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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】電気自動車用の車輪アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/38 20060101AFI20231214BHJP
   F16D 65/22 20060101ALI20231214BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20231214BHJP
   F16D 121/10 20120101ALN20231214BHJP
【FI】
B60T13/38
F16D65/22
B60K7/00
F16D121:10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548972
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 AU2021051230
(87)【国際公開番号】W WO2022082271
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】2020903851
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523151654
【氏名又は名称】アプライド エレクトリック ビークルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロードベント,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】グリーブス,マシュー キャンベル
【テーマコード(参考)】
3D048
3D235
3J058
【Fターム(参考)】
3D048AA06
3D048BB02
3D048CC44
3D048CC64
3D048CC67
3D048HH03
3D048HH26
3D048KK14
3D235AA02
3D235BB13
3D235CC42
3D235GA03
3D235GA13
3D235GB15
3D235GB34
3J058AA43
3J058AA54
3J058AA58
3J058AA77
3J058AA88
3J058BA13
3J058CC07
3J058CC72
3J058CC78
3J058DC19
3J058FA01
3J058FA42
(57)【要約】
電気自動車用の車輪アセンブリ。車輪アセンブリは、電気モータと一体のハブと、電気モータのロータと摩擦係合するための少なくとも1つの制動面とともにアセンブリに装着されている流体作動式フェイルセーフブレーキと、を備え、非作動状態のブレーキはロータと係合し、流体作動時にブレーキが解放されてロータの回転を可能にする。ノーマルオープン状態を有する電磁弁が、ブレーキを流体作動させるために使用される加圧流体と流体連通しており、電磁弁は、電力が供給されると閉じ、それによってブレーキを解放するための流体作動を可能にする。電力が失われた場合には、電磁弁はノーマルオープン状態に戻り、ブレーキは非作動となりロータに制動力を加える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車用の車輪アセンブリであって、
電気モータと一体のハブと、
前記電気モータのロータと摩擦係合するための少なくとも1つの制動面とともに前記アセンブリに装着されている流体作動式フェイルセーフブレーキと、を備え、
非作動状態の前記ブレーキは前記ロータと係合し、流体作動時に前記ブレーキが解放されて前記ロータの回転を可能にし、
ノーマルオープン状態を有する電磁弁が、前記ブレーキを流体作動させるために使用される加圧流体と流体連通しており、前記電磁弁は、電力が供給されると閉じ、それによって前記ブレーキを解放するための流体作動を可能にし、電力が失われた場合には、前記電磁弁は前記ノーマルオープン状態に戻り、前記ブレーキは非作動となり前記ロータに制動力を加えることを特徴とする、車輪アセンブリ。
【請求項2】
前記ブレーキは空気圧作動式ブレーキである、請求項1に記載の車輪アセンブリ。
【請求項3】
前記空気圧作動式ブレーキは2つの前記制動面を含む、請求項2に記載の車輪アセンブリ。
【請求項4】
