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特表2023-553603マイクロデバイスの追跡および視覚化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】マイクロデバイスの追跡および視覚化システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/15 20060101AFI20231218BHJP
   A61B 8/14 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
A61B8/15
A61B8/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534154
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2021085202
(87)【国際公開番号】W WO2022123013
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20306554.5
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521440482
【氏名又は名称】ロビューテ
(71)【出願人】
【識別番号】518170446
【氏名又は名称】ソルボンヌ ウニベルシテ
(71)【出願人】
【識別番号】523083735
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィケ
(71)【出願人】
【識別番号】511074305
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ,クェンティン
(72)【発明者】
【氏名】デュプラ,ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】ハリヨ,シナン
(72)【発明者】
【氏名】レニエ,ステファヌ
(72)【発明者】
【氏名】ザラデル,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】クチュール,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】クデール,アントワーヌ
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601DD11
4C601DE17
4C601EE09
4C601GA20
4C601GA28
4C601JC06
(57)【要約】
標的身体部分(10)の外部から遠隔で操作および制御されるマイクロデバイスと、標的身体部分(10)の1つの超音波画像(29)を保存するためのメモリ(28)を含む制御ユニット(20)と、患者の固定身体部分(24)と接触する1つのプローブ(22)と、該マイクロデバイスに接続された少なくとも1つのトラッカと、を含む、標的身体部分(10)の内部でマイクロデバイスを局在化するシステム(18)であって、プローブ(22)およびトラッカが、超音波で通信することにより、制御ユニット(20)が、プローブ(22)に対して画定された内部参照(R)内でトラッカを実時間で局在化することができ、制御ユニット(20)が、超音波画像(29)をスクリーン(30)に表示し、超音波画像(29)上のマイクロデバイスの局在化を実時間で表示する、システム(18)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の標的身体部分(10)をモニタリングするように構成され、前記標的身体部分(10)の内部でマイクロデバイス(16)を局在化するマイクロデバイス(16)の追跡および視覚化システム(18)であって、前記追跡システム(18)が、
- 前記標的身体部分(10)外部から遠隔で操作および制御されるように設計されたマイクロデバイス(16)と、
- メモリ(28)を含む制御ユニット(20)であって、前記メモリが、前記標的身体部分(10)の少なくとも1つの超音波画像(29)を保存するように構成される、制御ユニット(20)と、
- 前記患者の固定身体部分(24)と接触するように構成された少なくとも1つのプローブ(22)であって、前記固定身体部分(24)が、前記標的身体部分(10)を少なくとも部分的に取り囲む、プローブ(22)と、
- 前記マイクロデバイス(16)に接続されるように構成された少なくとも1つのトラッカ(26)と、
- 少なくとも1つのスクリーン(30)と、
を含み、
前記少なくとも1つのプローブ(22)および前記少なくとも1つのトラッカ(26)が、超音波技術を利用して通信することで、前記制御ユニット(20)が、前記少なくとも1つのプローブ(22)に対して画定された内部参照(R)内の前記標的身体部分(10)の内部で前記少なくとも1つのトラッカ(26)を実時間で局在化することができ、
