(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】少なくとも1つのグリシン若しくはその誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールと、を使用する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20231214BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20231214BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231214BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231214BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20231214BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231214BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231214BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231214BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20231214BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231214BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20231214BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K31/05
A61P1/04
A61P1/16
A61P3/06
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K9/14
A61K9/48
A61K45/00
A23L33/10
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535471
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2021085403
(87)【国際公開番号】W WO2022128870
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ジラルト, アルバート
(72)【発明者】
【氏名】クラウス, マリン
(72)【発明者】
【氏名】ガット, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】リッツォ, ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】シヴィレット, ガブリエーレ
(72)【発明者】
【氏名】カラグニス, レオニダス, ゲオルギオス
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB08
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4B018LE03
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4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、概して、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝炎、及び/又は肝脂肪症(脂肪肝)を治療又は予防することができる、組成物及び方法に関する。より具体的には、本開示は、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとの組み合わせを含む配合物を、肝臓脂肪症を減少させるのに有効な量で投与することに関する。配合物は、肝損傷、特にNAFLDを有する患者において観察される肝損傷を同時に減少させることができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝炎、肝脂肪症(脂肪肝)及び/又は関連する肝損傷の治療、予防又は進行管理を必要とする個体においてそれを行うのに使用するための、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとの有効量の組み合わせを含む、組成物。
【請求項2】
肝毒性及び/又は肝損傷の予防に使用するための、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとの有効量の組み合わせを含む、組成物。
【請求項3】
前記組み合わせが、肝臓トリグリセリド並びに/又は循環血液中AST及びALT酵素を減少させるのに有効な量である、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのグリシン又はその機能的誘導体が、L-グリシン、L-グリシンエチルエステル、D-アリルグリシン、N-[ビス(メチルチオ)メチレン]グリシンメチルエステル、Boc-アリル-Gly-OH(ジシクロヘキシルアンモニウム)塩、Boc-D-Chg-OH、Boc-Chg-OH、(R)-N-Boc-(2’-クロロフェニル)グリシン、Boc-L-シクロプロピルグリシン、Boc-L-シクロプロピルグリシン、(R)-N-Boc-4-フルオロフェニルグリシン、Boc-D-プロパルギルグリシン、Boc-(S)-3-チエニルグリシン、Boc-(R)-3-チエニルグリシン、D-a-シクロヘキシルグリシン、L-a-シクロプロピルグリシン、N-(2-フルオロフェニル)-N-(メチルスルホニル)グリシン、N-(4-フルオロフェニル)-N-(メチルスルホニルグリシン、Fmoc-N-(2,4-ジメトキシベンジル)-Gly-OH、N-(2-フロイル)グリシン、L-a-ネオペンチルグリシン、D-プロパルギルグリシン、サルコシン、Z-a-ホスホノグリシントリメチルエステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのN-アセチルシステイン機能的誘導体が、N-({2-[(エチルスルホニル)アミノ]エチル}スルホニル)-L-アラニン、N-アセチル-S-(1Z)-プロペニル-システイン-スルホキシド、S-(5-アセトアミド-2-ヒドロキシフェニル)システイン、S-2-クロロエチルシステイン)、D-システイン誘導体、L-システイン誘導体、システイン酸、システイニル-アミノ酸、シスチン、ガンマ-グルタミルシステイニルグルタメート、グリキサゾンB、ホーキンシン、ぺプチジル-システイン、プレニルシステイン、S-アセトアミドメチルシステイン、グルタチオン(GSH)及びグルタチオン形態(リポソームGSH)からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
抗酸化剤、抗炎症化合物、グリコサミノグリカン、プレバイオティクス、繊維、プロバイオティクス、脂肪酸、酵素、ミネラル、微量元素及び/又はビタミンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
食品組成物、ダイエタリー・サプリメント、栄養組成物、経口栄養補助食品、医療用食品、ニュートラシューティカルズ、飲料、摂取前に水又はミルクで再構成される粉末栄養製剤、食品添加物、特別医療目的用食品(FSMP)医薬品、ドリンク、ペットフード、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
固体粉末、粉末スティック、カプセル又は溶液の形態である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
