(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルスを標的とする干渉RNAS、及びCOVID-19を治療するためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20231218BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231218BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231218BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231218BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20231218BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231218BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20231218BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20231218BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231218BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C12N15/113 100
A61P31/14 ZNA
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K31/713
A61K45/00
A61K31/661
A61K31/573
A61K39/395 S
A61K39/215
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534695
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 CN2021135476
(87)【国際公開番号】W WO2022117085
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/133565
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/121762
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523209276
【氏名又は名称】マイクロバイオ (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】512302005
【氏名又は名称】ワンネス・バイオテック・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ONENESS BIOTECH CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】チャン,イー-チュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チー-ファン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イー-フェン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チャ-チュン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ユエン-リン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA56
4C084MA59
4C084NA14
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC75
4C085AA03
4C085AA14
4C085BA71
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA10
4C086DA38
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA56
4C086MA59
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
SARS-CoV(例えば、そのPOL、スパイク、ヘリカーゼ、又はエンベロープ遺伝子)を標的とする干渉RNA(例えば、siRNA)、及びSARS-CoV感染を阻害しかつ/又はその感染に関連する疾患(例えば、COVID-19)を治療するためのそれらの治療的使用が提供される。
【選択図】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)を阻害するための方法であって、
有効量の低分子干渉RNA(siRNA)を、SARS-CoVウイルスに感染した細胞と接触させることを含み、
前記siRNAが、SARS-CoVウイルスのゲノム部位を標的とし、前記SARS-CoVウイルスが、任意選択で、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2である、方法。
【請求項2】
前記ゲノム部位が、POL遺伝子、スパイク遺伝子、ヘリカーゼ遺伝子、及びエンベロープ遺伝子からなる群から選択されるSARS-CoV遺伝子内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゲノム部位が、
(i)5’-GAGGCACGUCAACAUCUUA-3’(配列番号2)、
(ii)5’-CAGCAUUAAAUCACACUAA-3’(配列番号4)、
(iii)5’-CGGUGUUUAAACCGUGUUU-3’(配列番号6)、
(iv)5’-GUGGUACAACUACACUUAA-3’(配列番号8)、
(v)5’-UGGCUUGAUGACGUAGUUU-3’(配列番号10)、
(vi)5’-CUGUCAAACCCGGUAAUUU-3’(配列番号12)、
(vii)5’-GCGGUUCACUAUAUGUUAA-3’(配列番号14)、
(viii)5’-GCCACUAGUCUCUAGUCAG-3’(配列番号16)、
(ix)5’-CUCCUACUUGGCGUGUUUA-3’(配列番号18)、
(x)5’-CGCACAUUGCUAACUAAGG-3’(配列番号20)、及び
(xi)5’-CAGGUACGUUAAUAGUUAA-3’(配列番号22)からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記siRNAが、前記SARS-CoVウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)遺伝子内の部位を標的とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記siRNAが、RdRPメッセンジャーRNA(mRNA)内の部位を標的とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記siRNAが、前記mRNA内の部位を標的とし、標的部位が、5’-UUGCUUUUCAAACUGUCAAACCCGGUAAUUUUAACAAAGA-3’(配列番号23)のヌクレオチド配列内にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
標的部位が、5’-UUUCAAACUGUCAAACCCGGUAAUUUU-3’(配列番号24)のヌクレオチド配列内にある、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記siRNAが、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む二本鎖分子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖が、それぞれ、以下のヌクレオチド配列、
(i)5’-GAGGCACGUCAACAUCUUX
1-3’(配列番号25)及び
5’-X
2AAGAUGUUGACGUGCCUCN
1N
2-3’(配列番号26)、
(ii)5’-CAGCAUUAAAUCACACUAX
1-3’(配列番号27)及び
5’-X
2UAGUGUGAUUUAAUGCUGN
1N
2-3’(配列番号28)、
(iii)5’-CGGUGUUUAAACCGUGUUX
1-3’(配列番号29)及び
5’-X
2AACACGGUUUAAACACCGN
1N
2-3’(配列番号30)、
(iv)5’-GUGGUACAACUACACUUAX
1-3’(配列番号31)及び
5’-X
2UAAGUGUAGUUGUACCACN
1N
2-3’(配列番号32)、
(v)5’-UGGCUUGAUGACGUAGUUX
1-3’(配列番号33)及び
5’-X
2AACUACGUCAUCAAGCCAN
1N
2-3’(配列番号34)、
(vi)5’-CUGUCAAACCCGGUAAUUX
1-3’(配列番号35)及び
5’-X
2AAUUACCGGGUUUGACAGN
1N
2-3’(配列番号36)、
(vii)5’-GCGGUUCACUAUAUGUUAX
1-3’(配列番号37)及び
5’-X
2UAACAUAUAGUGAACCGCN
1N
2-3’(配列番号38)、
(viii)5’-GCCACUAGUCUCUAGUCAX
1-3’(配列番号39)及び
5’-X
2UGACUAGAGACUAGUGGCN
1N
2-3’(配列番号40)、
(ix)5’-CUCCUACUUGGCGUGUUUX
1-3’(配列番号41)及び
5’-X
2AAACACGCCAAGUAGGAGN
1N
2-3’(配列番号42)、
(x)5’-CGCACAUUGCUAACUAAGX
1-3’(配列番号43)及び
5’-X
2CUUAGUUAGCAAUGUGCGN
1N
2-3’(配列番号44)、又は
(xi)5’-CAGGUACGUUAAUAGUUAX
1-3’(配列番号45)及び
5’-X
2UAACUAUUAACGUACCUGN
1N
2-3’(配列番号46)を含み、
(i)~(xi)のそれぞれの前記センス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれにおけるX
1及びX
2が、独立して、それぞれ、A及びU若しくはその逆であるか、又はそれぞれ、G及びC若しくはその逆であり、
(i)~(xi)のそれぞれの前記センス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれにおけるN
1及びN
2のそれぞれが、独立して、A、U、G、又はCであり、任意選択で、N
2が、Uである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖が、それぞれ、以下のヌクレオチド配列、
(i)5’-GAGGCACGUCAACAUCUUX
1-3’(配列番号25)及び
5’-X
2AAGAUGUUGACGUGCCUCUU-3’(配列番号47)、
(ii)5’-CAGCAUUAAAUCACACUAX
1-3’(配列番号27)及び
5’-X
2UAGUGUGAUUUAAUGCUGUU-3’(配列番号48)、
(iii)5’-CGGUGUUUAAACCGUGUUX
1-3’(配列番号29)及び
5’-X
2AACACGGUUUAAACACCGUU-3’(配列番号49)、
(iv)5’-GUGGUACAACUACACUUAX
1-3’(配列番号31)及び
5’-X
2UAAGUGUAGUUGUACCACUU-3’(配列番号50)、
(v)5’-UGGCUUGAUGACGUAGUUX
1-3’(配列番号33)及び
5’-X
2AACUACGUCAUCAAGCCAUU-3’(配列番号51)、
(vi)5’-CUGUCAAACCCGGUAAUUX
1-3’(配列番号35)及び
5’-X
2AAUUACCGGGUUUGACAGUU-3’(配列番号52)、
(vii)5’-GCGGUUCACUAUAUGUUAX
1-3’(配列番号37)及び
5’-X
2UAACAUAUAGUGAACCGCUU-3’(配列番号53)、
(viii)5’-GCCACUAGUCUCUAGUCAX
1-3’(配列番号39)及び
5’-X
2UGACUAGAGACUAGUGGCUU-3’(配列番号54)、
(ix)5’-CUCCUACUUGGCGUGUUUX
1-3’(配列番号41)及び
5’-X
2AAACACGCCAAGUAGGAGUU-3’(配列番号55)、
(x)5’-CGCACAUUGCUAACUAAGX
1-3’(配列番号43)及び
5’-X
2CUUAGUUAGCAAUGUGCGUU-3’(配列番号56)、又は
(xi)5’-CAGGUACGUUAAUAGUUAX
1-3’(配列番号45)及び
5’-X
2UAACUAUUAACGUACCUGUU-3’(配列番号57)を含み、
(i)~(xi)のそれぞれの前記センス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれにおけるX
1及びX
2が、独立して、それぞれ、A及びU又はその逆である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖が、(vi)、(vii)、(viii)、(x)、又は(xi)に記載のヌクレオチド配列を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記siRNAが、C6、C7、C8、C10、及びC11からなる群から選択され、任意選択で、前記siRNAが、C6である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記siRNAが、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の修飾ヌクレオチドが、2’-フルオロ、2’-O-メチル、又はこれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記siRNAが、1つ以上のホスホロチオエート結合を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記siRNAが、C6G25S、C8G25S、又はC10G31Aであり、任意選択で、前記siRNAが、C6G25Sである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記接触させるステップが、前記SARS-CoVウイルスに感染した対象に、前記siRNAを投与することによって実行される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記siRNAが、医薬組成物中で製剤化され、前記医薬組成物が、薬学的に許容される担体を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、COVID-19を有するヒト患者である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象に、前記SARS-CoVによって引き起こされる感染の治療のための薬剤が更に投与され、前記SARS-CoVが、任意選択で、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2であり、好ましくは、前記感染が、SARS-CoV-2によって引き起こされる、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記薬剤が、抗SARS-CoV-2抗体、レムデシビル、ステロイド、抗SARS-CoVワクチン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、SARS-CoV感染のリスクがあるヒト患者である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項23】
前記siRNAが、前記対象に、鼻腔内滴下、エアロゾル吸入、又はこれらの組み合わせによって投与される、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
SARS-CoVウイルスを標的とする低分子干渉RNA(siRNA)であって、前記siRNAが、前記SARS-CoVウイルスのゲノム部位に相補的な配列を含み、前記siRNAが、請求項1~16のいずれか一項に記載される、siRNA。
【請求項25】
請求項22に記載の低分子干渉RNAと、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月3日に出願された国際特許出願第PCT/CN2020/133565号、及び2021年9月29日に出願された国際特許出願第PCT/CN2021/121762号の出願日の優先権を主張し、これらのそれぞれの内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルス科及びコロナウイルス亜科のメンバーであるコロナウイルスは、26~32キロベースの範囲の長さを有する一本鎖ポジティブセンスRNAゲノムを含有するエンベロープウイルスである。コロナウイルスは、トリ、コウモリ、ブタ、げっ歯類、ラクダ、及びヒトを含むいくつかの脊椎動物宿主において同定されている。ヒトは、哺乳類の他の宿主からコロナウイルスに感染し得、これは、有害な上気道疾病を引き起こし得る。
コロナウイルス科のメンバーは、異なる系統発生起源を有し、かつ死亡率及び罹患率において異なる重症度を引き起こすウイルス株を含む。したがって、コロナウイルス感染のための治療は、感染を引き起こす特定の株、例えば、SARS-CoV-2変異体(例えば、デルタ変異体)に依存して変動する。これまで、コロナウイルス感染のための承認された抗ウイルス薬物治療はない。したがって、コロナウイルス感染の治療、特に、重症急性呼吸器症候群(SARS)関連コロナウイルス(SARS-CoV)によって引き起こされる感染の治療、例えば、COVID-19の治療を開発する必要性がある。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、SARS-CoVウイルス、例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2のゲノムRNAを標的とする干渉RNA分子の開発に少なくとも部分的に基づく。本明細書に開示される干渉RNA分子は、SARS-CoV-2複製及び産生の阻害において高い効率を示した。したがって、抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、siRNA)、及びSARS-CoV-2ウイルスを阻害するためのかつCOVID-19を治療するためのそれらの使用が、本明細書で提供される。
【0004】
いくつかの態様では、本開示は、SARS-CoVウイルス(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2)を阻害するための方法であって、有効量の低分子干渉RNA(siRNA)を、SARS-CoVウイルスに感染した細胞と接触させることを含み、siRNAが、SARS-CoVウイルスのゲノム部位を標的とする、方法を提供する。いくつかの実施形態では、siRNAは、SARS-CoV(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2)POL遺伝子、スパイク遺伝子、ヘリカーゼ遺伝子、又はエンベロープ遺伝子を標的とし得る。いくつかの実施形態では、siRNAは、SARS-CoVゲノム部位(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2のゲノム部位)を標的とし得、SARS-CoVゲノム部位は、以下のヌクレオチド配列、
(i)5’-GAGGCACGUCAACAUCUUA-3’(配列番号2)、
(ii)5’-CAGCAUUAAAUCACACUAA-3’(配列番号4)、
(iii)5’-CGGUGUUUAAACCGUGUUU-3’(配列番号6)、
(iv)5’-GUGGUACAACUACACUUAA-3’(配列番号8)、
(v)5’-UGGCUUGAUGACGUAGUUU-3’(配列番号10)、
(vi)5’-CUGUCAAACCCGGUAAUUU-3’(配列番号12)、
(vii)5’-GCGGUUCACUAUAUGUUAA-3’(配列番号14)、
(viii)5’-GCCACUAGUCUCUAGUCAG-3’(配列番号16)、
(ix)5’-CUCCUACUUGGCGUGUUUA-3’(配列番号18)、
(x)5’-CGCACAUUGCUAACUAAGG-3’(配列番号20)、及び
(xi)5’-CAGGUACGUUAAUAGUUAA-3’(配列番号22)のうちの1つ(例えば、(vi)~(viii)、(x)、又は(xi))を含む。
【0005】
本明細書で使用される場合、SARS-CoVウイルス(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2)のゲノム部位を標的とするsiRNAとは、siRNAが、ゲノム部位に(完全に又は部分的に)相補的である断片を含み、これにより、siRNAが、ウイルスのゲノムRNA、又はゲノム部位によって転写された領域を含むメッセンジャーRNA(mRNA)と相互作用して、siRNAの阻害活性を発揮する、例えば、ウイルスゲノム複製及び/又はコードされたタンパク質産物の下方制御発現を阻害することができることを意味する。いくつかの事例では、siRNAは、SARS-CoVウイルスによって合成されたmRNAの部位を標的とする。
【0006】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるsiRNAは、SARS-CoVウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)内の部位を標的とし得る(例えば、RdRPメッセンジャーRNA(mRNA)を有する部位を標的とし得る)。このようなsiRNAは、5’-UUGCUUUUCAAACUGUCAAACCCGGUAAUUUUAACAAAGA-3’(配列番号23)のヌクレオチド配列内のRdRP mRNA内の部位を標的とし得る。いくつかの例では、siRNAは、5’-UUUCAAACUGUCAAACCCGGUAAUUUU-3’(配列番号24)のヌクレオチド配列内の部位を標的とし得る。
【0007】
いくつかの例では、siRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む二本鎖分子である。例示的な抗SARS-CoV(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2)についての例示的なセンス鎖及びアンチセンス鎖が、以下で提供される。
(i)5’-GAGGCACGUCAACAUCUUX1-3’(配列番号25)及び
5’-X2AAGAUGUUGACGUGCCUCN1N2-3’(配列番号26)、
(ii)5’-CAGCAUUAAAUCACACUAX1-3’(配列番号27)及び
5’-X2UAGUGUGAUUUAAUGCUGN1N2-3’(配列番号28)、
(iii)5’-CGGUGUUUAAACCGUGUUX1-3’(配列番号29)及び
5’-X2AACACGGUUUAAACACCGN1N2-3’(配列番号30)、
(iv)5’-GUGGUACAACUACACUUAX1-3’(配列番号31)及び
5’-X2UAAGUGUAGUUGUACCACN1N2-3’(配列番号32)、
(v)5’-UGGCUUGAUGACGUAGUUX1-3’(配列番号33)及び
5’-X2AACUACGUCAUCAAGCCAN1N2-3’(配列番号34)、
(vi)5’-CUGUCAAACCCGGUAAUUX1-3’(配列番号35)及び
5’-X2AAUUACCGGGUUUGACAGN1N2-3’(配列番号36)、
(vii)5’-GCGGUUCACUAUAUGUUAX1-3’(配列番号37)及び
5’-X2UAACAUAUAGUGAACCGCN1N2-3’(配列番号38)、
(viii)5’-GCCACUAGUCUCUAGUCAX1-3’(配列番号39)及び
5’-X2UGACUAGAGACUAGUGGCN1N2-3’(配列番号40)、
