(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】外科手術のための眼の画像の歪みの補償
(51)【国際特許分類】
A61F 9/008 20060101AFI20231214BHJP
A61B 34/10 20160101ALI20231214BHJP
【FI】
A61F9/008 120E
A61F9/008 130
A61B34/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535860
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 IB2021061510
(87)【国際公開番号】W WO2022130138
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】マリオ アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ビットネベル
(72)【発明者】
【氏名】フリーデリーケ ルービン-シュバルツ
(72)【発明者】
【氏名】エーフィ ゴーズ
(57)【要約】
特定の実施形態では、眼の寸法を調整するための眼科手術システムは、カメラ及びコンピュータを含む。カメラは、角膜を歪ませる患者インタフェースと接触している眼の手術画像を生成する。手術画像には、実際の瞳孔径の瞳孔が含まれる。コンピュータは、角膜が自然曲率を有する眼の診断画像にアクセスする。自然曲率は実際の瞳孔径に影響を与え、手術画像の実際の瞳孔径とは異なる診断画像の診断瞳孔径を生じる。コンピュータは、眼のモデルを使用して手術画像の実際の瞳孔径を調整し、角膜の曲率を考慮した屈折瞳孔径を生じ、屈折瞳孔径を使用して、診断瞳孔径と実際の瞳孔径との間の差を補償する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の寸法を調整するための眼科手術システムであって、
患者インタフェースと接触している前記眼の手術画像を生成するように構成されたカメラであって、前記眼は瞳孔を画定する角膜及び虹彩を有し、前記瞳孔は実際の瞳孔径を有し、前記角膜は前記患者インタフェースによって歪んでおり、前記手術画像は、前記実際の瞳孔径の前記瞳孔を含む、カメラと、
コンピュータであって、
前記歪んだ角膜を有する前記眼の前記手術画像にアクセスし、
自然曲率であって、前記実際の瞳孔径に影響を与え、前記手術画像の前記実際の瞳孔径とは異なる診断画像の診断瞳孔径を生じる自然曲率、を有する前記角膜を有する前記眼の前記診断画像にアクセスし、
眼モデルを使用して前記手術画像の前記実際の瞳孔径を調整して、前記角膜の前記曲率を考慮した屈折瞳孔径を生じ、
前記屈折瞳孔径を使用して、前記診断画像の前記診断瞳孔径と前記手術画像の前記実際の瞳孔径との間の差を補償するように構成されたコンピュータと、
を備える、眼科手術システム。
【請求項2】
レーザビームを前記眼に向けるように構成されたレーザデバイスを更に備え、
前記コンピュータが、
前記屈折瞳孔径を使用して前記眼に外科手術を行い、前記診断画像の前記診断瞳孔径と前記手術画像の前記実際の瞳孔径との間の差を補償する
ように更に構成されている、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項3】
前記眼のモデルを使用して前記手術画像の前記実際の瞳孔径を調整することが、
前記眼の、以下:前記眼の構造間の距離、前記眼の構造の屈折力、前記眼の構造の厚さ、及び前記眼の構造の曲率のうちの1つ又は複数を記述する情報にアクセスすることと、
前記情報を前記眼のモデルに含めることと、
を含む、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項4】
前記屈折瞳孔径を使用して前記差を補償することが、
前記屈折瞳孔径に従って、前記手術画像を前記診断画像と位置合わせすること
を含む、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項5】
前記屈折瞳孔径を使用して前記差を補償することが、
前記屈折瞳孔径に従って瞳孔重心シフトを決定することと、
前記瞳孔重心シフトに従って瞳孔中心を決定することと、
を含む、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項6】
前記コンピュータが、
前記眼モデルを使用して、前記手術画像の前記虹彩の寸法を調整し、
前記調整された虹彩の寸法に従ってねじれを補正する
ように更に構成されている、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項7】
前記手術画像の前記虹彩の前記寸法を調整することが、
前記屈折瞳孔径に対する前記実際の瞳孔径の画像化比率を決定することと、
前記画像化比率に従って前記虹彩の前記寸法を調整することと、
を含む、請求項6に記載の眼科手術システム。
【請求項8】
前記調整された虹彩構造に従ってねじれを補正することが、
前記虹彩の前記寸法に従って前記虹彩の疑似回転を識別することと、
前記疑似回転を考慮に入れてねじれを補正することと、
を含む、請求項6に記載の眼科手術システム。
【請求項9】
前記角膜が減少した曲率を有する、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項10】
