(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(54)【発明の名称】抗CSF1および抗CSF1R抗体の高濃度製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20231214BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20231214BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231214BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20231214BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231214BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231214BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231214BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20231214BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/18
A61K9/08
A61P21/00
A61P11/00
A61P13/12
A61P27/02
A61K9/19
C12N15/13 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560246
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 US2021063086
(87)【国際公開番号】W WO2022132636
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523224796
【氏名又は名称】エーマックス バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スー, チュン-チアン
(72)【発明者】
【氏名】アラニ, レーマン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA30
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076CC07
4C076CC10
4C076CC15
4C076CC17
4C076FF68
4C076FF70
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG10
(57)【要約】
抗CSF1R/CSF1抗体の高濃度の安定な製剤が、提供される。例示的な製剤は、105~250mg/mLの抗体と、100mM~200mMのグルタミン酸アルギニンまたはアルギニンHClと、10mM~50mMヒスチジンと、0.015~0.035重量/体積%のポリソルベート80とを含み、pHが5.4~5.6である。製剤を使用して疾患を処置する方法もまた、提供される。本開示は、一実施形態では、比較的高濃度、例えば、少なくとも80mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、180mg/mL、200mg/mL、またはさらには250mg/mLの抗CSF1抗CSF1R抗体の存在を可能にする、この抗体の製剤(例えば、溶液、懸濁物)を提供する。水性製剤から調製されるか、または水性製剤を調製するのに有用な、凍結乾燥製剤もまた、提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも105mg/mLの抗体と、アルギニンの塩と、ヒスチジンと、ポリソルベートとを含み、pHが5.0~6.0である、水性医薬組成物であって、前記抗体が、抗CSF1R抗体または抗CSF1抗体である、水性医薬組成物。
【請求項2】
前記抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の水性医薬組成物。
【請求項3】
前記pHが、5.4~5.8、または好ましくは5.45~5.6である、請求項2に記載の水性医薬組成物。
【請求項4】
少なくとも120mg/mL、好ましくは、少なくとも140mg/mL、より好ましくは、少なくとも150mg/mLの前記抗体を含む、請求項3に記載の水性医薬組成物。
【請求項5】
前記アルギニンの塩が、グルタミン酸アルギニン、アスパラギン酸アルギニン、またはアルギニンHClである、請求項4に記載の水性医薬組成物。
【請求項6】
前記アルギニンの塩が、アルギニンHClである、請求項5に記載の水性医薬組成物。
【請求項7】
前記アルギニンの塩が、100mM~200mM、好ましくは、140mM~160mM、より好ましくは、145mM~155mMの濃度で存在する、請求項5または6に記載の水性医薬組成物。
【請求項8】
前記ヒスチジンが、5mM~100mM、好ましくは、10mM~50mM、より好ましくは、15mM~25mMの濃度で存在する、請求項7に記載の水性医薬組成物。
【請求項9】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート80または20(PS 80またはPS20)である、請求項7または8に記載の水性医薬組成物。
【請求項10】
前記ポリソルベートが、0.01~0.04重量/体積%、好ましくは、0.015~0.035重量/体積%、より好ましくは、0.02重量/体積%または0.03重量/体積%の濃度で存在する、請求項9に記載の水性医薬組成物。
【請求項11】
リシンを含まない、請求項7~10のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
【請求項12】
10mMを上回るスクロースを含まない、好ましくは、スクロースを含まない、請求項11に記載の水性医薬組成物。
【請求項13】
5mMを上回る酢酸塩を含まない、好ましくは、酢酸塩を含まない、請求項11または12に記載の水性医薬組成物。
【請求項14】
10mMを上回るNaClを含まない、好ましくは、NaClを含まない、請求項11~13のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
【請求項15】
1mMを上回るクエン酸塩を含まない、好ましくは、クエン酸塩を含まない、請求項11~14のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
【請求項16】
10mMを上回る糖またはポリオールを含まない、好ましくは、糖またはポリオールを含まない、請求項11~15のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
【請求項17】
10mMを上回るコハク酸塩、プロリン、またはソルビトールを含まない、好ましくは、コハク酸塩、プロリン、またはソルビトールを含まない、請求項11~16のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
【請求項18】
105~250mg/mLの抗体と、100mM~200mMのグルタミン酸アルギニン、アスパラギン酸アルギニン、またはアルギニンHClと、10mM~50mMのヒスチジンと、0.015~0.035重量/体積%のポリソルベートとから本質的になり、pHが5.4~5.6である、水性医薬組成物であって、前記抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、水性医薬組成物。
【請求項19】
酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、NaCl、ソルビトール、リシン、プロリン、糖、またはポリオールのいずれも含まない、請求項18に記載の水性医薬組成物。
【請求項20】
105~250mg/mLの抗体と、100mM~200mMのグルタミン酸アルギニン、アスパラギン酸アルギニン、またはアルギニンHClと、10mM~50mMのヒスチジンと、0.015~0.035重量/体積%のポリソルベートとからなり、pHが5.4~5.6である、水性医薬組成物であって、前記抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、水性医薬組成物。
【請求項21】
140~250mg/mLの前記抗体と、120mM~180mMのアルギニンHClと、15mM~25mMのヒスチジンと、0.02~0.03重量/体積%のポリソルベート80とからなり、pHが5.45~5.55である、請求項20に記載の水性医薬組成物。
【請求項22】
抗CSF1R抗体または抗CSF1抗体を患者に送達するための方法であって、前記患者に、請求項1~21のいずれか一項に記載の水性医薬組成物を皮下投与するステップを含む、方法。
【請求項23】
前記患者が、腱鞘巨細胞腫(TGCT)を患う、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
患者における腱鞘巨細胞腫(TGCT)を処置するための方法であって、前記患者に、請求項1~21のいずれか一項に記載の水性医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項25】
前記投与が、前記TGCTに局所的である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記局所投与が、皮下または関節内である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
患者における特発性肺線維症(IPF)または多発性嚢胞腎(PKD)を処置するための方法であって、前記患者に、請求項1~21のいずれか一項に記載の水性医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項28】
前記投与が、皮下、筋肉内、静脈内、または硝子体内である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
患者における眼疾患を処置するための方法であって、前記患者に、請求項1~21のいずれか一項に記載の水性医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項30】
前記投与が、局部適用もしくは眼適用、または局所注射である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項1~21のいずれか一項に記載の水性医薬組成物から凍結乾燥させたか、または好適な量の水を添加すると請求項1~21のいずれか一項に記載の水性医薬組成物を形成する、固体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C. § 119(e)のもとに、2020年12月14日に出願された米国仮出願第63/125,277号および2021年5月10日に出願された同第63/186,684号の利益を主張し、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本開示に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
マクロファージコロニー刺激因子受容体(M-CSFR)およびCD115(表面抗原分類115)としても公知であるコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)は、ヒトにおいて、CSF1R遺伝子によってコードされる細胞表面タンパク質である(c-FMSとしても公知である)。これは、コロニー刺激因子1(CSF1)と呼ばれるサイトカインの受容体である。
【0003】
CSF1Rに媒介されるシグナル伝達は、単核食細胞系の分化および生存に重要である。腫瘍内のCSF1R+マクロファージの存在は、様々な腫瘍タイプにおける生存不良と相関し、腫瘍促進腫瘍関連マクロファージにおけるCSF1Rシグナル伝達を標的とすることは、これらの細胞を排除または再分極するための魅力的な戦略を表す。
【0004】
いくつかの抗CSF1抗体および抗CSF1R抗体が、様々な固形腫瘍の処置に関して臨床開発中である。例としては、エマクツズマブ(抗CSF1R、SynOxおよびRoche)、カビラリズマブ(抗CSF1R、Five PrimeおよびBMS)、ラクノツズマブ(抗CSF1、NovartisおよびXoma)、PD-0360324(抗CSF1、Pfizer)、アキサチリマブ(抗CSF1R、SyndaxおよびUCB Biopharma)、ならびにIMC-CS4(抗CSF1R、Eli LillyおよびImclone)が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本開示は、一実施形態では、比較的高濃度、例えば、少なくとも80mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、180mg/mL、200mg/mL、またはさらには250mg/mLの抗CSF1抗CSF1R抗体の存在を可能にする、この抗体の製剤(例えば、溶液、懸濁物)を提供する。水性製剤から調製されるか、または水性製剤を調製するのに有用な、凍結乾燥製剤もまた、提供される。
