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特表2023-553476前処理された複合基板の製造方法、および前処理された複合基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】前処理された複合基板の製造方法、および前処理された複合基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/265 20060101AFI20231214BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20231214BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L21/265 Q
H01L21/02 B
H01L27/12 B
H01L21/265 Z
H01L21/265 V
H01L21/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535861
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021085294
(87)【国際公開番号】W WO2022128817
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020134222.5
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518351230
【氏名又は名称】エムアイツー‐ファクトリー ジーエムビーエイチ
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カサト,コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】クリッペンドルフ,フロリアン
【テーマコード(参考)】
5F152
【Fターム(参考)】
5F152LM09
5F152LN22
5F152LN27
5F152LP01
5F152LP02
5F152LP06
5F152LP07
5F152LP09
5F152MM18
5F152NN05
5F152NN27
5F152NQ02
(57)【要約】
【課題】電子半導体部品にさらに加工するための基礎として使用される、前処理された複合基板(18)を提供する。
【解決手段】前処理された複合基板(18)の製造方法は、エネルギーフィルタ(20)を用いたイオン注入によって、ドナー基板(12)にSiCの第1の層(21)をドープし、ドナー基板(12)に所定の破損部位(26)を生成し、ドナー基板(12)とアクセプタ基板(28)との間に結合接続を生成する。第1の層(21)は、アクセプタ基板(28)とドナー基板(12)の残りの部分(22)との間の領域に配置される。最後に、ドナー基板(12)を所定の破損部位(26)の領域で分割して前処理された複合基板(18)を生成し、前処理された複合基板(18)は、アクセプタ基板(28)と、該アクセプタ基板に接続され、ドナー基板(12)の第1の層(21)の少なくとも一部を構成するドープ層(32)とを有する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子半導体部品にさらに加工するための基礎として機能する前処理された複合基板(18)を製造するための方法であって、前記前処理された複合基板(18)が、アクセプタ基板(28)とそれに結合されたドープ層(32)を備える方法であり、
a)単結晶SiCを備えたドナー基板(12)を準備するステップと、
b)エネルギーフィルタ(20)を用いたイオン注入によって前記ドナー基板(12)の第1の層(21)をドーピングするステップであって、前記エネルギーフィルタ(20)が、前記ドナー基板(12)の前記第1の層(21)への注入によって生じるドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを適応させるための所定の構造プロファイルを有する微細構造膜であり、ドーピングにより前記ドナー基板(12)の前記第1の層(21)内に所定のドーパント深さプロファイルおよび/または所定の欠陥深さプロファイルが作成され、前記第1の層(21)が、イオンビーム(10)に面する前記ドナー基板(12)の第1の表面から所定のドーパント深さ(T)まで延在し、続いて前記ドナー基板(12)の残りの部分(22)が延在するステップと、
c)前記ドナー基板(12)内に意図された破損部位(26)を作成するステップと、
d)アクセプタ基板(28)を準備し、ドナー基板(12)とアクセプタ基板(28)との間に結合を製造するステップであって、前記第1の層(21)が前記アクセプタ基板(28)と前記ドナー基板(12)の前記残りの部分(22)との間の領域に配置されるステップと、
e)前記意図された破損部位(26)の領域で前記ドナー基板(12)を分割して前記前処理された複合基板(18)を作成するステップであって、前記前処理された複合基板(18)は、前記アクセプタ基板(28)と、それに結合されたドープ層(32)とを含み、前記ドープ層(32)は、少なくとも前記ドナー基板(12)の前記第1の層(21)のセクションを含むステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の層(21)が、3から15μmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドナー基板(12)が、高純度の高品質の半絶縁性SiC材料(HQSSiC)からなる結晶であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ドナー基板(12)が、4H、6H、または3CポリタイプのSiCから構成されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記イオンビーム(10)に面する前記ドナー基板(12)の表面が、c方向に対する垂直線から6°未満、好ましくは3°未満、より好ましくは0°の偏差を有することを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記ドナー基板(12)が、100μmを超え、好ましくは200μmを超え、より好ましくは300μmを超え、15cmまで、好ましくは10cmまでの厚さを有することを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ドナー基板(12)が、好ましくはSiCからなるキャリアウェハ(14)と、エピタキシャル層(16)とを有し、該エピタキシャル層(16)はドープされていないか、または1E15cm-3未満、好ましくは1E14cm-3未満のドーピングを有し、前記第1の層(21)は前記エピタキシャル層(16)の一部であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記エピタキシャル層(16)が、10μmを超え、好ましくは50μmを超え、より好ましくは80μmを超える厚さを有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記イオンビーム(10)に面する前記エピタキシャル層(16)の表面が、c方向に対する垂直線から6°未満、好ましくは3°未満、より好ましくは0°の偏差を有することを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記エピタキシャル層(16)が、4H、6H、または3CポリタイプのSiCから構成されることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の層(21)のドーピングが、前記第1の層(21)内のドーピング濃度または欠陥濃度で1E15cm-3から5E17cm-3までのpまたはnドーピングを与えることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の層(21)が、N、P、B、またはAlの元素のうちの1つのイオンでドープされることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の層(21)のドーピングが、実質的に一定のドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを与えることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の層(21)のドーピングが、階段状に下降するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを与え、階段が前記イオンビーム(10)に面する前記第1の層(21)の表面近くの領域に前記第1の層(21)の合計深さ(T)の最大40%まで、好ましくは最大30%まで形成されることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
