(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】バリアシステム
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20231214BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558913
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 AU2021051470
(87)【国際公開番号】W WO2022120428
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523220248
【氏名又は名称】バーデン・プロセス・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】アップルフォード,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ラウンズ,コナー
(72)【発明者】
【氏名】メスベン,リアム
(72)【発明者】
【氏名】テオ,ブーン・ミアン
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA21
3E086AD06
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086CA01
3E086CA28
4F100AH02B
4F100AH02C
4F100AH03C
4F100AJ03D
4F100AJ04A
4F100AJ04D
4F100AJ11B
4F100AK41D
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA04D
4F100CA18B
4F100CA30D
4F100CB00B
4F100DD09B
4F100DE01D
4F100DG01A
4F100DG01D
4F100JA07D
4F100JB11B
4F100JB11C
4F100JC00D
4F100JD03D
4F100JD03E
4F100JD04B
4F100JD04E
4F100JK07D
4F100JL14B
4F100YY00D
4F100YY00E
(57)【要約】
包装材料は、基材と、基材によって保持された酸素透過阻害層と、を有する。酸素透過阻害層は、1又は複数の添加剤が中に分散された直鎖状多糖類媒体を含む複合材料から形成される。複合材料は、酸素ガスの透過に対するバリアを提供するための実質的に連続的な膜を形成することができる。酸素透過阻害層は、それを通しての酸素ガスの透過を阻害するのに有効な厚さで包装材料中に構成される。包装デバイスは、2つ以上の構成パーツを有し、そのうちの少なくとも1つが包装材料から形成される。包装デバイスの構成パーツは、組み立てられて、品物が中に収容されることになる内部領域を画定するように成形及び/又は構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装材料であって、
基材と、
前記基材によって保持され、複合材料から形成された酸素透過阻害層であって、前記複合材料は、1又は複数の添加剤が中に分散された直鎖状多糖類媒体を含み、それによって、酸素ガスの透過に対するバリアを提供することができる前記複合材料の実質的に連続的な膜の形成が促進される、酸素透過阻害層と、
を含み、前記酸素透過阻害層は、それを通しての酸素ガスの透過を阻害するのに有効な厚さで前記包装材料中に構成されている、
包装材料。
【請求項2】
前記添加剤のうちの少なくとも1つが、前記直鎖状多糖類媒体と結合を形成し、前記結合は、前記実質的に連続的な膜の形成及び弾性のうちの少なくとも1つに寄与する、請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
前記直鎖状多糖類媒体が、単糖グルコースのアミド誘導体の長鎖ポリマーを少なくとも部分的に脱アセチル化することを含むプロセスによって形成される、請求項1又は2に記載の包装材料。
【請求項4】
前記単糖グルコースのアミド誘導体が、N-アセチルグルコサミンを含む、請求項3に記載の包装材料。
【請求項5】
前記直鎖状多糖類媒体が、キチンを少なくとも部分的に脱アセチル化することを含むプロセスによって形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項6】
前記直鎖状多糖類媒体が、キトサンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項7】
前記単糖グルコースのアミド誘導体が、さらにベータグルカン分子を含む、請求項3又は4に記載の包装材料。
【請求項8】
前記キトサンが、5~200キロダルトンの範囲内の分子量を有する、請求項6に記載の包装材料。
【請求項9】
前記キトサンが、10~100キロダルトンの範囲内の分子量を有する、請求項6に記載の包装材料。
【請求項10】
前記酸素透過阻害層が、前記酸素透過阻害層の形成の過程で可塑剤として作用する少なくとも1つの有機化合物を含む溶液から作製される、請求項1~9のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項11】
前記複合材料の前記添加剤が、植物由来化合物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項12】
前記植物由来化合物が、粒子の形態、繊維の形態、又はこれらの組み合わせである、請求項11に記載の包装材料。
【請求項13】
前記植物由来化合物が、セルロースである、請求項11又は12に記載の包装材料。
【請求項14】
前記セルロースが、実質的に繊維の形態である、請求項13に記載の包装材料。
【請求項15】
前記添加剤が、
前記直鎖状多糖類媒体のための1又は複数の可塑剤を含む、及び/又は
前記複合材料の疎水性に寄与する、
請求項1~14のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項16】
前記酸素透過阻害層が、7.5~60μmの範囲内の平均厚さに形成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項17】
前記酸素透過阻害層が、23℃、相対湿度50%での前記包装材料の酸素透過率が6立方センチメートル毎平方メートル毎日(cm
3/m
2/日)未満となるような厚さで前記基材上に形成される、請求項1~16のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項18】
前記酸素透過阻害層の複合材料を少なくとも部分的に前記基材から分離する少なくとも1つの介在材料をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項19】
前記介在材料が、前記包装材料を通しての水蒸気の透過を阻害する、請求項18に記載の包装材料。
【請求項20】
前記介在材料が、前記酸素透過阻害層の前記複合材料と結合するその能力で選択される、請求項18又は19に記載の包装材料。
【請求項21】
前記介在材料が、前記基材と前記酸素透過阻害層との間にあって、前記基材及び前記酸素透過阻害層の一方又は両方と接触している少なくとも1つの中間層を形成するように組み立てられる、請求項18~20のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項22】
前記介在材料が、前記基材と接触しており、前記基材の境界にあって前記酸素透過阻害層の方に向いている微視的凹部が、介在材料によって実質的に充填されている、請求項18~21のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項23】
前記介在材料が、前記基材と前記酸素透過阻害層との間に材料の連続層を形成する厚さで形成される、請求項18~22のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項24】
前記介在材料が、15~60μmの範囲内の厚さに形成される、請求項23に記載の包装材料。
【請求項25】
前記介在材料が、第一の中間層に組み立てられ、前記第一の中間層は、
少なくとも1つが水に不溶である第一のセットの1又は複数の化合物を含み、
標準環境温度で固体であり、及び
それを通しての水蒸気の透過を阻害するのに有効な厚さで前記包装材料中に構成されている、
請求項18~24のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項26】
前記第一のセットの化合物が、1又は複数のベース化合物を含み、各ベース化合物は、長鎖アルコールと脂肪酸とのエステルである、請求項25に記載の包装材料。
【請求項27】
前記ベース化合物が、1又は複数のワックスを含む、請求項26に記載の包装材料。
【請求項28】
前記第一のセットの化合物が、
前記第一の中間層と前記酸素透過阻害層との間の層間接着増加を促進する、及び/又は
前記包装材料の製造の過程で前記第一の中間層上での前記酸素透過阻害層の形成を促進する、
1又は複数の界面エネルギー改変添加剤を含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項29】
前記界面エネルギー改変添加剤が、表面活性ポリマー、乳化剤、及び界面活性剤のうちのいずれか1つ以上を含む、請求項28に記載の包装材料。
【請求項30】
前記界面エネルギー改変添加剤が、1,4-アンヒドロソルビトール由来の化合物、又は1,4-アンヒドロソルビトールを含む化合物の混合物を含む、請求項28又は29に記載の包装材料。
