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特表2023-553481オイルフリー圧縮空気を生成するスクロール圧縮機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】オイルフリー圧縮空気を生成するスクロール圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 27/00 20060101AFI20231214BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20231214BHJP
   F04C 18/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
F04C27/00 311
F04C29/00 B
F04C29/00 U
F04C18/02 311B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535952
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2021086441
(87)【国際公開番号】W WO2022136157
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】102020134469.4
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523216171
【氏名又は名称】オーイーティー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ クリスティアン
【テーマコード(参考)】
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA14
3H039BB11
3H039CC02
3H039CC08
3H039CC31
3H039CC35
3H129AA02
3H129AA15
3H129AA16
3H129AB02
3H129AB12
3H129BB05
3H129CC05
3H129CC19
3H129CC38
(57)【要約】
ハウジング(4)内に配置され、ディスプレーサスクロール底部(39)とディスプレーサスクロール壁部(38)とを有する旋回ディスプレーサスクロール(31、32)に接続された駆動装置により、特にトラックの圧縮空気ブレーキシステム用のオイルフリー圧縮空気を生成するスクロール圧縮機では、前記ディスプレーサスクロール壁部(38)が固定された相手スクロール(21、22)に嵌合するため、少なくとも1つの可変圧縮室(30)は、前記ディスプレーサスクロール(31、32)と前記相手スクロール(21、22)との間に形成され、シール要素(33)は、前記ディスプレーサスクロール(31、32)と前記ハウジング(4)との間に設けられ、かつ前記ディスプレーサスクロール底部(39)に締結され、前記ハウジング(4)に固定接続された摺動板(26)をシールする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(4)内に配置され、ディスプレーサスクロール底部(39)とディスプレーサスクロール壁部(38)とを有する旋回ディスプレーサスクロール(31、32)に接続された駆動装置により、特にトラックの圧縮空気ブレーキシステム用のオイルフリー圧縮空気を生成するスクロール圧縮機であって、前記ディスプレーサスクロール壁部(38)が固定された相手スクロール(21、22)に嵌合するため、少なくとも1つの可変圧縮室(30)は、前記ディスプレーサスクロール(31、32)と前記相手スクロール(21、22)との間に形成され、シール要素(33)は、前記ディスプレーサスクロール(31、32)と前記ハウジング(4)との間に設けられ、かつ前記ディスプレーサスクロール底部(39)に締結され、前記ハウジング(4)に固定接続された摺動板(26)をシールする、スクロール圧縮機。
【請求項2】
前記摺動板(26)は、少なくとも前記シール要素(33)との接触領域において、前記ハウジング(4)より硬い材質を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記摺動板(26)からオイル残留物を剥離する剥離要素(34)は、前記ディスプレーサスクロール底部(39)に締結される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記ディスプレーサスクロール底部(39)は、前記シール要素(33)を収容するシール溝、及び/又は前記剥離要素(34)を収容するスクレーパ溝を有する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