最も高い段と最も低い段との間の濃度の差が、少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも500倍、特に好ましくは少なくとも1000倍であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記階段の側面領域の深さ方向の範囲が、階段状のプラトーの深さ方向の範囲よりも支配的であることを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の層(21)のドーピングにより、連続的に下降するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルが得られることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記連続的に下降するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルが、次の式に従ったプロファイルであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の層(21)の表面領域に接触層(24)を作成するステップ、または前記第1の層(21)の表面に接触層(24)を塗布するステップをさらに含み、前記ドナー基板(12)と前記アクセプタ基板(28)との間の結合が前記接触層(24)を介して確立され、アクセプタ基板(28)、接触層(24)、第1の層の残りの部分または第1の層(21)、前記ドナー基板(12)の残りの部分(22)の順序になることを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記接触層(24)がイオン注入によって作成されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記接触層(24)内のドーパント濃度が、前記第1の層の残りの部分または前記第1の層(21)内の平均ドーパント濃度よりも少なくとも100倍、好ましくは少なくとも1000倍、より好ましくは少なくとも10000倍、さらにより好ましくは少なくとも100000倍大きいことを特徴とする請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記接触層(24)内のドーパント濃度が1E17cm-3を超え、好ましくは1E19cm-3を超えることを特徴とする請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記意図された破損部位(26)が、前記第1の層(21)の領域内、好ましくは所定のドーピング深さ(T)に近い前記第1の層(21)の端部領域内にあり、前記端部領域の厚さは、特に好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下であることを特徴とする請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記意図された破損部位(26)が、前記ドナー基板(12)の残りの部分(22)の領域内にあり、さらに、ステップe)の後、エネルギーフィルタ(20)を使用して前記複合基板(18)内にイオン注入を実行するさらなるステップが、前記アクセプタ基板(28)から離れた側から実行される請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記複合基板(18)への前記イオン注入が、少なくとも前記ドープ層(32)まで及ぶことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記複合基板(18)への前記イオン注入は、前記ドープ層(32)のおよび補助ドープ層(38)の2つのドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルの組み合わせが、一定のプロファイル、前記アクセプタ基板(28)に向かって段階的に上昇するプロファイル、または前記アクセプタ基板(28)に向かって連続的に上昇するプロファイルとなるように行われることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記意図された破損部位(26)が、分割トリガーイオンのイオン注入によって作成されることを特徴とする請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
分割トリガーイオンが、前記ドナー基板(12)の全幅にわたって導入されることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
分割トリガーイオンが、前記ドナー基板(12)の幅の一部にわたってのみ導入されることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
分割トリガーイオンが、前記ドナー基板(12)の少なくとも1つのエッジ領域にのみ導入されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
分割トリガーイオンが、H、H、He、Bから選択されることを特徴とする請求項26から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
分割トリガーイオンが、0.5と10MeVの間、好ましくは0.5と5MeVの間、より好ましくは0.5と2MeVの間のエネルギーを有する高エネルギーイオンであることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
分割トリガーイオンの粒子線量が、それぞれの場合において1E15cm-2と5E17cm-2の間であることを特徴とする請求項27から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
分割トリガーイオンの前記イオンビームのエネルギー広がりが10-2未満、好ましくは10-4未満であることを特徴とする請求項27から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ドナー基板(12)の分割が、600℃と1300℃の間、好ましくは750℃と1200℃の間、より好ましくは850℃と1050℃の間の温度での前記複合基板(18)の熱処理によって引き起こされることを特徴とする請求項1から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記結合が、800℃と1600℃の間、好ましくは900℃と1300℃の間の温度で複合基板(18)を熱処理することによって確立されることを特徴とする請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記結合の確立と前記ドナー基板(12)の分割の両方が熱処理によって行われ、両方のステップが同時に行われることを特徴とする請求項1から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記結合を確立するステップの前に、結合すべき表面の少なくとも一方、好ましくは両方の前処理、特に湿式化学処理、プラズマ処理またはイオンビーム処理が行われることを特徴とする請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記アクセプタ基板(28)が、少なくとも1500℃まで熱的に安定であり、SiCの線膨張係数より20%以下、好ましくは10%以下偏った線膨張係数を有することを特徴とする請求項1から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記アクセプタ基板(28)が多結晶SiCまたはグラファイトから形成されることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
分割するステップの後に、意図された破損部位(26)の領域における複合基板(18)の表面の後処理、特に研磨および/または欠陥の除去が行われることを特徴とする請求項1から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前処理された前記複合基板(18)内の注入欠陥(42)が1500℃と1750℃の間の温度で焼き戻しされることを特徴とする請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
