(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】高貴な材料の外観を有する装飾ガラスパネル
(51)【国際特許分類】
C03C 17/34 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
C03C17/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535783
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2021085100
(87)【国際公開番号】W WO2022128753
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】カリアロ, セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ランブリット, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ムシアルスキ, セシル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ, シャーロット
(72)【発明者】
【氏名】デルソー, フローラン
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA08
4G059AC08
4G059GA01
4G059GA02
4G059GA05
(57)【要約】
本発明は、(i)少なくとも85%の光透過率LTDを有し、且つ0.1mm~6mmの範囲の厚さを有するガラスシート(2)と、(ii)高貴な材料パターンを表し、且つ連続的である装飾層(3)と、(iii)不連続である不透明上部層(4)とを順番に含む高貴な材料の外観を有するガラスパネルに関し、前記ガラスパネルは、これにより、光学密度OD>1.5によって定義された不透明ゾーン(6)と、1つ又は複数のパターンに対応し、且つ3~80%の光透過率LTDによって定義された半透明ゾーン(7)とを示す。本発明は、容易な且つ費用効率に優れた製造プロセスにより、軽量であり且つ機械的な抵抗力を有し、且つ最終的に背景照明された際にその主面の1つを通じた照明されたサイン/パターン/ロゴの視覚化を許容する高貴な材料(木材、大理石、石、花崗岩、皮革、など)の外観を有する装飾パネルを提供することができ、特に自動車市場、即ち高級車のセグメントにおいて有利である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高貴な材料の外観を有するガラスパネル(1)であって、順番に、
-少なくとも85%の光透過率LTDを有し、且つ0.1mm~6mmの範囲の厚さを有するガラスシート(2)と、
-前記高貴な材料パターンを表し、且つ連続的である装飾層(3)と、
-不連続である不透明上部層(4)と、
を含むガラスパネルにおいて、
前記ガラスパネルは、これにより、
-光学密度OD>1.5によって定義された不透明ゾーン(6)、及び
-1つ又は複数のパターンに対応し、且つ3~80%の光透過率LTDによって定義された半透明ゾーン(7)、
を示す、ガラスパネル。
【請求項2】
前記半透明ゾーン(7)は、光透過率LTD≧5%によって定義されていることを特徴とする請求項1に記載のガラスパネル。
【請求項3】
前記半透明ゾーン(7)は、光透過率LTD≦50%によって定義されていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載のガラスパネル。
【請求項4】
前記半透明ゾーン(7)は、光学密度OD>2によって定義されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガラスパネル。
【請求項5】
前記半透明ゾーン(7)は、光学密度OD>3によって定義されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガラスパネル。
【請求項6】
前記ガラスシートは、0.3~2.6mmの範囲の厚さを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガラスパネル。
【請求項7】