摺動要素(36)は、前記ディスプレーサスクロール(31、32)と前記摺動板(26)との間に配置される、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項6】
前記摺動要素(36)は、前記シール要素(33)及び/又は前記剥離要素(34)の径方向内側に配置される、ことを特徴とする請求項5に記載のスクロール圧縮機。
【請求項7】
前記ハウジング(4)には、前記摺動板(26)の開口を貫通して前記ディスプレーサスクロール底部(39)に配置されたガイドリング(37)内に延在するガイドピン(25)が係留され、前記ガイドピン(25)は、前記摺動板(26)上に突出する凸部(25c)をそれぞれ有し、これにより、それぞれの前記ガイドリング(37)と前記摺動板(26)との間に距離が存在する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項8】
前記駆動装置は、第1ディスプレーサスクロール(31)と第2ディスプレーサスクロール(32)との間に配置される、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項9】
前記駆動装置は、2つの軸端(13、14)を有する軸(12)を有し、第1軸端(13)が前記第1ディスプレーサスクロール(31)に接続され、第2軸端(14)が前記第2ディスプレーサスクロール(32)に接続される、ことを特徴とする請求項8に記載のスクロール圧縮機。
【請求項10】
前記第1ディスプレーサスクロール(31)は、第1相手スクロール(21)とともに第1圧縮機段を形成し、前記第2ディスプレーサスクロール(32)は、第2相手スクロール(22)とともに第2圧縮機段を形成する、ことを特徴とする請求項8又は9に記載のスクロール圧縮機。
【請求項11】
前記ディスプレーサスクロール壁部(38)と前記相手スクロール(21、22)との間、及び相手スクロール壁部(28)と前記ディスプレーサスクロール(31、32)との間に、それぞれスクロールシール(18)が設けられる、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項12】
第1の前記スクロールシール(18)は、前記相手スクロール(21、22)に開口する前記ディスプレーサスクロール壁部(38)のスクロール溝(19)に配置され、第2の前記スクロールシール(18)は、前記ディスプレーサスクロール(31、32)に開口する前記相手スクロール壁部(28)のスクロール溝(19)に配置される、ことを特徴とする請求項11に記載のスクロール圧縮機。
【請求項13】
前記駆動装置及び/又は前記ハウジング(4)及び/又は前記相手スクロール(21、22)は、水で冷却される、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のスクロール圧縮機を備える、特にトラックの圧縮空気ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルフリー圧縮空気を生成するスクロール圧縮機に関する。本発明は更に、このタイプのスクロール圧縮機を備えた圧縮空気ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は、従来から知られており、種々の用途に用いられている。例えば、EP 0 798 463 A2は、スクロール圧縮機として設計された真空ポンプを開示している。真空ポンプは、容器の真空引きを行うためのものであり、オイル無しで運転される。この目的のために、真空ポンプは、スクロール圧縮機を有し、該スクロール圧縮機は、駆動装置に接続され、固定された相手スクロールと嵌合する旋回ディスプレーサスクロール(displacer scroll)を有する。固定された相手スクロールは、ハウジングに強固に組み込まれる。ディスプレーサスクロールは、ディスプレーサスクロール底部とディスプレーサスクロール壁部とを有し、ディスプレーサスクロール壁部が相手スクロール壁部の対応する中間空間に嵌合するため、可変圧縮室がディスプレーサスクロール壁部と相手スクロール壁部との間に形成される。
【0003】
気密性を確保するために、ハウジングには、ディスプレーサスクロール底部をシールするリングシールが設けられる。また、ディスプレーサスクロール壁部と相手スクロール壁部には、相手スクロール壁部の底部端領域においてディスプレーサスクロール底部又はハウジングをシールするスクロールシールが配置されたスクロール溝が、それぞれ形成される。
