(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】凹部を備えた縫製機用針
(51)【国際特許分類】
D05B 85/02 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
D05B85/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535944
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2021081981
(87)【国際公開番号】W WO2022128295
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500131561
【氏名又は名称】グロッツ-ベッケルト・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハウク,カイ-ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ヒレンブラント,ベルント オイゲン
(72)【発明者】
【氏名】ペロッティ,フロリアン
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CB03
3B150CB27
3B150CE26
3B150DD02
3B150DD04
(57)【要約】
縫製機用針(1)の刃(2)と生地との間の摩擦を低減し、経済的に大量に製造することができる縫製機用針(1)が記載される。縫製機用針(1)は、針穴(3)と少なくとも1つの凹部(5)とを備え、凹部(5)の上縁(6)と針穴(3)の軸(12)の横方向位置との間の距離が、凹部(5)の下縁(7)と針穴(3)の軸(12)の横方向位置との間の距離と異なっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に長手方向(L)に延びる刃(2)と、
長手方向(L)に対して直角な高さ方向(H)に縫製機用針(1)を貫通して延びる針穴(3)と、
高さ方向(H)および長手方向(L)に対して直角な横方向(B)における前記刃(2)の到達範囲を短縮する少なくとも1つの凹部(5)と、を有し、
少なくとも1つの前記凹部(5)は、高さ方向(H)において前記凹部(5)が終了する上縁(6)および下縁(7)を有し、
前記凹部(5)は、長手方向(L)における長さに沿った少なくとも1つの点で、その点の位置における前記刃(2)の高さ(10)の少なくとも30%に相当する高さ(11)を有しており、
前記凹部(5)の前記上縁(6)と前記針穴(3)の軸(12)の横方向(B)における位置との間の横方向(B)における距離に相当する上縁距離(O)は、
前記凹部(5)の前記下縁(7)と前記針穴(3)の軸(12)の横方向(B)における位置との間の横方向(B)における距離に相当する下縁距離(U)と異なる、ことを特徴とする縫製機用針(1)。
【請求項2】
前記凹部(5)は、長手方向(L)における前記凹部(5)の全到達範囲の少なくとも10%、ただし好ましくは少なくとも20%を占める均一形状部(37)を有し、前記凹部(5)は、前記均一形状部(37)上のすべての点で、該点における前記刃(2)の高さ(10)の少なくとも30%に相当する高さ(11)を有している、ことを特徴とする請求項1に記載の縫製機用針(1)。
【請求項3】
前記上縁距離(O)は前記下縁距離(U)よりも小さい、ことを特徴とする請求項1または2に記載の縫製機用針(1)。
【請求項4】
縫製機用針(1)は、エグリ(16)を含み、該エグリは、好ましくは成形プロセスによって製造され、少なくとも1つの前記凹部(5)と前記エグリ(16)は長手方向(L)に少なくとも部分的に重なる、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の縫製機用針(1)。
【請求項5】
前記凹部(5)の長手方向(L)における長さに沿った少なくとも1つの点で、
前記上縁(6)と前記刃(2)の高さ方向の最高点との間の高さ方向(H)の距離が、
前記刃の高さ(10)の最大で35%、ただし好ましくは前記刃の高さ(10)の最大で25%であることが成り立つ、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の縫製機用針(1)。
【請求項6】
縫製機用針(1)の表面(13)と前記針穴(3)の軸(12)との間の横方向(B)の距離を、高さ座標(h)に依存して記述する横方向距離関数(s(h))は、前記凹部(5)の高さ方向の到達範囲の少なくとも90%にわたって、ただし好ましくは前記凹部の高さ方向の到達範囲の全体にわたって、高さの増加とともに単調に、好ましくは狭義単調に減少する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の縫製機用針(1)。
【請求項7】
少なくとも1つの前記凹部(5)は、横方向(B)において、前記針穴(3)の軸(12)の位置からすべての点で離隔している、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の縫製機用針(1)。
【請求項8】
