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特表2023-553574抗真菌性アリルアミン組成物を使用する、爪真菌症の治療計画
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  • 特表-抗真菌性アリルアミン組成物を使用する、爪真菌症の治療計画 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-22
(54)【発明の名称】抗真菌性アリルアミン組成物を使用する、爪真菌症の治療計画
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20231215BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20231215BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231215BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231215BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231215BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231215BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231215BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20231215BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20231215BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P31/10
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/18
A61P17/00
A61K47/26
A61K47/24
A61K47/14
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557833
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 GB2021053195
(87)【国際公開番号】W WO2022123228
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/122,588
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523216366
【氏名又は名称】モバーグ ファーマ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルンハイム, トールビョルン
(72)【発明者】
【氏名】タヴァコル, アミール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA13
4C076AA95
4C076BB31
4C076CC31
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD43
4C076DD45
4C076DD46F
4C076DD51
4C076DD54
4C076DD63F
4C076EE23F
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA10
4C206FA07
4C206MA01
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA83
4C206NA13
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZB35
(57)【要約】
爪の爪真菌症の治療方法が提供され、この方法は、抗真菌性アリルアミン化合物及び非水性溶媒系を含む医薬組成物の局所適用を含み、この方法は、充填段階を含み、その間、医薬組成物は、週に少なくとも3回投与され、その後維持段階が続き、その間、医薬組成物は、1週間当たり2回以下投与される。爪への局所適用に好適な医薬組成物が更に提供され、医薬組成物は、本明細書に定義される、抗真菌性アリルアミン化合物、有機酸成分、及びジオール成分を含み、並びに爪真菌症の治療方法における医薬組成物の使用が更に提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪の爪真菌症の治療方法であって、前記方法は、
(a)充填段階のステップであって、前記段階が、約1~約6ヶ月の期間にわたって週に少なくとも3回の頻度で、抗真菌性アリルアミン化合物を含む薬学的に許容され得る組成物の前記爪への局所適用を含む、充填段階のステップと、それに続く
(b)維持段階のステップであって、前記段階が、必要に応じて、1週間当たり2回以下の頻度で、抗真菌性アリルアミン化合物を含む薬学的に許容され得る組成物の前記爪への局所適用を含む、維持段階のステップと、を含み、
前記抗真菌性アリルアミン化合物を含む前記薬学的に許容され得る組成物が、非水溶媒系を含む、治療方法。
【請求項2】
前記充填段階が、約1ヶ月~約3ヶ月の期間である、請求項1に記載の治療方法。
【請求項3】
前記充填段階中に、前記組成物が週に少なくとも5回適用される、請求項1又は2に記載の治療方法。
【請求項4】
前記充填段階中に、前記組成物が1日1回適用される、請求項3に記載の治療方法。
【請求項5】
前記維持段階が、約2ヶ月~約12ヶ月の期間である、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療方法。
【請求項6】
前記維持段階中に、前記組成物が週に1回適用される、請求項1~5のいずれか一項に記載の治療方法。
【請求項7】
抗真菌性アリルアミン化合物を含む前記薬学的に許容され得る組成物が、
(i)約8重量%~約12重量%の量のテルビナフィン、又はその薬学的に許容され得る塩と、
(ii)約50重量%~約70重量%の量のプロパン-1,2-ジオールと、
(iii)約5重量%~約15重量%の量の乳酸と、
(iv)約0.03重量%~約0.1重量%の量のEDTA、又はその薬学的に許容され得る塩と、
(iv)約15重量%~約25重量%の量の尿素と、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の治療方法。
【請求項8】
医薬組成物であって、
(i)少なくとも約5重量%の量のアリルアミン抗真菌化合物と、
(ii)約1重量%~約20重量%の量の有機酸成分と、
(iii)約10重量%~約50重量%の量のジオール成分と、
(iv)約10重量%~約40重量%の量のモノアルコール成分と、を含み、
前記組成物が本質的に水を含まない、医薬組成物。
【請求項9】
前記アリルアミン抗真菌化合物が、テルビナフィン、又はその薬学的に許容され得る塩である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記アリルアミン抗真菌化合物が、約5重量%~約12重量%の量で存在する、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
前記有機酸成分が乳酸を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記有機酸成分が、乳酸、クエン酸、ペンタン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記有機酸成分が、約5重量%~約15重量%の量で存在する、請求項8~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ジオール成分が、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ジオール成分が、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ジオール成分が、約10重量%~約45重量%の量で存在する、請求項8~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ジオール成分が、約15重量%~約35重量%の量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記モノアルコール成分が、エタノールを含む、請求項8~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記モノアルコール成分が、エタノール、イソプロパノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記モノアルコール成分が、約15重量%~約35重量%の量で存在する、請求項8~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、約0.01重量%~約1重量%の量の金属イオン封鎖剤を更に含む、請求項8~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記金属イオン封鎖剤が、EDTA、又はその薬学的に許容され得る塩、及びホスホン酸ナトリウムから選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記金属イオン封鎖剤が、EDTAである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記金属イオン封鎖剤が、約0.03重量%~約0.5重量%の量で存在する、請求項21~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が、約5重量%~約25重量%の量の尿素系成分を更に含む、請求項8~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記尿素系成分が尿素である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が、約5重量%~約30重量%の量の有機酸エステル成分を更に含む、請求項8~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記有機エステル成分が、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が、液体溶液の形態である、請求項8~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
医薬組成物であって、