経口投与又は経腸投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記個体が、肝疾患、例えば、NAFLD、NASH、肝炎、若しくは腸炎などの胃腸状態、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、粘膜炎及び腸のディスバイオシスを有するか、又はそのような状態を発症するリスクがある、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記個体が、重篤である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための栄養組成物を製造する方法であって、栄養組成物のための1つ以上の原材料と、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとを用意する工程と、混合する工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景技術]
本開示は、概して、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease、NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis、NASH)、及び/又は肝脂肪症(脂肪肝)を治療又は予防することができる組成物及び方法に関する。より具体的には、本開示は、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとの組み合わせを含む配合物を、肝臓脂肪症を減少させるのに有効な量で投与することに関する。配合物は、肝損傷、特にNAFLDを有する患者において観察される肝損傷を同時に減少させることができる。
【0002】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、西洋諸国において最も一般的な肝疾患であり、大量のアルコール摂取、脂肪合成薬物療法(steatogenic medication)の長期使用、又は一遺伝子性遺伝性障害などの二次的原因がない場合の肝脂肪症のエビデンスとして定義される。NAFLDは、現在、世界人口の約25%が罹患しており、治療法が不足している。
【0003】
NAFLDは、アルコールをほとんど又は全く飲まない人の肝臓に過剰な脂肪が蓄積している状態の群を指す。NAFLDは、単純性大滴性脂肪症(macrovesicular steatosis)から脂肪性肝炎、進行した線維症、及び硬変に及ぶ広範囲の肝損傷を含む(Sumida et a.2018,Journal of gastroenterology,53,362-376)。NAFLDの最も一般的な形態は、脂肪肝と呼ばれる重篤でない状態である。脂肪肝では、脂肪が肝細胞に蓄積する。NAFLDを有する個体のほとんどは、症状を有せず、検査も正常である。
【0004】
脂肪肝患者のうち少数では、脂肪の蓄積が、肝細胞の損傷及び炎症を引き起こし得る。これは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼ばれる。肝臓炎は、次いで、肝臓組織の線維症及び瘢痕化をもたらすことがあり、これにより、肝臓が機能する能力が損なわれることがある(NAFLD関連硬変)。時間が経つにつれて、肝硬変は肝移植を必要とし得る肝不全をもたらすことがある。
【0005】
NAFLDは、インスリン抵抗性及びメタボリックシンドロームに関連し、2型糖尿病並びに高脂血症及び肥満に関連する。NAFLDは、世界人口の約25~30%、肥満者の約80%が罹患している。
【0006】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、NAFLDの最も極端な形態であり、原因不明の肝硬変の主な原因とみなされ、末期肝疾患の発症及び原発性肝癌をもたらすことがある。世界人口の約2~8%がNASHに罹患している。NASHは、一般にメタボリックシンドローム(肥満、脂質異常症及びインスリン抵抗性)に関連する。この疾患の更なる進行は、おそらく慢性炎症及び活性酸素種形成によって引き起こされる。代謝的に誘導された肝臓炎は、更なる炎症成分を動員し、NASHを引き起こす。後ろ向きコホート研究では、肝不全がNASH関連硬変における罹患率及び死亡率の主な原因であると結論付けられた。
【0007】
NAFLD/NASHの症状の治療には、食事介入、ビタミンE、脂質降下薬及びインスリン感受性促進薬が含まれる。治療はまた、総コレステロールレベルの低下、体重減少、任意の基礎となる糖尿病の制御、アルコール摂取の減少又は排除、及び定期的な運動を含み得る。しかしながら、NAFLD又はNASHを予防又は治療するために現在承認されている薬物はない。
【0008】
NAFLD患者に適切な治療及び十分な栄養を供給するための有効な手段は未だに存在しない。
【0009】
[発明の概要]
NAFLDを治療することを目的とした療法は、理想的には、疾患、すなわち肝脂肪蓄積、ミトコンドリア機能不全及び酸化ストレス、炎症、肝線維症、並びに腸のディスバイオシスの一因となる病理学的プロセスのうちの1つ又はいくつかを標的とすべきである。本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に開示される化合物の異なる組み合わせが、肝臓ヒト化マウスにおいて肝臓脂肪症及びNASHの顕著な減少を誘発し、これが、循環血液中(circulating)肝酵素AST及びALTの同時減少と相関し、肝損傷の減少を示すことを見出した。更に、グリシン、NAC及びチモールの組み合わせによる処置により、肝臓トリグリセリドが減少した。
【0010】
したがって、全般的な実施形態では、本開示は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪症(脂肪肝)及び/又は関連する肝損傷の治療、予防又は進行管理を必要とする個体においてそれを行うのに使用するための、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとの有効量の組み合わせを含む、組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、治療用組成物を作製する方法であって、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとの組み合わせをベース組成物に添加して治療用組成物を形成することを含み、治療用組成物が、肝臓トリグリセリド及び/又は循環血液中AST及びALT酵素の減少を必要とする個体においてそれを行うのに有効な1回分当たりの量の組み合わせを含む、方法を提供する。ベース組成物は、経口、経腸、非経口、及び静脈内注射の群から選択される少なくとも1つの経路による投与のために配合され得る。
【0012】
本開示によって提供される1つ以上の実施形態の利点は、肝疾患、例えば、NAFLD、NASH、肝炎、又は例えば炎症、クローン病(Crown’s)、粘膜炎若しくは腸のディスバイオシスなどの胃腸状態を有するか、あるいはそのような状態を発症するリスクがある個体の状態を改善することである。
【0013】
本開示によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、肝脂肪蓄積及び肝損傷を予防又は治療することである。
【0014】
本開示によって提供される1つ以上の実施形態の別の利点は、例えば、水性液体組成物として、個体又は重篤患者に非経口投与又は経腸投与され得る組成物である。
【0015】
追加の特徴及び利点は、以降の発明の詳細な説明及び図面に記載され、これらにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】肝臓ヒト化マウスにおける肝臓重量及び肝臓トリグリセリドレベル 記載の化合物による8週間の処置後の肝臓ヒト化マウスにおける肝臓重量(全体重の%)及び肝臓トリグリセリドレベル(nmol/mg組織)である。データを平均値±SEM(1群当たりn=4~8)で示す。スチューデントのt検定*p<0.05、**p<0.01。
【
図2】肝臓ヒト化マウスにおける肝臓の組織学的評価 記載の化合物による8週間の処置後の肝臓ヒト化マウスにおけるNAFLD活動性スコア(NAFLD activity score、NAS)である。データを平均値±SEM(1群当たりn=7~8)で示す。スチューデントのt検定*p<0.05。
【
図3】肝臓ヒト化マウスにおける血漿AST及びALTレベルである。 記載の化合物による8週間の処置後の肝臓ヒト化マウスにおける血漿アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase、AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase、ALT)レベル(U/L)である。データを平均値±SEM(1群当たりn=7~8)で示す。スチューデントのt検定*p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
