IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チャン ソン カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2023-553541低圧インサート射出を用いた磁性コアの封止方法と、これを用いて封止した磁性コア
<>
  • 特表-低圧インサート射出を用いた磁性コアの封止方法と、これを用いて封止した磁性コア 図1
  • 特表-低圧インサート射出を用いた磁性コアの封止方法と、これを用いて封止した磁性コア 図2
  • 特表-低圧インサート射出を用いた磁性コアの封止方法と、これを用いて封止した磁性コア 図3
  • 特表-低圧インサート射出を用いた磁性コアの封止方法と、これを用いて封止した磁性コア 図4
  • 特表-低圧インサート射出を用いた磁性コアの封止方法と、これを用いて封止した磁性コア 図5
  • 特表-低圧インサート射出を用いた磁性コアの封止方法と、これを用いて封止した磁性コア 図6
  • 特表-低圧インサート射出を用いた磁性コアの封止方法と、これを用いて封止した磁性コア 図7
  • 特表-低圧インサート射出を用いた磁性コアの封止方法と、これを用いて封止した磁性コア 図8
  • 特表-低圧インサート射出を用いた磁性コアの封止方法と、これを用いて封止した磁性コア 図9
  • 特表-低圧インサート射出を用いた磁性コアの封止方法と、これを用いて封止した磁性コア 図10
  • 特表-低圧インサート射出を用いた磁性コアの封止方法と、これを用いて封止した磁性コア 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-22
(54)【発明の名称】低圧インサート射出を用いた磁性コアの封止方法と、これを用いて封止した磁性コア
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20231215BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20231215BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20231215BHJP
   H01F 17/06 20060101ALI20231215BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
H01F41/02 J
H01F27/32 140
H01F27/24 Q
H01F17/06 F
B29C45/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564654
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 KR2021018181
(87)【国際公開番号】W WO2023080326
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0149880
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517150021
【氏名又は名称】チャン ソン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHANG SUNG CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】302,Cheongam-ro,Naesu-eup Cheongwon-gun Chungcheongbuk-do 28146,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】パン、ソン シク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン
【テーマコード(参考)】
4F206
5E044
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
4F206AA24
4F206AA25
4F206AA29
4F206AA34
4F206AD02
4F206AD03
4F206AD12
4F206AD20
4F206AD35
4F206AE04
4F206AG13
4F206AH33
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB17
4F206JL02
4F206JQ81
5E044CA09
5E062AA10
5E070DA11
(57)【要約】
工程ステップの最小化により全工程のコストが縮小されるという効果と共に、含浸工程なしに封止工程を行っても、低圧インサート射出により封止することで所定の圧環強度を確保することができる効果、及び磁性特性の低下が少ないトロイダル磁性コアを提供する効果を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性コアをインサート物として金型に在置するインサート物在置ステップ;及び、
前記金型内を低圧に維持して高分子化合物を射出し、前記磁性コアの表面を前記高分子化合物により封止することで、前記磁性コアの表面に高分子封止化合物層を形成する封止化合物層形成ステップ;を含む
ことを特徴とするインサート射出工法を用いた磁性コア封止方法。
