(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】浮体式海洋構造物の運動減衰のためのシステム、装置、方法、およびそのようなシステムの使用
(51)【国際特許分類】
B63B 39/00 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B63B39/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023541000
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 NO2021050277
(87)【国際公開番号】W WO2022146142
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2021-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523253372
【氏名又は名称】ノース イノベーション アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライエルスダール カイ
(57)【要約】
浮体式海洋構造物(12)の運動減衰のためのシステム(10)、装置(1)、および方法。本システムの使用も開示される。システムは、一方向の運動を減衰させ、反対方向の運動を可能にするように構成された少なくとも1つの減衰装置(20)と、浮体式海洋構造物から水中の懸架深さに吊り下がる少なくとも1つの減衰装置を懸架するように構成されたそれぞれのワイヤ(32)を備える懸架装置(30)とを備え、減衰装置(20)は、減衰装置によって誘発される減衰力がワイヤの伸張時にかかるように配向される。また、各減衰装置(20)は、一方向の運動を減衰させ、実質的に減衰相互作用なしに反対方向の運動を可能にするように構成された弁構造体(62)を備える受動減衰装置である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体式海洋構造物(12)の運動減衰のためのシステム(10)であって、
一方向の運動を減衰させ、実質的に減衰相互作用なしに反対方向の運動を可能にするように構成された少なくとも1つの減衰装置(20)と、
前記浮体式海洋構造物(12)から水中の懸架深さに吊り下がる前記少なくとも1つの減衰装置(20)を懸架するように構成されたそれぞれのワイヤ(32)を備える懸架装置(30)であって、前記少なくとも1つの減衰装置(20)が、前記少なくとも1つの減衰装置(20)によって誘発される減衰力が前記ワイヤ(32)の伸張時にかかるように配向されている、懸架装置(30)と、
を備える、システム(10)において、
各減衰装置(20)が、一方向の運動を減衰させ、実質的に減衰相互作用なしに反対方向の運動を可能にするように構成された弁構造体(62)を備える受動減衰装置であって、前記弁構造体(62)の構成には、水が一方向に通過するのを妨げ、実質的に水を他の方向に通過させるように構成されたスリットが設けられることを特徴とする、
システム(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のシステム(10)であって、前記懸架装置(30)が、水中の前記少なくとも1つの減衰装置(20)の前記懸架深さを制御するように構成されたワイヤ制御装置(40)を備えることを特徴とするシステム(10)。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記懸架装置(30)が、前記浮体式海洋構造物(12)の運動に関する情報を受信し、前記情報に応じて、前記ワイヤ制御装置(40)によって水中の前記少なくとも1つの減衰装置(20)の前記懸架深さを制御するように構成された制御ユニット(50)を備えることを特徴とするシステム(10)。
【請求項4】
請求項3に記載のシステム(10)であって、前記懸架装置(30)が、前記少なくとも1つの減衰装置(20)の少なくとも上方位置および下方位置を含み、前記制御ユニット(50)が、前記浮体式海洋構造物(12)の前記運動に関する情報に基づいて前記少なくとも上方位置および下方位置を決定し、前記決定された少なくとも上方位置または下方位置に基づいて前記ワイヤ制御装置(40)に制御情報を送信するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項5】
請求項4に記載のシステム(10)であって、前記制御ユニット(50)が、前記システム(10)にかかる応力がしきい値を超えないように、前記少なくとも上方位置および前記下方位置を決定するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項6】
