(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-22
(54)【発明の名称】回転抵抗及び負の視野異常軽減機能を備える眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20231215BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
A61F2/16
G02C7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536102
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 IB2021061539
(87)【国際公開番号】W WO2022130141
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】カマル ケー.ダス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エム.スコット
【テーマコード(参考)】
2H006
4C097
【Fターム(参考)】
2H006BA00
4C097AA25
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC11
4C097SA02
(57)【要約】
眼内レンズは、後光学系面及び前光学系面を含むことができ、前光学系面は、中央光学系、周辺光学系、及び中央光学系と周辺光学系とを分離する嚢縁を含むことができる。光学系端部は、後光学系面を周辺光学系に結合することができる。様々な実施形態では、嚢縁は、対称的又は非対称的であってもよい。より特定の実施形態では、嚢縁は、周辺光学系に対して少なくとも90度の角度で表面を形成することができる。いくつかの実施形態では、中央光学系は、光学系軸を含むことができ、嚢縁は、光学系軸に対して実質的に平行な表面を形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用レンズであって、
後光学系面と、
中央光学系、周辺光学系、及び前記中央光学系と前記周辺光学系とを分離する嚢縁を含む、前光学系面と、
前記後光学系面を前記周辺光学系に結合する光学系端部と、
を備える、眼科用レンズ。
【請求項2】
前記嚢縁が、対称的である、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項3】
前記嚢縁が、非対称的である、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項4】
前記嚢縁が、前記周辺光学系に対して少なくとも90度の角度で表面を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の眼科用レンズ。
【請求項5】
前記中央光学系が、光学系軸を含み、前記嚢縁が、前記光学系軸に対して実質的に平行な表面を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の眼科用レンズ。
【請求項6】
前記嚢縁が、約19マイクロメートル~約20マイクロメートルの範囲内の厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の眼科用レンズ。
【請求項7】
前記嚢縁が、前嚢袋の厚さと実質的に等しい厚さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の眼科用レンズ。
【請求項8】
前記嚢縁が、約2ミリメートル~約3ミリメートルの範囲内の半径を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の眼科用レンズ。
【請求項9】
前記周辺光学系が、テクスチャ面を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の眼科用レンズ。
【請求項10】
前記テクスチャ面が、光を拡散するように構成されている、請求項9に記載の眼科用レンズ。
【請求項11】
光を拡散又は再方向付けするように構成された遷移帯を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の眼科用レンズ。
【請求項12】
前記中央光学系が、凹状である、請求項1~11のいずれか一項に記載の眼科用レンズ。
【請求項13】
前記嚢縁が、嚢切開開口部の端部を隔離するように構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の眼科用レンズ。
【請求項14】
