(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】接着領域を有する歯科対象物
(51)【国際特許分類】
A61C 13/225 20060101AFI20231214BHJP
A61C 13/23 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61C13/225
A61C13/23
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535792
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2021083499
(87)【国際公開番号】W WO2022128435
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ランプ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ティッヒ,ライムント
(72)【発明者】
【氏名】グロッセ-ホーンブリンク,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト,ヨナス
(57)【要約】
この発明は、1本あるいは複数本の歯(105)あるいは歯肉に歯科対象物(100)を固定するための、吸盤(107-1,・・・,107-n)の配列(101)を含んだ接着領域(103)を備えてなる、歯科対象物(100)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本あるいは複数本の歯(105)あるいは歯肉に歯科対象物(100)を固定するための、吸盤(107-1,・・・,107-n)の配列(101)を含んだ接着領域(103)を備えてなる歯科対象物(100)。
【請求項2】
吸盤(107-1,・・・,107-n)が10nmないし5mmの外径を有する請求項1に記載の歯科対象物(100)。
【請求項3】
吸盤(107-1,・・・,107-n)がポリウレタンアクリレートに基づいたポリマー、あるいはポリエチレンアクリレートに基づいたポリマーから形成される請求項1または2に記載の歯科対象物(100)。
【請求項4】
吸盤(107-1,・・・,107-n)が鐘形、球形、あるいは円筒形に形成される請求項1ないし3のいずれかに記載の歯科対象物(100)。
【請求項5】
吸盤(107-1,・・・,107-n)が中央突起部(109)を備えてなる請求項1ないし4のいずれかに記載の歯科対象物(100)。
【請求項6】
中央突起部(109)が球形あるいは円錐形である請求項5に記載の歯科対象物(100)。
【請求項7】
歯科対象物(100)が歯(105)を嵌め込むための凹状のリセスを有する接触面(111)を備え、その接触面上に接着領域(103)が配置される請求項1ないし6のいずれかに記載の歯科対象物(100)。
【請求項8】
配列(101)が第1の直径を有する第1の吸盤(107-1,・・・,107-n)群と第2の直径を有する第2の吸盤群を含んでなる請求項1ないし7のいずれかに記載の歯科対象物(100)。
【請求項9】
吸盤(107-1,・・・,107-n)が接着領域(103)内の円筒形のリセスによって形成される請求項1ないし8のいずれかに記載の歯科対象物(100)。
【請求項10】
接着領域(103)が10μmないし5mmの厚みを有する請求項1ないし9のいずれかに記載の歯科対象物(100)。
【請求項11】
吸盤(107-1,・・・,107-n)が六角形の配列(101)で配置される請求項1ないし10のいずれかに記載の歯科対象物(100)。
【請求項12】
接着領域(103)が粘着層(113)によって接触面(111)に固定されるか、および/または接着領域(103)がセンサおよび/またはセンサハウジングに対する嵌合形状を形成するための接続要素を含むか、および/または接着領域(103)がセンサおよび/またはセンサハウジングに対してラッチングするためのラッチ要素を含んでなる請求項1ないし11のいずれかに記載の歯科対象物(100)。
【請求項13】
接着領域(103)、歯科対象物(100)、および/またはハウジング(115)がセンサユニットに唾液を誘導するための1本あるいは複数本の流路(125)を含んでなる請求項1ないし12のいずれかに記載の歯科対象物(100)。
【請求項14】
歯科対象物(100)が電子センサユニットおよび/またはセンサハウジングを含んでなる請求項1ないし13のいずれかに記載の歯科対象物(100)。
【請求項15】
歯科対象物(100)の、吸盤(107-1,・・・,107-n)の配列(101)を備えた接着領域(103)を、1本あるいは複数本の歯(105)または歯肉に押圧するステップを有してなる、