請求項4または5のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記制御ユニット(50)が、前記少なくとも上方位置および下方位置を連続的に決定するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記ワイヤ制御装置(40)が、水中の前記少なくとも1つの減衰装置(20)の前記懸架深さを制御するように構成された、前記少なくとも1つの減衰装置(20)用のそれぞれの遠隔制御可能なウインチを備え、前記制御ユニット(50)が、水中の前記少なくとも1つの減衰装置(20)の前記懸架深さを設定するための前記浮体式海洋構造物(12)の前記運動に関する前記情報に基づいて、前記それぞれのウインチに制御情報を送信するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項8】
請求項3から7のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記浮体式海洋構造物(12)の前記運動に関する前記情報が、前記浮体式海洋構造物(12)の上下動および縦揺れに関する情報を含み、前記制御ユニット(50)が、前記浮体式海洋構造物(12)の上下動および縦揺れの情報の関数に基づいて前記少なくとも上方位置および下方位置を決定するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項9】
請求項3から8のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記浮体式海洋構造物(12)の前記運動に関する前記情報が、うねり、揺れ、横揺れ、および偏揺れに関する情報をさらに含み、前記制御ユニット(50)が、前記浮体式海洋構造物(12)のうねり、揺れ、横揺れ、および偏揺れに関する情報のうちの少なくとも1つとともに、前記浮体式海洋構造物(12)の上下動および縦揺れの情報の関数に基づいて、前記少なくとも上方位置および下方位置を決定するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項10】
請求項3から9のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記懸架装置(30)が、前記浮体式海洋構造物(12)に、前記運動情報を前記制御ユニット(50)に提供するように構成された運動センサ(52)を備え、前記制御ユニット(50)が、前記運動情報に基づいて前記少なくとも1つの減衰装置(20)の所望の懸架深さを決定するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項11】
請求項10に記載のシステム(10)であって、前記運動センサ(52)が、角速度センサおよびジャイロスコープのうちの1つであることを特徴とするシステム(10)。
【請求項12】
請求項3から11のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記懸架装置(30)が、前記少なくとも1つの減衰装置(20)の前記少なくとも上方位置と下方位置との間の連続的な位置を含み、前記制御ユニット(50)が、前記少なくとも1つの減衰装置(20)の前記上方位置と前記下方位置との間の、前記上方位置と前記下方位置とを含む任意の位置を決定するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項13】
請求項12に記載のシステム(10)であって、前記懸架装置(30)が、前記浮体式海洋構造物(12)に接続され、前記少なくとも1つの減衰装置(20)を前記浮体式海洋構造物(12)から距離を置いて保持するように構成されたスペーサ要素(34)を備えることを特徴とするシステム(10)。
【請求項14】
請求項13に記載のシステム(10)であって、前記浮体式海洋構造物(12)の周りに対称的に配置された2つ以上の減衰装置(20)を備えることを特徴とするシステム(10)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、各減衰装置(20)が、前記弁構造体(62)と複数の開口部(64)とを含む放物面状に広がる支持構造体(60)を備えることを特徴とするシステム(10)。
【請求項16】
浮体式海洋構造物(12)の運動減衰のための装置(1)であって、前記浮体式海洋構造物(12)に取り付けられた請求項1から15のいずれか1項に記載のシステム(10)を備えることを特徴とする、装置(1)。
【請求項17】
請求項16に記載の装置(1)であって、前記浮体式海洋構造物(12)が翼桁建造物であることを特徴とする装置(1)。
【請求項18】