(i)少なくとも約5重量%の量のアリルアミン抗真菌化合物と、
(ii)約1重量%~約20重量%の量の有機酸成分と、
(iii)約10重量%~約50重量%の量のジオール成分と、
以下から選択される1種以上の成分、
(iv)約10重量%~約40重量%の量のモノアルコール成分、及び
(v)約5重量%~約30重量%の量の有機酸エステル成分、
とを含み、
前記組成物は本質的に水を含まず、前記有機酸成分及びジオール成分は、合計で、約20重量%~約50重量%の量で存在する、医薬組成物。
【請求項31】
前記組成物が、約0.1重量%~約1重量%の量の金属イオン封鎖剤を更に含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物が、約5重量%~約25重量%の量の尿素系成分を更に含む、請求項30又は31に記載の組成物。
【請求項33】
前記有機酸成分、ジオール成分、及び尿素系成分が、合計で、25重量%~約60重量%以下の量で存在する、請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
医薬組成物であって、
(i)少なくとも約5重量%の量のアリルアミン抗真菌化合物と、
(ii)約1%~約20重量%の量の有機酸成分と、
(iii)約5重量%~約45重量%の量の有機エステル成分と、
(iv)約10重量%~約60重量%の量のジオール成分と、
(v)約1重量%~約15重量%の量の界面活性剤成分と、を含み、
前記組成物が本質的に水を含まない、医薬組成物。
【請求項35】
前記アリルアミン抗真菌化合物が、テルビナフィン、又はその薬学的に許容され得る塩である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記アリルアミン抗真菌化合物が、約5重量%~約12重量%の量で存在する、請求項34又は35に記載の組成物。
【請求項37】
前記有機酸成分が乳酸を含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記有機酸成分が、乳酸である、請求項34~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記有機酸成分が、約5重量%~約15重量%の量で存在する、請求項34~38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
前記ジオール成分が、エタン-1,2-ジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項34~39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記ジオール成分が、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記ジオール成分が、約20重量%~約50重量%の量で存在する、請求項34~41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
界面活性剤成分が、ポリソルベート、モノグリセリド、レシチン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項34~42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
前記界面活性剤成分が、ポリソルベート60、ポリソルベート80、レシチン、モノグリセリド、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記界面活性剤成分が、約3重量%~約12重量%の量で存在する、請求項34~44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
前記有機エステル成分が、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、及びこれらの混合物から選択される、請求項34~45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記有機エステル成分が、約5重量%~約35重量%の量で存在する、請求項34~46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記組成物が、約0.01重量%~約1重量%の量の金属イオン封鎖剤を更に含む、請求項34~47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
前記金属イオン封鎖剤が、EDTA、又はその薬学的に許容され得る塩である、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記金属イオン封鎖剤が、約0.03重量%~約0.5重量%の量で存在する、請求項48又は49に記載の組成物。
【請求項51】
前記組成物が、約5重量%~約25重量%の量の尿素系成分を更に含む、請求項34~50のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
前記尿素系成分が尿素である、請求項49に記載の組成物。
【請求項53】
前記組成物が液体溶液の形態である、請求項34~52のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項54】
爪の爪真菌症の治療方法であって、治療有効量の請求項8~53のいずれか一項で定義された組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、治療方法。
【請求項55】
抗真菌性アリルアミン化合物を含む前記薬学的に許容され得る組成物が、請求項8~53のいずれか一項に定義されたものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所治療による爪の真菌感染症の治療のための新しい組成物及び投与計画に関するものであり、抗真菌剤の爪への及び爪を通る効率的な浸透を可能にする。
【0002】
先行技術及び背景
本明細書における明らかに以前に公開された文書のリスト又は議論は、必ずしも、その文書が先行技術又は共通の一般的知識の一部であることを認めるものとみなされるべきではない。
【0003】
爪の真菌感染症(爪真菌症)及び関連する爪の損傷は、一般の人々の約2~5%が侵され、50歳以上の人では8~10%に増加する。
【0004】
爪真菌症の局所的な治療は、かなりの研究努力の課題であった。利用可能な多くの強力な抗真菌薬があり、この分野では、爪全体及び爪床へのそのような化合物の十分な量の浸透が治癒をもたらすという一般的な理解がある。
【0005】
しかしながら、爪感染症は、上記の目的を達成することが非常に困難であるため、的確に治療することが非常に難しい病気のままである。‘Topical Absorption of Dermatological Products’,Eds.Robert L Bronaugh and Howard Maibach,CRC Press,New York 2002(Ying Sun,Jue-Chen Liu,Jonas C.T Wang and Piet De Doncker,Nail Penetration-Focus on Topical Delivery of Antifungal Drugs for Onychomycosis Treatment;Chapter 30 at pages437-455)に記載されているように、局所治療の効力の欠如は、抗真菌薬が爪甲に浸透して感染部位、すなわち爪甲、爪床及び爪母に到達できないという事実に、起因する可能性が高い。
【0006】
爪真菌感染症に存在する厚い爪甲、爪甲の緻密な角化性、及び角化症は、局所的に適用された薬物が浸透することが非常に困難な障壁にする。実際、爪の構造は、水による硬い爪板の水和のみを可能にし、それがより弾性になり、局所的に適用される薬物に対しておそらくより透過性になることを可能にする。
【0007】
このため、爪を通して抗真菌剤の浸透を増加させるほとんどの試みは、水及び他の高極性溶媒を含有する溶液中での局所投与について記載している。例えば、米国特許第7,820,720号、米国特許出願第2008/0188568号及び同第2004/0096410号、並びに国際特許出願第2006/103638号及び同第2008/121709号を参照されたい。
【0008】
対照的に、国際特許出願第2012/107565号は、有機酸、ジオール、及びEDTAなどの金属イオン封鎖剤を含む本質的に無水のビヒクル中に、抗真菌剤であるテルビナフィンを大量に含む新規製剤を記載している。
【0009】
金属イオン封鎖剤の存在が爪を通して抗真菌剤の非常に効率的な浸透を可能にするという驚くべきことが、どのように見出されたかを、この文献は記載しており、EDTAなどの金属イオン封鎖剤が非水性環境における活性化合物の爪浸透性を増強する既知の機構を有しないことを考慮すれば、これは全く予想外の観察である。その後の臨床試験では、国際特許出願第2012/107565号の組成物について、48週間の治療後の真菌学的治癒率が54%であることが実証され、これは局所治療においては注目すべきでことある。
【0010】
最近実施された北米第III相臨床試験においては、同じ製剤が更に高い真菌学的治癒率を達成し、これらの高い真菌学的治癒率が、驚いたことに、局所治療の初期段階すなわち最初の数ヶ月以内に達成されたことを実証した。
【0011】
しかしながら、同じ第3相試験で達成された完全治癒率のレベルは、予想外に低かった。完全治癒は、真菌学的治癒及び(正常又は健康的な爪の外観の回復の程度に関して)爪の視覚的外観の評価の両方を含む。データは、これまで全ての市販製品及び開発製品で見られていた、真菌学的治療と完全治療との予想される関係の外側にあった。
【0012】
理論によって限定されないが、試験された製剤は、爪の過剰な水和を助長し、それが爪の変色/白化をもたらしたと、本発明者らは考えている。特に、この変色は一般的に、爪の白化の増加として観察され、これは爪真菌症に関連する変色とは異なっていた。これは、爪の正常な外観のより遅い回復を引き起こすと主観的に認識されていたことである。
【0013】
第2の多国籍第3相臨床試験では、軽度から中等度の遠位部爪下爪真菌症に罹った患者の治療において、同じ製剤とシクロピロックスの8%の局所製剤とを比較した。この製剤は、非常に高い真菌学的治癒率を達成した(52週間後に84%であり、これと比較して、シクロピロックス製剤では42%であった)が、標的の爪の完全治癒率は1.8%でしかなかった(これと比較して、シクロピロックス製剤では1.6%であった)。治療は、シクロピロックスコホートが18.9%であるのと比較して、製剤を投与された患者の21.9%については成功したと考えられた(治療の成功とは、真菌学的治療及び爪の許容可能な外観、すなわち、10%以下の罹患した爪]である)。予期せぬ低レベルの完全治癒と治療の成功は、再び爪の白化と変色に起因し、これはシクロピロックスコホートでは観察されなかった。
