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特表2023-5536002,4,6-トリメチルフェノールの光酸化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】2,4,6-トリメチルフェノールの光酸化
(51)【国際特許分類】
   C07C 407/00 20060101AFI20231218BHJP
   C07C 45/64 20060101ALI20231218BHJP
   C07C 37/07 20060101ALI20231218BHJP
   C07C 39/08 20060101ALI20231218BHJP
   C07C 409/14 20060101ALI20231218BHJP
   C07C 49/713 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C07C407/00
C07C45/64
C07C37/07
C07C39/08
C07C409/14
C07C49/713
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533973
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2021085379
(87)【国際公開番号】W WO2022128852
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20214213.9
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(71)【出願人】
【識別番号】512154932
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート・バーゼル
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAT BASEL
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】ブッフホルツ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ネッチェル, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】スパール, クリストフ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC41
4H006AC42
4H006AC44
4H006BA95
4H006BB14
4H006BB31
4H006BC10
4H006BC34
4H006BC35
4H006BC40
4H006BD84
4H006BE10
4H006FC52
4H006FE13
(57)【要約】
本発明は、4-ヒドロペルオキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オンを得るために、水とアルコールとの溶媒混合物中でメチレンブルーを光増感剤として使用し、可視スペクトルの長波長領域の光を使用して、2,4,6-トリメチルフェノールを光酸化することに関する。この方法により、2,4,6-トリメチルフェノールから4-ヒドロキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン及び2,3,5-トリメチルヒドロキノンを高収率且つ高選択率で得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)の化合物から式(I)の化合物を製造する方法であって:
酸素及び式(III):
【化1】

(式中、R、R8’、R8’’及びR8’’’は、互いに独立して、H、又はC1~4アルキル基を表し、
或いは、
とR8’及び/又はR8’’とR8’’’は、Nとともに5員環又は6員環を形成し、
但し、R基、R8’基、R8’’基、及びR8’’’基の少なくとも1つはHではなく;
は、陰イオンを表す)の光増感剤を、
水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物中で使用し、
そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光を使用して光酸化を行うことにより、式(II)の化合物から式(I)の化合物
【化2】

を製造する方法。
【請求項2】
前記使用される光が、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が625~740nmの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光の80%超が525~780nmの波長を有し、好ましくは前記放射光の80%超が525~700nmの波長を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒混合物が、水とメタノール及び/又はエタノール及び/又はイソプロパノールとの混合物であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記光の前記光源が赤色LEDランプであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光の前記光源が、500nm未満、特に625nm未満の波長を遮断するフィルターと組み合わせた白色LEDランプであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
=R8’=R8’’=R8’’’=CHであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
が、ハライド、特にクロリドを表すことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記式(II)の化合物の濃度が、前記光酸化の開始時に0.002~2.0モル/l、好ましくは0.01~0.2モル/lの範囲内であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記式(III)の化合物の前記式(II)の化合物に対する比が、0.005~20モル%、好ましくは0.05~20モル%、より好ましくは0.2~10モル%の範囲内であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
連続プロセスであることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記式(II)の化合物から前記式(IV)の化合物を調製する方法であって、
a)請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物(II)を光酸化して、式(I)
【化3】

の化合物を得る工程;
b)還元剤(red-a)によって前記式(I)の化合物を還元して、前記式(IV)
【化4】

の化合物を得る工程;
を含む方法。
【請求項13】
前記工程b)が連続的に行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記式(II)の化合物から前記式(V)の化合物を調製する方法であって、
a)請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物(II)の光酸化を行って、式(I)
【化5】