以下、いくつかの定義を示す。しかしながら定義が以下の「実施形態」の項にある場合もあり、上記の見出し「定義」は、「実施形態」の項におけるそのような開示が定義ではないことを意味するものではない。
【0018】
パーセンテージは全て、特に明記しない限り組成物の総重量に対する重量によるものとする。同様に、比は全て、特に明記しない限り重量によるものとする。pHについての参照がなされる場合には、値は標準的な装置により25℃にて測定されるpHに相当する。本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値のある範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは参照数字の-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。
【0019】
更に、本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数(integers)、整数(whole)又は分数、を含むものと理解されたい。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲をサポートするものと解釈されたい。
【0020】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、別途文脈が明らかに示していない限り、単数形の単語は複数形を含む。したがって、「1つの」、「ある」、及び「当該」(「a」、「an」及び「the」)の言及には、概してそれぞれの用語の複数形が包含される。例えば、「原材料(an ingredient)」又は「方法(a method)」と言及する際は、複数の、かかる「原材料」又は「方法」が含まれる。「X及び/又はY」という文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。同様に、「X又はYのうちの少なくとも1つ」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びYの両方」と解釈されるべきである。
【0021】
同様に、「含む/構成される(comprise)」、「含む/構成される(comprises)」、及び「含む/構成される(comprising)」という用語は、排他的ではなく、他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈されるべきである。しかしながら、本開示により提供される実施形態は、本明細書で具体的に開示されない任意の要素を含まない場合がある。したがって、用語「含む(comprising)」を用いて規定される実施形態の開示は、開示される構成要素「から本質的になる」、及び「からなる」実施形態の開示でもある。「を本質的に含む」とは、実施形態が、特定の構成要素を50重量%超、好ましくは特定の構成要素を少なくとも75重量%、より好ましくは特定の構成要素を少なくとも85重量%、最も好ましくは特定の構成要素を少なくとも95重量%、例えば、特定の構成要素を少なくとも99重量%含むことを意味する。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「例(example)」は、特に、後に用語の列挙が続く場合には、単に例示的なものであり、かつ説明のためのものであり、排他的又は包括的なものであるとみなすべきではない。本明細書で開示される全ての実施形態は、特に明示的に示されない限り、本明細書で開示される任意の別の実施形態と組み合わせることができる。
【0023】
「動物」には、齧歯類、水生哺乳動物、イヌ及びネコなどの飼育動物、ヒツジ、ブタ、ウシ及びウマなどの家畜、並びにヒトを含むがこれらに限定されない哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない。「動物」、「哺乳動物」、又はこれらの複数形が使用される場合、これらの用語はまた、文章の文脈によって示される、又は示すことを目的としている効果について能力を有する任意の動物、例えば、オートファジーが可能な動物にも適用される。本明細書で使用するとき、用語「患者」は、本明細書で定義される治療を受けている又は治療を受ける予定の動物、例えば、哺乳動物、好ましくはヒトを含むと理解される。本明細書で使用するとき、「個体」及び「患者」という用語は、多くの場合、ヒトを指して使用されるが、本開示はヒトに限定されない。
【0024】
したがって、「個体」及び「患者」という用語は、本明細書で開示される方法及び組成物が有益となり得る任意の動物、哺乳動物又はヒトを指す。実際に、ヒト以外の動物は、ヒトの状態によく似た長期の重篤な病気を経験する。これらの重篤な動物は、ヒトに対応するものと同じ代謝障害、免疫障害、及び内分泌腺障害、並びに臓器不全及び筋消耗の発症を経験する。更に、動物は、老化の影響も同様に経験する。
【0025】
用語「高齢」は、ヒトに関連して、少なくとも55歳、好ましくは63歳超、より好ましくは65歳超、最も好ましくは70歳超の年齢を意味する。ヒトの文脈における用語「老齢成体(older adult)」又は「高齢個体(ageing individual)」は、少なくとも45歳、好ましくは50歳以上、より好ましくは55歳以上の年齢を意味し、老齢の個体を含む。
【0026】
他の動物については、「老齢成体」又は「高齢個体」とは、その個々の種、及び/又は種内における属の、平均寿命の50%を超えたものをいう。動物は、平均期待寿命の66%を超えた場合、好ましくは平均期待寿命の75%を超えた場合、より好ましくは平均期待寿命の80%を超えた場合に、「老齢(elderly)」であるとみなされる。高齢のネコ又はイヌは、少なくとも約5歳齢である。老齢のネコ又はイヌは、少なくとも約7歳齢である。
【0027】
用語「NAFLD」(非アルコール性脂肪性肝疾患)は、アルコールをほとんど又は全く飲まない人の肝臓に過剰な脂肪が蓄積している状態の群を指す。NAFLDは、単純性大滴性脂肪症から脂肪性肝炎、進行した線維症、及び硬変に及ぶ広範囲の肝損傷を含む。NAFLDを有する個体の大部分は、症状を有せず、検査も正常である。小児は、腹部の中央又は右上部にあり得る腹痛、及び場合により倦怠感などの症状を示し得る。多くの患者において、NAFLDは、肥満、真性糖尿病、及び脂質異常症などの代謝リスク因子に関連する。
【0028】
非アルコール性脂肪肝は、肝細胞の風船様変性(ballooning)の形態の肝細胞障害のエビデンスがない肝脂肪症が存在することとして定義される。
【0029】
「NASH」(非アルコール性脂肪性肝炎)という用語は、NAFLDの最も極端な形態を指し、原因不明の肝硬変の主な原因とみなされるものであり、末期肝疾患の発症及び原発性肝癌をもたらすことがある。NASHは、線維症の有無に関わらず肝細胞障害(風船様変性)を有する肝脂肪症及び炎症が存在することとして定義される。
【0030】
「肝毒性」という用語は、傷害又は肝損傷を指す。肝毒性は、毒物及び薬物への曝露によって引き起こされ得るが、肝臓における毒性脂質種の蓄積によっても引き起こされ得る。肝障害は、正常の上限よりもアラニンアミノトランスフェラーゼ及びアルカリホスファターゼが増加することによって引き起こされる、肝細胞障害型(hepatocellular)、胆汁うっ滞型及び混合型に分類することができる。
【0031】
用語「治療/処置(treatment)」及び「治療/処置すること」には、状態又は疾患(障害)の改善をもたらす任意の効果、例えば状態又は疾患を和らげること、軽減すること、制御すること、又は解消させることが含まれる。この用語は、必ずしも完治するまで対象が治療されることを意味するものではない。状態又は疾患を「治療すること」又は「その治療」の非限定的な例としては、(1)状態又は疾患を阻害すること、すなわち状態若しくは疾患又はその臨床症状の発症を止めること、及び(2)状態又は疾患を緩和すること、すなわち状態若しくは疾患又はその臨床症状の一時的又は永続的な軽減を生じさせることが挙げられる。治療は患者に関連するものであってもよく、又は医師に関連するものであってもよい。
【0032】
