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特表2023-553536かん流管腔内吸引インナーカニューレシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】かん流管腔内吸引インナーカニューレシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
A61M16/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560244
(86)(22)【出願日】2021-12-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 US2021062979
(87)【国際公開番号】W WO2022126001
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/124,599
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523220020
【氏名又は名称】ハイド、ブレーク ジェイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】ハイド、ブレーク ジェイ.
(57)【要約】
気管切開チューブのためのかん流管腔内吸引インナーカニューレシステムは、従来のカテーテルベースの管腔内吸引の代わりに、気管切開チューブの吸引単独、または濯ぎと管腔内吸引の組み合わせに使用しうる吸引動力システムでありうる。インナーカニューレは、気管切開チューブ内の複数の位置で管腔内吸引および洗浄を容易にするチャンバ、または領域、および孔を含む。これは、患者、医療従事者、介護者によって、または電子システムを介して、入院患者/病院、または外来患者/外来介護のいずれかの環境で、必要に応じて、あるいは、定期的またはある発動間隔で、適用/作動させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管切開チューブとともに使用するインナーカニューレであって、
前記気管切開チューブに挿入する第1の直径を有する第1のチューブであって、該第1のチューブの管腔内空間と第1のチューブの外面との間に設けられた複数の穴と、前記第1のチューブの外面で、該外面を取り囲む空隙を複数の領域に分割する1つ以上の突起部と、をさらに備える、第1のチューブと、
前記第1のチューブの遠位端に融合され、前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2のチューブであって、該第2のチューブの外面と前記複数の領域のうちの第1の領域との間の第1の通路と、前記第2のチューブの外面と前記複数の領域のうちの第2の領域との間の第2の通路と、を備える第2のチューブと、を備える、インナーカニューレ。
【請求項2】
前記第2のチューブは、さらに、前記インナーカニューレを前記気管切開チューブに取り付けるための保持クリップを備える、請求項1に記載のインナーカニューレ。
【請求項3】
前記第1の通路は、前記第1の領域と前記第2のチューブの外面との間に延びており、かつかん流液源に連結されたラインに接続可能である、請求項1に記載のインナーカニューレ。
【請求項4】
前記第2の通路は、前記第2の領域と前記第2のチューブの外面との間に延びており、かつ真空源に連結されたラインに接続可能である、請求項1に記載のインナーカニューレ。
【請求項5】
外側気管切開チューブと、
前記外側気管切開チューブの内側に配置されたインナーカニューレであって、
前記外側気管切開チューブに挿入するための第1の直径を有する第1のチューブであって、該第1のチューブの管腔内空間と第1のチューブの外面との間の複数の孔、および前記インナーカニューレの外面と前記外側気管切開チューブの内面との間の空隙を複数の領域に分割する前記外面上の1つ以上の突起部をさらに備える、第1のチューブ、および
前記第1のチューブの遠位端に融合され、前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2のチューブであって、該第2のチューブの外面と前記複数の領域のうちの第1の領域との間の第1の通路と、前記第2のチューブの外面と前記複数の領域のうちの第2の領域との間の第2の通路とを備える第2のチューブを備えるインナーカニューレと、
前記第2のチューブの前記第1の通路に取り付けられ、前記第1の領域と連通するかん流液ラインと、
前記第2のチューブの前記第2の通路に取り付けられ、前記第2の領域と連通する吸引ラインと、
前記かん流液ラインとかん流液源との間に連結され、かつ前記吸引ラインと真空源との間に連結された作動装置であって、前記かん流液ラインを前記かん流液源に、前記吸引ラインを前記真空源に制御可能に接続する作動装置と、を備える、かん流管腔内吸引インナーカニューレシステム。
【請求項6】
前記外側気管切開チューブは、内面に、前記1つ以上の突起部と同様のパターンでのくぼみをさらに備え、前記インナーカニューレが前記外側気管切開チューブに挿入されたときに、前記1つ以上の突起部が前記くぼみと係合する、請求項5に記載のカニューレシステム。
【請求項7】
前記作動装置は、前記吸引ラインと前記インナーカニューレとの間にのみ連結されえる、請求項5に記載のカニューレシステム。
【請求項8】
前記作動装置は、人工呼吸器内に組み込まれえる、請求項5に記載のカニューレシステム。
【請求項9】
前記かん流液源は、前記インナーカニューレの垂直高さより下の距離に配置されて、自然流下を防止する、請求項5に記載のカニューレシステム。
【請求項10】
かん流液または吸引の過剰なまたは予期せぬ流量を監視するための流量センサーを、さらに備える、請求項9に記載のカニューレシステム。
【請求項11】
バルブ、流量制限器、機械式流量・圧力センサー、または電気式流量・圧力センサーを、さらに備える、請求項10に記載のカニューレシステム。
【請求項12】
かん流液、または吸引の過剰なまたは予期せぬ流れが検出された場合のアラームまたは通知を、さらに備える、請求項11に記載のカニューレシステム。
【請求項13】
前記第2のチューブは、該第2のチューブを前記外側気管切開チューブに取り付けるための保持クリップをさらに備える、請求項5に記載のカニューレシステム。
【請求項14】
前記外側気管切開チューブと前記インナーカニューレが単一の装置を形成する、請求項5に記載のカニューレシステム。
【請求項15】
前記外側気管切開チューブが、カフ付き気管切開チューブ、またはカフなし気管切開チューブである、請求項5に記載のカニューレシステム。
【請求項16】
前記外側気管切開チューブが、有窓、または非有窓気管切開チューブである、請求項5に記載のカニューレシステム。
【請求項17】
1つ以上の開口部を長さ方向に沿って備える外側気管切開チューブと、
前記外側気管切開チューブの内側に配置されたインナーカニューレであって、
前記外側気管切開チューブに挿入するための長さと直径を有する第1のチューブであって、該第1のチューブの管腔内空間と第1のチューブの外面との間の複数の開口部と、前記第1のチューブの外面をかん流領域と第1の吸引領域とに分割する第1の突起部と、前記第1のチューブの外面に第2の吸引領域を形成する第2の突起部と、をさらに備える、第1のチューブと、
前記第1のチューブの遠位端に融合され、前記第1のチューブよりも大きな直径を有する第2のチューブと、を備えたインナーカニューレと、
前記第2のチューブにおけるかん流液通路に取り付けられ、かん流領域における前記外側気管切開チューブの内面と、前記第1のチューブの外面との間に形成された空隙と連通するかん流液ラインと、
前記第2のチューブにおける第1の吸引通路に取り付けられ、前記第1の吸引領域における前記外側気管切開チューブの内面と、前記第1のチューブの外面との間に形成された空隙と連通する第1の吸引ラインと、
前記第2のチューブにおける第2の吸引通路に取り付けられ、前記第2の吸引領域における前記外側気管切開チューブの内面と、前記第1のチューブの外面との間に形成された空隙と連通する第2の吸引ラインと、
前記かん流液ラインとかん流液源との間に連結され、かつ前記第1および第2の吸引ラインと真空源との間に連結された作動装置であって、前記かん流液ラインを前記かん流液源に、前記第1および第2の吸引ラインを前記真空源に制御可能に接続する作動装置と、を備える、かん流管腔内吸引および管腔外吸引カニューレシステム。
【請求項18】
前記第1のチューブは、前記第2の突起部に平行で、前記第2の吸引領域を管腔外かん流領域と管腔外吸引領域とに分割する第3の突起部をさらに備え、前記第2の吸引通路は、前記管腔外吸引領域と連通しており、前記インナーカニューレは、さらに、前記第2のチューブにおける第2のかん流通路に取り付けられ、前記管腔外吸引領域における前記外側気管切開チューブの内面と前記第1チューブの外面との間に形成された空隙と連通する第2のかん流ラインを備える、請求項17に記載のカニューレシステム、
【請求項19】
外側気管切開チューブと、該外側気管切開チューブに挿入されたインナーカニューレと、を備えた気管切開システムの管腔内を、請求項5に記載のかん流管腔内吸引インナーカニューレシステムを用いて洗浄する方法。
【請求項20】
