアル ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイデン マシュー エス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065BD13
4B065BD35
4B065BD44
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084DC22
4C084MA02
4C084NA01
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB33
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA01
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】
細胞内のウイルスを不活性化する方法であって、Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼ、又はCas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物と、第1のガイドRNA(gRNA)、又は第1のgRNAをコードする核酸構築物とを、ウイルスゲノムを含む細胞に投与することを含む方法が開示され、Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼは、ウイルスゲノム内の第1の標的配列及び第2の標的配列においてウイルスゲノムを切断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内のウイルスを不活性化する方法であって、ウイルスゲノムを含む細胞に、
Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼ、又はCas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物と、
第1のガイドRNA(gRNA)、又は前記第1のgRNAをコードする核酸構築物と、を投与することを含み、
前記Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼが、前記ウイルスゲノム内の第1の標的配列及び第2の標的配列において前記ウイルスゲノムを切断する、方法。
【請求項2】
前記第1のgRNAが、前記ウイルスゲノム内の前記第1の標的配列及び前記第2の標的配列に相補的である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のgRNAが、前記ウイルスゲノム内の前記第1の標的配列及び前記第2の標的配列にハイブリダイズして、前記ウイルスゲノム内の前記第1の標的配列及び前記第2の標的配列においてCas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼ切断をもたらす、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第2のgRNAを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のgRNAは、前記ウイルスゲノムの前記第1の標的配列に相補的であり、前記第2のgRNAは、前記ウイルスゲノム内の前記第2の標的配列に相補的である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のgRNAは、前記ウイルスゲノム内の前記第1の標的配列にハイブリダイズし、前記第2のgRNAは、前記ウイルスゲノム内の前記第2の標的配列にハイブリダイズして、前記ウイルスゲノム内の前記第1の標的配列及び前記第2の標的配列においてCas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼ切断をもたらす、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の標的配列及び前記第2の標的配列における前記切断は、前記第1の標的配列及び前記第2の標的配列において5’一本鎖DNA(ssDNA)オーバーハングをもたらす、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の標的配列及び前記第2の標的配列における前記5’ssDNAオーバーハングが、相補的な重複配列を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の標的配列及び前記第2の標的配列の前記5’ssDNAをハイブリダイズすることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の標的配列及び前記第2の標的配列における前記5’ssDNAオーバーハングに隣接する配列が、相同配列を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の標的配列及び前記第2の標的配列内の又はそれらに隣接する前記相同配列が、マイクロホモロジー媒介末端結合を促進する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の標的配列と前記第2の標的配列との間のウイルス配列、又はその一部は、前記ウイルス又はプロウイルスゲノムから除去される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が細胞ゲノムを含み、前記ウイルスゲノムが前記細胞ゲノムに組み込まれている、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルスゲノムが、独立したゲノム要素として存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ウイルスは、二本鎖DNA(dsDNA)ゲノム又はdsDNAからなるウイルス複製中間体を有する、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ウイルスが、科Retroviridae、Hepadnaviridae、Herpesviridae、Adenoviridae、Papillomaviridae、Poxviridae、Polyomaviridae、Asfarviridaeに由来する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ウイルスが、レトロウイルス科亜科Lentivirus、Deltaretroviridae、Spumaretrovirinae、Gammaretrovirinaeに由来する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルスが、HIV-1、B型肝炎ウイルス(HBV)、又はHTLV-1である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルスゲノムの少なくとも一部が、前記ウイルスゲノムの残りの部分から切除される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞のDNAが、Cas12dによって切断されない、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記Cas12dエンドヌクレアーゼが、修飾Cas12dである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
修飾Cas12d又はCas12eが、検出可能な標識を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記検出可能な標識が、蛍光タンパク質又は蛍光酵素である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記修飾Cas12d又はCas12eが、核局在化配列を含む、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が、真核細胞である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞が、ヒト細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
細胞に投与するステップが、宿主細胞を含む対象に投与することを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1のgRNAをコードする前記核酸構築物と前記第2のgRNAをコードする前記核酸構築物とが、同じ核酸構築物である、請求項4~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1のgRNAをコードする前記核酸構築物と前記第2のgRNAをコードする前記核酸構築物とが、異なる核酸構築物である、請求項4~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼをコードする前記核酸構築物が、前記第1のgRNA又は第2のgRNAのうちの少なくとも1つをコードする同じ核酸構築物である、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記投与するステップが、前記Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼをコードする前記核酸構築物、前記第1のgRNAをコードする前記核酸構築物、及び前記第2のgRNAをコードする前記核酸構築物のうちの1つ以上を含むウイルスベクターを投与することを含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の標的配列又は第2の標的配列のうちの少なくとも1つが、表1からの配列である、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の標的配列及び第2の標的配列が、表2の標的配列のペアのうちの1つである、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の標的配列及び第2の標的配列が、前記ウイルスゲノムの反対側の鎖上にある、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1のgRNAが第1のCRISPR RNA(crRNA)を含み、前記第2のgRNAが第2のcrRNAを含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第1のcrRNAの少なくとも一部が、前記ウイルスゲノム内の第1の標的配列に相補的であり、前記第2のcrRNAの少なくとも一部が、前記ウイルスゲノム内の第2の標的配列に相補的である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第1のgRNAが、第1のcrRNA及び第1のトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)の両方を含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第2のgRNAが、第2のcrRNA及び第2のtracrRNAの両方を含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第1のcrRNAの少なくとも一部が、前記第1のtracrRNAの少なくとも一部に相補的であり、前記第2のcrRNAの少なくとも一部が、前記第2のtracrRNAの少なくとも一部に相補的である、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
第3のgRNA、又は前記第3のgRNAをコードする核酸構築物を更に含み、前記第3のgRNAが、tracrRNAを含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記tracrRNAの少なくとも一部が、前記第1のcrRNAの少なくとも一部に相補的である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
第4のgRNA、又は前記第4のgRNAをコードする核酸構築物を更に含み、前記第4のgRNAがtracrRNAを含む、請求項1~38、42又は43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記tracrRNAの少なくとも一部が、前記第2のcrRNAの少なくとも一部に相補的である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ウイルスゲノムを含む細胞を有する対象を治療する方法であって、前記対象に、
Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼ、又は前記Cas12d若しくは前記Cas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物と、
第1のgRNA、又は前記第1のgRNAをコードする核酸構築物であって、前記第1のgRNAは、前記ウイルスの前記ウイルスゲノム内の第1の標的配列に相補的である、第1のgRNA又は前記第1のgRNAをコードする核酸構築物と、
第2のgRNA、又は前記第2のgRNAをコードする核酸構築物であって、前記第2のgRNAは、前記ウイルスの前記ウイルスゲノム内の第2の標的配列に相補的である、第2のgRNA又は前記第2のgRNAをコードする核酸構築物と、を投与することを含み、
前記第1のgRNAが前記ウイルスゲノム内の前記第1の標的配列にハイブリダイズし、前記第2のgRNAが前記ウイルスゲノム内の前記第2の標的配列にハイブリダイズして、前記ウイルスゲノム内の前記第1の標的配列及び前記第2の標的配列においてCasX又はCasYエンドヌクレアーゼ切断をもたらす、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月1日に出願された米国仮特許出願第63/120,089号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する声明