請求項16または17のいずれか1項に記載の装置(1)であって、前記浮体式海洋構造物(12)が、風力タービンを保持するタワーを備えることを特徴とする装置(1)。
【請求項19】
請求項1から15のいずれか1項に記載のシステム(10)による浮体式海洋構造物(12)の運動減衰のための方法であって、
前記浮体式海洋構造物(12)の運動に関する情報を受信するステップと、
前記情報に基づいて前記少なくとも1つの減衰装置(20)の懸架深さを決定するステップと、
前記ワイヤ制御装置(40)によって、前記少なくとも1つの減衰装置(20)を前記決定された深さに設定するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項20】
浮体式海洋構造物(12)の運動減衰のための、請求項1から15のいずれか1項に記載のシステム(10)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式海洋構造物の運動減衰のためのシステム、装置、および方法に関する。本発明はまた、浮体式海洋構造物の運動減衰のためのシステムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
浮体式海洋構造物の運動減衰のための先行技術のシステムは、波および風を受けた場合でも浮体式海洋構造物を比較的安定に保持するために使用される。例えば、海洋風力発電プラントの傾斜および縦揺れ運動を低減することによって、発電効率が向上する。
【0003】
浮体式海洋構造物の運動減衰のための先行技術のシステムに伴う問題は、異常に厳しい気象条件の場合に、システムの減衰装置およびシステム全体に高い応力がかかり、システムの永久的な故障につながる可能性があることである。このような異常に厳しい気象条件に耐えることができるシステムを提供することは困難であることが証明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
次に、本発明が開示されるが、その目的は、既知の先行技術の欠点の少なくとも1つを改善もしくは低減すること、または少なくとも既知の先行技術に対する有用な代替形態を提供することである。特に、本発明の目的は、異常に厳しい気象条件に対して耐性が改善された浮体式海洋構造物の運動減衰のためのシステムを提供することである。この目的は、以下の説明および添付の特許請求の範囲に明記される特徴によって達成される。本発明は、独立請求項によって定義され、従属請求項は、本発明の有利な実施形態を定義する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によると、浮体式海洋構造物の運動減衰のためのシステムが提供される。本システムは、
一方向の運動を減衰させ、実質的に減衰相互作用なしに反対方向の運動を可能にするように構成された少なくとも1つの減衰装置と、
浮体式海洋構造物から水中の懸架深さに吊り下がる少なくとも1つの減衰装置を懸架するように構成されたそれぞれのワイヤを備える懸架装置であって、少なくとも1つの減衰装置が、少なくとも1つの減衰装置によって誘発される減衰力がワイヤの伸張時にかかるように配向されている、懸架装置と、
を備える。
【0006】
また、各減衰装置は、一方向の運動を減衰させ、実質的に減衰相互作用なしに反対方向の運動を可能にするように構成された弁構造体を備える受動減衰装置であり、弁構造体の構成には、水が一方向に通過するのを妨げ、実質的に水を他の方向に通過させるように構成されたスリットが設けられる。
【0007】
少なくとも1つの減衰装置は、逆止弁の機能を達成し、すなわち、減衰装置は、水が減衰装置を通過するのを阻止するか、または実質的に阻止することによって、一方向の運動を減衰させ、水が減衰装置を通過することを可能にすることによって、実質的に減衰相互作用なしに反対方向の運動を可能にする。また、受動減衰装置は、制御されることなく機能するという利点を有する。
【0008】
システムの懸架装置は、少なくとも1つの減衰装置を浮体式海洋構造物からワイヤによって水中に懸架するように構成され、少なくとも1つの減衰装置が、誘発された減衰力がワイヤの伸張時にかかるように接続され、それによって浮体式海洋構造物の運動を減衰させる。本システムは、波および風を受けたときに、浮体式海洋構造物が比較的安定した状態に維持されることを保証する。
【0009】