電子半導体部品にさらに加工するための基礎として機能する前処理された複合基板(18)であって、アクセプタ基板(28)と、それに結合された単結晶SiCのドープ層(32)とを含む前処理された複合基板(18)。
【請求項44】
前記ドープ層(32)が注入欠陥(42)を有することを特徴とする請求項43に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項45】
前記ドープ層(32)が、3μmから30μm、好ましくは3μmから15μmの厚さを有することを特徴とする請求項43または44に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項46】
前記ドープ層(32)が、4H、6Hまたは3CポリタイプのSiCから構成されることを特徴とする請求項43から45のいずれか一項に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項47】
前記ドープ層(32)の表面が、c方向に対する垂直線から6°未満、好ましくは0°の偏差を有することを特徴とする請求項43から46のいずれか一項に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項48】
前記ドープ層(32)が、1E15cm-3から5E17cm-3のドーピング濃度または欠陥濃度を有するpまたはnドーピングを有することを特徴とする請求項43から47のいずれか一項に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項49】
前記ドープ層(32)が、ドーパントとしてN、P、B、またはAlの元素のうちの1つのイオンでドープされていることを特徴とする請求項43から48のいずれか一項に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項50】
前記ドープ層(32)が、実質的に一定のドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを有することを特徴とする請求項43から49のいずれか一項に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項51】
前記ドープ層(32)が、前記アクセプタ基板(28)に向かう方向に階段状に上昇するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを有し、階段がドープ層(32)の合計深さの最大40%、好ましくは最大30%まで、前記アクセプタ基板(28)に面する前記ドープ層(32)の領域に形成されることを特徴とする請求項43から49のいずれか一項に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項52】
最も高い段と最も低い段との間の濃度の差が、少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも500倍、特に好ましくは少なくとも1000倍であることを特徴とする請求項51に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項53】
前記階段の側面領域の深さ方向の範囲が、階段状のプラトーの深さ方向の範囲よりも支配的であることを特徴とする請求項51または52に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項54】
前記ドープ層(32)が、前記アクセプタ基板(28)に向かう方向に連続的に上昇するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを与えることを特徴とする請求項43から49のいずれか一項に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項55】
前記連続的に上昇するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルが、次の式に従ったプロファイルであることを特徴とする請求項54に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項56】
前記ドープ層(32)に加えて、単結晶SiCからなる補助ドープ層(38)が前記ドープ層(32)と一体構成で設けられており、それぞれのドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルの重複領域(40)が、前記ドープ層(32)と前記補助ドープ層(38)との間の遷移部に存在することを特徴とする請求項43から55のいずれか一項に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項57】
前記ドープ層(32)と前記補助ドープ層(38)を組み合わせた全体のドーパントプロファイルが実質的に一定のプロファイル、前記アクセプタ基板(28)に向かう方向に連続的に上昇するプロファイル、または前記アクセプタ基板(28)に向かう方向に段階的に上昇するプロファイルであることを特徴とする請求項56に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項58】
前記アクセプタ基板(28)が少なくとも1500℃まで熱的に安定であり、SiCの線膨張係数からの偏差が20%以下、好ましくは10%以下である線膨張係数を有することを特徴とする請求項43から57のいずれか一項に記載の前処理された複合基板(18)。
【請求項59】
前記アクセプタ基板(28)が多結晶SiCまたはグラファイトから形成されることを特徴とする請求項58に記載の前処理された複合基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理された複合基板を製造する方法、および電子半導体部品にさらに加工するための基礎として機能する前処理された複合基板に関する。
【0002】
公称ブロッキング電圧が600Vを超える個別の高ブロッキングパワー半導体部品は、通常、シリコンとSiCの両方で垂直に構築される。これがダイオード、すなわちMPS(マージPINショットキー)ダイオード、ショットキーダイオード、またはp-nダイオードにとって意味することは、カソードが基板の表側に、アノードが基板の裏側に配置されていることである。同様の構成は、縦型パワーMOS(金属酸化物半導体)部品の場合にも適用できる。ゲート電極とソース電極は基板の表側にあり、ドレイン電極は基板の裏側にある。実際のパワーMOSFETの実際のトランジスタ素子またはチャネル領域は、表面に平行に配置される場合(D-MOS)、または表面に垂直に配置される場合(トレンチMOS)がある。SiC MOSFET、例えばトレンチトランジスタは、特定の構造が確立されている。
【0003】
ドリフトゾーン(=活性ゾーン、電圧吸収層)の幅は、必要な逆ブロッキング電圧に応じて調整される。例えば、シリコン内の600V MOSFET部品のドリフトゾーンの幅は約50μmである。
【0004】
いわゆるスーパージャンクション部品の場合、電圧吸収層の幅は、「単純な」縦型MOSFETに比べて若干狭くなる場合がある。このタイプの縦型部品の特別な特徴は、ドリフトゾーンが垂直のpドープカラムとnドープカラムの交互配置によって特徴付けられる。ブロッキングの場合に追加で導入されたpドーピングは、オン状態でソース電極とドレイン電極の間の抵抗を決定するnドープ領域の上昇した電荷を補償する。したがって、同じブロッキング能力で、オン抵抗は、従来の縦型MOSトランジスタと比較して、およそ最大10分の1に減少する可能性がある。実際のトランジスタ素子、つまりスーパージャンクションMOSFETアーキテクチャのチャネル領域は、表面に平行に(D-MOS)、または表面に垂直に(トレンチMOS)配置できる。
【0005】
縦型パワー半導体部品用のSiCの特定の材料特性には、特定の製造方法の提供と、チャネルおよびトランジスタ領域の特定のアーキテクチャの使用が必要である。
【0006】
通常、多くの縦型パワーダイオードまたはすべてのパワートランジスタ(MOSFETs)の活性ゾーンは、単結晶エピタキシャル層に形成される。これらのエピタキシャル層は、結晶キャリアウェハ上に形成または堆積される。これは、活性エピタキシャルゾーンのドーピングと垂直方向の広がり(厚さ)をそれぞれのブロッキング電圧に適合させることができ、高ドープキャリアウェハをドーピングに関して最適化して、オン抵抗への寄与を最小限に抑えることができることを意味する。
【0007】
特にSiC基板の場合、エピタキシャル層の堆積とさらに単結晶キャリアウェハの準備に莫大な費用がかかるため、上述の層構造の製造は複雑で費用がかかる。
【0008】
