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特表2023-553459BPA及びBPSを含まないバイオベースのスルホンコポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】BPA及びBPSを含まないバイオベースのスルホンコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/40 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
C08G65/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535743
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2021085287
(87)【国際公開番号】W WO2022128815
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/127,170
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21160654.6
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バトナーガル, アトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ゴータム, ケーシャブ エス.
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA24
4J005BA00
4J005BB01
4J005BB02
(57)【要約】
バイオベースのポリ(アリールエーテルスルホン)コポリマー(「コポリマーb-PAES」)は、2種の異なるジヒドロキシ/ジオールモノマー:生体適合性であり、且つバイオベースであるジオールモノマーと、ビスフェノールS(BPS)及びビスフェノールA(BPA)と異なるビスフェノールモノマーとに由来する少なくとも2つのスルホン繰り返し単位を含む。ジヒドロキシビスフェノールモノマーは、BPS及びBPAと異なる置換フェノールビスフェノール化合物を含み、好ましくは両方のアルキル置換フェノール基を有するビスフェノールF誘導体を含む。バイオベースのジオールモノマーは、イソソルビド、イソマンニド及び/又はイソイジドから選択される少なくとも1種のジオールを含む。コポリマーb-PAESは、好ましくは、BPA及びBPSを含まない。そのようなコポリマーb-PAESを製造するプロセス、物品を製造するためのその使用、それから製造される膜などの物品及びそのようなコポリマーb-PAESを含む膜の製造のためのポリマー溶液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオベースのスルホンコポリマーb-PAESであって、
c)式(I):
【化1】
(式中、
- 各Rは、独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;及び
- jは、ゼロ又は1~4の整数であり;
- 各Rは、各位置において独立して、H又は1~5個の炭素原子を有するアルキルから選択され、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル、より好ましくは各位置においてメチルであり、
- 各R は、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルから選択され、好ましくは各位置においてメチルであり、及び
- Rは、5~8個の炭素原子を有するシクロアルキル又は-CR-によって表され、R及びRの各々は、独立して、H、1~10個の炭素原子を有するアルキル、芳香族単核若しくは多核基又は5~8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択され、前記芳香族単核若しくは多核基又はシクロアルキルは、1~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルによって任意選択的に置換されており;Rは、好ましくは、-CH-、-C(CH-、
【化2】
から選択され;
は、より好ましくは、-CH-又は-C(CH-から選択される)
の繰り返し単位(R);並びに
b)以下に示される式(II):
【化3】
(式中、
- 各Rは、独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;及び
- iは、ゼロ又は1~4の整数であり、
好ましくは、式(II)のR及びiは、式(I)のR及びjと同じであり;及び
- Eの各々は、互いに及び各存在において等しいか又は異なり、式(E’-I)~(E’-III):
【化4】
のものからなる群から選択される)
の繰り返し単位(R
を含むバイオベースのスルホンコポリマーb-PAES。
【請求項2】
- コポリマーb-PAESの全ての前記繰り返し単位に対して少なくとも5モル%若しくは少なくとも10モル%の繰り返し単位(Rb)、及び/又は
- コポリマーb-PAESの全ての前記繰り返し単位に対して最大で80モル%、若しくは最大で70モル%、若しくは最大で60モル%、若しくは最大で50モル%、若しくは最大で40モル%、若しくは最大で30モル%の繰り返し単位(Rb)
を含む、請求項1に記載のバイオベースのスルホンコポリマーb-PAES。
【請求項3】
- コポリマーb-PAESの全ての前記繰り返し単位に対して少なくとも20モル%、若しくは少なくとも30モル%、若しくは少なくとも40モル%、若しくは少なくとも50モル%、若しくは少なくとも60モル%、若しくは少なくとも70モル%の繰り返し単位(Ra)、及び/又は
- コポリマーb-PAESの全ての前記繰り返し単位に対して最大で95モル%、若しくは最大で90モル%、若しくは最大で85モル%、若しくは最大で80モル%、若しくは最大で75モル%の繰り返し単位(Ra)
を含む、請求項1又は2に記載のバイオベースのスルホンコポリマーb-PAES。
【請求項4】
少なくとも5:95若しくは少なくとも10:90及び/又は最大で95:5、若しくは最大で90:10、若しくは最大で50:50、若しくは最大で30:70、若しくは最大で25:75の前記繰り返し単位(Rb)対前記繰り返し単位(Ra)のモル比を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオベースのスルホンコポリマーb-PAES。
【請求項5】
繰り返し単位(R)は、式(R-1)、(R-2)、(R-3):
【化5】
(式中、R及びiは、請求項1に定義されたものと同じ意味を有し、好ましくはi=0である)
及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される式のものである、請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオベースのスルホンコポリマーb-PAES。
【請求項6】
前記繰り返し単位(R)は、式(I*):
【化6】
(式中、各Rは、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはメチル基から選択される)
のものである、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイオベースのスルホンコポリマーb-PAES。
【請求項7】
- 少なくとも50kDa、若しくは少なくとも60kDa、若しくは少なくとも70kDa、及び/又は
- 最大で200kDa、若しくは最大で180kDa、若しくは最大で170kDa、若しくは最大で150kDa、若しくは最大で140kDa、若しくは最大で120kDa、若しくは最大で115kDa、若しくは最大で100kDa、若しくは最大で90kDa
の重量平均分子量(M)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のバイオベースのスルホンコポリマーb-PAES。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のバイオベースのスルホンコポリマーb-PAESを製造するプロセスであって、極性非プロトン性溶媒を含む反応混合物中において且つアルカリ金属炭酸塩の存在下において、
- 少なくとも、式(A):
【化7】
(式中、
各Rは、各位置において独立して、H又は1~5個の炭素原子を有するアルキルから選択され、各位置において好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル、より好ましくはメチルであり;
各R は、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルから選択され、各位置において好ましくはメチルであり、及び
は、5~8個の炭素原子を有するシクロアルキル又は-CR-によって表され、R及びRの各々は、独立して、H、1~10個の炭素原子を有するアルキル、芳香族単核若しくは多核基又は5~8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択され、前記芳香族単核若しくは多核基又はシクロアルキルは、1~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルによって任意選択的に置換されており;Rは、好ましくは、-CH-、-C(CH-、
【化8】
から選択され;
は、より好ましくは、-CH-又は-C(CH-から選択される)
のモノマーを含む少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシモノマー[以下ではジヒドロキシ(AA)];及び
- イソソルビド(1)、イソマンニド(2)及びイソイジド(3):
【化9】
からなる群から選択される少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール[以下ではジオール(BB)]、
- 式(C):
【化10】
(式中、
- Rの各々は、互いに等しいか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- jは、ゼロであるか、又は0~4の整数であり、好ましくはj=0であり;及び
- X及びX’は、互いに等しいか又は異なり、独立して、ハロゲン原子、好ましくはCl又はF、より好ましくはClである)
の少なくとも1種のジハロアリール化合物[以下ではジハロ(CC)]
を含有するモノマー混合物を反応させることを含み、コポリマーb-PAESを得るために、前記モノマー混合物中のヒドロキシル基の全体量とハロ基の全体量との間のモル比は、0.95~1.05、好ましくは0.98~1.02、より好ましくは0.99~1.01、最も好ましくは1.0である、プロセス。
【請求項9】
極性非プロトン性溶媒は、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMSO2)、ジフェニルスルホン、ジエチルスルホキシド、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド(一般にテトラメチレンスルホン又はスルホランと呼ばれる)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-ブチルピロリジノン(NBP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロチオフェン-1-モノオキシド及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホン(DMSO2)、N-ブチルピロリジノン(NBP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ジメチルホルムアミド(DMF)及び/又はスルホランからなる群から選択される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記反応は、
- 少なくとも10重量%、若しくは少なくとも20重量%、若しくは少なくとも25重量%のポリマー、及び/又は
- 最大で60重量%、若しくは最大で50重量%、若しくは最大で40重量%のポリマー
の、前記反応混合物の総重量に対する総重量%ポリマー濃度[以下では総重量%ポリマー]を得るように行われる、請求項8又は9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記アルカリ金属炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム及び炭酸セシウム、好ましくは炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群から選択される、請求項8~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
