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特表2023-553440外科手術ツール用の、剛性が強化された器具
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  • 特表-外科手術ツール用の、剛性が強化された器具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】外科手術ツール用の、剛性が強化された器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20231214BHJP
   A61B 17/29 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61F9/007 130J
A61B17/29
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535515
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 IB2021061717
(87)【国際公開番号】W WO2022130208
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/126,710
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】レト グリューエブラー
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト プルタル
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ドラバ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF03
4C160FF04
4C160FF13
4C160FF14
4C160GG03
4C160KL03
(57)【要約】
剛性化コーティング及び/又は一貫性のない直径のルーメンの使用による、剛性特性が強化された細長い器具、を有する外科手術ツール。剛性化コーティングは、生体適合性、剛性化、及び更にはグレア低減に合わせて調整された材料を利用する堆積技術により提供できる。一貫性のない直径を有するルーメンは、器具の大部分の壁厚及び剛性を増加させるために、実質的により小さい直径を有する近位部分よりも大きい直径を有する、ルーメンの僅かな部分を占める遠位端を含んでもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術のための、外科医による手動固定のためのツール本体と、
前記手術のために患者の組織領域への外科的接近を実現するための、前記本体の端部から延びている外科用器具と、
前記組織領域での前記外科手術中に前記器具を安定させるための、前記器具の外面上の剛性化コーティングと、
を備える、外科手術ツール。
【請求項2】
前記ツールは、鉗子、はさみ、硝子体切除ニードル、及び光機器のうちの1つを含む、請求項1に記載の外科手術ツール。
【請求項3】
前記剛性化コーティングは、物理蒸着(PVD)コーティング、化学蒸着(CVD)コーティング、及びプラズマ支援CVD(PACVD)コーティングのうちの1つである、請求項1に記載の外科手術ツール。
【請求項4】
前記コーティングは、窒化チタン、アルミニウム窒化チタン、チタン窒化ニオブ、ダイヤモンド様炭素、チタン炭窒化物、及び窒化ジルコニウムからなる群から選択される材料のものである、請求項3に記載の外科手術ツール。
【請求項5】
選択された剛性化コーティング材料は、前記外科手術中にグレアを減少させるように調整されている、請求項3に記載の外科手術ツール。
【請求項6】
前記コーティングは、剛性を約5%~約30%だけ増加させるように、厚さが約1ミクロン~30ミクロンである、請求項1に記載の外科手術ツール。
【請求項7】
前記器具は管状であって、ツールフィーチャを収容する遠位チャンバ直径と、前記遠位チャンバ直径よりも実質的に小さい近位内径とを有し、前記近位内径は、前記器具の前記大部分における剛性を30%以上更に強化するように管状の前記器具の内径の大部分を占める、請求項6に記載の外科手術ツール。
【請求項8】
外科手術のための、外科医による手動固定のためのツール本体と、
前記手術のために患者の組織領域への外科的接近を実現するための、前記本体の端部から延びている管状器具と、
前記管状器具内の、所与の直径のマンドレルと、
前記マンドレルの遠位端にある別の直径の作動可能機構と、
