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特表2023-553572SQUIDに基づく低雑音RF検出及び取得システム、並びにこのシステムを含む機器アイテム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-22
(54)【発明の名称】SQUIDに基づく低雑音RF検出及び取得システム、並びにこのシステムを含む機器アイテム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20231215BHJP
   A61B 5/245 20210101ALI20231215BHJP
   G01V 3/10 20060101ALI20231215BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20231215BHJP
   G01R 33/34 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
A61B5/055 355
A61B5/055 360
A61B5/055 390
A61B5/245
G01V3/10 C
G01N24/00 580C
G01R33/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557831
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 FR2021052187
(87)【国際公開番号】W WO2022117969
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】2012642
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523212612
【氏名又は名称】シピロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ラバ,ディミトリ
【テーマコード(参考)】
2G105
4C096
4C127
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB05
2G105CC04
2G105DD02
2G105EE01
2G105LL07
4C096AA18
4C096AD10
4C096CA52
4C096CC02
4C096CC40
4C096CD02
4C127AA10
(57)【要約】
一次検出アンテナ(5)と、一次検出アンテナ(5)に接続された入力巻線(6)を有する磁束トランス(2)と、磁束トランス(2)の出力巻線(8)によって生成された磁束を捕捉し、二次検出信号を供給するために設けられた低臨界温度SQUIDデバイス(3)と、SQUIDデバイス(3)及び磁束トランス(2)を冷却するために設けられた極低温デバイスと、アナログ取得信号を供給するために、SQUIDデバイス(3)によって放射された二次検出信号を処理するステップ(4)とを備える、特に核磁気共鳴機器(IRM又はRMN)機器アイテムに組み込まれるように設けられた、SQUIDに基づく無線周波数(RF)検出及び取得システム(1)。一次検出アンテナ(5)は、ヘルムホルツコイル又はサドルコイルを含む体積型、又はより複雑な体積形状、特に勾配形状を有し、二次検出信号を処理するステップ(4)は、SQUIDデバイス(3)の応答を線形化するために提供される磁束固定ループ(FLL)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に核磁気共鳴(MRI又はNMR)装置(S)に組み込まれるように提供される、SQUIDに基づく無線周波数(RF)検出及び取得のためのシステム(1)であって、
-体積型一次検出アンテナ(5)と、
-前記一次検出アンテナ(5)に接続された一次巻線(6)を有する磁束トランス(2)と、
-前記一次アンテナ(5)によって捕捉され、前記磁束トランス(2)を介して前記SQUIDデバイス内の入力巻線(8)によって再生される前記磁束を捕捉し、二次検出信号を送出するように構成されたSQUIDデバイス(3)と、
-前記SQUIDデバイス(3)を冷却するように設計された極低温デバイスと、
-前記SQUIDデバイス(3)によって放射された前記二次検出信号を処理してアナログ取得信号を送出するステップ(4)であって、前記SQUIDデバイス(3)の応答を線形化するために設けられた磁束固定ループ(FLL)を含む、ステップとを備え、