の化合物を得る工程;
b)還元剤によって前記式(I)の化合物を還元して、前記式(IV)
【化6】

の化合物を得る工程;
(c)>200℃、好ましくは>240℃の温度で、前記式(IV)の化合物を塩基性物質で処理して、前記式(V)
【化7】

の化合物を得る工程;
を含む方法。
【請求項15】
前記工程b)及び/又はc)が連続的に行われることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、4-ヒドロペルオキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン及び2,3,5-トリメチルヒドロキノンの調製、特に2,4,6-トリメチルフェノール(=メシトール)の光酸化の分野に関する。
【0002】
[背景技術]
2,3,5-トリメチルヒドロキノンは、α-トコフェロールの製造における重要な中間体である。
【0003】
T.NetscherはVitam.Horm.2007,76,155-202の特に159ページで、またW.BonrathらはAngew.Chem.Int.Ed.2012,51,12960-12990の特に12983ページで、2,3,5-トリメチルヒドロキノンが、m-クレゾールを触媒的にメチル化して2,3,6-トリメチルフェノールにし、その後これを酸化して2,3,5-トリメチルベンゾキノンへと変換し、続いてこれを2,3,5-トリメチルヒドロキノンへと還元することから得られることを開示している。代替のプロセスは、酸化/水素化/異性化の手順を使用してイソホロンから開始する。別のプロセスは、出発物質としてメシトールを使用し、酸化と転位を使用して2,3,5-トリメチルヒドロキノンを生成する。
【0004】
米国特許出願公開第2012/0203013A1号明細書には、ビスマス触媒の存在下での過酸化水素による2,4,6-トリメチルフェノール(メシトール)の酸化が開示されている。M.C.Carrenoらは、Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,2737-2741の中で、メシトールの酸化がアセトニトリル中のオキソンによって実施できることを開示している。
【0005】
Murtinho D.et al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans.2,2000,2441-2447には、2,3,5-トリメチルフェノールを光増感剤の存在下に酸素を使用して光酸化することによって2,3,5-トリメチルベンゾキノンを得ることが提案されている。特に、アセトニトリル及びジクロロメタンの混合物中で1,5-ジヒドロキシナフタレンを得るための光増感剤として、メチレンブルーが開示されている。しかしながら、収率が78~82%と余り高くないことから、これに替えてポルフィリン型の光増感剤を使用することが提案されている。この種のポルフィリン化合物は、多少高価である上に、商業的に入手することが容易ではない。他方、アセトニトリルもジクロロメタンも、環境保護的及び環境毒性学的に不利益が大きな溶媒である。更に、フェノールを酸化することはナフトールを酸化することよりもはるかに難しいことが知られている。
【0006】
2,3,5-トリメチルフェノールとは対照的に、メシトール(=2,4,6-トリメチルフェノール)は容易に入手することができる。それぞれm-クレゾール又は2,3,5-トリメチルフェノールの代わりにメシトールから出発して2,3,5-トリメチルヒドロキノンを製造するプロセスを提供することは、商業的に非常に関心がもたれる。
【0007】
[発明の概要]
したがって、本発明が解決しようとする課題は、4-ヒドロペルオキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン又は4-ヒドロキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン又は2,3,5-トリメチルヒドロキノンをそれぞれ高収率且つ高選択率で合成する効率的な方法を提供することである。
【0008】
請求項1に記載の光酸化又は請求項12若しくは14に記載の方法が、それぞれこの課題を解決する効率的な方法を提供することが見出された。
【0009】
本発明においては、容易に入手可能であり、且つ費用対効果が高い、非常に魅力的な光増感剤であるメチレンブルーを使用することができ、高い転化率で収率が非常に高くなるのみならず、非常に高い選択率で所望の生成物を得ることができる。特に有利な点は、このプロセスが塩素化溶媒の不存在下で実施できることである。したがって、前述のプロセスは、工業的用途にとって非常に魅力的である。
【0010】
本発明の更なる態様は、更なる独立請求項の主題である。特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0011】
[発明の詳細な説明]
本発明は、第1の態様では、
酸素及び式(III):
【化1】

(式中、R、R8’、R8’’及びR8’’’は、互いに独立して、H、又はC1~4アルキル基を表し、
或いは、
とR8’及び/又はR8’’ とR8’’’ は、Nとともに5員環又は6員環を形成し、
但し、R基、R8’基、R8’’基、及びR8’’’基の少なくとも1つはHではなく;
は、陰イオンを表す)の光増感剤を、
水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物中で使用し、
そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光を使用して光酸化を行うことにより、式(II)の化合物から式(I)の化合物
【化2】

を製造する方法に関する。
【0012】
明確にするために、本文書で使用されている幾つかの用語を以下のように定義する:
本文書において、「Cx~yアルキル」基とは、x~y個の炭素原子を含むアルキル基であり、即ち、例えば、C1~3アルキル基は、1~3個の炭素原子を含むアルキル基である。アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。例えば、-CH(CH)-CH-CHはCアルキル基とみなされる。
【0013】
同様に、Cx~yアルカノール又はCx~yアルキレンジオールは、それぞれ1個又は2個のOH基を有し、それぞれアルキル基又はアルキレン基を有する、x~y個の炭素原子を含むアルコールである。
【0014】
本文書において、複数の式中に、記号又は基に関する同じ添え字が存在する場合、1つの特定の式に関連してなされた前記基又は記号の定義は、同じ添え字を含む他の式にも適用される。
【0015】
ピーク波長とは、スペクトルの強度が最大となる波長である。
【0016】
前記方法では、2,4,6-トリメチルフェノール(=式(II)の化合物、メシトール)が光酸化されて、4-ヒドロペルオキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン(=式(I)の化合物)が得られる。
【0017】
メシトールは既知の化学物質であり、様々な供給業者から大量に市販されており、例えばメシチレンとペルオキシ一リン酸との反応によって容易に製造することができる。
【0018】
光酸化では、式(III)の光増感剤が使用される
【化3】