前記上縁(6)における前記凹部(5)の導入接線(14)は、高さ方向(H)に対して5°から70°、好ましくは10°から40°の導入角(15)をなす、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の縫製機用針(1)。
【請求項9】
実質的に長手方向(L)に延びる少なくとも1つの糸溝(4)が、前記針穴(3)から負の長手方向(L)に続き、高さ方向(H)に窪みを構成している、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の縫製機用針(1)。
【請求項10】
前記凹部(5)の長手方向(L)における長さに沿った少なくとも1つの点で、
前記下縁(7)と前記上縁(6)との間の領域において、高さ(H)方向および横方向(B)によって定まる平面において、縫製機用針(1)の表面(13)は、実質的に一定の半径を有する円弧として形成されており、
該円弧の中心は、好ましくは、高さ方向(H)および横方向(B)によって定まる平面において、縫製機用針(1)の断面の領域の外側に位置していることが成り立つ、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の縫製機用針(1)。
【請求項11】
前記凹部(5)の長手方向(L)における長さに沿った少なくとも1つの点で、
前記上縁(6)と前記下縁(7)との間の高さ方向(H)における距離に相当する前記凹部の高さ(11)は、横方向距離関数(s(h))の最大値の60%から170%、ただし好ましくは横方向距離関数(s(h))最大値の75%から160%であることが成り立つ、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の縫製機用針(1)。
【請求項12】
前記凹部(5)の長手方向(L)における長さに沿った少なくとも1つの点で、
前記上縁距離(O)は、横方向距離関数(s(h))の最大値の10%から60%、ただし好ましくは横方向距離関数(s(h))の最大値の25%から45%であることが成り立つ、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の縫製機用針(1)。
【請求項13】
前記凹部(5)の長手方向(L)における長さに沿った少なくとも1つの点で、
前記下縁距離(U)は、横方向距離関数(s(h))の最大値の50%から100%、ただし好ましくは横方向距離関数(s(h))の最大値の70%から95%であることが成り立つ、ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の縫製機用針(1)。
【請求項14】
縫製機用針(1)の製造方法であって、該縫製機用針は、
実質的に長手方向(L)に延びる刃(2)と、
長手方向(L)に対して直角な高さ方向(H)に縫製機用針(1)を貫通して延びる針穴(3)と、を有しており、
高さ方向(H)において上縁(6)および下縁(7)によって区切られる少なくとも1つの凹部(5)が、
前記凹部(5)の前記上縁(6)と前記針穴(3)の軸(12)の横方向(B)における位置との間の横方向(B)における距離に相当する上縁距離(O)が、
前記凹部(5)の前記下縁(7)と前記針穴(3)の軸(12)の横方向(B)における位置との間の横方向(B)における距離に相当する下縁距離(U)と異なるように、
高さ方向(H)および/または長手方向(L)の工具の移動のみによって製造される、ことを特徴とする縫製機用針(1)の製造方法。
【請求項15】
少なくとも1つの前記凹部(5)は、分離プロセスによって、好ましくはフライス加工によって、または、成形プロセス、好ましくはプレス加工によって製造される、ことを特徴とする請求項14に記載の縫製機用針(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
産業用縫製機のための縫製機用針は、何十年も前から知られており、さらなる発展を続けている。近年、合成繊維を使用した繊維製品が増加しており、同時に、縫製速度もますます向上している。その際、縫製工程において比較的低い温度で合成繊維が溶けることが問題となっている。縫製速度が上がると、針刃との摩擦によって生地に熱が伝わりやすくなる。その結果、縫製速度が速すぎると、針穴で合成繊維が溶けてしまうという好ましくない事態が発生する。このような問題にもかかわらず、縫製速度をさらに向上させるために、針刃と生地との摩擦を低減させる試みがすでに行われている。
【0002】
欧州特許出願公開第2896732号には、二重ねじれ溝を有する縫い針が記載されており、この縫い針は、2つのベベル部が配置されたエグリを含んでいる。ベベル部は、エグリの領域で針刃の断面を小さくするが、針刃と布の間の摩擦の減少にはつながらない。これは、ベベル部が、エグリにこのようなベベル部がない針の場合でも、縫製時に生地と接触しない位置に配置されているためである。
【0003】
独国特許発明第962949号には、この種の縫製機用針が記載されており、これは縫製中に発生する摩擦熱を低減することを目的としている。この目的のために、縫製機用針は、針穴のレベルから針刃とシャンクの間の円錐形の移行部まで延びる長手方向の溝を有する。これらの溝は、生地との刃の接触面を減らし、それによって摩擦も減らすことを目的としている。
【0004】
欧州特許出願公開第1391548号には、針刃の2つの直径方向に対向する側面に凹部を有する縫製機用針が記載されている。これらの凹部は、針刃と生地との接触面を減らし、その結果、摩擦を減らすことを目的としている。