眼科用レンズであって、
後光学系面と、
中央光学系、周辺光学系、及び前記中央光学系と前記周辺光学系とを分離する嚢縁を含む、前光学系面と、
前記後光学系面を前記周辺光学系に結合する光学系端部と、
を備え、
前記嚢縁が、少なくとも1つの凸状円弧及び少なくとも1つの凹状円弧を有する閉曲線を含む、眼科用レンズ。
【請求項15】
前記嚢縁が、対称的である、請求項14に記載の眼科用レンズ。
【請求項16】
前記嚢縁が、非対称的である、請求項14に記載の眼科用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、発明者がJames M.Scott及びKamal K.Dasである、2020年12月17日に出願された「INTRAOCULAR LENS WITH ROTATIONAL RESISTANCE AND NEGATIVE DYSPHOTOPSIA MITIGATION」と題する、米国仮特許出願第63/126,760号の優先権の利益を主張するものであり、同出願は、あたかも本明細書に十分且つ完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
添付の特許請求の範囲に記載された本発明は、概して、眼内レンズを含むがこれに限定されない、眼科用レンズに関する。
【背景技術】
【0003】
人間の眼は、軽度の劣化から場合によっては視力の完全な喪失までを引き起こし得る、多くの疾患に罹患する可能性がある。コンタクトレンズ及び眼鏡は一部の疾患を補うことができるが、他の場合には眼科手術が必要になることがある。場合によっては、インプラントが有益である又は望ましい場合がある。例えば、眼内レンズは、視力を改善するために、眼内の濁った天然水晶体に取って代わることができる。
【0004】
眼内レンズ及び他のインプラントの利点は既知であるが、レンズ、送達システム、構成要素、及びプロセスの改善により、結果を改善し、患者に利益をもたらし続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
眼科手術のための新規且つ有用なシステム、装置及び方法が添付の特許請求の範囲に記載される。特許請求の対象を当業者が作製及び使用することを可能にするために、例示的な実施形態も提供される。
【0006】
例えば、いくつかの実施形態は、フェムト秒レーザで作成された正確な嚢切開開口部を利用して、回転抵抗を改善し、且つ負の視野異常又は視覚障害を低減することができる、眼内レンズを備える。より詳細には、いくつかの実施形態は、嚢切開開口部を使用して前嚢を眼内レンズに接続することができ、これによりレンズの回転抵抗を増加させ、嚢切開開口部の端部を隔離することができる。
【0007】
より一般的には、眼内レンズは、後光学系面及び前光学系面を含むことができ、前光学系面は、中央光学系、周辺光学系、及び中央光学系と周辺光学系とを分離する嚢縁を含むことができる。光学系端部は、後光学系面を周辺光学系に結合することができる。様々な実施形態では、嚢縁は、対称的又は非対称的であってもよい。より特定の実施形態では、嚢縁は、周辺光学系に対して少なくとも90度の角度で表面を形成することができる。いくつかの実施形態では、中央光学系は、光学系軸を含むことができ、嚢縁は、光学系軸に対して実質的に平行な表面を形成してもよい。
【0008】
嚢縁は、前嚢袋の厚さと少なくとも同じ厚さを有してもよい。例えば、好適な厚さは、約19マイクロメートル~約20マイクロメートルの範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、嚢縁の厚さは、前嚢袋の厚さの最大5倍であってもよい。
【0009】
追加的に、又は代替的に、中央光学系又は嚢縁は、嚢切開部において弾性張力を提供するように構成された半径を有してもよい。約2ミリメートル~約3ミリメートルの範囲内の半径は、いくつかの実施形態に好適であり得る。
【0010】
追加的に、又は代替的に、周辺光学系のいくつかの実施形態は、散乱光の透過を低減するか又は散乱光を拡散するように構成され得る、テクスチャ面を含んでもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、嚢縁は、少なくとも1つの凸状円弧及び少なくとも1つの凹状円弧を有する閉曲線を含んでもよい。
【0012】