を備える手術システムであって、前記所与の直径は前記他の直径よりも小さく、前記管状器具は、前記マンドレルの周りの第1の内径と、前記機構の周りの第2の内径とを有し、前記第1の内径は、前記管状器具の壁厚を増加させるように前記第2の内径よりも小さい、外科手術ツール。
【請求項9】
より小さい前記第1の内径は約0.25mm(ミリメートル)未満であり、より大きい前記第2の内径は約0.35mmを超える、請求項8に記載の外科手術ツール。
【請求項10】
前記作動可能機構は鉗子であり、前記マンドレルは前記鉗子の作動を支援するワイヤである、請求項8に記載の外科手術ツール。
【請求項11】
前記器具を更に剛性化するために、前記管状器具の外面上に、PVD由来の剛性化コーティング、CVD剛性化コーティング、及びPACVD剛性化コーティングのうちの1つを更に含む、請求項8に記載の外科手術ツール。
【請求項12】
内部ルーメンを有する細長い管状器具を利用するツールを用いて眼科手術を実施する方法であって、前記方法は、
前記管状器具を、その外面における剛性化材料コーティング、及び前記ルーメンの半分未満の、遠位チャンバ直径よりも小さい内部近位直径のうちの1つで構築することと、
前記器具を用いて前記手術を実施することと、
を含む方法。
【請求項13】
前記剛性化材料コーティングは物理蒸着により提供される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記器具は鉗子を含み、前記手術はILM剥離である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ツールは第1のツールであり、前記手術は、第2のツールで照明を提供することを含み、前記第1のツールは、選択された前記剛性化材料コーティングからの減少したグレアを減らす特性を有する、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、発明者がReto Grueebler,Bernhard Pultar及びKlaus Dorawaである、2020年12月17日に出願された「ENHANCED STIFFENING IMPLEMENT FOR A SURGICAL TOOL」と題する米国仮特許出願第63/126,710号の優先権の利益を主張するものであり、あたかも本明細書に十分且つ完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
長年にわたって、低侵襲外科手術の分野において多くの劇的な進歩が起こってきた。それに応じて、患者の自然な損傷及び治癒時間は激減した。例えば、眼科手術の領域では、以前は接近困難であって損傷又は悪化している組織を、低侵襲手術により修復又は直接処置することができる。眼科手術が、網膜に接近することを含む場合、処置の少なくとも一部に硝子体切除術が含まれることが一般的である。硝子体切除術は、患者の眼から硝子体液の一部又は全部を除去することである。濁った硝子体液の除去に限定された手術の場合、場合によっては、硝子体切除術が処置の大部分を占める可能性がある。しかしながら、硝子体切除術は、網膜を修復するための手術、黄斑ひだ形成症又は多くの他の問題に対処するための手術を伴う可能性がある。
【0003】
眼科手術及び硝子体切除の実施例を踏まえると、硝子体液自体は透明なゲルであり、眼に予め配置されたカニューレを通して挿入されたニードルの形の細長い器具により除去され得る。より具体的には、硝子体切除術プローブの形の外科手術ツールが、記載したようにツールからニードルが出現している状態で、把持位置にて外科医により保持される。ニードルは、硝子体液を除去するための中央チャネルを含む。更に、カニューレは、毛様体扁平部等の眼の前部のオフセットされた位置に戦略的に位置する構造的支持用の導管を提供する。このようにして、プローブニードルは、患者の水晶体又は角膜への損傷を回避するやり方で、眼内に案内されるようにして挿入されてもよい。
【0004】
もちろん、異なるタイプの器具を有する様々な他のツールを、低侵襲眼科手術の一部として使用することもできる。これは、ニードルではない器具、例えば、はさみ、鉗子、光、又は他の機器タイプ、を有する外科手術ツールの使用を含み得る。特定の器具タイプに関係なく、それは、通常、記載したように、毛様体扁平部を通して切開創の場所に予め位置決めされたカニューレ及びトロカールアセンブリにより導かれ支持される。したがって、器具を眼の内部に確実に前進させて、外科手術を実施することができる。
【0005】