【0005】
独国特許出願公開第3149383号には、針刃と生地との間の摩擦を低減することを目的とした縫製機用針の他の例が記載されている。断面で見ると、刃はV字形の形状を有し、凹部状のくぼみによって分離されているリブを有する。くぼみの形状は、リブの性質や数に合わせて調整される。例えば、ある実施形態では、星形の断面を持ち、多数の小さなくぼみによって互いに分離された7つのリブを備えている。また、別の実施形態では、4つのリブのみを有し、それぞれのケースでより大きなくぼみによって互いに分離されている。くぼみは、針刃の断面を小さくするように縫製機用針に貫入する凹部である。記載された「形状」は、生地との接触面を減らし、したがって摩擦を減らすこと、ただし針刃の表面積を増やし、それによって発生した熱が周囲の空気に伝達される速度を増加させることを意図している。
【0006】
この種の先行技術の縫製機用針は、通常の縫製機用針よりも製造コストが相当に高く、時には追加の製造工程を必要とすることが判明している。
【発明の概要】
【0007】
したがって、先行技術から出発して、本発明の目的は、縫製機用針の刃と生地との間の摩擦を低減し、かつ追加のまたはより複雑な製造工程を必要としない縫製機用針を提供することである。
【0008】
この目的は、以下の特徴を有する縫製機用針によって達成される。この縫製機用針は、
実質的に長手方向に延びる刃と、
長手方向に対して直角な高さ方向に縫製機用針を貫通して延びる針穴と、
高さ方向および長手方向に対して直角な横方向における刃の到達範囲を短縮する少なくとも1つの凹部と、を有し、
少なくとも1つの凹部は、高さ方向において凹部(5)が終了する上縁および下縁を有し、
凹部は、長手方向における長さに沿った少なくとも1つの点で、その点の位置における刃)の高さの少なくとも30%に相当する高さを有しており(それに応じて、凹部は、横方向と高さ方向によって定まる平面における断面であって、凹部の高さがこの断面における刃の高さの少なくとも30%に相当する少なくとも1つの断面を有しており)、
加えて、凹部の上縁と針穴の軸の横方向における位置との間の横方向における距離に相当する上縁距離は、凹部の下縁と針穴の軸の横方向における位置との間の横方向における距離に相当する下縁距離と異なっている。縫製機用針は、有利には、クランプ部(通常は、シャンク)を有し、このクランプ部は、横方向と高さ方向で定まる平面において、刃よりも大きな断面を有し、針穴側の長手方向において、移行部が続いている。横方向と高さ方向で定まる平面において、この移行部の断面は、長手方向において、針穴に向かって先細りになっている。この種の移行部を有する針の場合、刃は、針穴側の長手方向において移行部に隣接している。移行部の先細りは、様々な方法で実現することができる。当業者に知られている、刃とクランプ部との間の移行部のあらゆる種類が考えられる。例えば、移行部は、円錐軸が長手方向に延びる、実質的な円錐形であってもよい。縫製機用針の表面が、移行部に段差または半径を有することも同様に可能である。本発明に従う縫製機用針への凹部の形成は、当業者に既に知られている製造工程に組み込まれるものであってもよい。1つまたは複数の凹部は、高さ方向および/または長手方向の工具の移動と同時に製造することができ、それにより効率的な連続生産が可能となる。縫製機用針の凹部は、フライス加工などの切削方法、および/または、鍛造またはプレス加工などの成形方法を用いて製造することができる。工具が長手方向の凹部の形状に適合していれば、凹部の数や位置に関わりなく、必要なのは、高さ方向および/または長手方向に工具を移動させることのみである。凹部は、針用ブランク材を加工することによって形成され、上述の方法で横方向および高さ方向によって定まる平面において針用ブランク材の断面の面積を減少させる。加工前の針用ブランク材は、様々な断面形状、例えば、円形、楕円形、台形または三角形を有するものであってもよい。角が丸められた三角形の形状も考えられる。明示的に言及されていない他の形状も同様に有利であり得る。少なくとも2つの凹部を含む縫製機用針も有利であり、この場合、それぞれの凹部について、上縁距離は下縁距離と異なる。これらの凹部が、縫製機用針が針穴の軸と長手方向とによって定まる平面に沿って対称であるように配置されていると、特に有利である。
【0009】
凹部は、長手方向における凹部の全到達範囲の少なくとも10%、ただし好ましくは少なくとも20%を占める均一な形状の部分(均一形状部)を有し、この均一形状部上のすべての点における凹部の高さが、当該点における刃)の高さの少なくとも30%に相当すると、有利である。このようにすると、縫製機用針の比較的大きな部分にわたって摩擦が低減される。なお、均一形状部には、凹部の入口部分と出口部分は含まれない。これらは、凹部の端部であり、長手方向を向いている部分である。凹部の入口部分および出口部分において、上縁と縁は、一般に、接触するまで高さ方向に互いに接近する。凹部の高さ方向の高さが、均一形状部の長さに沿った少なくとも1つの点において最大であると有利である。凹部の均一形状部は刃の一部である、すなわち刃は凹部の均一形状部を含む。
【0010】