用語「防止」又は「防止すること」は、状態又は疾患にさらされ得る又はそれに罹り易い傾向があり得るが、まだ状態又は疾患の症状を呈していない又はそれが現れていない個体において、言及される状態又は疾患の臨床症状を発症させないことを意味する。用語「状態」及び「疾患/障害」は、任意の疾患、状態、症状、又は徴候を意味する。
【0033】
用語「食品」、「食品製品」、及び「食品組成物」は、ヒトなどの個体による摂取が意図され、かかる個体に対して少なくとも1種の栄養素を提供する、製品又は組成物を意味する。本明細書に記載の多くの実施形態を含む本開示の組成物は、本明細書に記載の必須成分(essential elements)及び制限に加え、本明細書に記載の、又はそうでなければ食事療法に有用な、任意の追加の若しくは任意選択の原材料、構成成分、又は制限を含んでよく、これらから構成されてよく、又は本質的にこれらから構成されてよい。
【0034】
本明細書で使用するとき、「完全栄養」は、その組成物が投与される動物にとって、唯一の栄養源とするのに十分な、十分な種類及び量の主要栄養素(タンパク質、脂質及び炭水化物)及び微量栄養素を含有する。個体は、そのような完全栄養組成物から、当該個体の栄養必要量の100%を受容可能である。
【0035】
本明細書で使用するとき、用語「重篤患者」は、急性の生命を脅かす症状を発症している個体、又はそのような発症の危険が差し迫っていると診断された個体である。重篤患者は医学的に不安定であり、治療しないと死亡する可能性が高い(例えば、50%を超える死亡の可能性)。重篤患者の非限定的な例としては、疾患若しくは傷害に起因して、生命を脅かす急性の単一若しくは多臓器系不全が持続する、又は持続するリスクがある患者、手術されていて、合併症を併発している患者、及び先週中に重要臓器の手術を受けた、又は先週中に大手術を受けた患者が挙げられる。重篤患者のより具体的な非限定的な例としては、疾患若しくは傷害に起因して、生命を脅かす急性の単一若しくは多臓器系不全が持続する、又は持続するリスクがある患者、及び手術されていて、合併症を併発している患者が挙げられる。重篤患者の更なる具体的な非限定的な例としては、心臓手術、大脳手術、胸部手術、腹部手術、血管手術、又は移植のうちの1つ以上が必要な患者、及び神経疾患、大脳外傷、呼吸不全、腹膜炎、多発外傷、重症熱傷、又は重篤な多発性神経障害のうちの1つ以上に罹患している患者が挙げられる。
【0036】
用語「経腸投与」は、経口投与(経口強制栄養投与を含む)及び直腸投与を包含するが、経口投与が好ましい。用語「非経口投与」は、消化管以外の経路によって与えられる物質の送達を指し、静脈内、動脈内、筋肉内、脳室内、骨内、皮内、くも膜下腔内、並びにまた腹腔内投与、膀胱腔内注入、及び海綿体内注射などの投与経路を範囲に含む。
【0037】
好ましい非経口投与は、静脈内投与である。非経口投与の特定の形態は、栄養の静脈内投与による送達である。非経口栄養は、食品が他の経路によって与えられない場合、「完全非経口栄養」である。「非経口栄養」は、好ましくは、グルコースなどの糖類を含み、脂質、アミノ酸、及びビタミンのうちの1つ以上を更に含む、等張水溶液又は高張水溶液(又は溶解される固体組成物、又は等張溶液若しくは高張溶液を得るために希釈される液体濃縮物)である。
【0038】
実施形態
したがって、全般的な実施形態では、本開示は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪症(脂肪肝)及び/又は関連する肝損傷の治療、予防又は進行管理を必要とする個体においてそれを行うのに使用するための、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとの有効量の組み合わせを含む、組成物を提供する。組成物は、更に肝毒性を予防する。
【0039】
原材料 主要な生物活性化合物
少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体、及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体の組み合わせは、それぞれ「Increasing glutathione levels for therapy」を発明の名称とする、米国特許第8,362,080号、同第8,802,730号、及び同第9,084,760号、並びに「Benefits of Supplementation with N-Acetylcysteine and Glycine to Improve Glutathione Levels」を発明の名称とする、米国特許出願公開第2018/0161297号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)により開示される組成物のうちのいずれかによって提供することができる。
【0040】
本発明によるN-アセチルシステインの「機能的誘導体」の非限定的な例は、N-({2-[(エチルスルホニル)アミノ]エチル}スルホニル)-L-アラニン、N-アセチル-S-(1Z)-プロペニル-システイン-スルホキシド、S-(5-アセトアミド-2-ヒドロキシフェニル)システイン、S-2-クロロエチルシステイン)、D-システイン誘導体、L-システイン誘導体、システイン酸、システイニル-アミノ酸、シスチン、ガンマ-グルタミルシステイニルグルタメート、グリキサゾンB、ホーキンシン(hawkinsin)、ぺプチジル-システイン、プレニルシステイン、S-アセトアミドメチルシステイン、グルタチオン(GSH)及びグルタチオン形態(リポソームGSH)から選択される。
【0041】
グリシンの「機能的誘導体」の非限定な例は、L-グリシン、L-グリシンエチルエステル、D-アリルグリシン、N-[ビス(メチルチオ)メチレン]グリシンメチルエステル、Boc-アリル-Gly-OH(ジシクロヘキシルアンモニウム)塩、Boc-D-Chg-OH、Boc-Chg-OH、(R)-N-Boc-(2’-クロロフェニル)グリシン、Boc-L-シクロプロピルグリシン、Boc-L-シクロプロピルグリシン、(R)-N-Boc-4-フルオロフェニルグリシン、Boc-D-プロパルギルグリシン、Boc-(S)-3-チエニルグリシン、Boc-(R)-3-チエニルグリシン、D-a-シクロヘキシルグリシン、L-a-シクロプロピルグリシン、N-(2-フルオロフェニル)-N-(メチルスルホニル)グリシン、N-(4-フルオロフェニル)-N-(メチルスルホニル)グリシン、Fmoc-N-(2,4-ジメトキシベンジル)-Gly-OH、N-(2-フロイル)グリシン、L-a-ネオペンチルグリシン、D-プロパルギルグリシン、サルコシン、Z-a-ホスホノグリシントリメチルエステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0042】
グリシン及びN-アセチルシステイン若しくはL-システイン、又は官能性誘導体は、特定の比率で配合されてもよい。いくつかの実施形態では、配合物は、これらの成分を、以下の例示的な比率、すなわち1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:12、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、1:80、1:85、1:90、1:95、1:100、1:150、1:200、1:300、1:400、1:500、1:600、1:750、1:1000、及び1:10,000で含んでもよく、これらの比率の各々は、いくつかの実施形態ではGLY:NACとすることができ、他の実施形態ではNAC:GLYとすることができる。特定の実施形態では、配合物は、これらの成分を、以下の重量百分率(グリシンとN-アセチルシステインの両方について同じ重量百分率である、又は、それぞれについて異なる重量百分率である)、例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、12重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、97重量%、又は99重量%で含んでもよい。
【0043】
N-アセチルシステイン又はその機能的誘導体は、対象の体重1キログラム(kg)当たり約0.1~100ミリグラム(mg)のN-アセチルシステイン(NAC)又はその機能的誘導体の量で投与することができる。
【0044】
