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特表2023-553448芳香族類の脱アルキル化のための変性超安定Y(USY)ゼオライト触媒
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  • 特表-芳香族類の脱アルキル化のための変性超安定Y(USY)ゼオライト触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】芳香族類の脱アルキル化のための変性超安定Y(USY)ゼオライト触媒
(51)【国際特許分類】
   C07C 4/12 20060101AFI20231214BHJP
   C07C 15/04 20060101ALI20231214BHJP
   C07C 15/06 20060101ALI20231214BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20231214BHJP
   B01J 29/16 20060101ALI20231214BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
C07C4/12
C07C15/04
C07C15/06
C07C15/08
B01J29/16 M
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535556
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 US2021062424
(87)【国際公開番号】W WO2022125674
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】17/116,856
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599130449
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301041531
【氏名又は名称】一般財団法人JCCP国際石油・ガス・持続可能エネルギー協力機関
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オマー・レファ・コセオグル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ピーター・ホジキンス
(72)【発明者】
【氏名】渡部 光徳
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩司
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC30A
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC52A
4G169BC57A
4G169BC59B
4G169BC61A
4G169BC65A
4G169BC68B
4G169BC69A
4G169CC11
4G169DA05
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169EC04Y
4G169FC08
4G169ZA05A
4G169ZA05B
4G169ZA33A
4G169ZA33B
4G169ZF02A
4H006AA02
4H006AC26
4H006BA10
4H006BA30
4H006BA55
4H006BA71
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC37
4H006BC40
4H006BD84
4H006BE20
4H006DA15
4H006DA50
4H039CA99
4H039CB90
4H039CE40
(57)【要約】
本開示は、ベンゼン、トルエン及び混合キシレン(BTX)を製造するための、芳香族に富む炭化水素流の水素化脱アルキル化の方法であって、価値の高いキシレンに向けた高い選択性を有する方法に関する。該方法は、フレームワーク置換ジルコニウム及び/又はチタン及び/又はハフニウム変性超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒を使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素供給物を水素化脱アルキル化して脱アルキル化製品を製造する方法であって、
前記方法が、脱アルキル化触媒の存在下、炭化水素供給物を水素供給物と反応させる工程を含み、
前記炭化水素供給物が、9個以上の炭素原子を有する芳香族炭化水素(C9+芳香族類)を含み、
前記脱アルキル化触媒が、そのゼオライトフレームワークを構成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子で置換されている、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトである、方法。
【請求項2】
炭化水素供給物及び水素供給物を脱アルキル化反応器に導入する工程であって、前記脱アルキル化反応器が、脱アルキル化触媒を含む、工程と、
前記脱アルキル化触媒の存在下で、前記炭化水素供給物を前記水素供給物と反応させて、脱アルキル化製品を製造する工程と
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒中の前記フレームワーク置換USY型ゼオライトが、ジルコニウム原子及びチタン原子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒中の前記フレームワーク置換USY型ゼオライトが、それぞれ酸化物基準で計算して、約0.1~約5質量%のジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒中の前記フレームワーク置換USY型ゼオライトが、アルミナ、シリカ-アルミナ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される無機酸化物を含む担体を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒中の前記フレームワーク置換USY型ゼオライトが、結合剤としてアルミナを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、周期表のIUPAC6~11族の金属からなる群から選択される活性金属を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記脱アルキル化製品が、ベンゼン、トルエン、混合キシレン(BTX)、及びC9+芳香族類を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記混合キシレンが、ベンゼン及びトルエンよりも多い量で製造される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