【0006】
そのような高濃度の製剤は、小体積の製剤を治療において使用することを可能にし、皮下注射を実用的なものにする。より大きな体積の薬物製品の注射を可能にする静脈内または筋肉内注射とは異なり、皮下注射は、医療従事者の補助なしで、患者自身によって行うことができる。皮下製剤の利用可能性は、したがって、患者、特に、慢性疾患、例えば、腱鞘巨細胞腫(tenosynovial giant cell tumor)(TGCT)、黒色腫、神経膠芽腫、白血病、および先天性毳毛性多毛症(CHL)を有する患者の健康管理を大きく改善することができる。皮下製剤は、低いCmaxを提供し、これによって、高いCmaxと関連する潜在的なより高い有害作用が軽減されるであろう。
【0007】
高濃度の製剤はまた、他のタイプの投与、例えば、限定することなく、関節内注射、静脈内注射、および筋肉内注射もより有効にする。TGCTおよび他のタイプの腫瘍の他に、また、本開示の組成物によって処置することができる疾患としては、特発性肺線維症(IPF)、多発性嚢胞腎(PKD)、および眼疾患が挙げられる。
【0008】
一実施形態では、本開示は、少なくとも105mg/mLの抗体と、アルギニンの塩と、ヒスチジンと、ポリソルベートとを含み、pHが5.0~6.0、好ましくは、5.4~5.8である、水性医薬組成物であって、抗体が、抗CSF1R抗体または抗CSF1抗体である、水性医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0009】
一部の実施形態では、pHは、5.45~5.6である。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも120mg/mL、好ましくは、少なくとも140mg/mL、より好ましくは、少なくとも150mg/mLの抗体を含む。一部の実施形態では、アルギニンの塩は、グルタミン酸アルギニン、アスパラギン酸アルギニン、またはアルギニンHClである。一部の実施形態では、アルギニンの塩は、アルギニンHClである。
【0010】
一部の実施形態では、アルギニンの塩は、100mM~200mM、好ましくは、140mM~160mM、より好ましくは、145mM~155mMの濃度で存在する。一部の実施形態では、ヒスチジンは、5mM~100mM、好ましくは、10mM~50mM、より好ましくは、15mM~25mMの濃度で存在する。一部の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート80(PS 80)である。一部の実施形態では、ポリソルベートは、0.01~0.04重量/体積%、好ましくは、0.015~0.035重量/体積%、より好ましくは、0.02重量/体積%または0.03重量/体積%の濃度で存在する。
【0011】
一部の実施形態では、組成物は、リシンを含まず、10mMを上回るスクロースを含まないか、またはスクロースを含まず、5mMを上回る酢酸塩を含まないか、または酢酸塩を含まず、10mMを上回るNaClを含まないか、またはNaClを含まず、1mMを上回るクエン酸塩を含まないか、またはクエン酸塩を含まず、10mMを上回る糖もポリオールも含まないか、または糖もポリオールも含まず、10mMを上回るコハク酸塩も、プロリンも、ソルビトールも含まないか、またはコハク酸塩も、プロリンも、ソルビトールも含まない。
【0012】
一実施形態では、105~250mg/mLの抗体と、100mM~200mMのグルタミン酸アルギニン、アスパラギン酸アルギニン、またはアルギニンHClと、10mM~50mMのヒスチジンと、0.015~0.035重量/体積%のポリソルベートとから本質的になり、pHが5.4~5.6である、水性医薬組成物であって、抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、水性医薬組成物もまた、提供される。一部の実施形態では、組成物は、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、NaCl、ソルビトール、リシン、プロリン、糖、またはポリオールのいずれも含まない。
【0013】
別の実施形態では、本開示は、105~250mg/mLの抗体と、100mM~200mMのグルタミン酸アルギニン、アスパラギン酸アルギニン、またはアルギニンHClと、10mM~50mMのヒスチジンと、0.015~0.035重量/体積%のポリソルベートからなり、pHが5.4~5.6である、水性医薬組成物であって、抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、水性医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、組成物は、140~250mg/mLの抗体、120mM~180mMのアルギニンHCl、15mM~25mMのヒスチジン、および0.02~0.03重量/体積%のポリソルベート80からなり、pHが5.45~5.55である。
【0014】
別の実施形態は、抗CSF1R抗体または抗CSF1抗体を患者に送達するための方法であって、患者に、本開示の水性医薬組成物を皮下投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、患者は、腱鞘巨細胞腫(TGCT)を患う。
【0015】
また、患者における腱鞘巨細胞腫(TGCT)を処置するための方法であって、患者に、本開示の水性医薬組成物を投与するステップを含む、方法が、提供される。一部の実施形態では、投与は、TGCTに局所的である。一部の実施形態では、局所投与は、皮下または関節内である。
【0016】
なおもさらに、患者における特発性肺線維症(IPF)を処置するための方法であって、患者に、本開示の水性医薬組成物を投与するステップを含む、方法が、提供される。一部の実施形態では、投与は、全身的である。
【0017】
また、本開示の水性医薬組成物から凍結乾燥させたか、または好適な量の水を添加すると水性医薬組成物を形成する、固体組成物も、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【0019】
【
図2】
図2は、ヒトにおける週ごとの皮下投薬に関する、投影された血清濃度:時間プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
I.定義
すべての数値表記、例えば、pH、温度、時間、濃度、および分子量は、範囲を含め、0.1または10%の増分で(+)または(-)に変動する近似値である。かならずしも明示的に示されていないが、すべての数値表記は、「約」という用語が先行すると理解されるものとする。また、かならずしも明示的に示されていないが、本明細書に記載される試薬は、単なる例示であり、そのようなものの同等物は、当該技術分野において公知であることも、理解されるものとする。
【0021】
「組成物」とは、活性剤、ならびに不活性(例えば、検出可能な薬剤もしくは標識)または活性な別の化合物または組成物、例えば、佐剤の組合せを意味することが意図される。
【0022】
「医薬組成物」は、活性剤と、組成物をin vitro、in vivo、またはex vivoでの診断的または治療的使用に好適なものとする不活性または活性な担体との組合せを含むことが意図される。
【0023】
II.抗体製剤
治療用抗体の好適な形式の開発は、典型的には、例えば、タンパク質の溶解度、安定性、粘度、および質量オスモル濃度による相反する要件を有する。したがって、それは、困難であり、そのような要件が許容可能な形式を生成するようにバランスをとることができるかどうかは予測不可能である。
【0024】
本開示の一実施形態は、抗CSF1または抗CSF1R抗体の水性製剤を提供する。一部の実施形態では、CSF1またはCSF1R抗体は、キメラモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、CSF1またはCSF1R抗体は、ヒト抗体である。一部の実施形態では、CSF1またはCSF1R抗体は、ヒト化抗体である。一部の実施形態では、CSF1またはCSF1R阻害剤は、IgG1抗体である。一部の実施形態では、CSF1またはCSF1R抗体は、IgG2a抗体である。一部の実施形態では、CSF1またはCSF1R抗体は、IgG4モノクローナルである。例示的な抗CSF1抗体および抗CSF1R抗体は、以下の表1A~Bに、代表的な配列とともに提供されている。
表1A. 例示的な抗CSF1R抗体
【表1A-1】
【表1A-2】
【表1A-3】
表1B. 例示的な抗CSF1抗体
【表1B-1】
【表1B-2】
【0025】
エマクツズマブ(RG7155およびRO5509554としても公知である)は、腫瘍組織内のマクロファージを標的とし、それを枯渇させるように設計された、臨床段階のヒト化IgG1 CSF1R標的化抗体である。これは、患者において好ましい安全性プロファイルおよびTGCTに対する有望な有効性を示している。エマクツズマブは、臨床試験NCT01494688-「A Study of RO5509554 as Monotherapy and in Combination with Paclitaxel in Participants With Advanced Solid Tumors」において試験中である。
【0026】
カビラリズマブ(FPA008としても公知である)は、臨床試験NCT03502330-「APX005M With Nivolumab and Cabiralizumab in Advanced Melanoma, Non-small Cell Lung Cancer or Renal Cell Carcinoma」において試験中である。カビラリズマブは、ヘミ二量体交換を防止するようにヒンジ領域に単一のアミノ酸置換を有するヒト化IgG4抗CSF1Rモノクローナル抗体である。
【0027】
IMC-CS4(LY3022855としても公知である)は、CSF1Rを標的とするヒトIgG1抗体(mAb)である。IMC-CS4は、臨床試験NCT01346358-「A Study of IMC-CS4 in Subjects With Advanced Solid Tumors」において試験中である。
【0028】
AM001は、完全ヒトIgG2抗CSF1R抗体である。他の例示的な抗CSF1R抗体としては、限定されないが、PD-0360324およびGTX128677が挙げられる。
【0029】
アキサチリマブ(SNDX-6352としても公知である)は、CSF-1Rに対して高い親和性を有するヒト化全長IgG4抗体である。アキサチリマブは、CSF-1Rに結合し、その2つの公知のリガンドであるCSF-1およびIL-34によるその活性化を遮断することによって、単球およびマクロファージの遊走、増殖、分化、および生存に影響を及ぼす。アキサチリマブは、現在、cGVHDを有する患者において、フェーズ1/2臨床試験で評価されている。
【0030】
ラクノツズマブ(MCS110としても公知である)は、応答性細胞において増殖を駆動するCSF1Rの能力を遮断する、高親和性ヒト操作抗CSF1抗体である。ラクノツズマブは、臨床試験NCT01643850-「MCS110 in Patients With Pigmented Villonodular Synovitis (PVNS)」において試験中である。
【0031】
PD-0360324は、皮膚エリテマトーデス(CLE)の処置に関して調査されている、CSF1に対する完全ヒト免疫グロブリンG2モノクローナル抗体である。それは、再発性高悪性度上皮卵巣がん、原発性腹膜がん、または卵管がんを有する患者を処置することにおいて、シクロホスファミドとの組合せについても試験されている。
【0032】
本開示は、一実施形態では、少なくとも約80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mL、210mg/mL、220mg/mL、230mg/mL、240mg/mL、またはさらには250mg/mLの濃度の抗CSF1または抗CSF1R抗体の水性製剤を提供する。一部の実施形態では、濃度は、約500mg/mLを上回らない、400mg/mLを上回らない、または300mg/mLを上回らない。
【0033】
高濃度の抗体製剤は、開発することが困難である。例えば、溶液中の高濃度(150mg/mL以上)のタンパク質は、溶液の粘度の劇的な増加をもたらし得、これが、安定性、製造、および送達の課題をもたらし得ることが知られている。そのような溶液においてはタンパク質-タンパク質相互作用(PPI)が発生し得、これが、高度に濃縮された抗体溶液において、密な抗体環境が可逆的PPIを形成することにより生じる濃度依存的な粘度の上昇をもたらし、望ましくない挙動を引き起こす可能性がある。加えて、PPIは、タンパク質凝集、望ましくない溶液乳光(solution opalescence)レベル、および一部の場合には、液体-液体の相分離といった問題に寄与し得る。このmAb分子の会合は、いくつかの一過性相互作用、例えば、静電相互作用、疎水溶性相互作用、双極子-双極子相互作用、水素結合相互作用、およびファンデルワールス相互作用に起因している。さらに別の課題は、特に皮下注射において、等張性を維持することである。
【0034】