使用される前記アルカリ金属炭酸塩の量は、ヒドロキシル基(OH)1当量あたりのアルカリ金属(M)の当量の比[eq.(M)/eq.(OH)]によって表される場合、
- 少なくとも1、若しくは少なくとも1.05、若しくは少なくとも1.1、若しくは少なくとも1.15、若しくは少なくとも1.2、若しくは少なくとも1.25、若しくは少なくとも1.3;及び/又は
- 最大で4、若しくは最大で3.5、若しくは最大で3、若しくは最大で2.5、若しくは最大で2
である、請求項8~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
膜、コーティング、フィルム及びシート並びに三次元成形部品の製造のための、請求項1~7のいずれか一項に記載のコポリマーb-PAES又は請求項8~12のいずれか一項に記載のプロセスによって製造されたコポリマーb-PAESの使用。
【請求項14】
膜を調製するためのポリマー溶液(SP)であって、極性有機溶媒中において、請求項1~7のいずれか一項に記載のコポリマーb-PAES又は請求項8~12のいずれか一項に記載のプロセスによって製造されたコポリマーb-PAESを含むポリマー溶液(SP)。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか一項に記載のコポリマーb-PAES又は請求項8~12のいずれか一項に記載のプロセスによって製造されたコポリマーb-PAESから製造された成形物品であって、膜、溶融加工されたフィルム、溶液加工されたフィルム、溶融加工されたモノフィラメント及び繊維、溶液加工されたモノフィラメント、中空繊維及び中実繊維、コーティング、印刷物体並びに射出成形及び圧縮成形物体からなる群から選択され、好ましくは、膜は、バイオプロセス及び医療濾過のための膜(血液透析膜など)、食品及び飲料加工のための膜、浄水のための膜、廃水処理のための膜並びに水性媒体を伴う工業プロセス分離のための膜から選択される、成形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月18日出願の米国仮特許出願第63/127170号及び2021年3月4日出願の欧州特許出願公開第21160654.6号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、少なくとも1つの置換フェノール基を有するビスフェノール化合物と、少なくとも1種のバイオベースのジオールモノマーと、ジハロモノマーとに由来するバイオベースのポリアリーレンエーテルスルホンコポリマーb-PAES、そのようなコポリマーを製造するプロセス、そのようなコポリマーを含有するポリマー溶液、そのようなコポリマーを含むか又はそれから製造された物品及び物品の製造のためのその使用に関する。コポリマーb-PAES及びそれを含むか又はそれから製造された物品は、特に、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(BPS)及び4,4’-イソプロピリデンジフェノール(BPA)を含まない。
【背景技術】
【0003】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーは、高いガラス転移温度、良好な機械的強度及び剛性並びに優れた耐熱性及び耐酸化性を特徴とする熱可塑性ポリマーの分類である。それらは、極めて優れた加水分解安定性と共に、優れた機械的及び熱的特性を備えていることから、これらのポリマーは、その機械的、熱的及び他の望ましい特徴のため、例えば医療市場を含む幅広い用途向けのコーティング、膜など、幅広い多様な商業用途向けの製品の製造のために一層使用されている。PAESは、少なくとも1つのスルホン基(-SO-)と、少なくとも1つのエーテル基(-O-)と、少なくとも1つのアリーレン基とを含むポリマーを表すために使用される総称である。
【0004】
商業的に重要なPAESの群には、本明細書でポリスルホン、略してPSUとして特定されるポリスルホンポリマーが含まれる。PSUポリマーは、ジヒドロキシモノマーであるビスフェノールA(BPA)と、ジハロゲンモノマー、例えば4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)との縮合に由来する繰り返し単位を含有する。そのようなPSUポリマーは、Solvay Specialty Polymers USA LLCからUDEL(登録商標)の商標で市販されている。そのようなPSUポリマーの繰り返し単位の構造は、以下に示される。
【化1】
【0005】
PSUポリマーは、ガラス転移温度が高く(例えば、約185℃)、高い強度及び靱性を示す。
【0006】
PAESの別の重要な群には、ポリエーテルスルホンポリマー、略してPESが含まれる。PESポリマーは、ジヒドロキシモノマーであるビスフェノールS(BPS)と、ジハロゲンモノマー、例えば4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)との縮合に由来する。そのようなPESポリマーは、Solvay Specialty Polymers USA LLCからVERADEL(登録商標)の商標で市販されている。そのようなPESポリマーの繰り返し単位の構造は、以下に示される。
【化2】
【0007】
それぞれBPA及びBPSに基づくPSU及びPESポリマーは、例えば、血液などの生体液と接触して使用される膜を調製するために頻繁に使用されている。
【0008】
BPA及びBPSは、1960年代以降、プラスチックボトル並びに食品及び飲料の缶などの多くの物品中に存在する工業用化学物質である。近年、BPA及びBPSの安全性について懸念が高まっている。BPS及びBPAは、結論付ける研究はないものの、本質的に内分泌攪乱作用を有すると疑われており、環境及び人体の健康への影響は、依然として調査中である。この論争を考慮して、市場では、BPA及びBPSに代わる経済的に実行可能な代替物質が求められている。
【0009】
エストロゲン受容体に対する結合親和性が弱いモノマーから製造される新規なポリマー系材料の開発におけるこれまでの取り組みは、例えば、米国特許出願公開第2014/0113093号明細書(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS USA,LLC)及びSundellらの研究(Sundell et al.(2014)Polymer,vol.55(22),pp.5623-5634)に見出され得る。
【0010】
食品及び医薬品と接触するポリマー系材料は、例えば、FDA、欧州食品安全庁及び環境保護庁(EPA)などによって義務付けられた一定の要件を満たさなければならないため、水、食品、医薬品及び/又は血液との接触を必要とする用途のために、人体及び環境の両方に安全なポリマー系材料の開発を継続することが重要である。
【0011】
バイオベースの原料から得られる再生可能なポリマーの開発も特に注目される。これは、化学産業における石油消費量の削減及び農業への新たな高付加価値市場の開拓を目指す取り組みの一環であり、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、バイオベースの原料として使用されるそのような化学物質の例である。
【0012】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、特にイソソルビドの製造への関心は、例えば、特にポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン及びポリアミドなどのポリマーの合成を含む潜在的な工業用途によってもたらされている。ポリマー、より具体的には重縮合物における1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、それらが剛直な分子であり、キラルであり、毒性がないという複数の特徴から、その使用を動機付けることができる。これらの理由から、高いガラス転移温度及び/又は特殊な光学特性を備えるポリマーを合成できることへの期待がある。
【0013】
そのようなモノマーの工業生産は、急速にこの供給原料を一層魅力的な価格で入手可能にしている、発展途上の分野である。更に、再生可能資源に由来する化学物質への関心が増しており、極めて重要な論点になりつつある。バイオプラスチックに含まれる炭素は、化石化バイオマスに由来するのではなく、植物バイオマスに吸収された大気中COに由来するため、これらのプラスチックは、気候変動の影響を軽減するはずである。
【0014】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、その二環式の拘束された形状及び酸素を含む環のため、ポリアリールエーテルスルホン構造に組み込まれると有利な特徴をもたらすことができる。これらの分子の無害な特性は、包装又は医療デバイス(例えば、血液透析膜)における用途の可能性も開く。
【0015】
キラリティーに応じて、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール糖ジオールには、3種の異性体、すなわち下記のイソソルビド(1)、イソマンニド(2)及びイソイジド(3):
【化3】
が存在する。
【0016】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、ほぼ平面であり、且つ環間が120°の角度であるV字形をした2つのcis-縮合テトラヒドロフラン環からなる。ヒドロキシル基は、スキーム1に示されるように、2位及び5位の炭素に位置し、且つV字形の分子の内側又は外側のいずれかに位置する。これらは、それぞれエンド又はエキソと呼ばれる。これらの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの製造の概要は、米国特許出願公開第2015/0011446A1号明細書(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY,SpA)に見出され得る。
【0017】
Kricheldorfらは、1995年に初めてシリル化イソソルビド及びジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)由来のイソソルビドを含有するポリ(エーテルスルホン)の調製及び特性評価について報告した(H.Kricheldorf,M.Al Masri,J.Polymer Sci.,Pt A:Polymer Chemistry,1995,33,2667-2671)。シリル化工程は、かなりコストを増加させることになるため、Kricheldorf and Chatti(High Performance Polymers,2009,21,105-118)は、その重合条件を修正し、イソソルビドを含有するポリ(エーテルスルホン)を純イソソルビド及びDFDPSから製造できると報告した。得られた最高見かけ分子量ポリマーは、0.65dL/gの固有粘度(IV)を有していたが、前記IVは、20℃でCHCl/トリフルオロ酢酸溶液(9/1v/v)、0.20dL/gの条件により測定された。このポリマーのガラス転移温度は、245℃であると報告された。反応性の低いジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)を用いてイソソルビドとの重合反応を行った実施例は、記載されていなかった。
【0018】
より最近の開発により、より単純であり且つより効率的な合成方法により、イソソルビド基を含む利用可能ないくつかのポリエーテルスルホンが製造されており、その結果、工業レベルにスケールアップ可能な手法により、より高分子量の材料がもたらされている。結果として、国際公開第2014/072473号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS USA,LLC)は、分子量が増加したポリマーを得ることが可能である、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール及び特定のジハロアリール化合物からのポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーの改善された製造方法を提供している。このパンフレットで説明されているポリスルホンイソソルビド材料は、特に膜の製造のために有用であると教示されているものの、膜の(より詳細には中空繊維膜の)実際の製造の具体例は、示されていない。
【0019】
生物由来の持続可能なイソソルビドを用いて製造されたポリスルホンイソソルビドも内分泌系に安全なポリマーとみなされているものの、その製造では、高分子量ポリマーを得るために(DCDPSではなく)DFDPSを使用する必要がある。しかしながら、DFDPSモノマーは、DCDPSよりもはるかに高価であり、その使用には、高価な金属(例えば、Hastalloy(登録商標)合金)での製造プラントが必要とされる。
【0020】