本発明は、国立総合医科学研究所によって授与された1R43GM133289-01に基づく政府支援により行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ヒト細胞株に、ガイドRNAを発現するプラスミドと、プラスミド上に運ばれるモデルプロウイルス配列内の単一領域を切断したCas9遺伝子とをトランスフェクトすることによって、CRISPR/Cas技術はウイルス系に適用されている。同様の技術を使用して、プロウイルスの5’末端及び3’末端の両方を標的にする複数のガイドRNA(gRNA)の使用が、細胞株中のプロウイルスゲノム全体を切除できる、又は変異の導入によってウイルスを不活性化することができることが実証された。これらの系において使用されるCas9及びgRNAは、gRNA標的配列を破壊する小さな変異、欠失、又は挿入をもたらす、エラーを起こしやすいDNA修復機構によって作用する、両端における平滑末端切断をもたらす。
【0004】
先行技術の活用は課題を残した。具体的には、ウイルス又はプロウイルスゲノムの除去を達成する方法、並びにガイドRNA及びCas9遺伝子の送達、特にウイルスに感染した患者を治療するための治療手法としてのインビボ又はエクスビボのいずれかの静止白血球への送達において、課題が残っている。必要なのは、これらの先行技術の課題を克服する技術である。
【発明の概要】
【0005】
細胞内のウイルスを不活性化する方法であって、ウイルスゲノムを含む細胞に、Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼ、又はCas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物と、第1のガイドRNA(gRNA)、又は第1のgRNAをコードする核酸構築物と、を投与することを含み、Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼが、ウイルスゲノム内の第1の標的配列及び第2の標的配列においてウイルスゲノムを切断する、方法が開示される。
【0006】
細胞内のウイルスを不活性化する方法であって、ウイルスゲノムを含む細胞に、Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼ、又はCas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物と、第1のgRNA、又は第1のgRNAをコードする核酸構築物であって、第1のgRNAは、ウイルスのウイルスゲノム内の第1の標的配列に相補的である、第1のgRNA又は核酸構築物と、第2のgRNA、又は第2のgRNAをコードする核酸構築物であって、第2のgRNAは、ウイルスのウイルスゲノム内の第2の標的配列に相補的である、第2のgRNA又は核酸構築物と、を投与することを含む、方法が開示され、第1のgRNAがウイルスゲノム内の第1の標的配列にハイブリダイズし、第2のgRNAがウイルスゲノム内の第2の標的配列にハイブリダイズして、ウイルスゲノム内の第1の標的配列及び第2の標的配列においてCas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼ切断をもたらす。
【0007】
開示される方法及び組成物の追加の利点は、一部は以下の説明に記載され、一部はその説明から理解されるか、又は開示の方法及び組成物の実践によって学習され得る。開示された方法及び組成物の利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘された要素及び組み合わせによって実現及び達成されるであろう。前述の概要及び以下の発明を実施するための形態の両方は、単に例示的及び説明的であり、特許請求される発明を限定するものではないことを理解されたい。
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、説明とともに、開示された方法及び組成物のいくつかの実施形態を示し、開示された方法及び組成物の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ヒト細胞株におけるHBVの非常に効率的な標的切除を示す。
図2】HBV及びCasX2に対して指向される単一sgRNAを使用する、インビトロでのHBVゲノムの部分の切断を示す。
図3】HBVを標的とするSpCas9/sgRNA及びCasX2/sgRNAを用いるオフターゲット切断事象のインビトロ解析を示す。配列番号173は最上位配列(top sequence)である。配列番号174は最下位配列(bottom sequence)である。
図4】CasX1及びHBx sgRNA1を使用する、ヒト細胞株におけるHBV HBx遺伝子の破壊を示す。PCR増幅したHBx遺伝子の領域を、T7エンドヌクレアーゼの有無にかかわらず処理して、変異又はINDELの存在を検出した。配列番号175が最上位配列であり、配列番号176が最下位配列である。
図5】CasXと、マッチしたgRNAのペアとを使用するヒト細胞株におけるHBVゲノムの部分の切除を示す。
図6】HBVゲノムDNAの標的切除を実証するサンガー配列決定の結果を示す。sgRNA標的部位、続いてHBVゲノムを含み、示されたCasX及びsgRNAをコードするプラスミドDNAでトランスフェクトされた細胞から単離されたDNAのPCR後に得られた個々の配列のサンガー配列決定によって得られた配列。PreS遺伝子の場合、最上位配列は、配列番号177であり、最下位配列は配列番号178である。X遺伝子の場合、最上位配列は配列番号179であり、最下位配列は配列番号180である。最上位から最下位へ、残りの配列は、配列番号181、配列番号182、配列番号183、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号191、及び配列番号192である。
図7】特異的gRNAを使用するT7アッセイである。
図8】T7エンドヌクレアーゼアッセイの前に実施される定量的PCRを示す。
図9】新しいgRNAを用いる共トランスフェクション実験を示す。
図10A-10B】制限マップを示す。A)は、親ベクターの各々から増幅される断片を示す。B)は、A)からの2種の断片が一緒になった後の最終ベクターを示す。
図11】クローニング戦略を示す。
図12】クローニング戦略を示す。
図13】本明細書の実験に使用したgRNAを示す。上から下への配列は、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号198、配列番号199、配列番号200、配列番号201、配列番号202、配列番号203、配列番号204、配列番号205、配列番号206、配列番号207、配列番号208、配列番号209である。
図14図2の実験で使用したgRNAを示す。上ら下への配列は、配列番号210、配列番号211、配列番号212、配列番号213、配列番号214、配列番号215、配列番号216、配列番号217、配列番号218、配列番号219、配列番号220、配列番号221、配列番号222、配列番号223、配列番号224である。
図15】CasX1及びCasX2の例示的な配列を示す。
図16】CasY15の例示的な配列を示す。
図17】CasX2を担持する例示的な構築物を示す。
図18A-D】HIV-1(A)、HBV(B)、HTLV-1(C)、及びJCV(D)Cas12d gRNAペアの例を示す。各ウイルスについて示される2種のgRNA間で共有されるマイクロホモロジー(MH)のgRNA標的部位(プロトスペーサー)及び隣接する又は重複する領域が、示される。A)左上の配列番号228、左下の配列番号229、右上の配列番号230、右下の配列番号231、B)左上の配列番号 232、左下の配列番号233、右上の配列番号234、右下の配列番号235、C)左上の配列番号236、左下の配列番号237、右上の配列番号238、右下の配列番号239、D)左上の配列番号240、左下の配列番号241、右上の配列番号242、右下の配列番号243。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示された方法及び組成物は、以下の特定の実施形態の詳細な説明及びそこに含まれる実施例、並びに図及びそれらの前後の説明を参照することによって、より容易に理解され得る。
【0010】
開示された方法及び組成物は、特定の合成方法、特定の分析技術、又は特定の試薬に限定されず、特に指定がない限り、そのように、変化し得ることが理解される。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0011】
開示された方法及び組成物に使用できる、開示された方法及び組成物とともに使用できる、開示された方法及び組成物の調製に使用できる、又は開示された方法及び組成物の生成物である、材料、組成物、及び成分が開示される。これらの材料及び他の材料は本明細書に開示されており、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示されている場合、これらの化合物のそれぞれの様々な個別及び集団の組み合わせ並びに変更への具体的な言及が明確に開示されていない場合があるが、それぞれが具体的に想定され本明細書に記載されていると理解されたい。したがって、分子A、B、Cのクラスと、分子D、E、Fのクラスと、組み合わせ分子の例であるA~Dとが開示されている場合、それぞれが個別に記載されていなくても、それぞれが個別に、かつ集団的に想定されている。したがって、この例では、A~E、A~F、B~D、B~E、B~F、C~D、C~E、C~Fの各組み合わせは、具体的に想定されており、A、B、C;D、E、F;及び例示的組み合わせA~Dの開示から、開示したと考えるべきである。同様に、これらの任意のサブセット又は組み合わせも、具体的に想定され、開示されている。したがって、例えば、A~E、B~F、及びC~Eのサブグループは、具体的に想定されており、A、B、及びC;D、E、及びF;及び例示的組み合わせA~Dの開示から、開示されていると考えるべきである。この概念は、開示された組成物を製造及び使用する方法におけるステップを含むが、これらに限定されず、本願の全ての態様に適用される。したがって、実行可能な様々な追加ステップがある場合、これらの追加ステップの各々は、開示された方法の任意の特定の実施形態又は実施形態の組み合わせで実行可能であり、そのような組み合わせの各々は、具体的に想定され、開示されたとみなされるべきであることが理解される。
【0012】
A.定義
開示された方法及び組成物は、これらが変動し得るため、記載された特定の方法論、プロトコル、及び試薬に限定されないことが理解される。本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される本発明の範囲を制限することを意図していないことも理解されたい。
【0013】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「a gRNA」への言及は、そのようなgRNAの複数を含み、「標的配列」への言及は、当業者に知られている1つ以上の標的配列及びその均等物への言及、などである。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、投与の標的、例えば、ヒトを指す。したがって、本明細書に開示される方法の対象は、哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類、又は両生類などの脊椎動物であり得る。用語「対象」は、飼育動物(例えば、ネコ、イヌなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ショウジョウバエなど)も含まれる。一態様において、対象は哺乳動物である。他の態様において、対象はヒトである。この用語は、特定の年齢又は性別を示すものではない。したがって、雌雄を問わず、成人、子供、青年及び新生児の対象、並びに胎児も対象となることが意図されている。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「治療」、「治療する」などは、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを意味するものである。いくつかの態様において、「治療」は、疾患若しくは状態を有するヒト又は他の哺乳動物(例えば、動物モデル)などの対象に、疾患若しくは状態の悪化を予防又は遅延させるために、又は疾患若しくは状態の影響を部分的若しくは完全に逆転させるために、本明細書に記載のgRNA、エンドヌクレアーゼ又は組成物を投与することを意味する。いくつかの態様において、疾患は、がんである。治療は、疾患、障害、及び/又は状態の兆候を示さない対象に、及び/又は疾患、障害、及び/又は状態の初期兆候のみを示す対象に、疾患、障害、及び/又は状態に関連する病態の発症リスクを減少させる目的で投与され得る。いくつかの実施形態において、治療は、開示されたgRNA、エンドヌクレアーゼ又は組成物のうちの1つ以上を対象に送達することを含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「予防」は、疾患、障害又は状態を発症する感受性が増加した対象が疾患、障害又は状態を発症する可能性を最小限に抑えることを意味する。例えば、本明細書で使用される予防は、ウイルス感染を発症する感受性が増加した対象が感染する可能性を最小限に抑えることを意味することができる。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「投与する」及び「投与」は、開示されたポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、又は医薬品を対象に与える任意の方法を意味する。そのような方法は、当業者に周知であり、例えば、経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、点眼、耳内投与、脳内投与、直腸投与、舌下投与、口腔投与、並びに静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、及び皮下投与を含む注射可能な非経口投与が挙げられるが、これらに限定されない。投与は、連続的又は間欠的であり得る。様々な態様において、調製物は、治療的に投与することができる、すなわち、既存の疾患又は状態を治療するために投与される。更なる様々な態様において、調製物は、予防的に投与され得る、すなわち、疾患又は状態の予防のために投与される。ある態様において、当業者は、対象を治療する、又はアポトーシスを誘導するために、開示される組成物又は開示される複合体の有効な用量、有効なスケジュール、又は有効な投与経路を決定することができる。ある態様において、当業者は、開示されるポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、又は医薬品の有効性を改善するように、投与ステップの態様を変更又は修正することができる。
