(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】自動車用の超音波センサアセンブリ、および自動車
(51)【国際特許分類】
G01S 7/521 20060101AFI20231218BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20231218BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G01S7/521 A
G01S15/931
H04R17/00 330G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534704
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2021083689
(87)【国際公開番号】W WO2022122494
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】102020132623.8
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】シルビオ、サロモン
【テーマコード(参考)】
5D019
5J083
【Fターム(参考)】
5D019AA16
5D019AA21
5D019EE02
5D019FF01
5J083AA02
5J083AB12
5J083AC18
5J083AD04
5J083AF05
5J083BA01
5J083CA01
5J083CA14
5J083CB01
(57)【要約】
自動車(16)用の超音波センサアセンブリ(1)は、ハウジング(4)と前記ハウジング(5)から機械的に分離した超音波膜(5)と前記超音波膜(5)の振動を励起するとともに振動を検出するための音響変換器素子(7)とを有する超音波センサ(2)と、前記超音波膜(5)の前方に配置されたスクリーン部(3)であって、音響メタマテリアルから作製されたスクリーン部(3)と、を備える。前記音響メタマテリアルは、好適には、超音波が角度範囲において非共振的な態様で通過し得る広帯域音響メタマテリアルである。前記スクリーン部(3)は、好適には、前記自動車(16)の成形部品(13)に、例えば、外側皮の車体金属シートまたは内部パネルに形成され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(4)と、前記ハウジング(5)から機械的に分離した超音波膜(5)と、前記超音波膜(5)の振動を励起するとともに振動を検出するための音響変換器素子(7)と、を有する超音波センサ(2)と、
前記超音波膜(5)の前方に配置されたスクリーン部(3)であって、音響メタマテリアルから作製されたスクリーン部(3)と、
を備える、自動車(16)用の超音波センサアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記音響メタマテリアルは、超音波が少なくとも入射角度範囲において非共振的な態様で通過し得る広帯域音響メタマテリアルである、
請求項1に記載の超音波センサアセンブリ。
【請求項3】
前記音響メタマテリアルは、複数の貫通開口(24)からなる格子が形成された音響的に硬質の基材から形成される、
請求項1または2に記載の超音波センサアセンブリ。
【請求項4】
各貫通開口(24)の直径は、前記超音波膜(5)に送信されるとともに受信される前記超音波の波長よりも小さい、
請求項3に記載の超音波センサアセンブリ。
【請求項5】
前記格子の2つの隣接する貫通開口(24)間の距離が、前記貫通開口(24)の前記直径よりも大きく、前記超音波膜(5)に送信されるとともに受信される前記超音波の前記波長よりも小さい、
請求項4に記載の超音波センサアセンブリ。
【請求項6】
前記貫通開口は、前記基材とは異なる充填材で充填される、
ことを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載の超音波センサアセンブリ。
【請求項7】
前記超音波センサアセンブリは、成形部品(13)をさらに備え、
前記成形部品(13)には、前記超音波膜(5)が前記成形部品(13)に対面するように前記超音波センサ(2)が装着され、
前記成形部品(13)は、前記音響メタマテリアルの前記スクリーン部(3)を、前記超音波膜(5)の前方の部位において備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載の超音波センサアセンブリ。
【請求項8】
前記超音波センサ(2)は、前記成形部品(13)に、ブラケット(14)に接続する前記超音波センサ(2)の前記ハウジング(4)の外壁により装着され、前記ブラケット(14)は、前記成形部品(13)に前記スクリーン部(3)の外側の領域において取り付けられ、
前記超音波膜(5)の表面は、前記成形部品(13)の前記スクリーン部(3)の後方において、前記成形部品(13)に対して平行に配置される、
請求項7に記載の超音波センサアセンブリ。
【請求項9】
前記成形部品(13)は、車両本体成形部品(18、19、20)である、
請求項6または8に記載の超音波センサアセンブリ。
【請求項10】
前記成形部品は、車両本体パネル(18、19、20)、フェンダー(17、21)、車両サイドミラー(22)の下方シェル、プライバシースクリーン、または車両内部パネル、からなる、
請求項6~9のいずれか一項に記載の超音波センサアセンブリ。
【請求項11】
前記超音波膜(5)は、前記スクリーン部(3)と接触する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の超音波センサアセンブリ。