混合キシレン対ベンゼン及びトルエンの比が、混合キシレン:ベンゼン+トルエンの比として表して、少なくとも約2対1、好ましくは少なくとも約3対1である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
脱アルキル化製品中のベンゼン対トルエン対キシレンの比が、約1:4~10:15~25である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記炭化水素供給物が、約50℃~約500℃の沸点範囲を有する、芳香族類に富む炭化水素油を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記炭化水素供給物が、芳香族類に富む重質改質油供給物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
約400℃~約500℃の反応温度範囲、約20~約50バールの圧力、約0.5~約5h-1のLHSV、及び約100~約500SLt/Ltの水素対炭化水素の比で操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
約400℃~約425℃の反応温度範囲にて操作される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記水素供給物が、水素ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記脱アルキル化製品が、約500ppm未満、好ましくは約10ppm未満、最も好ましくは約0.5ppm未満の硫黄を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記脱アルキル化製品が、約100ppm未満、好ましくは約10ppm未満、最も好ましくは約0.5ppm未満の窒素を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記炭化水素供給物が、少なくとも約50wt%、好ましくは少なくとも約60wt%、より好ましくは少なくとも約70wt%、脱アルキル化される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記脱アルキル化製品をスプリッターユニット内に導入する工程と、前記脱アルキル化製品を、軽質炭化水素流と、C6+芳香族炭化水素を含む流れとに分離する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記C6+芳香族炭化水素流が、ベンゼン、トルエン、混合キシレン(BTX)、及びC9+芳香族炭化水素を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記C6+芳香族炭化水素流を芳香族類回収複合施設(ARC)に導入して、BTXを回収する工程を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
炭化水素供給物から混合キシレンを製造する方法であって、
炭化水素供給物中の芳香族炭化水素を水素化脱アルキル化する脱アルキル化触媒の存在下で、前記炭化水素供給物を水素供給物と反応させる工程を含み、
前記炭化水素供給物が、9個以上の炭素原子を有する芳香族炭化水素(C9+芳香族類)を含み、
前記脱アルキル化触媒が、そのゼオライトフレームワークを構成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子で置換されている、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトである、方法。
【請求項24】
前記炭化水素供給物が、重質改質油供給物である、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベンゼン、トルエン及び混合キシレン(BTX)を製造するための、芳香族類に富む炭化水素流の水素化脱アルキル化の方法であって、価値の高いキシレンに向けた高い選択性を有する方法に関する。該方法は、フレームワーク置換ジルコニウム及び/又はチタン及び/又はハフニウム変性超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒を使用する。
【背景技術】
【0002】
接触改質は、炭化水素混合物を改質し、芳香族類の製造に有用な、改質油、芳香族類に富むガソリンブレンディング画分をもたらすのに広く使用されている方法である。接触改質ユニットからの改質油は、価値の高い製品、例えばキシレン及びベンゼンを回収するために、且つ価値のより低い製品、例えばトルエンを、より価値の高い製品へと変換するために、芳香族類複合施設へ送られる。例えば、トルエンは、別々の画分として典型的に回収され、且つベンゼン及びキシレンを製造するために不均化を受け、又はベンゼンを製造するために水素化脱アルキル化される。
【0003】
芳香族類複合施設は、3以上の炭素数を含有するアルキル基を有するC9+アルキル化芳香族類を含有するきわめて重質である(100~450℃の範囲で沸騰する)排出流又は塔底物を製造する。重質塔底物画分は、ガソリンブレンディング成分として好適でない。その理由は、重質塔底物画分は+、ガソリンの質を低下させ、且つ長期的にエンジン性能に悪影響を及ぼすためである。それ以上に、ブレンディングは、ガソリン中の芳香族類含有量に対する規制がより厳重になっていることに起因して、より難しくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10293332号
【特許文献2】米国特許出願公開2019/0194095号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パラキシレンは、需要の市場成長率を経験している。その結果、重質芳香族類をp-キシレンに変換することは、価値ある製品流をもたらす。したがって、重質改質油画分を利用して、アルキル化芳香族類の脱アルキル化を介してキシレンに富むBTXを得ることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後変性フレームワーク置換超安定Y(USY)ゼオライトを含有する触媒を使用する、重質の芳香族類に富む改質油の水素化脱アルキル化の方法及び系が開示される。
【0007】
本開示は、価値の高いキシレンに向けた選択性を有する、ベンゼン、トルエン及びキシレン(BTX)を製造するための、芳香族類回収複合施設から塔底物流を水素化脱アルキル化するための系に関する。この方法は、チタン(Ti)及び/又はジルコニウム(Zr)及び/又はハフニウム(Hf)が、脱アルミニウム化後にゼオライト触媒中に挿入される後変性フレームワーク置換超安定Y(USY)ゼオライトを含有する触媒を利用する。本開示による変性USYゼオライト触媒を使用すると、既知の方法と比較して、キシレンのトルエン及びベンゼンに対する割合が大きくなる。そのため、本開示の方法は、価値の高いキシレンを優先的に形成し、且つより価値の低いベンゼン及びトルエンの形成を低減するという、技術的利点をもたらす。