したがって、本発明は、プロセスの経済性、生物由来のモノマーの使用及び内分泌攪乱の可能性の影響を軽減するビスフェノールモノマーの使用に関連するいくつかの課題;
- よりコスト効率の高いハロゲン系スルホンモノマー(DCDPSなど)を使用することにより、イソソルビド、イソイジド及び/又はイソマンニドを含むポリ(エーテルスルホン)を製造する際の経済的制約を軽減しながら、ポリ(エーテルスルホン)についての適切な分子量(例えば、>55kDa)を実現すること;及び
- 膜市場においてなど、食品、医薬品、血液及び/又は水と接触する用途で使用するために、典型的にはビスフェノールA(BPA)又はビスフェノールS(BPS)から製造されている既存のポリ(エーテルスルホン)材料の内分泌攪乱の可能性を低減又は排除すること
に対処することを目的とする。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、好ましくは、BPA及びBPSを含まない、バイオベースのポリ(アリールエーテルスルホン)コポリマー(「コポリマーb-PAES」)に関する。換言すると、コポリマーb-PAESは、好ましくは、BPS及びBPAと異なるジヒドロキシモノマー由来のスルホン繰り返し単位を含む。
【0022】
このコポリマーb-PAESは、好ましくは、BPA又はBPSから製造されたPAESポリマー/コポリマーと比較して、内分泌攪乱の可能性が全くないか又は低減されている必要がある。
【0023】
そのようなコポリマーb-PAESは、高い分子量(M)を有し、優れた熱安定性、良好な親水性、高い剛性及び強度、良好な靱性並びに魅力的な衝撃特性を有することを特徴とし、これにより、膜、コーティング、付加製造及び3D印刷などの用途のために、BPA又はBPSから製造される現在市販されているPAESグレードと同等の又は向上した性能を提供することができる。良好な親水性は、濾過用途、例えば水性媒体の濾過に必要な過圧を低減するために特に有利である。
【0024】
このコポリマーb-PAESは、2種の異なるジヒドロキシモノマー:生体適合性であり、且つバイオベースであるジオールモノマーと、BPS及びBPAと異なるビスフェノールモノマーとに由来する少なくとも2つのスルホン繰り返し単位を含む。ビスフェノールモノマーは、少なくとも1つのアルキル置換フェノール基を有するビスフェノール化合物を含み、前記ビスフェノール化合物は、BPS及びBPAと異なる。ビスフェノールモノマーは、好ましくは、両方のアルキル置換フェノール基を有するビスフェノールF誘導体を含み、ビスフェノールF(BPF)は、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタンである。ビスフェノールモノマーからは、より好ましくは、BPF、BPA及び/又はBPSが除外される。いくつかの代替又は追加の実施形態では、ビスフェノールモノマーからは、4,4’-ビフェノールが除外される。
【0025】
少なくとも2種の異なるスルホン繰り返し単位が存在する場合、そのようなコポリマーb-PAESの親水性は、これらの異なるスルホン繰り返し単位の相対的な量を変えることによって調整することができる。例えば、コポリマーb-PAESの親水性を高めることが望まれる場合、バイオベースのジオールモノマー由来のスルホン繰り返し単位の量を、BPS及びBPAと異なるジヒドロキシビスフェノールモノマー由来の他のスルホン繰り返し単位に対して増加させることができる。
【0026】
本発明の第1の態様は、スルホンコポリマーb-PAESであって、
a)式(I):
【化4】
(式中、
- 各Rは、独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;及び
- jは、ゼロ又は1~4の整数であり;
- 各Rは、各位置において独立して、H又は1~5個の炭素原子を有するアルキルから選択され、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル、より好ましくは各位置においてメチルであり、
- 各R は、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルから選択され、好ましくは各位置においてメチルであり;及び
- Rは、5~8個の炭素原子を有するシクロアルキル又は-CR-によって表され、R及びRの各々は、独立して、H、1~10個の炭素原子を有するアルキル、芳香族単核若しくは多核基又は5~8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択され、前記芳香族単核若しくは多核基又はシクロアルキルは、1~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルによって任意選択的に置換されており;Rは、好ましくは、-CH-、-C(CH-、
【化5】
から選択され;
は、より好ましくは、-CH-又は-C(CH-から選択される)
の繰り返し単位(R);並びに
b)以下に示される(II):
【化6】
(式中、
- 各Rは、独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;及び
- iは、ゼロ又は1~4の整数であり、
好ましくは、式(II)のR及びiは、式(I)のR及びjと同じであり;及び
- Eの各々は、互いに及び各存在において等しいか又は異なり、式(E’-I)~(E’-III):
【化7】
のものからなる群から選択される)
の繰り返し単位(R
を含むスルホンコポリマーb-PAESに関する。
【0027】
本発明の第2の態様は、コポリマーb-PAESを製造するプロセスに関する。
【0028】
プロセスは、極性非プロトン性溶媒を含む反応混合物中において且つアルカリ金属炭酸塩の存在下において、少なくとも3種の異なるモノマーを含むモノマー混合物を反応させることを含む。
【0029】
コポリマーb-PAESは、好ましくは、少なくとも3種の異なるモノマーの縮合から誘導される。
【0030】
モノマー混合物は、
- 少なくとも、式(A):
【化8】
(式中、
各Rは、各位置において独立して、H又は1~5個の炭素原子を有するアルキルから選択され、各位置において好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル、より好ましくはメチルであり;
各R は、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルから選択され、各位置において好ましくはメチルであり;及び
は、5~8個の炭素原子を有するシクロアルキル又は-CR-によって表され、R及びRの各々は、独立して、H、1~10個の炭素原子を有するアルキル、芳香族単核若しくは多核基又は5~8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択され、前記芳香族単核若しくは多核基又はシクロアルキルは、1~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルによって任意選択的に置換されており;Rは、好ましくは、-CH-、-C(CH-、
【化9】
から選択され;
は、より好ましくは、-CH-又は-C(CH-から選択される)
のモノマーを含む少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシモノマー[以下ではジヒドロキシ(AA)];
- イソソルビド(1)、イソマンニド(2)及びイソイジド(3)からなる群から選択される少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール[以下ではジオール(BB)]、及び
- 式(C):
【化10】
(式中、
- Rの各々は、互いに等しいか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- jは、ゼロであるか、又は0~4の整数であり、好ましくはj=0であり;及び
- X及びX’は、互いに等しいか又は異なり、独立して、ハロゲン原子、好ましくはCl又はF、より好ましくはClである)
の少なくとも1種のジハロアリール化合物[以下ではジハロ(CC)]
を含む。
【0031】
コポリマーb-PAESを得るために、モノマー混合物中のヒドロキシル基の全体量とハロ基の全体量との間のモル比は、0.95~1.05、好ましくは0.98~1.02、より好ましくは0.99~1.01、最も好ましくは1.0である。
【0032】
本発明の第3の態様は、膜、コーティング、フィルム、繊維及びシート並びに三次元射出、又は成形、又は印刷部品などの物品の製造のための、コポリマーb-PAESの使用に関する。
【0033】
本発明の第4の態様は、本明細書に記載のコポリマーb-PAESから製造されるか又はそれを含む成形物品に関し、前記成形物品は、膜、溶融加工されたフィルム、溶液加工されたフィルム、溶融加工されたモノフィラメント及び繊維、溶液加工されたモノフィラメント、中空繊維及び中実繊維、印刷物体、コーティング並びに射出成形及び圧縮成形物体からなる群から選択され、好ましくは、膜は、バイオプロセス及び医療濾過のための膜(血液透析膜など)、食品及び飲料加工のための膜、浄水のための膜、廃水処理のための膜並びに水性媒体を伴う工業プロセス分離のための膜から選択される。
【0034】
本発明の更なる態様は、膜を調製するためのポリマー溶液であって、極性有機溶媒中にコポリマーb-PAESを含むポリマー溶液である。
【0035】
本発明の様々な態様、利点及び特徴は、詳細な説明及び実施例を参照することにより、より容易に理解及び認識されるであろう。
【0036】
定義
本明細書において、いくつかの用語は、以下の意味を有することが意図される。
【0037】
本明細書において使用される用語「ポリマーの総重量%」は、反応終了時点のモノマー混合物中に最初に存在するモノマーに基づいて得られるポリマーの重量として定義される。
【0038】
用語「溶媒」は、その通常の意味で本明細書において使用される。すなわち、それは、別の物質(溶質)を溶解させて分子レベルで一様に分散された混合物を形成することが可能な物質を示す。高分子溶質の場合、得られる混合物が透明であり、且つ系中で相分離が見られない場合の溶媒中のポリマーの溶液を意味することが一般的である。相分離は、ポリマー凝集体の形成が原因で溶液が濁るか又は曇るようになる、多くの場合に「曇点」と言われる点であると解釈される。
【0039】
本明細書で使用される頭字語「BPA」は、ビスフェノールA又は4,4’-イソプロピリデンジフェノールを意味し、頭字語「BPS」は、ビスフェノールS又は4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンを意味し、頭字語「BPF」は、ビスフェノールF又は4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタンを意味する。
【0040】
本明細書において、別段の明記がない限り、物質(反応混合物、モノマー混合物、ポリマーなど)中の成分を「実質的に含まない」とは、その成分の濃度が、そのような物質の総重量を基準として1重量%以下又は0.5重量%以下であることを意味する。
【0041】
本明細書において、別段の明記がない限り、物質(反応混合物、モノマー混合物、ポリマーなど)中の成分を「含まない」とは、その成分の濃度が、そのような物質の総重量を基準として0.1重量%以下又は0.05重量%以下であることを意味する。
【0042】
本発明の目的のために、繰り返し単位の列挙されている量と組み合わされた「実質的に全て」という表現は、本明細書では、少量、通常、1モル%未満、好ましくは0.5モル%未満の他の繰り返し単位が許容され得ること、例えば使用されるモノマーの純度が低いことの結果として許容され得ることを意味することが意図される。
【0043】
本発明の目的のために、モノマー混合物中のジヒドロキシ(AA)/ジオール(BB)モノマー及びジハロ(CC)モノマーの全体量に関して使用される「実質的に等モル量」という表現は、モノマー混合物中のジヒドロキシ(AA)/ジオール(BB)モノマーのヒドロキシル基の全体量と、モノマー混合物中のジハロ(CC)モノマーのハロゲン基の全体量との間のモル比が0.95~1.05、好ましくは0.98~1.02、より好ましくは0.99~1.01、最も好ましくは1.0であることであると理解されるべきである。重量平均分子量(M)は、ASTM D5296を使用して、移動相として塩化メチレンを使用して行われる、ポリスチレン標準で校正されたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(別名サイズ排除クロマトグラフィー)によって見積もることができる。分子量(M)は、以下の通りに定義される。
【数1】
式中、総和は、1~∞の全ての鎖長にわたり、Nは、重量がMである分子の数である。
【0044】
本明細書において、要素の群からの1つの要素の選択は、
- その群からの2つの要素の選択又は数個の要素の選択、