添付の実験例は、AM001を例示的な抗体としている。驚くことではないが、多くの一般に使用される製剤賦形剤および条件(例えば、pH範囲)は、高濃度(例えば、約150mg/mL)のこの抗体を、許容可能な物理的および化学的安定性ならびに低い粘度で製剤化するためには好適ではないと決定された。例えば、50mMでさえもNaClを含めると、試料の明らかな乳光が生じ、さらに、試料を脱安定化した。加えて、一般的な賦形剤、例えば、クエン酸塩、糖、ポリオール、コハク酸塩、プロリン、およびソルビトールもまた、安定性の減少または粘度の増加をもたらした。また、驚くべきことに、リシンは構造的かつ機能的にアルギニンに類似しているにもかかわらず、リシンを賦形剤として製剤に含めることにより、濁度の増加がもたらされた。
【0035】
典型的には、抗体に関して、好適な安定化pH範囲は、6.0~7.0である。驚くべきことに、AM001に関して、6を上回るpHでは、おそらくは脱アミドに起因して、酸性ピークが検出され始めた。5未満などの低いpHもまた、抗体を脱安定化することが示された。
【0036】
幸運なことに、多数の試行錯誤の後に、本発明者らは、抗体を低い粘度で安定に保つだけでなく、抗体を高濃度で含めることも可能にする、皮下注射および他の投与経路に好適な、少数の賦形剤および非常に狭く低いpH範囲を見出すことができた。
【0037】
本開示の一実施形態によると、少なくとも105mg/mLの抗体と、アルギニンの塩と、ヒスチジンと、ポリソルベートとを含み、pHが5.4~5.8である、水性医薬組成物であって、抗体が、抗CSF1R抗体または抗CSF1抗体である、水性医薬組成物が、提供される。例示的な抗体は、表1A~Bに提供されている。好ましい実施形態では、抗体は、AM001である。表に示されるように、AM001は、配列番号7のアミノ酸配列の重鎖、および配列番号8のアミノ酸配列の軽鎖を含む。
【0038】
一部の実施形態では、組成物は、少なくとも105mg/mLの抗体を含む。一部の実施形態では、抗体濃度は、少なくとも110mg/mL、115mg/mL、120mg/mL、125mg/mL、130mg/mL、135mg/mL、140mg/mL、145mg/mL、150mg/mL、155mg/mL、160mg/mL、165mg/mL、170mg/mL、175mg/mL、180mg/mL、185mg/mL、190mg/mL、195mg/mL、または200mg/mLである。一部の実施形態では、抗体濃度は、限定することなく、105mg/mL~300mg/mL、120mg/mL~250mg/mL、120mg/mL~200mg/mL、130mg/mL~180mg/mL、140mg/mL~170mg/mLである。
【0039】
一部の実施形態では、pHは、5.0~6.0、5.1~5.9、5.2~5.9、5.3~5.9、5.4~5.8、または5.4~5.7、5.45~5.65、5.45~5.6、5.45~5.55、5.48~5.52、5.49~5.51、または5.5である。
【0040】
一部の実施形態では、アルギニンの塩は、限定することなく、グルタミン酸アルギニン、アスパラギン酸アルギニン、またはアルギニンHClである。一部の実施形態では、アルギニンの塩は、好ましくは、アルギニンHClである。一部の実施形態では、アルギニンの塩は、100mM~200mM、好ましくは、120mM~180mM、140mM~160mM、またはより好ましくは、145mM~155mMの濃度で存在する。一部の実施形態では、アルギニンHClは、100mM~200mM、好ましくは、120mM~180mM、140mM~160mM、またはより好ましくは、145mM~155mM、または約150mMの濃度で存在する。
【0041】
一部の実施形態では、ヒスチジンは、5mM~100mM、好ましくは、10mM~50mM、より好ましくは、15mM~25mM、18mM~22mM、または約20mMの濃度で存在する。
【0042】
一部の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート80(PS 80)である。一部の実施形態では、PS 80は、0.01~0.04重量/体積%、好ましくは、0.015~0.035重量/体積%、0.015~0.025重量/体積%、または0.025~0.035重量/体積%、より好ましくは、0.02重量/体積%または0.03重量/体積%の濃度で存在する。
【0043】
例示的な実施形態では、105~250mg/mLのAM001と、100mM~200mMのグルタミン酸アルギニン、アスパラギン酸アルギニン、またはアルギニンHClと、10mM~50mMのヒスチジンと、0.015~0.035重量/体積%のポリソルベートとから本質的になり、pHが5.4~5.6である、水性医薬組成物。別の例示的な実施形態では、105~250mg/mLのAM001と、100mM~200mMのグルタミン酸アルギニン、アスパラギン酸アルギニン、またはアルギニンHClと、10mM~50mMのヒスチジンと、0.015~0.035重量/体積%のポリソルベート80とからなり(これらを含むが、明示的に言及されていない任意の他の成分を含まない)、pHが5.4~5.6である、水性医薬組成物。
【0044】
一部の実施形態では、組成物は、140~250mg/mLのAM001と、120mM~180mMのアルギニンHClと、15mM~25mMのヒスチジンと、0.02~0.03重量/体積%のポリソルベートとからなり、pHが5.45~5.55である。一部の実施形態では、組成物は、140~200mg/mLのAM001と、140mM~160mMのアルギニンHClと、15mM~25mMのヒスチジンと、0.02~0.03重量/体積%のポリソルベート80とからなり、pHが5.45~5.55である。
【0045】
一部の実施形態では、組成物は、製剤の安定性、粘度、または溶解度に対して有害であることが試験されている賦形剤を含まない。一部の実施形態では、制限または除外される賦形剤は、リシンである。したがって、一部の実施形態では、組成物は、50mMを上回る、40mMを上回る、30mMを上回る、20mMを上回る、10mMを上回る、5mMを上回る、2mMを上回る、1mMを上回る、0.5mMを上回る、または0.1mMを上回るリシンを含まない。一部の実施形態では、組成物は、リシンをまったく含まない。
【0046】
一部の実施形態では、制限または除外される賦形剤は、スクロースである。したがって、一部の実施形態では、組成物は、50mMを上回る、40mMを上回る、30mMを上回る、20mMを上回る、10mMを上回る、5mMを上回る、2mMを上回る、1mMを上回る、0.5mMを上回る、または0.1mMを上回るスクロースを含まない。一部の実施形態では、組成物は、スクロースをまったく含まない。
【0047】
一部の実施形態では、制限または除外される賦形剤は、酢酸塩である。したがって、一部の実施形態では、組成物は、50mMを上回る、40mMを上回る、30mMを上回る、20mMを上回る、10mMを上回る、5mMを上回る、2mMを上回る、1mMを上回る、0.5mMを上回る、または0.1mMを上回る酢酸塩を含まない。一部の実施形態では、組成物は、酢酸塩をまったく含まない。
【0048】
一部の実施形態では、制限または除外される賦形剤は、酢酸塩である。したがって、一部の実施形態では、組成物は、50mMを上回る、40mMを上回る、30mMを上回る、20mMを上回る、10mMを上回る、5mMを上回る、2mMを上回る、1mMを上回る、0.5mMを上回る、または0.1mMを上回る酢酸塩を含まない。一部の実施形態では、組成物は、酢酸塩をまったく含まない。
【0049】
一部の実施形態では、制限または除外される賦形剤は、NaCl(または任意の他の金属イオン、例えば、K+、Ca2+)である。したがって、一部の実施形態では、組成物は、50mMを上回る、40mMを上回る、30mMを上回る、20mMを上回る、10mMを上回る、5mMを上回る、2mMを上回る、1mMを上回る、0.5mMを上回る、または0.1mMを上回るNaCl(または任意の他の金属イオン、例えば、K+、Ca2+)を含まない。一部の実施形態では、組成物は、NaCl(または任意の他の金属イオン、例えば、K+、Ca2+)をまったく含まない。
【0050】
一部の実施形態では、制限または除外される賦形剤は、クエン酸塩である。したがって、一部の実施形態では、組成物は、50mMを上回る、40mMを上回る、30mMを上回る、20mMを上回る、10mMを上回る、5mMを上回る、2mMを上回る、1mMを上回る、0.5mMを上回る、0.1mMを上回る、0.05mMを上回る、0.01mMを上回る、0.005mMを上回る、または0.001mMを上回るクエン酸塩を含まない。一部の実施形態では、組成物は、クエン酸塩をまったく含まない。
【0051】
一部の実施形態では、制限または除外される賦形剤は、糖またはポリオールである。したがって、一部の実施形態では、組成物は、50mMを上回る、40mMを上回る、30mMを上回る、20mMを上回る、10mMを上回る、5mMを上回る、2mMを上回る、1mMを上回る、0.5mMを上回る、0.1mMを上回る、0.05mMを上回る、0.01mMを上回る、0.005mMを上回る、または0.001mMを上回る糖もポリオールも含まない。一部の実施形態では、組成物は、糖もポリオールもまったく含まない。
【0052】
一部の実施形態では、制限または除外される賦形剤は、コハク酸塩である。したがって、一部の実施形態では、組成物は、50mMを上回る、40mMを上回る、30mMを上回る、20mMを上回る、10mMを上回る、5mMを上回る、2mMを上回る、1mMを上回る、0.5mMを上回る、0.1mMを上回る、0.05mMを上回る、0.01mMを上回る、0.005mMを上回る、または0.001mMを上回るコハク酸塩を含まない。一部の実施形態では、組成物は、コハク酸塩をまったく含まない。
【0053】
一部の実施形態では、制限または除外される賦形剤は、ソルビトールである。したがって、一部の実施形態では、組成物は、50mMを上回る、40mMを上回る、30mMを上回る、20mMを上回る、10mMを上回る、5mMを上回る、2mMを上回る、1mMを上回る、0.5mMを上回る、0.1mMを上回る、0.05mMを上回る、0.01mMを上回る、0.005mMを上回る、または0.001mMを上回るソルビトールを含まない。一部の実施形態では、組成物は、ソルビトールをまったく含まない。
【0054】
一部の実施形態では、制限または除外される賦形剤は、プロリンである。したがって、一部の実施形態では、組成物は、50mMを上回る、40mMを上回る、30mMを上回る、20mMを上回る、10mMを上回る、5mMを上回る、2mMを上回る、1mMを上回る、0.5mMを上回る、0.1mMを上回る、0.05mMを上回る、0.01mMを上回る、0.005mMを上回る、または0.001mMを上回るプロリンを含まない。一部の実施形態では、組成物は、プロリンをまったく含まない。
【0055】
一部の実施形態では、制限または除外される賦形剤は、アルギニンまたはヒスチジン(または含まれる場合にはグルタミン酸塩/アスパラギン酸塩)以外の任意のアミノ酸である。したがって、一部の実施形態では、組成物は、50mMを上回る、40mMを上回る、30mMを上回る、20mMを上回る、10mMを上回る、5mMを上回る、2mMを上回る、1mMを上回る、0.5mMを上回る、0.1mMを上回る、0.05mMを上回る、0.01mMを上回る、0.005mMを上回る、または0.001mMを上回る、アルギニンまたはヒスチジン(または含まれる場合にはグルタミン酸塩/アスパラギン酸塩)以外の任意のアミノ酸を含まない。一部の実施形態では、組成物は、アルギニンまたはヒスチジン(または含まれる場合にはグルタミン酸塩/アスパラギン酸塩)以外の任意のアミノ酸を含まない。
【0056】
一部の実施形態では、制限または除外される賦形剤は、明示的に含まれていない本開示(例えば、表2)において開示される任意の賦形剤である。したがって、一部の実施形態では、組成物は、50mMを上回る、40mMを上回る、30mMを上回る、20mMを上回る、10mMを上回る、5mMを上回る、2mMを上回る、1mMを上回る、0.5mMを上回る、0.1mMを上回る、0.05mMを上回る、0.01mMを上回る、0.005mMを上回る、または0.001mMを上回る、明示的に含まれていない本開示(例えば、表2)において開示される任意の賦形剤を含まない。一部の実施形態では、組成物は、明示的に含まれていない本開示(例えば、表2)において開示される任意の賦形剤を含まない。
【0057】
一部の実施形態では、製剤は、1つまたは複数の張度剤を含む。「張度剤(tonicityagent)」という用語は、本明細書において使用される場合、製剤の張度をモジュレートするために使用される薬学的に許容される薬剤を指す。等張性は、概して、通常はヒト血清のものと比べた、溶液に対する浸透圧に関する。製剤は、低張性、等張性、または高張性であり得る。一態様では、製剤は、等張性である。等張性製剤は、液体、または固体形態から、例えば、凍結乾燥形態から、再構成された液体、または希釈時に可溶化する懸濁物であり、比較されるなんらかの他の溶液、例えば、生理食塩水および血清と同じ張度を有する溶液を指す。好適な等張性剤(isotonicity agent)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、および本明細書に定義されるアミノ酸、糖、ならびにこれらの組合せからなる群からの任意の成分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