【請求項12】
前記超音波膜(5)と前記スクリーン部(3)とは、機械的に分離される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の超音波センサアセンブリ。
【請求項13】
空隙(15)が、前記超音波膜(5)と前記スクリーン部(3)との間に形成される、
請求項12に記載の超音波センサアセンブリ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の超音波センサアセンブリを少なくとも1つ有する自動車(16)。
【請求項15】
前記自動車は、請求項7~13のいずれか一項に記載の超音波センサアセンブリ(1)を少なくとも1つ有し、
前記成形部品(13)は、前記自動車(16)の外皮の一部を形成し、前記成形部品(13)の前記スクリーン部(3)に覆われた前記超音波膜(5)が前記自動車(16)に対して外方に対面するように、前記超音波センサ(2)は、前記成形部品(13)において、前記車両の内部に対面する前記成形部品(13)の側面に装着される、
請求項14に記載の自動車。
【請求項16】
前記自動車は、請求項7~13のいずれか一項に記載の超音波センサアセンブリ(1)を少なくとも1つ有し、
前記成形部品(13)は、前記車両内部に設けられた成形部品(13)であり、前記成形部品(13)の前記スクリーン部(3)に覆われた前記超音波膜(5)が前記車両内部に対面するように、前記超音波センサ(2)は、前記成形部品(13)において、前記自動車(16)に対して外方に対面する前記成形部品(13)の側面に装着される、
請求項14に記載の自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の超音波センサの分野に関し、より具体的には、自動車用の超音波センサアセンブリおよび自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジングと、ハウジングから機械的に分離した超音波膜と、超音波膜の振動を励起するとともに振動を検出するための音響変換器と、を有する超音波センサが知られている。
【0003】
このタイプの超音波センサは、パルスエコー法を用いて、自動車近傍の物体からの、または車両内部の物体からの距離を測定するのに使用され得る。超音波膜は、変換器素子により刺激を受けて、超音波信号の形態にあるエネルギーを放出する。次いで、音響変換器素子は、超音波膜における振動を検出する。この振動は、自動車近傍または内部から戻るエコー信号に由来する。物体からの距離が、信号の飛行時間に基づいて判定される。このような測定は、例えば、自動車の駐車支援システムにより使用される。
【0004】
望まれる特性は、超音波信号の放出後の超音波センサのブラインドタイムが短いこと、背景ノイズが少ないこと、そして信号対ノイズ比が高いことである。換言すれば、測定した戻りエコー信号の振幅が大きく、かつハウジングおよび場合により他の部品の構造振動のレベルが低いことが望まれている。
【0005】
したがって、従来的に、超音波センサは、好適には覆われない状態で、すなわち超音波膜と測定される車両環境または内部との間に追加部品が配置されることなく、配置されている。例えば車両外皮の後方(裏側)のように覆われた状態での設置が望まれる場合、減衰要素をカバー部品に配置する等、カバー部品の構造伝搬音を低減するための対策が取られる。
【0006】
文書DE102010044998A1は、凹部を有するフェンダーを教示している。凹部により、凹部を介した超音波検出が可能とされている。凹部は、センサの検出機能を妨げない可撓性フィルムで覆われている。このフィルムは、超音波センサを車両の外装に連結している。
【0007】
文献DE102012208059A1は、センサユニットをフェンダーに組み込んだセンサアセンブリを教示している。膜が、フェンダー自体により形成されている
【0008】
DE102015113195A1は、超音波センサが、パネル部品の第1領域においてパネル部品の後方に見えないように配置されることを教示している。パネル部品の第1領域と超音波センサの膜とは、反射した超音波信号が膜およびパネル部品を励起して機械的振動を生じるように、機械的に連結されている。第1領域を囲むパネル部品の第2領域において、複数の貫通開口が配置されてパネル部品の振動を減衰させる。
【0009】
DE102017209823A1は、超音波センサであって、その振動膜が、膜の周波数帯域内で共振挙動を示す音響メタマテリアルとして形成される超音波センサを教示している。
【0010】
US2017059697A1は、超音波センサが成形部品の内側の後方で覆われているとともに、成形部品の外側の物体を検出することを目的とする配置を教示している。プレローディング構造体が、超音波センサを成形部品の内側に押し付けている。連結要素が、超音波センサと内面との間に配置されている。連結要素の外側の領域において、減衰材が成形部品の内側に取り付けられている。
【発明の概要】
【0011】
このような背景に対して、本発明の目的は、自動車用の改良された超音波センサアセンブリ、および改良された自動車を提供することである。
【0012】
本願の発明者らは、2020年10月21日にhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3314304/?tool=pmcentrezにおいてアクセスしたG.D.Aguannoらの“Broadband metamaterial for nonresonant matching of acoustic waves”、Sci.Rep.2,340:DOI:10.1038/srep003401(2012)に記載のように、医療診断目的および他のマイクロメカニカルシステムのための非共振インピーダンス整合に広帯域メタマテリアルを使用することが、自動車環境または内部の超音波測定の分野においても利点を提供し得るという考えを発展させ、さらなる考察および実験に基づいて、最終的に以下に記載する解決策に到達した。