(ix)5’-CUCCUACUUGGCGUGUUUX1-3’(配列番号41)及び
5’-X2AAACACGCCAAGUAGGAGN1N2-3’(配列番号42)、
(x)5’-CGCACAUUGCUAACUAAGX1-3’(配列番号43)及び
5’-X2CUUAGUUAGCAAUGUGCGN1N2-3’(配列番号44)、又は
(xi)5’-CAGGUACGUUAAUAGUUAX1-3’(配列番号45)及び
5’-X2UAACUAUUAACGUACCUGN1N2-3’(配列番号46)。
【0008】
(i)~(xi)のそれぞれのセンス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれにおけるX1及びX2は、独立して、それぞれ、A及びU又はその逆である。代替として、X1及びX2は、それぞれ、G及びC又はその逆である。(i)~(xi)のそれぞれのセンス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれにおけるN1及びN2のそれぞれは、独立して、A、U、G、又はCである。いくつかの例では、N2は、Uであることができる。
【0009】
いくつかの例では、例示的な抗SARS-CoV(例えば、抗SARS-CoV-1又は抗SARS-CoV-2)についてのセンス鎖及びアンチセンス鎖が、以下で提供される。
(i)5’-GAGGCACGUCAACAUCUUX1-3’(配列番号25)及び
5’-X2AAGAUGUUGACGUGCCUCUU-3’(配列番号47)、
(ii)5’-CAGCAUUAAAUCACACUAX1-3’(配列番号27)及び
5’-X2UAGUGUGAUUUAAUGCUGUU-3’(配列番号48)、
(iii)5’-CGGUGUUUAAACCGUGUUX1-3’(配列番号29)及び
5’-X2AACACGGUUUAAACACCGUU-3’(配列番号49)、
(iv)5’-GUGGUACAACUACACUUAX1-3’(配列番号31)及び
5’-X2UAAGUGUAGUUGUACCACUU-3’(配列番号50)、
(v)5’-UGGCUUGAUGACGUAGUUX1-3’(配列番号33)及び
5’-X2AACUACGUCAUCAAGCCAUU-3’(配列番号51)、
(vi)5’-CUGUCAAACCCGGUAAUUX1-3’(配列番号35)及び
5’-X2AAUUACCGGGUUUGACAGUU-3’(配列番号52)、
(vii)5’-GCGGUUCACUAUAUGUUAX1-3’(配列番号37)及び
5’-X2UAACAUAUAGUGAACCGCUU-3’(配列番号53)、
(viii)5’-GCCACUAGUCUCUAGUCAX1-3’(配列番号39)及び
5’-X2UGACUAGAGACUAGUGGCUU-3’(配列番号54)、
(ix)5’-CUCCUACUUGGCGUGUUUX1-3’(配列番号41)及び
5’-X2AAACACGCCAAGUAGGAGUU-3’(配列番号55)、
(x)5’-CGCACAUUGCUAACUAAGX1-3’(配列番号43)及び
5’-X2CUUAGUUAGCAAUGUGCGUU-3’(配列番号56)、又は
(xi)5’-CAGGUACGUUAAUAGUUAX1-3’(配列番号45)及び
5’-X2UAACUAUUAACGUACCUGUU-3’(配列番号57)。
【0010】
(i)~(xi)のそれぞれのセンス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれにおけるX1及びX2は、独立して、それぞれ、A及びU又はその逆である。具体的な例が、以下の表1で提供される。
【0011】
いくつかの例では、センス鎖及びアンチセンス鎖は、(vi)、(vii)、(viii)、(x)、又は(xi)に記載のヌクレオチド配列を含み得る。具体的な例では、siRNAは、C6であることができる。他の例では、siRNAは、C7であることができる。他の例では、siRNAは、C8であることができる。他の例では、siRNAは、C10であることができる。他の例では、siRNAは、C11であることができる。本明細書で使用される場合、siRNA C6、C7、C10、C11などとは、これらのsiRNAの修飾プロファイルにかかわらず、本明細書で提供されるそれぞれのsiRNAに対応するアンチセンス及びセンス配列を含むsiRNAを指す。例えば、siRNA C6とは、配列番号12を含むセンス鎖、及び配列番号11を含むアンチセンス鎖を有するsiRNAであって、センス鎖及びアンチセンス鎖のうちの1つ又は両方が、未修飾又は任意のパターン(例えば、本明細書に開示されるもの)での修飾のいずれかであることができる、siRNAを指す。
【0012】
本明細書に開示される干渉RNA(例えば、siRNA)のうちのいずれかは、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。いくつかの例では、1つ以上の修飾ヌクレオチドは、2’-フルオロ、2’-O-メチル、又はこれらの組み合わせを含む。代替として又は加えて、本明細書に開示される干渉RNA(例えば、siRNA)は、修飾骨格、例えば、1つ以上のホスホロチオエート結合を含む修飾骨格を含み得る。例えば、修飾siRNAは、C6G25Sであり得る。他の例では、修飾siRNAは、C8G25Sであり得る。更に他の例では、修飾siRNAは、C10G31Aであり得る。
【0013】
本明細書に開示される方法のうちのいずれかにおいて、接触させるステップは、SARS-CoVウイルスに感染した対象に、siRNAを投与することによって実行される。いくつかの例では、対象は、SARS-CoV-1感染を有し得る。他の例では、対象は、SARS-CoV-2感染を有し得る(例えば、COVID19を有し得る)。siRNAは、医薬組成物中で製剤化され得、医薬組成物は、薬学的に許容される担体を更に含む。いくつかの事例では、対象は、SARS-CoVウイルスに感染した、例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2に感染したヒト患者であり得る。他の事例では、対象は、SARS-CoV感染を有すると疑われるヒト患者であり得る。更に他の事例では、対象は、このような感染のリスクがあるヒト患者であり得る。いくつかの事例では、対象に、SARS-CoVによって引き起こされる感染、例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2によって引き起こされる感染の治療のための薬剤が更に投与され得る。例としては、抗SARS-CoV抗体、抗SARS-CoVワクチン(例えば、mRNAワクチン)、レムデシビル、ステロイド、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
いくつかの事例では、SARS-CoV(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2)を標的とする、本明細書に開示されるsiRNA、又はこのようなsiRNAを含む医薬組成物は、治療を必要としている対象に、鼻経路、例えば、鼻腔内滴下又はエアロゾル吸入を介して送達され得る。具体的な例では、SARS-CoV(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2)を標的とする、本明細書に開示されるsiRNA、又はこのようなsiRNAを含む医薬組成物は、対象に、鼻腔内滴下及びエアロゾル吸入の両方によって送達され得る。
【0015】
本明細書に開示される方法のうちのいずれかは、対象に、本明細書に開示される、SARS-CoVウイルス(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2)によって引き起こされる感染の治療のための薬剤のうちのいずれかを投与することを更に含み得る。
【0016】
他の態様では、SARS-CoV-2ウイルスを標的とする、本明細書に開示されるsiRNA、例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11のうちのいずれか、及びこのようなsiRNAと、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、siRNAは、例えば、本明細書に開示されるいずれかのパターンによって修飾されている。具体的な例では、siRNAは、C6G25S、C8G25S、又はC10G31Aの修飾siRNAである。
【0017】
また、SARS-CoV(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2)感染の阻害における使用のためのかつ/又はその感染によって引き起こされる疾患(例えば、COVID-19)を治療するための、siRNAのうちのいずれか又はこのようなsiRNAを含む医薬組成物、及びSARS-CoV(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2)感染の阻害における使用のためのかつ/又はその感染によって引き起こされる疾患、例えば、COVID-19を治療するための医薬品を製造するための、このようなsiRNA又は医薬組成物の使用が、本開示の範囲内である。
【0018】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本発明の他の特徴又は利点は、以下の図面及びいくつかの発明を実施するための形態から明らかであり、また、添付の特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下の図面は、本明細書の一部分を形成し、本開示のある態様を更に実証するために含まれ、本開示のある態様は、本明細書に提示される具体的な発明を実施するための形態と合わせて図面を参照することによって、より良好に理解され得る。
【0020】
【
図1】RT-qPCRによって判定された場合の、Vero細胞におけるSARS-CoV-2増殖に対する示される例示的なsiRNAの阻害活性を示すグラフである。
【
図2】示される例示的なsiRNAの存在下でプラークアッセイによって定量化された場合の、ウイルス産生の低減を示すグラフである。
【
図3A-E】SARS-CoV-2に対して高度に強力なsiRNAの同定を示す図を含む。
図3A:SARS-CoV-2を標的とする強力なsiRNAを同定するために使用される選択戦略を示すフローチャート。それぞれの段階の終了に残っている選択基準及びヒットの数が示された。
図3B:Vero E6細胞におけるウイルスE遺伝子発現を示すグラフ。Vero E6細胞は、10nMのsiRNAで事前にトランスフェクトされ、SARS-CoV-2が、24時間後に、0.1の感染多重度(MOI)で添加された。ウイルスRNAコピーの数は、RT-qPCRで定量化された。対照は、スクランブルsiRNAであり、「Ctrl」と略される。C1~C11は、選択後の最終候補配列である。
図3C:Vero E6細胞におけるプラーク阻害を示すグラフ。Vero E6細胞は、10nMのsiRNAで事前にトランスフェクトされ、SARS-CoV-2が、24時間後に、0.1の感染多重度(MOI)で添加された。感染性ビリオンの数は、プラーク形成アッセイで定量化された。
図3D:C6及び完全修飾C6G25SのIC
50を示すグラフ。Vero E6細胞は、10、2、0.4、0.08、又は0.016nMのC6又はC6G25Sでトランスフェクトされ、ウイルスに、0.2のMOIで曝露された。ウイルス遺伝子は、RT-qPCRによって、感染の24時間後に定量化された。
図3E:C6G25SによるウイルスRdRp阻害についてのIC
50データを示すグラフを示す。Vero E6細胞は、10、2、0.4、0.08、又は0.016nMのC6G25Sでトランスフェクトされ、ウイルスに、0.2のMOIで曝露された。ウイルス遺伝子は、RT-qPCRによって、感染の24時間後に定量化された。
【
図4A-4B】C6G25Sが様々なSARS-CoV-2株を標的とし阻害したことを示す図を含む。
図4A:4つのVOC、4つのVOI、及び2つの他の変異体についてのゲノムマップ。ゲノムマップは、C6がウイルスRdRp(受入番号:NC_045512.2)の高度保存領域を標的とすることを示す。ゲノムの上の点は、それぞれの変異体についての典型的な変異の位置を示す。ウイルス感染性又は免疫系への耐性のいずれかに関連するスパイクタンパク質における重要な変異は、赤で標識され、変異アミノ酸は、示されるとおりである。他の変異は、黒色で標識される。RdRPのC6G25認識についての標的部位及び配列は、マップの下に示される。C6G25のアンチセンスの配列は、配列番号58に対応し、ウイルスゲノム領域は、配列番号59に対応する標的部位配列を含む。
図4B:異なる変異体に対するC6G25SについてのIC
50を示すグラフである。Vero E6細胞は、10、2、0.4、0.08、又は0.016nMのC6G25Sでトランスフェクトされ、異なるウイルス株に曝露された。ウイルス遺伝子は、RT-qPCRによって、感染の24時間後に定量化された。
【
図5A-5F】C6G25Sについての投与経路のインビボ研究を示す図を含む。
図5A:AIを介する肺内のC6G25Sの分布を示す写真。C6G25Sで1.48mg/LのAIによって30分間処置されたK18-hACE2トランスジェニックマウス。
図5B:INを介する肺内のC6G25Sの分布を示す写真。50ugのC6G25Sを含有する50ulのPBSでINによって処置されたK18-hACE2トランスジェニックマウス。
図5C:陰性対照(1群当たりn=5)として機能するC6G25S未処置PBSで処置されたマウスの肺内の分布を示す写真。肺内のC6G25S分布は、C6G25S特異的プローブ(赤色)でのISH染色によって可視化された。ボックスで記された気管支(i)及び細気管支(ii)は、右側で拡大されている。
図5D:K18-hACE2トランスジェニックマウスの肺内のC6G25S陽性細胞の定量化を示すグラフ(NC=陰性対照、IN=鼻腔内滴下、AI=エアロゾル吸入)。
図5E:AIを介する送達後のC57/B6マウスの肺及び鼻腔内に沈着したsiRNAレベルを示すグラフ。
図5F:INを介する送達後のC57/B6マウスの肺及び鼻腔内に沈着したsiRNAレベルを示すグラフ。(1群当たりn=3)。定量化データは、平均±SDを表す。
【
図6A-6C】吸入エアロゾル、肺及び鼻腔内のC6G25Sの定量化を示す図を含む。
図6A:B
maxを示すグラフ。B
maxは、最大C6G25Sレベルを表す。エアロゾルが生成された後に、エアロゾル試料は、0.5mLのシリンジを使用して、吸入チャンバから収集され、100uLのヌクレアーゼ不含水に通された。その後、ヌクレアーゼ不含水中のC6G25Sレベルが、OD260によって判定された。
図6B:エアロゾル吸入及び鼻腔内滴下の両方を介する送達の0.5、8、24、及び48時間後の肺内のC6G25Sレベルの定量化を示すグラフ。
図6C:エアロゾル吸入及び鼻腔内滴下の両方を介する送達の0.5、8、24、及び48時間後の鼻腔内のC6G25Sレベルの定量化を示すグラフ。C57/B6マウス(1群当たりn=3)に、0.74mg/LのC6G25Sが、AIを介して30分間投与され、続いて、50ugのC6G25Sが、INを介して投与された。定量化データは、平均±SDを表す。
【
図7A-7D】SARS-CoV-2及びデルタ変異体のインビボ処置におけるC6G25Sの予防的及び曝露後投与を示す図を含む。
図7A:ウイルスに感染していない対照及び処置マウスにおけるウイルスレベルを示す図。左パネルは、それぞれ、RT-qPCR及びプラーク形成アッセイで2dpiに定量化された、K18-hACE2トランスジェニックマウスの肺内のウイルスRNAを示すグラフである。右パネルは、それぞれ、RT-qPCR及びプラーク形成アッセイで2dpiに定量化された、K18-hACE2トランスジェニックマウスの肺内の感染性バイロンを示すグラフである。スチューデントt検定によるP値。K18-hACE2トランスジェニックマウス(Winkler,et al.,2020,Nat Immunol 21:1327-1335)は、104プラーク形成単位(PFU)の本来のウイルスに鼻腔内曝露される前に、1日1回3日間処置された。予防的処置は、30分間のAI(1.48mg/lのC6G25S)、続いて、50ugのC6G25SのINからなる。
図7B:SARS-CoV-2のデルタ変異体に感染した対照及び処置マウスにおけるウイルスレベルを示す図。左パネルは、曝露後のK18-hACE2トランスジェニックマウスの肺内のウイルスRNAの定量化を示すグラフである。右パネルは、曝露後のK18-hACE2トランスジェニックマウスの肺内の感染性バイロンの定量化を示すグラフである。マウスは、104PFUのウイルスに鼻腔内曝露され、曝露後に、2.96mg/LのC6G25SでAIによって30分間、0日目(感染直後)及び1日目に処置された。ウイルスRNA及び感染性ビリオンは、2dpiに定量化された。
図7C:
図7Aと同じ実験設計に従って感染していない対照及び処置マウスにおけるウイルスレベルを示す図。肺内のウイルスRNA(左パネル)及び感染性ビリオン(右パネル)は、2dpiに定量化された。
図7D:デルタウイルスに対するC6G25Sの曝露後処置を示すグラフ。2回投与群は、0日目及び1日目に処置され、2日目dpiに分析された。3回投与群は、0日目、1日目、及び2日目に処置され、3日目dpiに分析された。ウイルスRNAレベル(左パネル)及び感染性バイロン(右パネル)は、それぞれの時点の対照に対して評価された。処置群は、Tと標識され、緩衝液対照は、Cと標識される。
【
図8A-8C】C6G25SがK18-hACE2トランスジェニックマウスの肺内のSARS-CoV-2誘導性組織損傷を防止することを示す図を含む。
図8A:肺からのISH画像の定量分析を示すグラフ。マウス1匹当たりの全肺切片、及び1群当たり5匹のマウスが測定された。データは、スチューデントt検定による平均±SD、P値を表す。
図8B:肺の全切片内の肺浸潤免疫細胞の定量分析を示すグラフ。対照群(n=5)についての陽染性面積の百分率が、測定され、100に正規化された。未処置対照についての陽染性面積の相対百分率は、赤で示され、C6G25S処置群は、青で示される(n=5)。データは、スチューデントt検定による平均±SD、P値を表す。
図8C:肺傷害スコアを示すグラフ 1群当たり5匹のマウスについて計算された。データは、スチューデントt検定による平均±SD、P値を表す。
【
図9】C6G25Sの臨床的有用性を示す図である。10uMの修飾C6(C6G25S)及び修飾C8(C8G25S)siRNAと共培養された後の末梢血単核細胞(PBMC)における炎症性サイトカインの刺激なし。共培養培地中のサイトカインIL-1アルファ、IL-1ベータ、IL-6、IL-10、TNF-アルファ、及びIFN-ガンマは、フローサイトメトリー分析を介して、Cytometric Bead Assay(CBA)Flex Set(BD Biosciences)を使用して検出された。CpG及びポリ(I:C)が、陽性対照として使用された。データは、3つの健常なドナーからのPBMCを使用する2つの独立した実験の平均±SDとして提示される。Conc.=濃度。
【
図10】CCK-8アッセイによって測定された、BEAS-2B細胞の細胞生存率へのC6G25Sの効果を示すグラフである。未処置群と比較して、最大40uMまでのC6G25Sにおいて有意な細胞毒性はなかった。
【
図11A-11B】C6G25Sの単回及び反復投与毒性学研究を示す図を含む。
図11A:単回投与毒性学研究を示すグラフ。0日目に、単一用量のC6G25S(0、20、40、及び75mg/kg)が、Sprague Dawleyラットに、鼻腔内投与された(1群当たりn=3)。体重及び食物摂取量は、7日間毎日監視された。
図11B:反復投与毒性学研究を示すグラフである。ICRマウス(1群当たりn=3)に、示される濃度のC6G25Sが鼻腔内滴下によって毎日投与され、体重及び食物摂取量は、14日間連続的に監視された。
【
図12】C6G25Sの潜在的な作用機序を示すフローチャートである。
【
図13A-13B】結合部位のうちの1つを有するmiR2911が、C6の結合部位と重複する 本来のウイルスのウイルスRNAを低減したが、アルファ変異体のウイルスRNAを低減しなかったことを示す図を含む。
図13A:SARS-CoV-2ゲノム(受入番号:NC_045512.2)内の、全ての11個のsiRNA候補によって標的とされた位置を示す図。RdRp上のC6及びmiR2911の重複する標的部位は、赤及び青でそれぞれ概略されたC6アンチセンス及びmiR2911の配列で示される。配列は、上から下へ配列番号60、61、及び58である。
図13B:miR2911によって引き起こされた、ウイルスRNAの阻害を示すグラフ。Vero E6細胞は、100nMのmiR2911でトランスフェクトされ、次いで、本来のウイルス及びアルファ変異体に、それぞれ、0.1のMOIで感染させた。ウイルスRNAは、RT-qPCRによって検出された。
【発明を実施するための形態】
【0021】
RNA干渉又は「RNAi」は、二本鎖RNA(dsRNA)が宿主細胞内に導入されたときに、dsRNAが遺伝子発現を遮断する、プロセスである。(Fire et al.(1998)Nature 391,806-811)。低分子dsRNAは、脊椎動物を含む多くの生物において、遺伝子特異的転写後サイレンシングを指示し、遺伝子機能を研究するための新しいツールを提供している。RNAiは、mRNA分解を含み得る。
【0022】
本開示は、SARS-CoVウイルスのRNAゲノムを標的とする干渉RNAの開発に少なくとも部分的に基づく。いくつかの事例では、このような干渉RNAは、SARS-CoV-1のRNAゲノムを標的とし得る。他の事例では、干渉RNAは、SARS-CoV-2のRNAゲノムを標的とし得る。RNA干渉を介して、このような干渉RNAは、Vero細胞におけるSARS-CoV RNAゲノム複製及びウイルス産生の阻害において高い効率を示したが、これは、SARS-CoV感染の阻害における、かつSARS-CoV感染によって引き起こされる疾患、例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2によって引き起こされる感染の治療における、干渉RNAの治療可能性を示す。いくつかの例では、本明細書に開示される干渉RNAは、SARS-CoV-2によって引き起こされる疾患であるCOVID19を治療するために使用され得る。
【0023】
したがって、SARS-CoV、例えば、SARS-CoVゲノム内の特定のゲノム部位を標的とする干渉RNA、このような干渉RNAを含む医薬組成物、及びSARS-CoV感染(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2による感染)を阻害するためのかつ/又はその感染によって引き起こされる疾患、例えば、COVID-19を治療するためのそれらの治療的使用が、本明細書で提供される。
【0024】
低分子干渉RNA(siRNA)は、サイトゾルに侵入すると、いくつかのタンパク質と相互作用して、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成し、配列相補性に基づいて、標的遺伝子の発現をノックダウンする。ウイルスゲノム部位、例えば、SARS-CoV-2の高度保存領域(例えば、
図4Aに示されるRdRp遺伝子内の領域)を標的とすることによって、本明細書に開示されるsiRNAは、広範囲のウイルス変異体を阻害することができ、したがって、急速に進化するSARS-CoV-2のための完結な療法であり得る。
【0025】
本開示は、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2などのSARSウイルス、例えば、SARS-CoV-1/2の高度保存RdRp領域を標的とすることができる広範囲のsiRNA分子の開発に少なくとも部分的に基づく。このようなsiRNAは、最も優性の変異体を含む広範囲のSARS-CoV-2株に対して(ピコモルIC50値での)高い阻害活性を示す(以下の実施例2を参照されたい)。経鼻経路、例えば、鼻腔内滴下又はエアロゾル吸入を介する、本明細書に開示されるsiRNAの送達は、動物モデルにおいて観察されたように、有望な予防及び治療効力を示した。
【0026】
