(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-22
(54)【発明の名称】自律モータ車両の運動を制御するための制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 50/06 20060101AFI20231215BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20231215BHJP
B60W 40/114 20120101ALI20231215BHJP
【FI】
B60W50/06
B60W30/10
B60W40/114
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534998
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2021086572
(87)【国際公開番号】W WO2022129564
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アツイ, フサム
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス, ジョン-ハイロ
(72)【発明者】
【氏名】ミラネス, ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】セナーム, オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA18
3D241BA54
3D241BB27
3D241DB12Z
(57)【要約】
本発明は、基準経路(T)に沿って自律モータ車両(10)の運動を制御するための制御方法に関する。制御方法は、基準距離(L)の関数として、所望されるヨースピード(W
des)を決定するステップ(E5)と、ヨー誤差を決定するステップ(E6)とを含む。基準距離(L)は、ヨー誤差が、あらかじめ決定されたヨー誤差しきい値(S1)以下であるような様式で選択される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準軌道(T)に沿って自律モータ車両(10)の運動を制御するための制御方法であって、
- 前記自律モータ車両の所望されるヨースピード(W
des)を決定するステップ(E5)であって、前記所望されるヨースピード(W
des)は、時点tにおける、前記車両と前記基準軌道(T)との間の基準距離(L)の関数である、所望されるヨースピード(W
des)を決定するステップ(E5)、
- 前記自律モータ車両の前記所望されるヨースピード(Wdes)の、現実のヨースピード(W)との比較に対応するヨー誤差(Err
lacet)を決定するステップ(E6)、
- 前記自律モータ車両を制御するのに適するアクチュエータにステアリングホイール角加速度(δ°°)を送信するステップ(E7)であって、前記ステアリングホイール角加速度は、前記ヨー誤差(Err
Lacet)から決定される、ステアリングホイール角加速度(δ°°)を送信するステップ(E7)
を含み、
前記基準距離(L)は、前記ヨー誤差が、あらかじめ決定されたヨー誤差しきい値(S1)以下であるように選択されることを特徴とする、制御方法。
【請求項2】
前記ヨー誤差(Err
lacet)は、横方向誤差(y
L)が所定の横方向誤差しきい値(S2)よりも上であるときに、前記ヨー誤差しきい値(S1)以下に維持され、前記横方向誤差(y
L)は、前記基準距離(L)において、前記基準軌道(T)、および、前記車両(10)の位置(P)から決定される、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記ヨー誤差(Err
lacet)は、前記自律車両のスピード(v
x)が所定のスピードよりも大であるときに、前記ヨー誤差しきい値(S1)以下に維持される、請求項1または2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記所望されるヨースピード(W
des)は、式:
にしたがって決定され、式中、y
Lは、前記基準距離(L)における横方向誤差であり、v
xは、前記自律モータ車両のスピードである、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項5】
前記基準距離は、式:
にしたがって決定され、式中、K