グリシン(GLY)又はその機能的誘導体は、対象の体重1キログラム(kg)当たり約0.1~100ミリグラム(mg)のグリシン又はその機能的誘導体の量で投与することができる。いくつかの実施形態では、これらの量は、N-アセチルシステイン又はその機能的誘導体とグリシン又はその機能的誘導体との両方を含むジペプチドによって少なくとも部分的に提供される。
【0045】
別の実施形態では、コラーゲン及びコラーゲンペプチドをグリシン源として使用してもよい。更に、ホエイタンパク質はグリシン及びシステインが豊富であるため、別の実施形態では、グリシン及びN-アセチルシステインは乳清タンパク質によって提供される。いくつかの植物ベースのタンパク質源も、グリシン源を提供し得る。
【0046】
特定の非限定的な例では、60kgの対象の1日用量は、以下のとおりであってもよい。
NAC又はその機能的誘導体:6~6,000mg/日
GLY又はその機能的誘導体:6~6,000mg/日
【0047】
組成物は、有効量のチモール及び/又はカルバクロールを含む。チモール(10~64%)は、タイム(Thymus vulgaris L.,Lamiaceae)及びオレガノ(Origanum vulgare)の精油の主要構成成分のうちの1つである。カルバクロールは、オレガノ(Origanum vulgare)の精油、タイム油、コショウソウから得られた油、及びヤグルマハッカ中に存在する。タイム亜種の精油は、5%~75%のカルバクロールを含有するのに対し、セイボリー(Satureja)亜種は1%~45%の含有量を有する。マジョラム(Origanum majorana)及びクレタディタニー(Dittany of Crete)はカルバクロールが豊富であり、それぞれ50%及び60~80%である。したがって、本組成物の一部の実施形態は、組成物中のチモール及び/カルバクロールの少なくとも一部を提供する、特にタイム及びオレガノ由来の、植物及び/又は濃縮植物抽出物、精油又は画分を含む。
【0048】
別の実施形態では、チモール及び/又はカルバクロールは、化学的に合成された化合物の形態で提供される。
【0049】
一実施形態では、チモール及び/又はカルバクロールは、体重1kg当たり0.05mg~1g、好ましくは体重1kg当たり1mg~200mg、より好ましくは体重1kg当たり5mg~150mg、更により好ましくは体重1kg当たり10mg~120mg、又は最も好ましくは体重1kg当たり40mg~80mgの重量範囲で毎日投与され得る。水性液体組成物において、濃度は、好ましくは水性液体組成物の約0.05重量%~約4重量%、又は約0.5重量%~約2重量%、又は約1.0重量%~約1.5重量%の範囲である。
【0050】
典型的には、1日当たり50μg~10gのチモールが1回以上に分けて個体に投与される。
【0051】
一実施形態では、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとは、同じ組成物として投与される。
【0052】
別の実施形態では、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとは、組み合わせの残部とは異なる組成物として投与される。
【0053】
いくつかの実施形態では、本組成物は単回投与剤形で個体に投与され、すなわち、食事と一緒に個体に与えられる1つの製剤中に全ての化合物が存在している。他の実施形態では、本組成物は別個の剤形で同時投与され、例えば少なくとも1つの構成成分と本組成物の他の構成成分のうちの1つ以上は別個のものとして同時投与される。
【0054】
組成物は、1週間に少なくとも1日、好ましくは1週間に少なくとも2日、より好ましくは1週間に少なくとも3日若しくは4日(例えば、1日おき)、最も好ましくは1週間に少なくとも5日、1週間に6日、又は1週間に7日、投与してよい。投与期間は、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも1カ月間、より好ましくは少なくとも2カ月間、最も好ましくは少なくとも3カ月間、例えば、少なくとも4カ月間であり得る。一実施形態では、投与は少なくとも毎日であり、例えば、対象は1日に1回以上投与を受け得る。いくつかの実施形態では、投与は、個体の残りの寿命にわたって継続される。他の実施形態では、投与は、医学的状態について検出可能な症状がなくなるまで行われる。具体的な実施形態では、投与は、少なくとも1つの症状について検出可能な改善が起こるまで行われ、更なる場合においては、寛解を維持するために継続される。
【0055】
原材料-更なる生物活性化合物
本発明による使用のための組成物はまた、抗酸化剤、抗炎症化合物、グリコサミノグリカン、プレバイオティクス、繊維、プロバイオティクス、脂肪酸、酵素、ミネラル、微量元素及び/又はビタミンからなる群から選択される少なくとも1つの更なる生物活性化合物を含んでいてもよい。
【0056】
「生物活性」という用語は、本出願の文脈において、その化合物が、基礎的な栄養要求を満足することを超えて、個体の健康に貢献する、又はヒトの身体に効果をもたらすことを意味する。
【0057】
少なくとも1つの更なる生物活性化合物は、天然由来のものであってよい。つまり、化合物は植物、動物、魚、菌類、藻類、又は微生物発酵物の抽出物から得られてもよい。ミネラル類も、この定義内で天然由来のものとみなされる。
【0058】
栄養組成物
本発明による使用のための組成物は、栄養組成物又は医薬組成物であってもよく、ヒト又は家畜に使用するためのものであってもよい。
【0059】
したがって、好ましい実施形態では、本発明による使用のための組成物は、栄養組成物である。「栄養組成物」とは、本出願の文脈において、個体に対する栄養源である組成物を意味する。
【0060】
本発明の栄養製剤又は栄養組成物は、完全栄養源であってもよく、又は不完全栄養源であってもよい。
【0061】
本明細書で使用する場合、「完全栄養」は、それが投与される動物の唯一の栄養資源とするのに十分な種類及びレベルの主要栄養素(タンパク質、脂肪、及び炭水化物)と、十分な微量栄養素とを含有する栄養製剤及び組成物を包含する。患者は、その栄養必要量を、そのような完全栄養組成物から100%摂取できる。
【0062】
本明細書で使用する場合、「不完全栄養」は、それが投与されている動物の唯一の栄養資源とするのに十分なレベルの主要栄養素(タンパク質、脂肪、及び炭水化物)、又は十分な微量栄養素を含有しない栄養製剤及び組成物を包含する。部分的完全栄養組成物又は不完全栄養組成物は、栄養補給剤として使用することができる。
【0063】
原材料の組み合わせを、ヒト及び/又は動物の摂取に好適な任意の組成物で投与することができる。好ましい実施形態では、かかる組み合わせは個体に経口投与又は経腸投与(例えば経管栄養法)される。例えば、かかる組み合わせは飲料、食品製品、カプセル、錠剤、散剤又は懸濁物として個体に投与することができる。
【0064】
好適な組成物の非限定的な例としては、食品組成物、ダイエタリー・サプリメント、ダイエタリー・サプリメント(例えば、液体ONS)、完全栄養組成物、飲料、医薬品、経口栄養補助食品、医療用食品、ニュートラシューティカルズ、特別医療目的用食品(FSMP)、摂取前に水又はミルクで再構成される粉末栄養製剤、食品添加物、医薬、ドリンク、ペットフード、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
栄養組成物の原材料
タンパク質源
一実施形態では、本発明による使用のための組成物は、タンパク質源を含む。このタンパク質源は、限定されるものではないが、動物タンパク質(乳タンパク質、食肉タンパク質、及び卵タンパク質など)、植物タンパク質(大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、及びエンドウマメタンパク質など)、又はこれらの組み合わせなどを含む、食品タンパク質であってよい。一実施形態では、タンパク質は、ホエイ、鶏肉、トウモロコシ、カゼイネート、小麦、アマ、大豆、イナゴ豆、エンドウ豆、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0066】
炭水化物源
一実施形態では、本組成物は、炭水化物源を含む。任意の好適な炭水化物を本発明の組成物に使用してもよく、その例としては、限定するものではないが、デンプン、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ固体、マルトデキストリン、変性デンプン、アミロースデンプン、タピオカデンプン、トウモロコシデンプン、キシリトール、ソルビトール、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