【請求項2】
前記磁性コアは、トロイダル構造の磁性コアである
請求項1に記載のインサート射出工法を用いた磁性コア封止方法。
【請求項3】
前記インサート物在置ステップは、複数の磁性コアを上下に積層するステップを含み、
前記複数の磁性コアは、一体に封止される
請求項1に記載のインサート射出工法を用いた磁性コア封止方法。
【請求項4】
前記複数とは、2個以上6個以下である
請求項3に記載のインサート射出工法を用いた磁性コア封止方法。
【請求項5】
前記インサート物在置ステップは、前記磁性コア以外の付随物を在置する付随物在置ステップをさらに含み、
前記高分子封止化合物層は、前記磁性コアと前記磁性コア以外の付随物とを一体に封止する
請求項1に記載のインサート射出工法を用いた磁性コア封止方法。
【請求項6】
前記磁性コア以外の付随物は、ボビン、補強台、支持台、及び巻線分割リブのうちいずれか1つを含む
請求項5に記載のインサート射出工法を用いた磁性コア封止方法。
【請求項7】
前記封止化合物層形成ステップは、前記磁性コアと前記磁性コア以外の付随物を同時に射出する一体射出、又は前記磁性コアと前記磁性コア以外の付随物を異時に射出する追加射出のうちいずれか一方を含む
請求項5に記載のインサート射出工法を用いた磁性コア封止方法。
【請求項8】
前記封止化合物層形成ステップの高分子化合物は、スーパーエンジニアリングプラスチック化合物を含む
請求項1に記載のインサート射出工法を用いた磁性コア封止方法。
【請求項9】
前記スーパーエンジニアリングプラスチック化合物は、熱可塑性スーパーエンジニアリングプラスチック化合物である
請求項8に記載のインサート射出工法を用いた磁性コア封止方法。
【請求項10】
前記熱可塑性スーパーエンジニアリングプラスチック化合物は、ポリフェニレンスルフィド(PolyPhenyleneSulfide、PPS)ポリフタルアミド(Polyphthalamide、PPA)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylen Terephthalate、PBT)、及び液晶結晶性ポリマー(Liquid Crystal Polymer、LCP)からなる群より選択されたいずれか1つ以上を含む
請求項9に記載のインサート射出工法を用いた磁性コア封止方法。
【請求項11】
前記低圧とは、100kgf/cm以下である
請求項1に記載のインサート射出工法を用いた磁性コア封止方法。
【請求項12】
請求項1に記載のインサート射出工法を用いて製造された
ことを特徴とする磁性コア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性コアの封止方法及びその製品に関し、より詳しくは、低圧インサート射出を用いて磁性コアを封止することで工程コストを低め、最終の磁性製品における磁性特性の低下を最小化しつつ圧環強度は維持する封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換用、フィルタ用として用いられるトロイダル磁性コア製品の製造工程中は、仕上げ部分においてトロイダル磁性コアを封止する封止工程を経る。本封止工程を通じて巻線中にワイヤによって発生するコアのクラック及びコイルのスクラッチ、磁性コアとコイルの絶縁、外気への露出による腐食及び侵食を防止することができる。
【0003】
このような上記封止方法では、図1より分かるように、塗装による塗装工法と、図2より分かるように、ケースの組立てによるプラスチックケーシング工法の2つがあり、両方法のうちで磁性コアの封止工程に適した封止方法を適宜選択して用いられた。
【0004】
但し、このような塗装工法とケーシング工法の場合は、塗装コア及びケースコアの場合、一定以上の圧環強度の確保のために、塗装及びケーシングの前洗浄(S10)及び硬化(S15)工程、又は含浸(S20)、洗浄(S25)、硬化(S30)工程が加えられる。このような含浸(S20)又は硬化(S15、S30)工程は、圧環強度の維持のためには必須な工程と認識され、これらの工程を省略できず、コストも必然的に高くなるという問題点があった。
【0005】
また、図3より分かるように、従来のリボンコア工法の場合は、巻線工程中に発生する圧力による特性低下の防止、及びモールド液のポッティング(potting)工程を伴う場合は、モールド液の内部浸透及びモールド液の硬化中に発生する膨張圧による特性低下の防止、フィールドでの動作中に発生する振動及び衝撃による特性低下の防止のために、衝撃吸収用の追加資材を加えたケーシング方法に限定されるという問題点があった。
【0006】
また、従来のインサート射出を用いてトロイダル磁性コア製品を射出する場合、磁性特性の低下が非常に大きく発生し、製品の圧環強度によってクラックを誘発することもあった。特に、磁歪が30μm/mに至るパーマロイ製品、及び圧環強度の低いMPP高透磁率の製品(熱処理の後)の場合、それぞれコアロスの大きな増加と製品のクラックが非常に容易に発生するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許公報第10-2054299号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が達成しようとする技術的課題は、簡単な工程過程を通じて、トロイダル封止方法で工程コストが過度に高いという第1問題点を克服した磁性コアの封止方法を提供する。