LASは、制御関数であり、ρは、前記車両のスピードv
x、横方向誤差y
L、および、時点t-1において決定される基準距離L’に依存するパラメータであり、δ°°は、ステアリングホイール角加速度である、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項6】
前記制御方法は、前記自律モータ車両の横方向運動を制御するように適合させられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項7】
アクチュエータによって、基準軌道に沿って自律モータ車両の運動を制御するための制御デバイスであって、
- 前記アクチュエータにステアリングホイール角加速度(δ°°)を提供するのに適する横方向コントローラ(206)であって、前記ステアリングホイール角加速度(δ°°)は、前記自律モータ車両(10)の所望されるヨースピード(W
des)と現実のヨースピード(W)との間の比較に対応するヨー誤差(Err
lacet)から決定される、横方向コントローラ(206)、
- 前記コントローラに、前記所望されるヨースピード(W
des)を供給するのに適するスマート基準オプティマイザ(205)であって、前記所望されるヨースピード(W
des)は、時点tにおける、前記自律モータ車両と前記基準軌道との間の基準距離(L)の関数であり、前記基準距離(L)は、前記ヨー誤差(Err
lacet)が、あらかじめ決定されたヨー誤差しきい値(S1)以下であるように選択される、スマート基準オプティマイザ(205)
を含む、制御デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の制御デバイス(20)により動作させられ得るプログラム命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記プログラム命令が、前記制御デバイス(20)により実行または解釈されるときに、自律モータ車両(10)における、請求項1から6のいずれか一項に記載の制御方法の実施をトリガする、コンピュータプログラム製品。
【請求項9】
請求項7に記載の制御デバイス(20)を含む自律モータ車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律モータ車両の運動を制御するための制御方法、そのような運動を制御するための制御デバイス、前記制御デバイスにより動作させられ得るプログラム命令を含むコンピュータプログラム製品、および、前記制御デバイスを含む自律モータ車両に関係する。
【背景技術】
【0002】
近年において、モータ車両装備運転者支援システムにおいてなされた進歩は、道路安全性における著しい改善に寄与した。将来の難題は、自律モータ車両を設計することである。自律モータ車両は、運転者からの介入を伴わずに、またはほとんど伴わずに、通行可能な道路上で走行するように適合させられるモータ車両である。概念は、究極的には、公共の本道上で、完全に安全に走行し、そのようにすることを、本道上に存在する他の車両または障害物(人、動物、木、その他)により発生させられる交通に関わらず行い得る、そのような車両を開発および生産することを目標とする。自律モータ車両の観念は、ここでは、完全自律モータ車両に及び、その完全自律モータ車両において、人オペレータの介入は、前記車両の運転のために必要でない。この観念は、さらには、自動化された運転支援システムを有する、いわゆる「半自律」モータ車両であるが、その「半自律」モータ車両において、人オペレータの介入は、総体的に重要なままである。
【0003】
自律モータ車両の動作は、一般的には、組み込み型ナビゲーションデバイスにより、および、基準軌道を規定するデバイスにより、共同で律される。組み込み型ナビゲーションデバイスは、大きい規模で、すなわち、道路網の規模で、道程をプログラムするように設計される。この道程は、始点位置を行先に結び付けるように適合させられる一連の連続的な道路セグメントを含む。この一連の道路セグメントは、おそらくは、検出される交通状況、または、道路網に関するあらかじめ規定された運動制約(例えば、進行中の作業のための、所定のセクションの閉鎖)の関数として、動的に可変である。
【0004】