長年にわたって、低侵襲眼科手術は、益々精密な外科的操作のために、益々小さな器具を使用してきた。例えば、これまでは約23ゲージであり得た硝子体切除プローブニードルは、現在、より一般的には約25~27ゲージである。これは、約0.5mmをちょうど下回るサイズから約0.4mm未満のサイズまでニードル直径を減らすことを意味する。硝子体切除プローブニードルは、長さが数センチメートルであって中空である可能性があることを考慮すると、この益々薄いゲージ器具は非常に柔軟な可能性がある。他の機器については、器具サイズが益々小さくなるにつれて、類似の柔軟性の問題が現れる。繰り返すと、様々な又はかなり大きな直径の内部フィーチャを器具が収容する場合、問題は増幅される。例えば、器具が鉗子を収容する場合、ニードルの内部は、端部において実際の鉗子を収容するのに十分に大きな内径を有することになる。したがって、ニードルは、外径が小さいだけでなく、更に内径が大きくてもよく、それにより、ニードルの壁は厚さが大幅に薄くなり、ニードルが更に柔軟になる。
【0006】
外科器具における柔軟性又は可撓性が増加することは、手術中に外科医にとって必ずしも役立つわけではない。一般的に言えば、外科医は、より大きな程度の制御を提供する、器具の硬さの程度によって、より良好に支援される。すなわち、器具の可撓性がより小さい場合、外部にいる外科医による器具の手動操作が、確実に手術部位に伝達される可能性が高い。したがって、例えば、硝子体切除手術の場合、プローブはグリップを含んでもよく、グリップからニードルが眼における前述したカニューレ構造に向かって且つそれを通って延びている。より大きく且つより硬い剛性化スリーブが、カニューレの構造支持体から延び、ツールの本体及びグリップに向かって戻ってもよい。したがって、剛性化スリーブの存在に起因して、少なくとも、外科医のグリップ場所と眼の正面との間の空間において、ニードルの曲げを回避できる。むしろ、グリップから眼の表面における旋回場所への安定した且つ確実に線形な並進移動が示される(例えば、剛性化スリーブがカニューレと接触する場所において)。繰り返すと、眼の中に存在し、剛性化スリーブにより構造的に取り囲まれていない、ニードルの実際の長さは限定される。したがって、ニードルの曲げは更に最小化される。
【0007】
残念なことに、詳述したように剛性化スリーブを利用すると、眼の中で使用できる機器の有効長は減少し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
外科手術中に、外科医による手動固定のための本体を有する外科手術ツールについて説明される。ツールは、手術のために患者の組織領域への外科的接近を実現するための、本体の端部から延びている器具を含む。一実施形態では、組織領域での外科手術中に器具を安定させるために、器具の外面上に剛性化コーティングが提供される。別の実施形態では、器具は、所与の直径のマンドレルが配置されている管状器具である。マンドレルの遠位端には、他の直径の作動可能機構が配置され、所与の直径は他の直径よりも小さい。したがって、管状器具は、マンドレルの場所において管状器具の壁厚を増加させるように、機構の周りの第2の内径よりも小さい、マンドレルの周りの第1の内径を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】剛性特性が強化された器具の実施形態を用いる、眼科手術用の外科手術ツールの斜視図である。
図2】強化された剛性特性を実現するために物理蒸着(PVD)チャンバ内に位置決めされた図1の器具の概略図である。
図3】強化された剛性特性を提供するためのPVDコーティングを示す、図2の3-3から取った器具の拡大断面図である。
図4】強化された剛性特性の別の実施形態を示す、図1図3の器具の側面断面図である。
図5】剛性特性が強化された器具を使用する、図1のツールを用いる内境界膜(ILM)外科手術の概要描写である。
図6】剛性特性が強化された器具を有する外科手術ツールを眼科手術で用いる実施形態をまとめたフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本開示の理解をもたらすために、多数の詳細が記述される。しかしながら、説明される実施形態が、これらの特定の詳細なしで実施され得ることは、当業者には理解されるであろう。更に、具体的に説明する実施形態において依然として企図される多数の変形又は修正が採用され得る。
【0011】
特定のタイプの外科手術を参照して実施形態を説明する。具体的には、ILM剥離手順が図示され、外科手術ツールは鉗子の形の器具を含む。しかしながら、本明細書中に詳述するツール及び技法は、他の様々な手法でも用いられ得る。例えば、器具は、はさみ、硝子体切除ニードルのための1つの器具、又は任意の数の他の用途タイプを支持するための器具であり得る。加えて、眼科手術が、多くの場合、かなり細い器具の使用から恩恵を受ける一方で、他のタイプの手術は、本明細書で詳述される固有のアーキテクチャ及び技術から恩恵を受けることができる。実際、外科器具のために剛性化コーティング又は内径低減アーキテクチャが使用される限り、相当な恩恵が実現できる。