前記ガラスパネルは、前記装飾層(3)と前記上部層(4)の間に少なくとも1つの中間層(9)を更に含み、前記中間層は、連続的であり且つa*及びb*パラメータの絶対値<2.5を示すことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガラスパネル。
【請求項8】
前記ガラスシート(2)は、少なくとも1つのエッジを有し、前記少なくとも1つのエッジは、
-それぞれが90°±7°に等しい前記ガラスシートの第1及び第2主表面によって形成された角度、
-2によって除算されたシート厚さ(又は、シート厚さ/2)におけるラインに沿った場所で計測される、0.1~1ミクロンのRaによって定義された表面粗度、
を示すことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のガラスパネル。
【請求項9】
前記ガラスシート(2)は、化学的に強化されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のガラスパネル。
【請求項10】
前記ガラスシート(2)は、
-前記ガラスシートのエッジにおけるカリウムのレベルよりも高い前記ガラスシートの第1及び第2主表面におけるカリウムのレベル、及び、
-前記ガラスシートのバルクにおけるカリウムのレベルよりも高い前記ガラスシートのエッジにおけるカリウムのレベル、
を有することを特徴とする請求項9に記載のガラスパネル。
【請求項11】
(i)請求項1乃至8のいずれか1項に記載の前記ガラスパネル(1)と、
(ii)前記ガラスシート(2)の反対の側から前記ガラスパネルの背後に取り付けられた少なくとも1つの背景照明システム(8)と、
を含むガラス物品。
【請求項12】
車両の内部グレージングであることを特徴とする請求項11に記載のガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾ガラスパネルに関する。更に詳しくは、本発明は、高貴な材料の外観をシミュレートし且つ背景照明された際にその主面の1つを通じた照明されているサイン/パターン/ロゴの視覚化を許容する、特に車両の内部グレージングとしての自動車用途の場合に有利である装飾ガラスパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車市場において、特に高級車のセグメントにおいて、車両の内部グレージングとして使用されるべく、シート/(フラットな又は折り曲げられた)パネルの形態における且つ木材、大理石、石、花崗岩、皮革、などのような高貴な材料の(実際の又はシミュレートされた)外観を有する製品を得るニーズが存在している。その豪華な美的外観に加えて、このような製品は、軽量、機械的抵抗力(衝撃、引っかき傷)、理想的にクリーニングが容易であるという特性、及び(理想的には大量生産を通じた)その容易な且つ費用効率に優れた製造という自動車の分野によって必要とされているいくつかの技術的仕様を有することを要する。
【0003】
当技術分野においては、高貴な材料を有するガラスの複合体が既知である。これらは、一般に、木材(最小のもので0.3mmまで)又は石(数ミリメートル)のような選択された材料のシートによってラミネートされたガラスシート(数ミリメートル)から構成されている。このような製品は、いくつかの利益を有しており、使用されている高貴な材料のその実際の外観に加えて、これらは、ガラス材料/表面自体の利点(機械的抵抗力、滑らかな表面、など)をも有する。但し、これらは、多数の欠点を有しており、そのいくつかを挙げれば、
-その厚さが相対的に大きい-シートの形態の高貴な材料の主要な制限である、
-その重量が、特に石又は花崗岩が使用されている場合に、一般に大きい-これは、自動車用途を考慮した場合に深刻な制限である、
-また、高貴な材料自体の費用に起因して且つ製造にも起因して、その費用が大きい(ほとんどの高貴な材料において、非常に薄いシートを取得することは、簡単ではない)、
-プロセスの観点における柔軟性が非常に低い-大量生産が複雑化し、且つ、すべての望ましい高貴な材料の外観を有する製品を取得するために同一の製造プロセス/ラインを使用することが不可能である。
【0004】
これらの理由から、一般に、特に自動車の内部グレージングとしての用途が関係している場合には、このタイプの解決策(ガラス/高貴な材料の複合ラミネート)は検討されていない。
【0005】