- 1つ以上の要素が除かれている要素の群からなる要素の部分群からの1つの要素の選択
も明示的に記述する。
【0045】
以降の本明細書の文章において、任意の説明は、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、それらと交換可能である。そのように定義された各実施形態は、別段の指示がない限り又は明らかに適合性がない場合を除き、別の実施形態と組み合わせることができる。加えて、本明細書に記載の組成物、製品又は物品、プロセス又は使用の要素及び/又は特徴は、明示的又は暗示的に、あらゆる可能な方法で組成物、製品又は物品、プロセス又は使用の他の要素及び/又は特徴と組み合わせ得ることが理解されるべきであり、これは、本明細書の範囲から逸脱することなく行われる。
【0046】
本出願において、ある要素又は構成要素が、列挙された要素又は構成要素のリスト中に含まれ、且つ/又はリストから選択されると記されている場合、本明細書で明示的に企画される関連実施形態において、その要素又は構成要素は、同様に、個別の列挙された要素若しくは構成要素のいずれか1つであり得るか、又は明示的に列挙された要素若しくは構成要素のいずれか2つ以上からなる群からも選択できることが理解されるべきである。要素又は構成要素のリストに列挙されたいかなる要素又は構成要素もそのようなリストから省かれ得る。更に、本明細書中に記載されるプロセス又は方法の要素、実施形態及び/又は特徴は、本明細書において明示的であるか又は暗示的であるかに関わらず、本教示の範囲及び開示から逸脱することなく様々な方法で組み合わされ得ることが理解されるべきである。
【0047】
本明細書では、下限若しくは上限又は下限及び上限によって定義される変数の値の範囲の記述は、変数が、それぞれ下限を除いた若しくは上限を除いた又は下限及び上限を除いた値の範囲内で選択される実施形態も含む。端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含む。
【0048】
用語「含んでいる」(又は「含む」)は、「から本質的になっている」(又は「から本質的になる)」及びまた「からなっている」(又は「からなる」を包含する。
【0049】
本明細書での単数形「ある」又は「1つ」の使用は、特に明記しない限り、複数形を含む。
【0050】
本明細書に引用される全ての特許出願及び刊行物の開示は、それらが本明細書に記載されるものを補完する例示的な手続上の又は他の詳細を提供する範囲で参照により本明細書によって援用される。参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明者らは、内分泌攪乱の可能性が低いか又は全くない特定の芳香族ジヒドロキシモノマーと、バイオベースの化合物由来の特定のジオールとを使用して、適切な一連の特性(特に分子量)を有するコポリマーb-PAESを問題なく調製できることを見出した。
【0052】
そのようなモノマーが組み込まれたコポリマーb-PAES及びそれを含むか又はそれから製造された物品(水又は生体液の浄化に使用される膜など)は、BPS又はBPAから製造されたPAESポリマーと比較して、低い又は低下したエストロゲン活性を示すはずであり、そのため人体の健康に対して低いリスクを示すはずである。
【0053】
これらのバイオベースのコポリマーb-PAESは、より安価なジハロモノマー(好ましくはDCDPS)を使用して効率的に製造することができるため、よりコスト効率の高い製造を提供することもできる。これは、構成材料(例えばHasteloy(登録商標)合金)の観点から製造工場のスケールアップを困難にさせていただけでなく、操業コストの高さのためそのような製造プラントの経済性も不利にしていた、高価でより腐食性の高いジハロモノマー:DFDPSの使用を必要とするバイオベース化合物由来のジオールから製造されていたこれまでのPAESポリマーに比べて改善された点である。
【0054】
スルホンコポリマーb-PAES
好ましい実施形態によるスルホンコポリマーb-PAESは、混合物として存在する繰り返し単位(R)及び(R)を含むか又はそれらから本質的になる。
【0055】
スルホンコポリマーb-PAESは、
- コポリマーb-PAESの全ての繰り返し単位に対して少なくとも20モル%、若しくは少なくとも30モル%、若しくは少なくとも40モル%、若しくは少なくとも50モル%、若しくは少なくとも60モル%、若しくは少なくとも70モル%の繰り返し単位(R)、及び/又は
- コポリマーb-PAESの全ての繰り返し単位に対して最大で95モル%、若しくは最大で90モル%、若しくは最大で85モル%、若しくは最大で80モル%、若しくは最大で75モル%の繰り返し単位(R
を含み得る。
【0056】
スルホンコポリマーb-PAESは、
- コポリマーb-PAESの全ての繰り返し単位に対して少なくとも5モル%若しくは少なくとも10モル%の繰り返し単位(R)、及び/又は
- コポリマーb-PAESの全ての繰り返し単位に対して最大で80モル%、若しくは最大で70モル%、若しくは最大で60モル%、若しくは最大で50モル%、若しくは最大で40モル%、若しくは最大で30モル%の繰り返し単位(R
を含み得る。
【0057】
スルホンコポリマーb-PAESは、少なくとも5:95、若しくは少なくとも10:90及び/又は最大で95:5、若しくは最大で90:10、若しくは最大で50:50、若しくは最大で30:70、若しくは最大で25:75の繰り返し単位(R)対繰り返し単位(R)のモル比を含み得る。
【0058】
好ましい実施形態では、コポリマーb-PAESは、コポリマーb-PAESの全ての繰り返し単位に対して50モル%超、好ましくは60モル%超、より好ましくは75モル%超、更に好ましくは80モル%超、更に好ましくは90%超又は95モル%超、最も好ましくは98%超又は99モル%超の量の、繰り返し単位(R)及び(R)を含む。
【0059】
より好ましい実施形態では、コポリマーb-PAES中の実質的に全ての繰り返し単位が繰り返し単位(R)及び(R)である。
【0060】
コポリマーb-PAESは、好ましくは、BPAを含まず、且つBPSを含まない。
【0061】
より好ましい実施形態では、コポリマーb-PAESは、好ましくは、任意選択的な単位(R)に関して後に定義する式(j)、(jj)、(jjj)及び(jv)の繰り返し単位から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含まない。
【0062】
追加の又は代替の実施形態では、コポリマーb-PAESはBPFを含まない。
【0063】
このコポリマーb-PAESは、BPA又はBPS又はBPFから製造されたPAESポリマー/コポリマーと比較して、内分泌攪乱の可能性が全くないか又は低減されているはずである。
【0064】
少なくとも2種の異なるスルホン繰り返し単位(R)及び(R)が存在する場合、そのようなコポリマーb-PAESの親水性は、コポリマーb-PAES中の繰り返し単位(R)及び(R)の相対的な量を変えることによって調整することができる。例えば、コポリマーb-PAESの親水性を増加させることが望まれる場合、バイオベースのジオールモノマー由来のスルホン繰り返し単位(R)の量を、BPS及びBPAと異なるジヒドロキシビスフェノールモノマー由来の他のスルホン繰り返し単位(R)に対して増加させることができる。
【0065】
繰り返し単位R
コポリマーb-PAES中の繰り返し単位(R)は、式(I)のものであり、式(I)において、
- 各Rは、独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;及び
- jは、ゼロ又は1~4の整数であり;
- 各Rは、各位置において独立して、H又は1~5個の炭素原子を有するアルキルから選択され、各位置において好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル、より好ましくはメチルであり、
- 各R は、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルから選択され、各位置において好ましくはメチルであり、及び
- Rは、5~8個の炭素原子を有するシクロアルキル又は-CR-によって表され、R及びRの各々は、独立して、H、1~10個の炭素原子を有するアルキル、芳香族単核若しくは多核基又は5~8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択され、前記芳香族単核若しくは多核基又はシクロアルキルは、1~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルによって任意選択的に置換されており;Rは、好ましくは、-CH-、-C(CH-、
【化11】
から選択され;
は、より好ましくは、-CH-又は-C(CH-から選択される。
【0066】
好ましい実施形態では、繰り返し単位(R)は、式(I*)のものである。
【化12】
式中、各Rは、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはメチル基から選択される。
【0067】
繰り返し単位R
コポリマーb-PAES中の繰り返し単位(R)は、式(II)のものであり、式(II)において、
- 各Rは、独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;及び
- iは、ゼロ又は1~4の整数であり、
- Eの各々は、互いに及び各存在において等しいか又は異なり、式(E’-I)~(E’-III):
【化13】
のものからなる群から選択される。
【0068】
好ましくは、R及びiは、式(I)のR及びjと同じである。
【0069】
好ましい実施形態では、繰り返し単位(R)は、式(R-1)、(R-2)、(R-3):
【化14】
(式中、R及びiは、式(II)に関して上で定義したものと同じ意味を有する)
及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの式を有する。
【0070】
好ましくは、式(R-1)、(R-2)、(R-3)におけるR及びiは、式(I)におけるR及びjと同じである。
【0071】
好ましくは、式(R-1)、(R-2)及び(R-3)において、iは0である。
【0072】
任意選択的な繰り返し単位R
コポリマーb-PAESは、上で詳述した繰り返し単位(R)及び(R)に加えて、Ar-SO-Ar’基(Ar及びAr’は、互いに等しいか又は異なり、芳香族基である)を含む任意選択的な繰り返し単位(R)を含み得、前記繰り返し単位(R)は、通常、式(S1):
-Ar-(T-Ar-O-Ar-SO-[Ar-(T’-Ar-SO-Ar10-O- (S1)
(式中、
- Ar、Ar、Ar、Ar及びArは、互いに及び各存在において等しいか又は異なり、独立して、芳香族の単核基又は多核基であり;
- T及びT’は、互いに及び各存在において等しいか又は異なり、独立して、結合又は任意選択的に1個以上のヘテロ原子を含む二価基であり;好ましくは、T及びT’は、結合、-CH-、-C(O)-、-C(CH-、-C(CF-、-C(=CCl)-、-C(CH)(CHCHCOOH)-、-SO-及び式:
【化15】
の基からなる群から選択され、最も好ましくは、Tは、結合、-SO-又は-C(CH-であり、T’は、結合であり;
- n及びmは、互いに等しいか又は異なり、独立してゼロ又は1~5の整数である)
に従う。
【0073】
任意選択的な繰り返し単位(R)は、特に、式(S-A)~式(S-D):
【化16】
(式中、
- 各R’は、互いに等しいか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- j’は、ゼロ又は0~4の整数であり;
- T及びT’は、互いに等しいか又は異なり、結合又は1個以上のヘテロ原子を任意選択的に含む二価基であり;好ましくはT及びT’は、結合、-CH-、-C(O)-、-C(CH-、-C(CF-、-C(=CCl)-、-C(CH)(CHCHCOOH)-、-SO-及び式:
【化17】
の基からなる群から選択され、最も好ましくは、T’は、結合、-SO-又は-C(CH-であり、Tは、結合である)
のものからなる群から選択することができる。
【0074】
任意選択的な繰り返し単位(R)において、それぞれのフェニレン部位は、独立して、この繰り返し単位中において、Rと異なる他の部位に対して1,2-、1,4-又は1,3-結合を有し得る。好ましくは、前記フェニレン部分は、1,3-又は1,4-結合を有し、より好ましくは、それらは、1,4-結合を有する。更に、繰り返し単位(R)において、j’は、各存在でゼロである。すなわち、フェニレン部位は、コポリマー主鎖中での結合を可能にするもの以外の置換基を有しない。
【0075】
式(S-D)の繰り返し単位(R)は、好ましくは、下記の繰り返し単位:
【化18】
及びそれらの混合からなる群から選択される。
【0076】
上で詳述した式(S-C)に従う任意選択的な繰り返し単位(R)は、好ましくは、以下の式(j)、(jj)、(jjj)及び(jv):