したがって、SARS-CoV(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2)を標的とする、修飾バージョンを含むsiRNA、並びに予防的治療及び実際の感染の治療の両方のためのそれらの治療的使用が、本明細書で提供される。
【0027】
I.SARS-CoV-2を標的とする干渉RNA
二本鎖RNA(dsRNA)は、RNA干渉(RNAi)として既知のプロセスを介して、mRNAの配列特異的サイレンシングを指示する。dsRNAの21~23ntの断片が、例えば、RNA分解を引き起こすことによって、RNAサイレンシングの配列特異的メディエーターであることが実証されている。理論に拘束されることを望まないが、これは、これらの21~23ntの断片内に存在する、単に特定の長さの断片であり得る分子シグナルが、RNAiを媒介する細胞因子を動員することであり得る。
【0028】
SARS-CoVゲノムRNAを標的とする干渉RNA分子、例えば、SARS-CoVゲノムRNA内の特定のゲノム部位を標的とする干渉RNA分子、及びSARS-CoV複製/産生を阻害するためにかつ/又はSARS-CoV感染に関連する疾患を治療するためにこのような干渉RNA分子を使用する方法が、本明細書に記載される。いくつかの例では、干渉RNA分子は、本明細書に開示する SARS-CoV-1ゲノムRNAを標的とし得、例えば、SARS-CoV-1ゲノムRNA内の特定のゲノム部位を標的とし得、SARS-CoV-1複製/産生を阻害するためにかつ/又はSARS-CoV-1感染に関連する疾患を治療するために使用され得る。いくつかの例では、干渉RNA分子は、本明細書に開示する SARS-CoV-2ゲノムRNAを標的とし得、例えば、SARS-CoV-2ゲノムRNA内の特定のゲノム部位を標的とし得、SARS-CoV-2複製/産生を阻害するためにかつ/又はSARS-CoV-2感染に関連する疾患、例えば、COVID19を治療するために使用され得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「干渉RNA」という用語は、標的遺伝子の阻害において使用され得るいずれかのRNA分子であって、RNA干渉に直接関与する成熟RNA分子(例えば、本明細書に開示される21~23ntのdsRNA)又は成熟RNA分子を産生する前駆体分子の両方を含む、RNA分子を指す。
【0030】
干渉RNAは、SARS-CoV RNA(例えば、SARS-CoV-1 RNA又はSARS-CoV-2 RNA)のゲノム部位に(完全に又は部分的に)相補的である断片を含む。断片は、標的部位に100%相補的であり得る。代替として、断片は、部分的に相補的であり得、例えば、1つ以上のミスマッチを含むが、二本鎖を標的部位において形成してRNA干渉を媒介するのに十分に相補的であり得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される干渉RNAは、SARS-CoV RNA(例えば、SARS-CoV-1 RNA又はSARS-CoV-2 RNA)のリーダーセグメント内のゲノム部位を標的とし、例えば、5’-GAGGCACGUCAACAUCUUA-3’(配列番号2)のヌクレオチド配列を有するゲノム部位を標的とする。例としては、表1に列挙されるC1 siRNAが挙げられる。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される干渉RNAは、SARS-CoV RNA(例えば、SARS-CoV-1 RNA又はSARS-CoV-2 RNA)のパパイン様プロテアーゼ(PLP)遺伝子内のゲノム部位を標的とする。いくつかの例では、このような干渉RNAは、5’-CAGCAUUAAAUCACACUAA-3’(配列番号4)のヌクレオチド配列を有するゲノム部位を標的とし得る。いくつかの例では、このような干渉RNAは、5’-CGGUGUUUAAACCGUGUUU-3’(配列番号6)のヌクレオチド配列を有するゲノム部位を標的とし得る。例としては、表1に列挙されるC2及びC3 siRNAが挙げられる。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される干渉RNAは、SARS-CoV RNA(例えば、SARS-CoV-1 RNA又はSARS-CoV-2 RNA)の3C様(3CL)プロテアーゼ遺伝子内のゲノム部位を標的とする。いくつかの例では、このような干渉RNAは、5’-GUGGUACAACUACACUUAA-3’(配列番号8)のヌクレオチド配列を有するゲノム部位を標的とし得る。いくつかの例では、このような干渉RNAは、5’-UGGCUUGAUGACGUAGUUU-3’(配列番号10)のヌクレオチド配列を有するゲノム部位を標的とし得る。例としては、表1に列挙されるC4及びC5 siRNAが挙げられる。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される干渉RNAは、SARS-CoV RNAの(RNA依存性RNAポリメラーゼとしても既知である)ポリメラーゼ(POL)遺伝子(例えば、SARS-CoV-1 POL遺伝子又はSARS-CoV-2 POL遺伝子)内のゲノム部位を標的とする。いくつかの例では、このような干渉RNAは、5’-UUGCUUUUCAAACUGUCAAACCCGGUAAUUUUAACAAAGA-3’(配列番号23)のヌクレオチド配列中のゲノム部位を標的とし得る。いくつかの事例では、干渉RNAは、5’-UUUCAAACUGUCAAACCCGGUAAUUUU-3’(配列番号24)のヌクレオチド配列中の部位を標的とし得る。例えば、干渉RNAは、5’-CUGUCAAACCCGGUAAUUU-3’(配列番号12)のヌクレオチド配列を有する部位を標的とし得る。いくつかの例では、このような干渉RNAは、5’-GCGGUUCACUAUAUGUUAA-3’(配列番号14)のヌクレオチド配列を有するゲノム部位を標的とし得る。例としては、表1に列挙されるC6及びC7 siRNAが挙げられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される干渉RNAは、SARS-CoV RNA(例えば、SARS-CoV-1 RNA又はSARS-CoV-2 RNA)のスパイク遺伝子内のゲノム部位を標的とする。いくつかの例では、このような干渉RNAは、5’-GCCACUAGUCUCUAGUCAG-3’(配列番号16)のヌクレオチド配列を有するゲノム部位を標的とし得る。いくつかの例では、このような干渉RNAは、5’-CUCCUACUUGGCGUGUUUA-3’(配列番号18)のヌクレオチド配列を有するゲノム部位を標的とし得る。いくつかの例では、このような干渉RNAは、5’-CGCACAUUGCUAACUAAGG-3’(配列番号20)のヌクレオチド配列を有するゲノム部位を標的とし得る。例としては、表1に列挙されるC8、C9、及びC10 siRNAが挙げられる。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される干渉RNAは、SARS-CoV-2 RNA(例えば、SARS-CoV-1 RNA又はSARS-CoV-2 RNA)のエンベロープ遺伝子内のゲノム部位を標的とする。いくつかの例では、このような干渉RNAは、5’-CAGGUACGUUAAUAGUUAA-3’(配列番号22)のヌクレオチド配列を有するゲノム部位を標的とし得る。例としては、表1に列挙されるC11 siRNAが挙げられる。
【0037】
修飾が具体的に記載されない、本明細書で提供されるヌクレオチド配列は、任意の様式の非修飾配列及び修飾配列の両方を包含することが意図されている。
【0038】
いくつかの実施形態では、干渉RNAは、本明細書に開示する siRNA、すなわち、2つの別個の相補的RNA鎖を含有する二本鎖RNA(dsRNA)であり得る。このようなsiRNAは、SARS-CoV RNA(例えば、SARS-CoV-1 RNA又はSARS-CoV-2 RNA)の標的ゲノム部位に対応するヌクレオチド配列を有するセンス鎖、及びセンス鎖(及び標的ゲノム部位)に相補的なアンチセンス鎖を含み得る。センス鎖及び/又はアンチセンス鎖が、完全に同じである又は標的ゲノム部位に相補的である必要はないことが、当業者には既知である。siRNAが、ゲノム部位を、塩基対形成を介して依然として標的として、RNA干渉プロセスを媒介することができる限り、1つ以上のミスマッチが許容される。いくつかの事例では、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖(全センス鎖及び/若しくはアンチセンス鎖、又はセンス鎖及び/若しくはアンチセンス鎖の一部分)は、完全に同じである又は標的ゲノム部位に相補的である。他の例では、干渉RNAは、ここに開示する低分子ヘアピン型RNA(shRNA)であることができ、shRNAは、タイトヘアピン構造を形成するRNA分子である。siRNA及びshRNAの両方は、SARS-CoV RNA(例えば、SARS-CoV-1 RNA又はSARS-CoV-2 RNA)内の標的ゲノム部位の配列に基づいて設計され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される干渉RNA(例えば、siRNA分子)は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含有し得、センス鎖及びアンチセンス鎖は、二本鎖RNA分子を形成する。いくつかの例では、センス鎖は、21~23個のヌクレオチド(例えば、19nt)を有し得、アンチセンス鎖は、センス鎖に対して、2つのヌクレオチドオーバーハングをアンチセンス鎖の3’末端において有する(-N1N2-3’)23~25個のヌクレオチド(例えば、23nt)を有し得る。オーバーハングヌクレオチドは、A、G、C、及びUのうちのいずれかであり得る。いくつかの事例では、3’末端ヌクレオチド(N2)は、Uであり得る。代替として又は加えて、N1は、標的部位における対応するヌクレオチドに相補的であり得る。いくつかの例では、センス鎖の3’末端ヌクレオチド及びアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドは、塩基対、例えば、A/U対又はG/C対を形成し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗SARS-CoV-2干渉RNAは、siRNA分子、例えば、以下の表1に列挙されるsiRNA分子であることができる。具体的な例では、siRNAは、C6、C7、C8、C10、又はC11のうちの1つである。
【0041】
いくつかの例では、siRNAは、5’-GAGGCACGUCAACAUCUUX1-3’(配列番号25)を含むセンス鎖、及び5’-X2AAGAUGUUGACGUGCCUCN1N2-3’(配列番号26)を含むアンチセンス鎖を含み得る。X1及びX2は、A/U又はG/C塩基対を形成する。N1及びN2のそれぞれは、任意のヌクレオチド(A、G、C、又はU)であることができる。いくつかの事例では、X1及びX2は、A/U対を形成する。代替として又は加えて、N2は、Uであり、N1は、標的部位における対応するヌクレオチドに相補的である。具体的な例では、siRNAは、5’-GAGGCACGUCAACAUCUUX1-3’(配列番号25)を含むセンス鎖、及び5’-X2AAGAUGUUGACGUGCCUCUU-3’(配列番号47)を含むアンチセンス鎖を含み得、A/U対についてのX1及びX2である。
【0042】
いくつかの例では、siRNAは、5’-CAGCAUUAAAUCACACUAX1-3’(配列番号27)を含むセンス鎖、及び5’-X2UAGUGUGAUUUAAUGCUGN1N2-3’(配列番号28)を含むアンチセンス鎖を含み得る。X1及びX2は、A/U又はG/C塩基対を形成する。N1及びN2のそれぞれは、任意のヌクレオチド(A、G、C、又はU)であることができる。いくつかの事例では、X1及びX2は、A/U対を形成する。代替として又は加えて、N2は、Uであり、N1は、標的部位における対応するヌクレオチドに相補的である。具体的な例では、siRNAは、5’-CAGCAUUAAAUCACACUAX1-3’(配列番号27)を含むセンス鎖、及び5’-X2UAGUGUGAUUUAAUGCUGUU-3’(配列番号48)を含むアンチセンス鎖を含み得、A/U対についてのX1及びX2である。
【0043】
いくつかの例では、siRNAは、5’-CGGUGUUUAAACCGUGUUX1-3’(配列番号29)を含むセンス鎖、及び5’-X2AACACGGUUUAAACACCGN1N2-3’(配列番号30)を含むアンチセンス鎖を含み得る。X1及びX2は、A/U又はG/C塩基対を形成する。N1及びN2のそれぞれは、任意のヌクレオチド(A、G、C、又はU)であることができる。いくつかの事例では、X1及びX2は、A/U対を形成する。代替として又は加えて、N2は、Uであり、N1は、標的部位における対応するヌクレオチドに相補的である。具体的な例では、siRNAは、5’-CGGUGUUUAAACCGUGUUX1-3’(配列番号29)を含むセンス鎖、及び5’-X2AACACGGUUUAAACACCGUU-3’(配列番号49)を含むアンチセンス鎖を含み得、A/U対についてのX1及びX2である。
【0044】
いくつかの例では、siRNAは、5’-GUGGUACAACUACACUUAX1-3’(配列番号31)を含むセンス鎖、及び5’-X2UAAGUGUAGUUGUACCACN1N2-3’(配列番号32)を含むアンチセンス鎖を含み得る。X1及びX2は、A/U又はG/C塩基対を形成する。N1及びN2のそれぞれは、任意のヌクレオチド(A、G、C、又はU)であることができる。いくつかの事例では、X1及びX2は、A/U対を形成する。代替として又は加えて、N2は、Uであり、N1は、標的部位における対応するヌクレオチドに相補的である。具体的な例では、siRNAは、5’-GUGGUACAACUACACUUAX1-3’(配列番号31)を含むセンス鎖、及び5’-X2UAAGUGUAGUUGUACCACUU-3’(配列番号50)を含むアンチセンス鎖を含み得、A/U対についてのX1及びX2である。
【0045】
いくつかの例では、siRNAは、5’-UGGCUUGAUGACGUAGUUX1-3’(配列番号33)を含むセンス鎖、及び5’-X2AACUACGUCAUCAAGCCAN1N2-3’(配列番号34)を含むアンチセンス鎖を含み得る。X1及びX2は、A/U又はG/C塩基対を形成する。N1及びN2のそれぞれは、任意のヌクレオチド(A、G、C、又はU)であることができる。いくつかの事例では、X1及びX2は、A/U対を形成する。代替として又は加えて、N2は、Uであり、N1は、標的部位における対応するヌクレオチドに相補的である。具体的な例では、siRNAは、5’-UGGCUUGAUGACGUAGUUX1-3’(配列番号33)を含むセンス鎖、及び5’-X2AACUACGUCAUCAAGCCAUU-3’(配列番号51)を含むアンチセンス鎖を含み得、A/U対についてX1及びX2である。
【0046】
いくつかの例では、siRNAは、5’-CUGUCAAACCCGGUAAUUX1-3’(配列番号35)を含むセンス鎖、及び5’-X2AAUUACCGGGUUUGACAGN1N2-3’(配列番号36)を含むアンチセンス鎖を含み得る。X1及びX2は、A/U又はG/C塩基対を形成する。N1及びN2のそれぞれは、任意のヌクレオチド(A、G、C、又はU)であることができる。いくつかの事例では、X1及びX2は、A/U対を形成する。代替として又は加えて、N2は、Uであり、N1は、標的部位における対応するヌクレオチドに相補的である。具体的な例では、siRNAは、5’-CUGUCAAACCCGGUAAUUX1-3’(配列番号35)を含むセンス鎖、及び5’-X2AAUUACCGGGUUUGACAGUU-3’(配列番号52)を含むアンチセンス鎖を含み得、A/U対についてのX1及びX2である。
【0047】
いくつかの例では、siRNAは、5’-GCGGUUCACUAUAUGUUAX1-3’(配列番号37)を含むセンス鎖、及び5’-X2UAACAUAUAGUGAACCGCN1N2-3’(配列番号38)を含むアンチセンス鎖を含み得る。X1及びX2は、A/U又はG/C塩基対を形成する。N1及びN2のそれぞれは、任意のヌクレオチド(A、G、C、又はU)であることができる。いくつかの事例では、X1及びX2は、A/U対を形成する。代替として又は加えて、N2は、Uであり、N1は、標的部位における対応するヌクレオチドに相補的である。具体的な例では、siRNAは、5’-GCGGUUCACUAUAUGUUAX1-3’(配列番号37)を含むセンス鎖、及び5’-X2UAACAUAUAGUGAACCGCUU-3’(配列番号53)を含むアンチセンス鎖を含み得、A/U対についてのX1及びX2である。
【0048】
いくつかの例では、siRNAは、5’-GCCACUAGUCUCUAGUCAX1-3’(配列番号39)を含むセンス鎖、及び5’-X2UGACUAGAGACUAGUGGCN1N2-3’(配列番号40)を含むアンチセンス鎖を含み得る。X1及びX2は、A/U又はG/C塩基対を形成する。N1及びN2のそれぞれは、任意のヌクレオチド(A、G、C、又はU)であることができる。いくつかの事例では、X1及びX2は、A/U対を形成する。代替として又は加えて、N2は、Uであり、N1は、標的部位における対応するヌクレオチドに相補的である。具体的な例では、siRNAは、5’-GCCACUAGUCUCUAGUCAX1-3’(配列番号39)を含むセンス鎖、及び5’-X2UGACUAGAGACUAGUGGCUU-3’(配列番号54)を含むアンチセンス鎖を含み得、A/U対についてのX1及びX2である。
【0049】
いくつかの例では、siRNAは、5’-CUCCUACUUGGCGUGUUUX1-3’(配列番号41)を含むセンス鎖、及び5’-X2AAACACGCCAAGUAGGAGN1N2-3’(配列番号42)を含むアンチセンス鎖を含み得る。X1及びX2は、A/U又はG/C塩基対を形成する。N1及びN2のそれぞれは、任意のヌクレオチド(A、G、C、又はU)であることができる。いくつかの事例では、X1及びX2は、A/U対を形成する。代替として又は加えて、N2は、Uであり、N1は、標的部位における対応するヌクレオチドに相補的である。具体的な例では、siRNAは、5’-CUCCUACUUGGCGUGUUUX1-3’(配列番号41)を含むセンス鎖、及び5’-X2AAACACGCCAAGUAGGAGUU-3’(配列番号62)を含むアンチセンス鎖を含み得、A/U対についてのX1及びX2である。
【0050】
いくつかの例では、siRNAは、5’-CGCACAUUGCUAACUAAGX1-3’(配列番号43)を含むセンス鎖、及び5’-X2CUUAGUUAGCAAUGUGCGN1N2-3’(配列番号44)を含むアンチセンス鎖を含み得る。X1及びX2は、A/U又はG/C塩基対を形成する。N1及びN2のそれぞれは、任意のヌクレオチド(A、G、C、又はU)であることができる。いくつかの事例では、X1及びX2は、A/U対を形成する。代替として又は加えて、N2は、Uであり、N1は、標的部位における対応するヌクレオチドに相補的である。具体的な例では、siRNAは、5’-CGCACAUUGCUAACUAAGX1-3’(配列番号43)を含むセンス鎖、及び5’-X2CUUAGUUAGCAAUGUGCGUU-3’(配列番号56)を含むアンチセンス鎖を含み得、A/U対についてのX1及びX2である。
【0051】
いくつかの例では、siRNAは、5’-CAGGUACGUUAAUAGUUAX1-3’(配列番号45)を含むセンス鎖、及び5’-X2UAACUAUUAACGUACCUGN1N2-3’(配列番号46)を含むアンチセンス鎖を含み得る。X1及びX2は、A/U又はG/C塩基対を形成する。N1及びN2のそれぞれは、任意のヌクレオチド(A、G、C、又はU)であることができる。いくつかの事例では、X1及びX2は、A/U対を形成する。代替として又は加えて、N2は、Uであり、N1は、標的部位における対応するヌクレオチドに相補的である。いくつかの例では、siRNAは、5’-CAGGUACGUUAAUAGUUAX1-3’(配列番号45)を含むセンス鎖、及び5’-X2UAACUAUUAACGUACCUGUU-3’(配列番号57)を含むアンチセンス鎖を含み得、A/U対についてのX1及びX2である。
【0052】
いくつかの事例では、本明細書に開示されるsiRNAは、C6、C7、C8、C10、又はC11と同じセンス鎖及び/又は同じアンチセンス鎖を含み得る。他の事例では、本明細書に開示されるsiRNAは、C6のセンス鎖と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上)同一であるセンス鎖を含み得、かつ/又はC6のセンス鎖と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上)同一であるアンチセンス鎖を含み得る。他の事例では、本明細書に開示されるsiRNAは、C7のセンス鎖と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上)同一であるセンス鎖を含み得、かつ/又はC7のセンス鎖と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上)同一であるアンチセンス鎖を含み得る。他の事例では、本明細書に開示されるsiRNAは、C8のセンス鎖と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上)同一であるセンス鎖を含み得、かつ/又はC8のセンス鎖と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上)同一であるアンチセンス鎖を含み得る。他の事例では、本明細書に開示されるsiRNAは、C10のセンス鎖と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上)同一であるセンス鎖を含み得、かつ/又はC10のセンス鎖と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上)同一であるアンチセンス鎖を含み得る。他の事例では、本明細書に開示されるsiRNAは、C11のセンス鎖と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上)同一であるセンス鎖を含み得、かつ/又はC11のセンス鎖と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上)同一であるアンチセンス鎖を含み得る。
【0053】
2つの核酸の「パーセント同一性」は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77,1993のように修正されたKarlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68,1990のアルゴリズムを使用して判定される。このようなアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.215:403-10,1990のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子と相同のヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長-12で実行され得る。ギャップが2つの配列間に存在する場合、ギャップドBLASTが、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402,1997に記載されているように使用され得る。BLAST及びギャップドBLASTプログラムを使用するときに、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータが使用され得る。
【0054】
他の実施形態では、本明細書に記載される抗SARS-CoV2 siRNAは、参照siRNA、例えば、表1に列挙されるもの、例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11のセンス鎖及びアンチセンス鎖と(合わせて又は別個に)比較して、最大6つ(例えば、最大6、5、4、3、又は2つ)までのヌクレオチド変異を含有し得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11などのsiRNA)のうちのいずれかは、非自然発生の核酸塩基、糖、又は共有結合性ヌクレオシド間結合(骨格)を含有し得る。このような修飾オリゴヌクレオチドは、所望の特性、例えば、増強された細胞取り込み、標的核酸への改善された親和性、増加したインビボ安定性を付与し、インビボ安定性(例えば、ヌクレアーゼ分解への耐性)を増強し、かつ/又は免疫原性を低減する。