眼の嚢袋内に眼内レンズを移植する方法は、嚢袋の前部に嚢切開部を作成することと、嚢袋から天然水晶体を除去することと、嚢袋内に眼内レンズを挿入することと、を含むことができ、眼内レンズは、嚢袋内に配置された周辺光学系と、嚢切開部の端部に隣接する嚢縁と、嚢切開部内に配置されて嚢袋と実質的に同一平面上にある中央光学系と、を有する、前光学系面を含む。いくつかの実施形態では、眼内レンズは、眼内レンズを固定するために嚢袋に係合する少なくとも2つの触覚部を含んでもよい。追加的に、又は代替的に、中央光学系は、嚢切開部において張力を作成するために、嚢切開部の幅よりも大きい幅を有してもよい。周辺光学系のいくつかの実施形態は、光の透過を低減するか又は光を散乱させるように構成された、テクスチャ面を更に含んでもよい。
【0013】
いくつかの実施形態に関連して記載される特徴、要素及び態様はまた、省略すること、組み合わせること、又は代替的な特徴に置換することができる。他の特徴、目的、利点、並びに特許請求の対象を作製及び使用する好ましい態様は、例示的な実施形態の添付図面を参照して以下により詳細に説明する。
【0014】
添付図面は、いくつかの目的、利点並びに特許請求の対象のいくつかの実施形態を作製及び使用する好ましい態様を示す。例において、同様の参照番号は同様の部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、いくつかの実施形態に関連し得る様々な特徴を示す、レンズの一例の上面図である。
【
図4】
図4は、いくつかの実施形態に関連し得る様々な特徴を示す、レンズの他の例の上面図である。
【
図7】
図7は、いくつかの実施形態に関連し得る追加的又は代替的な詳細を示す、レンズの別の例の上面図である。
【
図10】
図10は、いくつかの実施形態に関連し得る追加的な詳細を示す、レンズの別の例の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の例示的な実施形態の記載は、添付の特許請求の範囲に記載される対象を当業者が作製及び使用することを可能にする情報を提供するが、当技術分野で既に公知の特定の詳細は省略する場合がある。したがって、以下の詳細な説明は、例示的なものであり、限定的なものではないものと解釈される。
【0017】
例示的な実施形態は、添付図面に描かれた様々な要素間の空間的関係又は様々な要素の空間的方向を参照して本明細書に記載されることもある。一般に、そのような関係又は方向は、インプラントを受け入れる姿勢にある患者に一致する又はこれに対する座標系を想定する。しかしながら、当業者には理解されるように、この座標系は、厳密な規定ではなく、単に記述的な便宜上のものである。
【0018】
図1は、いくつかの実施形態に関連し得る様々な特徴を示す、レンズ100の一例の上面図である。
図1の例に示されるように、レンズ100は、中央光学系110、周辺光学系115、及び中央光学系110と周辺光学系115とを分離する嚢縁120を含み得る、前光学系面105を備えることができる。いくつかの実施形態では、嚢縁120は、中央光学系110の少なくとも一部を画定することができる。追加的に、又は代替的に、嚢縁120のいくつかの実施形態は、
図1に示されるように、対称的であってもよい。より具体的には、嚢縁120のいくつかの実施形態は、円形であってもよい。
【0019】
図2は、いくつかの実施形態に関連し得る追加の特徴を示す、
図1のレンズ100の側面図である。例えば、
図2のレンズ100は、後光学系面205、及び後光学系面205を前光学系面105に結合する光学系端部210を含む。より具体的には、
図2に示されるように、光学系端部210は、後光学系面205を前光学系面105の周辺光学系115に結合することができる。追加的に、
図2は、光学系軸215を中心に半径Xを有する、
図1の嚢縁120の円形の例を更に示している。約2ミリメートル~約3ミリメートルの範囲内の半径Xは、いくつかの実施形態に対して好適であり得る。更に、
図2に示されるように、光学系軸215は、いくつかの実施形態では中央光学系110に対して実質的に直交してもよい。
【0020】
図2の光学系端部210は、直線端部である。他の例では、光学系端部210は、湾曲端部であってもよく、又は2つ以上の湾曲端部を含んでもよい。例えば、光学系端部210は、複数の異なる湾曲面を含んでもよく、これらは互いに接線方向に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、湾曲面の各々は、異なる曲率半径を有してもよい。追加的に、周辺光学系115は、いくつかの例では光学系端部210に対して接線方向に接続されてもよい。
【0021】
図2の前光学系面105及び後光学系面205は、両方とも凸状である。他の実施形態では、前光学系面105及び後光学系面205は、凹状、凸状、又は平坦な表面プロファイルの任意の適切な組み合わせを有してもよい。前光学系面105、後光学系面205、又はその両方は、光を集束させて方向付けるために、任意の適切な球状、非球状、屈折性、回折性、又は位相シフトの特徴を含むことができる。