脂肪源
一実施形態では、本組成物は、脂肪源を含む。脂肪源は、任意の好適な脂肪又は脂肪混合物を含み得る。例えば、脂肪源としては、限定するものではないが、植物性脂肪(例えば、オリーブ油、コーン油、ヒマワリ油、高オレイン酸油、菜種油、キャノーラ油、ヘーゼルナッツ油、大豆油、パーム油、ココナッツ油、ブラックカラントシード油、ルリヂサ油、レシチンなど)、動物性脂肪(乳脂肪など)又はこれらの組み合わせが挙げられる。脂肪源はまた、上記の脂肪の粗精品(例えば、ポリフェノール含有のオリーブ油)であってよい。
【0068】
香料等
加えて、本発明による使用のための組成物はまた、天然又は人工フレーバー、例えば、バナナ、オレンジ、モモ、パイナップル若しくはラズベリーのような果実フレーバー、又はバニラ、ココア、コーヒーなどのような他の植物フレーバーを含んでもよい。
【0069】
栄養組成物フォーマット
本栄養組成物は、主要生物活性成分、及び任意の更なる生物活性成分、並びに所望によりタンパク源、炭水化物源、及び脂肪源のうち1つ以上、の他に、例えば1つ以上の酸味料、追加の増粘剤、緩衝剤若しくはpH調製剤、キレート剤、着色料、乳化剤、添加物、香味料、ミネラル、浸透剤、製薬上許容される担体、保存料、安定剤、糖類、甘味料、品質改良剤、及び/又はビタミンなど、従来の食品添加物(人工又は天然)を含む、任意の数の任意選択の追加の食物原材料を所望により含んでいてもよい。任意選択の原材料は、任意の好適な量で添加することができる。
【0070】
本栄養組成物は、任意の好適なフォーマットで提供されてよい。本発明による使用のための組成物が提供され得る栄養組成物の形式の例としては、溶液、すぐに摂取できる組成物(例えば、レディ・トゥ・ドリンク組成物又はインスタント飲料)、液体食料品、ソフトドリンク、ジュース、スポーツドリンク、乳飲料、ミルクセーキ、ヨーグルト飲料、スープなどが挙げられる。他の実施形態では、栄養組成物は、濃縮物、粉末又は顆粒(例えば、発泡性顆粒)の形態で提供されてもよく、これらは、すぐに摂取できる組成物を得るために、水又は他の液体(例えば、ミルク若しくはフルーツジュース)で希釈される。
【0071】
栄養組成物のフォーマットとしては、更に、焼成製品、乳製品、デザート、菓子製品、シリアルバー、及び朝食用シリアルが挙げられる。乳製品の例としては、乳及び乳製品、ヨーグルト、並びにその他の発酵乳製品、アイスクリーム、及びチーズが挙げられる。焼成製品の例として、パン、ビスケット及びケーキが挙げられる。
【0072】
一実施形態では、本発明による使用のための組成物はまた、ウェット形態、セミウェット形態又はドライ形態、特にビスケットの形態のいずれであるかを問わず、特にイヌ又はネコ用の、動物用食品として企画された多種多様なフォーマットでも入手可能となり得る。
【0073】
投与経路
本開示の栄養組成物は、ヒトへの投与、特に消化管の任意の部位への投与に好適な任意の方法で投与されてよい。腸内投与、経口投与、及び管又はカテーテルを通しての投与は、本開示に全て含まれる。本栄養組成物はまた、経口、経腸、舌下、唇下、バッカル、局所等から選択される方法によって投与されてよい。
【0074】
本栄養組成物は、例えば、錠剤、カプセル、液体、チュアブル、ソフトジェル、サッシェ、粉末、シロップ、懸濁液、エマルジョン、及び溶液を含む任意の既知の形態で、便利な剤形で投与されてよい。ソフトカプセルでは、活性原材料が、脂肪油、パラフィン油、又は液体ポリエチレングリコールなど好適な液体中に溶解又は懸濁されていることが好ましい。所望により、安定剤を加えてもよい。
【0075】
本栄養組成物が経管栄養により投与される場合、栄養組成物は、短期経管栄養又は長期経管栄養に使用されてよい。
【0076】
本発明の栄養組成物の製造方法
本発明は、更なる態様において、本発明による使用のための栄養組成物を製造するための方法であって、
栄養組成物のための1つ以上の原材料と、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとを用意する工程と、混合する工程と、を含む、方法に関する。
【0077】
使用のための医薬組成物
更なる実施形態では、本発明は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝炎、肝脂肪症(脂肪肝)及び/又は関連する肝損傷の治療又は予防を必要とする個体においてそれを行うのに使用するための組成物に関する。
【0078】
医薬品とすることにより、栄養組成物とは異なり、ヒト又は動物における病気を予防、診断、緩和、治療又は治癒するために物質が薬剤で身体上に又は身体内に使用される、組成物を意味する。
【0079】
医薬品は、ヒトによる使用のためのものであってもよい。あるいは、例えばイヌ、ネコ又はウマ、特にサラブレッドのウマに適した獣医学的組成物であってもよい。
【0080】
好ましい一実施形態では、本発明の医薬組成物は、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとの組み合わせを含む。
【0081】
本発明は更に、本発明の組成物の使用として本明細書に記載されるような、本発明による医薬品の使用に関する。
【0082】
少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体、並びに少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールと、製薬上許容される添加物によって構成される群から選択される少なくとも1つの添加物との組み合わせを含む、本発明による使用のための医薬組成物。本発明による医薬組成物の調製のための手順は、当業者によって、例えばハンドブックRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mid.Publishing Co,Easton,Pa.,USAにおいて容易に見出すことができる。また、生理学的に許容される添加物、ビヒクル及びアジュバントは、”Handbook of Pharmaceutical Excipients,Second edition,American Pharmaceutical Association,1994」と題するハンドブックに記載されている。本発明による医薬組成物を配合するために、当業者は、欧州薬局方又は米国薬局方(USP)の最新版を参照することが有利であろう。当業者は、特に、欧州薬局方の第4版「2002」又は米国薬局方(U.S.Pharmacopoeia)のUSP 25-NF 20版を参照することが有利であろう。
【0083】
有利なことに、上記で定義したような医薬組成物は、経口、非経口又は静脈内投与に適している。本発明による使用のための本医薬組成物が、少なくとも1つの製薬上許容される又は生理学的に許容される添加物を含む場合、特に、その添加物は、経口の経路による本組成物の投与に適しているか、又はその添加物は、非経口の経路による本組成物の投与に適している。
【0084】
本発明による使用のための医薬組成物は、固体又は液体の形態で区別なく利用可能である。経口投与には、タブレット、カプセル、又はゼラチンカプセルの形態の固形医薬組成物が好ましいであろう。
【0085】
液体の形態であれば、医薬組成物は、水性若しくは非水性の懸濁液の形態、又は油中水若しくは水中油のエマルジョンの形態が好適であろう。
【0086】
固体医薬形態は、ビヒクル、アジュバント又は添加物として、少なくとも1種の希釈剤、1種の香料、1種の可溶化剤、1種の滑沢剤、1種の懸濁化剤、1種の結合剤、1種の崩壊剤及び1種のカプセル化剤を含み得る。かかる化合物は、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース系材料、カカオ脂などである。液体形態の組成物は、水を、場合によってはプロピレングリコール又はポリエチレングリコールとの混合物として含んでもよく、場合によっては着色剤、香料、安定剤及び増粘剤も含んでもよい。
【0087】
治療方法及び標的群
本発明による組成物は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪症(脂肪肝)、肝炎、及び/又は関連する肝損傷の治療、予防又は管理を必要とする個体においてそれを行うのに使用するためのものである。組成物は、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとの有効量の組み合わせを含む。