【0008】
そのため、いくつかの実施形態では、本開示は、脱アルキル化触媒の存在下デ、炭化水素供給物を水素供給物と反応させることによって、9個以上の炭素原子を有する芳香族炭化水素(C9+芳香族類)を含む炭化水素供給物を水素化脱アルキル化する方法を提供する。ここで、該脱アルキル化触媒は、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトである。
【0009】
他の実施形態では、本開示は、炭化水素供給物中の芳香族化合物を水素化脱アルキル化する脱アルキル化触媒の存在下で、炭化水素供給物を水素供給物と反応させることによって、C9+芳香族類を有する芳香族炭化水素を含む炭化水素供給物から混合キシレンを製造する方法を提供する。ここで、脱アルキル化触媒は、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトである。
【0010】
いくつかの実施形態では、フレームワーク置換USYゼオライトは、そのゼオライトフレームワークを構成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子で置換されているものである。他の実施形態では、フレームワーク置換USYゼオライトは、本明細書に記載されている無機酸化物、例えばアルミナ、シリカ-アルミナなどを含有する担体上に担持されうる。
【0011】
好ましくは、炭化水素供給物は、約50℃~約500℃の沸点範囲を有する芳香族類に富む炭化水素油を含む、芳香族類に富む重質改質油供給物(例えば塔底物流)を含む。
【0012】
本発明の方法は、BTX画分の形成を、キシレンに向けた強い選択性と共にもたらす。いくつかの実施形態では、混合キシレン対ベンゼン及びトルエンの比は、少なくとも約2対1、好ましくは少なくとも約3対1である。他の実施形態では、ベンゼン対トルエン対キシレンの比は、約1:4~10:15~25である。
【0013】
更なる実施形態及び本開示の適用可能性の完全な範囲は、本発明で以下に提供される「発明を実施するための形態」から明らかになる。しかし、「発明を実施するための形態」及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、例示によってのみ提供される。その理由は本発明の趣旨及び範囲内の多種の変更及び改変がこの「発明を実施するための形態」から当業者には明らかになるためであることが理解されるべきである。
【0014】
本発明の及びその多くの特徴及び利点のより完全な理解が、以下の「発明を実施するための形態」及び添付の図面を参照することによって達成されることになる。図面が、本開示の1つのみの実施形態を例示していること、したがってその範囲を限定すると考えられるべきでないことに留意することが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】方法の実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
機器及び方法の範囲がいくつかの実施形態で記載されることになるものの、関連する当業者が、本明細書に記載されている機器及び方法に対する多くの例、バリエーション及び代替法が本実施形態の範囲及び趣旨内にあると認識することになると理解される。
【0017】
したがって、記載されている実施形態は、該実施形態について、一般性の損失一切なしに且つ限定を課すことなしに明らかにされる。当業者であれば、本発明の範囲が、本明細書に記載されている全ての可能な組合せ、及び特定の特徴の使用を含むことを理解する。
【0018】
本明細書に記載されているのは、C9+芳香族化合物(例えば重質塔底物改質油供給物)を含有する重質炭化水素供給物を水素化脱アルキル化することによる、混合キシレンの製造のための方法及び系である。重質塔底物改質油供給物及び水素供給物(例えば水素ガス)が、脱アルキル化触媒を含む脱アルキル化反応器へ導入される。脱アルキル化触媒は、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒であり、そのゼオライトフレームワークを構成するアルミニウム原子の一部が、ジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子で置換されている。脱アルキル化反応器からの脱アルキル化流出物は、脱アルキル化流出物の成分を分離するためのスプリッターユニットへ任意選択で導入されてもよい。
【0019】
有利なことに、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒を使用すると、他の触媒と比較して、キシレンの全体的製造率が高くなる。そのため、この方法は、C9+芳香族類を脱アルキル化して、ベンゼン、トルエン及び混合キシレン(BTX)を、価値の高いキシレンに対する優先性と共にもたらす。
【0020】
定義
全体を通して使用されるとき、「C」及び数への参照は、炭化水素中の炭素原子の数を指す。例えば、C6は、6個の炭素原子を有する炭化水素を指し、C7は、7個の炭素原子を有する炭化水素を指す、などである。
【0021】
本明細書を通して使用されるとき、「C8芳香族類」は、8個の炭素原子を有する芳香族炭化水素を指す。C8芳香族炭化水素の例としては、混合キシレン及びエチルベンゼンが挙げられる。本明細書を通して使用されるとき、「混合キシレン」は、パラキシレン(p-キシレン)、メタキシレン(m-キシレン)及びオルトキシレン(o-キシレン)のうちの1種又は複数を指す。
【0022】
本明細書を通して使用されるとき、「C9芳香族類」は、9個の炭素原子を有する芳香族炭化水素を指す。C9芳香族炭化水素の例としては、メチルエチルベンゼン、トリメチルベンゼン及びプロピルベンゼンが挙げられる。
【0023】
本明細書を通して使用されるとき、「C10+芳香族類」は、10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素、及び10個超の炭素原子を有する芳香族類、例えば11個の炭素原子を有する芳香族炭化水素を指す。C10+芳香族類は、二重環芳香族化合物を含むことができる。C10+芳香族類の二重環芳香族化合物の例としては、ナフタレン、メチルナフタレン、ナフタレン誘導体、及びこれらの組合せが挙げられる。メチルナフタレンの例としては、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0024】