前記制御ユニット(20)がさらに、前記スクリーン(30)上に前記少なくとも1つの保存された超音波画像(29)を表示し、前記少なくとも1つの超音波画像(29)上の前記マイクロデバイス(16)の局在化を実時間で表示するように設計される、システム(18)。
【請求項2】
前記超音波画像(29)が、前記少なくとも1つのプローブ(22)を利用して取得される、先行する請求項に記載のシステム(18)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの超音波画像(29)が、ULM画像である、先行する請求項に記載のシステム(18)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプローブ(22)が、少なくとも1つの超音波トランスデューサを含み、前記少なくとも1つのトラッカ(26)が、少なくとも1つの超音波センサを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム(18)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプローブ(22)が、少なくとも1つの超音波センサを含み、前記少なくとも1つのトラッカ(26)が、少なくとも1つの超音波トランスデューサを含む、請求項1に記載のシステム(18)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのトラッカ(26)が、圧電トランスデューサを含む、先行する請求項に記載のシステム(18)。
【請求項7】
前記マイクロデバイス(16)が、直径3μm~3mm、長さ最大2cmである、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム(18)。
【請求項8】
前記マイクロデバイス(16)の前記局在化が、前記局在化を実施するために用いられる前記超音波の波長の半分のサイズより良好な精度に達する、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム(18)。
【請求項9】
前記制御ユニット(20)の前記メモリ(28)が、前記標的身体構造(10)の連続した超音波画像(29)を保存するように構成され、それぞれの新しい超音波画像(29)が前の画像に置き換わる、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム(18)。
【請求項10】
前記超音波画像の取得が、実時間で実行され、前の超音波画像の取得が終了するとすぐに、新しい超音波画像の取得が開始され、新しい画像の取得が終了するとすぐに、それぞれの新しい超音波画像(29)が前の画像に置き換わる、先行する請求項に記載のシステム(18)。
【請求項11】
前記標的身体部分(10)が、患者の脳である、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム(18)。
【請求項12】
前記マイクロデバイス(16)が、前記標的身体部分(10)の内部で少なくとも1種の造影剤を滴下注入するように設計され、前記制御ユニット(20)が前記少なくとも1種の造影剤を局在化して前記超音波画像(29)上で表示することができる、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム(18)。
【請求項13】
先行する請求項のいずれか1項に記載の追跡システム(18)を利用して実施されたマイクロデバイス(16)追跡および局在化方法であって、前記方法が、
- 前記マイクロデバイス(16)の実時間追跡と、
- 前記内部参照(R)内の前記マイクロデバイス(16)の実時間局在化と、
- 前記標的身体構造(10)の内部の前記デバイス(16)の実時間局在化と、
を同時に可能にし、
前記方法がさらに、
- スクリーン(30)上に、患者の標的身体部分(10)の超音波画像(29)が前記内部参照(R)と整列されている視覚化と、
- スクリーン(30)上に、前記表示された超音波画像(29)内での前記マイクロデバイス(16)局在化の実時間表示と、
を同時に可能にする、方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのプローブ(22)が、2つの動作モード:
- 前記少なくとも1つのプローブ(22)が前記超音波画像(29)を取得中の取得モードと、
- 前記少なくとも1つのプローブ(22)が前記少なくとも1つのトラッカ(26)と通信中の追跡モードと、
を表示し、
前記少なくとも1つのプローブ(22)が、前記取得モードから前記追跡モードに、少なくとも1回、切り替えられる、先行する請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記超音波画像(29)が、
- 少なくとも1つのマイクロデバイス(16)経路を計画すること、
- 前記マイクロデバイス(16)経路の追従を実時間でモニタリングすること、
