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特表2023-553588骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法
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  • 特表-骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法 図1A
  • 特表-骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法 図1B
  • 特表-骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法 図1C
  • 特表-骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法 図2
  • 特表-骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法 図3A
  • 特表-骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法 図3B
  • 特表-骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法 図3C
  • 特表-骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法 図4
  • 特表-骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法 図5
  • 特表-骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法 図6
  • 特表-骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法 図7
  • 特表-骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法 図8A
  • 特表-骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法 図8B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】骨髄異形成症候群(MDS)のバイオマーカー及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20231218BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20231218BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALN20231218BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20231218BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P7/00 ZNA
C12Q1/6851
C12Q1/686 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526527
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 US2021057839
(87)【国際公開番号】W WO2022098712
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】63/109,730
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/260,837
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】グアルベルト, アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ショルツ, キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, ジャンジュン
【テーマコード(参考)】
4B063
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS36
4B063QS38
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZA51
(57)【要約】
本開示は、骨髄異形成症候群(MDS)における輸血依存の治療に関する。本開示は、新規のバイオマーカーを使用して、輸血依存の治療を必要とするMDS患者の輸血依存を治療する方法に関する。本開示はまた、スプライシングモジュレーターによる治療に適したMDS患者を特定する方法、及び/又はMDS患者における治療効果を予測又はモニタリングする方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、少なくとも患者におけるTMEM14Cの異常ジャンクション転写物とカノニカルジャンクション転写物の比(TMEM14C AJ/CJ比)を決定することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、患者のTMEM14C AJ/CJ比に基づいて、治療有効量のスプライシングモジュレーター(例えば、化合物1)を投与することを含む。治療的使用及び治療用組成物もまた開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨髄異形成症候群(MDS)を有する患者の輸血依存を治療する方法であって、高いTMEM14Cの異常ジャンクション転写物とカノニカルジャンクション転写物の比(TMEM14C AJ/CJ比)を有する輸血依存性MDS患者に治療有効量の化合物1を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
骨髄異形成症候群(MDS)を有する患者の輸血依存を治療する方法であって、
(a)前記輸血依存性MDS患者が高TMEM14C AJ/CJ比を有することを決定するするステップ、及び
(b)前記患者に治療有効量の化合物1を投与するステップ
を含む方法。
【請求項3】
化合物1による治療に適した輸血依存性MDS患者を特定する方法であって、
(a)前記患者が高TMEM14 AJ/CJ比を有することを決定するステップ、及び
(b)前記患者を化合物1による治療に適していると特定するステップ
を含む方法。
【請求項4】
輸血依存性MDS患者における治療効果をモニタリングする方法であって、
(a)前記患者が高TMEM14 AJ/CJ比を有することを決定するステップ、
(b)前記患者に治療有効量の化合物1を投与するステップ、及び
(c)投与後の前記患者のTMEM14C AJ/CJ比を決定するステップを含み、前記投与後のTMEM14C AJ/CJ比の低下が治療の有効性を示す方法。
【請求項5】
前記TMEM14C AJ/CJ比がステップ(c)後も高いままであり、前記患者に追加用量の化合物1を投与するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記TMEM14C AJ/CJ比がもはや上昇しなくなるまで、前記患者に追加用量の化合物1を投与するステップをさらに含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
高AJ/CJ比を決定するステップは、前記患者から生体試料を得るステップ、及び前記試料中のTMEM14C AJ/CJ比を決定するステップを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記生体試料は血液試料又は骨髄試料を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記血液試料は末梢血又は血漿を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記骨髄試料は骨髄穿刺液又は骨髄生検を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記TMEM14C AJ/CJ比は、前記患者又は前記患者からの生体試料中のRNA転写物を測定することによって決定される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
RNA転写物を測定するステップは、核酸バーコーディング及び/又はリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
RNA転写物を測定するステップは、核酸バーコーディングを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
高TMEM14C AJ/CJ比は、例えば核酸バーコーディングによる測定で、約0.1、約0.2、約0.5、約1、約2、約4、約10、約15、約20又は約30を超える比である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
高TMEM14C AJ/CJ比は、核酸バーコーディングによる測定で、約4を超える比である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記患者は高ABCB7 AJ/CJ比を有することを決定するステップをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記患者は高PPOX AJ/CJ比を有することを決定するステップをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記患者は高ABCB7 AJ/CJ比及び高PPOX AJ/CJ比を有することを決定するステップをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記MDSは、多系統に異形成を有するMDS(MDS-MLD)、単一系統に異形成を有するMDS(MDS-SLD)、環状鉄芽球を伴うMDS(MDS-RS)、芽球増加を伴うMDS(MDS-EB)、単独5番染色体長腕欠失を伴うMDS、又は分類不能型MDS(MDS-U)である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記MDSは、国際予後判定システムによる中間1リスク以下のMDSである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記MDSは、国際予後判定システムによる中間2リスク以上のMDSである、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記MDSは、MDS-MLDである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記MDSは、MDS-EBである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記MDS-EBは、MDS-EB1又はMDS-EB2である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記MDSは、MDS-EB2である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記患者又は前記患者からの生体試料は、RNAスプライシングに関連する1つ又は複数の遺伝子に変異を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記患者又は前記患者からの生体試料は、SF3B1、SRSF2、U2AF1、及びZRSR2から選択される1つ又は複数の遺伝子に変異を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記患者又は前記患者からの生体試料は、SF3B1に変異を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記SF3B1における変異は、SF3B1のE622位、H662位、K666位、K700位、R625位又はV701位の1つ又は複数に変異を含むか、又はその変異からなる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記SF3B1における変異は、SF3B1のH662位、K700位又はR625位の1つ又は複数に変異を含むか、又はその変異からなる、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記SF3B1における変異は、SF3B1のK700位に変異を含むか、又はそれからなる、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記SF3B1における変異は、K700E及び/又はR625Cを含む、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記患者又は前記患者からの生体試料は、低レベルのTMEM14C発現を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
化合物1は、化合物1は、前記患者に経口投与される、請求項1、2及び4~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
化合物1は、前記患者に1日1回投与される、請求項1、2及び4~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
化合物1は、5日間投与/9日間休薬の投与スケジュールで1日1回、前記患者に投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
化合物1は、21日間投与/7日間休薬の投与スケジュールで1日1回、前記患者に投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
化合物1は、連続投与スケジュールで1日1回、前記患者に投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
化合物1は、1日1回、1回以上の28日サイクルにわたって前記患者に投与される、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記化合物1の治療有効量は、投与日に単回用量で約2g~約20mgである、請求項35~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記化合物1の治療有効量は、投与日に単回用量で約2mg、約3.5mg、約5mg、約7mg、約10mg、約12mg、約14、又は約20mgである、請求項35~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
化合物1は、前記患者に1日2回投与される、請求項1、2及び4~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
化合物1は、5日間投与/9日間休薬の投与スケジュールで1日2回、前記患者に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
化合物1は、21日間投与/7日間休薬の投与スケジュールで1日2回、前記患者に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
化合物1は、連続投与スケジュールで1日2回、前記患者に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
化合物1は、1日2回、1回以上の28日サイクルにわたって前記患者に投与される、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記化合物1の治療有効量は、投与日に2分割用量で合計約2mg~約20mgである、請求項42~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記化合物1の治療有効量は、投与日に2分割用量で約10mg、約15mg、又は約20mgである、請求項42~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
1回目の用量は約10mgであり、2回目の用量は約5mgである、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
1回目の用量は約5mgであり、2回目の用量は約10mgである、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項51】
1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約5mgである、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項52】
1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約7.5mgである、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項53】
1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約10mgである、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項54】
化合物1による治療は、前記患者の輸血依存を軽減又は排除する、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
化合物1による治療は、前記患者への輸血の回数又は頻度を、治療前の回数又は頻度と比較して、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、又は約60%減少させる、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
化合物1による治療は、前記患者への輸血の回数又は頻度を、治療前の回数又は頻度と比較して、少なくとも約30%減少させる、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
化合物1による治療は、前記患者への輸血の回数又は頻度を、治療前の回数又は頻度と比較して、少なくとも約60%減少させる、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記患者は少なくとも56連続日の期間、輸血を受けず、前記期間は治療開始後の任意の時間に始まる、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記輸血は、赤血球(RBC)及び/又は血小板の輸血を含む、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記輸血は、RBC輸血を含む、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
化合物1による治療は、前記患者の骨髄鉄芽球の量を、治療前の量と比較して、増加させる、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
化合物1による治療は、前記患者の骨髄鉄芽球の量を、治療前の量と比較して、少なくとも約10%、約20%、約30%、又は約40%増加させる、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、高ABCB7 AJ/CJ比を有する輸血依存性MDS患者に治療有効量の化合物1を投与するステップを含む方法。
【請求項64】
MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、
(a)前記輸血依存性MDS患者が高ABCB7 AJ/CJ比を有することを決定するステップ、及び
(b)前記患者に治療有効量の化合物1を投与するステップ
を含む方法。
【請求項65】
化合物1による治療に適した輸血依存性MDS患者を特定する方法であって、
(a)前記患者が高ABCB7 AJ/CJ比を有することを決定するステップ、及び
(b)前記患者を化合物1による治療に適していると特定するステップ
を含む方法。
【請求項66】
高AJ/CJ比を決定するステップは、前記患者から生体試料を得るステップ、及び前記試料中のABCB7 AJ/CJ比を決定するステップを含む、請求項63~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記ABCB7 AJ/CJ比は、前記患者又は前記患者からの生体試料中のRNA転写物を測定することによって決定される、請求項63~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
RNA転写物を測定するステップは、核酸バーコーディング及び/又はリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
RNA転写物を測定するステップは、核酸バーコーディングを含む、請求項67又は68に記載の方法。
【請求項70】
MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、高PPOX AJ/CJ比を有する輸血依存性MDS患者に治療有効量の化合物1を投与するステップを含む方法。
【請求項71】
MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、
(a)前記輸血依存性MDS患者が高PPOX AJ/CJ比を有することを決定するステップ、及び
(b)前記患者に治療有効量の化合物1を投与するステップ
を含む方法。
【請求項72】
化合物1による治療に適した輸血依存性MDS患者を特定する方法であって、
(a)前記患者が高PPOX AJ/CJ比を有することを決定するステップ、及び
(b)前記患者を化合物1による治療に適していると特定するステップ
を含む方法。
【請求項73】
高AJ/CJ比を決定するステップは、前記患者から生体試料を得るステップ、及び前記試料中のPPOX AJ/CJ比を決定するステップを含む、請求項70~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記PPOX AJ/CJ比は、前記患者又は前記患者からの生体試料中のRNA転写物を測定することによって決定される、請求項70~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
RNA転写物を測定するステップは、核酸バーコーディング及び/又はリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
RNA転写物を測定するステップは、核酸バーコーディングを含む、請求項74又は75に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年10月27日に作成された前記ASCIIコピーは、15647_0016-00304_SL.txtという名称であり、サイズは21,994バイトである。
【0002】
本出願は、2020年11月4日に出願された米国仮特許出願第63/109,730号、及び2021年9月1日に出願された米国仮特許出願第63/260,837号の利益及び優先権を主張するものであり、これら両方の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、骨髄異形成症候群(MDS)における輸血依存の治療に関する。本開示は、いくつかの実施形態において、新規のバイオマーカーを使用して、輸血依存の治療を必要とするMDS患者の輸血依存を治療する方法を提供する。本開示はまた、いくつかの実施形態において、スプライシングモジュレーター(例えば、化合物1)による治療に適したMDS患者を特定する方法、及び/又はMDS患者における治療効果を予測若しくはモニタリングする方法を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、患者におけるTMEM14Cの異常ジャンクション転写物とカノニカルジャンクション転写物の比(TMEM14C AJ/CJ比)を決定するステップを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、患者のTMEM14C AJ/CJ比に基づいて、治療有効量のスプライシングモジュレーター(例えば、化合物1)を投与するステップを含む。治療的使用及び治療用組成物もまた提供される。