懸架装置は、水中の少なくとも1つの減衰装置の懸架深さを制御するように構成されたワイヤ制御装置を備えることができる。少なくとも1つの減衰装置にかかる力は、水中の減衰装置の深さに依存する。より深い深さでは、波の相互作用および水の乱流運動は、減衰装置が水面近くに配置されている場合よりも小さくなる。これにより、少なくとも1つの減衰装置によって誘発される減衰力は、水面により近い位置と比較して、より深い位置ではより大きくなる。しかしながら、これに対応して、少なくとも1つの減衰装置にかかる応力も、水面により近い位置と比較して、より深い位置ではより大きくなる。ワイヤ制御装置によって少なくとも1つの減衰装置の深さを調整することによって、異常に厳しい気象条件の状況の場合に少なくとも1つの減衰装置を上昇させることによって、システムにかかる力および応力を低減することができる。これにより、本システムは、異常に厳しい気象条件の場合にシステムにかかる力および応力がより小さい、浮体式海洋構造物の運動減衰のためのシステムを提供する。
【0010】
本発明の一実施形態によると、懸架装置は、浮体式海洋構造物の運動に関する情報を受信し、前記情報に応じて、ワイヤ制御装置によって水中の少なくとも1つの減衰装置の懸架深さを制御するように構成された制御ユニットを備える。
【0011】
制御ユニットは、浮体式海洋構造物の運動に関する情報を受信し、その情報に基づいて少なくとも1つの減衰装置の所望の深さを決定するように構成される。少なくとも1つの減衰装置の決定された所望の深さに基づいて、制御ユニットは、ワイヤ制御装置に制御情報を送信するように構成される。
【0012】
制御ユニットは、例えば、中央処理装置(CPU)などの演算手段を備える。制御ユニットは、運動センサからのセンサ情報などの浮体式海洋構造物の運動に関する情報を受信するための手段と、水中の少なくとも1つの減衰装置の懸架深さを制御するための制御情報を生成するための手段と、をさらに備える。
【0013】
本発明の一実施形態によると、懸架装置は、少なくとも1つの減衰装置の少なくとも上方位置および下方位置を備え、制御ユニットは、浮体式海洋構造物の運動に関する情報に基づいて少なくとも上方位置および下方位置を決定し、決定された少なくとも上方位置または下方位置に基づいてワイヤ制御装置に制御情報を送信するように構成される。
【0014】
本発明の一実施形態によると、制御ユニットは、システムにかかる応力がしきい値を超えないように、少なくとも上方位置および下方位置を決定するように構成される。しきい値は、システムが耐えるように構成された応力に関連する。
【0015】
本発明の一実施形態によると、制御ユニットは、少なくとも上方位置および下方位置を連続的に決定するように構成される。
【0016】
本発明の一実施形態によると、制御ユニットは、少なくとも上方位置および下方位置を断続的な間隔で決定するように構成される。
【0017】
本発明の一実施形態によると、ワイヤ制御装置は、水中の少なくとも1つの減衰装置の前記懸架深さを制御するように構成された、少なくとも1つの減衰装置用のそれぞれの遠隔制御可能なウインチを備え、制御ユニットは、水中の少なくとも1つの減衰装置の前記懸架深さを設定するための浮体式海洋構造物の運動に関する情報に基づいて、それぞれのウインチに制御情報を送信するように構成される。ウインチは、浮体式海洋構造物に取り付けられるように構成され、ワイヤが巻き取られ、またはほどかれるワイヤドラムを備える。
【0018】
本発明の一実施形態によると、浮体式海洋構造物の運動に関する情報は、浮体式海洋構造物の上下動および縦揺れに関する情報を含み、制御ユニットは、浮体式海洋構造物の上下動および縦揺れの情報の関数に基づいて少なくとも上方位置および下方位置を決定するように構成される。
【0019】
本発明の一実施形態によると、浮体式海洋構造物の運動に関する情報は、うねり、揺れ、横揺れ、および偏揺れに関する情報をさらに含み、制御ユニットは、浮体式海洋構造物のうねり、揺れ、横揺れ、および偏揺れに関する情報のうちの少なくとも1つとともに、浮体式海洋構造物の上下動および縦揺れの情報の関数に基づいて、少なくとも上方位置および下方位置を決定するように構成される。
【0020】
本発明の一実施形態によると、懸架装置は、浮体式海洋構造物にまたは浮体式海洋構造物の近傍に、前記運動情報を制御ユニットに提供するように構成された運動センサを備え、制御ユニットは、前記運動情報に基づいて、少なくとも1つの減衰装置の所望の懸架深さを決定するように構成される。
【0021】
本発明の一実施形態によると、運動センサは、角速度センサおよびジャイロスコープのうちの1つである。
【0022】
本発明の一実施形態によると、懸架装置は、少なくとも1つの減衰装置の少なくとも上方位置と下方位置との間の連続的な位置を含み、制御ユニットは、少なくとも1つの減衰装置の上方位置と下方位置との間の、および上方位置と下方位置とを含む任意の位置を決定するように構成される。
【0023】
上方位置、下方位置、およびその中間のさらなる位置によって、減衰度は、システムにかかる応力がしきい値を超えることなく十分に高く維持される。したがって、本システムにより、気象条件に応じた高い減衰度を使用することが可能になる。
【0024】