外側気管切開チューブと、該外側気管切開チューブに挿入されたインナーカニューレと、を備えた気管切開システムの管腔外/声門下腔を、請求項17に記載のかん流管腔内吸引および管腔外吸引インナーカニューレシステムを用いて洗浄する方法。
【請求項21】
外側気管切開チューブと、インナーカニューレと、を備え、前記インナーカニューレは、複数の孔と、前記インナーカニューレが前記外側気管切開チューブに挿入されたときに、前記外側気管切開チューブと前記インナーカニューレとの間の空隙を複数の領域に分割する1つ以上の突起部と、を備える気管切開チューブを洗浄する方法であって、
前記複数の領域のうちの第1の領域と連通するように、吸引ラインをインナーカニューレに取り付け、
前記吸引ラインと真空源との間に作動装置を取り付け、前記作動装置は、前記吸引ラインを前記真空源に制御可能に接続し、
前記作動装置を制御して、前記複数の孔のうちの第1の部分、前記第1の領域、および前記吸引ラインを通じて前記インナーカニューレの内腔から吸引する、方法。
【請求項22】
前記複数の領域のうちの第2の領域と連通するように、かん流液ラインを前記インナーカニューレに取り付け、
前記かん流液ラインとかん流液源との間に作動装置を取り付け、前記作動装置は、前記かん流液ラインをかん流液源に制御可能に接続し、
前記作動装置を制御して、前記複数の孔の第2の部分、前記第2の領域、および前記かん流液ラインを通じて、前記インナーカニューレの管腔にかん流液を提供する、ことをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年12月11日に出願された米国仮特許出願番号63/124,599に基づく優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものである。
【背景技術】
【0002】
気管内挿管とは、患者の気道に気管内チューブを挿入し、気管で終端させることである。呼吸チューブは、経口、経鼻、または気管切開(首の皮膚と軟組織を通る挿入経路)を介して挿入され、最終的に気管内で終了する。これらの措置は、一時的または永続的に呼吸または通気をサポートするために行われる。気管内呼吸チューブの装着、使用、ケアに伴うリスクや問題は、不快感や不便さから、重大な医学的リスクや健康状態の悪化に至るまで多岐にわたる。
【0003】
気管切開チューブを安全に使用し、快適に使用するためには、チューブの最も内側にある管腔(すなわち「管腔内」)から分泌物を定期的に排出する必要がある。状況によっては、30分毎の頻度で排液を行う必要がある。鎮静剤を使用していない場合でも、カテーテルを用いた効果的で安全な定期的腔内吸引を介助なしで行える患者はほとんどいないため、この重要な作業を他人に依存することになり、しばしば抑うつ、不安、興奮を引き起こす。介助があったとしても、患者は吸引処置中に不快感を感じることが多い。その理由は2つある。第1に、吸引カテーテルの誤用が多いこと(すなわち、吸引カテーテルが気道の深部/近位に装着されすぎていること)、第2に、患者が呼吸周期に合わせて吸引(陰圧)を行うことができないため、「不意打ち」の吸引が行われ、その結果、息苦しさを感じたり、気道圧が変化したり、咳反射が誘発されたりすることである。
【0004】
図7A図7Cは、気管内チューブの関連する基本的な解剖学的構造の様々な態様、および先行技術の気管切開チューブの特徴を示す図である。図7Aは、様々な種類の気管内チューブを示す患者700の側断面図である。図7Bは、インナーカニューレを有する気管切開チューブの斜視図であり、図7Cは、有窓気管切開チューブおよびインナーカニューレの斜視図である。以下の説明において、図7A図7Cをともに見るのが最適であろう。
【0005】
患者700は、該患者700の肺(図示せず)への気道の一部である気管702を有する。呼吸を支援するために、患者700は、図7Aに示されるいくつかの方法で挿管されえる。挿管は、鼻腔を通って声帯710を過ぎ、気管702に挿入される経路704を介した長めの経鼻気管チューブによって達成されえる。あるいは、経路706を介した同様の長さの経口気管内チューブが、口腔を通って気管702に挿入されてもよい。さらに、短めの気管切開チューブ708を、外科的気管切開領域712を通して気管702に直接挿入してもよい。
【0006】
陽圧または機械的換気の間、気管切開チューブ708を囲む膨張可能なカフ714が、カフ膨張バルブ716、外部監視バルーン718、および関連するチューブ720を介して膨張されて、気管切開チューブ708と気管702との間にシールを提供し、チューブ周囲の空気漏れを防止することができる。これは「カフ付き」チューブと称される。カフ714を、患者700の必要性に応じて、膨張または収縮させうる。このようなカフがない同等のチューブは、例えば、図7Cに示すように「カフなし」チューブと称される。
【0007】
図7Bに示すように、気管切開チューブ708は、該気管切開チューブ708を正しい位置に維持し、一定の機能を提供するために患者700の頸部に対して配置されるフランジ722を含む。取り外し可能なインナーカニューレ724は、いくつかの先行技術の気管切開チューブの追加機能であり、カフ付き気管切開チューブまたはカフなし気管切開チューブのいずれにも組み込むことができる。空気は、気管切開チューブ708の最も内側の管腔(存在する場合は、インナーカニューレ724の内側の側面、または管腔)を介してハブ726を通り患者700と交換される。インナーカニューレ724のハブ726は、フランジ722上のクリップアタッチメント730と係合するクリップ728を含む。
【0008】
図7Cは、有窓気管切開チューブの原理を示す図である。開窓732は、膨張可能なカフが配置される領域734の上方での気管切開チューブ708に含まれる。使用されるならば、対応する開窓736がインナーカニューレ724に含まれうる。開窓732および736によって、空気の流れが可能となり、これにより、患者700はより効果的に話したり咳をしたりすることができる。本明細書において気管切開チューブに適用され、気管切開チューブを用いて説明される方法論、概念、および設計乃至構成は、経鼻気管チューブおよび経口気管内チューブにも適用することができる。
【0009】
先行技術の分泌物管理プロセスのほとんどは、気管切開チューブから分泌物を除去するために吸引のみを使用する。現時点では、気管切開チューブの内腔を安全に洗浄し、分泌物の蓄積、目詰まり、および気道の急性喪失を防止する方法はない。その結果、患者は、気管切開チューブの洗浄が不十分であることに起因して、より高度な治療介入や追加の処置を受ける可能性がある。
【0010】
従来技術の手動吸引ベースのカテーテルを介した管腔内気管切開分泌物の除去も、患者に感染の危険をもたらし、しばしば気道の外傷を引き起こす可能性がある。また、患者や介護者の心理社会的苦痛、患者の自律性の喪失、医療従事者のリソースへの負担、介護者の負担を大きくし、その全員が患者の気道から空気中に浮遊する病原体にさらされる可能性がある。また、このような分泌物除去は頻繁に行う必要があるため、医療従事者や介護者の時間とリソースにさらなる負担をかけるだけでなく、患者が自分自身の治療に消極的になってしまう。
【0011】
かん流および/または吸引機能を組み込んだ現在利用可能な気管切開チューブは、気道内の単一の部位(すなわち、声門下/「カフの上方」、または近位先端)でそうしており、最も一般的には、チューブの内腔内ではない。チューブの内腔を排気するものは、遠位先端部や管腔外部には対処しておらず、さらに、かん流なしで行うため、目詰まりによる切迫した気道損失を招きやすい。これらの器具はいずれも臨床使用において広く受け入れられていないため、目詰まり/気道損失、感染、および標準的な手動式カテーテルベースの腔内吸引システムの負担は、依然として気管切開チューブ治療の主力である。さらに、これらの構成の故障や詰まりを治すには、通常、気管切開チューブ全体を取り外す必要があり、これは危険である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
気管切開チューブのためのかん流管腔内吸引インナーカニューレシステムは、従来のカテーテルベースの管腔内吸引の代わりに、気管切開チューブの吸引単独またはかん流と管腔内吸引の組み合わせのために使用されうる吸引動力システムであってもよい。インナーカニューレは、気管切開チューブ内の複数の位置での管腔内吸引および洗浄を容易にするチャンバ、または領域、および孔を含む。これは、患者、医療従事者、介護者によって、または電子システムを介して、入院患者/病院、または外来患者/外来介護のいずれかの環境で、必要に応じて、あるいは、定期的またはある発動間隔で、適用/作動させることができる。
【0013】
第1の態様では、気管切開チューブとともに使用するインナーカニューレは、気管切開チューブ内に挿入するための第1の直径を有する第1のチューブと、第1のチューブの遠位端に融合され、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2のチューブと、を含み、前記第1のチューブは、さらに、該第1のチューブの管腔内空間と第1のチューブの外面との間の複数の孔と、第1のチューブの外面で、該外面を取り囲む空隙を複数の領域に分割する1つ以上の突起部と、を備え、前記第2のチューブは、該第2のチューブの外面と複数の領域のうちの第1の領域との間の第1の通路と、第2のチューブの外面と複数の領域のうちの第2の領域との間の第2の通路と、を備える。