基準軌道規定デバイスは、そのデバイス自体としては、数十または数百メートル程度の、局所的な規模で、車両変位軌道を自動的に処理するように設計される。この基準軌道規定デバイスは、ナビゲーションシステムによりプログラムされる道程を実現するように適合させられる。この実現は、モータ車両の動的制約(最大スピード、縦方向加速度ステアリングホイール角度、その他)、環境制約(道路上の障害物、その他)、または最適化制約(例えば、モータ車両の横方向加速度の最小化)などの運動制約の関数として、経時的に車両の位置、方向、およびスピードを決定することにより現実化される。
【0005】
自律運転の背景状況において、モータ車両は、組み込み型ナビゲーションデバイスにより決定される一連の道路セクションを走行することにより、あらかじめ規定された都市または都市外の道程をたどるように整えられる。基準軌道は、時間において可変であり、あらかじめ規定された道程が達される道路セクション、および環境パラメータの関数としてリアルタイムで算出される、デカルト座標により規定される。この算出の実現は、道路標示認識デバイス、レーダまたはレーザ検出手段、障害物認識デバイス、その他を使用して行われ得る。走る間、モータ車両は、基準軌道とは異なり得る現実の軌道をたどる。さらに言えば、走る間、モータ車両は、基準軌道規定デバイスにより繰り込まれないことがある、所定の数の制約(ホイール圧力、道路レベル差、風力、その他)を経験する。結果として、最小化されるべきである、この現実の軌道と基準軌道との間の横方向ずれが存し得る。横方向ずれは、現実の軌道と基準軌道との間の、前記基準軌道に対して法線方向の軸に関して測定される、非ゼロ距離を意味すると理解される。モータ車両のステアリング角度を修正するための、横方向制御システムの適切な制御により、このずれを補正することが可能である。
【0006】
文書、米国特許出願公開第2016107682号は、自律モータ車両のステアリングを制御するための方法を開示している。この方法において、基準軌道の点が、先取り(anticipation)により選択される。基準距離が、時点tにおいて、自律モータ車両と、基準軌道の選択された点との間で決定される。車両のステアリングが、次いで、この基準距離から制御される。
【0007】
文書、米国特許出願公開第2016107682号において開示される方法は、車両のステアリングの制御を改善するが、その方法は、基準軌道の周りの現実の軌道の揺動の現象に結び付けられる、乗員にとっての不快感を、不安定性の問題さえも防がない。これらの不快感は、高いスピードにおいて、および/または、障害が制御システムにおいて生起するときに(センサの故障、マップの初期化)、ますます大である。
【0008】
それゆえに、自律モータ車両のステアリングを制御するための制御方法であって、実現するのに簡単で実用的である、および、この自律車両の乗員による快適さの知覚を改善することを可能にする、制御方法を提案することの必要性が存する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、この必要性を、少なくとも部分的に救済することを目標とする。
【0010】
より詳しくは、本発明は、自律車両内の乗員の体感を改善することを目標とする。
【0011】
本発明の第1の対象は、基準軌道に沿って自律モータ車両の運動を制御するための制御方法に関係する。この制御方法は、
- 自律モータ車両の所望されるヨースピードを決定するステップであって、前記所望されるヨースピードは、時点tにおける、前記車両と前記基準軌道との間の基準距離の関数である、所望されるヨースピードを決定するステップ、
- 自律モータ車両の現実のヨースピードとの、所望されるヨースピードの比較に対応するヨー誤差を決定するステップ、
- アクチュエータにステアリングホイール角加速度を送信するステップであって、前記ステアリングホイール角加速度は、ヨー誤差から決定される、ステアリングホイール角加速度を送信するステップ
を含み、
基準距離は、ヨー誤差が、あらかじめ決定されたヨー誤差しきい値以下であるように選択される。
【0012】
そうして、本発明は、自律モータ車両が、低いヨー誤差を維持するということを求める。より詳しくは、制御方法は、時点tにおいて、このヨー誤差を最小化するために、基準軌道の点のうちの、多項式の形での理想点を選択する。より詳しくは、方法は、ヨー誤差を最小化するために、車両の位置と、この理想点との間の基準距離を選択する。結果として、現実の軌道のたどりを実現することにおけるジャークのリスクは、大幅に制限され、このことは、自律モータ車両のスピード、または、前記車両における故障の、可能性のある存在に関わらず、そうである。乗員の体感は、それゆえ改善される。
【0013】
