(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(54)【発明の名称】可変容積のリザーバを含む埋め込み可能なシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535325
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 FR2021052249
(87)【国際公開番号】W WO2022123181
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514211596
【氏名又は名称】ユロマン
【氏名又は名称原語表記】UROMEMS
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ラムラウイ,ハミド
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD52
4C160DD66
(57)【要約】
本発明は、ヒト又は動物の体内に埋め込み可能なシステムであって:- 可変量の流体を有する可膨張性要素(3);- 可変量の流体のリザーバ(5)であり、固定された第1の部分(10)、及び動かすことができる第2の部分(20)を含むリザーバ;を含む流体回路と、第2の部分(20)に機械的に結合されたアクチュエータ(8)と、を含み、第2の部分(20)は弾性変形可能でもあるため、第2の部分(20)が第1の部分(10)に対して固定されているとき、第2の部分(20)は、流体回路内の圧力の変動に応答して機械的に変形されるように設計され、上記の流体回路内の圧力の変動を補償するために、リザーバ(5)の容積を変えるようになっている、システムを記載している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物の体内に埋め込み可能なシステムであって、
- 可変量の流体を有する可膨張性要素、
- 可変量の流体のリザーバであり、静止した第1の部分、及び前記第1の部分に対して動かすことができる第2の部分を含むリザーバ、
- 前記リザーバと前記可膨張性要素との間の流体接続部、
を含む流体回路と、
決定された容積に達するまで前記リザーバの容積を変化させるように、前記第1の部分に対して前記第2の部分を選択的に動かすために前記第2の部分に機械的に結合されたアクチュエータと、
を含み、
前記第2の部分は弾性変形可能でもあるため、前記第2の部分が前記第1の部分に対して静止しているとき、前記第2の部分は、少なくとも前記流体回路内の圧力の変動に応答して機械的に変形されるように適応し、少なくとも部分的に、前記流体回路内の圧力の変動を補償するために、前記決定された容積に対する前記リザーバの容積を調整するようになっている、埋め込み可能なシステム。
【請求項2】
前記第2の部分が前記第1の部分に対して静止しているとき、前記第2の部分は、前記流体回路内の圧力が限界圧力以下であるときに静止構成であり、前記リザーバの容積は前記決定された容積に相当し、前記第2の部分は、前記流体回路内の圧力が前記限界圧力よりも大きいときに変形構成であり、前記第2の部分の変形は、前記流体回路内で前記限界圧力を再確立するように適応した前記リザーバの容積の増加を引き起こす、請求項1に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項3】
前記流体回路内の圧力を測定するための手段及び制御ユニットをさらに含み、前記制御ユニットは、前記流体回路内で測定された圧力がセットポイント圧力に相当しないときに、前記流体回路内の圧力の変動を補償するために前記リザーバの容積を変更するように前記第2の部分を動かすように適応した前記アクチュエータの作動を制御するように適応している、請求項1又は2に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項4】
前記可膨張性要素は、可膨張性閉塞カフである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項5】
前記可膨張性閉塞カフは、解剖学的導管を選択的に閉鎖するために前記解剖学的導管の周囲に配置されるように適応している、請求項4に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項6】
前記第2の部分は、可動壁、並びに、前記可動壁と前記第1の部分との間に延びる弾性変形可能なベローズを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項7】
前記アクチュエータは、前記第2の部分の前記可動壁の直線運動を制御するように適応し、前記第2の部分の前記ベローズは、前記リザーバの容積を変化させるように、前記アクチュエータによって制御される前記可動壁の前記直線運動に従って伸長又は圧縮するように適応している、請求項6に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項8】
前記第1の部分は、縦軸と実質的に同軸に延びる前記リザーバの外壁を形成し、前記第2の部分の前記ベローズは、前記縦軸と実質的に同軸に延びる前記リザーバの内壁を形成し、前記アクチュエータは、前記縦軸に沿って並進運動で前記可動壁を動かすように適応している、請求項6又は請求項7に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項9】
前記ベローズは、複数の弾性変形可能なコンボリューションを含み、前記第2の部分が前記第1の部分に対して静止しているとき、前記流体回路内の圧力の変動を補償するように前記コンボリューションは機械的に変形するように適応している、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項10】