【0004】
ディスプレーサスクロールは、スクロール圧縮機の運転中に旋回し、これは、ディスプレーサスクロールがリングシール上に円運動を行うことを意味する。その結果、スクロール圧縮機の駆動セグメントに存在するオイルをディスプレーサスクロールからリングシールを越えて移送することができるため、オイルが圧縮室に浸透することができる。また、ディスプレーサスクロール底部とリングシールとの間の摩擦により、リングシールの摩耗が大きくなり、オイルの交差通路(crossing passages)もここで形成される。
【0005】
結果として、従来のスクロール圧縮機に関連するリスクは、圧縮室内にオイルが全く存在しない状態にならないことである。圧縮室で圧縮された気体及び導入された任意のオイルが環境に放出されるため、このことは、真空ポンプとして使用中には重要ではない。しかしながら、密閉気体回路内にオイルが溜まる可能性があるため、このタイプのオイル入力は、圧縮空気ブレーキシステムのような密閉回路では重要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、圧縮領域へのオイルの入力を効果的に防止するオイルフリー圧縮空気を生成するスクロール圧縮機を提供することを目的とする。更に、本発明は、このようなスクロール圧縮機を備えた圧縮空気ブレーキシステムを提供することを目的とする。
【0007】
本発明では、この目的は、請求項1の主題によるスクロール圧縮機、及び請求項14の主題による圧縮空気ブレーキシステムに関して達成される。
【0008】
このように、本発明は、ハウジング内に配置され、旋回ディスプレーサスクロールに接続された駆動装置により、特にトラックの圧縮空気ブレーキシステム用のオイルフリー圧縮空気を生成するスクロール圧縮機を提供するという考えに基づくものである。ディスプレーサスクロールは、ディスプレーサスクロール底部とディスプレーサスクロール壁部とを有し、ディスプレーサスクロール壁部が固定された相手スクロールに嵌合するため、少なくとも1つの可変圧縮室は、ディスプレーサスクロールと相手スクロールとの間に形成される。本発明では、シール要(element)は、ディスプレーサスクロールとハウジングとの間に設けられ、かつディスプレーサスクロール底部に締結され、ハウジングに固定接続された摺動板(sliding plate)をシールする。
【0009】
本発明では、スクロール圧縮機の駆動領域とスクロール圧縮機の圧縮領域との間に効果的で永久的なオイルバリアを確保するために、シール要素は、ディスプレーサスクロール底部に締結され、ハウジングに締結された摺動板をシールする。ここでは、摺動板は、少ない摩擦で摺動板とシール要素との間に良いシールを達成するように設計することができる。これにより、シール要素の過度な摩耗を効果的に防止し、長期にわたって高レベルのシールを得ることができる。
【0010】
また、ディスプレーサスクロール底部にシール要素を配置することにより、本発明に係るスクロール圧縮機のメンテナンスの容易さが向上する。このように、シールの領域に欠陥がある場合に、そこに配置されたシールを含むディスプレーサスクロール全体を交換することにより、シールを迅速に更新することができる。従来技術では、ディスプレーサスクロールを解体した後に、ハウジング内のシール要素を交換するために、追加の手の動きが必要である。本発明では、これは、組み込まれたシール要素を備えたディスプレーサスクロールを交換することにより、容易かつ迅速に実行することができる。その結果、スクロール圧縮機は、短時間で再使用可能な状態となる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、摺動板は、少なくともシール要素との接触領域において、ハウジングより硬い材質を有する。また、摺動板は、シール要素に対向する側の粗さがハウジングの表面の粗さより小さくてもよい。したがって、摺動板は、本質的に、シール要素との良い接触を提供する一方で、摺動板とシール要素との間の摩擦を低減するのに役立つ。シール要素がディスプレーサスクロールとともに旋回し、これは、シール要素が摺動板上に移動することを意味するので、この領域の摺動板の硬い材質により、シール要素の摩耗を防止又は低減する。この点で、特にシール要素との接触領域が硬い材質である摺動板は、スクロール圧縮機の駆動領域と圧縮領域との間の良好な、特にオイルフリーのシールの基礎となる。これにより、オイルが駆動領域から圧縮領域に到達しないことを確保する。その結果、生成された圧縮空気にオイルを含まないことを確保する。