【0009】
また、本発明が達成しようとする技術的課題は、含浸、洗浄、硬化工程で用いられる環境に有害な溶液、洗浄溶液及び含浸溶液を使用しても、前記含浸工程なしに封止すると圧環強度を確保できないという第2問題点を克服した磁性コアの封止方法を提供する。
【0010】
また、本発明が達成しようとする技術的課題は、インサート射出を用いる場合、磁性コアの最終製品における磁性特性の低下が激しいという第3問題点を解決する磁性コアの封止方法及びその製品を提供する。
【0011】
また、本発明が達成しようとする技術的課題は、積層されたトロイダルコア又はボビン役割部などのような様々な形態のコアを一体にコーティング可能な封止方法が必要であるという第4問題点を解決する磁性コアの封止方法及びその製品を提供する。
【0012】
本発明が達成しようとする技術的課題は、上述した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は、以下の記載より本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば明確に理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記技術的課題を達成するために、本発明の一実施例は、磁性コアをインサート物として金型に在置するインサート物在置ステップ;及び前記金型内を低圧に維持して高分子化合物を射出し、前記磁性コアの表面を前記高分子化合物により封止することで、前記磁性コアの表面に高分子封止化合物層を形成する封止化合物層形成ステップを含むことを特徴とする、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法を提供する。
【0014】
本発明の一実施例において、前記磁性コアは、トロイダル構造の磁性コアであることを特徴とする、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法であってもよい。
【0015】
また、本発明の実施例において、前記インサート物在置ステップは、複数の磁性コアを上下に積層するステップを含み、前記複数の磁性コアは、一体に封止されることを特徴とする、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法であってもよい。
このとき、前記複数とは、2個以上6個以下であることを特徴とする、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法であってもよい。
【0016】
また、本発明の実施例において、前記インサート物在置ステップは、前記磁性コア以外の付随物を在置する付随物在置ステップをさらに含み、前記高分子封止化合物層は、前記磁性コアと前記磁性コア以外の付随物とを一体に封止することを特徴とする、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法であってもよい。
【0017】
このとき、前記磁性コア以外の付随物は、ボビン、補強台、支持台のような構造の締結及び固定のための形状や、巻線分割リブのような突出形状を含むことを特徴とする、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法であってもよい。
【0018】
このとき、前記封止化合物層形成ステップは、前記磁性コアと前記磁性コア以外の付随物を同時に射出する一体射出、又は前記磁性コアと前記磁性コア以外の付随物を異時に射出する追加射出のうちいずれか一方を含むことを特徴とする、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法であってもよい。
【0019】
また、本発明の実施例において、前記封止化合物層形成ステップの高分子化合物は、スーパーエンジニアリングプラスチック化合物を含むことを特徴とする、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法であってもよい。
【0020】
このとき、前記スーパーエンジニアリングプラスチック化合物は、熱可塑性スーパーエンジニアリングプラスチック化合物であることを特徴とする、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法であってもよい。
【0021】
このとき、前記熱可塑性スーパーエンジニアリングプラスチック化合物は、ポリフェニレンスルフィド(PolyPhenyleneSulfide、PPS)ポリフタルアミド(Polyphthalamide、PPA)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylen Terephthalate、PBT)、及び液晶結晶性ポリマー(Liquid Crystal Polymer、LCP)などからなる群より選択されたいずれか1つ以上を含むことを特徴とする、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法であってもよい。
【0022】
また、本発明の実施例において、前記低圧とは、100kgf/cm以下であることを特徴とする、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法であってもよい。