前記SQUIDデバイスが、低臨界温度タイプであり、前記極低温デバイスが、前記磁束トランスを冷却するように更に提供され、前記一次検出アンテナ(5)が、体積型であり、開放形状を有することを特徴とする、システム(1)。
【請求項2】
前記一次検出アンテナが、ヘルムホルツコイルを備えることを特徴とする、請求項1に記載の検出及び取得システム。
【請求項3】
前記一次検出アンテナが、スツールコイルを備えることを特徴とする、請求項1に記載の検出及び取得システム。
【請求項4】
前記一次検出アンテナが、勾配形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の検出及び取得システム。
【請求項5】
前記磁束固定ループ(FLL)は、低雑音増幅器(LNA)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の検出及び取得システム(1)。
【請求項6】
前記低雑音増幅器が、半導体ヘテロ構造増幅器を含むことを特徴とする、請求項2に記載の検出及び取得システム(1)。
【請求項7】
前記低雑音増幅器が、SQUIDベースの増幅システムを含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載の検出及び取得システム。
【請求項8】
前記システムの外部の雑音のための1つ以上の能動雑音補償コイルを更に備えることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の検出及び取得システム。
【請求項9】
前記一次検出アンテナ(5)が、前記磁束トランス(2)と協働して、前記SQUIDデバイスによって捕捉された前記磁束を集中させることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の検出及び取得システム(1)。
【請求項10】
前記磁束トランス(2)内に、前記SQUIDデバイス(3)をその最大磁束感度レベルに維持するために、前記入ってくる磁束の変動に反応するように構成されたインダクタンスフィードバックコイル(10)を更に備えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の検出及び取得システム(1)。
【請求項11】
磁気共鳴撮像(MRI)機器アイテム(S)であって、
-請求項1~10のいずれか一項に記載のSQUIDベースの無線周波数検出及び検出システム(B)と、
-体積型の前記一次検出アンテナを組み込み、前記検出及び取得システム(B)に接続されたアンテナホルダデバイス(A)と、
-前記アナログ取得信号を、MRI画像を生成して表示するための後処理に適したデジタルデータに変換するように設計されたアナログ-デジタル変換ステージ(C)とを備える磁気共鳴撮像(MRI)機器アイテム(S)。
【請求項12】
脳磁図装置(MEG)に結合されることを特徴とする、請求項11に記載のMRI機器アイテム。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載のSQUIDベースのRF取得及び取得システムを含む核磁気共鳴(NMR)機器アイテム。
【請求項14】
地中の無線周波数(RF)波の放射に応答して金属鉱脈によって放射される無線周波数(RF)波を検出するための、請求項1~10のいずれか一項に記載のRF検出及び取得システムを含む、金属の探査のためのSQUIDベースの磁気センサ機器アイテム。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の検出及び取得システムを含む超高感度無線周波数センサ機器アイテム。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか一項に記載のSQUIDベースのRF検出及び取得システムを含む、無線周波数(RF)領域で動作する電波天文機器アイテム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SQUIDに基づく低雑音RF検出及び取得システムに関する。本発明はまた、このシステムを含む機器アイテム、特に磁気共鳴撮像機器に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像(magnetic resonance imaging、MRI)機器においてSQUID(「超伝導量子干渉デバイス(Superconducting QUantum Interference Device)」)に基づく検出システムを使用することは周知である。
【0003】