【0012】
ここで図1を参照すると、眼科手術用の外科手術ツール101の斜視図が図示される。より具体的には、ツール101は、剛性特性が強化された器具100を利用する。以下で更に詳述するように、器具100は鉗子110を含む。しかしながら、恐らくより注目すべきことに、器具100は、固有の剛性特性を有する。例えば、一実施形態では、器具100は、剛性化コーティング200(例えば、図2及び図3を参照)により覆われた、25ゲージ又はより大きいゲージの、ステンレス鋼の又は他の好適な、管状基材205を含む。別の実施形態では、器具100は、意図的に不均一な内径400、425を有する剛性化構造である。実際、器具100の剛性を増加させるために、内径の大部分425を低減させてもよい(例えば、図4を参照)。
【0013】
継続して図1を参照し、加えて図2を参照すると、器具100は、前述したように、長さが約6cm(センチメートル)であってもよく、直径の寸法出しが25ゲージより小さくてもよい。しかしながら、前述したコーティング200により、ある程度の硬度及び剛性を加えることができる。一実施形態では、コーティング200は、厚さが1~30ミクロン(又はより多く)のいずれかであってもよく、剛性を5~30%(又はより多く)のいずれかだけ増加させることができる。図5を更に参照すると、剛性化スリーブを利用することとは異なり、コーティング200によって器具100に提供される追加の厚さ及び剛性特性は、器具の全体にわたって適用可能である。すなわち、剛性は、剛性化スリーブの場合とは異なり、眼550の外部へのトロカールカニューレ530によって限定されることがない。むしろ、コーティング200により提供される強化された剛性は、所与の手術に対して眼550の中に到達するあらゆる部分を含む、器具100の全体にわたって適用される。
【0014】
ここで図2を参照すると、強化された剛性特性を実現するために物理蒸着(PVD)チャンバ201内に位置決めされた図1の器具100の概略図が示される。しかしながら、他の実施形態では、材料及び他の動作パラメータに応じて、化学蒸着(CVD)技術又はプラズマ支援CVD(PACVD)技術が利用され得る。いずれにせよ、示される実施形態について、器具100は、初期的には、ステンレス鋼、又はPVDの適用を受け入れやすい、外科用途のための他の好適な材料、であってもよい基材205を含む。すなわち、PVDの適用は、上述したような外側コーティング200を基材205に提供して器具100を形成するように調整される。上記にて示唆したように、コーティング200は、約1~30ミクロンのいずれかであって、少なくとも部分的に器具100の剛性特性を強化するために選択された材料で作られていてよい。図2の概略図では、スパッタされたターゲット原子又は分子として示される、コーティング200を最終的に形成する材料260は、器具100の意図された使用を想定すると、生体適合性である固体スパッタリングターゲット240から供給される。例えば、ターゲット240は、窒化チタン(TiN)、アルミニウム窒化チタン(AlTiN)又はチタン窒化ニオブ(TiNbN)、ダイヤモンド様炭素(DLC)、チタン炭窒化物(TiCN)、及び窒化ジルコニウム(ZrN)などの、セラミックであってもよい。
【0015】
継続して図2を参照すると、PVDの適用は、チャンバ201内の真空中でのスパッタリングガス210の循環に続く。高温の真空又はガス状プラズマ215が、恐らく約200℃(摂氏度)~400℃のターゲット240に向けられる(230を参照)。これにより、ターゲット材料260を含む蒸気が生成され、次いでこれを、基材205に到達させてコーティング200を形成することに利用可能である(265を参照)。より具体的には、この蒸気は基材205上で凝縮して、強化された器具100を形成することができる。
【0016】
ここで図3を参照すると、図2の3-3から取った器具100の拡大断面図が示される。この図では、蒸気材料260から実現されたPVDコーティング200が、上述した強化された剛性特性を提供することが直ちに明らかである。より具体的には、前述したタイプのターゲット材料260を利用し、記載されている方法でコーティング200を提供することにより、コーティング200の追加により器具100に追加される厚さの割合よりも実質的に大きい割合で、剛性を強化できる。例えば、コーティング200は、器具100について壁厚全体の厚さ(d)の10%未満を構成し得る一方で、剛性を5%~30%(又はより多く)のいずれかだけ増加させ得る。第1の実施例として、コーティング200は、約0.06mmの総壁厚に対して1~10のミクロン厚であり得る。第2の実施例としてだけ、器具100が、約0.1インチを十分に超える全体的な壁厚を有する場合、コーティング200は、一般に、その厚さの約30ミクロン未満を構成し得る。