【0022】
いくつかの例では、レンズ100は眼内レンズであってもよく、前光学系面105は、4.5ミリメートル~7ミリメートルの範囲内の前光学直径を有してもよい。(レンズ100の光学系軸215に沿って測定された)光学系端部210の厚さは、0.15ミリメートル~0.45ミリメートルの範囲内、又はそれよりも高くてもよい。後光学系面205は、5.0ミリメートル~8.5ミリメートルの範囲内の後光学直径を有し得る。後光学直径は、前光学直径に依存することができ、いくつかの実施形態では、後光学直径は、前光学直径よりも大きくてもよい。
【0023】
前光学直径及び後光学直径は、患者の眼又は瞳孔のサイズに基づいて選択することができる。例えば、正の視野異常及び負の視野異常などの視覚障害は、瞳孔のサイズがより大きい患者においてより頻繁に発生する可能性がある。相対的により大きい前光学直径及び後光学直径は、レンズ100がより大きい量の光を受光して網膜に集束させることを可能にすることによって、グレア及び他の視覚障害を低減又は除去することができる。
【0024】
図3は、いくつかの実施形態に関連し得る追加の特徴を示す、
図2のレンズ100の詳細図である。
図3の例では、嚢縁120は、端部間厚さYを有する。厚さYは変化してもよいが、約19マイクロメートル~約20マイクロメートルの範囲内の厚さYは、多くの用途に好適であり得る。例えば、厚さYは、いくつかの実施形態では約19.5マイクロメートルであり得る。好適な寸法の嚢縁120は、例えば、前光学系面105を修正して、加工による中央光学系110からのステップダウンを追加することによって、又は成形レンズ内に特徴部を組み込むことによって製造することができる。追加的に、
図3の嚢縁120は、周辺光学系115に対して角度Zにある表面を形成する。少なくとも90度の角度Zは、いくつかの実施形態に対して有利であり得る。追加的に、又は代替的に、嚢縁120は、光学系軸215に対して実質的に平行な表面を形成することができる。他の実施形態では、中央光学系110は、周辺光学系115に対して凹状であってもよく、嚢縁120は、周辺光学系115から中央光学系110までのステップダウンを提供してもよい。
【0025】
図4は、いくつかの実施形態に関連し得る追加的又は代替的な詳細を示す、レンズ100の別の例の上面図である。
図4の例に示されるように、周辺光学系115は、いくつかの実施形態ではテクスチャ面405を有してもよい。テクスチャ面405は、いくつかの例では、ツール加工から又は射出成形ウェハから転写され得るパターンを含むか、又はパターンで本質的に構成されてもよい。いくつかの例では、テクスチャ面405は、既知の製造プロセス中に、レンズ100内に直接機械加工されてもよく、及び/又はレンズ100内にエッチングされてもよい。したがって、テクスチャ面405は、深さがナノメートル未満~数百ミクロンに及ぶ場合がある。
【0026】
図5は、
図4のレンズ100の側面図であり、
図6は、テクスチャ面405を更に詳細に示す、
図4のレンズ100の等角図である。
【0027】
図7は、いくつかの実施形態に関連し得る追加的又は代替的な詳細を示す、レンズ100の別の例の上面図である。例えば、嚢縁120のいくつかの実施形態は、代替プロファイルを有してもよい。嚢縁120のいくつかの実施形態は、少なくとも1つの凸状円弧及び1つの凹状円弧を有する閉曲線であってもよい。
図7の例では、嚢縁120は、嚢縁120のプロファイルにおいて対称性を維持するように配向された、2つの凹状円弧705及び2つの凸状円弧710を有する。凸状円弧710は、
図7に示されるように、いくつかの例では光学系端部210と同心であってもよい。
図7の嚢縁120は、追加的に又は代替的に、2つの凸状円弧710の間の外側幅W1、及び2つの凹状円弧705の間の内側幅W2によって特徴付けられ得る。他の例では、嚢縁120は、非対称のプロファイルを有してもよい。幅W1及び幅W2は、解剖学的又は手技的要件に従って変化してもよい。例えば、約3ミリメートル~約6.5ミリメートルの範囲内の、又は光学直径よりも約0.5ミリメートル小さく、より具体的には6ミリメートルの光学体に対して約5.5ミリメートルの幅W1は、多くの用途に好適であり得る。幅W2は、一般に、幅W1よりも小さい。約1~約0.5の範囲内のW2/W1の比は、いくつかの例に対して好適であり得る。
【0028】
図8は、
図7のレンズ100の側面図であり、
図9は、いくつかの実施形態に関連し得る追加的な詳細を示す、
図8のレンズ100の一部の詳細図である。例えば、