MRI実験の間、対象は、静止した均一な磁場B内に配置される。次いで、サンプルは、磁場B内の陽子のラーモア周波数ω=γBに同調されたRF周波数信号ωを受け、γ/(2π)=42.6MHz、T-1は陽子の磁気回転比である。この励起後、サンプルは、検出システムによってピックアップされる周波数信号ωを放射し、現代の商用機器におけるその原理は、冷却誘導アンテナに基づいている。
【0004】
通常のMRIパラダイムは、以下の2つの理由から、可能な限り高い磁場を選択することである。
【0005】
-第1に、より高い電界がより多数の陽子にバイアスをかけることを可能にし、これがより多くの信号、したがって実験時間の短縮及びより精細な画像解像度をもたらすことである。
【0006】
-第2に、従来のRF検出が誘導アンテナを用いて行われることであり、その感度はωに比例する。
【0007】
ω1/4における熱雑音レベルを考慮することによって、ファラデーアンテナの唯一の検出は、法則ω-3/4に従う。ωは動作磁場Bに比例するため、高磁場で動作させることにより、検出能閾値を下げることが可能になる。典型的な臨床MRI機器は、1、5又は3Tで動作する。特定のモデルは7Tに達し、実験は11.7Tに達することを目標としている。
【0008】
しかしながら、磁場を増加させることは、サンプル中にイオン雑音を生成し、組織の磁化率の差に起因して画質を低下させ、コントラストを平坦化する傾向があり、言うまでもなく、製造及び維持するのに高額な超伝導コイル、磁気遮蔽されるMRIコイル、心臓刺激装置又はペースメーカーを装着した人々及び弾丸で負傷した兵士用のMRIがないことなどの、高磁場に関連する通常の制約が存在する。
【0009】
文献CN105137374Aは、磁気共鳴撮像方法及び超高分解能デバイスを実装する、ナノメートル分解能SQUID検出を伴うMRI装置を開示している。この方法は、磁場勾配源及びナノ超伝導量子干渉デバイスの動作範囲内に試験サンプルを配置する少なくとも1つのステップと、静磁場源を使用して静磁場を試験サンプルに印加し、高周波源を使用して核磁気共鳴高周波パルスを試験サンプルに印加して、核磁気共鳴を発生させるために試験サンプルを励起するステップと、ナノ超伝導量子干渉デバイスを使用して試験サンプルを直接結合して、試験サンプルによって発生した核磁気共鳴スペクトル信号を検出するステップと、検出された核磁気共鳴スペクトル信号及び磁場勾配源の空間分布情報の関数として試験サンプルの画像を確立するステップとを含む。ナノ超伝導量子干渉デバイスが検出器として使用され、ナノメートルレベルの分解能の磁気共鳴撮像を実行することができ、振動や電界信号によって測定が乱されず、サンプルと検出器を近距離で直結でき、画像範囲が広がり、強磁場での作業が可能となる。
【0010】
文献JP2010256318Aは、マイクロテスラ磁場において磁束トランスを介して、高臨界温度(高Tc)で超伝導量子干渉デバイス(SQUID)を使用する高分解能陽子核磁気共鳴機器及び撮像(NMR/MRI)を開示している。この発明は、方法及び装置に関する。SQUID及び入力コイルは、周囲雑音を保護し、SQUIDを安定動作状態にする超伝導タンク内に設置される。サンプルがSQUID検出器から離れていても、NMR信号を維持することができる。
【0011】
文献CN1287160Cは、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)信号がマイクロテスラ場で検出される、予備分極を伴う、SQUID検出を行うNMR及びMRIデバイスを開示している。ミリテスラ場における予備分極に続いて、非同調直流超伝導量子干渉磁力計(SQUID)による検出が行われる。
【0012】
文献WO2006052236A1は、SQUID検出、予備分極、及びファラデー一次アンテナを備えたNMR及びMRI装置を開示している。超低磁場における磁気共鳴撮像は、超低磁場のNMRに基づく。傾斜磁場が印加され、検出されたNMR信号から画像が構築される。
【0013】
これらのSQUIDベースの検出及び取得デバイスは、予備分極方法を必要とするという欠点を有し、高Tc SQUIDを使用する。
【0014】
文献Chen Hsin-Hsien et al.の「A compact SQUID-detected magnetic resonance imaging system under microtesla field in a magnetically unshielded environment」、Journal of Applied Physics、米国物理学協会、110巻、第9号、2011年11月1日(2011-11-01)は、特に核磁気共鳴装置に組み込まれるように提供された、SQUIDに基づく無線周波数検出及び取得のためのシステムを開示しており、この検出システムは、一次検出アンテナと、一次検出アンテナに接続された一次巻線を有する磁束トランスと、SQUIDデバイスと、SQUIDデバイス及び磁束トランスを冷却するために設けられた極低温デバイスと、SQUIDデバイスによって放射された二次検出信号を処理するステップとを備え、この処理ステップは、磁束固定ループを備え、アナログ取得信号を送出するように提供される。