【0013】
第1態様によれば、自動車用の超音波センサアセンブリが提案され、これは、ハウジングと前記ハウジングから機械的に分離した超音波膜と前記超音波膜の振動を励起するとともに振動を検出するための音響変換器素子とを有する超音波センサと、前記超音波膜の前方に配置されたスクリーン部であって、音響メタマテリアルから作製されたスクリーン部と、を備える。
【0014】
本発明者らは、超音波膜の前方に配置された音響メタマテリアルが、反射超音波に相当する測定信号の振幅を、覆われていない状態の超音波センサに比べて減少させないどころか、著しく増大させるという驚くべき効果を実験的に確認した。そのため、信号対ノイズ比が顕著に向上し得る。
【0015】
同時に、有利には、スクリーン部は、視覚的および機械的に超音波センサを覆うことができるため、例えば視界から、そして衝撃等の影響から超音波センサを保護することができる。
【0016】
特に、スクリーン部は、超音波膜を覆うように超音波膜の前方に配置される。「覆う」とは、超音波膜から被測定空間領域(自動車環境または自動車内部)に放出された超音波、およびそこから反射して超音波膜に戻った超音波が、各場合においてスクリーン部を通過することを意味すると理解される。「覆われない」とは、超音波が被測定空間領域に妨げられることなく放出され得るとともに、そこから反射して戻り得ること、すなわち、超音波膜と被測定空間領域中の被測定物との間に、空気しか存在しないことを意味すると理解される。
【0017】
超音波膜は、例えばシリコーン等の音響的に軟質の材料から作製された分離リングにより、超音波センサのハウジングから音響的に分離され得る。超音波膜は、ハウジングの開口に挿入され得る。分離リングは、超音波膜と開口のハウジング内縁部との間に配置される。
【0018】
音響変換器素子は、機械的誘導性、機械的容量性、機械的抵抗性、磁歪または電歪原理に基づく音響変換器素子であり得る。音響変換器素子は、例えば圧電素子であってもよい。音響変換器素子は、ハウジング内の超音波膜に、接着剤で接着され得る、これに溶接され得る、または別の態様で超音波膜に接続され得る。音響変換器素子は、緩い分離ワイヤを介して、超音波センサの外部に設けられた電気接点に接続され得る。
【0019】
スクリーン部は、自動車の大型の成形部品の一部位であり得る。この部位は、超音波センサの超音波膜の前方に配置された領域にのみにおいてスクリーン部を形成する。しかしながら、スクリーン部は、超音波膜を覆うという特定の目的のために超音波膜の前方に配置された独立のスクリーン等の実質的に全体的な領域も備え得る。
【0020】
音響メタマテリアルとは、特に、構造化処理により、未処理または非構造化材料が有さない有利な音響特性が付与された材料として理解されたい。
【0021】
音響メタマテリアルは、特に、上で引用したD’Aguannoらによる刊行物に記載され、明示的な言及がなされた原理に従って設計されたメタマテリアルであり得る。
【0022】
一実施形態によれば、前記音響メタマテリアルは、超音波が少なくとも入射角度範囲において非共振的な態様で通過し得る広帯域音響メタマテリアルである。
【0023】
特に、「広帯域」とは、音響メタマテリアルが、特定の共振周波数を持つ超音波だけでなく、例えば40~60kHz、好適には16~100kHzの広い周波数帯域の超音波をも、一様に良好に透過可能であることを意味すると理解すべきである。
【0024】
「非共振的な態様で通過し得る」という表現は、特に、音響メタマテリアルに入射する超音波が、空気等の超音波が到来する媒質において、かつ音響メタマテリアルにおいて、同一の音響インピーダンスを「感じる」ため、超音波の周波数に関係なく、また音響メタマテリアルの厚さに関係なく、入射面でも出射面でも実質的に反射が生じないことを意味する。
【0025】
「非共振的」とは、特に、音響メタマテリアルにおける通過が生じる際に、メタマテリアル内において共振圧力バルジが発生しないことを意味すると理解されたい。このような非共振的な通過能力は、音響メタマテリアルの広帯域特性に対応する。
【0026】
非共振的な通過能力は、好適には、少なくとも音響メタマテリアルのスクリーン部の表面に対する実質的に垂直な方向の入射を含む超音波入射角度範囲において存在する。実際には、表面法線に対して0°と30°~85°との間の角度範囲が達成され得る。
【0027】
換言すれば、音響メタマテリアルで構成されたスクリーン部の一側における音響インピーダンスを、被測定空間領域内の空気の音響インピーダンスに整合させることができる。また、スクリーン部の他側における音響インピーダンスを、空気の音響インピーダンスに、または他側に配置された超音波センサの超音波膜の音響インピーダンスに整合させることも可能である。
【0028】
さらなる実施形態によれば、前記音響メタマテリアルは、複数の貫通開口からなる格子が形成された音響的に硬質の基材から形成される。
【0029】
特に、「音響的に硬質」とは、未処理の状態で高い音響抵抗を有する基材であって、未処理の状態で音波が入射すると反射が生じる基材を意味すると理解される。音響的に硬質の基材の例は、例えば、車両の外側シェルの一部となり得る金属シート、車両の内部パネルの一部となり得るプラスチックプレート等である。
【0030】