上記の技術的課題を達成するために、本発明の他の実施例は、上記封止方法によって封止された磁性コアを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施例によると、封止工程において含浸ステップ、洗浄ステップ、硬化ステップを含んでいないことで、その工程ステップの最小化により全工程のコストの縮小が可能であるという第1効果、含浸工程なしに封止工程を行っても、低圧インサート射出により封止することで、所定の圧環強度を確保することができ、含浸工程を排除することで、環境及び人体に有害な含浸溶液及び洗浄溶液を排除できるという第2効果、及び低圧インサート封止工程を通じて、最終の磁性製品における磁性特性の低下が少なく、さらに耐電圧特性が増加するという第3効果を提供することができる。
【0024】
本発明の効果は上述した効果に限定されず、本発明の詳細な説明又は特許請求の範囲に記載の発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものとして理解される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来の塗装コア、ケースコア、及びリボンコア工法の封止方法を示す図である。
図2】従来の塗装コア、ケースコア、及びリボンコア工法の封止方法を示す図である。
図3】従来の塗装コア、ケースコア、及びリボンコア工法の封止方法を示す図である。
図4】本発明の一実施例による、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法の手順図を示す図である。
図5】本発明の一実施例の磁性コア封止方法によって製造された封止化合物層を含む磁性コアの例示図である。
図6】本発明の一実施例の磁性コア封止方法によって製造された封止化合物層を含む磁性コアの例示図である。
図7】複数の磁性コアが上下に積層されて一体に封止された磁性コアを示す図である。
図8】ボビン又は補強台などの付随物が一体に封止された磁性コアを示す図である。
図9】ボビン又は補強台などの付随物が一体に封止された磁性コアを示す図である。
図10】ボビン又は補強台などの付随物が一体に封止された磁性コアを示す図である。
図11】本実施例2で製造した2個の磁性コアを一括して封止したトロイダル磁性コアの実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、添付の図面を参照して本発明を説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で具現でき、ここで説明する実施例に限定されるのではない。また図面で本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通じて類似の部分に対しては類似の図面符号を付けた。
【0027】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結(接続、接触、結合)」されているとするとき、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を介して「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのでなく、他の構成要素をさらに備えてもよいことを意味する。
【0028】
明細書全体で用いられた「磁性コア」は、磁性を有する金属物体を意味する。
【0029】
本明細書で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加可能性をあらかじめ排除しないものとして理解される。
【0030】
以下、添付の図面を参考して本発明の実施例を詳しく説明する。
図1ないし図3は、それぞれ従来の塗装コア、ケースコア、及びリボンコア工法の封止方法を示す図である。
図4は、本発明の一実施例による、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法の手順図を示す図である。
図5及び図6は、本発明の一実施例の磁性コア封止方法によって製造された封止化合物層を含む磁性コアの例示図である。以下では、図1ないし図6を参照して本発明の一実施例を説明する。
【0031】
本発明の一実施例では、磁性コア(200)をインサート物として金型に在置するインサート物在置ステップ(S100);及び前記金型内を低圧に維持して高分子化合物を射出し、前記磁性コアの表面を前記高分子化合物により封止することで、前記磁性コアの表面に高分子封止化合物層(300)を形成する封止化合物層形成ステップ(S200)を含むことを特徴とする、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法を提供する。
【0032】
上記封止方法によると、図5及び図6より分かるように、磁性コア(200)と、前記磁性コア(200)を取り囲んでいる高分子封止化合物層(300)とを含んでいる最終の磁性製品(100)が形成される。
【0033】
本発明のインサート射出工法を用いた磁性コア(200)の封止方法は、従来の塗装コア及びケースコアによる封止方法よりも、工程ステップの少ない封止方法であるところ、工程コストの面で遥かに経済的である。
【0034】