本発明の一実施形態によると、懸架装置は、浮体式海洋構造物に接続され、少なくとも1つの減衰装置を浮体式海洋構造物から距離を置いて保持するように構成されたスペーサ要素を備える。
【0025】
本発明の一実施形態によると、システムは、浮体式海洋構造物の周りに対称的に配置された2つ以上の減衰装置を備える。複数の減衰装置を使用することで、浮体式海洋構造物の均一な運動減衰がもたらされる。
【0026】
本発明の一実施形態によると、各減衰装置は、弁構造体と複数の開口部とを含む放物面状に広がる支持構造体を備える。
【0027】
本発明の別の態様によると、浮体式海洋構造物の運動減衰のための装置が提供される。本装置は、浮体式海洋構造物と、浮体式海洋構造物に取り付けられた上記の実施形態のいずれかによるシステムとを備える。
【0028】
本発明の一実施形態によると、浮体式海洋構造物は翼桁建造物である。
【0029】
本発明の一実施形態によると、浮体式海洋構造物は、風力タービンを保持するタワーを備える。
【0030】
本発明のさらなる態様によると、上記の実施形態のいずれかによるシステムを用いた浮体式海洋構造物の運動減衰のための方法が提供される。本方法は、
浮体式海洋構造物の運動に関する情報を受信するステップと、
前記情報に基づいて少なくとも1つの減衰装置の懸架深さを決定するステップと、
ワイヤ制御装置によって、少なくとも1つの減衰装置を決定された深さに設定するステップと、
を含む。
【0031】
本発明の別の態様によると、浮体式海洋構造物の運動減衰のための上記の実施形態のいずれかによるシステムの使用が提供される。
【0032】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1a】本発明の一実施形態による浮体式海洋構造物の運動減衰のための装置およびシステムの斜視図である。
【
図1b】
図1aの装置およびシステムの概略側面図である。
【
図2a】
図1a、
図1bの装置およびシステムの減衰装置の斜視図である。
【
図3】浮体式海洋構造物の運動減衰のための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面は、概略的かつ簡略化された様式で示され、本発明を説明するのに必要でない特徴は、省略されることがある。同一の参照番号は、図面における同一または同様の特徴を指す。図面に示される様々な特徴は、必ずしも縮尺通りに描かれていない場合がある。
【0035】
図1aおよび
図1bは、浮体式海洋構造物12の運動減衰のための装置1およびシステム10である。装置1は、浮体式海洋構造物12と、浮体式海洋構造物12に取り付けられたシステム10とを備える。
【0036】
浮体式海洋構造物12は、例えば、風力タービンを保持するためのタワーを備える。
図1a、
図1bに開示された実施形態では、浮体式海洋構造物12は、翼桁建造物を含む。しかしながら、システム10は、様々なタイプの浮体式海洋構造物の運動減衰のために使用されてもよいことを理解されたい。
【0037】
システム10は、波および風を受けると浮体式海洋構造物12の運動を減衰させるように構成されている。これにより、システムは、傾斜および縦揺れ運動を低減し、浮体式海洋構造物12は、比較的安定した直立位置に維持され、これは、例えば、風力発電プラントの発電効率にとって有利である。
【0038】
システム10は、一方向の運動を減衰させ、実質的に減衰相互作用なしに反対方向の運動を可能にするように構成された、受動減衰装置などの少なくとも1つの減衰装置20を備える。開示された実施形態では、6つの減衰装置20が浮体式海洋構造物12の周りに対称的に配置されている。複数の減衰装置20を浮体式海洋構造物12の周りに対称的に配置することによって、運動減衰が浮体式海洋構造物12に均等に分散される。
【0039】
任意の数の減衰装置20が適用可能であることを理解されたい。しかしながら、本発明の説明を続けるにあたり、減衰装置20は複数形で説明される。
【0040】
システム10は、減衰装置20を水中に懸架するための懸架装置30をさらに備える。懸架装置30は、それぞれのワイヤ32と、減衰装置20を浮体式海洋構造物12から離間して懸架された状態に保持するためのスペーサ要素34とを備える。ワイヤは、例えば、船舶用に構成されたスチールワイヤである。開示された実施形態では、スペーサ要素34は、浮体式海洋構造物12に取り付けられたリング状要素を含む。
【0041】
減衰装置20は、減衰力がワイヤ32の伸張時に誘発されるように、それぞれのワイヤ32の端部に取り付けられている。したがって、上方向への運動は減衰され、一方、下方向への運動は実質的に減衰装置20との相互作用なしになる。これにより、システム10は、浮体式海洋構造物12の安定性を向上させる。
【0042】