【0018】
本明細書で互換的に使用される用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドの重合体であって、リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドのいずれかを指す。したがって、この用語には、一本鎖、二本鎖、若しくは多本鎖DNA若しくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、又はプリン及びピリミジン塩基、又は他の天然、化学的若しくは生化学的に修飾された、非天然、若しくは誘導されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は、記載される実施形態に適用可能な場合、一本鎖(センス又はアンチセンスなど)及び二本鎖ポリヌクレオチドを含むと理解されるべきである。
【0019】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸の重合体を指し、遺伝的にコード化されたアミノ酸及び非遺伝的にコード化されたアミノ酸、化学的又は生化学的に修飾又は誘導されたアミノ酸、及び修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドが含まれ得る。この用語には、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、異種及び同種のリーダー配列を有する融合タンパク質、N末端メチオニン残基を有する又は有さない融合タンパク質、免疫学的にタグ付けされたタンパク質などが含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
核酸、タンパク質、細胞、又は生物に適用され、本明細書で使用される用語「天然に存在する」は、自然界に存在する核酸、細胞、タンパク質、又は生物を意味する。いくつかの態様において、用語「天然に存在する」は、「野生型」を意味し得る。
【0021】
本明細書で使用される「組換え」は、特定の核酸(DNA又はRNA)が、クローニング、制限、及び/又はライゲーションステップの種々の組み合わせの産物であり、天然のシステムに見られる内因性核酸とは区別可能な構造的コード又は非コード配列を有する構築物を得ることを意味する。一般に、構造コード配列をコードするDNA配列は、cDNA断片と短いオリゴヌクレオチドリンカーから、又は一連の合成オリゴヌクレオチドから、細胞又は無細胞転写・翻訳系に含まれる組換え転写単位から発現可能な合成核酸を得るために組み立てることができる。そのような配列は、真核生物遺伝子に典型的に存在する内部の非翻訳配列又はイントロンによっては中断されないオープンリーディングフレームの形態で提供され得る。関連する配列を含むゲノムDNAは、組換え遺伝子又は転写単位の形成に使用することもできる。非翻訳DNAの配列は、オープンリーディングフレームから5’又は3’が存在してもよく、このような配列は、コード領域の操作又は発現を妨げず、様々なメカニズムによって所望の生成物の産生を調節するように実際に作用してもよい(以下の「DNA調節配列」を参照)。
【0022】
したがって、例えば、用語「組換え」ポリヌクレオチド又は「組換え」核酸は、天然に存在しないもの、例えば、人為的な介入により2種の別個の配列セグメントが人工的に結合することによって作られるものを指す。この人工的な組み合わせは、化学合成手段、又は遺伝子工学技術などによる核酸の分離セグメントの人工的な操作のいずれかによって、達成されることが多い。これは通常、配列認識部位を導入又は除去しながら、コドンを同じアミノ酸又は保存的アミノ酸をコードする冗長コドンと置換するために行われる。代わりに、所望の機能の核酸セグメントを結合して、所望の機能の組み合わせを生成するために実施される。この人工的な組み合わせは、化学合成手段、又は遺伝子工学技術などによる核酸の分離セグメントの人工的な操作のいずれかによって、達成されることが多い。
【0023】
同様に、用語「組換え」ポリペプチドは、天然に存在しない、例えば、人為的な介入によりアミノ配列の2種の別個のセグメントが人工的に結合することによって作られるポリペプチドを指す。したがって、例えば、異種アミノ酸配列を含むポリペプチドは、組換え体である。
【0024】
「構築物」又は「ベクター」とは、組換え核酸、一般的には組換えDNAを意味し、これは、特定のヌクレオチド配列の発現及び/又は増殖の目的で生成され、又は他の組換えヌクレオチド配列の構築に使用される。
【0025】
本明細書で使用される「宿主細胞」は、インビボ又はインビトロの真核細胞、原核細胞、又は単細胞実体として培養された多細胞生物(例えば、細胞株)からの細胞を意味し、真核細胞又は原核細胞は、核酸(例えば、発現ベクター)のレシピエントとして使用され得る、又は使用されており、核酸によって遺伝子改変された元の細胞の子孫を含む。単一細胞の子孫は、自然、偶発的、又は意図的な変異によって、元の親と形態学的に又はゲノム又は全DNA相補体において必ずしも完全に同一であるとは限らないことが理解される。「組換え宿主細胞」(「遺伝子組換え宿主細胞」とも称される)は、異種核酸、例えば、発現ベクターが導入されている宿主細胞である。例えば、対象原核宿主細胞は、適切な原核宿主細胞への異種核酸、例えば、原核宿主細胞にとって外来性である(天然には通常見出されない)外因性核酸、又は原核宿主細胞において通常見出されない組換え核酸の導入によって、遺伝子改変された原核宿主細胞(例えば、細菌)であり、対象真核宿主細胞は、適切な真核宿主細胞への異種核酸、例えば、真核宿主細胞にとって外来性である外因性核酸、又は真核宿主細胞において通常見出されない組換え核酸の導入によって、遺伝子改変された真核宿主細胞である。
【0026】
ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、別のポリヌクレオチド又はポリペプチドに対してある特定の割合の「配列同一性」を有し、すなわち、整列させたときに、塩基又はアミノ酸のパーセンテージが同じであり、2つの配列を比較したときに、同じ相対位置にあることを意味する。配列類似性は、いくつかの異なる様式で決定することができる。配列同一性を決定するために、ワールドワイドウェブのncbi.nlm.nih.gov/BLAST上で利用可能なBLASTを含む方法及びコンピュータプログラムを使用して、配列を整列させることができる。例えば、Altschul et al.(1990),J.Mol.Biol.215:403-10を参照されたい。別のアラインメントアルゴリズムは、Madison,Wis.,USAにあり、Oxford Molecular Group,Inc.の完全所有子会社であるGenetics Computing Group(GCG)パッケージで入手可能なFASTAである。アラインメントのための他の技術は、Methods in Enzymology,vol.266:Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996),ed.Doolittle,Academic Press,Inc.,a division of Harcourt Brace&Co.,San Diego,Calif.,USAに記載されている。配列におけるギャップを許容するアラインメントプログラムが、特に興味深い。Smith-Watermanは、配列アラインメントにおけるギャップを許容するアルゴリズムの一種である。Meth.Mol.Biol.70:173-187(1997)を参照。また、Needleman及びWunschアラインメント法を使用するGAPプログラムを利用して配列を整列させることもできる。J.Mol.Biol.48:443-453(1970)を参照。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」は、オリゴヌクレオチドと相補的核酸配列との対合を意味する。そのような対合は、典型的には、オリゴヌクレオチド(例えば、gRNA)の相補的ヌクレオシド又はヌクレオチド塩基(核酸塩基)と標的核酸配列(例えば、オリゴヌクレオチドが、標的核酸の対応する領域の逆相補的ヌクレオチド配列を含む)との間のワトソン-クリック型水素結合、フーグスティーン型水素結合又は逆フーグスティーン水素結合であり得る、水素結合を伴う。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、標的核酸に特異的にハイブリダイズする。用語「特異的にハイブリダイズする」及び「特異的にハイブリダイズ可能な」は、本明細書において互換的に使用され、オリゴヌクレオチドと標的核酸(すなわち、DNA又はRNA)との間に安定かつ特異的な結合が生じるような、十分な相補性の程度を示す。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能であるために、その標的核酸配列に100%相補的である必要はないことを理解されたい。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドの標的核酸配列への結合が、標的核酸の正常な機能を妨害して、標的核酸の有用性又は発現の喪失又は変化をもたらす場合に、オリゴヌクレオチドは特異的にハイブリダイズ可能であると考えられる。好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチドと標的核酸との間には十分な相補性が存在し、特異的結合が所望される条件下(例えば、インビボアッセイ又は治療処置の場合には生理学的条件下、及びインビトロアッセイの場合にはアッセイが行われる条件下)で、オリゴヌクレオチドの望ましくない非標的配列への非特異的結合を回避又は最小限に抑える。非特異的ハイブリダイゼーション事象を最小化し、かつ標的核酸への特異的ハイブリダイゼーションに最適な条件を決定することは、十分にオリゴヌクレオチド分野の科学者の技術レベルの範囲内である。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の複合体中のオリゴヌクレオチドは、それが特異的にハイブリダイズする標的DNA又はRNA配列の領域の対応する相補配列と比較して、1、2、又は3個の塩基置換を含む。いくつかの実施形態において、非相補的核酸塩基の位置は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端にある。追加の実施形態において、非相補的核酸塩基は、オリゴヌクレオチドの内側位置に位置する。2個以上の非相補的核酸塩基がオリゴヌクレオチド中に存在する場合、それらは、連続的(すなわち、連結している)、非連続的、又はその両方であり得る。いくつかの実施形態において、本発明の複合体中のオリゴヌクレオチドは、標的核酸内の標的領域に対して少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有する。他の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、標的核酸内のポリヌクレオチド配列に対して100%の配列同一性を有する。同一性パーセントは、比較されるオリゴヌクレオチドと、対応する核酸配列とが同一である塩基の数に従って計算される。この同一性は、オリゴマー化合物(すなわち、オリゴヌクレオチド)の全長にわたって、又はオリゴヌクレオチドの一部においてであってもよい(例えば、27量体の1~20の核酸塩基を20量体と比較して、オリゴヌクレオチドに対するオリゴヌクレオチドの同一性パーセントを決定してもよい)。オリゴヌクレオチドと標的核酸との間の同一性パーセントは、当該技術分野で既知のアラインメントプログラム及びBLASTプログラム(基本的な局所アラインメント検索ツール)を使用して日常的に決定することができる(例えば、Altschul et al.,J.Mol.Biol.,1990,215,403-410;Zhang and Madden,Genome Res.,1997,7,649-656を参照)。
【0028】
「任意選択的な」又は「任意選択的に」は、その後に記載される事象、状況又は材料が発生又は存在してもしなくてもよく、その記載が、事象、状況又は材料が発生又は存在する場合と、事象、状況又は材料が発生又は存在しない場合とを含み得ることを意味する。
【0029】