【0088】
本明細書で使用するとき、「有効量」とは、欠乏を予防する、個体の疾患若しくは医学的状態を治療する、又はより全般的には、症状を軽減させる、疾患の進行を管理する、又は個体に対して栄養学的、生理学的若しくは医学的利益をもたらす、量である。
【0089】
治療効果を達成するのに必要とされる本発明の組成物の有効量は、当然のことながら、具体的な組成物、投与経路、対象者の年齢及び状態、並びに治療する具体的な障害又は疾患によって異なり得る。
【0090】
上昇したトリグリセリドレベルは、脂肪性肝疾患及び膵炎を引き起こし得る。高トリグリセリドレベルはまた、糖尿病、腎疾患に関連し得、及びいくつかの薬剤の使用に関連し得る。本発明者らは、グリシン及びN-アセチルシステインとチモールとの組み合わせが、肝臓におけるトリグリセリドレベルを有意に低下させ、組織学的レベル(NAS)でNASHを改善することを見出した。
【0091】
したがって、本発明の一態様では、組成物は、肝臓トリグリセリドを減少させる。
【0092】
更に、本発明による使用のための組成物は、循環血液中肝酵素を減少させることが示された。酵素アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)は、主に肝臓に見られ、より少ない程度で腎臓及び筋肉のような他の臓器に見られる。正常な状態では、血液中のAST及びALTレベルは低い。高レベルの循環血液中AST及びALTは、肝損傷のマーカーと考えられ、NAFLD及び他の肝疾患を診断するため、肝疾患(NAFLDを含む)の進行及び治療に対する応答を評価するために、他のパラメータと組み合わせて一般的に使用される。
【0093】
したがって、本発明は、肝損傷、特にNAFLDに関連する肝損傷を予防する組成物に関する。
【0094】
更なる実施形態では、本発明は更に、循環血液中ALT/ASTレベルの低下がエビデンスとなる肝毒性及び/又は肝損傷を予防又は治療する方法を提供する。
【0095】
かかる方法を必要とする個体は、肝疾患、例えば、NAFLD、NASH、肝炎、若しくは腸炎などの胃腸状態、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、粘膜炎及び腸のディスバイオシスなどを有する個体であり得、又はそのような状態を発症するリスクがある。
【0096】
必要とする個体は、重篤患者であり得る。本発明による組成物は、ヒトなどの個体、例えば高齢個体又は重篤な個体に、治療に有効な用量で投与することができる。治療に有効な用量は当業者により決定され得るものであり、状態の重症度並びに個体の体重及び全身状態など、当業者に公知のいくつもの因子に応じて異なり得る。
【0097】
開示の組み合わせ
なお、本発明の一態様の文脈で記載されている実施形態及び特徴は、発明の他の態様にも当てはまることに注意が必要である。
【0098】
本発明による使用のための組成物は、本明細書において、異なるパラメータ、例えば、原材料、栄養組成物の形態、使用、対象とする集団などにおいて記載される。本発明による使用のための組成物のパラメータの1つの状況において記載される実施形態及び特徴はまた、明示的な記述がない限り、別のパラメータの状況において記載される他の実施形態及び特徴と組み合わせてもよいことに留意されたい。
【0099】
本出願に引用されている全ての特許文献及び非特許文献に関して、文献そのままを本出願に取り込む。
【0100】
本発明を、以下の非限定的な実施例により更に詳細に記載する。
【実施例】
【0101】
実施例1:肝臓ヒト化マウス試験
NAFLDの現在の前臨床齧歯類モデルは、一部にはヒト疾患の完全な病理を示さないため、特定の介入に対するヒト応答を予測するには不十分である。NAFLDにおける細胞栄養素の効果を評価するために、本発明者らは、ヒト肝臓代謝及びリポタンパク質のプロファイルに酷似しているヒト化肝臓FRGN(登録商標)マウスと呼ばれる新規肝臓ヒト化マウスモデルを利用した(Azuma et al.,2007,Robust expansion of human hepatocytes in Fah-/-/Rag2-/-/Il2rg-/- mice.Nat Biotechnol,25,903-10;Minniti et al.,2020 Insights From Liver-Humanized Mice on Cholesterol Lipoprotein Metabolism and LXR-Agonist Pharmacodynamics in Humans.Hepatology,72,656-670)。
【0102】
材料及び方法
NODバックグラウンドの雄Fah-/-、Rag2-/-、Il2rg-/-KOマウス(FRGN(登録商標)マウス)に、rs738409のマイナス鎖上のG対立遺伝子に対してホモ接合性である、ドナー由来のヒト肝細胞を移植した。PNPLA3遺伝子におけるこの変異は、ヒトにおけるNASH発症の高リスクと有意に関連している(Trepo et al.2016,PNPLA3 gene in liver diseases.J Hepatol,65,399-412)。
【0103】
マウスの作製及び飼育、被験物品の投与、並びに分析のための試料の採取は、Yecuris Corporation(Tualatin,Oregon,USA)の試験施設で実行した。マウスに、予防用抗生物質スルファメトキサゾール及びトリメトプリム(SMX/TMP、それぞれ、640μg/mL/128μg/mL)を飲料水に入れて隔週投与し、保護薬2-(2-ニトロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル)-1,3-シクロヘキサンジオン(Nitisinone、NTBC、8mg/L)を毎月3日間投与した。ヒト肝細胞移植の12週間後、肝臓ヒト化マウスには対照固形飼料食(PicoLab(登録商標)High Energy Mouse Diet,5LJ5 chow)を継続した、又は脂肪、フルクトース及びコレステロールが豊富な食餌(Research Diets Inc.、カタログ番号A16091202)を自由裁量で与えて、肝脂肪症を誘導した(したがって、以後、高脂肪食(high fat diet、HFD)と呼ぶ)。HFD食での最初の8週間後、マウスに、表1に記載される被験物品又は対照品を経口胃管栄養法によって更に8週間毎日投与し、それらのそれぞれの食餌で飼育した。
【0104】
【0105】
マウスに被験物品又は対照品(ビヒクル)を経口胃管栄養法により8週間毎日投与した。略語:N-アセチルシステイン(NAC);DMSO、ジメチルスルホキシド。
【0106】
8週間の処置期間の終わりに、マウスを屠殺して臓器及び血漿を採取した。マウスカクテル(ケタミン/キシラジン)をマウス体重に従って投与した(12.5μL/g)。マウスを完全に麻酔した後、腹膜及び胸腔を開き、心臓穿刺によって全血を採取した。血液試料を直ちに、氷上で保存した予冷したK2EDTAチューブに移した。4℃で20分間、1600×gで遠心分離することによって血漿を単離した。肝臓を単離し、秤量し、直ちに瞬間凍結するか、又は組織学的評価のためにPFAで固定した。
【0107】
Triglyceride-Glo(商標)Assay(Promega)及びグリセロール標準を製造業者の指示書に従って使用して、約50mgの肝臓片の肝臓トリグリセリドを測定した。定量に使用した肝臓組織の重量によって肝臓トリグリセリド濃度を正規化した。
【0108】
NASH-CRNからのNAFLD活動性スコア(NAS)システムを使用して、臨床病理学者の盲検によって、H&E染色した肝臓試料から組織学的スコアを導いた(Kleiner et al.,2005,Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease,Hepatology,41(6):1313-21)。このスコアは、脂肪症グレード(0:<5%、1:5~33%、2:>33~66%及び3:>66%)、小葉炎症(0:病巣なし、1:<2病巣/200×視野、2:2~4病巣、3:>4病巣)並びに風船様変性(0:なし、1:わずかな風船様変性細胞、2:多くの細胞が風船様変性/顕著な風船様変性)についてのスコアを含み、これらを使用して全体スコア(NAS、0~8)を生成する。
【0109】