- 前記計画された経路上に障害物があするかどうかを実時間で判断すること、
- 必要に応じて、前記障害物を回避するために新しいマイクロデバイス(16)経路を計画すること、
に用いられる、請求項12または13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、同じプローブによる、患者の標的身体構造の内部のデバイス局在化に用いられる超音波配置およびイメージングに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
一部の先進医療では、例えば非常に正確な量の薬物を非常に正確なポイントに送達するために患者の標的身体部分に挿入された、マイクロロボットの使用に関するかもしれない。安全性を考慮すると、このマイクロロボットは、できるだけ自律しているべきであり、最も好ましくは患者の体外から非接触で制御されるべきである。このため、マイクロデバイスは、標的身体部分の内部を移動しながら追跡され、正確に配置されるように、内部参照を含む無線局在化システムが必要である。また、このシステムは、外科医が状況を完全に制御することができるように、標的身体部分の内部でのマイクロロボットの局在化を正確に3D視覚化することができるべきである。
【0003】
標的身体部分の解剖学的構造に対応して、この種のマイクロロボット用の追跡システム、特に局在化を改善することが求められている。機能的領域、血管または神経などの解剖学的特徴に関係するマイクロロボットの位置は、標的身体部分の内部でのロボットの経路および標的ポイントを画定することになるため、最も重要である。このため3Dイメージングモダリティーは、これらの特徴を予想して経路計画作成を行うために必要である。さらに、イメージングモダリティーおよびマイクロロボットの位置決めは、1mm以上の精度で完全に共位置合わせされなければならない。このため、イメージングシステムおよび位置決めシステムが、理想的には同じ技術を通して同じ内部参照で実施されることが、重要である。
【0004】
加えて、脳の場合には、脳は、頭蓋骨内に包まれていても、動いたり、歪んだり、膨らんだり、広がったりすることができる。マイクロロボット自身が、組織を通って移動する際に、周囲の解剖学的構造を変化させるかもしれない。血流などの組織生理は、マイクロロボットおよびその動作により影響を受けるかもしれない。その結果、参照空間内で局在化されたマイクロロボットの最新の空間情報を得るためには、マイクロロボットの位置を伴った画像の更新を頻繁に提供することが理想的だろう。2つの要素間の一般に知られる無線通信路は、超音波通信である。そのような技術は、ロボットを位置決めするために用いられ得る。信頼性のある3D身体画像を得るための一般に知られる方法もまた、超音波イメージングである。そのため、両方の手法は、類似または同一の装置で交互に実施され得る。
【0005】
3D超音波イメージング、輝度モード、エラストグラフィーまたはドップラーのためのいくつかの実装が存在する。血管網を高精度でイメージングする可能性の1つが、超音波局在顕微鏡法(ULM)である。ULMの核となる概念は概して、画像化される媒体内に、まばらな点源を導入することで、特定の部分を強調する非常に高精度な超音波画像法として知られる。これらの点源は通常、空気のマイクロバブル、より正確には、造影剤とも呼ばれる数百万個のマイクロバブルである。例えば脳血管系のような、標的身体構造のULM画像を得るために、マイクロバブルが、患者に注射される。多くの3D経頭蓋画像が、取得される。マイクロバブルが局在化されて、数分以内に3D ULM画像が得られる。これらのマイクロバブルのおかげで、血管系が回折限界未満で解像される(精度はλ/10精度に達する)。こうして、各バブル中心を別個に局在化し、それらの位置を蓄積して、波長より数倍小さな血管網を復元することにより、超解像画像が構築される。マイクロバブル(直径1~3μm)を使用すると、その高い変形により、イメージングシステムは、波長のほぼ半分である古典的な波の回折理論による精度限界を上回り、波の透過(低い波周波数範囲に有利)と画像解像度(高い波周波数範囲に有利)の間に見出される通常の妥協点を回避することができる。これにより、従来の超音波検査、特にドップラー超音波検査により構築された画像では見えない詳細を視覚化することができる。特に脳の血管分布に関して、この技術は、患者の脳血管系の正確な3Dマッピングを可能にする高精度画像を作成することができる。
【0006】
ULMで提案された手法はまた、超音波でのマイクロロボットの位置決めを改善するために実施され得る。ULMにおけるマイクロバブルの局在化は、波長による解像では制限されず、むしろマイクロバブルの検出につながる信号対雑音比(SNR)による解像で制限される。同様の概念が、非常に高いSNRを生じ得るロボットの局在化、つまり非常に正確な局在化を可能にするために実施され得る。この精度は、頭蓋骨を透過することが可能な周波数であれば、100マイクロメートルをはるかに下回り得る(<3MHz)。
【0007】