【0012】
摺動板からオイル残留物(residues)を剥離する剥離要素(element)は、追加の安全バリアとしてディスプレーサスクロール底部に更に締結することができる。好ましくは、剥離要素は、シール要素と平行又は同心に配置され、シール要素との接触領域において摺動板に沈着し得るオイル残留物を剥離する作用を果たす。これにより、圧縮領域に日常的に配置された摺動板の領域は、圧縮領域にオイルを導入しないことを確保する。このような領域は、ディスプレーサスクロールの旋回運動により、圧縮領域に一時的に配置され、駆動領域に一時的に配置された摺動板に接触領域が形成されるために生じる。剥離要素によりこの摺動板の接触領域に沈着した可能性のある任意のオイルを剥離することにより、圧縮領域に入る摺動板部分にオイルがなくなる。
【0013】
本発明の好ましい変形例では、ディスプレーサスクロール内のシール要素及び/又は剥離要素を固定的に収容するために、ディスプレーサスクロール底部は、シール要素を収容するシール溝、及び/又は剥離要素を収容するスクレーパ溝を有する。追加のプリロード要素(element)は、シール溝及び/又はスクレーパ溝に配置され、溝底とシール要素又はスクレーパ要素(element)との間に延在することができる。これらのプリロード要素は、シール要素又はスクレーパ要素の摺動面への接触圧を発生させることにより、特にシール要素及び/又はスクレーパ要素が多少摩耗しても、永久的なシール又は剥離機能を確保する。
【0014】
また、ディスプレーサスクロールと摺動板との間に摺動要素(element)を配置することができる。摺動要素は、アキシアル軸受として設計され、摺動板又はハウジングに対してディスプレーサスクロールを支持することができる。好ましくは、摺動要素は、摺動板上で特にうまく摺動する材質を有する。特に、摺動要素が摺動板と協働することにより、ディスプレーサスクロールとハウジングとの間の摩擦が低減されるため、ディスプレーサスクロールの回転が容易になる。これにより、スクロール圧縮機の運転に要するエネルギ消費量及び運転時に発生する摩擦熱を低減する。
【0015】
摺動要素をディスプレーサスクロール底部の凹部に配置することができる。その結果、摺動要素は、所定の位置にしっかりと固定される。一方、このような摺動要素は、例えば補修のためにディスプレーサスクロールとともに容易に交換することができる。
【0016】
摺動要素の摺動性を更に向上させるために、摺動要素をシール要素及び/又は剥離要素の径方向内側に配置することが規定されている。したがって、摺動要素は、本質的に、スクロール圧縮機のオイル潤滑領域、特に駆動領域に配置することができる。これにより、摺動要素と摺動板との間にオイル潤滑を更に行って、ディスプレーサスクロールの円滑な回転をもたらす。
【0017】
更に、本発明に係るスクロール圧縮機では、ガイドピンは、ハウジングに係留され、摺動板の開口を貫通してディスプレーサスクロール底部に配置されたガイドリング内に延在する。ガイドピンは、摺動板上に突出する凸部をそれぞれ有するため、それぞれのガイドリングと摺動板との間に距離が存在する。ガイドピンとガイドリングとの組み合わせは、「ピン-リング」システムと呼ばれ、ディスプレーサスクロールの旋回運動に有利である。ガイドリングに嵌合するガイドピンは、所定の軌道にディスプレーサスクロールを付勢し、該所定の軌道は、ディスプレーサスクロールの偏心軸受が駆動装置の軸に生じたものである。
【0018】
ここでも摩擦を可能な限り低く保持するために、ガイドピンが摺動板上に突出する凸部を有することが好ましい。これにより、ガイドリングと摺動板との間に距離が生じるため、この領域の摩擦が低減される。また、ガイドリングと摺動板との間の距離は、摺動板のオイル潤滑を可能にする。
【0019】
本発明の特に好ましい実施形態では、駆動装置は、第1ディスプレーサスクロールと第2ディスプレーサスクロールとの間に配置される。したがって、スクロール圧縮機は、多段、特に2段スクロール圧縮機として設計することができる。このように、予圧縮は、第1圧縮段階で行うことができ、後圧縮は、第2圧縮段階で行うことができるため、特に高い圧力を達成することができる。これは、特にトラックの圧縮空気ブレーキシステム用の圧縮空気を生成する上で、意味がある。
【0020】
この点で、好ましい変形例では、駆動装置は、2つの軸端を有する軸を有し、第1軸端が第1圧縮機スクロールに接続され、第2軸端が第2ディスプレーサスクロールに接続される。したがって、ディスプレーサスクロールは、同じ駆動装置を共有するため、スクロール圧縮機の効率が向上し、そのサイズを有利に縮小する。したがって、このような2段スクロール圧縮機は、特にコンパクトである。