【化19】
の単位及びそれらの混合からなる群から選択される。
【0077】
単位(R)及び(R)と異なる繰り返し単位がコポリマーb-PAES中に存在する場合、任意選択的な繰り返し単位は、通常、上述及び後述の繰り返し単位(R)から選択され、その結果、コポリマーb-PAESは、本質的に、上で詳述した繰り返し単位(R)及び(R)と、任意選択的な繰り返し単位(R)とからなる。
【0078】
少なくとも1種の任意選択的な繰り返し単位(R)がスルホンコポリマーb-PAES中に存在する場合、スルホンコポリマーb-PAESは、
- コポリマーb-PAESの全ての繰り返し単位に対して30モル%未満、又は20モル%以下、又は10モル%以下、又は0.1モル%~10モル%、又は0.1モル%~5モル%、又は0.1モル%~2モル%、又は0.1モル%~1モル%の繰り返し単位(R
を含み得る。これは、任意選択的な繰り返し単位(R)が、式(j)、(jj)、(jjj)及び(jv)の単位から選択される少なくとも1種の単位である場合に特に当てはまる。末端鎖、欠陥並びに繰り返し単位(R)、(R)及び存在する場合には任意選択的な繰り返し単位(R)以外の少量の(コポリマーb-PAESの全ての繰り返し単位に対して<1モル%)繰り返し単位が存在する場合、それらの存在はコポリマーb-PAESの特性に実質的な影響を与えない。
【0079】
実質的に全ての繰り返し単位が繰り返し単位(R)及び(R)であるコポリマーb-PAESを使用すると良好な結果が得られることが通常理解される。
【0080】
コポリマーb-PAESは、通常、
- 少なくとも50kDa、若しくは少なくとも60kDa、若しくは少なくとも70kDa、及び/又は
- 最大で200kDa、若しくは最大で180kDa、若しくは最大で170kDa、若しくは最大で150kDa、若しくは最大で140kDa、若しくは最大で120kDa、若しくは最大で115kDa、若しくは最大で100kDa、若しくは最大で90kDa
の重量平均分子量(M)を有する。
【0081】
重量平均分子量(M)は、ASTM D5296を使用して、移動相として塩化メチレンを使用して行われる、ポリスチレン標準で校正されたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって見積もることができる。
【0082】
好ましい実施形態では、バイオベースのスルホンコポリマーb-PAESは、
a)式(I*)の繰り返し単位(R)(式中、各Rは、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはメチル基から選択される)、及び
b)式(R-1)、(R-2)、(R-3)及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの式を有する繰り返し単位(R)(式(R-1)、(R-2)及び(R-3)において、iは、0である)
を含む。
【0083】
最も好ましい実施形態では、バイオベースのスルホンコポリマーb-PAESは、テトラメチルビスフェノールF(TMBPF)と、イソソルビドと、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)との重縮合から製造される。
【0084】
コポリマーb-PAESを製造するプロセス
本発明の第2の態様は、本明細書に記載のコポリマーb-PAESを製造するプロセスに関する。
【0085】
製造プロセスは、極性非プロトン性溶媒及びアルカリ金属炭酸塩含む反応混合物(R)中において、少なくとも3種の異なるモノマー:
- 少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシモノマー[以下ではジヒドロキシ(AA)モノマー]、
- 少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールモノマー[以下ではジオール(BB)モノマー)]、及び
- 少なくとも1種の芳香族ジハロスルホンモノマー[以下ではジハロ(CC)モノマー]
を含有するモノマー混合物を反応させることを含む。
【0086】
本開示に記載のコポリマーb-PAESは、少なくともこれらの3種の異なるモノマー(AA)、(BB)及び(CC)の縮合から得られる。
【0087】
本開示に記載のコポリマーb-PAESは、好ましくは、これらの3種の異なるモノマー(AA)、(BB)及び(CC)のみの縮合から得られる。
【0088】
好ましい実施形態では、コポリマーb-PAESを得るために、モノマー混合物中のヒドロキシル基の全体量とハロ基の全体量との間のモル比は、0.95~1.05、好ましくは0.98~1.02、より好ましくは0.99~1.01、最も好ましくは1.0である。
【0089】
縮合反応によれば、反応混合物(R)の成分(モノマー、極性非プロトン性溶媒、アルカリ金属炭酸塩)は、通常同時に反応する。反応は、好ましくは、一段階で行われる。これは、ジヒドロキシ(AA)及びジオール(BB)モノマーの脱プロトン化と、ジヒドロキシ(AA)+ジオール(BB)モノマーとジハロ(CC)モノマーとの間の縮合反応が、中間生成物を単離せずに単一の反応段階で行われることを意味する。
【0090】
好ましい実施形態では、反応混合物(R)は、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(BPS)を実質的に含まず、すなわち0.1重量%未満のBPSを含む。
【0091】
好ましい実施形態では、反応混合物(R)は、4,4’-イソプロピリデンジフェノール(BPA)を実質的に含まず、すなわち0.1重量%未満のBPAを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、反応混合物(R)は、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン又はビスフェノールF(BPF)を実質的に含まず、すなわち0.1重量%未満のBPFを含む。
【0093】
別の実施形態では、反応混合物(R)からビスフェノールA、S及びFが排除される。
【0094】
代替の実施形態では、反応混合物(R)が追加のジヒドロキシ(A’A’)モノマーとしてビスフェノールA、S、Fの少なくとも1種を含む場合、反応混合物(R)は、ジヒドロキシ(AA)モノマー+ジオール(BB)モノマー+そのような追加のジヒドロキシ(A’A’)モノマーの総モル数を基準として10モル%以下、又は0.1モル%%~10モル%、又は0.1モル%~5モル%、又は0.1モル%~2モル%、又は0.1モル%~1モル%のBPA、BPS又はBPFを含む。
【0095】
好ましい実施形態では、反応混合物(R)は、4,4’-ビフェノールを実質的に含まず、すなわち0.1重量%未満の4,4’-ビフェノールを含む。
【0096】
代替の実施形態では、反応混合物(R)が追加のジヒドロキシ(A’A’)モノマーとして4,4’-ビフェノールを含む場合、反応混合物(R)は、ジヒドロキシ(AA)モノマー+ジオール(BB)モノマー+そのような追加のジヒドロキシ(A’A’)モノマーの総モル数を基準として10モル%以下、又は0.1モル%%~10モル%、又は0.1モル%~5モル%、又は0.1モル%~2モル%、又は0.1モル%~1モル%のビフェノールを含む。
【0097】
芳香族ジヒドロキシ(AA)モノマー
芳香族ジヒドロキシ(AA)モノマーは、少なくとも1つのビスフェノール誘導体を含むことができ、好ましくは少なくとも1つの置換フェノール基、好ましくは両方の置換フェノール基を有するビスフェノール化合物を含む。好ましくは、このビスフェノール化合物中の2つのフェノール基のそれぞれは、少なくとも1つの位置が1~5個の炭素原子を有するアルキルで置換されており、好ましくは少なくとも1つの位置がメチル基で置換されている。より好ましくは、ビスフェノール化合物中の2つのフェノール基のそれぞれは、2つの位置が1~5個の炭素原子を有するアルキルで置換されており、好ましくは2つの位置がメチル基で置換されている。好ましくは、このビスフェノール化合物中の2つのフェノール基のそれぞれの少なくとも2つの位置(ただし3つ以下)は、無置換である。すなわち、置換フェノールビスフェノール化合物は、2つの各フェノール基上に2つ(好ましい)又は3つ(あまり好ましくない)の位置にHを有する。
【0098】
ジヒドロキシ(AA)モノマーは、好ましくは、少なくとも式(A)のモノマーを含み、式中、
- 各Rは、各位置において独立して、H又は1~5個の炭素原子を有するアルキルから選択され、各位置において好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル、より好ましくはメチルであり;
- 各R は、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルから選択され、各位置において好ましくはメチルであり、及び
- Rは、5~8個の炭素原子を有するシクロアルキル又は-CR-によって表され、R及びRの各々は、独立して、H、1~10個の炭素原子を有するアルキル、芳香族単核若しくは多核基又は5~8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択され、前記芳香族単核若しくは多核基又はシクロアルキルは、1~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルによって任意選択的に置換されており;Rは、好ましくは、-CH-、-C(CH-;
【化20】
から選択され;
は、より好ましくは、-CH-又は-C(CH-から選択される。
【0099】
ジヒドロキシ(AA)モノマーは、より好ましくは、少なくとも式(A*)のモノマー:
【化21】
(式中、各Rは、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルから選択され、各位置において好ましくはメチルである)
を含む。
【0100】
一実施形態によれば、芳香族ジヒドロキシ(AA)モノマーは、芳香族ジヒドロキシ(AA)モノマーの総モル数を基準として、式(A)又は(A*)のモノマーを少なくとも50モル%含む。例えば、芳香族ジヒドロキシ(AA)モノマーの少なくとも60モル%、又は少なくとも70モル%、又は少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%、又は少なくとも95モル%、又は少なくとも99モル%は、式(A)又は(A*)のモノマーを含む。
【0101】
好ましい実施形態によれば、芳香族ジヒドロキシ(AA)モノマーは、本質的に式(A)又は(A*)のモノマーからなる。
【0102】
最も好ましい実施形態によれば、芳香族ジヒドロキシ(AA)モノマーはテトラメチルビスフェノールF(TMBPF)である。
【0103】
バイオベースのジオール(BB)モノマー
バイオベースのジオール(BB)モノマーは、好ましくは、イソソルビド(1)、イソマンニド(2)及びイソイジド(3)からなる群から選択される少なくとも1種のジオールを含む。
【0104】
一実施形態によれば、ジオール(BB)モノマーは、イソソルビド(1)、イソマンニド(2)及びイソイジド(3)からなる群から選択される少なくとも1種のジオールを、ジオール(BB)モノマーの総モル数を基準として少なくとも50モル%含む。例えば、ジオール(BB)モノマーの少なくとも60モル%、又は少なくとも70モル%、又は少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%、又は少なくとも95モル%、又は少なくとも99モル%は、イソソルビド(1)、イソマンニド(2)及びイソイジド(3)からなる群から選択される少なくとも1種のジオールを含む。
【0105】
好ましい実施形態によれば、ジオール(BB)モノマーは、イソソルビド(1)、イソマンニド(2)及びイソイジド(3)からなる群から選択される少なくとも1種のジオールから本質的になる。
【0106】
より好ましい実施形態によれば、ジオール(BB)モノマーは、イソソルビド(1)と、任意選択的なイソマンニド(2)及び/又はイソイジド(3)とから本質的になる。
【0107】
最も好ましい実施形態によれば、ジオール(BB)モノマーはイソソルビド(1)である。
【0108】
ジハロ(CC)スルホンモノマー
芳香族ジハロ(CC)スルホンモノマーは、好ましくは、前述した式(C)のジハロを含み、式中、
- Rの各々は、互いに等しいか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- jは、ゼロであるか、又は0~4の整数であり、好ましくはj=0であり;及び
- X及びX’は、互いに等しいか又は異なり、独立して、ハロゲン原子、好ましくはCl又はF、より好ましくはClである。
【0109】