【0014】
変色/白化を引き起こすのに必要な程度まで爪を水和させる、本質的に水を含まない組成物の能力は、組成物に含有される水が非常に少ないことを考えると、驚くべきものであった。しかしながら、製剤は本質的に水を含まないものであったにもかかわらず、製剤はいくつかの成分を含有しており、これらの成分は、単独又は組み合わせのいずれかで、爪の予期せぬ水和を促進し、同時に爪を通じたテルビナフィンの浸透を促進した。
【0015】
本発明者らは、この完全に予期せぬ問題は、以下によって解決され得ると理解している、
(i)製剤の適用計画を変更すること、かつ/又は
(ii)製剤を変更して、爪の浸透特性と爪の水和特性との間の改善された均衡を促進すること。
【発明の概要】
【0016】
理論によって限定さないが、罹患した爪に頻繁に組成物が適用される第1の「充填」段階と、それに続く、組成物がより少ない頻度で適用される「維持」段階とを含む治療計画は、真菌感染を治癒し、爪の健全な外観を回復させ、それによって高レベルの完全治癒を達成すると考えられる。このような治療計画は、充填段階中に高レベルの活性成分が爪組織に蓄積することを可能にすると考えられており、これは、真菌感染の効果的な治療のための要件である。
【0017】
維持段階では、爪組織内の活性成分を維持しながら、より頻繁な治療で観察される水和効果を低減する。この水和の低減は、過剰水和によって引き起こされる、爪の変色及び/又は白化を減少させることが期待される。製剤の効果による変色(例えば、過剰水和)は、一般に、爪の白化として観察され、したがって、本明細書では「白化変色」と称され得る。
【0018】
本発明の第1の態様によれば、この発明は、爪の爪真菌症の治療方法を提供し、この方法は、
(a)充填段階のステップであって、段階が、約1~約6ヶ月の期間にわたって週に少なくとも3回の頻度で、抗真菌性アリルアミン化合物を含む薬学的に許容され得る組成物の爪への局所適用を含む、充填段階のステップと、それに続く
(b)維持段階のステップであって、段階が、必要に応じて、1週間当たり2回以下の頻度で、抗真菌性アリルアミン化合物を含む薬学的に許容され得る組成物の爪への局所適用を含む、維持段階のステップとを含み、
抗真菌性アリルアミン化合物を含む薬学的に許容され得る組成物は、非水溶媒系を含む。
【0019】
薬学的に許容され得る組成物は、非水溶媒系を含み、それは以下のことが可能である、
・アリルアミン化合物を可溶化すること、
・アリルアミン化合物を通常の保管条件下及び使用中の両方で溶液中に保持すること、
及び溶媒系は本質的に水を含まない。
【0020】
本発明による治療方法は、長期間にわたって行われ得るため、抗真菌アリルアミンは、そのような長期間にわたって局所組成物中に存在する必要がある。活性成分がその完全性を失うと、化学的又はその物理的形態(例えば、沈殿によって溶液から現れる)のいずれかが不活性になり、組成物はその効力を失うだろう。
【0021】
この点で、組成物の溶媒系は、アリルアミン化合物を溶解するだけでなく、通常の保管条件下で溶液中に保つことができる必要がある。これは、アリルアミン化合物が親油性であり、安定な溶液中で維持することが困難であるため、課題を提起する。
【0022】
アリルアミン抗真菌化合物(テルビナフィンなど)は、溶媒系にもよるが、約1重量%よりも大きな量で使用される場合、例えば約3重量%、特に約5重量%よりも大きい量で使用される場合、水の存在下で経時的に沈殿する傾向があることが知られている。沈殿が起こると、ますます限られた量の有効成分が溶液中に存在し、爪に適用されると、その治療的抗真菌効果を発揮する。
【0023】
これに関して、アリルアミン抗真菌化合物を溶解でき、かつ本質的に水を含まない適切な溶媒系が選択される場合、少なくとも約5重量%、例えば、少なくとも約7%、少なくとも約10%、及び少なくとも約12%又は少なくとも約15%を含む、より多量のアリルアミン抗真菌剤を使用し得る。そのような高濃度のアリルアミンを溶解し、そのような高濃度を通常の貯蔵条件下で溶液中に保持することによって、本発明による治療方法で使用するための有効性の高い組成物を提供することが可能である。
【0024】
特定の量のアリルアミン抗真菌性化合物(例えば、テルビナフィン)は、約5重量%~約15重量%、例えば約5重量%~約12重量%、例えば約7重量%~約12重量%(例えば、約5重量%~約10重量%)の量を含む。
【0025】
組成物に使用するための好適なアリルアミン抗真菌化合物としては、ナフチフィン、及び、特にテルビナフィンが挙げられる。
【0026】
アリルアミン抗真菌化合物は、薬学的に許容され得る塩の形態で使用され得る(すなわち、組成物に加えられ得る)。特に、塩は、塩酸塩などの酸付加塩であり得る。
【0027】
適切な溶媒は、室温で液体でなければならず、上記の量のうちの1つ以上で、アリルアミン活性成分の即時溶解、及び通常の保管条件下での溶液中の維持を可能にする。
【0028】
この点で、溶媒系は、有機酸、有機酸エステル、アルキルアルコール(ジオール及びトリオールを含む)、及びこれらの混合物のうちの1種以上を含み得る。
【0029】
使用され得る有機酸は、約2.0(例えば、約3.5)~約6.5のpHを与えること(本発明の組成物の適用の部位で)を可能にする。本発明の目的のために、この用語には、弱酸などの哺乳類において安全に使用できる物質が含まれる。弱酸の典型的なpKaは、約-1.5(例えば約-1.74、例えば約1.00、例えば2.00)~約16(例えば約15.74)の範囲内である(例えば、Vollhardt,Organic Chemistry(1987)を参照)。好ましい範囲は、約1~約10である。
【0030】
したがって、有機酸成分は、C1~10カルボン酸を含み得、純粋な/混じりけのない、及び/又は(例えば、水性)溶液中で提供されてもよい。C1~10カルボン酸の例としては、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を有する飽和及び/又は不飽和、直鎖及び/又は分岐鎖である脂肪族モノ-、ジ-及びポリカルボン酸、アルキルアリール、又は芳香族ジカルボン酸、1、2、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を有するオキシ及びヒドロキシルカルボン酸(例えば、α-ヒドロキシ酸)が挙げられる。
【0031】
好適な有機酸成分の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、カプリン酸、ソルビン酸、シュウ酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシプロピオン酸(例えば、2-ヒドロキシプロピオン酸、以下、乳酸)、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、オキサロ酢酸、フタル酸、タルトロン酸及びピルビン酸のうちの1種以上が挙げられる。好ましい有機酸としては、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシプロピオン酸(例えば、乳酸)、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸などのヒドロキシ酸が挙げられる。より好ましい有機酸としては、乳酸が挙げられる。乳酸は、例えば、90%水溶液中に提供されてもよい。
【0032】
有機酸の好適なエステルとしては、前述の有機酸のうちの1種以上のC1~4アルキルエステルが挙げられる。好ましいエステルとしては、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピルなどの乳酸エステルが挙げられる。更なる好ましいエステルとしては、クエン酸、リンゴ酸、特に酢酸のC1~4アルキルエステルが挙げられる。
【0033】
アルコールには、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのモノアルキルアルコール、又はグリセロールなどのトリオールが含まれ得るが、好ましくは、組成物は、少なくとも1種のジオールを含む。ジオールの非限定的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール(プロパン-1,2-ジオール)、ブタンジオール、ペンタンジオール(例えば、1,5-ペンタンジオール)、ヘキサンジオール、及びこれらの混合物が挙げられる。所望であれば、ジオール成分は、プロピレングリコールと別のジオール、例えば1,5-ペンタンジオールとの混合物などのジオールの混合物であり得る。好ましいジオールは、プロピレングリコールである。
【0034】
有機酸とジオールとの混合物が、本発明の治療方法に使用される溶媒系の大部分を形成することが好ましい。この混合物を用いる場合、有機酸成分とジオール成分との好適な濃度比は、組成物の総重量に基づいて、重量比で約1:20(酸:ジオール)~約1:1、好ましくは約1:15~約1:2、より好ましくは約1:12~約1:4、例えば、約1:8~約1:5(例えば、約1:6)であり得る。
【0035】
溶媒系の大部分が有機酸及びジオール成分の組み合わせを含む場合、組成物中のこれらの成分の総量は、好ましくは、約40%~約80%、例えば、約50%~約70%、例えば、約55%~約65%の範囲である。
【0036】
本発明による治療方法において使用される組成物は、適切な適用手段によって爪に適用することができる液体の形態の単相溶液であること、すなわち、採用される溶媒系が、エマルジョンのような多相(例えば二相)系ではないことが更に好ましく、ホモジナイズされたエマルジョン又はマイクロエマルジョンを含む。抗真菌性アリルアミン化合物は、好ましくは、この単相溶媒系中に溶解され、単相液体溶液を形成する。
【0037】
有効成分に加えて溶媒系に溶解し得る他の賦形剤としては、尿素系成分が挙げられる。そのような尿素系成分は、尿素自体を含み得、及び/又は過酸化尿素を含み得、過酸化尿素は、尿素過酸化水素(UHP)、パーカルバミド又は過酸化カルバミドとしても知られ、これは過酸化水素及び尿素の付加物であり、主に化粧品及び医薬品における消毒剤又は漂白剤として使用される。我々は、過酸化尿素を加えることによって、本発明のそのような組成物が用いられるときに、爪の視覚的外観をより迅速に改善することを見出した。これは、延いては服薬順守を改善し、外観の改善は、患者が治療を継続するためのインセンティブを提供する。
【0038】