すなわち、本発明の一実施例による、インサート射出工法を用いた磁性コア封止方法は、従来の塗装コア及びケースコアの封止方法とは異なり、含浸ステップ(S20)、洗浄ステップ(S10、S25)、硬化ステップ(S15、S30)が含まれていない。
【0035】
ここで、前記含浸(S20)とは、多孔性の物体に気体又は液体状態の物質を浸透させて、その物体の特性を使用目的に応じて改善することを意味し、従来の工程で上記の工程を含む理由は、磁性コアを構成する粉末内部の微細気孔に含浸液を浸透及び硬化させて気孔を埋めることで、圧環強度を増加させるために経るステップである。
【0036】
本発明のインサート射出工法を用いた磁性コア(200)の封止方法の場合、前記含浸、洗浄、硬化工程を排除し、塗装工程に代えてインサート射出により封止するステップを含むことで所定の圧環強度が確保されるため、前記3つの工程ステップを含んでいないことにより発生し得る圧環強度の減少も防止することができる。
以下では、前記インサート物在置ステップ(S100)を説明する。
【0037】
本ステップ(S100)では、磁性コア(200)をインサート物として、金型内に在置させるステップ(S110)を含む。また、本ステップ(S100)では、後述のように、ユーザの必要に応じて様々な付随物を在置させる付随物在置ステップ(S120)も含んでもよい。
【0038】
このとき、前記磁性コア(200)は、種々の形状を有する磁性コアであってもよく、例えば、トロイダル構造、板状構造、リボン構造などの様々な形態の磁性コアであってもよい。しかし、上記の例示に限定されることなく、本発明の目的と効果を達成可能な磁性コアの構造であれば、いずれも本権利範囲に属すると解釈しなければならない。
【0039】
また、前記磁性コア(200)は、例えば、Fe、Ni、Mo、Si及びCrを含む群のうちいずれか1つ以上を含んでもよく、上記の例示に限定されないことは言うまでもない。前記最終の磁性製品(100)が必要な産業分野又は技術分野によって、ユーザは必要に応じて磁性コアの成分を選択することができる。
【0040】
図7は、複数の磁性コアが上下に積層されて一体に封止された磁性コアを示す図である。以下では、図7を参照して複数の磁性コアを積層して磁性コアを封止する方法を説明する。
【0041】
後述のように、本発明の封止方法では、射出ステップで種々の付随物又は磁性コアを共に射出することで、複数の付随物を一体にして最終の磁性製品(100)を形成することができる。
【0042】
このとき、前記インサート物在置ステップ(S100)では、複数の磁性コアを順に在置してから一体に射出して封止することで、複数の磁性コア(210、220)を上下に積層することを含み、封止化合物層内に複数の磁性コアが一体に封止されるようにする封止方法を提供することができる。
【0043】
複数の磁性コアを積層して用いる技術分野で、各磁性コアが分離して封止されると、磁性コアが積層された後、これらの間に封止のためのコーティング層が磁性コアを分離させることで電気的特性を低下させ、これらを一体に固定させるために別の工程過程が必要であるという短所と、固定させないと積層の形態が不安定であるという短所があるところ、前記複数の磁性コアを一体に封止すると、これらの短所を克服することができる。
このとき、前記複数の磁性コアは、2個以上6個以下、又は高さ150mm以下に積層される形態の磁性コアであってもよい。
【0044】
前記複数の磁性コア(210、220)の個数範囲は、用いられる磁性コア(200)の幅又は表面積の大きさと、後述の封止化合物層形成ステップ(S200)で用いられる高分子化合物であるスーパーエンジニアリングプラスチックの種類によってその上限も変わり得る。
【0045】
但し、前記積層された磁性コア(210、220)が6個を超過すると、積層構造の垂直方向への外力に脆弱となり、これによって封止化合物層に亀裂が生じ、封止化合物層に損傷が加えられる。また複数の製品を積層した構造が垂直方向に150mm以上長くなると、封止化合物層を射出する射出金型の構成が不可である。
【0046】
図8ないし図10は、ボビン又は補強台などの付随物が一体に封止された磁性コアを示す図である。以下では、図8ないし図10を参照して付随物在置ステップ(S120)をさらに含むインサート物在置ステップ(S100)を説明する。
【0047】
本インサート物在置ステップ(S100)では、磁性コア以外に様々な付随物(400、500)を在置する付随物在置ステップ(S120)をさらに含み、封止化合物層内に様々な付随物を含む一体型磁性コアも製造することができる。
【0048】
このとき、前記付随物は、具体的にはボビン又は補強台に対応する付随物であってもよいが、これらに限定されず、磁性コアの使用に必要な様々な付随物を含んでもよいことは言うまでもない。
【0049】
このとき、前記ボビン、及び補強台の構成成分は、好ましくは前記封止化合物層(300)と同一の成分からなるものであってもよいが、これらに限定されず、ポリフェニレンスルフィド(PolyPhenyleneSulfide、PPS)、ポリフタルアミド(Polyphthalamide、PPA)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylen Terephthalate、PBT)などで構成された熱可塑性樹脂などを構成成分として有するボビン及び補強台を用いてもよい。
【0050】