【0014】
第2の態様では、かん流管腔内吸引インナーカニューレシステムは、外側気管切開チューブと、該外側気管切開チューブの内側に配置されたインナーカニューレとを含む。インナーカニューレは、外側気管切開チューブ内に挿入するための第1の直径を有する第1のチューブと、第1のチューブの遠位端に融合され、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2のチューブと、を含み、前記第1のチューブは、さらに、該第1のチューブの管腔内空間と第1のチューブの外面との間の複数の孔と、第1のチューブの外面で、該外面を取り囲む空隙を複数の領域に分割する1つ以上の突起部と、を含み、前記第2のチューブは、該第2のチューブの外面と複数の領域のうちの第1の領域との間の第1の通路と、第2のチューブの外面と複数の領域のうちの第2の領域との間の第2の通路とを含む。このシステムはまた、第2のチューブにおける第1の通路に取り付けられ、第1の領域と連通するかん流液ラインと、第2のチューブにおける第2の通路に取り付けられ、第2の領域と連通する吸引ラインと、かん流液ラインとかん流液源との間に連結され、かつ吸引ラインと真空源との間に連結された作動装置とを含み、前記作動装置は、かん流液ラインをかん流液源に、吸引ラインを真空源に制御可能に接続する。
【0015】
第3の態様では、かん流管腔内吸引および管腔外吸引インナーカニューレシステムは、外側気管切開チューブであって、その長さに沿って1つ以上の開口部を含む外側気管切開チューブと、外側気管切開チューブの内側に配置されたインナーカニューレと、を含み、前記インナーカニューレは、前記外側気管切開チューブ内に挿入するための長さおよび直径を有する第1のチューブと、第1のチューブの遠位端に融合され、第1のチューブよりも大きな直径を有する第2の二チューブと、備え、前記第1のチューブは、該第1のチューブの管腔内空間と第1のチューブの外面との間の複数の開口部と、第1のチューブの外面をかん流領域と第1の吸引領域とに分割する第1の突起部と、第1のチューブの外面で第2の吸引領域を形成する第2の突起部とをさらに備える。このシステムはまた、第2のチューブにおけるかん流液通路に取り付けられ、かん流領域における外側気管切開チューブの内面と第1のチューブの外面との間に形成された空隙と連通するかん流液ラインと、第2のチューブにおける第1の吸引通路に取り付けられ、第1の吸引領域における外側気管切開チューブの内面と第1のチューブの外面との間に形成された空隙と連通する第1の吸引ラインと、第2のチューブにおける第2の吸引通路に取り付けられ、第2の吸引領域における外側気管切開チューブの内面と第1のチューブの外面との間に形成された空隙と連通する第2の吸引ラインと、かん流液ラインとかん流液源との間に連結され、かつ第1および第2の吸引ラインと真空源との間に連結された作動装置と、を含み、前記作動装置は、かん流液ラインをかん流液源に、第1および第2の吸引ラインを真空源に制御可能に接続する。
【0016】
別の態様では、外側気管切開チューブと、インナーカニューレであって、複数の孔と、インナーカニューレが外側気管切開チューブに挿入されたときに外側気管切開チューブとインナーカニューレとの間の空隙を複数の領域に分割する1つ以上の突起部と、を備えたインナーカニューレと、を有する気管切開チューブを洗浄する方法は、複数の領域のうちの第1の領域と連通するようにインナーカニューレに吸引ラインを取り付け、吸引ラインと真空源との間に作動装置を取り付け、前記作動装置は吸引ラインを真空源に制御可能に接続し、作動装置を制御して、複数の孔の第1の部分、第1の領域、および吸引ラインを通じてインナーカニューレの管腔から吸引する。
【0017】
さらに、本方法は、複数の領域のうちの第2の領域と連通するように、かん流液ラインをインナーカニューレに取り付け、かん流液ラインとかん流液源との間に作動装置を取り付け、作動装置は、かん流液ラインをかん流液源に制御可能に接続し、作動装置を制御して、複数の孔の第2の部分、第2の領域、およびかん流液ラインを通じてインナーカニューレの管腔にかん流液を供給することを含みうる。
【0018】
かん流管腔内吸引インナーカニューレシステムの使用は、必要な場合、または所望の場合、現在の標準的なカテーテルベースの管腔内吸引の使用を妨げるものではない。かん流管腔内吸引インナーカニューレシステムの使用はまた、既存の声門下腔外(例えば、声門下)吸引システムの使用を制限するものではなく、これらの構成を組み込んでもよい。
【0019】
かん流管腔内吸引インナーカニューレシステムの性能が最適でない場合は、気管切開チューブを取り外すことなく、インナーカニューレを取り外して交換することができる。最後に、特定の状況(例えば、機械換気装置に取り付けられている場合、または分泌物を制限するためにフィルタまたはその他の同様なキャップを外部に使用している場合)では、かん流管腔内吸引インナーカニューレシステムは、「閉鎖システム」内でかん流および吸引の両方を達成するため、既存の「開放」タイプのカテーテルベースの気管切開吸引から生じる潜在的な感染性のエアロゾルおよび/または微粒子を低減または排除し、それによって、医療従事者および介護者の呼吸器媒介病原体に対するリスクを低減する。
【0020】
本明細書で開示されるかん流管腔内吸引インナーカニューレシステムの実施形態は、本明細書で以下に説明するように、その新規な構成および閉鎖系での使用を通じてこれらの問題に対処する。例えば、気管切開チューブ内に吸引およびかん流のための別個のチャンバを形成することにより、かん流管腔内吸引インナーカニューレシステムは、現在利用できない方法で管腔内気管切開の吸引およびかん流を達成する。その結果、先行技術の欠点とリスクが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aは、実施形態における、かん流管腔内吸引インナーカニューレの側面図である。
【0022】
図1B図1Bは、図1Aのカニューレの斜視図である。
【0023】
図1C図1Cは、図1Aのカニューレの上面図である。
【0024】
図1D図1Dは、図1Aのカニューレの底面図である。
【0025】
図1E図1Eは、図1Aのインナーカニューレの断面図である。
【0026】
図2A図2Aは、実施形態における、外側管腔を有するかん流管腔内吸引カニューレの側断面図である。
【0027】
図2B図2Bは、図2Aのカニューレシステムの斜視図である。
【0028】
図2C図2Cは、図2Aのカニューレシステムの一部の拡大図である。
【0029】
図3図3は、実施形態における、かん流液接続部と吸引接続部とを有するカニューレの側面図である。
【0030】
図4図4は、実施形態における、かん流管腔内吸引インナーカニューレシステムを示す図である。
【0031】
図5図5は、かん流管腔内吸引インナーカニューレシステムの使用方法を示すフローチャートである。
【0032】
図6A図6Aは、実施形態において、追加の声門外下吸引機能と付属するカフ付き外側気管切開チューブとを組み込んだかん流管腔内吸引インナーカニューレシステムの斜視図である。
【0033】
図6B図6Bは、実施形態における、追加の声門外下吸引機能と付属するカフ付き外側気管切開チューブとを組み込んだ代わりのかん流管腔内吸引インナーカニューレシステムの斜視図である。
【0034】
図6C図6Cは、実施形態における、特に設計されたカフ付き気管切開チューブを伴う、声門下外領域のかん流と吸引との両方を組み込んだかん流管腔内吸引インナーカニューレシステムの斜視図である。
【0035】
図6D図6Dは、実施形態における、有窓外側気管切開チューブと併用するためのかん流管腔内吸引インナーカニューレシステムの斜視図である。
図6E図6Eは、実施形態における、有窓外側気管切開チューブと併用するためのかん流管腔内吸引インナーカニューレシステムの斜視図である。
【0036】
図7A図7Aは、実施形態における、様々なタイプの従来技術の気管内チューブを示す患者の側断面図である。
【0037】
図7B図7Bは、実施形態における、インナーカニューレを有する先行技術の気管切開チューブの透視図である。
【0038】
図7C図7Cは、実施形態における、先行技術の有窓気管切開チューブとインナーカニューレとの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示に係る原理は、気管切開チューブに特に適用されうるので、以下では主にこの観点から説明する。しかし、本開示による原理および態様は、医療または産業で使用される経口気管チューブまたは経鼻気管チューブ、あるいは他のかん流吸引カテーテルにも適用可能であることも理解されるべきである。
【0040】
上記および以下の説明において、「近位」との用語は、患者の肺に近い方、および/または気管切開チューブの肺側先端に近い方を示すために使用される。「遠位」との用語は、患者から遠く離れていること、および/または患者の外側の機器または気管切開チューブの外端に向かっていることを示すために使用される。本明細書で使用されるその他の用語は、以下のように定義される。
【0041】
カニューレ-体腔、管、血管に挿入されるチューブ