一部の実施形態では、製剤は、1つまたは複数の界面活性剤を含む。本明細書において使用される場合、「界面活性剤」という用語は、両親媒性構造を有する薬学的に許容される有機物質を指す、すなわち、これは、対向する溶解度傾向の基、典型的に、油溶性炭化水素鎖および水溶性イオン基から構成される。界面活性剤は、表面活性部分の電荷に応じて、アニオン性、カチオン性、および非イオン性の界面活性剤に分類され得る。界面活性剤は、生物学的材料の様々な薬学的製剤および調製物のための湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、および分散剤として使用されることが多い。本明細書に記載される医薬製剤の一部の実施形態では、界面活性剤の量は、重量/体積パーセント(重量/体積%)で表わされるパーセンテージとして記載される。好適な薬学的に許容される界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween(登録商標))、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij(登録商標))、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton(登録商標)-X)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(Poloxamer、Pluronic)、またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の群が挙げられるが、これらに限定されない。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ポリソルベート20(商標名Tween(登録商標) 20(商標)下で販売されている)およびポリソルベート80(商標名Tween(登録商標) 80(商標)下で販売されている)が挙げられる。ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマーは、名称Pluronic(登録商標)F68またはPoloxamer 188(商標)下で販売されているものを含む。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、商標名Brij(登録商標)下で販売されているものを含む。アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテルは、商標名Triton(登録商標)-X下で販売されているものを含む。
【0059】
一部の実施形態では、製剤は、1つまたは複数の凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)を含む。「凍結乾燥保護剤」は、凍結乾燥(高真空での急速な凍結および乾燥のプロセス)の間、タンパク質を安定化させる薬学的に許容される物質を指す。凍結乾燥保護剤の例としては、限定されないが、スクロース、トレハロース、またはマンニトールが挙げられる。
【0060】
一部の実施形態では、製剤は、1つまたは複数の抗酸化剤をさらに含む。「抗酸化剤」は、他の分子の酸化を減速または防止することができる分子を指す。酸化は、電子を、ある物質から酸化剤へと移動させる化学反応である。酸化反応は、フリーラジカルを産生させ得、これが、タンパク質治療薬を脱安定化させ、最終的に産生物の活性に影響を及ぼす連鎖反応を開始させる。抗酸化剤は、フリーラジカル中間体を除去することによってこれらの連鎖反応を終了させ、それ自体が酸化されることによって、他の酸化反応を阻害する。結果として、抗酸化剤は、還元剤、キレート剤、および酸素スカベンジャー、例えば、クエン酸塩、EDTA、DPTA、チオール、アスコルビン酸、またはポリフェノールであることが多い。抗酸化剤の非限定的な例としては、アスコルビン酸(AA、E300)、チオスルフェート、メチオニン、トコフェロール(E306)、没食子酸プロピル(PG、E310)、第三級ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA、E320)、およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、E321)が挙げられる。
【0061】
一部の実施形態では、製剤は、1つまたは複数の保存剤をさらに含む。「保存剤」は、微生物の成長または望ましくない化学的変化による変形を防止するために、例えば、食物、医薬品、塗料、生物学的試料、材木などの製品に添加される天然または合成の化学物質である。保存剤添加剤は、単独で、または他の保存方法とともに、使用され得る。保存剤は、細菌および真菌の成長を阻害する抗微生物保存剤、または構成物の酸化を阻害する抗酸化剤、例えば、酸素吸収剤であり得る。一般的な抗微生物保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、クロロヘキシジン、グリセリン、フェノール、ソルビン酸カリウム、チメロサール、亜硫酸塩(二酸化硫黄、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウムなど)、およびEDTA二ナトリウムが挙げられる。他の保存剤としては、非経口タンパク質において一般に使用されるもの、例えば、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、またはメチルパラベンが挙げられる。
【0062】
一部の実施形態では、製剤は、1つまたは複数の増量剤をさらに含む。本明細書において使用される場合、「増量剤」という用語は、凍結乾燥製剤にかさを提供する成分を指す。増量剤の例としては、限定することなく、マンニトール、トレハロース、ラクトース、スクロース、ポリビニルピロリドン、スクロース、グルコース、グリシン、シクロデキストリン、デキストラン、固形PEG、ならびにこれらの誘導体および混合物が挙げられる。一実施形態では、本開示の製剤は、必要に応じて、増量剤を含む。
【0063】
一部の実施形態では、製剤は、緩衝化系、例えば、クエン酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、またはこれらの組合せをさらに含む。一部の実施形態では、製剤は、凍結乾燥材料の特性および安定性を増強させるために、第三級ブタノールをさらに含む。
【0064】
一部の実施形態では、製剤は、粘度低下剤、例えば、リシン、アルギニン、NaCl、グルタミン、グリシン、またはこれらの組合せをさらに含む。
【0065】
一部の実施形態では、製剤は、ヒアルロン酸(HA)、アルギン酸塩、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、またはポビドンから選択され得る、制御放出または安定化ポリマーを含み得る。生体分解性マトリックスは、賦形剤、例えば、ポリ(D,L-乳酸)(PLA)、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、もしくは親水性ポリ(エチレングリコール)(PEG)とポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、およびポリ(ε-カプロラクトン-co-グリコール酸)(PCGA)から選択される1つもしくは複数のポリマーとを含むブロックコポリマー、例えば、ポリ(ε-カプロラクトン-co-グリコール酸)-ポリ(エチレングリコール)-ポリ(ε-カプロラクトン-co-グリコール酸)(PCGA-PEG-PCGA)およびポリ(乳酸-co-グリコール酸)-ポリ(エチレングリコール)-ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA-PEG-PLGA)、もしくはこれらの薬学的に許容される塩、またはこれらの組合せを含み得る。一部の実施形態では、製剤は、HSA(ヒト血清アルブミン)またはBSA(ウシ血清アルブミン)を含み得る。
【0066】
一部の実施形態では、製剤(例えば、懸濁物)はまた、懸濁化剤も含む。「懸濁化剤」という用語は、本明細書において使用される場合、粒子の懸濁または分散を促進し、沈殿を低減させる、薬学的に許容される賦形剤を指す。懸濁化剤はまた、増粘剤としても作用する。それらは、溶液の粘度を増加させるが、これは、懸濁化した粒子の沈殿を防止するのに役立つ。懸濁物は、十分に発生したチキソトロピーを有する。静置時に、溶液は、沈殿、したがって、粒子の凝集またはケーキングを防止するのに十分に粘性である。撹拌が適用されると、粘度が低減され、良好な流動特性が得られる。
【0067】
懸濁化剤のタイプの非限定的な例としては、多糖類、無機塩、およびポリマーが挙げられる。懸濁化剤の具体的な例としては、限定することなく、アルギン酸塩、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微晶質セルロース、アカシア、トラガカント、キサンタンガム、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、粉末状セルロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポビドン、デキストリン、中鎖トリグリセリド、スクロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン(chistosan)、ポリオキシエチレン、ポリオキシ-プロピレンエーテル、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0068】
一部の実施形態では、懸濁化剤は、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール4000)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポビドン、およびこれらの組合せから選択される。一実施形態では、懸濁化剤は、ポリエチレングリコール4000である。別の実施形態では、懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0069】
懸濁化剤の濃度は、一般に、約0.1mg/mL~約200mg/mL、または約0.5mg/mL~約100mg/mL、約1mg/mL~約75mg/mL、約5mg/mL~約60mg/mL、約5mg/mL~約20mg/mL、または約40mg/mL~約60mg/mLであり得る。一部の実施形態では、懸濁化剤の濃度は、約0.1%(重量/重量)~約7.5%(重量/重量)、または約0.1%(重量/重量)~約6%(重量/重量)、約0.2%(重量/重量)~約6%(重量/重量)、約0.5%(重量/重量)~約6%(重量/重量)、約1%(重量/重量)~約6%(重量/重量)である。
【0070】
ポリエチレングリコール4000については、濃度は、約10mg/mL~約100mg/mL、約25mg/mL~約75mg/mL、約40mg/mL~約70mg/mL、または約50mg/mL~約60mg/mLであり得る。カルボキシメチルセルロースナトリウムについては、濃度は、約1mg/mL~約50mg/mL、約2mg/mL~約30mg/mL、約5mg/mL~約20mg/mL、または約7mg/mL~約15mg/mLであり得る。メチルセルロースについては、濃度は、約0.1mg/mL~約10mg/mL、約0.2mg/mL~約5mg/mL、約0.5mg/mL~約2mg/mL、または約0.75mg/mL~約1.25mg/mLであり得る。
【0071】
1つまたは複数のカテゴリーに入る例示的な賦形剤は、表2に例示されている。
表2. 例示的な賦形剤
【表2-1】
【表2-2】
【0072】
一部の実施形態では、ヒスチジン(例えば、ヒスチジンHCl)は、約5~50mMの濃度で存在する。一部の実施形態では、ヒスチジンの濃度は、少なくとも約5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、または45mMである。一部の実施形態では、ヒスチジンの濃度は、約100mMを上回らない、90mMを上回らない、80mMを上回らない、70mMを上回らない、60mMを上回らない、50mMを上回らない、45mMを上回らない、40mMを上回らない、35mMを上回らない、30mMを上回らない、29mMを上回らない、28mMを上回らない、27mMを上回らない、26mMを上回らない、25mMを上回らない、24mMを上回らない、23mMを上回らない、22mMを上回らない、21mMを上回らない、20mMを上回らない、19mMを上回らない、18mMを上回らない、17mMを上回らない、16mMを上回らない、または15mMを上回らない。一部の実施形態では、ヒスチジンの濃度は、約5~40mM、5~35mM、5~30mM、5~25mM、5~20mM、10~50mM、10~45mM、10~40mM、10~35mM、10~30mM、10~25mM、10~20mM、15~50mM、15~45mM、15~40mM、15~35mM、15~30mM、15~25mM、15~20mM、20~50mM、20~45mM、20~40mM、20~35mM、20~30mM、または20~25mMである。