【背景技術】
【0004】
骨髄異形成症候群(MDS)は癌に関連し、骨髄中の異常な造血細胞によって引き起こされる血液学的病態の集合である。これらの異常な造血細胞は、早期に死滅するか又は破壊される不完全な血液細胞を形成し、細胞不足をもたらす。最も一般的には、MDSは赤血球の不足をもたらすが、他の種類の血液細胞が影響を受ける可能性もある。
【0005】
MDS患者はしばしば重度の貧血を発症し、頻繁な輸血を必要とし、これは、臨床的、健康に関連する生活の質、及び経済的影響をもたらし得る(Balducci,Cancer.2006;106:2087-2094;Almeida et al.Leuk Res.2017;52:50-57)。鉄毒性に関連する合併症に加えて、同種免疫、アレルギー反応、及び輸血感染症も起こし得る(Sanz et al.Transfusion.2013;53:710-715;Kimura et al.Blood Transfus.2014;12:103-106;Koutsavlis,Anemia.2016;2016:8494738;Singhal et al.Haematologica.2017;102:2021-2029)。輸血への依存はまた、生存に悪影響を及ぼし、身体的、機能的、及び社会的幸福に影響を及ぼし得る(Harnan et al.Acta Haematol.2016;136:23-42;Lucioni et al.Am J Blood Res.2013;3:246-259;Stauder et al.Leukemia.2018;32:1380-1392;Szende et al.Health Qual Life Outcomes.2009;7:81)。例えば、慢性的な輸血は患者にとって時間がかかる可能性があり、また患者及びその家族に心理社会的な負担をもたらす可能性がある(Balducci,Cancer.2006;106:2087-2094)。これらの臨床的及び健康に関連する生活の質の負担に加えて、輸血依存患者はまた、経済的負担をもたらし得る。輸血への長期依存は、特に輸血を高頻度で必要とする患者にとって、医療費の増加につながる(DeZern et al.Leuk Lymphoma.2017;58:2649-2656)。
【0006】
現在、米国では、MDS関連の適応症のために、エリスロポエチン刺激剤として知られる非経口的に投与される組換えエリスロポエチン薬;ヌクレオシドアナログDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(低メチル化剤)アザシチジン及びデシタビン;形質転換成長因子βスーパーファミリーリガンドに結合する組換え融合タンパク質であるラスパテルセプト;及び経口投与される免疫調節剤レナリドミドを含む、多くの薬物療法が承認されている。これらの薬物療法は血液学的改善を誘導することができるが、治癒的ではなく、また、治療中に発生する血球減少症や他の有害事象にも関連する。したがって、MDSに対する治療法の改善、特に輸血依存を低減し、望ましくない毒性を最小限に抑えることができる治療法の改善が依然として必要とされている。
【0007】
蓄積された証拠は、様々なヒト疾患が、異なるエクソンの挿入/切除、イントロン保持、又は潜在的スプライス部位の使用をもたらし得るRNAスプライシングにおける調節不全と関連するステップを示している(Scotti and Swanson(2016)Nat Rev Genet.17(1):19-32;Seiler et al.(2018)Cell Rep.23(1):282-96)。いくつかの研究は、癌細胞のスプライシングプロファイル、並びにスプライシング因子自体の変化を実証している(Agrawal et al.(2018)Curr Opin Genet Dev.48:67-74)。全体的にみれば、これらの事象は、腫瘍形成又は治療に対する抵抗性の一因となり得る機能的変化を説明している(Zhang and Manley,Cancer Discov.2013;3(11):1228-1237;Siegfried and Karni,(2018)Curr Opin Genet Dev.48:16-21)。
【0008】
SF3B1、U2AF1、及びSRSF2などのスプライシング因子遺伝子における体細胞変異は、MDS患者の約50%に影響を及ぼし、多様な代替的で且つ異常なmRNAスプライシング変化をもたらしている。変異したSF3B1は、典型的にはミトコンドリアにおけるヘム生合成及び鉄蓄積の欠陥を特徴とする、MDSにおける環状鉄芽球表現型と関連している。TMEM14C、ABCB7、及びPPOXなどのヘム生合成及び鉄代謝に関与する遺伝子の異常なスプライシングも、MDS患者、特にSF3B1変異を有する患者において観察されている(Shiozawa et al.Nat Commun.2018;9:3649)。ABCB7及びPPOXの異常なスプライシング及び下方制御はSF3B1変異細胞及び患者において報告されており、赤血球生成不全の一因であり得る(例えば、Shiozawa et al.Nat Commun.2018;9:3649の例えば図7e-g;Darman et al.Cell Reports.2015;13:1033-1045の例えば図6D;Nikpour et al.Br J Haematol.2010;149(6):844-854の例えば図1を参照).さらに、スプライシング因子遺伝子における変異が、MDS及び他の骨髄性悪性腫瘍の起源における開始事象の1つであることが報告されている(Walter et al.N Engl J Med.2012;366(12):1090-1098;Yoshida and Ogawa,Wiley Interdiscip Rev RNA.2014;5(4):445-459)。
【0009】
特定の小分子は、イントロン保持及び/又はエクソンスキッピングを促進することによって、悪性細胞におけるRNAスプライシングを調節することができる(Teng et al.(2017)Nat Commun.8:15522)。化合物1は、SF3b複合体に結合し、代替的スプライシング変化を誘導する小分子である(Finci et al.Genes Dev.2018;32(3-4):309-320;Lee et al.Nat Med.2016;22(6):672-678)。化合物1は、U2AF1、SRSF2、及びSF3B1変異細胞を含むヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株のパネルにおいて増殖阻害活性を示し、化合物1の経口投与は、変異SF3B1を発現する白血病の異種移植モデルにおいてインビボ抗腫瘍活性を誘導する(Seiler et al.Nat Med.2018;24(4):497-504)。化合物1はまた、ヒトの骨髄性癌の治療において評価されているが、患者間で一貫性のない結果を示している(NCT02841540;Steensma et al.Blood(2019)134(Supplement 1):673)。
【0010】
したがって、化合物1などのスプライシングモジュレーターを用いた治療の改善、並びに、そのような治療に応答するか又はそのような治療から利益を得る可能性が最も高い患者を特定する方法が必要とされている。治療中に輸血非依存性へと発展する可能性が高いMDS患者を選択するためのバイオマーカーに基づく戦略が特に望ましい。そのような戦略は治療レジメンに情報を与え、治療効果を高め、且つ/又はMDS患者の生活の質を改善することができるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、化合物1などのスプライシングモジュレーターが骨髄性癌における抗腫瘍反応に関していくらか一貫性のない結果を示している(NCT02841540;Steensma et al.Blood(2019)134(Supplement1):673)ものの、その化合物は、赤血球生成に関与する遺伝子であるミトコンドリアポルフィリントランスポーターTMEM14Cの異常にスプライシングされた転写物を高い比率で発現するMDS患者の赤血球輸血依存性を減少させるのに驚くほど有効であるという驚くべき発見に、少なくとも部分的に基づいている。TMEM14Cの治療前における発現の上昇は、化合物1で治療されたMDS患者の輸血非依存性と関連している。化合物1は、MDS患者におけるTMEM14C異常スプライシングを低減又は阻害し得る。理論に束縛されるものではないが、化合物1での治療後に輸血非依存性を示すMDS患者、特にSF3B1変異を有するMDS患者は、化合物1での治療前に高レベルのTMEM14C異常転写物を有し、治療中に一過性の下方制御を示す可能性があると思われる。
【0012】
SF3B1変異タンパク質は、ZDHHC16、SLTM、SNURF、ZNF561、TAK1、ZNF410、及び血液細胞の合成及び代謝に関与する他の遺伝子を含む多くの遺伝子に影響を及ぼすが、これらの遺伝子は一般に、輸血非依存性とは相関しない。対照的に、本開示は、特定のMDS患者におけるTMEM14C異常スプライシングの調節が、化合物1などのスプライシングモジュレーターによる治療後に、これらの患者の輸血非依存性に対する感受性を特異的に高めるという驚くべき発見に焦点を当てる。特に、TMEM14Cの異常ジャンクション転写物とカノニカルジャンクション転写物の比(TMEM14C AJ/CJ比)の治療前の上昇は、化合物1による治療中に輸血非依存性を達成する可能性があるMDS患者を特定するのに有用であり得る。そのような患者はまた、TMEM14Cの発現が低レベル(例えば、健康な対象よりも低いレベル)であり得る。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比の上昇を、単独で、又は低レベルのTMEM14C発現と組み合わせて、バイオマーカーとして使用して、患者が化合物1での治療に応答する又はそのような治療から利益を得る可能性があるかどうかを予測又は決定する。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比の上昇は、対照(例えば、MDSを有さない対照対象)における比を超えるTMEM14C AJ/CJ比である。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比の上昇は、核酸を検出し定量するための1つ又は複数の方法、例えば、本明細書に記載の例示的な方法のいずれかの方法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比の上昇は、リアルタイムPCR(RT-PCR)などのPCRをベースとした方法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比の上昇は、核酸バーコーディングを使用して測定される。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比の上昇は、核酸バーコーディングによる測定で、対照における比を超える比である。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比の上昇は、核酸バーコーディングによる測定で、約4、例えば、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、又は4.5を超える比である。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示は、例えば、化合物1を投与することによって、MDS患者の輸血依存を治療する患者を選択するバイオマーカーとして使用するためのTMEM14C AJ/CJ比を提供する。TMEM14C AJ/CJ比は、治療する患者を特定するために、単独で、又は1つ若しくは複数のさらなるバイオマーカーと組み合わせて評価され得る。例えば、ABCB7及び/又はPPOXを含む、ヘム生合成及び鉄代謝に関与する他の遺伝子の異常なスプライシングは、同様に、化合物1などのスプライシングモジュレーターによる治療後に、特定のMDS患者の輸血非依存性に対する感受性を高め得る。
【0014】
鉄エクスポーターABCB7の下方制御は、環状鉄芽球を有するMDS患者において観察されるミトコンドリア鉄蓄積の増加に関連している(Maio et al.Haematologica 2019;104:1756-1767)。実験モデルにおけるABCB7発現の喪失はまた、ヘム生合成不全、ミトコンドリアの鉄過剰、及び赤血球前駆細胞のアポトーシスを引き起こすことが示されている(Maio et al.Haematologica2019;104:1756‐1767)。いくつかの実施形態では、ABCB7の異常ジャンクション転写物とカノニカルジャンクション転写物の比(ABCB7 AJ/CJ比)の治療前の上昇は、例えば、単独で、又はTMEM14C AJ/CJ比の上昇などの別のバイオマーカーと組み合わせて使用された場合、化合物1による治療中に輸血非依存性を達成する可能性があるMDS患者を特定するために有用であり得る。同様に、PPOXは、ポルフィリンのミトコンドリア輸送を促進し得る(Shiozawa et al.Nat Commun.2018;9:3649)。いくつかの実施形態では、PPOXの異常ジャンクション転写物とカノニカルジャンクション転写物の比(PPOX AJ/CJ比)の治療前の上昇は、例えば、単独で、又はTMEM14C AJ/CJ比の上昇などの別のバイオマーカーと組み合わせて使用された場合、化合物1による治療中に輸血非依存性を達成する可能性があるMDS患者を特定するために有用であり得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、スプライシングモジュレーターは、本明細書で「化合物1」と呼ばれる、式Iを有するプラジエノライドピリジン化合物又はその薬学的に許容される塩である:
【化1】

((2S,3S,4E,6S,7R,10R)-7,10-ジヒドロキシ-3,7-ジメチル-12-オキソ-2-[(2E,4E,6R)-6-(ピリジン-2-イル)ヘプタ-2,4-ジエン-2-イル]オキサシクロドデカ-4-エン-6-イル-4-メチルピペラジン-1-カルボキシレートとしても知られる)。
【0016】
いくつかの実施形態において、本開示は、新規のバイオマーカーを使用して、MDS患者の輸血依存を治療する方法を提供する。本開示はまた、いくつかの実施形態において、スプライシングモジュレーター(例えば、化合物1)による治療に適したMDS患者を特定する方法、及び/又はMDS患者における治療効果を予測若しくはモニタリングする方法を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、患者におけるTMEM14Cの異常ジャンクション転写物とカノニカルジャンクション転写物の比(TMEM14C AJ/CJ比)を決定するステップを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、患者のTMEM14C AJ/CJ比に基づいて、治療有効量のスプライシングモジュレーター(例えば、化合物1)を投与するステップを含む。治療的使用及び治療用組成物もまた開示される。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、高TMEM14C AJ/CJ比を有する輸血依存性MDS患者に治療有効量の化合物1を投与するステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、(a)輸血依存性のMDS患者が、高TMEM14C AJ/CJ比を有することを決定するステップ、及び(b)その患者に治療有効量の化合物1を投与するステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、化合物1による治療に適した輸血依存性MDS患者を特定する方法であって、(a)患者が高TMEM14C AJ/CJ比を有することを決定するステップ、及び(b)その患者を化合物1による治療に適していると特定するステップを含む方法を提供する。本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料は、低レベルのTMEM14C発現を示す。いくつかの実施形態では、化合物1は、患者のTMEM14C異常スプライシングを低減又は阻害する。
【0018】
いくつかの実施形態において、本開示は、輸血依存性MDS患者における治療効果をモニタリングする方法であって、(a)患者が高TMEM14C AJ/CJ比を有することを決定するステップ、(b)その患者に治療有効量の化合物1を投与するステップ、及び(c)投与後の患者のTMEM14C AJ/CJ比を決定するステップを含み、投与後のTMEM14C AJ/CJ比の低下が治療の有効性を示す方法を提供する。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比がステップ(c)後も高いままであり、方法は、患者に追加用量の化合物1を投与するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、TMEM14C AJ/CJ比がもはや上昇しなくなるまで、患者に追加用量の化合物1を投与するステップをさらに含む。本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態においては、患者又は患者からの生体試料は、低レベルのTMEM14C発現を示す。いくつかの実施形態では、化合物1は、患者のTMEM14C異常スプライシングを低減又は阻害する。
【0019】
いくつかの実施形態では、高AJ/CJ比を決定するステップは、患者から生体試料を得るステップ、及び試料中のTMEM14C AJ/CJ比を決定するステップを含む。TMEM14Cの例示的なカノニカル配列は、CCGGGGCCTTCGTGAGACCGGTGCAGGCCTGGGGTAGTCT(配列番号1)(遺伝子:TMEM14C;ジャンクション:chr6:10723474-10724802)である。TMEM14Cの例示的な異常配列は、CCGGGGCCTTCGTGAGACCGCTTGTTTTCTGCAGGTGCAG(配列番号2)(遺伝子:TMEM14C;ジャンクション;chr6:10723474-10724788)である。さらなる異常なTMEM14C配列は、Darman et al.(Cell Reports.2015;13:1033-1045、例えば、表S5)に記載されており、この文献は、そのような配列の開示のために参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、生体試料は血液試料又は骨髄試料を含む。いくつかの実施形態では、血液試料は末梢血又は血漿を含む。いくつかの実施形態では、骨髄試料は骨髄穿刺液又は骨髄生検を含む。いくつかの実施形態では、生体試料が尿試料を含む。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比は、患者又は患者からの生体試料中のRNA転写物を測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、RNA転写物を測定するステップは、核酸バーコーディング及び/又はリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を含む。いくつかの実施形態では、RNA転写物を測定するステップは、核酸バーコーディングを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、高TMEM14C AJ/CJ比は、対照(例えば、MDSを有さない対照対象)のTMEM14C AJ/CJ比を超える比である。いくつかの実施形態では、高TMEM14C AJ/CJ比は、本明細書に記載の例示的な方法のいずれか(例えば、リアルタイムPCR(RT-PCR)などのPCRをベースとした方法、核酸バーコーディングなど)などの核酸を検出し定量するための1つ又は複数の方法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、高TMEM14C AJ/CJ比は、核酸バーコーディングによる測定で、対照における比を超える比である。いくつかの実施形態では、高TMEM14C AJ/CJ比は、例えば、リアルタイム逆転写PCR又は核酸バーコーディングなどのRNA発現定量法による測定で、約1、約2、約4、約10、約15、約20、又は約30を超える比である。いくつかの実施形態では、高TMEM14C AJ/CJ比は、核酸バーコーディングによる測定で、約4を超える比である。
【0021】
いくつかの実施形態では、ABCB7の異常ジャンクション転写物とカノニカルジャンクション転写物の比(ABCB7 AJ/CJ比)の治療前の上昇は、化合物1による治療中に輸血非依存性を達成する可能性があるMDS患者を特定するのに有用であり得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、高ABCB7 AJ/CJ比を有する輸血依存性MDS患者に治療有効量の化合物1を投与するステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、(a)輸血依存性のMDS患者が、高ABCB7 AJ/CJ比を有することを決定するステップ、及び(b)その患者に治療有効量の化合物1を投与するステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、化合物1による治療に適した輸血依存性MDS患者を特定する方法であって、(a)患者が高ABCB7 AJ/CJ比を有することを決定するステップ、及び(b)その患者を化合物1による治療に適していると特定するステップを含む方法を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、高AJ/CJ比を決定するステップは、患者から生体試料を得るステップ、及びその試料中のABCB7 AJ/CJ比を決定するステップを含む。いくつかの実施形態では、ABCB7 AJ/CJ比は、患者又は患者からの生体試料中のRNA転写物を測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、ABCB7 AJ/CJ比の上昇は、対照(例えば、MDSを有さない対照対象)における比を超えるABCB7 AJ/CJ比である。いくつかの実施形態では、ABCB7 AJ/CJ比の上昇は、核酸を検出し定量するための1つ又は複数の方法、例えば、本明細書に記載の例示的な方法のいずれかの方法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、ABCB7 AJ/CJ比の上昇は、リアルタイムPCR(RT-PCR)などのPCRベースの方法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、ABCB7 AJ/CJ比の上昇は、核酸バーコーディングを使用して測定される。いくつかの実施形態では、ABCB7 AJ/CJ比の上昇は、核酸バーコーディングによる測定で、対照における比を超える比である。
【0024】
いくつかの実施形態では、PPOXの異常ジャンクション転写物とカノニカルジャンクション転写物の比(PPOX AJ/CJ比)の治療前の上昇は、化合物1による治療中に輸血非依存性を達成する可能性があるMDS患者を特定するのに有用であり得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、高PPOX AJ/CJ比を有する輸血依存性MDS患者に治療有効量の化合物1を投与するステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、(a)輸血依存性のMDS患者が、高PPOX AJ/CJ比を有することを決定するステップ、及び(b)その患者に治療有効量の化合物1を投与するステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、化合物1による治療に適した輸血依存性MDS患者を特定する方法であって、(a)患者が高PPOX AJ/CJ比を有することを決定すること、及び(b)その患者を化合物1による治療に適していると特定するステップを含む方法を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、高AJ/CJ比を決定するステップは、患者から生体試料を得るステップ、及びその試料中のPPOX AJ/CJ比を決定するステップを含む。いくつかの実施形態では、PPOX AJ/CJ比は、患者又は患者からの生体試料中のRNA転写物を測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、PPOX AJ/CJ比の上昇は、対照(例えば、MDSを有さない対照対象)における比を超えるPPOX AJ/CJ比である。いくつかの実施形態では、PPOX AJ/CJ比の上昇は、核酸を検出し定量するための1つ又は複数の方法、例えば、本明細書に記載の例示的な方法のいずれかの方法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、PPOX AJ/CJ比の上昇は、リアルタイムPCR(RT-PCR)などのPCRをベースとした方法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、PPOX AJ/CJ比の上昇は、核酸バーコーディングを使用して測定される。いくつかの実施形態では、PPOX AJ/CJ比の上昇は、核酸バーコーディングによる測定で、対照における比を超える比である。