【0042】
内腔-カニューレ内部の空間
【0043】
管腔内-カニューレの両端の間で、最も内側の管腔内。
【0044】
管腔外-カニューレの外側、またはカニューレのどちらか一方もしくは両方の端部
本明細書で使用される場合、管腔外とは、どのような状況においても、最も外側のチューブ、あるいはチューブまたはカニューレのいずれかの端部に適用される。
【0045】
声門下-一般的に、声門の下に位置する。
本明細書では、声門下とは、気管チューブの膨張可能なカフの上方で声帯の下方に位置する気管の管腔外領域を表す。
【0046】
気管切開チューブを含む気管内チューブの最も内側の気道内腔は、新生児用チューブでは、内径2mmから、成人では、内径およそ14mmまでの範囲にあり、低い方の範囲は、患者の気道への、および気道からの効果的な空気の流れ/換気によって制限される。サイズの上限は、気管内チューブまたは気管切開チューブの外径に影響され、気道(具体的には声帯/声門を越えた気管)に適合する能力は、一般におよそ15mm以下のサイズに制限される。
【0047】
本明細書で説明するかん流管腔内吸引インナーカニューレシステムは、一般に、気管切開チューブとインナーカニューレとを含む。インナーカニューレは、気管切開チューブ内に挿入され、気管切開チューブの吸引とかん流の両方を提供する。図1A図1Dは、実施形態におけるインナーカニューレ100を示す図である一方、図2A図2Cは、実施形態における、気管切開チューブと組み合わせて、かん流管腔内吸引インナーカニューレシステム200を形成するインナーカニューレ100を示す図である。
【0048】
図1Aは、実施形態における、管腔内吸引およびかん流を伴うインナーカニューレ100の側面図である。図1B、1C、および1Dは、それぞれ、インナーカニューレ100の斜視図、上面図、および底面図である。図1Eは、線1E-1Eにおける図1Aの断面図である。図1A~1Eを、以下の説明において一緒に見るのが最適である。
【0049】
インナーカニューレ100は、硬質プラスチックチューブ104に融合された単一の湾曲した半硬質プラスチックチューブ102を含む。インナーカニューレ100は、(図2A図2Dに示すように)患者の既存の気管切開チューブ202に、またはインナーカニューレ100と共に使用するために特別に設計された気管切開チューブに適合しうる。外側気管切開チューブ202は、従来技術で知られている陽圧換気(すなわち、「カフ付き」または「カフなし」の気管切開チューブ)で使用するためのバルーンカフ(図6のカフ604など)を備えていても、いなくてもよい。インナーカニューレ100を、患者の本来の気管切開チューブ202に、または付属の特別に設計された気管切開チューブに、適切な保持クリップ106で固定しうる。インナーカニューレ100は、例えば、患者のニーズに、または気管内チューブでの使用に応じて、様々な直径、厚さ、および長さを有することができる。実施形態では、半硬質プラスチックチューブ102は、硬質プラスチックチューブ104よりも小さい直径を有する。管腔内空間132は、インナーカニューレ100の内部全体に形成されている。
【0050】
インナーカニューレ100は、硬い外側気管切開チューブ202の内腔に接するように特定の配置および高さで、チューブ102の外面に連続して隆起した突起部112を含む。突起部112は、チューブ102の外面をいくつかの領域124,126,またはチャンバに分割する。チューブ102がチューブ104に融合しているポイント114から出発して、突起部112は、チューブ102の長さに沿って近位方向に延び、ポイント116でチューブ102の外周を回り、次いでチューブ102に沿って遠位方向に戻る。チューブ104に到達する前に、突起部112は、再びポイント118でチューブ102の外周を回り、ポイント120まで近位方向に延びた後、チューブ102を逆に戻って、チューブ102がチューブ104に融合するポイント122で終わらせられる。
【0051】
突起部112によって形成されたチューブ102の領域124,126は、それぞれ、外表面と管腔内空間132との間の一連の開口部を含んでおり、空気および/または流体の移動を可能にしている。領域124は、孔125を含んでおり、チューブ102の両側に位置している一方で、領域126は、スロット127を含み、チューブ102の上下に位置する。孔とスロットとが示されているが、これは説明のためである。実施形態では、孔とスロットの位置は逆でもよい。さらに、開口部の全てがスロットであってもよいし、全てが孔であってもよいし、孔125および127が機能を容易にするために様々なサイズまたは他の形状であってもよい。同様に、突起部の形状および向きは、例示の目的でのみ図1A図1Eに示されており、本明細書に記載される機能を容易にするために、異なって構成されてもよい。
【0052】
実施形態では、硬質プラスチックチューブ104は、保持クリップ106から90度に配置された通路128および130を含むが、通路128および130がそれぞれ領域124および126に接続する限り、他の配置も考えられる。通路128および130は、チューブ104を通るスロットまたは密閉通路であってもよい。通路128は、チューブ104の上部外面から、チューブ102に隣接するチューブ104の近位端の開口部まで斜めに延びている。実施形態では、通路128は、領域124におけるチューブ102と、外側気管切開チューブ202の隣接する内面と、の間の突起部112によって形成される空隙と連通する。孔125は、領域124の空隙と管腔内腔132とを連通する。同様に、通路130は、通路128とは反対側のチューブ104の下部外面から、チューブ102に隣接するが通路128の開口部とは反対側のチューブ104の近位端の開口部まで斜めに延びている。実施形態では、通路130は、領域124ではなく領域126におけるチューブ102と外側気管切開チューブ202の隣接する内面と、の間の突起部112の間に形成される空隙と連通する。領域126は、スロット127を含み、このスロットも領域126の空隙と管腔内空間132とを連通する。
【0053】
図3に関連してさらに詳細に説明すると、様々な直径、厚さ、および長さを有する可撓性プラスチックチューブを、チューブ104の上面の通路128に接続してもよい。さらに後述するように、様々な直径、厚さ、および長さを有する可撓性プラスチックチューブを、チューブ104の下面の通路130に接続してもよい。上面および下面への言及は説明のためであり、通路128および130は、チューブ104の周囲の任意の位置に配置されてよい。
【0054】
図2A図2Cは、外側気管切開チューブ202に挿入され、かん流管腔内吸引インナーカニューレシステム200を形成するインナーカニューレ100を示す。以下で特に取り上げない図2A図2Cの構成要素は、図1A図1Eに関連して上述した構成要素と同じである。
【0055】
システム200は、外側気管切開チューブ202を含み、該外側気管切開チューブは、患者の既存の気管切開チューブ、またはインナーカニューレ100と共に使用するために特別に設計された気管切開チューブのいずれかを表す。実施形態では、特別に設計された外側気管切開チューブ202は、キットの一部としてインナーカニューレ100に適合しうる。例えば、外側気管切開チューブ202は、突起部112と係合して、インナーカニューレ100の機能を向上させるくぼみをその内面に有しうる。図2Aでは、外側気管切開チューブ202の一部のみが示されている。外側気管切開チューブ202の一部は、チューブ102、および突起部112と外側気管切開チューブ202の内面との間の係合を示すために切り取られている。さらに、外側気管切開チューブ202は、チューブ104に向かって延び、保持クリップ106と係合するための機構を提供する。この機構は、いくつかの異なる形態を有しうるが、図示を明瞭にするために省略されている。図2Bは、完全な外側気管切開チューブ202を有するシステム200を示している。
【0056】
外側気管切開チューブ202の長さは、図2Bに示すように、インナーカニューレ100のチューブ102とほぼ等しい。外側気管切開チューブ202の直径は、突起部112がポイント134で示すように外側気管切開チューブ202の内面に接して、領域124および126に分割された空隙を形成するように選択される。チューブ104における通路128の端部136は、領域124と連通する一方、通路130の端部138は、チューブ104における領域126と連通する。図1Cおよび図1Dにより明確に示されるように、領域126は、チューブ102の反対側の側面での領域を含む。実施形態において、突起部112は、上述した領域またはチャンバを依然として提供しつつ、外側気管切開チューブ202の一部として内側面に形成されてもよい。あるいは、突起部112は、インーカニューレ100および外側気管切開チューブ202の両方の一部として形成されて、単一の分離不可能な装置を形成してもよい。
【0057】