(式中、R、R8’、R8’’及びR8’’’は、互いに独立して、H、又はC1~4アルキル基を表し、
或いは、
とR8’及び/又はR8’’とR8’’’は、Nとともに5員環又は6員環を形成し、
但し、R基、R8’基、R8’’基、及びR8’’’基の少なくとも1つはHではなく;
は、陰イオンを表す)。
【0019】
一実施形態において、RとR8’及び/又はR8’’とR8’’’が一緒になって、-(CH-又は-(CH-NH-(CH-又は-(CH-N(C1~4アルキル)-(CH-又は-(CH-S-(CH-又は-(CH-O-(CH-を形成する。
【0020】
更に好ましくは、R=R8’’であり、及び/又はR8’=R8’’’である。より好ましくは、R=R8’=R8’’=R8’’’である。
【0021】
より好ましくは、置換基R、R8’、R8’’、及びR8’’’はC1~4アルキル基を表し、更に好ましくは、R=R8’=R8’’=R8’’’=メチル又はエチルである。
【0022】
最も好ましくは、R=R8’=R8’’=R8’’’=CHである。
【0023】
式(III)中、Xは陰イオンを表す。陰イオンの役割は、上式の角括弧([)(])内の部分として表されている陽イオンの電荷に対し電荷のバランスをとることにある。したがって、原則としてあらゆる陰イオンを使用することができる。
【0024】
好ましくは、Xは、ハライドを表し、最も好ましくはクロリドを表す。
【0025】
好ましくは、式(III)の化合物は、メチレンブルーである。更に好ましくは、式(III)の化合物は、塩化亜鉛との複塩の形態にあり、特に、メチレンブルーと塩化亜鉛との複塩であるか、又は水和物の形態、好ましくはメチレンブルー水和物(CAS:122965-43-9)の形態にある。
【0026】
式(III)の光増感剤は、式(II)の化合物の光酸化に特に適していることが見出された。
【0027】
上述の光酸化を行うためには、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光を使用することが必須である。
【0028】
好ましい一実施形態においては、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が585~625nmの範囲にある光が使用される。これは、橙色として認識される光に対応する。
【0029】
他のより好ましい実施形態においては、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が625~740nmの範囲にある光が使用される。これは、赤色として認識される光に対応する。
【0030】
この光は、主に可視スペクトルの高い波長の範囲のものである。
【0031】
更に好ましい実施形態では、使用される光は、光の80%超が525~780nmの波長を有し、好ましくは光の80%超が525~700nmの波長を有し、より好ましくは放射光の65%超が550~650nmの波長を有するように特徴付けられる。
【0032】
更に別の好ましい実施形態では、使用される光は、光の80%超が550~780nmの波長を有し、好ましくは光の80%超が600~760nmの波長を有し、より好ましくは放射光の65%超が625~700nmの波長を有し、最も好ましくは放射光の85%超が625~700nmの波長を有するように特徴付けられる。
【0033】
したがって、使用される光は、そのスペクトルに580nm未満の波長を有する光がほとんど含まれていないことが重要である。緑、青、及び紫色の光又はそのスペクトルに緑、青、及び紫を多く含む色の光は上述の光酸化に適していないことが見出されたことが極めて重要である。
【0034】
一実施形態において、光酸化に使用する光は、光源からの望ましくない波長の光をフィルターで除去することにより得ることができる。例えば、多色又は白色発光光源を、望ましくない光を遮断するフィルターを用いて選別することができる。
【0035】
吸収、2色性、単色性、バンドパス、ショートパス、又はウェッジフィルターなど、光をフィルタリングするための様々な物理的プロセスを使用する、公知で商業的に入手可能であるこのようなフィルターには様々な可能性がある。
【0036】
吸収フィルター又はカットオフフィルターが特に有用である。
【0037】
光源は、500nm未満、最も具体的には625nm未満の波長を遮断するフィルターと組み合わされた白色LEDランプであることが特に好ましい。
【0038】
光の光源としては赤色LEDランプが最も好ましい。
【0039】
図1aは、この実施形態の概略図を表す。光源(1)は、所望の波長(2a)及び望ましくない波長(2b)を有する様々な波長の放射を放出する。光源は、好ましくは白色光であり、より好ましくは白色LEDである。フィルター(6)は、光源(1)と透明壁(4)を有する光反応器との間に配置される。フィルター(6)は、望ましくない波長の光を除去することにより、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光を供給する。フィルター(6)は、好ましくは「橙色フィルター」又は「赤色フィルター」、即ち、波長が585~625nmの間又は625~740nmの間にある光のみを透過させるフィルターである。少なくとも酸素及び式(II)の化合物と、水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールの溶媒混合物とを含む反応混合物(3)は、光反応器(5)の内部にある。
【0040】
光反応により、式(I)の化合物は、特に少なくとも20体積%の酸素を含むガス混合物中で、式(II)の化合物と酸素から光化学反応によって生成される。
【0041】
この実施形態の特定の好ましい例は、白色LEDである。その光は、所望の波長以外の全ての光が遮断される、又は少なくとも大幅に吸収されるようにフィルタリングされる(例えば、「橙色フィルター」(585~625nmの光のみを透過させる)を使用又は「赤色フィルター」(625~740nmの光のみを透過させる)を使用)。
【0042】
したがって、光の光源は、好ましくは、500nm未満、特に625nm未満の波長を遮断するフィルターと組み合わせた白色LEDランプである。
【0043】
更なる実施形態では、光酸化に使用される光は、所望の波長の光を放出するそれぞれの光源によって生成されることができる。
【0044】
図1bは、この実施形態の概略図である。光源(1)は、所望の波長(2a)の光を発することにより、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光を供給する。光源は、好ましくは橙色又は赤色光源であり、より好ましくは、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光源を用いて光を供給するための橙色又は赤色LEDである。