前記コンボリューションは、前記縦軸の方向及び/又は前記縦軸に対して半径方向において変形するように適応している、請求項9と組み合わせた請求項8に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項11】
前記ベローズは、3から15の弾性変形可能なコンボリューションを含み、好ましくは5から10の弾性変形可能なコンボリューションを含む、請求項9又は請求項10に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項12】
前記ベローズはチタンで作られている、請求項6乃至11のいずれか一項に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項13】
前記ベローズは、0.01mmから0.3mmの厚さを有し、好ましくは0.03mmから0.15mmの厚さを有している、請求項6乃至12のいずれか一項に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項14】
前記ベローズは、0.2から15N/mmのスティフネス定数を有し、好ましくは1から4N/mmのスティフネス定数を有している、請求項6乃至13のいずれか一項に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項15】
尿道、胃管、結腸、又は直腸のうち少なくとも1つの導管から得られるヒト又は動物の体の解剖学的導管を選択的に閉鎖するために、前記ヒト又は動物の体内に埋め込まれるように構成された、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の埋め込み可能なシステム。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の埋め込み可能なシステムと、前記システムが埋め込まれた個人によって使用されるように適応したリモートコントロールとを含むアセンブリであって、前記埋め込み可能なシステム及び前記リモートコントロールは、それらの間で通信するように適応した通信手段を含み、前記リモートコントロールは、前記アクチュエータによる前記第2の部分の動きを制御するように適応している、アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容積のリザーバを有する流体回路を含む、ヒト又は動物の体内に埋め込み可能なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器は、ヒト又は動物のそれぞれの体内に埋め込み可能なシステムの形をとる。特に、そのような機器は、尿失禁を治すために使用される人工尿道括約筋、肥満を治す目的で胃を制限するのに適した胃バンド又はリング、勃起プロステーシスに使用される可膨張性陰茎インプラント等に相当することができる。
【0003】
それ自体が知られている様式で、埋め込み可能なシステムは液圧で動作することができ、特に、可変量の流体のリザーバ及び可変量の流体を有する可膨張性要素を含んでもよい。リザーバから可膨張性要素に流体を移動させることができ、その逆も同様であるように、可膨張性要素は、可変量の流体のリザーバと流体接続している。
【0004】
人工尿道括約筋等の埋め込み可能な閉塞システムの場合、可膨張性要素は、男性では尿道又は女性では膀胱頸部等の解剖学的導管を選択的に閉鎖することができる可膨張性閉塞カフである。導管にかかる圧力を増加させるためにリザーバからカフまで流体を移動させることができ、逆に、導管にかかる圧力を減少させるためにカフからリザーバまで流体を移動させることができる。従って、カフ内の流体の量に応じて、閉鎖されることになる解剖学的導管により大きな又はより小さな圧力を加えることができる。
【0005】
解剖学的導管を閉鎖するために必要な可膨張性カフ内での流体の注入及び吸引は、American Medical Systemsが販売している参照番号AMS800の人工尿道括約筋若しくはZephyrが販売している参照番号ZSI375のインプラントに対して等、手動で受動的に行うことができるか、又は、より開発されたインプラントに対して自動で能動的に(例えば、電源を使用して)行うことができる。
【0006】
特許文献1は、閉塞カフと流体接続している可変容積のリザーバを含むそのような埋め込み可能な閉塞システムを記載している。
【0007】
埋め込み可能なシステムの流体回路は、可膨張性要素の一時的且つ潜在的に突発的な圧力の変動、特に過度の圧力を受けることがある。
【0008】
例えば、人工尿道括約筋の場合、システムが埋め込まれている個人の身体活動又は姿勢の変化、例えば、個人が自転車のサドルに座っている場合等が、可膨張性カフ内に過度の圧力を引き起こし得る。また、カテーテルの針は特定の直径を有し、尿道に挿入すると尿道の直径が増加し、従ってカフ内の圧力が増加するため、個人の尿道内にカテーテルを導入する間に過度の圧力になるリスクもある。
【0009】
しかし、そのような流体回路内の圧力の変動は避けるべきである。人工尿道括約筋の場合、過度の圧力は、カフが配置されている場所の周囲の組織に、例えばこれらの組織の病変を引き起こすことによって、損傷を与える恐れがある。従って、対応する組織損傷のリスクを制限するために、これらの過度の圧力を迅速に制御する必要がある。
【0010】
他の分野で現在使用されているポンプシステムは、例えば、システム内の過度の圧力を補償するために、ばねと組み合わせた変形可能な膜を加えることを示唆している。しかし、これらのポンプシステムは、構造を非常に複雑にし、気密性、生体適合性、コンパクトさ、及び効率の問題を提起するため、埋め込み可能なシステムに含めることは困難であろう。加えて、膜の変形は、リザーバの容積を過度に変更する恐れがあり、これは、流体回路にかかる圧力の点で精度の低下を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、既存のシステムの欠点を克服することができる埋め込み可能なシステムを提供することである。特に、提供される埋め込み可能なシステムは、流体回路内の圧力の変動を迅速に、部分的又は全体的に補償することができる。