【0027】
いくつかの実施形態では、高AJ/CJ比を決定するステップは、例えば、患者からの生体試料において、2つ以上のAJ/CJ比、例えば、2つ、3つ、又はそれ以上のAJ/CJ比を決定するステップを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、高AJ/CJ比を決定するステップは、TMEM14C AJ/CJ比及びABCB7 AJ/CJ比を決定するステップを含む。いくつかの実施形態では、高AJ/CJ比を決定するステップは、患者から生体試料を得るステップ、並びにその試料中のTMEM14C AJ/CJ比及びABCB7 AJ/CJ比を決定するステップを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、高AJ/CJ比を決定するステップは、TMEM14C AJ/CJ比及びPPOX AJ/CJ比を決定するステップを含む。いくつかの実施形態では、高AJ/CJ比を決定するステップは、患者から生体試料を得るステップ、並びにその試料中のTMEM14C AJ/CJ比及びPPOX AJ/CJ比を決定するステップを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、高AJ/CJ比を決定するステップは、TMEM14C AJ/CJ比、ABCB7 AJ/CJ比及びPPOX AJ/CJ比を決定するステップを含む。いくつかの実施形態では、高AJ/CJ比を決定するステップは、患者から生体試料を得るステップ、並びにその試料中のTMEM14C AJ/CJ比、ABCB7 AJ/CJ比及びPPOX AJ/CJ比を決定するステップを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、MDSは、多系統に異形成を有するMDS(MDS-MLD)、単一系統に異形成を有するMDS(MDS-SLD)、環状鉄芽球を伴うMDS(MDS-RS)、芽球増加を伴うMDS(MDS-EB)、単独5番染色体長腕欠失を伴うMDS、又は分類不能型MDS(MDS-U)である。いくつかの実施形態では、MDSは、国際予後判定システムによる中間-1リスク以下のMDSである。いくつかの実施形態では、MDSは、国際予後判定システムによる中間-2リスク以下のMDSである。いくつかの実施形態では、MDSは、MDS-MLDである。いくつかの実施形態では、MDSは、MDS-EBである。いくつかの実施形態では、MDS-EBは、MDS-EB1又はMDS-EB2である。いくつかの実施形態では、MDSは、MDS-EB2である。
【0032】
いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料は、RNAスプライシングに関連する1つ又は複数の遺伝子に変異を含む。いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料は、SF3B1、SRSF2、U2AF1及びZRSR2から選択される1つ又は複数の遺伝子に変異を含む。いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料は、SF3B1に変異を含む。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、SF3B1のE622位、H662位、K666位、K700位、R625位又はV701位の1つ又は複数に変異を含むか、又はその変異からなる。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、SF3B1のH662位、K700位又はR625位の1つ又は複数に変異を含むか、又はその変異からなる。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、SF3B1のK700位に変異を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、K700位の変異はK700Eであり、且つ/又はR625位の変異はR625Cである。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、K700E及び/又はR625Cを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、化合物1は、患者に経口投与される。
【0034】
いくつかの実施形態では、化合物1は、患者に1日1回投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、5日間投与/9日間休薬の投与スケジュールで1日1回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、21日間投与/7日間休薬の投与スケジュールで1日1回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、連続投与スケジュールで1日1回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、有害事象又は薬物関連毒性(例えば、発疹、好中球減少症、血小板減少症)が観察されるまで、連続投与スケジュールで1日1回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、治療休暇が、例えば、有害事象又は薬物関連毒性事象が観察された後に、1日1回の投薬スケジュールに組み込まれる。いくつかの実施形態では、治療休暇は、1日1回の連続投与の少なくとも約5日後(例えば、約5日後、約7日後、約14日後、約21日後、又はそれ以上)に組み込まれる。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日1回、1回以上の28日サイクルにわたって患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1の治療有効量は、投与日に単回用量で約2mg~約20mgである。いくつかの実施形態では、化合物1の治療有効量は、投与日に単回用量で約2mg、約3.5mg、約5mg、約7mg、約10mg、約12mg、約14、又は約20mgである。
【0035】
いくつかの実施形態では、化合物1は、患者に1日2回投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、5日間投与/9日間休薬の投与スケジュールで1日2回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、21日間投与/7日間休薬の投与スケジュールで1日2回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、連続投与スケジュールで1日2回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、有害事象又は薬物関連毒性が観察されるまで、連続投与スケジュールで1日2回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、治療休暇は、1日2回の投与スケジュールに組み込まれる。いくつかの実施形態では、治療休暇は、1日2回の連続投与の少なくとも約5日後(例えば、約5日後、約7日後、約14日後、約21日後、又はそれ以上)に組み込まれる。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日2回、1回以上の28日サイクルにわたって患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1の治療有効量は、投与日に2分割用量で合計約2mg~約20mgである。いくつかの実施形態では、化合物1の治療有効量は、投与日に2分割用量で約10mg、約15mg、又は約20mgである。いくつかの実施形態では、1回目及び2回目の用量は、それぞれ独立して、約2mg~約10mgである。いくつかの実施形態では、1回目及び2回目の用量は、それぞれ独立して、約5mg~約10mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量は約2mg~約5mgであり、2回目の用量は約7mg~約10mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量は約7mg~約10mgであり、2回目の用量は約2mg~約5mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量は約10mgであり、2回目の用量は約5mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量は約5mgであり、2回目の用量は約10mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約5mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約7.5mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約10mgである。
【0036】
いくつかの実施形態では、患者に投与される化合物1の用量は、時間と共に減少する。例えば、治療の開始時に、化合物1は1日2回、約10mgの用量で投与され得る。すなわち、1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約10mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量と2回目の用量との間の間隔は約8~約16時間、例えば、約10時間~約14時間(例えば、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間)である。次いで、この毎日の投与は、例えば、有害事象又は薬物関連毒性事象が観察された後、1回以上減少され得る。いくつかの実施形態では、1回目の用量減少は、約5mgの1回目の用量及び約10mgの2回目の用量を含むか、又はその逆である。いくつかの実施形態では、2回目又はその後の用量減少は、それぞれ約5mgの1回目の用量及び2回目の用量を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、化合物1による治療が患者の輸血依存を軽減又は排除する。いくつかの実施形態では、化合物1による治療は、患者への輸血の回数又は頻度を、治療前の回数又は頻度と比較して、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、又は約60%減少させる。いくつかの実施形態では、化合物1による治療は、患者への輸血の回数又は頻度を、治療前の回数又は頻度と比較して、少なくとも約30%減少させる。いくつかの実施形態では、化合物1による治療は、患者への輸血の回数又は頻度を、治療前の回数又は頻度と比較して、少なくとも約60%減少させる。いくつかの実施形態では、化合物1で観察される輸血の回数又は頻度の減少は、別の治療で観察される減少よりも大きい。いくつかの実施形態では、化合物1で観察される輸血と輸血の間の期間は、別の治療で観察される輸血と輸血の間の期間よりも長い。例示的な別の治療としては、レナリドミド(例えば、List et al.(N Engl J Med.2006;355(14):1456-1465)、Fenaux et al.(Blood.2011;118(14):3765-3776)を参照)及びラスパテルセプト(例えば、Fenaux et al.(N Engl J Med.2020;382(2):140-151)を参照)が挙げられる。いくつかの実施形態では、輸血の回数又は頻度の減少は、少なくとも56連続日(8週間)の期間にわたって測定され、この期間は治療開始後の任意の時間に始まる。いくつかの実施形態では、患者は少なくとも56連続日(8週間)の期間、輸血を受けず、この期間は治療開始後の任意の時間に始まる。いくつかの実施形態では、輸血の回数又は頻度の減少は、治療の最初の24週間の間の少なくとも8週又はそれ以上の期間にわたって測定される。いくつかの実施形態では、輸血の回数又は頻度の減少は、治療の最初の24週間の間の少なくとも12週又はそれ以上の期間にわたって測定される。いくつかの実施形態では、輸血の回数又は頻度の減少は、治療の最初の48週間の間の少なくとも12週又はそれ以上の期間にわたって測定される。いくつかの実施形態では、輸血の回数又は頻度の減少は、治療の最初の24週間の間の少なくとも16週又はそれ以上の期間にわたって測定される。いくつかの実施形態では、輸血の回数又は頻度の減少は、治療の最初の48週間の間の少なくとも16週又はそれ以上の期間にわたって測定される。いくつかの実施形態では、輸血は、赤血球(RBC)輸血、血小板輸血、又はその両方を含む。いくつかの実施形態では、輸血は、RBC輸血を含む。いくつかの実施形態では、化合物1による治療は、患者の骨髄鉄芽球の量を、治療前の量と比較して、増加させる。いくつかの実施形態では、化合物1による治療は、患者の骨髄鉄芽球の量を、治療前の量と比較して、少なくとも約10%、約20%、約30%、又は約40%増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A図1A~1Cは、ベースライン時の疾患サブタイプ及びスプライソソームミスセンス変異ごとの、登録患者及び彼らの治療期間のスイマープロットを示す:低リスク骨髄異形成症候群(MDS)又は慢性骨髄単球性白血病(CMML)(図1A)、高リスクMDS又はCMML(図1B)、及び急性骨髄性白血病(AML)(図1C)。色は、登録患者の用量レベルを示す。、CMML患者。略語:QD、1日1回。
図1B図1A~1Cは、ベースライン時の疾患サブタイプ及びスプライソソームミスセンス変異ごとの、登録患者及び彼らの治療期間のスイマープロットを示す:低リスク骨髄異形成症候群(MDS)又は慢性骨髄単球性白血病(CMML)(図1A)、高リスクMDS又はCMML(図1B)、及び急性骨髄性白血病(AML)(図1C)。色は、登録患者の用量レベルを示す。、CMML患者。略語:QD、1日1回。
図1C図1A~1Cは、ベースライン時の疾患サブタイプ及びスプライソソームミスセンス変異ごとの、登録患者及び彼らの治療期間のスイマープロットを示す:低リスク骨髄異形成症候群(MDS)又は慢性骨髄単球性白血病(CMML)(図1A)、高リスクMDS又はCMML(図1B)、及び急性骨髄性白血病(AML)(図1C)。色は、登録患者の用量レベルを示す。、CMML患者。略語:QD、1日1回。
図2図2は、サイクル1の4日目における化合物1の平均血漿濃度(ng/mL)を示す(スケジュールIに示す)。略語:h、時間。
図3A図3A~3Cは、化合物1で治療されたMDS患者の、治療前のTMEM14C AJ/CJ及び赤血球輸血非依存性(RBC TI)を示す。図3Aは、腫瘍適応別の研究における治療前TMEM14C AJ/CJとRBC TIとの関係を示すボックスプロットを示す。AML、MDS又はCMMLの診断結果を示す。図3Bは、利用可能な治療前TMEM14C AJ/CJデータを有するMDS患者の受信者動作曲線(ROC)分析及びランク付けを示す。図3Cは、高い治療前TMEM14C AJ/CJを示したMDS患者の化合物1治療後のTMEM14C AJ/CJ比を示す。
図3B図3A~3Cは、化合物1で治療されたMDS患者の、治療前のTMEM14C AJ/CJ及び赤血球輸血非依存性(RBC TI)を示す。図3Aは、腫瘍適応別の研究における治療前TMEM14C AJ/CJとRBC TIとの関係を示すボックスプロットを示す。AML、MDS又はCMMLの診断結果を示す。図3Bは、利用可能な治療前TMEM14C AJ/CJデータを有するMDS患者の受信者動作曲線(ROC)分析及びランク付けを示す。図3Cは、高い治療前TMEM14C AJ/CJを示したMDS患者の化合物1治療後のTMEM14C AJ/CJ比を示す。
図3C図3A~3Cは、化合物1で治療されたMDS患者の、治療前のTMEM14C AJ/CJ及び赤血球輸血非依存性(RBC TI)を示す。図3Aは、腫瘍適応別の研究における治療前TMEM14C AJ/CJとRBC TIとの関係を示すボックスプロットを示す。AML、MDS又はCMMLの診断結果を示す。図3Bは、利用可能な治療前TMEM14C AJ/CJデータを有するMDS患者の受信者動作曲線(ROC)分析及びランク付けを示す。図3Cは、高い治療前TMEM14C AJ/CJを示したMDS患者の化合物1治療後のTMEM14C AJ/CJ比を示す。
図4図4は、例示的な試験デザイン(NCT02841540)を示す。、適格患者は、クレアチニン≦1.7mg/dL又は計算クレアチンクリアランス(CrCl)≧50mL/分、直接ビリルビン 正常上限(ULN)の≦1.5倍、アラニンアミノトランスフェラーゼ及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST/ALT)ULNの≦3.0倍、アルブミン≧2.5mg/dL;ビタミンA 正常、及び視力矯正 20/40(白内障による場合を除く)と定義される十分な視力及び臓器機能を有していた。略語:ALT、アラニンアミノトランスフェラーゼ;AML、急性骨髄性白血病;AST、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ;CMML、慢性骨髄単球性白血病;CrCl、クレアチニンクリアランス;MDS、骨髄異形成症候群;ULN、正常上限。
図5図5は、スプライシングマーカーの相対発現の化合物1の用量依存的調節を示すヒートマップを示す。略語:ES、エクソンスキッピング。
図6図6は、残存試料におけるRT-qPCR遺伝子発現を示す。ボックスプロットは、患者サブセットについてのRT-qPCRによる遺伝子発現を示す。クラスカル・ウォリス検定を用いて群間の差を測定した。RBC TI「あり」対「なし」のp値は、サイクル1の1日目及びサイクル1の4日目におけるTMEM14C AJ/CJ比で、それぞれ0.055及び0.025ではあった。略語:RT-qPCR、定量的逆転写PCR。
図7図7は、RBC TIを経験している患者における変異を示す。変異は、化合物1による治療を受けたRBC TI期間を経験した患者の末梢血において、サイクル1の1日目の治療前に検出された。
図8A図8A~8Bは、化合物1による治療を受けた患者の、治療前ABCB7発現(RT-PCRによって決定される)とSF3B1変異(図8A)、又は試験中のRBC TI(図8B)との間の相関を示すボックスプロットを示す。「試験中」のRBC TIは、試験に参加している間、例えば、化合物1による治療中又は治療追跡中に患者が経験したRBC TIを指す。
図8B図8A~8Bは、化合物1による治療を受けた患者の、治療前ABCB7発現(RT-PCRによって決定される)とSF3B1変異(図8A)、又は試験中のRBC TI(図8B)との間の相関を示すボックスプロットを示す。「試験中」のRBC TIは、試験に参加している間、例えば、化合物1による治療中又は治療追跡中に患者が経験したRBC TIを指す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の詳細な説明及び実施例は、本開示の特定の実施形態を示す。当業者は、本開示の範囲に包含される本開示の多くの変形及び修正があることを認識するであろう。したがって、特定の実施形態の説明が本開示の範囲を限定すると見なされるべきではない。
【0040】
本開示がより容易に理解され得るように、特定の用語は、詳細な説明全体を通して定義される。本明細書において特に定義されない限り、本開示に関連して使用される全ての科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0041】
公開及び未公開の特許出願、登録された特許、並びに参考文献を含むがこれらに限定されない、本明細書中に引用される全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。引用文献が本明細書の開示と矛盾する限り、本明細書が優先するものとする。
【0042】
本明細書で使用される場合、単語の単数形はまた、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数形を含み、例として、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、単数又は複数であると理解される。例として、「1つの要素(an element)」は、1つ又は複数の要素を意味する。「又は」という用語は、特定の文脈がそうでないことを示さない限り、「及び/又は」を意味するものとする。
【0043】
「化合物1」という用語は、本明細書で使用される場合、式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの実体を指す。さらに、特に明記しない限り、「化合物1」は、化合物のエナンチオマー、ジアステレオマー、及び/又は幾何学的(又は立体配座)形態のうちの1つ以上、例えば、各不斉中心についてのR及びS立体配置、(Z)及び(E)二重結合異性体、並びに(Z)及び(E)立体配座異性体であり得る。特に明記しない限り、互変異性形態と共存する本明細書に示される化合物は、本開示の範囲内である。さらに、特に明記しない限り、本明細書に示される構造はまた、1つ以上の同位元素的に富化された原子の存在という点でのみ異なる化合物を含むことが意図されている。例えば、重水素若しくはトリチウムによる水素の置換、又は13C若しくは14C富化炭素による炭素の置換以外は示された構造を有する化合物は、本開示の範囲内である。そのような化合物は例えば、生物学的アッセイにおける分析ツール又はプローブとして有用であり得る。特に明記しない限り、化合物1の投与又は使用には、例えば、所望の投与経路のために製剤化された任意の好適なビヒクル又は賦形剤と組み合わせたその投与又は使用が含まれる。
【0044】
式Iは、以下によって
【化2】

且つ/又は化学名(2S,3S,4E,6S,7R,10R)-7,10-ジヒドロキシ-3,7-ジメチル-12-オキソ-2-[(2E,4E,6R)-6-(ピリジン-2-イル)ヘプタ-2,4-ジエン-2-イル]オキサシクロドデカ-4-エン-6-イル-4-メチルピペラジン-1-カルボキシレートによって表され得る。
【0045】
「薬学的に許容される」という用語は、動物、とりわけヒトにおける使用のために、連邦若しくは州政府の規制当局に承認されているか若しくは承認可能である、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方に列挙されていることを意味する。
【0046】
「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、且つ望ましくない毒物学的影響を与えない塩である。そのような塩の例は、(a)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などと形成される酸付加塩;及び有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などと形成される塩;並びに(b)塩素、臭素、及びヨウ素などの元素アニオンから形成される塩である。例えば、Haynes et al.“Commentary:Occurrence of Pharmaceutically Acceptable Anions and Cations in Cambridge Structural Database”,J Pharmaceutical Sciences、vol.94,no.10(2005)、及びBerge et al.“Pharmaceutical Salts”,J Pharmaceutical Sciences,vol.66,no.1(1977)を参照されたい。これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