【請求項31】
前記第一のセットの化合物が、前記ベース化合物内に分散された粒子を含み、前記粒子は、
前記介在材料を通しての水蒸気の透過に対するバリアを提供する、及び/又は
前記基材若しくは酸素透過阻害層に対する接着を有利に改変する、
請求項25~30のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項32】
前記介在材料が、さらに、第二のセットの1又は複数の化合物を含む第二の中間層に組み立てられ、
前記第二のセットの化合物は、前記第一のセットの化合物中の化合物のうちの1又は複数を含み、
前記第二の中間層は、前記第一の中間層と前記酸素透過阻害層との間にあり、及び
前記酸素透過阻害層は、前記第二の中間層に接着している、
請求項25~31のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項33】
前記第一の中間層内の前記介在材料の界面エネルギーが、前記第二の中間層内の前記介在材料の界面エネルギーよりも高い、請求項32に記載の包装材料。
【請求項34】
前記第二のセットの化合物が、前記第一のセットの化合物と、前記第一のセットの化合物と組み合わされると前記第一のセットの化合物の界面エネルギーを増加させる少なくとも1つの改変剤と、の混合物である、請求項32又は33に記載の包装材料。
【請求項35】
前記介在材料と前記酸素透過阻害層との間の材料境界界面プロファイルの幾何学的変動が、前記基材と前記介在材料との間の材料境界界面プロファイルの幾何学的変動よりも小さく、
前記幾何学的変動は、前記対応する材料境界界面プロファイル全体にわたって平均した平均値から特定され、前記幾何学的変動は、前記材料境界界面の局所的な接平面に対して垂直の方向に測定される、請求項18~34のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項36】
前記酸素透過阻害層と大気との間のバリアを提供することで、大気中の水蒸気と前記酸素透過阻害層との相互作用を阻害するために、実質的に連続的な膜に組み立てられる保護層をさらに含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項37】
前記保護層が、前記酸素透過阻害層と接触している、請求項36に記載の包装材料。
【請求項38】
前記保護層が、前記包装材料の1つの面を画定する、請求項36又は37に記載の包装材料。
【請求項39】
前記酸素透過阻害層が、前記基材と前記保護層との間にある、請求項36~38のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項40】
前記保護層が、前記酸素透過阻害層と大気中の水蒸気との相互作用を阻害する、請求項36~39のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項41】
前記保護層が、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含む、請求項36~40のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項42】
前記ポリ(乳酸-co-グリコール酸)が、乳酸とグリコール酸とから、重合時に存在する乳酸モノマーの割合の方を大きくして形成される、請求項41に記載の包装材料。
【請求項43】
前記保護層が、2.5~100μmの範囲内の平均厚さに形成される、請求項36~42のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項44】
前記基材が、組み立てられて所定の形状となるように加工されたパルプ繊維から形成され、前記基材内で前記パルプ繊維間に結合を形成するように処理され、それによって、前記基材は、支持されていない状態でもその形状を少なくとも部分的に維持することができる、請求項1~43のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項45】
2つ以上の構成パーツを有し、そのうちの少なくとも1つが請求項1~44のいずれか一項に記載の包装材料から形成された包装デバイスであって、前記包装デバイスは、組み立てられて、品物が中に収容されることになる内部領域を画定するように成形及び/又は構成されている、包装デバイス。
【請求項46】
前記基材が前記酸素透過阻害層と前記内部領域との間に配置されるように構成されている、請求項45に記載の包装デバイス。
【請求項47】
前記酸素透過阻害層が前記基材と前記内部領域との間に配置されるように構成されている、請求項45に記載の包装デバイス。
【請求項48】
前記内部領域を画定するボディと、前記内部領域への入口部を取り囲む環状フランジと、を有する容器部分、及び
前記環状フランジと接合されることによって前記内部領域を封止するようになっている周囲エッジ領域を備えたフタ部分、
をさらに含み、前記容器部分及び前記フタ部分は、別々に形成され、そのように接合されると、前記品物のアリコートを中に収容するカプセルを形成し、
前記容器部分及び前記フタ部分のうちの少なくとも一方は、請求項1~44のいずれか一項に記載の包装材料から形成されている、請求項45~47のいずれか一項に記載の包装デバイス。
【請求項49】
請求項1~44のいずれか一項に記載の包装材料から形成された包装シート材料であって、前記包装シート材料は、外部面と、前記包装シート材料を用いて包装された品物に関して内側に向くことになる内部面とを有するように構成されている、包装シート材料。
【請求項50】
包装材料であって、
基材と、
ポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含み、組み立てられて、前記基材によって保持される実質的に連続的な膜とされ、前記包装材料の1つの面を画定する保護層と、
を含み、前記保護層は、大気中の水蒸気と前記保護層の下にある前記包装材料との相互作用を阻害するのに有効な厚さを有する、包装材料。
【請求項51】
前記ポリ(乳酸-co-グリコール酸)が、乳酸とグリコール酸とから、重合時に存在する乳酸モノマーの割合の方を大きくして形成される、請求項50に記載の包装材料。
【請求項52】
前記保護層が、2.5~100μmの範囲内の平均厚さに形成される、請求項50又は51に記載の包装材料。
【請求項53】
前記基材と前記保護層との間に、1又は複数の中間層をさらに含み、
前記中間層は、それを通しての酸素ガス及び水蒸気のうちの少なくとも一方の透過を阻害するのに有効である、請求項50~52のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項54】
前記基材が、組み立てられて所定の形状となるように加工されたパルプ繊維から形成され、前記基材内で前記パルプ繊維間に結合を形成するように処理され、それによって、前記基材は、支持されていない状態でもその形状を少なくとも部分的に維持することができる、請求項50~53のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項55】
包装材料の製造方法であって、
所定の形状であり、支持されていない状態でも前記所定の形状を少なくとも部分的に維持することができる基材を形成すること、
前記基材の1つの面に、第一の層を適用すること、
結合に対する前記第一の層の受容性を改善するために、前記適用された第一の層を表面処理すること、及び
前記第一の層の前記処理面上に、第二の層であって、それを通しての酸素ガス及び水蒸気のうちの少なくとも一方の透過を阻害するのに有効である、第二の層、を適用すること、
を含み、前記表面処理工程は、前記第二の層の前記第一の層に対する接着を促進する、方法。
【請求項56】
包装材料の製造方法であって、
所定の形状であり、支持されていない状態でも前記所定の形状を少なくとも部分的に維持することができる基材を形成すること、
前記基材の1つの面に、第一の層を適用すること、
前記適用された第一の層の表面上の汚染物を除去するために、前記適用された第一の層を表面処理すること、及び
前記第一の層の前記処理面上に、第二の層であって、それを通しての酸素ガス及び水蒸気のうちの少なくとも一方の透過を阻害するのに有効である、第二の層、を適用すること、
を含み、前記表面処理工程は、前記第二の層の前記第一の層に対する接着を促進する、方法。
【請求項57】
包装材料の製造方法であって、
所定の形状であり、支持されていない状態でも前記所定の形状を少なくとも部分的に維持することができ、第一の表面粗度の第一の面を有する基材を形成すること、
前記基材の前記第一の面に、第一の層を適用すること、
前記適用された第一の層が第二の表面粗度の処理面を有するように、前記適用された第一の層を表面処理すること、及び
前記第一の層の前記処理面上に、第二の層を適用すること、
を含み、前記第二の表面粗度は、前記第一の表面粗度よりも小さい、方法。
【請求項58】
包装材料の製造方法であって、
所定の形状であり、支持されていない状態でも前記所定の形状を少なくとも部分的に維持することができる基材を形成すること、
前記基材の1つの面に、第一の層を適用すること、
前記適用された第一の層を表面処理することであって、それによって前記第一の層の前記処理面の幾何学的変動が、前記第一の層が上に形成されている前記基材の前記面の幾何学的変動よりも小さくなる、表面処理すること、及び
前記第一の層の前記処理面上に、第二の層を適用すること、
を含み、前記幾何学的変動は、前記対応する処理面/基材面に関する平均面から特定され、前記幾何学的変動は、前記基材の外部面に交差する局所的な接平面に対して垂直又は平行のいずれかの方向に測定される、方法。
【請求項59】
包装材料の製造方法であって、