本発明は、標的身体部分の3D画像を取得するため、またはマイクロデバイスを追跡するため、のいずれかに用いられる超音波信号を共位置合わせして、視覚化および追跡精度の問題を解決することを目的とする。
【発明の概要】
【0008】
概要
このため、本発明は、患者の標的身体部分をモニタリングするように構成され、標的身体部分の内部でマイクロデバイスを局在化するマイクロデバイスの追跡および視覚化システムに関し、該追跡システムは、
- 標的身体部分の外部から遠隔で操作および制御されるように設計されたマイクロデバイスと、
- メモリを含む制御ユニットであって、該メモリが、標的身体部分の少なくとも1つの超音波画像を保存するように構成される、制御ユニットと、
- 患者の固定身体部分と接触するように構成された少なくとも1つのプローブであって、該身体固定部分が、標的身体部分を少なくとも部分的に取り囲む、プローブと、
- マイクロデバイスに接続されるように構成された少なくとも1つのトラッカと、
- 少なくとも1つのスクリーンと、
を含み、
少なくとも1つのプローブおよび少なくとも1つのトラッカは、超音波技術を利用して通信することで、制御ユニットが、少なくとも1つのプローブに対して画定された内部参照内の標的身体部分の内部で少なくとも1つのトラッカを実時間で局在化することができ、
制御ユニットはさらに、スクリーン上に少なくとも1つの保存された超音波画像を表示し、少なくとも1つの超音波画像上のマイクロデバイスの局在化を実時間で表示するように設計される。
【0009】
この手法により、マイクロデバイスの局在化と超音波画像の完全な整列が保証される。こうして、標的身体部分の内部のマイクロデバイスの正確な視覚化が可能になり、マイクロデバイスの正確かつ適切な制御および経路計画作成を行うことができる。
【0010】
本発明による追跡システムは、互いに別々に採用される、または互いに組み合わされる、以下の特徴の1つまたは複数を含んでもよい:
- 超音波画像が、少なくとも1つのプローブを利用して取得されてもよい、
- 少なくとも1つの超音波画像が、ULM画像であってもよい、
- 少なくとも1つのプローブが、少なくとも1つの超音波トランスデューサを含んでもよく、少なくとも1つのトラッカが、少なくとも1つの超音波センサを含む、
- 少なくとも1つのプローブが、少なくとも1つの超音波センサを含んでもよく、少なくとも1つのトラッカが、少なくとも1つの超音波トランスデューサを含んでもよい、
- 少なくとも1つのトラッカが、圧電トランスデューサを含んでもよい、
- マイクロデバイスが、直径3μm~3mm、長さ最大2cmであってもよい、
- マイクロデバイスの局在化が、局在化を実施するために用いられる超音波の波長の半分のサイズより良好な精度に達してもよい、
- 制御ユニットのメモリが、標的身体構造の連続した超音波画像を保存するように構成され、それぞれの新しい超音波画像が前の画像に置き換わってもよい、
- 超音波画像の取得が、実時間で実行され、前の超音波画像の取得が終了するとすぐに、新しい超音波画像の取得が開始され、新しい画像の取得が終了するとすぐに、それぞれの新しい超音波画像が前の画像に置き換わってもよい、
- 標的身体部分が患者の脳であってもよい、
- マイクロデバイスが、標的身体部分の内部で少なくとも1種の造影剤を滴下注入するように設計され、制御ユニットが少なくとも1種の造影剤を局在化して超音波画像上で表示することができてもよい。
【0011】
本発明はまた、前述の特徴の任意の1つに従って追跡システムを利用して実施されたマイクロデバイス追跡および局在化方法に関し、該方法は、
- マイクロデバイスの実時間追跡と、
- 内部参照内のマイクロデバイスの実時間局在化と、
- 標的身体構造内部のデバイスの実時間局在化と、
を同時に可能にしてもよく、
該方法はさらに、
- スクリーン上に、患者の標的身体部分の超音波画像が内部参照と整列されている視覚化と、
- スクリーン上に、表示された超音波画像内でのマイクロデバイス局在化の実時間表示と、
を同時に可能にする。
【0012】
該方法は、互いに別々に採用される、または互いに組み合わされる以下のステップを含んでもよい:
- 少なくとも1つのプローブが、2つの動作モード:
〇 少なくとも1つのプローブが超音波画像を取得中の取得モードと、
〇 少なくとも1つのプローブが少なくとも1つのトラッカと通信中の追跡モードと、
を表示してもよく、該少なくとも1つのプローブが、取得モードから追跡モードに、少なくとも1回、切り替えられてもよく、
- 超音波画像が、
- 少なくとも1つのマイクロデバイス経路を計画すること、
- マイクロデバイス経路の追従を実時間でモニタリングすること、
- 計画された経路上に障害物があるかどうかを実時間で判断すること、
- 必要に応じて、障害物を回避するために新しいマイクロデバイス経路を計画すること、
に用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】標的身体構造の超音波画像である。
図2】本発明による追跡システムの概略図である。