複数の貫通開口は、特に、スクリーン部の一側からスクリーン部の反対側に延びる円形断面を有する開口であり得る。
【0031】
音響メタマテリアルの他の可能な実施形態と比較して、複数の円形貫通開口からなる格子を有する構成は、特に良好な透過特性により有利に特徴付けられる。
【0032】
さらなる実施形態によれば、各貫通開口の直径は、前記超音波膜に送信されるとともに受信される前記超音波の波長よりも小さい。
【0033】
送受信される超音波の周波数、すなわち超音波膜の固有振動数は、例えば16~100kHz、好適には40~60kHz、特に好適には50kHzの値である。したがって、20℃の温度では、超音波膜に送信されるとともに受信される超音波の結果として生じる波長は、21~3mm、好適には9~6mm、特に好適には7mmの値である。他の温度では、異なる波長が生じる。それぞれの開口の直径は、特に好適には、20℃における対応する予想波長の2倍以上、好適には整数倍以上よりも小さい値を有するように選択され、例えば1mmである。
【0034】
さらなる実施形態によれば、前記格子の2つの隣接する貫通開口間の距離が、前記貫通開口の前記直径よりも大きく、前記超音波膜に送信されるとともに受信される前記超音波の前記波長よりも小さい。
【0035】
例えば、孔間隔は、2~4mm、特に好適には2.5mmであるように選択され得る。
【0036】
本発明者らは、2.5mmの孔間隔および1mmの孔径を持つ穿孔格子を有するスチール製、アルミニウム製またはプラスチック製のプレート形状スクリーン部を備えるこのような音響メタマテリアルを使用して、覆われていない構成の超音波センサに比較して(超音波膜とスクリーンとの間の距離に応じて)1.5~10倍の受信信号振幅の増大、および、対応する信号対ノイズ比の改善を達成することができた。
【0037】
有利な変形例では、前記貫通開口は、前記基材とは異なる充填材で充填される。好適には、充填材は、シリコーン等の音響的に軟質の材料である。これにより、閉鎖した表面が達成され得る。
【0038】
さらなる実施形態によれば、提案された前記超音波センサアセンブリは、成形部品をさらに備え、前記成形部品には、前記超音波膜が前記成形部品に対面するように前記超音波センサが装着され、前記成形部品は、前記音響メタマテリアルの前記スクリーン部を、前記超音波膜の前方の部位において備える。
【0039】
成形部品は、特に、シートメタルまたはプラスチック等の音響メタマテリアルが形成される基材と同一の基材から形成され得る。
【0040】
特に、成形部品は、スクリーン部と一体的に形成され得る。スクリーン部は、例えば成形部品を穿孔することにより、成形部品に遡及的に形成され得る。
【0041】
成形部品は、自動車において所定の機能を有する成形部品であり得る。成形部品に、超音波センサが一提案において追加的に取り付けられ得る。また、成形部品に、構造化により超音波センサの超音波膜の前方の領域に、音響メタマテリアルからスクリーン部が形成される。これにより、センサを成形部品の後方に見えないようにすることができる一方、成形部品の他側における空間領域を高いエコー信号振幅で測定することができる。
【0042】
代替的に、成形部品は、超音波センサがこれに装着されるとともにスクリーン部を形成するという特定の目的のために設けられ得る。例えば、原則として覆われない状態で車両に装着され得る超音波センサを設けることが想定される。スクリーンは、超音波センサよりもわずかでも大きい必要があり、超音波センサアセンブリ用の音響メタマテリアルのスクリーン部の利点を利用することが意図されている。
【0043】
一実施形態によれば、前記超音波センサは、前記成形部品に、装着ブラケットに接続する前記超音波センサの前記ハウジングの外壁により装着され、前記ブラケットは、前記成形部品に前記スクリーン部の外側の領域において取り付けられ、前記超音波膜の前記表面は、前記成形部品の前記スクリーン部の後方において、前記成形部品に対して平行に配置される。
【0044】
このようにして、ハウジングは、有利には成形部品に安定的に装着される一方、ハウジングから機械的に分離されたセンサ膜は、成形部品に取り付けられない、または成形部品から機械的に分離される。
【0045】
さらなる実施形態によれば、前記成形部品は、前記車両本体の成形部品である。
【0046】
特に、車両本体成形部品は、車両の外皮の一部位を形成し得る。したがって、超音波センサアセンブリは、車両の外皮の後方に見えないようにされ得るため、見えない配置の利点(外部の機械的影響に対する保護、空気力学的設計仕様)を、音響メタマテリアルの利点、すなわちエコー信号の顕著に高い信号振幅と組み合わせることができる。音響メタマテリアルは、車両の外皮を構造化処理すること(上述のように、車両の外皮に適切な孔距離と開口直径とを有する外側からはほとんど見ることができない貫通開口からなる格子を形成すること)により形成され得る。
【0047】
さらなる実施形態によれば、前記成形部品は、車両本体パネル、フェンダー、車両サイドミラーの下方シェル、プライバシースクリーン、または車両内部パネル、である。
【0048】
車両本体パネルの後方またはフェンダーの後方または内側に装着された超音波センサを有する超音波センサアセンブリは、車両の周囲をモニタリングするために使用され得る。車両内部パネルの後方に装着された超音波センサを有する超音波センサアセンブリは、車両内部をモニタリングするために使用され得る。車両サイドミラーの下方シェルの後方または上方に設けられた超音波センサを有する超音波センサアセンブリは、地面の水たまりの深さ等をモニタリングするために使用され得る。
【0049】
さらなる実施形態によれば、前記超音波膜は、前記スクリーン部と接触する。
【0050】