前記角膜が実質的に平坦化されている、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項11】
眼の寸法を調整するための眼科手術システムであって、
患者インタフェースと接触している前記眼の手術画像を生成するように構成されたカメラであって、前記眼は瞳孔を画定する角膜及び虹彩を有し、前記瞳孔は実際の瞳孔径を有し、前記角膜は前記患者インタフェースによって歪んでおり、前記手術画像は、インタフェース瞳孔径の前記瞳孔を含む、カメラと、
コンピュータであって、
前記歪んだ角膜を有する前記眼の前記手術画像にアクセスし、
自然曲率であって、前記実際の瞳孔径に影響を与え、前記手術画像の前記インタフェース瞳孔径とは異なる診断画像の診断瞳孔径を生じる自然曲率、を有する前記角膜を有する前記眼の前記診断画像にアクセスし、
眼モデルを使用して前記手術画像の前記インタフェース瞳孔径を調整して、前記角膜の前記曲率を考慮した屈折瞳孔径を生じ、
前記屈折瞳孔径を使用して、前記診断画像の前記診断瞳孔径と前記手術画像の前記インタフェース瞳孔径との間の差を補償する
ように構成されたコンピュータと、
を備える、眼科手術システム。
【請求項12】
レーザビームを前記眼に向けるように構成されたレーザデバイスを更に備え、
前記コンピュータが、
前記屈折瞳孔径を使用して前記眼に外科手術を行い、前記診断画像の前記診断瞳孔径と前記手術画像の前記インタフェース瞳孔径との間の差を補償する
ように更に構成されている、請求項11に記載の眼科手術システム。
【請求項13】
前記眼のモデルを使用して前記手術画像の前記インタフェース瞳孔径を調整することが、
前記眼の、以下:前記眼の構造間の距離、前記眼の構造の屈折力、前記眼の構造の厚さ、及び前記眼の構造の曲率のうちの1つ又は複数を記述する情報にアクセスすることと、
前記情報を前記眼のモデルに含めることと、
を含む、請求項11に記載の眼科手術システム。
【請求項14】
前記屈折瞳孔径を使用して前記差を補償することが、
前記屈折瞳孔径に従って、前記手術画像を前記診断画像と位置合わせすること
を含む、請求項11に記載の眼科手術システム。
【請求項15】
前記屈折瞳孔径を使用して前記差を補償することが、
前記屈折瞳孔径に従って瞳孔重心シフトを決定することと、
前記瞳孔重心シフトに従って瞳孔中心を決定することと、
を含む、請求項11に記載の眼科手術システム。
【請求項16】
前記コンピュータが、
前記眼のモデルを使用して、前記手術画像の前記虹彩の寸法を調整し、
前記調整された虹彩の寸法に従ってねじれを補正する
ように更に構成されている、請求項11に記載の眼科手術システム。
【請求項17】
前記手術画像の前記虹彩の前記寸法を調整することが、
前記屈折瞳孔径に対する前記インタフェース瞳孔径の画像化比率を決定することと、
前記画像化比率に従って前記虹彩の前記寸法を調整することと、
を含む、請求項16に記載の眼科手術システム。
【請求項18】
前記調整された虹彩構造に従ってねじれを補正することが、
前記虹彩の前記寸法に従って前記虹彩の疑似回転を識別することと、
前記疑似回転を考慮に入れてねじれを補正することと、
を含む、請求項16に記載の眼科手術システム。
【請求項19】
眼の寸法を調整するための眼科手術システムであって、
患者インタフェースと接触している前記眼の手術画像を生成するように構成されたカメラであって、前記眼は瞳孔を画定する角膜及び虹彩を有し、前記瞳孔は実際の瞳孔径を有し、前記角膜は患者インタフェースによって歪んでおり、前記手術画像は、前記実際の瞳孔径の前記瞳孔を含む、カメラと、
レーザビームを前記眼に向けるように構成されたレーザデバイスと、
コンピュータであって、
前記歪んだ角膜を有する前記眼の前記手術画像にアクセスし、
自然曲率であって、前記実際の瞳孔径に影響を与え、前記手術画像の前記実際の瞳孔径とは異なる診断画像の診断瞳孔径を生じる自然曲率、を有する前記角膜を有する前記眼の前記診断画像にアクセスし、
眼のモデルを使用して前記手術画像の前記実際の瞳孔径を調整し、前記角膜の前記曲率を考慮した屈折瞳孔径を生じ、前記眼のモデルを使用して前記手術画像の前記実際の瞳孔径を調整することは、前記眼の、以下:前記眼の構造間の距離、前記眼の構造の屈折力、前記眼の構造の厚さ、及び前記眼の構造の曲率のうちの1つ又は複数を記述する情報にアクセスすることと、前記情報を前記眼のモデルに含めることと、を含み、
前記眼のモデルを使用して前記手術画像の前記虹彩の寸法を調整し、前記調整された虹彩の寸法に従ってねじれを補正し、前記手術画像の前記虹彩構造を調整することは、前記屈折瞳孔径に対する前記実際の瞳孔径の画像化比率を決定することと、前記画像化比率に従って前記虹彩の前記寸法を調整することと、を含み、前記調整された虹彩構造に従ってねじれを補正することは、前記虹彩の前記寸法に従って前記虹彩の疑似回転を識別することと、ねじれを補正するために前記疑似回転を考慮に入れることと、を含み、
前記屈折瞳孔径を使用して、前記診断画像の前記診断瞳孔径と前記手術画像の前記実際の瞳孔径との間の差を補償し、前記屈折瞳孔径を使用して前記差を補償することは、
前記屈折瞳孔径に従って瞳孔重心シフトを決定することと、前記瞳孔重心シフトに従って瞳孔中心を決定することと、
前記屈折瞳孔径に従って前記手術画像を前記診断画像と位置合わせすることと、
を含み、
前記屈折瞳孔径を使用して前記眼に外科手術を行い、前記診断画像の前記診断瞳孔径と前記手術画像の前記実際の瞳孔径との間の差を補償する
ように構成されている、コンピュータと、
を備える、眼科手術システム。
【請求項20】