これに加えて、このようなラミネートにおいては、高貴な材料は、薄いシートの形態を有する場合にも、不透明又は半透明であり、従って、これらは、背景照明を考慮した際には、即ち、ラミネートを通じてサイン/ロゴ/パターンを視覚化するためには、適当ではない。
【0006】
但し、(i)高貴な材料(木材、大理石、石、花崗岩、皮革、など)の外観を有する、(ii)軽量であり且つ機械的な抵抗力を有する、(iii)容易な且つ費用効率に優れた製造プロセスを有する、最後に(iv)背景照明された際にその主面の1つを通じた照明されているサイン/パターン/ロゴの視覚化を許容する、装飾パネルを得るために、市場、特に自動車市場、即ち、高級車セグメント、からの需要が存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、具体的には、従来技術の欠点を克服するという目的を有する。
【0008】
更に詳しくは、本発明の目的は、軽量であり且つ機械的抵抗力を有する高貴な材料の外観を有するガラスパネルを提供するという点にある。
【0009】
本発明の別の目的は、背景照明された際にその主面の1つを通じた照明されているサイン/パターン/ロゴの鋭い視覚化を許容する高貴な材料の外観を有するガラスパネルを提供するという点にある。
【0010】
本発明の別の目的は、製造が簡単、迅速、且つ容易であり、且つ、なによりも経済的である、従来技術の欠点に対する解決策を提供するという点にある。具体的には、その目的は、柔軟な方式で且つ顧客ごとにカスタマイズ可能な方式で製造され得る高貴な材料の外観を有するガラスパネルを提供するという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
-少なくとも85%の光透過率LTDを有し、且つ0.1mm~6mmの範囲の厚さを有するガラスシート(2)と、
-高貴な材料のパターンを表し、且つ連続的である装飾層(3)と、
-不連続である不透明な上部層(4)と、
を順番に有する高貴な材料の外観を含むガラスパネルに関し、
前記ガラスパネルは、これにより、
-光学密度OD>1.5によって定義された不透明ゾーン(6)、及び
-1つ又は複数のパターンに対応し、且つ3~80%の光透過率LTDによって定義された半透明ゾーン(7)、
を示す。
【0012】
従って、本発明は、従来技術の欠点の解決策を見出すことを可能にする点で新規かつ進歩的なアプローチを有する。
【0013】
本明細書及び請求項のすべてを通じて、範囲が示されている際には、端の値が含まれている。これに加えて、あたかも明示的に記述されているかのように、数値範囲内のすべての整数値及びサブドメイン値も明示的に含まれている。
【0014】
本明細書及び請求項においては、光透過率を定量化するために、(ISO9050規格による)2°の観察立体角における光源D65(LTD)による合計光透過率を考慮している。光透過率は、ガラスパネルを通じて透過される波長380nm~780nmにおいて放出された光束の百分率を表している。
【0015】
また、本明細書及び請求項においては、層の色の側面を特徴付けるL*、a*、及びb*というCIELab値をも考慮している。CIEのL*a*b*パラメータは、以下の説明においては、反射において、且つ、光源D、10°、SCI、背景としての白色タイル、という計測パラメータと共に、考慮されている。
【0016】
また、本明細書及び請求項においては、光学密度、即ちOD、をも考慮している。ODは、吸収の尺度であり、且つ、材料上に入射する光の強度とこの材料を通じて透過される強度の比率として定義されている。光学密度は、一般に、OD=log10(I0/I1)という式によって定義されており、この場合に、I0は、材料の小さなエリア上において入射した可視光の強度であり、I1は、材料の領域によって透過された光の強度である。
【0017】
本発明のその他の特徴及び利点については、単純な例示を目的とした非限定的な例として付与されている好適な実施形態及び図(1~3)の以下の説明を参照することにより、更に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の原理を示し、且つ、本発明によるガラスパネルを概略的に示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態を概略的に示す。
【
図3】
図3は、ガラスパネルの美観/外観の一例を示す。
【
図4】
図4(a)は、この実施例1のガラスパネルに関係する特定の組立体を概略的に示しており、