本明細書を通して使用されるとき、「C9+芳香族類」は、C9芳香族類及びC10+芳香族類の群を指す。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「BTX」は、ベンゼン(C6)、トルエン(C7)及び混合キシレン(C8)を含む組成物を意味する。本明細書で示される用語「キシレン」は、オルトキシレン(o-キシレン)、メタキシレン(m-キシレン)、パラキシレン(p-キシレン)、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1種を意味する。全体を通して使用されるとき、「混合キシレン」は、o-キシレン、m-キシレン及びp-キシレンのうちのいずれか1種又は複数を指す。
【0026】
本明細書を通して使用されるとき、「脱アルキル化反応」は、反応物のうちの1種又は複数からの、1つ又は複数のアルキル基の除去をもたらす反応を指す。
【0027】
本明細書を通して使用されるとき、「軽質炭化水素」は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、アルケン、及び微量のナフテン、例えばシクロペンタン、シクロヘキサンを含めたアルカンのうちの1種又は複数を指す。
【0028】
本明細書を通して使用されるとき、「軽質ガス」は、軽質炭化水素、水素及び空気のうちの1種又は複数を指す。
【0029】
本明細書を通して使用されるとき、「単一環芳香族化合物」は、中央の芳香族環中に配列された少なくとも6個の炭素原子を有し、置換基として水素及び炭化水素を有する環を含む、芳香族化合物を指す。
【0030】
実施形態の説明
図1を参照すると、混合キシレンを製造する方法の実施形態が提供される。重質改質油供給物100が、水素供給物105と共に脱アルキル化反応器10へ導入される。重質改質油供給物100は、トルエン、混合キシレン、C9芳香族類、及び以下に記載されるC10+芳香族類を含んでもよい。
【0031】
水素供給物105は、水素ガスを含有する任意の流れであってよい。水素供給物105は、未使用の水素源からの純粋水素の流れであってもよい。少なくとも1つの実施形態では、水素供給物105は、精油所における水素源からであってもよく、且つ軽質炭化水素を含有してもよい。
【0032】
脱アルキル化反応器10は、脱アルキル化反応物を収容して支持することが可能な任意のタイプの反応器であってよい。脱アルキル化反応器10は、固定床反応器であっても流動床反応器であってもよい。脱アルキル化反応器10中の脱アルキル化温度は、セ氏400度(℃)から500℃の間であってもよい。脱アルキル化反応器10中の脱アルキル化圧力は、20バール(2,000キロパスカル(kPa))から50バール(5,000kPa)の間であってもよい。液時空間速度(LHSV)は、1時間当たり約0.5(hr-1)から約5hr-1の間であってもよい。水素対炭化水素の比は、約100~約500SLt/Ltであってもよい。
【0033】
フレームワーク置換USYゼオライトを含有する脱アルキル化触媒を含む脱アルキル化反応器10は、以下に更に記載される通り、そのゼオライトフレームワークを構成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子で置換されているものである。脱アルキル化触媒は、脱アルキル化反応におけるC9+芳香族類のうちの1種又は複数を選択的に変換するように選択されうる。脱アルキル化反応は、C9+芳香族類を、トルエン、ベンゼン、混合キシレン及び軽質ガスへと変換することができる。脱アルキル化反応器10中の反応は、C9+芳香族類に結合しているメチル、エチル、プロピル、ブチル及びペンチルの各基並びにこれらの異性体を除去することができる。
【0034】
少なくとも1つの実施形態では、脱アルキル化触媒は、メチルエチルベンゼンのうちの97.5wt%超をトルエンへ変換するように選択されうる。少なくとも1つの実施形態では、C9+芳香族類の全体的変換率は、C9芳香族類の変換、及びC10+芳香族類に結合しているメチル、エチル、プロピル、ブチル及びペンチルの各基の除去に起因して、98wt%超でありうる。
【0035】
脱アルキル化反応は、混合キシレン、トルエン、ベンゼン、軽質ガス及びC9+芳香族類を含有しうる脱アルキル化流出物110を製造する。次いで、脱アルキル化流出物は、様々な画分を分離して回収するように操作されるスプリッターユニット20へ任意選択で導入されてよい。スプリッターユニット20は、流れをその成分部分へと分離することが可能な任意のタイプの分離ユニットであってもよい。少なくとも1つの実施形態では、スプリッターユニット20は、供給物流を複数のスプリット流に分離するように設計された1つのスプリッター塔であってもよい。少なくとも1つの実施形態では、スプリッターユニット20は、供給物流から1種の成分を分離するように設計された、一連にある複数のスプリッター塔であってもよい。少なくとも1つの実施形態では、スプリッターユニット20は、1種又は複数の蒸留ユニットであってもよい。少なくとも1つの実施形態では、スプリッターユニット20は、4バールゲージ(barg)から6bargの間の圧力、及び20℃から100℃の間の温度にて操作する蒸留塔を備え、第1の塔の供給物から軽質ガスを分離して、軽質ガス流120、及びC6+炭化水素を含む液体反応流出物122を製造する。
【0036】
少なくとも1つの実施形態では、スプリッターユニット20は、成分を分離して、軽質ガス流120、並びにBTX(C6~8芳香族炭化水素)及びC9+芳香族類流れを含有する液体反応流出物122を製造する。少なくとも1つの実施形態では、流出物122は、芳香族類回収複合施設(ARC)30に導入され得、ここで、このような流出物は、BTX流124を回収するために更に加工される。
【0037】
当業者によって、スプリッターユニット20が、所望の流れを生成する温度及び圧力にて操作するように設計されうることが理解されうる。スプリッターユニット20が1つの蒸留塔である少なくとも1つの実施形態では、該蒸留塔は、1つの容器内に複数の区画を備えることができ、ここで、各区画は、この段落に記載されている別々の塔のそれぞれに対応する操作条件を有する。
【0038】
本開示における水素化脱アルキル化方法のための機器が、特に前述した実施形態に限定されないこと、及び先の反応が実施される限り任意の他の機器が使用されてよいことは、当業者には明らかである。様々なタイプの機器を使用することができる。いくつかの実施形態によれば、本開示の方法は、沸騰床若しくはスラリー床若しくは移動床の各反応器、又はCSTR若しくはバッチ式の各反応器などにおいて行うことができる。
【0039】
炭化水素供給物
本開示の方法において使用される炭化水素供給物100は、芳香族炭化水素が豊富な任意の炭化水素供給物であってよい。好ましい実施形態では、炭化水素供給物は、芳香族類回収方法から製造される重質改質油供給物である(本明細書では「芳香族塔底物画分」とも称する)。重質改質油供給物は、好ましくは芳香族炭化水素が豊富であり、且つトルエン、混合キシレン、C9芳香族類及びC10+芳香族類を含んでいてもよい。
【0040】