一実施形態によれば、芳香族ジハロ(CC)スルホンモノマーは、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)の少なくとも1種、好ましくはDCDPSを含む4,4-ジハロスルホンを少なくとも50モル%含む。例えば、芳香族ジハロ(CC)スルホンモノマーの少なくとも60モル%、又は少なくとも70モル%、又は少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%、又は少なくとも95モル%、又は少なくとも99モル%は、4,4-ジハロスルホンを含む。
【0110】
一実施形態によれば、芳香族ジハロ(CC)スルホンモノマーは、芳香族ジハロ(CC)スルホンモノマーの総モル数を基準として、少なくとも50モル%の4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)を含む。例えば、芳香族ジハロ(CC)スルホンモノマーの少なくとも60モル%、又は少なくとも70モル%、又は少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%、又は少なくとも95モル%、又は少なくとも99モル%は、DCDPSを含む。
【0111】
好ましい実施形態によれば、芳香族ジハロ(CC)スルホンモノマーは本質的にDCDPSからなる。
【0112】
好ましい実施形態では、モノマー混合物中の芳香族ジハロ(CC)スルホンモノマーの全体量に対する芳香族ジヒドロキシ(AA)モノマー+バイオベースのジオール(BB)モノマーの全体量のモル比は、
- 少なくとも0.95~1.05、若しくは少なくとも0.98、若しくは少なくとも0.99、及び/又は
- 最大で1.05、若しくは最大で1.02、若しくは最大で1.01
である。
【0113】
より好ましい実施形態では、モノマー混合物中の芳香族ジハロ(CC)スルホンモノマーの全体量に対する芳香族ジヒドロキシ(AA)モノマー+バイオベースのジオール(BB)モノマーの全体量のモル比は、1.0である。
【0114】
より好ましい実施形態によれば、芳香族ジヒドロキシ(AA)モノマーが本質的に式(A)のモノマーからなる場合、ジオール(BB)モノマーは、イソソルビド(1)、イソマンニド(2)及びイソイジド(3)からなる群から選択される少なくとも1種のジオールから本質的になり;芳香族ジハロ(CC)スルホンモノマーはDCDPSから本質的になり;モノマー混合物中のDCDPSの全体量に対する式(A)のモノマー+イソソルビド(1)、イソマンニド(2)及びイソイジド(3)からなる群から選択される少なくとも1種のジオールの全体量のモル比は、
- 少なくとも0.95~1.05、若しくは少なくとも0.98、若しくは少なくとも0.99、及び/又は
- 最大で1.05、若しくは最大で1.02、若しくは最大で1.01
である。
【0115】
更に好ましい実施形態によれば、モノマー混合物中のDCDPSの全体量に対する式(A)のモノマー+イソソルビド(1)、イソマンニド(2)及びイソイジド(3)からなる群から選択される少なくとも1種のジオールの全体量のモル比は、1.0である。
【0116】
より好ましい実施形態では、コポリマーb-PAESを製造するプロセスは、極性非プロトン性溶媒を含む反応混合物(R)中において且つアルカリ金属炭酸塩の存在下において、少なくとも3種の異なるモノマー:
- 式(A*)の少なくとも1種のモノマーを含む少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシモノマー[ジヒドロキシ(AA)]
(式中、各Rは、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、各位置において好ましくはメチルである)と、
- ジオール(BB)としての少なくとも式(1)のイソソルビドと、
- ジハロ(CC)としての少なくとも4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)と
を含むモノマー混合物を反応させることを含み、コポリマーb-PAESを得るために、モノマー混合物中のヒドロキシル基の全体量とハロ基の全体量との間のモル比は、0.95~1.05、好ましくは0.98~1.02、より好ましくは0.99~1.01、最も好ましくは1.0である。
【0117】
最も好ましい実施形態では、コポリマーb-PAESを製造するプロセスは、極性非プロトン性溶媒を含む反応混合物(R)中において且つアルカリ金属炭酸塩の存在下において、3種の異なるモノマー:
- 芳香族ジヒドロキシ(AA)モノマーとしてのテトラメチルビスフェノールF(TMBPF)と、
- ジオール(BB)モノマーとしてのイソソルビドと、
- ジハロ(CC)モノマーとしての4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)と
を含む(又はそれらから本質的になる)モノマー混合物を反応させることを含む。
【0118】
極性非プロトン性溶媒
本明細書に記載のコポリマーb-PAESを製造するために反応混合物中で使用される極性非プロトン性溶媒は、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMSO2)、ジフェニルスルホン、ジエチルスルホキシド、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド(一般にテトラメチレンスルホン又はスルホランと呼ばれる)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-ブチルピロリジノン(NBP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロチオフェン-1-モノオキシド及びそれらの混合物からなる群から選択することができ;好ましくは1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMSO2)、N-ブチルピロリジノン(NBP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ジメチルホルムアミド(DMF)及び/又はスルホランからなる群から選択することができる。
【0119】
アルカリ金属炭酸塩
本明細書に記載の縮合プロセスは、アルカリ金属炭酸水素塩の群、例えば炭酸水素ナトリウム(NaHCO)及び炭酸水素カリウム(KHCO)の群又はアルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム(KCO)及び/若しくは炭酸ナトリウム(NaCO)の群において選択される炭酸塩成分の存在下で行うことができる。
【0120】
好ましくは、本発明のプロセスは、炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)又はそれらの組み合わせの存在下で行われる。
【0121】
一実施形態によれば、本発明のプロセスは、例えば、約100μm未満、例えば45μm未満、30μm未満又は20μm未満の体積平均粒子サイズを有する無水KCOなど、低粒子サイズのアルカリ金属炭酸塩の存在下で行われる。好ましい実施形態によれば、本発明のプロセスは、約100μm未満、例えば45μm未満、30μm未満又は20μm未満の体積平均粒子サイズを有するKCOを、反応混合物中の塩基成分の総重量を基準として50重量%以上含む炭酸塩成分の存在下で行われる。使用される炭酸塩の体積平均粒子サイズは、例えば、クロロベンゼン/スルホラン(60/40)中の粒子の懸濁液でMalvernのMastersizer2000を使用して決定することができる。
【0122】
使用されるアルカリ金属炭酸塩の量は、ヒドロキシル基(OH)1当量あたりのアルカリ金属(M)の当量の比[eq.(M)/eq.(OH)]によって表される場合、
- 少なくとも1、若しくは少なくとも1.05、若しくは少なくとも1.1、若しくは少なくとも1.15、若しくは少なくとも1.2、若しくは少なくとも1.25、若しくは少なくとも1.3;及び/又は
- 最大で4、若しくは最大で3.5、若しくは最大で3、若しくは最大で2.5、若しくは最大で2
である。
【0123】
水と共沸混合物を形成する任意選択的な共溶媒
製造プロセスの一実施形態によれば、縮合を行うための反応混合物(R)は、極性非プロトン性溶媒に加えて、水と共沸混合物を形成する共溶媒を更に含み得る。
【0124】
水と共沸混合物を形成する共溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン等などの芳香族炭化水素が挙げられる。共溶媒は、好ましくは、トルエン又はクロロベンゼンを含むか又はそれからなる。共沸混合物形成共溶媒及び極性非プロトン性溶媒は、典型的には、反応混合物(R)中で約1:10~約1:1、好ましくは約1:5~約1:1の重量比で使用される。
【0125】
水は、共沸混合物形成共溶媒と共に共沸混合物として反応生成混合物から連続的に除去され、その結果、実質的に無水の状態が重合中に維持される。共沸混合物形成共溶媒、例えばクロロベンゼンは、反応で形成された水が除去された後、典型的には蒸留により反応混合物から除去され、極性非プロトン性溶媒中に溶解したコポリマーb-PAESを残す。
【0126】
好ましくは、反応混合物(R)は、水と共沸混合物を形成する物質を含まない。
【0127】
重縮合反応条件
いくつかの実施形態では、コポリマーb-PAESを製造するためのプロセスは、反応転化率が少なくとも95%になるものである。
【0128】
反応混合物(R)の温度は、約1時間~15時間、好ましくは約3時間~約9時間、約150℃~約350℃、好ましくは約200℃~約300℃、より好ましくは約200℃~約230℃、更に好ましくは約200℃~約220℃に維持される。
【0129】
反応混合物(R)中のモノマーは、必要な縮合度に到達するまで温度範囲内で重縮合される。
【0130】
重縮合時間は、出発モノマーの性質及び選択される反応条件に応じて、0.1~15時間、好ましくは1~15時間又は3~9時間又は4~7時間で変化し得る。
【0131】
無機成分、例えば、塩化ナトリウム又は塩化カリウム又は過剰の塩基は、コポリマーb-PAESの単離前又は後、溶解及び濾過、ふるい分け又は抽出などの適切な方法によって除去することができる。
【0132】
一実施形態によれば、反応(縮合)は、好ましくは、反応の終了時、
- 少なくとも10重量%、若しくは少なくとも20重量%、若しくは少なくとも25重量%のポリマー、若しくは少なくとも30重量%のポリマー、及び/又は
- 最大で60重量%若しくは最大で50重量%
の、反応混合物の総重量に対する総重量%ポリマー濃度[以下では総重量%ポリマー]を得るように行われる。
【0133】
好ましい実施形態によれば、反応(縮合)終了時のコポリマーb-PAESの量は、コポリマーb-PAES+極性非プロトン性溶媒の総重量を基準として少なくとも30重量%且つ最大で50重量%である。
【0134】
反応の終わりに、コポリマーb-PAESは、コポリマーb-PAES溶液を得るために他の成分(塩、塩基、...)から分離される。例えば、コポリマーb-PAESを他の成分から分離するために濾過を用いることができる。その後、コポリマーb-PAES溶液は、そのまま工程(b)で使用され得るか、又は代わりに、コポリマーb-PAESは、例えば凝固若しくは溶媒揮発分除去によって溶媒から回収され得る。
【0135】
コポリマーb-PAESの使用
本発明の別の態様は、膜、コーティング、フィルム、繊維及びシート並びに三次元射出、又は成形、又は印刷部品などの物品の製造のためのコポリマーb-PAESの使用を提供する。
【0136】
本発明の別の態様は、膜、コーティング、フィルム、繊維及びシート並びに三次元射出、又は成形、又は印刷部品などの物品の製造方法を提供し、前記方法は、コポリマーb-PAESを使用することを含む。
【0137】
印刷部品は、付加製造又は3D印刷によって製造することができる。
【0138】
コポリマーb-PAESから製造された物品
本発明の別の態様は、本発明によるコポリマーb-PAESを含む成形物品を提供する。
【0139】
コポリマーb-PAESから製造される成形物品は、膜;溶融加工されたフィルム、モノフィラメント及び繊維;溶液加工されたフィルム(溶液キャスト膜及び溶液紡糸による膜を含む、多孔質及び非多孔質フィルム);溶液加工されたモノフィラメント;溶融加工されたモノフィラメント及び繊維;中空繊維及び中実繊維;コーティング;印刷物体;並びに射出成形及び圧縮成形物体からなる群から選択することができる。
【0140】
コポリマーb-PAESから製造される成形物品は、好ましくは、膜又はその一部であり得、好ましくはバイオプロセス及び医療濾過のための膜(血液透析膜など)、食品及び飲料加工のための膜、浄水のための膜、廃水処理のための膜並びに水性媒体を伴う工業プロセス分離のための膜から選択することができる。
【0141】
膜のうち、本発明によるコポリマーb-PAESは、体液、特に血液などの生体液を含む水性媒体との接触が意図される膜の製造に特に適している。
【0142】