DE 10 2019 112 985 A1は、代替として、SiCウェハから基板を分割し、続いてエネルギーフィルタを使用してドリフトゾーンにイオン注入することにより、エピタキシャル堆積を行わずに半導体部品を製造することを提案している。
【0009】
本発明は、前処理された複合基板を製造する方法、およびそれに基づいて、複雑さを軽減し、より低コストで高性能、高品質な半導体部品を工業的に製造することができる前処理された複合基板を特定することを目的とする。
【0010】
この目的は、独立請求項1および43の特徴によって達成される。有利な構成は従属請求項の主題である。
【0011】
本発明によれば、電子半導体部品にさらに加工するための基礎として機能する前処理された複合基板を製造する方法であって、前処理された複合基板がアクセプタ基板とそれに結合されたドープ層を含む方法は、
a)単結晶SiCを含むドナー基板を準備するステップと、
b)エネルギーフィルタを用いたイオン注入によって、ドナー基板の第1の層をドーピングするステップであって、エネルギーフィルタが、ドナー基板の前記第1の層への注入によって生じるドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを適応させるための所定の構造プロファイルを有する微細構造膜であり、ドーピングによりドナー基板の第1の層に所定のドーパント深さプロファイルおよび/または所定の欠陥深さプロファイルが作成され、第1の層が、イオンビームに面するドナー基板の第1の表面から所定のドーパント深さまで延在し、続いてドナー基板の残りの部分が延在するステップと、
c)ドナー基板内に意図された破損部位を作成するステップと、
d)アクセプタ基板を準備し、ドナー基板とアクセプタ基板との間に結合を製造するステップであって、第1の層がアクセプタ基板とドナー基板の残りの部分との間の領域に配置されるステップと、
e)意図された破損部位の領域でドナー基板を分割して前処理された複合基板を作成するステップであって、前処理された複合基板は、アクセプタ基板と、それに結合されたドープ層とを含み、ドープ層は、少なくともドナー基板の第1の層のセクションを含むステップと、
を有する。
【0012】
第1の層は常に単結晶SiCで構成される。ドナー基板は、完全に単結晶SiCからなることが好ましい。
【0013】
第1の層の厚みは3から15μmが好ましい。イオン注入は、この程度の大きさの厚さにわたって実行可能である。
【0014】
好ましい実施形態では、ドナー基板は、高純度の高品質半絶縁性SiC材料(HQSSiC)からなる結晶である。特に、これは、元素不純物、特にN、B、Pの濃度が主に5E15cm-3未満である材料を意味すると理解される。これに関連して「主に」が意味するのは、基準が実質的に深さプロファイル全体に適用可能であるが、特定の領域、例えば表面では偏差が存在する可能性があるということである。
【0015】
好ましい実施形態では、ドナー基板は、4H、6H、または3CポリタイプのSiCから構成される。これらのポリタイプは、半導体部品の製造に有利であることがわかっている。
【0016】
イオンビームに面するドナー基板の表面は、c方向に対する垂直線からの偏差が6°未満、より好ましくは4°未満、より好ましくは3°未満、さらにより好ましくは0°である。4°の向きは現在、ほとんどの部品アーキテクチャで使用されている。0°の場合の特別な利点は、ドナーウェーハを表面と平行に切断できるため、1つのシリンダーからより多くの個々のウェハを取得できることである。
【0017】
ドナー基板は、好ましくは100μmを超え、好ましくは200μmを超え、より好ましくは300μmを超え、15cmまで、好ましくは10cmまでの厚さを有する。
【0018】
あるいは、ドナー基板は、好ましくはSiCからなるキャリアウェハと、エピタキシャル層とを有することができ、エピタキシャル層はドープされていないか、または1E15cm-3未満、好ましくは1E14cm-3未満のドーピングを有し、第1の層はエピタキシャル層の一部である。
【0019】
この場合、エピタキシャル層は10μmを超え、好ましくは50μmを超え、より好ましくは80μmを超える厚さを有することが好ましい。このような層の最大厚さは通常120μmである。
【0020】
ここでもまた、イオンビームに面するエピタキシャル層の表面が、c方向に対する垂直線から6°未満、より好ましくは4°未満、より好ましくは3°未満、さらにより好ましくは0°の偏差を有することが好ましい。
【0021】
ここでのエピタキシャル層は、4H、6H、または3CポリタイプのSiCから構成されることが好ましい。
【0022】
一般に、第1の層のドーピングは、第1の層内のドーピング濃度または欠陥濃度で1E15cm-3から5E17cm-3であるpまたはnドーピングを与えることが好ましい。このドーピング濃度または欠陥濃度は、多数の高性能部品のドリフトゾーン(活性層、電力吸収層)に非常に適している。ドーピングは、第1の層の厚さ全体にわたって一定であってもよいし、異なるドーピングプロファイルを示してもよい。
【0023】
第1の層は、好ましくは、N、P、B、またはAlの元素のうちの1つのイオンでドープされる。
【0024】
第1の層のドーピングにおけるイオンビームの一次エネルギー範囲は、1MeVと50MeVの間であることが好ましい。
【0025】
好ましい実施形態において、第1の層のドーピングは、一定のドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイル、あるいは実質的に一定のドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを与える。これは、完全に平坦なドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルからの偏差が20%未満、好ましくは10%未満であるプロファイルを意味すると理解される。実際には、プラトーには下降する側面が隣接している。つまり、プロファイルの低下はドーピング深さの領域で垂直でも急激でもない。
【0026】
代替構成では、第1の層のドーピングにより、階段状に下降するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルが得られ、段階は、イオンビームに面する第1の層の表面近くの領域に最大で第1の層の合計深さの最大40%まで、好ましくは最大30%まで形成される。
【0027】
好ましくは、ここでの最も高い段と最も低い段との間の濃度の差は、少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも500倍、特に好ましくは少なくとも1000倍である。
【0028】
ここでは、階段の側面領域の深さ方向の範囲が、階段状のプラトーの深さ方向の範囲よりも支配的である。
【0029】
代替構成では、第1の層のドーピングにより、連続的に下降するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルが得られる。
【0030】
ここで、連続的に下降するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルが次の式に従ったプロファイルであることが好ましい。
ここで、
maxは、最大ドーピング濃度であり、
αは、10と10,000の間の値であり、
zは、表面からの距離であり、
bは、層の厚さであり、
fは、0.95と1.05との間の公差係数であり、
は、バックグラウンドドーピングであり、
ここで、
ここで、
maxは、最大フィールドであり、
εは、半導体の比誘電率であり、
εは、真空中の誘電率であり、
は、電子の素電荷であり、
brは、ブレークスルー電圧であり、
そして、ここで、
【0031】
一般に、ドナー基板とアクセプタ基板との間の結合が確立される、第1の層の表面領域に接触層を作成するか、または第1の層の表面に接触層を塗布するさらなるステップが好ましい。接触層を介して、アクセプタ基板、接触層、第1の層の残りの部分または第1の層、ドナー基板の残りの部分という順序が生じる。これにより、ドナー基板とアクセプタ基板との間の特に良好な低抵抗接続を達成することができる。
【0032】
接触層は、イオン注入によって作成されることが好ましい。
【0033】
好ましくは、接触層内のドーパント濃度は、第1の層の残りの部分または第1の層内の平均ドーパント濃度よりも少なくとも100倍、好ましくは少なくとも1000倍、より好ましくは少なくとも10000倍、さらにより好ましくは少なくとも100000倍高い。これにより、非常に低抵抗の結合が実現され、半導体部品の界面への電界のパンチスルーが防止される。
【0034】
好ましい構成では、接触層内のドーパント濃度は、1E17cm-3を超え、より好ましくは1E19cm-3を超える。