少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、0wt%から10wt%の間のC6芳香族(ベンゼン)を含有することができる。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、0wt%から10wt%の間のC7芳香族(トルエン)を含有することができる。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、0wt%から10wt%の間の混合キシレンを含有することができる。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、0wt%から10wt%の間のC6~C8芳香族類を含有することができる。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、0wt%から10wt%の間の混合キシレン、及び60wt%から100wt%の間のC9+芳香族類を含有することができる。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、0wt%から40wt%の間のC6~C8芳香族類、及び60wt%から100wt%の間のC9+芳香族類を含有することができる。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、0wt%から10wt%の間の混合キシレン、0wt%から10wt%の間のトルエン、及び80wt%から100wt%の間のC9+芳香族類を含有することができる。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、60wt%から100wt%の間のC9+芳香族類を含有する。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、60wt%から100wt%の間のC10+芳香族類を含有する。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、90wt%から100wt%の間のC10+芳香族類を含有する。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、60wt%から100wt%の間のC11+芳香族類を含有する。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、90wt%から100wt%の間のC11+芳香族類を含有する。
【0041】
少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、そのアルキル誘導体を含めた微量のC8+ナフテン及びC10+ナフチレンを含んでいてもよい。更なる実施形態では、重質改質油供給物100は、微量の非芳香族炭化水素を含む。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物は、0wt%から1wt%の間のC4~C12 n-パラフィンを含有する。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、0wt%から1wt%の間のC4~C12 i-パラフィンを含有する。少なくとも1つの実施形態では、重質改質油供給物100は、0wt%から1wt%の間のC8+ナフテン及びC10+ナフチレンを含有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、重質改質油供給物は、約50℃~約500℃の沸点範囲を有する芳香族類に富む炭化水素油を含む。他の実施形態では、炭化水素供給物は、約100℃~約500℃の沸点範囲を有する芳香族類に富む炭化水素油を含む。他の実施形態では、重質改質油供給物は、約150℃~約500℃の沸点範囲を有する芳香族類に富む炭化水素油を含む。他の実施形態では、重質改質油供給物は、約150℃~約400℃の沸点範囲を有する芳香族類に富む炭化水素油を含む。
【0043】
改質油供給物は、通常、きわめて少量の硫黄を含有し、その理由は、得られたガソリン製品が現在の硫黄仕様書の遵守にとって許容されるレベルの硫黄を含有するように、それらが、改質前に、脱硫化に典型的に供されるためである。いくつかの実施形態では、脱アルキル化炭化水素製品は、約500ppm未満、好ましくは約10ppm未満、最も好ましくは約0.5ppm未満の硫黄を好ましくは含有する。他の実施形態では、脱アルキル化炭化水素製品は、約100ppm未満、好ましくは約10ppm未満、最も好ましくは約0.5ppm未満の窒素を含有する。
【0044】
脱アルキル化製品
脱アルキル化反応の結果として、アルキル化芳香族類の量は、初期の供給物中のアルキル化芳香族類の量に対して低減される。少なくとも1つの実施形態によれば、炭化水素供給物は、少なくとも約50%、脱アルキル化される。少なくとも1つの実施形態によれば、炭化水素供給物は、少なくとも約60%、脱アルキル化される。少なくとも1つの実施形態によれば、炭化水素供給物は、少なくとも約70%、脱アルキル化される。
【0045】
有利には、本開示の方法は、ベンゼン、トルエン、混合キシレン(BTX)、C9芳香族類及びC10+芳香族類を含む脱アルキル化製品を製造する。任意選択で、脱アルキル化製品は、微量のC8+ナフテン、C10+ナフチレン、C4~C12 n-パラフィン及び/又はC4~C12 i-パラフィンを含有していてもよい。
【0046】
有利には、本開示の方法は、ベンゼン及びトルエンに対してキシレンに向けた強い選択性を有するBTX画分の製造により特徴付けられる。そのため、少なくとも1つの実施形態では、該方法は、ベンゼン及びトルエンよりも多い量の混合キシレンを製造する。少なくとも1つの実施形態では、混合キシレン対ベンゼン及びトルエンの比は、少なくとも約2対1である。少なくとも1つの実施形態では、混合キシレン対ベンゼン及びトルエンの比は、好ましくは少なくとも約3対1である。
【0047】
他の実施形態では、ベンゼン対トルエン対キシレンの比は、約1:4~10:15~25(ベンゼン:トルエン:キシレンとして表され、且つベンゼンに正規化される)である。他の実施形態では、ベンゼン対トルエン対キシレンの比は、約1:4~7:18~25である。
【0048】
フレームワーク置換超安定Y(USY)ゼオライトを有する触媒
脱アルキル化反応器10は、脱アルキル化触媒を含んでいてもよい。有利には、脱アルキル化触媒は、ゼオライトフレームワークを構成するアルミニウム原子の一部が、ジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子で置換されているフレームワーク置換ゼオライトを含有する。
【0049】