本発明の組成物に使用され得る別の特に好ましい成分は、封鎖(又は封鎖)剤である。我々は、金属イオン封鎖剤を加えることが、アリルアミン抗真菌剤の爪への送達を増加させることを見出した。好適な金属イオン封鎖剤としては、アミノ酢酸、ホスホン酸塩(例えば、ホスホン酸ナトリウム)、ホスホン酸類(例えば、ホスホン酸)、及びこれらの混合物が挙げられる。金属イオン封鎖剤は、金属錯体化剤であり得、金属錯体化剤はアルカリ金属又はアルカリ土類金属などの金属と複合体を形成し得る。好ましいアミノ酢酸は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。組成物に含まれる場合、金属イオン封鎖剤の好適な量の例としては、約0.01~約5重量%、例えば、約0.01%~約1%、好ましくは約0.03%~約0.5%が挙げられる。
【0039】
本明細書で使用される(例えば、封鎖/金属イオン封鎖剤の文脈で)、アミノ酢酸(及び、同様に、アミノ酢酸金属イオン封鎖剤)という用語は、1個以上のアミン及び酢酸部分を含有する金属複合化剤を指すと理解され得、好ましくは、2個以上のカルボキシル基を含有するかかる化合物は、アミノポリカルボン酸とも称され得る。本明細書に記載の組成物での使用に好適なかかる化合物の例としては、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、好ましくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられる。
【0040】
他の金属イオン封鎖剤としては、ホスホン酸若しくはホスホン酸塩、又はそれらのアミン誘導体が挙げられる。使用に好適なかかる化合物の例としては、ホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(HDTMP)、及びジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)が挙げられる。
【0041】
金属イオン封鎖剤は、塩(すなわち、薬学的に許容され得る塩)、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩の形態で使用され得る。言及され得る特定の塩としては、ナトリウム、カリウム、及びカルシウム塩が挙げられる。
【0042】
本明細書に記載されているように、本発明による治療方法で使用するための抗真菌性アリルアミン化合物を含む組成物は、非水性であり、本質的に水を含まず、これにより、高濃度のアリルアミン化合物を単相溶媒系に組み込むことができ、高濃度の溶解活性成分は、通常の貯蔵条件下での貯蔵中及び使用中に保持される。
【0043】
それにもかかわらず、乳酸について上述したように、本発明による治療方法で使用され得る組成物中で使用され得る成分のいくつかは、少量の(微量を含む)水を含有し得る。そのような少量の水は、当業者によって決定され得るように、組成物の安定性(例えば、通常の貯蔵条件下での活性成分の沈殿)に影響を与えない限り、組成物中に存在し得る。
【0044】
更に、最終組成物のpHは、少量の水性塩基(水酸化ナトリウム水溶液、例えば10MのNaOH(水溶液)など)を添加することによって、例えば規制要件に適合するように上昇させる必要があり得る。製剤の最終pHは、好ましくは、約3~約6(例えば、約4~約5.5、例えば、約5.3以下)の範囲である。
【0045】
上記とは別に、組成物に追加の水は加えられない。組成物は、最大約4%を含む、最大約5%など、最大約6%の水に耐えることができ、より好ましくは、その総重量に基づいて、組成物の3%未満を含む。本明細書で使用される場合、本質的に水を含まないという語句は、組成物が、アリルアミン活性成分(例えば、テルビナファイン)の沈殿を防止するのに十分に少ない量の水を含有することを示すとも理解され得る。
【0046】
本発明によれば、抗真菌性アリルアミン化合物を含む薬学的に許容され得る組成物は、本明細書に記載されるように、充填段階中に、約1ヶ月(例えば、約4週間)~約6ヶ月(例えば、約26週間)の期間、例えば、最大約5ヶ月、約4ヶ月、又はより好ましくは約3ヶ月(例えば、最大約12週間)にわたって適用される。特に、充填段階は、約8週間、約10週間、約12週間、又は約24週間の期間であり得る。より具体的には、充填段階は、8週間、10週間、又は12週間(例えば、8週間)の期間であり得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、爪真菌症は、遠位爪下爪真菌症、白色表在性爪真菌症、近位爪下爪真菌症、エンドニクス爪真菌症、及びカンジダ性爪真菌症を含む。特に、治療されるべき爪真菌症は、遠位爪下爪真菌症(DSO)である。本明細書で使用される場合、遠位爪下爪真菌症(DSO)は、遠位外側爪下爪真菌症(DLSO)も含むと理解され得る。
【0048】
この初期充填段階は、アリルアミン抗真菌化合物による爪真菌症の「集中治療」を提供し、爪及び爪床である、爪領域内のテルビナフィンの浸透及び蓄積を可能にする。したがって、組成物の爪への適用は、1週間当たり少なくとも3回、好ましくは1週間当たり少なくとも4回、より好ましくは1週間当たり少なくとも5回、例えば1週間当たり少なくとも6回、最も好ましくは1日に1回以上(例えば2回)行われる。特に、組成物は1日1回適用し得る。
【0049】
組成物の適切な量、したがって、爪/対象に適用される活性抗真菌成分(例えば、テルビナファイン)の投与量は、罹患した爪のサイズ及び数に依存し、当業者によって決定され得る。したがって、各患者が使用する組成物の量は、これらの要因に応じて大きく変化するであろう。しかしながら、臨床試験から、全ての足の爪への単一適用のための通常の1日量は、組成物の約0.2mL~約0.4mLであると予想され得る、一方で、1つ又はいくつかの足の爪のみが罹患した患者は、かなり少ない量を使用するであろう。
【0050】
特に、組成物の適用は、罹患した各爪を覆い、爪の縁の下に、組成物の薄い層で覆い、爪をおよそ5分間乾燥させることを含み得る。組成物は、側爪郭及び爪郭近位部を含む、爪を取り囲む皮膚に適用されてもよい。好ましくは、治療を受ける足又は手を洗う前に、適用後少なくとも8時間の期間を経過させるべきである。
【0051】
充填段階が完了した後、これは、本発明による治療方法に従ってラベルによって規定され得、及び/又は重症度などに応じて医師又は他の当業者によって変更され得る、組成物の適用(本明細書に記載の一般的な定義に基づく、まったく同じ組成物であり得る、又は異なる組成物であり得る)は、維持段階投薬計画で行われ、維持段階投薬計画では、関連する組成物は、必要に応じて、1週間当たり2回以下の頻度で爪に局所的に適用される。
【0052】
この維持治療は、ネイルユニット内の高いテルビナフィンレベルを維持するとともに、充填段階中の水和に続いて爪を「乾燥」することを可能にするという、二重の目的を持っている。
【0053】
維持治療は、約2ヶ月(例えば、約8週間)から約12ヶ月(例えば、約48週間)、例えば、約9ヶ月まで、約6ヶ月までを含む、例えば、約3ヶ月まで又は必要な期間の間、持続し得る。特に、維持段階は、約12週間、約24週間、約26週間、約38週間、又は約40週間持続し得る。より具体的には、維持段階は、約36週間、約38週間、又は約40週間(例えば、40週間)持続し得る。
【0054】
維持治療は、例えば、爪真菌症の治療における一般的な問題である感染の再発を予防すると考えられ、及び/又は予想される場合、無期限に継続し得る。
【0055】
維持段階中、組成物の適用は、週に1回、2週間に1回、月に1回などのように頻度が低くなるであろう。特に、組成物は週に1回適用し得る。
【0056】
本発明による総治療時間は、通常、約16週間から約52週間の間で変化し得る。ただし、必要に応じて、この期間後も維持治療を継続し得る。
【0057】
特に、総治療時間は、真菌性爪感染症の局所治療の標準治療期間である48週間であり得る。繰り返しになるが、必要に応じて、この期間後も維持治療を継続し得る。
【0058】
言及され得る特定の治療計画には、充填段階が、組成物を1日1回適用する8、10、又は12週間の期間であり、維持段階が、組成物を1週間に1回適用する36、38、又は40週間の期間であるものが含まれる。好ましくは、総治療時間は、8週間の充填段階に続く40週間の維持段階、又は10週間の充填段階に続く38週間の維持段階、又は12週間の充填段階に続く36週間の維持段階、に対応する48週間の期間である。
【0059】
言及され得る更なる治療計画としては、充填段階が、組成物が1日1回適用される12又は24週間の期間であり、維持段階が、組成物が1週間に1回適用される12、24又は36週間の期間であるものが挙げられる。好ましくは、総治療時間は、12週間の充填期に続く36週間の維持期、又は24週間の充填期に続く24週間の維持期、に対応する48週間である。
【0060】
本明細書に記載される方法で使用され得る組成物は、本明細書に記載される組成物を含む。
【0061】
言及され得る特定の組成物としては、以下を含む組成物が挙げられる、
(i)少なくとも約5重量%の量の抗真菌アリルアミン化合物(例えば、テルビナフィン)と、
(ii)50重量%を超える量のジオール成分(例えば、プロパン-1,2-ジオール)と、
(iii)約5重量%~約25重量%の量の有機酸成分(例えば、乳酸)と、
(iv)約0.03重量%~約0.5重量%の量の金属イオン封鎖剤(例えば、EDTA)。
【0062】
より具体的な組成物としては、以下を含む組成物が挙げられる、
(i)約8重量%~約12重量%の量の抗真菌性アリルアミン化合物(例えば、テルビナフィン、又はその薬学的に許容され得る塩)と、
(ii)約50重量%~約70重量%の量のジオール成分(例えばプロパン-1,2-ジオール)と、
(iii)約5重量%~約15重量%の量の有機酸成分(例えば乳酸)と、
(iv)約0.03重量%~約0.1重量%の量の金属イオン封鎖剤(例えば、EDTA、又はその薬学的に許容され得る塩)と、
(v)約15重量%~約25重量%の量の尿素系成分(例えば尿素)。
【0063】
かかる組成物は、水性塩基(水酸化ナトリウム水溶液、例えば10MのNaOH(水溶液)など)を更に含み得る。
【0064】
本発明の方法で使用するための特定の組成物は、以下を含む(又は本質的に以下からなる)、
(i)約10重量%の量の塩酸テルビナフィンと、
(ii)約60重量%の量のプロパン-1,2-ジオールと、
(iii)約9重量%の量の乳酸と、
(iv)EDTAと、
(v)尿素と、
(vi)10Mの水酸化ナトリウム水溶液。
【0065】
本発明の方法で使用するための更なる特定の組成物は、以下を含む(又は、好ましくは、本質的に以下からなる、又は以下からなる)、
(i)10重量%の量の塩酸テルビナフィンと、
(ii)59.7重量%の量のプロパン-1,2-ジオールと、
(iii)9重量%の量の乳酸と、
(iv)0.05重量%の量のEDTAと、
(v)18重量%の量の尿素と、
(vi)10Mの水酸化ナトリウム水溶液。