図9の嚢縁120の少なくとも一部は湾曲している。いくつかの実施形態では、嚢縁120は、複数の別個の湾曲面を含んでもよく、これらは互いに接線方向に接続され得る。いくつかの実施形態では、湾曲面の各々は、異なる曲率半径を有してもよい。追加的に、嚢縁120は、いくつかの例では、中央光学系110、周辺光学系115、又はその両方に接線方向に接続されてもよい。
【0029】
図10は、いくつかの実施形態に関連し得る追加的又は代替的な詳細を示す、レンズ100の別の例の詳細図である。例えば、
図10に示されるように、レンズ100のいくつかの実施形態は、嚢縁120から離れて光を拡散又は再方向付けするための遷移帯1005を追加的に含んでもよい。遷移帯1005は、嚢縁120のインボードに配置されてもよい。
図10に示されるように、例えば、遷移帯1005は、中央光学系110と嚢縁120との間に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、遷移帯1005は、遷移縁1010及びブリッジ1015を含むか、又はそれらから本質的に構成されてもよい。遷移縁1010は、嚢縁120に対して平行であってもよく、ブリッジ1015は、嚢縁120の前端部1020を遷移縁1010の後端部1025に接続してもよい。いくつかの例では、遷移縁1010及びブリッジ1015は、
図10に示されるように、平坦な表面であってもよく、他の例では、遷移縁1010、ブリッジ1015、又はその両方が湾曲してもよい。例えば、遷移縁1010、ブリッジ1015、又はその両方は、凸状、凹状、又は凸面、凸面、又はその両方の組み合わせであってもよい。追加的に、又は代替的に、嚢縁120は、いくつかの実施形態では周辺光学系115からのステップダウンを提供してもよく、中央光学系110、遷移縁1010、及びブリッジ1015のうちの1つ以上は、周辺光学系115に対して少なくとも部分的に凹状であってもよい。
【0030】
図11は、いくつかの実施形態に関連し得る追加的な詳細を示す、レンズ100の別の例の上面図である。例えば、いくつかの実施形態は、光学系端部210に結合され得る1つ以上の触覚部1105を追加的に含んでもよい。
【0031】
図12A~
図12Bは、レンズ100の例示的な使用を更に示す概略図である。示されるように、切開1205は、例えば外科医によって眼1210内に作成され得る。場合によっては、切開1205は、眼1210の強膜1215を通して作成され得る。他の例では、切開は、眼1210の角膜1220に形成され得る。嚢切開開口部1225は、嚢袋1230の前部に作成することができる。例えば、フェムト秒レーザを使用して、非常に正確な寸法で嚢切開開口部1225を作成することができる。平均的な眼のサイズの嚢切開部半径は、約2.25ミリメートルであり得る。切開1205は、嚢袋1230からの天然水晶体の除去を可能にするサイズであり得る。ノズル1235はまた、レンズ100を嚢袋1230内に送達するために、切開1205を通して少なくとも部分的に挿入されてもよい。例えば、場合によっては、切開1205の大きさは、約3000ミクロン(3ミリメートル)未満の長さを有し得る。他の例では、切開1205は、約1000ミクロン~約1500ミクロン、約1500ミクロン~約2000ミクロン、約2000ミクロン~約2500ミクロン又は約2500ミクロン~約3000ミクロンの長さを有し得る。
【0032】
ノズル1235は、切開1205を通して嚢袋1230の内側部分1240に挿入することができる。次いで、レンズ100は、ノズル1235を通して嚢袋1230内に射出することができる。いくつかの用途では、レンズ100は、折り畳まれた構成で送達されてもよく、
図12Bに示されるように、嚢袋1230内で初期の展開された状態に戻すことができる。嚢袋1230は、レンズ100が網膜(図示せず)に方向付けられた光を屈折させるような眼1210に対する関係性で、眼1210内にレンズ100を保持することができる。いくつかの実施形態では、触覚部1105などの触覚部は、嚢袋1230と係合して、レンズ100をその中に固定することができる。
【0033】
レンズ100を嚢袋1230内に分配した後、ノズル1235は、切開1205を通して眼1210から除去することができ、眼1210は、一定期間にわたって治癒され得る。
【0034】
図13は、嚢袋1230内に配置されたレンズ100の追加的な詳細を示す、
図12Bの詳細図である。
図13の例では、嚢縁120は、嚢切開開口部1225を隔離するように構成されている。例えば、
図13では、嚢縁120は、嚢切開開口部1225の端部に隣接して配置され、中央光学系110は、嚢切開開口部1225内に配置されている。フェムト秒レーザによって作成される嚢切開開口部1225の正確性は、嚢縁120が嚢切開開口部1225の端部と相互作用することを可能にすることができる。