特に、超音波膜は、接触圧力なく、および/またはスクリーン部に固定されることなく、スクリーン部と接触し得る。
【0051】
特に、超音波膜に対面する音響メタマテリアル側の音響インピーダンスを、超音波膜の音響インピーダンスに整合させることができる。
【0052】
本実施形態において、エコー信号振幅の大幅な増大という観測効果を有利に達成することができる。
【0053】
また、穿孔や減衰材等の減衰要素が、スクリーン部の外側の成形部品に設けられ得る。このようにして、成形部品における構造伝搬音の発生がさらに抑制され得る。
【0054】
さらなる実施形態によれば、前記超音波膜と前記スクリーン部とは、機械的に分離される。
【0055】
さらなる実施形態によれば、空隙が、前記超音波膜と前記スクリーン部との間に形成される。
【0056】
空隙は、超音波膜をスクリーン部または成形部品から機械的に分離させる1つの可能な手段である。超音波膜は超音波センサのハウジングからも機械的に分離しているため、超音波膜と超音波センサのハウジングが装着された成形部品との間に機械的または音響的結合は生じない。したがって、成形部品が励起されて構造振動が生じることはほとんどない。したがって、成形部品の減衰要素、例えば取り付けられた減衰材、減衰用に設計された穿孔等が、有利に省略され得る。
【0057】
提案された音響メタマテリアルの良好な透過特性を理由として、超音波膜をスクリーン部と機械的に結合する必要はない。空隙は、好適には薄い、特に好適には1mmよりも薄い、特に好適には0.1mmの薄さ、またはそれ以下の薄さであり得る。この場合、音響メタマテリアルによるエコー信号の増幅という有益な効果が、特に容易に達成され得る。
【0058】
第2態様によれば、上述の少なくとも1つの超音波センサアセンブリを有する自動車が提案される。
【0059】
第1態様の超音波センサセンブリについて説明した特徴、利点、および実施形態は、第2態様の自動車にも相応して適用される。
【0060】
自動車は、特に、乗用車または大型貨物車であり得る。自動車は、特に半自律運転または完全自律運転用に構成され得る運転支援システムまたは駐車支援システム等の支援システムを有し得る。半自律運転とは、例えば、駐車支援システムが、ステアリング装置および/または自動ギア選択システムを制御することを意味すると理解される。完全自律運転とは、例えば、支援システムが、さらに運転装置およびブレーキ装置も制御することを意味すると理解される。支援システムは、ハードウェアの形態および/またはソフトウェアの形態において実現され得る。ハードウェアの形態で実現される場合、支援システムは、コンピュータまたはマイクロプロセッサの形態とすることができる。ソフトウェアの形態で実現される場合、支援システムは、コンピュータプログラム製品、関数、ルーチン、プログラムコードの一部、または実行可能オブジェクトの形態であり得る。特に、支援システムは、車両の上位制御システム、例えばECU(エンジン制御ユニット)の一部であり得る。
【0061】
支援システムは、パルスエコー法に基づく超音波測定によって、自動車の環境および/または自動車の内部をモニタリングまたは測定するために、提案された超音波センサセンブリを使用することができる。
【0062】
一実施形態によれば、前記成形部品は、前記自動車の外皮の一部位を形成し、前記成形部品の前記スクリーン部に覆われた前記超音波膜が前記自動車に対して外方に対面するように、前記超音波センサは、前記成形部品において、前記車両の内部に対面する前記成形部品の側面に装着される。
【0063】
したがって、超音波センサアセンブリを、自動車の外皮の後方に見えないようにすることができる。音響メタマテリアルは、超音波センサの超音波膜の領域において外皮を構造化処理することにより、例えば、穿孔することにより形成され得る。実施される超音波測定は、増大したエコー信号振幅の恩恵を受ける。超音波膜が自動車の外皮と結合していない実施形態において、実施される超音波測定は、外皮に構造伝搬音が励起されないという事実からも恩恵を受ける。
【0064】
開口は非常に小さい(好適には超音波の波長よりも小さい)ため、外側シェルの設計にはほとんど影響がない。
【0065】
また、必要なときにまたは定期的に、払拭、すすぎ、吹き付けにより音響ミクロマテリアルの開口を洗浄し、それらを汚れや雨水のない状態に保つ洗浄装置を提供することも想定可能である。この洗浄装置は、フロントガラスのワイパー技術の分野における同等の洗浄装置と同様に設計され得る。
【0066】
さらなる実施形態によれば、前記成形部品は、前記車両内部に設けられた成形部品であり、前記成形部品の前記スクリーン部に覆われた前記超音波膜が前記車両内部に対面するように、前記超音波センサは、前記成形部品において、前前記自動車に対して外方に対面する前記成形部品の側面に装着される。
【0067】
車両内部のモニタリングにおいて、汚れや雨水の浸入による問題は有利には存在しないため、提案された解決策は特にこれに適している。
【0068】
また、成形部品が自動車のサイドミラーの一部位を形成し、成形部品のスクリーン部に覆われた超音波膜が自動車に対して下方に対面するように、超音波センサは、成形部品において、成形部品の内側に装着されることも想定可能である。
【0069】
これにより、例えば水たまりの深さ等、車両の下方の表面を測定することができる。また、測定方向が下向きであり音響メタマテリアルの開口も下方に対面するので、汚れや雨水が音響メタマテリアルの開口に侵入する危険性が少ない。
【0070】
本発明のさらに可能な実施例もまた、例示的な実施態様に関して上述または後述する特徴または実施態様の明示されていない組み合わせを含み得る。当業者であれば、この場合にも、本発明のそれぞれの基本形態に対する改良または追加として、個々の態様を追加し得る。