このとき、前記磁性コアと磁性コア以外の付随物とを封止する封止化合物層形成ステップ(S200)では、前記磁性コアと前記磁性コア以外の付随物を同時に射出する一体射出、又は前記磁性コアと前記磁性コア以外の付随物を異時に射出する追加射出のうちいずれか一方であってもよい。
【0051】
前記一体射出を行う場合は、付随物と磁性コアとの間に別の組立工程が除外されるという効果がある。一方、追加射出を行う場合は、磁性コアの表面に組立用形状を先ず射出するため、付随物の追加形状との組立性が高まるという効果があるところ、形状の複雑な付随物の場合に使用可能であろう。また、ユーザが利用しようとする産業分野、技術分野、及び付随物の構造の複雑性などを考慮して、使用状況に合わせて上記の方法を適宜選択して射出時期を決定してもよいであろう。
【0052】
前記封止化合物層形成ステップ(S200)のうち追加射出過程は、第1-1結合部(410)が形成されている補強台(400)と、第2-1結合部(420)が形成されている磁性コアの封止化合物層とが結合されてもよく、このとき、上記結合過程は、図8より分かるように、トロイダル磁性コアの中心部を貫通して結合されることであってもよい。
【0053】
他の上記追加射出過程は、第1-2結合部(510)が形成されている補強台(500)と、第2-2結合部(520)が形成されている磁性コアの封止化合物層とが結合されてもよく、このとき、上記結合過程は、図9より分かるように、磁性コアを垂直に立てて結合することであってもよい。
【0054】
また他の上記追加射出過程は、図10より分かるように、前記分割リブ(610)が形成されている磁性コアの封止化合物層が結合されてもよい。このとき、前記分割リブ(610)は、その機能によって偏心巻線又は分割巻線を行うために、リーブ形状を垂直に立てて空間を分離する機能を行うようになる。
以下では、前記封止化合物層形成ステップ(S200)を説明する。
【0055】
本封止化合物層形成ステップ(S200)では、前記インサート物在置ステップ(S100)を通じて磁性コアが内部に位置する金型に、高分子化合物を射出(S210)し、前記磁性コアの表面を前記高分子化合物により封止することで、前記磁性コアの表面に高分子封止化合物層を形成するステップである。
【0056】
このとき、前記高分子化合物は、スーパーエンジニアリングプラスチック化合物を含んでもよい。スーパーエンジニアリングプラスチック化合物は、耐熱性が高く、機械的強度が強く、寸法安定性と電気的特性が良子であるところ、前記封止化合物層(300)に用いられるのに適した化合物である。
【0057】
このとき、前記スーパーエンジニアリングプラスチック化合物は、具体的には熱可塑性スーパーエンジニアリングプラスチック化合物であってもよい。前記熱可塑性スーパーエンジニアリングプラスチック化合物は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PolyPhenyleneSulfide、PPS)、ポリフタルアミド(Polyphthalamide、PPA)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylen Terephthalate、PBT)、液晶結晶性ポリマー(Liquid Crystal Polymer、LCP)などからなるほとんどの熱可塑性樹脂から選択されたいずれか1つ以上を含んでもよいが、上記の例示に限定されないことは言うまでもない。
【0058】
また、前記高分子化合物を射出する封止化合物層形成ステップ(S210)は、前記射出工程で用いる金型の温度を90℃から150℃に維持し、射出圧力を低圧に維持し、射出機で前記高分子化合物の注入速度を0mm/s超過50mm/s以下に維持し、工程時間を5秒以下にしてもよい。
【0059】
このとき、前記低圧とは、100kgf/cm以下に維持することであってもよい。このとき、前記圧力が100kgf/cmを超過する場合は、その圧力が過度に高くなり、最終製品の磁気特性に悪影響を及ぼすという問題が発生する。
【0060】
このため、前記圧力を100kgf/cm以下に維持する低圧状態のインサート射出工程を行うことで、表面が熱可塑性スーパーエンジニアリングプラスチックで封止された前記軟磁性の金属粉末コアを得ることができる。
【0061】
以下では、実施例及び実験例を通じて本発明についてより詳しく説明する。しかし、本発明が下記の実施例及び実験例に限定されるのではない。
【0062】
実施例1
本発明の一実施例によって封止工程を行い、トロイダル磁性コアを製造した。具体的な工程ステップは下記のとおりである。
【0063】
前記磁性コアは、軟磁性の金属粉末を圧縮成形して製造し、前記磁性コアを熱処理した後、含浸、硬化、塗装工程を除いた後、これに代わるために射出工程を行い、このとき、前記コアをインサート物として用いて射出金型の内部に前記インサート物を挿入し、前記軟磁性の金属粉末コアの表面に熱可塑性スーパーエンジニアリングプラスチック樹脂を射出工程で塗布した後、前記磁性コアの表面に封止化合物層を形成した。
このように、上記の工程ステップを行うことで、成功的にトロイダル磁性コアを製造した。
【0064】
実施例2
本発明の一実施例によって、2個の磁性コアを積層した後、2個の磁性コアを一体に封止することで、2個の磁性コアが一体に封止されたトロイダル磁性コアを製造した。具体的な工程ステップは、下記のとおりである。
【0065】