いくつかの実施形態では、本開示の方法において使用されるフレームワーク置換ゼオライト触媒を有する触媒は、ケイ素原子及びアルミニウム原子がゼオライトフレームワークを形成し、且つアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子で置換されている、超安定Y型ゼオライトである。例えば、ゼオライトフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子のみで置換されている触媒中のフレームワーク置換ゼオライトは、「ジルコニウム置換ゼオライト」又は「Zr-USY」と称され;フレームワーク置換ゼオライトのゼオライトフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部がチタン原子のみで置換されている触媒中のフレームワーク置換ゼオライトは、「チタン置換ゼオライト」又は「Ti-USY」と称され;ゼオライトフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子及びチタン原子のみで置換されている触媒中のフレームワーク置換ゼオライトは、「ジルコニウム.チタン置換ゼオライト」又は「Zr.Ti-USY」と称され;ゼオライトフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子、チタン及びハフニウム原子で置換されている触媒中のフレームワーク置換ゼオライトは、「ジルコニウム.チタン.ハフニウム置換ゼオライト」又は「Zr.Ti.Hf-USY」と称される。
【0050】
超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子と置換されたジルコニウム原子並びに/又はチタン原子及び/若しくはハフニウム原子は、超安定Y型ゼオライトのフレームワークの構成要素として働く。置換は、例えば紫外線、可視光線及び近赤外線の分光光度法(UV-Vis-NIR)、フーリエ変換赤外線スペクトル法(FT-IR)によって確認することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、置換された原子に加えて、ジルコニウム原子並びに/又はチタン原子及び/若しくはハフニウム原子は、USY型触媒のフレームワークの外に更に付着され(担持され)得、又はUSY型触媒のフレームワークと結合され得、これは、あたかも本明細書に完全に記載されているかのようにその全容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10293332号に記載されている通りである。
【0052】
いくつかの実施形態では、触媒のフレームワーク置換ゼオライトは、フレームワーク置換ゼオライトに基づいて、酸化物(すなわち「ZrO2」、「TiO2」及び「HfO2」)質量で、約0.1質量%~約5質量%、好ましくは約0.2質量%~約4質量%、より好ましくは約0.3質量%~約3質量%のジルコニウム原子並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子を含有する。本明細書で予期されている通り、ジルコニウム原子並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子の(酸化物に基づく)含有量範囲は、ゼオライトフレームワークを形成するアルミニウム原子と置換されているジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子、並びに上記アルミニウム原子と置換されていないジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子の含有量の全てを含む。
【0053】
触媒中のフレームワーク置換ゼオライトが、上に記載したジルコニウム原子並びにチタン原子及び/又はハフニウム原子を含有するとき、ジルコニウム原子の、チタン原子及び/又はハフニウム原子に対する(酸化物に関する)質量比は、特に制限されず、且つ本発明の方法を実施するのに効果的であるジルコニウム又はチタン若しくはハフニウムの任意の比が用いられてよいことが、当業者によって認められる。
【0054】
触媒中のフレームワーク置換ゼオライトのジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子の含有量は、例えば、X線蛍光分析装置、高周波プラズマ発光分光計、原子吸光分光計などを用いて測定することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、ジルコニウム及び/又はチタン及び/又はハフニウム変性USY触媒の粒子は、50nm以下の直径を有する。
【0056】
フレームワーク置換ゼオライトを製造する方法
本発明における触媒中のフレームワーク置換ゼオライトは、米国特許第10293332号によって記載されている方法に従って製造することができる。例えば、触媒中のフレームワーク置換ゼオライトは、以下によって製造することができる:USY型ゼオライトを500℃~700℃にて焼成する工程であって、該USY-型ゼオライトが、2.430~2.450nmの結晶格子定数、600~900m2/gの比表面積、及び20~100の、SiO2のAl2O3に対するモル比を有する、工程と、焼成されたUSY型ゼオライトを含有する懸濁液を形成する工程であって、該懸濁液が、5~15の液体/固体の質量比を有する、工程と、上記懸濁液のpHが1.0~2.0であるように無機酸又は有機酸を添加する工程と、続いてジルコニウム化合物及び/又はハフニウム化合物を含有する溶液を添加してそれらを混合する工程と、混合溶液が約7のpHを有するように、例えば水性アンモニアを用いて溶液を中和する工程。
【0057】
超安定Y型ゼオライトは、触媒中のフレームワーク置換ゼオライトを調製するための原材料の1種として使用される。超安定Y型ゼオライトは、2.430nm以上で2.450nm以下の範囲内に落とし込まれる結晶格子定数(UD)、600~900m2/gの比表面積、及びSiO2の、Al2O3に対するモル比に関して20~100の範囲内に落とし込まれるモル比(シリカ-アルミナ比)を有するゼオライトを意味する。超安定Y型ゼオライトは、当技術分野で既知の任意の方法によって調製することができる。
【0058】
フレームワーク置換超安定Y型ゼオライトを製造する方法では、超安定Y型ゼオライトを得るために、骨格外アルミニウム(ゼオライトフレームワークを形成しないアルミニウム原子)が、超安定Y型ゼオライト原材料から除去されうる。骨格外アルミニウムは、例えば、超安定Y型ゼオライトを40~95℃の温水中に分散させて懸濁液を調製し、硫酸を上記懸濁液に添加してそれを10分~3時間撹拌し、その間、温度を40~95℃に維持して、それにより骨格外アルミニウムを溶解する方法によって除去することができる。骨格外アルミニウムを溶解させた後、該懸濁液はろ過され、フィルター上の残留物は40~95℃の純水で洗浄され、100~180℃にて3~30時間乾燥され、それにより、そこから骨格外アルミニウムが除去される超安定Y型ゼオライトを得ることができる。
【0059】