【0021】
ここでは、第1圧縮機スクロールは、第1相手スクロールとともに第1圧縮機段(compressor stage)を形成することができ、第2圧縮機スクロールは、第2相手スクロールとともに第2圧縮機段を形成することができる。圧縮機段は、例えば、第1圧縮機段が予圧縮を可能にし、第2圧縮機段が後圧縮を可能にするように互いに連結することができる。これにより、圧縮空気の生成中に、特にトラックの圧縮空気ブレーキシステムに対して意味がある特に高い圧力を達成することが可能になる。第1圧縮機段は、外部ラインを介して第2圧縮機段と連結することができる。しかし、2つの圧縮機段を連結するラインをスクロール圧縮機のハウジングに組み込むことも可能である。いずれにしても、好ましくは、第1圧縮機段と第2圧縮機段との間に、予圧縮された圧縮空気から熱を放出する熱交換器を配置することにより、冷却された、予圧縮された圧縮空気を第2圧縮機段に供給する。
【0022】
特に、第1圧縮機段は、吸込圧力から中気圧(medium air pressure)への圧縮を実行することができる。例えば、吸込圧力は、ここでは、約1barと測定でき、中気圧は、3.5bar~4barの範囲内にある。そして、第2圧縮機段は、中気圧から高気圧(high air pressure)への高圧縮を実行することができる。したがって、好ましくは、3.5bar~4barと測定される中気圧は、約14barの範囲内の高気圧に圧縮される。
【0023】
好ましくは、第1軸端と第2軸端には、それぞれ、ラジアル軸受、特に偏心軸受が装備される。ラジアル軸受又は偏心軸受を、滑り軸受、玉軸受又はニードル軸受として設計することができる。第1軸端と第1ディスプレーサスクロールとの間、及び/又は、第2軸端と第2ディスプレーサスクロールとの間に、ディスプレーサスクロールの旋回運動時に生じる振動及びノイズの発生を低減するそれぞれの補償機構を配置することができる。このような補償機構は、旋回ディスプレーサスクロールの回転軸上に偏心して配置され、この回転軸周りに揺動可能な補償マス(compensation mass)を含む。ここでは、補償機構は、このように、既存の遠心力に基づいて揺動を自動的に調整するように構成される。ここでは、補償機構は、ガス力及び製造公差を補償し、これにより、スクロール圧縮機の運転時の振動及びノイズの発生を低減する。
【0024】
例えば、本発明に係るスクロール圧縮機に特に好適に用いることができる補償機構は、その後公開された特許出願第10 2020 1214 42.1号に記載されており、特に図2に従ってその例示的な実施形態に関連して、その内容全体が参照される。
【0025】
本発明の他の変形例では、ディスプレーサスクロール壁部と相手スクロールとの間、及び相手スクロール壁部(mating scroll wall)とディスプレーサスクロールとの間に、それぞれスクロールシールが設けられる。その結果、ディスプレーサスクロールと相手スクロールとの間が良好にシールされるため、密閉された、実質的に漏れない可変圧縮空間が形成される。ここでは、スクロールシールは、圧縮室内の製造公差と圧力変動を補償することもできる。この点で、スクロール圧縮機は、圧縮空間からの圧力を利用して旋回ディスプレーサスクロールを相手スクロールに押し付ける対圧室(counterpressure chamber)又は背圧室(back-pressure chamber)なしで補償する。対圧室を排除すると、設置スペースを節約することができ、これにより、スクロール圧縮機を特にコンパクトにすることができる。
【0026】
好ましくは、第1スクロールシールは、相手スクロールに開口するディスプレーサスクロール壁部のスクロール溝に配置される。第2スクロールシールは、ディスプレーサスクロールに開口する相手スクロール壁部のスクロール溝に配置することができる。したがって、本質的に、スクロール溝は、ディスプレーサスクロール壁部と相手スクロール壁部との両者にそれぞれのスクロールシールを収容して固定する。ディスプレーサスクロールと相手スクロールとの間の摩擦を低減するために、各スクロールシールにスラストワッシャを設けることができる。好ましくは、スラストワッシャは、それぞれのスクロールシールとディスプレーサスクロール又は相手スクロールとの間に配置され、これにより、ディスプレーサスクロールと相手スクロールとの間の摩擦を低減する。ここでは、スラストワッシャは、スクロールシールによってそれぞれのディスプレーサスクロール又は相手スクロールに付勢されることにより、シール機能と摺動機能を発揮する。
【0027】