【0035】
意図された破損部位は、好ましくは第1の層の領域内、より好ましくは所定のドーピング深さに近い第1の層の端部領域内にあり、端部領域はより好ましくは1μm以下である。このようにして、最小限の量のドープされた材料が分割後にドナー基板上に残る。
【0036】
別の構成では、意図された破損部位はドナー基板の残りの部分の領域にあり、さらに、ステップe)の後、複合基板へのイオン注入を行うさらなるステップは、アクセプタ基板から離れた側から実行される。これには、より大きな総厚を有する活性ゾーンが形成できるという利点がある。このようにして2つの異なる注入間でオーバーラップが可能になるため、異なる好ましいドーピングプロファイルを作成することも可能である。
【0037】
この代替構成のとの関連で、複合基板へのイオン注入により、少なくともドープ層まで広がる補助ドープ層にドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを提供することが好ましい。
【0038】
複合基板へのイオン注入は、好ましくは、ドープ層および補助ドープ層の2つのドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルの組み合わせが、一定のプロファイル、アクセプタ基板に向かって段階的に上昇するプロファイル、またはアクセプタ基板に向かって連続的に上昇するプロファイルとなるように行われる。
【0039】
ドープ層および補助ドープ層の2つのドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルの遷移領域における斜めに下降する側面は、互いに重なり合ってもよい。
【0040】
分割トリガーイオンのイオン注入によって意図された破損部位を作成することが好ましい。
【0041】
分割トリガーイオンは、非常に均一な分離表面を形成するために、ドナー基板の全幅にわたって導入されることが好ましい。
【0042】
あるいは、分割トリガーイオンは、ドナー基板の幅の一部にわたってのみ導入されてもよい。これにより、イオン注入の複雑さが軽減される。
【0043】
ドナー基板のエッジ領域のみに分割トリガーイオンを導入することが好ましい。
【0044】
好ましい実施形態では、分割トリガーイオンは、H、H、He、Bから選択される。
【0045】
原則として、分割トリガーイオンが0.5と10MeVの間、好ましくは0.5と5MeVの間、より好ましくは0.5と2MeVの間のエネルギーを有する高エネルギーイオンである場合に有利である。
【0046】
分割トリガーイオンの粒子線量は、それぞれの場合において、1E15cm-2と5E17cm-2の間であることが好ましい。この線量により、信頼性の高い分割が実現される。
【0047】
分割トリガーイオンのイオンビームのエネルギー広がり(ΔE/E)は、好ましくは10-2未満、より好ましくは10-4未満である。このようにして、意図された破損部位が最小の厚さを有し、意図された破損部位におけるイオンのエネルギー損失ピークが非常に鋭いことが保証される。
【0048】
ドナー基板の分割は、600℃と1300℃の間、好ましくは750℃と1200℃の間、より好ましくは850℃と1050℃の間の温度での複合基板の熱処理によって引き起こされることが好ましい。あるいは、機械的な方法も考えられる。
【0049】
好ましい実施形態では、結合は、800℃と1600℃の間、好ましくは900℃と1300℃の間の温度で複合基板を熱処理することによって確立される。
【0050】
この方法は、結合の確立とドナー基板の分割の両方が熱処理によって行われ、両方のステップが同時に行われるという点で簡略化されると考えられる。
【0051】
好ましくは、結合を確立するステップの前に、結合すべき表面の少なくとも一方、好ましくは両方の前処理、特に湿式化学処理、プラズマ処理またはイオンビーム処理が行われる。
【0052】
アクセプタ基板は、好ましくは少なくとも1500℃まで熱的に安定であり、SiCの線膨張係数から20%以下、好ましくは10%以下偏った線膨張係数を有する。これにより、複合基板の曲がりを効果的に防止することができる。
【0053】
特に好ましい構成では、アクセプタ基板は多結晶SiCまたはグラファイトから形成される。
【0054】
好ましくは、分割ステップの後に、意図された破損部位の領域における複合基板の表面の後処理、特に研磨および/または(表面近くの)欠陥の除去が続く。
【0055】
この方法の好ましい拡張では、前処理された複合基板の注入欠陥が1500℃と1750℃の間の温度で焼き戻しされる。これは、前処理された複合基板の製造中に達成することも、その後の電気部品へのさらなる加工のみで達成することもできる。
【0056】
電子半導体部品にさらに加工するための基礎として機能する、本発明による前処理された複合基板は、アクセプタ基板と、それに結合された単結晶SiCのドープ層とを含む。
【0057】
ドープ層は注入欠陥を有することが好ましい。
【0058】
ドープ層の厚さは3μmから25μmであることが好ましく、3μmから15μmであることがより好ましい。
【0059】
好ましい構成では、ドープ層は、4H、6H、または3CポリタイプのSiCから構成される。
【0060】
好ましくは、ドープ層の表面は、c方向に対する垂直から6°未満、好ましくは3°未満、より好ましくは0°の偏差を有する。
【0061】
ドープ層は、ドーピング濃度が1E15cm-3から5E17cm-3であるpまたはnドーピングを有することが好ましい。
【0062】
ドープ層は、好ましくは、N、P、B、またはAlの元素のうちの1つのイオンでドープされる。
【0063】
ドープ層は、実質的に一定のドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを有することが好ましい。
【0064】
好ましくは、ドープ層は、アクセプタ基板に向かう方向に段階的に上昇するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを有し、階段がドープ層の合計深さの最大40%、好ましくはドープ層の合計深さの最大30%まで、アクセプタ基板に面するドープ層の領域に形成される。
【0065】
最も高い段と最も低い段との間の濃度の差が、少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも500倍、特に好ましくは少なくとも1000倍であることも好ましい。
【0066】
階段の側面領域の深さ方向の範囲が、階段状のプラトーの深さ方向の範囲よりも支配的であることがさらに好ましい。
【0067】
好ましくは、ドープ層は、アクセプタ基板に向かう方向に連続的に上昇するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを提供する。
【0068】
連続的に上昇するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルは、好ましくは、次の式に従ったプロファイルである。
ここで、
maxは、最大ドーピング濃度であり、
αは、10と10000の間の値であり、
zは、表面からの距離であり、
bは、層の厚さであり、
fは、0.95と1.05との間の公差係数であり、
は、バックグラウンドドーピングであり、
ここで、
ここで、
maxは、最大電界であり、
εは、半導体の比誘電率であり、
εは、真空中の誘電率であり、
は、電子の素電荷であり、
brは、ブレークスルー電圧であり、
そして、ここで、
【0069】
前述の階段状のプロファイル、または連続的に上昇するプロファイルでは、2つの側面が考慮されている。第1に、このドーパントプロファイルにより、オン抵抗と所定の電圧安定性の間で最適な妥協点が得られる。第2に、アクセプタ基板に近いドーピングプロファイルの濃度が非常に高いため、界面への電界パンチスルーが排除される。
【0070】
一実施形態では、ドープ層に加えて、単結晶SiCの補助ドープ層が設けられ、それぞれのドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルの重複領域が、ドープ層と補助ドープ層との間の遷移部に存在する。2つのドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルは、重なり合う斜めに下降する側面を有する。ドープ層および補助ドープ層の2つのドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルの組み合わせは、一定のプロファイル、アクセプタ基板に向かって段階的に上昇するプロファイル、またはアクセプタ基板に向かって連続的に上昇するプロファイルであってもよい。
【0071】