【0015】
文献US2013271142A1は、低磁場SQUID MRIコンポーネント及び方法を開示している。それらは、低磁場携帯型MRI機器(SQUID)及びベッドの下で使用されるSQUIDベースの携帯型MRIシステムを含む。このMRI機器は、低磁場MRI装置と共に使用するのに適した二次超伝導勾配計を実装する。
【0016】
本発明の目的は、従来技術の前述のシステムよりも単純で安価な設計であり、特に信号対雑音比に関する性能を改善する低雑音RFベースの検出及び取得システムを提案することである。
【発明の概要】
【0017】
この目的は、特に核磁気共鳴装置(MRI又はNMR)に組み込まれるように提供される、SQUIDに基づく無線周波数(RF)検出及び取得のためのシステムによって達成され、当該システムは、
-体積型一次検出アンテナと、
-一次検出アンテナに接続された一次巻線を有する磁束トランスと、
-一次アンテナによって捕捉され、磁束トランスを介してSQUIDデバイス内の入力巻線によって再生される磁束を捕捉し、二次検出信号を送出するように構成されたSQUIDデバイスと、
-SQUIDデバイスを冷却するように設計された極低温デバイスと、
-SQUIDデバイスによって放射された二次検出信号を処理してアナログ取得信号を送出するステップであって、SQUIDデバイスの応答を線形化するために設けられた磁束固定ループ(FLL)を含む、ステップとを備える。
【0018】
本発明によれば、SQUIDデバイスは、低臨界温度タイプであり、極低温デバイスは、磁束トランスを冷却するために更に提供され、一次検出アンテナは、体積型であり、開放形状を有する。
【0019】
したがって、一次検出アンテナは、ヘルムホルツコイル、サドルコイルを備えることができ、又は一次、二次、若しくはより高次の勾配形状を有し得る。これらの体積型アンテナは、検出される信号に同調されてもよく、又は同調されなくてもよい。
【0020】
約1mT以下の低磁場で動作することはまた、コントラストT1の劇的な増加から利益を得ることを可能にし、低磁場モードにおける独自の撮像可能性への道を開く。この事実は、2005年1月1日号の学会誌「Magnetic Resonance in Medicine」53-1巻9~14頁で発表された、S.K.Lee et alによる刊行物「SQUID-detected MRI at 132μT with T1-weighted contrast established at 10μT-300mT」に詳述されている。
【0021】
磁束固定ループ(flux-locked loop、FLL)は、有利なことに、半導体ヘテロ構造増幅器又はSQUIDベースの増幅システムを含み得る低雑音増幅器(low-noise amplifier、LNA)を備えることができる。SQUIDベースの増幅システムは、文献US2013271142A1に提示されている。本発明の文脈におけるこれらの技術の実施については、John Clarke(Wiley-VCH 2004)による「The SQUID Handbook:Fundamentals of Technology and Applications of SQUIDs and SQUID systems」という著作を有効に参照し得る。
【0022】
本発明による検出及び取得システムは、このシステムの外部の雑音に対する1つ以上の能動雑音補償コイルを更に備え得る。
【0023】
本発明による検出及び取得システムは、システムの1つ以上の受動シールドスクリーンを更に備え得る。この受動シールドは、特にフェライト、ミューメタル、Cryoperm(登録商標)、Metglas(登録商標)、又は高透磁率の任意の他の材料若しくは合金を介して、本質的に磁性であってもよい。このシールドは、金属、例えば、銅又はアルミニウムで作成され得る。
【0024】
本発明の好適なバージョンでは、一次検出アンテナは、磁束トランスと協働して、SQUIDデバイスによって捕捉された磁束を集中させる。
【0025】
また、本発明による検出及び取得システムは、SQUIDデバイスをその最大磁束感度レベルに維持するように、磁束トランス内に、入ってくる磁束の変動に反応するように構成されたインダクタンスフィードバックコイルを更に備えることができる。
【0026】