前記角膜が実質的に平坦化されている、請求項19に記載の眼科手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、眼科手術システムに関し、より詳細には、外科手術のための眼の画像の歪みを補償することに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科レーザ手術システムは、パルスレーザビームを生成して、眼に対して外科手術を行う。いくつかの手術では、レーザビームは、レーザ焦点スポットパターンに従って眼の特定のポイントに光切断を生じさせる。レーザビームがパターンに正確に一致する光切断を生じさせ得るように、眼は、手術中はずっと動かないようにされなければならない。
【0003】
手術中に定められた位置に眼を保持するために、通常、患者インタフェース(patient interface、PI)が使用される。患者インタフェースは、通常、手術中にレーザビームが手術部位に作用することを可能にするために、定められた位置に眼を固定する真空減圧を利用することにより眼に取り付けられる。特定の患者インタフェースは、角膜の形状を変化させる。例えば、患者インタフェースは、角膜を実質的に平坦化することさえある圧力を角膜に加えることがある。角膜の形状を変えると、通常、角膜の屈折特性が変わる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
特定の実施形態では、眼の寸法を調整するための眼科手術システムは、カメラ及びコンピュータを含む。カメラは、患者インタフェースと接触している眼の手術画像を生成する。眼には角膜と虹彩があり、実際の瞳孔径を持つ瞳孔を画定する。角膜は、患者インタフェースによって歪んでいる。手術画像には、実際の瞳孔径の瞳孔が含まれる。コンピュータは、歪んだ角膜を有する眼の手術画像にアクセスし、実際の瞳孔径に影響を与えて手術画像の実際の瞳孔径とは異なる診断画像の診断瞳孔径を生じる自然曲率を有する角膜を備える眼の診断画像にアクセスし、眼のモデルを使用して手術画像の実際の瞳孔径を調整して角膜の曲率を考慮した屈折瞳孔径を生じ、屈折瞳孔径を使用して、診断画像の診断瞳孔径と手術画像の実際の瞳孔径との間の差を補償する。
【0005】
実施形態は、以下の特徴のうちの、何れも含まないか、1つ、2つ以上、又はすべてを含んでもよい。眼科手術システムは、レーザビームを眼に向けるレーザデバイスを更に備える。コンピュータは更に、屈折瞳孔径を使用して眼に外科手術を行い、診断画像の診断瞳孔径と手術画像の実際の瞳孔径との間の差を補償する。眼のモデルを使用して手術画像の実際の瞳孔径を調整することには、眼の、以下:眼の構造間の距離、眼の構造の屈折力、眼の構造の厚さ、及び眼の構造の曲率のうちの1つ又は複数を記述する情報にアクセスすることと、この情報を眼のモデルに含めることと、が含まれる。屈折瞳孔径を使用して差を補償することには、次の操作:屈折瞳孔径に従って、手術画像を診断画像と位置合わせすること、が含まれる。屈折瞳孔径を使用して差を補償することには、次の操作:屈折瞳孔径に従って瞳孔重心シフトを決定することと、瞳孔重心シフトに従って瞳孔中心を決定することと、が含まれる。コンピュータは更に、眼のモデルを使用して、手術画像の虹彩の寸法を調整し、調整された虹彩寸法に従ってねじれを補正する。コンピュータは、屈折瞳孔径に対する実際の瞳孔径の画像化比率を決定することと、画像化比率に応じて虹彩の寸法を調整することと、によって、手術画像の虹彩の寸法を調整し得る。コンピュータは、調整された虹彩構造に従って、虹彩の寸法に従って虹彩の疑似回転を識別することと、ねじれを補正するために疑似回転を考慮に入れることによって、ねじれを補正し得る。角膜は、減少した曲率を有し得るか、又は実質的に平坦化され得る。
【0006】
特定の実施形態では、眼の寸法を調整するための眼科手術システムは、カメラ及びコンピュータを含む。カメラは、患者インタフェースと接触している眼の手術画像を生成する。眼には角膜と虹彩があり、実際の瞳孔径を持つ瞳孔を画定する。角膜は、患者インタフェースによって歪んでいる。手術画像はインタフェース瞳孔径を有する瞳孔を含む。コンピュータは、歪んだ角膜を有する眼の手術画像にアクセスし、実際の瞳孔径に影響を与えて手術画像のインタフェース瞳孔径とは異なる診断画像の診断瞳孔径を生じる自然曲率を有する角膜を備える眼の診断画像にアクセスし、眼のモデルを使用して手術画像のインタフェース瞳孔径を調整して角膜の曲率を考慮した屈折瞳孔径を生じ、屈折瞳孔径を使用して、診断画像の診断瞳孔径と手術画像のインタフェース瞳孔径との間の差を補償する。
【0007】
実施形態は、以下の特徴のうちの、何れも含まないか、1つ、2つ以上、又はすべてを含んでもよい。眼科手術システムは、レーザビームを眼に向けるように構成されたレーザデバイスを更に備える。コンピュータは更に、屈折瞳孔径を使用して眼に外科手術を行い、診断画像の診断瞳孔径と手術画像のインタフェース瞳孔径との間の差を補償する。眼のモデルを使用して手術画像のインタフェース瞳孔径を調整することには、眼の、以下:眼の構造間の距離、眼の構造の屈折力、眼の構造の厚さ、及び眼の構造の曲率のうちの1つ又は複数を記述する情報にアクセスすることと、この情報を眼のモデルに含めることと、が含まれる。屈折瞳孔径を使用して差を補償することには、次の操作:屈折瞳孔径に従って、手術画像を診断画像と位置合わせすること、が含まれる。屈折瞳孔径を使用して差を補償することには、次の操作:屈折瞳孔径に従って瞳孔重心シフトを決定することと、瞳孔重心シフトに従って瞳孔中心を決定することと、が含まれる。コンピュータは更に、眼のモデルを使用して、手術画像の虹彩の寸法を調整し、調整された虹彩寸法に従ってねじれを補正する。コンピュータは、手術画像の虹彩の寸法を、インタフェース瞳孔径と屈折瞳孔径の画像化比率を決定することと、画像化比率に応じて虹彩の寸法を調整することと、によって調整し得る。コンピュータは、調整された虹彩構造に従って、虹彩の寸法に従って虹彩の疑似回転を識別することと、ねじれを補正するために疑似回転を考慮に入れることによって、ねじれを補正し得る。