好ましくは、ドープ層および補助ドープ層は、同じ種類のイオンでドープされる。ドープ層と補助ドープ層を合計した厚さは最大40μmである。
【0072】
アクセプタ基板は、少なくとも1500℃までは熱的に安定であり、SiCの線膨張係数からの偏差が20%以下、好ましくは10%以下である線膨張係数を有することが好ましい。
【0073】
特に好ましい構成では、アクセプタ基板は多結晶SiCまたはグラファイトから形成される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1は、本発明の方法で使用できるドナー基板の第1の構成の概略断面図である。
【0075】
図2は、本発明の方法で使用できるドナー基板の第2の構成の概略断面図である。
【0076】
図3は、ドナー基板を照射するためのエネルギーフィルタを備えた照射配置の概略図である。
【0077】
図4は、本発明の方法で使用できるエネルギーフィルタの作用モードの概略図である。
【0078】
図5は、異なる構造のエネルギーフィルタによって生成できる異なるドーピングプロファイルの概略図である。
【0079】
図6は、ドナー基板の第1の層のドーピングプロファイルと、その結果得られるドナー基板のドーピングプロファイルの概略図である。
【0080】
図7は、ドナー基板の第1の層のドーピングプロファイルの様々なオプションを示している。
【0081】
図8は、ドナー基板における接触層の作成または塗布の概略図を示している。
【0082】
図9は、ドナー基板内に意図された破損部位を作成する第1の変形例の概略図を示している。
【0083】
図10は、ドナー基板内に意図された破損部位を作成する第2の変形例の概略図を示している。
【0084】
図11は、ドナー基板とアクセプタ基板との間の結合の生成の概略図を示している。
【0085】
図12は、複合基板からドナー基板の残りの部分を分割する概略図を示している。
【0086】
図13は、分割部位の領域における複合基板の表面の後処理の概略図を示している。
【0087】
図14は、本発明による前処理された複合基板の一実施形態の断面の概略図を示している。
【0088】
図15は、本発明による前処理された複合基板のさらなる実施形態の断面図および対応するドーピングプロファイルを示している。
【0089】
図16は、ドナー基板から複合基板を複数作成するために使用される場合に、ドナー基板として機能するウェハバーの分割の概略図である。
【0090】
図17は、ドナー基板の部分マスキングを使用したドナー基板の第1の層のドーピングプロファイル、およびその結果得られるドナー基板の代替ドーピングプロファイルの概略図を示す。
【0091】
前処理された複合基板を製造するための本発明の方法は、単結晶炭化ケイ素(SiC)を含む、または完全に単結晶炭化ケイ素(SiC)からなるドナー基板12を準備することから始まる。図1および図2を参照。
【0092】
図1に示されるドナー基板12の実施形態は、高純度の高品質の半絶縁性SiC材料(HQSSiC)から構成されるウェハである。特に、これは、元素不純物、例えばN、B、Pの濃度が5E15cm-3未満である材料を意味すると理解される。これに関連して「主に」が意味するのは、基準が実質的に深さプロファイル全体に適用可能であるが、特定の領域、例えば表面では差異が存在する可能性があるということである。
【0093】
図1によるドナー基板12は、好ましくは100μmを超え、好ましくは200μmを超え、より好ましくは300μmを超え、15cmまで、好ましくは10cmまでの厚さを有する。特に、ドープされていない、または弱くnドープされたウェハバーの形態をとる場合がある。図16を参照。
【0094】
好ましい実施形態では、ドナー基板は、4H、6H、または3CポリタイプのSiCから構成される。これらのポリタイプは、それを用いて製造される半導体部品の特性にとって有利であることがわかっている。
【0095】
図示の実施形態では、ドナー基板12の上面は、c方向に対する垂直線から0°の偏差を有する。あるいは、c方向に対する垂直線から最大3°または最大6°の偏差が可能である。
【0096】
図2に示されるドナー基板12の実施形態は、好ましくはSiCからなるキャリアウェハ14と、SiCからなるエピタキシャル層16とを有するウェハと、であり、エピタキシャル層16はドープされていないか、または1E15cm-3未満、好ましくは1E14cm-3未満のドーピングを有する。ここでのエピタキシャル層は、4H、6H、または3CポリタイプのSiCから構成されることが好ましい。
【0097】
この場合、エピタキシャル層16の厚みは、10μmを超え、好ましくは50μmを超え、さらに好ましくは80μmを超えることが好ましい。このようなエピタキシャル層16の最大厚さは、一般に120μmである。
【0098】
ここで、エピタキシャル層16の上面のc方向に対する垂直線からの偏差は、6°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましく、0°であることがさらに好ましい。
【0099】
ドナー基板12が準備された後、ドナー基板12の第1の層21がドープされ(図6を参照)、完成した部品において、その後にドリフトゾーン(活性ゾーンまたは、電圧吸収ゾーンとも呼ばれる)の機能を引き受けるか部分的に引き受ける。ドナー基板12の第1の層21のこのドーピングは、エネルギーフィルタ20を使用するイオン注入によって行われる。対応する基本構造が図3に示されている。
【0100】
図3は、典型的には高真空にある照射チャンバ8を示している。照射チャンバ8は、基板ホルダ30内にドーピングされるドナー基板12を収容する。
【0101】
イオンビーム10は、粒子加速器(図示せず)によって生成され、照射チャンバ8内に導かれる。イオンビーム10のエネルギーは、エネルギーフィルタ20によってそこで拡散され、ドナー基板12に衝突して照射チャンバ8に照射される。あるいは、エネルギーフィルタ20は、照射チャンバ8内の、または照射チャンバ8にすぐ隣接したバルブで閉鎖可能な別個の真空チャンバ内に配置されてもよい。
【0102】
基板ホルダ30は静止している必要はなく、任意選択でドナー基板12をx-y内(シート面に垂直な面内)に移動させるための装置を備えていてもよい。別の有用な基板ホルダ30は、注入されるドナー基板12が固定され、注入中に回転するウェハホイールでもある。基板ホルダ30をビーム方向(z方向)に移動させることも可能である。さらに、基板ホルダ30には、必要に応じて、加熱器または冷却器が設けられてもよい。
【0103】
エネルギーフィルタ20の基本原理を図4に示す。単一エネルギーイオンビーム10のエネルギーは、微細構造膜として構成されたエネルギーフィルタ20を通過する際に、進入部位に応じて変化する。結果として生じるイオンビーム10のイオンのエネルギー分布は、ドナー基板12のマトリクス内の注入物質の深さプロファイルの修正をもたらす。E1は第1のイオンのエネルギーを示し、E2は第2のイオンのエネルギーを示し、cはドーピング濃度を示し、dはドナー基板12の深さを示す。この図は、右側に参照符号Aが付いた典型的なガウス分布を示しており、これはエネルギーフィルタ20を使用しない場合に生じる。対照的に、参照符号Bは、一例として、エネルギーフィルタ20を使用した場合に達成できる長方形の分布を示す。
【0104】
図5に示されるエネルギーフィルタ20のレイアウトまたは三次元構造は、エネルギーフィルタ20を用いて多数のドーパント深さプロファイルまたは欠陥深さプロファイルを作成するための基本的なオプションを示す。cは再びドーピング濃度を示し、dは再びドナー基板12内の深さを示す。フィルタ構造プロファイルは、原理的には、新しいフィルタ構造プロファイル、ひいては新しいドーパント深さプロファイルまたは欠陥深さプロファイルを得るために互いに組み合わせることができる。
【0105】
このようなエネルギーフィルタ20は、一般にシリコンから製造される。それらは、3μmと200μmの間、好ましくは5μmと50μmの間、より好ましくは7μmと20μmの間の厚さを有する。それらはフィルタフレーム(図示せず)内に保持されてもよい。フィルタフレームは、フィルタホルダ(図示せず)に交換可能に収容されてもよい。
【0106】
nドープされた第1の層21の好ましい形成には、窒素またはリンのイオンの注入が特に適しており、pドープ層の場合は、ホウ素またはアルミニウムのイオンの注入が特に適している。
【0107】