本発明の別の態様によれば、本発明によるSQUIDベースの無線周波数検出及び検出システム(B)と、体積型一次検出アンテナを組み込み、上記検出及び取得システム(B)に接続されたアンテナホルダデバイス(A)と、アナログ取得信号を、MRI画像を生成及び表示するための後処理に適したデジタルデータに変換するために設けられたアナログ-デジタル変換ステージ(C)とを備える磁気共鳴撮像(MRI)機器のアイテムが提案される。
【0027】
このMRI機器は、例えば、脳磁図装置(magnetoencephalography device、MEG)に結合され得る。
【0028】
SQUIDベースのRF検出及び取得システムは、地中の無線周波数(RF)波の放射に応答して金属鉱脈によって放射される無線周波数(RF)波を検出することを目的として、金属の探査のために、核磁気共鳴(NMR)機器又はSQUIDベースの磁気センサ機器に実装することができる。
【0029】
本発明による検出及び取得システムを含む超高感度無線周波数センサ機器、又は本発明によるSQUIDベースのRF取得及び取得システムを含む無線周波数(RF)領域で動作する電波天文機器アイテムも提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明は、以下に記載される図面を参照してより良く理解することができる。
図1】RF検出及びSQUIDベースの信号処理回路の図である。
図2】我々のRF検出発明からのMRI取得の概略図である。
図3】いくつかの一次検出アンテナ形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、図1を参照して、本発明によるSQUIDベースのRF取得及び取得システム1の一実施形態について説明する。
【0032】
このSQUIDベースのRF検出及び取得システム1は、ヘルムホルツコイル若しくはサドルコイルの形態で提供される体積型、又は任意の他のタイプ、特に勾配形状の体積型の一次誘導アンテナ5であって、アンテナが共振する場合には、容量Cを有する結合コンデンサ9を介して、インダクタンスLを有する一次巻線6に接続されるアンテナと、インダクタンスLを有する二次巻線7を有し、インダクタンスLiを有する入口コイル8と直列に接続されて、SQUIDデバイス3によって捕捉される磁束を生成する磁束トランス2とを備える。
【0033】
アンテナが共振しない場合、コンデンサは存在せず、アンテナ5は一次巻線6に直接接続される。
【0034】
磁束トランス2及びSQUIDデバイス3は、CryoMech(登録商標)によって販売されている製品PT403などのパルス管を備える極低温デバイス(図示せず)内で低温に保たれる。
【0035】
二次検出信号を処理するステップ4は、SQUIDデバイス3の端子で測定された電圧の前置増幅器40(LNA)を含む。この電圧測定値は、低雑音増幅器を含み、SQUIDデバイス3をその最大磁束感度レベルに維持するために、入ってくる磁束変化に反応するように意図されたインダクタンスLfeedを有するフィードバックコイル10に接続された磁束固定ループ回路41の入力に印加される検出信号を表す。磁束固定ループの方法は、文献US20120206136A1に開示されている。
【0036】
SQUIDベースのRF取得及び取得システム1の定量的特徴の例を以下に示す。
【0037】
-検出される波列の典型的な時間幅:T ~50ms
-一次アンテナの中心周波数ω~40kHz
-一次帯域幅Δω~20kHz
-一次品質係数Q~2(共振アンテナの場合)
-一次アンテナにおける磁界強度B、約100fT~pT
-SQUIDの入力コイルのインダクタンスL=720nH
-一次アンテナの比インダクタンスL≒0.1mH
-一次アンテナの抵抗R=1Ω
-一次アンテナの共振容量C=6μF
誘導アンテナ
目的とする用途を考慮して、アンテナ5には体積型形状が選択される。この形状の例として、ヘルムホルツコイル、「サドル」コイル、又は他のより複雑な形状、特に勾配形状が挙げられる。この形状は、可能な限り最高の信号を収集することができる一方で、その開放形状によって、患者にとって相対的な快適さを可能にする。ファラデー一次アンテナ5は、MRI信号に同調されなければならない。このアンテナ5は、アンテナにおけるジョンソン-ナイキスト雑音を最小化するために、我々が可能な限り低減しようとする自己インダクタンスLa及び抵抗Rを有する。
【0038】
パラメータL、Rは、選択されたアンテナ形状及びアンテナを構成する材料の種類によって固定される。次に、アンテナを共振させることが可能であり、これにより、以下の2つのことが可能になる。
【0039】
-共振アンテナの品質係数Qは、検出された信号を自然に増幅することを可能にする。
【0040】