所定の形状であり、支持されていない状態でも前記所定の形状を少なくとも部分的に維持することができる基材を形成すること、
前記基材の1つの面に、第一の層を適用すること、
前記適用された第一の層を表面処理することであって、それによって前記第一の層の前記処理面のプロファイル高さの偏差の絶対値の平均値が、前記第一の層が上に形成されている前記基材の前記面のプロファイル高さの偏差の絶対値の平均値よりも小さくなる、表面処理すること、及び
前記第一の層の前記処理面上に、第二の層を適用すること、
を含み、プロファイル高さの偏差は、前記包装材料の外部面に交差する局所的な接平面に対して垂直の方向に測定される、方法。
【請求項60】
包装材料の製造方法であって、
所定の形状であり、支持されていない状態でも前記所定の形状を少なくとも部分的に維持することができる基材を形成すること、
前記基材の1つの面に、第一の層を適用すること、
前記第一の層の表面エネルギーを増加させるために、前記適用された第一の層を表面処理すること、及び
前記第一の層の前記処理面上に、第二の層であって、それを通しての酸素ガス及び水蒸気のうちの少なくとも一方の透過を阻害するのに有効である、第二の層、を適用すること、
を含み、前記表面処理工程は、前記第一の層上に前記第二の層の材料の膜を形成するための前記第二の層の適用を促進する、方法。
【請求項61】
前記表面処理工程が、前記適用された第一の層の表面に対してエネルギー源からエネルギーを移送することを含む、請求項55~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記表面処理工程が、プラズマ処理を含む、請求項55~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記表面処理工程が、前記適用された第一の層の露出面に対して熱を適用することを含む、請求項55~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記表面処理工程が、前記適用された第一の層の露出面を、前記第一の層の材料と相互作用を起こすことで前記露出面の特性に変化を誘導する1又は複数の化学物質に接触させることを含む、請求項55~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記第一の層が、水に不溶である1又は複数の化合物を含む原材料から形成され、前記第一の層が、標準環境温度で固体であり、前記方法が、さらに、
前記原材料を液化すること、
前記液化原材料を、前記基材の前記面上に移送すること、及び
前記液化原材料を固化させ、それによって前記基材の前記面上に連続層を形成すること、
を含む、請求項55~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記液化原材料を移送する工程が、前記液化原材料を、層流で前記基材の前記面上に供給することを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記基材を形成する工程が、
液体中に懸濁したパルプ繊維のスラリーを作製すること、
前記形成された基材の前記所定の形状に相当する形状を有するモールド上に、ウェットパルプ繊維プリフォームを形成すること、及び
前記ウェットパルプ繊維プリフォームを処理して水分含有量を減少させ、それによって成形パルプ繊維品として前記基材を形成すること、
を含む、請求項55~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記第二の層上に保護層を形成することをさらに含み、前記保護層は、前記完成した包装材料中で大気中の水蒸気と前記第二の層との相互作用を阻害する材料から形成される、請求項55~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記保護層を形成する工程が、溶媒及びポリ(乳酸-co-グリコール酸)から成る溶液を前記第二の層に適用すること、及び前記溶媒を蒸発させて、前記保護層の材料の膜を形成すること、を含む、請求項68に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料のためのバリアシステム、及びバリアシステムを組み込んだ包装材料に関する。本発明はまた、包装材料を形成する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、「品物」の用語は、時間経過と共に品質が悪化する(すなわち、劣化する、朽ちる、腐敗する、及び/又は分解する)製品で、品質悪化が最も少ないことがその意図する用途にとって最も望ましい製品を意味する。したがって、「品物」には、ヒト又は動物が消費するための食品及び飲料品;ヒト又は動物用途のための医薬品、ニュートラシューティカルズ(「バイオシューティカルズ(bioceuticals)」又は「機能性食品」としても知られる)、及び栄養補助食品;化粧品;並びにヒト/動物による使用を意図するが摂取用ではない様々なガーデン用品及び家庭用品が含まれる。これが「品物」である製品の網羅的なリストではないことは理解されたい。
【0003】
いくつかの品物は、大気中のガス、水蒸気、及び液体水を含む様々な流体に曝露されることによって品質悪化を起こすことが知られている。これらの流体に対するそのような品物の曝露を最小限に抑えることは、保存期間を最大限とする際の重要な因子である。これらの理由から、品質悪化を起こす品物のための包装材料は、品質悪化に寄与する流体(本出願の目的のために、「有害な流体」と称する)の透過をブロック又は阻害し、したがって、品物の保存期間を延ばすバリアを伴って形成されることが多い。この文脈において、品物に対して一般的に有害である2つの流体は、酸素ガスと水蒸気である。したがって、包装材料(単一材料、ブレンド材料、及び積層体を含む)の性能は、酸素透過率(「OTR」)によって、及び/又は水蒸気透過率(「WVTR」、水分蒸気透過率(Moisture Vapour Transmission Rate)としても知られる)によって特性決定することができる。
【0004】
一般的には、プラスチックのみから作製された包装材料又はプラスチック成分を含む包装材料が用いられ、なぜなら、これらは、単独又は組み合わせのいずれかで、望ましいWVTR及びOTRバリアを提供することができるからである。包装材料に用いられるプラスチックは、大部分が石油ベースであり、その持続可能ではない環境コストのために、ますます望ましくないものと見なされている。バイオプラスチックは公知であるが、廃棄物の再利用及び/又はコンポスト化/(生)分解に伴う課題/困難さのために、一部の管轄区においては、これらも望ましくないものと見なされている。
【0005】
一部のプラスチック材料及び金属箔は、包装材料としての使用に望ましいOTR及び/又はWVTR値を有することが知られている。しかし、一般に包装材料の場合、OTR値に関して高いランクの材料が、必ずしもWVTR値に関しての高いランクと相関しておらず、逆も同様である。さらに、摂取されることになる品物のための包装材料は、その中に収容されるこれらの品物との適合性を有する必要がある(品物と包装材料との間の有害な相互作用が軽減されるように)。したがって、包装材料は、酸素透過率及び/又は水蒸気透過率を含む所望される特性を実現するために、複数の構成材料をブレンドして/組み合わせて(積層、共形成、共成形などを含む)形成されることが多い。
【0006】
一部の包装材料は再利用可能であるが、使用可能な材料を得るための再利用プロセスには、多大なエネルギー、時間、及び/又は材料コストが関与している。ブレンド材料から形成される包装材料の再利用には、個々の構成材料への分離が必要であり、このことは、再利用プロセスの複雑性を、再利用が実行不可能となるところまで増加させてしまう。したがって、大部分の包装材料は、埋立地に廃棄されている。
【0007】
生物学的に生成された天然資源から作製される包装材料は、コンポスト化可能であり得るため、望ましいことには、持続可能であると見なされている。しかし、そのような包装材料は、一般に、高いWVTR値及びOTR値を有しており、言い換えると、水蒸気及び酸素のバリア性が低い。
【0008】
所望されるバリア性能を実現し、同時に石油ベース材料の使用を最小限に抑えるために、生物学的に生成された天然資源由来のベース材料上に、プラスチック/バイオプラスチックの薄コーティングを組み込むことが知られている。しかし、材料がブレンドされた性質であることから、再利用/コンポスト化の能力が損なわれる。
【0009】
生分解性製品のコンポスト化は、特に、廃棄物の運搬距離が短い、地域限定の廃棄物管理の実践にコンポスト化が関与する傾向にあることから、廃棄物処理の効率的な方法である。さらに、コンポスト化された材料は、廃棄物を埋立地に埋めて置くのではなく、農業生産者に再分配することができる。
【発明の概要】
【0010】
上記に対処すること、及び/又は少なくとも有用な代替法を提供することが求められている。
基材と、基材によって保持され、複合材料から形成された酸素透過阻害層であって、複合材料は、1又は複数の添加剤が中に分散された直鎖状多糖類媒体を含み、それによって、酸素ガスの透過に対するバリアを提供することができる複合材料の実質的に連続的な膜の形成が促進される、酸素透過阻害層と、を含む、包装材料が提供され、酸素透過阻害層は、それを通しての酸素ガスの透過を阻害するのに有効な厚さで包装材料中に構成されている。
【0011】
少なくともいくつかの実施形態では、添加剤のうちの少なくとも1つは、直鎖状多糖類媒体と結合を形成し、この結合は、実質的に連続的な膜の形成及び弾性のうちの少なくとも1つに寄与する。複合材料中において直鎖状多糖類媒体と添加剤との間に形成される結合は、物理結合及び/又は共有結合であってよい。