前記空気圧作動式ブレーキは、2つの隣接する予荷重が与えられたばね板を備え、前記ばね板のそれぞれは、その外縁付近にそれぞれの前記制動面を支持している、請求項3に記載の車輪アセンブリ。
【請求項5】
前記空気圧作動式ブレーキは、前記ばね板の間の前記制動面付近の位置に配置された、少なくとも1つの空気圧で拡張可能な拡張手段を備え、前記拡張手段は空気供給部と流体連通している、請求項4に記載の車輪アセンブリ。
【請求項6】
前記空気圧作動式ブレーキの作動は、前記拡張手段の空気圧による拡張をもたらし、それによって前記ばね板および前記ばね板のそれぞれの制動面を前記ロータから離す、請求項5に記載の車輪アセンブリ。
【請求項7】
前記拡張手段は、前記空気供給部と流体連通する開口部を有する環状ベローズである、請求項6に記載の車輪アセンブリ。
【請求項8】
前記各制動面は円錐台形状を有する、請求項7に記載の車輪アセンブリ。
【請求項9】
前記各制動面は、前記ばね板と一体のブレーキ台座である、請求項4から8のいずれか一項に記載の車輪アセンブリ。
【請求項10】
前記各制動面は、前記ばね板に取り付けられたブレーキパッドである、請求項9に記載の車輪アセンブリ。
【請求項11】
前記各ばね板は、さらなる付勢手段により作用される、請求項4に記載の車輪アセンブリ。
【請求項12】
絞り弁が前記加圧流体に沿って配置され、電力が失われて前記電磁弁が前記ノーマルオープン状態に戻った場合、前記絞り弁が前記ブレーキの非作動と、その結果として生じる前記ロータに加えられる制動力とを流体的に緩和させる、請求項1に記載の車輪アセンブリ。
【請求項13】
前記拡張手段は、前記空気供給部と流体連通する環状チューブである、請求項6に記載の車輪アセンブリ。
【請求項14】
前記拡張手段は形状において環状である、請求項6に記載の車輪アセンブリ。
【請求項15】
前記電磁弁はソレノイド作動式の圧力制御弁である、請求項1に記載の車輪アセンブリ。
【請求項16】
前記電磁弁はラッチ式電磁弁である、請求項1に記載の車輪アセンブリ。
【請求項17】
電気自動車用の車輪であって、
前記車輪のハブ内に一体化された電気モータと、
前記電気モータのロータと摩擦係合するための少なくとも2つの制動面とともに前記車輪に装着されている空気圧作動式フェイルセーフブレーキと、を備え、
非作動状態の前記ブレーキは前記ロータと係合し、空気圧作動時に前記ブレーキが解放されて前記ロータの回転を可能にし、
ノーマルオープン状態を有する電磁弁が、前記ブレーキを空気圧作動させるために使用される加圧空気と流体連通しており、前記電磁弁は、電力が供給されると閉じ、それによって前記ブレーキを解放するための空気圧作動を可能にし、前記電磁弁は、非通電の場合は前記ノーマルオープン状態に戻り、前記ブレーキは非作動になり前記ロータと係合することを特徴とする、車輪。
【請求項18】
前記ブレーキは、2つの隣接する予荷重が与えられたばね板を備え、前記ばね板のそれぞれは、その外縁付近にそれぞれの前記制動面を支持しており、前記空気圧作動式ブレーキは、前記ばね板の間の前記制動面付近の位置に配置された、空気圧で拡張可能な拡張手段を備え、前記拡張手段は加圧空気供給部と流体連通し、前記空気圧作動式ブレーキの作動は、前記拡張手段の空気圧による拡張をもたらし、それによって前記ばね板および前記ばね板のそれぞれの制動面を前記ロータから離す、請求項17に記載の車輪。
【請求項19】
前記各ばね板は、さらなる付勢手段により作用される、請求項18に記載の車輪。
【請求項20】
絞り弁が前記加圧空気に沿って配置されており、前記電磁弁が非通電になり前記ノーマルオープン状態に戻ると、前記絞り弁は、前記ブレーキが前記ロータに係合するときの前記ブレーキの非作動を空気圧で緩和させる、請求項17に記載の車輪。
【請求項21】
前記拡張手段は形状において環状である、請求項18に記載の車輪。
【請求項22】
前記拡張手段は少なくとも1つの環状ベローズである、請求項18に記載の車輪。
【請求項23】
前記拡張手段は環状チューブである、請求項18に記載の車輪。
【請求項24】
前記電磁弁はソレノイド作動式の圧力制御弁である、請求項17に記載の車輪アセンブリ。
【請求項25】
前記電磁弁はラッチ式電磁弁である、請求項17に記載の車輪アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車用の車輪アセンブリに関する。特に、本発明は、取り外し可能なモジュール式ポッド付きのプラットフォームを有する電動道路車両における車輪アセンブリを参照して説明されている。より具体的には、実施形態は、自律型または半自律型の車両に使用するための車輪アセンブリを対象にする。