-アンテナの帯域幅Δωは、捕捉された信号をフィルタリングし、対象の帯域Δω外の電磁雑音を拒絶することを可能にする。
【0041】
この実装は、共振アンテナ及び非共振アンテナの両方に対して機能する。以下、共振アンテナの場合について説明する。
【0042】
容量は、アンテナの固有周波数ω=1/√LaCaが、受信信号の周波数ω≒40kHzに同調するように設定される。更に、アンテナの設計は、その帯域幅Δω=R/Lを考慮に入れなければならず、検出される雑音を制限しながら情報を失わないように、RF信号の帯域幅Δωと同程度の大きさを有することが望ましい。したがって、アンテナ5の自己インダクタンスLの値が、所望の周波数特性に基づいて抵抗及び選択能力を決定する。
【0043】
一次誘導アンテナ5は、体積型アンテナである。例えば、サドル形状のヘルムホルツ形状アンテナが選択されてもよく、又は任意の他のより複雑な体積形状、特に勾配形状が選択されてもよい。
【0044】
図3は、本発明によるRF検出及び取得システムにおいて実装される体積アンテナのためのこれらの形状のうちの2つを示す。
【0045】
第1の形状(a)は、サドル型であり、その性能、特に空間的均一性に関して当業者によく知られている。サドルアンテナの直径は、その長さの1.5倍に等しい。
【0046】
他方の形状(b)は、サドルの一次勾配バージョンである。この体積型アンテナ5’は、互いに直列に取り付けられた2つのサブアンテナ51、52から構成される。第1の内部アンテナ51はサドル形状を有し、この例では2つのワイヤターンを有する。外側のより大きい第2のアンテナ52もサドル形状であり、単一のワイヤターンを有する。システムの寸法及びワイヤの配向は、以下のように選択される。
【0047】
-アンテナの外側部分及び内側部分は、同じインダクタンスを有する。これは、内部アンテナにおける2つのワイヤターンによって可能になる。
【0048】
-内側部分の電流は、外側部分の電流と反対方向に循環する。
【0049】
この構成では、勾配アンテナサドル5’は、アンテナ5’の寸法の前方の大きな距離に位置するソースから来る雑音を拒絶することを可能にする一方で、サドル形状の均質性から恩恵を得る。勾配測定アンテナの原理は、R.L.Fagyによる論文「Superconducting quantum interference device instruments and applications」,Review of scientific instruments 77,101101(2006)で詳細に説明されている。
【0050】
流れ集中及び最適インダクタンス
アンテナのインダクタンスを決定するために、検出システムの残りの部分を図1を参照して検討する。使用されるSQUIDデバイス3(例えば、StarCryo製のモデルSQ680)は、誘導結合されるコイルL及びLによって具現化される磁束変換システム2を介して、一次アンテナ5との電流結合を実行するインダクタンスL=720nHを有する入力コイル8に結合される。アンテナ5(それぞれコイルL)を流れる電流はi(それぞれi)で示され、アンテナ5によって捕捉される磁束はΦで示される。更に、入力コイル-SQUIDの相互インダクタンスは、M=k√LiLsで示され、M12=k√L1L2は、コイルLとLとの間の相互インダクタンスである。
【0051】
k及びkは無次元係数であり、LはSQUIDデバイス3の自己インダクタンスである。目的は、アンテナによって捕捉される外部磁束Φと、SQUID3によって捕捉される磁束Φsqとの間の関係である。
【0052】
回路における誘導結合関係は、次のように書かれる。
【0053】
【数1】
【0054】
これらの式を組み合わせることにより、次式が得られる。
【0055】
【数2】
【0056】
この後者の式は、Φによって与えられる外部励起と、Φsqによって定量化されるSQUID3の応答レベルとの間の関係を確立する。次に、このようなアセンブリが「磁束集中器」と呼ばれる理由を理解する。ファラデーアンテナ5の主な役割は、SQUID3によって捕捉される磁束を増加させることである。
【0057】
所与のΦに対してΦにおいて最大応答を与えるデバイスの最大感度レベルは、以下に対して到達される。
【0058】
【数3】
【0059】
一次アンテナ5の抵抗は、妥当な値、例えば、R=1Ωに設定される。したがって、約10kH程度の帯域幅の値に対応するためには、L=0.1mHを確保する必要がある。このLの値は、コンデンサの値を設定する。
【0060】
【数4】
【0061】
したがって、インダクタンスLとLの比が必要とされる。
【0062】
【数5】
【0063】
すなわち、L 1390Lである。L及びLの正確な値は、デバイスの最大感度を保証するために可能な限り1に近くなければならない結合定数kによって設定される。