上縁距離が下縁距離よりも小さい場合、さらなる利点が得られる。少なくとも凹部の均一形状部において、上縁距離が下縁距離よりも小さい縫製機用針は、特に有利である。この種の形状は、少なくとも1つの製造工程の間に、工具が、上縁から下縁に向かって出発する高さ方向、または横方向の方向成分を有する移動を行う場合に特に有利である。上縁は、正の高さ方向において凹部を区切る。下縁は、負の高さ方向において凹部を区切る。正の高さ方向は、下縁から上縁に向かう方向である。負の高さ方向は、逆に、上縁から下縁に向かう方向である。正の高さ方向および負の高さ方向のこの定義は、本発明による教示のすべての可能な実施形態に適用される。好ましい実施形態では、縫製機用針は、少なくとも1つのエグリ(scarf)および/または少なくとも1つの糸溝を備え、エグリは、正の高さ方向を向く上側に配置され、糸溝は、好ましくは負の高さ方向を向く下側に配置される。糸溝は、正の高さ方向を向く上側に配置されるものであってもよい。
【0011】
縫製機用針が、エグリを含み、このエグリは、好ましくは成形プロセスによって製造され、
少なくとも1つの凹部とエグリは、少なくとも部分的に長手方向に重なると、
すべての実施形態において、さらなる利点が得られる。
縫製機用針に関連するエグリは、当業者には既に知られている。エグリの既知の実施形態はどれも有利である。「長手方向に重なる」とは、エグリと凹部とが長手方向に少なくとも部分的に平行であること、すなわち、長手方向に離隔していないことを意味する。凹部がエグリと長手方向にエグリ長さの少なくとも10%、ただし好ましくは、長手方向にエグリ長さの少なくとも70%重なると、特に有利である。エグリ長さは、針の長手方向において、エグリ部の針の表面が周囲の針の部分と比較して高さ方向に窪んでいる長さである。したがって、エグリ長さは、エグリの入口部分と出口部分を含む。エグリを備えた縫製機用針の刃は、主要刃部とエグリ部の2つの小部分に分けることができる。エグリ部は、その入口部分と出口部分を含むエグリが長手方向に延びる部分である。主要刃部は、刃の残りの部分である。上述した凹部の均一形状部がエグリ部と重ならないようにすると有利である。凹部の均一形状部は、有利には、主要刃部内に完全に位置し、すなわち、長手方向において主要刃部と完全に重なる。主要刃部は、有利には、長手方向に均一な断面(円筒形刃)または長手方向にわずかに先細りの断面(円錐形刃)を有する。刃の凹部は、同様に「円錐形」であってもよく、すなわち、その形状は、刃の形状とは無関係に、針穴に向かう長手方向に先細りになっていてもよい。ただし、凹部は、「円筒形」であってもよく、すなわち、刃の残りの部分がどのように形成されているかに関係なく、長手方向に同じ形状および位置を維持する。この場合、凹部の均一形状部における横方向の距離関数s(h)は、均一形状部の長さに沿ったすべての位置で同じである。したがって、例えば、
円筒形の凹部を持つ円筒形の刃、
円錐形の凹部を持つ円筒形の刃、
円筒形の凹部を持つ円錐形の刃、
円錐形の凹部を持つ円錐形の刃、
のような、様々な異なる組み合わせが可能である。
【0012】
凹部の長手方向における長さに沿った少なくとも1つの点で、ただし好ましくは均一形状部の長さに沿ったすべての点で、凹部の上縁と刃の最高点との間の高さ方向の最大距離が、刃の高さの35%、ただし好ましくは刃の高さの25%であることが成り立つと、縫製機用針の全ての実施形態で有利である。このようにすると、大きな凹部が得られ、縫製機用針と生地との間の摩擦面を効果的に減少させることができる。
【0013】
縫製機用針の表面と針穴の軸との間の横方向の距離を、高さ座標に依存して記述する横方向距離関数s(h)が、凹部の高さ方向の到達範囲の少なくとも90%にわたって、ただし好ましくは凹部の高さ方向の到達範囲の全体にわたって、高さの増加とともに単調に、好ましくは狭義単調に減少すると、有利である。凹部の高さ方向の到達範囲は、凹部の高さ方向の延長である。このようにすると、アンダーカットが回避され、製造工程がさらに容易になる。横方向距離関数s(h)はまた、高さ方向と横方向とによって定まる平面における縫製機用針の表面の断面曲線の関数であり、高さ座標hに依存して、縫製機用針の表面と横方向における針穴の軸との間の横方向距離を記述する。高さ座標hは、正の高さ方向Hに増大する。横方向距離関数の一階導関数s'(h)が、上縁の高さ座標hOよりも小さく、かつ下縁の高さ座標hUよりも大きい高さ座標に対して負(すなわち、hU<h<hOの場合、s'(h)<0)であれば有利である。横方向距離関数の二階導関数s''(h)が、下縁の高さ座標hUよりも小さく、かつ上縁の高さ座標hOよりも大きい高さ座標に対してゼロ以下(すなわち、h>hOまたはh<hUの場合、s''(h)≦0)であれば、特に有利である。
【0014】
少なくとも1つの凹部が、横方向において、針穴の軸の位置からすべての点で離隔していると、さらに好ましい効果を奏する。凹部と針穴の軸の位置との間の横方向の距離が、凹部のすべての点でゼロより大きいと有利である。このようにすると、針穴の軸と長手方向とによって定まる平面が、凹部と交差しない。針穴の軸と長手方向とによって定まる平面に関して対称な少なくとも2つのこのような凹部を有する針は、特に有利である。
【0015】