【0045】
少なくとも酸素及び式(II)の化合物と、水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールの溶媒混合物とを含む反応混合物(3)は、光反応器(5)の内部にある。光反応により、式(II)の化合物と酸素から光化学反応により式(I)の化合物が生成される。
【0046】
この実施形態の光源の特定の例は、赤色LED又は赤色又は橙色レーザー、好ましくは赤色又は橙色LEDランプである。赤色及び橙色LEDランプは、広く商業的に入手可能である。赤色及び橙色LEDは、高強度の赤色又は橙色光をもたらすことができる。好ましい実施形態では、複数の個々のLEDを有する可撓性ストリップが前述のストリップに組み込まれる。これにより、例えば、チューブの周りに前述のストリップを好ましくは螺旋状に単に巻き付けることによって、透明なチューブなどの曲面の周りのLEDの半径方向の配向を確実にすることができる。
【0047】
光酸化は、水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物中で行われる。
【0048】
1~8アルカノールは、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘプタノール及びヘキサノールからなる群から選択され、より好ましくは、メタノール、エタノール及びイソプロパノールからなる群から選択される。
【0049】
2~4アルキレンジオールは、好ましくは、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブタン-1,2-ジオール及びブタン-2,3-ジオールからなる群から選択され、好ましくは、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール及びプロパン-1,3-ジオールからなる群から選択される。
【0050】
溶媒混合物は、水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの混合物であり、均一相を形成することが好ましい。
【0051】
溶媒混合物は、水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの混合物であることが好ましい。より好ましくは、溶媒混合物は、水とC1~8アルカノールとの混合物である。
【0052】
更に好ましい溶媒混合物は、水とC1~6アルカノールとの混合物である。
【0053】
より好ましくは、溶媒混合物は、水とメタノール及び/又はエタノール及び/又はイソプロパノールとの混合物である。最も好ましくは、溶媒混合物は、水とメタノール及び/又はエタノールとの混合物である。
【0054】
好ましくは、水のC1~8アルカノール及びC2~4アルキレンジオールの総和に対する体積比は、1:10~1:1の範囲、特に1:5~1:2の範囲にある。
【0055】
非常に好ましい実施形態において、溶媒混合物は水及びメタノールの混合物であり、好ましくは水対メタノールの体積比は、1:20~1:2の範囲、好ましくは1:10~1:2の範囲、より好ましくは1:6~1:3の比の範囲にあり、最も好ましくは1:4である。
【0056】
光酸化が、水と、少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとからなる溶媒混合物中で行われることが、本発明の重要な利点であり、これは、生態学的及び生態毒性学的に全く非常に好ましい溶媒であり、経済的にも有利である。したがって、塩素化溶媒が存在しない状態で上記のプロセスを実施することが非常に好ましい。
【0057】
式(II)の化合物の濃度は、光酸化の開始時に0.002~2.0モル/l、好ましくは0.01~0.2モル/lの範囲であることが好ましい。
【0058】
式(III)の化合物の式(II)の化合物に対する比が、0.005~20モル%、好ましくは0.05~20モル%、より好ましくは0.2~10モル%の範囲であることが更に好ましい。
【0059】
一実施形態では、酸素は、酸素と不活性ガスとを含む混合物の形態で使用される。酸素と不活性ガスとを含むこのような混合物中の酸素の量は、少なくとも15体積%、特に少なくとも20体積%であることが好ましい。このような混合物は、例えば、酸素/窒素混合物又は酸素/アルゴン混合物などの二元混合物であり得る。前述の混合物は、2つ以上の不活性ガスからなる、又はこれらを含むことができる。酸素と不活性ガスとを含むこうした混合物として空気を使用することが特に好ましい。
【0060】
好ましい実施形態では、酸素は、実質的に純粋な形態で使用される、即ち、ガス中の酸素量は、90%~100%、より好ましくは95%~100%、更に好ましくは99%~100%である。
【0061】
光酸化は、大気圧で又は加圧下で行うことができる。酸化は、加圧下、特に2barを超える圧力下、好ましくは3barを超える、より好ましくは2~20barの圧力下で行うことが好ましい。
【0062】
光酸化は、適切な光反応器で行われる。好ましい光反応器は、フロー反応器、特に渦巻き状のフロー反応器である。
【0063】
個々の成分は、別々に又は混合物として光反応器に導入することができる。好ましくは、反応混合物は、光反応器に入る前に調製される。
【0064】
好ましい実施形態の1つでは、酸素含有溶媒混合物は、光反応器に入る前に式(II)の化合物に混合される。
【0065】
別の好ましい実施形態では、溶媒混合物は、光反応器に入る前に既に酸素を含む式(II)の化合物に混合される。
【0066】
最も好ましい実施形態では、式(II)の化合物と溶媒混合物とを少なくとも含む予備混合物に酸素が添加される。
【0067】
この反応は、好ましくは、酸素の圧力を適切な弁及びマスフローコントローラーにより制御する方法で処理される。液体及び気体を使用して光反応を行うためのこの種のプロセス制御装置及び方法は当業者に知られている。
【0068】
前記プロセスが連続プロセスであることが好ましいため、光酸化は連続プロセスを可能にする反応器内で行われることが好ましい。
【0069】
4-ヒドロペルオキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン(式(I)の化合物)は、この光酸化プロセス(工程a)により、非常に高い収率、好ましくは95%を超える、更に好ましくは98%を超える収率、及び非常に高い選択率で得ることができる。
【0070】
更なる態様では、本発明は、式(II)の化合物から式(IV)の化合物を調製する方法であって、
a)上で詳述した化合物(II)を光酸化して、式(I)
【化4】