個別の実施形態において、ヨー誤差は、横方向誤差yLが所定の横方向誤差しきい値よりも上であるときに、前記ヨー誤差しきい値以下に維持され、前記横方向誤差yLは、基準距離Lにおいて、基準軌道、および、車両の位置から決定される。
【0014】
個別の実施形態において、ヨー誤差は、自律車両のスピードが所定のスピードよりも大であるときに、前記ヨー誤差しきい値以下に維持される。
【0015】
個別の実施形態において、所望されるヨースピードは、式:
にしたがって決定され、y
Lは、基準距離Lにおける横方向誤差であり、v
xは、自律モータ車両のスピードである。
【0016】
個別の実施形態において、基準距離は、式:
にしたがって決定され、K
LASは、制御関数であり、pは、車両のスピードv
xに、横方向誤差y
Lに、および、時点t-1において決定される基準距離L’に依存的なパラメータであり、δ°°は、ステアリングホイール角加速度である。
【0017】
個別の実施形態において、制御方法は、モータ車両の横方向運動を制御するように適合させられる。
【0018】
本発明の別の対象は、アクチュエータによって、基準軌道に沿って自律モータ車両の運動を制御するための制御デバイスであって、
- 前記アクチュエータにステアリングホイール角加速度を供給するように適合させられる横方向コントローラであって、前記ステアリングホイール角加速度は、所望されるヨースピードと、前記自律モータ車両の現実のヨースピードとの間の比較に対応するヨー誤差から決定される、横方向コントローラ、
- コントローラに、所望されるヨースピードを供給するように適合させられるスマート基準オプティマイザであって、前記所望されるヨースピードは、時点tにおける、前記自律モータ車両と前記基準軌道との間の基準距離の関数であり、前記基準距離は、ヨー誤差が、あらかじめ決定されたヨー誤差しきい値以下であるように選択される、スマート基準オプティマイザ
を含む、制御デバイスに関係する。
【0019】
制御デバイスは、自律モータ車両の動的モデルに、および、使用される任意のタイプの横方向コントローラに適合させられる。自律モータ車両は、そうして、その自律モータ車両が直面しなければならない異なる局面に、自動的に適合する。
【0020】
本発明の別の主題は、先の主題の制御デバイスにより動作させられ得るプログラム命令であって、それらのプログラム命令が前記制御デバイスにより実行または解釈されるときに、自律モータ車両における、別の先の対象の制御方法の実現をトリガする、プログラム命令を含むコンピュータプログラム製品に関係する。
【0021】
本発明は、非制限的な例として取り上げられ、添付される図面により例示される、実施形態の詳細な説明を読むことで、より良好に理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明にしたがう自律モータ車両を例示する概略視図である。
【
図2】道路上の
図1の自律モータ車両を例示する図である。
【
図3】
図1および
図2の自律モータ車両の運動を制御するための制御デバイスを例示する図である。
【
図4】
図3の制御デバイスのスマート基準オプティマイザモジュールの中身を詳細に説く図である。
【
図5】
図3の制御デバイスの横方向制御モジュールを詳細に説く図である。
【
図6】
図1および
図2のモータ車両の運動を制御するための制御デバイスの様々なステップを例示する線図である。
【
図7】従来技術の車両の含むこととの、
図1および
図2の自律モータ車両の応答の比較を提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、提示される実施形態および変形例に制限されず、他の実施形態および変形例が、当業者に対して明確に現れることになる。
【0024】
異なる図において、同一または同様である要素は、同じ参照符を帯する。
【0025】
図1は、本発明にしたがうモータ車両10の上面視図を概略的に表す。このモータ車両10は、前方車両部分、後方車両部分、車両ルーフ、車両インテリア、ステアリング手段(表されない)を含む。モータ車両は、さらには、シャシと、前記シャシ上に装着または固定される1つまたは複数の車体構造パネルとを含む。
【0026】
モータ車両10は、ここでは自律車両である。自律車両は、完全自律または半自律モータ車両であると理解される。実際は、モータ車両において、自律性のいくつかのレベルが存する。
【0027】