例えば、化合物1の「治療有効量」は、具体的に記載した目的を実行するのに、例えば、患者への投与後に治療効果をもたらすのに十分な量である。MDSの場合、化合物1の治療有効量は、患者のTMEM14C AJ/CJ比を低下させ、患者への輸血の回数若しくは頻度を低下させ、患者の骨髄鉄芽球の数を増加させ、MDSの1つ又は複数の症状を軽減し、且つ/又は他のいくつかの治療効果の兆候を提供し得る。「予防有効量」は、所望の予防結果を達成するために、例えば、輸血に依存する患者のリスクを予防又は低減するために必要な投与量及び期間で有効な量を指す。典型的には、予防用量は疾患の前又は初期段階の患者において使用されるので、予防有効量は治療有効量未満である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「治療する」又は「治療」又は「治療的」(及び文法的に関連する用語)は、輸血依存の低減又は排除、生存期間の延長、死亡率の低下、及び/又は別の治療方法からもたらされる副作用の軽減など、疾患の結果の何らかの改善を指す。疾患又はその症状若しくは結果の完全な根絶は、治療行為に包含されるが、必須ではない。例えば、MDS患者における輸血依存の治療には、患者への輸血の回数及び/又は頻度を低減することを含まれるが、輸血の必要性を排除することは要求されない。治療はまた、患者、例えば、輸血依存性MDS患者への化合物1の投与を指し得る。治療は、疾患、疾患の1つ若しくは複数の症状若しくは結果、又は疾患に対する素因、例えば、MDS又はMDSに関連する輸血依存を、予防し、治癒させ(cure)、治癒させ(heal)、緩和し(alleviate)、軽減し(relieve)、改変し(alter)、改善し(remedy)、改善し(ameliorate)、緩和し(palliate)、改善し(improve)、又は作用することであり得る。いくつかの実施形態では、治療は、輸血に対する患者の依存を低減又は排除する。
【0049】
「対象」及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含むがこれらに限定されない任意の哺乳動物などの任意の動物を指す。いくつかの実施形態では、対象又は患者は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象又は患者はヒトである。
【0050】
本明細書で使用される場合、患者が治療から生物学的に、医学的に、及び/又は生活の質において利益を得るなら、そのような患者はそのような治療に「適している」又は「必要としている」。いくつかの実施形態では、化合物1による治療に適している患者は、特定のTMEM14C AJ/CJ比を有する輸血依存性MDS患者である。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比は、患者が化合物1による治療に応答するか又はそれから利益を受ける可能性があるかどうかを予測又は決定するバイオマーカーとして使用される。いくつかの実施形態では、患者は、高TMEM14C AJ/CJ比、例えば、対照(例えば、MDSを有さない対照対象)の比を超える比を有する。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比の上昇は、核酸を検出し定量するための1つ又は複数の方法、例えば、本明細書に記載の例示的な方法のいずれかの方法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比の上昇は、リアルタイムPCR(RT-PCR)などのPCRをベースとした方法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比の上昇は、核酸バーコーディングを使用して測定される。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比の上昇は、核酸バーコーディングによる測定で、対照における比を超える比である。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比の上昇は、核酸バーコーディングによる測定で、約4を超える比である。いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料は、低レベルのTMEM14C発現を有する。いくつかの実施形態では、化合物1は、患者のTMEM14C異常スプライシングを低減又は阻害する。
【0051】
「スプライスバリアント」という用語は、本明細書で使用される場合、遺伝子内の2つのエクソン配列間のジャンクション、又はイントロン-エクソン境界を超えるジャンクションに跨る核酸配列を指し、ここで、ジャンクションは選択的にスプライシングされ得る。選択的スプライシングには、選択的3’スプライス部位選択(「3’ss」)、選択的5’スプライス部位選択(「5’ss」)、差次的エクソンインクルージョン、エクソンスキッピング、及びイントロンリテンションが含まれる。
【0052】
所与のゲノム位置に関連する特定のスプライスバリアントは、野生型又は「カノニカル」スプライスバリアントと称され得る。野生型スプライス変異体は、ヒト集団において最も頻繁に見出されるバリアントである。RNA転写物として発現するこれらのスプライスバリアントは、「カノニカルジャンクション」又は「CJ」転写物と称され得る。TMEM14Cの例示的なカノニカル配列は、CCGGGGCCTTCGTGAGACCGGTGCAGGCCTGGGGTAGTCT(配列番号1)(遺伝子:TMEM14C;ジャンクション:chr6:10723474-10724802)である。カノニカルスプライス部位の例も本明細書において提供される。例えば、配列番号5(TMEM14C)及び配列番号6(ABCB7)に示される「AG」カノニカル3’スプライス部位を参照されたい。カノニカルスプライス部位のさらなる非限定的な例は、Dolatshad et al.(Leukemia.2016;30:2322-2331、例えば、捕捉図2)に記載されており、この文献は、そのような部位の開示のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
追加のスプライスバリアントは、「異常」スプライスバリアントと称され得、カノニカルスプライスバリアントとは異なる。RNA転写物として発現するこれらのスプライスバリアントは、「異常ジャンクション」又は「AJ」転写物と称され得る。TMEM14Cの例示的な異常配列は、CCGGGGCCTTCGTGAGACCGCTTGTTTTCTGCAGGTGCAG(配列番号2)(遺伝子:TMEM14C;ジャンクション;chr6:10723474-10724788)である。異常スプライス部位の例も本明細書において提供される。例えば、配列番号5(TMEM14C)及び配列番号6(ABCB7)に示される「AG」潜在的3’スプライス部位を参照されたい。異常スプライス部位のさらなる非限定的な例は、Dolatshad et al.(Leukemia.2016;30:2322-2331、例えば、捕捉図2)に記載されており、この文献は、そのような部位の開示のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
「AJ/CJ比」という用語は、特定の遺伝子又は遺伝子座(例えば、TMEM14C)の異常ジャンクション転写物とカノニカルジャンクション転写物との比を指す。「TMEM14C AJ/CJ比」という用語は、例えば、患者又は患者からの試料における、TMEM14Cの異常ジャンクション転写物とカノニカルジャンクション転写物との比を指す。核酸を検出し定量するための例示的な方法には、核酸バーコーディング、ナノ粒子プローブ、インサイチューハイブリダイゼーション、マイクロアレイ、核酸シーケンシング、及びPCRをベースとした方法、例えば、リアルタイムPCR(RT-PCR)が含まれる。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比は、患者又は患者からの試料(例えば、血液試料、骨髄試料、及び/又は尿試料)中のRNA転写物を測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、RNA転写物を測定するステップは、核酸バーコーディング及び/又はRT-PCRを含む。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比は、核酸バーコーディングを使用して決定される。
【0055】
用語「高(い)」は、患者又は患者からの試料におけるTMEM14C AJ/CJ比を記載するために使用される場合、TMEM14Cの異常ジャンクション転写物とカノニカルジャンクション転写物の比が、例えば、核酸バーコーディングによる測定で、約0.1を超える(例えば、約0.1、約0.2、約0.5、約1、約2、約4、約10、約15、約20、約30、又はそれ以上を超える)ことを意味する。いくつかの実施形態では、高TMEM14C AJ/CJ比は、核酸バーコーディングによる測定(例えば、米国特許第8,519,115号明細書;米国特許第7,919,237号明細書;及びKulkarni(Current Protocols in Molecular Biology,2011;94:25B.10.1-25B.10.17)に記載されるような、例えば、NanoString(登録商標)アッセイ(NanoString Technologies)を使用)で、約4を超える比である。
【0056】
「低(い)」という用語は、患者又は患者からの試料におけるTMEM14C発現を記載するために使用される場合、そのレベルが健康な対象におけるレベルよりも低いことを意味する。
【0057】
用語「ABCB7」は、本明細書で使用される場合、ATP結合カセットサブファミリーBメンバー7、膜関連タンパク質、及びATP結合カセット(ABC)トランスポーターのスーパーファミリーのメンバーをコードする遺伝子を示す。ABCB7配列の例としては、ABCB7、転写バリアント1(UCSC:uc004ebz.4;RefSeq:NM_004299.6);ABCB7、転写バリアント2(UCSC:uc004eca.4;RefSeq:NM_001271696.3);ABCB7、転写バリアント3(UCSC:uc010nlt.4;RefSeq:NM_001271697.3);ABCB7、転写バリアント4(UCSC:uc011mqn.3;RefSeq:NM_001271698.3);及びABCB7、転写バリアント5(UCSC:uc010nls.4;RefSeq:NM_001271699.3)が挙げられるが、これらに限定されない。ABCB7の例示的なプライマー配列としては、例えば、フォワードプライマーAATGAACAAAGCAGATAATGATGCAGG(配列番号7)及びTCCCTGACTGGCGAGCACCATTA(配列番号8)が挙げられる。例えば、Shiozawa et al.Nat Commun.2018;9(1):3649、例えば、補足表5を参照されたい。この文献は、そのようなプライマー配列の開示のために参照により本明細書に組み込まれる。そのようなプライマーは、ABCB7発現を検出するために使用され得る。プライマーはまた、当業者によってABCB7のスプライスバリアントを検出するように設計され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるプライマーは、患者又は患者からの試料におけるABCB7発現(例えば、総ABCB7発現)を検出するために使用される。いくつかの実施形態では、ABCB7発現は、核酸を検出し定量するための1つ又は複数の方法、例えば、本明細書に記載の例示的な方法のいずれかの方法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、ABCB7発現は、リアルタイムPCR(RT-PCR)などのPCRベースの方法を使用して測定される。
【0058】
用語「PPOX」は、本明細書で使用される場合、プロトポルフィリノーゲンIXの6電子酸化を触媒してプロトポルフィリンIXを形成する、ヘム生合成の最後から2番目の酵素をコードする遺伝子を示す。PPOX配列の例としては、にはPPOX、転写バリアント1(RefSeq:NM_000309.5);PPOX、転写バリアント2(RefSeq:NM_001122764.3);PPOX、転写バリアント3(RefSeq:NM_001350128.2);PPOX、転写バリアント4(RefSeq:NM_001350129.2);及びPPOX、転写バリアント5(RefSeq:NM_001350130.2)が挙げられるが、これらに限定されない。PPOXの例示的なプライマー配列としては、例えば、フォワードプライマーGGCCCTAATGGTGCTATCTTTG(配列番号9)及びリバースプライマーCTTCTGAATCCAAGCCAAGCTC(配列番号10)が挙げられる。例えば、Shiozawa et al.Nat Commun.2018;9(1):3649、例えば、補足表5を参照されたい。この文献は、そのようなプライマー配列の開示のために参照により本明細書に組み込まれる。そのようなプライマーは、PPOX発現を検出するために使用され得る。プライマーはまた、当業者によってPPOXのスプライスバリアントを検出するように設計され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるプライマーは、患者又は患者からの試料におけるPPOX発現(例えば、総PPOX発現)を検出するために使用される。いくつかの実施形態では、PPOX発現は、核酸を検出し定量するための1つ又は複数の方法、例えば、本明細書に記載の例示的な方法のいずれかの方法を使用して測定される。いくつかの実施形態では、PPOX発現は、リアルタイムPCR(RT-PCR)などのPCRベースの方法を使用して測定される。
【0059】
用語「SF3B1」は、本明細書で使用される場合、スプライシング因子3bタンパク質複合体のサブユニット1をコードする遺伝子を示す。スプライシング因子3bは、U2核内低分子リボヌクレオタンパク質複合体(U2 snRNP)の成分であり、分岐点部位を含む領域でmRNA前駆体に結合し、3’スプライス部位(3’ss)でのスプライソソームの早期認識及び安定化に関与する。
いくつかの実施形態において、野生型ヒトSF3B1タンパク質は配列番号3(GenBankアクセッション番号NP_036565、バージョンNP_036565.2)(Bonnal et al.Nature Review Drug Discovery2012;11:847-859)に記載される通りであるか、又はコード核酸配列は配列番号4(GenBankアクセッション番号NM_012433、バージョンNM_012433.4)に記載される通りである。
【0060】
いくつかの実施形態では、SF3B1変異は、配列番号3に記載のヒト野生型SF3B1タンパク質のアミノ酸配列、又は配列番号4に記載のコード核酸配列とは異なるSF3B1配列として、タンパク質又は核酸レベルで決定される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のSF3B1変異は、点変異(例えば、ミスセンス変異又はナンセンス変異)、挿入、及び/又は欠失を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のSF3B1変異は、体細胞変異を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のSF3B1変異は、ヘテロ接合変異又はホモ接合変異を含む。例示的なSF3B1変異としては、SF3B1のE622位、H662位、K666位、K700位、R625位、又はV701位の1つ又は複数における変異が挙げられる。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、SF3B1のH662位、K700位又はR625位の1つ又は複数の変異を含むか又はその変異からなる。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、SF3B1のK700位に変異を含むか又はその変異からなる。いくつかの実施形態では、K700位における変異はK700Eである。いくつかの実施形態では、R625位における変異は、R625Cである。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、K700E及び/又はR625Cを含む。
【0061】
スプライソソームタンパク質における変異、例えば、SF3B1、SRSF2、U2AF1、及び/又はZRSR2における1つ又は複数の変異(例えば、SF3B1における1つ又は複数の変異)の検出は、当該技術分野で知られる任意の方法を使用して、タンパク質又は核酸レベルで決定することができる。
核酸又はそのコードされたタンパク質の検出、定量、及び配列決定を行うための様々な方法があり、それぞれが、本明細書に開示される実施形態における変異(例えば、SF3B1変異)の検出に適合され得る。例示的な方法としては、インサイチューハイブリダイゼーション、マイクロアレイ、核酸シーケンシング、リアルタイムPCR(RT-PCR)を含むPCRをベースとした方法、全エクソームシーケンシング、一塩基多型分析、ディープシーケンシング、標的遺伝子シーケンシング、又はこれらの任意の組み合わせなどの核酸を定量するためのアッセイが挙げられる。いくつかの実施形態では、前述の手法及び手順は、例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y(2000))に記載されている方法に従って行われる。
【0062】
「骨髄異形成症候群」又は「MDS」という用語は、本明細書で使用される場合、形成不良の血液細胞又は適切に機能しない血液細胞によって引き起こされる血液障害を指す。MDSは、効果のない血液細胞生成、進行性の血球減少、急性白血病又は形態障害を伴う細胞骨髄への進行のリスク、及び成熟(骨髄造血不全)のうちの1つ又は複数を特徴とし得る。MDSにしばしば関連する症状としては、以下に限定されないが、貧血、血小板減少症、好中球減少症、血球減少症、二血球減少症(2つの欠損細胞型)、及び汎血球減少症(3つの欠損細胞型)が挙げられる。
【0063】
「MDS患者」という用語は、本明細書で使用される場合、世界保健機関(World Health Organization)(WHO)2008分類(Vardiman et al.Blood2009;114(5):937-951に概説されている)によりMDSと診断された患者を指す。いくつかの実施形態では、診断は、身体検査及び/又は1つ以上の診断テストを使用して行われるか又は確認される。MDSを診断するために使用される例示的なテストは、本明細書に記載されており、血液検査、末梢(循環)血液スメア、骨髄穿刺及び生検、分子検査、細胞遺伝学的(染色体)分析、並びに免疫表現型検査が挙げられる。MDS患者は、輸血依存性又は輸血非依存性であり得る。
【0064】
MDSは、関与する血液細胞のタイプ(例えば、赤血球、白血球、血小板)に基づいてサブタイプに分けることができる。MDSのサブタイプ、例えば、WHO2008分類によるサブタイプは、本明細書に記載され、以下を含む:単一系統に異形成を有するMDS(MDS-SLD)、多系統に異形成を有するMDS(MDS-MLD)、環状鉄芽球を伴うMDS(MDS-RS)、芽球増加を伴うMDS(MDS-EB)、単独5番染色体長腕欠失を伴うMDS、及び分類不能型MDS(MDS-U)。
【0065】
単一系統に異形成を伴うMDS(MDS-SLD)は、単一血球系統の異形成を伴う不応性血球減少症(RCUD)、不応性貧血(RA)、不応性好中球減少症(RN)、及び/若しくは不応性血小板減少症(RT)を含み、且つ/又はそれと呼ばれ得る。MDS-SLDは、典型的には、1つの血液細胞型(例えば、赤血球、白血球、血小板)が少数で、且つ顕微鏡下で異常に見えることを伴う。いくつかの実施形態では、MDS-SLDの血液所見には、一血球減少症又は二血球減少症、及びないか又は稀な芽球(<1%)の1つ以上が含まれる。二血球減少症が時折観察されることがあるが、汎血球減少症の症例は一般にMDS-Uに分類される。いくつかの実施形態では、MDS-SLDの骨髄所見には、以下の1つ以上が含まれる:単一血球系統の異形成、罹患系統の細胞の≧10%が異形成である、<5%の芽球、及び環状鉄芽球は赤血球前駆体の<15%である。
【0066】
多系統に異形成を有するMDS(MDS-MLD)は、多血球系異形成を伴う不応性血球減少症(RCMD)を含み、且つ/又はそれと呼ばれ得る。MDS-MLDは、典型的には、2つ又は3つの血液細胞型が異常であることを伴う。いくつかの実施形態では、MDS-MLDの血液所見には、以下の1つ以上が含まれる:血球減少症、ないか又は稀な芽球(<1%)、アウエル小体なし、及び<1×10個/リットルの単球。いくつかの実施形態では、MDS-MLDの骨髄所見には、以下の1つ以上が含まれる:2つ以上の骨髄系統(例えば、好中球及び/又は赤血球の前駆体及び/又は巨核球)の≧10%の細胞の異形成、<5%の芽球、アウエル小体なし、及び<15%の環状鉄芽球。
【0067】
環状鉄芽球を伴うMDS(MDS-RS)は、環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS)を含み、且つ/又はそれと呼ばれ得る。MDS-RSは、典型的には、少数の1つ以上の血液細胞型を伴う。MDS-RSの特徴は、骨髄中に存在する赤血球が環鉄芽球と呼ばれる過剰な鉄の環をしばしば含むことである。一般に、鉄芽球の少なくとも15%は環状鉄芽球である。いくつかの実施形態では、MDS-RSの血液所見には、以下の1つ以上が含まれる:貧血及び芽球なし。いくつかの実施形態では、MDS-RSの骨髄所見には、以下の1つ以上が含まれる:赤血球異形成のみ、及びの赤血球前駆体の≧15%が環状鉄芽球である。
【0068】
芽球増加を伴うMDS(MDS-EB)は、少なくとも2つのタイプを有する。1型(MDS-EB1)及び2型(MDS-EB2)の両方において、3種類の血液細胞、すなわち赤血球、白血球、又は、血小板は、いずれも少数で、且つ顕微鏡下で異常に見えることがある。非常に未熟な血液細胞(芽球)は、血液及び骨髄中にしばしば見出される。
【0069】
MDS-EB1は、芽球増加を伴う不応性貧血-1(RAEB-1)を含み、且つ/又はそれと称され得る。いくつかの実施形態では、MDS-EB1の血液所見には、以下の1つ以上が含まれる:血球減少症、<5%の芽球、アウエル小体なし、及び<1×10個/リットルの単球うちの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、MDS-EB1の骨髄所見には、以下の1つ以上が含まれる:単一血球系統又は多血球系統の異形成、5~9%の芽球、及びアウエル小体なし。いくつかの実施形態では、MDS-EB1において、芽球は骨髄中の細胞の5~9%、又は血液中の細胞の2~4%を構成する。いくつかの実施形態では、骨髄芽球の割合が<5%であるが、血液中に2~4%の骨髄芽球が存在する場合、MDSはMDS-EB1として分類され;しかし、骨髄芽球の割合が<5%未満であって、血液中に1%の骨髄芽球が存在する場合、MDSはMDS-Uとして分類される。
【0070】
MDS-EB2は、芽球増加を伴う不応性貧血-2(RAEB-2)を含み、且つ/又はそれと称され得る。いくつかの実施形態では、MDS-EB2の血液所見には、以下の1つ以上が含まれる:血球減少症、5~19%の芽球、アウエル小体、及び<1×10個/リットルの単球。いくつかの実施形態では、MDS-EB2の骨髄所見には、以下の1つ以上が含まれる:単一血球系統又は多血球系統の異形成、10~19%の芽球、及びアウエル小体。いくつかの実施形態では、MDS-EB2において、芽球は骨髄中の細胞の10~19%、及び/又は血液中の細胞の5~19%を構成する。血液中にアウエル小体を含み、血液中の骨髄芽球が5%未満、骨髄中の骨髄芽球が10%未満である症例は、一般に、MDS-EB2として分類される。
【0071】