の化合物を得る工程;
b)還元剤によって式(I)の化合物を還元して、式(IV)
【化5】

の化合物を得る工程;
を含む方法に関する。
【0071】
工程b)における式(I)の化合物の還元のためには、複数の還元剤を使用することができる。
【0072】
還元剤として適切なものは、チオ硫酸塩、トリアルキルアミン、三級ホスフィン、水素、ジチオン酸塩、亜硫酸塩、トリアルキル亜リン酸塩、ヨウ化物、金属、又はジアルキル硫化物とすることができる。
【0073】
還元剤は、好ましくは、Na(チオ硫酸ナトリウム)、NEt(トリエチルアミン)、PPh(トリフェニルホスフィン)、H/PdC、Na(ジチオン酸ナトリウム)、NaSO(亜硫酸ナトリウム)、P(OEt)(亜リン酸トリエチル)、NaI(ヨウ化ナトリウム)、Zn(及び/又は他の金属)、及びDMS(硫化ジメチル)からなる群から選択される。
【0074】
還元剤として好ましいものは、チオ硫酸塩、特にチオ硫酸ナトリウムである。
【0075】
還元剤は、大幅に分子過剰で使用することが好ましく、最も好ましくは、式(I)の化合物に対して2~10当量の量で使用することが好ましい。還元は、水性アルコール中、特に室温で行われることが更に好ましい。
【0076】
還元は、ピンク色への色の変化によって示される。
【0077】
4-ヒドロペルオキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン(式(I)の化合物)の還元は、定量的なスケールで行われ、90%を超える、好ましくは92%を超える4-ヒドロキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン(式(IV)の化合物)の収率を得ることができる。
【0078】
工程b)における還元は、バッチプロセス又は連続プロセスで行うことができる。
【0079】
工程b)は連続的に行われることが好ましい。
【0080】
例えば、還元剤の添加は、上述した光反応器の最後に行うことができる。更に、工程b)の還元はフロー反応器中で行われることが好ましい。
【0081】
図4a及び図4bは、これらの実施形態を更に詳しく示している。
【0082】
更なる態様では、本発明は、式(II)の化合物から式(IV)の化合物を調製する方法であって、
a)上で詳述した化合物(II)の光酸化を行って、式(I)
【化6】