【背景技術】
【0002】
広範囲な道路交通のための電動車両の導入には、車両の設計とエンジニアリングに多くの機会と課題があり、特に、完全自律型または半自律型の電気自動車を検討している場合はなおさらである。最も重要な機会の1つは、電気自動車が持つ潜在的な効率性を活用することである。電動車両をより効率的に運用する方法としては、車両全体の重量を減らすこと、蓄積されたエネルギーから車両の動きへの変換効率(すなわちドライブトレインの効率)を最適化すること、所与のプラットフォームで利用可能な車体サイズと室内スペースを最適化すること、および堅牢で広い範囲の動作環境で動作させることのできる冗長性レベルを有する原動装置を提供すること、などがある。
【0003】
現在、電動車両には、電気モータが配置された車輪アセンブリが一般的に設けられている。しかしながら、これらの電動車両の多くは現在、従来の車両油圧ブレーキシステムに通常設けられているようなドライバとブレーキ装置との間の機械部品がない、電気式のバイワイヤブレーキを使用している。
【0004】
電気機械式ブレーキシステムは本質的にかさばり、ダイレクトドライブ車輪モータとパッケージングすることは困難である。さらに、電気機械式ブレーキ装置は、機能するための動力および制御システムの両方を典型的に必要とし、どちらかが失われるとブレーキは機能することができない。
【0005】
電動自律型車両が広く受け入れられるためには、乗客および物品の配達の両方に対して、多大な航続距離および積載能力を有することができる必要がある。航続距離および積載量の増加に伴い、電気駆動モータおよびブレーキシステムを含む全ての車両の原動装置は、一定レベルの堅牢性および冗長性を有し、容易にメンテナンスおよび修理を行うことができる必要がある。
【0006】
上記を考慮して、本発明の実施形態は、電気モータと一体のハブと、電動車両での使用に適したアセンブリ内に装着された流体作動式フェイルセーフブレーキとを備える車輪アセンブリを提供することを目的とする。この車輪アセンブリは、先行技術の不利の少なくとも1つを改善することを目指す。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様において、本発明は、電気自動車用の車輪アセンブリで構成されている。前記車輪アセンブリは、電気モータと一体のハブと、前記電気モータのロータと摩擦係合するための少なくとも1つの制動面とともに前記アセンブリに装着されている流体作動式フェイルセーフブレーキと、を備え、非作動状態の前記ブレーキは前記ロータと係合し、流体作動時に前記ブレーキが解放されて前記ロータの回転を可能にし、ノーマルオープン状態を有する電磁弁が、前記ブレーキを流体作動させるために使用される加圧流体と流体連通しており、前記電磁弁は、電力が供給されると閉じ、それによって前記ブレーキを解放するための流体作動を可能にし、電力が失われた場合には、前記電磁弁は前記ノーマルオープン状態に戻り、前記ブレーキは非作動となり前記ロータに制動力を加えることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記ブレーキは空気圧作動式ブレーキである。
【0009】
好ましくは、前記空気圧作動式ブレーキは2つの前記制動面を含む。
【0010】
好ましくは、前記空気圧作動式ブレーキは、2つの隣接する予荷重が与えられたばね板を備え、前記ばね板のそれぞれは、その外縁付近にそれぞれの前記制動面を支持している。
【0011】
好ましくは、前記空気圧作動式ブレーキは、前記ばね板の間の前記制動面付近の位置に配置された、少なくとも1つの空気圧で拡張可能な拡張手段を備え、前記拡張手段は空気供給部と流体連通している。
【0012】
好ましくは、前記空気圧作動式ブレーキの作動は、前記拡張手段の空気圧による拡張をもたらし、それによって前記ばね板および前記ばね板のそれぞれの制動面を前記ロータから離す。
【0013】
好ましくは、一構成において、前記拡張手段は、前記空気供給部と流体連通する開口部を有する環状ベローズである。
【0014】
好ましくは、前記各制動面は円錐台形状を有する。
【0015】
好ましくは、前記各制動面は、前記ばね板と一体のブレーキ台座である。
【0016】
好ましくは、前記各制動面は、前記ばね板に取り付けられたブレーキパッドである。
【0017】