【0056】
一例では、本明細書に記載される抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11などのsiRNA)は、修飾骨格を有し、修飾骨格は、リン原子を保持するもの(例えば、米国特許第3,687,808号、同第4,469,863号、同第5,321,131号、同第5,399,676号、及び同第5,625,050号を参照されたい)、及びリン原子を有さないもの(例えば、米国特許第5,034,506号、同第5,166,315号、及び同第5,792,608号を参照されたい)を含む。リン含有修飾骨格の例としては、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキル-ホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネート、5’-アルキレンホスホネート、及びキラルホスホネートを含むメチル及び他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホラミデート及びアミノアルキルホスホラミデートを含むホスホラミデート、チオノホスホラミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホトリエステル、セレノホスフェート、並びに3’-5’結合又は2’-5’結合を有するボラノホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。このような骨格はまた、逆極性を有するもの、すなわち、3’から3’、5’から5’、又は2’から2’結合を有するものを含む。リン原子を含まない修飾骨格は、短鎖アルキル若しくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子及びアルキル若しくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、又は1つ以上の短鎖ヘテロ原子若しくは複素環式ヌクレオシド間結合によって形成されている。このような骨格は、(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成された)モルホリノ結合を有するもの、シロキサン骨格、スルフィド、スルホキシド、及びスルホン骨格、ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、リボアセチル骨格、アルケン含有骨格、スルファメート骨格、メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格、スルホネート及びスルホンアミド骨格、アミド骨格、並びに混合N、O、S、及びCH2構成成分部分を有する他の骨格を含む。
【0057】
別の例では、本明細書に記載される抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11などのsiRNA)は、1つ以上の置換糖部分を含む。このような置換糖部分は、以下の基のうちの1つを、置換糖部分の2’位において含むことができる。OH、F、O-アルキル、S-アルキル、N-アルキル、O-アルケニル、S-アルケニル、N-アルケニル、O-アルキニル、S-アルキニル、N-アルキニル、及びO-アルキル-O-アルキル。これらの基において、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、置換又は非置換C1~C10アルキル又はC2~C10アルケニル及びアルキニルであることができる。置換糖部分はまた、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善するための基、又はオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基を、置換糖部分の2’位において含み得る。好ましい置換糖部分は、2’-メトキシエトキシ、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、及び2’-ジメチルアミノエトキシエトキシを有するものを含む。Martin et al.,Helv.Chim.Acta,1995,78,486-504を参照されたい。
【0058】
代替として又は加えて、本明細書に記載される抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11などのsiRNA)は、1つ以上の修飾天然核酸塩基(すなわち、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、及びウラシル)を含む。修飾核酸塩基は、米国特許第3,687,808号、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,pages 858-859、Kroschwitz,J.I.,ed.John Wiley & Sons,1990、Englisch et al.,Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613、及びSanghvi,Y.S.,Chapter 15,Antisense Research and Applications,pages 289-302,CRC Press,1993に記載されているものを含む。これらの核酸塩基のうちのある核酸塩基は、干渉RNA分子の標的部位への干渉RNA分子の結合親和性を増加させるのに特に有用である。これらは、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、及びN-2、N-6、及びO-6置換プリン(例えば、2-アミノプロピル-アデニン、5-プロピニルウラシル、及び5-プロピニルシトシン)を含む。Sanghvi,et al.,eds.,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276-278を参照されたい)。
【0059】
代替として又は加えて、本明細書に記載される抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11などのsiRNA)は、1つ以上のロックド核酸(LNA)を含み得る。アクセス制限RNAとしばしば称されるLNAは、修飾RNAヌクレオチドであり、修飾RNAヌクレオチド内で、リボース部分が、2’酸素と4’炭素とを接続する余分なブリッジで修飾されている。このブリッジは、A型二本鎖においてしばしば見出される3’-エンド(ノース)コンフォメーションのリボースを「ロック」する。LNAヌクレオチドは、本明細書に記載される抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11などのsiRNA)のうちのいずれか内で使用され得る。いくつかの例では、干渉RNA内のヌクレオチドの最大50%(例えば、40%、30%、20%、又は10%)が、LNAである。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11などのsiRNA)のうちのいずれかは、リガンドにコンジュゲートされてもよく、又は小胞中に封入されてもよく、これは、所望の細胞/組織へのsiRNAの送達を容易にすることができ、かつ/又は細胞取り込みを容易にすることができる。好適なリガンドは、炭水化物、ペプチド、抗体、ポリマー、低分子、コレステロール、及びアプタマーを含むが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書に記載される抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11などのsiRNA)のうちのいずれかは、従来の方法、例えば、化学合成又はインビトロ転写によって調製され得る。本明細書に記載される、抗SARS-CoV-2干渉RNAの意図された生物活性は、例えば、以下の実施例に記載されるものによって検証され得る。抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11などのsiRNA)のうちのいずれかを発現するためのベクターもまた、本開示の範囲内にある。
【0062】
具体的な例では、SARS-CoV-2感染の治療(予防的又は実際の治療)における使用のための、本明細書に開示されるsiRNAは、C6G25Sの修飾siRNAである(以下の表4を参照されたい)。他の例では、SARS-CoV-2感染の治療(予防的又は実際の治療)における使用のための、本明細書に開示されるsiRNAは、C8G25Sの修飾siRNAである(以下の表4を参照されたい)。更に他の例では、SARS-CoV-2感染の治療(予防的又は実際の治療)における使用のための、本明細書に開示されるsiRNAは、C10G31Aの修飾siRNAである(以下の表4を参照されたい)。
【0063】
II.医薬組成物
干渉RNA(例えば、本明細書に開示されるC6、C7、C8、C10、及びC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)のうちのいずれかは、好適な医薬組成物中に製剤化され得る。本明細書に記載される医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤を、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で更に含むことができる。Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000)Lippincott Williams and Wilkins,Ed.K.E.Hoover。このような担体、賦形剤、又は安定剤は、本明細書に記載される組成物中の活性成分の1つ以上の特性、例えば、生物活性、安定性、生物学的利用能、並びに他の薬物動態及び/又は生物活性を増強し得る。
【0064】
許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される投与量及び濃度で、レシピエントに無毒であり、ホスフェート、シトレート、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、ベンゾエート、ソルベート、及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、セリン、アラニン、若しくはリジンなどのアミノ酸;単糖、二糖、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストランを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);並びに/又はTWEEN(商標)(ポリソルベート)、PLURONICS(商標)(非イオン性界面活性剤)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0065】
いくつかの例では、本明細書に記載される医薬組成物は、肺適合性賦形剤を含む。好適なこのような賦形剤は、リクロロモノ-フルオロメタン、ジクロロ-ジフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン、クロロペンタ-フルオロエタン、モノクロロ-ジフルオロエタン、ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ヘプタフルオロプロパン、オクタフルオロ-シクロブタン、精製水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、PEG(例えば、PEG400、PEG600、PEG800、及びPEG1000)、ソルビタントリオレエート、ダイズレシチン、レシチン、オレイン酸、ポリソルベート80、ステアリン酸マグネシウム及びラウリル硫酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、チモール、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、EDTA、水酸化ナトリウム、トロメタミン、アンモニア、HCl、H2SO4、HNO3、クエン酸、CaCl2、CaCO3、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、EDTA二ナトリウム、サッカリン、メントール、アスコルビン酸、グリシン、リジン、ゼラチン、ポビドンK25、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、ラクトース、ラクトース一水和物、ラクトース無水物、マンニトール、並びにデキストロースを含むが、これらに限定されない。
【0066】
他の例では、本明細書に記載される医薬組成物は、持続的放出形式で製剤化され得る。持続的放出調製物の好適な例としては、成形品の形態である、固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックス、例えば、フィルム又はマイクロカプセルが挙げられる。持続的放出マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸と7エチル-L-グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成された注射用マイクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、イソ酪酸酢酸スクロース、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0067】
インビボ投与のために使用される医薬組成物は、滅菌でなければならない。これは、例えば、滅菌濾過膜を介する濾過によって容易に達成される。治療組成物は、概して、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ若しくはバイアル、又は手動でアクセスされる密封容器内に置かれる。
【0068】
本明細書に記載される医薬組成物は、吸入又は吹送による投与、髄腔内、肺内、又は脳内経路、経口、非経口、又は直腸投与のための単位剤形、例えば、固体、溶液若しくは懸濁液、又は坐剤であり得る。
【0069】
固体組成物を調製するために、主活性成分は、医薬担体、例えば、従来の錠剤化成分、例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、又はガム、及び他の医薬希釈剤、例えば、水と混合されて、本発明の化合物又は無毒の薬学的に許容されるその塩の均質の混合物を含有する固体予備製剤組成物を形成することができる。これらの予備製剤組成物を均質と言及するときに、これは、活性成分が、組成物全体にわたって均等に分散されており、このため、組成物が、等しく有効な単位剤形、例えば、粉末収集物、錠剤、丸剤、及びカプセル剤に容易に細分され得ることを意味する。次いで、この固体予備製剤組成物は、好適な量の活性成分を組成物中に含有する上記のタイプの単位剤形に細分される。
【0070】
好適な表面活性剤は、特に、非イオン性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、TWEEN(登録商標)20、40、60、80、又は85)、及び他のソルビタン(例えば、SPAN(登録商標)20、40、60、80、又は85)を含む。表面活性剤を有する組成物は、好都合には、0.05~5%の表面活性剤、例えば、0.1~2.5%の表面活性剤を含む。他の成分、例えば、マンニトール又は他の薬学的に許容されるビヒクルが、必要に応じて添加されてもよいことが理解されよう。
【0071】
好適なエマルジョンは、市販の脂肪エマルジョン、例えば、INTRALIPID(商標)、LIPOSYN(商標)、INFONUTROL(商標)、LIPOFUNDIN(商標)、及びLIPIPHYSAN(商標)を使用して調製され得る。活性成分は、予め混合されたエマルジョン組成物中に溶解させてもよく、又は代替として、活性成分は、油(例えば、ダイズ油、サフラワー油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、又はアーモンド油)中に溶解させてもよく、リン脂質(例えば、卵リン脂質、ダイズリン脂質、又はダイズレシチン)及び水と混合されると形成されるエマルジョン中に溶解させてもよい。他の成分、例えば、グリセロール又はグルコースが、エマルジョンの浸透圧を調節するために添加されてもよいことが理解されよう。好適なエマルジョンは、典型的には、最大20%の油、例えば、5~20%の油を含有する。
【0072】
吸入又は吹送のための医薬組成物は、薬学的に許容される水性若しくは有機溶媒又はこれらの混合物中の溶液及び懸濁液、並びに粉末を含む。液体又は固体組成物は、上記の好適な薬学的に許容される賦形剤を含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、局所又は全身効果のための経口又は鼻呼吸器経路によって投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、10nm~100mmのサイズの粒子から構成されている。
【0073】
好ましくは滅菌である薬学的に許容される溶媒中の組成物は、ガスの使用によって噴霧され得る。噴霧された溶液は、噴霧デバイスから直接呼吸されてもよく、又は噴霧デバイスは、フェイスマスク、テント、気管内チューブ、及び/若しくは間欠的陽圧呼吸器(換気装置)に取り付けられてもよい。溶液、懸濁液、又は粉末組成物は、製剤を適切な様式で送達するデバイスから、好ましくは、経口又は経鼻投与され得る。
【0074】
いくつかの事例では、本明細書に開示されるsiRNAのうちのいずれかを含む組成物は、鼻スプレー(例えば、エアロゾル吸入)のために又は鼻腔内送達のために製剤化され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)のうちのいずれかは、リポソームに封入されてもよく又は付着させてもよく、これは、当該技術分野において既知の方法、例えば、Epstein,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688(1985)、Hwang,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030(1980)、並びに米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号に記載されている方法によって調製され得る。増強された循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、逆相蒸発法によって、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物で生成され得る。リポソームは、一定の孔径のフィルタを介して押し出されて、所望の直径を有するリポソームが得られる。
【0076】
いくつかの実施形態では、抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)のうちのいずれかはまた、例えば、コアセルベーション技法によって若しくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に封入されてもよく、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中に封入されてもよく、又はマクロエマルジョン中に封入されてもよい。このような技法は、当該技術分野において既知であり、例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing(2000)を参照されたい。
【0077】
本明細書に開示される、抗SARS-CoV干渉RNA(例えば、抗SARS-CoV-1干渉RNA又は抗SARS-CoV-2干渉RNA)を含む医薬組成物のうちのいずれかは、エンドソーム及び/又はリソソームから細胞質への組成物の輸送を増強する構成成分を更に含み得る。例としては、pH感受性薬剤(例えば、pH感受性ペプチド)が挙げられる。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書の医薬組成物のうちのいずれかは、組成物の意図された治療的使用に基づいて、第2の治療剤を更に含み得る。
【0079】
III.治療用途
いくつかの態様では、本開示は、コロナウイルス感染を患っている、例えば、COVID-19を患っている患者において、ウイルス負荷を阻害する、治療する、低減するためのかつ/又は臨床転帰における罹患率若しくは死亡率を低減するための、本明細書に開示される干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)のうちのいずれか、あるいはこのような干渉RNAを含む組成物のうちのいずれかの使用を提供する。更に別の態様では、本開示は、個体が、臨床的後遺症を有する病理学的コロナウイルス感染を発症するリスクを低減する方法を更に提供する。方法は、概して、治療有効量の治療有効量の本明細書の組成物を投与することを含む。
【0080】
COVID-19は、2019新型コロナウイルスとして以前に既知の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる疾患である。他の事例では、患者は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、例えば、SARS-CoV-1などの別のコロナウイルスによって引き起こされる感染を有し得る。
【0081】
本明細書に開示される抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)のうちのいずれかは、SARS-CoV-2複製及び産生を阻害するために使用され得、それによって、ウイルス感染の抑制、及びコロナウイルス感染によって引き起こされる疾患又は障害、例えば、COVID-19の治療において有効である。
【0082】
本明細書に開示される方法を実施するために、少なくとも1つの抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)を含有する、有効量の本明細書に記載される医薬組成物は、治療を必要としている対象(例えば、ヒト)に、好適な経路を介して、例えば、静脈内投与を介して、例えば、ボーラスとして、又は筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、気管内、経口、吸入、若しくは局所経路によるある期間にわたる連続注入によって投与され得る。ジェットネブライザ及び超音波ネブライザを含む、液体製剤のための市販のネブライザは、投与に有用である。液体製剤は、直接噴霧され得、凍結乾燥粉末は、再構成後に噴霧され得る。代替として、本明細書に記載される抗SARS-CoV干渉RNA含有組成物は、フルオロカーボン製剤及び定量噴霧式吸入器を使用してエアロゾル化されてもよく、又は凍結乾燥及び粉砕粉末として吸入されてもよい。
【0083】
本明細書で使用される場合、「有効量」とは、単独又は1つ以上の他の活性剤との組み合わせのいずれかで治療効果を対象に付与するために必要とされるそれぞれの活性剤の量を指す。いくつかの実施形態では、治療効果は、SARS-CoVウイルス(例えば、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2)複製及び/又は産生の低減である。ある量の抗SARS-CoV-1又は抗SARS-CoV-2干渉RNAが治療効果を達成したかの判定は、当業者には明らかである。有効量は、当業者によって認識されるように、治療されている特定の状態、状態の重症度、年齢、健康状態、サイズ、性別、及び体重を含む個々の患者のパラメータ、治療の持続期間、(存在する場合)同時療法の性質、特定の投与経路、並びに医療従事者の知識及び専門知識内の同様の因子に依存して変動する。これらの因子は、当業者に周知であり、通例の実験法のみで扱われ得る。概して、最大用量の個々の構成成分又はこれらの組み合わせ、すなわち、健全な医学的判断による最高安全用量が使用されることが好ましい。