本発明に係るスクロール圧縮機の好ましい変形例では、駆動装置及び/又はハウジング及び/又は相手スクロールは、水で冷却される。水冷が特に効果的であり、放熱性が高く、放熱が急速であるため、スクロール圧縮機を特に高圧で運転することができる。これは、特にトラックの圧縮空気ブレーキシステムに対して特に有効である。冷却プロセスでは、ハウジング、特にスクロール圧縮機の高圧側又は出口側に特別な注意を払うことができる。高圧圧縮時に、この領域、特に水冷により容易に放熱できる第2圧縮機段の領域に特に高温をもたらす。また、スクロール圧縮機で生成された圧縮空気を冷却することは、意味がある。このため、好ましくは、第1圧縮機段と第2圧縮機段との間に、中気圧に圧縮された圧縮空気から熱を放出する熱交換器を設ける。このように、予冷された中圧空気は、第2圧縮機段に入り、更に高圧空気に圧縮される。
【0028】
本発明の第2態様は、上記スクロール圧縮機を備えた、特にトラックの圧縮空気ブレーキシステムに関する。しかしながら、これらのタイプの圧縮空気ブレーキシステムは、トラックに用いられるだけでなく、バス又は、浚渫船(dredger)、ローラ、自動運転クレーンなどの作業機械に用いることができる。いずれにしても、このタイプの圧縮空気ブレーキシステムは、全体の質量が5トンを超える車両に特に適している。
【0029】
以下、添付図面を参照しながら、例示的な実施形態に基づいて、本発明について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】好ましい例示的な実施形態に基づいた本発明に係るスクロール圧縮機の横断面図である。
図2図1に係るスクロール圧縮機の詳細Cである。
図3図1に係るスクロール圧縮機の正面図である。
図4図3のE-E線に沿う、図1に係るスクロール圧縮機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に係るスクロール圧縮機は、2段圧縮機として設計される。このため、スクロール圧縮機は、中央駆動セグメント1を有し、該中央駆動セグメント1の両側にそれぞれ圧縮機セグメント2、3が軸方向に接続される。ここでは、第1圧縮機セグメント2を第1圧縮機段として設計し、第2圧縮機セグメント3を第2圧縮機段として設計する。第1圧縮機セグメント2は、大気圧を中気圧に圧縮する役割を果たし、第2圧縮機セグメント3は、中気圧を高気圧に圧縮する。
【0032】
駆動セグメント1は、電動モータ11及び軸12を含む駆動装置10を含む。電動モータ11は、メンテナンスを容易にするためにマルチパートに設計されたハウジング4の内部に配置される。ハウジング4は、駆動ハウジング20と、駆動ハウジング20に接続される2つの軸受ハウジング23、24と、同様にハウジング4の一部を形成する相手スクロール21、22と、エンドカバー5、6とを含む。結果として、第1軸受ハウジング23は、第1圧縮機セグメント2の方向において駆動ハウジング20に接続される。第1軸受ハウジング23は、同様にハウジング4の一部を形成する第1相手スクロール21に固定接続される。第1相手スクロール21に続いて、ハウジング4を軸方向に密閉する第1エンドカバー5が設けられる。第2軸受ハウジング24は、駆動ハウジング20とは反対側に配置され、第2相手スクロール22に接続される。第2相手スクロール22は、第2エンドカバー6によって軸方向に長く覆われる。
【0033】
軸12は、軸受15によって駆動ハウジング20に取り付けられる。軸12は、第1圧縮機セグメント2に向かう第1軸端13を有する。更に、第2圧縮機セグメント3に対向する第2軸端14が設けられる。両軸端13、14は、それぞれのディスプレーサスクロール31、32と接続される偏心軸受17に配置された偏心ピン16をそれぞれ有する。したがって、第1ディスプレーサスクロール31は、偏心軸受17を介して第1軸端13の偏心ピン16に取り付けられる。第2ディスプレーサスクロール32は、偏心軸受17を介して第2軸端14の偏心ピン16に取り付けられる。
【0034】
ディスプレーサスクロール31、32は、ディスプレーサスクロール底部39をそれぞれ有し、ディスプレーサスクロール底部39から相手スクロール21、22内に、ディスプレーサスクロール壁部38が延在する。以下、図1に係るスクロール圧縮機の第2圧縮機セグメント3の切り出し(cutout)を示す図2に基づいてそれを例示的に説明する。以下、第1圧縮機セグメント2について説明する設計は、第2圧縮機セグメント3にも同様に適用される。このように、第1ディスプレーサスクロール31及び第2ディスプレーサスクロール32と、第1相手スクロール21及び第2相手スクロール22とは、特に互いの配置関係に関しても同様に構築される。第1ディスプレーサスクロール31及び第2ディスプレーサスクロール32と、第1相手スクロール21及び第2相手スクロール22とは、第2圧縮機段における第2ディスプレーサスクロール32と第2相手スクロール22との間の圧縮室30の容積が、第1圧縮機段における第1ディスプレーサスクロール31と第1相手スクロール21との間の圧縮室の容積より小さいという点のみで異なる。