上縁における凹部の導入接線が、高さ方向に対して5°から70°、ただし好ましくは10°から40°の導入角をなすと、有利な実施形態が得られる。導入接線は、横方向と高さ方向とで定まる平面において、凹部の表面に隣接している接線である。導入接線は、上縁に接する。上縁の領域において、凹部は製造方法によって様々な丸みを帯びている場合がある。このような丸みでは、高さ方向と横方向とで定まる平面内の表面の勾配が大きく変化するため、導入接線は接線とはならない。好ましい実施形態では、導入接線は、凹部に対してその表面の凹状の部分で接触する。横方向と高さ方向とによって定まる平面における仮想の接線が、凹部の表面のすべての点で、少なくとも5°、ただし好ましくは少なくとも10°の角度をなすと、特に有利である。
【0016】
縫製機用針は、有利には、実質的に長手方向に延び、針穴から負の長手方向(すなわち、針穴から刃を見る方向)に続き、高さ方向に窪みを構成する、少なくとも1つの糸溝を含むものであってもよい。好ましい実施形態において、糸溝は、負の高さ方向を向く針の下側に配置される。この場合、糸溝は、負の高さ方向に「開口」している、すなわち、縫製機用針の材料によって負の高さ方向に区切られることはない。ただし、糸溝は、正の高さ方向を向く上側にも配置される場合がある。その場合、糸溝は、正の高さ方向に「開口」している。糸溝は、針穴を通る糸を受け入れ、刃に沿って長手方向に案内するのに適している。針穴で終了する糸溝には、利点がある。その際、糸溝と針穴は、長手方向において互いに融合する、すなわち、針穴と糸溝の間に針の材料は配置されない。ただし、糸溝を、針穴から離隔させることもできる。 糸溝は、針刃に設けられたスロット状の窪みである。糸溝は、針の材料によって、高さ方向の片側と横方向の両側とで区切られている。縫製機用針は、2つの糸溝を含むと有利である。下側に第1の糸溝、上側に第2の糸溝を有する縫製機用針は、特に有利である。
【0017】
凹部の長手方向における長さに沿った少なくとも1つの点で、ただし好ましくは均一形状部の長さに沿ったすべての点で、下縁と上縁との間の領域において、高さ方向および横方向によって定まる平面において、縫製機用針の表面が、実質的に一定の半径を有する円弧として形成されており、この円弧の中心が、好ましくは、高さ方向および横方向によって定まる平面において、縫製機用針の断面の領域の外側に位置していることが成り立つ場合、有利である。それに応じて、この断面において、凹部の表面は円弧の形状を有し、その半径はこの円弧上のすべての点で同じである。このような凹部形状は、切削加工と成形加工の両方の製造方法によって容易に製造することができる。高さ方向と横方向とで規定される平面において、凹部の下縁と上縁との間の縫製機用針の表面が、円弧と、この円弧に隣接する直線とで構成される形状を有している場合、さらなる利点が得られる。この直線は、好ましくは、円弧の接線方向に隣接している。
【0018】
凹部の長手方向における長さに沿った少なくとも1つの点で、ただし好ましくは、均一形状部の長さに沿ったすべての点で、上縁と下縁との間の高さ方向における距離に相当する凹部の高さ(凹部高さ)が、横方向距離関数s(h)の最大値の60%から170%、ただし好ましくは横方向距離関数s(h)の最大値の75%から160%であることが成り立つ縫製機用針によって、さらなる利点がもたらされる。上述した選択範囲は、簡単な製造方法の使用を可能にし、同時に縫製機用針が縫製中に生地との摩擦をほとんど発生させないことを促進するため、慣用的な寸法を有する縫製機用針に有利であることが判明した。エグリ長さに沿った少なくとも1つの点で、ただし好ましくはエグリ長さの少なくとも20%で、上縁と下縁との間の高さ方向の距離に相当する凹部高さが、横方向距離関数s(h)の最大値の25%から150%、ただし好ましくは横方向距離関数s(h)の最大値の35%から105%である縫製機用針の場合にも利点が得られる。特に有利なのは、エグリ長さの少なくとも20%について、上縁と下縁との間の高さ方向の距離に相当する凹部高さが横方向距離関数s(h)の最大値の35%から60%であることが成り立つ縫製機用針である。
【0019】
凹部の長手方向における長さに沿った少なくとも1つの点で、ただし好ましくは均一形状部の長さに沿ったすべての点で、上縁距離Oが、横方向距離関数s(h)の最大値の10%から60%、ただし好ましくは横方向距離関数s(h)の最大値の25%から45%であることが成り立つ場合の縫製機用針によって、さらなる利点が得られる。上縁距離Oは、上縁の高さ座hOの位置における横方向距離関数の値に相当する。言い換えれば、O=s(hO)である。上述した選択範囲は、可能な最大サイズの凹部を可能にし、したがって摩擦の可能な最大の減少を可能にすること、しかも製造が容易であり、縫製機用針の十分な安定性を保証するため、慣用的な寸法を有する縫製機用針に有利であることが判明した。特に有利なのは、エグリ長さに沿った少なくとも1つの点で、ただし好ましくはエグリ長さの少なくとも20%で、上縁距離Oが横方向距離関数s(h)の最大値の10%から75%、ただし好ましくは横方向距離関数s(h)の最大値の35%から65%である場合の縫製機用針である。
【0020】