好ましくは、前記各ばね板は、さらなる付勢手段により作用される。
【0018】
好ましくは、絞り弁が前記加圧流体に沿って配置され、電力が失われて前記電磁弁が前記ノーマルオープン状態に戻った場合、前記絞り弁が前記ブレーキの非作動と、その結果として生じる前記ロータに加えられる制動力とを流体的に緩和させる。
【0019】
好ましくは、別の構成において、前記拡張手段は、前記空気供給部と流体連通する環状チューブである。
【0020】
好ましくは、前記拡張手段は形状において環状である。
【0021】
好ましくは、一構成において、前記電磁弁はソレノイド作動式の圧力制御弁である。
【0022】
好ましくは、別の構成において、前記電磁弁はラッチ式電磁弁である。
【0023】
第2の態様において、本発明は、電気自動車用の車輪で構成される。前記車輪は、前記車輪のハブ内に一体化された電気モータと、前記電気モータのロータと摩擦係合するための少なくとも2つの制動面とともに前記車輪に装着されている空気圧作動式フェイルセーフブレーキと、を備え、非作動状態の前記ブレーキは前記ロータと係合し、空気圧作動時に前記ブレーキが解放されて前記ロータの回転を可能にし、ノーマルオープン状態を有する電磁弁が、前記ブレーキを空気圧作動させるために使用される加圧空気と流体連通しており、前記電磁弁は、電力が供給されると閉じ、それによって前記ブレーキを解放するための空気圧作動を可能にし、前記電磁弁は、非通電の場合は前記ノーマルオープン状態に戻り、前記ブレーキは非作動になり前記ロータと係合することを特徴とする。
【0024】
好ましくは、前記ブレーキは、2つの隣接する予荷重が与えられたばね板を備え、前記ばね板のそれぞれは、その外縁付近にそれぞれの前記制動面を支持しており、前記空気圧作動式ブレーキは、前記ばね板の間の前記制動面付近の位置に配置された、空気圧で拡張可能な拡張手段を備え、前記拡張手段は加圧空気供給部と流体連通し、前記空気圧作動式ブレーキの作動は、前記拡張手段の空気圧による拡張をもたらし、それによって前記ばね板および前記ばね板のそれぞれの制動面を前記ロータから離す。
【0025】
好ましくは、前記各ばね板は、さらなる付勢手段により作用される。
【0026】
好ましくは、絞り弁が前記加圧空気に沿って配置されており、前記電磁弁が非通電になり前記ノーマルオープン状態に戻ると、前記絞り弁は、前記ブレーキが前記ロータに係合するときの前記ブレーキの非作動を空気圧で緩和させる。
【0027】
好ましくは、前記拡張手段は形状において環状である。
【0028】
好ましくは、一構成において、前記拡張手段は少なくとも1つの環状ベローズである。
【0029】
好ましくは、別の構成において、前記拡張手段は環状チューブである。
【0030】
好ましくは、一構成において、前記電磁弁はソレノイド作動式の圧力制御弁である。
【0031】
好ましくは、別の構成において、前記電磁弁はラッチ式電磁弁である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明のさらなる開示、目的、利点、および態様は、例示のためだけに与えられているため、本発明を限定するものではない。添付の図面と併せて取られる好ましい実施形態の以下の説明を参照することによって、関連技術の当業者によってより好適に理解され得る。
【0033】
図1】取り外し可能なモジュール式ポッドを搭載したプラットフォームを有する電気道路車両の実施形態の斜視図であり、プラットフォームは本発明に従って複数の車輪を有する。
図2図1に示す車両のプラットフォームの上面斜視図である。
図3図1に示す車輪の拡大断面図であり、内部の一体型電気モータおよび空気圧式フェイルセーフブレーキ装置を表している。
図4図1に示す車輪のフェイルセーフブレーキ装置のブレーキステータの拡大部分概略図である。
図5】内部の一体型電気モータおよび空気圧式フェイルセーフブレーキ装置を表す、図1の車輪内部の拡大部分内部図である。
図6】対向する一対の車輪における図3のフェイルセーフブレーキ装置のうちの2つの作動のための空気圧回路図である。
図7図3の車輪とともに使用することが可能なフェイルセーフブレーキ装置のブレーキステータの第2の代替実施形態の部分斜視図である。
図8図3の車輪とともに使用することが可能なフェイルセーフブレーキ装置のブレーキステータの第3の代替実施形態の部分斜視図である。