図4(b)~(c)は、ガラスシートの側からのガラスパネルの写真を示しており、(b)は、いかなる光源をも有しておらず、且つ、(c)は、ガラスシートの反対の側からのガラスパネルの背後に配置された光源を有する。
【
図5】
図5(a)は、この実施例2のガラスパネルに関係する特定の組立体を概略的に示しており、
図5(b)は、本発明のガラスパネルの木材の良い外観を示すガラスシートの側からのガラスパネルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によれば、ガラスパネル(1)は、高貴な材料の外観を有しており、或いは、換言すれば、高貴な材料を模倣している。「高貴な材料」は、本明細書においては、制限を伴うことなしに、木材、大理石、石、花崗岩、皮革、又は場合によっては艶消し金属/鋼を意味している。
【0020】
好ましくは、本発明のガラスシート(2)は、クリアな又はエクストラクリアなガラスから製造されている。本発明によるガラスシート(2)は、少なくとも85%の光透過率LTDを有する。更に好ましくは、本発明によるガラスシート(2)は、少なくとも87%、場合によっては少なくとも88%の光透過率LTDを有する。最も好適な実施形態においては、ガラスシート(2)は、少なくとも90%の光透過率LTDを有する。この特徴は、ガラスシート(2)の側からガラスパネル(1)を通じて観察した際に、装飾層(3)によって付与される高貴な材料の外観を明瞭に観察することを許容している。
【0021】
本発明によるガラスシート(2)は、0.1~6mmの厚さを有する。更に好ましくは、いくつかの特定の用途の場合には、特に車両の内部グレージングの場合には、ガラスシート(2)の厚さは、0.3~2.6mmである。
【0022】
本発明によれば、ガラスシート(2)は、実質的にフラットなものであってもよく、或いは、この代わりに、これは、結果的に、ガラスパネルが冷間折り曲げされなければならない場合に最終的なガラスパネル及び/又は支持部の特定の要求されている3D設計にフィットするように、全体的に又は部分的に湾曲していてもよい。
【0023】
本発明によれば、ガラスシート(2)は、硬化されてもよく、或いは、熱によって焼き戻されてもよく、或いは、化学的に強化されてもよい。
【0024】
本発明によれば、ガラスシート(2)は、特に限定されない組成を有する。ガラスシート(2)は、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、無アルカリガラス、ボロシリケートガラス、などであってよい。好ましくは、本発明のガラスシートは、ソーダライムガラス又はアルミノシリケートガラスから製造されている。本発明によるガラスシート(2)は、フローティングプロセス、ドローイングプロセス、ローリングプロセス、又は溶融ガラス組成から始まるガラスシートの製造において既知である任意の他のプロセスよって得られるガラスシートであってよい。本発明による好適な実施形態によれば、ガラスシートは、フロートガラスシートである。「フロートガラスシート」という用語は、還元条件下において溶融すずの槽上に溶融ガラスを注ぐステップを有するフロートガラスプロセスによって形成されたガラスシートを意味するものと理解されたい。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、ガラスシート(2)は、ガラスの合計重量の百分率において表現された含有量において、
SiO2 55~85%
Al2O3 0~30%
B2O3 0~20%
Na2O 0~25%
CaO 0~20%
MgO 0~15%
K2O 0~20%
BaO 0~20%
を有する組成を有する。
【0026】
好適な一実施形態において、ガラスシート(2)は、ガラス合計重量の百分率において表現された含有量において、
SiO2 55~78%
Al2O3 0~18%
B2O3 0~18%
Na2O 5~20%
CaO 0~10%
MgO 0~12%
K2O 0~12%
BaO 0~5%
を有する組成を有する。
【0027】
更に好適な実施形態においては、ガラスシート(2)は、ガラスの合計重量の百分率において表現された含有量において、
SiO2 60~78%
Al2O3 0~8%
B2O3 0~4%
CaO 0~10%
MgO 0~12%
Na2O 5~20%
K2O 0~12%
BaO 0~5%
を有する組成を有する。