懸架装置30は、少なくとも上方位置と下方位置との間で水中の減衰装置20の懸架深さを制御するように構成されたワイヤ制御装置40をさらに備える。好ましくは、ワイヤ制御装置40は、減衰装置20を上方位置、下方位置、および上方位置と下方位置との間の位置に設定するように構成される。
【0043】
ワイヤ制御装置40は、例えば、水中の減衰装置20の懸架深さを制御するように構成された、減衰装置20用のそれぞれの遠隔制御可能なウインチ42を備える。
【0044】
懸架装置30は、制御ユニット50と、制御ユニット50に運動情報を提供するように構成された浮体式海洋構造物12の運動センサ52と、をさらに備える。制御ユニット50は、運動情報に基づいて、減衰装置20の所望の懸架深さを決定するように構成されている。開示された実施形態では、制御ユニット50と運動センサ52は、互いに近接して配置されている。しかしながら、制御ユニット50および運動センサ52は、異なる位置に配置されてもよいことを理解されたい。運動センサ52は、センサ情報を制御ユニット50に転送するように構成されている。
【0045】
運動センサ52は、浮体式海洋構造物12またはそれに依存するエンティティの上下動および縦揺れを感知するように構成されている。好ましくは、運動センサ52は、浮体式海洋構造物12またはそれに依存するエンティティのうねり、揺れ、横揺れおよび偏揺れを感知するようにさらに構成されている。運動センサ52は、例えば、角速度センサまたはジャイロスコープである。
【0046】
減衰装置20にかかる力は、水中に懸架される深さに依存する。より深い深さでは、波の相互作用および水の乱流運動は、水面により近い場合よりも小さくなる。したがって、減衰装置20は、水面により近い位置と比較してより深い深さに配置されると、より高い減衰度を提供する。しかしながら、これに対応して、減衰装置20のより深い深さでは、システム10にかかる応力も、減衰装置20が水面により近くに配置される場合と比較して高くなる。
【0047】
本発明の一実施形態によると、制御ユニット50は、システム10にかかる応力がしきい値を超えないように、運動情報に基づいて水中の減衰装置20の望ましい懸架深さを決定するように構成されている。しきい値は、例えば、システム10にかかる設計上の許容可能な応力レベルに対応する。決定された減衰装置20の所望の懸架深さに基づいて、制御ユニット50は、ワイヤ制御装置40への制御情報を生成する。
【0048】
図2aおよび
図2bは、
図1a、
図1bの装置1およびシステム10の減衰装置20の例を示す。減衰装置20は、受動減衰装置であり、逆止弁の機能を有する。
【0049】
減衰装置20は、弁構造体62と複数の開口部64とを含む放物面状に広がる支持構造体60を備える。弁構造体62には、水が一方向に通過するのを妨げ、実質的に水を他の方向に通過させるように構成されたスリットが設けられている。支持構造体60は、システム10のそれぞれのワイヤ32に取り付けられるように構成されたシャフト66をさらに備える。
【0050】
図3は、浮体式海洋構造物12の運動減衰のための方法の流れ図を開示する。
【0051】
本方法は、ステップ110において、浮体式海洋構造物12の運動に関する情報を受信するステップを含む。情報は、例えば、運動センサ52によって生成され、制御ユニット50によって受信される。
【0052】
ステップ120において、本方法は、受信した情報に基づいて、減衰装置20の所望の懸架深さを決定するステップを含む。情報は、例えば、浮体式海洋構造物12の上下動および縦揺れである。あるいは、情報は、浮体式海洋構造物12のうねり、揺れ、横揺れ、および偏揺れに関する情報を含むことができる。
【0053】
ステップ130において、本方法は、ワイヤ制御装置40によって減衰装置20を決定された深さに設定するステップを含む。本方法のステップは、連続的に繰り返されるように構成されている。
【0054】
一般に、本明細書および特許請求の範囲で使用される用語は、明示的に別段の定義がない限り、それらの技術分野の通常の意味に従って解釈される。それにもかかわらず、用語「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」ならびにそれらの変形は、指定された特徴、ステップまたは整数が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップ、または整数の存在を除外するように解釈されるものではない。さらに、不定冠詞「a」または「an」は、明示的に別段の記載がない限り、エンティティの少なくとも1つのインスタンスを導入するものとしてオープンに解釈される。不定冠詞によって導入されるエンティティは、複数のエンティティとして解釈されることから除外されない。
【0055】