【0064】
磁束変換要件
誘導結合がコイルL及びLを介して導入された理由を疑問に思うことは妥当である。アンテナをSQUID3の入力コイルに直接接続する方が簡単である。コイル(L及びL)を含む磁束トランス2が存在せず、インダクタンスLを有する誘導アンテナがSQUIDの入力コイル(L)と直列であると仮定する。次に、磁気結合が書き込まれて、
【0065】
【数6】
【0066】
結合をSQUIDに導入するΦsq=Mis
【0067】
【数7】
【0068】
上記の式は、アンテナ5のインダクタンスをSQUID 3の入力コイル8のインダクタンスと等しくすることによって、アンテナ5のインダクタンスについて最大感度に達することを示している:L=L
【0069】
例えば、ループ内の巻数を調整することによって、又はその形状を調整することによって、アンテナ5のインダクタンスを調整することが可能である。
【0070】
次いで、磁束トランスを導入する必要性が理解される。実際、後者がなければ、アンテナのインダクタンスは、値L=L=720nHに課される。このインダクタンス値は、アンテナと、
【0071】
【数8】
【0072】
その値を有するアンテナに接続するコンデンサに抵抗を課す。
【0073】
【数9】
【0074】
これらの結果は、2つの理由で満足できるものではない。一方で、見出された容量は極めて高い。これらの値に対して、我々は、低温装置の低温に適合させることができない化学コンデンサを使用すべきである。一方、抵抗値は非常に低く、これはアンテナにおける強度雑音に影響を及ぼす。
【0075】
【数10】
【0076】
すなわち、アンテナは100Kに冷却される。δi≒3nA/√Hz。この雑音は、SQUIDの入力における非常に低いレベルの雑音の約pA√Hzに対して非常に高すぎる。
【0077】
1つの解決策は、一次アンテナ5の抵抗を増加させることであり、これは、同じ帯域幅を維持するために、インダクタを適合させるように磁束トランス2を通過することを必要とする。
【0078】
SQUID電流リーダ
使用されるSQUIDデバイス3は、極低温クーラ、例えば、CryoMech(登録商標)製のPT403によって冷却され、電流iによってバイアスされる低Tc SQUID(例えば、STARCryo(登録商標)製のSQ680)である。
【0079】
高Tc対応物とは異なり、低Tc SQUIDは、はるかに低い熱雑音レベルを有し、それにより、信号対雑音比、及び最終的には最終画像の品質を劇的に向上させることを可能にする。その役割は、入力コイルにおいて生成された電流を0.8pA/√Hzの雑音レベルで読み取ることである。したがって、この雑音レベルは、誘導アンテナにおける熱雑音に対して達成されるべき目的である。
【0080】
低雑音増幅器-FLL
SQUIDデバイスは、量子磁束周期Φ=h/2eを有する非線形の周期的電流捕捉磁束応答を有する。この応答を線形化して画像品質を劣化させるアーチファクトを回避するために、SQUID3は磁束固定ループ(FLL)に結合され、その一例を以下に説明する。
【0081】
このループは、まず、SQUIDの端子で測定される電圧の前置増幅器40(LNA)を有する。
【0082】
増幅システムには2つの選択が考えられる。例えば、文献US2013271142の場合のように、SQUIDによる増幅を選択するか、又はASICタイプの半導体ヘテロ構造増幅を使用するかのいずれかであり、後者は潜在的により有利であるが、特に入力信号の最大電圧発振レベルにおいて、より多くの制約をもたらす。
【0083】
インダクタンスLfeedを有するフィードバックコイル10は、SQUID3をその最大磁束感度レベルに維持するために、入ってくる磁束変化に反応することを可能にする。信号は、磁束固定ループの出力で読み取られる。
【0084】
MRI機器
SQUIDに基づく超高感度検出及びRF取得システムは、B0=1mT(周波数ω0 40kHzに対応する)程度の動作磁場を使用して、現在の臨床基準に従った取得時間及び画質を保持しながら、MRI機器に組み込むことができる。数桁の動作磁場の減少は、あまり高価ではない磁気遮蔽なしの光学機器のおかげで、一方では、撮像標準としてのMRIの大規模な採用、他方では、脳卒中のタイプ(虚血性又は出血性)を診断するためのトラック搭載MRI、(CTスキャンによって実行される)乳癌の100%MRIスクリーニング、又は術中MRIなどの未だ存在しない用途の開放の妨げとなっていた制約を排除することを可能にする。
【0085】