の化合物を得る工程;
b)還元剤によって式(I)の化合物を還元して、式(IV)
【化7】

の化合物を得る工程;
c)>200℃、好ましくは>240℃の温度で、式(IV)の化合物を塩基性物質で処理して、式(V)
【化8】

の化合物を得る工程;
を含む。
【0083】
工程a)及びb)は、既に上で詳細に説明されている。図6は、工程a)、b)及びc)の反応順序を概略的に示している。
【0084】
工程c)では、>200℃、好ましくは>240℃の温度で、式(IV)の化合物を塩基性物質で処理することで、式(V)の化合物を得る。
【0085】
この塩基性物質としては、特に例えばナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、及びセシウムなどのアルカリ金属;例えばカルシウム、マグネシウム、バリウム、及びストロンチウムなどのアルカリ土類金属;並びに分子構造中にこれらの金属のうちの少なくとも1つを含む塩基性化合物;を使用することができる。そのような塩基性物質の例としては、次の化合物が挙げられる:
A.アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化バリウム;並びに
B.アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩及び重炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、及び炭酸マグネシウム;並びに
C.アルカリ土類金属の酸化物、例えば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、及び酸化バリウム;並びに
D.これまで緩衝剤として使用されてきたアルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物、例えばリン酸二水素一カリウムなどのリン酸二水素アルカリとリン酸一水素二カリウムなどのリン酸一水素二アルカリとの適切な混合物、又はホウ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、及び酢酸などの有機カルボン酸のアルカリ金属塩。
【0086】
工程c)は水の存在下で行われることが好ましい。工程c)において、水とは別に少なくとも1種の水溶性アルコール、好ましくはメタノール及び/又はエタノール及び/又はイソプロパノールが存在することが更に好ましい。
【0087】
工程c)は、好ましくは、pHが6.5以上、好ましくは7以上になるように塩基性物質の存在下で行われる。反応混合物の最も好ましいpHは7~14である。
【0088】
工程c)は、還元条件で又は不活性雰囲気で、特に窒素又はアルゴン中で行われることが好ましい。工程c)は、好ましくは還元性物質の存在下で行われる。そのような還元性物質の例は、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、重亜硫酸ナトリウム(NaHSO)、亜ジチオン酸ナトリウム(Na)、及びチオ硫酸ナトリウム(Na)である。
【0089】
好ましくは、塩基性反応混合物は、反応の最後に酸で中和される。
【0090】
好ましくは、反応工程c)は、米国特許第3,957,887号明細書に開示されている通りに、特にその実施例12に記載されている通りに行われる。
【0091】
工程c)の反応は、バッチプロセス又は連続プロセスで行うことができる。
【0092】
工程c)は連続的に行われることが好ましい。
【0093】
工程c)は、工程b)と同時に、又は工程b)の後に行うことができる。言い換えると、工程b)で形成された中間体は、還元工程b)における適切な条件を使用して式(V)の化合物と更に直接反応することができる。但し、工程c)は、工程b)が行われた後、好ましくは完全に行われた後に行われることが好ましい。
【0094】
工程c)はフロー反応器内で行われることが好ましい。
【0095】
工程c)は、工程b)が行われるフロー反応器の後に配置されるフロー反応器中で行われることが好ましい。別の実施形態では、工程b)の反応は、反応工程b)が行われる連続反応器の下流端で行われる。
【0096】
更に別の実施形態では、反応工程a)及びb)及びc)は全て1つのフロー反応器の中で行われ、最初に光酸化(工程a))が行われ、その後下流で工程b)の還元が行われ、そして更に下流で反応工程が行われる。
【0097】
図5a及び図5b及び図5cは、これらの実施形態を更に詳しく示している。
【0098】
本発明は、それぞれ4-ヒドロペルオキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン又は4-ヒドロキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン又は2,3,5-トリメチルヒドロキノンを、高収率且つ高選択率で得られることを示す。特に、これらの物質は全てメシトールに基づくプロセスで高収率且つ高選択率で得られることが示され得る。このプロセスにより、2,3,5-トリメチルヒドロキノンがメシトールから84%を超える総収率(工程a)、b)、c))で得られることが示され得る。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1a】そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光を生成するための光源及びフィルターを用いた光酸化の概略図を示す。
図1b】そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光源を用いた光酸化の概略図を示す。
図2a】1つの実験配置の概略図を示す。
図2b】異なる実験配置の概略図を示す。
図2c】他の異なる実験配置の概略図を示す。
図3】様々なフィルターを使用した光酸化のための光並びに実験で使用した白色光及び赤色LEDの正規化された発光スペクトルを表す。
図4a】工程b)のための連続反応器の概略図を示す。
図4b】工程b)が工程a)の光反応器の最後に行われる実施形態の概略図を示す。
図5a】工程c)のための連続反応器の概略図を示す。
図5b】工程c)及びb)が工程a)の光反応器の最後に行われる実施形態の概略図を示す。
図6】工程a)及びb)及びc)の概略反応スキームの概要を示す。
【0100】