さらなる利点が、凹部の長手方向における長さに沿った少なくとも1つの点で、ただし好ましくは均一形状部の長さに沿ったすべての点で、下縁距離Uが、横方向距離関数s(h)の最大値の50%から100%、ただし好ましくは横方向距離関数s(h)の最大値の70%から95%であることが成り立つ場合の縫製機用針によって得られる。下縁距離Uは、下縁の高さ座標hUの位置における横方向距離関数の値に相当する。言い換えれば、U=s(hU)である。上述した選択範囲は、可能な最大サイズの凹部を可能にし、したがって摩擦の可能な最大の減少を可能にすること、しかも製造が容易であり、縫製機用針の十分な安定性を保証するため、慣用的な寸法を有する縫製機用針に有利であることが判明した。エグリ長さに沿ったすべての点において、下縁距離Uが横方向距離関数s(h)の最大値の50%から100%、ただし好ましくは横方向距離関数s(h)h)の最大値の70%から95%であることが成り立つ縫製機用針によって、利点が得られる。
【0021】
縫製機用針の製造方法であって、この縫製機用針は、実質的に長手方向に延びる刃と、長手方向に対して直角な高さ方向に縫製機用針を貫通して延びる針穴と、を有している製造方法は、
高さ方向において上縁および下縁によって区切られる少なくとも1つの凹部が、
凹部の上縁と針穴の軸の横方向における位置との間の横方向における距離に相当する上縁距離が、
凹部の下縁と針穴の軸の横方向における位置との間の横方向における距離に相当する下縁距離と異なるように、
高さ方向および/または長手方向の工具の移動のみによって製造される、ことによって本発明の目的を達成する。
2つの移動方向、あるいは1つの移動方向に限定された工具の移動は、特に効率的な生産工程を実現する。この種の方法では、大量の縫製機用針を連続的に生産することができる。この種の方法は、凹部が、長手方向の長さに沿った少なくとも1つの点で、その点における刃の高さの少なくとも30%に相当する高さを有する縫製機用針のために特に有利である。
【0022】
少なくとも1つの凹部が、分離プロセスによって、好ましくはフライス加工によって製造される方法により、さらなる利点が得られる。フライスカッターの輪郭が凹部の輪郭に対応するものである場合、凹部は水平方向および長手方向の移動で製造することができる。横方向への追加の移動は不要である。この方法は、他の分離タイプの製造方法、例えば研削や放電加工などでも有利に使用することができる。
【0023】
少なくとも1つの凹部が、成形プロセスによって、好ましくはプレス加工によって製造される方法により、さらなる利点が得られる。プレスが、少なくとも1つの凹部または複数の凹部の輪郭を写す上型と下型とからなる場合、凹部は、もっぱら高さ方向への工具の移動によって製造することができる。これは、縫製機用針に凹部を作る特に簡単で効率的な方法である。しかしながら、凹部は、2より多数の型を有するプレス、例えば、3つ、4つ、または5つの型を有するプレスで成形することによっても製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、凹部(5)を有する縫製機用針(1)を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1と同じ縫製機用針(1)を、針の軸回りに180°回転させた状態で示す図である。
【
図3】
図3は、凹部(5)を有する縫製機用針(1)の側面図である。
【
図4】
図4は、
図3の縫製機用針(1)を、横方向(B)と長手方向(H)で定まる平面で貫くA-A断面を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4と同じ断面と横方向距離関数s(h)の推移を示す図である。
【
図6】
図6は、
図3および
図4の縫製機用針(1)を、高さ方向(H)と長手方向(L)で定まる平面で貫くB-B断面を示す図である。
【
図7】
図7は、針穴(3)の位置で縫製機用針(1)を通る断面を示す図である。
【
図8】
図8は、様々な針用ブランク材(8)と、凹部(5)および糸溝(4)による断面の縮小を示す図である。
【
図9】
図9は、縫製機用針(1)と糸穴(28)を有する生地(29)を通る断面を示す図である。
【
図10a】
図10aは、凹部(5)の領域における横方向距離関数s(h)の推移の第1の変形例を示す図である。
【
図10b】
図10bは、凹部(5)の領域における横方向距離関数s(h)の推移の第2の変形例を示す図である。
【
図10c】
図10cは、凹部(5)の領域における横方向距離関数s(h)の推移の第3の変形例を示す図である。
【
図10d】
図10dは、凹部(5)の領域における横方向距離関数s(h)の推移の第4の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、凹部5を備えた縫製機用針1の立体図である(この図では、第2の凹部5は不明瞭である)。縫製機用針1は、クランプ部18と、移行部19と、刃部23と、主要刃部22と、均一形状部37と、エグリ16と、針穴3とを含む。針穴3の軸12は、高さ方向Hに延び、横方向Bにおいては、針穴3の2つの側壁9の間の中央に位置する。この実施形態では、均一形状部37は主要刃部22に対応する。すなわち、これらの2つの部分は完全に重なっている。本発明による教示の他の実施形態では、主要刃部22と均一形状部37とが部分的にのみ重なることが有利であり得る。この例では、均一形状部は、エグリ部24とは重なっていない。
【0026】
図2は、
図1の縫製機用針を、長手軸17回りに180°回転させた状態で示す図である。縫製機用針1の下側において、糸溝4は、負の高さ方向Hを向いて、針穴3から移行部19に長手方向Lに延びている。したがって、長手方向Lにおいて、糸案内4は、刃部23および移行部19と重なっている。