図6に示す第1の層21をドーピングする方法ステップの実施形態では、イオンはドナー基板12の前面からドナー基板12に注入される。短い黒の実線の矢印は、エネルギーフィルタ20を通過する最小エネルギーのイオンを示し、長い黒の実線の矢印は、エネルギーフィルタ20を通過する最大エネルギーのイオンを示す。A-A'断面における結果として得られるドーピングプロファイルが、座標系の右側に示されている。cはドーピング濃度を表している。ドーピングプロファイルは、図1によるドナー基板12の構成に基づいており、第1の層21全体にわたってほぼ均一である。第1の層21は、イオンビーム10に面するドナー基板12の表面から所定のドーピング深さTまで延在し、続いて、エネルギーフィルタによるイオン注入の影響を受けないドナー基板12の残りの部分22となる。
【0108】
第1の層21の厚さは、その後の構成要素における活性層の事前に確認された厚さに実質的に対応するか、活性層と電界停止層との組み合わせ、あるいは活性層と電界停止層そして表面的な機能ゾーンの組み合わせに実質的に対応することが好ましい。したがって、第1の層21の合計の厚さは、製造される半導体部品の性質、特に電圧クラスによって決定される。電圧クラスが高くなるほど、第1の層21は厚くなる。特に高い電圧クラスについては、図15およびそれに付随する説明を参照する。
【0109】
第1の層21の厚さは、3~15μmの間であることが好ましい。これは、SiCにおける上述の好ましいイオンタイプに対して現在実行可能なドーピング深さTに対応する。
【0110】
図7aから7cは、ドナー基板12の第1の層21における可能な好ましいドーピングプロファイルを示す。
【0111】
原則として、第1の層21のドーピングは、第1の層21内のドーピング濃度または欠陥濃度が1E15cm-3から5E17cm-3であるpまたはnドーピングをもたらす。
【0112】
図8は、第1の層21の表面領域において接触層24を作成する、または第1の層21の表面に接触層24を塗布する任意のステップの結果を示す。
【0113】
第1の層24へのイオン注入によって接触層24を作成することが好ましい。接触層24は、わずか10nmから1μmまでの厚さを有する。注入には、(エネルギーフィルタを用いずに)P、N、またはAlのイオンを使用することが好ましい。
【0114】
接触層24のドーパント濃度は、第1の層21の残りのまたは第1の層21内の平均ドーパント濃度よりも好ましくは少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも1000倍、より好ましくは少なくとも10000倍、さらにより好ましくは少なくとも100000倍高い。
【0115】
接触層24のドーパント濃度は、1E17cm-3を超えることが好ましく、1E19cm-3を超えることがより好ましい。
【0116】
例えば数ナノメートルの厚さの薄い接触層24を第1の層21に塗布することも可能である。これは、例えばスパッタリング堆積、蒸着、またはCVD堆積法によって達成される。接触層24は完全に覆う必要はなく、ナノ粒子から構成されていてもよい。
【0117】
接触層24の塗布と同時に、または塗布後に、表面のさらなる処理、例えば物理的エッチングを行ってもよい。
【0118】
次のステップでは、図9によれば、意図された破損部位26がドナー基板24内に作成される。意図された破損部位26は、図9の例では、第1の層21の領域内にあり、所定のドーピング深さTに近い第1の層21の端部領域にあることが好ましく、意図された破損部位26はドーピング深さTから離れており、従って第1の層21の端部からは好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下離れている。特に、下降する側面を有する長方形のプロファイルの場合、意図された破損部位26は依然としてプラトーの領域内にあるはずである。
【0119】
意図された破損部位26は、図9に黒点として概略的に示されている分割トリガーイオンのイオン注入によって作成されることが好ましい。ここではエネルギーフィルタは使用されない。図9によれば、分割トリガーイオンは、ドナー基板12の全幅にわたって導入される。分割トリガーイオンは、H、H、He、Bから選択されることが好ましい。分割トリガーイオンは、0.5~10MeVの間、好ましくは0.5~5MeVの間、より好ましくは0.5~2MeVの間のエネルギーを有する高エネルギーイオンである。水素については、イオンエネルギーが0.6MeVの場合には、意図された破損部位26は約5μmの深さに形成され、イオンエネルギーが1.0MeVの場合には約10μmの深さに形成され、イオンエネルギーが1.5MeVの場合には約20μmの深さに形成される。
【0120】
分割トリガーイオンの粒子線量は、それぞれの場合において、1E15cm-2と5E17cm-2の間であることが好ましい。分割トリガーイオンのイオンビームのエネルギー広がり(ΔE/E)は、好ましくは10-2未満、より好ましくは10-4未満である。分割トリガーイオンの注入においては、ドナー基板12内の温度が300℃未満、好ましくは200℃未満に維持されると有利である。この目的のために、ドナー基板12が置かれるチャックは任意に冷却される。
【0121】
これらのパラメータを使用すると、鋭いピークを持つドーピングプロファイルが作成される(図4のAで示されるガウス分布を参照)。このようにして、意図された破損部位26が極めて薄い厚さにわたって高ドーピングを確実に分布させることができる。ドナー基板12におけるイオンの侵入の変化(縦方向の分散σ)は、イオンビームの一次エネルギーに応じて、100nmと500nmの間だけであり、好ましくは200nmと400nmの間である。
【0122】
あるいは、図10に矢印および黒い水平バーで示すように、分割トリガーイオンは、ドナー基板12の幅の一部にわたってのみ、好ましくはドナー基板12の一方または両方の端部領域のみに導入されてもよい。このようにして、意図された破損部位26がセクションごとに事前に定義される。
【0123】
イオン注入の代替として、電子照射またはレーザー照射によって意図された破損部位26を形成することもできる。
【0124】
続いて、図11に示すように、ドナー基板12は、第1の層21の側を表にしてアクセプタ基板28に接着剤により結合させる。このようにして、第1の層21は、アクセプタ基板28とドナー基板12の残りの部分22との間の領域に配置される。図11に、ドナー基板12が裏返されることも示す曲線矢印で示すように、結合を確立するためにドナー基板12をアクセプタ基板28に向かって移動させるか、アクセプタ基板28をドナー基板12に向かって移動させるかは重要ではない。
【0125】
結合プロセスの中間結果が図11の左下に示されている。例えばアクセプタ基板28がドナー基板12に向かって移動した場合、層順序を逆にすることも同様に可能である。
【0126】
アクセプタ基板28には、すべての一連の材料が可能である。アクセプタ基板28は、好ましくは少なくとも1500℃まで熱的に安定であり、SiCの線膨張係数から20%以下、理想的には10%以下の偏差の線膨張係数を有する。アクセプタ基板28の材料の適切な例は、多結晶SiCまたはグラファイトである。
【0127】
図10および図11は、それぞれの場合において接触層24を示していないが、接触層24は存在することが好ましい。その場合、ドナー基板12とアクセプタ基板28との間の結合は接触層24を介して確立され、その結果、アクセプタ基板28、接触層24、第1の層21の残りの部分、または第1の層21、ドナー基板12の残りの部分22という順序が生じる。
【0128】
低抵抗結合は、中間結果として得られた基板を800℃と1600℃の間、より好ましくは900℃と1300℃の間の温度で熱処理することによって確立されることが好ましい。
【0129】
結合を確立するステップの前に、結合すべき表面の少なくとも一方、好ましくは両方の前処理、特に湿式化学処理、プラズマ処理またはイオンビーム処理を行ってもよい。処理された表面は接触層24であってもよい。また、アクセプタ基板28とドナー基板12とその後の低抵抗結合を生成するために、厚さ数ナノメートルの薄層を塗布することも考えられる。原則として、アクセプタ基板28とドナー基板12との間の極めて低い抵抗の接触および高温耐性の結合が重要である。
【0130】
図12は、意図された破損部位26の領域でドナー基板12を分割するステップの概略図を示し、アクセプタ基板28とそれに結合されたドープ層32を含む前処理された複合基板18を作成する。ここでドープ層32は、ドナー基板12の第1の層21の少なくとも一部を構成する。アクセプタ基板28から分割されたドナー基板12の部分34が除去される。
【0131】
ドナー基板12の分割は、600℃と1300℃の間、好ましくは750℃と1200℃の間、より好ましくは850℃と1050℃の間の温度での複合基板18の熱処理によって引き起こされることが好ましい。一実施形態では(図9および図10を参照)、注入されたイオンにより気泡が形成され、それが合体して分割を引き起こす。
【0132】