本明細書において、範囲は、「約」ある特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値まで、のように表現され得る。そのような範囲が表現される場合、文脈が特に別に示さない限り、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までの範囲も具体的に想定され、開示されたものとみなされる。同様に、先行詞「約」を使用して値が近似値として表現される場合、文脈が特に別に示さない限り、特定の値が別の具体的に想定された実施形態を形成し、開示されたものとみなされることが理解されるであろう。更に、範囲のそれぞれの端点は、文脈が特に別に示さない限り、他の端点と関連して、及び他の端点から独立しての両方で重要であることが理解されるであろう。最後に、明確に開示された範囲内に含まれる個々の値及び値の部分範囲の全てもまた具体的に想定されており、文脈が特に別に示さない限り、開示されたものとみなされるべきであることが理解されるべきである。上記は、特定の場合において、これらの実施形態の一部又は全部が明確に開示されているか否かにかかわらず、適用される。
【0030】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、開示される方法及び組成物が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は均等の任意の方法及び材料は、本方法及び組成物の実施又は試験において使用され得るが、特に有用な方法、デバイス、及び材料は、記載されている通りである。本明細書で引用した刊行物及びそれらで引用された資料は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明によってそのような開示に先行する権利を与えられないということを承認するものと解釈するべきではない。いずれの参考文献も先行技術を構成することを認めるものではない。参考文献の議論は、それらの著者が主張することを述べており、出願人は、引用された文書の正確さ及び妥当性に異議を申し立てる権利を留保する。本明細書では、多くの刊行物が参照されているが、このような参照は、これらの文書のいずれも当該技術分野における一般的な知識の一部を形成していることを認めるものではないことが明確に理解されるだろう。
【0031】
本出願で使用される場合、語句「~を含む(comprise)」及びこの語句の変形語、例えば、「~を含む(comprising)」及び「~を含む(comprises)」は、「含むが限定されない」を意味し、他の付加物、構成要素、整数又はステップを除外することを意図しない。特に、1つ以上のステップ又は操作を含むと記載された方法においては、各ステップが記載されたものからなることが特に意図されており(そのステップが「からなる」などの限定語を含まない限り)、各ステップが、例えば、そのステップに記載されていない他の添加剤、成分、整数又はステップを除外することを意図しないことを意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「CasX」は、Cas12e、RNAガイドエンドヌクレアーゼファミリーと互換的に使用され、その逆もまた然りである。
【0033】
本明細書で使用される場合、「CasY」は、Cas12d、RNAガイドエンドヌクレアーゼファミリーと互換的に使用され、その逆もまた然りである。
B.方法
【0034】
細胞内のウイルスを不活性化する方法であって、ウイルスゲノムを含む細胞に、Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼ、又はCas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物と、第1のガイドRNA(gRNA)、又は第1のgRNAをコードする核酸構築物を含む細胞に投与することを含む、方法が開示され、Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼは、ウイルスゲノム内の第1の標的配列及び第2の標的配列においてウイルスゲノムを切断する。いくつかの態様において、Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼ、又はCas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物は、組成物に含まれる。したがって、いくつかの態様において、Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼ、又はCas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物を含む組成物を、細胞に投与し得る。
【0035】
細胞内のウイルスを不活性化する方法であって、ウイルスゲノムを含む細胞に、Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼ、又はCas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物と、第1のガイドRNA(gRNA)、又は第1のgRNAをコードする核酸構築物であって、第1のgRNAは、ウイルスのウイルスゲノム内の第1の標的配列に相補的である、第1のgRNA、又は第1のgRNAをコードする核酸構築物と、第2のgRNA、又は第2のgRNAをコードする核酸構築物であって、第2のgRNAは、ウイルスのウイルスゲノム内の第2の標的配列に相補的である、第2のgRNA、又は第2のgRNAをコードする核酸構築物と、を投与することを含む、方法が開示され、第1のgRNAがウイルスゲノム内の第1の標的配列にハイブリダイズし、第2のgRNAがウイルスゲノム内の第2の標的配列にハイブリダイズして、ウイルスゲノム内の第1の標的配列及び第2の標的配列においてCas12e又はCas12dエンドヌクレアーゼ切断をもたらす。
【0036】
いくつかの態様において、細胞内のウイルスを不活性化する本開示の方法は、ウイルスゲノム内の第1及び第2の標的配列でウイルスゲノムを切断するために、少なくとも第1のgRNAと、しかしたびたび第1及び第2のgRNAと、作用するCas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼを含む。第1及び第2の標的配列におけるウイルスゲノムの切断は、ウイルスの不活性化をもたらす。いくつかの態様において、1個以上のウイルス遺伝子の一部、1個以上のウイルス遺伝子の全体、又はウイルスゲノム全体を、エンドヌクレアーゼ切断によって除去することができ、この除去はウイルスの不活性化をもたらす。いくつかの態様において、1個以上のウイルス遺伝子の一部、1個以上のウイルス遺伝子の全体、又はウイルスゲノム全体の除去は、それを細胞ゲノムから除去することを指す。
【0037】
いくつかの態様において、細胞は宿主細胞と呼ばれ得る。いくつかの態様において、細胞は真核細胞である。例えば、細胞は、ヒト細胞であり得る。いくつかの態様において、細胞は、細胞ゲノム及びウイルスゲノムの両方を含む。
【0038】
いくつかの態様において、細胞に投与することは、細胞を含む対象に投与することを含む。例えば、Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼ、又はCas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物を投与することには、Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼ、又はCas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物を、静脈内注射、筋肉内注射、頭蓋内注射又は皮下注射を介して、対象に投与することを含めることができるが、これらに限定されない。対象の中に入ると、Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼ、又はCas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物は、細胞に入ることができる。
【0039】
ウイルスゲノムを含む細胞を有する対象を治療するための方法であって、対象に、Cas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼ、又はCas12d若しくはCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物と、第1のgRNA、又は第1のgRNAをコードする核酸構築物であって、第1のgRNAは、ウイルスのウイルスゲノム内の第1の標的配列に相補的である、第1のgRNA又は第1のgRNAをコードする核酸構築物と、第2のgRNA、又は第2のgRNAをコードする核酸構築物であって、第2のgRNAは、ウイルスのウイルスゲノム内の第2の標的配列に相補的である、第2のgRNA又は第2のgRNAをコードする核酸構築物と、を投与することを含む、方法が開示され、第1のgRNAがウイルスゲノム内の第1の標的配列にハイブリダイズし、第2のgRNAがウイルスゲノム内の第2の標的配列にハイブリダイズして、ウイルスゲノム内の第1の標的配列及び第2の標的配列においてCas12e又はCas12dエンドヌクレアーゼ切断をもたらす。いくつかの態様において、ウイルスゲノムを含む細胞を有する対象は、ウイルス感染した対象である。したがって、ウイルス感染を治療する方法が開示される。いくつかの態様において、対象を治療することは、ウイルスが複製、感染、又は疾患症状を引き起こし続けることができないように、対象の細胞ゲノムからウイルスゲノムを除去することを指すことができる。
【0040】
1.ガイドRNA
本明細書に記載の方法で使用できるgRNAを、本明細書で開示する。gRNAの例としては、図、表2又は本明細書に示される実施例に開示されるgRNAが挙げられるが、これらに限定されない。標的配列に特異的に結合するgRNAが本明細書に開示され、標的配列としては、本明細書に示される表1、図又は実施例の標的配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
いくつかの態様において、gRNAは、Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼに結合して、リボ核タンパク質複合体(RNP)を形成し、複合体を標的核酸(例えば、標的配列)内の特定の位置に標的化する核酸分子である。ある場合には、gRNAがRNA塩基に加えてDNA塩基を含むように、ハイブリッドDNA/RNAを作成することができるが、用語「gRNA」は依然として、本明細書でそのような分子を包含するために使用されることを理解されたい。
【0042】
本明細書に記載される場合、gRNAは、2つのセグメント、標的化セグメント(CRISPR RNA(crRNA))及びタンパク質結合セグメント(トランス活性化crRNA(tracrRNA))を含むことができる。gRNAの標的化セグメントは、標的核酸(例えば、ウイルスゲノム)内の特異的配列(標的配列)に相補的である(したがって、それとハイブリダイズする)ヌクレオチド配列(ガイド配列)を含む。タンパク質結合セグメント(又は「タンパク質結合配列」)は、Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼと相互作用する(結合する)。gRNAのタンパク質結合セグメントは、互いにハイブリダイズして二本鎖RNA二重鎖(dsRNA二重鎖)、又はstemループを形成する、2つの相補的なヌクレオチドのストレッチ(stretch)を含む。標的核酸(例えば、ウイルスDNA)の部位特異的結合及び/又は切断は、gRNA(gRNAのガイド配列)と標的核酸の標的配列との間の塩基対相補性によって決定される位置(例えば、標的遺伝子座の標的配列)で生じ得る。
【0043】
gRNA及びCas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼは、複合体を形成する(例えば、非共有結合相互作用を介して結合する)。gRNAは、標的化セグメントを含むことによって、複合体に標的特異性を提供し、標的化セグメントは、ガイド配列(標的核酸の標的配列に相補的なヌクレオチド配列)を含む複合体のCas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼは、部位特異的活性(例えば、Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼによって提供される切断活性)を提供する。言い換えれば、Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼは、gRNAとの会合により、標的核酸配列(例えば、標的配列)に誘導される。
【0044】
いくつかの態様において、gRNAは、crRNA及びtracrRNAの両方を含む単一ガイドRNA(sgRNA)であり得る。いくつかの態様において、gRNAは、crRNA及びtracrRNAハイブリダイゼーション(例えば、それらが相補的セグメントを有する)した後に形成され得、したがって、crRNAの標的配列が標的配列に結合することを可能にし、一方、tracrRNAのタンパク質結合セグメントは、エンドヌクレアーゼをもたらし、その後、エンドヌクレアーゼは標的配列を切断することができる。
【0045】
gRNAの標的化セグメントは、ガイド配列(すなわち、標的化配列)を含み、これは、標的核酸中の配列(標的配列)に相補的なヌクレオチド配列である。言い換えれば、gRNAの標的化セグメントは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対合)を介して、配列特異的様式で、標的核酸(例えば、ウイルスゲノム)と相互作用できる。gRNAのガイド配列は、標的核酸(例えば、ウイルスゲノム)内で(例えば、PAMを考慮に入れながら、例えば、dsDNA標的を標的とするときに)任意の所望の標的配列にハイブリダイズするように修飾(例えば、遺伝子工学によって)/設計することができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、ガイド配列と標的核酸の標的配列との間の相補性パーセントは、60%以上(例えば、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)である。いくつかの場合において、ガイド配列と標的核酸の標的配列との間の相補性パーセントは、80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)である。いくつかの場合において、ガイド配列と標的核酸の標的配列との間の相補性パーセントは、90%以上(例えば、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)である。いくつかの場合において、ガイド配列と標的核酸の標的配列との間の相補性パーセントは100%である。