【0028】
例えば、ガラスの合計重量との関係において表現された重量百分率において、
60≦SiO2≦78%
5≦Na2O≦20%
0.9<K2O≦12%
4.9≦Al2O3≦8%
0.4<CaO<2%
4<MgO≦12%
を有する組成が特に有利である。
【0029】
本発明のガラスシート(2)の組成の他の有利な例については、国際特許出願公開第2015/150207A1号及び同第2016/169823A1号及び同第2018/001965A1号パンフレットにおいて記述されている。
【0030】
本発明によれば、ガラスパネルは、高貴な材料の画像を表し且つ連続的である装飾層(3)を有する。この装飾層は、望ましい高貴な材料の外観を本発明のガラスパネルにもたらすことを許容している。
【0031】
好ましくは、装飾層(3)は、基本的にその全体表面上においてガラスシートをカバーしている。基本的に、全体表面は、ガラスシートの表面の90%超、好ましくは95%、又は場合によっては98%超を意味している。
【0032】
或いは、この代わりに、装飾層(3)は、その表面の一部分上においてガラスシートをカバーしている。このような実施形態は、例えば、本発明のガラスパネルをガラスシートよりも小さなサイズのディスプレイと組み合わせる場合に有利である。このような場合においては、装飾層(3)は、ガラスシートの側から観察した際に、ディスプレイと実質的にオーバーラップするべきではない。
【0033】
また、好ましくは、装飾層(3)は、インク層、ラッカー、エナメル、又は塗料である。更に好ましくは、装飾層(3)は、UV-インク層である。装飾層(3)は、当技術分野において既知の任意の方式により、ガラスシート上において堆積させることができる。装飾層(3)用の堆積プロセスの非限定的な例は、インクジェット印刷、レーザー印刷、又はスクリーン印刷方法である。本発明の装飾層(3)を堆積させる好適な方法は、主には高品質の着色されたパターンを生成する能力、柔軟性、及び大きな堆積速度に起因して、インクジェット印刷である。
【0034】
或いは、この代わりに、装飾層(3)は、後から従来のラミネーションプロセスによって堆積され得るポリマーの薄膜であってもよい。
【0035】
別の実施形態によれば、ガラスパネルは、複数の装飾層(3)を有する。このような実施形態は、特にこの材料が明るい色を有する(即ち、白色大理石である)場合には、高貴な材料の画像の美的なレンダリングを更に改善するのに有利である。2つ又は3つ、最大で5つの装飾層がガラスパネル上において存在し得る。層は、同一の厚さを有していてもよく、或いは、そうでなくてもよい。
【0036】
装飾層(3)(或いは、複数の装飾層の組立体)は、1~200マイクロメートルの厚さを有することができる。好ましくは、装飾層(3)(或いは、複数の装飾層の組立体)は、100マイクロメートル未満、或いは、場合によっては50ミクロン未満の厚さを有する。
【0037】
一実施形態によれば、装飾層(3)は、ガラスシート(2)との直接的接触状態にある。
【0038】
或いは、この代わりに、有利な一実施形態によれば、ガラスパネル(1)は、ガラスと層の間の接着の強度を増大させるために、ガラスシート(2)と装飾層(3)の間に接着層を更に有することもできる。更に好ましくは、接着層は透明である。このような接着層の例は、国際特許出願公開第2010/115858A1号パンフレットにおいて記述されているものである。また、同一の目的のために、ガラスシート(2)と装飾層(3)の間に、或いは、この代わりに、ガラスシートと存在している場合に接着シートの間に、シランプライマを使用することもできる。
【0039】
装飾層(3)によって付与される高貴な材料の外観/画像は、前記層の全体にわたって同一であってもよく、或いは、その代わりに、装飾層(3)は、異なる画像を有することもできる。例えば、層の中心において、これによりガラスパネルの中心において、木材の外観を有し、その周囲において艶消し鋼の外観を有することができ、これにより、異なる外観を有するフレームを形成することができる。
【0040】
一実施形態によれば、
図2に示されているように、ガラスパネル(1)の高貴な材料の外観を更に改善するために、更なる装飾層(3’)を装飾層(3)の上に堆積することができる。好ましくは、この更なる装飾層(3’)は、装飾層(3)と同一の特性を有し、且つ、同一の方法によって堆積されている。但し、その厚さは、異なっていてもよく、更には、1~200マイクロメートルの範囲であってもよく、更に好ましくは100マイクロメートル未満、或いは、場合によっては50ミクロン未満であってもよい。