図3】本発明によるマイクロデバイスに固定された2つのトラッカの概略図である。
図4】本発明による追跡システムを利用して得られた視覚化の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な記載
図1に見られるように、脳血管系12のような典型的な標的身体部分10には、驚くほど多くの血管14がある。例えば腫瘍のような、いくつかの健康問題を治療するために、いくつかの治療では、マイクロデバイス16、例えばマイクロロボットが、標的身体部分10の正確なポイントを具体的に狙って、このポイントに所与の量の薬物を送達することを伴うことがある。そのようなマイクロデバイス16は、通常、直径3μm~3mm、長さ最大2cmである。
【0015】
マイクロデバイス16のスケールで動作することができ、マイクロデバイス16が標的身体部分10の内部で動いている間の正確な視覚化を十分に得るためには、本発明による追跡システム18のような、非常に正確な遠隔追跡システムに頼ることが不可欠である。この遠隔パラダイムには、埋め込まれたトラッカの体積および用いられるエネルギーに高い制約がある。この観点から、追跡システムは、サブミリメートルの位置精度、100mm以上の深さ、実時間更新(20Hzから)、非侵襲性、最小限かつ最高でマイクロサイズ、最高でエネルギー的に不活性、人体に有害でないこと、といった複数の厳しい要件に応えなければならない。
【0016】
この視覚化を実現するために、追跡システム18は、
- 制御ユニット20と、
- 患者の標的身体部分10を少なくとも部分的に取り囲む固定身体部分24に取り外し可能に固定されるように構成された少なくとも1つのプローブ22と、
- 標的身体部分10の内部に導入されたマイクロデバイス16に接続されるように構成された少なくとも1つのトラッカ26と、
を含む。
【0017】
図2に示された実施形態において、システム18は、2つのプローブを含み、該プローブのそれぞれが患者のこめかみに固定されている。このため、この実施形態における固定身体部分24は、患者の額、より正確には頭蓋骨である。
【0018】
少なくとも1つのプローブ22は、固定身体部分24と接触している。いくつかの実施形態において(図示せず)、プローブ22は、固定身体部分24の周辺で手動で取り扱われる。技術的理由から、身体部分24および少なくとも1つのプローブ22の上に若干のゲルが塗られることが、一般に知られている。それでも、少なくとも1つのプローブ22は、固定身体部分24と接触していると見なされる。いくつかの代替的実施形態において、プローブ22は、図2に見られるように、例えばヘルメットまたは弾性ホルダを利用して、身体部分24に固定される。プローブ22はまた、例えばねじ止めシステムを利用して、固定身体部分24に直接固定されてもよい。この場合、プローブ22は、患者の固定身体部分24に外科的に固定されるべきである。
【0019】
各プローブ22は、一方では制御ユニット20と、他方ではマイクロデバイス16に固定された少なくとも1つのトラッカ26と、常時通信している。各プローブ22は、少なくとも1つの超音波トランスデューサ、例えば圧電トランスデューサを含む。
【0020】
本出願において、用語「トランスデューサ」は、「エミッタ」と同義的に用いられ、用語「センサ」は、「レセプタ」と同義的に用いられる。
【0021】
このトランスデューサは、超音波を標的身体部分10の内部のマイクロデバイス16上のトラッカ26に送信する(図4に見られるように)。いくつかの実施形態において、トラッカ26は、パッシブトラッカであり、例えば図3に示されたようなカプセル化ガスポケット27を含む。このパッシブパラダイムでは、患者の固定身体部分24(この場合、頭蓋骨)に固定されたプローブ22(図2に示された実施形態の外部トランスデューサ)は、超音波を標的身体部分10(この場合、ヒトの脳)の内部に送信する。パッシブトラッカ26は、入射波を受信して散乱させる。この波は、プローブ22に向かって戻り固定身体部分24(この場合、頭蓋骨)まで移動する。最初の送信から受信までの飛行時間が、波の移動距離を得るために用いられる。複数のプローブ22を利用することで、プローブ22に対するトラッカ26の3D位置を相対的に得ることができる。
【0022】
いくつかの代替的実施形態において、トラッカ26は、プローブ22に能動的に信号を放出するアクティブトラッカであり得る。それらの場合、各プローブ22は、少なくとも1つの超音波センサを含み、トラッカ26は、少なくとも1つの超音波トランスデューサ、例えば圧電トランスデューサを含む。該システムの全体的機能は、同じであり、超音波がトラッカ26により放出され、プローブ22に向かって固定部分24まで移動する。
【0023】