単独5番染色体長腕欠失を伴うMDSは、典型的には、少数の赤血球、及びそれらのDNAに特定の変異(例えば、del(5q31-33)細胞遺伝学的異常)を有する細胞を伴う。いくつかの実施形態では、単独5番染色体長腕欠失を伴うMDSの血液所見に、以下の1つ以上が含まれる:貧血、通常は正常又は増加した血小板数、及びないか又は稀な芽球(<1%)。いくつかの実施形態では、単独5番染色体長腕欠失を伴うMDSの血液所見に、以下の1つ以上が含まれる:核が欠落した巨核球の増加、<5%の芽球、単独del(5q)細胞遺伝学的異常、及びアウエル小体なし。
【0072】
分類不能型MDS(MDS-U)は、典型的には、3つのタイプの成熟血液細胞のうちの1つの数の減少を伴い、且つ白血球又は血小板が顕微鏡下で異常に見える。いくつかの実施形態では、MDS-Uの血液所見に、以下の1つ以上が含まれる:血球減少症及び≦1%の芽球。いくつかの実施形態では、MDS-Uの骨髄所見に、以下の1つ以上が含まれる:1つ以上の骨髄細胞株<5%芽球における細胞の10%未満における明らかな異形成。
【0073】
MDS患者に一般的に使用される臨床予後判定ツールは、国際予後判定システム(IPSS)である(Greenberg et al.Blood.1997;89:2079-2088)である。このシステムでは、3つの基準、すなわち、骨髄芽球の割合、末梢血血球減少症の数、及び細胞遺伝学的リスクの分類に基づいてポイントをスコア化する。合計ポイントスコアに基づいて、患者は、転帰が有意に異なる次の4つのリスクカテゴリーのうちの1つに割り当てられる:低リスク(LR)、中間-1(INT-1)、中間-2(INT-2)、及び高リスク(HR)。いくつかの実施形態では、MDS患者がIPSS基準により評価及び/又は分類される。
【0074】
改定国際予後判定システム(IPSS-R)は、MDS患者のリスク層別化及び予後判定のための別の例示的な基準である(Greenberg et al.Blood.2012;120(12):2454-2465)。IPSS-Rは臨床的特徴に基づいて患者を区別し、それらを5つの定義されたリスク群:非常に低い、低い、中間、高い、及び非常に高い、に分類する。IPSS-Rは、骨髄芽球の割合、細胞遺伝学、ヘモグロビンレベル、好中球絶対数(ANC)、及び血小板数に基づいて疾患をスコア化する。いくつかの実施形態では、MDS患者がIPSS基準により評価及び/又は分類される。
【0075】
患者が、IPSS基準により中間-2リスク以上のMDSとして、又はIPSS-R基準により高リスク若しくは非常に高リスクのMDSとして分類される場合、患者は「高リスクMDS」を有すると称され得る。いくつかの実施形態では、高リスクのMDS患者は、約5%以上のバリアントアレル頻度でSF3B1変異(例えば、SF3B1ミスセンス変異)を有する。いくつかの実施形態では、高リスクのMDS患者は、低メチル化剤(HMA)に対して不耐性である。いくつかの実施形態では、高リスクのMDS患者は、HMAの開始後に疾患状態が進行及び/又は悪化する。いくつかの実施形態では、高リスクのMDS患者は、デシタビンの約4治療サイクル及び/又はアザシチジンの約6治療サイクルに反応しない。
【0076】
患者が、IPSS基準により中間-1リスク以下のMDSとして、又はIPSS-R基準により中間リスク、低リスク若しくは非常に低リスクのMDSとして分類される場合、患者は「低リスクMDS」を有すると称され得る。いくつかの実施形態では、低リスクのMDS患者は、約5%以上のバリアントアレル頻度でSF3B1変異(例えば、SF3B1ミスセンス変異)を有する。いくつかの実施形態では、低リスクのMDS患者は、約500個/μL(0.5×10個/L)以上の絶対好中球数(ANC)を有する。いくつかの実施形態では、低リスクのMDS患者は、血小板数が約50,000個/μL(50×10個/L)未満である。
【0077】
いくつかの実施形態では、低リスクのMDS患者は、赤血球(RBC)及び/又は血小板に対し輸血依存性である。いくつかの実施形態では、低リスクのMDS患者は、国際ワーキンググループ(IWG)2006のMDS応答基準によれば、RBC輸血依存性である(Cheson et al.Blood.2006;108:419-425)。いくつかの実施形態では、RBC輸血依存性である低リスクMDS患者は、化合物1の初回投与前、ヘモグロビン(Hb)が<9g/dLの場合、その8週間以内に少なくとも4UのRBCを輸血されている。いくつかの実施形態では、RBC輸血依存性である低リスク患者は、赤血球生成刺激剤(ESA)による治療に失敗(一次耐性又は応答後の再発)し、且つ/又は血清エリスロポエチン(EPO)レベルが>500U/Lである。
【0078】
「輸血依存」又は「輸血依存性」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の期間(例えば、約56連続日(約8週間))に患者が1回以上の輸血(例えば、赤血球(RBC)、血小板、又はその両方)を継続的に必要とするような赤血球の生成が減少したときに通常生じる重度の貧血の状態を指す。患者が少なくとも56連続日の期間内に1回以上の輸血を必要とする場合、その患者は輸血依存性であるとみなされ得る。いくつかの実施形態では、患者は、化合物1による治療の前に輸血依存性である。いくつかの実施形態では、患者は、赤血球(RBC)、血小板、又はその両方に対して輸血依存性である。いくつかの実施形態では、患者はRBCに対して輸血依存性である。いくつかの実施形態では、輸血依存性患者は、化合物1による治療の初回投与前に、ヘモグロビン(Hb)が<9g/dL未満の56連続日(8週間)の間に少なくとも4UのRBCを輸血されている。いくつかの実施形態では、輸血依存性患者は、赤血球生成刺激剤(ESA)による治療に失敗している。いくつかの実施形態では、輸血依存性患者は、>500U/Lの血清エリスロポエチンレベルを有する。いくつかの実施形態では、輸血依存性患者は、約56連続日(約8週間)の間、輸血を受けない状態で、50×10個/Lを超える血小板数を有する。
【0079】
「輸血非依存」又は「輸血非依存性」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の期間(例えば、約56連続日(約8週間))に患者が輸血の回数若しくは頻度を減少させるか、又は輸血をもはや必要としない状態を指す。患者が化合物1による治療の間、少なくとも56連続日の任意の期間(例えば、1日目~56日目、2日目~57日目、3日目~58日目など)、輸血を必要としないか、又は輸血を受けない場合、その患者は輸血非依存性とみなされ得る。いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも14週間、少なくとも16週間、又はそれ以上、輸血非依存性である。いくつかの実施形態では、患者は、赤血球(RBC)、血小板、又はその両方に対して輸血非依存性である。いくつかの実施形態では、患者はRBCに対して輸血非依存性である。
【0080】
いくつかの実施形態では、輸血非依存性は、例えば、NCT00065156と同様に定義及び/又は評価される。NCT00065156(「欠失(Del)(5q)細胞遺伝学的異常と関連する骨髄異形成症候群(MDS)におけるレナリドマイドの安全性/有効性」)においては、輸血非依存性は、患者に輸血が行われず、患者のヘモグロビン濃度が1デシリットル当たり少なくとも1g上昇する少なくとも56連続日の期間として定義され、やや有効は、輸血の回数がベースライン時の要求と比較して少なくとも50%低下として定義され、輸血をもはや必要としない患者のヘモグロビン濃度の上昇は、治療前の56日間(8週間)の最大ヘモグロビン濃度と最小輸血前値との間の差として計算された。
【0081】
治療方法及び使用
いくつかの実施形態において、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療するための方法及び新規のバイオマーカーの使用を提供する。より具体的には、いくつかの実施形態において、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、高TMEM14C AJ/CJ比を有する輸血依存性MDS患者に治療有効量の化合物1を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、対照(例えば、MDSを有さない対照対象)と比較して高レベルのTMEM14C異常ジャンクション転写物(TMEM14C AJ)を有する輸血依存性MDS患者に治療有効量の化合物1を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療するためのバイオマーカーとしてのTMEM14C AJ/CJ比の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療するための薬剤の製造におけるバイオマーカーとしてのTMEM14C AJ/CJ比の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療するためのバイオマーカーとして使用するためのTMEM14C AJ/CJ比を提供する。いくつかの実施形態では、治療するステップは、高TMEM14C AJ/CJ比を有する輸血依存性MDS患者に治療有効量の化合物1を投与することを含む。いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料は、低レベルのTMEM14C発現を有する。いくつかの実施形態では、化合物1は、患者のTMEM14C異常スプライシングを低減又は阻害する。
【0082】
いくつかの実施形態において、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、(a)輸血依存性のMDS患者が、高TMEM14C AJ/CJ比を有することを決定すること、及び(b)その患者に治療有効量の化合物1を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、MDS患者における輸血依存を治療する方法であって、(a)輸血依存性MDS患者が、対照(例えば、MDSを有さない対照対象)と比較して高レベルのTMEM14C異常ジャンクション転写物(TMEM14C AJ)を有することを決定すること、及び(b)その患者に治療有効量の化合物1を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療する方法であって、(a)輸血依存性のMDS患者を、その患者が高TMEM14C AJ/CJ比を有することを決定することによって治療対象として選択すること、及び(b)その患者に治療有効量の化合物1を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、MDS患者における輸血依存を治療するためのバイオマーカーとしてのTMEM14C AJ/CJ比の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、MDS患者における輸血依存を治療するための薬剤の製造におけるバイオマーカーとしてのTMEM14C AJ/CJ比の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、MDS患者の輸血依存を治療するためのバイオマーカーとして使用するためのTMEM14C AJ/CJ比を提供する。いくつかの実施形態では、治療するステップは、(a)輸血依存性MDS患者が高TMEM14C AJ/CJ比を有することを決定すること、及び(b)その患者に治療有効量の化合物1を投与することを含む。いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料は、低レベルのTMEM14C発現を有する。いくつかの実施形態では、化合物1は、患者のTMEM14C異常スプライシングを低減又は阻害する。
【0083】
いくつかの実施形態において、本開示はまた、化合物1による治療に適したMDS患者を特定する方法、及び/又はMDS患者における治療効果を予測又はモニタリングする方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、化合物1による治療に適した輸血依存性MDS患者を特定する方法であって、(a)患者が高TMEM14C AJ/CJ比を有することを決定すること、及び(b)その患者を化合物1による治療に適していると特定することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、化合物1による治療に適した輸血依存性MDS患者を特定するためのバイオマーカーとしてのTMEM14C AJ/CJ比の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、化合物1による治療に適した輸血依存性MDS患者を特定するための組成物の製造におけるバイオマーカーとしてのTMEM14C AJ/CJ比の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、化合物1による治療に適した輸血依存性MDS患者を特定するためのバイオマーカーとして使用するためのTMEM14C AJ/CJ比を提供する。いくつかの実施形態では、特定するステップは、(a)患者が高TMEM14C AJ/CJ比を有することを決定すること、及び(b)その患者を化合物1による治療に適していると特定することを含む。いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料は、低レベルのTMEM14C発現を有する。いくつかの実施形態では、化合物1は、患者のTMEM14C異常スプライシングを低減又は阻害する。
【0084】
いくつかの実施形態において、本開示は、輸血依存性MDS患者における治療効果をモニタリングする方法であって、(a)患者が高TMEM14C AJ/CJ比を有することを決定すること、(b)その患者に治療有効量の化合物1を投与すること、及び(c)投与後の患者のTMEM14C AJ/CJ比を決定することを含み、投与後のTMEM14C AJ/CJ比の低下が治療の有効性を示す方法を提供する。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比がステップ(c)後も高いままであり、方法は、患者に追加用量の化合物1を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、TMEM14C AJ/CJ比がもはや上昇しなくなるまで、患者に追加用量の化合物1を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本開示は、輸血依存性MDS患者における治療有効性をモニタリングするためのバイオマーカーとしてのTMEM14C AJ/CJ比の使用を提供する。いくつかの実施形態において、輸血依存性MDS患者における治療有効性をモニタリングするための組成物の製造におけるバイオマーカーとしてのTMEM14C AJ/CJ比の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、輸血依存性MDS患者における治療有効性をモニタリングするためのバイオマーカーとして使用するためのTMEM14C AJ/CJ比を提供する。いくつかの実施形態では、モニタリングするステップは、(a)患者が高TMEM14C AJ/CJ比を有することを決定すること;(b)その患者に治療有効量の化合物1を投与すること;及び(c)投与後の患者のTMEM14C AJ/CJ比を決定することを含み、投与後のTMEM14C AJ/CJ比の低下が治療の有効性を示す。いくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比がステップ(c)後も高いままであり、モニタリングするステップは、患者に追加用量の化合物1を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、モニタリングするステップは、TMEM14C AJ/CJ比がもはや上昇しなくなるまで、患者に追加用量の化合物1を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料は、低レベルのTMEM14C発現を有する。いくつかの実施形態では、化合物1は、患者のTMEM14C異常スプライシングを低減又は阻害する。
【0085】
本明細書に開示される方法及び使用のいくつかの実施形態においては、MDS患者は、WHO2008分類(Vardiman et al.Blood 2009;114(5):937-951に概説されている)によりMDSと診断された患者である。いくつかの実施形態では、MDSは、多系統に異形成を有するMDS(MDS-MLD)、単一系統に異形成を伴うMDS(MDS-SLD)、環状鉄芽球を伴うMDS(MDS-RS)、芽球増加を伴うMDS(MDS-EB)、単独5番染色体長腕欠失を伴うMDS、又は分類不能型MDS(MDS-U)である。いくつかの実施形態では、MDSは、国際予後判定システムによる中間1リスク以下のMDSである。いくつかの実施形態では、MDSは、国際予後判定システムによる中間-2リスク以上のMDSである。いくつかの実施形態では、MDSは、MDS-MLDである。いくつかの実施形態では、MDSは、MDS-EBである。いくつかの実施形態では、MDS-EBは、MDS-EB1又はMDS-EB2である。いくつかの実施形態では、MDSは、MDS-EB2である。
【0086】
いくつかの実施形態では、MDSは、低リスクMDS、すなわちIPSS基準による中間1リスク以下である。いくつかの実施形態では、低リスクのMDS患者は、約5%以上のバリアントアレル頻度でSF3B1変異(例えば、SF3B1ミスセンス変異)を有する。いくつかの実施形態では、低リスクのMDS患者は、約500個/μL(0.5×10個/L)以上の絶対好中球数(ANC)を有する。いくつかの実施形態では、低リスクのMDS患者は、血小板数が約50,000個/μL(50×10個/L)未満である。
【0087】
いくつかの実施形態では、低リスクのMDS患者は、赤血球(RBC)及び/又は血小板に対し輸血依存性である。いくつかの実施形態では、低リスクのMDS患者は、IWG2006のMDS応答基準によれば、RBC輸血依存性である(Cheson et al.Blood.2006;108:419-425)。いくつかの実施形態では、RBC輸血依存性である低リスクMDS患者は、化合物1の初回投与前の約6~約10週間以内(例えば、約8週間以内)に、少なくとも約4UのRBC(例えば、4U、6U、8U、10U、又はそれ以上のRBC)を輸血されている。いくつかの実施形態では、少なくとも約4UのRBCは、約9g/dL未満(例えば、9g/dL、8g/dL、7g/dL、6g/dL、又はそれ以下)のヘモグロビン(Hb)に対するものである。いくつかの実施形態では、RBC輸血依存性である低リスクMDS患者は、化合物1の初回投与前、ヘモグロビン(Hb)が<9g/dLの場合、その8週間以内に少なくとも4UのRBCを輸血されている。いくつかの実施形態では、RBC輸血依存性である低リスク患者は、赤血球生成刺激剤(ESA)に失敗(一次耐性又は応答後の再発)し、且つ/又は血清エリスロポエチン(EPO)レベルが>500U/Lである。
【0088】
いくつかの実施形態では、MDSの診断は、身体検査及び/又は1つ以上の診断テストを使用して行われるか又は確認される。MDSを診断するために使用される例示的なテストとしては、血液検査、末梢(循環)血液スメア、骨髄穿刺及び生検、分子検査、細胞遺伝学的(染色体)分析、並びに免疫表現型検査が挙げられる。
【0089】
いくつかの実施形態では、MDS患者は、血液検査を単独で、又は1つ以上の追加の診断検査と組み合わせて使用して、MDSと診断されている。全血球計算(CBC)は、赤血球、白血球、及び血小板の数を測定することができる。血液検査は、低レベルのビタミンB12、葉酸、銅、及び甲状腺疾患などのMDSに似た症状を引き起こす可能性のある他の病態を除外するために行われることもある。
【0090】
いくつかの実施形態では、MDS患者は、末梢(循環)血液スメア検査を単独で、又は1つ以上の追加の診断検査と組み合わせて使用して、MDSと診断されている。いくつかの実施形態では、一滴の血液をスライド上に置き、薄膜に塗抹し、検査のために顕微鏡下に置き、異なる細胞型の数及び/又は割合を計数する。顕微鏡下の細胞の外観(すなわち、細胞形態)もまた、細胞が健康な細胞と異なるかどうか、又はどのように異なるかを特定するために観察され得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、MDS患者は、骨髄穿刺及び/又は生検を単独で、又は1つ以上の追加の診断検査と組み合わせて使用して、MDSと診断されている。これらの2つの手順は類似しており、骨髄を検査するために同時に行われることが多い。骨髄は、固体部分と液体部分の両方を有する。骨髄穿刺は、針で液体試料を採取する。骨髄生検は、針を用いて少量の固形組織を採取する方法である。いくつかの実施形態では、その後、試料を分析して、赤血球、白血球、血小板、及び/又は芽球の割合を決定する。一般に、骨髄組織の外観が、血球数及び染色体分析と共に、MDSの診断を確認するために使用され得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、MDS患者は、分子検査を単独で、又は1つ以上の追加の診断検査と組み合わせて使用して、MDSと診断されている。MDSに特有の特定の遺伝子、タンパク質、及び/又は他の因子を特定するために、臨床検査(例えば、骨髄試料について)が実施され得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、MDS患者は、細胞遺伝学的(染色体)分析を単独で、又は1つ以上の追加の診断検査と組み合わせて使用して、MDSと診断されている。血液及び/又は骨髄中の細胞の染色体は、MDSを特定し、MDSを他の血液障害と区別するのに役立つ特定の異常を示し得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、MDS患者は、免疫表現型検査を単独で、又は1つ以上の追加の診断テストと組み合わせて使用して、MDSと診断されている。免疫表現型検査は、細胞の表面の特定のタイプのタンパク質である抗原の検査である。免疫表現型検査は、MDSのタイプを特定するのに役立ち得る。
【0095】
本明細書に開示される方法及び使用の様々な実施形態において、MDSと診断されたMDS患者は、スプライソソームタンパク質における1つ又は複数の変異、例えば、SF3B1、SRSF2、U2AF1、及び/又はZRSR2における1つ又は複数の変異(例えば、SF3B1における1つ又は複数の変異)の有無をさらに評価される。いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料は、RNAスプライシングに関連する1つ又は複数の遺伝子に変異を含む。いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料は、SF3B1、SRSF2、U2AF1、及びZRSR2から選択される1つ又は複数の遺伝子に変異を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料(例えば、血液試料、骨髄試料、及び/又は尿試料)は、SF3B1に変異を含む。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、SF3B1のE622位、H662位、K666位、K700位、R625位又はV701位の1つ又は複数に変異を含むか、又はその変異からなる。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、SF3B1のH662位、K700位又はR625位の1つ又は複数に変異を含むか、又はその変異からなる。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、SF3B1のK700位に変異を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、K700位における変異はK700Eである。いくつかの実施形態では、R625位における変異は、R625Cである。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、SF3B1におけるK700E、R625C、及び/又は少なくとも1つのさらなる変異(例えば、少なくとも1つの他のHEATドメイン変異)を含むか、又はそれからなる。
【0097】
いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料(例えば、血液試料、骨髄試料、及び/又は尿試料)は、SRSF2に変異を含む。いくつかの実施形態では、SRSF2における変異は、SRSF2におけるP95H、P95L、P95_R102del、及び/又は少なくとも1つのさらなる変異を含むか、又はそれからなる。
【0098】
いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料(例えば、血液試料、骨髄試料、及び/又は尿試料)は、U2AF1に変異を含む。いくつかの実施形態において、U2AF1における変異は、U2AF1におけるQ157P、S34F、及び/又は少なくとも1つのさらなる変異(例えば、少なくとも1つの他のホットスポット変異)を含むか、又はそれからなる。
【0099】
いくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料(例えば、血液試料、骨髄試料、及び/又は尿試料)は、ZRSR2に変異を含む。いくつかの実施形態において、ZRSR2における変異は、ZRSR2における少なくとも1つのトランケート型又はナンセンス変異を含むか、又はそれからなる。
【0100】
スプライソソームタンパク質(例えば、上記で特定されたもの)における変異を検出するための例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0101】
本明細書に開示される方法及び使用の様々な実施形態において、MDS患者のTMEM14C AJ/CJ比(例えば、高TMEM14C AJ/CJ比)を決定するステップには、患者から生体試料を得ること、及びその試料中のTMEM14C AJ/CJ比を決定することが含まれる。いくつかの実施形態では、生体試料は、血液試料を含む。いくつかの実施形態では、生体試料は、骨髄試料を含む。いくつかの実施形態では、生体試料が尿試料を含む。
【0102】
試料は、様々な生体源から得ることができる。例示的な生体試料としては、血液又は血液画分、血漿、唾液、血清、痰、尿、脳脊髄液、1つ又は複数の細胞、細胞培養物、細胞株、細胞抽出物、器官、小器官、組織試料、組織生検、皮膚試料、骨髄試料、糞便試料などが挙げられるが、これらに限定されない。血液試料は、全血、部分的に精製された血液、及び/又は末梢血単核細胞(PBMC)若しくは血漿などの全血若しくは部分的に精製された血液の画分であり得る。骨髄試料は、骨髄穿刺液及び/又は骨髄生検であり得る。試料は、患者から直接得られてもよく、生体液又は組織試料に由来する培養細胞などの患者から得られた細胞に由来してもよい。試料はまた、凍結保存試料などの保管試料であってもよい。
【0103】
生体試料は、本明細書に開示される方法又は使用のいずれにおいても使用され得る。いくつかの実施形態では、生体試料は、MDSを有するか、又はMDSを有することが疑われる患者、例えば、MDSと診断され、且つSF3B1変異を有することが確認された患者から得られる。いくつかの実施形態では、生体試料は血液試料又は骨髄試料を含む。いくつかの実施形態では、血液試料は末梢血又は血漿を含む。いくつかの実施形態では、骨髄試料は骨髄穿刺液又は骨髄生検を含む。いくつかの実施形態では、生体試料が尿試料を含む。
【0104】
本明細書に開示される方法及び使用のいくつかの実施形態では、患者又は患者からの生体試料は、高TMEM14C AJ/CJ比、すなわち、例えば核酸バーコーディングによる測定で、約0.1を超える(例えば、約0.1、約0.2、約0.5、約1、約2、約4、約10、約15、約20又は約30を超える)を超えるTMEM14C AJ/CJ比を含む。いくつかの実施形態では、高TMEM14C AJ/CJ比は、核酸バーコーディングによる測定で、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又はそれ以上を超える。いくつかの実施形態では、高TMEM14C AJ/CJ比は、核酸バーコーディングによる測定で、約1、2、3、4、5、6、7、8、9又はそれ以上を超える。いくつかの実施形態では、高TMEM14C AJ/CJ比は、核酸バーコーディングによる測定で、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又はそれ以上を超える。いくつかの実施形態では、高TMEM14C AJ/CJ比は、核酸バーコーディングによる測定で、約20、25、30、35又はそれ以上(例えば、約40、45、50又はそれ以上)を超える。いくつかの実施形態では、高TMEM14C AJ/CJ比は、核酸バーコーディングによる測定で、約4を超える比である。
【0105】
スプライスバリアントの検出
本明細書に記載の方法及び使用の特定の実施形態は、スプライスバリアントの検出及び/又は定量化を含む。核酸を検出及び定量するための様々な方法があり、それぞれが、記載される実施形態におけるスプライスバリアントの検出に適合し得る。例示的な方法としては、核酸バーコーディング、ナノ粒子プローブ、インサイチューハイブリダイゼーション、マイクロアレイ、核酸シーケンシング、及びPCRをベースとした方法、例えば、リアルタイムPCR(RT-PCR)などの核酸を定量するためのアッセイが含まれる。
【0106】
本明細書に開示される方法及び使用のいくつかの実施形態では、TMEM14C AJ/CJ比は、患者又は患者からの生体試料中のRNA転写物を測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、RNA転写物を測定するステップは、核酸バーコーディング及び/又はRT-PCRを含む。いくつかの実施形態では、RNA転写物を測定するステップは、核酸バーコーディングを含む。
【0107】
NanoString(登録商標)アッセイ(NanoString Technologies)などのバーコーディング技術を利用する核酸アッセイは、例えば、米国特許第8,519,115号明細書;米国特許第7,919,237号明細書;及びKulkarni(Current Protocols in Molecular Biology,2011;94:25B.10.1-25B.10.17)に記載されていように実施することができる。例示的なアッセイでは、目的の特定のスプライスバリアントなどの目的の特定のヌクレオチド配列を検出するために、一対のプローブが使用される。プローブ対は、標的配列に特異的な約35~50塩基長の配列をそれぞれ含む捕捉プローブ及びレポータープローブから構成される。捕捉プローブは、デジタル検出のために標的mRNAの表面付着のための分子ハンドルを提供するビオチンなどのアフィニティ標識をその3’末端に含み、レポータープローブは、ハイブリダイズしたmRNA標的配列の分子バーコードを提供する特有のカラーコードをその5’末端に含む。捕捉及びレポータープローブ対を溶液中で標的mRNAにハイブリダイズさせ、過剰なプローブを除去した後、標的mRNA-プローブ複合体をnCounter(登録商標)カートリッジ中に固定化する。デジタル分析器は、特定のmRNAスプライスバリアント配列に対応するカラーコードを検出するために、カートリッジの表面の直接画像を取得する。特定のスプライスバリアントについて色分けされたバーコードが検出される回数は、mRNAライブラリー中の特定のスプライスバリアントのレベルを反映する。スプライスバリアントの検出のために、捕捉プローブ又はレポータープローブは、所与のスプライスバリアントのエクソン-エクソン又はイントロン-エクソンジャンクションに及んでもよい。他の実施形態では、捕捉プローブ及びレポータープローブの標的配列の一方又は両方が、エクソン-エクソンジャンクションにおける2つのエクソンの末端配列、又はイントロン-エクソンジャンクションにおけるイントロン及びエクソンの末端配列に対応し、一方のプローブはエクソン-エクソンジャンクション又はイントロン-エクソンジャンクションに伸長するが、ジャンクションには及ばず、他方のプローブはジャンクションの反対側で始まり、それぞれのエクソン又はイントロンに伸長する配列に結合する。
【0108】
例示的なPCRをベースとした方法においては、特定のスプライスバリアントは、スプライスバリアントを含む配列を特異的に増幅することによって検出され得る。例えば、本方法は、スプライスバリアントの第1の部分にハイブリダイズするように特別に設計された第1のプライマーを使用することができ、ここで、スプライスバリアントは、選択的スプライシングが起こるエクソン-エクソンジャンクション又はイントロン-エクソンジャンクションに及ぶ配列である。本方法は、遺伝子中の別の配列、例えば上流又は下流に位置する配列に対応する第1のプライマーのPCR伸長産物のセグメントにハイブリダイズする第2の対向プライマーをさらに使用してもよい。PCR検出方法は、定量的(又はリアルタイム)PCRであり得る。定量的PCRのいくつかの実施形態では、増幅されたPCR産物が核酸プローブを使用して検出され、プローブは1つ又は複数の検出可能な標識を含み得る。特定の定量的PCR法においては、目的のスプライスバリアントの量は、スプライスバリアントのレベルを検出し、適切な内部対照と比較することによって決定される。
【0109】
RNAscope(登録商標)(Advanced Cell Diagnostics)などのインサイチューハイブリダイゼーションアッセイを使用してスプライスバリアントを検出するための例示的な方法には、Wang et al.(J Mol Diagn.2012;14(1):22-29)に記載されている方法が挙げられる。RNAscope(登録商標)アッセイを使用して、所与のスプライスバリアントを標的とする1対のプローブを設計し、これらのプローブを固定した透過性細胞中の標的RNAにハイブリダイズさせることによって、スプライスバリアントを検出することができる。標的プローブは、標的配列にハイブリダイズすると、前増幅核酸のための結合部位を作り出す対としてハイブリダイズするように設計される。前増幅核酸は、次に、増幅核酸のための複数の結合部位を有し、これは、次に、発色性又は蛍光性分子を有する標識プローブのための複数の結合部位を含む。いくつかの実施形態では、RNAscope(登録商標)標的プローブの1つは、所与のスプライスバリアントのエクソン-エクソンジャンクション又はイントロン-エクソンジャンクションに及ぶ。他の実施形態では、標的プローブの標的配列は、エクソン-エクソンジャンクションにおける2つのエクソンの末端配列、又はイントロン-エクソンジャンクションにおけるイントロン及びエクソンの末端配列に対応し、標的プローブ対の一方のプローブはエクソン-エクソンジャンクション又はイントロン-エクソンジャンクションに伸長するが、ジャンクションには及ばず、他方のプローブはジャンクションの反対側で始まり、それぞれのエクソン又はイントロンに伸長する配列に結合する。
【0110】
SmartFlare(商標)(Millipore)などのナノ粒子プローブを使用してスプライスバリアントを検出するための例示的な方法としては、Seferos et al.(J Am Chem Soc.2007;129(50):15477-15479)及びPrigodich et al.(Anal.Chem.2012;84(4):2062-2066)に記載されている方法が挙げられる。SmartFlare(商標)検出プローブを使用して、(1)検出する特定のスプライスバリアントにそれぞれ相補的であり、(2)それぞれ相補的なフルオロフォア標識レポーター核酸にハイブリダイズするヌクレオチド認識配列を含む1つ以上の核酸で修飾された金ナノ粒子を生成することによって、スプライスバリアントを検出することができる。細胞によりプローブが取り込まれると、標的スプライスバリアント配列は1つ以上のヌクレオチド認識配列にハイブリダイズし、フルオロフォア標識レポーター核酸を置換し得る。フルオロフォア標識レポーター核酸は、金ナノ粒子表面に近接するためにフルオロフォアが消光された後、金ナノ粒子から遊離し、ナノ粒子の消光効果がなくなったときにフルオロフォアが検出され得る。いくつかの実施形態では、プローブ中のヌクレオチド認識配列は、所与のスプライスバリアントのエクソン-エクソンジャンクション又はイントロン-エクソンジャンクションに及ぶ配列を認識する。いくつかの実施形態では、プローブ中のヌクレオチド認識配列は、スプライスバリアントのエクソン-エクソンジャンクション又はイントロン-エクソンジャンクションの一方の側のみにある配列、例えば、ジャンクションで終結する配列及びジャンクションから1つ以上離れたヌクレオチドで終結する配列を認識する。
【0111】
核酸シーケンシングを用いてスプライスバリアントを検出するための例示的な方法としては、Ren et al.(Cell Res.2012;22:806-821);及びvan Dijk et al.(Trends Genet.2014;30(9):418-426)に記載されているRNAシーケンシング(RNA-Seq)が挙げられる。いくつかの実施形態では、次世代シーケンシング(NGS)技術などのハイスループットシーケンシングを使用して、スプライスバリアントを検出することができる。例えば、本方法は、RNA-Seqに利用可能な市販のシーケンシングプラットフォーム、例えば、Illumina、SOLID、Ion Torrent、及びRoche454を使用することができる。いくつかの実施形態では、シーケンシング方法には、パイロシーケンシングが含まれ得る。例えば、試料をシーケンシング酵素及びプライマーと混合し、一度に1つの非標識ヌクレオチドの流れに曝露して、相補的DNA鎖の合成を可能にすることができる。ヌクレオチドが組み込まれると、ピロリン酸塩が放出され、発光もたらされ、これがリアルタイムでモニターされる。いくつかの実施形態では、シーケンシング方法には、半導体シーケンシングが含まれ得る。例えば、ピロリン酸の代わりにプロトンがヌクレオチド取り込み中に放出され、イオンセンサによってリアルタイムで検出され得る。いくつかの実施形態では、この方法には、可逆的ターミネーターを用いたシーケンシングが含まれ得る。例えば、合成試薬には、プライマー、DNAポリメラーゼ、及び4つの異なる標識が付された可逆的ターミネーターヌクレオチドが含まれ得る。その色によって同定されるヌクレオチドが取り込まれた後、塩基上の3’ターミネーター及びフルオロフォアが除去され、サイクルが繰り返される。いくつかの実施形態では、この方法には、ライゲーションによるシーケンシングが含まれ得る。例えば、シーケンシングプライマーはアダプターにハイブリダイズされ得、プライマーの5’末端が隣接配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドへのライゲーションに利用可能である。塩基4及び5が4つのカラー標識のうちの1つによってコードされる八量体の混合物は、プライマーへのライゲーションに競合し得る。カラー検出後、ライゲーションされた八量体を5位と6位との間で切断して標識を除去し、このサイクルがされ得る。これによって、第1ラウンドにおいて、プロセスが位置4、5、9、10、14、15などにおける塩基の可能なアイデンティティを決定することができる。シーケンシングプライマー中の最初の塩基に達するまで、より短いシーケンシングプライマーを用いて1塩基ずつオフセットしてこのプロセスを繰り返して、位置3、4、8、9、13、14などを決定することができる。
【0112】
ジャンクションの両側のヌクレオチド配列を特定することによって遺伝子中の所与のエクソン-エクソンジャンクション又はイントロン-エクソンジャンクションのスプライスバリアントも区別する他の核酸検出及び分析方法を利用して、スプライスバリアントを検出又は定量することができる。例えば、エクソン-エクソンジャンクションのスプライスバリアントは、一方のエクソンに結合するプライマーが隣接するエクソンの配列に従ってジャンクションの他方の側のエクソンに伸長するプライマー伸長法によって検出することができる。例えば、McCullough et al.(Nucleic Acids Research,2005;33(11):e99);及びMilani et al.(Clin.Chem.2006;52:202-211)を参照されたい。大規模なバリアントの検出は、例えば、Johnson et al.(Science 2003;302:2141-2144);及びModrek et al.(Nucleic Acids Res.2001;29:2850-2859)に記載されているように、エクソン-エクソンジャンクションプローブ又はイントロン-エクソンジャンクションプローブを担持する発現マイクロアレイを用いて行うことができる。
【0113】
様々な実施形態は、TMEM14Cのスプライスバリアントを検出するための試薬を含む。一例では、試薬に、TMEM14Cの1つ又は複数の異常スプライスバリアント又はカノニカルスプライスバリアントの量を測定するように設計されたNanoString(登録商標)プローブが含まれる。バーコーディング(例えば、NanoString(登録商標))、ナノ粒子プローブ(例えば、SmartFlare(商標))、インサイチューハイブリダイゼーション(例えば、RNAscope(登録商標))、マイクロアレイ、核酸シーケンシング、及びPCRをベースとしたアッセイなどの核酸定量アッセイ用のプローブは、上記のように設計され得る。
【0114】
これらの例示的な方法において、又は核酸検出のための他の方法において、異常スプライスバリアントは、プローブ、プライマー、又は異常スプライスバリアント中に存在するが、標準スプライスバリアント中には存在しない核酸配列を特異的に認識する他の試薬を使用して同定され得る。他の実施形態では、異常スプライスバリアントは、異常スプライスバリアントが生じるジャンクションの文脈において、異常スプライスバリアントに特異的な配列を検出することによって同定される、すなわち、カノニカルスプライスバリアントにおけるスプライスジャンクションの両側に存在する配列が、その特有の配列の両側に隣接する。
このような場合、プローブ、プライマー、又はその標的配列を特異的に認識する他の検出試薬の部分は、異常配列の長さ、又は異常配列若しくはその一部に対応する長さを有し得る。他の実施形態では、プローブ、プライマー、又はその標的配列を特異的に認識する他の検出試薬の部分は、異常配列の長さに、スプライスジャンクションで異常配列に隣接する配列の一方又は両方から選択された数のヌクレオチドの長さを加えた長さに対応する長さを有し得る。一般に、プローブ又はプライマーは、非特異的結合を低減するのに十分な長さで設計されるべきである。異常な又はカノニカルなスプライスバリアントを検出するプローブ、プライマー及び他の試薬は、核酸の検出のための様々な方法の技術的特徴及び形式に従って設計され得る。
【0115】
治療用化合物
本開示の様々な実施形態において、開示される方法及び使用において使用される治療用化合物は、スプライシングモジュレーター、例えば、化合物1、又は同じ患者集団(例えば、輸血依存性MDS患者)の治療で特定された代替薬剤である。いくつかの実施形態では、治療用化合物は、スプライシングモジュレーター、又はTGFβ1モジュレーターなどの代替薬剤である。輸血依存性MDS患者において評価されている例示的なTGFβ1モジュレーターは、ラスパテルセプトである。TGFβスーパーファミリーリガンドに結合する組換え融合タンパク質であるラスパテルセプトは、例えば、Fenaux et al.(N Engl J Med.2020;382(2):140-151)に記載されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
様々な実施形態において、治療用化合物は、スプライシングモジュレーターである。いくつかの実施形態において、スプライシングモジュレーターは、SF3bスプライソソーム複合体のモジュレーターである。このようなモジュレーターは、天然化合物であっても合成化合物であってもよい。スプライシングモジュレーター及びそのようなモジュレーターのカテゴリーの非限定的な例としては、プラジエノリド(例えば、プラジエノリドB又はプラジエノリドD)、プラジエノリド誘導体(例えば、プラジエノリドB又はプラジエノリドD誘導体)、ヘルボキシジエン、ヘルボキシジエン誘導体、スプリセオスタチン、スプリセオスタチン誘導体、スデマイシン、又はスデマイシン誘導体が挙げられる。本明細書で使用される場合、スプライシングモジュレーターなどに言及する場合の「誘導体」及び「類似体」という用語は、元の化合物と実質的に同じであるか、類似しているか、又は増強された生物学的機能又は活性を保持するが、化学的又は生物学的構造は変化している任意のそのような化合物を意味する。
【0117】
様々な実施形態において、スプライシングモジュレーターは、SF3B1モジュレーターを含む。様々なSF3B1調節化合物が当該技術分野において知られており、本明細書に記載の方法及び使用において使用することができる。例示的なSF3B1モジュレーターとしては、化合物1、プラジエノリド(例えば、プラジエノリドB、プラジエノリドD)、プラジエノリド誘導体(例えば、E7107(国際公開第2003/099813号パンフレットの化合物45))、アリールプラジエノリド、アリールプラジエノリド誘導体、ヘルボキシジエン、及びヘルボキシジエン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。SF3B1調節化合物の非限定的な例は、米国特許第9,481,669B2号明細書、国際出願第PCT/US2016/062525号明細書(国際公開第2017/087667号パンフレット)、国際出願第PCT/US2019/026313号明細書(国際公開第2019/199667号パンフレット)、国際出願第PCT/US2019/026992号明細書(国際公開第2019/200100号パンフレット)、国際出願第PCT/US2019/066029号明細書(国際公開第2020/123836号パンフレット)、及び国際出願第PCT/US2019/035015号明細書(国際公開第2019/232449号パンフレット)に開示されており、これらの文献は全て、そのような化合物を開示及び/又は合成するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
いくつかの実施形態では、スプライシングモジュレーター、例えば、SF3B1モジュレーターは、本明細書に記載されるか、又は参照により組み込まれる、例示的なSF3B1調節化合物のいずれか1つ以上である。例えば、様々な実施形態において、SF3B1モジュレーターは、化合物1である。他の実施形態では、SF3B1モジュレーターは、プラジエノリドB、プラジエノリドD、又はE7107である。他の実施形態では、SF3B1モジュレーターは、米国特許第9,481,669B2号明細書に開示されているSF3B1調節化合物のいずれか1つ以上である。他の実施形態では、SF3B1モジュレーターは、国際特許出願第PCT/US2016/062525号明細書(国際公開第2017/087667号パンフレット)に開示されているSF3B1調節化合物のいずれか1つ以上である。他の実施形態では、SF3B1モジュレーターは、国際特許出願第PCT/US2019/026313号明細書(国際公開第2019/199667号パンフレット)に開示されているSF3B1調節化合物のいずれか1つ以上である。他の実施形態では、SF3B1モジュレーターは、国際特許出願第PCT/US2019/026992号明細書(国際公開第2019/200100号パンフレット)に開示されているSF3B1調節化合物のいずれか1つ以上である。他の実施形態では、SF3B1モジュレーターは、国際特許出願第PCT/US2019/066029号明細書(国際公開第2020/123836号パンフレット)に開示されているSF3B1調節化合物のいずれか1つ以上である。他の実施形態では、SF3B1モジュレーターは、国際特許出願第PCT/US2019/035015号明細書(国際公開第2019/232449号パンフレット)に開示されているSF3B1調節化合物のいずれか1つ以上である。この段落で引用される全ての特許及び刊行物は、その全体が特に、そこに開示されているスプライシングモジュレーター(例えば、SF3B1モジュレーター)について、参照により組み込まれる。
【0119】
いくつかの実施形態では、スプライシングモジュレーター及び/又はSF3B1モジュレーター(例えば、本明細書に記載されるか、又は参照により組み込まれる例示的なSF3B1調節化合物のいずれか1つ以上)は、SF3B1を調節及び/又は阻害する。いくつかの実施形態では、スプライシングモジュレーター及び/又はSF3B1モジュレーター(例えば、本明細書に記載されるか、又は参照により組み込まれる例示的なSF3B1調節化合物のいずれか1つ以上)は、SF3B1阻害剤である。