歯科対象物(100)の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、接着領域を有する歯科対象物と、歯科対象物を固定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の口腔内における固定可能性は、機械式の締め付けあるいは接着(粘着)による化学方式によって達成される。既知の締め付け方法には、例えば1本あるいは複数の歯の周りに延設されたクランプ、歯列弓の一部あるいは全部を包含する歯科用アライナ、または1本あるいは複数の歯の周りに延設された臼歯バンドが含まれる。接着は、接着剤またはセメントを使用して形成される。接着による固定は簡単に取り外すことが不可能で歯科医師によって除去されなければならず、またエナメル質の損傷を伴わずには不可能である。そのことが患者にとっても問題になる可能性があり、その理由は、患者が口腔衛生のために自身で異物を取り外すことができなくなり、また健康な歯に損傷を与えることなく行うことも不可能なためである。
【0003】
その他の固定可能性は、粘着性クリームを使用して達成することができる。しかしながら、粘着性クリームは歯肉上のみにおいて機能し、歯自体の上では機能しない。また、粘着性クリームは大きな面積上(総義歯)でのみ適用可能である。さらに、近年の粘着性クリームは弱い固定力しか提供せず、従って飲み込む危険のある異物を夜間にわたって装着することは不可能である。それに対してクランプ方式は歯質を損傷させる危険性があり、それどころか圧力によって歯を移動させる可能性もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、強力に接着しかつ可逆性である、口腔内における歯科対象物の固定を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題は、独立請求項の対象によって解決される。技術的に好適な実施形態が、従属請求項、発明の詳細な説明、および添付図面の対象である。
【0006】
第1の態様によれば、1本あるいは複数本の歯あるいは歯肉に歯科対象物を固定するための、吸盤の配列を含んだ接着領域を備えてなる歯科対象物によって前記の技術的な課題が解決される。多数の微細な吸盤の技術的な利点は、それらの吸盤が湾曲した面上でも高い接着力を可能することであり、その理由は、歯の湾曲がマイクロメートルの領域では平坦とみなされるためである。そのため、十分に強力な合計接着力を保証するためには、吸盤のうちの一部のみが歯に接着すれば十分である。加えて、この歯科対象物によって固定の解除性も提供され、従って歯科対象物を取り外した後に患者が通常の口腔衛生を実行することが可能になり、歯科対象物による二次疾病は発生しない。それによって、歯科対象物を取り外した後に歯科対象物の下側あるいは周りの歯垢を洗浄することができる。患者は、いつでも歯科対象物を取り外し、再装着することが可能である。その場合に、エッチング、クランプ、ワイヤ、接着剤、および金属を全く使用しないため、歯が損傷することは無い。臼歯バンドのように、歯科対象物によって歯が動かされることはなく、また粘着性クリームも必要にならない。歯科対象物が側面のみに装着されるため、ブレースあるいは咬合床副子の場合に生じるような咬合面の浮き上がりも発生しない。
【0007】
この歯科対象物の技術的に好適な実施形態によれば、吸盤が10nmないし5mm、好適には10ないし50μmの外径を有する。それによって例えば、歯に対しての高い吸着効果が形成されるという技術的な利点が達成される。
【0008】
この歯科対象物の技術的に好適な別の実施形態によれば、吸盤がポリウレタンアクリレートに基づいたポリマー、あるいはポリエチレンアクリレートに基づいたポリマーから形成される。それによって例えば、極めて大きな接着力を有する材料が使用されるという技術的な利点が達成される。
【0009】
この歯科対象物の技術的に好適な別の実施形態によれば、吸盤が鐘形、球形、あるいは円筒形に形成される。それによって例えば、吸盤の縁部がより良好に歯に適合するという技術的な利点が達成される。
【0010】
この歯科対象物の技術的に好適な別の実施形態によれば、吸盤が中央突起部を備える。それによって例えば、吸盤を容易に再び解除し得るという技術的な利点が達成される。
【0011】
この歯科対象物の技術的に好適な別の実施形態によれば、中央突起部が球形あるいは円錐形である。それによっても例えば、吸盤を容易に再び解除し得るという技術的な利点が達成される。
【0012】