前述の説明、または以下の特許請求の範囲、または添付の図面に開示され、それらの特定の形態で、または開示された機能を実行するための手段、または開示された結果を得るための方法もしくはプロセスに関して表現された特徴は、必要に応じて、別個に、またはそのような特徴の任意の組合せで、本発明をその多様な形態で実現するために利用することができる。
【0056】
本発明を上述の実施形態に関連して説明してきたが、本開示が与えられると、多くの等価な修正および変形が当業者には明らかになるであろう。したがって、上述した本発明の実施形態は、例示的なものであり、限定的なものではないと考えられる。添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対して様々な変更を行うことができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体式海洋構造物(12)の運動減衰のためのシステム(10)であって、
一方向の運動を減衰させ、実質的に減衰相互作用なしに反対方向の運動を可能にするように構成された少なくとも1つの減衰装置(20)と、
前記浮体式海洋構造物(12)から水中の懸架深さに吊り下がる前記少なくとも1つの減衰装置(20)を懸架するように構成されたそれぞれのワイヤ(32)を備える懸架装置(30)であって、前記少なくとも1つの減衰装置(20)が、前記少なくとも1つの減衰装置(20)によって誘発される減衰力が前記ワイヤ(32)の伸張時にかかるように配向されている、懸架装置(30)と、
を備える、システム(10)において、
各減衰装置(20)が、一方向の運動を減衰させ、実質的に減衰相互作用なしに反対方向の運動を可能にするように構成された弁構造体(62)を備える受動減衰装置であって、前記弁構造体(62)の構成には、水が一方向に通過するのを妨げ、実質的に水を他の方向に通過させるように構成されたスリットが設けられることを特徴とする、
システム(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のシステム(10)であって、前記懸架装置(30)が、水中の前記少なくとも1つの減衰装置(20)の前記懸架深さを制御するように構成されたワイヤ制御装置(40)を備えることを特徴とするシステム(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシステム(10)であって、前記懸架装置(30)が、前記浮体式海洋構造物(12)の運動に関する情報を受信し、
前記少なくとも1つの減衰装置(20)の所望の深さを決定し、前記決定された所望の深さに基づいて、前記ワイヤ制御装置(40)によって水中の前記少なくとも1つの減衰装置(20)の前記懸架深さ
が制御されるように前記ワイヤ制御装置(40)に制御情報を送信するように構成された制御ユニット(50)を備えることを特徴とするシステム(10)。
【請求項4】
請求項3に記載のシステム(10)であって、前記懸架装置(30)が、前記少なくとも1つの減衰装置(20)の少なくとも上方位置および下方位置を含み、前記制御ユニット(50)が、前記浮体式海洋構造物(12)の前記運動に関する情報に基づいて前記少なくとも上方位置および下方位置を決定し、前記決定された少なくとも上方位置または下方位置に基づいて前記ワイヤ制御装置(40)に制御情報を送信するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項5】
請求項4に記載のシステム(10)であって、前記制御ユニット(50)が、前記システム(10)にかかる応力がしきい値を超えないように、前記少なくとも上方位置および前記下方位置を決定するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項6】
請求項4または5に記載のシステム(10)であって、前記制御ユニット(50)が、前記少なくとも上方位置および下方位置を連続的に決定するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記ワイヤ制御装置(40)が、水中の前記少なくとも1つの減衰装置(20)の前記懸架深さを制御するように構成された、前記少なくとも1つの減衰装置(20)用のそれぞれの遠隔制御可能なウインチを備え、前記制御ユニット(50)が、水中の前記少なくとも1つの減衰装置(20)の前記懸架深さを設定するための前記浮体式海洋構造物(12)の前記運動に関する前記情報に基づいて、前記それぞれのウインチに制御情報を送信するように構成され
、
前記ウインチが、前記浮体式海洋構造物(12)
に取り付けられるように構成され、前記ウインチが、前記ワイヤ(32)
が巻き取られ、またはほどかれるワイヤドラムを備えることを特徴とするシステム(10)。
【請求項8】