既に述べた通り、いくつかの実施形態において、パッシブトラッカの場合のトラッカ26は、マイクロデバイス16に取り付けられた少なくとも1つのカプセル化ガスポケット27を含み得る。この解決策は、超音波造影剤の原理から得ている。この実施形態において、各カプセル化ガスポケット27は、超音波反射性が非常に高い物体として形成される。これらのカプセル化ガスポケット27は、組織と比較して大きな音響インピーダンスを有する。これにより、ガスポケット27は、プローブ22から送信された入射超音波を効率的に散乱させることができるため、局所的にコントラストを向上させることができる。物体の局在化精度は、信号対雑音比に依存するため、波長より小さなマイクロデバイス16を標的脳部分10、特に脳の深部において非侵襲的方法で追跡することができる。この実施形態に関して、トラッカ26は、完全な3D配向および局在化トラッカ26を構築するために、検出波長の半分以上離れた複数のカプセル化ガスポケット27を組み合わせている。少なくとも2つのカプセル化ガスポケット27が、マイクロデバイス16の配向を得るために必要である。
【0024】
制御ユニット20はさらに、内部参照Rを保存するメモリ28を含む。この内部参照Rは、標的身体部分10に関する各プローブ22の絶対位置を基準にして画定される。
【0025】
メモリ28はさらに、標的身体部分10の少なくとも1つの超音波画像29を保存する。超音波画像29は、ULM画像、Bモード画像、ドップラー画像、またはエラストグラフィー画像であり得る。それらの超音波画像29は全て、同じ超音波プローブで実施され得る。内部参照Rにより、トラッカ26の超音波追跡と超音波画像29取得との共位置合わせが可能になる。いくつかの実施形態において、メモリはまた、各プローブ22が固定される固定身体部分24の少なくとも1つの事前準備された画像を保存する。それらの場合、制御ユニット20は、内部参照R内の少なくとも2つの画像を整列させて、各プローブ22に対する標的身体部分を正確に位置決めする。いずれの場合でも、制御ユニット20は、内部参照Rの内部の標的身体部分10の任意のポイントを正確に位置決めすることができる。
【0026】
その後、各プローブ22により感知された情報は、制御ユニット20に実時間で送信され、制御ユニット20は、こうして標的身体部分10の内部で少なくとも1つのトラッカ26を内部参照Rに関して実時間で局在化することができる。
【0027】
既に述べた通り、メモリ28は、例えば図1に示された画像のように、標的身体構造10の少なくとも1つの超音波画像29を保存するように構成される。この超音波画像は、例えばULM画像であり得る。制御ユニット20は、それぞれの保存された超音波画像29を内部参照Rと整列させる。この整列された超音波画像29は、患者の標的身体構造10の正確な3Dマッピングを提供する。ULM画像の場合、標的身体構造10の非常に正確な3Dマッピングを提供する。この超音波画像29は、システム18による標的身体構造10のモニタリング前、またはシステム18による標的身体構造10のモニタリング中、のどちらかに得られる。より詳細には、いくつかの実施形態において、共位置合わせを改善するために、超音波画像29は、トラッカ26を追跡および位置決めするために用いられたものと同じプローブ22で実施される。
【0028】
所望の共位置合わせに到達するために、少なくとも1つのプローブ22が、2つの動作モード:
- 少なくとも1つのプローブ22が超音波画像29を取得中の取得モードと、
- 少なくとも1つのプローブ22が超音波を利用して少なくとも1つのトラッカ26と通信中の追跡モードと、
を表示し、少なくとも1つのプローブ22は、取得モードから追跡モードに、少なくとも1回、切り替えられる。これによりシステム18は、マイクロデバイス16の追跡と超音波画像29の取得とを同時に行うことができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、制御ユニット20のメモリ28は、標的身体部分10の複数の超音波画像29を保存し得る。メモリ28は、こうして標的身体構造10の連続した超音波画像29を保存し得る。いくつかの実施形態において、記憶エネルギーを低減するために、それぞれの新しい超音波画像29は、メモリ28の内部で前の画像と置き換わる。システム18によるモニタリング中に標的身体部分10のマッピングの精度および正確性を高めるために、超音波画像の取得が、実時間で行われる。超音波技術に応じて、超音波画像29の取得は、数分間継続し得る。それでも、実時間取得であると見なされる。これにより、標的身体部分10の実時間マッピングを提供し、素早い構造変化を考慮することができる。実時間マッピングでは、制御ユニット20は、前の超音波画像29取得を終了するとすぐに、新しい超音波画像29取得を開始する、こうしてそれぞれの新しい超音波画像29の取得が終了するとすぐに、新しい超音波画像29が前の画像に置き換わる。一例として、最初の超音波画像29がULM画像で、それがより素早く取得されるドップラー画像に置き換わる、ということが考えられる。
【0030】
制御ユニット20はまた、取得および/または保存されたそれぞれの超音波画像29をスクリーン30に表示するように設計される。これは、図2に示される。
【0031】