操作において、インナーカニューレ100は、患者の気管切開チューブ内の分泌物の吸引および除去に使用してもよい。分泌物は、定期的に蓄積され、しばしば、腔内カテーテルに基づく吸引手順を使用する必要があるが、これは、現在のところ、典型的には、別の個人によって実行され、しばしば、粘性が高すぎて容易に回収することができない。インナーカニューレ100は、既存の気管切開チューブまたは特別に設計された付属の気管切開チューブに適合させうる。患者の本来の気管切開チューブ(または付随する気管切開チューブ)用の保持クリップ106で一旦固定されると、次に、吸引単独、またはかん流を伴う吸引のいずれかが適用されて、患者の気管切開チューブの隣接する近位端だけでなく、管腔内腔から分泌物を除去することができる。実施形態では、吸引、または吸引およびかん流は、気管支外の声門下領域にも適用しうる。かん流は、例えば、生理食塩水などのかん流液を用いて行うことができる。実施形態では、粘液溶解剤、抗生物質、抗真菌剤、ステロイド、または他の薬剤などの他の溶液を使用してもよい。かん流と吸引の組み合わせはまた、気管切開チューブおよび吸引室の内腔を洗浄し、したがって、分泌物を薄め(粘度を低下させ)、これらの分泌物の吸引およびクリアランスを容易にし、蓄積および閉塞を防止するとともに、チューブおよび気道組織の病原性微生物のコロニー形成の負担を減少させる。
【0058】
実施形態では、本明細書に開示されたカニューレのいずれかを使用する方法が、図3および図4に関連して説明される。これらの図は、以下の説明において一緒に参照されるのが最適である。説明の目的で、インナーカニューレ100は、外側気管切開チューブ202なしで描かれている。インナーカニューレ100は、(a)患者の既存の気管切開チューブ、または(b)付属の特別に設計された気管切開チューブのいずれかに適合する((a)および(b)の両方のオプションは、本明細書に開示されるように、かん流管腔内吸引インナーカニューレシステム200によって表される)。患者の本来の気管切開チューブ、または付属の特別に設計された気管切開チューブの保持クリップ106で固定されると、吸引ライン302の近位端が通路130に受け入れられる。吸引ライン302は、標準的な吸引適用先端部304と一体となって終端する可撓性プラスチックチューブであってもよい。かん流液ライン306の近位端は、通路128によって受け入れられる。かん流液ライン306は、例えば、ルアーロックなどの標準的な静脈内(IV)チューブ接続部308と一体となって終端する可撓性プラスチックチューブであってもよい。実施形態では、吸引ライン302およびかん流液ライン306は、(a)機械的換気の設定における陽圧の喪失(すなわち、漏れ)、(b)かん流液の自然発生的な流れ、および(c)装置への吸引の自然発生的な適用を防止する静止/フェールセーフ閉鎖位置を有する。
【0059】
図4は、追加装置と接続して、能動使用システム400を形成したかん流管腔内吸引インナーカニューレシステム200を示す図である。能動使用システム400は、使用中のシステム200の一例である。吸引ライン302の遠位端は、作動装置404の吸引ライン入力402に適用される。作動装置404の遠位側の吸引ライン406は、真空源容器410の入力408に連結されている。容器410は、例えば、病院の壁掛け真空継手や携帯用吸引ユニットなどの連続吸引/負圧源に接続されうる。
【0060】
同様に、インナーカニューレ100からのかん流液ライン306は、作動装置404の適切なかん流液ライン入力412に連結される。作動装置404の遠位にあるかん流液ライン414は、かん流液ボトル416の底までのストローを備えたキャップ418を介してかん流液ボトル416に適用される。キャップ418の通気口420を、使いやすく、抵抗の少ないかん流液の流れを促進するために開けていてもよい。かん流液ボトル416は、患者の近くの床に置くか、または患者の気管切開チューブの下方に少なくとも1垂直フィート(または作動装置が開いているときに重力流を防止するように決定された他の距離)を常に保つ必要がある。実施形態では、かん流液ボトル416は、例えば、ベントオプション付きかん流液ボトルであってもよいし、または患者ベッドまたは独立スタンドに取り付けられた吊り下げバッグであってもよい。
【0061】
図4のすべての構成要素が適切に固定されると、作動装置404は、ボタン422および424の動作を通じて、吸引のみ、または吸引とかん流との組み合わせのいずれかの動作を実行するように制御される。ボタン424を使用する吸引のみの動作は、インナーカニューレ100の管腔内空間132内から、インナーカニューレ100と気管切開チューブ202(図2A図2D)の内面との間の突起部112によって形成された領域126を通って、空気および分泌物を吸引し、ライン302および406を通って遠位側に出て、最終的に真空源容器410に至り、管腔内分泌物を除去する。作動装置404は、ボタンに関連して記載されているが、本明細書に記載された機能を提供するための作動装置404および能動使用システム400の動作を制御するための任意の機構を使用することができる。作動装置404および能動使用システム400の一部として、追加のボタンおよび機能を提供することもできる。
【0062】
吸引ボタン424とかん流ボタン422の両方が同時に動作した場合、かん流液ボトル416の遠位側を起源とするかん流液は、吸引ライン302および406を介して加えられる陰圧により、ライン414および306を介して吸引される。かん流液は、インナーカニューレ100と外側気管切開チューブ202の内面との間の突起部112によって形成された領域124に引き込まれる。かん流液は、孔125を通ってインナーカニューレ100の管腔内空間132に入り、管腔内の空気および分泌物と混合し、スロット127(図1A図1D)を通って領域126に出る。かん流液のこの流れは、分泌物を薄め、インナーカニューレ100の管腔内空間132をすすぎ、最終的に真空源容器410に至る。
【0063】
作動装置404は、制御ボタンまたは他のアクチュエータと、気管切開カニューレからの吸引ラインおよびかん流液ライン、およびかん流液および吸引のそれぞれの供給源との間の接続と、を提供する限り、多くの方法で設計することができる。実施形態では、作動装置404は、ボタン422および424を含み、これらは動かしたり/押下したりすることで整列させることができる。もっと多くまたはもっと少ないボタンが設けられてもよい。作動装置404のアウタープラスチックハウジングは、吸引ライン302用の入力402と、反対側でライン406用の出力と、を含み、インナーカニューレ100に吸引を提供するものとして示されている。作動装置404のアウタープラスチックハウジングはまた、かん流液ライン306用の入力412と、反対側で、キャップ418を通って標準かん流液ボトル416に入るかん流液ライン414用の出力と、を有する。これらの入力および出力は、作動装置404の任意の便利な位置に設けられうる。作動装置404は、ボタン424が押下されたときのみ、整列された2つのライン302および406の内腔が流れを可能にし、ボタン424が作動していないときは流れを阻止するように機能する。同様に、ボタン422が押下されたときにのみ、整列されたライン306および414の内腔が流れを可能にする。実施形態では、作動装置404は、吸引の適用なしにかん流液の流れを阻止するが、吸引のみの使用に対応する。ライン302および3064をそれぞれライン406および414に接続するための他の作動装置機構も考えられる。さらに、作動装置は、他の医療装置の構成要素として提供されてもよい。
【0064】
患者は、吸引がない場合にかん流液の流れを阻止する装置404を作動させることと、かん流液ボトル416を少なくとも1フィート(12インチ)(または、自然流下を阻止するように他の決められた距離に)保つことを確実にすること、の両方によって、インナーカニューレ100の管腔内空間132へかん流液のみが流れることから保護される。言い換えれば、かん流液ボトル416だけでなく、吊り下げバッグまたはかん流液を供給するための他の器具は、かん流液の流れを制限する機構がなんらない場合には、常に気管切開チューブの垂直高さより下に位置していなければならない。かん流液の流れを制御する他の手段も考えられる。例えば、場合によっては、作動装置404の変形を使用することにより、かん流液は、真空源411によって生成される負圧のみによって単純に引き込まれるのではなく、ポンプまたは加圧されたかん流液キャニスタによって、連続的または脈動的に、先に説明したのと同じ流れパターンを通して能動的に押し出される。このポンプは、作動装置の近位または遠位のいずれかに配置されえる。実施形態では、インナーカニューレ100における孔125は、ベースラインでは閉じたままであり、作動装置の近位にあるかん流液ラインの圧力の上昇に伴って開く、この領域の材料における単純なスリットまたは欠陥のような、一方向弁または圧力リリーフタイプの弁を含んでもよい。
【0065】
実施形態において、能動使用システム400は、故障に対する追加の安全装置を含んでいてもよい。かん流または吸引が失敗した場合、流量センサー(図示せず)は、かん流液の過剰なまたは予期せぬ流量が検出されたかどうかを監視し、アラーム、または他の通知、または停止手段を提供する。過剰なかん流液の流れは、インナーカニューレを取り外すことで直ちに停止させうる。バルブ、流量制限器、および機械的または電気的な流量および圧力センサーもまた考えられる。
【0066】