【0084】
半減期などの経験的考慮事項は、概して、投与量の判定に寄与する。投与頻度は、療法の経過にわたって判定及び調節され得、概して、治療及び/又は抑制及び/又は寛解及び/又は標的疾患/障害の遅延に基づくが、必ずしもそうではない。代替として、干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)の持続的連続放出製剤が、適切であり得る。持続的放出を達成するための様々な製剤及びデバイスは、当該技術分野において既知である。
【0085】
一例では、本明細書に記載される抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)についての投与量は、抗SARS-CoV-2干渉RNAの1つ以上の投与が与えられた個体において、経験的に判定され得る。個体に、漸増投与量の拮抗剤が与えられる。拮抗剤の効力を評価するために、疾患/障害の指標が追跡され得る。
【0086】
概して、本明細書に記載される抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)のうちのいずれかの投与について、初期候補投与量は、約2mg/kgであることができる。本開示の目的で、典型的な1日投与量は、上記の因子に依存して、約0.1μg/kg~3μg/kg~30μg/kg~300μg/kg~3mg/kg~30mg/kg~100mg/kg以上のうちのいずれかの範囲であり得る。数日以上にわたる反復投与について、状態に依存して、治療は、症状の所望の抑制が発生するまで、あるいは十分な治療レベルが達成されて標的疾患若しくは障害又はその症状を緩和するまで持続される。例示的な投与計画は、約2mg/kgの初期用量、続いて、約1mg/kgの週1回の維持用量の抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11などのsiRNA)、又は続いて、隔週の約1mg/kgの維持用量を投与することを含む。しかしながら、他の投与計画が、従事者が達成することを望む薬物動態学的減衰のパターンに依存して有用であり得る。例えば、週1~4回の投与が企図される。いくつかの実施形態では、約3μg/mg~約2mg/kg(例えば、約3μg/mg、約10μg/mg、約30μg/mg、約100μg/mg、約300μg/mg、約1mg/kg、及び約2mg/kg)の範囲の投与が使用され得る。いくつかの実施形態では、投与頻度は、毎週1回、2週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、若しくは10週間毎、又は毎月1回、2ヶ月毎、若しくは3ヶ月毎以上である。この療法の進行は、従来の技法及びアッセイによって容易に監視される。(使用される抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11などのsiRNA)を含む)投与計画は、経時的に変動することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、標準体重の成人患者について、約0.3~5.00mg/kgの範囲の用量が投与され得る。特定の投与計画、すなわち、用量、タイミング、及び反復は、特定の個体及びこの個体の病歴、並びに個々の薬剤の特性(例えば、薬剤の半減期、及び当該技術分野において周知の他の考慮事項)に依存する。
【0088】
本開示の目的で、本明細書に記載される抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)の適切な投与量は、特定のsiRNA、疾患/障害のタイプ及び重症度、siRNAが防止又は治療目的で投与されるか、以前の療法、患者の臨床歴及び拮抗剤に対する患者の応答、並びに主治医の裁量に依存する。臨床医は、抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)を、所望の結果を達成する投与量が達せられるまで投与し得る。いくつかの実施形態では、所望の結果は、腫瘍負荷の減少、がん細胞の減少、又は免疫活性の増加である。投与量が所望の結果をもたらしたかを判定する方法は、当業者には明らかである。1つ以上の抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与の目的が治療又は予防であるか、及び熟練した従事者に既知の他の因子に依存して、連続的又は間欠的であり得る。抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)の投与は、事前選択された期間にわたって本質的に連続的であってもよく、又は一連の間隔をおいた投与であってもよく、例えば、標的疾患又は障害の発症前、中、又は後のいずれかでの投与であってもよい。
【0089】
本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、標的疾患若しくは障害、疾患/障害の症状、又は疾患/障害の素因を有する対象に、障害、疾患の症状、又は疾患若しくは障害の素因を治癒させる、治す、緩和する、軽減する、変化させる、療治する、寛解させる、改善する、又はこれらに影響する目的で、1つ以上の活性剤を含む組成物を適用又は投与することを指す。
【0090】
標的疾患/障害を緩和することは、疾患の発症若しくは進行を遅延させること、又は疾患重症度を低減することを含む。疾患を緩和することは、必ずしも治癒結果を必要とするわけではない。本明細書で使用される場合、標的疾患又は障害の発症を「遅延させる」とは、疾患の進行を延期する、妨げる、遅くする、遅らせる、安定させる、かつ/又は延ばすことを意味する。この遅延は、疾患歴及び/又は治療されている個人に依存して、様々な時間長さの遅延であることができる。疾患の発症を「遅延させる」若しくは緩和する、又は疾患の発病を遅延させる方法は、方法を使用しない場合と比較されたときに、疾患の1つ以上の症状を発症する確率を所与の時間枠内で低減しかつ/又は症状の程度を所与の時間枠内で低減する方法である。このような比較は、典型的には、統計的に有意な結果を得るのに十分な数の対象を使用する臨床研究に基づく。
【0091】
疾患の「発症」又は「進行」とは、疾患の初期徴候及び/又はその後の進行を意味する。疾患の発症は、当技術分野において周知の標準的な臨床技法を使用して、検出可能であることができ、評価され得る。しかしながら、発症とは、検出不可能であり得る進行も指す。本開示の目的で、発症又は進行とは、症状の生物学的経過を指す。「発症」は、発生、再発、及び発病を含む。本明細書で使用される場合、標的疾患又は障害の「発病」又は「発生」は、初期発病及び/又は再発を含む。
【0092】
本明細書に記載される意図された治療効果のうちのいずれかを達成するために、有効量の本明細書の組成物は、治療を必要としている対象に、好適な経路を介して投与され得る。
【0093】
本明細書で使用される場合、「有効量」とは、単独又は1つ以上の他の活性剤、例えば、本明細書に記載される第2の治療剤のうちの1つ以上との組み合わせのいずれかで治療効果を対象に付与するために必要とされるそれぞれの活性剤の量を指す。いくつかの実施形態では、治療効果は、ウイルス感染の基礎状態の改善である。いくつかの実施形態では、治療効果は、本明細書に記載されるウイルスによる感染のうちのいずれかに関連する1つ以上の症状を緩和することである。
【0094】
ある量の本明細書に記載される組成物が治療効果を達成したかの判定は、当業者には明らかである。有効量は、当業者によって認識されるように、治療されている特定の状態、状態の重症度、年齢、健康状態、サイズ、性別、及び体重を含む個々の患者のパラメータ、治療の持続期間、(存在する場合)同時療法の性質、特定の投与経路、遺伝因子、並びに医療従事者の知識及び専門知識内の同様の因子に依存して変動する。これらの因子は、当業者に周知であり、通例の実験法のみで扱われ得る。概して、最大用量の個々の構成成分又はこれらの組み合わせ、すなわち、健全な医学的判断による最高安全用量が使用されることが好ましい。
【0095】
半減期などの経験的考慮事項は、概して、投与量の判定に寄与する。投与頻度及び/又は投与経路は、療法の経過にわたって判定及び調節され得、概して、治療及び/又は抑制及び/又は寛解及び/又は標的疾患/障害の遅延に基づくが、必ずしもそうではない。代替として、本明細書に記載される組成物の持続的連続放出製剤が、適切であり得る。持続的放出を達成するための様々な製剤及びデバイスは、当該技術分野において既知である。
【0096】
いくつかの実施形態では、有効量は、コロナウイルス感染を有するリスクを低減するための予防有効量(例えば、ウイルス感染を患っており、ウイルス負荷を阻害する、治療する、低減すること及び/又は罹患率若しくは死亡率を低減することを必要としている対象において、このような効果に有効な量)であり得る。
【0097】
医学分野の当業者に既知の従来の方法が、治療される疾患のタイプ又は疾患の部位に依存して、対象に、医薬組成物を投与するために使用され得る。この組成物はまた、他の従来の経路を介して投与され得、例えば、経口、非経口投与されてもよく、吸入スプレーによって投与されてもよく、局所、直腸、経鼻、頬側、膣内投与されてもよく、又は埋め込み型リザーバを介して投与されてもよい。本明細書で使用される場合、「非経口」という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑膜内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内、及び頭蓋内注射又は注入技法を含む。加えて、組成物は、対象に、注射可能デポ投与経路を介して、例えば、1、3、又は6ヶ月デポ注射可能又は生分解性材料及び方法を使用して投与され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、鼻経路を介して、例えば、鼻腔内スプレー、鼻スプレー、又は点鼻を介して投与され得る。具体的な例では、組成物は、(例えば、予防的又は実際の)治療を必要としている対象に、鼻腔内滴下及びエアロゾル吸入の両方を介して投与され得る。
【0098】
注射可能組成物は、様々な担体、例えば、植物油、ジメチルアクタミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、及びポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)を含有し得る。静脈内注射について、水溶性抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11などのsiRNA)は、点滴法によって投与され得、それによって、干渉RNAと、生理学的に許容される賦形剤と、を含有する医薬製剤が注入される。生理学的に許容される賦形剤は、例えば、5%のデキストロース、0.9%の生理食塩水、リンガー溶液、又は他の好適な賦形剤を含み得る。筋肉内調製物、例えば、本明細書に開示されるsiRNAの好適な可溶性塩形態の滅菌製剤は、医薬賦形剤、例えば、注射用水、0.9%の生理食塩水、又は5%のグルコース溶液中に溶解させて投与され得る。
【0099】
一実施形態では、抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、又はC11などのsiRNA)は、部位特異的又は標的局所送達技法を介して投与される。部位特異的又は標的局所送達技法の例としては、siRNAの様々な埋め込み型デポソース、又は局所送達カテーテル、例えば、注入カテーテル、留置カテーテル、若しくは針カテーテル、合成グラフト、外膜ラップ、シャント及びステント、若しくは他の埋め込み型デバイス、部位特異的担体、直接注射、又は直接適用が挙げられる。例えば、国際公開第00/53211号及び米国特許第5,981,568号を参照されたい。
【0100】
ポリヌクレオチド、発現ベクター、又はサブゲノムポリヌクレオチドを含有する治療組成物の標的送達もまた、使用され得る。受容体媒介性DNA送達技法は、例えば、Findeis et al.,Trends Biotechnol.(1993)11:202、Chiou et al.,Gene Therapeutics:Methods And Applications Of Direct Gene Transfer(J.A.Wolff,ed.)(1994)、Wu et al.,J.Biol.Chem.(1988)263:621、Wu et al.,J.Biol.Chem.(1994)269:542、Zenke et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87:3655、Wu et al.,J.Biol.Chem.(1991)266:338に記載されている。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)のうちのいずれか、又はこのような抗SARS-CoV-2干渉RNAを含む医薬組成物は、肺送達システムによって投与され得、すなわち、活性医薬成分は、肺内に投与される。肺送達システムは、吸入器システムであることができる。いくつかの実施形態では、吸入器システムは、加圧定量噴霧式吸入器、乾燥粉末吸入器、又はネブライザである。いくつかの実施形態では、吸入器システムは、スペーサー付きである。
【0102】
いくつかの実施形態では、加圧定量噴霧式吸入器は、噴射剤、共溶媒、及び/又は界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、噴射剤は、フッ素化炭化水素、例えば、トリクロロモノ-フルオロメタン、ジクロロ-ジフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン、クロロペンタ-フルオロエタン、モノクロロ-ジフルオロエタン、ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ヘプタフルオロプロパン、オクタフルオロ-シクロブタンを含む群から選択される。いくつかの実施形態では、共溶媒は、精製水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、PEG400、PEG600、PEG800、及びPEG1000を含む群から選択される。いくつかの実施形態では、界面活性剤又は潤滑剤は、ソルビタントリオレエート、ダイズレシチン、レシチン、オレイン酸、ポリソルベート80、ステアリン酸マグネシウム、及びラウリル硫酸ナトリウムを含む群から選択される。いくつかの実施形態では、保存剤又は酸化防止剤は、メチルパラベン、プロピパラベン、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、チモール、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、EDTAを含む群から選択される。いくつかの実施形態では、pH調節又は浸透圧調節は、酸化ナトリウム、トロメタミン、アンモニア、HCl、H2SO4、HNO3、クエン酸、CaCl2、CaCO3を含む群から選択される。
【0103】
いくつかの実施形態では、乾燥粉末吸入器は、分散剤を含む。いくつかの実施形態では、分散剤又は担体粒子は、ラクトース、ラクトース一水和物、ラクトース無水物、マンニトール、デキストロースを含む群から選択され、これらの粒子サイズは、約1~100μmである。
【0104】
いくつかの実施形態では、ネブライザは、共溶媒、界面活性剤、潤滑剤、保存剤、及び/又は酸化防止剤を含み得る。いくつかの実施形態では、共溶媒は、精製水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、PEG(例えば、PEG400、PEG600、PEG800、及び/又はPEG1000)を含む群から選択される。いくつかの例では、界面活性剤又は潤滑剤は、ソルビタントリオレエート、ダイズレシチン、レシチン、オレイン酸、ステアリン酸マグネシウム、及びラウリル硫酸ナトリウムを含む群から選択される。いくつかの例では、保存剤又は酸化防止剤は、メチルパラベン、プロピパラベン、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、チモール、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、EDTAを含む群から選択される。いくつかの例では、ネブライザは、酸化ナトリウム、トロメタミン、アンモニア、HCl、H2SO4、HNO3、クエン酸、CaCl2、CaCO3を含む群から選択されるpH調節又は浸透圧調節を更に含む。
【0105】
ポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載される抗SARS-CoV-2 siRNA、又はこのような抗SARS-CoV-2 siRNAを産生するためのベクター)を含有する治療組成物は、遺伝子療法プロトコルにおける局所投与のために、約100ng~約200mgのDNAの範囲で投与される。いくつかの実施形態では、約500ng~約50mg、約1μg~約2mg、約5μg~約500μg、及び約20μg~約100μg以上のDNAの濃度範囲もまた、遺伝子療法プロトコル中に使用され得る。
【0106】
本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって判定された場合の、特定の値についての許容誤差範囲内を意味し、これは、どのように値が測定又は判定されるか、すなわち、測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」とは、当該技術分野における実施に従って、許容標準偏差以内を意味することができる。代替として、「約」とは、所与の値の最大±20%、好ましくは、最大±10%、より好ましくは、最大±5%、より好ましくは、更には、最大±1%までの範囲を意味することができる。代替として、特に、生物学的系又はプロセスに関して、この用語は、値の1桁以内、好ましくは、2倍以内を意味することができる。特定の値が本明細書及び特許請求の範囲に記載される場合、別途記載されない限り、「約」の用語は、暗示的であり、この文脈において、特定の値についての許容誤差範囲内を意味する。
【0107】
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用され、治療のために評価されているかつ/又は治療されている哺乳動物を指す。対象は、ヒトであり得るが、他の哺乳動物、特に、ヒト疾患についての実験モデルとして有用な哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌなども含む。治療を必要とするヒト対象は、ウイルス又はコロナウイルスによる感染などの標的疾患/障害を有する、これらのリスクがある、又はこれらを有すると疑われるヒト患者であり得る。いくつかの実施形態では、対象(例えば、ヒト患者)は、コロナウイルスによる感染を有し得る又はこれを有すると疑われ得る。いくつかの例では、対象は、SARS-CoV-1による感染を有する又はこれを有すると疑われるヒト患者である。いくつかの例では、対象は、SARS-CoV-2による感染を有する又はこれを有すると疑われるヒト患者である。いくつかの例では、対象は、COVID-19を有する又はこれを有すると疑われるヒト患者である。
【0108】
標的疾患/障害のための治療効力は、当該技術分野において周知の方法によって評価され得る。
【0109】
IV.併用療法
抗SARS-CoV干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)のうちの1つ以上を含む本明細書に記載される組成物のうちのいずれかと、本明細書に記載されるものなどの第2の治療剤と、を使用する併用療法もまた、本明細書で提供される。本明細書で使用される場合、「併用療法」という用語は、これらの薬剤(例えば、抗SARS-CoV干渉RNA及び抗ウイルス剤)が逐次的な様式で投与されること、すなわち、それぞれの治療剤が異なる時間に投与されること、及びこれらの治療剤、又は薬剤のうちの少なくとも2つが実質的に同時の様式で投与されることを包含する。それぞれの薬剤が逐次的に又は実質的に同時に投与されることは、任意の適切な経路によって影響され得、適切な経路は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、粘膜組織を介する直接吸収、及び肺送達経路を含むが、これらに限定されない。薬剤は、同じ経路によって又は異なる経路によって投与され得る。例えば、第1の薬剤(例えば、本明細書に記載される組成物)は、肺送達経路によって投与され得、第2の薬剤(例えば、抗ウイルス剤)は、静脈内投与され得る。
【0110】
ウイルス侵入阻害剤、ウイルス非コーティング阻害剤、ウイルス逆転写酵素阻害剤、ウイルスタンパク質合成阻害剤、ウイルスプロテアーゼ阻害剤、ウイルスポリメラーゼ阻害剤、ウイルスインテグラーゼ阻害剤、インターフェロン、又はこれらの組み合わせから選択される追加の医薬剤の例。ウイルス侵入阻害剤の例としては、マラビロク、エンフビルチド、イバリズマブ、ホステムサビル、プレリキサフォル、没食子酸エピガロカテキン、ビクリビロク、アプラビロク、マラビロク、トロマンタジン、ニタゾキサニド、ウミフェノビル、及びポドフィロックスが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルス非コーティング阻害剤の例としては、アマンタジン、リマンタジン、及びプレコナリルが挙げられるが、これらに限定されない。逆転写酵素阻害剤の例としては、ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、エムトリシタビン、エンテカビル、トルバダ、ネビラピン、ラルテグラビル、及びテノホビルジソプロキシルが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスプロテアーゼ阻害剤の例としては、ホサンプレナビル、リトナビル、アタザナビル、ネルフィナビル、インジナビル、サキナビル、サキナビル、ファムシクロビル、ホミビルセン、ロピナビル、リバビリン、ダルナビル、オセルタミビル、及びチプラナビルが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスポリメラーゼ阻害剤の例としては、アマトキシン、リファマイシン、シタラビン、フィダキソマイシン、タゲチトキシン、ホスカルネットナトリウム、イドクスウリジン、ペンシクロビル、ソホスブビル、トリフルリジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビン、及びレムデシビルが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスインテグラーゼ阻害剤の例としては、ラルテガルビル、エルビテグラビル、ドルテグラビル、ビクテグラビル、及びカボテグラビルが挙げられるが、これらに限定されない。インターフェロンの例としては、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、及びペグインターフェロンアルファ-2aが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
いくつかの例では、追加の治療剤は、1つ以上の抗SARS-CoV-2抗体、例えば、REGN10933及びREGN10987を含み得る。他の例では、追加の治療剤は、レムデシビルなどの低分子抗SARS剤であり得る。更に他の例では、追加の治療剤は、コルチコステロイド(例えば、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、又はメチルプレドニゾロン)などのステロイド化合物を含み得る。
【0112】