【0073】
一部の実施形態では、アルギニンは、約5~100mMの濃度で存在する。一部の実施形態では、アルギニンの濃度は、少なくとも約5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、または45mMである。一部の実施形態では、アルギニンの濃度は、約100mMを上回らない、90mMを上回らない、80mMを上回らない、70mMを上回らない、60mMを上回らない、50mMを上回らない、45mMを上回らない、40mMを上回らない、35mMを上回らない、30mMを上回らない、29mMを上回らない、28mMを上回らない、27mMを上回らない、26mMを上回らない、25mMを上回らない、24mMを上回らない、23mMを上回らない、22mMを上回らない、21mMを上回らない、20mMを上回らない、19mMを上回らない、18mMを上回らない、17mMを上回らない、16mMを上回らない、または15mMを上回らない。一部の実施形態では、アルギニンの濃度は、約5~40mM、5~35mM、5~30mM、5~25mM、5~20mM、10~50mM、10~45mM、10~40mM、10~35mM、10~30mM、10~25mM、10~20mM、15~50mM、15~45mM、15~40mM、15~35mM、15~30mM、15~25mM、15~20mM、20~50mM、20~45mM、20~40mM、20~35mM、20~30mM、または20~25mMである。
【0074】
一部の実施形態では、リシンは、約5~100mMの濃度で存在する。一部の実施形態では、リシンの濃度は、少なくとも約5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、または45mMである。一部の実施形態では、リシンの濃度は、約100mMを上回らない、90mMを上回らない、80mMを上回らない、70mMを上回らない、60mMを上回らない、50mMを上回らない、45mMを上回らない、40mMを上回らない、35mMを上回らない、30mMを上回らない、29mMを上回らない、28mMを上回らない、27mMを上回らない、26mMを上回らない、25mMを上回らない、24mMを上回らない、23mMを上回らない、22mMを上回らない、21mMを上回らない、20mMを上回らない、19mMを上回らない、18mMを上回らない、17mMを上回らない、16mMを上回らない、または15mMを上回らない。一部の実施形態では、リシンの濃度は、約5~40mM、5~35mM、5~30mM、5~25mM、5~20mM、10~50mM、10~45mM、10~40mM、10~35mM、10~30mM、10~25mM、10~20mM、15~50mM、15~45mM、15~40mM、15~35mM、15~30mM、15~25mM、15~20mM、20~50mM、20~45mM、20~40mM、20~35mM、20~30mM、または20~25mMである。
【0075】
一部の実施形態では、トレハロース(例えば、トレハロース二水和物)は、約2%~20%(重量/体積)の濃度で存在する。一部の実施形態では、トレハロースの濃度は、少なくとも約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、15%、17%、または18%(重量/体積)である。一部の実施形態では、トレハロースの濃度は、約20%を上回らない、19%を上回らない、18%を上回らない、17%を上回らない、16%を上回らない、15%を上回らない、14%を上回らない、13%を上回らない、12%を上回らない、11%を上回らない、10%を上回らない、9%を上回らない、8%を上回らない、7%を上回らない、6%を上回らない、5%を上回らない、4%を上回らない、または3%を上回らない(重量/体積)。一部の実施形態では、トレハロースの濃度は、約2%~20%、2%~19%、2%~18%、2%~17%、2%~16%、2%~15%、2%~14%、2%~13%、2%~12%、2%~11%、2%~10%、2%~9%、2%~8%、3%~20%、3%~19%、3%~18%、3%~17%、3%~16%、3%~15%、3%~14%、3%~13%、3%~13%、3%~11%、3%~10%、3%~9%、3%~8%、4%~20%、4%~19%、4%~18%、4%~17%、4%~16%、4%~15%、4%~14%、4%~13%、4%~14%、4%~11%、4%~10%、4%~9%、4%~8%、5%~20%、5%~19%、5%~18%、5%~17%、5%~16%、5%~15%、5%~14%、5%~13%、5%~15%、5%~11%、5%~10%、5%~9%、5%~8%、6%~20%、6%~19%、6%~18%、6%~17%、6%~16%、6%~16%、6%~14%、6%~13%、6%~16%、6%~11%、6%~10%、6%~9%、6%~8%、7%~20%、7%~19%、7%~18%、7%~17%、7%~17%、7%~17%、7%~14%、7%~13%、7%~17%、7%~11%、7%~10%、7%~9%、7%~8%、8%~20%、8%~19%、8%~18%、8%~18%、8%~18%、8%~18%、8%~14%、8%~13%、8%~18%、8%~11%、8%~10%、8%~9%、9%~20%、9%~19%、9%~18%、9%~19%、9%~19%、9%~19%、9%~14%、9%~13%、9%~19%、9%~11%、9%~10%、10%~20%、10%~19%、10%~18%、10%~110%、10%~110%、10%~110%、10%~14%、10%~13%、10%~110%、または10%~11%(重量/体積)である。
【0076】
一部の実施形態では、スクロースは、約2%~20%(重量/体積)の濃度で存在する。一部の実施形態では、スクロースの濃度は、少なくとも約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、15%、17%、または18%(重量/体積)である。一部の実施形態では、スクロースの濃度は、約20%を上回らない、19%を上回らない、18%を上回らない、17%を上回らない、16%を上回らない、15%を上回らない、14%を上回らない、13%を上回らない、12%を上回らない、11%を上回らない、10%を上回らない、9%を上回らない、8%を上回らない、7%を上回らない、6%を上回らない、5%を上回らない、4%を上回らない、または3%を上回らない(重量/体積)。一部の実施形態では、スクロースの濃度は、約2%~20%、2%~19%、2%~18%、2%~17%、2%~16%、2%~15%、2%~14%、2%~13%、2%~12%、2%~11%、2%~10%、2%~9%、2%~8%、3%~20%、3%~19%、3%~18%、3%~17%、3%~16%、3%~15%、3%~14%、3%~13%、3%~13%、3%~11%、3%~10%、3%~9%、3%~8%、4%~20%、4%~19%、4%~18%、4%~17%、4%~16%、4%~15%、4%~14%、4%~13%、4%~14%、4%~11%、4%~10%、4%~9%、4%~8%、5%~20%、5%~19%、5%~18%、5%~17%、5%~16%、5%~15%、5%~14%、5%~13%、5%~15%、5%~11%、5%~10%、5%~9%、5%~8%、6%~20%、6%~19%、6%~18%、6%~17%、6%~16%、6%~16%、6%~14%、6%~13%、6%~16%、6%~11%、6%~10%、6%~9%、6%~8%、7%~20%、7%~19%、7%~18%、7%~17%、7%~17%、7%~17%、7%~14%、7%~13%、7%~17%、7%~11%、7%~10%、7%~9%、7%~8%、8%~20%、8%~19%、8%~18%、8%~18%、8%~18%、8%~18%、8%~14%、8%~13%、8%~18%、8%~11%、8%~10%、8%~9%、9%~20%、9%~19%、9%~18%、9%~19%、9%~19%、9%~19%、9%~14%、9%~13%、9%~19%、9%~11%、9%~10%、10%~20%、10%~19%、10%~18%、10%~110%、10%~110%、10%~110%、10%~14%、10%~13%、10%~110%、または10%~11%(重量/体積)である。
【0077】
一部の実施形態では、NaClは、約5~200mMの濃度で存在する。一部の実施形態では、NaClの濃度は、少なくとも約5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、120mM、140mM、または150mMである。一部の実施形態では、NaClの濃度は、約200mMを上回らない、180mMを上回らない、150mMを上回らない、120mMを上回らない、100mMを上回らない、90mMを上回らない、80mMを上回らない、70mMを上回らない、60mMを上回らない、または50mMを上回らない。
【0078】
一部の実施形態では、MgCl2は、約5~50mMの濃度で存在する。一部の実施形態では、MgCl2の濃度は、少なくとも約5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、または45mMである。一部の実施形態では、MgCl2の濃度は、約100mMを上回らない、90mMを上回らない、80mMを上回らない、70mMを上回らない、60mMを上回らない、50mMを上回らない、45mMを上回らない、40mMを上回らない、35mMを上回らない、30mMを上回らない、29mMを上回らない、28mMを上回らない、27mMを上回らない、26mMを上回らない、25mMを上回らない、24mMを上回らない、23mMを上回らない、22mMを上回らない、21mMを上回らない、20mMを上回らない、19mMを上回らない、18mMを上回らない、17mMを上回らない、16mMを上回らない、または15mMを上回らない。一部の実施形態では、MgCl2の濃度は、約5~40mM、5~35mM、5~30mM、5~25mM、5~20mM、10~50mM、10~45mM、10~40mM、10~35mM、10~30mM、10~25mM、10~20mM、15~50mM、15~45mM、15~40mM、15~35mM、15~30mM、15~25mM、15~20mM、20~50mM、20~45mM、20~40mM、20~35mM、20~30mM、または20~25mMである。
【0079】
一部の実施形態では、カンファースルホン酸ナトリウムは、約5~200mMの濃度で存在する。一部の実施形態では、カンファースルホン酸ナトリウムの濃度は、少なくとも約5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、120mM、140mM、または150mMである。一部の実施形態では、カンファースルホン酸ナトリウムの濃度は、約200mMを上回らない、180mMを上回らない、150mMを上回らない、120mMを上回らない、100mMを上回らない、90mMを上回らない、80mMを上回らない、70mMを上回らない、60mMを上回らない、または50mMを上回らない。
【0080】
一部の実施形態では、ポリソルベート80(PS80)は、約0.015%~0.05%(重量/体積)の濃度で存在する。一部の実施形態では、PS80は、少なくとも約0.015%、0.016%、0.017%、0.018%、0.019%、0.02%、0.021%、0.022%、0.023%、0.024%、0.025%、0.026%、0.027%、0.028%、0.029%、または0.03%(重量/体積)の濃度で存在する。一部の実施形態では、PS80は、0.05%を上回らない、0.049%を上回らない、0.048%を上回らない、0.047%を上回らない、0.046%を上回らない、0.045%を上回らない、0.044%を上回らない、0.043%を上回らない、0.042%を上回らない、0.041%を上回らない、0.04%を上回らない、0.039%を上回らない、0.038%を上回らない、0.037%を上回らない、0.036%を上回らない、0.035%を上回らない、0.034%を上回らない、0.033%を上回らない、0.032%を上回らない、0.031%を上回らない、0.03%を上回らない、0.029%を上回らない、0.028%を上回らない、0.027%を上回らない、0.026%を上回らない、0.025%を上回らない、0.024%を上回らない、0.023%を上回らない、0.022%を上回らない、0.021%を上回らない、または0.02%を上回らない(重量/体積)濃度で存在する。
【0081】
一部の実施形態では、ポリソルベート20(PS20)は、約0.015%~0.05%(重量/体積)の濃度で存在する。一部の実施形態では、PS80は、少なくとも約0.015%、0.016%、0.017%、0.018%、0.019%、0.02%、0.021%、0.022%、0.023%、0.024%、0.025%、0.026%、0.027%、0.028%、0.029%、または0.03%(重量/体積)の濃度で存在する。一部の実施形態では、PS80は、0.05%を上回らない、0.049%を上回らない、0.048%を上回らない、0.047%を上回らない、0.046%を上回らない、0.045%を上回らない、0.044%を上回らない、0.043%を上回らない、0.042%を上回らない、0.041%を上回らない、0.04%を上回らない、0.039%を上回らない、0.038%を上回らない、0.037%を上回らない、0.036%を上回らない、0.035%を上回らない、0.034%を上回らない、0.033%を上回らない、0.032%を上回らない、0.031%を上回らない、0.03%を上回らない、0.029%を上回らない、0.028%を上回らない、0.027%を上回らない、0.026%を上回らない、0.025%を上回らない、0.024%を上回らない、0.023%を上回らない、0.022%を上回らない、0.021%を上回らない、または0.02%を上回らない(重量/体積)濃度で存在する。