【0041】
本発明によれば、ガラスパネルは、不連続である不透明上部層(4)を有する。換言すれば、不透明上部層(4)は、装飾層(3)をその全体においてカバーしてはおらず、且つ、被覆されていない又は被覆剥離された1つ又は複数の部分を有する。
【0042】
好ましくは、これは、暗く着色されており、更に好ましくは、これは黒色である。
【0043】
上部層(4)内の被覆されていない又は被覆剥離された1つ又は複数の部分は、ガラスシートとは反対の側から背景照明された際にガラス側からガラスパネルを通じて視覚化されることを所望するサイン/パターン/ロゴに対応している。
【0044】
従って、この不連続な不透明上部層(4)は、上部層内の被覆されていない/被覆剥離された1つ又は複数の部分(並びに、望ましいサイン/パターン/ロゴ)に対応する(i)「不透明ゾーン」(6)及び(ii)「半透明ゾーン」(7)を有するガラスパネルを付与している。
【0045】
一実施形態によれば、ガラスパネル(1)は、複数の上部層(4)を有する。このような実施形態は、ガラスパネルの美的レンダリングを更に改善するために有利である。2つ又は3つの上部層がガラスパネル上において存在し得る。層は、同一の厚さを有していてもよく、或いは、そうでなくてもよい。
【0046】
上部層(4)(或いは、複数の装飾上部層の組立体)は、1~200マイクロメートルの厚さを有することができる。好ましくは、上部層(或いは、複数の上部層の組立体)は、100マイクロメートル未満、或いは、場合によっては50ミクロン未満の厚さを有する。
【0047】
好ましくは、上部層(4)は、インク層、ラッカー、エナメル、又は塗料である。このような場合においては、上部層(4)は、当技術分野において既知の任意の適切な方式によって堆積させることができる。本発明によれば、上部層(4)は、不連続であり、これは、被覆の1つ又は複数の部分が、被覆されていないか(1ステップ部分的/選択的被覆)又は被覆剥離されている(被覆剥離ステップによって後続される被覆ステップ)ことを意味している。1ステップの部分的被覆の場合においては、堆積方法の例は、インクジェット、レーザー、及びスクリーン印刷方法である。2ステップのプロセスの場合においては、層の堆積は、インクジェット、レーザー、又はスクリーン印刷方法により、但し、更には、ローラー被覆、バー被覆、及びカーテン被覆方法により、実行することができる。上部層内において不連続性を形成するための被覆剥離ステップは、例えば、レーザーにより、従来の方式で実行することができる。
【0048】
或いは、この代わりに、上部層(4)は、ポリマーの薄膜であってもよく、その結果、これは、従来のラミネーションプロセスによって堆積させることができる。
【0049】
本発明のガラスパネル(1)を製造する好適な方法は、相対的に効率的なプロセス/製造ラインを得るように、装飾層(3)に使用されているものと同一である。
【0050】
好ましくは、一実施形態によれば、不透明なゾーン(6)は、光学密度OD>2によって定義されている。更に好ましくは、不透明ゾーン(6)は、光学密度OD>3によって、或いは、更に良好には>4によって定義されている。
【0051】
また、好ましくは、一実施形態によれば、半透明ゾーン(7)は、光透過率LTD≧5%によって定義されている。更に好ましくは、半透明ゾーン(7)は、光透過率LTD≧10によって定義されている。
【0052】
別の実施形態によれば、半透明ゾーン(7)は、光透過率≦75%によって、或いは、更に良好には≦70%によって定義されている。更に好ましくは、半透明ゾーン(7)は、光透過率LTD≦60によって、或いは、更に良好には≦50%によって定義されている。
【0053】
有利な一実施形態によれば、ガラスパネル(1)は、1つ又は複数の装飾層(3、3’)と上部層(4)の間に少なくとも1つの中間層(9)を更に有しており、これは、連続的であり、且つ、a*及びb*パラメータの絶対値<2.5を有する。
【0054】
上部層の不透明性に起因して、この更なる層は、その明るい色に起因して、ガラスシートの側から観察した際に、装飾層(3)によって形成される外観/画像の相対的に良好な美的レンダリングを提供している。
【0055】