本明細書で使用される場合、「逐次的な」という用語は、別途指定されない限り、規則的な順序又は順番によって特徴付けられ、例えば、投与計画が組成物及び抗ウイルス剤の投与を含む場合、逐次的な投与計画は、組成物を、抗ウイルス剤の投与前に、同時に、実質的に同時に、又は後に投与することを含み得るが、両方の薬剤は、規則的な順序又は順番で投与されることを意味する。「離す」という用語は、別途指定されない限り、互いに間隔を保つことを意味する。「同時に」という用語は、別途指定されない限り、同時に起こる又は行われること、すなわち、本発明の薬剤が、同時に投与されることを意味する。「実質的に同時に」という用語は、薬剤が、互いに数分以内に(例えば、互いに10分以内に)投与され、共同投与及び継続的投与を包含することを意図するが、投与が継続的である場合、投与は、短期間(例えば、医療従事者が2つの化合物を別個に投与する時間)のみ時間的に離れていることを意味する。本明細書で使用される場合、同時投与及び実質的に同時投与は、互換的に使用される。逐次的な投与とは、本明細書に記載される薬剤の時間的に離れた投与を指す。
【0113】
併用療法はまた、本明細書に記載される薬剤(例えば、組成物及び抗ウイルス剤)を、他の生物学的活性成分(例えば、異なる抗ウイルス剤)及び非薬物療法と更に組み合わせて投与することを包含することができる。
【0114】
本明細書に記載される組成物と第2の治療剤(例えば、抗ウイルス剤)とのいずれかの組み合わせは、標的疾患を治療するためのいずれかの順序で使用され得ることを理解されたい。本明細書に記載される組み合わせは、いくつかの因子に基づいて選択され得、いくつかの因子は、ウイルス又はウイルス感染に関連する少なくとも1つの症状を阻害する有効性を含むが、これに限定されない。
【0115】
V.コロナウイルス感染を治療するためのキット
本開示はまた、コロナウイルス感染の治療における使用のためのキットを提供する。このようなキットは、1つ以上の容器を含むことができ、容器は、抗SARS-CoV-2干渉RNA(例えば、C6、C7、C8、C10、若しくはC11などの未修飾siRNA、又はC6G25S、C8G25S、若しくはC10G31Aなどの修飾siRNA)又はこのような抗SARS-CoV-2干渉RNAを含む本明細書に記載される組成物と、任意選択で、本明細書にまた記載される第2の治療剤のうちの1つ以上と、を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載される方法のうちのいずれかによる使用のための説明書を含むことができる。含まれる説明書は、例えば、ウイルス感染の医学的状態又はウイルス感染の堆積における医学的状態を改善するための、siRNA化合物の投与の説明と、任意選択で、第2の治療剤の投与の説明と、を含むことができる。キットは、治療に好適な個体を、この個体が疾患を有する又は疾患のリスクがあるかを同定することに基づいて選択する説明を更に含み得る。尚も他の実施形態では、説明書は、ウイルス感染のリスクがある個体に、本開示の1つ以上の薬剤を投与することの説明を含む。
【0117】
意図された治療効果を達成するためのsiRNA化合物の使用に関する説明書は、概して、意図された治療のための投与量、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)、又はサブ単位用量であり得る。本発明のキット内に供給される説明書は、典型的には、標識又は添付文書上の書面説明書(例えば、キット内に含まれる紙シート)であるが、機械可読説明書(例えば、磁気若しくは光学記憶ディスク又はQRコード上に保持された説明書)もまた、許容される。
【0118】
標識又は添付文書は、組成物が意図された治療的有用性のために使用されることを示し得る。本明細書に記載される方法のうちのいずれかを実施するための説明書が提供され得る。
【0119】
本発明のキットは、好適な包装内にある。好適な包装は、チャンバ、バイアル、ボトル、ジャー、及び軟包装(例えば、密封Mylar又はプラスチックバッグ)などを含むが、これらに限定されない。また、特定のデバイス、例えば、吸入器、ネブライザ、換気装置、経鼻投与デバイス(例えば、アトマイザ)、又は注入デバイス、例えば、ミニポンプと組み合わせて使用するためのパッケージが企図される。キットは、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。容器はまた、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。
【0120】
キットは、任意選択で、緩衝液及び解釈情報などの追加の構成要素を提供し得る。通常、キットは、容器と、容器上若しくは容器に伴う標識又は添付文書と、を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、上記のキットの内容物を含む製造物品を提供する。
【0121】
一般的な技法
本開示の実施は、別途示されない限り、(組換え技法を含む)分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技法を使用し、これらは、当業者の技量の範囲内である。このような技法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1989)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.1987)、Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.1993-8)J.Wiley and Sons、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)、Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999)、Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997)、Antibodies(P.Finch,1997)、Antibodies:a practice approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989)、Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)、Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999)、The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.Harwood Academic Publishers,1995)、DNA Cloning:A practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985)、Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins eds.(1985≫、Transcription and Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984≫、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986≫、Immobilized Cells and Enzymes(lRL Press,(1986≫、及びB.Perbal,A practical Guide To Molecular Cloning(1984)、F.M.Ausubel et al.(eds.)などの文献に完全に説明されている。
【0122】
更なる詳細なしに、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に使用することができると考えられる。したがって、以下の具体的な実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、本開示の残りの部分をなんら限定しない。本明細書に記載される全ての刊行物は、本明細書で参照される目的で又は主題のために、参照により組み込まれる。
【0123】
実施例1:SARS-CoV-2を標的とする例示的なsiRNAによるSARS-CoV-2の阻害。
コロナウイルス疾患(COVID-19)の流行は、健康及び経済的負担を伴う世界的大流行に急速に発展している。COVID-19疾患は、コロナウイルス(CoV)科に属する重症呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる。SARS-CoV-2のRNAゲノムは、30kbの平均サイズを有する非セグメント化ポジティブセンスRNAである。ゲノムの5’末端におけるゲノムの3分の2は、2つのポリタンパク質をコードし、2つのポリタンパク質は、ウイルス複製に不可欠な16個の非構造タンパク質を含有する。ゲノムの3’末端におけるゲノムの3分の1は、4つの構造タンパク質及びいくつかのアクセサリータンパク質をコードする。
【0124】
RNA干渉(RNAi)は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって媒介され、RISCは、二本鎖siRNAのアンチセンス鎖を同定及び保持し、相補的mRNA標的を破壊する。したがって、RNAiは、ウイルスRNAゲノムを破壊しRNAウイルス複製及びウイルスタンパク質の発現を阻害するのに好適な戦略である。
【0125】
29771個の完全長SARS-CoV-2ゲノム配列が、2020年6月現在、GenBankデータベースにあり、これらを、SARS-CoV-2ゲノム内の少なくとも99%の同一性(高度保存)を示した19ヌクレオチド伸長について分析した。RNA標的アクセシビリティがsiRNA効力に影響するため、SARS-CoV-2ゲノムのRNA二次構造を評価した。siRNA候補の設計及び選択を、以下の基準を考慮して実行した。(1)弱いRNA二次構造を有する又はRNA二次構造を有さないRNA領域を標的とすること、(2)低いオフターゲット可能性、すなわち、ヒトmRNAデータベースに対する低い交差反応性、及び(3)低い数の、siRNA候補によって標的とされると予測される必須遺伝子。siRNA候補を、SARS-CoV-2ゲノムにおける高いカバレッジ、低いオフターゲットレート、及びRNA二次構造への低い傾向を有する最上位配列から選択した。
【0126】
最上位11個のsiRNA候補を、更なるインビトロスクリーニング実験のために選択した。これらのsiRNAの配列を、以下に列挙する。
【表1】
【0127】
表1に列挙される11個のsiRNA候補を、合成し、Vero細胞において、SARS-CoV-2に対するsiRNA候補の阻害活性についてスクリーニングした。簡潔には、Vero細胞を、siRNA候補で逆トランスフェクトし、次いで、24ウェル培養プレート内に播種した。トランスフェクションの24時間後に、siRNAトランスフェクト細胞を、SARS-CoV-2ウイルスに感染させた。24時間の感染後に、全RNAを、ウイルス感染Vero細胞から単離した。siRNAによるSARS-CoV-2 RNAゲノムのノックダウンを、E(エンベロープ)遺伝子を標的とするRT-qPCRによって判定した。培養培地中のウイルス力価を、プラークアッセイによって定量化した。それぞれのアッセイの簡潔な説明を、以下で提供する。
【0128】
RT-qPCR
全細胞RNAを、NucleoSpin RNA mini kit(Macherey-Nagel、Duren)で抽出した。ウイルスRNAの量を、ウイルスE遺伝子の逆転写定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)によって、QuantStudio 5 Real-Time PCR System(Applied Biosystems)において、iTaq Universal Probes One-Step RT-PCR Kit(Bio-Rad)を使用して判定した。SARS-CoV-2を標的とするプライマー及びプローブは、以下のとおりであった。
フォワードプライマー、5’-ACAGGTACGTTAATAGTTAATAGCGT-3’(配列番号62)、
リバースプライマー、5’-ACATTGCAGCAGTACGCACACA-3’(配列番号63)、及び
プローブ、5’-ACACTAGCCATCCTTACTGCGCTTCG-3’(配列番号64)。
【0129】
部分的なE断片を含有するプラスミドを、ウイルス負荷(コピー/μl)を計算するための標準として使用した。
【0130】
プラークアッセイ
Vero細胞を、10%FBSが補充されたDMEM中の24ウェル培養プレート内に播種し、コンフルエントな単層に24時間成長させた。細胞を、PBSで洗浄し、細胞は、段階10倍希釈のウイルス含有培地を3回接種された。1時間の吸着後に、ウイルス上清を除去した。次いで、細胞を、PBSで洗浄し、1%メチルセルロースを含有する培地でオーバーレイし、3~5日間インキュベートした。その後、プレートを、PBS中の10%ホルムアルデヒドで1時間固定し、洗浄してオーバーレイ培地を除去し、0.7%クリスタルバイオレットで染色した。プラークを計数して、PFU/mlとして表されるウイルス力価を計算した。
【0131】
図1に示されるように、この研究において試験された抗SARS-CoV-2 siRNAの全ては、SARS-CoV-2ゲノムRNA複製に対するあるレベルの阻害活性を示した。試験されたsiRNAのうち、C6、C7、C8、及びC10は、98%超の阻害活性を示した。
図1。
【0132】
以下の表2は、SARS-CoV-2を標的とする全ての試験された例示的なsiRNAの阻害活性を概略する。
【表2】
【0133】
培養培地中のウイルス力価を、上記のプラークアッセイを使用して判定した。
図2に示されるように、試験されたsiRNAのほとんどは、SARS-CoV-2産生に対する阻害活性を示した。試験されたsiRNAのうち、siRNA C6、C7、C8、C10、及びC11は、Vero細胞アッセイから受け取られたデータと一致して、98%超の阻害活性を示した。
【0134】
要約すると、この研究から得られた結果は、siRNA-C6、C7、C8、C10、及びC11を含む、SARS-CoV-2を標的とするsiRNAによる、SARS-CoV-2複製及び産生の効率的な阻害を実証する。
【0135】
実施例2:広範囲のSARS-CoV-2感染を標的とする修飾siRNAの開発及び特徴付け
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス変異体の出現は、COVID-19大流行の行方を変え、ワクチン戦略の長期的効率についてのある不確実性を生じさせた。広範囲のSARS-CoV-2変異体に対する新しい治療薬の開発が、不可欠である。この研究は、アルファ、デルタ、ガンマ、及びイプシロンなどの現在優性の変異体株を含む広範囲のSARS-CoV-2変異体によって引き起こされる感染を阻害するのに有効である強力なsiRNAの開発及び同定を目的とする。1つの修飾siRNAであるC6G25Sを、一例として同定した。C6G25Sは、現在のSARS-CoV-2変異体の99.8%をカバーし、本明細書に記載される株を含む優性株を、ピコモル範囲のIC50でインビトロで阻害することが可能であることを、ここに報告する。また、C6G25Sは、K18-hACE2トランスジェニックマウスにおいて、ウイルス関連の広範な肺胞損傷、血管血栓、及び免疫細胞浸潤の有意な防止を伴って、肺内の感染性ビリオンの産生を予防的処置によって完全に阻害することができ、ビリオンの96.2%を曝露後処置によって減少させることができた。データは、C6G25Sを含む、本明細書に開示される抗SARS-CoV2 siRNAが、COVID-19大流行と戦うのに有効な治療剤であることを示唆する。
【0136】
材料及び方法:
SARS-CoV-2特異的siRNA選択:
2020年6月現在、Global Initiative on Sharing All Influenza Data(GISAID)のウェブサイトから入手可能な29,871個の完全長SARS-CoV-2ゲノム配列があった。これらの配列を、SARS-CoV-2ゲノム内の少なくとも99%の同一性(高度保存)を示した19ヌクレオチド伸長について分析した。RNA標的アクセシビリティがsiRNA効力に影響するため、ゲノム全域の硫酸ジメチル配列決定変異プロファイリング(DMS-MaPseq)(Lan,et al.,bioRxiv,2020,doi:2020.06.29.178343)及びRNAz(RNAz P<0.9)でのインシリコ予測(Rangan,et al.,2020,RNA 26:937-959)によってインビボで分析されたRNA構造に基づいて、ウイルスRNA二次構造を評価した。強い二次構造を有するウイルス領域を標的とする配列を除去した(RNAz P>0.9)。合計674個のsiRNA候補は、99%超のカバレッジを示し、標的領域は、RNA二次構造への低い傾向を有した。本発明者らは、ウイルスリーダー、パパイン様プロテアーゼ、3C様プロテアーゼ、RdRP、ヘリカーゼ、スパイクタンパク質、及びエンベロープタンパク質をコードする領域内に位置する候補を、更なるオフターゲット予測及び必須遺伝子標的化のために選択した。オフターゲット効果を、blastを介して、GRCh38参照配列データベースで予測し、候補を、36以下のオフターゲット遺伝子数で選別した。オフターゲット遺伝子を、細胞生存率へのオフターゲット遺伝子の必須寄与について更に評価した(Blomen et al.,2015,Science 350:1092-6、Hart,et al.,2015,Cell 163:1515-26、Wang,et al.,2015,Science 350:1096-101)。候補を、低い数の、siRNA候補によって標的とされると予測される必須遺伝子(n≦1)で選択した。最上位11個のsiRNA候補を、Vero E6細胞におけるウイルスRNAノックダウン及びプラーク低減アッセイによる後続のインビトロスクリーニングのために同定した。
【0137】
細胞及びウイルス:
Vero E6細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)が補充されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、37℃で5%CO2で維持した。ヒト気管支上皮細胞株BEAS-2Bを、10%FBSが補充されたRPMI-1640培地中で維持した。SARS-CoV-2に感染した患者から得られた痰検体を、ウイルス輸送培地中で維持した。検体中のウイルスを、2ug/mLのトシルスルホニルフェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)-トリプシン(Sigma-Aldrich)が補充されたDMEM中のVero E6細胞において増殖させた。細胞変性効果(CPE)が細胞の70%超において観察されたときに、培養上清を採取し、ウイルス力価を、プラークアッセイによって判定した。インビトロsiRNAスクリーニング及びIC50判定において使用されたウイルス単離物は、hCoV-19/Taiwan/NTU13/2020(A.3;EPI_ISL_422415)、hCoV-19/Taiwan/NTU49/2020(B.1.1.7;EPI_ISL_1010718)、hCoV-19/Taiwan/NTU56/2021(B.1.429;EPI_ISL_1020315)、hCoV-19/Taiwan/CGMH-CGU-53/2021(P.1;EPI_ISL_2249499)、hCoV19/Taiwan/NTU92/2021(B.1.617.2;EPI_ISL_3979387)であった。K18-hACE2トランスジェニックマウスの感染において使用されたウイルスは、hCoV-19/Taiwan/4/2020(B;EPI_ISL_411927)及びhCoV-19/Taiwan/1144/2020(B.1.617.2;GISAIDデータベースにアップロードされていない)であった。
【0138】
Vero E6細胞におけるsiRNAスクリーニング:
Vero E6細胞を、培養培地中で、2×105細胞/mLで再懸濁し、以下のとおり、siRNAで逆トランスフェクトした。siRNA及びLipofectamine RNAiMAX(Thermo Fisher Scientific)を、別個に、Opti-MEM I reduced serum medium(Thermo Fisher Scientific/Gibco)で希釈した。siRNA/Opti-MEM混合物を、Lipofectamine RNAiMax/Opti-MEM混合物に添加した。siRNA-RNAiMAX混合物(100uL)を、室温で10分間インキュベートした。次いで、Vero E6細胞(500ul、2×105細胞/mL)を、siRNA-RNAiMAX混合物に添加し、24ウェルプレート内に移した。
【0139】
24時間のインキュベーション後に、siRNAトランスフェクトVero E6細胞を、SARS-CoV-2ウイルスに、0.1の感染多重度(MOI)で感染させた。1時間のインキュベーション後に、接種物を除去し、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄した。新しい培地を、37℃での24時間のインキュベーションのために添加した。その後、培養上清を、プラークアッセイのために採取して(Cheng,et al.,2020,Cell Rep 33:108254)、全細胞RNAを、NucleoSpin RNA mini kit(Macherey-Nagel)で抽出して、ウイルスRNAの量を、ウイルスE遺伝子の逆転写定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)によって、QuantStudio 5 Real-Time PCR System(Applied Biosystems)において、iTaq Universal Probes One-Step RT-PCR Kit(Bio-Rad)を使用して判定した(Cheng et al.,2020)。SARS-CoV-2を標的とするプライマー及びプローブは、以下のとおりであった。フォワードプライマー、5’-ACA GGTACGTTAATAGTTAATAGCGT-3’(配列番号62)、
リバースプライマー、5’-ACATTGCAGCAGTACGCACACA-3’(配列番号63)、及び
プローブ、5’-ACACTAGCCATCCTTACTGCGCTTCG-3’(配列番号64)。
【0140】
部分的なE断片を含有するプラスミドを、ウイルス負荷(コピー/uL)を計算するための標準として使用した。SARS-CoV-2ウイルスを伴う全ての作業を、National Taiwan University College of MedicineのFirst Core Laboratoryのバイオセイフティレベル-3研究室において実行した。
【0141】
吸入及び鼻腔内滴下を介するsiRNA送達:
siRNAの吸入送達を、Aeroneb Lab Nebulizer Unitに接続されたポリカーボネートチャンバからなる標準デバイスを使用して、0.4mL/分で実行した。マウス(n=5/群)を、チャンバ内に置き、エアロゾルを、予防的処置のための6mg/mLのsiRNAを含有する又は曝露後処置のための12mg/mLのsiRNAを含有する10mLの通常の生理食塩水から、25分間生成した。マウスを、siRNAエアロゾルに、チャンバ内で合計30分間曝露した。鼻腔内投与のために、50uLのD5W中の50ugのsiRNAを、両方の鼻孔内に滴下した(1鼻孔当たり25uL)。吸入を介する肺及び鼻腔内のsiRNAの分布及び濃度を分析するために、C57BL/6マウスを、6mg/mLのsiRNAを含有する10mLの通常の生理食塩水から生成されたsiRNAエアロゾルで処置した。チャンバ内のエアロゾルのsiRNA濃度を、以下のとおりに定量化した。エアロゾル試料を、チャンバから、0.5mLの注射器を使用して、エアロゾル生成の1、2、5、15、及び25分後に収集し、次いで、100uLのヌクレアーゼ不含水中に通した。その後、ヌクレアーゼ不含水中のsiRNAレベルを、OD260によって判定した。最大siRNAレベルであるBmaxを計算し、mg/L空気エアロゾルとして憤慨した。
【0142】
肺及び鼻粘膜内のsiRNAレベルの定量化:
C57BL/6マウスを、siRNAの肺送達又は鼻腔内滴下後に、異なる時点で屠殺した。肝臓及び鼻粘膜を、秤量し、PBS中0.25%Triton X-100中で100mg/mLの最終濃度に、TissueLyser II(Qiagen)を使用して4℃でホモジナイズした。siRNAレベルを、ステムループRT-qPCR(Brown,et al.,2020,Nucleic Acids Res 48:11827-11844)によって定量化した。簡潔には、ホモジナイズされた試料を、95℃まで10分間加熱し、短時間にボルテックスし、氷上で10分間冷却した。得られた組織溶解物を、20,000×gで20分間4℃で遠心分離した後に収集した。アンチセンス特異的cDNAを、組織溶解物から、ステムループcDNAプライマーを使用して生成した:5’-GTCGTATCCAGTGCAGGGTCCGAGGTATTCGCACTGGATACGACAACTGTCA-3’(配列番号65)。