図2aでは、1つの好ましい実験レイアウトが表されている。少なくとも式(II)の化合物及び式(III)の光増感剤と、水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物とを含む予備混合物(10)を含む容器が、ポンプ(7)によって光反応器(5)に送り込まれる。光反応器(5)に入る前に、好ましくは空気の形態の酸素(11)が、光酸化反応混合物(3)を形成する予備混合物に混合される。混合される酸素の量は、マスフローコントローラー(8)によって制御される。直線状の管状光反応器(5)の透明壁(4)の周りに、光源(1)が、特にLEDの螺旋状の配列で配列される。光源(1)は一実施形態では白色LEDである。透明な壁部(4)と光源(1)との間にフィルター(6)を配置することにより、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光(2a)を供給することが可能になる。フィルター(6)は、具体的には、その光が持つスペクトルのピーク波長(λmax)がそれぞれ585~625nmの範囲又は625~740nmの範囲にある特定の光を供給するための橙色フィルター又は赤色フィルターである。別の好ましい実施形態では、光源(1)は橙色LED又は赤色LEDのいずれかであり、特に赤色LEDであり、その場合にはフィルター(6)は存在しない。光反応器(5)は、好ましくは渦巻き状のフロー反応器である。光反応器の出口には、生成物が収集容器(12)に収集される前に、背圧調整器(9)が配置される。
【0101】
この実験レイアウト、特に光源と光反応器の組み合わせは、より大量の光反応に使用されることが好ましい。
【0102】
図2bでは、別の好ましい実験レイアウトが表されている。少なくとも式(II)の化合物及び式(III)の光増感剤及び水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物を含む予備混合物(10)を含む容器から光反応器(5)にポンプ(7)を用いて送液する。予備混合物が光反応器(5)に流入する前に酸素(11)を混合し、光酸化反応混合物(3)を形成する。混合する酸素の量はマスフローコントローラー(8)で調整する。
【0103】
一実施形態では、光源(1)は白色LEDである。光反応器(5)の透明な壁(4)と光源(1)との間にフィルター(6)が配置されることにより、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの範囲にある光(2a)を供給することが可能になる。本表示では、1つの光源(1)と1つのフィルター(6)のみが示されている。当然ながら、フィルター(6)と組み合わされたいくつかのこのような光源(1)が、光反応器(5)の周りに渦巻き状のフロー反応器の形態で配置され、光反応器(5)全体の照射さえ可能にするように配置されることは可能である。フィルター(6)は、具体的には、その光が持つスペクトルのピーク波長(λmax)がそれぞれ585~625nmの範囲又は625~740nmの範囲にある特定の光を供給するための橙色フィルター又は赤色フィルターである。望ましくない波長(2b)を有する光はフィルター(6)で遮断される。別の好ましい実施形態では、光源(1)は橙色LED又は赤色LEDのいずれかであり、より好ましくは赤色LEDであり、その場合にはフィルター(6)は存在しない。光反応器の出口には、生成物が収集容器(12)に最終的に収集される前に、背圧調整器(9)が配置される。
【0104】
この実験レイアウト、特に光源と光反応器の組み合わせは、より少量の光反応に使用されることが好ましい。
【0105】
図2cでは、別の好ましい実験レイアウトが表されている。少なくとも式(II)の化合物及び式(III)の光増感剤と、水と少なくとも1種のC1~8アルカノール又は少なくとも1種のC2~4アルキレンジオールとの溶媒混合物とを含む予備混合物(10)を含む容器が、ポンプ(7)によって光反応器(5)に送り込まれる。光反応器(5)に入る前に、好ましくは空気の形態の酸素(11)が、光酸化反応混合物(3)を形成する予備混合物に混合される。混合される酸素の量は、マスフローコントローラー(8)によって制御される。
【0106】
この実施形態では、光源(1)、好ましくは赤色LEDが、渦巻き状のフロー反応器(5)の螺旋状の巻きによって形成された中空空間に配列される。
【0107】
一実施形態では、光源(1)は白色LEDである。光源(1)の周囲、即ち、光反応器(5)の透明な壁部(4)と光源(1)との間にフィルター(6)が配置されており、それによって、そのスペクトルのピーク波長(λmax)が580~780nmの間にある光(2a)を供給することが可能になる。フィルター(6)は、具体的には、その光が持つスペクトルのピーク波長(λmax)がそれぞれ585~625nmの範囲又は625~740nmの範囲にある特定の光を供給するための橙色フィルター又は赤色フィルター、好ましくは赤色フィルターである。望ましくない波長を有する光(2b)は、フィルター(6)によってフィルタリングされる。
別の好ましい実施形態では、光源(1)は橙色LED又は赤色LEDのいずれかであり、好ましくは赤色LEDであり、その場合にはフィルター(6)は存在しない。光反応器の出口には、生成物が収集容器(12)に最終的に収集される前に、背圧調整器(9)が配置される。
【0108】
この実験レイアウト、特に光源と光反応器の組み合わせは、より少量の光反応に使用されることが好ましい。
【0109】
更に別の実施形態では、図2b)及び2c)の光源(1)及びフィルター(6)が組み合わされる。換言すれば、フィルター及び光源は、渦巻き状のフロー光反応器(5)の螺旋状の巻きによって形成された空間の内側及び外側に配列された光反応器の壁の外側に配列することができる。
【0110】
図4aには、式(I)の化合物の還元を連続的に行うことを可能にする反応工程b)の好ましい実験レイアウトが示されている。式(I)の化合物(13)は、ポンプ(7)によって還元用反応器(14)へと送り込まれ、そこに還元剤(15)もポンプ(7)によって添加される。これの変形形態では、式(I)の化合物及び還元剤の添加は、式(I)の化合物が反応器(14)に入る前に実現される。更なる成分(図4aには示されておらず)が還元に使用される場合、前記追加の成分は、還元剤(15)又は式(I)の化合物(13)のいずれかに添加されてもよく、或いは還元反応器(14)に別々に供給されてもよい。還元用反応器(14)において、式(I)の化合物は式(IV)の化合物に還元されて、反応器から式(IV)の化合物の収集容器(12)に移される。
【0111】
図4bには、メシトールの光反応と式(I)の化合物の還元の両方を連続的に行うことを可能にする、反応工程a)及びb)のより好ましい実験レイアウトが示されている。示されている実施形態は、基本的には図2cと図4aに示されている図の組み合わせに対応する。しかしながら、この実施形態では、式(I)の化合物を光反応器(5)の出口から反応器の入口に直接移送して、式(I)の化合物を式(IV)の化合物に還元する。
【0112】
図5aには、反応工程c)の好ましい実験レイアウトが示されている。式(IV)の化合物(16)は、ポンプ(7)によって熱処理用反応器(17)へと送り込まれ、そこに塩基性物質(18)もポンプ(7)によって添加される。これの変形形態では、式(IV)の化合物及び塩基性物質の添加は、式(IV)の化合物が反応器(17)に入る前に実現される。更なる成分(図5aには示されておらず)が熱処理に使用される場合、前記追加の成分は、塩基性物質(18)又は式(IV)の化合物(16)のいずれかに添加されてもよく、或いは熱処理用反応器(17)に個別に供給されてもよい。
【0113】
熱処理用反応器(17)において、式(IV)の化合物は式(V)の化合物に変換され、これは反応器から式(V)の化合物の収集容器(12)に移される。