それでもやはり、器具100の剛性化は、コーティング200が存在しない器具100と比較して5%を十分に超える場合があり、これは、コーティング200により追加される厚さのパーセンテージよりも遥かに大きい割合である。ヤングの弾性係数、すなわちギガパスカル(GPa)単位での剛性の測定基準の観点では、全体的な厚さに僅か1~30ミクロンの厚さ(d)を追加することにより、下にあるスチール基材205の剛性を200GPaから最大約230~250GPaにすることができ、これは、コーティング200自体によって追加される厚さのパーセントよりも遥かに大きなパーセンテージである。他の厚さ及び硬さもまた検討される。
【0017】
ここで、強化された剛性特性の別の実施形態を示す、図1図3の器具100の側面断面図である図4を参照する。すなわち、剛性化の強化のためのコーティング200がやはり示されるが、下にある基材205の固有の構造により追加の剛性化が提供される。より具体的には、基材205は、内部ツールフィーチャを収容するために本質的に管状であることに留意されたい。図示する実施形態では、ツールフィーチャは、鉗子110を構成する。しかしながら、他の実施形態では、光機器、はさみ、又は任意の数のツールフィーチャが、器具100と共に用いられ得る。
【0018】
継続して図4を参照すると、多くの他のツールフィーチャと同様に、鉗子110は不規則な直径を有する。より具体的には、鉗子110は、器具基材205内のツールチャンバ400の外形に厳密に一致し得る最大外径(D)に達する。図示する実施形態では、鉗子110は、チャンバ400の外形よりも僅かに大きい最大外径(D)に達することさえあり得るが、チャンバ内に折り畳み可能でもあり得る。いずれにせよ、図示する実施形態では、チャンバ400は、鉗子110を収容するように寸法決めされた、基材205の唯一の部分である。これは、ツールフィーチャの残部が、その遠位端にて鉗子110を収容するワイヤ又は「マンドレル」475の直径に限定されるからである。その結果、より小さい近位の直径425が、基材205の管状の内部又はルーメンの大部分を延びることができる。
【0019】
実際には、これは、基材205の大部分の壁厚(t)が、チャンバの場所におけるよりも、実質的により大きくなることを意味する。すなわち、基材205の管状内部の全体が、鉗子110を収容する直径を有する必要はない。代わりに、実質的により大きな壁厚(t)を利用して、器具100の大部分にわたって更により大きな強化された剛性を提供することができる。実際、チャンバ400を画定する、基材205の遠位端450のみが、このタイプの強化された剛性を欠いている。しかしながら、図示する実施形態では、強化された剛性は、遠位端450においてさえ、コーティング200により提供されることに留意されたい。
【0020】
単に例として示すが、近位の直径495は、27ゲージ機器について約0.25mmであり、25ゲージ機器について約0.3mmであり得る。いくつかの実施形態では、(チャンバ400の)チャンバ直径は、27ゲージ機器について約0.35mmであり、25ゲージ機器について約0.37mmである。それに対応して、基材205の大部分にわたる壁厚(t)は、0.25mmよりも大きくてよい。構造は本質的に管状であり、これは、ツールのシャフト全体の直径496が25ゲージ機器について約0.52mmであってもよく、27ゲージ機器について約0.42mmであってもよいことを意味する(この直径496は、コーティング200により提供される追加の厚さを含み得る)。例示的寸法が、近位の直径495、チャンバ400のチャンバ直径、及びシャフト全体の直径496について上記にて提供されているが、これら構成要素について他の直径(より大きい、又はより小さい)が、25、27、及び他のゲージ機器について使用され得ることを理解されたい。
【0021】
特定の寸法に関わらず、その大部分が遠位端450における直径よりも実質的に小さい近位直径475を有するルーメンを用いることは、器具100にとって実質的な剛性強化を得ることができることを意味する。実際、図示するコーティング200が不在の場合でさえ、約5%~約30%(又はより多くの)のいずれかの剛性増加が依然として予想され得る。重ねて、測定基準の観点では、スチール基材205は、近位の直径475がチャンバ400の直径に等しい場合における200GPa以下と比較して、たとえコーティング200がなくても大部分にわたって最大約230~250GPaの剛性増加に至り得る。繰り返すと、追加の厚さ(t)及びコーティング200の両方が用いられる例示的実施形態について、剛性化は、250GPaを超えて(及び/又は30%を超えて)増加され得る。
【0022】