【0008】
特定の実施形態では、眼の寸法を調整するための眼科手術システムは、カメラ、レーザデバイス、及びコンピュータを含む。カメラは、患者インタフェースと接触している眼の手術画像を生成する。眼には角膜と虹彩があり、実際の瞳孔径を持つ瞳孔を画定する。角膜は、患者インタフェースによって歪んでいる。手術画像には、実際の瞳孔径の瞳孔が含まれる。レーザデバイスはレーザビームを眼に向ける。コンピュータは、歪んだ角膜を有する眼の手術画像にアクセスし、自然曲率を有する角膜を有する眼の診断画像にアクセスする。自然曲率は実際の瞳孔径に影響を与え、手術画像の実際の瞳孔径とは異なる診断画像の診断瞳孔径を生じる。コンピュータは、眼のモデルを使用して手術画像の実際の瞳孔径を調整し、角膜の曲率を考慮した屈折瞳孔径を生じ、ここで、眼のモデルを使用して手術画像の実際の瞳孔径を調整することは、眼の、以下:眼の構造間の距離、眼の構造の屈折力、眼の構造の厚さ、及び眼の構造の曲率のうちの1つ又は複数を記述する情報にアクセスすることと、この情報を眼のモデルに含めることと、が含まれる。コンピュータは、眼のモデルを使用して手術画像の虹彩の寸法を調整し、調整された虹彩の寸法に従ってねじれを補正し、ここで、手術画像の虹彩構造を調整することは、屈折瞳孔径に対する実際の瞳孔径の画像化比率を決定することと、画像化比率に従って虹彩の寸法を調整することと、を含み、調整された虹彩構造に従ってねじれを補正することは、虹彩の寸法に従って虹彩の疑似回転を識別することと、ねじれを補正するために疑似回転を考慮に入れることと、を含む。コンピュータは、屈折瞳孔径を使用して、診断画像の診断瞳孔径と手術画像の実際の瞳孔径との間の差を補償し、ここで、屈折瞳孔径を使用して差を補償することは、屈折瞳孔径に従って瞳孔重心シフトを決定することと、瞳孔重心シフトに従って瞳孔中心を決定することと、屈折瞳孔径に従って手術画像を診断画像と位置合わせすることと、を含む。コンピュータは、屈折瞳孔径を使用して眼に外科手術を行い、診断画像の診断瞳孔径と手術画像の実際の瞳孔径との間の差を補償する。
【0009】
実施形態は、以下の特徴を有しても又は有さなくてもよい: 角膜は、減少した曲率を有し得るか、又は実質的に平坦化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】特定の実施形態による、眼の画像の歪みを補償するように構成された眼科手術システムの一例を示す。
【
図2A】角膜の曲率が診断画像の瞳孔径にどのように影響するかを示す。
【
図2B】角膜の曲率が診断画像の瞳孔径にどのように影響するかを示す。
【
図3A】眼の診断及び手術画像化を説明する眼モデルの例を示す。
【
図3B】眼の診断及び手術画像化を説明する眼モデルの例を示す。
【
図4A】異なる前房深度(ACD)における実際の瞳孔径PDrealと屈折瞳孔径PDrefractedとの間の線形関係を示す。
【
図4B】異なる前房深度(ACD)における実際の瞳孔径PDrealと屈折瞳孔径PDrefractedとの間の線形関係を示す。
【
図4C】異なる前房深度(ACD)における実際の瞳孔径PDrealと屈折瞳孔径PDrefractedとの間の線形関係を示す。
【
図5】
図4A~4Cで説明されている、前房深度(ACD)と画像化比率PDreal/PDrefractedとの間の実質的な線形関係を示す。
【
図6】
図1のシステム10によって実行され得る、外科手術のための眼の画像の歪みを補償するための方法の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、説明及び図面を参照して、開示される装置、システム及び方法の例示的な実施形態を詳細に示す。説明及び図面は、網羅的であることも、或いは、特許請求の範囲を、図面において示され、説明において開示される特定の実施形態に限定することも意図するものではない。図面は可能な実施形態を表すが、図面は必ずしも縮尺通りではなく、実施形態をよりよく示すために特定の特徴部を簡略化、誇張、削除、又は部分的に分割している場合がある。
【0012】
眼の診断測定は、角膜が自然な湾曲状態にあるときに実行できる。この曲率は、構造が大きく見え得るように、眼の構造(例えば、瞳孔及び虹彩)から反射された光を屈折させる。手術中、角膜表面が構造のサイズに影響を与えないように、特定の患者インタフェースが角膜を平坦化する。したがって、診断画像と手術画像には違いがある場合がある。違いを補償するために、眼のモデルを使用して、手術画像の眼の構造の寸法を診断画像の眼の構造に対応するように調整する。
【0013】