【0027】
図3は、クランプ部18、刃部23、および先細り部20を有する縫製機用針1の側面図である。クランプ部18にシャンク25が配置されていれば、針のすべての実施形態にとって有利である。全ての実施形態において、クランプ部18は、縫製機に受け入れられ、長手方向に駆動されて縫製動作を生じさせるために適している。刃部23は、その範囲内で刃2が長手方向に延びる部分である。刃部23は、主要刃部22とエグリ部24を含む。針穴3に向かって長手方向Lに見ると、主要刃部22は、エグリ部24の前にある。エグリ部24は、エグリ16が長手方向Lに延びる部分である。主要刃部22において、刃2は、長手方向Lに沿って均一な断面を有する。このような刃を当業者は円筒形と表現する。刃2の断面は、主要刃部22において針穴3に向かって長手方向Lに減少する場合も、本発明のすべての実施形態にとって同等に有利であり得る。このような刃を当業者は円錐形と表現する。刃部23は、クランプ部18よりも小さい断面を有する。クランプ部18と刃部23または主要刃部22との間の円錐形の移行部19は、クランプ18と刃部23との間の断面のこの差を等しくする。クランプ部18から離れるように長手方向Lに見ると、先細り部20が刃部23に隣接している。この部分において、針の断面は単調に減少し、針先21で終端する。刃部23には凹部5が配置されており、その長手方向Lの断面は、移行部19とも重なっている。凹部は、主要刃部22と完全に重なる均一形状部37を含む。均一形状部37は、長手方向Lにおいて、主要刃部22と同じ位置で区切られている。ただし、本発明による教示の他の実施形態において、均一形状部37を定める境界は、主要刃部22を定める境界から逸脱していてもよい。凹部5は、上縁6と下縁7によって高さ方向に区切られている。また、凹部5が刃部23内に完全に存在する、すなわち、長手方向Lにおける凹部5始端と終端の両方が刃部23内に存在すると、すべての実施形態において有利である。長手方向において、凹部5は、重なり長さ26だけエグリ16と重なる。したがって、凹部の一部は、エグリ部24内にも存在する。この例では、重なり長さ26は、長手方向Lにおいてエグリの長さ(エグリ長さ)27の90%に相当する。ただし、重なり長さ26がエグリ長さ27の少なくとも10%、好ましくは少なくとも70%であれば、すべての実施形態において有利である。凹部5が長手方向Lにおいてエグリ16と重ならない場合も、本発明による縫製機用針1にとって同等に有利であり得る。
【0028】
図4は、
図3に示す位置における縫製機用針1を通るA-A断面を示す図である。この断面は、長手方向Lにおいて移行部19が始まる直前の刃部23の端に位置している。したがって、この図は、長手方向Lにおいて針穴3から最も遠い刃2の断面を示している。刃2は、2つの凹部5と糸溝4とを有する。凹部5は、刃2の断面を小さくし、断面の平面において凹状の形状を有している。断面の平面の後方には、刃2よりも大きな断面を有するシャンク25が見える。上縁6と下縁7は、断面の平面によって切断され、高さ方向Hにおいて凹部5を上下に区画している。
図4には、針穴3の軸12の、横方向における位置も示されている。上縁6の各々は、横方向Bにおいて上縁距離Oだけ針穴3の軸12から離隔しており、下縁7の各々は、横方向Bにおいて下縁距離Uだけ針穴3の軸12から離隔している。上縁距離Oと下縁距離Uは大きさが異なり、この場合、上縁距離Oが下縁距離Uよりも小さい。本発明のすべての実施形態において、高さ方向Hにおける上縁6と下縁7との間の距離に対応する凹部高さ11は、高さ方向Hにおける刃2のシャンク高さ10の30%よりも大きい。縫製機用針1の表面13は、横方向において、針穴3の軸12の位置から横方向距離sだけ離れている。横方向距離sは、高さ方向の高さ座標hに依存している(すなわち、s=f(h)=s(h)である)横方向距離関数s(h)によって記述され得る。凹部5の上縁6で横方向距離関数s(h)の曲線に接する導入接線14は、その端部領域で高さ方向Hと5°よりも大きい導入角度15をなす。ただし、先の段落で述べた導入角度15の選択範囲は、縫製機用針1のすべての実施形態において有利である。
【0029】
図5は、
図4と同じ断面であり、再度横方向距離関数s(h)が示されている。上縁距離Oは、上縁6の高さ座標h
Oにおける横方向距離関数s(h)の値(すなわち、O=s(h
O))に相当する。下縁距離Uは、下縁7の高さ座標h
Uにおける横方向距離関数s(h)の値(すなわち、U=s(h
U))に相当する。本実施形態では、横方向距離sは、高さ座標が高さ方向に増加するにつれて、凹部5の高さ方向の到達範囲内で狭義単調に減少する。したがって、凹部高さ11の全体にわたって、横方向距離関数s(h)の導関数はゼロ未満であること(h
O>h>h
Uにおいてs'(h)<0)が成り立つ。この種の曲線の推移は、すべての実施形態において有利であり得る。同様に、横方向の距離が高さの増加とともに単調に減少する、すなわち横方向の距離関数s(h)の導関数がゼロ以下である(h
O>h>h
Uにおいてs'(h)≦0)場合も、すべての変形例において有利である。また、下縁7の高さ座標h
Uより小さい高さ座標および上縁6の高さ座標h
Oより大きい高さ座標に対する横方向距離関数の二階導関数
s''(h)は、0未満(h>h