この歯科対象物の技術的に好適な別の実施形態によれば、歯科対象物が歯を嵌め込むための凹状のリセスを有する接触面を備え、その接触面上に接着領域が配置される。それによって例えば、歯科対象物の自律的な整合が実行されるという技術的な利点が達成される。
【0013】
この歯科対象物の技術的に好適な別の実施形態によれば、配列が第1の直径を有する第1の吸盤群と第2の直径を有する第2の吸盤群を含む。それによっても例えば、歯に対する接着効果をより改善し得るという技術的な利点が達成される。
【0014】
この歯科対象物の技術的に好適な別の実施形態によれば、吸盤が接着領域内の円筒形のリセスによって形成される。それによっても例えば、吸盤の製造を簡便な方式で実行し得るという技術的な利点が達成される。
【0015】
この歯科対象物の技術的に好適な別の実施形態によれば、接着領域が10μmないし5mm、好適には歯0.5ないし1.5mmの厚みを有する。それによっても例えば、極めて良好な歯への適合が形成されるという技術的な利点が達成される。
【0016】
この歯科対象物の技術的に好適な別の実施形態によれば、吸盤が六角形の配列で配置される。それによって例えば、均一な接着効果と良好な面利用が可能になるという技術的な利点が達成される。
【0017】
この歯科対象物の技術的に好適な別の実施形態によれば、接着領域が粘着層によって接触面に固定されるか、および/または接着領域がセンサおよび/またはセンサハウジングに対する嵌合形状を形成するための接続要素を含むか、および/または接着領域がセンサおよび/またはセンサハウジングに対してラッチングするためのラッチ要素を含む。前記の結合要素はノブとすることができる。それによっても例えば、接触面に対する接着領域の結合が改善されるとともに歯科対象物を固定することができるという技術的な利点が達成される。
【0018】
この歯科対象物の技術的に好適な別の実施形態によれば、接着領域が抗菌性の粒子を含む。それによって例えば、歯科対象物の装着中の炎症が防止されるという技術的な利点が達成される。
【0019】
この歯科対象物の技術的に好適な別の実施形態によれば、接着領域、歯科対象物、および/またはハウジングがセンサユニットに唾液を誘導するための1本あるいは複数本の流路を含む。それによっても例えば、唾液の特性を歯科対象物によって分析し得るという技術的な利点が達成される。
【0020】
この歯科対象物の技術的に好適な別の実施形態によれば、歯科対象物が電子センサユニットおよび/またはセンサハウジングを含む。それによって例えば、データを検出するためのセンサを口腔内に配置し得るという技術的な利点が達成される。
【0021】
第2の態様によれば、吸盤の配列を備えた歯科対象物の接着領域を1本あるいは複数本の歯または歯肉に押圧するステップを有してなる、歯科対象物の固定方法によって技術的な課題が解決される。それによって、上述した第1の態様に係る歯科対象物と同様な技術的な利点が達成される。
【0022】
次に、本発明の実施例につき、添付図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】液体通流用の流路を備えた接着領域の概略構成図である。
【
図4】異なった直径を有する吸盤を備えた接着領域を示した概略構成図である。
【
図5A】それぞれ異なった構成の吸盤の断面図である。
【
図5B】それぞれ異なった構成の吸盤の断面図である。
【
図5C】それぞれ異なった構成の吸盤の断面図である。
【
図5D】それぞれ異なった構成の吸盤の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、歯科対象物100を歯105に固定するための接着領域103を備えた歯科対象物100の概略構成図が示されている。歯科対象物100の接着領域103は、吸盤107-1,・・・,107-nの行列状の配列101を含む。吸盤107-1,・・・,107-nは、口腔内で歯科対象物100を固定するように機能する。接着領域103は、歯科対象物100の接触面111に固定される。
【0025】
1cm2当たりの吸盤107-1,・・・,107-nの個数は、例えば30000ないし40000個である。吸盤107-1,・・・,107-nの直径Dは、例えば50μmである。勿論、接着領域103の異なった区域に異なった直径を有する異なった吸盤を配置することもできる。例えば、配列101が第1の直径を有する第1の吸盤群107-1,・・・,107-nと第2の直径を有する第2の吸盤群を有することができる。それによって、接着領域103の接着力を歯105の異なった各領域に適応させることができる。吸盤107-1,・・・,107-nの配列101は、例えば六角形あるいは行列状の形態で存在し得る。また、吸盤107-1,・・・,107-nの配列101を不規則にすることもできる。