レベル1と呼ばれる第1のレベルにおいて、モータ車両は、前記モータ車両と関連付けられる、制限された数の運転動作について責任をもつ。運転者は、それゆえ、運転制御動作の大部分について責任をもつままである。レベル1において、加速および/または制動制御動作(スピードレギュレータ、その他)は、モータ車両により制御される。このレベル1は、運転支援レベルに対応する。
【0028】
レベル2と呼ばれる第2のレベルにおいて、モータ車両は、外側環境(モータ車両の辺りの道路、車道、道路交通、周囲状況)に関して、(例えば、1つまたはいくつかの運転支援システム、センサ、その他によって)情報を収集するように適合させられる。このレベル2において、自律車両は、所定の運転動作(例えば、ステアリング、加速、および/または制動)を制御するために、収集される情報を使用するように適合させられる。このレベル2は、モータ車両の部分的自動化のレベルである。レベル1およびレベル2について、運転者は、自律モータ車両により遂行される運転動作の全面的な監督を維持しなければならないということが留意されるべきである。
【0029】
レベル3と呼ばれる第3のレベルにおいて、運転者は、すべての運転動作をモータ車両に任せることを、前記モータ車両が運転者に、これらの運転動作のうちの1つまたは複数を制御するために行動または介入することを要請するときを除いて行う。このレベル3は、条件付き自動化レベルである。
【0030】
レベル4と呼ばれる第4のレベルにおいて、運転者は、もはやいかなる運転動作も管理しない。モータ車両それ自体が、それゆえ、運転者が介入についての要求に応答しないときを包含する、運転動作のすべてを制御する。レベル4は、高度自動化レベルである。
【0031】
レベル5と呼ばれる第5のレベルにおいて、モータ車両は、すべての運転動作を制御する。モータ車両は、そうして、走る間、道路交通、道路上で動いているアクタ(人間、動物)、道路上の不動障害物、車道を監視する。このレベル5において、人運転者との相互作用は要されない。レベル5は、徹底した(complete)自動化レベルである。レベル3から5について、モータ車両は、運転動作を監視するように、および、前記モータ車両の外側の環境を監視するように適合させられるということが留意されるべきである。
【0032】
自律性のこれらの異なるレベルにおいて、様々な運転動作を遂行することができるために、モータ車両10は、
- 前方レーダ11A、11B、
- 後方レーダ12A、12B、
- 超音波センサ13、
- ビデオカメラ14、
- LIDAR15、
- GPSアンテナ16
などの所定の数のセンサを含む。
【0033】
前方レーダは、前記モータ車両10の対称の軸の両側で、前方車両部分上に配される2つの前方レーダ要素11A、11Bを含む。前方レーダは、モータ車両の前方において検出区域111を有する。その前方レーダは、そうして、周辺物体の位置を検出するのに適する。その前方レーダによって、モータ車両のスピードを測定することが可能になる。前方レーダ11A、11Bにより収集される情報は、特に、緊急制動、または、中央帯の横切りの防止などの、所定の運転動作を実現するために有用である。
【0034】
後方レーダは、前記モータ車両10の対称の軸の両側で、後方車両部分上に配される2つの後方レーダ要素12A、12Bを含む。後方レーダは、モータ車両の後方において検出区域112を有する。その後方レーダは、そうして、周辺物体の位置を検出するのに適する。その後方レーダによって、前記モータ車両10の後に続く他のモータ車両のスピードを測定することが可能になる。後方レーダ12A、12Bにより収集される情報は、特に、緊急制動、または、中央帯の横切りの防止などの、所定の運転動作を実現するために有用である。
【0035】
超音波センサ13は、2つの前方レーダ要素11A、11Bの間で、車両の前方部分上に配される。超音波センサ13は、前方レーダ11A、11Bの検出区域111よりもはるかに小さい検出区域113を有する。この超音波センサ13は、そうして、非常に近い障害物を検出するのに適する。収集される情報は、特に、直接的に前記モータ車両10の前方における別のモータ車両との安全距離を維持することなどの、運転動作を実現するために有用である。
【0036】
ビデオカメラ14は、リアビューミラーの背後に据えられる。このビデオカメラ14により収集される情報は、特に、信号パネルの解読、路肩および中央帯の識別、道路上で動くアクタ(人間、動物)の検出などの、所定の運転動作を実現するために有用である。
【0037】