屠殺時に採取した血漿試料を使用して、Abbot Laboratories製の市販のキット(それぞれREF#8L92-22及び8L91-21、Abbott Laboratories,Chicago,Illinois,USA)及び自動生化学分析装置Architect Ci4100(Abbott Laboratories)を製造業者の指示書に従って使用して、血漿アラニントランスアミナーゼ(alanine transaminase、ALT)及びアスパラギン酸トランスアミナーゼ(aspartate transaminase、AST)活性を測定した。
【0110】
結果
16週間HFDで維持された肝臓ヒト化マウスは、予想通り肝臓脂肪症を発症した。この発症は、対照食のマウスと比較した肝臓重量及び肝臓トリグリセリドの増加をエビデンスとした(
図1)。グリシン及びN-アセチルシステイン(GlyNAC)で8週間処置したHFDのマウスは、肝臓トリグリセリドの減少を示す傾向を示したが、ビヒクル処置群と比較した場合に統計学的に有意ではなかった(p=0.09)。対照的に、同じ処置期間でのGlyNAC+チモールの組み合わせは、肝臓重量の有意な減少及び肝臓トリグリセリドの顕著な減少をもたらし、この減少は、固形飼料食のマウスにおけるトリグリセリドレベルと同等であった(
図1)。
【0111】
観察された肝臓トリグリセリドの減少に付随して、GlyNAC+チモールによる処置は、現在最も広く使用されているNAFLDグレード分類の尺度であるNAFLD活動性スコアの有意な低下がエビデンスとなるとおり、組織学的レベルでNASHを有意に改善した(
図2)。
【0112】
酵素アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)は、主に肝臓に見られ、より少ない程度で腎臓及び筋肉のような他の臓器に見られる。正常な状態では、血液中のAST及びALTレベルは低い。循環血液中の高レベルのAST及びALTは、肝損傷のマーカーと考えられ、NAFLDの進行を診断及び監視するために、他のパラメータと組み合わせて一般的に使用される。8週間のGlyNACによる処置は、ビヒクル処置HFD対照と比較してASTレベル及びALTレベルを低下させたが(
図3)、ALTレベルの低下のみが統計的に有意であることが判明した。8週間のGlyNAC及びチモールでの処置は、HFDを与えたマウスにおいて循環血液中ASTレベル及びALTレベルの両方を更に低下させ、この低下は、観察された肝臓トリグリセリドの減少及びNASHの改善と相関する、肝損傷の改善を示した(
図1及び
図2)。
【0113】
GlyNAC及びチモールでの処置は、HFDを与えた肝臓ヒト化マウスにおいて肝臓脂肪症の著しい減少を誘発し、この減少は、NASH(NAS)の改善及び循環血液中肝酵素(ALT、AST)の減少と相関し、肝損傷の減少を示した。GlyNAC単独での処置もまた、肝臓トリグリセリドを減少させたが、程度は低かった。ALTレベルの低下のみが統計的に有意であることが判明した場合であっても、GlyNACは循環血液中肝酵素を減少させた。
【0114】
本明細書に記載されている主題の態様は、以下の番号付けされた各項に記載されている。
1. 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪症(脂肪肝)及び/又は関連する肝損傷の治療、予防又は進行管理を必要とする個体においてそれを行うのに使用するための、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとの有効量の組み合わせを含む、組成物。
2. 組み合わせが、肝臓トリグリセリド並びに/又は循環血液中AST及びALT酵素を減少させるのに有効な量である、項1に記載の使用のための組成物。
3. 更に肝毒性を予防する、項1又は2に記載の使用のための組成物。
4. 少なくとも1つのグリシン又はその機能的誘導体が、L-グリシン、L-グリシンエチルエステル、D-アリルグリシン、N-[ビス(メチルチオ)メチレン]グリシンメチルエステル、Boc-アリル-Gly-OH(ジシクロヘキシルアンモニウム)塩、Boc-D-Chg-OH、Boc-Chg-OH、(R)-N-Boc-(2’-クロロフェニル)グリシン、Boc-L-シクロプロピルグリシン、Boc-L-シクロプロピルグリシン、(R)-N-Boc-4-フルオロフェニルグリシン、Boc-D-プロパルギルグリシン、Boc-(S)-3-チエニルグリシン、Boc-(R)-3-チエニルグリシン、D-a-シクロヘキシルグリシン、L-a-シクロプロピルグリシン、N-(2-フルオロフェニル)-N-(メチルスルホニル)グリシン、N-(4-フルオロフェニル)-N-(メチルスルホニルグリシン、Fmoc-N-(2,4-ジメトキシベンジル)-Gly-OH、N-(2-フロイル)グリシン、L-a-ネオペンチルグリシン、D-プロパルギルグリシン、サルコシン、Z-a-ホスホノグリシントリメチルエステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
5. 少なくとも1つのN-アセチルシステイン機能的誘導体が、N-({2-[(エチルスルホニル)アミノ]エチル}スルホニル)-L-アラニン、N-アセチル-S-(1Z)-プロペニル-システイン-スルホキシド、S-(5-アセトアミド-2-ヒドロキシフェニル)システイン、S-2-クロロエチルシステイン)、D-システイン誘導体、L-システイン誘導体、システイン酸、システイニル-アミノ酸、シスチン、ガンマ-グルタミルシステイニルグルタメート、グリキサゾンB、ホーキンシン、ぺプチジル-システイン、プレニルシステイン、S-アセトアミドメチルシステイン、グルタチオン(GSH)及びグルタチオン形態(リポソームGSH)からなる群から選択される、項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
6. 抗酸化剤、抗炎症化合物、グリコサミノグリカン、プレバイオティクス、繊維、プロバイオティクス、脂肪酸、酵素、ミネラル、微量元素及び/又はビタミンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を更に含む、項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
7. 食品組成物、ダイエタリー・サプリメント、栄養組成物、経口栄養補助食品、医療用食品、ニュートラシューティカルズ、飲料、摂取前に水又はミルクで再構成される粉末栄養製剤、食品添加物、特別医療目的用食品(FSMP)医薬品、ドリンク、ペットフード、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
8. 固体粉末、粉末スティック、カプセル又は溶液の形態である、項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
9. 経口投与又は経腸投与される、項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
10. 個体が、肝疾患、例えば、NAFLD、NASH、若しくは腸炎などの胃腸状態、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、粘膜炎及び腸のディスバイオシスなどを有するか、又はそのような状態を発症するリスクがある、項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
11. 個体が、重篤である、項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
12. 項1~11のいずれか一項に記載の使用のための栄養組成物を製造する方法であって、栄養組成物のための1つ以上の原材料と、少なくとも1つのグリシン若しくはその機能的誘導体及び/又は少なくとも1つのN-アセチルシステイン若しくはその機能的誘導体と、少なくとも1つのチモール及び/又はカルバクロールとを用意する工程と、混合する工程と、を含む、方法。
【0115】
本明細書で述べる現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。そのような変更及び修正は、本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なわずに、なされ得る。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【国際調査報告】