【0026】
接着領域103は、ポリウレタンアクリレートに基づいたポリマー、あるいはポリエチレンアクリレートに基づいたポリマーから形成され、例えば銀粒子、銅粒子、あるいはクロルヘキシジンとクロロキシレノールの混合物等を埋入させることにより、抗菌性の粒子を含むことができる。加えて、樹脂材料が、例えばペニシリン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、セファドロキシル、メトロニダゾールおよび/またはテトラサイクリン等の抗生物質を含むこともできる。さらに、フッ化カルシウム、水酸化カルシウム、またはフルオロ珪酸カルシウムグラス等のアルカリグラス充填物、さらにF-、OH-、あるいはCa2+等のイオン放出型材料等の、pH調整型の充填材料を使用することもできる。歯科対象物100は、次の構成部品:センサ、電子部品、アンテナ、バッテリー、あるいは多様な構成部品のためのハウジング等を含むことができる。ハウジング115は、樹脂、カーボン、あるいは金属から製造することができる。歯科対象物100は、予め解剖学的に歯105に適合させた形状を有する対象物とすることができる。
【0027】
その種の対象物は、例えば三次元プリンタによって個別に製造して患者の歯105の独自の形状に適合させることができ、例えば個別に形成された義歯アタッチメントとすることができる。一般的に、歯科対象物100は口内で歯105に固定される任意の対象物とし得る。吸盤107-1,・・・,107-nは、例えば三次元印刷方法、ホットスタンピング方法、または射出成形方法を使用して製造することができる。
【0028】
歯科対象物100および/または接着領域103は、凹状の湾曲117を有していてその中に歯105が収容されるようにして、解剖学的に予成形することができる。それによって歯科対象物100がより良好に歯105に接触する。さらに、接着領域103内に、歯105からハウジング115の内部へ液体(唾液)を誘導するための予加工された貫通口を設けることができる。液体は、定義された流量がセンサに対して通流するように、貫通口を介してセンサに誘導される。それによって、歯105からの液体をハウジング115の内部でセンサによって分析することができる。加えて、測定値に従って適応させた特定の微小環境を生成することも可能になる。
【0029】
空間的および解剖学的に歯105に適合する個別の歯科対象物100において、接着領域103の厚みを小さくすることができ、200μmの領域にすることができる。予加工された標準的な歯科対象物100の場合、接着領域103のより大きな可塑性の変形が発生するため、接着領域103の厚みはmmの領域になる。接着領域103の長さおよび幅における寸法は、例えば10mm×10mmであり得る。しかしながら、必要であれば一般的にその他の寸法を選択することもできる。
【0030】
接着領域103によって、非補綴物で非矯正器具の歯科対象物100(器具)を口腔内領域で可逆性に固定することができる。吸盤107-1,・・・,107-nによる固定のため、歯科対象物100をいつでも取り外しおよび再装着することができる。
【0031】
図2には、2個の吸盤107が示されている。吸盤107-1,・・・,107-nは鐘形に形成することができ、従って吸盤107-1,・・・,107-nの縁部が外方に向かって広がっている。吸盤107-1,・・・,107-nは鍋型の構造を有していて中央に球形あるいは円錐形の突起部109を備え、その突起部が吸盤107-1,・・・,107-nの内部に存在する。突起部109は、吸盤107-1,・・・,107-nの内部に液膜を保持するように作用するため、湿性の環境下において接着力を高めるように機能する。従って、突起部109が液体分子によってより高められた吸着力を発生させる。
【0032】
吸盤107-1,・・・,107-nは、多様な方式で接着領域103内に形成することができる。例えば、吸盤107-1,・・・,107-nを薄いフィルム(~50μm)119に内蔵させ、そのフィルムが片面で粘着層113によって固定され、もう片面上に吸盤107-1,・・・,107-nを備える。そのフィルムを個別に歯科対象物100上に接着することができ、従って吸盤フィルムを有する歯科対象物100を歯105に固定し得るようになる。
【0033】
接着領域103上に1個あるいは複数の雄型あるいは雌型に形成された接続要素を設けることができ、それが歯科対象物100との嵌合形状を形成する。その方式によって、接着領域103上に歯科対象物100あるいはハウジング115を固定することができる。その場合に、歯科対象物100はあるいはハウジング115が、接着領域103の結合要素と共働作用して嵌合を形成する、雄型あるいは雌型に形成された接続要素を備える。1個あるいは複数のラッチ要素を設けて、そのラッチ要素上でセンサあるいはハウジング115を接着領域103に固定することができる。