LIDAR15(「光検出および測距(light detection and ranging)」)は、ここでは、モータ車両10のルーフ上に据えられるセンサである。そのLIDAR15によって、レーザ遠隔検出測定を遂行することが可能になる。レーザ遠隔検出は、光ビームであって、その放出器に戻される、光ビームの特性の分析に基づく距離測定技法である。LIDARは、例えば、直径において50メートル程度の、かなり広い検出区域115を有する。そのLIDARによって、環境を360°まで永続的にスキャンすることを、その環境の3Dマッピングをとるために行うことが可能になる。LIDAR15により収集される情報は、夜においてを包含する、障害物の検出などの、所定の運転動作の実現のために有用である。
【0038】
GPS16は、モータ車両10の後方部分上に据えられる。そのGPS16によって、GPS(「全地球測位システム」)信号を受信することが可能になる。ナビゲーションデータが、次いで、これらのGPS信号から、モータ車両10において更新され得る。
【0039】
モータ車両は、さらには、センサ11A、11B、12A、12B、13、14、15からの様々なデータを処理するのに適する中央コンピュータ17を含む。中央コンピュータ17およびセンサ11A、11B、12A、12B、13、14、15は、センサから前記データを移送するために、CAN(「コントローラエリアネットワーク」)バスタイプの、1つまたは複数のネットワーク(表されない)により、モータ車両内でリンクされる。
【0040】
図2は、道路20上の
図1の自律モータ車両10を例示する。この自律モータ車両10は、重心23を含む。
図22を単純にするために、センサ11A、11B、12A、12B、13、14、15、16は、
図2において表されない。道路24は、2つの境界21により分界される。その道路24は、さらには、複数の中央帯22により分離される2つの車線へと分けられる。
図2において、車両は、現実の軌道をたどって右車線上で走っている。この現実の軌道は、ここでは、重心と基準軌道Tとの間の横方向ずれDだけずれている。この基準軌道は、GPSアンテナ16により受信されるGPS信号からのデータから注目すべき、モータ車両10のナビゲーションシステムにより、前もって算出されている。この基準軌道Tは、境界21と中央帯22との間の中間距離において伸長する。その基準軌道Tは、複数の点A0、…、Ai、…Anにより形成される。
【0041】
本発明の目標は、横方向ずれDを最小化することである。そのことのために、モータ車両10は、基準軌道Tを形成する点のセットから理想点Aiを選択することになる、制御デバイス20を含む。この理想点Aiは、先取りの点に当たることになる。基準距離Lが、次いで、重心23と先取りの点Aiとの間で決定される。自律車両の辺りの外部制約、例えば、環境制約または交通制約に依存して、制御デバイス20は、重心23からより遠い、または、より遠くない、先取りの点Aiを選択することになる。そうして、外側環境が単純であり、交通がわずかであるならば、中央デバイスは、重心23から遠く離れた先取りの点を選択することになる。基準距離Lは、それゆえに、相当なものであることになる。そのことによって、ジャークを制限しながら、徐々に基準軌道T上へと自律モータ車両を導くように、横方向ずれを補正することが可能になることになる。反対に、外側環境が複雑である(降雨、その他)、および/または、交通が激しいならば、制御デバイスは、基準軌道Tへの自律モータ車両の急速な戻りを強いるために、重心23に近い先取りの点を選択することになる。この制御デバイス20は、優先的な実施形態において、
図1のモータ車両の中央コンピュータ17内に直接的に組み入れられる。そうして、制御デバイス20によって、優先的な実施形態において、自律モータ車両10の横方向運動を制御することが可能になる。
【0042】
図3は、自律モータ車両10の運動を制御するための制御デバイス20を例示する。
【0043】
制御デバイス20は、
- スピードブロック201、
- 基準軌道ブロック202、
- 車両位置ブロック203、
- ヨースピードブロック204、
- スマート基準オプティマイザモジュール205、
- 横方向制御モジュール206、
- ステアリングホイール角加速度ブロック207
を含む。
【0044】
スピードブロック201は、モータ車両10のスピードvxを測定するように適合させられる。
【0045】
基準軌道ブロック202は、モータ車両10の基準軌道Tのデータを記憶するように適合させられる。
【0046】
車両位置ブロック203は、任意の時点tにおける車両の位置Pを決定するように適合させられる。
【0047】