【0120】
いくつかの実施形態では、スプライシングモジュレーター及び/又はSF3B1モジュレーターは、プラジエノリド又はプラジエノリド誘導体である。本明細書で使用される場合、「プラジエノリド誘導体」は、プラジエノリドとして知られる天然産物のファミリーのメンバーに構造的に関連し、出発化合物の1つ以上の生物学的機能を保持する化合物を指す。プラジエノリドは、強力な細胞傷害性があり、細胞周期のG1期及びG2/M期において細胞周期の停止をもたらす(例えば、Bonnal et al.Nat Rev Drug Dis.2012;11:847-859)として、細菌ストレプトマイセス・プラテンシス(Streptomyces platensis)において最初に同定された(Mizui et al.J Antibiot.2004;57:188-196)。7種の天然に存在するプラジエノリド、プラジエノリドA~Gがある(Mizui et al.J Antibiot.2004;57:188-196;Sakai et al.J Antibiot.2004;57:180-187).これらの化合物の1種、プラジエノリドBは、SF3bスプライソソームを標的として、スプライシングを阻害し、遺伝子発現パターンを変化させる(Kotake et al.Nature Chemical Biology 2007;3:570-575)。特定のプラジエノリドB誘導体は、国際公開第2002/060890号パンフレット、国際公開第2004/011459号パンフレット、国際公開第2004/011661号パンフレット、国際公開第2004/050890号パンフレット、国際公開第2005/052152号パンフレット、国際公開第2006/009276号パンフレット、及び国際公開第2008/126918号パンフレットに記載されており、これらの文献はそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
米国特許第7,884,128号明細書及び同第7,816,401号明細書は、プラジエノリドB及びDを合成する例示的な方法を記載しており、そのような方法についてそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。プラジエノリドB及びDはまた、Kanada et al.(Angew Chem Int Ed.2007;46:4350-4355)に記載された例示的な方法を用いて合成することができる。Kanada et al.及び国際公開第2003/099813号パンフレットには、プラジエノリドD(国際公開第2003/099813号パンフレットの11107D)から、E7107(国際公開第2003/099813号パンフレットの化合物45)を合成する例示的な方法が記載されている。対応する米国特許番号は、Kotakeらによる第7,550,503号である。いくつかの実施形態では、SF3B1モジュレーターは、プラジエノリドB、プラジエノリドD、又はE7107である。いくつかの実施形態において、SF3B1モジュレーターは化合物1である。
【0122】
様々な実施形態において、スプライシングモジュレーター及び/又はSF3B1モジュレーターは化合物1、すなわち、式Iの化合物及び薬学的に許容されるその塩から選択される少なくとも1つの実体である。式Iは、以下
【化3】

及び/又は化学名(2S,3S,4E,6S,7R,10R)-7,10-ジヒドロキシ-3,7-ジメチル-12-オキソ-2-[(2E,4E,6R)-6-(ピリジン-2-イル)ヘプタ-2,4-ジエン-2-イル]オキサシクロドデカ-4-エン-6-イル-4-メチルピペラジン-1-カルボキシレートによって表され得る。化合物1の合成は、米国特許第9,481,669B2号明細書、及び国際公開第PCT/US2016/062525号明細書(国際公開第2017/087667号パンフレット)に記載されており、これらの文献は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
治療レジメン
本開示の様々な実施形態は、化合物1の投与を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法及び使用は、治療有効量の化合物1を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、化合物1は、患者のTMEM14C異常スプライシングを低減又は阻害する。いくつかの実施形態では、患者は、TMEM14Cの異常ジャンクション転写物とカノニカルジャンクション転写物の比(TMEM14C AJ/CJ比)が高い輸血依存性MDS患者である。いくつかの実施形態では、患者は、高TMEM14C AJ/CJ比を有し、スプライソソームタンパク質に1つ又は複数の変異、例えば、SF3B1に1つ又は複数の変異を有する輸血依存性MDS患者である。いくつかの実施形態では、患者がTMEM14C AJ/CJ比が高く、TMEM14C発現レベルが低い輸血依存性MDS患者である。いくつかの実施形態では、患者は、高TMEM14C AJ/CJ比、低レベルのTMEM14C発現、及びスプライソソームタンパク質における1つ又は複数の変異、例えば、SF3B1における1つ又は複数の変異を有する輸血依存性MDS患者である。例示的なSF3B1変異としては、SF3B1のE622位、H662位、K666位、K700位、R625位、又はV701位の1つ又は複数における変異が挙げられる。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、SF3B1のH662位、K700位、又はR625位の1つ又は複数に変異を含むか、又はその変異からなる。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、SF3B1のK700位に変異を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、K700位における変異はK700Eである。いくつかの実施形態では、R625位における変異は、R625Cである。いくつかの実施形態では、SF3B1における変異は、K700E及び/又はR625Cを含む。SF3B1変異のさらなる非限定的な例は、米国特許第10,889,866B2号明細書、及び国際出願第PCT/US2016/049490号明細書(国際公開第2017/040526号パンフレット)に開示されており、これらの各文献はそのような変異について参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
当業者は、任意の特定の患者のための特定の投与量及び治療レジメンが、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全身の健康、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、治療する医師の判断、及び治療する特定の疾患の重症度を含む、様々な因子に依存することを理解するであろう。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法及び使用において使用される化合物1は、最初は臨床応答に応じて適切な用量で投与され得、用量は必要に応じて調整され得る。一般に、化合物1の適切な用量は、治療効果を生じるのに有効な最も低い用量である化合物の量であり得る。そのような有効用量は一般に、上記の因子に依存する。
【0125】
いくつかの実施形態では、化合物1は、経口剤形に製剤化され、患者に経口投与される。経口剤形は、例えば、生理学的に許容される賦形剤(例えば、薬学的に許容される賦形剤)との混合物中に活性剤を含有する、錠剤、カプセル剤、溶液若しくは懸濁液、粉末、又は液体若しくは固体結晶の形態であり得る。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤又は充填剤(例えば、スクロース、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンなどのデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム);造粒剤及び崩壊剤(例えば、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンなどのデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、又はアルギン酸);結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はポリエチレングリコール);並びに滑沢剤、流動促進剤、及び抗癒着剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水添植物油、又はタルク)であり得る。他の生理学的に許容される賦形剤(例えば、薬学的に許容される賦形剤)は、着色剤、香味剤、可塑剤、湿潤剤、緩衝剤などであり得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、化合物1は、カプセルとして製剤化される。いくつかの実施形態では、カプセルは、化合物1及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、半合成の不活性粘弾性ポリマーであるヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースとしても知られる)を含む。いくつかの実施形態では、化合物1は、不透明なヒプロメロースシェルカプセルとして製剤化される。いくつかの実施形態では、カプセルはサイズ0又はサイズ2である。いくつかの実施形態では、カプセルはサイズ2であり、0.5mgの化合物1を含有する。いくつかの実施形態では、カプセルはサイズ0であり、1mg又は5mgの化合物1を含有する。いくつかの実施形態では、カプセルの色はオレンジ(例えば、スウェーデンオレンジ)である。いくつかの実施形態では、カプセルは患者によって丸ごと飲み込まれる。
【0127】
いくつかの実施形態では、化合物1は空腹時の患者に投与される。すなわち、患者は化合物1の投与の2時間前も1時間後も食物を一切摂取しない。いくつかの実施形態では、化合物1は、各治療日のほぼ同じ時間に患者に投与される。
【0128】
いくつかの実施形態では、化合物1は、連続投与スケジュールで患者に投与される。「連続投与スケジュール」という用語は、本明細書で使用される場合、投与レジメンが治療期間中中断することなく連続的に繰り返されることを意味する。いくつかの実施形態では、化合物1は、連続投与スケジュールで1日1回又は1日2回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、少なくとも3連続日、5連続日、少なくとも7連続日、少なくとも9連続日、少なくとも14連続日、少なくとも21連続日、少なくとも28連続日、又はそれ以上の間、患者に連続的に(例えば、1日1回又は1日2回のレジメンで)投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1回以上の治療サイクルの間、患者に連続的に(例えば、1日1回又は1日2回のレジメンで)投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、少なくとも1、2、3、4、5、6、又はそれ以上の治療サイクルの間、患者に連続的に投与される。いくつかの実施形態では、1治療サイクルは28日である。
【0129】
連続投与スケジュールは、治療(すなわち、「投与」)期間と非治療(すなわち、「休薬」)期間の両方を有する間欠的投与スケジュールとは異なる。非治療期間は連続投与で観察され得る薬物関連毒性(例えば、発疹、好中球減少症、血小板減少症)のリスクを低減するのに役立ち得る。治療サイクル間の非治療期間は、「治療休憩」又は「治療休暇」と呼ばれることもあるいくつかの実施形態では、治療期間は、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間、少なくとも9日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、少なくとも28日間、又はそれ以上であり得る。いくつかの実施形態では、治療期間は、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間、少なくとも9日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、少なくとも28日間、又はそれ以上であり得る。いくつかの実施形態では、間欠的投与スケジュールは、治療期間と非治療期間とを交互に行う。
【0130】
いくつかの実施形態では、化合物1は、5日間投与/9日間休薬の投与スケジュールで、患者に(例えば、1日1回又は1日2回のレジメンで)投与される。いくつかの実施形態では、この14日間のスケジュールが28日間の1治療サイクルを完了するために1回繰り返される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1回以上の治療サイクルの間、5日間投与/9日間休薬の投与スケジュールで患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、少なくとも1、2、3、4、5、6、又はそれ以上の治療サイクルの間、5日間投与/9日間休薬の投与スケジュールで患者に投与される。いくつかの実施形態では、1治療サイクルは28日である。
【0131】
いくつかの実施形態では、化合物1は、21日間投与/7日間休薬の投与スケジュールで、患者に(例えば、1日1回又は1日2回のレジメンで)投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1回以上の治療サイクルの間、21日間投与/7日間休薬の投与スケジュールで患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、少なくとも1、2、3、4、5、6、又はそれ以上の治療サイクルの間、21日間投与/7日間休薬の投与スケジュールで患者に投与される。いくつかの実施形態では、1治療サイクルは28日である。
【0132】
いくつかの実施形態では、化合物1は、患者に1日1回投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、5日間投与/9日間休薬の投与スケジュールで1日1回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、21日間投与/7日間休薬の投与スケジュールで1日1回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、連続投与スケジュールで1日1回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、有害事象又は薬物関連毒性が観察されるまで、連続投与スケジュールで1日1回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、治療休暇は、1日1回の投与スケジュールに組み込まれる。いくつかの実施形態では、治療休暇は、1日1回の連続投与の少なくとも約5日後(例えば、約5日後、約7日後、約14日後、約21日後、又はそれ以上)に組み込まれる。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日1回(例えば、連続的に又は間欠的に)、1回以上の28日サイクルにわたって患者に投与される。
【0133】
いくつかの実施形態では、化合物1の治療有効量は、投与日に単回用量で約2mg~約20mgである。いくつかの実施形態では、化合物1の治療有効量は、投与日に単回用量で約2mg、約3.5mg、約5mg、約7mg、約10mg、約12mg、約14、又は約20mgである。いくつかの実施形態では、約14又は20mg未満の用量(例えば、5mg、10mg、又は1日1回約2mg程度の低用量)は、より高い用量と比較して、薬物関連毒性(例えば、徐脈及びQTcの延長などの心血管イベント)のリスクを低減する。
【0134】
いくつかの実施形態では、化合物1は、患者に1日2回投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、5日間投与/9日間休薬の投与スケジュールで1日2回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、21日間投与/7日間休薬の投与スケジュールで1日2回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、連続投与スケジュールで1日2回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、有害事象又は薬物関連毒性が観察されるまで、連続投与スケジュールで1日2回、患者に投与される。いくつかの実施形態では、治療休暇は、1日2回の投与スケジュールに組み込まれる。いくつかの実施形態では、治療休暇は、1日2回の連続投与の少なくとも約5日後(例えば、約5日後、約7日後、約14日後、約21日後、又はそれ以上)に組み込まれる。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日2回(例えば、連続的に又は間欠的に)、1回以上の28日サイクルにわたって患者に投与される。
【0135】
いくつかの実施形態では、化合物1の治療有効量は、投与日に2分割用量で合計約2mg~約20mgである。いくつかの実施形態では、化合物1の治療有効量は、投与日に2分割用量で約10mg、約15mg、又は約20mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量は約10mgであり、2回目の用量は約5mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量は約5mgであり、2回目の用量は約10mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約5mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約7.5mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約10mgである。いくつかの実施形態において、1回目の用量と2回目の用量との間の間隔は少なくとも約8時間(例えば、約8時間、約10時間、約12時間)である。
【0136】
いくつかの実施形態では、1日2回のレジメン(例えば、1用量当たり約10mgを2用量)で患者に投与される化合物1は、1日1回のレジメン(例えば、約40mgを1用量)でのより高い用量と比較して、薬物関連毒性のリスクを低減する。いくつかの実施形態では、1日2回のレジメンで患者に投与される化合物1は、1日1回のレジメンでのより高い用量と比較して、薬物関連毒性のリスクを低減するが、同様か又はより高いバイオマーカー調節を達成する。例えば、1日2回のレジメンで患者に投与される化合物1は、1日1回のレジメンでのより高い用量と比較して、薬物関連毒性のリスクを最小限に抑えながら、患者のTMEM14C AJ/CJ比を最大約10時間低減し得る。1日2回投与のいくつかの実施形態では、1回目の用量及び2回目の用量がそれぞれ約5mg~約10mg又はそれ以上である。いくつかの実施形態では、1回目の用量は約10mgであり、2回目の用量は約5mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量は約5mgであり、2回目の用量は約10mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約5mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約7.5mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約10mgである。いくつかの実施形態において、1回目の用量と2回目の用量との間の間隔は少なくとも約8時間(例えば、約8時間、約10時間、約12時間)である。
【0137】
患者に投与される化合物1の用量は、経時的に減少させることができる。例えば、治療の開始時に、化合物1は1日2回、約10mgの用量で投与され得る。すなわち、1回目の用量及び2回目の用量は、それぞれ約10mgである。いくつかの実施形態では、1回目の用量と2回目の用量との間の間隔は約10~約14時間(例えば、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間)である。この1日の投与量は、その後、1回以上減らすことができる。いくつかの実施形態では、1回目の用量減少は、約5mgの1回目の用量及び約10mgの2回目の用量、又はその逆を含む。いくつかの実施形態では、2回目又はその後の用量減少は、それぞれ約5mgの1回目の用量及び2回目の用量を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、化合物1による治療は、患者の輸血依存を軽減又は排除する。いくつかの実施形態では、化合物1による治療は、患者への輸血の回数又は頻度を、治療前の回数又は頻度と比較して、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、又は約60%減少させる。いくつかの実施形態では、化合物1による治療は、患者への輸血の回数又は頻度を、治療前の回数又は頻度と比較して、少なくとも約30%減少させる。いくつかの実施形態では、化合物1による治療は、患者への輸血の回数又は頻度を、治療前の回数又は頻度と比較して、少なくとも約60%減少させる。いくつかの実施形態では、化合物1で観察される輸血の回数又は頻度の減少は、別の治療(例えば、List et al.(N Engl J Med.2006;355(14):1456-1465)、Fenaux et al.(Blood.2011;118(14):3765-3776)、又はFenaux et al.(N Engl J Med.2020;382(2):140-151)に記載される治療)で観察される減少より大きい。いくつかの実施形態では、化合物1で観察される輸血と輸血の間の期間は、別の治療で観察される輸血と輸血の間の期間よりも長い。いくつかの実施形態では、輸血の回数又は頻度の減少は、少なくとも56連続日(8週間)の期間にわたって測定され、この期間は治療開始後の任意の時間に始まる。いくつかの実施形態では、患者は少なくとも56連続日(8週間)の期間、輸血を受けず、この期間は治療開始後の任意の時間に始まる。いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも14週間、少なくとも16週間、又はそれ以上の期間、輸血を受けず、この期間は治療開始後の任意の時間に始まる。いくつかの実施形態では、輸血の回数又は頻度の減少は、治療の最初の24週間の間に少なくとも8週又はそれ以上の期間にわたって測定される。いくつかの実施形態では、輸血の回数又は頻度の減少は、治療の最初の24週間の間の少なくとも12週又はそれ以上の期間にわたって測定される。いくつかの実施形態では、輸血の回数又は頻度の減少は、治療の最初の48週間の間の少なくとも12週又はそれ以上の期間にわたって測定される。いくつかの実施形態では、輸血の回数又は頻度の減少は、治療の最初の24週間の間の少なくとも16週又はそれ以上の期間にわたって測定される。いくつかの実施形態では、輸血の回数又は頻度の減少は、治療の最初の48週間の間の少なくとも16週又はそれ以上の期間にわたって測定される。いくつかの実施形態では、輸血は、赤血球(RBC)輸血、血小板輸血、又はその両方を含む。いくつかの実施形態では、輸血は、RBC輸血を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、化合物1による治療は、患者の骨髄鉄芽球の量を、治療前の量と比較して、増加させる。いくつかの実施形態では、化合物1による治療は、患者の骨髄鉄芽球の量を、治療前の量と比較して、少なくとも約10%、約20%、約30%、又は約40%増加させる。
【実施例
【0140】
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態を提供する。当業者は、本開示の精神又は範囲を変更することなく実施され得る多数の修正及び変形を認識するであろう。そのような修正及び変更は、本開示の範囲内に包含される。提供される実施例は、決して本開示を限定するものではない。