構造的観点から、上で詳述したコポリマーb-PAESから製造される膜は、平坦な構造(例えばフィルム又はシート)、波形構造(例えば波形シート)、管状構造又は中空繊維の形態下で提供することができ;細孔サイズに関する限り、あらゆる種類の膜(精密濾過、限外濾過、ナノ濾過及び逆浸透用を含めて、非多孔質及び多孔質)を、コポリマーb-PAESから有利に製造することができ;細孔分布は、等方性又は異方性であり得る。
【0143】
本発明によるコポリマーb-PAESから製造される成形物品は、上述したように、フィルム及びシートの形態であり得る。これらの成形物品は、特に、特殊光学フィルム若しくはシートとして有用であり、且つ/又は包装用に適している。
【0144】
更に、本発明によるコポリマーb-PAESから製造される成形物品は、三次元成形部品、特に透明の又は着色された部品であり得る。
【0145】
このような射出成形部品が使用され得る使用の分野のうち、ヘルスケア用途、特に医療及び歯科用途を挙げることができ、本発明によるコポリマーb-PAESから製造された成形部品は、有利には、単回使用の及び再利用可能な機器及びデバイスにおける金属、ガラス及び他の従来の材料を置き換えるために使用することができる。
【0146】
少なくともコポリマーb-PAESから製造れた成形物品は、好ましくは、BPA及びBPSを含まない。
【0147】
追加の又は代替の実施形態では、少なくともコポリマーb-PAESから製造された成形物品は、BPFを含まない。
【0148】
膜(物品として)
コポリマーb-PAESから製造された膜は、水又は生体液、好ましくは血液を浄化するために使用することができる。
【0149】
少なくともコポリマーb-PAESから製造された膜は、好ましくは、BPS及びBPAを含まない(すなわち0.1重量%未満のBPS及び0.1重量%未満のBPAを含む)。
【0150】
追加の又は代替の実施形態では、好ましくは少なくともコポリマーb-PAESから製造された膜はBPFを含まない(すなわち0.1重量%未満のビスフェノールFを含む)。
【0151】
「膜」という用語は、その通常の意味で本明細書において使用され、すなわち、膜は、その膜と接触する化学種の浸透を緩和する、個別の、通常、薄い界面を意味する。この界面は、分子的に均一であり得る(すなわち構造が完全に均一であり得る)か(稠密膜)、又は化学的若しくは物理的に不均一であり得、例えば有限寸法の空隙、空孔又は細孔を含有し得る(多孔質膜)。
【0152】
本発明によれば、膜は、典型的には、平均細孔径及び空隙率(すなわち膜全体における多孔質の割合)によって特徴付けることができる微多孔質膜である。
【0153】
本発明の膜は、20~90%の重量空隙率(%)を有することができ、且つ細孔を含み、前記細孔の少なくとも90体積%は、5μm未満の平均細孔径を有する。膜の重量空隙率は、膜の総体積で割った細孔の容積と定義される。
【0154】
厚さ全体にわたって一様な構造を有する膜は、一般に、対称膜として知られており、厚さ全体にわたって細孔が均一に分布していない膜は、一般に、非対称膜として知られている。非対称膜は、薄い選択的な層(厚さ0.1~1μm)と、支持体としての役割を果たし、且つこの膜の分離特性にほとんど影響を及ぼさない高多孔質の厚い層(厚さ100~200μm)とで特徴付けられる。
【0155】
膜は、1つ以上の平らなシートの形態又は管状の形態であり得る。
【0156】
管状の膜は、その寸法に基づいて、3mm超の直径を有する管状膜;0.5mm~3mmに含まれる直径を有するキャピラリー膜;及び0.5mm未満の直径を有する中空繊維に分類される。キャピラリー膜は、中空繊維とも呼ばれる。
【0157】
中空繊維は、表面積が大きいコンパクトなモジュールが必要とされる用途で特に有利である。
【0158】
本発明の膜は、従来の公知の膜調製方法のいずれを利用して、例えば溶液キャスティング又は溶液紡糸法によって製造され得る。
【0159】
好ましくは、本発明による膜は、液相で行われる相転換法によって調製され、前記方法は、
(i)本明細書に記載のコポリマーb-PAESと極性溶媒とを含むPAESポリマー溶液を調製する工程、
(ii)前記溶液を処理して膜にする工程、
(iii)前記膜を非溶媒浴に接触させる工程
を含む。
【0160】
本発明の膜は、膜の総重量を基準として少なくとも1重量%、例えば少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%又は少なくとも30重量%の量で本明細書に記載のコポリマーb-PAESを含み得る。
【0161】
本発明の膜は、膜の総重量を基準として50重量%を超える量、例えば55重量%超、60重量%超、65重量%超、70重量%超、75重量%超、80重量%超、85重量%超、90重量%超、95重量%超又は99重量%超の量で本明細書に記載のコポリマーb-PAESを含み得る。
【0162】
一実施形態によれば、本発明の膜は、膜の総重量を基準として1~99重量%、例えば3~96重量%、6~92重量%又は12~88重量%の範囲の量で本明細書に記載のコポリマーb-PAESを含み得る。
【0163】
本発明の膜は、本明細書に記載のコポリマーb-PAESと異なる少なくとも1種のポリマー、例えば別のスルホンポリマー、例えばポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)若しくはポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、例えばポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)、ポリ(エーテルケトン)(PEK)若しくはPEEKとポリ(ジフェニルエーテルケトン)とのコポリマー(PEEK-PEDEKコポリマー)、ポリエーテルイミド(PEI)及び/又はポリカーボネート(PC)を更に含み得る。別のポリマー成分は、ポリビニルピロリドン及び/又はポリエチレングリコールであり得る。
【0164】
膜は、溶剤、充填剤、滑沢剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、つや消し剤、顔料、染料及び/又は蛍光増白剤などの少なくとも1種の非ポリマー系成分も更に含み得る。
【0165】
ポリアリールエーテルスルホンポリマーから膜を形成する方法の適切な例は、米国特許出願公開第2019/054429A1号明細書(Solvay Specialty Polymers USA)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0166】
膜を調製するためのポリマー溶液(SP)
本発明の一態様は、極性有機溶媒[溶媒(SSP)]中にコポリマーb-PAESを含む、膜を調製するためのポリマー溶液(SP)に関する。
【0167】
ポリマー溶液(SP)中のコポリマーb-PAESの総濃度は、ポリマー溶液の総重量を基準として少なくとも8重量%、好ましくは少なくとも12重量%である。典型的には、ポリマー溶液中のコポリマーb-PAESの濃度は、ポリマー溶液(SP)の総重量を基準として50重量%を超えず、好ましくは40重量%を超えず、より好ましくは30重量%を超えない。
【0168】
ポリマー溶液(SP)の総重量に対して15~25重量%、より好ましくは16~22重量%の範囲であるコポリマーb-PAESの濃度が特に有利であることが見出された。
【0169】
ポリマー溶液(SP)は、本明細書に記載のコポリマーb-PAESと異なる少なくとも1種のポリマー、例えば別のスルホンポリマー、例えばポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)若しくはポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、例えばポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)、ポリ(エーテルケトン)(PEK)若しくはPEEKとポリ(ジフェニルエーテルケトン)とのコポリマー(PEEK-PEDEKコポリマー)、ポリエーテルイミド(PEI)及び/又はポリカーボネート(PC)を更に含み得る。別のポリマー成分は、ポリビニルピロリドン及び/又はポリエチレングリコールも含むか又はそれらでもあり得る。
【0170】
そのような場合、ポリマー溶液(SP)中の少なくとも1種の追加のポリマー及びコポリマーb-PAESの濃度は、ポリマー溶液(SP)の総重量を基準として50重量%を超えず、好ましくは40重量%を超えず、より好ましくは30重量%を超えない。
【0171】
ポリマー溶液(SP)中の溶媒(SSP)の総濃度は、ポリマー溶液の総重量を基準として少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%であり得る。典型的には、ポリマー溶液(SP)中の溶媒(SSP)の濃度は、ポリマー溶液の総重量を基準として70重量%を超えず、好ましくは65重量%を超えず、より好ましくは60重量%を超えない。
【0172】
溶媒(SSP)は、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMSO2)、ジフェニルスルホン、ジエチルスルホキシド、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド(一般にテトラメチレンスルホン又はスルホランと呼ばれる)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-ブチルピロリジノン(NBP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロチオフェン-1-モノオキシド及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0173】
ポリマー溶液(SP)中で単独で又は組み合わせて使用され得る例示的な溶媒(SSP)は、米国特許出願公開第2019054429A1号明細書(Solvay Specialty Polymers Italy)(特に段落[0057]~[0129]に記載されている溶媒)及び国際公開第2019/048652号パンフレット(Solvay Specialty Polymers USA)に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0174】
ポリマー溶液(SP)は、造核剤、充填剤などの追加の成分を含み得る。
【0175】
ポリマー溶液(SP)は、細孔形成剤、特にポリビニルピロリドン(PVP)及び少なくとも200の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)も含み得る。
【0176】
生体液の浄化方法
本発明の更なる態様は、本明細書に記載の膜を通した濾過ステップを少なくとも含む浄化方法を対象とすることができる。
【0177】
好ましくは、浄化方法は、体外回路で実行されるヒト生体液(好ましくは血液産物(全血、血漿、分画血液成分又はそれらの混合物など)を浄化するための方法である。方法を実行するための体外回路は、上述した少なくとも1つの膜を含む少なくとも1つの濾過装置(又はフィルタ)を含む。
【0178】
本明細書で意図されるように、体外回路を通した血液浄化方法は、拡散による血液透析(FD)、血液濾過(HF)、血液濾過透析(HDF)及び血液濃縮を含む。HFでは、血液は、限外濾過によって濾過されるが、HDFでは、血液は、FDとHFとの組み合わせによって濾過される。
【0179】
体外回路を通した血液浄化方法は、典型的には、血液透析器(すなわちFD、HF又はHFDのいずれか1つを実行するように設計されている機器)によって実行される。そのような方法では、血液は、尿素、カリウム、クレアチニン及び尿酸のような廃棄溶質及び廃棄液から濾過され、それにより廃棄溶質及び廃棄液を含まない血液が得られる。
【0180】
典型的には、血液浄化方法を実行するための血液透析器は、膜の中空繊維の円筒状束を含み、前記束は、両端を有し、これらは、それぞれいわゆるポッティングコンパウンドに固定されており、ポッティングコンパウンドは、通常、束の末端を一体に保持する接着剤としての役割を果たす高分子材料である。ポッティングコンパウンドは、当技術分野で公知であり、これらとしては、特にポリウレタンが挙げられる。圧力勾配を適用することにより、血液は、血液ポートを介して膜の束を通してポンプ送液され、濾過生成物(「透析液」)は、フィルタの周囲の空間を通してポンプ送液される。
【実施例
【0181】
ここで、以下の実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、その目的は、例示にすぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0182】
コポリマーb-PAESの調製の概要
オーバーヘッド機械撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1リットルの樹脂フラスコ(反応器)に、ジヒドロキシ(AA)モノマーとしてのテトラメチルビスフェノールF(TMBPF)、ジオール(BB)モノマーとしてのイソソルビド、ジハロ(CC)スルホンモノマーとしての4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)及び炭酸カリウムを入れ、続いて極性非プロトン性溶媒(例えばスルホラン又はジメチルスルホキシド(DMSO2))を入れてモノマー混合物を形成する。