故障した場合、または定期的なケアのために、インナーカニューレ100を、クリップを外して取り外し、廃棄し、新しいカニューレと交換しうる。従来のカテーテルによる腔内吸引は、インナーカニューレ100を装着したままでも、装着しなくても行うことができる。また、人工呼吸器/陽圧源に接続したままでも、接続しないままでも、操作が可能であることも注目すべき点である。さらに、操作は、カフ付きまたはカフなしのチューブで、または柵状または非柵状の気管切開チューブのいずれでも実施できる。作動装置404の制御を、患者、医療従事者、または介護者が行うことができる。実施形態では、作動装置404は、また、患者、医療従事者、介護人の要望に応じて、または自動化されたスケジュールで、または特定の監視入力条件が満たされて電子監視システムに認識された時点で、電子制御装置によってボタン422および424の作動/押下を保持および適用するように設計された機構によって作動させることもできる。かん流液ボトル416は、それが枯渇したとき、または設定されたスケジュールの一部として交換しうる。さらに、いずれの構成要素も、設定されたスケジュールの一部として、または患者、医療従事者、介護者が必要と判断した際に、または電子監視システムまたは確立されたプロトコルによって指示された際に、取り外して交換することができる。
【0067】
実施形態において、かん流腔内吸引インナーカニューレシステムを製造するために、様々な方法が使用されうる。例えば、インナーカニューレ100またはシステム200は、金型押し出しによって、または固体プラスチックロール材料をカニューレ上に熱的および/または化学的に付着させて隆起した突起の構成を与えることによって作成しうる。チューブ102上の孔125およびスロット127は、金型押出成形によって、または熱、孔あけ、切断、研削、もしくは他の方法で材料を減じることによって作成されえる。チューブ102は、硬質プラスチックチューブ104と熱的および/または化学的に融合してもよい。チューブ102と104とを、一体として製造することもできる。かん流液/かん流ライン306および吸引ライン302は、硬質プラスチックチューブ104の所定の位置に熱的および/または化学的に融合してもよい。3Dプリントのような付加的方法も考えられる。
【0068】
図5は、かん流管腔内吸引インナーカニューレシステム200を使用する方法500を示すフローチャートである。方法500は、ステップ506および508を含む。実施形態では、方法500は、また、ステップ502および504のうちの少なくとも1つを含む。
【0069】
ステップ502では、インナーカニューレ100を外側気管切開チューブ202に挿入して、かん流管腔内吸引インナーカニューレシステム200を作成する。ステップ502の一例では、インナーカニューレ100は、既存の外側気管切開チューブ202または特別に設計された付属の気管切開チューブに適合する。インナーカニューレ100は、保持クリップ106で患者の本来の気管切開チューブ202または付属の気管切開チューブに固定される。
【0070】
ステップ504では、吸引ラインとかん流液ラインとがインナーカニューレ100に接続される。ステップ504の一例では、吸引ライン302がチューブ104における通路130に取り付けられる。実施形態では、かん流液ライン306は、チューブ104における通路128に取り付けられる。実施形態では、吸引ライン302およびかん流液ライン306の一方または両方を、チューブ104に取り外せないように取り付けるか、または融合してもよい。
【0071】
ステップ506では、吸引ラインとかん流液ラインとが作動装置を介して真空源とかん流液源に接続される。ステップ506の一例では、吸引ライン302が作動装置404および吸引ライン406を介して真空源容器410に接続される。かん流液ライン306は、作動装置404およびかん流液ライン414を介してかん流液ボトル416に接続される。
【0072】
ステップ508では、作動装置404を使用して、インナーカニューレ100またはシステム200の吸引のみを行うか、またはかん流とともに吸引を行う。ステップ508の一例では、作動装置404のボタン424を押して、吸引ライン302を吸引ライン406に接続し、患者の気管切開チューブ202の管腔内空間132から分泌物を除去する。さらに、かん流液ボタン422を押して、かん流液/かん流を吸引と組み合わせ、気管切開チューブの管腔内空間132および領域126を洗浄し、分泌物を薄めて、閉鎖系内での容易な吸引および洗浄を可能にする。作動装置404は、患者、病院関係者、または他の介護者が制御しうる。実施形態では、作動装置404を人工呼吸器(図示せず)内に組み込み、人工呼吸器の動作と協働するようにプログラムしてもよい。さらに、作動装置404は、動作ボタン(または他の方法)の作動/押下を適用するために電子制御装置と共に使用してもよい。さらなる例としては、神経変性または麻痺状態(例えば、筋萎縮性側索硬化症-ALS、外傷など)を有する動けない患者が使用するような、眼球制御装置または神経統合装置を介した制御が挙げられる。これらの実施形態のいずれにおいても、作動装置は、患者、医療従事者、介護者による要望に応じて、または自動化されたスケジュールで、または特定の監視入力条件が満たされて電子監視システムに認識された時点で、作動させることができる。実施形態において、これは、さらなる柔軟性を提供し、介護負担およびリソースを減少させ、エアロゾル化粒子への他の人の曝露を最小限にする。
【0073】
気管切開チューブの膨張したカフの上の領域における口腔および咽頭分泌物の蓄積は、分泌物の肺への微小吸引につながり、人工呼吸器補助肺炎(VAP)の発症に関連している。この理由から、本明細書で説明する管腔内かん流と吸引を組み込みつつ、この領域に管腔外声門下吸引のみ、またはかん流と吸引とを組み合わせた、いくつかの追加的な実施形態が考えられる。これらの実施形態を図6A図6Cに示す。さらに、本明細書に記載されるようなかん流管腔内吸引インナーカニューレシステムはまた、有窓外側気管切開チューブと共に使用されてもよく、追加の実施形態が、図6D図6Eに示される。
【0074】
図6Aは、図1A図1Dに示すようなインナーカニューレ100が、追加の吸引孔606が設けられたカフ604を有する外側気管切開チューブと共に使用されてもよいことを示す図である。単一のまたは複数の吸引孔606が、声門下の領域、すなわち、図7に示すように、カフ付き外側気管切開チューブ602のカフ604の上方で、かつ声帯の下方で、カフ付き外側気管切開チューブ602に設けられる。吸引孔606は、インナーカニューレ100の対応する領域126に重なるように、カフ付き外側気管切開チューブ602の上面に配置され、かくして、管腔内の吸引を声門下腔まで拡張しうる。カフ付き外側気管切開チューブ602の反対側には、対応する領域126と一直線上に、追加の吸引孔606(図示せず)を設けることができる。しかしながら、換気に使用される気管切開チューブの内腔の空間は、この設計によって作成されたこの管腔外吸引通路と連続しているため、陽圧換気中に声門下腔への空気漏れが存在し、不快感やその他の問題のある副作用が生じる可能性がある。さらに、これにより、声門下の分泌物が腔内空間に入る経路が形成され、分泌物が下気道に誤嚥される可能性がある。これらの欠点のため、声門下吸引、および声門下かん流と吸引との組み合わせの2つの付加的な実施形態が考えられ、図6Bおよび図6Cに示されている。
【0075】
図6Bの実施形態では、インナーカニューレ608は、インナーカニューレ100の改良版である。以下の説明は、添付の図面が参照され、異なる図面における同じ数字は、特に断らない限り、同じまたは類似の要素を表す。チューブ104には、声門下吸引ライン(図示せず)を取り付けるための追加の通路610が形成される。通路610は、通路130の一例である。声門下吸引は、インナーカニューレ上の突起部614によって形成された領域612で起こる。突起部614は、インナーカニューレ608と外側気管切開チューブ616との間に領域、またはチャンバを形成するという点で、突起部112と類似している。突起部614は、チューブ104から始まり、インナーカニューレ608の長さに沿って近位方向に延び、ポイント618でインナーカニューレ608の外周を回り、次いで、インナーカニューレ608の長さに沿って遠位方向に戻って延びて、チューブ104で終端する。突起部112は、図6Bに示されるように再構成され、管腔内吸引、ま
【0076】
とりわけ、領域612には、領域126にあるような孔またはスロットが存在せず、したがって、領域612または外側気管切開チューブ616の外側の管腔外空間と、インナーカニューレ608の管腔内空間との間には連通が存在しない。その代わりに、スロット620が、領域612を覆うように外側気管切開チューブ616に配置される。図4に関連して説明したような作動装置の個別のまたは類似の制御により、吸引が通路610を通して加えられると、管腔外声門下空間の分泌物が吸引により除去される。図6Bの実施形態は、管腔外声門下空間への吸引のみを提供する。チューブ104における通路128を、図1A図1Dに示される位置からずらしてもよいが、依然として領域124と連続しており、通過領域622を介してインナーカニューレ608のかん流空間の反対側と連通している。したがって、管腔内かん流の目的で、インナーカニューレの先に説明した孔のすべてに吸引およびかん流を供給しながら、新しい吸引経路が形成される。この設計では、優れた管腔内吸引の小さな領域が犠牲になる。
【0077】