【0047】
いくつかの場合おいて、ガイド配列と標的核酸の標的配列との間の相補性パーセントは、16個以上(例えば、20個以上、21個以上、22個以上)の連続ヌクレオチドにわたって60%以上(例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)である。いくつかの場合において、ガイド配列と標的核酸の標的配列との間の相補性パーセントは、16個以上(例えば、20個以上、21個以上、22個以上)の連続ヌクレオチドにわたって80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)である。いくつかの場合において、ガイド配列と標的核酸の標的配列との間の相補性パーセントは、19個以上(例えば、20個以上、21個以上、22個以上)の連続ヌクレオチドにわたって90%以上(例えば、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)である。いくつかの場合において、ガイド配列と標的核酸の標的配列との間の相補性パーセントは、19個以上(例えば、20個以上、21個以上、22個以上)の連続ヌクレオチドにわたって100%である。
【0048】
いくつかの場合において、ガイド配列と標的核酸の標的配列との間の相補性パーセントは、169~25個の連続ヌクレオチドにわたって60%以上(例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)である。いくつかの場合において、ガイド配列と標的核酸の標的配列との間の相補性パーセントは、19~25個の連続ヌクレオチドにわたって80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)である。いくつかの場合において、ガイド配列と標的核酸の標的配列との間の相補性パーセントは、16~25個の連続ヌクレオチドにわたって90%以上(例えば、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)である。いくつかの場合において、ガイド配列と標的核酸の標的配列との間の相補性パーセントは、16~25個の連続ヌクレオチドにわたって100%である。
【0049】
いくつかの場合において、ガイド配列は、19~30ヌクレオチド(nt)(例えば、16~25、16~22、16~20、20~30、20~25、又は20~22nt)の範囲の長さを有する。いくつかの場合において、ガイド配列は、19~25ヌクレオチド(nt)(例えば、16~22、16~20、20~25、20~25、又は20~22nt)の範囲の長さを有する。いくつかの場合において、ガイド配列は、16以上のnt(例えば、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上、21以上、又は22以上のnt;16nt、17nt、18nt、19nt、20nt、21nt、22nt、23nt、24nt、25ntなど)の長さを有する。いくつかの場合において、ガイド配列は、16ntの長さを有する。いくつかの場合において、ガイド配列は、17ntの長さを有する。いくつかの場合において、ガイド配列は、18ntの長さを有する。いくつかの場合において、ガイド配列は、19ntの長さを有する。いくつかの場合において、ガイド配列は、20ntの長さを有する。いくつかの場合において、ガイド配列は、21ntの長さを有する。いくつかの場合において、ガイド配列は、22ntの長さを有する。いくつかの場合において、ガイド配列は、23ntの長さを有する。
【0050】
様々なCas9ガイドRNAの例は、当該技術分野に見出され得、いくつかの場合において、Cas9ガイドRNAに導入されたものと同様の変異体を、本開示のCas12d又はCas12e gRNAにも導入され得る。例えば、Jinek et al.,Science.2012Aug.17;337(6096):816-21;Chylinski et al.,RNA Biol.2013 May;10(5):726-37;Ma et al.,Biomed Res Int.2013;2013:270805;Hou et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2013Sep.24;110(39):15644-9;Jinek et al.,Elife.2013;2:e00471;Pattanayak et al.,Nat Biotechnol.2013September;31(9):839-43;Qi et al,Cell.2013 Feb.28;152(5):1173-83;Wang et al.,Cell.2013May9;153(4):910-8;Auer et.al.,Genome Res.2013Oct.31;Chen et. al.,Nucleic Acids Res.2013 Nov.1;41(20):e19;Cheng et.al.,Cell Res.2013October;23(10):1163-71;Cho et.al.,Genetics.2013November;195(3):1177-80;DiCarlo et al.,Nucleic Acids Res.2013April;41(7):4336-43;Dickinson et.al.,Nat Methods.2013October;10(10):1028-34;Ebina et.al.,Sci Rep.2013;3:2510;Fujii et.al,Nucleic Acids Res.2013Nov.1;41(20):e187;Hu et.al.,Cell Res.2013November;23(11):1322-5;Jiang et.al.,Nucleic Acids Res.2013Nov.1;41(20):e188;Larson et.al.,Nat Protoc.2013November;8(11):2180-96;Mali et.at.,Nat Methods.2013October;10(10):957-63;Nakayama et.al.,Genesis.2013December;51(12):835-43;Ran et.al.,Nat Protoc.2013 November;8(11):2281-308;Ran et.al.,Cell.2013Sep.12;154(6):1380-9;Upadhyay et.al.,G3(Bethesda).2013Dec.9;3(12):2233-8;Walsh et.al.,Proc Natl Acad Sci USA.2013Sep.24;110(39):15514-5;Xie et.al.,Mol Plant.2013Oct.9;Yang et.al.,Cell.2013Sep.12;154(6):1370-9;Briner et al.,Mol Cell.2014Oct.23;56(2):333-9、並びに米国特許及び特許出願:米国特許8,906,616、8,895,308、8,889,418、8,889,356、8,871,445、8,865,406、8,795,965、8,771,945、8,697,359、2014/0068797、2014/0170753、2014/0179006、2014/0179770、2014/0186843、2014/0186919、2014/0186958、2014/0189896、2014/0227787、2014/0234972、2014/0242664、2014/0242699、2014/0242700、2014/0242702、2014/0248702、2014/0256046、2014/0273037、2014/0273226、2014/0273230、2014/0273231、2014/0273232、2014/0273233、2014/0273234、2014/0273235、2014/0287938、2014/0295556、2014/0295557、2014/0298547、2014/0304853、2014/0309487、2014/0310828、2014/0310830、2014/0315985、2014/0335063、2014/0335620、2014/0342456、2014/0342457、2014/0342458、2014/0349400、2014/0349405、2014/0356867、2014/0356956、2014/0356958、2014/0356959、2014/0357523、2014/0357530、2014/0364333及び2014/0377868を参照、これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
いくつかの態様において、第1のgRNAは、ウイルスゲノムにおける第1の標的配列及び第2の標的配列に相補的である。いくつかの態様において、単一gRNAは、ウイルスゲノムが繰り返し配列を有するときに、ウイルスゲノム内の第1の標的配列及び第2の標的配列に相補的であり得る。例えば、これは、ウイルスゲノムの各末端(5’及び3’)に末端反復配列(LTR)を有するレトロウイルスで起こり得、ここで、LTRは、ウイルスゲノムの5’末端及びウイルスゲノムの3’末端で同じである。したがって、第1のgRNAなどのgRNAは、ウイルスゲノムの5’末端及びウイルスゲノムの3’末端の両方に存在する単一の配列に相補的であり得る。例えば、第1の標的配列及び第2の標的配列は、LTR内の単一配列であり得る。第1の標的配列は、5’LTRに存在することができ、一方、第2の標的配列は、3’LTRに存在することができる。
【0052】
いくつかの態様において、第1のgRNAは、ウイルスゲノムにおける第1の標的配列及び第2の標的配列にハイブリダイズして、ウイルスゲノムにおける第1の標的配列及び第2の標的配列においてCas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼ切断をもたらす。
【0053】
したがって、いくつかの態様において、単一gRNAを使用して、2つの異なる位置でウイルスゲノムを切断し得る。また、ウイルスゲノムを2つの異なる位置で切断するための、少なくとも2種のgRNAの使用も開示される。
【0054】
一部の態様において、開示される方法は、第2のgRNAを更に含むことができる。一部の態様において、第1のgRNAは、ウイルスゲノムの第1の標的配列に相補的であり、第2のgRNAは、ウイルスのウイルスゲノム内の第2の標的配列に相補的である。いくつかの態様において、第1のgRNAはウイルスゲノム内の第1の標的配列にハイブリダイズし、第2のgRNAはウイルスゲノム内の第2の標的配列にハイブリダイズして、ウイルスゲノム内の第1の標的配列及び第2の標的配列においてCas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼ切断をもたらす。
【0055】
いくつかの態様において、第1のgRNAをコードする核酸構築物と、第2のgRNAをコードする核酸構築物とは、同じ核酸構築物である。
いくつかの態様において、第1のgRNAをコードする核酸構築物と、第2のgRNAをコードする核酸構築物とは、異なる核酸構築物である。
【0056】
いくつかの態様において、第1のgRNAをコードする核酸構築物及び/又は第2のgRNAをコードする核酸構築物は、ウイルスベクターの一部である。したがって、いくつかの態様において、投与することは、第1のgRNAをコードする核酸構築物及び第2のgRNAをコードする核酸構築物のうちの1つ以上を含むウイルスベクターを投与することを含む。
【0057】
いくつかの態様において、第1のgRNAは第1のcrRNAを含み、第2のgRNAは第2のcrRNAを含む。いくつかの態様において、第1のcrRNAの少なくとも一部は、ウイルスゲノムにおける第1の標的配列に相補的であり、第2のcrRNAの少なくとも一部は、ウイルスゲノムにおける第2の標的配列に相補的である。
【0058】
いくつかの態様において、第1のgRNAは、第1のcrRNA及び第1のトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)の両方を含む。第1のcrRNA及び第1のtracrRNAが単一の転写物として存在する場合、gRNAは単一ガイドRNA(sgRNA)と称される。したがって、第1のgRNAは、第1のsgRNAと称され得る。いくつかの態様において、第2のgRNAは、第2のcrRNA及び第2のtracrRNAの両方を含む。したがって、第2のgRNAは、第2のsgRNAと称され得る。
【0059】
いくつかの態様において、第1のcrRNAの少なくとも一部は、第1のtracrRNAの少なくとも一部に相補的であり、第2のcrRNAの少なくとも一部は、第2のtracrRNAの少なくとも一部に相補的である。いくつかの態様において、第1のcrRNA及び第1のtracrRNAの相補配列はハイブリダイズする。いくつかの態様において、第2のcrRNA及び第2のtracrRNAの相補配列はハイブリダイズする。
【0060】
いくつかの態様において、本開示の方法は、第3のgRNA、又は第3のgRNAをコードする核酸構築物を更に含む。いくつかの態様において、第3のgRNAは、tracrRNAを含む。いくつかの態様において、tracrRNAの少なくとも一部は、第1のcrRNAの少なくとも一部に相補的である。したがって、いくつかの態様において、tracrRNAは第1のtracrRNAである。いくつかの態様において、第1のcrRNA及び(第1の)tracrRNAは、sgRNA上に存在し、tracrRNA及びcrRNAは、別個の転写産物上に存在し得る。