【0141】
実施例1.化合物1で治療されたMDS患者のバイオマーカー定義サブセットにおける輸血非依存性の評価
SF3B1に結合し、mRNA前駆体スプライシングを調節する小分子である化合物1を、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、又は急性骨髄性白血病(AML)を有する成人患者(スプライシング因子変異を有する患者及び野生型タンパク質を有する患者を含む)において試験した(NCT02841540;Steensma et al.Blood(2019)134(Supplement 1):673)。84人の患者のうち、42人がMDS、4人がCMML、及び38人がAMLであった。用量漸増コホートは、2つの1日1回の投与レジメン:スケジュールI(5日間投与/9日間休薬)及びスケジュールII(21日間投与/7日間休薬)を試験した。投与量はスケジュールIでは1~40mg(n=65)、スケジュールIIでは7~20mg(n=19人の患者)の範囲であり、25人の患者(30%)が≧180日間の治療を受けた。
【0142】
患者及び方法
試験デザイン
患者を、修正フィボナッチ数列スキーム(Storer Biometrics.1989;45(3):925-937)に基づく漸増を伴う、従来の3+3用量漸増フェーズ1デザインを用いて登録した。用量漸増は、登録された3~6人のうちの2人以上の患者が用量制限毒性(DLT)を経験する用量レベルまで継続した。6人中1人以下の患者がDLTを経験した最高用量を最大耐量(MTD)と定義した。DLTは以下のいずれかと定義した:グレード3以上の治験薬関連非血液学的毒性(1週間以内にグレード1以下に回復したグレード3の悪心、嘔吐、倦怠感又は下痢を除く);試験実施計画書に規定された用量の少なくとも70%を投与することができない;又は投与中止から21日以上経過した時点で持続性白血病又は芽球増加のない、グレード4の血球減少の持続を伴う骨髄抑制の延長。DLTは、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)(NCI)有害事象共通毒性規準(CTCAE)バージョン4.03を用いて最初の28日間に評価した。
【0143】
測定された主要評価項目には、DLTの発生、治療下で発現した有害事象(TEAE)の種類及び頻度、並びに重篤な有害事象(SAE)が含まれた。副次評価項目には、薬物の薬物動態(PK)及び予備的な抗腫瘍活性、例えば、全奏効率(ORR)、輸血の必要性に対する薬物療法の効果、及び全生存期間(OS)が含まれた。バイオマーカー分析及び薬物薬力学(PD)を探索的評価項目として含めた。5日間投与9日間休薬のスケジュール(スケジュールI)における1日当たり1mgの開始用量は、非ヒト霊長類の経験に基づいた;そのモデル系におけるDLTは、胃腸障害苦痛及び大腸炎であった。さらに、21日間の治療及び治療なしの7日間休止の第2のスケジュール(スケジュールII)を探索した。試験実施計画書は、当初、間欠的に投与された場合の化合物1の活性を示唆する前臨床データに基づいて、スケジュールIを評価するように設計された。しかし、限られた臨床活性がスケジュールIで観察された場合、スプライソソーム調節の延長がより高い臨床活性をもたらすかどうかを試験するために、スケジュールIIを導入した。各治療サイクルは、28日間の長さであった。患者は、疾患の進行又は許容できない毒性の発現まで治療を継続することができた。患者内用量の漸増はサイクル4で、その後に登録された他の患者において安全であることが実証された用量レベルまで許容されたが、患者は当初の投薬スケジュールを維持しなければならなかった。
【0144】
選択基準
適格基準は疾患に特異的であり、表1に要約する。さらに、患者は、18歳以上、米国東海岸がん臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)のパフォーマンスステータス0~2、並びに、クレアチニン≦1.7mg/dL又は計算クレアチニンクリアランス(Cockroft-Gault式)≧50mL/分、直接ビリルビン≦正常上限(ULN)の1.5倍、アラニンアミノトランスフェラーゼ及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ≦3.0×ULN、及びアルブミン≧2.5mg/dLとして定義される適切な臓器機能を有する必要があった。MDS患者はさらに、国際予後判定システム(IPSS)を使用して、IPSS低リスク及び中間-1リスクの患者をまとめて含む「低リスク」と、「高リスク」のIPSS中間-2リスク及び高リスクのカテゴリーで特徴付けられた(Greenberg et al.Blood.1997;89:2079-2088)。患者は、適格であるためにスプライシング変異を有することを要求されなかった。
【0145】
【表1】
【0146】
眼の安全性
化合物1と化学的に類似したプラジエノリド誘導体(E7107)の以前の第1相試験において治療された対象において、視力喪失が観察され(Folco et al.Genes Dev.2011;25(5):440-444;Hong et al.Invest New Drugs.2014;32(3):436-444)、またマイナースプライシング因子PRPF8及び他の関連スプライシング因子の生殖細胞変異が網膜色素変性症に関連している(Grainger and Beggs,RNA.2005;11(5):533-557)ことから、詳細な眼科学的安全計画を実施した。適格基準に、正常なビタミンAレベル及び白内障が存在しない限り20/40に矯正された視力を含めた。眼科学的評価(眼底検査画像及び視覚誘発電位を含む)を、試験スクリーニング中及び試験期間を通して定期的に実施した。
【0147】
応答評価
臨床応答を、2006年国際ワーキンググループ(IWG)のMDS応答基準(Cheson et al.Blood.2006;108:419-425)、AMLのIWG2003基準、並びに2015年国際コンソーシアム提案による骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)及びCMMLの統一応答基準(Savona et al.Blood.2015;125(12):1857-1865)により評価した末梢血採取、骨髄穿刺、骨髄生検、骨髄細胞遺伝学、及びフローサイトメトリーによる細胞組成を、スクリーニング時、並びにサイクル1、2、及び4の後に行った。サイクル4以降は、末梢血球数の変化に基づいて臨床的に必要とされる場合、又は完全奏効若しくは進行を確立するために必要に応じて、骨髄穿刺を実施した。疾患評価のために、独立した中央の確定及び解釈を実施した。
【0148】
薬物動態、薬力学及びバイオマーカーの解析
PK分析のための血漿試料を、サイクル1の1日目及び4日目(投与前と、投与の0.5、1、2、4、6、8、10及び24時間後)、並びにサイクル1の15日目の投与前と投与の4時間後に収集した。PK分析は、Phoenix(登録商標)WinNonlinを用いて行った。薬力学及びバイオマーカーの分析のために、全患者においてサイクル1の1日目(投与前と、投与の1、2、4、10及び24時間後)に末梢血試料をPAXgen(登録商標)Blood RNAチューブ(BD Biosciences、San Jose、California)に採取した。Maxwell(登録商標)simplyRNA Bloodキット(Promega、Madison、Wisconsin)を用いてRNAを抽出した。標的結合(すなわち、スプライシング調節)を、カスタマイズしたNanostring nCounter遺伝子発現パネル(NanoString Technologies、Seattle、Washington)を用いて、投与後の時点での代表的なmRNA前駆体と成熟mRNAの相対発現、又は異常転写物とカノニカル転写物の相対発現を投与前との比較で評価することによって測定した。スプライシング変異分析のために、末梢血をPAXgene(登録商標)Blood DNAチューブ(BD Biosciences、San Jose、California)に採取した。ベースラインのスプライシング変異を、Cancer Genetics Inc.(Rutherford、NJ)によって中央で決定されたFocus:Myeloid(商標)次世代シーケンシング(NGS)パネルを用いて同定した。前処理試料のバイオマーカー分析を、一元配置分散分析ANOVA及びMedCalc(登録商標)ソフトウェアを用いて行った。受信者動作特性(ROC)曲線を、Hanley及びMcNeil(Radiology.1982;143(1):29-36;Zweig and Campbell,Clin Chem.1993;39(4):561-577も参照)によって記載された方法に従って実施した。
【0149】
結果
登録患者
2016年10月から2018年12月の間に、米国及び欧州の26の参加施設に計84人の患者が登録された。登録患者のうち、65人がスケジュールIで、19人がスケジュールIIで治療された。スケジュールIIの患者数が少なかったことは、スケジュールIの7つの用量レベルが、臨床応答が観察されずに生じた後に、試験実施計画の改正としてこのスケジュールを後に追加したことを反映している。登録患者のベースライン特性を表2に要約する。登録患者のうち、38人がAML、4人がCMML、20人がIPSS高リスクMDS、21人が低リスクMDSであった。正常核型は23人のMDS患者で観察され、染色体8トリソミー、7q欠失、20q欠失及び5q欠失は、それぞれ5人、4人、4人及び2人の患者で観察された。9人の患者に他の染色体異常が認められ、2人の患者に複雑な(3以上の異常)核型が認められた。1人のMDS患者については、核型決定が失敗したため、IPSSを計算できなかった。骨髄異形成関連変化を伴うAMLは、最も一般的なAML診断であり(N=20)、芽球増加を伴う不応性貧血はMDSであった(N=21)。CMML1/CMML2の診断は特定されなかった。以前のレジメンの数の中央値及び範囲は、AML患者、CMML患者、及びMDS患者でそれぞれ2(1~9)、2(2~5)、及び2(1~4)であった。試験参加前の8週間に、合計62人の患者が赤血球輸血依存性であると報告された。
【0150】
投与された用量レベルは、スケジュールIで1~40mgの範囲、スケジュールIIで7~20mgの範囲であった。SF3B1変異低リスクMDSの患者が7mgの用量レベル(スケジュールI、5日間投与/9日間休薬スケジュール)での試験治療の最初の週の間に汎血球減少症及び骨髄形成不全を発症した後、低リスクMDS患者の登録が中断された。その後、AML、高リスクMDS、及びCMML患者のみが、試験の用量漸増部分に登録された。登録された患者のうち、88%が、目的のスプライシング変異を有した(表2及び3)。
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
薬物動態
予備的なPK分析は、化合物1が迅速に吸収され、血漿曝露量が用量に比例して増加することを示した(図2)。非コンパートメント分析による主要なPKパラメータを表4に列挙する。両方のスケジュールで、同様の1サイクル当たりの最大累積投与量を評価した(スケジュールIでは28日サイクル当たり400mg、スケジュールIIでは28日サイクル当たり420mg)。化合物1の血漿PKに対する共変量(体重及び性別を含む)の潜在的効果は、2つのスケジュールの各用量レベルに登録された患者の数が少なかったために評価しなかった。しかしながら、PKパラメータの全体的な変動は、明らかな外れ値はなく、中程度であり、癌患者で通常観察される範囲内であった(表4)。クリアランス/バイオアベイラビリティに関する個体間変動を推定した予備集団PKモデルは約34%であり、潜在的な共変量効果があったとしてもそれはおそらく意味がないか、又は現在利用可能なデータでは意味のある共変量効果を特定するのに十分ではない可能性があることを示唆している。
【0154】
スケジュールI(試験した用量は1mg~40mgの範囲)では、治療に関連したTEAE(全グレード)の発現率に明らかな用量依存性は認められなかった。これらの事象の発現率は、1用量レベル当たり、投与された被験者の43%~100%の範囲であった。併せた最も低い用量レベル(1、2、3.5及び5mg、N=25)では、被験者の76%が治療関連TEAEを報告した。試験した最も高い用量レベル(40mg、N=6)では、被験者の83%が治療関連のTEAEを報告した。グレード3以上の治療関連TEAEは、≧2mgの用量で治療された対象において報告され、40mgで治療された6人の対象のうち3人がグレード3のAEを報告した。スケジュールII(7mg~20mg)では、試験した最低用量レベルで治療した被験者の20%に、また試験した最高用量レベルで治療した被験者の100%に、治療関連のAE(全グレード)が観察され、このことは21日間投与/7日間休薬スケジュールでAEに用量依存性傾向があることを示唆している。グレード3以上の治療関連のTEAEは、スケジュールIIの用量レベル≧12mgで報告され、20mgで治療された4人の被験者のうち3人がグレード3のAEを報告した。
【0155】
登録された被験者の73%が男性であったにもかかわらず、治療に関連したAEにおいて明らかな性差が観察されなかったため、化合物Iの忍容性に関する潜在的な性差の評価は限定的であり得る。治験薬との因果関係が否定できない治療に関連したAE(全グレード)を報告した63人の被験者のうち、45人(71%)が男性であり、グレード3の治療に関連したAEを報告した12人の被験者のうち、9人(75%)が男性であった。
【0156】
【表4】
【0157】
実施例2.化合物1で治療されたMDS患者のバイオマーカー定義サブセットにおける輸血非依存性のさらなる分析
実施例1に記載の試験からのデータのさらなる分析は、この実施例に記載されるように、以下のことを示した。
【0158】
さらなる分析-登録患者
試験参加前の8週間に、合計62人の患者が赤血球輸血依存性であると報告された。
【0159】
さらなる分析-有害事象及び用量制限毒性
スケジュールIで治療された患者における最も一般的な治療関連の、治療下で発現した有害事象(TEAE、治験責任医師による判断、頻度≧10%)は、下痢(42%)、悪心(28%)、倦怠感(17%)及び嘔吐(14%)であった(表5)。スケジュールIIで治療された患者における最も一般的な治療関連TEAEは、下痢(42%)、嘔吐(21%)、QTcF(Fridericia法)延長(16%)、悪心(16%)、味覚異常(11%)、倦怠感(11%)、及び低リン酸血症(11%)であった(表5)。表6は、最も一般的なグレード3及び4の事象をまとめたものである。グレード3の眼球浮腫の1事象が報告されたが、視力の低下はなかった。
【0160】
全体として、6人の患者がDLTとして特徴付けられるAEを経験した。スケジュールIでは、低リスクMDS及びSF3B1変異を有する1人の患者が7mg用量レベルで骨髄形成不全を発症し、40mg用量レベルで6人の患者のうち2人が治験責任医師によって、>500ミリ秒のQTcF延長を有すると評価された。スケジュールIIでは、14mg用量レベルで治療された5人の患者のうち1人がグレード3の洞性徐脈を経験し、20mg用量レベルで治療された4人の患者のうち2人がDLTを経験し、一方にグレード3のQTc延長があり、他方にグレード3の悪心があり、これは速やかに回復しなかった。これらの結果に基づいて、スケジュールIの40mg及びスケジュールIIの20mgはDLT閾値を超えているようであり、当初、MTDをスケジュールIで30mg(28日サイクルで累積用量300mgの化合物I)及びスケジュールIIで14mg(28日サイクルで294mgの化合物I)として定義し、さらなる用量漸増を中止した。その後、化合物Iによる心血管作用の可能性をより理解するために、患者ECGのアドホックの独立した心臓学的審査を行った。この独立した審査により、スケジュールIでは40mg、スケジュールIIでは20mgでDLTとして報告されたQTc延長事象の2例は確認できず、40mgでの追加事象は併用薬に関連する可能性があると報告された。その結果、最大耐量(MTD)はスケジュールIでもスケジュールIIでも正式に確認されなかったが、データの全体性を考慮して、推奨される化合物1のQD用量は、スケジュールIで1日当たり30mg、スケジュールIIで1日当たり14mgと定義された。
【0161】
【表5】
【0162】
【表6】
【0163】
さらなる分析-治療期間
患者は、12~1162日間治療を続けた。27人の患者(32%)が180日を超える治療時間、18%は1年を超える治療時間、及び2%は2年を超える治療時間を有した(図1A~1C)。低リスクMDSの治療期間中央値は32.2週、高リスクMDS/CMMLの治療期間中央値は13.0週、AMLの治療期間中央値は8.0週であり、各疾患の自然経過を反映していた。
【0164】
さらなる分析-臨床応答
2006 IWG基準を満たす完全奏効又は部分奏効は観察されなかった。MDS/MPN基準に基づいて、CMMLの診断を受けた4人の被験者において、1人の完全な細胞遺伝学的寛解及び1人の臨床的利益(血小板応答)が報告された。残りの2人のCMML被験者では、応答は観察されなかった。さらに、2020年4月現在、IWG基準29(表7)により試験参加時に輸血依存性であった患者62人中の9人(15%)において、1~6回の56日を超えるRBC輸血なしの期間が報告されている。これらの患者はいずれも、ベースライン時のヘモグロビンが9.1g/dLであった1人を除いて、赤血球の血液学的改善の応答についてIWG基準を満たした。全員がスケジュールI内に化合物1を受けた。9人の患者のうち8人は、試験の1~24週目に開始された最初のRBC TIを有した。RBC TIの9例のうち、1例はCMML被験者(25%)で、8例はMDS被験者(19%)で観察された。CMML患者はまた、21週間の血小板輸血非依存期間を経験した。9人の患者のうち4人は、7mg用量でRBC TIを経験した。RBC TIの期間中央値は13週間であった。RBC TIが生ずるまでの期間の中央値は15週間であった。さらに2人の患者(AML 1人、MDS 1人)が56日を超えるRBC TI期間を経験したが、試験参加前の輸血依存は確認できなかった。RBC TIを伴わない22週間の血小板輸血非依存の1例が、スケジュールIIの7mg用量を受けた高リスクMDS患者でも観察された。
【0165】
【表7】
【0166】
【表8】
【0167】
さらなる分析-バイオマーカー
スプライソソームタンパク質(SF3B1、SRSF2、U2AF1及びZRSR2)に関する変異データを、複製試料の2つのNGSパネルを用いて、PBMCから生成した(図1A~C)。SF3B1変異は、MDS患者(41人の患者中15のミスセンス変異、36.6%)、特に低リスクMDS患者(57%)において最も一般的な変異であった(図4)。SF3B1変異はまた、AML患者38人中5人(13%)で観察され、CMML患者4人では観察されなかった。ミスセンスSF3B1変異を有する患者のサブセットについての患者特性の一覧を表8に示す。RBC TI事象を経験した全ての患者におけるクローン性変化を決定するための試験治療におけるPBMCのサンプリングは不十分であった。試験参加時にミスセンスSF3B1変異を有する20人の患者のうち、5人(25%)がRBC TI事象を経験した。RBC TI期間を有する患者のうちの3人は、環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS)、1人は芽球増加を伴う不応性貧血、1人は血小板増加を伴うRARSと診断された。SF3B1変異を有しAMLと診断された4人の患者では、RBC TI期間は観察されなかった。
【0168】
化合物I治療におけるRBC TI期間はまた、SF3B1変異のない患者において観察され(図7)、このことは、野生型SF3B1蛋白質によるスプライシングの調節がまた一部の患者におけるこの薬剤の作用機序に役割を果たしており、さらなる研究に値することを示唆している。興味深いことに、SF3B1変異を有する患者は、SF3B1野生型状態を有する患者よりも低用量でRBC TIを経験したようであった(図7)。
【0169】
ABCB7発現(治療前)とSF3B1変異状態との間の関係は、RT-PCRにより測定されるように、SF3B1変異を有する患者でABCB7発現が低いことを示唆した(図8A)。さらに、ABCB7発現(治療前)と、化合物1による治療中又は治療の追跡中のRBC TIの発生率との関係は、ABCB7発現が低い患者では高いRBC TIの発生率が高いことを示唆した(図8B)。
【0170】
SF3B1の変異は、ミトコンドリアにおけるヘム生合成及び鉄蓄積の欠陥を特徴とする、環状鉄芽球表現型と関連している。ヘム生合成及び鉄代謝に関与する3つの遺伝子、ABCB7、PPOX及びTMEM14Cが、SF3B1が変異したMDS患者において反復的に異常にスプライシングされる(Shiozawa et al.Nat Commun.2018;9:3649)。PPOXは、TMEM14Cと協働してポルフィリンのミトコンドリア輸送を促進する。ABCB7又はPPOXの調節は化合物Iによって誘導されるRBC TIに寄与する可能性があり、今後の研究で調ベる必要がある。
【0171】
【表9】
【0172】
薬力学的評価のためのPBMC試料を、MDS患者からの26の治療前試料を含む、84人の患者のうちの59人から採取し、遺伝子発現データをNanoStringプローブを用いて生成した。合計61個のスプライシングマーカーを調べた(表9)。投与後のスプライシングマーカーの一般的な調節を観察した(図5)。56日を超えるRBC TIを経験した7人の患者は、利用可能な遺伝子発現データを有していた。TMEM14Cをコードする遺伝子の治療前の異常スプライシングジャンクション(AJ)転写物の増加及び治療前のカノニカルスプライシングジャンクション(CJ)転写物の減少の傾向が、RBC TIを経験したMDS患者において観察された(図3A)。ROC曲線分析は、TMEM14C AJ/CJの治療前比がMDS患者の化合物I治療におけるRBC TIの発生を予測することを示した。関連基準>4.01に対する最適Youden指数J=0.733であり、感度83.3%及び特異性90%であった。7人のMDS患者(TMEM14C AJ/CJ>4.01、図3B)のうち5人が化合物IによるRBC TI事象を経験した(71%)。SF3B1変異は、彼らのうちの1人を除き検出された(図3B)。化合物Iの投与によるTMEM14C AJ/CJ比のダウンレギュレーションもまた、RBC TIを経験した患者において観察された(2~10時間で最下点を示した)(図3C)。これらの知見の潜在的関連性のために、TMEM14Cの異常転写物及びカノニカル転写物の定量化を、RT-qPCRを使用して、残りの試験試料で繰り返した(N=20、RBC TIを経験した4人の患者を含む)。追加の時点もこれらの実験に含めた(サイクル1の4日目)。TMEM14C AJの治療前発現は、化合物Iによる治療でRBC TIを経験した患者からのサイクル1の1日目のPBMC試料において高かった(図6)。同様に、TMEM14C AJの治療前発現は、これらの患者からのサイクル1の4日目の試料においても高かった(図6)。
【0173】
選択された配列:
【0174】
TMEM14Cのカノニカル配列(配列番号1)
CCGGGGCCTTCGTGAGACCGGTGCAGGCCTGGGGTAGTCT
【0175】
TMEM14Cの異常配列(配列番号2)
CCGGGGCCTTCGTGAGACCGCTTGTTTTCTGCAGGTGCAG
【0176】
ヒトSF3B1-アミノ酸配列(配列番号3)
【化4】
【0177】
ヒトSF3B1-核酸配列(配列番号4)
【化5】

【化6】

【化7】
【0178】
TMEM14C-カノニカル及び異常スプライシング部位(配列番号5)
【化8】
【0179】
ABCB7-カノニカル及び異常スプライシング部位(配列番号6)
【化9】
【0180】
ABCB7-フォワードプライマー配列(配列番号7)
AATGAACAAAGCAGATAATGATGCAGG
【0181】
ABCB7-リバースプライマー配列(配列番号8)
TCCCTGACTGGCGAGCACCATTA
【0182】
PPOX-フォワードプライマー配列(配列番号9)
GGCCCTAATGGTGCTATCTTTG
【0183】
PPOX-リバースプライマー配列(配列番号10)
CTTCTGAATCCAAGCCAAGCTC
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
【配列表】
2023553588000001.app
【国際調査報告】