この中間層(9)は、好ましくは、白色に着色されている。或いは、この代わりに、これは、装飾層(3)によって形成される外観/画像の美的なレンダリングの改善を許容する任意の色を有する。
【0056】
装飾層(3)と同一の方式により、中間層(9)は、好ましくは、基本的にガラスシートの全体表面をカバーしており、これにより、装飾層(3)の全体表面をカバーしている。
【0057】
また、好ましくは、ガラスパネル(1)は、高貴な材料の外観の美的レンダリングを更に改善するために、少なくとも2つの中間層を有することもできる。
【0058】
また、本発明によるガラスパネル(1)は、装飾層(3)を担持するものとは反対のガラスシート(2)の面上において機能層によって被覆されていてもよい。例えば、これは、反射防止、防幻、傷防止、指紋防止層により、或いは、ユーザーが経験することになるガラス表面に対する望ましい有利な特性を付与する任意の適切な層により、被覆されていてもよい。また、これは、防幻特性及び/又はタッチ/ソフトフィーリングを得るために、例えば、エッチング処理のように、任意の望ましい特性を表面に付与するように処理することもできる。
【0059】
本発明の1つの有利な特徴は、ガラスパネル(1)の製造が、切削、研削などのような従来の且つ標準的なガラス処理ステップと容易に一体化されることができるという事実にある。
【0060】
具体的には、大きなガラスパネルを更に小さな断片に分割(retail)するために、「ピース-シートタイプ(piece-sheet type)」法と呼称される既知の切削プロセスを容易に使用することができる。このような場合においては、例えば、レーザーによる事前切削が大きなマザーガラスシート上で実行され、次いで、本発明による異なる層が堆積され、次いで、化学的な焼き戻しが実行され、その後に、更に小さな被覆された断片の分離を実行することができる。塗装されたガラスパネルのこのような切削プロセスについては、欧州特許出願第19189604.2号明細書において一般的な方式で記述されている。
【0061】
このようなレーザー切削プロセスは、
-これが、任意の要求されている(場合によっては複雑である)サイズ及び形状に到達することを許容する非常に柔軟且つ高精度の方法であり、
-これが、塗料層の完全性を尊重しており、
-これが、いかなる研削ステップをも必要としてはおらず、
-これが、迅速、簡単、効率的、廉価であり、且つ、
-これが、自動車グレージングの分野においてしばしば必要とされている所謂冷間折り曲げプロセスと互換性を有している、
ことから、多くの利点を本発明にもたらしている。
【0062】
具体的には、レーザー切削「ピース-シートタイプ」法が使用される際には、本発明は、上述のガラスパネル(1)にも関しており、この場合に、ガラスシート(2)は、少なくとも1つのエッジを有し、前記少なくとも1つのエッジは、
-それぞれが90°±7°に等しい前記ガラスシートの第1及び第2主表面によって形成される角度、
-2によって除算されたシート厚さ(即ち、シート厚さ/2)におけるラインに沿った場所で計測される、0.1~1ミクロンのRaによって定義された表面粗度、
を示す。
【0063】
また、具体的には、レーザー切削ピース-シートタイプ法プロセスが使用される際には、且つ、化学的強化ステップが、事前切削及びレーザー堆積の後に、但し、更に小さな断片の分離の前に、実行される場合には、本発明は、上述のガラスパネル(1)にも関しており、この場合に、ガラスシート(2)は、
(i)前記ガラスシートのエッジにおけるカリウムのレベルよりも高い前記ガラスシートの第1及び第2主表面におけるカリウムのレベル、及び、
(ii)前記ガラスシートのバルク(bulk)におけるカリウムのレベルよりも高い前記ガラスシートのエッジにおけるカリウムのレベル、
を有する。
【0064】
シートのエッジにおけるカリウムのレベルが増大するのに伴って、前記エッジは、有利には、相対的に大きな機械的抵抗力を有することになる。
【0065】
また、本発明は、(i)上述の本発明からのガラスパネル(1)と、(ii)ガラスシート(2)の反対の側からガラスパネルの背後に取り付けられた少なくとも1つの背景照明システム(8)と、を含むガラス物品にも関する。このような背景照明システム(8)は、半透明ゾーン(6)に起因して、透明性によって装飾的な高貴な材料層(3)を通じて出現するガラスシート(2)の側からの照明されたパターンの視覚化を許容している。