【0082】
一部の実施形態では、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)は、約1%~10%(重量/体積)の濃度で存在する。一部の実施形態では、HPMCの濃度は、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、または9%(重量/体積)である。一部の実施形態では、HPMCの濃度は、約10%を上回らない、9%を上回らない、8%を上回らない、7%を上回らない、6%を上回らない、5%を上回らない、4%を上回らない、または3%を上回らない(重量/体積)。
【0083】
一部の実施形態では、HSA(ヒト血清アルブミン)またはBSA(ウシ血清アルブミン)は、約5~50mg/mLの濃度で存在する。一部の実施形態では、アルブミンの濃度は、少なくとも約5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、または45mg/mLである。一部の実施形態では、アルブミンの濃度は、約100mg/mLを上回らない、90mg/mLを上回らない、80mg/mLを上回らない、70mg/mLを上回らない、60mg/mLを上回らない、50mg/mLを上回らない、45mg/mLを上回らない、40mg/mLを上回らない、35mg/mLを上回らない、30mg/mLを上回らない、29mg/mLを上回らない、28mg/mLを上回らない、27mg/mLを上回らない、26mg/mLを上回らない、25mg/mLを上回らない、24mg/mLを上回らない、23mg/mLを上回らない、22mg/mLを上回らない、21mg/mLを上回らない、20mg/mLを上回らない、19mg/mLを上回らない、18mg/mLを上回らない、17mg/mLを上回らない、16mg/mLを上回らない、または15mg/mLを上回らない。一部の実施形態では、アルブミンの濃度は、約5~40mg/mL、5~35mg/mL、5~30mg/mL、5~25mg/mL、5~20mg/mL、10~50mg/mL、10~45mg/mL、10~40mg/mL、10~35mg/mL、10~30mg/mL、10~25mg/mL、10~20mg/mL、15~50mg/mL、15~45mg/mL、15~40mg/mL、15~35mg/mL、15~30mg/mL、15~25mg/mL、15~20mg/mL、20~50mg/mL、20~45mg/mL、20~40mg/mL、20~35mg/mL、20~30mg/mL、または20~25mg/mLである。
【0084】
一部の実施形態では、組成物は、5~8のpHを有する。一部の実施形態では、pHは、5を下回らない、5.4を下回らない、5.5を下回らない、5.6を下回らない、5.8を下回らない、5.9を下回らない、6を下回らない、6.1を下回らない、6.4を下回らない、6.5を下回らない、6.6を下回らない、6.8を下回らない、6.9を下回らない、7を下回らない、7.1を下回らない、7.2を下回らない、7.4を下回らない、7.5を下回らない、7.6を下回らない、7.8を下回らない、または7.9を下回らない。一部の実施形態では、pHは、8を上回らない、7.9を上回らない、7.8を上回らない、7.6を上回らない、7.5を上回らない、7.4を上回らない、7.2を上回らない、7.1を上回らない、7を上回らない、6.9を上回らない、6.8を上回らない、6.6を上回らない、6.5を上回らない、6.4を上回らない、6.3を上回らない、6.2を上回らない、6.15を上回らない、6.1を上回らない、6.05を上回らない、6を上回らない、5.95を上回らない、5.9を上回らない、5.85を上回らない、または5.8を上回らない。
【0085】
一部の実施形態では、製剤は、表3に示される組合せを含む。
表3. 製剤中の賦形剤の例示的な組合せ
【表3】
【0086】
一部の実施形態では、水性製剤は、少なくとも約80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mL、210mg/mL、220mg/mL、230mg/mL、240mg/mL、またはさらには250mg/mLの濃度のエマクツズマブを含む。一部の実施形態では、濃度は、約500mg/mLを上回らない、400mg/mLを上回らない、または300mg/mLを上回らない。
【0087】
一部の実施形態では、水性製剤は、少なくとも約80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mL、210mg/mL、220mg/mL、230mg/mL、240mg/mL、またはさらには250mg/mLの濃度のラクノツズマブを含む。一部の実施形態では、濃度は、約500mg/mLを上回らない、400mg/mLを上回らない、または300mg/mLを上回らない。
【0088】
一部の実施形態では、水性製剤は、少なくとも約80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mL、210mg/mL、220mg/mL、230mg/mL、240mg/mL、またはさらには250mg/mLの濃度のAM001を含む。一部の実施形態では、濃度は、約500mg/mLを上回らない、400mg/mLを上回らない、または300mg/mLを上回らない。
【0089】
一部の実施形態では、水性製剤は、少なくとも約80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mL、210mg/mL、220mg/mL、230mg/mL、240mg/mL、またはさらには250mg/mLの濃度のアキサチリマブを含む。一部の実施形態では、濃度は、約500mg/mLを上回らない、400mg/mLを上回らない、または300mg/mLを上回らない。
【0090】
一部の実施形態では、水性製剤は、少なくとも約80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mL、210mg/mL、220mg/mL、230mg/mL、240mg/mL、またはさらには250mg/mLの濃度のカビラリズマブを含む。一部の実施形態では、濃度は、約500mg/mLを上回らない、400mg/mLを上回らない、または300mg/mLを上回らない。
【0091】
一部の実施形態では、水性製剤は、少なくとも約80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mL、210mg/mL、220mg/mL、230mg/mL、240mg/mL、またはさらには250mg/mLの濃度のPD-0360324を含む。一部の実施形態では、濃度は、約500mg/mLを上回らない、400mg/mLを上回らない、または300mg/mLを上回らない。
【0092】
以下の表4は、AM001のいくつかの製剤を例示し、これらは、他の開示される抗体に使用することもできる。
表4. 例示的な製剤
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0093】
また、一部の実施形態では、本明細書に開示される水溶液を凍結乾燥させることによって調製することができる凍結乾燥組成物も、提供される。一部の実施形態では、凍結乾燥組成物を、水などの溶媒中に溶解させることによって調製することができる溶液もまた、提供される。
【0094】
III.製剤を使用する方法
開示される製剤/組成物を使用する方法もまた、提供される。一部の実施形態では、方法は、CSF1/CSF1R阻害により好適に処置することができるTGCTまたは他の腫瘍(例えば、黒色腫、神経膠芽腫、白血病、および先天性毳毛性多毛症(CHL))を有する患者を処置するためのものである。
【0095】
本開示は、局所投与によって、慢性疾患、例えば、腱鞘巨細胞腫(TGCT)、色素性絨毛性結節性滑膜炎(PVNS)、および関節リウマチ(RA)を処置するための医薬組成物、ならびに組成物を調製および使用するための方法に関する。
【0096】
腱鞘巨細胞腫(TGCT)は、免疫細胞、特に、マクロファージの動員を引き起こす滑膜に由来する新生物であり、腫瘤の形成をもたらす。これらの腫瘍は、それらの成長パターン(限局性またはびまん性)および部位(関節内または関節外)によって分類されることが多い。例えば、Giustini et al., Clinical Sarcoma Research, 2018 (8):14を参照されたい。
【0097】
限局性TGCTは、明確な結節によって特徴付けられる。任意の場所が可能であるが、限局性形態は、主として、指関節および手首(症例の85%)に関与し、足および足首、膝、股関節部、または他の関節位置はより稀である。びまん性形態は、主として、大きな関節、膝、股関節部、足首、および肘に関与する。限局性形態は、体系的に良性であり、びまん性形態は、より攻撃的かつ破壊的であり、例外的に悪性要素を含む場合がある。
【0098】
びまん性TGCT(D-TGCT)としても公知である色素性絨毛性結節性滑膜炎(PVNS)は、一般的に股関節部または膝において、またその周囲において生じる、滑膜におけるびまん性増殖によって特徴付けられる。限局性およびびまん性の疾患は、身体全体で関節内に生じ得る。PVNSはまた、関節外でも生じ得、希少な状況では、隣接するリンパ節および肺に転移し得る。
【0099】
TGCTの現在の処置選択肢は限られており、外科手術および放射線療法が挙げられる。外科手術は、TGCT/PVNSを有する患者の選択処置であることが多い。限局性TGCT/PVNSは、辺縁部切除によって管理される。再発は、患者の8~20%で生じ、再切除によって管理される。びまん性TGCT/PVNSは、再発する傾向がより高く(33~50%)、はるかにより攻撃的な臨床過程を有する。患者は、症状を有することが多く、生涯の間で複数回の外科手技を必要とする。一部の場合には、関節を置き換える必要がある場合がある。例えば、Palmerini et al., Expert opinion on Orphan Drugs, 2018 (6)12:753-7を参照されたい。本明細書に開示される製剤は、TGCTを処置するのに好適である。
【0100】
一部の実施形態では、組成物は、皮下投与される。一部の実施形態では、組成物は、筋肉内または硝子体内投与される。一部の実施形態では、組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態では、組成物は、関節内投与される。
【0101】
一部の実施形態では、投与は、疾患(例えば、TGCT)の部位に局所的であるか、またはその近傍である。一部の実施形態では、投与は、腫瘍内であるか、または腫瘍の近傍の部位である。
【0102】
一部の実施形態では、TGCTは、手におけるものである。一部の実施形態では、TGCTは、膝におけるものである。一部の実施形態では、TGCTは、指関節におけるものである。一部の実施形態では、TGCTは、手首におけるものである。一部の実施形態では、TGCTは、足におけるものである。一部の実施形態では、TGCTは、股関節部におけるものである。一部の実施形態では、TGCTは、肘におけるものである。一部の実施形態では、TGCTは、足首におけるものである。
【0103】
本開示の組成物によって好適に処置することができる疾患の別のタイプは、特発性肺線維症(IPF)である。特発性肺線維症(IPF)は、肺における肺胞嚢または肺胞の周囲の組織に罹患する重篤な慢性疾患である。この状態は、その肺組織が、未知の理由で厚くかつ硬くなると生じる。時間とともに、これらの変化が、線維症と称される肺において恒久的な瘢痕化を引き起こし得、これが呼吸を進行的に困難にする。
【0104】
一部の実施形態では、組成物は、皮下投与される。一部の実施形態では、組成物は、筋肉内または硝子体内投与される。一部の実施形態では、組成物は、静脈内投与される。
【0105】
本開示の組成物によって好適に処置することができる疾患のさらに別のタイプは、多発性嚢胞腎(PKD)である。PKDは、両側管状嚢胞の発生および間質性線維症の発生によって特徴付けられる、腎臓のもっとも一般的な遺伝性障害である。PKDは、先天性肝腎線維嚢胞症の群に属する常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)、および常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の2つの別個の遺伝子実体を指す。ARPKDは、子宮内または出生時に診断されることが一般的な希少な二臓器疾患であり、1:20,000生児出生の頻度で生じる。
【0106】
一部の実施形態では、組成物は、皮下投与される。一部の実施形態では、組成物は、筋肉内または硝子体内投与される。一部の実施形態では、組成物は、静脈内投与される。