【0061】
いくつかの態様において、開示される方法は、第4のgRNA、又は第4のgRNAをコードする核酸構築物を含む。いくつかの態様において、第4のgRNAは、tracrRNAを含む。いくつかの態様において、tracrRNAの少なくとも一部は、第2のcrRNAの少なくとも一部に相補的である。したがって、いくつかの態様において、tracrRNAは、第2のcrRNAにハイブリダイズするため、第2のtracrRNAである。第2のcrRNA及び(第2の)tracrRNAがsgRNA上に存在する代わりに、tracrRNA及びcrRNAは別個の転写産物上に存在し得る。
【0062】
本明細書に開示される方法において、gRNAは、ウイルス又はプロウイルスゲノムの介在領域の切除を促進するように設計することができる。Cas12d及びCas12eの切断パターンは、Cas9に特徴的な平滑DNA二本鎖切断ではなく5’オーバーハングを生成し、これは非相同末端切除のプロセスを促進する。いくつかの態様において、5’オーバーハング、及び2つ以上のCas12d又はCas12e切断部位に隣接する相同DNA配列の短い配列の存在は、細胞のDNA修復プロセスを介して介在DNAの切除を促進できる。いくつかの態様において、プロセスは、互換性のあるオーバーハングの直接接合又は代替的な末端接合プロセスを含むことができる。5’オーバーハングによる末端切除の促進は、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)と呼ばれるプロセスを通じて代替末端結合を促進でき、これは代替末端結合、又は代替非相同末端結合、又はシータ媒介末端結合(TMEJ)としても知られ得る。これらのプロセスは、2つの切断部位の間にある介在DNA配列を効果的に切除することができる。
【0063】
いくつかの態様において、本明細書に開示される方法は、ウイルスのゲノム又はプロウイルスゲノムにおける標的領域の同定を用いることができ、それのため、gRNA、いくつかの場合は第2のgRNA、いくつかの場合は第3のgRNAは、2つ以上の切断部位を結合して、ウイルス複製又はウイルス遺伝子産物の産生を妨げるウイルスDNAの領域の切除を生じるために、マイクロホモロジーとして知られる、ホモロジーの小さな領域を利用するMMEJ又は他の細胞DNA修復機構を促進するように設計され得る。いくつかの態様において、Cas12d又はCas12e gRNAは、ウイルスDNA配列に基づいて設計することができる。特定の配列、又は既知のウイルス配列に基づくコンセンサス配列のいずれかを使用することができる。ウイルス配列を手動又は計算ツールを使用してスキャンして、PAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列の位置を同定できる。いくつかの態様において、Cas12e酵素のためのPAMは、Nが任意のヌクレオチドであるTTCNを含むことができる。いくつかの態様において、Cas12d酵素のためのPAMは、TRを含むことができ、Rはプリンである。いくつかの態様において、PAMに対して3’側の16~23塩基対の配列は、プロトスペーサー又は潜在的標的配列の切除される配列の5’末端における切断部位に対して5’側、及び切除される配列の3’末端における切断部位に対して3’側を表す。
【0064】
いくつかの態様において、gRNAの選択は、PAMの必要性と、標的部位内、標的部位に隣接する、又は標的部位に近接するマイクロホモロジーの存在との両方を考慮する。マイクロホモロジーは、所与のウイルス配列において2回以上生じる3ヌクレオチド以上の長さであり得るホモロジーの領域からなる。いくつかの態様において、2種以上のgRNAが使用される場合、設計は、個々のgRNA標的に存在する同一のホモロジーの領域の存在を考慮する。更に、切除されるDNAに対するホモロジーの領域の位置を考慮できる。すなわち、同定されたホモロジーの領域は、Cas12d又はCas12e gRNA標的部位内に、又はそれに隣接して位置することができる。標的部位内の代替的な末端結合マイクロホモロジーを促進するために、プロトスペーサーは、切断部位に対して5’であり、切り出される配列の5’末端であり、かつ切断部位に対して3’であり、切り出される配列の3’末端であり得る。標的部位に隣接している場合、マイクロホモロジーは、標的部位に対して5’、切除される配列の5’末端にあり、標的部位に対して3’、切除される配列の3’末端にあることができる。いくつかの態様において、互換性のある5’オーバーハングを介した末端結合を促進するために、マイクロホモロジーは、各標的部位において鋳型鎖及び非鋳型鎖切断の領域内に存在し、各切断部位において相補的な5’オーバーハングを生成するべきである。
【0065】
2.Cas12d及びCas12eエンドヌクレアーゼ
Cas12dはCasYと呼ばれ得る。Cas12eはCasXと呼ばれ得る。いくつかの態様において、CasXファミリーとしては、CasX1及びCasX2が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、CasYファミリーとしては、CasY1~CasY15が挙げられるが、これらに限定されない。これらのCasエンドヌクレアーゼは、切断後に、5’オーバーハングとも呼ばれ得る、付着端を生成する。
【0066】
Cas12d又はCas12eポリペプチド(この用語は、「Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼ」という用語と互換的に使用される)は、標的核酸及び/又は標的核酸に関連するポリペプチド(例えば、ヒストン尾のメチル化又はアセチル化)に結合及び/又は修飾(例えば、切断、切れ目、メチル化、脱メチル化など)することができる(例えば、いくつかの場合において、CasXタンパク質は、活性を有する融合パートナーを含み、いくつかの場合において、CasXタンパク質は、ヌクレアーゼ活性を示す)。いくつかの場合において、Cas12d又はCas12eタンパク質は、天然に存在するタンパク質である(例えば、原核細胞に天然に存在する)。他の場合において、Cas12d又はCas12eタンパク質は、天然に存在するポリペプチドではない(例えば、Cas12d又はCas12eタンパク質は、変異型Cas12d又はCas12eタンパク質、キメラタンパク質などである)。
【0067】
天然に存在するCas12d又はCas12eタンパク質は、標的二本鎖DNA(dsDNA)の特定の配列(例えば、標的配列)において二本鎖切断を触媒するエンドヌクレアーゼとして機能する。配列特異性は、標的DNA内の標的配列にハイブリダイズする、関連するガイドRNAによって提供される。天然に存在するガイドRNAは、crRNAにハイブリダイズしたtracrRNAを含み、crRNAは、標的DNA内の標的配列にハイブリダイズするガイド配列を含む。
【0068】
いくつかの態様において、変異型Cas12d又はCas12eタンパク質は、対応する野生型Cas12d又はCas12eタンパク質のアミノ酸配列と比較した場合、少なくとも1個のアミノ酸について異なる(例えば、欠失、挿入、置換、融合を有する)アミノ酸配列を有する。
【0069】
いくつかの場合において、開示されるCasXタンパク質は、野生型CasXタンパク質配列と20%以上の配列同一性(例えば、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。CasXタンパク質配列の例を図15に示す。
【0070】
いくつかの場合において、開示されるCasYタンパク質は、野生型CasYタンパク質配列と20%以上の配列同一性(例えば、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。CasYタンパク質配列の例を図16に示す。
【0071】
いくつかの態様において、変異型Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼは、それぞれ、修飾Cas12d又は修飾Cas12eである。いくつかの態様において、修飾Cas12d又はCas12eは、検出可能な標識を含む。いくつかの態様において、検出可能な標識は、化学発光標識、蛍光標識、又は酵素標識であり得る。本明細書で使用される場合、「検出可能な標識」は、検出され得る、又は検出可能な応答をもたらし得る核酸、タンパク質、又は化合物である。本発明による検出可能な標識は、Cas12d又はCas12eなどの核酸配列又はタンパク質に直接的又は間接的に連結することができ、放射性同位体、酵素、ハプテン、染料又は検出可能な色を付与する粒子などの発色団(例えば、ラテックスビーズ又は金属粒子)、発光化合物(例えば、生物発光、リン光又は化学発光部分)、量子ドット、及び蛍光化合物を含む。
【0072】
適切な蛍光タンパクとしては、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はその変異体、GFPの青色蛍光変異体(BFP)、GFPのシアン蛍光変異体(CFP)、GFPの黄色蛍光変異体(YFP)、増強GFP(EGFP)、増強CFP(ECFP)、増強YFP(EYFP)、GFPS65T、エメラルド、トパーズ(TYFP)、Venus、Citrine、mCitrine、GFPuv、不安定化EGFP(dEGFP)、不安定化ECFP(dECFP)、不安定化EYFP(dEYFP)、mCFPm、Cerulean、T-Sapphire、CyPet、YPet、mKO、HcRed、t-HcRed、DsRed、DsRed2、DsRed-単量体、J-Red、dimer2、t-dimer2(12)、mRFP1、pocilloporin、ウミシイタケGFP、Monster GFP、paGFP、Kaedeタンパク質及びkindlingタンパク質、Phycobiliタンパク質及びフィコビリタンパク複合体(B-フィコエリトリン、R-フィコエリトリン及びアロフィコシアニンを含む)が含まれるが、これらに限定されない。蛍光タンパク質の他の例としては、mHoneydew,mBanana,mOrange,dTomato,tdTomato,mTangerine,mStrawberry,mCherry,mGrape1,mRaspberry,mGrape2,mPlum(Shaner et al.(2005)Nat.Methods2:905-909)などが挙げられる。例えば、Matz et al.(1999)Nature Biotechnol.17:969-973に記載されるように、花虫類由来の様々な蛍光タンパク質及び着色タンパク質のいずれもが、使用に好適である。
【0073】
適切な酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ベータ-ガラクトシダーゼ(GAL)、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、ベータ-N-アセチルグルコサミニダーゼ、β-グルクロニダーゼ、インベルターゼ、キサンチンオキシダーゼ、ホタルルシフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ(GO)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
いくつかの態様において、修飾Cas12d又はCas12eは、核局在化配列を含む。いくつかの態様において、核局在化配列の存在により、Cas12d又はCas12eは修飾Cas12d又はCas12eとなる。いくつかの態様において、Cas12d又はCas12eをコードする核酸配列は、核局在化配列を含む。いくつかの態様において、核局在化配列は、核酸配列又はアミノ酸配列であり得る。
【0075】
いくつかの態様において、Cas12d又はCas12eの配列は変異し得る。いくつかの態様において、変異は、Cas12d又はCas12eの機能ドメインにはない。いくつかの態様において、必要な機能を有するドメインは、標的鎖充填ドメイン(例えば、DpbCasXの825~934残基)及び非標的鎖結合ドメイン(例えば、101~191残基)からなるDNA結合ドメインを含む。Liu et al Nature,566,218-223(2019)は、参照により本明細書に組み込まれ、CasX酵素の機能的ドメインを記載する。CasX機能を特異的に破棄する変異には、RuvCドメインを標的とする変異[例えば、D672A/E769A/D935A]が含まれる。
【0076】
いくつかの態様において、Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物は、第1のgRNA又は第2のgRNAのうちの少なくとも1つをコードする同じ核酸構築物である。
【0077】
いくつかの態様において、Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物は、ウイルスベクターの一部である。したがって、いくつかの態様において、投与は、Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物、第1のgRNAをコードする核酸構築物、及び第2のgRNAをコードする核酸構築物のうちの1つ以上を含むウイルスベクターを投与することを含む。
【0078】
いくつかの態様において、細胞のDNA(例えば、細胞に内在するDNA)は、Cas12d又はCas12eによって切断されない。したがって、例えば、いくつかの態様において、ウイルスゲノムのみが、開示された方法でCas12d又はCas12eによって切断され、細胞のDNAは無傷のままである。
【0079】
3.ウイルス
いくつかの態様において、細胞は細胞ゲノムを含み、ウイルスゲノムは細胞ゲノムに組み込まれる。したがって、いくつかの態様において、細胞は、細胞ゲノム及びウイルスゲノムの両方を含む、単一ゲノムを含むことができる。いくつかの態様において、ウイルスゲノムは、独立したゲノム要素として存在する。したがって、いくつかの態様において、細胞は、2つの別個のゲノム、細胞ゲノム及びウイルスゲノムを含むことができる。