【0034】
加えて、接着領域103がフィルム119とハウジング115の間に、歯科対象物100を歯105に対して押圧した際に変形する、変形可能な層121を備えることができる。この変形可能な層121は、例えば弾力的に変形可能な発泡材料あるいはゴム、またはプラスチシン等の変形可能な塑性材料から形成される。この変形可能な層は、粘着層113を介して歯科対象物100のハウジング115と結合される。
【0035】
吸盤107-1,・・・,107-nの固定に際して、湿気によって密着性が高められるため、湿潤な環境(唾液)は有利である。引き離し応力の測定の結果、吸盤107-1,・・・,107-nの配列101が粘着性クリームに比べてより良好に歯105に接着されることが示された。
【0036】
歯科対象物100を固定する方法は、弾力性の吸盤107-1,・・・,107-nのマトリクス状の配列101を有する歯科対象物100の接着領域103を歯105に対して押圧するステップを含む。押圧によって吸盤107-1,・・・,107-nが歯105に強固に吸着し、歯科対象物100を所定の位置に保持する。
【0037】
図3には、液体通流用の流路125を備えた接着領域103の概略図が示されている。接着領域103、歯科対象物100、および/またはハウジング115内に、センサユニットによる測定を可能にするための貫通口123が配置される。貫通口123がセンサユニットのための測定領域を形成する。
【0038】
流路125は、接着領域103、歯科対象物100、および/またはハウジング115内で窪みによって形成され、センサユニットに液体(唾液)を誘導するか、あるいは測定領域の通気を可能にするように機能する。流路125は、水平、対角線、あるいは垂直方向に配置することができる。
【0039】
図4には、異なった直径を有する吸盤107を備えた接着領域103の概略図が示されている。接着領域103が、それぞれ異なった外径を有する吸盤107-1と107-2を備える。吸盤107-1の直径は、吸盤107-2の直径と比べて大きい。そのため、接着領域103を多様な表面に適応させ得るようになり、歯に対する接着効果を改善することができる。吸盤107-1が表面に対して十分に固定されない場合でも、小さい方の吸盤107-2によって接着作用を達成することができ、またその逆も可能である。
【0040】
しかしながら、一般的に吸盤107がさらに異なった直径を有するか、または直径をランダムに配分することもできる。その場合、特定の領域内において吸盤107がランダムな直径を有する。
【0041】
図5Aないし
図5Dには、異なった構成の吸盤107の断面が示されている。
図5Aにおいて、吸盤107が円筒形に形成される。この吸盤は中央に球形の突起部109を備え、その突起部が吸盤107の円筒形のリセスの内部に存在する。
図5Bにおいては、吸盤107が球形に形成される。この吸盤107は球形のリセスを有する。
図5Cにおいても吸盤107が円筒形に形成されるが、突起部109は備えていない。
図5Dにおいても吸盤107が円筒形に形成される。この吸盤は中央に逆円錐形の突起部109を備え、その突起部が吸盤107の円筒形のリセスの内部に存在し、円錐の大きい方の底面127が外方を向いている。
【0042】
吸盤107-1,・・・,107-nの配列(アレイ)101は、口腔内における歯科対象物100の取り外し可能な固定のために使用される。多数の微細吸盤の使用によって柔軟な固定が可能になる。
【0043】
本発明の個々の実施形態に関連して説明および図示した全ての特徴を、多様な組み合わせで本発明の対象とすることができ、それによって同時に有効な利点が達成される。
【0044】
全ての方法ステップは、各方法ステップを実行するために適した装置を使用して実行することができる。対象である特徴によって実行される全ての機能は、この方法における方法ステップとすることができる。
【0045】
本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって定義され、説明中に記述されたあるいは図示された特徴によって限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
100 歯科対象物
101 配列
103 接着領域
105 歯
107 吸盤
109 突起部
111 接触面
113 粘着層
115 ハウジング
117 湾曲
119 フィルム
121 塑性の層
123 貫通口
125 流路
127 底面
【国際調査報告】