図9図3の車輪とともに使用することが可能なフェイルセーフブレーキ装置のブレーキステータの第4の代替実施形態の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1から図6は、電動道路車両10用の薄型車輪付きプラットフォームフレームで使用するための、モジュール式内蔵型車輪アセンブリ3の実施形態を示す。薄型車輪付きプラットフォームフレーム1(以下「プラットフォーム」と呼ぶ)は、モジュール式車両システムの一部を形成しており、道路車両10は、好ましくは自律型または半自律型の道路車両である。
【0035】
モジュール式内蔵型車輪アセンブリ3は、以下「車輪3」と呼ぶ。
【0036】
プラットフォーム1は、駆動および操舵システム、ならびにブレーキシステムを含む、完全に機能する道路車両10に必要な全ての機械的、電気的、および構造的な構成部品を実質的に搭載している。
【0037】
プラットフォーム1は、プラットフォーム1と動作可能に係合する取り外し可能なモジュール式ポッド2を搭載している。モジュール式ポッド2は、異なる商業的、工業的、および乗客輸送用途に適する多数のバリエーションのうちの1つであり得る。どのバリエーションを使用するかにかかわらず、各モジュール式ポッド2は、プラットフォーム1への互換性のある接続のため、実質的に同一の「インターフェース」を有する。
【0038】
プラットフォーム1は、2ピース(上下)の密封されたエンクロージャで作られた本体を有する。本実施形態では、プラットフォーム1は、長さおよそ3.4メートル、幅約1.48メートル、および高さ約0.75メートルであり、約1000kgの積載量を搭載することができる。プラットフォーム1は、500kg未満の重量であることが好ましい。モジュール式ポッド2が約1.25メートルの標準高さを有し、プラットフォーム1に装着される場合、道路車両1の高さは約2メートルになる。
【0039】
プラットフォーム1は、4つの車輪(車輪アセンブリ)3、すなわち、2対の車輪を有する。第1の対の車輪3はプラットフォーム1の一方の端部6a付近の両側に配置され、第2の対の車輪3はプラットフォーム1の他方の端部6b付近の両側に配置されている。各車輪3は、それに関連する独立した電気モータ4により駆動される。
【0040】
プラットフォーム1は、その縦軸に位置する中央縦断面Lに対して、およびそれに直交する横軸に位置する中央横断面Tに対して、形状および構成が対称である。この対称な形状および構成により、横断面Tに対するプラットフォーム1の対向する第1および第2の端部6a、6bは、縦断面Lに対する対向する第1および第2の側面7a、7bと同様に、同一に見える。
【0041】
プラットフォーム1の本体は、対向する第1および第2の端部6a、6bのそれぞれの周辺に、下方のより細い中央部分9により相互に接続されている隆起した空洞部分8a、8bをそれぞれ有する。隆起した空洞部分8a、8bは、プラットフォーム1の車輪駆動および制御部品、ならびにプラットフォーム1とモジュール式ポッド2とを相互に接続するポッド接続部品を含む。隆起した空洞部分8a、8bは、端部6a、6bおよび側面7a、7bと同様に、互いに同じような形に作られている。
【0042】
プラットフォーム1は双方向であることが好ましい。プラットフォーム1が静止している場合、外部の観察者は、単にプラットフォーム1を見るだけでは、第1および第2の端部6a、6bがプラットフォーム1の前端および後端のどちらであるかを識別(認識)し得ない。むしろ、プラットフォーム1の第1および第2の端部6aおよび6bは、プラットフォーム1の形状および構成によって操作可能および識別不能に、プラットフォーム1の先(前)端として入れ替えることが可能である。
【0043】
各車輪3は、図3および5に示すように、車輪/リム構造内に一体化されている電気モータ(および駆動部)4を備える。ハブに配置された別個のハウジングに電気モータが収容されている先行技術と異なり、本実施形態では、電気モータ4は車輪ハブ3aの一部である。
【0044】
電気モータ4は、リム82の内側に取り付けられている、モータ4の磁極片を支持するために使用されるロータ裏金81を有する。
【0045】
車輪3には、自己作動ブレーキ装置、すなわち空気圧作動式フェイルセーフブレーキ装置90(以下「ブレーキ90」と呼ぶ)も装着されている。
【0046】
ブレーキ90は2つのばね板91を備え、ばね板91のそれぞれは組立時にほぼ平坦な形状となるように予荷重が与えられている。そうすることで、ブレーキ90に予荷重が与えられる。各ばね板91は、ブレーキパッド93を支持するための円錐台形状のブレーキパッド台座92を有する。ばね板91は、ばね鋼製であることが好ましい。ブレーキパッド93は、ブレーキロータ80と係合するように付勢されている。