本実施例2では、上記実施例1の磁性コアを金型に積層して挿入した環境で金型に射出するステップで、2個の磁性コアを射出することを除いては、上記実施例1と同一の方法でトロイダル磁性コアの製造を行った。
【0066】
図11は、本実施例2で製造した2個の磁性コアを一括して封止したトロイダル磁性コアの実施例を示す図である。
【0067】
このように、図11より分かるように、本実施例2では、上記の工程ステップを行うことで、成功的に2個積層された磁性コアを一括して封止したトロイダル磁性コアを製造した。
【0068】
実施例3
本発明の一実施例によって、封止化合物層形成ステップでボビンを共に射出して、ボビン一体型トロイダル磁性コアを製造した。具体的な工程ステップは、下記のとおりである。
【0069】
本実施例3では、上記実施例1のスーパーエンジニアリングプラスチックを射出するステップで、ボビンを共に射出することを除いては、上記実施例1と同一の方法でトロイダル磁性コアの製造を行った。
このように、上記の工程ステップを行うことで、成功的にボビン一体型トロイダル磁性コアを製造した。
【0070】
実験例1
本実験例1では、上記実施例1で製造したトロイダル磁性コアの磁気特性の低下の程度を確認する実験を行った。本実験例1の具体的な実験方法は、下記の方法のとおりである。
本実験例1では、トロイダル磁性コアを一般に封止した製品と、本発明の磁性コア封止方法を用いた製品を製作して両特性の比較実験を行った。
【0071】
実験結果は下記表1のとおりであり、このように、本実験例1を通じて、本発明の磁性コア封止方法を用いる場合、従来の一般に封止した製品とは異なり、磁気特性の低下の程度が低く、コア損失がより低く製作されることが分かる。
【0072】
【表1】
【0073】
上記表1において、entry1は、従来の塗装方法を用いて塗装した塗装品を意味し、前記entry2は、ポリフェニレンスルフィド樹脂で封止した本発明の塗装品を意味し、前記entry3は、ポリフタルアミド樹脂で封止した本発明の塗装品を意味し、前記entry4は、ポリブチレンテレフタレート樹脂で封止した本発明の塗装品を意味する。
【0074】
実験例2
本実験例2では、上記実施例1で製造したトロイダル磁性コアの圧環強度の維持の程度を確認する実験を行った。本実験例2の具体的な実験方法は、下記方法のとおりである。
【0075】
本実験例2では、トロイダル磁性コアを一般に封止した製品と、本発明の磁性コア封止方法を用いた製品を製作して、圧環強度装備を用いて強度比較実験を行った。
【0076】
このように、上記実験例2を通じて、本発明の磁性コア封止方法を用いる場合、従来の他の封止方法とは異なり、含浸工程などを含んでいなくても圧環強度が維持されることが分かる。その結果は、下記表2のとおりである。
【0077】
【表2】
【0078】
実験例3
本実験例3では、上記実施例1で製造したトロイダル磁性コアの耐電圧の特性を確認する実験を行った。本実験例3の具体的な実験方法は、下記方法のとおりである。
【0079】
本実験例3では、本発明の磁性コア封止方法を用いた製品を製作して極限の状況を試験するため、単に本発明の発明品を用意して絶縁性テストを行った。耐電圧装備を用いてAC @5.0kVで2.0秒、60秒の2つの条件で耐電圧実験を行った。
【0080】
実験結果は下記表3のとおりであり、このように、本実験例3によると、本発明の磁性コア封止方法を用いる場合、従来の一般の塗装で封止されたトロイダル磁性コアは、耐電圧特性の制限を1.0kVにすることに比べて、耐電圧特性が良好に維持されることが分かる。
【0081】
【表3】
【0082】
上記表3で、entryAは、従来の塗装方法を用いた製品群を意味し、前記entryBは、ポリフェニレンスルフィド樹脂で封止した本発明の製品群を意味し、前記entryCは、ポリフタルアミド樹脂で封止した本発明の製品を意味し、前記entryDは、ポリブチレンテレフタレート樹脂で封止した本発明の製品群を意味する。
【0083】
上述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば本発明の技術的思想や必須な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形可能である。よって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的であり、限定的でない。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して実施されてもよく、同様に分散したように説明されている構成要素が結合された形態で実施されてもよい。
【0084】
本発明の範囲は後述の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、またその均等概念から導き出されるあらゆる変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
100:最終の磁性製品
200:磁性コア
210、220:複数に積層された磁性コア
300:封止化合物層
400:補強台
410:補強台の第1-1結合部
420:封止化合物層の第2-1結合部
500:補強台
510:補強台の第1-2結合部
520:封止化合物層の第2-2結合部
610:分割リブ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】