更に、フレームワーク置換超安定Y型ゼオライトを製造する方法では、超安定Y型ゼオライト原材料は、500℃~700℃、好ましくは550℃~650℃にて、か焼されうる。か焼時間は、目標のフレームワーク置換ゼオライトが得られる限り特に限定されず、それは、例えば30分~10時間の範囲内でか焼される。超安定Y型ゼオライトのか焼雰囲気に関して、それは、好ましくは空気中で実施される。か焼された超安定Y型ゼオライトを、約20℃~約30℃の温度を有する水の中に懸濁させて、懸濁液を形成する。超安定Y型ゼオライトの懸濁液の濃度に関して、液体/固体の質量比は、好ましくは5~15の範囲内であり、より好ましくは8~12の質量比が推奨される。
【0060】
次に、上に記載した懸濁液のpHが1.0~2.0に調整されるように無機酸又は有機酸がそこに添加され、続いてジルコニウム化合物及び/又はハフニウム化合物を含有する溶液が添加され混合される。次いで、混合溶液は中和され(pH7.0~7.5)、80~180℃にて所望のように乾燥され、これにより、上に記載したフレームワーク置換ゼオライトを得ることができる。
【0061】
硫酸、硝酸、塩酸などを、上記の使用される無機酸として提供することができ、それらの中で、硫酸、塩酸などが特に好ましい。更に、カルボン酸を、上に記載した有機酸として好適に使用することができる。無機酸又は有機酸の使用量は、懸濁液のpHが1.0~2.0の範囲に調整されうる限り制限されず、それは、超安定Y型ゼオライト中のAl2O3の量に基づいて、例えば0.5倍~4.0倍のモル量であり、好ましくは0.7倍~3.5倍のモル量であるが、それは上記範囲に制限されない。
【0062】
上に記載したジルコニウム化合物の例には、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの化合物の中で、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどが特に好ましい。添加されるジルコニウム化合物の量は、上に記載した超安定Y型ゼオライトに関する酸化ジルコニウム基準で、好ましくは約0.1質量%~約5質量%、より好ましくは約0.2質量%~約4質量%である。通常、ジルコニウム化合物を水に溶解させることによって調製されるジルコニウム化合物の水溶液が、ジルコニウム化合物として好適に使用される。
【0063】
上に記載したハフニウム化合物の例には、塩化ハフニウム、硝酸ハフニウム、フッ化ハフニウム、臭化ハフニウム、シュウ酸ハフニウムなどが挙げられる。これらの化合物の中で、塩化ハフニウム、硝酸ハフニウムなどが特に好ましい。添加されるハフニウム化合物の量は、超安定Y型ゼオライトに対する酸化ハフニウム基準で、好ましくは約0.1質量%~約5質量%、より好ましくは約0.2質量%~約4質量%である。通常、ハフニウム化合物を水に溶解させることによって調製されるハフニウム化合物の水溶液が、ハフニウム化合物として好適に使用される。
【0064】
いくつかの実施形態では、チタン化合物を、上に記載した混合溶液に添加することができる。チタン化合物の例には、硫酸チタン、酢酸チタン、塩化チタン、硝酸チタン、乳酸チタンが挙げられる。これらの化合物の中で、硫酸チタン、酢酸チタンなどが特に好ましい。添加されるチタン化合物の量は、超安定Y型ゼオライトに対する酸化物基準で、好ましくは約0.1質量%~約5質量%、より好ましくは約0.2質量%~約4質量%である。通常、チタン化合物を水に溶解することによって調製されるチタン化合物の水溶液が、チタン化合物として好適に使用される。
【0065】
上記懸濁液のpHは、事前に1.0~2.0に調整されなければならず、これは、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物又はチタン化合物の水溶液の、上に記載した超安定Y型ゼオライトの懸濁液との混合の際に沈殿が発生することを防止する目的のためである。
【0066】
ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物又はチタン化合物の水溶液を、超安定Y型ゼオライトの懸濁液と混合する場合、好ましくは、上記水溶液を、該懸濁液に徐々に添加する。上に記載した水溶液の、懸濁液への添加が終了した後、該溶液は、例えば室温(約25℃~約35℃)にて3~5時間、好ましくは撹拌しながら混合される。更に、上に記載した混合を終了した後、上に記載した混合溶液を、水性アンモニアなど等のアルカリを添加することによって中和して、そのpHを7.0~7.5に調整し、それによって、触媒中のフレームワーク置換ゼオライトを得ることができる。
【0067】
ジルコニウム化合物(又はその水溶液)のみが、上に記載した懸濁液に添加される化合物(又はその水溶液)として使用されると、ジルコニウム原子が超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部と置換された、触媒(Zr-USY)中のフレームワーク置換ゼオライトが形成され;ハフニウム化合物(又はその水溶液)のみが使用されると、ハフニウム原子が超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部と置換された、触媒(Hf-USY)中のフレームワーク置換ゼオライトが形成され;チタン化合物(又はその水溶液)のみが使用されると、チタン原子が超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部と置換された、触媒(Ti-USY)中のフレームワーク置換ゼオライトが形成され;ジルコニウム化合物及びチタン化合物(又はそれらの水溶液)が使用されると、ジルコニウム原子及びチタン原子が、超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部と置換された、触媒(Zr.Ti-USY)中のフレームワーク置換ゼオライトが形成され;ジルコニウム化合物及びハフニウム化合物(又はそれらの水溶液)が使用されると、ジルコニウム原子及びハフニウム原子が、超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部と置換された、触媒(Zr.Hf-USY)中のフレームワーク置換ゼオライトが形成され;且つジルコニウム化合物、チタン化合物及びハフニウム化合物(又はそれらの水溶液)が使用されると、ジルコニウム原子、チタン原子及びハフニウム原子が、超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部と置換された、触媒(Zr.Ti.Hf-USY)中のフレームワーク置換ゼオライトが形成されることが、当業者には明らかである。
【0068】
触媒中で得られたフレームワーク置換ゼオライトは、所望であれば、好ましくはろ過され、水で洗浄され、約80℃~約180℃にて乾燥される。
【0069】