【0066】
疑義を避けるために、重量%は、当該技術分野におけるその通常の意味をとり、構成成分の量を組成物の総重量のパーセンテージで示す。
【0067】
言及され得る更なる組成物としては、以下に記載される本発明の組成物が挙げられる。
【0068】
高い真菌的治癒率を維持するのと同時に、爪の外観を改善し、それによって完全治癒を改善するために、組成物の総用量を減少させること、すなわち処置の強度を減少させることを、本発明者らは考える。筋真菌症に対して現在処方されている局所治療の通常の推奨投与量には、完全な真菌学的治療を達成するために、1年以上毎日適用することを含む。言い換えれば、長期間にわたる集中的な治療は、可能な限り完全な真菌学的治療を達成し、爪の外観の回復を可能にするために必要であると考えられている。
【0069】
しかしながら、上記の組成物についての前述の臨床試験で報告されている早期の真菌学的治癒のレベルが高いこと、並びに研究の終わり近くに得られたデータを考慮すると、以下に記載されているように、一度治療を停止すると爪の外観が改善することが示されているため、このような長期にわたる集中治療は、本発明の組成物が真菌学的治癒を達成するために必要ではないと、本発明者らは考えている。したがって、組成物は、本発明による治療方法に従って爪に適用すると、完全な治癒を達成することが期待される。
【0070】
本発明は、新規の抗真菌組成物(製剤)にも関し、この抗真菌組成物は、上記の組成物と比較して爪の正常な(又は健康な)外観の改善をもたらし、したがって、治療の結果としてより高いレベルの完全な治癒を達成する。理論によって限定されないが、新規組成物は、治療過程中に、罹患した爪の水和の程度を低減させ得、これは、治療中及び/又は治療の完了後に観察される爪の変色及び/又は白化(例えば、白化変色)の程度の低減をもたらし得ると、考えられる。
【0071】
新規組成物は、非水性(本質的に無水)溶媒系を含み、この溶媒系には、テルビナフィンなどの抗真菌アリルアミン化合物が溶解され、この溶媒系は、好ましくは、本明細書に記載されるような単相液体溶液の形態である。
【0072】
以下に記載される全ての態様、実施形態、特定の特徴及び好ましい特徴を含む、これらの新規の組成物は、「本発明の組成物」と称され得る。
【0073】
本発明の更なる態様によれば、医薬組成物が提供され、この医薬組成物は、
(i)少なくとも約5重量%の量のアリルアミン抗真菌化合物と、
(ii)約1重量%~約20重量%の量の有機酸成分と、
(iii)約10重量%~約50重量%の量のジオール成分と、
(iv)約10重量%~約40重量%の量のモノアルコール成分と、を含み、
組成物は本質的に水を含まない。
【0074】
疑義を避けるために、組成物の成分として使用され得る、好適なアリルアミン抗真菌性化合物、有機酸及びジオール、並びにそれらの量は、本明細書の上記において定義されたもの(すなわち、本発明の第1の態様に関して、全ての実施形態及びその特定の特徴を含む)を含み、それらの混合物を含む。
【0075】
本発明の組成物(それらの全ての態様を含む)は、本質的に水を含まず、これにより、本明細書で前述したように、高濃度のアリルアミン抗真菌化合物を単相溶媒系中に組み込むことが可能になる。しかしながら、本明細書の上記で説明したように、組成物は、少量の水を許容することができ、したがって、少量の水を含有し得る。水性塩基(NaOHなど)を、pH調整の目的で組成物に加えてもよい。
【0076】
このような少量の水は、組成物の総重量に基づいて、最大約6%、例えば、最大約4%を含む最大約5%、より好ましくは、組成物の3%未満を含む。これらの量は、組成物が、アリルアミン活性成分(例えば、テルビナフィン)の沈殿を防止するのに十分に少量の水を含有することを条件に、含まれていてもよい。
【0077】
本発明の組成物(その全ての態様を含む)は、従来の局所的に適用される爪治療と同様に、特に側爪郭及び爪郭近位部を含む、爪及び周囲の皮膚への適用に適している。
【0078】
特に、抗真菌性アリルアミン化合物は、テルビナフィン(又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、HCl塩))であり、これは、約5重量%~約15重量%、例えば、約5%~約12%、例えば、約8%~約12%、又は約5%~約10%の量で存在し得る。
【0079】
有機酸成分は、1種以上のC1~10カルボン酸であり、純粋な/混じりけのない、及び/又は(例えば、水性)溶液中で提供され得る。したがって、カルボン酸成分は、代替的に、C1~10有機酸成分と称され得る。C1~10カルボン酸の例としては、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の炭素原子を有する飽和及び/又は不飽和、直鎖及び/又は分枝鎖である脂肪族モノ-、ジ-及びポリカルボン酸、アルキルアリール又は芳香族ジカルボン酸、1、2、3、4、5、6、7、又は8個の炭素原子を有するオキシ及びヒドロキシルカルボン酸(例えば、α-ヒドロキシ酸)が挙げられる。
【0080】
有機酸成分は、好ましくは乳酸を含む。より具体的には、有機酸成分は、乳酸、クエン酸、ペンタン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、有機酸成分は乳酸である。特に、有機酸成分は、約3重量%~約15重量%、好ましくは約5%~約15%、例えば、約3%~約10%、例えば、約3%~約8%(例えば、約5重量%)の量で組成物中に存在し得る。
【0081】
疑義を避けるために、組成物の成分が特定の化合物(又は特定の化合物の群から選択される)であると記載されている場合、組成物の関連成分は、その化合物(又は複数の化合物)から本質的になることが理解され得る。しかしながら、組成物の成分は、安定した組成物を生成するために、任意の好適な形態で組成物に加えられてもよいことが想定される。例えば、有機酸は、水溶液中に提供され得、抗真菌性アリルアミン化合物は、薬学的に許容され得る塩の形態で提供され得る。そのような場合、「から本質的になる」は、それが供給される形態の化合物(例えば、適切な場合、溶液/塩)を指すと理解され得る。
【0082】
ジオール成分は、特に、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。好ましくは、ジオール成分は、プロパン-1,2-ジオール(プロピレングリコール)、プロパン-1,3-ジオール、及びこれらの混合物から選択される。ある特定の実施形態において、ジオール成分は、プロパン-1,2-ジオール(プロピレングリコール)である。特に、ジオール成分は、約10重量%~約45重量%、より具体的には約15%~約35%、例えば約20%~約35%、例えば約20%~約30%の量で存在し得る。
【0083】
モノアルコール成分は、エタノール、プロパノール(1-プロパノール及び2-プロパノール(イソ-プロパノール)を含む)及びブタノール(1-ブタノール、2-ブタノール、イソ-ブタノール及びtert-ブタノールを含む)から選択されるアルコールを含み得る。好ましくは、モノアルコール成分はエタノールを含む。より具体的には、モノアルコール成分は、エタノール、イソプロパノール、及びこれらの混合物から選択される。ある特定の実施形態において、モノアルコール成分はエタノールである。特に、モノアルコール成分は、約15重量%~約35重量%、例えば、約20重量%~約30重量%の量で存在し得る。
【0084】
特定の実施形態において、組成物は、約0.01重量%~約1重量%の量の金属イオン封鎖剤を更に含み得る。
【0085】
組成物に使用され得る好適な金属イオン封鎖剤としては、前述の(すなわち、本発明の第1の態様に関して、全ての実施形態及びその特定の特徴を含む)定義されるものが挙げられ、それらの混合物を含む。金属イオン封鎖剤は、好ましくは、アミノ酢酸(例えば、EDTA、又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、ナトリウム又はカルシウム塩))及びホスホン酸(例えば、ホスホン酸ナトリウム)から選択される。特に、金属イオン封鎖剤は、アミノ酢酸であり得る。より好ましくは、金属イオン封鎖剤は、EDTA、又はその薬学的に許容され得る塩である。金属イオン封鎖剤は、好ましくは、約0.03重量%~約0.5重量%、例えば、約0.05重量%~約0.2重量%の量で存在し得る。
【0086】
特定の実施形態において、組成物は、尿素系成分を更に含み得、その成分は、好ましくは、約5重量%~約25重量%、例えば、約5%~約20%、例えば、約10%~約20%、又は約5%~約15%、例えば、約5%~約10%(例えば、約10%)の量で含まれる。尿素系成分は、尿素自体及び/又は過酸化尿素を含み得る。好ましくは、尿素系成分は、尿素自体である。
【0087】
組成物は、有機酸エステル成分を更に含み得、その成分は、好ましくは、約5重量%~約30重量%の量で含まれ得る。好適なエステルとしては、前述で定義したもの(すなわち、本発明の第1の態様に関して、全ての実施形態及びその特定の特徴を含む)が挙げられる。好ましいエステルとしては、エチル及びイソプロピルエステルが挙げられる。好ましい有機エステル成分としては、前述のもの(すなわち、乳酸エステル)、並びに、特に、乳酸エチル及び乳酸イソプロピルが挙げられる。特に、有機酸エステル成分は、約5重量%~約25重量%、例えば、約5%~約20%、例えば、約10%~約20%の量で含まれ得る。
【0088】
組成物は、C12~22脂肪酸成分を、約1重量%~約10重量%(例えば、約2%~約5%)の量で更に含み得る。好適なC12~22脂肪酸としては、飽和及び不飽和脂肪酸が挙げられる。言及され得る特定のC12~22脂肪酸成分には、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸のうちの1種以上が挙げられる。C12~22脂肪酸成分が存在する場合、C12~22脂肪酸成分及び有機酸成分の総量は、約1重量%~約20重量%(例えば、約5重量%~約20重量%)であることが好ましい。
【0089】
理論に限定されないが、ある特定の成分は、それらの吸湿性、低揮発性、及び/又は他の関連する物理的特性のために、以前の組成物での処理の後に観察される、爪の望ましくない変色/白化に寄与する可能性があると考えられている。特に、ジオール成分、有機酸成分、及び存在する場合、尿素系成分がこの効果に寄与し得ると考えられている。したがって、組成物中に存在するこれらの成分の量を制限することが望ましい。
【0090】
したがって、有機酸成分及びジオール成分は、合計で、約55重量%以下、例えば約50%以下、例えば約45%以下、例えば約40重量%以下の量で存在し得る。特に、有機酸成分及びジオール成分は、合計で、約20重量%~約50重量%、例えば、約20重量%~約45重量%、例えば、約20重量%~約40重量%の量で存在し得る。