図1は、特定の実施形態による、眼の画像の歪みを補償するように構成された眼科手術システム10の一例を示す。実施形態では、コンピュータは、眼のモデルを使用して、診断画像の診断瞳孔径と手術画像の実際の瞳孔径との間の差を補償する。角膜が患者インタフェースによって実質的に平坦化されると、手術画像が撮影される。平坦化された角膜は、通常、実際の瞳孔径の画像化には影響しない。角膜がその自然曲率になったときに診断画像が撮影される。曲率は実際の瞳孔径に影響を与え、実際の瞳孔径とは異なる診断瞳孔径を生じる。コンピュータは眼のモデルを使用して手術画像の実際の瞳孔径を調整し、角膜の曲率を考慮した屈折瞳孔径を生じる。次いで、コンピュータは、手術画像の屈折瞳孔径を使用して眼に対して外科手術を行い、診断瞳孔径と実際の瞳孔径との間の差を補償する。
【0014】
図示の例では、眼科手術システム10は、図示のように結合されたレーザデバイス15、患者インタフェース20、カメラ38、及び制御コンピュータ30を含む。レーザデバイス15は、図示のように結合された、コンピュータ30などのコンピュータによって制御可能なレーザ源12、スキャナ16、1つ又は複数の光学要素17、及び/又は集束対物レンズ18などの制御可能なコンポーネントを含む。患者インタフェース20は、図示のように結合された接触部分24(当接面26を有する)及びスリーブ28を含む。コンピュータ30は、図示のように結合されたロジック31、メモリ32(コンピュータプログラム34を格納する)、及びディスプレイ36を含む。
【0015】
眼科手術システム10は、角膜屈折手術又はレーザ凝固手術などの任意の適切な外科手術を実行することができる。外科手術は、角膜内のレーザパルスの標的位置を記述する関連するレーザ焦点パターンを有することができる。特定のタイプの手術、例えばレンチキュール抽出では、レーザ焦点パターンに従ってレーザパルスを正確に配置する必要があり、これには手術画像と診断画像の正確な位置合わせが必要である。
【0016】
システム10の部品に目を向けると、レーザデバイス15の例示的な概要として、レーザ源12は、超短パルスを有するレーザビームを生成し、レーザビームの伝搬方向は、z軸及び/又はz方向を規定する。スキャナ16は、z軸に直交するxy平面内にレーザビームの焦点を向ける。対物レンズ18は、眼22の角膜に向かって焦点を合わせる。
【0017】
特定の実施形態では、レーザ源12は、超短パルスを有するレーザビームを生成する。超短パルスとは、ピコ秒、フェムト秒、又はアト秒のオーダーなど、ナノ秒未満の持続時間を有する光パルスを指す。レーザビームは、300~1500ナノメートル(nm)の範囲の波長、例えば、300~650、650~1050、1050~1250、及び/又は1250~1500nm、例えば340~350nmの範囲の波長、例えば347nm±1nmの任意の適切な周波数を有することができる。レーザビームの焦点は、組織(例、角膜)においてレーザ誘起光破壊(laser-induced optical breakdown、LIOB)を生じさせて、組織において光切断を生じさせることができる。レーザビームは、正確な光切断を起こすために正確に集束させることができ、このことにより他の組織の不必要な破壊を軽減又は回避し得る。
【0018】
スキャナ16は、レーザビームの焦点を縦方向及び横方向に向ける。縦方向とは、レーザビームの伝搬の方向、すなわち、z方向を意味する。スキャナ16は、任意の適切な方法でレーザビームを縦方向に向けることができる。例えば、スキャナ16は、縦方向に調整可能なレンズ、可変屈折力のレンズ、又は焦点のz位置を制御できる変形可能なミラーを含むことができる。横方向とは、ビームの伝搬方向に垂直な方向、すなわちx方向及びy方向を意味する。スキャナ16は、任意の適切な方法でレーザビームを横方向に向けることができる。例えば、スキャナ16は、互いに垂直な軸の周りでチルトすることができる、一対のガルバノメトリック駆動型スキャナミラーを含み得る。別の例として、スキャナ16は、レーザビームを電気光学的に操作することができる電気光学結晶を含んでもよい。
【0019】
1つ(又は複数)の光学要素17は、レーザビームを集束対物レンズ18の方に向ける。光学要素17は、レーザビームに作用する(例えば、透過、反射、屈折、回折、コリメート、調整、成形、集束、変調、及び/又は作用する)ことができる。光学要素の例には、レンズ、プリズム、ミラー、回折光学要素(DOE)、ホログラフィック光学要素(HOE)、及び空間光変調器(SLM)が含まれる。この例では、光学要素17はミラーである。集束対物レンズ18は、患者インタフェース20を介して眼22のポイントの方にレーザビームの焦点を集束させる。この例では、集束対物レンズ18は対物レンズ、例えばfシータ対物レンズである。
【0020】
患者インタフェース20は、眼22の角膜と接して、眼22をレーザデバイス15に結合する。この例では、患者インタフェース20は、接触部分24に結合されたスリーブ28を有する。スリーブ28は、集束対物レンズ18に取り外し可能に結合する。接触部分24は、レーザビームに対して半透明又は透明であってもよく、角膜と接する当接面26を有する。当接面26は、例えば、平面、凸面、又は凹面など、任意の適切な形状を有し得る。
【0021】
カメラ38は、外科手術中に眼22の手術画像をリアルタイムで記録する。カメラ38の例としては、ビデオ、光干渉断層撮影(optical coherence tomography、OCT)、又は視線追跡カメラが挙げられる。カメラ38は、眼22の記録された手術画像を表す画像データをコンピュータ30に送達する。
【0022】
コンピュータ30は、角膜組織を光切断するための命令(コンピュータプログラム34に格納され得る)に従って、制御可能なコンポーネント(例えば、レーザ源12、スキャナ16、光学要素17、及び/又は集束対物レンズ18)を制御する。メモリ32は、コンピュータ30がアクセスできる情報を格納する。情報の例には、画像(例えば、手術及び/又は診断画像)、眼のモデル、特定の眼を記述する情報、瞳孔重心シフトを記述する情報、及び他の適切な情報が含まれる。