図6Cの実施形態は、依然として管腔内吸引とかん流の両方を達成しつつ、管腔外声門下領域へのかん流と吸引の両方を組み込んでいる。この実施形態では、チューブ104における通路128は再び側方に移動されるが、図6Bと同じ方法で、図6Bに示されるような突起部112の同じ設計を介して領域124と連続したままである。図6Cでは、突起部614は、内側突起部624および外側突起部626を含む2つの平行な隆起した突起部と置き換えられている。内側突起部624および外側突起部626の両方とも、突起部614について上述したように、チューブ104から始まり、チューブ104で再び終端する。これにより、内側突起部624内に領域628が形成され、内側突起部624と外側突起部626との間に領域630が形成される。領域124および126と同様に、領域628および630は、インナーカニューレ632と外側気管切開チューブ634との間にチャンバを形成する。領域628または630のいずれにも、インナーカニューレ632の管腔内空間と連通するための孔またはスロットはない。チューブ104における通路638は、吸引ライン(図示せず)に接続され、外側気管切開チューブ634における開口部640を介して管腔外声門下領域に吸引を提供するための領域628と連続している。チューブ104の通路642は、かん流ライン(図示せず)に接続され、外側気管切開チューブ634における開口部644および646を介して管腔外声門下領域にかん流を供給するための領域630と連続している。図4に関連して上述したように、作動装置は、供給/ボトル416からのかん流液の流れを通路642を通して引き込み、声門下腔外分泌物と混合させ、次いで通路638を通して引き込んで、同一または別個の吸引キャニスタまたは真空源容器410で終わらせうる。声門下吸引のためのインナーカニューレ632およびチューブ104の隆起した突起部および入口欠陥の他の同様の変形および再配置が考えられうる。したがって、管腔内かん流の目的のために、インナーカニューレにおける先に説明した全ての孔に吸引とかん流を供給しながら、かん流液の流れの新しい経路が作られる。
【0078】
図6Dは、有窓外側気管切開チューブ650と共に使用するためのかん流管腔内吸引インナーカニューレ648の実施形態を示す図である。有窓外側気管切開チューブ650は、呼吸能力および会話能力を評価するために、特定の臨床シナリオにおいて所望されえる。インナーカニューレ648は、このタイプの外側気管切開チューブの設計、または特別に設計された付属の外側気管切開チューブに対応している。外側気管切開チューブ650は、図示のようにカフ付きでも、カフなしでもよい。 外側気管切開チューブ650の開窓654の領域におけるインナーカニューレ648上に、隆起した固いブロック状のプラットフォーム652が形成される。プラットフォーム652は、外側気管切開チューブ650の内面に接するような大きさである。このようにして、患者の気道から声門下領域への、および声門下領域からの空気の流れは遮断される一方で、上述したように、突起部112および領域124および126を使用して、かん流および吸引が依然として提供されえる。この遮断は、時として所望される。
【0079】
あるいは、外側気管切開チューブの開窓を通して患者の気道へ、およびそこから声門下領域への空気の流れが望まれることもある。これに対処するために、図6Eに示す代替実施形態は、開窓654を通る空気の通過を可能にする有窓外側気管切開チューブでの使用が考えられている。図6Eにおいて、かん流管腔内インナーカニューレ656は、外側気管切開チューブ650の上に重なる開窓654と同じ領域および形状のほぼ円形または卵形の突起部658を含む。この実施形態では、インナーカニューレ656の内側における管腔内空間への突起部658内の付属する開口は意図的である。
【0080】
図6A図6Eの実施形態のいずれも、本明細書で先に説明した管腔内空間へのかん流機能または吸引機能を損なうものではない。
【0081】
能動的使用システム400は、人工呼吸器または気管切開チューブフィルタとともに使用される場合は閉鎖システムであり、フィルタなしで使用される場合はほぼ閉鎖システムであるため、エアロゾル化した気道粒子を減少させる。いずれにせよ、これにより、呼吸エアロゾルや粒子が減少し、標準的な気管切開治療の固有のリスクである他人への感染リスクも減少する。
【0082】
故障の場合、または定期的なケアの場合に、インナーカニューレ100は、外側気管切開チューブを交換する必要なく、クリップを外して取り外し、廃棄し、新しいカニューレと交換することができる。従来のカテーテルによる管腔内吸引は、インナーカニューレ100が所定の位置に設置されていても、設置されていない状態でも実行されえる。
【0083】
インナーカニューレ100またはシステム200に、多くの変更を加えてもよい。例えば、チューブ102に追加の突起部を使用して、さらなる領域、または監視装置および/または薬物搬送のためのチャンバ/導管を形成してもよい。チューブ102上の突起部112は、かん流チャンバおよび真空チャンバの異なるパターンおよびその後の異なる形状に合わせて再構成することができ、これにより、それらの機能が変化する可能性がある。同様に、チューブ104における通路を、異なるパターンまたは形状に再構成して、吸引チャンバにおけるかん流の機能を可能にさせうる。突起部112によって、気道監視装置および/または測定の目的のために、または薬物(液滴、エアロゾルなど)を搬送するために、患者の気道と外部環境との間の連通が可能にされうる。
【0084】
外側気管切開チューブ202は、挿入の容易さ、異なるまたは改善された機能、または洗浄を容易にするのに役立つ溝または凹凸を有するように構成されえる。チューブ102の孔および/またはスロットの位置、サイズ、パターン、および形状は、液体の流れおよび吸引性能を変化させるために再構成しうる。実施形態では、インナーカニューレ100は、操作性能をさらに高めるために(外側の気管切開チューブ202の先端を越えて)長くしたり、(202の内腔内まで)短くしたりすることができる。
【0085】
かん流および吸引のためのラインは、本発明の硬質プラスチック管腔上の異なる位置、直径、長さ、および接続によって、同じ吸引を達成するように変更しうる。保持クリップの形状および構成、内腔および突起部のサイズ、長さ、および既存の開窓は、これらの点の一部またはすべてにおいて異なる、現在利用可能な既存の気管切開チューブと協働するように適用されうる。
【0086】
かん流管腔内吸引インナーカニューレシステムは、破片、分泌物、または他の物質の蓄積の結果としてチューブの内腔を頻繁に交換する必要がある他の用途または技術分野で;あるいは、交換可能な内腔/カニューレを持たないが、現在管腔内カテーテルベースの吸引によって管理されているような、システムの損傷または故障につながる詰まりを防ぐ利点がある同様のシステムで使用しうる。これは、医療現場でも、非医療現場でも可能である。
【0087】
医療環境では、かん流管腔内吸引インナーカニューレシステムは、外部環境と連通する他の医療機器/インプラントチューブ、例えば、口腔気管内チューブ、鼻気管チューブ、胃瘻チューブ、人工肛門チューブ、または腎瘻チューブ、腹腔内管腔、外科用ドレーン、または医療における他のそのような用途に適用されうる。かん流管腔内吸引インナーカニューレシステムは、入院患者および外来/携帯可能な設定の両方を含む多くの異なる設定で使用されうる。
【0088】
かん流管腔内吸引インナーカニューレシステムのこの機能は、記載された機能を監視および/もしくは作動させるコンピュータ、機械、または他の電子的手段に向けられるか、またはこれらによって実行される。
【0089】
かん流管腔内吸引インナーカニューレシステム、および記載された、暗示された、または結果として生じるその使用は、有用または価値がある組成物を生成しうる。その使用により生成される分泌物のモニタリングは、医療提供者にとって診断に有用であろう。さらに、患者の気道内に追加の器具を導入することなく、検出または培養できる特定の病原体の存在について分泌物を検査することもできるため、追加の処置によるリスクが低減される。
【0090】
機械または電子制御の有無にかかわらず、かん流管腔内吸引インナーカニューレシステムの定期的な実施または自動化された使用によって得られる健康転帰データは、患者ケアプロトコルの作成、患者の罹患率および/または死亡率の低減、および患者ケアアルゴリズムの開発において有用な項目となりうる。気道衛生が改善された結果、患者の健康状態が改善されえて、これは気管切開チューブを装着した患者の標準治療として認められている。
【0091】
かん流管腔吸引インナーカニューレシステムの機能性は、かん流液源またはその他のかん流溶液源と陰圧(真空)源とが適切に固定され、接続されていることのみを必要とする。安全で快適な機能は、かん流液と吸引の作動制御によって向上されえる。
【0092】
上記の方法およびシステムは、本明細書の範囲から逸脱することなく変更することができる。したがって、上記の説明に含まれる事項または添付図面に示される事項は、例示的なものとして解釈されるべきであり、限定的な意味ではないことに留意すべきである。ここで、特に断りのない限り:(a)「例示的な」という形容詞は、例、実例、または説明として役立つことを意味し、(b)「実施形態では」という表現は、「特定の実施形態では」という表現と等価であり、全ての実施形態を指すものではない。以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載されたすべての一般的特徴および特定の特徴、ならびに、言葉の問題として、その間に該当すると言えるかもしれない、本方法およびシステムの範囲に関するすべての記載を網羅することを意図している。