【0091】
尿素系成分を含む組成物について、有機酸成分、ジオール成分、及び尿素系成分は、合計で、約65%以下、約60%以下、例えば約55%以下、例えば約50%以下の量で存在し得る。特に、有機酸成分、ジオール成分、及び尿素系成分は、合計で、約25重量%~約60重量%の量、例えば、約25重量%~約55重量%、例えば、約25重量%~約50重量%、例えば、約25重量%~約45重量%の量で存在し得る。
【0092】
組成物の残りの質量は、当業者に既知であるように、他の適切な賦形剤によって構成され得る。特に、本明細書に記載のモノアルコール成分及び有機エステル成分。
【0093】
尿素系成分(例えば、尿素)を含む組成物について、尿素系成分及び有機酸成分は、約5:1~約1:1(尿素系成分:有機酸成分)、例えば、約4:1~約1:1、例えば、約2:1~約1:1の比率で存在することが好ましい。
【0094】
本発明の更なる態様において、医薬組成物が提供され、この医薬組成物は、
(i)少なくとも約5重量%の量のアリルアミン抗真菌化合物と、
(ii)約1重量%~約20重量%の量の有機酸成分と、
(iii)約10重量%~約50重量%の量のジオール成分と、を含み、
組成物は本質的に水を含まず、有機酸成分及びジオール成分が、合計で、約20重量%~約50重量%、例えば、約20重量%~約45重量%、例えば、約20重量%~約40重量%の量で存在する。
【0095】
かかる組成物は、尿素系成分を更に含んでよく、この成分は、好ましくは約5重量%~約25重量%の量で含まれる。このような組成物において、有機酸成分、ジオール成分及び尿素系成分は、合計で、約65%以下、例えば約60%以下、例えば約55%以下、例えば約50%以下の量で存在することが好ましい。特に、有機酸、ジオール成分、及び尿素系成分は、合計で、約25重量%~約60重量%、例えば約30重量%~約55重量%、例えば約30重量%~約50重量%の量で存在し得る。
【0096】
かかる組成物は、約0.01重量%~約1重量%の量の金属イオン封鎖剤を更に含み得る。
【0097】
本発明の更なる態様において、医薬組成物が提供され、この医薬組成物は、
(i)少なくとも約5重量%の量のアリルアミン抗真菌化合物と、
(ii)約1重量%~約20重量%の量の有機酸成分と、
(iii)約10重量%~約50重量%の量のジオール成分と、
以下から選択される1種以上の成分、
(iv)約10重量%~約40重量%の量のモノアルコール成分、及び
(v)約5重量%~約30重量%の量の有機酸エステル成分、とを含み、
組成物は本質的に水を含まず、有機酸成分及びジオール成分は、合計で、約20重量%~約50重量%、例えば約20重量%~約45重量%、例えば約20重量%~約40重量%の量で存在する。
【0098】
かかる組成物は、尿素系成分を更に含んでよく、この成分は、好ましくは約5重量%~約25重量%の量で含まれる。このような組成物において、有機酸成分、ジオール成分及び尿素系成分は、合計で、約65%以下、例えば約60%以下、例えば約55%以下、例えば約50%以下の量で存在することが好ましい。特に、有機酸、ジオール成分、及び尿素系成分は、合計で、約25重量%~約60重量%の量、例えば、約30重量%~約55重量%、例えば、約30重量%~約50重量%の量で存在し得る。
【0099】
かかる組成物は、約0.01重量%~約1重量%の量の金属イオン封鎖剤を更に含み得る。
【0100】
かかる組成物はまた、約1重量%~約10重量%の量のC12~22脂肪酸成分を更に含み得る。
【0101】
かかる組成物は、モノアルコール成分又はモノアルコール成分と有機酸エステル成分の両方を含むことが好ましい。特定の実施形態において、これらの成分の両方が組成物中に存在する。
【0102】
疑義を避けるために、文脈がそうでないことを示唆しない限り、本発明の組成物の異なる態様の組成物は、本明細書に記載される本発明の特定の好ましい特徴(組成物の成分の量及び同一性など)のいずれか、特に本発明の組成物を参照して記載されるそれらの特徴と組み合わせ得ることが想定される。
【0103】
本発明による更なる組成物は、アリルアミン抗真菌化合物、金属イオン封鎖剤、有機酸成分、ジオール成分、有機エステル成分、及び任意選択的に尿素系成分、と組み合わせた界面活性剤成分を含む。繰り返しになるが、理論によって限定されることを望ものではないが、界面活性剤成分を含めること、特により親油性の成分と組み合わせて含めることは、治療中における爪への水の取り込みを低減させ、それによって、治療中及び/又は治療完了後の変色/白化の程度を低減させると、考えられている。
【0104】
したがって、本発明の更なる態様において、医薬組成物が提供され、この医薬組成物は、
(i)少なくとも約5重量%の量のアリルアミン抗真菌化合物と、
(ii)約1%~約20重量%の量の有機酸成分と、
(iii)約10重量%~約60重量%の量のジオール成分と、
(iv)約5重量%~約45重量%の量の有機エステル成分と、
(v)約1重量%~約15重量%の量の界面活性剤成分と、を含み、
組成物は本質的に水を含まない。
【0105】
疑義を避けるために、組成物の成分として用いられ得る好適なアリルアミン抗真菌化合物、金属イオン封鎖剤、有機酸、及びジオールは、前述の(例えば、本発明の第1の態様に関して、全ての実施形態及びその特定の特徴を含む)ものを含み、それらの混合物を含む。
【0106】
特に、本発明の組成物のこの態様の組成物において、抗真菌アリルアミン化合物は、テルビナフィン(又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、HCl塩))であり、これは、約5重量%~約15重量%、例えば約5%~約12%、例えば約8%~約12%、又は約5%~約10%の量で存在し得る。
【0107】
有機酸成分は、好ましくは、乳酸を含む。より具体的には、有機酸成分は、乳酸、クエン酸、ペンタン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、有機酸成分は乳酸である。特に、有機酸成分は、約3重量%~約15重量%、好ましくは約5%~約15%、例えば約3%~約10%、例えば約3%~約8%(例えば、約5重量%)の量で組成物中に存在し得る。
【0108】
本発明の組成物のこの態様での使用に好適なジオールとしては、エタン-1,2-ジオール(エチレングリコール)、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ジオール成分は、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール及びこれらの混合物からなる群から選択される。具体的には、ジオール成分は、約20重量%~約55重量%の量、例えば約20%~約50%、例えば、約20%~約40%の量で存在し得る。
【0109】
有機エステル成分に好適なエステルとしては、前述のものが挙げられる。より具体的には、有機エステル成分は、酢酸のアルキルエステル又はそのようなエステルの混合物であり得る。好ましくは、有機エステル成分は、酢酸エチル、酢酸プロピル(例えば、n-酢酸プロピル)、酢酸ブチル(例えば、n-酢酸ブチル)、及びこれらの混合物から選択される。特に、有機酸エステル成分は、約5重量%~約35重量%、例えば約10重量%~約35重量%の量で含まれる。
【0110】
特定の実施形態において、有機エステル成分は、C12~22脂肪酸のうちの1種以上のエステルを、約1%~約10%(例えば約2%~約5%)の量で更に含み得る。好適なエステルとしては、C1~4アルキルエステルが挙げられる。言及され得る特定のエステルとしては、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸のメチル、エチル、及びプロピルエステルが挙げられる。
【0111】
本発明のこの態様の組成物に使用するのに適した界面活性剤としては、エトキシル化ソルビタンエステル(ポリソルベート)(例えばポリソルベート60及びポリソルベート80)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えばモノオレイン酸ソルビタン及びモノラウリン酸ソルビタン)、エトキシル化アルキルエーテル又はエステル(例えばひまし油エトキシレート、ラウリン酸エトキシレート、ラウリルアルコールエトキシレート、オレイン酸エトキシレートなど)、ポリオキシル化グリセリド、非イオン性トリブロックコポリマー(ポロクサマー)(例えばポリエチレンオキサイドーポリプロピレンオキサイドーポリエチレンオキサイド(PEO-PPO-PEO)トリブロックコポリマー及びポリプロピレンオキサイドーポリエチレンオキサイドーポリプロピレンオキサイド(PPO-PEO-PPO)トリブロックコポリマー)、モノグリセリド(例えばモノラウリン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール及びヒドロキシモノステアリン酸グリセロール)、レシチン(例えば卵レシチン及び大豆レシチン)、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、界面活性剤成分は、ポリソルベート60、ポリソルベート80、レシチン、モノグリセリド、及びこれらの混合物から選択される。特に、界面活性剤成分は、約3重量%~約12重量%、例えば約5重量%~約10重量%の量で存在する。
【0112】
特定の実施形態において、組成物は、約0.01重量%~約1重量%の量の金属イオン封鎖剤を更に含み得る。
【0113】
本発明のこの態様の組成物中の金属イオン封鎖剤は、好ましくは、アミノ酢酸(例えば、EDTA、又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、ナトリウム又はカルシウム塩))及びホスホン酸塩(例えば、ホスホン酸ナトリウム)から選択される。特に、金属イオン封鎖剤は、アミノ酢酸であり得る。より好ましくは、金属イオン封鎖剤は、EDTA、又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、ナトリウム又はカルシウム塩)である。金属イオン封鎖剤は、好ましくは、約0.03重量%~約0.5重量%の量、例えば、約0.05重量%~約0.2重量%の量で存在し得る。
【0114】
特定の実施形態において、この態様の組成物は、尿素系成分を更に含み得、その成分は、好ましくは、約5重量%~約25重量%、例えば約5%~約20%、例えば約10%~約20%、又は約5%~約15%、例えば約5%~約10%(例えば、約10%)の量で含まれる。尿素系成分は、尿素自体及び/又は過酸化尿素を含み得る。好ましくは、尿素系成分は、尿素自体である。
【0115】