【0071】
本発明のさらに有利な構成および態様は、従属請求項および以下に説明する本発明の例示的な実施形態の対象である。本発明について、さらに、添付図面を参照して、好適な例示的実施形態に基づいて、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】
図1は、第1の例示的な実施形態による超音波センサアセンブリの概略的な断面図を示す。
【
図2】
図2は、第2の例示的な実施形態による超音波センサアセンブリの概略的な断面図を示す。
【
図3】
図3は、第3の例示的な実施形態による自動車の概略的な平面図を示す。
【
図4】
図4は、例示的な実施形態による音響メタマテリアルから作成されたスクリーン部を有する成形部品の概略的な平面図を示す。
【
図5】
図5は、覆われていない状態の超音波センサによる測定エコー信号のプロットを示す。
【
図6】
図6は、
図4の成形部品のスクリーン部により覆われている場合の、
図5の超音波センサによる測定エコー信号のプロットを示す。
【
図7】
図7は、メタマテリアルで覆われた超音波センサ、および覆われていない超音波センサの角度依存透過ビーム特性のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図面において、特に断りのない限り、同一または機能的に同一の要素には同じ参照符号が付されている。
【0074】
図1は、第1の例示的な実施形態による超音波センサアセンブリ1の概略的な断面図を示す。超音波センサアセンブリ1は、超音波センサ2とスクリーン部3とを備えている。
【0075】
超音波センサ1は、音響的に硬質のプラスチックから作製されたハウジング4を有している。超音波膜5が、シリコーン等の音響的に軟質の材料から作製された分離リング6に嵌め込まれている。圧電素子等の音響変換器素子7が、超音波膜5の内面に接着されている。圧電素子7と超音波膜5と分離リング6とからなるアセンブリが、ハウジング4の開口に嵌め込まれている。
【0076】
圧電素子7は、第1金属接続ピン9に分離ワイヤ8を介して接続している。分離ワイヤ8は、余裕ある長さを有し得るため、ピンと張っていなくてもよい。第2金属接続ピン10が、ハウジング4から外側に設けられている。印刷回路基板11が、金属接続ピン9、10に装着されている。圧電素子7を電気的に制御するための電子部品12が、印刷回路基板11に装着されている。
【0077】
自動車(
図3における16)の制御ユニット(
図3における23)が、超音波センサ2の電子部品12に、図示しないリード線および接続ピン10を介して接続し得るとともに、電気信号を超音波センサ2に送信することにより、部品12に圧電素子7を起動させて、超音波膜5を励起して振動を生じさせることにより、超音波信号を放出し得る。同様に、自動車の制御ユニットは、超音波センサ2から、圧電素子7が検出した超音波膜5の振動を示す電気信号を受信し得るとともに、受信または反射した超音波信号をこのようにして測定し得る。
【0078】
超音波膜5および圧電素子7のアセンブリは、ハウジング4の開口に分離リング6を用いて嵌め込まれているとともに、分離ワイヤ8により電気的に接触していることに留意すべきである。このようにして、超音波膜5は、ハウジング4から完全に機械的に分離している。
【0079】
スクリーン部3は、超音波センサ2の超音波膜5の前方に配置され、特に、以下で詳述する広帯域の音響メタマテリアルから作製されている。
【0080】
スクリーン部3は、特に超音波センサ2から離れて設けられている。スクリーン部3は、特に、超音波センサ2をスクリーン部3に連結するための連結要素を用いずに設けられている。薄い空隙が、超音波膜5とスクリーン部3との間に形成され得る。この目的は、超音波膜5をスクリーン部3およびスクリーン部3に接続する図示しない他の部品(成形部品、ブラケット等)から機械的に分離することである。しかしながら、超音波膜5がスクリーン部3に接触圧力なく接触していることも想定可能である。
【0081】
有利には、このように配置されたスクリーン部3の音響メタマテリアルは、超音波センサ2により供給される測定信号の信号対ノイズ比を顕著に向上させ得る。
【0082】
図2は、第2の例示的な実施形態による超音波センサアセンブリ1の概略的な断面図を示す。
【0083】
第2の例示的な実施形態の超音波センサアセンブリ1の超音波センサ2およびスクリーン部3は、例えば、第1の例示的な実施形態の超音波センサ2およびスクリーン部3とすることができ、再度説明しない。
【0084】
第2の例示的な実施形態において、スクリーン部3は、成形部品13に一体的に形成されるとともに、成形部品13と同一の音響的に硬質の基材から形成される部位である。すなわち、第2の例示的な実施形態のスクリーン部3は、成形部品13の一部位である。
【0085】
成形部品13は、例えば、自動車の外皮の一部位、例えば、ドアの外側パネル、フェンダー、ウィングパネル等であり得る。ただし、成形部品13は、プラスチックから同様に作製され得るとともに、フェンダー、プライバシースクリーン、車両内部パネル等であってもよい。成形部品13は、音響的に硬質の基材から形成されているため、構造伝搬音または構造振動が成形部品13で発生し得る。
【0086】
成形部品13のスクリーン部3において、成形部品13の基材は、構造化処理により音響的メタマテリアルになるよう形成されている。
【0087】