【0183】
モノマーの量は、反応混合物中で30~50重量%のポリマーの重量%を達成するように選択される。
【0184】
モノマー混合物中で使用される炭酸カリウムの量は、ヒドロキシル基(OH)1当量あたりのアルカリ金属(M)の当量の比[eq.(M)/eq.(OH)]によって表される場合、通常1.2~2eq.(K)/eq.(OH)である。
【0185】
TMBPF及びイソソルビド[(AA)+(BB)モノマー]からのヒドロキシル基の全体量とDCDPSモノマー[(CC)モノマー)]からのハロ基の全体量との間のモノマー混合物中のモル比は、約1.0である。
【0186】
外部油浴により目標内部反応温度(通常、200~220℃)で加熱を開始する前に、窒素を流し、混合物を窒素で15分間パージする。モノマーを含む反応混合物をオーバーヘッド機械撹拌機で撹拌し、目標内部反応温度に制御された油浴を使用して温めて反応を開始させる。浴温は約30~60分かけて21℃から適切な反応温度まで上昇した。重合反応の副生成物である水は反応器から連続的に抜き出され、dean-starkトラップに集められる。目標内部温度に到達した後、望まれるMが達成されるまで、反応をその温度で適切な反応時間保持する。反応時間は、3~15時間で変化し得るが、通常、約3~9時間である。
【0187】
所望の分子量に到達した後、30~60分間かけて1g/分の速度で反応混合物を通してガス状塩化メチルを吹き込むことによって重合を停止する。反応の最後には混合物が粘稠になり、撹拌が困難になるため、反応混合物をNMPで希釈してポリマーを10重量%し、100℃未満に冷却する。塩を除去するために、加圧下で2.7μmのガラス繊維フィルターパッドを通して希釈ポリマー溶液を濾過する。非溶媒(メタノール又は50/50体積/体積のメタノール/アセトン)が入っているWaringブレンダーに、1:5のポリマー溶液対非溶媒の比率を使用して、ポリマー溶液を注ぎ入れて析出させ、白色の固体を得る。次いで、単離した白色固体を同じ非溶媒で6回洗浄し、各洗浄の間に濾過し、その後真空濾過し、120℃の真空オーブン中で12時間乾燥させる。分子量Mは、GPCによって測定した。
【0188】
分子量の決定
塩化メチレンを移動相として用いて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実施した。Agilent Technologies製のガードカラム付きの2本の5μmのmixed Dサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムを分離のために用いた。254nmの紫外線検出器を、クロマトグラムを得るために使用する。1.5ml/分の流量及び移動相中の0.2w/v%溶液の20μLの注入量を選択した。較正は、Agilent Technologiesから入手したポリスチレンの10個の狭い較正標準を使用して行った(ピーク分子量範囲:371000~580)。
【0189】
較正曲線:
1)タイプ:相対的な狭い較正標準による較正
2)フィット:3次回帰。
積分及び計算:Waters製のEmpower Pro GPCソフトウェアを使用して、データ、較正及び分子量計算を取得する。ピーク積算開始点及び終了点は、ベースライン全体上の有意な差からマニュアルで決定する。
【0190】
【表1】
【0191】
実施例1~4:溶媒としてスルホランを使用する90モル%のTMBPF及び10モル%のイソソルビド
実施例1の(b-PAES)は、上述した基本手順に従って製造した。最初の反応混合物は、以下を含んでいた:
・103.822g(0.405モル)の、ジヒドロキシ(AA)としてのテトラメチルビスフェノールF、
・6.576g(0.045モル)の、ジオール(BB)としてのイソソルビド「ISO」、
・129.223g(0.45モル)の、ジハロ(CC)としてのDCDPS、
・93.288g(0.675モル)の、アルカリ金属炭酸塩としての無水KCO
・482.538gの、溶媒としてのスルホラン。
【0192】
[ジヒドロキシ(AA)+ジオール(BB)]/ジハロ(CC)のモル比は1であった。
【0193】
イソソルビド+TMBPFの総モル数を基準としたイソソルビドのモル%は、10モル%であった。モル比eq.(K)/eq.(OH)は、1.5であった。反応混合物中のポリマーの重量%は、30重量%であった。目標の反応温度は、215℃であった。反応時間は、5.75時間であった。
【0194】
実施例2~4の他の3種の(b-PAES)を、以下の事項を除き実施例1に記載の手順と同じ手順に従い、[ジヒドロキシ(AA)+ジオール(BB)]/ジハロ(CC)=1のモル比及び反応混合物中30重量%のポリマーで製造した:
- モル比eq.(K)/eq.(OH)を1.2から1.5まで変化させた;
- 目標反応温度は、200℃であった;
- 反応時間は、7.8~9時間であった。
反応条件及びGPCにより測定した分子量Mは、表2に示されている。
【0195】
実施例5~11:溶媒としてスルホランを使用する75モル%のTMBPF及び25モル%のイソソルビド
実施例5~11の3種のコポリマー(b-PAES)を、以下の事項を除き実施例1に記載の手順と同じ手順に従い、[ジヒドロキシ(AA)+ジオール(BB)]/ジハロ(CC)=1のモル比で製造した:
・イソソルビド+TMBPFの総モル数を基準としたイソソルビドのモル%は、25モル%であった;
・反応混合物中のポリマーの重量%は、40、45又は50重量%であった;
・モル比eq.(K)/eq.(OH)を1.5から2まで変化させた;
・目標反応温度は、215又は220℃であった;
・反応時間は、3~6.5時間であった。
反応条件及びGPCにより測定した分子量は、表2に示されている。
【0196】
実施例12:溶媒としてスルホランを使用する75モル%のTMBPF及び25モル%のイソソルビド
実施例12のコポリマーb-PAESは、反応混合物が非常に粘稠になったため反応中に反応混合物を60.86gのスルホランで希釈し、粘度の更なる上昇を可能にした以外は、上記基本手順に従って製造した。M決定のために反応温度で約5時間後に反応混合物のサンプルを回収し、後処理を行わずに反応を終了させた。
【0197】
最初の反応混合物は、以下を含んでいた:
・86.518g(0.338モル)の、ジヒドロキシ(AA)としてのテトラメチルビスフェノールF、
・16.441g(0.113モル)の、ジオール(BB)としてイソソルビド「ISO」、
・129.223g(0.450モル)の、ジハロ(CC)としてのDCDPS、
・108.870g(0.788モル)の、アルカリ金属炭酸塩としての無水KCO
・482.538gの、溶媒としてのスルホランスルホラン。
[ジヒドロキシ(AA)+ジオール(BB)]/ジハロ(CC)のモル比は、1であった。モル比eq.(K)/eq.(OH)は、1.75であった。反応混合物中のポリマーの重量%は、45重量%であった。目標反応温度は、220℃であった。
【0198】
反応条件及びGPCにより測定した分子量Mは、表2に示されている。
【0199】
【表2】
【0200】
実施例13:溶媒としてDMSO2を使用する75モル%のTMBPF及び25モル%のイソソルビド
実施例13のコポリマーb-PAESは、溶媒としてジメチルスルホンを使用し、Mw決定のためにその温度で約3時間後に反応混合物のサンプル(溶媒希釈なし)を回収し、反応を後処理なしで終了させたことを除いて、実施例11について記載の手順に従って製造した。
【0201】
最初の反応混合物は、以下を含んでいた:
・86.518g(0.338モル)の、ジヒドロキシ(AA)としてのテトラメチルビスフェノールF、
・16.441g(0.113モル)の、ジオール(BB)としてのイソソルビド(ISO)、
・129.223g(0.450モル)の、ジハロ(CC)としてのDCDPS、
・77.74g(0.563モル)の、アルカリ金属炭酸塩としての無水KCO
・243.667gの、溶媒としてのジメチルスルホン(DMSO2)。
【0202】
GPCにより測定された分子量Mは、79kDaであった。
【0203】
比較例14:溶媒としてスルホランを使用する100モル%のTMBPF
比較の目的で、以下の方法を使用してTMBPFホモポリマーを調製した。オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに、115.358g(0.450モル)のテトラメチルビスフェノールF、129.223g(0.450モル)のDCPDS、65.302g(0.473モル)のKCO及び494.11gのスルホランを入れた。撹拌及び窒素の流れを確立し、反応混合物を窒素で15分間パージした後、200℃の目標内部温度で外部油浴により加熱を開始した。重合反応の副生成物である水は、反応器から連続的に抜き出し、dean-starkトラップで回収した。200℃に達した後、所望のMwに到達するまで反応をその温度で保持した。所望の分子量に到達した後、30~60分間かけて1g/分の速度で反応混合物を通してガス状塩化メチルを吹き込むことによって重合を停止した。反応混合物を317.64gのスルホランで希釈した。希釈したポリマー溶液を、加圧下で2.7μmのグラスファイバーフィルターパッドを通して濾過し、塩を除去した。ポリマー溶液を1:5のポリマー溶液対非溶媒の比率でメタノール又はメタノール/アセトン(1:1)中に析出させて、白色固体を得た。その後、単離した白色固体を同じ非溶媒で6回洗浄し、真空濾過し、100℃の真空オーブン中で12時間乾燥した。
【0204】
GPCにより測定された分子量Mは、78kDaであった。
【0205】
実施例15 - 緻密ポリマーフィルムサンプルの調製及び接触角の測定
DMAc(Sigma Aldrichの溶媒)中の実施例4及び11のコポリマーb-PAESの溶液(20重量%)を、メカニカルアンカーを用いて室温で数時間撹拌することによって調製した。
【0206】
平坦な緻密ポリマーフィルムは、実施例4又は11のコポリマーb-PAES及び溶媒を含む各ポリマー溶液を、40℃で自動化されたキャスティングナイフを用いて適切な滑らかなガラス支持体上にキャスティングすることによって調製した。ナイフのギャップは、500μmに設定した。フィルムをキャスティングした後、真空オーブン中に130℃で4時間放置して、溶媒を蒸発させた。
【0207】
比較のために、市販のポリスルホン(PSU)、すなわちSolvayから供給されているUDEL(登録商標)P3500NTポリスルホン、市販のポリエーテルスルホン(PES)、すなわちSolvayから供給されているVeradel(登録商標)PES3000MP及びTMBPFホモポリマー(実施例14)のフィルムを同様の方法で調製した。
【0208】
これらのフィルムを接触角の測定に使用した。緻密フィルム上での水に対する接触角は、ASTM D5725-99に従って接触角システムOCA Dataphysicsを使用して25℃で評価した。値は、少なくとも10回の測定の平均である。液滴体積は、2マイクロリットルであった。
【0209】
結果は、表3にまとめられている。
【0210】
実施例4及び11(本発明による)のコポリマーb-PAESは、ポリマー構造中にイソソルビドが組み込まれているため、実施例14(本発明によらない)からのTMBPFホモポリマーよりも親水性が高いことが見出された。
【0211】
【表3】
【0212】
コポリマーb-PAESは市販のポリスルホン(PSU)よりも親水性が高く、市販のポリエーテルスルホン(PES)の親水性に迫ることも見出された。
【0213】
したがって、BPA由来のスルホン繰り返し単位を含むPSUポリマー及びBPS由来のスルホン繰り返し単位を含むPESポリマーと同様の親水性を達成するために、2種の異なるジヒドロキシモノマーであるイソソルビド(生体適合性且つバイオベースのジオールモノマー)とTMBPF(BPS及びBPAと異なるビスフェノールモノマー)とを使用することで、得られるコポリマーb-PAESの親水性を調整することができた。
【0214】
本発明の好ましい実施形態が示され、且つ説明されてきたが、当業者により、本発明の趣旨又は教示から逸脱することなくその変更形態がなされ得る。本明細書に記載される実施形態は、単なる例示であり、限定ではない。システム及び方法の多くの変形形態及び変更形態が可能であり、それらは、本発明の範囲内である。したがって、保護の範囲は、上で説明した記載に限定されず、以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は、特許請求の範囲の主題の均等物を全て含む。各々及び全ての請求項は、本発明の実施形態として本明細書に組み込まれている。したがって、特許請求の範囲は、更なる説明であり、また本発明の好ましい実施形態への追加である。
【国際調査報告】