【0035】
したがって、図2は、ディスプレーサスクロール底部39及びディスプレーサスクロール壁部38を含む第1ディスプレーサスクロール31を示す。第1ディスプレーサスクロール31は、第1相手スクロール21と嵌合するため、ディスプレーサスクロール壁部38と相手スクロール壁部28との間に、圧縮室30が形成される。圧縮室30が可変であることは、第1ディスプレーサスクロール31の旋回運動により圧縮室30の容積が変化することにより、圧縮室30内のガス、好ましくは空気の圧縮を実行することを意味する。
【0036】
第1ディスプレーサスクロール31と第1相手スクロール21とを互いに効果的にシールするために、第1ディスプレーサスクロール31と第1相手スクロール21とは、それぞれスクロールシール18が配置されたスクロール溝19を有する。ここでは、第1ディスプレーサスクロール31のスクロールシール18は、第1相手スクロール21の相手スクロール底部29に対してシールを形成する。対照的に、第1相手スクロール21のスクロールシール18は、ディスプレーサスクロール底部39に対してシールを形成する。スクロールシールは、それぞれのスクロール溝19とディスプレーサスクロール底部39又は相手スクロール底部29との間に配置されたスラストワッシャ(thrust washers)をそれぞれ含んでもよい。
【0037】
第1ディスプレーサスクロール31を旋回運動にガイドするために、複数のガイドリング37がディスプレーサスクロール底部39に配置される。ガイドリング37は、第1軸受ハウジング23に固定されたガイドピン25を収容する。各ガイドピン25は、第1軸受ハウジング23の対応する孔に保持される係留部25aを含む。ガイドピン25のガイド部25bは、ガイドリング37に嵌合する。凸部25cは、ガイド部25bと係留部25aとの間に形成される。特に、凸部25cは、係留部25aより直径が小さいガイド部25bによって形成される。
【0038】
好ましくは、係留部25aは、第1軸受ハウジング23の対応する孔に完全に入り込まない。むしろ、係留部25aの凸部25cは、第1軸受ハウジング23上に突出する。ガイドリング37は、凸部25cに載置される。この凸部25cが第1軸受ハウジング23上に突出するので、第1軸受ハウジング23内に固定された摺動板26とガイドリング37との間に距離が形成される。その結果、駆動セグメントを潤滑するオイルは、ガイドリング37と摺動板26との間に流れることにより、摺動板26を潤滑することができる。
【0039】
好ましくは、摺動板26は、リング状に設計され、ガイドピン25が延在可能な貫通孔を有する。摺動板26は、第1軸受ハウジング23に対向する側にリングシール27でシールすることができる。ここでは、リングシール27は、第1軸受ハウジング23の連続溝内に配置される。
【0040】
第1ディスプレーサスクロール31は、摺動要素36を備えた摺動板26に載置される。具体的には、摺動リング状の摺動要素36は、ガイドピン25の径方向内側に設けられ、ディスプレーサスクロール底部29の溝内に配置される。摺動要素36がディスプレーサスクロール底部39から僅かに突出できるため、本質的に摺動要素36のみは、摺動板26に摺動する。結果として、ディスプレーサスクロール底部39は、摺動板26からある距離だけ離間する。好ましくは、摺動要素36は、第1ディスプレーサスクロール31のアキシアル軸受としても機能する。ここでは、摺動要素36は、液体で潤滑され、好ましくはオイルで潤滑される。一般に、軸受15をオイルで潤滑してもよい。しかし、軸受15をグリースで潤滑してもよい。
【0041】
シールシステムは、オイルが駆動セグメント1から流出して第1圧縮機セグメント2内に入ることを防止するように設けられる。シールシステムは、シール要素33及び剥離要素34を含む。シール要素33と剥離要素34は、それぞれリング状に設計され、第1ディスプレーサスクロール31の対応するリング溝に締結される。図2から明らかなように、各プリロード要素35は、剥離要素34又はシール要素33を保持するリング溝に配置される。プリロード要素35は、シール要素33又は剥離要素34とディスプレーサスクロール底部39の各溝の溝底との間に配置され、シール要素33又は剥離要素34を摺動板25に対して押し付ける。ここでは、剥離要素34は、摺動板26に蓄積したオイルを剥離する機能を有する。シール要素33は、剥離されないかもしれないオイルが圧縮空気で満たされた領域、特に圧縮室30に侵入することを防止する。