【0023】
特定の実施形態では、コンピュータ30は、眼のモデルを使用して、診断画像の診断瞳孔径と手術画像の実際の瞳孔径との間の差を補償する。実施形態では、コンピュータ30は、眼の手術画像及び診断画像にアクセスし、眼のモデルを使用して手術画像の実際の瞳孔径を調整し、角膜の曲率を考慮した屈折瞳孔径を生じさせる。例えば、コンピュータ30は、どのように眼のモデルが角膜の自然曲率を予測し、実際の瞳孔径PDrealに影響を与えるか、を決定して、屈折瞳孔径PDrefractedを決定する。次に、コンピュータ30は、屈折瞳孔径を使用して眼に対して外科手術を行い、診断瞳孔径と実際の瞳孔径との間の差を補償する。
【0024】
コンピュータ30は、屈折瞳孔径を使用して、屈折瞳孔径に従って手術画像及び診断画像を位置合わせするなど、任意の適切な方法で外科手術を実行することができる。特定の実施形態では、コンピュータ30は、屈折瞳孔径を使用して、瞳孔重心シフトを補償する。瞳孔重心シフトは、瞳孔径の変化に伴って瞳孔中心が移動するときに発生する。実施形態では、コンピュータ30は、手術画像の屈折瞳孔径に従って瞳孔重心シフトを決定し、瞳孔重心シフト及び手術画像の屈折瞳孔径に従って瞳孔中心を決定する。例えば、コンピュータ30は、屈折瞳孔径に関連する重心シフトを決定するために、瞳孔径及び関連する瞳孔重心シフトのテーブルにアクセスする。次に、コンピュータ30は重心シフトを適用して瞳孔中心を決定する。
【0025】
特定の実施形態では、コンピュータ30は眼のモデルを使用してねじれを補正する。ねじれとは、患者が座った状態から横になった状態に移動するときに発生する可能性がある眼のねじれを指す。虹彩などの非対称の眼の構造は、ねじれを補正するために使用できる。実施形態では、コンピュータ30は眼のモデルを使用して手術画像の虹彩の寸法を調整し、次いで、調整された虹彩の寸法に従ってねじれを補正する。コンピュータ30は、眼のモデルを使用して、手術画像の虹彩の寸法を、屈折瞳孔径に対する実際の瞳孔径の画像化比率を決定することと、画像化比率に応じて虹彩の寸法を調整することと、によって調整できる。これは、
図4A~4Cを参照してより詳細に説明される。
【0026】
コンピュータ30は、瞳孔サイズの変化、したがって虹彩の構造のシフトから生じる見かけの回転である疑似回転を考慮に入れることができるが、これは眼の実際のねじれを意味しない。実施形態では、コンピュータ30は、調整された虹彩構造に従って、調整された虹彩構造に従って虹彩構造の疑似回転を識別することと、ねじれを補正するために疑似回転を考慮に入れることとによって、ねじれを補正する。例えば、コンピュータ30は、屈折瞳孔径に関連する擬似回転を決定するために、瞳孔径及び関連する擬似回転のテーブルにアクセスする。これは、
図4A~4Cを参照してより詳細に説明される。
【0027】
図2A及び2Bは、角膜の曲率が診断画像の瞳孔径にどのように影響するかを示している。
図2Aは、眼22を測定する診断デバイス40を示し、眼22は、角膜50と、瞳孔径PDを有する瞳孔54を画定する虹彩52とを含む。診断デバイス40は、通常、角膜50と接触することなく、又は角膜50の形状を変化させることなく、眼22の画像を生成する。眼科手術システム10は、診断画像を使用して眼22を治療することができる。例えば、診断画像又は診断画像に基づく治療パターンは、眼22の手術画像と位置合わせされ得る。
【0028】
図示の例では、瞳孔54は、実際の瞳孔径PDrealを有する。角膜50の曲率は、虹彩52及び瞳孔54などの眼の構造から反射された光を屈折させ、画像化比率を変化させる。その結果、眼の構造の診断画像は、実際の寸法よりも大きな屈折寸法を有している。例えば、瞳孔54は、実際の瞳孔径PDrealよりも大きい屈折瞳孔径PDrefractedを有する。同様に、虹彩52は、実際の直径よりも大きい屈折直径を有する。
【0029】
図2Bは、眼22を圧平する眼科手術システム10の患者インタフェース20を示す。患者インタフェース20は、歪みが眼22の構造の寸法に影響を与えるように、角膜の形状を歪ませ得る。図示の例では、患者インタフェース20は、角膜50が眼の構造から反射された光を屈折させないように、角膜50を平坦化する。結果として、眼の構造の手術画像は、実際の寸法と実質的に同じ寸法を有する。例えば、瞳孔54は、実際の瞳孔径PDrealと実質的に同じサイズの瞳孔径を有する。他の例では、患者インタフェース20は、角膜の表面の曲率を減少させることはできるが、表面を平坦化することはできず、その結果、瞳孔は、実際の瞳孔径PDrealに近いが同じサイズではないインタフェース瞳孔径を有するようになる。
【0030】
図3A及び3Bは、眼の診断及び手術画像化を説明する眼モデルの例を示す。眼のモデルは、幾何光学を使用して、眼を通る光線の経路を記述する。例えば、Navarroモデルなどの標準化された眼のモデルなど、任意の適切な眼のモデルを使用することができる。
【0031】