図3には、これが示されており、
図3は、石の外観が装飾層によって付与されており且つON/OFFサインが背景照明によって石の外観を通じて可視状態にある状態の本発明によるガラスパネル(1)を示している。
【0066】
また、本発明のガラス物品は、有利には、タッチ機能を更に有していてもよく、これは、例えば、照明されたサイン/ロゴ/パターン(即ち、
図3のオン/オフ機能)と関連するローカルタッチモードをもたらし得る。
【0067】
最後に、本発明は、コンソール、ダッシュボード、装飾インサート、などのような車両の内部グレージングとしての本発明によるガラス物品の使用にも関する。
【0068】
また、本発明によるガラス物品は、有利には、例えば、家具、ワードローブ、パーティション、テーブル、棚、壁クラッディング、又はスパンドレルとして使用することもできる。
【実施例】
【0069】
実施例1
白色大理石の外観を有する本発明によるガラスパネル1を以下のように製造した。
【0070】
まず、基本的にガラス(装飾層)の全体表面上において白色大理石を表す画像を形成するために、OCE Arizonaシリーズのキャノンプリンタによるデジタルインクジェット印刷により、エクストラクリアなアルミノシリケートの薄いガラスシート(Falcon(商標)ガラス、厚さが1.1mmであり、直径が10cmの丸い形状であり、LTDが91.7%である)に被覆/印刷した。このステップは、基本的に同一の厚さの5つのインク層(3、3’、3’’、3’’’、3’’’’)を最終的に得るために反復された。
【0071】
次いで、乾燥した後に、また同一のプリンタを使用することにより、(「不透明ゾーン」6を定義する)2つの重畳した同一の黒色に着色された上部層4、4’により、装飾層を被覆した。上部層は、正確に同一の方式によって不連続であり、(「半透明ゾーン」7を結果的に定義する)無限大記号を表す装飾層の一部分は被覆されなかった。(乾燥した)上部層の合計厚さは、約30μmであった。
【0072】
不透明ゾーン6について計測されたODは、1.82であった(計測は、密度計X-rite 361Tによって実施された)。半透明ゾーン7について計測された光透過率LTDは、74.8%であった。
【0073】
図4(a)は、この実施例1のガラスパネルに関係する特定の組立体を概略的に示している。
図4(b)~(c)は、ガラスシートの側からのガラスパネルの写真を示しており、(b)は、いかなる光源をも有しておらず、(c)は、ガラスシートの反対の側からのガラスパネルの背後に配置された光源を有する。これらの写真は、本発明のガラスパネルの白色大理石の良い外観及び背景照明された際の無限大記号のクリアな視覚化を良好に示している。
【0074】
実施例2
木材材料の外観を有する本発明によるガラスパネルを以下のように製造した。
【0075】
まず、ガラス(装飾層)の全体表面上において木材を表す画像を形成するために、OCE Arizonaシリーズのキャノンプリンタによるデジタルインクジェット印刷により、エクストラクリアなアルミノシリケートの薄いガラスシート(Falcon(商標)ガラス、厚さが1.1mmであり、直径が10cmの丸い形状であり、LTDが91.7%である)に被覆/印刷した。(乾燥した)装飾層3の厚さは、約10μmであった。
【0076】
次いで、乾燥した後に、同一のプリンタにより、1つの白色に着色された中間層9によって装飾層を完全に被覆した。(乾燥した)中間層の厚さは約10μmであった。そのL*a*b*パラメータは、L*=90.69、a*=-0.71、b*=2.19というものである。
【0077】
次いで、最後に、乾燥した後に、また同一のプリンタを使用することにより、(「不透明ゾーン」6を定義する)2つの重畳した同一の黒色に着色された上部層4、4’によって中間白色層を被覆した。上部層は、正確に同一の方式で不連続であり、(結果的に「半透明ゾーン」7を定義する)無限大記号を表す装飾層の一部分は被覆されなかった。(乾燥した)上部層の合計厚さは、約30μmであった。
【0078】
不透明ゾーン6について計測されたODは、3.40であった。半透明ゾーン7について計測された光透過率LTDは、7.6%であった。
【0079】
図5(a)は、この実施例2のガラスパネルに関係する特定の組立体を概略的に示している。
図5(b)は、本発明のガラスパネルの木材の良い外観を示すガラスシートの側からのガラスパネルの写真である。
【国際調査報告】