あるいは、ドナー基板12が意図された破損部位26で破損されるように、複合基板18に外力を印加してもよい。熱処理と外力の組み合わせも必要または有用である場合がある。特に、イオンがドナー基板12に部分的にのみ導入された場合には、外力の印加は避けられない。
【0133】
結合の確立とドナー基板12の分割の両方が熱処理によって行われる場合、状況によっては2つのステップを同時に実行することができる。
【0134】
図13の矢印で概略的に示すように、分割ステップの後、意図された破損部位26の領域における複合基板18の表面の後処理が、特に研磨および/または欠陥の除去によって行われてもよい。
【0135】
図14に概略的に示される注入欠陥42は、前処理された複合基板18のドープ層32において、好ましくは1500℃と1750℃の間の温度で最終的に焼き戻しされ得る。これは、低エネルギー注入の焼き戻しのための熱処理ステップにおける後の部品処理中、例えばソースドレインコンタクト注入、チャネル注入、p-JFET注入などに行われることが好ましい。
【0136】
また、ドナー基板12の部分34の分割中、および/またはドナー基板12とアクセプタ基板28との間の係合形成中に、対応する高温が使用され、そのようにして放射欠陥が焼き戻しされ得る場合には、注入欠陥42を焼き戻しするステップが既に実施されたとも考えられる。
【0137】
図8から図13は、図1によるドナー基板12を用いたこれまでの方法ステップを示し説明したが、それらは図2によるドナー基板12を用いても同様に実行可能である。その場合、ドナー基板12のエピタキシャル層16がアクセプタ基板28に結合されることが重要である。
【0138】
これまでの説明とは異なり、ドナー基板12とアクセプタ基板28との間の結合を生成するステップは、2段階で進行することもできる。例えば、最初に、低温で低い結合エネルギーで結合プロセスを実行し、その後の第2ステップで固化して、より高温で低い接触抵抗で高い結合強度または結合エネルギーを備えた結合を生成する。固化は、例えば、分割中または分割後、複合基板の表面処理中または表面処理後、または注入欠陥の焼き戻し中またはその後に行われてもよい。
【0139】
このようにして製造された前処理された複合基板18は、電子半導体部品にさらに加工するための基礎として機能し、図14に再度示されている。これは、アクセプタ基板28と、そこに接合された単結晶SiCのドープ層32とを含み、ここで、ドープ層32は、注入欠陥42(放射欠陥)を含むことが好ましい。また、アクセプタ基板28とドープ層32との間に接触層24を有していてもよい。
【0140】
ドープ層32は、好ましくは3μmから30μm、より好ましくは3μmから15μmの厚さを有する。それは、4H、6Hまたは3CポリタイプのSiCから構成されることが好ましい。ドープ層32の表面は、c方向に対する垂直線からの偏差が6°未満、好ましくは0°であることが好ましい。ドープ層32は、1E15cm-3から5E17cm-3のドーピング濃度または欠陥濃度を有するpまたはnドーピングを有することが好ましい。ドープ層32は、ドーパントとして、N、P、B、またはAlの元素のうちの1つのイオンでドープされることが好ましい。
【0141】
ドープ層32のドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルは、好ましくは、本質的にドナー基板12の第1の層21のドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルの反転から得られる。
【0142】
したがって、ドープ層32は、例えば、実質的に一定のドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを有してもよい。
【0143】
同様に、ドープ層32が、アクセプタ基板28に向かう方向に階段状に上昇するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを有することも可能であり、ここで、この階段は、アクセプタ基板28に面するドープ層32の領域にドープ層32の合計深さの最大40%まで、好ましくは最大30%まで形成される。
【0144】
ドープ層32は、アクセプタ基板28に向かう方向に連続的に上昇するドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルを与えることもできる。
【0145】
注入欠陥プロファイルは、本質的に、注入された外部原子濃度の深さプロファイルに従う。
【0146】
アクセプタ基板28は、少なくとも1500℃までは熱的に安定であり、SiCの線膨張係数からの偏差が20%以下、好ましくは10%以下の線膨張係数を有する。アクセプタ基板28は、多結晶SiCまたはグラファイトから形成されることがより好ましい。
【0147】
図15は、本発明の前処理された複合基板18の別の構成を断面で示し、その下に、矢印Fに対応する複合基板18の断面に沿ったドーパント濃度プロファイルを示す。これは、例えば1200Vより大きい非常に高度なブロッキング部品の製造に特に適している。
【0148】
この場合、前処理された複合基板18は、ドープ層32に加えて、単結晶SiCの補助ドープ層38を有する。ドープ層32と補助ドープ層38との間の遷移部には、それぞれのドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルの重複領域40が存在することが好ましい。
【0149】
図14に示す実施形態では、後の半導体部品において必要とされる活性層(ドリフトゾーン、電圧吸収層)は、ドープ層32のみによって形成され、したがって同時に、ドナー基板12における第1の層21または第1の層21の(好ましくは大きい)部分によって形成される。
【0150】
対照的に、図15のような実施形態における活性層は、ドープ層32と補助ドープ層38の組み合わせによって形成される。図15では、実質的に一定の累積ドーピングプロファイルが2つの成分プロファイルの重ね合わせから得ることができ、その一方、ドープ層32および補助ドープ層38のドーピングプロファイルを並置し、部分的に重複させることによって、他のドーピングプロファイルを形成することも可能である。したがって、ドープ層32および補助ドープ層38の2つのドーパント深さプロファイルおよび/または欠陥深さプロファイルの組み合わせからなる複合全体ドーピングプロファイルも、アクセプタ基板28に向かって段階的に上昇するプロファイル、またはアクセプタ基板28に向かって連続的に上昇するプロファイルとなり得る。
【0151】
このような組み合わせプロファイルは、ドナー基板12内の意図された破損部位26が第1の層21内ではなく、ドナー基板12へのイオン注入によってドープされていないドナー基板12の残りの部分22内に作成されることによって得られる。
【0152】
図12のように、意図された破損部位26での分割後、補助ドープ層38のドーピングは、エネルギーフィルタによるさらなるイオン注入によってアクセプタ基板28から遠い側から行うことができる。図3から図7に関して上記で行われた、エネルギーフィルタによるイオン注入に関する記述は、補助ドープ層38へのイオン注入にも同様に適用できる。補助ドープ層38の厚さは一般的に3~15μmの間である。このようにして、最大30μmのイオン注入によってドープされた活性ゾーンの合計厚さが得られる。
【0153】
原理的には、図1からのドナー基板12または図2からのドナー基板12のエピタキシャル層16が、複合基板18で必要とされるドープ層32の厚さの少なくとも2倍の厚さであれば、本発明の方法により、ドナー基板12から2つ以上の複合基板18、さらには多数の複合基板18を製造することが可能である。この効果は、ドナー基板12として厚いウェハバーの場合に特に高い。このようにして、製造コストを大幅に節約することが可能である。これを図16に模式的に示す。
【0154】
図17に示すように、エネルギーフィルタ20によるドナー基板12の第1の層21(および/または複合基板18の補助ドープ層38)へのイオン注入では、ドナー基板12の第1の層21内(および/または複合基板18の補助ドープ層38内)に1つまたは複数のアンドープ領域44を作成するためにマスク46を使用することができる。
【0155】
複合基板18はまた、完成した半導体部品に至るまでの途中のさらなる中間ステップ、例えばさらなる活性領域の注入、酸化物の作成、ゲート電極、コンタクト、ワイヤまたはビアの堆積などによって特徴づけることもできる。
【0156】
本発明の文脈において、「結合した」とは、直接的に結合すること、または間接的に、すなわち、さらなる元素の中間介在を有して結合することを意味するものと解される。2つの要素間の「結合」は、直接的または間接的な場合もある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】