コンピュータ30は、眼のモデルを使用して、任意の適切な方法で実際の瞳孔径を調整することができる。例えば、コンピュータ30は眼のモデルを使用して、所与の実際の瞳孔径PDrealに対応する屈折瞳孔径PDrefractedを決定し、及び/又は所与の屈折瞳孔径PDrefractedに対応する実際の瞳孔径PDrealを決定することができる。特定の実施形態では、コンピュータ30は、どのように眼のモデルが角膜の自然曲率を予測し、実際の瞳孔径PDrealに影響を与えるか、を決定して、屈折瞳孔径PDrefractedを決定する。特定の実施形態では、コンピュータ30は、どのように眼のモデルが角膜の(患者インタフェース20から生じる)減少した曲率を予測し、実際の瞳孔径PDrealに影響を与えるか、を決定して、インタフェース瞳孔径PDinterfaceを決定する。実施形態では、コンピュータ30は、この情報を使用して、インタフェース瞳孔径PDinterfaceと屈折瞳孔径PDrefractedとの間の関係を決定することができる。
【0032】
特定の実施形態では、コンピュータ30は、特定の眼22を記述する情報(例えば、測定値)を用いて眼のモデルをカスタマイズすることができる。例えば、情報は、眼の構造間の距離(例えば、前房深度及び/又は眼の長さ)、構造の屈折力(例えば、角膜及び/又は水晶体の屈折力)、構造の厚さ(例えば、水晶体の厚さ)、及び/又は構造の曲率(例えば、角膜、水晶体、及び/又は網膜の曲率)のうちの1つ又は複数を記述することができる。情報は、角膜がその自然曲率、歪んだ曲率、又は実質的に平坦化された状態を有する眼を記述することができる。
【0033】
この例では、モデルは角膜50、水晶体56、及び網膜58を持つ眼を示している。瞳孔面60は、瞳孔54が位置する平面である。
図3Aは、曲率を有する角膜50を有する眼のモデルを示す。角膜50の曲率は、一般に、水晶体56を通って入ってくる光線を網膜58上に集束させる。すなわち、光線は網膜58で出会うように実質的に収束する。そうすることで、光線は瞳孔面60でわずかに収束する。したがって、瞳孔面60で眼の構造から反射された光は、角膜50によって屈折され、実際の瞳孔径PDrealよりも大きい屈折瞳孔径PDrefractedを生じる。
【0034】
図3Bは、平坦化された角膜50を有する眼のモデルを示す。平坦化された角膜50は、光線に屈折作用を及ぼさない。水晶体56は光線をわずかに屈折させるが、これは瞳孔面60と網膜58の間で発生する。したがって、瞳孔径は、実際の瞳孔径PDrealと実質的に同じである。他の例では、患者インタフェース20は、角膜の表面の曲率を減少させることはできるが、表面を平坦化することはできず、その結果、瞳孔は、実際の瞳孔径PDrealに近いが同じサイズではないインタフェース瞳孔径を有するようになる。
【0035】
図4A、4B及び4Cは、異なる前房深度(ACD)における実際の瞳孔径PDrealと屈折瞳孔径PDrefractedとの間の線形関係を示す。比率PDreal/PDrefractedは、与えられた実際の寸法の屈折寸法又はその逆の推定値を提供する画像化比率である。例えば、実際の寸法Drealが与えられると、屈折寸法Drefractedは、Drefracted=PDrefracted/PDreal×Drealとして計算できる。屈折寸法Drefractedが与えられると、実際の寸法Drealは、Dreal=PDreal/PDrefracted×Drefractedとして計算できる。
【0036】
特定の実施形態では、コンピュータ30は、画像化比率PDreal/PDrefractedを使用して、ねじれを補正する。実施形態では、コンピュータ30は、屈折虹彩寸法を生じるために、画像化比率PDreal/PDrefractedに従って、手術画像における虹彩の実際の寸法を調整する。次に、コンピュータ30は、屈折した虹彩の寸法を使用してねじれを補正し、手術画像を診断画像と位置合わせする。特定の実施形態では、コンピュータ30は疑似回転を考慮に入れることができる。実施形態では、コンピュータ30は、屈折虹彩寸法を使用して虹彩構造の疑似回転を識別する。次に、コンピュータ30は、ねじれを補正する際に疑似回転を実際の回転として扱わない。
【0037】
患者インタフェース20が眼22を圧平すると、インタフェース20は角膜50を圧迫し、前房深度を減少させる。画像化比率PDreal/PDrefractedは、前房深度によって変化する。
図4Aは、3.50ミリメートル(mm)のACDにおける線形関係を示し、PDreal/PDrefractedは0.8833である。
図4Bは、3.05mmのACDにおける線形関係を示し、PDreal/PDrefractedは0.8983である。
図4Cは、2.50mmのACDでの線形関係を示しており、PDreal/PDrefractedは0.9166である。
【0038】
図5は、
図4A~4Cで説明した、前房深度(ACD)と画像化比率PDreal/PDrefractedとの間の実質的な線形関係を示す。
図5は、x軸に沿った前房深度に対するy軸に沿った画像化比率PDreal/PDrefractedをプロットするグラフ63を表す。この関係は、y=2-05x2-0.0334x+1~0.0334x+1で表すことができる。したがって、(圧平された眼の)前房深度と実際の瞳孔径PDrealが与えられると、屈折瞳孔径PDrefractedを決定することができる。
【0039】
図6は、
図1のシステム10によって実行され得る、外科手術のための眼の画像の歪みを補償するための方法の例を示す。この方法の特定のステップは、システム10の他のコンポーネントに命令を送るコンピュータ30によって実行され得る。
【0040】