ヨースピードブロック204は、モータ車両の現実のヨースピードWを決定するように適合させられる。
【0048】
スマート基準オプティマイザモジュール205は、スピードvxから、基準軌道Tのデータから、車両の位置Pから、および、ステアリングホイール角加速度δ°°から、所望されるヨースピードWdesを決定するように適合させられる。
【0049】
横方向制御モジュール206は、所望されるヨースピードWdesから、および、現実のヨースピードWから、横方向制御コマンドKlatを供給するように適合させられる。
【0050】
ステアリングホイール角加速度ブロック207は、横方向制御コマンドKlatからステアリングホイール角加速度δ°°を供給するように適合させられる。
【0051】
図4は、スマート基準オプティマイザモジュール205の中身を詳細に説く。このモジュール205は、
- 横方向誤差ブロック2051、
- 制御関数ブロック2052、
- 基準距離ブロック2053、
- 所望されるヨースピードブロック2054
を含む。
【0052】
横方向誤差ブロック2051は、基準軌道T、車両の位置P、および、時点t-1において決定される基準距離L’を受信するように適合させられる。この横方向誤差ブロック2051は、横方向誤差yLを送出する。
【0053】
制御関数ブロック2052は、車両10のスピードvx、横方向誤差yL、基準距離L’、およびステアリングホイール角加速度δ°°を受信するように適合させられる。このブロック2052は、時点tにおいて決定される基準距離Lを送出するように適合させられる横方向関数KLASを含む。
【0054】
基準距離ブロック2053は、時点tにおいて決定される基準距離Lを受信するように適合させられる。このブロック2053は、所望されるヨースピードブロック2054に、この基準距離Lを送出する。ブロック2053は、さらには、横方向誤差ブロック2051に、および、制御関数ブロック2052に、時点t-1において決定される基準距離L’を送出する。
【0055】
所望されるヨースピードブロック2054は、時点tにおいて決定される基準距離Lを受信する。その所望されるヨースピードブロック2054は、出力として、所望されるヨースピードWdesを送出する。
【0056】
図5は、横方向制御モジュール206を詳細に説く。このモジュール206は、
- ヨー誤差ブロック2061、
- 横方向制御ブロック2062、
- ステアリングホイール角速度ブロック2063、
- 微分器ブロック2064
を含む。
【0057】
ヨー誤差ブロック2061は、所望されるヨースピードWdesを、現実のヨースピードWと比較するように適合させられる。このヨーブロック2061は、ヨー誤差ErrLacetを供給する。本発明において、このヨー誤差ErrLacetは、あらかじめ決定されたヨー誤差しきい値S1以下である。優先的に、このヨー誤差しきい値S1は、所望されるヨースピードWdesの10%に対応する。
【0058】
横方向制御ブロック2062は、ヨー誤差ErrLacetを受信するように、および、ステアリングホイール角速度δ°を決定するように適合させられる。
【0059】
ステアリングホイール角速度ブロック2063は、ステアリングホイール角速度δ°を受信するように、および、微分器ブロック2064に、このステアリングホイール角速度を供給するように適合させられる。
【0060】
自律モータ車両10の運動を制御するための制御方法が、本明細書において下記で、
図1から
図5および
図6を支持して説明される。
【0061】
図6において、決定ステップE1において、車両10のスピードv
x、基準軌道T、および、車両の位置Pを扱う入力データが決定される。
【0062】
ステップE2において、モジュール205のブロック2051は、基準軌道Tから、車両の位置Pから、および、時点t-1において決定される基準距離L’から、横方向誤差yLを決定する。
【0063】
ステップE3において、モジュール205のブロック2052は、車両10のスピードv
xから、横方向誤差y
L、時点t-1において決定される基準距離L’から、および、ステアリングホイール角加速度δ°°から、時点tにおける基準距離Lを決定する。優先的な実施形態において、後に続く式:
が適用され、思い出させるための注意として、K
LASは、制御関数であり、ρは、車両のスピードv
xに、横方向誤差y
Lに、および、時点t-1において決定される基準距離L’に依存的なパラメータであり、δ°°は、ステアリングホイール角加速度である。
【0064】