【0080】
いくつかの態様において、細胞は哺乳動物細胞であり得る。例えば、いくつかの態様において、哺乳動物細胞はヒト細胞であり得る。したがって、いくつかの態様において、ウイルスはヒト細胞に感染している。
【0081】
いくつかの態様において、ウイルスは、二本鎖DNA(dsDNA)ゲノム又はdsDNAからなるウイルス複製中間体を有する。例えば、RNAウイルス(RNAウイルスゲノムを有するウイルス)は、RNAをDNAに変換することができ、DNAをdsDNA(例えば、dsDNAからなるウイルス複製中間体)にコピーすることができる。RNAウイルスには、亜科Lentivirus(例えばHIV-1及びHIV-2)、Deltaretroviridae(例えばHTLV-1及びHTLV-2)を含むレトロウイルス科のもの、並びにSpumaretrovirinae(例えばHFV)及びGammaretrovirinae(例えばXMRV)のものが含まれるがこれに限定はされない。
【0082】
いくつかの態様において、本開示の方法は、ウイルスを不活性化し、ウイルスは、科Retroviridae、Hepadnaviridae、Herpesviridae、Adenoviridae、Papillomaviridae、Poxviridae、Polyomaviridae、Asfarviridaeに由来する。いくつかの態様において、科Hepadnaviridaeは、B型肝炎ウイルス(HBV)を含み得る。いくつかの態様において、ウイルスは、科Alphaherpesvirinae、Betaherpesvirinae、及びGammaherpesvirinaeの病原性メンバーを含む、目Herpesviralesに由来し得る。いくつかの態様において、ウイルスの例は、科Adenoviridae(例えば、ヒトアデノウイルスA~G種)、Papillomaviridae(例えば、ヒトパピローマウイルス)、Poxviridae(例えば、パラポックスウイルス、オルソポックスウイルス、モルシポックスウイルス)、Polyomaviridae(例えば、ヒトポリオーマウイルス1~14)、及びAsfarviridae(例えば、アフリカ豚コレラウイルス)のメンバーである。特に、いくつかの態様において、ウイルスは、HIV-1、B型肝炎ウイルス(HBV)、又はHTLV-1である。
【0083】
いくつかの態様において、ウイルスゲノムの少なくとも一部は、ウイルスゲノムの残りの部分から切除される。いくつかの態様において、ウイルス遺伝子の全ては、ウイルスゲノムから切除される。例えば、gRNAがLTR領域内の標的配列で切断される場合、ウイルス遺伝子の全てを切除することができる。
【0084】
4.標的配列
いくつかの態様において、標的配列は、標的核酸(例えば、ウイルスゲノム)上の部位であって、切断のためにgRNA及びCas12d又はCas12eによって標的化される。
【0085】
いくつかの態様において、第1の標的配列又は第2の標的配列のうちの少なくとも1つは、表1からの配列である。
表1.HBVにおけるCas12e標的配列の例。HBV ayw株(NC_003977)の位置と配列。配列は、PAM配列の第1の塩基から始まり、PAM(TTCN)、それに続く20bpのプロトスペーサー配列を含む。
【表1】







【0086】
いくつかの態様において、第1の標的配列及び第2の標的配列は、表2に提供される標的配列のペアのうちの1つである。
表2:ウイルスゲノムの部分の切除のためのgRNAのペアの例。配列は、異なるウイルス内のプロトスペーサー配列を示す。
【表2】

【0087】
いくつかの態様において、第1の標的配列又は第2の標的配列のうちの少なくとも1つは、表2の配列である。
【0088】
表2は、HBVクレードAコンセンサスにおけるCas12e標的配列の例を提供する。HBVクレードAコンセンサス配列における位置及び配列を本明細書に提供する(図18)。いくつかの態様において、配列は、PAM配列の第1の塩基から開始することができ、PAM(TTCN)に続く20bpのプロトスペーサー配列を含む。
【0089】
いくつかの態様において、第1の標的配列及び第2の標的配列は、ウイルスゲノムの反対側の鎖上にある。
【0090】
いくつかの態様において、第1の標的配列及び第2の標的配列における切断は、第1の標的配列及び第2の標的配列で5’一本鎖DNA(ssDNA)オーバーハングをもたらす。したがって、いくつかの態様において、Cas12d又はCas12eによる切断は、平滑末端をもたらさない。
【0091】
いくつかの態様において、第1の標的配列及び第2の標的配列の5’ssDNAオーバーハングは、相補的な重複配列を有する。いくつかの態様において、本方法は、互いにハイブリダイズする、第1の標的配列及び第2の標的配列における5’ssDNAオーバーハングを更に含む。
【0092】
いくつかの態様において、第1の標的配列及び第2の標的配列における5’ssDNAオーバーハングに隣接する配列は、相同配列である。いくつかの態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、マイクロホモロジー媒介末端結合を含む、これらのホモロジーの領域を利用するDNA修復機構を介した、これらの短い相同性領域の結合を更に含む。いくつかの態様において、本明細書に開示される方法は、マイクロホモロジー媒介末端接合を含む、これらのホモロジーの領域を利用する真核細胞に存在するDNA修復機構を介した、これらの短いホモロジーの領域の結合後に介在DNA配列を除去することを更に含む。いくつかの態様において、マイクロ相同媒介末端結合(MMEJ)は、結合前に壊れた末端に内部のマイクロホモロジー配列のアラインメントを伴うエラーが起こりやすい修復機構であり、元の壊れた部位をマークする欠失及び挿入、並びに染色体転座に関連する。
【0093】
C.組成物
CasX又はCasY(例えば、Cas12d又はCas12e)を細胞に送達するために使用される構築物が、開示される。例えば、図17は、CasX2を担持するベクターを示す。本明細書に開示されるgRNAのいずれかを細胞に送達するために使用される構築物が開示される。例えば、本明細書に記載のgRNAのいずれかは、単独で、又は第2のgRNAと組み合わせて、又はCasX若しくはCasYエンドヌクレアーゼをコードする核酸と組み合わせて、構築物中に存在することができる。
【0094】
HBVゲノム内の配列を標的にするために使用されるgRNAが開示される。以下を含むがこれらに限定されない、HBVゲノムを標的とするgRNAが本明細書に開示される:Hbv 353-tctaggggacctgcctcgtc(配列番号142);Hbv 457-ccaccttatgagtccaagga(配列番号143);Hbv 688-ggtattaaaccttattatcc(配列番号144);Hbv 835-caagatctacagcatggggc(配列番号144);Hbv 1446-ccctagaaaattgagagaag(配列番号145);Hbv1704-ttgagcagtagtcatgcagg(配列番号146);Hbv 1791-gaaagcccaggatgatggga(配列番号147);Hbv 2101-ttgattttttgtatgatgtg(配列番号148);Hbv 2665-cggggtcgcttgggactctc(配列番号149);Hbv 2789-cttcacctctgcacgtcgca(配列番号150);Hbv 2794(Hbx216)-cctctgcacgtcgcatggag(配列番号151);Hbv 2911(Hbx333)-aagactgtttgtttaaagac(配列番号152);Hbv 3164-gacttctttccttcagtacg(配列番号153);Hbx 91(Hbv 2665)-cggggtcgcttgggactctc(配列番号154);Hbx 119(Hbv 2697)-ccgtctgccgttccgaccga(配列番号155);Hbx 137(Hbv 2711)-gaccgaccacggggcgcacc(配列番号156);Hbx 186(Hbv 2764)-catctgccggaccgtgtgca(配列番号157);Hbv 99-ctgatgacggagagggaata(配列番号158);Hbv 131-gctcctaacccctgggacgc(配列番号159);hbv 182-atcctggggaagagcacaat(配列番号160);hbv 195-gcacaatgtccgccccaaaa(配列番号161);hbv 1499-ccgtctgccgttccgaccga(配列番号162);hbv 1513-gaccgaccacggggcgcacc(配列番号163);hbv 1566-catctgccggaccgtgtgca(配列番号164);hbv 1596-cctctgcacgtcgcatggag(配列番号165);hbv 1713-aagactgtttgtttaaagac(配列番号166);hbv 1903-aatattcccagctacaggta(配列番号167);hbv 1966-ctgaagaaaggaagtcatgc(配列番号168);hbv 1973-aaggaagtcatgctctagaa(配列番号169);hbv 1977-aagtcatgctctagaagatc(配列番号170);hbv 1981-catgctctagaagatctatg(配列番号171);hbv 1995-tctatggcggagtcgagaca(配列番号172)。
【0095】
CasXタンパク質は、標的配列で標的DNAに結合し、標的配列は、DNA標的化RNA(gRNA)と標的DNAとの間の相補性領域によって画定される。多くのCRISPRエンドヌクレアーゼの場合と同様に、二本鎖標的DNAの部位特異的結合(及び/又は切断)は、(i)ガイドRNAと標的DNAとの間の塩基対相補性、及び(ii)標的DNA内の短いモチーフ(プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と称される)の両方によって決定される位置で生じる。
【0096】
いくつかの実施形態において、CasXタンパク質のPAMは、標的DNAの非相補鎖の標的配列のすぐ5’側にある(相補鎖はガイドRNAのガイド配列にハイブリダイズするが、非相補鎖はガイドRNAと直接ハイブリダイズせず、非相補鎖の逆相補である)。いくつかの場合において、異なるCasXタンパク質(すなわち、様々な種由来のCasXタンパク質)は、異なるCasXタンパク質の様々な酵素特性を利用するために(例えば、異なるPAM配列選択性について;酵素活性の増加又は減少について;細胞毒性レベルの増加又は減少について;NHEJ、相同組換え修復、一本鎖切断、二本鎖切断などの間のバランスを変化させるため;短い全配列を利用するためなど)、様々な所与の方法において使用するのに有利であり得る。異なる種由来のCasXタンパク質は、標的DNAにおいて異なるPAM配列を必要とし得る。適切なPAM配列を同定するための様々な方法(シリコ法及び/又はウェットラボ法を含む)が当該技術分野で既知であり、日常的であり、任意の便利な方法を使用することができる。
【0097】
1.医薬組成物
Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼ、Cas12d又はCas12eエンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物、第1のgRNA、第1のgRNAをコードする核酸構築物、第2のgRNA、及び/又は第2のgRNAをコードする核酸構築物を含む組成物が開示される。
【0098】
いくつかの態様において、開示される組成物は、医薬組成物であり得る。例えば、いくつかの態様において、本明細書に開示されるgRNAのうちの1つ以上を含む組成物と、薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物が開示される。「薬学的に許容され得る」とは、当業者に周知であるように、活性成分の任意の分解を最小限に抑え、対象における任意の有害な副作用を最小限に抑えるように選択される材料又は担体を意味する。担体の例としては、ジミリストイルホスファチジル(DMPC)、リン酸緩衝生理食塩水又は多小胞リポソームが挙げられる。例えば、本発明では、PG:PC:コレステロール:ペプチド又はPC:ペプチドを担体として使用し得る。他の適切な薬学的に許容され得る担体及びそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA1995に記載されている。通常、製剤を等張性にするために、製剤に適切な量の薬学的に許容され得る塩が使用される。薬学的に許容され得る担体の他の例としては、生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液が挙げられるが、これらに限定されない。溶液のpHは、約5~約8であり、又は約7~約7.5であり得る。更なる担体としては、組成物を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスなどの徐放性調製物が挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えばフィルム、ステント(血管形成術中に血管に移植される)、リポソーム又は微粒子の形態である。例えば、投与経路及び投与される組成物の濃度、並びに治療のために標的化される器官又は細胞型に依存して、特定の担体がより好ましくなり得ることは、当業者には明らかである。これらの最も典型的なものは、ヒトに薬物を投与するための標準的な担体であり、滅菌水、生理食塩水、生理的pHの緩衝液などの溶液を含む。
【0099】
本発明のポリペプチド、ペプチド、又は複合体の意図される活性が損なわれない限り、医薬組成物は、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、防腐剤なども含み得る。医薬組成物は、1つ以上の活性成分(本発明の組成物に加えて)、例えば、抗微生物剤、抗炎症剤、麻酔薬などを含んでもよい。
【0100】