【0107】
本開示の組成物によって好適に処置することができる疾患のなおも別のクラスは、眼疾患である。一部の実施形態では、投与は、眼または近傍組織への局部、眼、または局所注射である
【0108】
一部の実施形態では、本明細書に記載される製剤は、治療有効量の治療剤を提供するのに十分な量で提供される。一部の実施形態では、投与は、およそで、1ヶ月に1回である。一部の実施形態では、投与(例えば、皮下注射)は、およそで、1週間に1回である。一部の実施形態では、投与は、およそで、5日ごと、または4日ごと、3日ごと、2日ごと、または1日に、1回である。
【実施例】
【0109】
本開示は、純粋に本開示の例示であることが意図される以下の実施例を参照することによってさらに理解される。本開示は、本開示の単一の態様の例示として意図されるに過ぎない例示される実施形態によって範囲が制限されるものではない。機能的に同等であるいずれの方法も、本開示の範囲内である。本明細書に記載されるものに加えて、本開示の様々な改変形態が、前述の説明および添付の図面から当業者には明らかとなろう。そのような改変形態は、添付の特許請求の範囲に含まれる。
【0110】
(実施例1)
AM001のin vivo曝露
この実施例では、皮下投与後の抗CSF1R抗体AM001の血清濃度を測定した。測定値を用いて、望ましい投薬スケジュールを推定した。
【0111】
単回用量のAM001(70mg/mL)を、皮下(s.c.)注射によってカニクイザルに投与した(10mg/Kg×3匹のサル)。投与後毎日、抗体の血清濃度を測定した。データを、
図1にプロットし、PKパラメーターを、以下の表にまとめる。
【表5】
【0112】
絶対バイオアベイラビリティは、およそ62%であった。興味深いことに、1.25日のメジアンTmaxは、ヒトまたはサルにおいてヒトモノクローナル抗体で一般的に観察されるものよりも顕著に短い(JT Ryman & B Meibohm, Pharmacokinetics of Monoclonal Antibodies,CPT Pharmacometrics Syst Pharmacol. 2017 6(9): 576-588、KW Walker et al.,Pharmacokinetic comparison of a diverse panel of non-targeting human antibodiesas matched IgG1 and IgG2 isotypes in rodents and non-human primates, PLoS ONE2019, 14(5): e0217061)。
【0113】
データを、ヒト(70Kg)における3mg/Kgでの週ごとの皮下投薬の投影された血清濃度:時間プロファイルに外挿し、これにより、様々な可能性のある適応症、例えば、TGCTに有効な曝露が得られるはずである(
図2)。
【0114】
必要とされる用量(すなわち、210mg)を、皮下に一度に投与する必要がある場合、1.5mLを上回らない量を注射することができると想定し、最小薬物濃度は、140mg/mLとなるはずである。1mLしか注射できない場合、最小薬物濃度は、210mg/mLとなるはずである。1日2回の皮下注射については、1回当たり1mLとし、最小濃度は、105mg/mLとなるはずである。
【0115】
(実施例2)
AM001の製剤開発のための試料調製
この実施例では、複数の設計されたAM001の高濃度製剤を、それらの物理的安定性、化学的安定性、および粘度に関して試験した。安定性がより高く、粘度がより低いことが、最終的な高濃度製剤に所望される。
【0116】
試料調製
原薬(DS)AM001のストック溶液を、10mMの酢酸塩(pH5.2)、9%(重量/体積)のスクロース、および0.004%(重量/体積)のPS 20中の70mg/mLのAM001として提供した。
【0117】
TFFによるDS(AM001)の透析濾過および濃縮
透析の前にDSの透析濾過および濃縮の両方を行うために、Millipore Cogent μScaleシステムを使用して、接線流濾過(TFF)を行った。透析濾過を行う前に、DSを、室温まであたため、20mMのヒスチジン(pH5.3)緩衝液で約35mg/mLに希釈した。ヒスチジン緩衝液は、pH5.1~5.5で行ったパイロットスクリーニング研究で試験したいくつかの他の緩衝液(酢酸緩衝液およびクエン酸緩衝液)と比べてAM001の粘度を低減させることが見出されたため、これをこのステップに使用した。
【0118】
希釈したDSを、30%のポンプ速度、30%の撹拌速度(保持液について)、および約15psiの膜間圧力(TMP)を使用して、5透析濾過容量(diavolume)の20mMヒスチジン(pH5.3)緩衝液で透析濾過した。透析濾過に続いて、材料を、約160mg/mLまで濃縮し、次いで、5%のポンプ速度を使用して、TFFシステムから(120mLのポリカーボネートボトルに)回収した。溶液を、次いで、15mLの遠心分離スピン濃縮機にロードし、約170mg/mLに濃縮されるまで、4000×g(20℃)で20分間隔でスピンさせた。
【0119】
透析手順
Slide-A-Lyzer Mini Dialysisデバイス(20kD MWCO、2mLの容量)を使用して、濃縮し透析濾過したDS(約170mg/mL)を、製剤プラセボ(すなわち、緩衝液および張度改変剤/安定化剤)に対して透析することによって、製剤を調製した。それぞれの製剤(バルク材料)を、Millipore Millex-GVシリンジフィルター(0.22μm)を使用して滅菌濾過した。濾過後に、製剤を、0.5mLで1mLのタイプ1ガラスバイアルに分注し、ストッパーを付け(13mmのゴム製ストッパー)、圧着アルミニウムキャップで封止した。滅菌濾過および分注は、事前に滅菌されている材料(すなわち、バイアル、ストッパーなど)を使用して、バイオセーフティキャビネットで行った。
【0120】
タンパク質濃度を、SoloVPE機器(C Technologies, Inc.、Bridgewater、NJ)を使用して決定した。濃度は、1.58mL/(mg*cm)の吸光率を使用して、280nmでの吸光度から計算した。280nmでの吸光度測定値は、320および350nm補正を利用することによって散乱について補正した。
【0121】
(実施例3)
pH、緩衝液種、および粘度改変賦形剤の初回調査
この実施例では、AM001の安定性を、pH、緩衝液種、および粘度改変賦形剤の関数として調査した。
【0122】
試験したpH範囲は、4.5~6.5であった。評価は、40℃で1週間、25℃で2週間、5℃で4週間の保管後に行った。それぞれの試料(表A1)を、物理的安定性についてはサイズ排除クロマトグラフィーを使用し、化学的安定性についてはカチオン交換クロマトグラフィーを使用して評価した。それぞれの試料を、ゼロ時点で粘度について調べた。目視評価を、すべての時点で行った。
表A1.試験した製剤試料の一覧(F1~F17)
【表A1-1】
【表A1-2】
*F17は、ストック溶液である。
【0123】
目視観察
乳光が、ほとんどの製剤において明らかであり、賦形剤タイプおよび濃度によって影響を受けた。NaClを用いた製剤は、乳光が最も高かった。150mMのArg*HCl(F10)およびArg/Glu(F14)を用いた製剤は、ある程度の乳光を有したが、NaClを用いた製剤よりもはるかに目立たなかった。高いパーセンテージのポリオール、スクロース、またはプロリンを用いた製剤は、もっとも低い乳光を有した。所与の製剤における乳光は、F14など、保管安定性の減少に必ずしも対応しないことに留意されたい。
【0124】
安定性試料について、40℃で1週間または25℃で2週間の保管後に外観に明らかな変化はみられなかった(ゼロ時点と比べて)。肉眼で見えるタンパク質粒子の存在は、これらの保管安定性試料において容易に明らかというわけではなかった。しかしながら、F3およびF7は、5℃で4週間の保管後に、相分離の兆候を示した。5℃でのすべての他の試料は、それらのゼロ時点の対応物と同等の外観を有した。
【0125】
粘度評価
粘度評価の結果を、表A2~A3に提示する。
表A2. (25℃における)pH、濃度、および粘度
【表A2-1】
【表A2-2】
表A3. (25℃における)粘度:昇順に列挙
【表A3】
【0126】
データは、Arg*HCl、Arg*Glu、およびNaClを製剤に含めることが、すべて、粘度を低下させるのに有効であったことを示す。ヒスチジンもまた、同様に粘度を低下させるのに有効であった。酢酸塩を緩衝液として使用することは、しかしながら、高い粘度をもたらし、ポリオール、スクロース、およびプロリンはすべて、粘度を増加させた。粘度に対するpHの影響は、容易に明らかというわけではなかった。
【0127】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC):40℃で1週間
SECを使用して、試験試料について、単量体の減少、ならびに凝集体および/または高分子量(HMW)種の形成を測定した。結果を、表A4~A6に示す。
表A4. ゼロ時点と比べた40℃で1週間の時点の試料の単量体含量(面積%)の減少:昇順で列挙
【表A4】
表A5. ゼロ時点と比べた40℃で1週間の時点の試料の凝集体(HMW 2)の面積パーセントの増加:昇順で列挙
【表A5】
表A6. ゼロ時点と比べた40℃で1週間の時点の試料のHMW 1(面積%)の増加:昇順で列挙
【表A6】
【0128】
低分子量の形成は、40℃で1週間では無視できるものであった。ヒスチジンおよびArg*Gluは、漸増相対pHの条件下において、安定化させるものであった。ポリオールおよびプロリンは、同様に安定化させるとみられたか、または少なくとも、脱安定化させるものではなかった。NaClは、低い相対pHの条件下において、脱安定化させるものであった。しかしながら、荷電賦形剤(NaClを含む)は、高い相対pHの条件下においては、あまり脱安定化させるものではなかった。
【0129】
カチオン交換クロマトグラフィー(CEX):ゼロ時点および40℃で1週間
CEXを使用して、保管時間後のメインピークの減少、および酸性または塩基性ピークの変化を測定した。結果を、表A7~A10に提示する。
表A7. ゼロ時点と比べた40℃で1週間の試料のメインピーク(面積%)の減少:昇順で列挙
【表A7】
表A8. ゼロ時点と比べた40℃で1週間の試料の酸性ピーク領域(面積%)の増加:昇順で列挙
【表A8】
表A9. ゼロ時点と比べた40℃で1週間の試料の塩基性ピーク領域(面積%)の増加:昇順で列挙
【表A9】
【0130】
もっとも化学的に安定している製剤は、約5~5.5のpH領域のものであった。pH5以下で製剤化された試料については、塩基性ピーク含量の大きな増加が測定された。この減少は、ほぼ完全に塩基性領域に対するものであった。同様に、これは、凝集化した材料であった。pH5.7を上回るpH値では、メインピークの減少は、概して、酸性ピーク領域に対するものであり、減少は、おそらくは脱アミドに起因していた。
【0131】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC):25℃で2週間
25℃で2週間の後の試料のSEC評価の結果を、表A10~A11に示す。
表A10. ゼロ時点と比べた25℃で2週間の時点の試料の単量体含量(面積%)の減少:昇順で列挙
【表A10】
表A11. ゼロ時点と比べた25℃で2週間の時点の試料のHMW 1(面積%)の増加:昇順で列挙
【表A11】
【0132】
低分子量の形成は、25℃で2週間では無視できるものであった。加えて、HMW 2(凝集体)の形成は、25℃で2週間の時点では無視できるものであった。これは、40℃の条件が、かならずしも、低い温度におけるHMWの形成を予測するものではないことを示唆する。ヒスチジンおよびArg*Gluは、もっとも安定化させる賦形剤であるとみられた。Arg*HCl、ソルビトール、およびプロリンは、同様に安定化させるとみられたか、または少なくとも、脱安定化させるものではなかった。
【0133】
複数の製剤は、25℃で2週間の時点で、ストック溶液/原薬(F17)と同等の安定性を有した。もっとも低い粘度の製剤(F10およびF14)が、同等の安定性を有するもののなかにあった。F14が、最終的な結果と一致して、もっとも性能が良い製剤であった。
【0134】
カチオン交換クロマトグラフィー(CEX):25℃で2週間
25℃で2週間でのCEXの結果を、表A12~A14に示す。
表A12. ゼロ時点と比べた25℃で2週間の試料のメインピーク(面積%)の減少:昇順で列挙
【表A12】
表A13. ゼロ時点と比べた25℃で2週間の試料の酸性ピーク領域(面積%)の変化:昇順で列挙
【表A13】
表A14. ゼロ時点と比べた25℃で2週間の試料の塩基性ピーク領域(面積%)の増加:昇順で列挙
【表A14】
【0135】
25℃における傾向は、40℃でみられるものと類似であったが、分解速度は、はるかに低かった。一部の製剤に関する差は、アッセイの誤差の範囲内であった(メインピーク面積±0.3%)。もっとも化学的に安定している製剤は、約5.1~5.8のpH領域のものであった。塩基性ピーク含量は、一般に、漸減pHの関数として増加し、pH5以下で製剤化された試料でもっとも顕著であった。pH5.7を上回ると、メインピークの減少は、概して、酸性ピーク領域に対するものであった。おそらくは、この減少は、脱アミドに起因していた。クエン酸塩は、脱安定化するとみられ、一方で、他の賦形剤の作用は、識別することが困難である。