【0047】
ブレーキパッド台座92は「制動面」として直接使用され得るが、性能を向上させるために、ブレーキパッド93の形で追加される非金属のブレーキ材料を有することが好ましい。非金属材料のブレーキパッドが使用される場合、騒音が少なくなり、より効率的なブレーキを提供し、非金属の粉塵を発生させることができる。
【0048】
空気圧で作動する環状の「ベローズ」構造94は、好ましくは金属製であり、ブレーキパッド台座92を開くことを可能にする一方で、内部の密閉容積を維持する。
【0049】
空気は、ソレノイド98を介して、ブレーキ90の内部、すなわちばね板91の間の領域に送られる。電磁弁98は、ノーマルベント状態を有するように構成され、流入空気経路97と、ブレーキ装置90から絞り弁/消音器99を通じて大気へ出る排気経路とともに、サスペンションアップライト95に取り付けられている、またはサスペンションアップライト95の内部にある。空気経路97はサスペンションアップライト95に取り付けられ、ソレノイド98に内部で配管される。プラットフォーム1に配置されている空気供給タンク100は、同様にプラットフォーム1上にあるエアコンプレッサ102から空気を受け取り、空気経路97に加圧空気を提供する。レギュレータ(図示省略)を空気供給経路97に設置して空気供給タンク100の圧力を調整してもよい。
【0050】
電磁弁98に電力が供給されると、電磁弁98は大気への通気口を閉鎖し、空気経路97をブレーキ90に接続し、それによってベローズ構造94の空気圧作動を可能にして、ばね板91およびブレーキパッド台座92がブレーキロータ80から離れるように拡張および付勢する。このように、電磁弁98に電力が供給されると、電磁弁98はブレーキ90を解放し、原動力もモータ4によって供給される。電力が失われた場合には、電磁弁98はノーマルベント状態に戻るので、ブレーキ90はその空気圧作動を失い(非作動になり)、ばね板91がブレーキロータ80に制動力を加える。さらに、圧力センサ、力センサ、または位置センサ(図示省略)をシステム内に一体化して、ブレーキ90の状態を監視してもよい。
【0051】
つまり、ブレーキ(ブレーキ装置)90は、電磁弁98に電力が送達されて、空気圧作動によりその解除が可能になる場合を除いて常に係合されるので、「フェイルセーフブレーキ」を提供する。
【0052】
回転位置センサ96もまた、好ましくは、車輪の配置および速度のために使用され得る。
【0053】
各車輪3は、その一体化したモータ4およびブレーキ装置90がモジュール式であり、プラットフォーム1への設置および取り外しがしやすいため、交換作業、整備、および修理のための装着および取り外しが容易となっている。
【0054】
プラットフォーム1には、操舵装置(図示省略)の反対側に一対の対向する車輪3が配置されている。
【0055】
図6は、車両10の一対の対向する車輪3用の2つのブレーキ装置90の作動のための模式的な空気圧回路図を示す。
【0056】
ここで、ブレーキ機能の動作についてより詳細に説明する。自律型または半自律型の道路車両である道路車両10は、典型的には40km/h未満の速度で動作する。道路車両10が静止または駐車中の使用時には、各車輪3は、そのそれぞれのブレーキ(フェイルセーフブレーキ装置)90が非作動状態にあり、ばね板91が制動面、すなわちブレーキパッド93を付勢して、電気モータ4のブレーキロータ80との摩擦係合状態にしている。この非作動状態では、ブレーキ90に関連する電磁弁98は「ノーマルオープン状態」にある。車両10を推進するために電気モータ4のそれぞれに原動力が提供されると、電磁弁98は電力が供給されて閉じるため、空気供給タンク100からの加圧空気がベローズ構造94を空気圧で作動させ、これによりブレーキロータ80からブレーキパッド93を解放する。
【0057】
「強力な」電気モータ4が使用される場合、これらのモータ自体は、通常動作中の駆動および制動の両方に使用される。しかしながら、ブレーキ90は、「拡張されたヒルホールド」のために、および駐車ブレーキ機能として典型的に必要とされる。つまり、通常動作では、ブレーキ90は、車輪3がすでに静止しているときに機能するだけでよい。これによりブレーキパッド93の「制動面」の要件が簡素化されるため、ゴムまたはゴムに似た材料のような安価な材料がブレーキパッド93に可能となる。モータ4は駆動および制動の両方に使用されるので、ブレーキ90の追加の機能は、電気システムの完全なシステム障害があった場合に緊急ブレーキを提供することである。このような不具合の可能性は極めて低いが、この場合にブレーキ90を作動させるための能力は有益である。