本明細書に開示される医薬組成物は、経口投与又は非経口投与のために調製することができる。非経口投与のために調製される医薬組成物としては、静脈内(又は動脈内)、筋肉内、皮下、腹腔内、経粘膜(例えば、鼻腔内、膣内、又は直腸)、又は経皮(例えば、局所)投与のために調製される医薬組成物が挙げられる。エアロゾル吸入は、融合タンパク質を送達するためにも使用することができる。したがって、非経口投与用の組成物を調製でき、この組成物は、許容される担体に溶解又は懸濁した融合タンパク質を含み、許容される担体は、水、緩衝水、生理食塩水、緩衝生理食塩水(例えば、PBS)などの水性担体を含むがこれらに限定されない。含まれる賦形剤のうちの1つ以上は、pH調整剤及び緩衝剤、張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤などように、生理学的状態の近似を助けることができる。組成物が固体成分を含む場合(経口投与のために)、賦形剤のうちの1つ以上が結合剤又は充填剤として機能し得る(例えば、錠剤、カプセルなどの製剤化のため)。皮膚又は粘膜表面に適用するために組成物が製剤化される場合、賦形剤のうちの1つ以上は、クリーム、軟膏などを製剤するための溶媒又は乳化剤であり得る。
【0101】
非経口投与のための調製物は、滅菌水溶液又は非水溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体は、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液を含み、生理食塩水及び緩衝媒体を含む。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、又は固定油を含む。静脈内ビヒクルは、流体及び栄養補充剤、電解質補充剤(リンゲルデキストロースに基づくものなど)などを含む。保存剤及び他の添加剤、例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなども存在し得る。
【0102】
光学投与用の製剤には、軟膏、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、点滴剤、座薬、噴霧剤、液剤、及び粉剤が含まれてもよい。従来の医薬担体、水性、粉末又は油性基剤、増粘剤などが必要である又は望ましい場合がある。
【0103】
経口投与のための組成物は、粉剤又は顆粒剤、水又は非水媒体中の懸濁液又は溶液、カプセル剤、サシェ剤、又は錠剤が含まれる。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤、又は結合剤が望ましい場合がある。本組成物のうちのいくつかは、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、及びリン酸などの無機酸、並びにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、及びフマル酸などの有機酸との反応によって、又は水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、並びにモノ、ジ、トリアルキル、及びアリールアミン、及び置換エタノールアミンなどの有機塩基との反応によって形成される薬学的に許容され得る酸付加塩又は塩基付加塩として潜在的に投与され得る。
【0104】
薬学的組成物は、無菌であり得、従来の滅菌技術によって滅菌され得る、又は滅菌濾過され得る。水溶液は、そのまま使用するために包装され得る、又は凍結乾燥され得、本開示によって包含される凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌水性担体と組み合わせ得る。医薬組成物のpHは、通常、3~11(例えば、約5~9)又は6~8(例えば、約7~8)である。得られた固体形態の組成物は、錠剤又はカプセルの密封包装など、それぞれが固定量の上記薬剤を含有する複数の単回用量単位で包装できる。固体形態の組成物は、局所的に適用可能なクリーム又は軟膏のために設計された絞り出しチューブなどの、柔軟な量のための容器にも包装できる。
【0105】
上記の医薬組成物は、治療有効量の本明細書に開示される組成物を含むように製剤化することができる。いくつかの態様において、治療的投与は、予防的用途を包含する。遺伝子検査及び他の予後診断方法に基づいて、患者と相談している医師は、患者が1つ以上の自己免疫疾患に対する臨床的に決定された素因若しくは増加した感受性(いくつかの場合おいては、大幅に増加した感受性)を有する場合、又は患者ががんに対する臨床的に決定された素因若しくは増加した感受性(いくつかの場合おいては、大幅に増加した感受性)を有する場合、予防的投与を選択できる。
【0106】
本明細書に記載の医薬組成物は、臨床疾患の発症を遅延、低下、又は好ましくは予防するのに十分な量で、対象(例えば、ヒト対象又はヒト患者)に投与することができる。その結果、いくつかの態様において、対象は、ヒト対象である。治療用途において、組成物は、既に疾患を有する、又は疾患と診断された対象(例えば、ヒト対象)に、兆候若しくは症状を少なくとも部分的に改善する、又は状態、その合併症、及び結果の兆候の進行を抑制する(及び好ましくは停止する)のに十分な量で、投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療有効量」として定義される。医薬組成物の治療有効量は、治癒を達成する量であり得るが、その成果は、達成され得るいくつかの成果のうちの1つにすぎない。記載したように、治療有効量は、がんの発症若しくは進行が遅延、妨害若しくは予防される、又は自己免疫疾患若しくは自己免疫疾患の症状が改善される治療を提供する量を含む。症状のうちの1つ以上は、重症度が低くてもよい。治療を受けた人は、回復が早まり得る。
【0107】
本明細書に開示される医薬組成物中の複合体の総有効量は、単回用量として、急速静注若しくは比較的短期間にわたる注入によってのいずれかで、哺乳動物に投与され得るか、又は複数回用量がより長期間にわたって投与される分割治療プロトコル(例えば、4~6、8~12、14~16、若しくは18~24時間ごと、又は2~4日ごと、1~2週間ごと、又は1ヶ月に1回の投与)を使用して投与され得る。その代わりに、治療上有効な血中濃度を維持するのに十分な連続静脈内注入も、本開示の範囲内である。
【0108】
医薬組成物は、局所又は全身治療が望ましいかどうか、及び治療される領域に応じて、いくつかの方法で投与し得る。
【0109】
D.キット
上記の材料及び他の材料は、開示された方法を実行するのに有用な、又はその実施を補助するキットとして、任意の適切な組み合わせで一緒に包装され得る。所与のキット内のキット構成要素が、開示された方法で一緒に使用されるように設計及び適合される場合には有用である。例えば、開示されたgRNA、Cas12d、又はCas12eのうちの1つ以上を含むキットが開示されており、キットはベクター(例えば、核酸構築物)も含み得る。
【実施例
【0110】
A.実施例1
Cas12e、RNAガイドエンドヌクレアーゼのファミリーとしても知られるCasXの切断メカニズムを利用して、B型肝炎ウイルス(HBV)ゲノムの一部の標的破壊又は欠失を媒介するアプローチが開発されている。これらの方法は、宿主若しくはモデルシステムゲノムDNA内に組み込まれた、又は共有結合的に閉じた環状DNA(cccDNA)などの独立したゲノム要素として細胞内に存在するHBVゲノムの部分の欠失に適用される。トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)及びCRIPSR RNA(crRNA)、又はtracrRNA及びcrRNAからなる単一ガイドRNA(sgRNA)のいずれかからなるRNAベースのガイドRNA(gRNA)とともに使用される、修飾CasX酵素が、本明細書に開示される。CasX及び2種以上のgRNAによって誘導されるDNA切断部位に存在する配列を考慮することによって、介在するHBV DNA配列の切除を促進するgRNA又はgRNAの組み合わせの使用が更に記載される。この実施例は、HBVゲノムの必須部分の効率的で標的化された切除を達成する、いくつかのCasX及びgRNAの組み合わせを記載する。Cas12dも使用することができ、HBVに加えて他のウイルスゲノムも標的にすることができることを認識すべきである。
【0111】
CasXは、最近発見されたRNAガイドエンドヌクレアーゼのグループを含み、これはdsDNAの互い違いの切断を媒介する。平滑末端DNAをもたらすdsDNA切断を産生するCas9とは対照的に、CasXは、5bp以上のssDNAからなる5’ssDNAオーバーハングをもたらす互い違いの切断を産生する。
【0112】
Cas9ベースの戦略は、HBVゲノムの切除を媒介するために探索されている。SaCas9又はSpCas9を使用するかどうかにかかわらず、これらのアプローチは、これらの酵素に対する既存のヒト免疫によって、及びプロトスペーサー配列又はプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)内の部位の変異を介して、Cas9gRNAアプローチに対する耐性を進化させるウイルスの能力によっても、制限される。既存のアプローチのこれらの主要な制限に対処するCasXベースの戦略が開発された。CasXは、比較的小さいサイズ及び既存の免疫の推定欠如を含む明確な利点を提供する。
【0113】
HBVを標的とする適切に対合したCasX sgRNAの設計及び使用により、このアプローチは、HBVプロウイルスゲノムの大部分の効率的で標的化された切除を達成する(表1)。
【0114】
複数のCasX標的部位(標的配列)が、HBVゲノム内で同定されている(表1に示される)。
【0115】
インビトロでHBV dsDNA配列を切断するためにCasXとともに機能し得る複数のsgRNAを作成して利用するためのツールが特定されている(図2)。これらのツールには、ヒト又はE.coliに最適化されたコドン使用を伴う様々な形態のCasX1又はCasX2、E.coliにおけるタンパク質の発現、タンパク質の折り畳み及び発現後のタンパク質の精製を強化するための様々なタグをコードするベクターを含む。CasX1及びCasX2は、開示された方法において同じgRNAを使用することができる、異なったエンドヌクレアーゼである。
【0116】
宿主ゲノムDNAの検出可能な切断を伴わない、HBV dsDNAの高度に特異的な切断(図3)は、核局在化配列Sv40と核質及びエピトープタグの組み合わせを含有する、修飾型のCasX1又はCasX2を使用して達成され、ヒト又は他の哺乳類細胞中で発現されるCasXタンパク質の発現及び細胞内局在化に続く。
【0117】
ヒト細胞において、HBVを標的とするsgRNAとともにCasXコード化構築物を送達するためのツールが開発されている。これらを用いて、ヒトゲノムに組み込まれたHBV DNAを破壊した(図5参照)。
【0118】
HBVゲノムの反対側の鎖上の配列を標的とするペアsgRNAが開発されており(表2)、これは、ヒト細胞内のHBV DNAの介在セグメントの除去を伴う効率的な標的切断をもたらす(図5及び図6)。
【0119】
図7は、sgRNAによる切断を評価するためのT7アッセイの例を示す。個々のガイドを使用してHBVの切断を決定し、T7アッセイ(+/-T7エンドヌクレアーゼ)によって評価した。ガイドを含まないpDG459CasX2プラスミドを陰性対照として使用した。CasX2を有する個々のガイドをpBLOプラスミドにクローニングして、CasX1を有する個々のガイドをpDG459プラスミドにクローニングした。ガイド353は、HBV標的の切断を実証する予想されるバンドを有し、ガイド1704及び1791は、予想されるサイズのかすかなバンドを有し、ガイド119、186及び216は、予想されるバンドを有する。pDG459CasX1プラスミドを使用するガイドRNA切断は、pBLOCasX2プラスミドにクローニングされたガイドRNAよりも、効果的であるようである。
【0120】
図8は、T7エンドヌクレアーゼアッセイの前に行われたアッセイである、予想される切断部位周辺のプライマーを使用するPCRを示す。
【0121】
図9は、pDG459-X1(レーン3~8)及びpDG459-X2(レーン10~12)におけるHBVを標的とするガイドを用いる共トランスフェクション実験を示す。共トランスフェクション後、細胞DNAを単離し、HBVプラスミドDNAの切除を、PCR及びアガロースゲル電気泳動によって調べた(示す)。クローニングしたガイド配列を有しない、pDG459-X1(レーン2)及びpDG459-X2(レーン9)プラスミドの共トランスフェクションを対照として使用した。HBVゲノムの介在するDNA配列の有効な切断及び切除が、CasX1とgRNA対688/2794及び457/2789について示される。
【0122】
図10は、断片をベクターにクローニングするための制限マップを示す。
【0123】
図11は、PCR生成物を鋳型として使用する、HBV/Topo中の3,183bpに対するプライマーHbvフォワード/Hbvリバースを示す。図11は、ベクターにクローニングされる断片を作成することができるプライマーを示す。
【0124】
図12は、クローニング戦略を示す。両端は、各遺伝子が完全になることを確実にするために、繰り返しDNAの小さな領域を有する(5’余分なHBx DNA;3’余分なコアDNA)。Nhe1及びSal1を使用してpMC.EF1a.MCS.SV40Polyにクローニングすることも、Nhe1/Sca1を使用してLox-Stop-Lox-TOPOにクローニングすることもできる。
【0125】
当業者であれば、通常範囲を超えない実験を使用して、本明細書に記載の方法及び組成物の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、又は確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A-D】
【配列表】
2023553422000001.app
【国際調査報告】