この態様の組成物は、0.5%~約5%の量の脂質成分も含み得る。脂質成分は、極性脂質、例えばジグリセリド又はモノ及びジグリセリドの混合物(例えばモノラウリン酸グリセロール及びジラウリン酸グリセリル若しくはジラウリン酸グリセロール、若しくはモノレイン酸グリセロール及びジオレイン酸グリセリルの混合物)、又はトリグリセリド(例えば大豆油由来のトリグリセリド、MCT(中鎖トリグリセリド)油若しくはヒマシ油)であり得る。
【0116】
本発明の他の組成物に関しては、本態様の組成物の有機酸、ジオール、及び存在する場合、尿素系成分の量は、これらの成分が爪の白化/変色に寄与すると考えられるため、制限することが望ましい、と考えられる。したがって、前述のこれらの成分の合計量の制限は、本発明のこの態様の組成物に等しく適用される。特に、有機酸成分及びジオール成分は、合計で、約20重量%~約50重量%、例えば約20重量%~約45重量%、例えば約20重量%~約40重量%の量で存在し得、尿素系成分が組成物に含まれる場合、有機酸成分、ジオール成分及び尿素系成分は、合計で、約25重量%~約60重量%、例えば約25重量%~約55重量%、例えば約35重量%~約50重量%、例えば約25重量%~約45重量%の量で存在し得る。
【0117】
本発明の組成物(その全ての態様を含む)は、約1重量%~約15重量%、例えば約3重量%~約10重量%、例えば約5重量%~約10重量%、例えば約5重量%の量で、グリセロールなどのトリオール成分を更に含み得る。
【0118】
トリオール成分を含む組成物において、有機酸成分、ジオール成分、トリオール成分、及び、尿素系成分が存在する場合、合計で、65重量%以下、例えば約60重量%以下、例えば約55重量%以下、例えば約50重量%以下の量で存在し得る。特に、有機酸、ジオール成分、及びトリオール成分は、合計で、約25重量%~約60重量%の量、例えば、約30重量%~約55重量%、例えば、約30重量%~約50重量%の量で存在し得る。
【0119】
本明細書で前述したように、最終組成物のpHは、少量の水酸化ナトリウム水溶液(例えば、10MのNaOH(水溶液))を加えることによって、例えば、規制要件に適合するように上昇させる必要があり得る。溶液の安定性は、pHによっても影響され得る。製剤の最終pHは、好ましくは、約3~約6(例えば約4~約5.5、例えば、約5.3以下)の範囲である。したがって、組成物は、約1%~約3%(例えば、1%)の水性塩基(例えば、5MのNaOH又は10MのNaOH)を含有し得る。代わりに、塩基(例えば、NaOH)を固体形態で組成物に加え得る。
【0120】
本発明の組成物は、安定剤、他の浸透促進剤、及び着色剤などの追加の薬学的に許容され得る担体及び賦形剤を更に含み得る。
【0121】
本発明の組成物は、当業者に既知の、標準技術によって、かつ標準機器を使用して調製されてもよい。他の成分は、標準混合又は他の製剤原理によって、組み込まれ得る。
【0122】
したがって、本発明の組成物は、本発明の組成物と、かかる調製物のために当該技術分野で使用される従来の医薬添加剤及び/又は賦形剤とを組み合わせることによって、標準技術を使用して局所投与を意図した様々な種類の医薬製剤に組み込まれ得る(例えば、Lachman et al.,“The Theory and Practice of Industrial Pharmacy”,Lea & Febiger,3rd edition(1986)及び“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”,Gennaro(ed.),Philadelphia College of Pharmacy & Sciences,19th edition(1995)を参照)。
【0123】
本発明の組成物は、好ましくは、爪及び/又は皮膚に直接投与される。例えば、組成物は、真菌性疾患、例えば、爪真菌症に罹患したヒトの足指の爪又は指の爪の上及び周囲に投与される。これは、1日当たり約2回又は3回から1週間当たり約1回の頻度で、液体/溶液組成物で罹患した各爪を覆うことによって、組成物の層とともに実施し得る。組成物は、爪の縁、又は爪の側面(側爪郭)、又は爪郭近位部にも適用され得る。かかる組成物の投与は、ドロップチップ、小型ブラシ、又はヘラなどの好適なデバイスによって、達成され得る。
【0124】
本発明の組成物は、例えば、爪への高い浸透を実証する。これは、爪の浸透のためのインビトロ法によって、評価できる。例えば、フランツセルは、ウシの蹄又はヒト死体の爪などの他の好適なモデル膜からの膜を通じた浸透を研究するために、使用され得る。
【0125】
本発明の更なる態様において、爪の爪真菌症の治療方法であって、治療に有効な量の本発明の組成物を治療が必要な患者に投与(例えば、局所的に)することを含む、方法を提供する。
【0126】
本発明の更なる態様において、本発明の第1の態様に関連して定義される、本明細書に記載の爪の爪真菌症の治療方法が提供され、この方法で使用される医薬組成物は、本明細書に定義される本発明の組成物である。
【0127】
「治療」については、治療及び/又は美容的治療、並びに疾患の治癒的な対症治療、予防的治療又は維持的治療、及び緩和的治療を含むものとする。したがって、治療には、真菌性疾患の症状の緩和、真菌感染症の治療、及び爪及び/又は皮膚の外観の改善が含まれる。特に、本明細書に記載の治療方法は、真菌学的治癒(すなわち、真菌感染症の根絶)を達成し、爪の正常又は正常に近い(又は他の方法では健康的/臨床的に許容され得る)外観を回復させ、それによって感染の完全な治癒を達成し得る。
【0128】
特定の値(例えば量、期間、又はパーセンテージなど)に関連して本明細書で使用される場合、「約」(又は「およそ」などの同様の用語)という用語は、そのような値が定義された値の最大10%(特に、最大5%、最大1%など)変動し得ることを示すものとして理解され得る。各例において、そのような用語は、「±10%」という表記などに置き換えることができる(又は関連する値に基づいて計算された特定の量の分散を示すことによって)ことが企図される。各例で、そのような用語が削除され得ることも企図される。
【0129】
真菌学的治癒は、罹患した爪から真菌培養物を産生すること、及び/又は検出を改善するために蛍光色素を加える直接KOH顕微鏡法若しくはKOH顕微鏡法によって、評価することができる。これらの評価の1種又は好ましくは両方における陰性結果は、真菌学的治癒が達成されていることを示す。爪が真菌培養及びKOH顕微鏡の両方で評価された場合、両方の評価の陰性結果は、真菌学的治癒が達成されたことを示すために必要であると通常考えられる。例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)及び/又はPAS(過ヨウ素酸シッフ)染色の技法を適用するなど、真菌学的治癒を評価するための他の方法も使用可能である。感染症の完全治癒を達成するためには、真菌学的治癒を達成することに加えて、感染の目に見える徴候がないことが必要である(これは感染症の「臨床的治療」と称される場合がある)。完全治癒の決定には、適切に訓練された経験豊富な医療専門家(例えば、医師又は足病医)による爪の目視検査が含まれる。
【0130】
本明細書に記載される方法及び組成物は、従来技術の組成物及び方法と比較して、爪真菌症の治療において、増加した率を達成するという利点を有する。
【0131】
本明細書に記載の方法及び組成物は、従来技術において既知である同等の方法及び組成物よりも、より有効であり、より毒性が低く、より長時間作用し、より強力であり、より患者に服薬順守させ、再発を遅延させ、より大きな患者満足度をもたらし、より少ない副作用を生じ、より良好な患者受容性を有し、かつより良好な薬学的プロファイルを有するという利点も有し得る。組成物は、爪疾患又はその他の治療に使用するか否かにかかわらず、従来技術において既知の薬学的組成物よりも、容易に吸収され得、かつ/又は他の有用な薬理学的、物理的、若しくは化学的特性も有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0132】
図1】比較例1に記載の臨床研究で達成された菌学的治癒率及び完全治癒率を、表2に示す他の治療法について公表された結果と比較して示すグラフを示す。このグラフは、比較例1に記載の研究で達成された完全治癒のレベルが驚くほど低く、他の治療法で見られる、真菌学的治癒と完全治癒との予想される関係と一致していないことを示す。
【実施例
【0133】
本発明は、以下の実施例を参照することによって更に説明され、この実施例は本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0134】
比較例1
臨床研究
テルビナフィン塩酸塩(10重量%)、プロパン-1,2-ジオール(59.7重量%)、乳酸(9重量%)、EDTA(0.05重量%)、尿素(18重量%)、及び水性10M水酸化ナトリウム溶液を含有する(及び他の成分を含まない)組成物を、多施設、二重盲検、無作為化、ビヒクル対照臨床試験において、軽度~中等度の遠位真菌下爪真菌症(DSO)の局所治療として有効性及び安全性を評価した。
【0135】
対象(n=365)を2つの不均等な治療群に分けた。第1の組成物(n=285)は上述の組成物を受け、第2の組成物(n=119)はビヒクル対照(活性成分テルビナフィンを含まない組成物)を受けた。治療は全ての罹患した爪及び足の爪に適用されたが、爪の有効性は評価されなかった。有効性の評価のための標的である足の爪(大きな足の爪)を各対象について選択し、試験全体を通して追跡した。
【0136】
本試験に参加するためには、12歳~75歳までの対象で、少なくとも1つの大きい足指の爪にDSOがあり、対象である爪の20%~60%が罹患している(標準化された写真資料に基づいて中央盲検評価者が評価し、皮膚糸状菌の培養が陽性であることによりDSOの診断が確定する)必要がある。
【0137】
この治療を局所的に適用して、罹患した全ての足の爪及び指の爪を薄い層で覆うため、爪の自由縁の下に、48週間にわたって1日1回適用した。組成物を夕方に適用し、適用後およそ5分間乾燥させた。組成物の最初の適用は、現場において監督下で行われた。治験責任医師が48週前に臨床的に治癒したとみなした標的である足の爪以外の任意の爪は、臨床的治癒後にそれ以上治療されず、したがって完全な治癒が達成された。
【0138】
365人の無作為化された対象のうち、305人(83.6%)が男性、60人(16.4%が女性)であった。対象は12~74歳で、代表値(平均)年齢は55.0歳であり、対象の大半は白人(85.4%(治療群)、ビヒクル対照の89.1%、及び全体の86.6%)であった。対象者の50.7%(治療群の49.6%、ビヒクル対照群の52.9%)では左足に標的である足の爪があり、対象者の49.4%(治療群の50.4%、ビヒクル対照群の47.1%)では右足に標的である足の爪があった。
【0139】