ブラケット14が、ハウジング4の外側に装着されている。ブラケット14は、成形部品13に取り付けられている。特に、ブラケット14は、成形部品13に、スクリーン部3の外側の領域において取り付けられている。超音波センサ2は、ブラケット14により、超音波センサ2の超音波膜5が、成形部品13のスクリーン部3の後方において成形部品13に対して平行に配置されるように保持されている。これに応じて、好適にはおよそ0.1mm厚さの空隙15が、スクリーン部3の音響メタマテリアルと超音波センサ2の超音波膜4との間に形成されている。
【0088】
したがって、成形部品13とブラケット14と超音波センサ2のハウジング4とは、各々が音響的に硬質の材料から作製されて機械的に互いに連結しているが、超音波膜5は、第1の例示的な実施形態に基づいて説明したように、超音波センサ2のハウジングから機械的に分離している。さらに、超音波膜2は、成形部品13から空隙15により同様に機械的に分離している。また、超音波は非共振的な態様において音響メタマテリアルから作製されたスクリーン部3を通過し得るため、超音波センサアセンブリ1により供給される測定信号の品質に対する成形部品13とブラケット14とハウジング4とからなる構造体の構造振動のいかなる影響も、著しく低減される。
【0089】
第2の例示的な実施形態の派生例によれば、超音波膜5は、スクリーン部3または音響メタマテリアル3と接触している。これは、派生例によれば、空隙15が設けられないということを意味する。スクリーン部3の音響メタマテリアルの音響インピーダンスは、超音波センサ2に対面する側における超音波膜5の音響インピーダンスに整合し得る。
【0090】
この派生例によれば、超音波膜5と成形部品13との音響的な分離をなくすこと、または弱くすることを達成できる。しかしながら、音響メタマテリアル3によりもたらされる測定エコー信号の振幅を増幅する効果は、良好なインピーダンス整合を理由として空隙15がないことでさらに強力になり得る。これにより、信号対ノイズ比がさらに向上し得る。
【0091】
成形部品13のより良好な音響的分離のために、派生例によれば、減衰材、減衰穿孔等の減衰要素が、成形部品13に、スクリーン部3の外側の領域において設けられ得る。代替的に、結合構造振動を超音波センサ2の測定信号から演算により除去することも想定可能である。
【0092】
図3は、第3の例示的な実施形態による自動車16の概略的な平面図を示す。
【0093】
自動車16は、複数の超音波センサ201~206を備えている。3つの第1超音波センサ201が、覆われた状態において、車両内部に対面する前方フェンダー17(成形部品13の例、
図2)の側面に配置されている。2つの第2超音波センサ202が、覆われた状態において、車両内部に対面するそれぞれの前方ウィング18(車両16の外皮の一部位を形成する車両本体成形部品13の例、
図2)の側面に配置されている。2つの第3超音波センサ203が、覆われた状態において、車両内部に対面するそれぞれの後方ウィング19(車両16の外皮の一部位を形成する車両本体成形部品13の例、
図2)の側面に配置されている。2つの第4超音波センサ204が、覆われた状態において、車両内部に対面するそれぞれの外側ドアパネル20(車両16の外皮の一部位を形成する車両本体成形部品13の例、
図2)の側面に配置されている。3つの第5超音波センサ205が、覆われた状態において、車両内部に対面する前方フェンダー21(成形部品13の例、
図2)の側面に配置されている。さらに、2つの第6超音波センサが、覆われた状態において、それぞれの車両サイドミラー22(成形部品13の例、
図2)の下方シェルの内側に配置されている。
【0094】
超音波センサ201~206の超音波膜(
図1、2における5)は、それぞれの成形部品17~22のスクリーン部3(
図1、2)により各々覆われている。それぞれの成形部品17~22の基材は、音響メタマテリアルとなるように形成され、自動車16に対して外方に対面する(超音波センサ201~205)、または下方に対面する(超音波センサ206)。
【0095】
したがって、第1および第2の例示的な実施形態による超音波センサアセンブリ(
図1、2における1)が、第3の例示的な実施形態による自動車16上の超音波センサ201~206の設置個所の各々に形成されている。
【0096】
自動車16は、中央制御ユニット(23として概略的に図示)を備えている。中央制御ユニットは、パルスエコー法に基づいて自動車16の環境を測定するための、超音波センサ201~206により形成された超音波センサアセンブリを使用する駐車支援システムを形成している。
【0097】
さらに、超音波センサ(図示せず)が、自動車16に同様に設けられ得る。その超音波膜(
図1、2における5)は、車両内部に対面している。このような超音波センサは、例えば、自動車に対して外方に対面する車両内部パネル(成形部品13の例、
図2)の側面に配置され得るとともに、車両内部パネルに形成された音響メタマテリアルからなるスクリーン部(3、
図1、2)により覆われ得る。制御ユニット23は、パルスエコー法に従って車両内部をモニタリングするため、例えば乗車人数、荷物室の積載量を検出するため、自動車16のドライバーの健康状態または運転適性をモニタリングする等のため、内方に対面する超音波センサを使用し得る。
【0098】
有利には、自動車16に設けられたすべての超音波センサ201~206が、音響メタマテリアルから作製されたそれぞれのスクリーン部(
図1、2における3)により覆われている。これにより、一方で機械的損傷および視認に対する保護が得られ、他方で音響メタマテリアルによるエコー信号振幅の向上が得られる。
【0099】
音響メタマテリアルおよびその利点について、試作品を用いて実施した測定に基づいて以下により詳細に説明する。
【0100】