Oまたはh<h
Uの場合、s''(h)<0)である。
【0030】
図6には、針穴3の軸12と長手方向Lとで定まる平面における縫製機用針1を通るB-B断面が示されている。針穴3は、縫製機用針1の先細り部20に位置する。針穴3の軸12は、長手方向において針穴3の中心に位置する。針穴3は、図を見る方向において断面の後方では、側壁9によって横方向Bに区切られている。縫製機用針1の下面には、針穴3に隣接して糸溝4が形成されている。針穴3と糸溝4は、長手方向Lにおいて互いに離隔しておらず、互いに合流する。糸溝4は、刃部23の全体にわたって延び、移行部19内で終了する。糸溝4は、縫製機用針1の刃2に設けられた窪みであり、縫製工程中に縫い糸を受けるために適している。当業者には多種多様な糸溝4が長年知られている。本発明による教示は、あらゆる形態および形状の糸溝4と有利に組み合わせることができる。
【0031】
図7には、高さ方向Hと横方向Bとで定まる平面における針穴3の位置において、
図6と同じ縫製機用針1を通るC-C断面が示されている。針穴3は、横方向Bにおいて側壁9によって両側が区切られている。横方向Bにおいて、針穴3の軸12は、針穴3の正確な中心を通っている。針穴3の軸12は、本発明の他のすべての実施形態においても同様に、横方向Bにおいてこの位置を有する。また、縫製機用針1の下側には、針穴3に直接隣接する糸溝4が示されている。
【0032】
図8には、針用ブランク材8の可能な形状と、各形状に対する凹部5の可能な配置が示されている。針用ブランク材8の断面は、円形32、楕円形33、台形34、三角形30、または角が丸められた三角形31であってもよい。ただし、針用ブランク材は、異なる半径を有する2つの円弧と、円弧を互いに接続する2つの斜めに向いた直線とから構成される断面形状35を有するものであってもよい。本発明にしたがう凹部5が、これらの形状を有する針用ブランク材8の断面をどのように減少させるかは、
図8の第2列から明らかである。
図8の第3列は、糸溝4がこれらの形状を有する針用ブランク材8の断面をどのように減少させるかを示している。本発明の教示は、縫製機用針1のための他のすべての既知の断面形状を有する針用ブランク材8に対しても有利に使用することができる。
【0033】
図9には、生地29の糸穴(針で生地に開けられた穴)28の位置で縫製機用針1と生地29を通る断面が示されている。生地29は、凹部5の領域では縫製機用針1と接触していない。したがって、この領域では摩擦が存在し得ないため、結果として、縫製機用針1と生地29との間の全体的な摩擦を低減することができる。
図9において、糸穴28は、理想化された円として示されている。生地29の繊維特性および機械的特性、ならびに針の断面形状に応じて、糸穴28について他の形状を得られる場合がある。しかし、これらのすべてについて、凹部5の領域において生地29と縫製機用針1が互いに接触しないことは共通する。
【0034】
図10a~
図10dには、縫製機用針1の凹部5の4つの別の断面形状と横方向距離関数s(h)の対応する推移が示されている。これらの別の断面形状は、本発明のすべての可能な実施形態と有利に組み合わせることができる。
図10aの実施形態では、凹部5の上縁6と下縁7との間の横方向距離関数s(h)は、異なる(どちらも0に等しくない)勾配を有する2つの直線で構成される。
図10bの実施形態では、凹部5の上縁6と下縁7との間の横方向距離関数s(h)は、5つの直線で構成される。相互に連続する直線は、異なる勾配を有し、これらの勾配は、いずれも0に等しくない。
図10cの実施形態では、凹部5の上縁6と下縁7との間の横方向距離関数s(h)は、3つの円弧で構成されている。
図10dは、円弧と、正の高さ方向Hにおいてこの円弧に隣接する直線とで構成される横方向距離関数s(h)を有する実施形態が示されている。図には、直線と円弧との間の移行点36が示されている。円弧は正の高さ方向Hにおいて下縁7で始まり、移行点36で終了する。直線は、この移行点36において円弧に接し、正の高さ方向Hに継続し、上縁6で終了する。
【符号の説明】
【0035】
1:縫製機用針
2:刃
3:針穴
4:糸溝
5:凹部
6:凹部(5)の上縁
7:凹部(5)の下縁
8:針用ブランク材
9:針穴(3)の側壁
10:刃の高さ
11:凹部(5)高さ
12:針穴(3)の軸
13:縫製機用針(1)の表面
14:導入接線
15:導入角度
16:エグリ
17:長手軸
18:クランプ部
19:移行部
20:先細り部
21:針先
22:主要刃部
23:刃部
24:エグリ部
25:シャンク
26:重なり長さ
27:エグリ(16)長さ
28:糸穴
29:生地
30:三角形の断面を有する針用ブランク材(8)
31:角が丸められた三角形の断面を有する針用ブランク材(8)
32:円形の断面を有する針用ブランク材(8)
33:楕円形の断面を有する針用ブランク材(8)
34:台形の断面を有する針用ブランク材(8)
35:2つの円弧と2つの直線から構成される断面形状を有する針用ブランク材(8)
36:移行点
37:凹部(5)の均一形状部
B:横方向
L:長手方向
H:高さ方向
h:高さ座標
s:横方向距離
s(h):高さ座標(h)に依存する横方向距離関数
O:上縁距離
U:下縁距離
hO:上縁(6)の高さにおける高さ座標
hU:下縁(7)の高さにおける高さ座標
【国際調査報告】