標的である足の爪の完全治癒及び真菌学的治癒の割合を、52週目(治療の完了後4週間)に評価した。治療群では47例、対照群では31例の脱落が認められた。これに加えて、更に26人の患者(治療群18人、対照群8人)が治療計画への服薬順守率が80%未満であり、他の8人(治療群5人、対照群3人)が治療プロトコルから大きく逸脱していると判断した。しかしながら、これらの全ての対象は、有効性の評価のための完全な解析セットに含めた。
【0140】
真菌学的治療は、皮膚糸状菌の真菌培養が陰性であること、かつ標的である足の爪の直接KOH顕微鏡検査が陰性であることとして定義した。完全治癒は、真菌学的治癒及び標的である足の爪の0%の臨床疾患の関与として定義した。達成された完全治癒及び真菌学的治癒の割合を表1に示す。
【表1】
【0141】
全体として、高い真菌学的治癒率が達成されたが、完全治癒率は予想外に低かった。真菌学的治癒率は、他の承認された局所治療で達成された真菌学的治癒率よりも実質的に高く、経口テルビナフィンと同じレベルであった。高い真菌学的治癒率は高い完全治癒率と通常関連しているため、低い完全治癒率は真菌学的治癒率と矛盾している。
【0142】
比較のために、DSOの他の治療法での臨床試験から報告された真菌学的治癒率及び完全治癒率を表2に示す。
【表2】
【0143】
表2に示される他の治療についての公表された結果と比較して、本研究で達成される治癒率を示すグラフを図1に提供する。このグラフは、この研究で達成された完全治癒のレベルが驚くほど低く、他の治療法で見られる、真菌学的治癒と完全治癒との予想される関係と一致していないことを示す。
【0144】
低い完全治癒率は、治療中に生じる爪の過度の水和に起因し、過度の水和は、爪の白化変色及び完全治癒の混乱させる評価を引き起こす可能性があると考えられた。この変色及び白化は、治療群及びビヒクル対照群の両方で観察され、組成物中の賦形剤によって引き起こされる可能性が高いことを示唆している。また、爪の変色/白化は、48週目の治療中止から52週目の評価の間に改善されたことが指摘され、水和のレベルが減少するにつれて爪の外観が改善されることが示唆された。
【0145】
表3から見ることができるように、治療群における高レベルの真菌学的治癒も治療計画の初期段階において観察され、高レベルの真菌学的治癒を達成するために、治療の全期間にわたって組成物を毎日適用する必要はないことを示唆している。比較のために、経口テルビナフィンによる治療は、12週間後に約15%の真菌学的治癒率、24週間で約40%の真菌学的治癒率、及び48/52週目で約70%の真菌学的治癒率を達成する(Evans E.G.et al.,BMJ,1999,April17;318(7190):1031-5;
https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfdadocs/label/2012/020539s021lbl.pdf)。
【表3】
【0146】
実施例2
安定組成物
以下の組成物は、適切な薬学的に許容され得る賦形剤を含有し、活性アリルアミン抗真菌化合物(テルビナフィン)の安定な溶液を形成することが見出された。パーセンテージは、重量(w/w)によるパーセンテージを指す。
組成物1
プロピレングリコール 40%
エタノール 30%
尿素 9%
乳酸 9.9%
テルビナフィン塩酸塩 10%
水酸化ナトリウム(10M) 1%
EDTA二ナトリウム 0.1%
組成物2a
イソプロピルアルコール 20%
プロピレングリコール 47.5%
尿素 10%
乳酸 5%
エタノール 5%
水酸化ナトリウム(10M) 2%
テルビナフィン塩酸塩 10%
ホスホン酸ナトリウム 0.5%
組成物2b
イソプロピルアルコール 20%
プロピレングリコール 48.5%
尿素 10%
乳酸 5%
エタノール 5%
水酸化ナトリウム(5M) 1%
テルビナフィン塩酸塩 10%
ホスホン酸ナトリウム 0.5%
組成物3a
プロピレングリコール 40%
エタノール 24.95%
尿素 20%
乳酸 5%
グリセロール 5%
テルビナフィン塩酸塩 5%
EDTA二ナトリウム 0.05%
組成物3b
プロピレングリコール 40%
エタノール 24.2%
尿素 20%
乳酸 5%
グリセロール 5%
テルビナフィン塩酸塩 5%
水酸化ナトリウム(5M) 0.75%
EDTA二ナトリウム 0.05%
組成物4
プロピレングリコール 30%
エタノール 30%
尿素 10%
乳酸 9.9%
乳酸エチル 10%
テルビナフィン塩酸塩 10%
組成物5
プロピレングリコール 20%
イソプロピルアルコール 10%
乳酸イソプロピル 20%
塩酸テルビナフィン 5%
エタノール 15%
尿素 20%
乳酸 10%
組成物6
1,3-プロピレングリコール 5%
プロピレングリコール 30%
エタノール 20%
テルビナフィン塩酸塩 10%
尿素 15%
乳酸 10%
乳酸エチル 10%
組成物7
乳酸エチル 20%
乳酸 10%
尿素 10%
プロピレングリコール 25%
テルビナフィン塩酸塩 10%
ペンタン酸 5%
エタノール 20%
組成物8a
クエン酸 2%
乳酸 8%
乳酸エチル 10%
エタノール 30%
プロピレングリコール 30%
テルビナフィン塩酸塩 10%
尿素 10%
組成物8b
クエン酸 2%
乳酸 8%
乳酸エチル 10%
エタノール 30%
プロピレングリコール 29%
テルビナフィン塩酸塩 10%
尿素 10%
水酸化ナトリウム(5M) 1%
組成物9
プロピレングリコール 39%
エタノール 24%
乳酸エチル 5%
乳酸 10%
尿素 10%
テルビナフィン塩酸塩 10%
ポリソルベート80 1%
水酸化ナトリウム(5M) 1%
【0147】
以下の組成物はまた、本発明に従った薬学的に許容され得る成分を含有する。
組成物10
プロピレングリコール 30%
酢酸ブチル 35%
尿素 10%
乳酸 9.9%
テルビナフィン塩酸塩 10%
ポリソルベート80 5%
EDTAカルシウム 0.1%
組成物11
プロピレングリコール 30%
酢酸プロピル 30%
酢酸エチル 5%
尿素 10%
乳酸 9.9%
テルビナフィン塩酸塩 10%
ポリソルベート80 5%
EDTAナトリウム 0.1%
組成物12
エチレングリコール 10%
プロピレングリコール 30%
酢酸プロピル 20%
酢酸ブチル 10%
乳酸 10%
尿素 10%
テルビナフィン塩酸塩 10%
ポリソルベート60 5%
組成物13
プロピレングリコール 55%
酢酸プロピル 10%
酢酸ブチル 5%
乳酸 10%
尿素 5%
テルビナフィン塩酸塩 10%
レシチン 2.5%
ポリソルベート80 2.5%
組成物14
プロピレングリコール 50%
酢酸プロピル 5%
酢酸ブチル 5%
乳酸 10%
尿素 10%
テルビナフィン塩酸塩 10%
モノグリセリド 5%
ポリソルベート80 5%
【0148】
実施例3
臨床研究
比較例1に記載される臨床研究で使用される組成物について、多施設、二重盲検、無作為化、ビヒクル対照臨床試験において、軽度から中等度の遠位爪下真菌症(DSO)の局所治療としての有効性及び安全性を評価する。
【0149】
対象を2つの治療群に分ける。第1の群はテルビナフィン組成物を受け取り、第2の群はビヒクル対照(活性成分テルビナフィンを含まない組成物)を受け取る。治療は全ての罹患した爪及び足の爪に適用されるが、爪は有効性について評価されない。有効性の評価のための標的である足の爪(大きな足の爪)を各対象について選択し、研究全体を通して追跡する。
【0150】
本試験に参加するためには、12歳~75歳までの対象で、少なくとも1つの大きい足指の爪にDSOがあり、対象である爪の20%~60%が罹患している(標準化された写真資料に基づいて中央盲検評価者が評価し、皮膚糸状菌の培養が陽性であること又は培養とKOH顕微鏡検査によって、DSOの診断が確定する)必要がある。
【0151】
この治療を局所的に適用して、罹患した全ての足の爪及び指の爪を薄い層で覆うため、爪の自由縁の下に、並びに側爪郭及び爪郭近位部の皮膚に、以下の48週間の治療計画の1つに沿った頻度で局所的に適用する。
(i)1日1回を8週間、次いで毎週1回を40週間、
(ii)1日1回を10週間、次いで毎週1回を38週間、
(iii)1日1回を12週間、次いで毎週1回を36週間。
【0152】
組成物を夕方に足に適用し、適用後およそ5分間乾燥させる。組成物の最初の適用は、現場において監督下で行われる。治験責任医師が48週前に臨床的に治癒したとみなした標的である足の爪以外の任意の爪。
【0153】
治療された爪は、12週間間隔(12週、24週、36週、及び48週)で評価され、その後、治療の中止後4週間(52週)に、各段階で真菌学的治癒(皮膚糸状菌培養の陰性及びKOH顕微鏡検査)及び完全治癒(0%の臨床疾患の関与及び真菌学的治癒)のレベルが決定される。
【0154】
治療の中止後、治療計画は、比較例1に記載される研究で達成されたレベルに匹敵するレベルの真菌学的治癒を達成するが、他の承認された治療法で観察された、真菌学的治療と完全治癒との相関関係(図1に示す)とより一致する高いレベルの完全治癒を達成した。
【0155】
実施例4
爪貫通アッセイ
実施例2の組成物2b、3b、6、8b及び9並びに比較例1に記載の臨床試験で使用される組成物(参考製剤)を、ヒト爪のモデルであるウシ蹄膜を装着したフランツセルを使用して、インビトロ浸透アッセイにより試験した(Mertin,D.Lippold,B.C.(1997)“In vitro permeability of the human nail and of a keratin membrane from bovine hooves:prediction of the penetration rate of antimycotics through the nail plate and their efficacy”J.Pharm.Pharmacol,49:9,866-72)。
【0156】
各試験組成物の制御量(およそ200mg)を、清潔で水和された100μmのウシ蹄膜の上部に適用した。膜を拡散(フランツ)セルに取り付け、緩衝された受容体溶液と接触させる。組成物は膜を通って受容体溶液に浸透し、受容体溶液中の活性成分(テルビナフィン)の濃度を測定した。受容体溶液を一定の時間間隔でサンプリングして、経時的に蹄膜を通る組成物の成分の浸透を判定した。受容体溶液を最初に一定の時間間隔でサンプリングして、経時的に蹄膜を通るテルビナフィンの浸透を判定した。6時間後の結果を以下の表に示し、その時点で、流束は安定しており、経時的に線形であることが見出された。
【0157】
参考製剤と比較した実施例2の組成物のウシ蹄膜を通るテルビナフィンの流束のレベルを以下の表に示す。全ての組成物は、蹄膜を通じた活性成分の流束の高レベルを達成し、これは、参照組成物(比較例1の組成物)の活性成分の流動に類似した。
【表4】
図1
【国際調査報告】