この方法はステップ110で始まり、ここでコンピュータ30は眼の診断及び手術画像にアクセスする。コンピュータ30は、ステップ112で屈折瞳孔径を生じるために、眼のモデルを使用して手術画像の瞳孔径を調整する。例えば、コンピュータ30は、どのように眼のモデルが角膜の自然曲率を示し、実際の瞳孔径PDrealに影響を与えるか、を決定して、屈折瞳孔径PDrefractedを決定する。
【0041】
コンピュータ30は、ステップ114で、屈折瞳孔径を使用して瞳孔重心シフトを決定する。例えば、コンピュータ30は、屈折瞳孔径に関連する重心シフトを決定するために、瞳孔径及び関連する瞳孔重心シフトのテーブルにアクセスする。コンピュータ30は、ステップ116で、瞳孔重心シフトに従って瞳孔中心を決定する。例えば、コンピュータ30は、重心シフトを適用して瞳孔中心、すなわち診断瞳孔中心の位置を決定する。
【0042】
コンピュータ30は、ステップ120で、屈折瞳孔径を使用して手術画像の虹彩構造を調整する。例えば、コンピュータ30は、画像化比率PDreal/PDrefractedを決定し、画像化比率PDreal/PDrefractedに従った手術画像の眼のモデルに従って、虹彩の実際の寸法を調整して、屈折虹彩寸法を生じる。コンピュータ30はまた、屈折虹彩寸法を使用して虹彩構造の疑似回転を識別することができる。コンピュータ30は、ステップ122で、調整された虹彩構造を使用してねじれを補償する。例えば、コンピュータ30は屈折虹彩寸法を使用してねじれを補正し、手術画像を診断画像と位置合わせするが、ねじれを補正する際に疑似回転を実際の回転として扱わない。その後、方法が終了する。
【0043】
本明細書に開示のシステムのコンポーネント(制御コンピュータなど)及び装置は、インタフェース、ロジック、及び/又はメモリを含んでいてもよく、これらのうちの任意のものは、コンピュータハードウェア及び/又はソフトウェアを含み得る。インタフェースは、コンポーネントへの入力を受信し、且つ/又はコンポーネントから出力を送信することができ、通常、例えばソフトウェア、ハードウェア、周辺デバイス、ユーザ及びこれらの組み合わせ間で情報を交換するために使用される。ユーザインタフェース(例えば、グラフィックユーザインタフェース(GUI))は、ユーザがコンピュータと対話するために利用され得るインタフェースの一種である。ユーザインタフェースの例には、ディスプレイ、タッチスクリーン、キーボード、マウス、ジェスチャセンサ、マイク及びスピーカが含まれる。
【0044】
ロジックは、コンポーネントの動作を実行することができる。ロジックは、データを処理する、例えば命令を実行して入力から出力を生成する、1つ又は複数の電子デバイスを含み得る。そのような電子デバイスの例には、コンピュータ、プロセッサ、マイクロプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU))、及びコンピュータチップが含まれる。ロジックは、動作を実行するために電子デバイスによって実行できる命令をエンコードするコンピュータソフトウェアを含み得る。コンピュータソフトウェアの例には、コンピュータプログラム、アプリケーション、及びオペレーティングシステムが含まれる。
【0045】
メモリは、情報を記憶することができ、有形のコンピュータ可読及び/又はコンピュータ実行可能な記憶媒体を含み得る。メモリの例には、コンピュータメモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は読み出し専用メモリ(ROM))、マスストレージ媒体(例えば、ハードディスク)、リムーバブルストレージ媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)又はデジタルビデオ若しくは多用途ディスク(DVD))、データベース、ネットワークストレージ(例えば、サーバ)及び/又は他のコンピュータ可読媒体が含まれる。特定の実施形態は、コンピュータソフトウェアを用いてエンコードされたメモリを対象とすることができる。
【0046】
特定の実施形態に関して本開示を説明してきたが、実施形態の修正形態(例えば、変更形態、置換形態、追加形態、省略形態及び/又は他の修正形態)が当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に対する修正形態がなされ得る。例えば、本明細書で開示されたシステム及び装置に対する修正形態がなされ得る。当業者に明らかであるように、システム及び装置のコンポーネントは、統合若しくは分離され得るか、又はシステム及び装置の動作は、より多い、より少ない若しくは他のコンポーネントによって実行され得る。別の例として、本明細書において開示されている方法に対して変更を実施することができる。当業者には明らかであるように、方法は、より多い、より少ない、又は他のステップを含んでもよく、ステップは、任意の適切な順序で実行されてもよい。
【0047】
特許庁及び読者が請求項を解釈するのを助けるために、出願人は、特定の請求項において「のための手段(means for)」又は「のためのステップ(step for)」という単語が明示的に使用されていない限り、請求項又は請求項要素の何れもが、35U.S.C.§112(f)を想起することを意図していないことを言及しておく。請求項内の他の用語(例えば、「機構」、「モジュール」、「デバイス」、「ユニット」、「コンポーネント」、「要素」、「部材」、「装置」、「機械」、「システム」、「プロセッサ」、又は「コントローラ」)の使用は、出願人により、関連技術における当業者に知られている構造を指すと理解され、35U.S.C.§112(f)を想起することを意図していない。
【国際調査報告】