【0136】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC):2~8℃で4週間
2~8℃で4週間の後の試料のSEC評価もまた、行った。2~8℃で4週間の時点のほとんどの変化は、アッセイの誤差の範囲内であり、すなわち、測定可能な分解はなかった。しかしながら、F03およびF07は、相分離を経験した。低いpH(相対)、塩、およびクエン酸塩が、この相分離を引き起こす主要な因子であると考えられる。相分離は、2~8℃の保管温度においてのみ生じた。
【0137】
カチオン交換クロマトグラフィー(CEX):2~8℃で4週間
2~8℃で4週間でのCEXの結果を、表A15~A16に示す。
表A15. ゼロ時点と比べた2~8℃で4週間の試料のメインピーク(面積%)の減少:昇順で列挙
【表A15】
表A16. ゼロ時点と比べた2~8℃で4週間の試料の塩基性ピーク領域(面積%)の増加:昇順で列挙
【表A16】
【0138】
ほとんどの製剤に関するメインピーク(面積%)の差は、アッセイの誤差の範囲内であった(メインピーク面積±0.3%)。酸性ピーク含量における変化は、概して、有意ではなかった。
【0139】
全体的に、実施例3の実験は、ヒスチジンが、加速およびストレス温度条件下において試料を安定化させ、低い粘度をもたらしたため、それがもっとも性能のよい緩衝液種であったことを示す。
【0140】
Arg*GluおよびArg*HClは、粘度を低減させることに関して、もっとも影響のある賦形剤であった。Arg*Gluは、より良好な安定性プロファイルを有したが、差は概して小さかった。Arg*Glu、Arg*HCl、スクロース、ソルビトール、およびプロリンは、概して安定化させるものであったが、最後の3つは、粘度を増加させた。NaClおよびクエン酸塩は、特に、5以下のpHにおいて、脱安定化させるものであった。これらは、2~8℃での保管時に相分離を引き起こす傾向にあった。アルギニンは、低い相対pHで同様に脱安定化させる可能性がある。
【0141】
このデータセットから、化学的安定性は、5.1以上のpHかつ5.8以下のpHで最適となるとみられる。AM001は、このpH範囲において同様に物理的に安定であった。安定性は、賦形剤依存性であった。すべての試料のなかで、F14(pH5.8)が、全体的にもっとも良好な特性を有した。
【0142】
(実施例4)
製剤化条件の精緻化
実施例3は、ヒスチジンおよびアルギニン塩(HClまたはグルタミン酸)を用いて製剤化されたAM001が、もっとも低い粘度、および好ましい安定性プロファイルを有したことを示した。この実施例では、次いで、AM001の安定性を、緩衝液タイプ(コハク酸塩またはヒスチジン)、pH、およびアルギニン塩タイプ(HCl、グルタミン酸塩、またはアスパラギン酸塩)の関数として、より詳細に調査した。加えて、アルギニン塩を含有する糖/ポリオール製剤の安定性を試験した。
【0143】
ここで試験したpH範囲は、5.2~5.8であった。実験設計は、実施例3と類似である。試験した試料を、表B1に示す。
表B1. 試験した製剤試料の一覧(F1~F15)
【表B1】
*F15は、ストック溶液である。
【0144】
目視観察
40℃で1週間の保管後に、安定性試料の外観に明らかな変化はみられなかった(ゼロ時点と比べて)。これは、この研究の他の時点についても同様にあてはまった。肉眼で見えるタンパク質粒子の存在は、いずれの保管安定性試料においても容易に明らかというわけではなかった。
【0145】
粘度評価
粘度評価の結果を、表B2に提示する。
表B2. (25℃における)粘度:昇順に列挙
【表B2】
【0146】
データに示されるように、粘度は、ほとんどの製剤について、10mPa*sを下回った。Arg*HClは、しかしながら、Arg*GluまたはArg*Aspよりも、わずかにより粘度を低下させた。糖およびポリオールは、対照的に、アルギニン塩と共製剤化した場合に、溶液の粘度を増加させた。また、ヒスチジン濃度の増加(20から40mM)は、粘度を低下させることに対する影響が最小限であった。pHの影響に関して、粘度は、概して、pH5.2での全ての製剤について、pH5.5およびそれを上回るものと比べて高かった。
【0147】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC):40℃で1週間
SECを使用して、試験試料について、単量体の減少、ならびに凝集体および/または高分子量(HMW)種の形成を測定した。結果を、表B3~B5に示す。
表B3. ゼロ時点と比べた40℃で1週間の時点の試料の単量体含量(面積%)の減少:昇順で列挙
【表B3】
表B4. ゼロ時点と比べた40℃で1週間の時点の試料の凝集体(HMW 2)の面積パーセントの増加:昇順で列挙
【表B4】
表B5. ゼロ時点と比べた40℃で1週間の時点の試料のHMW 1(面積%)の増加:昇順に列挙
【表B5】
【0148】
ここでの傾向は、実施例3において観察されたものと一致していた。低分子量の形成は、40℃で1週間では無視できるものであった。Arg*Gluは、概して、同等のpHにおいて、Arg*HClよりも安定化させるものであった。Arg*Aspは、Arg*Gluに類似して機能した。メインピークの減少は、概して、pH5.5を上回ると最小化された。
【0149】
アルギニン塩を糖またはポリオールとともに製剤化することによって、安定性における改善は、観察されなかった。コハク酸緩衝液は、ヒスチジン緩衝液と比べて安定性に改善をもたらさなかった。
【0150】
カチオン交換クロマトグラフィー(CEX):ゼロ時点および40℃で1週間
40℃で1週間でのCEXの結果を、表B6~B8に示す。
表B6. ゼロ時点と比べた40℃で1週間の試料のメインピーク(面積%)の減少:昇順で列挙
【表B6】
表B7. ゼロ時点と比べた40℃で1週間の試料の酸性ピーク領域(面積%)の増加:昇順で列挙
【表B7】
表B8. ゼロ時点と比べた40℃で1週間の試料の塩基性ピーク領域(面積%)の増加:昇順で列挙
【表B8】
【0151】
これらの結果は、メインピークの減少が、5.2を上回るpHで最小化され、5.5~5.8のpH範囲における3つすべてのアルギニン塩について、だいたい同等であったことを示す。アルギニン塩単独と比べて、糖またはポリオールを用いて製剤化することに明らかな利点はなかった。加えて、コハク酸緩衝液は、ヒスチジン緩衝液と比べて化学的安定性に改善をもたらさなかった。複数の製剤は、ストック溶液/原薬(F15)と同等の化学的安定性を有した。
【0152】
分析を、25℃で2週間の保管後に反復した。結果を、表B9~B11に示す。
表B9. ゼロ時点と比べた25℃で2週間の試料のメインピーク(面積%)の減少:昇順で列挙
【表B9】
表B10. ゼロ時点と比べた25℃で2週間の試料の酸性ピーク領域(面積%)の増加:昇順で列挙
【表B10】
表B11. ゼロ時点と比べた25℃で2週間の試料の塩基性ピーク領域(面積%)の変化:昇順で列挙
【表B11】
【0153】
メインピークの減少は、試料の大半について、25℃で2週間の保管後に最小限であった。概して、減少は、pH5.8で製剤化された試料について、最小であるとみられた。ここでも、アルギニン塩単独と比べて、糖またはポリオールを用いて製剤化することに明らかな利点はなかった。コハク酸緩衝液は、ヒスチジン緩衝液と比べて化学的安定性に改善をもたらさなかった。さらに、複数の製剤は、ストック溶液/原薬(F15)と同等の化学的安定性を有した。
【0154】
また、分析を、2~8℃で5週間の保管後に行った。結果を、表B12~B14に示す。
表B12. ゼロ時点と比べた2~8℃で5週間の試料のメインピーク(面積%)の変化
【表B12】
表B13. ゼロ時点と比べた2~8℃で5週間の試料の酸性ピーク領域(面積%)の変化
【表B13】
表B14. ゼロ時点と比べた2~8℃で5週間の試料の塩基性ピーク領域(面積%)の変化
【表B14】
【0155】
メインピーク含量における変化の大半は、わずかであった。ほとんどの製剤は、2~8℃のストック溶液/原薬(F15)と同等の化学的安定性を有した。
【0156】
全体的に、実施例4は、より高い相対pHが、全体的な物理的および化学的安定性に関してもっとも有益であったことを示す。より具体的には、pH5.5~5.8、特に、pH5.8が、好ましい。
【0157】
5および25℃における物理的分解は、すべての製剤について、わずかであった。5および25℃における化学的分解もまた、わずかであったが、低い相対pH(pH5.2)において塩基性ピーク含量にわずかな増加があった可能性がある。
【0158】
アルギニン塩単独と比べて、糖またはポリオールを用いて製剤化することに明らかな利点はなかった。また、コハク酸緩衝液は、ヒスチジン緩衝液と比べて化学的安定性に改善をもたらさなかった。Arg/Gluは、ストレス条件(40℃)下において、他のアルギニン塩よりもわずかに良好な物理的安定性をもたらした。差は、しかしながら、高い相対pH(すなわち、pH5.8)ではあまり顕著ではなくなった。
【0159】
また、粘度は、漸増pH値においてわずかに減少するとみられた。全体的に、Arg*HClは、もっとも低い粘度をもたらした。
【0160】
(実施例5)
製剤化条件のさらなる精緻化
実施例3および4の結果に基づいて、この実施例では、さらなる製剤を設計し、許容される安定製剤に到達するために、それらを試験した。
【0161】
試験した試料を、表C1に示す。
表C1. 試験した製剤試料の一覧(F1~F15)
【表C1-1】
【表C1-2】
*F13は、ストック溶液である。
【0162】
これらの試料の目視試験は、F9(pH4.7)のみが、バイアル内で濁りを有したことを示した(濁度の増加とは関連しない)。すべての試料について、25℃で4週間のインキュベーション後に、肉眼で見える粒子に関連する変化または傾向はなかった。また、F1およびF10を除き、40℃で4週間後に、肉眼で見える粒子に関連する変化または傾向は観察されなかった。
【0163】
これらの試料における肉眼で見えない粒子のHIAC測定を、4週間後に行った。表C2に示されるように、概して、試料が有した肉眼で見えない粒子のカウント数は低く、5℃において肉眼で見えない粒子には関連する傾向はなかった。25℃では、F1(Lys HCl)およびF12(高いpH)について、10μmサイズの肉眼で見えない粒子の数が高かった。40℃では、F1(Lys HCl)およびF10~F12(低いおよび高いpH)は、より高い数の肉眼で見えない粒子を示した。
表C2. 4週間後の肉眼で見えない粒子
【表C2-1】
【表C2-2】
【0164】
次いで、SE-HPLCを使用して、ゼロ時点および異なる温度で4週間後の時点における試料の純度を評価した。結果を、表C3に提示する。
表C3. SE-HPLC純度測定
【表C3-1】
【表C3-2】
【0165】
多量のHMWSが、F12(pH6.5)について観察され、5℃および25℃でストレスを増加させた場合に変化はなかった。すべての製剤について、5℃においてHMWSに関連する変化はなかった。40℃では、F9(酢酸塩、pH4.7)にHWMSのもっとも大きな増加があり、続いてF10(pH5)であった。
【0166】
5℃において、断片化について、関連する変化は観察されなかった。25℃において、F12(pH6.5)について、わずかに高い断片化があった。40℃において、F1(Lys HCl)およびF4(スクロース)は、高い断片化を示した。F10(pH5)は、5℃および25℃において、他の試料よりも概して高い断片化を示した。
【0167】
まとめると、この実施例は、試験したすべての製剤が、肉眼で見える粒子および肉眼で見えない粒子に関して小さな変化を有したことを示す。色、pH、および濁度に関連する変化はなかった。いずれにせよ、リシンを賦形剤として添加した場合、または酢酸緩衝液における低いpH(F9)では、熱ストレス後に高い濁度があった。
【0168】
6.5の高いpH(F12)またはスクロース/Lys-HClの添加は、さらなる断片化傾向をもたらした。4.7の低いpH(F9)は、熱ストレス後にHMWSおよびLMWSの増加をもたらした。
【0169】
本開示は、本開示の個々の態様の1つの例示を意図している記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるものではなく、機能的に同等であるいずれの組成物または方法も、本開示の範囲内に含まれる。様々な改変形態および変化形態が、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、本開示の方法および組成物において作製され得ることが、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、本開示の改変形態および変化形態を包含することが意図されるが、ただし、それらが、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入ることを条件とする。
【0170】
本明細書において言及されるすべての刊行物および特許出願は、それぞれ個別の刊行物または特許出願が、具体的かつ個々に参照により組み込まれると示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】