【0035】
図13の例に示されるように、中央光学系110は、嚢袋1230の外側表面と実質的に同一平面上にあるように配置することができ、これにより、嚢袋1230と前光学系面105との間のステップ変化又は他の不連続性を実質的に低減又は排除することができる。
図13に示されるように、嚢袋1230は、中央光学系110のいかなる部分とも重なり得ない。いくつかの実施形態では、中央光学系110は、嚢袋1230の外側表面の後cに配置されてもよく、これにより、大きい軸外光を再方向付けして、グレア及び視覚障害の影響を更に軽減することができる。周辺光学系115は、嚢袋1230内で凹状にするすることができる。いくつかの実施形態では、周辺光学系115は、嚢袋1230の内側表面と相互作用することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、嚢縁120の厚さY(
図3を参照)は、
図13の例に示されるように、嚢切開開口部1225の端部の厚さと実質的に等しくてもよい。他の例では、厚さYは、中央光学系110が嚢袋1230の外側表面と実質的に同一平面上にあるままであり、且つ嚢縁120が嚢切開開口部1225の後方まで延びるように、嚢切開開口部1225の端部の厚さの最大約5倍であってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、嚢縁120の半径X(
図2を参照)は、弾性張力を提供するように嚢切開開口部1225の半径よりもわずかに大きくてもよい。例えば、嚢切開開口部1225が2.25ミリメートルの半径を有する場合、嚢縁120は、約2.5ミリメートルの半径を有し得る。他の例では、嚢縁120は対称的でなくてもよく、1つ以上の選択された軸に沿って弾性張力を提供してもよい。例えば、嚢縁120のいくつかの実施形態は、触覚部に対して直交する弾性張力を提供してもよい。
【0038】
追加的に、又は代替的に、いくつかの実施形態は、レンズ100の周辺部及び端部からの遷移光を散乱させ得るテクスチャ面405を有してもよい。
【0039】
本明細書に記載されるシステム、装置及び方法は、顕著な利点を提供し得る。例えば、レンズ100は、オープンループ、シングルピース設計を含む他のレンズよりも多くの回転抵抗を提供することができ、これは、回転の各程度が円柱度数の著しい損失を引き起こし得るトーリックレンズにとって特に有利であり得る。レンズ100のいくつかの実施形態は、著しい回転安定性を提供し、嚢袋が融解するまでレンズ回転を実質的に排除することができる。追加的に、嚢縁120などの特徴部は、嚢切開開口部の端部を隔離することができ、これにより、他の設計とは対照的に、前嚢が中央光学系を覆うことを防止することができる。そのような特徴部は、嚢からの反射を実質的に低減又は排除することができ、これにより、非常に大きい視角で眼に入って嚢切開開口部1225の端部に当たる光から生じる負の視野異常の発生率を実質的に低減又は排除することができる。
【0040】
いくつかの例示的な実施形態に示されているが、当業者であれば、本明細書に記載されるシステム、装置及び方法は、添付の特許請求の範囲内の範囲に入る様々な変更形態及び修正形態が可能であることを認識するであろう。例えば、嚢縁120及びテクスチャ面405などの様々な特徴を、疎水性材料又は親水性材料のプレートレンズ又はマルチピースレンズに組み込むことができる。更に、「又は」などの用語を用いた様々な代替形態の記載は、文脈によって明らかに要求されない限り、相互排他性を必要とせず、また不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、文脈によって明らかに要求されない限り、対象を単一の例に限定するものではない。販売、製造、組み立て又は使用を目的として、構成要素を様々な構成で組み合わせる又は排除することもできる。例えば、いくつかの構成では、嚢縁120及びテクスチャ面405の特徴は、様々な方法で組み合わせることができる。
【0041】
特許請求の範囲は、特に詳細に記載されていない追加の対象も包含することができる。例えば、特定の特徴、要素又は態様は、新規且つ発明的な特徴を当業者に既に周知のものと区別するために必要でない場合には、特許請求の範囲から省略されることがある。いくつかの実施形態に関連して記載される特徴、要素及び態様は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、省略すること、組み合わせること、又は同一の、同等な若しくは同様の目的を果たす代替の特徴によって置換することもできる。
【国際調査報告】