少なくとも1つのトラッカ26に関して各プローブ22から得られた実時間超音波情報と、保存された超音波画像29とを組み合わせることにより、制御ユニット20は、超音波画像29上の少なくとも1つのトラッカ26の局在化を実時間で表示することができる。これにより、外科医は、マイクロデバイス16がどこに存在するかを正確に知ることができる。
【0032】
制御ユニット20はさらに、例えばオペレータが、標的身体部分10の内部に達する正確なポイントをマイクロデバイス16に指示することができるユーザインターフェース32を含んでもよい。このユーザインターフェースはまた、オペレータが非接触の方法でマイクロデバイスに指示することができてもよい。
【0033】
超音波超解像技術(例えば、ULM技術のような)を利用したマイクロデバイス16視覚化の改善により、外科医は、例えば脳のような任意の標的身体部分10のさらに深い部分においてマイクロデバイスを正確にモニタリングすることができる。一般的な超音波画像を利用すると、1MHzの波周波数の場合に、0.75mmの画像解像を得ることができる。超解像イメージング技術を利用すれば、同じ周波数で0.15mmの解像が可能になる。超解像イメージング技術はさらに、一般的な超音波画像では視覚化できない細い静脈の視覚化を可能にする。これにより、外科医がマイクロデバイス16を静脈周辺で遠隔的にナビゲートするのを助け、こうして静脈の1つを損傷したり傷つけたり、内出血を引き起こしたりするのを回避することができる。
【0034】
マイクロデバイス16は、外部エンジン(例えば外部コイル、文書PCT/US2019/059096号参照)または内部エンジン、のどちらかにより作動し得る。そのため、マイクロデバイス16は、任意の種類の生物学的媒体中で、人体の内部で、移動することができる。制御は、ジョイスティックで直接、またはユーザにより操作される(ファントムハプティックコントローラのような)より複雑なコントローラを通して実現され得る。制御また、予め設定された経路を追従することにより、自動的に実現され得る。制御信号は、無線で、またはマイクロデバイスに接続されたワイヤを利用する、のどちらかで送信され得る。
【0035】
追跡のために超解像超音波技術を利用することでさらに、局在化を実施するために用いられる超音波の波長サイズの半分より良好な精度に達するようにマイクロデバイス16を局在化することができる。より詳細には、ULM技術を用いる場合、局在化はλ/10の精度、および視覚化はλ/5の精度に達し得る。
【0036】
こうして超音波画像29により、外科医は、マイクロデバイス16と、マイクロデバイス16が到達すべき正確なポイントとを視覚化することができる。こうして外科医は、
- マイクロデバイス16が追従する少なくとも1つの経路を計画すること、
- 経路を追従するマイクロデバイス16を実時間でモニタリングすること、
- 計画された経路に障害物があるかどうかを実時間で判断すること、
- 必要に応じて、障害物を回避するためにマイクロデバイス16の新しい経路を計画すること、
ができる。
【0037】
こうして本発明による追跡システム18は、マイクロデバイス16の追跡および局在化法を実施することができ、該方法は、
- マイクロデバイス16の実時間追跡と、
- 内部参照(R)内のマイクロデバイス16の実時間局在化と、
- 標的身体構造10の内部のデバイス16の実時間局在化と、
を行うことができる。
【0038】
該方法はさらに、
- スクリーン30上に、患者の標的身体構造10の少なくとも1つの超音波画像29が内部参照Rと整列されている視覚化と、
- スクリーン上に、デバイス16の局在化の超音波画像29内の実時間表示と、
を行うことができる。
【0039】
超音波画像29の取得とトラッカ26の追跡に同じプローブ22が用いられる場合、該方法はこうして、プローブ22を交換せずに、患者の標的身体部分10からマイクロデバイス16を抜去する必要もなく、システム18は
- 超音波画像29を取得すること、
- マイクロデバイス16を追跡すること、
を交互に行うことができる。これにより、マイクロデバイス16の改善された実時間追跡および標的身体部分10の改善された実時間視覚化が可能になる。
【0040】
例えば、薬物が充分に送達されたことを外科医に知らせるために、またはマイクロデバイス16が標的身体部分10の内部で到達すべき標的ポイントを正確にモニタリングできるようにするために、マイクロデバイスは、標的身体部分10の内部に少なくとも1種の造影剤を滴下注入するように設計され得る。造影剤の滴下注入は、外科医が誘導すること、または予めプログラムすることもできる。この造影剤は、例えばマイクロバブルであってもよい。少なくとも1種の造影剤が、標的身体部分10の内部に滴下注入されると、各プローブ22により感知され得、制御ユニット20は、こうして少なくとも1種の造影剤を局在化して超音波画像29上で表示することができ、この視覚化により、システム18の精度が高まる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】