【0114】
図5bには、メシトールの光反応、及び式(I)の化合物の還元、及び式(IV)の化合物の熱処理を全て連続して行うことを可能にする、反応工程a)及びb)及びc)のより好ましい実験レイアウトが示されている。示されている実施形態は、基本的には図4bと図5aに示されている図の組み合わせに対応する。しかしながら、この実施形態では、式(IV)の化合物は、還元反応器(14)の出口から式(IV)の化合物の式(V)の化合物への熱処理用の反応器の入口に直接移される。
【符号の説明】
【0115】
1 光源
2a 望ましい波長の光
2b 望ましくない波長の光
3 光酸化反応混合物
4 光反応器の透明壁
5 光反応器
6 フィルター
7 ポンプ
8 マスフローコントローラー
9 背圧調整器
10 予備混合物
11 酸素
12 収集容器
13 式(I)の化合物
14 還元用反応器
15 還元剤
16 式(IV)の化合物
17 熱処理用反応器
18 塩基性物質
【0116】
[実施例]
本発明を以下の実験によって更に説明する。
【0117】
[実施例1:2,4,6-トリメチルフェノールの光酸化(工程a)]
以下の実験では、図2cに概略的に表されている実験レイアウトを使用した:
【0118】
溶媒の予備混合物(10)、それぞれ溶媒混合物及び光酸化される物質並びに光増感剤を含む容器が、ポンプ(7)によって渦巻き状のフロー反応器である光反応器(5)に送り込まれる。光反応器(5)に入る前に、空気の形態の酸素(11)が、光酸化反応混合物(3)を形成する予備混合物に混合される。混合される空気の量は、マスフローコントローラー(8)によって制御される。光源(1)の光は赤色LED(12×OSLON(登録商標)SSL Hyper red、λmax=660nm、12個のLEDで約9W&700lm、GH CSSPM1.24、視野角120°、周囲温度(約20℃)を維持するためのCPU冷却系(10V)(フィルターは使用せず)(図3のLSrとして示されるスペクトルを参照))であり、その結果望まれる波長の光(2a)が光反応器(5)の透明な壁(4)に当たるようにされる。
光反応器(5)は、ファンで冷却されたLEDランプ(1)の周囲の内側ガラス製シリンダー上に巻き付けられている。光反応器の出口には、生成物が収集容器(12)に最終的に収集される前に、背圧調整器(9)が配置される。
【0119】
より正確には、光酸化は以下の通り行われた:
2,4,6-トリメチルフェノール(20.0mmol・L-1、2.00mmol[反応期間中]、1.0当量)とメチレンブルー水和物(0.180nmol、0.900mol%)[CAS:122965-43]-9])との溶液をメタノール及び水(4:1、v/v)の中で調製することで、均一な青色の溶液を得る。
この溶液を、高圧液体クロマトグラフィーポンプ(Dionex P580)を通して、光反応器(チューブシステム:内径0.75mm、外径1.58mm、PFAコイル)に10barの一定圧力(液体流量:0.093mL/分、HPLC調整ピストンポンプ)で送る(背圧調整器により調整、Equilibar Zero-Flow ZF1背圧調整器、コンピュータ制御)。
【0120】
光反応器に入る前に、溶液を空気で富化する(空気流量:0.500mL/分、マスフローコントローラー、Bronkhorst El-FLOW、モデル:FG-200CV-AAD-22-K-DA-000S/N:M19209993A)。光反応器内で、反応混合物に赤色LED光源(12×OSLON(登録商標)SSL Hyper red,λmax=660nm、12個のLEDで約15W&700lm、GH CSSPM1.24、視野角120°)(図3のLSrとして示すスペクトルを参照)を40分の滞留時間の間に照射する。完全な変換は薄層クロマトグラフィー(4:1シクロヘキサン/EtOAc、R(基質)=0.63、R(生成物)=0.3)によって確認された。光反応器は、2台のバン(光反応器内側の1台:CPU冷却系、光反応器外側の1台:通常のバン)によって周囲温度(20℃)に保たれる。 反応混合物(100mL)を、セプタムと過圧を防止するための針出口とを備えた250mL丸底フラスコに回収する。メタノールを減圧下で一定の残留量になるまで除去する(15mbar)。水(50mL)を残渣に添加し、溶液を酢酸エチル(3×50mL)で抽出する。合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、有機溶媒を減圧下(15mbar)で除去することで、緑色から灰色の粘稠なワックスとして4-ヒドロペルオキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-オンが得られる(340mg、収率99%)。
【0121】
[実施例2:4-ヒドロペルオキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オンの還元(工程b)]
50mL丸底フラスコの中に、実施例1で調製した4-ヒドロペルオキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オン(300mg、1.78mmol、1.0当量)の黄色溶液を入れ、メタノールと水(25mL、4:1v/v)の中のチオ硫酸ナトリウム(1.40g、8.90mmol、5.0当量)を調製する。薄層クロマトグラフィー(4:1シクロヘキサン/EtOAc、R(基質)=0.3、R(生成物)=0.2)により完全な変換が観察されるまで、反応混合物を周囲温度で撹拌する。黄色からピンク色への溶液の色の変化が観察される。メタノールを減圧下で除去する。水(30mL)を残渣に添加し、溶液を酢酸エチル(3×25mL)で抽出する。合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、有機溶媒を減圧下(15mbar)で除去することで、4-ヒドロキシ-2,4,6-トリメチルシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オンが黄緑色の粘稠なワックスとして得られる(253mg、収率93%)。
【0122】
[実施例3:2,3,5-トリメチルヒドロキノンの形成(工程c)]
以下の実験では、図5aに概略的に表されている実験レイアウトを使用した:
【0123】
実施例2で得られた4-ヒドロキシ-2,4,6-トリメチル-2,5-シクロヘキサジエン-1-オン(4.7g、30mmol)のNaOH水溶液(440ml、0.008mol/l)、メタノール(50ml)、及び亜硫酸ナトリウム(235mg、1.9mmol)を、250℃で10ml/分でフロー反応器(直径1.5mm、長さ:2000mm)にポンプで通した。溶液をフロー反応器の最後で硫酸(1.47ml)で中和した。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、MgSOで乾燥し、真空で濃縮した。2,3,5-トリメチルベンゾキノン(4.45g、95%)が92%の収率で得られた。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
【国際調査報告】