請求項3から7のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記浮体式海洋構造物(12)の前記運動に関する前記情報が、前記浮体式海洋構造物(12)の上下動および縦揺れに関する情報を含み、前記制御ユニット(50)が、前記浮体式海洋構造物(12)の上下動および縦揺れの情報の関数に基づいて前記少なくとも上方位置および下方位置を決定するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項9】
請求項3から8のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記浮体式海洋構造物(12)の前記運動に関する前記情報が、うねり、揺れ、横揺れ、および偏揺れに関する情報をさらに含み、前記制御ユニット(50)が、前記浮体式海洋構造物(12)のうねり、揺れ、横揺れ、および偏揺れに関する情報のうちの少なくとも1つとともに、前記浮体式海洋構造物(12)の上下動および縦揺れの情報の関数に基づいて、前記少なくとも上方位置および下方位置を決定するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項10】
請求項3から9のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記懸架装置(30)が、前記浮体式海洋構造物(12)に、前記運動情報を前記制御ユニット(50)に提供するように構成された運動センサ(52)を備え、前記制御ユニット(50)が、前記運動情報に基づいて前記少なくとも1つの減衰装置(20)の所望の懸架深さを決定するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項11】
請求項10に記載のシステム(10)であって、前記運動センサ(52)が、角速度センサおよびジャイロスコープのうちの1つであることを特徴とするシステム(10)。
【請求項12】
請求項3から11のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記懸架装置(30)が、前記少なくとも1つの減衰装置(20)の前記少なくとも上方位置と下方位置との間の連続的な位置を含み、前記制御ユニット(50)が、前記少なくとも1つの減衰装置(20)の前記上方位置と前記下方位置との間の、前記上方位置と前記下方位置とを含む任意の位置を決定するように構成されていることを特徴とするシステム(10)。
【請求項13】
請求項
1から12のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記懸架装置(30)が、前記浮体式海洋構造物(12)に接続され、前記少なくとも1つの減衰装置(20)を前記浮体式海洋構造物(12)から距離を置いて保持するように構成されたスペーサ要素(34)を備えることを特徴とするシステム(10)。
【請求項14】
請求項
1から13のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、前記浮体式海洋構造物(12)の周りに対称的に配置された2つ以上の減衰装置(20)を備えることを特徴とするシステム(10)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載のシステム(10)であって、各減衰装置(20)が、前記弁構造体(62)と複数の開口部(64)とを含む放物面状に広がる支持構造体(60)を備えることを特徴とするシステム(10)。
【請求項16】
浮体式海洋構造物(12)の運動減衰のための装置(1)であって、前記浮体式海洋構造物(12)に取り付けられた請求項1から15のいずれか1項に記載のシステム(10)を備えることを特徴とする、装置(1)。
【請求項17】
請求項16に記載の装置(1)であって、前記浮体式海洋構造物(12)が翼桁建造物であることを特徴とする装置(1)。
【請求項18】
請求項16または17に記載の装置(1)であって、前記浮体式海洋構造物(12)が、風力タービンを保持するタワーを備えることを特徴とする装置(1)。
【請求項19】
請求項1から15のいずれか1項に記載のシステム(10)による浮体式海洋構造物(12)の運動減衰のための方法であって、
前記浮体式海洋構造物(12)の運動に関する情報を受信するステップと、
前記情報に基づいて前記少なくとも1つの減衰装置(20)の懸架深さを決定するステップと、
前記ワイヤ制御装置(40)によって、前記少なくとも1つの減衰装置(20)を前記決定された深さに設定するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項20】
浮体式海洋構造物(12)の運動減衰のための、請求項1から15のいずれか1項に記載のシステム(10)の使用。
【国際調査報告】