【0058】
したがって、道路車両10が正常に動作している場合、駆動および制動は電気モータ4の制御によって達成される。ブレーキ90の主要な目的は、まず、車両10が特定の状況で静止または駐車中の場合に、係合して車輪3の動きを防止することである。道路車両10の動作中に電力が失われた場合、ブレーキ90のフェイルセーフ性が電磁弁98を開くことを確保するので、ベローズ構造94の空気圧作動が停止し、ばね板91がブレーキパッド93を付勢してブレーキロータ80と係合させ、したがって車輪3の動きを防止する。空気管97の空気圧回路内の流体絞り弁99は、ブレーキングの急激な発生を回避する。
【0059】
車輪アセンブリ3の本実施形態におけるいくつかの利点は以下のとおりである。
・電気モータ4が車輪3のハブと一体なので、小型の電気モータ/駆動構成を提供する。
・各ブレーキ90が車輪3内に一体化されており、動きが最小限で複雑ではない構成要素を有する。
・電気モータ4の制御を介して駆動および制動機能が実現されるので、ブレーキ90の動作は、特定の静止状況および駐車中にのみ必要とされ、したがってブレーキパッド93の「制動面」要件が簡素化される。
・車輪3はモジュール式であるため、一体化された電気モータ4およびブレーキ90とともに交換することが比較的容易である。
【0060】
上記の実施形態では、ばね板91は、「制動面」をブレーキロータ80に当てるために、それら自体の付勢特性および予荷重のみに依存してもよい。しかしながら、図7に示されるブレーキ90(a)の代替的な第2実施形態では、先に説明されたばね板91よりも小さく、好ましくはより厚い材料でできている修正されたばね板91(a)が、ベローズ94とともに使用されている。この第2実施形態では、各ばね板91(a)に作用してそれらの付勢特性を向上させるために、追加のばね要素150の形のさらなる「付勢手段」が使用され得る。
【0061】
図8に示されるブレーキ90(b)のさらなる代替的な第3実施形態では、図7の第2実施形態と同じ修正されたばね板91(a)、追加のばね要素150、およびベローズ94を使用して「制動面」すなわちブレーキパッド93をブレーキロータ80に当てる、修正されたブレーキ構成が示されている。しかしながら、この第3実施形態では、一対の対向するベローズ94(a)が、ブレーキパッド93から最も離れたばね板91(a)の端部に配置されている。これらの対向するベローズ94(a)は、ベローズ94と構造および作動において同様である。第2実施形態のように、追加のばね要素150が、ばね板91(a)に作用してそれらの付勢特性を向上させるために使用される。しかしながら、空気圧で作動したときに、ばね要素150と組み合わせたばね板91(a)の付勢特性に対するベローズ94の作用を支援するために、対向する一対のベローズ94(a)もまた空気圧で作動する。一対の対向するベローズ94(a)が空気圧作動により拡張することにより、ばね板91(a)のベローズ94(a)に隣接する部分が互いに向かって動かされ、それにより、他端、すなわちばね板91(a)のベローズ94に隣接する部分の開き(広がり)がばね板91(a)およびばね要素150の付勢力に対する作用を支援する。
【0062】
図9に示されるブレーキ90(c)の第4の代替的な実施形態では、追加のばね要素150を有する修正されたばね板91(b)を使用して「制動面」すなわちブレーキパッド93をブレーキロータ80に当てる、修正されたブレーキ構成が示されている。この構成では、「拡張手段」としてベローズを使用するのではなく、ゴム製またはエラストマー製で、同様に空気圧作動により拡張可能な環状チューブ94(b)が用いられる。この環状チューブ94(b)は、ベローズ94および94(a)のように、電磁弁98を介して空気供給部100と流体連通している。このような構成では、ばね板91(b)およびばね要素150は、協働してフェイルセーフブレーキの係合を保つために必要な付勢力を提供する。しかしながら、チューブ94(b)が空気圧で作動し、拡張すると、チューブ94(b)がばね板91(b)および追加のばね要素150の付勢特性に対して作用して、制動面、すなわちブレーキパッド93(ブレーキ台座92に固定されている)をロータ80から離す。