フレームワーク置換USYゼオライトは、上に記載した触媒中のフレームワーク置換ゼオライトに加えて、上記の触媒中のフレームワーク置換ゼオライトを除く無機酸化物を含有する担体上に担持されうる。無機酸化物は、典型的には、粉砕剤又は結合剤として働く物質を含有する。通常、超安定Y型ゼオライトを含む担体中に含有される既知の物質、及び粉砕剤などとして使用される既知の物質を使用することができる。無機酸化物の例には、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、アルミナ-チタニア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-ボリア、リン-アルミナ、シリカ-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-シリカ、シリカ-アルミナ-チタニア、及びシリカ-アルミナ-ジルコニアが挙げられるがこれらに限定されない。本開示では、特に、アルミナ、シリカ-アルミナから主になる無機酸化物が好ましい。
【0070】
触媒中のフレームワーク置換ゼオライトの含有率、及び担体の無機酸化物含有率は、目的に応じて適切に決定することができる。担体は、触媒中に、約2質量%~約80質量%、好ましくは約10質量%~約80質量%、より好ましくは約20質量%~約70質量%の、フレームワーク置換ゼオライトを含み、且つ約98質量%~約20質量%、好ましくは約90質量%~約20質量%、より好ましくは約80質量%~約30質量%の、無機酸化物含有率を有する。
【0071】
金属成分:
本開示の方法において使用される触媒は、周期表のIUPAC 6~11族の金属からなる群から選択される活性金属成分を更に含んでよい。活性金属の例には、長周期型周期表の8族にある、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金若しくは金、及び/又は、6族にある金属成分の、クロム、モリブデン若しくはタングステンが挙げられる。金属成分の好ましい例には、6族にあるモリブデン又はタングステンの組み合わせ、及び8族にあるコバルト又はニッケルの組み合わせ、及び白金族(白金、ロジウム、パラジウムなど)の金属成分が挙げられる。
【0072】
存在する場合、金属成分は、触媒中に、酸化物で約0.0001~約40質量%の量で含有されてよい。モリブデン、タングステン、コバルト又はニッケルの場合、それらの量は、触媒の質量に基づいて、酸化物で、特に好ましくは約3~約30質量%である。白金族(白金、ロジウム、パラジウムなど)の場合、存在する場合、それらの量は、金属で、特に好ましくは約0.01~約2質量%である。
【実施例
【0073】
以下の実施例は、本開示の実施形態をより良好に例示するために提供される。しかし、これらの実施例が、本来、単に例示的であること、及び本開示の方法の実施形態が必ずしもこれらに限定されないことが理解されるべきである。
【0074】
(実施例1)
実施例1は、脱アルキル化反応器10の分析を示す(図1を参照)。重質改質油供給物100は、Table 1(表1)の組成を有する。供給原料の組成及び性質を、Table 1(表1)に要約する。PIONA分析から得た詳細な組成を、Table 2(表2)に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
パイロットプラント試験条件を、Table 3(表3)に要約する。
【0078】
【表3】
【0079】
触媒は、そのゼオライトフレームワークを構成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子及びチタン原子で置換されているフレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトであったが、これは、活性金属としてニッケル(Ni)及びモリブデン(Mo)を更に含む。
【0080】
結果:
芳香族脱アルキル化の結果を、Table 4(表4)(反応温度:400℃)及びTable 5(表5)(反応温度:425℃)に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
Table 4(表4)中の実験に従って得たベンゼン/トルエン/キシレン比を、Table 6(表6)に要約する。
【0084】
【表6】
【0085】
Table 5(表5)中の実験に従って得たベンゼン/トルエン/キシレン比を、Table 7(表7)に要約する。
【0086】
【表7】
【0087】
比較例:
Table 8(表8)は、米国特許出願公開第2019/0194095号、実施例1の方法に従って得たベンゼン/トルエン/キシレン比を示す。米国特許出願公開第2019/0194095号の方法は、ZSM-5ゼオライト触媒を400℃にて使用する。米国特許出願公開第2019/0194095号は、その全容が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0088】
【表8】
【0089】
見られる通り、本開示の方法は、400℃にて1.0:6.7:19.5、且つ425℃にて1.0:5.0:21.8の、ベンゼン:トルエン:キシレン比を有する製品を製造し、その一方で米国特許出願公開第2019/0194095号の方法は、400℃にて1.0:6.5:6.6のベンゼン:トルエン:キシレン比をもたらす。
【0090】
このように、ZSM-5触媒を使用する米国特許出願公開第2019/0194095号の方法によれば、トルエンに向けた比/選択性とキシレンに向けた比/選択性とは類似している。しかし、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトを使用する本開示の方法では、ベンゼン及びトルエンよりもキシレンに向けた選択性が強い。そのため、本開示による変性USYゼオライト触媒を使用すると、トルエン及びベンゼンよりも高い割合で所望の価値の高いキシレンが生じるという技術的利点がもたらされる。
【0091】
特定の実施形態の前述の記載により、他者が、(本明細書に引用した参照物の含有量を含めた)当業者内の知識を適用することによって、このような特定の実施形態の様々な適用について、不必要な実験なしに、本開示の一般的概念から逸脱することなく、すぐに改変することができる且つ/又は適合させることができるという本発明の一般的性質を、きわめて完全に明らかになる。したがって、そのような適合及び改変は、本明細書で提示している教示及び指針に基づいて、開示している実施形態の意味及び当量の範囲内にあると意図される。本明細書における言葉の使用法又は用語法が、説明の目的のためであり、限定する目的ではないため、本明細書の用語法又は言葉の使用法は、当業者によって、本明細書に提示されている教示及び指針に照らして、当業者の知識と組み合わせて解釈されることになることが理解される。
【符号の説明】
【0092】
10 脱アルキル化反応器
20 スプリッターユニット
30 芳香族類回収複合施設(ARC)
100 重質改質油供給物
105 水素供給物
110 脱アルキル化流出物
120 軽質ガス流
122 液体反応流出物
124 BTX流
図1
【国際調査報告】