ステップE4において、モジュール205のブロック2053は、ブロック2051および2052に基準距離L’を送信する。このステップE4において、ブロック2053は、さらには、時点tにおいて決定される基準距離Lを送信する。
【0065】
ステップE5において、ブロック2054は、所望されるヨースピードW
desを決定する。この所望されるヨースピードW
desは、時点tにおける、車両と基準軌道との間の基準距離Lの関数である。個別の実施形態において、所望されるヨースピードW
desは、式:
にしたがって決定され、思い出させるための注意として、y
Lは、基準距離Lにおける横方向誤差であり、v
xは、自律モータ車両のスピードである。
【0066】
ステップE6において、モジュール206のブロック2061は、ヨー誤差Errlacetを決定する。このヨー誤差Errlacetは、モータ車両の現実のヨースピードWとの、所望されるヨースピードWdesの比較に対応する。
【0067】
ステップE7において、モジュール206のブロック2062は、ヨー誤差Errlacetからステアリングホイール角速度δ°を決定する。
【0068】
ステップE8において、モジュール206のブロック2064は、自律モータ車両を制御するように適合させられるアクチュエータに対するステアリングホイール角加速度δ°°を決定および送信する。このステアリングホイール角加速度は、それゆえに、ステップE7およびE8によって、ヨー誤差ErrLacetから決定される。アクチュエータは、例えば、自律モータ車両のステアリングコラムである。
【0069】
ヨー誤差は、横方向誤差が所定の横方向誤差しきい値S2よりも上であるときに、ヨー誤差しきい値S1以下に維持されるということが留意されることになる。
【0070】
代替的な実施形態において、ヨー誤差は、自律車両のスピードvxが所定のスピード、例えば80Km/hのスピードよりも大であるときに、ヨー誤差しきい値S1以下に維持される。
【0071】
関連付けられる制御方法および制御デバイス20は、直線および曲がり目を含む混合部分において、Satoryテストサーキット上で有効性を確認された。
図7によって、基準軌道Tの急激な変化中の、第1の軌道31と、第2の軌道32との間の比較が可能となる。第1の軌道31は、従来技術にしたがう自律車両の応答を表す。この応答は、基準軌道の周りで揺動する。第2の軌道32は、本発明にしたがう自律モータ車両10の応答を表す。この応答は、より少ない揺動を呈する。自律車両の現実の軌道は、そうして、基準軌道Tに、はるかに急速に「くっつく」。
【0072】
自律モータ車両の運動を制御するための制御方法、および、関連付けられる制御デバイス20によって、そうして、
- 横方向コントローラに供給するための、基準軌道における先取りの最適点を見いだすこと、
- 任意の自律横方向操縦(車線の変更、動的変更、駐車操縦、その他)に適用され得る制御デバイスをもたらすこと、
- 任意の軌道ナビゲーションシステムとの互換性がある、および、任意のADAS/AD横方向コントローラに接続され得る、制御デバイスをもたらすこと、
- 車両の能力を考慮して、所望される軌道が、矛盾し、現実化するのが不可能でさえあり得る、危急の局面において、自律車両の人タイプの運転をもたらすこと、
- 相当なノイズ、または、センサもしくは道路の状況により引き起こされる誤差の事例において、車両の柔軟な運転をもたらすこと、
- 相当な初期横方向誤差の事例において、自律モードを開始するためにさらには使用され得る制御デバイスをもたらすこと、
- アクチュエータの状態および能力の関数として所望されるステアリングホイール角加速度を検証することを可能にする制御デバイスをもたらすこと
が可能になる。
【0073】
本発明は、さらには、制御デバイス20により動作させられ得るプログラム命令であって、それらのプログラム命令が前記制御デバイス20により実行または解釈されるときに、
図5において説明されたような制御方法の実現をトリガする、プログラム命令を含むコンピュータプログラム製品に関係する。
【0074】
本発明は、さらには、制御デバイス20を含む自律モータ車両10に関係する。この自律モータ車両は、
図1において、および
図2において表されるような自家用乗用車両である。変形例として、モータ車両は、バスまたはトラックなどの任意の他の車両である。
【0075】
本発明は、提示される実施形態および変形例に制限されず、他の実施形態および変形例が、当業者に対して明確に明らかになることになる。
【国際調査報告】