ここで図5を参照すると、内境界膜(ILM)外科手術の概要描写が図示される。具体的には、この手術は、剛性特性が強化された器具100を有する図1のツール101を用いる。この図面では、図1の器具100は、鉗子110と共に利用される。この外科手術中、器具100は、予め配置されたカニューレ530を通して挿入され、ILM 500が除去されるべき領域510に向かって導かれる。例えば、これは、多くの場合に、ILMに関連する黄斑円孔形成又は様々な他の問題を回避することを手助けするために行われる手順であり得る。
【0023】
図示される手術はまた、オフセットさせて強膜570に位置決めされた別のカニューレ515を通して眼550に到達する光機器525の位置決めを含む。実際、両方のカニューレ515、530は、そのようにオフセットさせて位置決めされるように示される。このようにして、より繊細な角膜590及び水晶体580への損傷を回避することができる。
【0024】
もちろん、視神経560、網膜575、及び眼550の他の部分も非常に繊細である。したがって、剛性特性が強化された器具100を用いることは相当な恩恵をもたらし得る。すなわち、弾力及び曲げの影響をより受けやすい器具に依存するよりはむしろ、固有の技術及び構造を用いて器具100の剛性特性を強化することができる。その結果、外科医は、手術中に器具100の全体にわたってより優れた程度の制御を得ることができる。したがって、手術が成功する確率を向上できる。実際、本明細書で重点を置く実施形態は、鉗子器具100のための強化された剛性特性を対象としているが、同じ技術及び構造は、光機器525又は様々な他の器具タイプに適用されてもよい。繰り返すと、従来の剛性化スリーブとは異なり、本明細書に詳述される技術及び構造により器具100の剛性特性を強化することは、図示する手術中に、眼550の中に到達する器具100の部分について剛性を強化することを含む。
【0025】
図2及び図3を更に参照して続けると、説明したようにコーティング200が補足的に提供される場合、選択される材料260は、上述の手術中にグレアを最小化するように選択されてもよいことに留意されたい。例えば、光501が隣接する機器525から供給されると想定すれば、器具100の表面において役に立たないグレアが発生する可能性が存在する。したがって、コーティング200のために適切な材料260が選択される場合、グレアを最小化する機会が与えられる。この点に関して、ステンレス鋼と比較してグレアを受けにくいDLC、TiN、及び/又はTiCNベースの材料を利用できる。実際、利用される特定のコーティング組成物は、グレアを減らすように選択及び調整できる。このような技術を使用することにより、従来の露出したステンレス鋼の器具と比較して、最大で50%のグレアの減少がもたらされるはずである。
【0026】
ここで図6を参照すると、剛性特性が強化された器具を有する外科手術ツールを眼科手術で用いる実施形態をまとめたフロー図が示される。620及び640でそれぞれ述べたように、剛性化材料を用いるPVDコーティングの適用、又は遠位チャンバ直径よりも小さい近位直径を有する器具の構造のいずれかにより、強化された剛性特性が達成できる。もちろん、両方の概念を同じ器具で利用できる。いずれにしても、660に示すように、器具を用いて眼科手術を実施できる。更に、強化された剛性がPVDコーティングの適用を含む場合、材料の選択が、手術のためにグレアを低減することを支援できる。
【0027】
上述した実施形態は、眼科手術用器具が益々小さくなるにつれて、剛性化スリーブが曲がる傾向を補償することを回避することを可能にする技術及び構造を含む。したがって、剛性を強化するために、剛性化スリーブにより提示される限界は回避できる、又は少なくともそれだけに依存することはない。繰り返すと、剛性強化部分は、手術中に眼の中にある部分を含む、器具の大部分、又は器具の全体を横断することができる。一実施形態では、選択された剛性化材料選択肢の使用により、グレアの減少を実現することさえできる。
【0028】
前述の説明は、具体的な実施形態を参照して提示されている。しかしながら、開示されているが上で詳述されていない他の実施形態及び/又は実施形態の特徴が採用され得る。更に、これらの実施形態が属する技術の当業者は、説明された構造及び動作方法における更に他の改変及び変更が、これらの実施形態の原理及び適用範囲から有意に逸脱することなく実施され得ることを理解するであろう。加えて、前述の説明は、説明し、添付の図面に示す正確な構造にのみ関係するものとして読み取るべきではなく、むしろ、それらの最大限且つ最も適正な範囲を有することになる以下の特許請求の範囲と整合し、それらを支持するものとして読み取るべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】