【0012】
好ましくは、直鎖状多糖類媒体は、単糖グルコースのアミド誘導体の長鎖ポリマーを少なくとも部分的に脱アセチル化することを含むプロセスによって形成される。より好ましくは、単糖グルコースのアミド誘導体は、N-アセチルグルコサミンを含む。少なくともいくつかの実施形態では、直鎖状多糖類媒体は、キチンを少なくとも部分的に脱アセチル化することを含むプロセスによって形成される。
【0013】
ある特定の実施形態では、直鎖状多糖類媒体は、キトサンである。
単糖グルコースのアミド誘導体は、さらに、ベータグルカン分子を含み得る。別の選択肢として又は追加として、少なくとも部分的に脱アセチル化されたキチンの形態である直鎖状多糖類媒体は、ベータグルカン分子を含み得る。キチンは、真菌類から誘導され得る。真菌類は、アスペルギルス(Aspergillus)属内の真菌から、及び/又はアガリクス(Agaricus)属内の真菌から選択され得る。いくつかの例では、キチンは、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)から入手される。いくつかの他の例では、キチンは、アガリクス・ビスポルス(Agaricus bisporus)から入手される。キチンは、別の選択肢として又は追加として、甲殻類から誘導され得る。キチンは、異なる入手源由来のキチンのブレンドであってもよい。
【0014】
少なくともいくつかの実施形態では、直鎖状多糖類媒体は、N-アセチルグルコサミンを含む。ある特定の実施形態では、直鎖状多糖類媒体は、キトサンである。キトサンは、好ましくは、低い分子量を有する。キトサンは、5~200キロダルトンの範囲内の分子量を有し得る。好ましくは、キトサンは、10~100キロダルトンの範囲内の分子量を有する。
【0015】
いくつかの別の選択肢としての実施形態では、直鎖状多糖類媒体は、N-アセチルグルコサミンを溶媒と共に溶解した状態で含む。好ましくは、溶媒は酸性である。溶媒は、無機酸又は有機酸の添加によって酸性pHに調節された水を含み得る。より好ましくは、無機酸又は有機酸は、カルボン酸である。さらにより好ましくは、カルボン酸は、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、及び酒石酸のうちのいずれか1つ以上である。
【0016】
ある特定の例では、酸素透過阻害層は、酸素透過阻害層の形成の過程で可塑剤として作用する少なくとも1つの有機化合物を含む溶液から作製される。
複合材料の添加剤は、植物由来化合物を含み得る。少なくともいくつかの形態では、植物由来化合物は、粒子の形態、繊維の形態、又はこれらの組み合わせである。少なくともいくつかの実施形態では、植物由来化合物は、セルロースである。ある特定の実施形態では、セルロースは、実質的に繊維の形態である。繊維は、個々の繊維の長さ方向せん断処理を含むリファイニングプロセスに掛けられ得る。別の選択肢として又は追加として、リファイニングプロセスによって、個々の繊維の寸法特性が変化する。
【0017】
別の選択肢として又は追加として、添加剤は、直鎖状多糖類媒体のための1又は複数の可塑剤を含む、及び/又は複合材料の疎水性に寄与する。
好ましくは、酸素透過阻害層は、7.5~60μmの範囲内の平均厚さに形成される。より好ましくは、酸素透過阻害層は、少なくとも10μmの平均厚さに形成される。さらにより好ましくは、酸素透過阻害層は、15~30μmの範囲内の平均厚さに形成される。別の選択肢として又はより詳細には、酸素透過阻害層は、23℃、相対湿度50%での包装材料の酸素透過率が6立方センチメートル毎平方メートル毎日(cm3/m2/日)未満となるような厚さで基材上に形成される。いくつかの実施形態では、酸素透過阻害層は、23℃、相対湿度50%での包装材料の酸素透過率が3立方センチメートル毎平方メートル毎日(cm3/m2/日)未満となるような厚さで基材上に形成される。
【0018】
少なくともいくつかの実施形態では、包装材料は、酸素透過阻害層の複合材料を少なくとも部分的に基材から分離する少なくとも1つの介在材料を含む。いくつかの実施形態では、介在材料は、包装材料を通しての水蒸気の透過を阻害する。別の選択肢として又は追加として、介在材料は、酸素透過阻害層の複合材料と結合するその能力で選択される。
【0019】
少なくともいくつかの実施形態では、介在材料は、基材と酸素透過阻害層との間にあって、基材及び酸素透過阻害層の一方又は両方と接触している少なくとも1つの中間層を形成するように組み立てられる。介在材料が基材と接触している実施形態では、基材の境界にあって酸素透過阻害層の方に向いている微視的凹部は、介在材料によって実質的に充填されている。
【0020】
ある特定の実施形態では、介在材料は、基材と酸素透過阻害層との間に材料の連続層を形成する厚さで形成される。好ましくは、介在材料は、15~60μmの範囲内の厚さに形成される。より好ましくは、介在材料は、30~45μmの範囲内の厚さに形成される。
【0021】
好ましくは、介在材料は、第一の中間層に組み立てられ、第一の中間層は、
少なくとも1つが水に不溶である第一のセットの1又は複数の化合物を含み、
標準環境温度で固体であり、及び
それを通しての水蒸気の透過を阻害するのに有効な厚さで包装材料中に構成されている。
【0022】
別の選択肢として又は好ましくは、第一のセットの化合物は、1又は複数のベース化合物を含み、各ベース化合物は、長鎖アルコールと脂肪酸とのエステルである。
好ましくは、ベース化合物は、1又は複数のワックスを含む。第一の層の1又は複数のワックスは、好ましくは植物由来である。
【0023】
いくつかの実施形態では、ベース化合物は、キャンデリラワックスを含む。いくつかの別の選択肢としての実施形態では、ベース化合物は、カルナウバワックスを含む。別の選択肢として又は追加として、ベース化合物は、2つ以上のワックスのブレンドである。
【0024】
第一のセットの化合物は、第一の中間層と酸素透過阻害層との間の層間接着増加を促進する、及び/又は包装材料の製造の過程で第一の中間層上での酸素透過阻害層の形成を促進する、1又は複数の界面エネルギー改変添加剤を含み得る。いくつかの例では、界面エネルギー改変添加剤は、表面活性ポリマー、乳化剤、及び界面活性剤のうちのいずれか1つ以上を含む。界面エネルギー改変添加剤は、1,4-アンヒドロソルビトール由来の化合物、又は1,4-アンヒドロソルビトールを含む化合物の混合物を含み得る。より詳細には、界面エネルギー改変添加剤は、ソルビタン由来の化合物を含む。いくつかの別の選択肢としての例では、界面エネルギー改変添加剤は、オレイン酸を含む。
【0025】
第一のセットの化合物は、ベース化合物に対して30重量%までの割合で界面エネルギー改変添加剤を含み得る。いくつかの例では、第一の層の材料は、ベース化合物に対して8重量%までの割合で界面エネルギー改変添加剤を含み得る。
【0026】
別の選択肢として又は追加として、第一のセットの化合物は、ベース化合物内に分散された粒子を含んでよく、この粒子は、介在材料を通しての水蒸気の透過に対するバリアを提供する、及び/又は基材若しくは酸素透過阻害層に対する接着を有利に改変する。
【0027】
ベース化合物内に分散された粒子は、一次粒子、集合体、凝集体、及び結晶固体のうちのいずれか1つ以上であってよい。
ベース化合物内に分散された粒子は、主として非金属の化合物であってもよい。
【0028】
いくつかの例では、ベース化合物内に分散された粒子の少なくとも一部は、疎水性であり、そのため、介在材料を通しての水蒸気の透過が疎水性によって阻害される。
ベース化合物内に分散された少なくとも一部の粒子が結晶固体であるいくつかの例では、これらの粒子の結晶構造が、水蒸気透過に対するバリアを提供する。
【0029】
ベース化合物内に分散された粒子は、シリカ系粒子、アルミニウム系粒子、マグネシウム系粒子、結晶窒化ホウ素、及び結晶カーボンのうちのいずれかを含み得る。
ある特定の実施形態では、第一の層内の介在材料は、第一のセットの化合物の混合物である。
【0030】
いくつかの実施形態では、介在材料は、さらに、第二のセットの1又は複数の化合物を含む第二の中間層に組み立てられ、
第二のセットの化合物は、第一のセットの化合物中の化合物のうちの1又は複数を含み、
第二の中間層は、第一の中間層と酸素透過阻害層との間にあり、
酸素透過阻害層は、第二の中間層に接着している。
【0031】
第一の中間層内の介在材料の界面エネルギーは、第二の中間層内の介在材料の界面エネルギーよりも高くてよい。
好ましくは、第二のセットの化合物は、第一のセットの化合物のうちのすべての化合物、及び第一のセットの化合物と組み合わされると第一のセットの化合物の界面エネルギーを増加させる少なくとも1つの改変剤、を含む。いくつかの例では、第二のセットの化合物は、第一のセットの化合物と改変剤との混合物である。
【0032】
改変剤は、ポリエーテル化合物、グリコール、ガラクツロン酸、糖-アルコール誘導化合物、オゾン、及び溶媒のうちのいずれか1つ以上を含み得る。
存在する場合、ポリエーテル化合物は、ポリエチレングリコールを含み得る。
【0033】
存在する場合、ガラクツロン酸は、ペクチンの形態であり得る。
存在する場合、糖-アルコール誘導化合物は、ソルビトール又はソルビタンであり得る。
【0034】
第一の層の介在材料は、好ましくは、複合材料が基材の材料に対して直接適用された場合の複合材料に関する充填特性と比較して、基材の材料に関する改善された充填特性を有する。
【0035】
別の選択肢として又は追加として、第一の層の介在材料は、基材の材料に対して直接適用された場合の複合材料の結合特性と比較して、基材の材料との改善された結合特性を有する。
【0036】