【0093】
当業者であれば、本明細書で論じる原理の範囲内においてなお様々な意図された機能のための代替構成が考えられるので、説明したかん流チャンバおよび吸引チャンバの開窓/構成/通路/容積/形状の位置またはサイズを再構成することができる。
【0094】
特徴の組み合わせ
上述した特徴および以下に請求する特徴は、本明細書の範囲から逸脱することなく、様々な方法で組み合わせることができる。以下に列挙された例は、考えられるいくつかの非限定的な組み合わせを示している。
【0095】
(A1)気管切開チューブとともに使用するインナーカニューレであって、前記気管切開チューブに挿入するための第1の直径を有する第1のチューブと、前記第1のチューブの遠位端に融合され、前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2のチューブと、を備え、前記第1のチューブは、さらに、該第1のチューブの管腔内空間と前記第1のチューブの外面との間の複数の孔と、前記第1のチューブの外面で、該外面を取り囲む空隙を複数の領域に分割する1つ以上の突起部とを備え、前記第2のチューブは、前記第2のチューブの外表面と前記複数の領域のうちの第1の領域との間の第1の通路と、前記第2のチューブの外表面と前記複数の領域のうちの第2の領域との間の第2の通路とを備えるインナーカニューレ。
【0096】
(A2)(A1)のインナーカニューレにおいて、第2のチューブは、前記インナーカニューレを前記気管切開チューブに取り付けるための保持クリップをさらに備える。
【0097】
(A3)(A1)または(A2)のインナーカニューレにおいて、前記第1の通路は、前記第1の領域と前記第2のチューブの外面との間に延びており、かつかん流液源に連結されたラインに接続可能である。
【0098】
(A4)(A1)~(A3)のインナーカニューレにおいて、前記第2の通路は、前記第2の領域と前記第2のチューブの外面との間に延びており、かつ真空源に連結されたラインと接続される。
【0099】
(B1)外側気管切開チューブと、(A1)のインナーカニューレと、前記第2のチューブの前記第1の通路に取り付けられ、前記第1の領域と連通するかん流液ラインと、前記第2のチューブの前記第2の通路に取り付けられ、前記第2の領域と連通する吸引ラインと、前記かん流液ラインとかん流液源との間に連結され、かつ前記吸引ラインと真空源との間に連結された作動装置と、を備えたかん流管腔内吸引インナーカニューレシステムであって、前記作動装置は、前記かん流液ラインを前記かん流液源に、前記吸引ラインを前記真空源に制御可能に接続するかん流管腔内吸引インナーカニューレシステム。
【0100】
(B2)カニューレシステム(B1)において、前記外側気管切開チューブは、前記1つ以上の突起部と同じパターンで内側表面にくぼみをさらに備え、前記インナーカニューレが前記外側気管切開チューブに挿入されたときに前記1つ以上の突起部が前記くぼみと係合する。
【0101】
(B3)カニューレシステム(B1)または(B2)において、前記作動装置は、前記吸引ラインと前記インナーカニューレとの間にのみ連結されていてもよい。
【0102】
(B4)(B1)~(B3)のいずれかのカニューレシステムにおいて、前記作動装置は、人工呼吸器内に組み込まれてもよい。
【0103】
(B5)(B1)~(B4)のいずれかのカニューレシステムにおいて、前記かん流液源は、自然流下を防止するために、前記インナーカニューレの垂直高さより下の距離に配置される。
【0104】
(B6)カニューレシステム(B5)において、かん流液または吸引の過剰なまたは予期せぬ流れを監視するための流量センサーをさらに含む。
【0105】
(B7)カニューレシステム(B6)において、バルブ、流量制限器、機械式流量・圧力センサー、または電気式流量・圧力センサーをさらに含む。
【0106】
(B8)カニューレシステム(B7)において、かん流液または吸引の過剰なまたは予期せぬ流れが検出された場合のアラームまたは通知をさらに含む。
【0107】
(B9)(B1)~(B8)のいずれかのカニューレシステムにおいて、前記第2のチューブが、該第2のチューブを外側気管切開チューブに取り付けるための保持クリップをさらに備える。
【0108】
(B10)(B1)~(B9)のいずれかのカニューレシステムにおいて、前記外側気管切開チューブとインナーカニューレが単一の装置を形成する。
【0109】
(B11)(B1)~(B10)のいずれかのカニューレシステムにおいて、前記外側気管切開チューブが、カフ付きまたはカフなし気管切開チューブである。
【0110】
(B12)(B1)~(B11)のいずれかのカニューレシステムにおいて、前記外側気管切開チューブが有窓または非有窓気管切開チューブである。
【0111】
(B13)(B1)~(B12)のいずれかに記載のかん流管腔内吸引インナーカニューレシステムを用いて、外側気管切開チューブと、該外側気管切開チューブに挿入されたインナーカニューレと、を備えた気管切開システムの管腔内空間を洗浄する方法。
【0112】
(C1)1つ以上の開口部を長さ方向に沿って備える外側気管切開チューブと、前記外側気管切開チューブの内側に配置されたインナーカニューレであって、前記外側気管切開チューブに挿入するための長さと直径を有する第1のチューブであって、該第1のチューブの管腔内空間と第1のチューブの外面との間の複数の開口部と、前記第1のチューブの外面をかん流領域と第1の吸引領域とに分割する第1の突起部と、前記第1のチューブの外面に第2の吸引領域を形成する第2の突起部と、をさらに備える、第1のチューブと、前記第1のチューブの遠位端に融合され、前記第1のチューブよりも大きな直径を有する第2のチューブと、を備えたインナーカニューレと、前記第2のチューブにおけるかん流液通路に取り付けられ、かん流領域における前記外側気管切開チューブの内面と、前記第1のチューブの外面との間に形成された空隙と連通するかん流液ラインと、前記第2のチューブにおける第1の吸引通路に取り付けられ、前記第1の吸引領域における前記外側気管切開チューブの内面と、前記第1のチューブの外面との間に形成された空隙と連通する第1の吸引ラインと、前記第2のチューブにおける第2の吸引通路に取り付けられ、前記第2の吸引領域における前記外側気管切開チューブの内面と、前記第1のチューブの外面との間に形成された空隙と連通する第2の吸引ラインと、前記かん流液ラインとかん流液源との間に連結され、かつ前記第1および第2の吸引ラインと真空源との間に連結された作動装置であって、前記かん流液ラインを前記かん流液源に、前記第1および第2の吸引ラインを前記真空源に制御可能に接続する作動装置と、を備える、かん流管腔内吸引および管腔外吸引カニューレシステム。
【0113】
(C2)(C1)のカニューレシステムにおいて、前記第1のチューブは、前記第2の突起部に平行で、前記第2の吸引領域を管腔外かん流領域と管腔外吸引領域とに分割する第3の突起部をさらに備え、前記第2の吸引通路は、前記管腔外吸引領域と連通しており、前記インナーカニューレは、さらに、前記第2のチューブにおける第2のかん流通路に取り付けられ、前記管腔外吸引領域における前記外側気管切開チューブの内面と前記第1チューブの外面との間に形成された空隙と連通する第2のかん流ラインを備える。
【0114】
(C3)(C1)~(C3)のいずれかに記載の灌流式管腔内吸引・管腔外吸引インナーカニューレシステムを用いて、外側気管切開チューブと、該外側気管切開チューブに挿入されたインナーカニューレとを備えた気管切開システムの管腔外/声門下腔を洗浄する方法。
【0115】
(D4)外側気管切開チューブと、インナーカニューレと、を備え、前記インナーカニューレは、複数の孔と、前記インナーカニューレが前記外側気管切開チューブに挿入されたときに、前記外側気管切開チューブと前記インナーカニューレとの間の空隙を複数の領域に分割する1つ以上の突起部と、を備える気管切開チューブを洗浄する方法であって、前記複数の領域のうちの第1の領域と連通するように、吸引ラインをインナーカニューレに取り付け、前記吸引ラインと真空源との間に作動装置を取り付け、前記作動装置は、前記吸引ラインを前記真空源に制御可能に接続し、前記作動装置を制御して、前記複数の孔のうちの第1の部分、前記第1の領域、および前記吸引ラインを通じて前記インナーカニューレの内腔から吸引する、方法。
【0116】
(D2)(D4)の方法において、前記複数の領域のうちの第2の領域と連通するように、かん流液ラインを前記インナーカニューレに取り付け、前記かん流液ラインとかん流液源との間に作動装置を取り付け、前記作動装置は、前記かん流液ラインをかん流液源に制御可能に接続し、前記作動装置を制御して、前記複数の孔の第2の部分、前記第2の領域、および前記かん流液ラインを通じて、前記インナーカニューレの管腔にかん流液を提供する、ことをさらに含む。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
【国際調査報告】