【0143】
qPCRを、QuantStudio 6 Flex Real-Time PCR System(Thermo Fisher Scientific)において、Power SYBR Green PCR Master Mix(Thermo Fisher Scientific)を使用して実行した。
【0144】
フォワードプライマー、5’-AAGCGCCTAAATTACCGGGTT-3’(配列番号66)、
リバースプライマー、5’-GTGCAGGGTCCGAGGT-3’(配列番号67)。
アンチセンス鎖レベルを、合成siRNAを同じ濃度の対応するナイーブ組織マトリックス中にスパイクすることによって生成された標準曲線を使用して定量化した。
【0145】
K18-hACE2マウスのsiRNA処置及びウイルス感染:
8~16週齢の雄及び雌K18-hACE2トランスジェニックマウス(McCray,et al.,2007,J Virol 81:813-21)を、The Jackson Laboratoryから購入し、National Taiwan University College of Medicine(Taipei,Taiwan,ROC)のLaboratory Animal Centerにおいて同系交配させた。予防的処置のために、ウイルス感染の前に、マウスを、エアロゾル化siRNAで処置し、その後、3日間毎日のsiRNAの鼻腔内滴下で処置した(D-1~D-3)。最後のsiRNA処置(D0)の24時間後に、マウスを、Zoletil/Dexdomitorで麻酔し、20uLのDMEM中の104プラーク形成単位(pfu)のSARS-CoV-2に鼻腔内感染させ、続いて、Antisedanを投与した。曝露後処置のために、マウスを、エアロゾル化siRNAで、D0及び感染の1日後に処置した。感染の2日後に、感染マウスを屠殺して、肺を収集した。SARS-CoV-2を伴う全ての作業を、National Defense Medical Center(Taiwan,ROC)のInstitute of Preventive Medicineにおけるバイオセイフティレベル(BSL)-3及びBSL-4研究室において実施した。
【0146】
肺内のSARS-CoV-2 RNA及び感染性ウイルスの定量化:
肺を、ビーズを使用してPrecellys組織ホモジナイザー(Bertin Technologies)において更にホモジナイズする前に、1×抗生物質-抗真菌剤(Gibco)が補充された1mLのDMEM中に懸濁した。組織ホモジネートを、12,000×gで5分間4℃で遠心分離することによって清澄化した。上清を、プラークアッセイによる感染性ウイルスの判定及びRT-qPCRによるウイルスRNA力価の判定のために収集した。清澄化された肺ホモジネートを、5倍過剰のTRI reagent(Sigma-Aldrich)と混合した。RNAを、製造業者の説明書(TRI reagent)に従って抽出した。抽出されたRNAを、100uLのヌクレアーゼ不含水中に溶解した。ウイルスRNAを、SensiFAST Probe No-ROX One-Step Kit(カタログ番号BIO-76005、Bioline)を使用して、LightCycler 480(Roche Diagnostics)において定量化した。ウイルスE遺伝子を標的とするプライマー及びプローブを、Integrated DNA Technologiesから購入した(カタログ番号10006888、10006890、10006893)。RT-qPCRを、20uLの全容積での、500ngの全RNA、400nMのそれぞれのフォワードプライマー及びリバースプライマー、並びに200nMのプローブで実行した。サイクリング条件は、以下のとおりであった。10分間55℃、3分間94℃、並びに15秒間94℃及び30秒間58℃の45サイクル。ウイルスRNAの量を、RNA標準から構築された標準曲線を使用して計算した。清澄化された肺ホモジネート中のウイルス力価を、プラークアッセイを使用して定量化した。簡潔には、Vero E6細胞(1.5×105細胞/ウェル)を、10%ウシ胎仔血清(FBS)及び抗生物質が補充されたDMEM中の24ウェル組織培養プレート内に播種した。10倍段階希釈されたホモジネートが、Vero E6細胞に、37℃で1時間、時折振盪しながら接種された。上清を除去した後に、細胞を、PBSで1回洗浄し、2%FBSを有するDMEM中の1.55%メチルセルロースでオーバーレイし、次いで、更に5日間インキュベートした。メチルセルロースオーバーレイを、5日間のインキュベーション後に除去した。細胞を、10%ホルムアルデヒドで1時間固定し、0.5%クリスタルバイオレットで染色した。プラークを計数して、肺重量に従ってPFU/gを計算した。
【0147】
インサイツハイブリダイゼーション:
肺及び鼻腔を、ホルマリン中で固定し、パラフィン中に包埋し、4umの厚さで切断した。C6 siRNAの局在化を、miRNAscope Intro Pack HD Reagent Kit RED-Mmu(Advanced Cell Diagnostics[ACD])を使用して、ACDのホルマリン固定パラフィン包埋組織プロトコルに従って、組織切片中で調査した。C6 siRNAの検出のためのプローブを、ACDによるカスタム合成した。C6 siRNAのハイブリダイゼーションシグナルを、Fast Redによって可視化し、続いて、ヘマトキシリンで対比染色した。SARS-CoV-2 RNAを、RNAscope 2.5 HD Reagent Kit-Brown(ACD)及びRNAscope Probe-V-nCoV-2019-S(ACD)を使用して検出した。SARS-CoV-2 RNAのハイブリダイゼーションシグナルを、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)試薬を使用して可視化した。組織切片中のRNAの質を、U6 snRNAを標的とするプローブを陽性対照として使用し、スクランブルされたプローブを陰性対照として使用して検証した。全スライド画像を、Ventana DP200スライドスキャナ(Roche Diagnostics)を使用して取得し、HALOソフトウェア(Indica Labs)を使用して処理した。ISHシグナルの定量的比較を、HALOソフトウェアを使用して、RNAscopeモジュールで分析した。
【0148】
免疫組織化学分析:
ホルマリン固定パラフィン包埋された肺切片を、脱脂及び再水和し、抗原回収を、トリスEDTA緩衝液(pH9.0)で実行した。切片中の内在性ペルオキシダーゼを、3%過酸化水素でクエンチし、組織を、Histofine Mousestain Kit(Nichirei Biosciences)を使用して、製造業者のプロトコルに従って免疫染色した。SARS-CoV-2スパイクタンパク質、好中球、マクロファージ、及びCD8+ T細胞を、一次抗体希釈剤(ScyTek)中の抗SARS-CoV/SARS-CoV-2(COVID-19)spike抗体(クローン1A9、Genetex)、抗LY-6G(クローン1A8、BD)、抗F4/80(クローンRb167B3、Synaptic Systems)、及び抗CD8(クローン、Synaptic Systems)で、4℃で一晩インキュベートすることによって検出した。切片を、DAB試薬を使用して染色し、ヘマトキシリンで対比染色し、次いで、脱水し、カバースリップの下に載せた。全スライドを、Ventana DP200スライドスキャナ(Roche Diagnostics)においてスキャンし、HALOソフトウェア(Indica Labs)を使用して分析した。肺傷害の重症度を、肺胞腔内の好中球の存在、間質腔内の好中球、硝子膜、タンパク質性細片が気腔を満たしていること、及び肺胞中隔肥厚に基づいて、記載される方法(Matute-Bello et al.,2011,Am J Respir Cell Mol Biol 44:725-38)に従って評価した。
【0149】
ヒトPBMCによるサイトカイン放出のインビトロ評価:
健常なドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)を、StemExpressから、Institutional Review Board(IRB)の承認(IRB No.20152869)で得た。PBMCを、10%FBSが補充されたRPMI 1640培地中で再懸濁した。合計1×105個の生存PBMCを、96ウェル培養プレートのそれぞれのウェルに添加した。4時間後に、細胞を、異なる濃度(40、20、10、及び5uM)のsiRNA、800ug/mLのCpG、及び100ug/mLのポリ(I:C)で、40時間処置した。上清中のサイトカインIL-1アルファ、IL-1ベータ、IL-6、IL-10、TNF-アルファ、及びIFN-ガンマの濃度を、Cytometric Bead Assay(CBA)Flex Set(BD Biosciences)を使用して、製造業者の説明書に従って定量化した。データを、FACS LSRFortessaフローサイトメーター(BD Biosciences)において収集し、FCAP Array Software(バージョン3.0、BD Biosciences)を使用して分析した。
【0150】
RNA-seqを使用するゲノムワイドオフターゲット分析:
Beas-2B細胞を、5×105細胞/ウェルで、6ウェル培養プレート内に播種し、18時間インキュベートした。次いで、siRNA(10nM)を、Lipofectamine RNAiMAX(9ul/ウェル、Thermo Fisher Scientific)を使用して、製造業者のプロトコルに従って、Beas-2B細胞にトランスフェクトした。24時間のトランスフェクション後に、細胞を、1×ダルベッコPBSで2回洗浄し、TRIzol試薬(Thermo Fisher Scientific)中で可溶化した。全RNAを、製造業者の説明書に従って抽出し、ゲノムDNA混入を回避するためにデオキシリボヌクレアーゼで処理した。抽出されたRNAの純度(A260/A280とA260/A230との比)及び質(RIN≧8.0)を、NanoDrop 2000分光光度計(Thermo Scientific)及びAgilent 2100バイオアナライザ(Agilent Technologies、Santa Clara,CA)を使用して判定した。全ての抽出されたRNA試料の質は、A260/A280≧1.9、A260/A230≧2、及びRIN=10.0であった。RNA-seqライブラリーを、TruSeq Stranded Total RNA Library Prep Gold(Illumina)を使用して調製し、NovaSeq6000シーケンサー(Illumina)において、製造業者の説明書に従って配列決定した。1試料当たり平均8670万リードを、2×150bpのペアエンド配列決定から得た。生RNAリードを、SeqPrep及びSickleを使用して、20の最小平均質スコアで選別した。選別されたリードを、HISAT2を使用して、ヒトゲノム(GRCh.38.p13)にアライメントし、次いで、StringTieを使用してアセンブルした。遺伝子発現レベルを、RSEMによって認定し、TPM(100万当たりの転写物)によって正規化した。差次的に発現された遺伝子を、P≦0.001について調節されたベンジャミニ-ホッホベルグ偽発見率で、siRNA処置群とsiRNA未処置群との間の差異が少なくとも3倍である遺伝子として同定した。オフターゲット遺伝子プロファイルを、下方制御された遺伝子の数及び細胞影響の可能性から評価した。下方制御された遺伝子の発現レベルを、RT-qPCRによって更に確認した。第一鎖cDNAを、Maxima First-Strand cDNA Synthesis kit(Thermo Fisher Scientific)及び2ugの全細胞RNAで合成した。qPCRを、LightCycler 480(Roche Diagnostics)において、SYBR Green I Master(Roche Diagnostics)を使用して実施した。それぞれの試料を、3回アッセイして、平均閾値サイクル(Ct)値を判定した。遺伝子発現倍率変化を、ΔΔCt法を使用して計算した。それぞれの遺伝子のmRNAレベルを、恒常的に発現されたGAPDH mRNAに正規化した。
【0151】
急性及び反復投与毒性研究:
C6G25Sの急性毒性を評価するために、雄Sprague Dawleyラットを、BioLASCO(Taipei,Taiwan,ROC)から得た。D5W中のC6G25Sを、7週齢のラット(1群当たり3匹)に、鼻腔内滴下を介して、20、40、又は75mg/kgで0.42ml/kgの投与量で投与した。次いで、ラットを、7日間観察した。反復投与毒性を、BioLASCOから得られた雄Bltw:CD1(ICR)マウスにおいて実施した。C6G25S(2、10、又は50mg/kg)を、8週齢のマウス(1群当たり3匹)に、14日間毎日鼻腔内滴下した(1.67mL/kg)。研究中に、動物の体重、摂食量、及び全身状態を監視した。それぞれの研究の終了に、臓器及び末梢血を収集した。ラットにおける急性毒性を、臨床徴候、体重及び摂食量、血液学、血液生化学、並びに鼻腔及び肺の顕微鏡的病理学に基づいて評価した。反復投与毒性の評価はまた、心臓、肝臓、脾臓、及び腎臓の顕微鏡的病理学を含んだ。
【0152】
CCK-8細胞毒性アッセイ:
Beas-2B細胞を、1.77×104細胞/ウェルで、96ウェル培養プレート内に播種し、18時間インキュベートした。次いで、細胞を、様々な濃度のC6G25S(40、20、10、5、及び0uM)で、3回24時間処置した。CCK-8溶液(10uL)を、それぞれのウェルに添加し、細胞を、更に3時間インキュベートした。CCK-8溶液のみを有する培地及びC6G25Sを有さない培地は、それぞれ、ブランク及び正常対照として機能した。450nmでの吸光度を、Multiskan Sky Microplate Spectrophotometer(Thermo Fisher Scientific)で測定した。相対細胞生存率/細胞毒性を、製造業者の説明書に従って計算した。
【0153】
結果
I.SARS-CoV-2に対して高度に特異的かつ強力なsiRNAの選択及びスクリーニング
コロナウイルスは、全ての既知のRNAウイルスのうちで最も大きいゲノムを有し、26~32kbの範囲のゲノムを有する(Woo,et al.,2010,Viruses 2:1804-20)。SARS-CoV-2変異体に対して高度に強力かつ特異的なsiRNA配列を同定するために、系統的及び包括的選択戦略を適用した。
図3Aに示されるように、選別プロセスは、19ヌクレオチド伸長の29,771個のヒット配列へのウイルスゲノムのセグメント化から始まった。次に、29,871個のSARS-CoV-2ゲノムのうち99.8%超のカバレッジレートを有し、これらの対応する標的領域が二次構造への低い傾向を有する、674個のsiRNA候補を選択した(Lan,et al.,bioRxiv,2020,doi:2020.06.29.178343、Rangan,et al.,2020,RNA 26:937-959)。ウイルス複製及び感染に関与する重要な遺伝子上のsiRNA結合部位の位置を更に評価して、ウイルスリーダー、パパイン様プロテアーゼ、3C様プロテアーゼ、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)、ヘリカーゼ、スパイクタンパク質、及びエンベロープタンパク質をコードする領域内に位置する374個を単離した。ヒトトトランスクリプトームへのオフターゲット効果の高い可能性を有するものを除去し、細胞生存率に必須な遺伝子を標的とした後に、最も低い予測されるオフターゲット効果及び高い予測される効力を有する最上位11個のsiRNAを選択し、重要な比較情報を有する詳細配列を、以下の表3に示した。Vero E6細胞をSARS-CoV-2感染から保護するための選択されたsiRNAの有効性を検証した。Vero E6細胞におけるインビトロスクリーニングは、C6、C7、C8、及びC10が、10nMの濃度で、ウイルスエンベロープ遺伝子発現及びプラーク形成ビリオン産生の両方の最大99.9%まで阻害することが可能であることを示した(
図3B~3C及び表3)。
【表3】
【0154】
表3に列挙される11個のsiRNA候補の開始部位及び末端部位、並びにsiRNA候補によって直接標的とされる位置する遺伝子は、SARS-CoV-2の参照ゲノムNC_045512.2に基づく。カバレッジレートを、Global Initiative on Sharing All Influenza Data(GISAID)ウェブサイトからの29,871個の全ゲノムSARS-CoV-2配列を使用することによって計算した。二次構造予測のために、非構造化領域として確認された標的部位を、なしと標識した(Lan,et al.,bioRxiv,2020,doi:2020.06.29.178343、Rangan,et al.,2020,RNA 26:937-959)。RNAz P<0.9を有する部位を、二次構造を形成する傾向を有すると予測し、弱いと標識した。高い抗SARS-CoV2効力について選択された候補を、太字で標識した。
【0155】
ウイルスゲノム上のC6、C7、C8、及びC10の標的部位を、上記の表3に列挙した。次いで、C6、C8、及びC10を、以下の表4に示されるように、ヌクレアーゼ保護のための2’-O-メチル、2’-フルオロ、及びホスホロチオエート(PS)置換によって、C6G25S、C8G25S、及びC10G31Aに完全に修飾した(Hu,et al.,2020,Signal Transduct Target Ther 5:101)。
【表4】
【0156】
C6G25S、C8G25S、及びC10G31についての最大半減阻害濃度(IC50)を、それぞれ、0.17、1.25、及び0.94nMとして判定した。C6G25Sを、後続のインビトロ及びインビボ実験のために、C6G25Sの最も低いIC50値及びインシリコで予測されるオフターゲット遺伝子の数について選択した。
【0157】
次世代シーケンシング(NGS)を使用する全トランスクリプトーム分析は、C6の修飾が、BEAS-2B細胞におけるオフターゲット遺伝子の合計数を21から15に低減したことを示した。15個のオフターゲット遺伝子を、RT-qPCRによって更に検証し、CXCL5、REEP3、SGPP1、及びARTNを含む4つの遺伝子のみが、真のオフターゲット遺伝子であることを確認した(表4)。いずれも、細胞の生存に必須であると既知ではなく、これは、C6G25Sが、安全かつ高度に特異的なsiRNA候補であることを実証する。更に、C6G25Sの主要なオフターゲット遺伝子であるCXCL5は、肺上皮細胞によって分泌される走化性因子であり、好中球浸潤及び急性肺傷害の誘導によるCOVID-19関連病因において参加的役割を有し(Nouailles,et al.,2014,J Clin Invest 124:1268-82)、COVID-19関連病因において参加的役割を有する(Tomar,et al.,2020,Cells 9)。このデータは、C6G25Sが、同時にSARS-CoV-2感染を阻害することができかつ重症疾病のリスクを低減することができる固有の二重効果を有し得ることを示唆する。
【0158】
また、C6G25S及び非修飾C6は、ウイルスエンベロープ遺伝子の阻害について同様のIC
50(それぞれ、0.17及び0.18nM)を有することが見出された(
図3D)。また、C6G25Sについての直接標的であるRdRpの発現を分析し、0.13nMのIC50と判明した(
図3E)。これらのデータは、C6G25Sが、SARS-CoV-2の阻害においてピコモル範囲のIC
50を有する高度に強力なsiRNAであったことを示唆し、低いオフターゲット特性は、C6G25Sが、治療的使用に有益であるより良好な安全性プロファイルを有し得ることを意味する。
【表5】
【0159】
表5は、C6G25S処置Beas-2B細胞(10nMのC6G25S)において、下方制御された遺伝子が、siRNAを有さない対照と比較して、RNA-seqの発現レベルである100万当たりの転写物(TPM)に基づく阻害%で提示して、3以上の倍率変化を有することを示す。mRNAレベルを、RT-qPCRによって確認し、GAPDH参照遺伝子に正規化した。
【0160】
II.C6G25SによるインビトロでのSARS-CoV-2の複数の株の阻害
World Health Organizationのウェブサイトによれば、2021年8月17日現在、アルファ(B.1.1.7)、ベータ(B.1.351)、ガンマ(P.1)、及びデルタ(B.1.617.2)は、SARS-CoV-2の懸念される変異体(VOC)として認識されており、エータ(B.1.525)、イオタ(B.1.526)、カッパ(B.1.617.1)、及びラムダ(C.37)は、SARS-CoV-2の注目すべき変異体(VOI)として認識されている。
【0161】
図4A~4Bに提示されるデータは、C6G25Sが、アルファ、ガンマ、デルタ、及びイプシロンを含む複数の変異体に、ピコモル範囲のIC
50で取り組むことができることを示す。また、C6G25S標的部位における9番目のヌクレオチドに位置するいくつかのアルファ変異体のCからUへのトランスバージョンは、siRNA認識によって許容され(Huang,et al.,2009,Nucleic Acids Res 37:7560-9)、依然として、C6G25Sによって、0.46nMのIC
50で阻害され得る(
図4B、左上)。
【0162】
C6候補を、SARS-CoV-1からSARS-CoV-2への変異を有さない高度保存領域を標的とするように設計した。
図5Aの上部は、C6の位置、並びにVOC、VOI、及び上記で列挙される他の株の遺伝子マップを提示する。
図4Aの下部は、ORF1bの前セクションに位置する、C6とRdRpとの配列アライメントを示す。
図4Bで観察されるように、C6G25Sは、様々なSARS-CoV-2変異体を有意に阻害することが可能であり、アルファ変異体について0.46nMのIC
50、ガンマについて0.5nMのIC
50、デルタについて0.09nMのIC
50、及びイプシロン変異体について0.73nMのIC
50で阻害することが可能である。これらのデータは、C6G25Sが、ウイルスRdRp遺伝子の高度保存領域を標的とすることができ、SARS-CoV-2の複数の株を抑制するのに高度に有効な治療剤であることを実証する。
【0163】
III.C6G25Sの肺投与経路のインビボ評価。
次に、siRNA担体、例えば、ウイルス様粒子、脂質ナノ粒子、及び細胞透過性ペプチドが有害な免疫刺激又は細胞毒性を引き起こし得る(Farkhani,et al.,Nanobiotechnol 10:87-95、Slutter,et al.,2011,J Control Release 154:123-30、Vangasseri,et al.,2006,Mol Membr Biol 23:385-95、Wilson,et al.,2009,Mol Genet Metab 96:151-7)ことを考慮して、鼻腔内滴下(IN)又はエアロゾル吸入(AI)を介するC6G25Sの直接送達を実施した。更に、IN又はAIを介するネイキッドsiRNA送達は、非ヒト霊長類(Li,et al.,2005,Nat Med 11:944-51)及びヒト(DeVincenzo,et al.,2010,Proc Natl Acad Sci USA 107:8800-5、Gottlieb,et al.,2016,J Heart Lung Transplant 35:213-21)を含む異なる動物種(Bitzo,et al.,2005,Nat Med 11:50-5、Kandil,et al.,2019,Ther Deliv 10:203-206、Zafra,et al.,2014,PLoS One 9:e91996)の肺において特異的遺伝子をノックダウンする又はウイルス感染を阻害するために広く適用されている。
【0164】