図2は、本発明による検出システムを用いて実行されるMRI実験の概略図である。膝用MRIが選択され、骨関節の撮像は、本発明の最初の可能性のある用途の1つである。患者の膝は、約10×10×10cmの体積にわたって約10ppmで均一な永久磁場B≒1mTを確保するソレノイドと、上述の受信アンテナとを備えるシリンダに挿入される。受信アンテナは、パルス管に由来するカスタム極低温システムを使用して約60Kの温度に冷却され、部分BのSQUIDシステムの冷却を確実にする。
【0086】
部分Bは、誘導アンテナから来る電流の読み取りを確保するSQUIDと、上述の信号の処理電子機器と、前置増幅システムと、積分増幅器、読み取り抵抗器、及びループコイルLfeedから構成される磁束固定ループFLLとを備える。この段全体は、低温機械、例えばCryoMech製のPT403パルス管を使用して、4.2K付近の温度で冷却される。
【0087】
部分Cは、機器を制御し、得られたMRI画像を表示するために、コンピュータ後処理のための信号のアナログ-デジタル変換を提供する。
【0088】
医療用途
デバイスの感度及び携帯性は、第一に磁気共鳴撮像(MRI)にとって興味深いものとなる。低磁場で得られる高コントラストレベルにより、この技術は、高磁場技術ではコントラストが現在不十分である診断にとって興味深いものである。
【0089】
更に、本発明による機器は、事故現場で虚血性又は出血性脳卒中を迅速に診断し、患者をより迅速にケアし、認知機能への不可逆的損傷を回避するために、救急車に容易に設置することができる。
【0090】
本発明による撮像装置は、その低コスト及び使い易さのために、今日十分に使用されていない使用事例である、50歳以上の女性における乳癌のスクリーニング、統合失調症、うつ病、若しくはてんかんなどの疾患の早期スクリーニングでの神経学及び精神医学における使用、又は前立腺癌のスクリーニングにおいても広く普及する可能性がある。
【0091】
最後に、多くの低磁場MRIプロジェクトは、ハイブリッドMRI-脳磁図(MEG)装置を設計するという目的も有する。これは、フィンランドのアールト大学のチームの研究にも当てはまる(ソース:https://www.aalto.fi/en/department-of-neuroscience-and-biomedical-engineering/meg-mri-brain-imaging-groupを参照されたい)。
【0092】
本発明によるSQUIDベースのMRI機器アイテムは、その中にMEGデバイスを統合するように適合され得る。
【0093】
核磁気共鳴
特に化学的特徴付けのために使用されるNMR装置も、MRIについてのものと同様の理由で、より軽量でより安価な機器を設計するために、本発明者らの検出システムから恩恵を得ることができる。
【0094】
鉱業
鉱業では、文献US7,394,250に例示されているように、金属の探査のためのSQUIDベースの磁気センサが既に存在する。本発明の検出システムは、超低雑音レベルのおかげで、そのような採鉱用の装置に組み込むこともできる。原理は以下の通りである。RF波が地中に放射され、金属鉱脈が存在する場合、渦電流が鉱脈内に誘導され、それが次にRF波を放射し、この波が、検出システムをSQUIDと統合する本発明者らの装置によって検出される。
【0095】
軍事用
超高感度無線周波数センサは、電子戦争システムの周知の要素である。それらは、例えば、通信信号を検出するように機能する。別の有利な用途は、水中潜水艇の検出である。潜水艇は強磁性材料からなるため、本発明のデバイスは、採掘と同じ原理で、RF波を放射し、誘導渦電流によって生成される波を検出することによって、潜水艇の存在を検出することができる。一方、他のシステムは、2001年4月のHirota et al.による文献「Magnetic detection of a surface ship by an airborne LTS SQUID MAD」、IEEE Transactions on Applied Superconductivity 11(1)、884-887に示されているように、水中艇の通過によって生成される局所的な地球磁場の擾乱を検出する。
【0096】
電波天文学
SQUIDベースのシステムは、電波天文学の分野で既に広く使用されており、例えば非常に低い電流を読み出し及び/又は増幅するための超伝導ボロメータに組み込まれている。超高感度により、我々のシステムは、RF領域における較正望遠鏡に興味深い統合を見出すことができる。
【0097】
当然のことながら、本発明は上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく多数の他の実施形態を想定することができる。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
【国際調査報告】