好ましくは、介在材料と酸素透過阻害層との間の材料境界界面プロファイルの幾何学的変動は、基材と介在材料との間の材料境界界面プロファイルの幾何学的変動よりも小さく、
幾何学的変動は、対応する材料境界界面プロファイル全体にわたって平均した平均値から特定され、幾何学的変動は、材料境界界面の局所的な接平面(local tangential plane)に対して垂直の方向に測定される。
【0037】
好ましくは、介在材料と酸素透過阻害層との間の材料境界界面プロファイルの界面プロファイル幾何学的偏差の絶対値の平均値は、基材と介在材料との間の材料境界界面プロファイルの幾何学的偏差の絶対値の平均値よりも小さく、
幾何学的偏差は、材料境界の局所的な接平面に対して垂直の方向に測定される。
【0038】
少なくともいくつかの実施形態では、包装材料は、酸素透過阻害層と大気との間のバリアを提供することで、大気中の水蒸気と酸素透過阻害層との相互作用を阻害するために、実質的に連続的な膜に組み立てられる保護層を含む。保護層は、酸素透過阻害層と接触していてもよい。別の選択肢として又は追加として、保護層は、包装材料の1つの面を画定し得る。いくつかの例では、保護層は、包装材料の外部面を画定し得る。いくつかの例では、保護層は、別の選択肢として又は追加として、包装材料の内部面を画定し得る。
【0039】
ある特定の実施形態では、酸素透過阻害層は、基材と保護層との間にある。
好ましくは、保護層は、酸素透過阻害層と大気中の水蒸気との相互作用を阻害する。さらにより好ましくは、保護層は、疎水性である。
【0040】
保護層は、好ましくは、ポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、保護層は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含む。ポリ(乳酸-co-グリコール酸)は、乳酸とグリコール酸とから、40:60~85:15の範囲内のモノマー比で形成され得る。より好ましくは、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)は、乳酸とグリコール酸とから、50:50~75:25の範囲内のモノマー比で形成され得る。別の選択肢として又は追加として、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)は、乳酸とグリコール酸とから、重合時に存在する乳酸モノマーの割合の方を大きくして形成され得る。
【0041】
好ましくは、保護層は、2.5~100μmの範囲内の平均厚さに形成される。より好ましくは、保護層は、5~50μmの範囲内の平均厚さに形成される。
少なくともいくつかの実施形態では、基材は、組み立てられて所定の形状となるように加工されたパルプ繊維から形成され、基材内でパルプ繊維間に結合を形成するように処理され、それによって、基材は、支持されていない状態でもその形状を少なくとも部分的に維持することができる。
【0042】
上記で述べた包装材料から形成された包装デバイスも提供され、包装デバイスは、品物が中に収容されることになる内部領域を画定するように成形及び/又は構成されている。
2つ以上の構成パーツを有し、そのうちの少なくとも1つが上記で述べた包装材料から形成された包装デバイスも提供され、包装デバイスの構成パーツは、組み立てられて、品物が中に収容されることになる内部領域を画定するように成形及び/又は構成されている。
【0043】
包装デバイスは、基材が、酸素透過阻害層と内部領域との間に配置されるように構成され得る。別の選択肢として、包装デバイスは、酸素透過阻害層が、基材と内部領域との間に配置されるように構成され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、包装デバイスは、
内部領域を画定するボディと、内部領域への入口部を取り囲む環状フランジと、を有する容器部分、及び
環状フランジと接合されることによって内部領域を封止するようになっている周囲エッジ領域を備えたフタ部分、
を含み、容器部分及びフタ部分は、別々に形成され、そのように接合されると、品物のアリコートを中に収容するカプセルを形成し、
容器部分及びフタ部分のうちの少なくとも一方は、上記で述べた包装材料から形成されている。
【0045】
上記で述べた包装材料から形成された包装シート材料も提供され、包装シート材料は、外部面と、包装シート材料を用いて包装された品物に関して内側に向くことになる内部面とを有するように構成されている。
【0046】
包装シート材料は、基材が、酸素透過阻害層と内部面との間に配置されるように構成され得る。別の選択肢として、包装シート材料は、基材が、酸素透過阻害層と外部面との間に配置されるように構成され得る。
【0047】
好ましくは、包装シート材料は、内部面上及び/又は外部面上に印を有し、その印によって、包装シート材料の内部面と外部面とを識別することができる。
いくつかの実施形態では、包装シート材料は、平面シートである。
【0048】
いくつかの別の選択肢としての実施形態では、内部面は、非平面状である、及び/又は外部面は、非平面状である。内部面及び外部面は、包装シート材料の厚さが、長さ方向及び/又は幅方向に変動するように成形され得る。
【0049】
また、包装材料であって、
基材と、
ポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含み、組み立てられて、基材によって保持される実質的に連続的な膜とされ、包装材料の1つの面を画定する保護層と、
を含む、包装材料も提供され、保護層は、大気中の水蒸気と保護層の下にある包装材料との相互作用を阻害するのに有効な厚さを有する。
【0050】
ポリ(乳酸-co-グリコール酸)は、乳酸とグリコール酸とから、およそ50:50のモノマー比で形成され得る。別の選択肢として、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)は、乳酸とグリコール酸とから、重合時に存在する乳酸モノマーの割合の方を大きくして形成され得る。
【0051】
好ましくは、保護層は、2.5~100μmの範囲内の平均厚さに形成される。より好ましくは、保護層は、5~50μmの範囲内の平均厚さに形成される。
いくつかの例では、保護層は、包装材料の外部面を画定し得る。いくつかの例では、保護層は、別の選択肢として又は追加として、包装材料の内部面を画定し得る。
【0052】
ある特定の実施形態では、包装材料はさらに、基材と保護層との間に1又は複数の中間層を含み、中間層は、それを通しての、酸素ガス及び水蒸気のうちの少なくとも一方の透過を阻害するのに有効である。
【0053】
少なくともいくつかの実施形態では、基材は、組み立てられて所定の形状となるように加工されたパルプ繊維から形成され、基材内でパルプ繊維間に結合を形成するように処理され、それによって、基材は、支持されていない状態でもその形状を少なくとも部分的に維持することができる。
【0054】
包装材料の製造方法も提供され、その方法は、
所定の形状であり、支持されていない状態でも所定の形状を少なくとも部分的に維持することができる基材を形成すること、
基材の1つの面に、第一の層を適用すること、
結合に対する第一の層の受容性を改善するために、適用された第一の層を表面処理すること、及び
第一の層の処理面上に、第二の層であって、それを通しての酸素ガス及び水蒸気のうちの少なくとも一方の透過を阻害するのに有効である、第二の層、を適用すること、
を含み、表面処理工程は、第二の層の第一の層に対する接着を促進する。
【0055】
さらに、包装材料の製造方法が提供され、その方法は、
所定の形状であり、支持されていない状態でも所定の形状を少なくとも部分的に維持することができる基材を形成すること、
基材の1つの面に、第一の層を適用すること、
適用された第一の層の表面上の汚染物を除去するために、適用された第一の層を表面処理すること、及び
第一の層の処理面上に、第二の層であって、それを通しての酸素ガス及び水蒸気のうちの少なくとも一方の透過を阻害するのに有効である、第二の層、を適用すること、
を含み、表面処理工程は、第二の層の第一の層に対する接着を促進する。
【0056】
さらに、包装材料の製造方法が提供され、その方法は、
所定の形状であり、支持されていない状態でも所定の形状を少なくとも部分的に維持することができ、第一の表面粗度の第一の面を有する基材を形成すること、
基材の第一の面に、第一の層を適用すること、
適用された第一の層が第二の表面粗度の処理面を有するように、適用された第一の層を表面処理すること、及び
第一の層の処理面上に、第二の層を適用すること、
を含み、第二の表面粗度は、第一の表面粗度よりも小さい。
【0057】
さらに、包装材料の製造方法が提供され、その方法は、
所定の形状であり、支持されていない状態でも所定の形状を少なくとも部分的に維持することができる基材を形成すること、
基材の1つの面に、第一の層を適用すること、
適用された第一の層を表面処理することであって、それによって第一の層の処理面の幾何学的変動が、第一の層が上に形成されている基材の面の幾何学的変動よりも小さくなる、表面処理すること、及び
第一の層の処理面上に、第二の層を適用すること、
を含み、幾何学的変動は、対応する処理面/基材面に関する平均面から特定され、幾何学的変動は、基材の外部面に交差する局所的な接平面に対して垂直又は平行のいずれかの方向に測定される。
【0058】
さらに、包装材料の製造方法が提供され、その方法は、
所定の形状であり、支持されていない状態でも所定の形状を少なくとも部分的に維持することができる基材を形成すること、
基材の1つの面に、第一の層を適用すること、
適用された第一の層を表面処理することであって、それによって第一の層の処理面のプロファイル高さの偏差の絶対値の平均値が、第一の層が上に形成されている基材の面のプロファイル高さの偏差の絶対値の平均値よりも小さくなる、表面処理すること、及び