図4は、スクリーン部3を有する成形部品13の概略的な平面図を示す。成形部品13は、音響的に硬質の基材から作製されている。1mm厚さを有するアルミニウム、3mm厚さを有するプラスチック、0.9mm厚さを有するスチールである基材から、成形部品13の種々の試作品を製造した。試作品は、各々10×10cm
2の面積を有するものとした。
【0101】
成形部品13のスクリーン部3において、音響メタマテリアルを、スクリーン部3における成形部品13の基材を特殊な方法で穿孔することにより形成した。特に、規則格子が、21個の円形の貫通開口24から形成された。円形の貫通開口24は、各々1mmの直径を有していた。格子は、2.5mmの孔間隔(任意の2つの隣り合う開口24間の距離)を有していた。したがって、貫通開口24の直径および孔間隔は、超音波センサ2(
図1、2)が放出する超音波の波長(典型的に、室温でおよそ7mm)よりも著しく小さかった。ただし、孔間隔は、開口直径よりも大きかった。
【0102】
試作品13の穿孔されたスクリーン部3を、超音波センサ(
図1における2)の超音波膜(
図1における5)の前方に配置することにより、覆われた状態の超音波センサ(
図1における2)を有する超音波センサアセンブリ(
図1における1)を形成した。本例において超音波膜(
図1における5)は、スクリーン部3に対して平行に配置され、スクリーン部3と超音波膜(
図1における5)との間に0.1mmの空隙を残した。
【0103】
成形部品13の上述の試作品のすべてが、上述の有利な効果を示した。したがって、超音波センサ(
図1における2)が後方に配置され得る成形部品13の材料および厚さに関して高いレベルの設計自由度が存在する。
【0104】
以下、適宜
図1、
図2および
図4を相互参照しつつ
図5~
図7を参照することにより、覆われた状態の超音波センサアセンブリ1に関する測定結果を、同一試験条件下で同一の覆われていない状態の超音波センサ2で得られた測定結果と比較する。覆われた状態の超音波アセンブリ1は、超音波センサ2と、21個の貫通開口24を備える穿孔された格子を有する0.9mm厚さの試作品である成形部品13と、から上述のように形成されている。
【0105】
図5は、覆われていない状態の超音波センサによる測定エコー信号のプロットを示す。
図6は、覆われた状態の超音波センサアセンブリ1による測定エコー信号のプロットを示す。
図5および
図6の横軸に沿って、それぞれの超音波センサ1により供給された測定信号のサンプルがプロットされている。
図5および
図6における横軸は、時間軸としても理解され得る。ボルトを単位とする測定信号の電圧振幅が、
図5および
図6の縦軸にプロットされている。
【0106】
0~2000の時間範囲において、超音波センサ2の構造振動25が測定される。構造振動25は、超音波膜5が機械的に分離されているが、超音波信号の発信中に必然的に発生する。
【0107】
およそ8700サンプルの時間後、エコー信号26を観測する。図面において、音響マテリアルで覆われた状態の超音波センサアセンブリ1の
図6におけるエコー信号26の振幅が、他の試験条件は同一の覆われていない状態の超音波センサ2の
図5におけるエコー信号26の振幅に比較して、およそ10倍改善していることが明瞭に理解される。したがって、信号対ノイズ比は、およそ10倍向上した。
【0108】
図7は、
図5および
図6に示した測定についても使用した同一の測定構成における、覆われていない状態の超音波センサ2、および覆われた状態の超音波センサアセンブリ1の角度依存透過ビーム特性のプロットを示す。
【0109】
図7における横軸に沿って、成形部品13の表面法線に対する角度が、度を単位としてプロットされている。
図7における縦軸に沿って、伝送信号の音圧レベルが、dBを単位としてプロットされている。
【0110】
破線27は、覆われていない状態の超音波センサ2の透過ビーム特性を示す。実線28は、覆われた状態の超音波センサアセンブリ1の透過ビーム特性を示す。
【0111】
図7において理解されるように、広帯域音響メタマテリアルを有する覆われた状態の超音波センサアセンブリ1は、およそ-85°~85°の全関連角度範囲において有利であることがわかる。音圧レベルは、覆われていない状態の超音波センサ2よりも一貫して顕著に高い。
【0112】
これは、
図4に基づいて説明した、出射する超音波および入射する超音波の両方の音響メタマテリアルを形成するためのスクリーン部3の構造を、非共振的な態様において広い角度範囲で通過し得ることを示している。
【0113】
本発明について例示的な実施形態に基づいて説明したが、多くの変更が可能である。特に、自動車16において説明した適用例は、純粋に例として理解されるべきである。提案された超音波センサセンブリはまた、多数の他の応用分野を有する。例えば、工場に設置された走行ロボットも、対応する超音波センサセンブリを用いてその周囲を有利に測定することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 超音波センサアセンブリ
2 超音波センサ
3 スクリーン部
4 ハウジング
5 超音波膜
6 分離リング
7 変換器素子、圧電素子
8 分離ワイヤ
9 接続ピン
10 接続ピン
11 印刷回路基板
12 電子部品
13 成形部品
14 装着ブラケット
15 空隙
16 自動車
17 前方フェンダー
18 前方ウィング
19 後方ウィング
20 ドア外側パネル
21 後方フェンダー
22 サイドミラー
23 制御ユニット
24 貫通開口
25 構造振動
26 エコー信号
27 覆われていない状態の超音波センサの透過ビーム特性
28 覆われた状態の超音波センサアセンブリの透過ビーム特性
【国際調査報告】