IN又はAIが肺へのC6G25Sの均等な分布を提供することができるかを評価するために、IN又はAIのいずれかによってC6G25Sに曝露されたマウスを、人道的に屠殺し、マウスの肺を、C6G25S特異的プローブでのインサイツハイブリダイゼーション(ISH)のために収集した。ハイブリダイゼーションシグナルは、C6G25Sが、AI群のマウスの気管支、細気管支、及び肺胞全体にわたって均等に分布している(
図5A)ことを示したが、不均等な分布が、IN群のマウスの肺内で観察された(
図5B)。C6G25S未処置マウスからの肺は、陰性対照として機能した(
図5C)。また、AI群のC6G25Sプローブ染色陽性細胞は、IN群のC6G25Sプローブ染色陽性細胞と比較して、2倍多かった(
図5D)。これらのデータは、エアロゾル吸入によって、C6G25Sが、鼻腔内滴下よりも、全肺全体にわたって均等にかつ効率的に分布することができることを示した。
【0165】
空気試料を、吸入チェンバから、エアロゾル生成中に様々な時点で収集して、AIによって沈着したC6G25Sの用量、及びC6G25S濃度を計算した。チェンバ内のC6G25S濃度は、2分以内に最大に達し、1.48mg/Lに維持された(
図6A)。IN及びAIによって送達されたC6G25Sの沈着を判定するために、C6G25S処置マウスからの鼻腔及び全肺を収集して、C6G25Sの分布を、ステムループ逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって定量化した。C6G25SがAIによって送達されたときに、肺内のC6G25S濃度は、鼻腔内のC6G25S濃度よりも5.8倍高かった(
図5E)。対照的に、C6G25SがINによって送達されたときに、同様の濃度が、鼻腔及び肺内で検出されたが、肺内のsiRNAレベルの有意な変動が観察された(
図5F)。肺及び鼻腔内のC6G25Sの排出速度を、AI及びIN処置後のマウスについて、異なる時点で定量化し、鼻腔及び肺組織の両方内のC6G25Sの急速な減少が、24時間以内に観察された(
図6B及び
図6C)。これらの知見は、INとAIとの組み合わせが、完全なかつ安定した予防的保護を達成する利点を有し得ることを示唆する。
【0166】
IV.C6G25Sの予防的及び曝露後処置。
C6G25Sがインビボで保護的であるかを判定するために、C6G25Sの予防的又は曝露後投与を受け取ったK18-hACE2トランスジェニックマウスを、動物モデルとして使用した。以前の研究(Winkler,et al.,2020,Nat Immunol 21:1327-1335)基づく感染後2日目(dpi)のウイルス定量化を、最初に評価した。ウイルスRNAコピーは、予防群において99.95%低減され(
図7A、左パネル)、曝露後群において96.2%低減された(
図7B、左パネル)。プラーク形成ビリオンは、予防群において検出されず(
図7A、右パネル)、感染性ビリオンの有意な96%減少が、曝露後群において観察された(
図7B、右パネル)。SARS-CoV-2デルタ変異体が、世界的に普及しており、ワクチンブレイクスルー症例の原因となっていることを考慮して、K18-hACE2トランスジェニックマウスにおけるこの特定の変異体へのC6G25Sの治療効果を、この実施例で探求した。C6G25Sでの感染マウスの予防的処置は、対照群のものと比較して、肺内で、ウイルスRNAの98.3%低減をもたらし(
図7C、左パネル)、検出可能な感染性ビリオンはなかった(
図7C、右パネル)。デルタ変異体感染後の2回投与及び3回投与のC6G25S処置を含む2つの曝露後群を試験した。ウイルスRNAの有意な72%及び88%阻害が、それぞれ、2回投与群及び3回投与群について観察された(
図7D、左パネル)。また、感染性ビリオンの同様の低減が示され、2回投与について90.5%低減、3回投与群について92.7%低減が示された(
図7D、右パネル)。このデータは、C6G25Sの肺送達が、予防的及び曝露後処置の両方において、SARS-CoV-2及びSARS-CoV-2のデルタ変異体に対して強い抗ウイルス活性をインビボで有することを実証する。
【0167】
V.C6G25Sによるスパイクタンパク質発現の阻害。
C6G25S未処置の感染したK18-hACE2トランスジェニックマウスからの肺を、収集し、ミクロトーム上で切片化した。免疫組織化学は、気管支、細気管支、及び肺胞全体にわたるスパイクタンパク質の過剰発現を実証した。また、肺細胞増殖、肺胞内の空腔の喪失(Wang,et al.,2020a,EBioMedicine 57:102833)、合胞体多核細胞の形成(Bussani,et al.,2020,EBioMedicine 61:103104)、及び血栓症(Bussani,etal.,2020,EBioMedicine 61:103104)を含む、COVID-19の病理学的特徴が観察された。対照的に、予防的C6G25S処置マウスからの肺組織は、スパイクタンパク質発現及びCOVID-19関連病理学的特徴の有意な低減を示した。
【0168】
更に、ISHによるウイルスRNAの有意な減少もまた、C6G25S予防的処置後に観察され、それぞれのウイルスRNAシグナルを、定量化し、
図8Aに示した。SARS-CoV-2が、好中球(Wang,et al.,2020b,Front Immunol 11:2063)、リンパ球(Puzyrenko,et al.,2021,Pathol Res Pract 220:153380)、及びマクロファージ(Wang,et al.,2020a,EBioMedicine 57:102833)の浸潤を誘導し、急性肺炎症が、C6G25S処置によって緩和され得るかを判定するために、未処置及び処置マウスからの肺組織を、抗Ly6G(好中球)、抗F4/80(マクロファージ)、及び抗CD3(リンパ球)を使用して更に染色した。好中球、マクロファージ、及びリンパ球の浸潤が、感染マウスの肺内で観察されたが、C6G25Sで処置すると、免疫細胞浸潤の有意な減少が観察された。浸潤した免疫細胞面積対全切片面積の比を、判定し、対照群に正規化した。好中球、マクロファージ、及びCD3
+リンパ球面積の陽染性面積は、それぞれ、C6G25S処置によって、78.2%、46.9%、及び62.4%低減した(
図8B)。肺傷害を、2011年にAmerican Thoracic Societyによって発表されたスコアリングシステム(
Matute-Bello,et al.,2011,Am J Respir Cell Mol Biol 44:725-38)を使用して評価した。C6G25S処置は、K18-hACE2トランスジェニックマウスにおいて、SARS-CoV-2関連肺傷害を有意に低減した(
図8C)。
【0169】
VI.C6G25Sの非免疫原性。
C6G25Sの臨床的有用性を判定するために、ヒト末梢血単核細胞を、10uMのC6G25Sと共培養し、インターロイキン(IL)-1アルファ、IL-1ベータ、IL-6、IL-10、腫瘍壊死因子-アルファ、及びインターフェロン-ガンマなどのサイトカインは、有意に誘導されなかった(
図9)。加えて、正常な気管支上皮からのヒト細胞株であるBEAS-2Bを、細胞毒性アッセイにおいて、より高い濃度のC6G25Sに曝露し、サイトカイン誘導は観察されなかった(
図10)。結果は、C6G25Sが、ヒト免疫細胞に対して免疫原性でないことを示す。
【0170】
VII.単回投与及び複数回投与毒性研究
インビボでのC6G25Sの有害作用の可能性を判定するために、単回投与毒性研究を、Sprague Dawleyラットにおいて、最大75mg/kgまでの単一用量で実施し、14日間の反復投与研究を、マウスにおいて、最大50mg/kgまでの1日用量で実施した。
【0171】
両方の研究において、動物の死亡、体重変化、又は薬物関連有害作用は、監視期間中に観察されなかった。単回投与毒性研究について
図11A、反復投与毒性研究について
図11Bを参照されたい。
【0172】
組織病理学、血液学、及び血液生化学的分析により、単回投与毒性研究において異常がないことが判明された。結果を、以下の表6~8で提供する。また、
図11Aを参照されたい。
【表6】
【表7】
【表8】
【0173】
表6は、単一用量のC6G25Sで鼻腔内滴下によって処置され、血液細胞が処置後7日目に収集されたラット(n=3)における組織病理学研究を示す。鼻及び肺内の病理学的変化を評価した。重症度類別スキーム:1=最小(<10%)2=軽度(10~39%)3=中等度(40~79%)4=著明(80~100%)。異常が見出されない場合を、「-」と標識する。
【0174】
表7は、単一用量のC6G25Sで鼻腔内滴下によって処置され、血液細胞が処置後7日目に収集されたラット(n=3)における血液学研究を示す。対照群(緩衝液単独)を1~3と標識し、20mg/kg処置群を4~6と標識し、40mg/kg処置群を7~9と標識し、75mg/kg処置群を10~12と標識した。RBC、1マイクロリットル当たり100万個でのRBC数;HGB、ヘモグロビン;HCT、ヘマトクリット;MCV、平均赤血球容積;MCHC、平均赤血球ヘモグロビン濃度;RDW-SD、RBC分布幅標準偏差;RDW-CV、変動係数でのRBC分布幅;RET、網赤血球当量;PLT、血小板数;PDW、血小板分布幅;WBC、白血球;NEUT、好中球;LYMPH、リンパ球;MONO、単球;EO、好酸球;BASO、好塩基球。
【0175】
表8は、単一用量のC6G25Sで鼻腔内滴下によって処置され、血清が処置後7日目に収集されたラット(n=3)における血清の分析を示す。対照群(緩衝液単独)を1~3と標識し、20mg/kg処置群を4~6と標識し、40mg/kg処置群を7~9と標識し、75mg/kg処置群を10~12と標識した。AST、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ;ALT、アラニンアミノトランスフェラーゼ;BUN、血中尿素窒素;CREA、クレアチニン。
【0176】
組織病理学、血液学、及び血液生化学的分析により、14日間の反復投与毒性研究において異常がないことが判明された。結果を、以下の表9~11で提供する。また、
図11Bを参照されたい。
【表9】
【表10】
【表11】
【0177】
表9は、2、10、又は50mg/kgのC6G25Sが1日1回14日間鼻腔内投与され、組織病理学研究のために乱切されたマウス(n=3)における組織病理学研究を示す。対照群をA2、A3、A11と標識し、2mg/kg処置群をB1、B9、B12と標識し、10mg/kg処置群をC4、C8、C14と標識し、50mg/kg処置群をD16、D21、D25と標識した。重症度類別スキーム:1=最小(<10%)、2=軽度(10~39%)、3=中等度(40~79%)、4=著明(80~100%)。異常が見出されない場合を、「-」と標識する。
【0178】
表10は、2、10、又は50mg/kgのC6G25Sが1日1回14日間鼻腔内投与され、血液が血液細胞分析のために収集されたマウス(n=3)における血液細胞分析研究を示す。対照群をA2、A3、A11と標識し、2mg/kg処置群をB1、B9、B12と標識し、10mg/kg処置群をC4、C8、C14と標識し、50mg/kg処置群をD16、D21、D25と標識した。RBC、1マイクロリットル当たり100万個でのRBC数;HGB、ヘモグロビン;HCT、ヘマトクリット;MCV、平均赤血球容積;MCHC、平均赤血球ヘモグロビン濃度;RDW-SD、RBC分布幅標準偏差;RDW-CV、変動係数でのRBC分布幅;RET、網赤血球当量;PLT、血小板数;PDW、血小板分布幅;WBC、白血球;NEUT、好中球;LYMPH、リンパ球;MONO、単球;EO、好酸球;BASO、好塩基球。
【0179】
表11は、2、10、又は50mg/kgのC6G25Sが1日1回14日間鼻腔内投与され、血清が分析のために収集されたマウス(n=3)の血清分析を示す。対照群をA2、A3、A11と標識し、2mg/kg処置群をB1、B9、B12と標識し、10mg/kg処置群をC4、C8、C14と標識し、50mg/kg処置群をD16、D21、D25と標識した。AST、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ;ALT、アラニンアミノトランスフェラーゼ;BUN、血中尿素窒素;CREA、クレアチニン。インデックス:H=溶血、L=脂肪血症、F=フィブリン、N/A=異常は観察されない。CREA:線形範囲は、0.2~25mg/dLであり、線形範囲未満を、<0.20mg/dLとして提示する。
【0180】
VIII.C6G25Sの治療効果。
図4Aに示されるように、C6G25Sは、SARS-CoV-1/2の高度保存RdRp領域を標的とする。SARS-CoV-1/2感染の阻害におけるC6G25Sの潜在的な作用機序を、
図12に示す。SARS-CoV-2は、宿主細胞上のACE2受容体に結合し、エンドサイトーシスを誘導する。TMPRSS2によるウイルススパイクタンパク質の切断は、膜融合を誘発し、ウイルスセンス(+)RNAゲノムが放出されて、宿主のリボソームをハイジャックして、RNA依存性RNAポリメラーゼを産生し複製する。一方、サブゲノム転写及び翻訳は、大量のウイルス構造タンパク質、例えば、ヌクレオカプシド、スパイク、膜、及びエンベロープを産生する。子孫ウイルスが集合し、成熟ビリオンが、エキソサイトーシスによって放出される。C6G25Sは、RNA誘導サイレンシング複合体と相互作用して、ウイルスゲノムのRNA及びポリメラーゼmRNAを、RNAi効果を介して消化することができる。ウイルスゲノム及びポリメラーゼmRNAのコピー数を低減することによって、ウイルスの複製サイクルに関与する後続のステップが、間接的に阻害され、それによって、SARS-CoV-2感染を停止する。
【0181】
興味深いことに、SARS-CoV-2を阻害することが報告されている(Zhou,et al.,2020,Cell Discov 6:54)天然マイクロRNAであるmiR-2911は、C6と重複する予測される標的部位を有する(
図13A)が、miR-2911は、本来のウイルスの72%のみを低減することが示され、インビトロアッセイにおいて、アルファ変異体を阻害することができない(
図13B)ことも見出された。この知見は、C6G25Sが、miR-2911と比較して、はるかに有望な治療薬であることを示唆する。
【0182】
National Center for Biotechnology Informationから2021年8月22日にダウンロードされた200,000個超のSARS-CoV-2ゲノム配列を使用したときに、SAR-CoV-2変異体に対するC6G25Sのカバレッジレートは、99.8%であることが見出された。200,000個のSARS-CoV2ゲノム配列を、NCBI virus SARS-CoV-2 Data Hubから2021年8月22日にダウンロードした。結果を、以下の表12で提供する。
【表12】
【0183】
要約すると、この実施例において提供される結果は、SARS-CoV-2を標的とする(例えば、ウイルスの高度保存RdRp領域を標的とする)例示的なsiRNAとしてのC6G25Sが、様々なSARS-CoV-2株の感染を、RNA干渉を介して有効に阻害して、認識部位における相補的ウイルスRNAを切断することができたことを実証する。結果は、C6G25Sが、複数のSARS-CoV-2変異体(上記の表12を参照されたい)に、ピコモル範囲のIC50で取り組むことができることを示す。C6G25Sの阻害活性は、C6G25Sの標的部位と重複する予測される標的部位を有する、自然発生のmiRNAであるmiR-2911よりも強力である。
【0184】
例えば、エアロゾル吸入(AI)を介するsiRNAの送達は、肺全体にわたるsiRNAの均一な分布を示し、鼻腔内滴下(IN)は、鼻腔内の高い投与効率を示したが、これは、組み合わされた送達経路が、SARS-CoV-2感染の予防的及び/又は実際の治療についてより有効であることが期待されることを示唆する。予防的処置後に、ウイルスRNAの平均99.9%低減が検出され、測定可能なプラーク形成ビリオンは検出されなかった。曝露後処置において、吸入を介して、ウイルスRNAは、96.2%低減され、感染性ビリオンは、96.1%低減された。また、C6G25S処置を受け取った感染マウスの肺内のスパイクタンパク質発現及び免疫細胞浸潤は両方、疾患関連病理学的特徴の低減とともに有意に減少した。これらの結果は全て、C6G25Sを例として含む、本明細書に開示される抗SARS-CoV-2 siRNAが、予防的治療及びウイルスに感染した患者の治療の両方において有効であることを示唆する。
【0185】
他の実施形態
本明細書に開示される特徴の全ては、任意の組み合わせで組み合わされてもよい。本明細書に開示されるそれぞれの特徴は、同じ、均等な、又は同様の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられてもよい。したがって、別途明白に記載されない限り、開示されるそれぞれの特徴は、全般的な一連の均等な又は同様の機能の例のみである。
【0186】
上記の説明から、当業者は、本発明の必須の特徴を容易に確認することができ、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更及び修正をなして、本発明を様々な使用及び条件に適合させることができる。したがって、他の実施形態もまた、特許請求の範囲内である。
【0187】
均等物
いくつかの発明実施形態が、本明細書に記載及び例示されているが、本明細書に記載される機能を実行しかつ/又は本明細書に記載される結果及び/若しくは利点のうちの1つ以上を得るための様々な他の手段及び/又は構造が、当業者には容易に想到され、このような変形及び/又は修正のそれぞれは、本明細書に記載される発明実施形態の範囲内であることが意図されている。概して、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成は、例示的であることが意図されていること、並びに実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、発明教示が使用される具体的な用途又は複数の用途に依存することが、当業者には容易に理解されよう。当業者は、通例の実験法のみを使用して、本明細書に記載される具体的な発明実施形態の多くの均等物を認識するか又は確認することができる。したがって、上記の実施形態は、例としてのみ提示されること、並びに添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、発明実施形態は、具体的に記載及び特許請求されるものとは別法で実施されてもよいことが、理解される。本開示の発明実施形態は、本明細書に記載されるそれぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。加えて、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法のいずれの組み合わせも、このような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明範囲内に含まれる。
【0188】
本明細書で定義及び使用される場合、全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書における定義、及び/又は定義される用語の通常の意味よりも優先されると理解されるべきである。
【0189】
本明細書に開示される全ての参照文献、特許、及び特許出願は、これらのそれぞれが引用される主題、いくつかの場合では、これらの文書全体を包含し得る主題に関して、参照により組み込まれる。
【0190】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、不定冠詞「a」及び「an」は、明白に反して示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0191】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「及び/又は」という語句は、このように等位接続された要素の「いずれか又は両方」、すなわち、要素は、いくつかの場合では、接続的に存在し、他の場合には、非接続的に存在することを意味すると理解されるべきである。「及び/又は」で列挙される複数の要素は、同じ様式で、すなわち、要素のうちの「1つ以上」が、このように等位接続されていると解釈されるべきである。「及び/又は」という句によって具体的に同定される要素以外の他の要素が、具体的に同定されるこれらの要素に関連するか又は関連しないかにかかわらず、任意選択で存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む」などの非限定的な言語と合わせて使用されたときに、一実施形態では、(任意選択で、B以外の要素を含む)Aのみ、別の実施形態では、(任意選択で、A以外の要素を含む)Bのみ、更に別の実施形態では、(任意選択で、他の要素を含む)A及びBの両方、などを指すことができる。
【0192】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「又は」は、上記で定義される「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離するときに、「又は」又は「及び/又は」は、包括的である、すなわち、いくつかの要素又は要素のリストのうちの少なくとも1つを含むが、これらのうちの2つ以上も含み、任意選択で、列挙されない追加の項目を含むとして解釈される。明白に反して示される用語のみ、例えば、「のうちの1つのみ」、又は「のうちの正確に1つ」、又は特許請求の範囲で使用されたときに、「からなる」とは、いくつかの要素又は要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。概して、本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、排他性の用語、例えば、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、又は「のうちの正確に1つ」が前にあるときに、排他的な選択肢(すなわち、「一方又は他方であるが、両方ではない」)を示すとしてのみ解釈される。特許請求の範囲内で使用されたときに、「から本質的になる」は、特許法の分野で使用される場合のこの通常の意味を有する。
【0193】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、1つ以上の要素のリストに言及して、「少なくとも1つの」という語句は、要素のリスト内の要素のうちのいずれかの1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも、要素のリスト内に具体的に列挙されるそれぞれ全ての要素のうちの少なくとも1つを含むとは限られず、要素のリスト内の要素のいずれの組み合わせも除外しないと理解されるべきである。この定義はまた、要素のリスト内で具体的に同定され「少なくとも1つ」という語句が指す要素以外の要素が、具体的に同定される要素に関連するか又は関連しないかにかかわらず、任意選択で存在してもよいことを可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は均等に、「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は均等に、「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)とは、一実施形態では、少なくとも1つ、任意選択で、2つ以上のAを含み、Bが存在しない(任意選択で、B以外の要素を含む)こと、別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択で、2つ以上のBを含み、Aが存在しない(任意選択で、A以外の要素を含む)こと、更に別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択で、2つ以上のAを含み、少なくとも1つ、任意選択で、2つ以上のBを含む(任意選択で、他の要素を含む)ことなどを指すことができる。
【0194】
また、明白に反して示されない限り、2つ以上のステップ又は行為を含む、本明細書で特許請求されるいずれの方法においても、方法のステップ又は行為の順序は、必ずしも、方法のステップ又は行為が列挙される順序に限定されるとは限らないことが理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】