第一の層の処理面上に、第二の層を適用すること、
を含み、プロファイル高さの偏差は、包装材料の外部面に交差する局所的な接平面に対して垂直の方向に測定される。
【0059】
さらに、包装材料の製造方法が提供され、その方法は、
所定の形状であり、支持されていない状態でも所定の形状を少なくとも部分的に維持することができる基材を形成すること、
基材の1つの面に、第一の層を適用すること、
第一の層の表面エネルギーを増加させるために、適用された第一の層を表面処理すること、及び
第一の層の処理面上に、第二の層であって、それを通しての酸素ガス及び水蒸気のうちの少なくとも一方の透過を阻害するのに有効である、第二の層、を適用すること、
を含み、表面処理工程は、第一の層上に第二の層の材料の膜を形成するための第二の層の適用を促進する。
【0060】
いくつかの実施形態では、表面処理工程は、適用された第一の層の露出面に対して熱を適用することを含む。
表面処理工程は、プラズマ処理を含み得る。
【0061】
表面処理工程は、適用された第一の層の表面に対してエネルギー源からエネルギーを移送することを含み得る。いくつかの実施形態では、エネルギー源は、適用された第一の層の表面に変化を付与するためにプラズマを用いる。いくつかの別の選択肢としての実施形態では、エネルギー源は、紫外光を用いる。
【0062】
別の選択肢として、適用された第一の層の露出面を、第一の層の材料と相互作用を起こすことで露出面の特性に変化を誘導する1又は複数の化学物質に接触させることを含み得る。
【0063】
ある特定の実施形態では、第一の層は、水に不溶である1又は複数の化合物を含む原材料から形成され、第一の層は、標準環境温度で固体であり、方法はさらに、
原材料を、基材の面上に、粉末の形態で移送すること、及び
適用された原材料が溶融、流動して基材の面上に連続層を形成し、続いて固化可能とされるように、適用された原材料を、所定の時間にわたって熱に曝露すること、
を含む。
【0064】
いくつかの別の選択肢としての実施形態では、第一の層は、水に不溶である1又は複数の化合物を含む原材料から形成され、第一の層は、標準環境温度で固体であり、方法はさらに、
原材料を液化すること、
液化原材料を、基材の面上に移送すること、及び
液化原材料を固化させ、それによって基材の面上に連続層を形成すること、
を含む。
【0065】
液化原材料を移送する工程は、液化原材料を基材の面上に噴霧することを含み得る。液化原材料を移送する工程は、別の選択肢として、液化原材料の浴を形成し、基材を浴中に浸漬することで、原材料を基材の面に移送することを含み得る。液化原材料を移送する工程は、液化原材料を、層流で基材の面上に供給することを含み得る。
【0066】
方法のある特定の実施形態では、表面処理工程は、適用された第一の層の液化原材料の固化が完了する前に行われる。
基材を形成する工程は、
液体中に懸濁したパルプ繊維のスラリーを作製すること、
形成された基材の所定の形状に相当する形状を有するモールド上に、ウェットパルプ繊維プリフォームを形成すること、及び
ウェットパルプ繊維プリフォームを処理して水分含有量を減少させ、それによって成形パルプ繊維品として基材を形成すること、
を含み得る。
【0067】
好ましくは、方法はさらに、
第二の層上に保護層を形成することを含み、保護層は、完成した包装材料において大気中の水蒸気と第二の層との相互作用を阻害する材料から形成される。
【0068】
保護層を形成する工程は、溶媒及びポリ(乳酸-co-グリコール酸)から成る溶液を第二の層に適用すること、及び溶媒を蒸発させて、保護層材料の膜を形成することを含み得る。
【0069】
保護層を形成する工程は、加えて、保護層材料の膜を熱処理して、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)にある細孔を閉じることを含み得る。
別の選択肢として又は加えて、保護層を形成する工程は、溶媒の蒸発に従ってポリ(乳酸-co-グリコール酸)に細孔が形成することを軽減するために、溶媒の蒸発速度を制御することを含み得る。
【0070】
次に、本発明をより容易に理解することができるように、実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照しながら記載する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に従う包装デバイスの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の包装デバイスの容器部分の垂直断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の別の実施形態に従う包装材料の製造方法のフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図3の領域Bの模式図であり、
図4の方法のあるステージの過程における基材の表面の一部分を示す。
【
図6】
図6は、
図5に示す表面の部分D内における幾何学的偏差の絶対値を示すチャートである。
【
図7】
図7は、
図3の領域Cの模式図であり、
図4の方法のあるステージの過程における第一の層の処理面の一部分を示す。
【
図8】
図8は、
図7に示す界面の部分E内における幾何学的偏差の絶対値を示すチャートである。
【
図10】
図10は、
図9の領域Fの模式図であり、基材と第一の層との間の材料境界界面プロファイルの一部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1及び
図2は、一実施形態に従う包装デバイス10を示す。包装デバイス10は、容器部分12及びフタ部分14の2つの構成パーツを含む。
図2に示されるように、容器部分12は、品物が中に収容されることになる内部領域15を画定するように、凹状である。この目的のために、この図の例の容器部分12は、外部面16及び内部面18を有する。環状フランジ20は、内部領域15への入口部を取り囲んでいる。フタ部分14は、同様に、内部面(図示せず)及び外部面22を有する。フタ部分14の直径は、環状フランジ20の外径と同じである。組み立てられた包装デバイス10では、環状フランジ20は、フタ部分14の周囲エッジ領域に接合される。
【0073】
この例では、容器部分12及びフタ部分14の各々は、一実施形態に従う包装材料から形成されている。
図3~
図6は、単なる例として、容器部分12に用いられる包装材料の詳細を(模式的に)示す。
【0074】
図3は、容器部分12の一部の断面、すなわち、容器部分12の形状に製造された場合の包装材料を通る断面を示す。
図3には、外部面及び内部面16、18の各々が示される。完成した容器部分12では、外部面及び内部面16、18の各々が、周囲環境に曝露されていることは理解される。「内部面」及び「外部面」の用語は、包装デバイス10の内部領域15を考慮した、対応する面16、18の向きに適用される。
【0075】
包装材料は、この例では成形パルプ繊維品の形態である基材50を含む。容器部分12に関して、完成物品は、特定の幾何学的及び形状特性を有することになる。幾何学的及び形状特性は、物品に特有であるが、これらは、本発明ではなく、物品及びその意図する用途に依存することは理解される。また、容器部分12に関して、基材50は、支持されていない状態でもその成形された形状を維持することができるように形成される。いくつかの別の選択肢としての実施形態では、基材(又は基材を形成する材料)は、支持されていない状態でその形状を維持する能力を有していなくてもよい。
【0076】
この特定の実施形態では、基材50は、第一の層52、第二の層54、及び第三の層56を有する。
図3に示されるように、基材50の露出面は、外部面16であり、第三の層56の露出面は、容器部分12の内部面18である。以下でさらに詳細に述べるように、層52、54、56の各々は、包装材料を取り囲む大気由来の流体の包装材料を通しての透過を阻害することに対して1又は複数の方法で寄与する機能層である。このようにして、層52、54、56は、基材50単独と比較して、包装材料を通しての1又は複数の流体の透過に対する増加したバリアを提供する。包装デバイス10の例において、この増加したバリアによって、容器部分12の内部に保存され、フタ部分14を容器部分12に接合することによって封入された品物の保存期間を延ばすことが可能となることは理解される。
【0077】
包装材料内において、基材50及び第一の層52の材料の材料境界に形成される第一の界面58、並びに第一及び第二の層52、54の材料の材料境界に形成される第二の界面62が存在する。さらなる界面が、第二及び第三の層54、56の材料の材料境界にも形成される。
図3では、材料境界界面は、線で表されるが、これらの界面は、実施形態の物理的包装材料内において三次元であることは理解される。
【0078】
第一の層52は、水に不溶である化合物を含む介在材料から形成される。さらに、第一の層52は、標準環境温度で固体である。この特定の例では、第一の層52は、それを通しての水蒸気の透過を阻害するのに有効な材料及び厚さで形成される。
【0079】
本明細書及びそれに続く請求項全体を通して、「標準環境温度」への言及は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)によって定められる標準環境温度と圧力(SATP)の定義に従って、25℃(77°F)であると理解されたい。
【0080】
例として、第一の層52は、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、又はこれらのブレンドから形成され得る。第一の層52の原材料は、基材50全体にわたって連続層が形成されるように基材50に適用される。