【0063】
したがって、図4、7、8および9にそれぞれ示すブレーキ90、90(a)、90(b)および90(c)の様々な実施形態は、ブレーキ装置に関連する電磁弁98が「非作動」または「ノーマルオープン状態」の場合に、制動面、すなわちブレーキパッド93を付勢して電気モータ4のブレーキロータ80と摩擦係合させるために、いかに多様な「付勢手段」が用いられ得るかを示している。車両10を推進するために電気モータ4のそれぞれに原動力が提供されると、電磁弁98は電力が供給されて閉じるため、空気供給タンク100からの加圧空気が「拡張手段」を空気圧で作動させ、これによりブレーキロータ80からブレーキパッド93を解放する。
【0064】
上記の実施形態では、ばね板91、91(a)および91(b)は、ブレーキパッド93をブレーキロータ80にノーマルエンゲージさせるための十分な「付勢力」を必要とする。ばね板91、91(a)、および91(b)は、ばね板の形状および構成と組み合わせて、炭素鋼、チタニウム、またはばね鋼を含むがこれに限定されない様々な種類の材料によってこれを達成してもよい。さらに、図8および図9にそれぞれ示される上記の代替的な第3および第4実施形態では、板91(a)および91(b)は、実質的に剛性の性質であってよく、ばね要素150によって完全に提供される「付勢力」により基本的に浮いていてもよい。
【0065】
図7、8、および9に示す実施形態では、様々な「付勢力」のタイプのばね要素150を利用することにより、ブレーキ圧の度合いを選択することが可能である。例えば、道路車両10がより高速での用途で使用されている場合、低速の用途で通常使用されるよりも大きな付勢力を提供するばね要素150を使用することが好ましい可能性がある。ばね要素150は、車両10の用途および使用目的に適するように容易に交換することが可能である。
【0066】
電磁弁98は様々なタイプのうちの1つであり得ることが理解されるべきである。例えば、代替的な構成では、電磁弁98は、ブレーキ装置90内の空気圧を能動的に調節して制御トルクを可変調整する、ソレノイド作動式の圧力制御弁であってもよい。
【0067】
さらなる代替的な構成では、電磁弁98は、電磁弁98の状態を変更するために供給される信号(パルス)を必要とするラッチ式電磁弁であってもよい。これは、予期せぬブレーキの適用が望ましくない、より高速の用途で使用され得る。このような構成では、車輪速度が所望の所定車輪速度まで低下したときに、信号(パルス)が電磁弁98に供給されることが好ましい。このようなラッチ式電磁弁のラッチ機能の代替手段は、受動的な絞り弁99を、車両制御システム内で所望の状態に達するまで空気を放出させない「能動的な制御弁」に置き換えることにより実現され得る。
【0068】
別の構成では、絞り弁99は、ブレーキ90の背圧を制限および/または維持して制動力を低下させるための逃がし弁であってもよい。
【0069】
上記の実施形態では、ロータ80は、好ましくは、軸力がブレーキ90内で内部的に分解され、それによりその軸受に作用する力が最小となるように、ある程度まで軸方向に摺動(浮動)可能である必要がある。
【0070】
示されていない実施形態では、電気モータ4は、ケーブルがモータ4の構造に入るときにループをたどることを可能にして、過度の屈曲を伴わずに車輪の操舵を可能にする、ケーブルリール状の表面を備えていてもよい。
【0071】
上記の車輪3は、プラットフォーム1およびモジュール式ポッド2を有する電動車両10を用いて説明されているが、車輪3は、他の図示しない電動車両にも使用され得る。
【0072】
好ましくは、本発明の上記実施形態は、車両10の車輪アセンブリ3およびその組み込まれたブレーキ装置90が、ISO 26262に準拠する機能安全水準ASIL Dを満たすように設計されている。
【0073】
本明細書および続く特許請求の範囲において、文脈上他の意味に解釈すべき場合を除き、「comprise(備える)」という語、および「comprises」や「comprising」などの変化形は、記載された整数もしくはステップ、または整数もしくはステップのグループを含むことを意味するが、他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップのグループを除外することを意味しないことが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】