【0042】
図3は、スクロール圧縮機、特に第2エンドカバー6の正面図を示す。好ましくは、第1エンドカバー5の設計は、第2エンドカバー6と同じであり、これにより、製造コストを低減する。
【0043】
各エンドカバー5、6は、エンドカバー5、6の円周上に規則的に分布して配置された複数の締結孔42を含む。この締結孔により、例えばネジを使用して、エンドカバー5、6をそれぞれ相手スクロール21、22に固定することができる。
【0044】
各エンドカバー5、6は、空気入口7及び空気出口8を更に有する。空気入口7は、圧縮室30の入口領域に接続される。空気出口8は、圧縮室30の出口領域に接続される。更に、冷却口9がエンドカバー5、6に設けられるため、スクロール圧縮機を水で冷却する。冷却口9により冷却水ポンプと接続されることにより、ハウジング4の内部に密閉した冷却水回路を形成することができる。
【0045】
図4は、図3のE-E線に沿うスクロール圧縮機の断面を示す。したがって、断面は、例えば図1に係る横断面のように、スクロール圧縮機を通る横断面として直線に沿っていない。したがって、E-E線に沿う特別な断面進行では、空気入口7は、図4の第1圧縮機セグメント2の領域で見つけることができるが、図1による横断面図には見られない。
【0046】
図4に係る断面図は、2つの圧縮機段又は圧縮機セグメント2、3がどのように相互作用するかを示すことを目的とする。第1圧縮機セグメント2は、第1エンドカバー5の空気入口7を通って第1圧縮機セグメント2の圧縮室30に流入した空気を予圧縮することを実行する。空気は、最初に第1圧縮機セグメント2で中気圧に圧縮され、第1エンドカバー5の空気出口8を通って圧縮空気管40に送られる。
【0047】
空気は、第1圧縮機セグメント2の圧縮により、強く加熱される。また、スクロール圧縮機の過熱を防止するために、更に、冷却口9を通る水冷のために、予圧縮された中圧空気を熱交換器41を介してガイドする。このため、熱交換器41は、圧縮空気管40に設けられ、中圧空気から熱を抽出して、気体又は液体を充填することができる他の流体回路に送る。
【0048】
そして、このように冷却された中圧空気は、第2エンドカバー6の空気入口7を通って第2圧縮機セグメント3の圧縮室30に流入する。図4から明らかなように、第2圧縮機セグメント3の圧縮室30は、第1圧縮機セグメント2の圧縮室30より小さい容積を有するため、更に中圧空気を高圧空気に圧縮する。高圧空気は、好ましくはトラックの圧縮空気ブレーキシステムに接続される、第2エンドカバー6の空気出口8を通って第2圧縮機セグメント3から排出される。
【0049】
具体的には、スクロール圧縮機は、第1エンドカバー5の空気入口7に加わる1barの空気圧を有する空気を、第1圧縮機セグメント2(第1圧縮機段)で3.5~4barの中気圧に予圧縮し、第2圧縮機セグメント3(第2圧縮機段)で約14barの高気圧に後圧縮(post-compressed)するように構成することができる。第2圧縮機セグメント3に送り込まれる前に、3.5~4barの中気圧を有する中圧空気は、圧縮空気管40を介して熱交換器41にガイドされて、第2圧縮機セグメント3の過熱を防止するように冷却される。
【符号の説明】
【0050】
1 駆動セグメント
2 第1圧縮機セグメント
3 第2圧縮機セグメント
4 ハウジング
5 第1エンドカバー
6 第2エンドカバー
7 空気入口
8 空気出口
9 冷却口
10 駆動装置
11 電動モータ
12 軸
13 第1軸端
14 第2軸端
15 軸受
16 偏心ピン
17 偏心軸受
18 スクロールシール
19 スクロール溝
20 駆動ハウジング
21 第1相手スクロール
22 第2相手スクロール
23 第1軸受ハウジング
24 第2軸受ハウジング
25 ガイドピン
25a 係留部
25b ガイド部
25c 凸部
26 摺動板
27 リングシール
28 相手スクロール壁部
29 相手スクロール底部
30 圧縮室
31 第1ディスプレーサスクロール
32 第2ディスプレーサスクロール
33 シール要素
34 剥離要素
35 プリロード要素
36 摺動要素
37 ガイドリング
38 ディスプレーサスクロール壁部
39 ディスプレーサスクロール底部
40 圧縮空気管
41 熱交換器
42 締結孔
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】