【0081】
第二の層54を第一の層52に適用する前に、第一の層52は、表面処理プロセスに掛けられる。表面処理プロセスは、完成した包装材料中において第一及び第二の層52、54の間の第二の界面62を画定する適用された第一の層52の面の特性を変化させる。この目的のために、表面処理プロセスは、
- 第二の層54の接着に対する第一の層52の受容性を改善することができる、
- 第一の層52に対する接着を促進するために、適用された第一の層52の表面上の汚染物を除去することができる、及び/又は
- 第一の層52の表面エネルギーを増加させることができる。
【0082】
本明細書及びそれに続く請求項全体を通して、文脈から他が必要とされない限りにおいて、「表面エネルギー」及び「界面エネルギー」の用語は、同一の意味を有するものと理解されたい。さらに、「表面エネルギー」の用語は、対応する材料境界が大気に曝露されていることを暗示するものではない。
【0083】
いくつかの例では、表面処理プロセスは、第二の層54を形成する材料の適用前に表面粗度を小さくするように、適用された第一の層52の表面の幾何学的特性を変化させることができる。
【0084】
図3から理解されるように、第一の層52の材料は、基材50と第二の層54との間に配置されている。
第二の層54は、直鎖状多糖類媒体中に分散された添加剤を含む複合材料から形成される。添加剤は、直鎖状多糖類媒体と結合を形成し、それによって、酸素ガスの透過に対するバリアを提供することができる実質的に連続的な膜の形成を促進する。直鎖状多糖類媒体と添加剤との結合は、物理結合及び/又は共有結合であってよい。さらに、第二の層54は、それを通しての酸素ガスの透過を阻害するのに有効な厚さで包装材料中に形成される。このようにして、第二の層54は、包装材料中に、酸素ガスの透過に対するバリアを提供する。
【0085】
例として、直鎖状多糖類媒体は、低分子量キトサンであり、添加剤は、繊維を含み得る。繊維は、セルロース繊維から成り得る、又はセルロース繊維を含み得る。複合材料は、第一の層52への適用を促進するために、溶液に調製され得る。溶媒は、水、及び/又は室温で液体である他の有機/無機化合物であってよい。溶媒が水及び1又は複数の他の化合物を含む場合、これらの他の化合物は、理想的には、水と完全には混和性でないとしても、水と非常に混和性である。
【0086】
溶液は、公知の液体適用法を用いて、第一の層52の露出面に移送される。第一の層52の表面処理は、溶液の分散を促進する。溶媒を蒸発させることによって、第一の層52上に均一に分散されたキトサン及びセルロース繊維が残され、膜が形成される。膜中のセルロース繊維は、少なくとも溶媒蒸発の過程において、キトサン膜中の内部応力を支持する。別の選択肢として又は追加として、より弾力のある膜が形成される。
【0087】
理解されるように、この特定の実施形態における第一の層52は、第二の層54の形成の過程で、第二の層の材料を含む溶液の分散を促進する。
図1に示される例では、保護層56は、包装材料の内部面18を形成し、さらには、第二の層54と接触もしている。保護層56は、第二の層54と大気との間のバリアを提供する実質的に連続的な膜に組み立てられる。
【0088】
保護層56は、水蒸気に対するバリアを形成し、したがって、第二の層54の材料と大気中の水蒸気との相互作用を阻害する。保護層56が存在することにより、大気中の水蒸気による第二の層54のキトサン膜に対する損傷が軽減される。
【0089】
この実施形態では、保護層は、ポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、保護層は、一般に総称的にPLGAと称されるポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含む。
PLGAは、乳酸とグリコール酸とから、およそ50:50のモノマー比で形成され得る。
【0090】
図4は、第二の実施形態に従う包装材料の製造方法100のフローチャートである。
図3に示される包装材料の要素を参照して、方法100は、
- 第一の面を有する基材50を形成する工程102、
- 基材50の第一の面に、第一の層52を適用する工程104、
- 適用された第一の層52を表面処理する工程106、
- 第一の層52の処理面上に、第二の層54を適用する工程108、及び
- 第二の層54上に保護層56を形成する工程110、
を含む。
【0091】
図5は、方法100の工程102が完了した後であるが、工程104を開始する前である、
図3の領域B内の基材50の拡大模式図を示す。基材50は、工程102の完了時に、第一の面を有し、その上に、工程104の過程で第一の層52が適用されることになる。基材50は、方法100のその後の工程の過程において基材50が所定の形状を少なくとも部分的に維持することを可能とするプロセスによって形成されたものである。容器部分12の例では、基材50は、非平面状である。フタ部分14の例では、基材は、実質的に平面シートである。
【0092】
図5において、ブロック矢印18は、完了時、最終的には包装材料の内部面18となる部分に向いた方向を示す。
方法100のその後の工程において、第一の面が、基材50と第一の層52との間の第一の内部界面58となることは理解される。
図5において、基材50は、第一の面が線で示されるように、垂直断面で(模式的に)示される。以下に続く
図5に関する記述における簡便性のために、第一の面に、符号58を付与する。
【0093】
図5は、基材50の第一の面58に存在する微視的な幾何学的変動を示す。これらの微視的な幾何学的変動は、第一の面58の表面粗度を定める山と谷を形成する。さらに、山と谷は、平面又は非平面状の基準面に対して垂直の方向に測定することができる高さを有する。この基準面は、実際の第一の面58の理想面、別の面、又は基準面であってよい。山に関連して、谷は、基材50の面58における微視的凹部を形成する。
【0094】
第一の面58は、第一の面58内にある山及び谷の高さの測定方向に沿った算術平均である仮想上の平均面60を有する。仮想上の平均面60は、基準面からの高さを有し、それは、矢印60
AVGで
図5に示される。説明を容易とするために、
図5において、基準面は、内部面18と交差する接平面である。
【0095】
第一の面58上の各点は、基準面に対する高さを有する。さらに、第一の面58上の各点は、仮想上の平均面60からのプロファイル高さ偏差を有する。プロファイル高さ偏差は、次の式によって表すことができ、
Pa=SAVG-Ha
式中、
Paは、点aにおけるプロファイル高さ偏差であり、
SAVGは、測定方向に沿った、基準面に対する、点aにおける仮想上の平均面の高さであり、
Haは、基準面に対する点aの高さである。
【0096】
図5から理解されるように、点a
1及びa
3は、仮想上の平均面と基準面との間にあり、したがって、これらの点に対するプロファイル高さ偏差は、ゼロ未満である。
第一の層52の材料は、基材50上に適用する過程で流動する能力を有する。したがって、工程104の過程において、第一の層52の材料は、第一の面58上を流動することができ、第一の面に存在する幾何学的変動の範囲内の谷を充填する。いずれかの材料がその液体状態で別の面の幾何学的変動の範囲内の谷を充填する能力は、本明細書において、その液体材料の「充填特性」と称する。第一の層52の材料が硬化するに従って、第一の層52と基材50との間に結合が形成される。いずれかの硬化性材料が別の材料と結合を形成する能力は、本明細書において、その硬化性材料の「結合特性」と称する。
【0097】
第一の層52の材料は、第二の層54の材料が基材50上において直接充填及び結合する能力と比較した場合、基材50上において充填及び結合するより大きい能力を有する。
図7は、方法100の工程106が完了した後であるが、工程108を開始する前である、
図3の領域C内の第一の層52の拡大模式図を示す。したがって、第一の層52の露出面(基材50からは遠い)は、工程106の過程で処理された面、すなわち「処理面」である。
【0098】
方法100のその後の工程において、処理面が、第一及び第二の層52、54の間の第二の内部界面62となることは理解される。
図7において、第一の層52は、処理面が線で示されるように、垂直断面で(模式的に)示される。以下に続く
図7に関する記述における簡便性のために、処理面に、符号62を付与する。
【0099】
図7は、第一の層52の処理面62に存在する微視的な幾何学的変動を示す。これらの微視的な幾何学的変動は、処理面62の表面粗度を定める山と谷を形成する。山に関連して、谷は、処理面62における微視的凹部を形成する。
【0100】
処理面62もまた、処理面62内にある山及び谷の高さの測定方向に沿った算術平均である仮想上の平均面64を有する。処理面62上の各点は、基準面に対する高さを有し、基準面はこの例でも、内部面18と交差する接平面である。
【0101】
模式的ではあるが、
図5及び
図7は、第一の面58と処理面62との間の幾何学的変動の大きさ及び周期の差異を表している。この例では、処理面62における山及び谷の山谷高さは、第一の面58における山及び谷の山谷高さよりも小さい。したがって、基準面に対して垂直の方向に測定した場合、処理面62の幾何学的変動は、第一の面58(第一の層52の適用前)の幾何学的変動よりも小さい。
【0102】
同様に、この例では、それぞれの測定方向に沿って、処理面62における隣接する山の横方向の分離(lateral separation)は、第一の面58における隣接する山の横方向の分離よりも小さい。したがって、基準面に対して平行の方向に測定した場合、処理面62の幾何学的変動は、第一の面58(第一の層52の適用前)の幾何学的変動よりも小さい。
【0103】
図6は、
図5に示す第一の面58の部分D内におけるプロファイル高さ偏差の絶対値を模式的に示すチャートである。
図6において、第一の面58上の点に対するプロファイル高さ偏差の絶対値は、プロット破線58
Mで示される。横軸上に存在する点は、第一の面58が仮想上の平均面60と一致している点である。
図5のチャート上では、プロファイル高さ偏差の絶対値が示されており、したがって、プロット線58
Mは、次の式によって表すことができ、
P
abs=|S
AVG-H
a|
式中、
P
absは、点aにおけるプロファイル高さ偏差の絶対値であり、
S
AVGは、測定方向に沿った、基準面に対する、点aにおける仮想上の平均面の高さであり、
H
aは、基準面に対する点aの高さである。
【0104】
図6はまた、プロファイル高さ偏差の絶対値P
absの平均値58
Hも示す。
図8は、
図7に示す処理面62の部分E内におけるプロファイル高さ偏差の絶対値を模式的に示すチャートである。
図8において、処理面62上の点に対するプロファイル高さ偏差の絶対値は、プロット破線62
Mで示される。
図8はまた、プロファイル高さ偏差の絶対値P
absの平均値62
Hも示す。
【0105】
既に述べたように、工程106における第一の層52の露出面の表面処理は、第一の層52の表面エネルギーを増加させる(未処理状態における第一の層52の表面エネルギーと比較して)という有益な効果を有する。続いて、増加された表面エネルギーは、工程108の過程で第二の層52を形成する溶液の分散を促進する。したがって、工程108の終了時点で、第二の層52は、第一の層52上に均一に分布することができ、それによって、それを通しての酸素の透過を阻害する材料の膜が形成される。
【0106】
模式的ではあるが、
図6及び
図8のチャートは、平均値58
H(第一の面58に対するプロファイル高さ偏差の絶対値P
absの平均値)が、平均値62
H(処理面62に対するプロファイル高さ偏差の絶対値P
absの平均値)よりも小さいことを表している。
図10は、
図9の領域Fにおける包装材料の内部領域の拡大模式図であり、基材50、第一の層52、及びそれらの間の材料境界界面58の一部を示す。領域F内では、容器部分12の外部面及び内部面16、18は、いずれも弧状である。
【0107】
図10は、
図9の領域F内での基材50と第一の層52との間の界面58における幾何学的変動を模式的に示し、幾何学的変動は、微視的レベルで存在する。領域F内において、容器部分12の場合、包装材料が湾曲している点で異なっている。したがって、外部面及び内部面16、18は、湾曲している。
【0108】
図10に示されるように、材料境界界面58においてこれらの微視的な幾何学的変動によって形成される山及び谷の高さは、基準面と一致している局所的な接平面に対して垂直の方向に測定される高さを有する。しかし、容器部分12のこの部分では、基準面は、非平面状である。したがって、
図10に示されるように、容器部分12のこの部分では、仮想上の平均面60(一点鎖線として示される)も非平面状である。
【0109】
実施例
以下に続く記載は、本出願者が評価の目的で構築した包装材料、及びこれらの包装材料の製造手順の限定されない例である。簡便となるように、
図3を参照して記載する包装材料の用語を、以下の記載を通して使用する。
【0110】
1つの例では、成形パルプ繊維の基材を、パルプとしたバガス繊維のスラリーから、公知の熱成形プロセスに従って形成した。
基材の1つの面に、介在材料を適用した。この目的のために、第一のセットの化合物を、液体材料の熱「浴」(すなわち、貯蔵器)中に形成した。第一のセットの化合物は、キャンデリラワックスを、添加剤としての、
- ワックスに対して1重量%~5重量%の範囲内の比率で、ソルビトールモノオレイン酸エステルの形態の界面活性剤、及び
- ワックスに対して0.5重量%~2重量%の範囲内の比率で、ヒュームドシリカ、
と共に含んでいた。
【0111】
液体材料の熱浴を100℃まで加熱し、液化ワックス全体に添加剤が分散するように混合した。
液体材料を、成形パルプ繊維基材の1つの面に適用して、30~45μmのオーダーの膜厚を得た。第一のセットの化合物を放冷して、基材上で固化させた。こうして、基材の面に第一の層を適用した。
【0112】
適用された第一の層を、表面処理に掛けた。いくつかの例では、適用された第一の層を表面処理する工程は、露出面の特性の変化を誘導するために、適用された第一の層の露出面を化学処理することを含んでいた。この化学処理は、適用された第一の層の露出面を1又は複数の化合物と接触させることを含んでいた。
【0113】
いくつかのトライアルでは、化学処理によって、露出面の境界下層に構造的変化が誘導されたことが分かる。いくつかの他のトライアルでは、化学処理によって、第一の層の材料と化学物質との化学反応が引き起こされ、それによって、露出面に隣接する第一の層の材料中に、下層が作り出されることが分かる。
【0114】
いくつかのトライアルでは、化学処理は、適用された第一の層の表面上に、改変剤の形態でさらなる介在材料を堆積することを含んでいた。
いくつかの例では、改変剤を用いて、適用された第一の層の境界領域に、第一のセットの化合物との混合物を形成した。これらの例では、境界領域の下にある適用された第一の層は維持され、その境界領域中にある第一及び第二のセットの化合物の混合物が、第二の中間層を形成した。したがって、第二の中間層は、第一のセットの化合物と改変剤とを含有していた。適用された第一の層の変化していない介在材料は、第二の中間層の下に維持され、したがって、仮想上の第一の中間層が確立された。
【0115】
いくつかの他の例では、改変剤は、第一のセットの化合物との相互作用が最小限である別個の第二のセットの化合物であった。
トライアルは、オゾンガス、溶解したペクチン、溶解したポリエーテル化合物(ポリエチレングリコールを含む)を含む化学物質を用いた。さらに、化学物質溶液は、溶媒として水及び揮発性液体を用い、それによって、液体部分は、表面処理工程の過程で蒸発させることができる。
【0116】
第二の層のための複合材料の混合物を形成した。この目的のために、分子量10~100kDaの粉末化キトサンを、3~10重量%キトサンの範囲内の比率で酸性溶媒と混合することによって、予備溶液を作製した。この例では、酸性溶媒は、2.5~5.5pKaのオーダーの強度を有する穏和な有機酸で酸性化した脱イオン水を含んでいた。
【0117】
いくつかのトライアルでは、可塑剤を、1重量%~5重量%の比率で予備溶液に組み込んだ。クエン酸エステルを含む複数の可塑剤を試した。
リファイニングしたバガス繊維及び脱イオン水の二次溶液を形成し、続いて酸性溶媒と混合した。リファイニングしたバガス繊維及び脱イオン水の二次溶液は、およそ5重量%の比率の繊維を有していた。二次溶液を、15%~35%の範囲内の比率で予備溶液に添加した。組み合わせた予備溶液と二次溶液とを混合して、乾燥重量で2:1~4.5:1の範囲内のキトサン対繊維比を得た。次に、第二の層のための複合材料を、実質的に均一に分布した溶解状態の複合材料を得るために、高めた温度(およそ40℃)で長い時間にわたって混合し、続いて浴に移した。
【0118】
この時点で基材と形成された第一及び第二の中間層とから成るワークピースを、複合材料を含有する浴中に浸漬して、第一の層をコーティングした。次に、液体成分が蒸発して膜を形成する間、複合材料を赤外光エネルギーに曝露した。複合材料の混合物は、15~30μmのオーダーの厚さを有する膜を形成するのに充分な量で適用した。
【0119】
第三の層のための材料の混合物を、浴中に形成した。混合物は、乳酸とグリコール酸との比率がおよそ50:50のオーダーであるポリ(乳酸-co-グリコール酸)を、アセトン溶媒中に5重量%~20重量%の比率で分散されて含んでいた。PLGA成分は、5~150kDaの分子量を有していた。
【0120】
この時点で基材と形成された第一及び第二の層とから成るワークピースを、第三の層の材料を含有する浴中に浸漬して、第二の層をコーティングした。次に、ワークピースを、PLGA成分のガラス転移点を超える温度に加熱したオーブンに移した。溶媒が蒸発する間、ワークピースを高めた温度に維持し、その間にPLGA成分は適度な硬度となり、膜が形成された。第三の層のための材料の混合物は、5~50μmのオーダーの厚さを有する膜を形成するのに充分な量で適用した。
【0121】
オーブンから取り出すと、続いてワークピースを室温まで冷却して、包装材料の製造を完了した。次に、包装材料を分析、評価した。
本明細書で述べる実施形態及び例で用いる範囲が、水蒸気透過率及び酸素透過率(WVTR及びOTR)の異なる所望される特性を得るために、様々な組み合わせで選択され得ることは理解される。
【0122】
本明細書及びそれに続く請求項全体を通して、文脈から他が必要とされない限りにおいて、「含む(comprise)」の語、並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変化形は、記載される整数若しくは工程、又は整数若しくは工程の群を含むが、他のいずれの整数若しくは工程、又は整数若しくは工程の群を除外するものではないことを暗示するものと理解される。
【0123】
本明細書におけるいずれの先行の刊行物(若しくはそれから誘導される情報)に対する言及も、又は既知のいずれの事柄に対する言及も、その先行の刊行物(若しくはそれから誘導される情報)又は既知の事柄が、本明細書が関連する試みの範囲における共通の一般的知識の一部を形成するものであると認知するものでも又は承認するものでも又はいずれの形態で示唆するものでもなく、そのように解釈されるべきでもない。
【国際調査報告】