【0013】
本発明の別の目的は、最小のサイズを有し、過度の圧力を補償するために必要なエネルギー消費を最小限に抑える、密閉された生体適合性の埋め込み可能なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様によると、本発明は、ヒト又は動物の体内に埋め込み可能なシステムに関し、当該システムは:
- 可変量の流体を有する可膨張性要素;
- 可変量の流体のリザーバであり、静止した第1の部分、及び第1の部分に対して動かすことができる第2の部分を含むリザーバ;
- リザーバと可膨張性要素との間の流体接続部;
を含む流体回路と、
決定された容積に達するまでリザーバの容積を変化させるように、第1の部分に対して第2の部分を選択的に動かすために第2の部分に機械的に結合されたアクチュエータと、
を含み、
第2の部分は弾性変形可能でもあるため、第2の部分が第1の部分に対して静止しているとき、第2の部分は、少なくとも流体回路内の圧力の変動に応答して機械的に変形されるように適応し、少なくとも部分的に、上記の流体回路内の圧力の変動を補償するために、決定された容積に対するリザーバの容積を調整するようになっている。
【0015】
上記の埋め込み可能なシステムの一部の非限定的な特徴は、個別に又は組み合わせて、以下のとおりである:
- 第2の部分が第1の部分に対して静止しているとき、第2の部分は、流体回路内の圧力が限界圧力以下であるときに静止構成であり、リザーバの容積は決定された容積に相当し、第2の部分は、流体回路内の圧力が限界圧力よりも大きいときに変形構成であり、第2の部分の変形は、流体回路内で限界圧力を再確立するように適応したリザーバの容積の増加を引き起こす;
- 埋め込み可能なシステムは、流体回路内の圧力を測定するための手段及び制御ユニットをさらに含み、制御ユニットは、流体回路内で測定された圧力がセットポイント圧力(a setpoint pressure)に相当しないときに、流体回路内の圧力の変動を補償するためにリザーバの容積を変更するように第2の部分を動かすように適応したアクチュエータの作動を制御するように適応している;
- 可膨張性要素は、可膨張性閉塞カフである;
- 可膨張性閉塞カフは、解剖学的導管を選択的に閉鎖するためにこの解剖学的導管の周囲に配置されるように適応している;
- 第2の部分は、可動壁、並びに、可動壁と第1の部分との間に延びる弾性変形可能なベローズを含む;
- アクチュエータは、第2の部分の可動壁の直線運動を制御するように適応し、第2の部分のベローズは、リザーバの容積を変化させるように、アクチュエータによって制御される上記の可動壁の直線運動に従って伸長又は圧縮するように適応している;
- 第1の部分は、縦軸と実質的に同軸に延びるリザーバの外壁を形成し、第2の部分のベローズは、縦軸と実質的に同軸に延びるリザーバの内壁を形成し、アクチュエータは、縦軸に沿って並進運動で(in translation)可動壁を動かすように適応している;
- ベローズは、複数の弾性変形可能なコンボリューションを含み、第2の部分が第1の部分に対して静止しているとき、流体回路内の圧力の変動を補償するようにコンボリューションは機械的に変形するように適応している;
- コンボリューションは、縦軸の方向及び/又は縦軸に対して半径方向において変形するように適応している;
- ベローズは、3から15の弾性変形可能なコンボリューションを含み、好ましくは5から10の弾性変形可能なコンボリューションを含む;
- ベローズはチタンで作られている;
- ベローズは、0.01mmから0.3mmの厚さを有し、好ましくは0.03mmから0.15mmの厚さを有している;
- ベローズは、0.2から15N/mmのスティフネス定数を有し、好ましくは1から4N/mmのスティフネス定数を有している;
- 埋め込み可能なシステムは、以下の:尿道、胃管、結腸、又は直腸のうち少なくとも1つの導管から得られるヒト又は動物の体の解剖学的導管を選択的に閉鎖するために、上記のヒト又は動物の体内に埋め込まれるように構成されている。
【0016】
第2の態様によると、本発明は、第1の態様による埋め込み可能なシステムと、システムが埋め込まれた個人によって使用されるように適応したリモートコントロールとを含むアセンブリに関する。埋め込み可能なシステム及びリモートコントロールは、それらの間で通信するように適応した通信手段を含み、リモートコントロールは、アクチュエータによる第2の部分の動きを制御するように適応している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の他の特徴、目的、及び利点が、以下に図によって例示されることになる非限定的な例として与えられる以下の詳細な説明を読むことで明らかになる。
【
図1】本発明の一実施形態による埋め込み可能なシステムの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による埋め込み可能なシステムの概略断面図である。
【
図3】
図3a及び3bは、本発明の一実施形態による埋め込み可能なシステムの概略断面図であり、それぞれ、第2の部分が変形していない及び変形している図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ヒト又は動物の体内に埋め込むことができるシステムが、非限定的な例として、
図1、2、3a、及び3bにおいて例示されている。
【0019】
埋め込み可能なシステムは:
- 可変量の流体を有する可膨張性要素3;
- 可変量の流体のリザーバ5であり、静止した第1の部分10、及び第1の部分10に対して動かすことができる第2の部分20を含むリザーバ5;
- リザーバ5と可膨張性要素3との間の流体接続部2;
を含む流体回路と、
決定された容積に達するまでリザーバ5の容積を変化させるように、第1の部分10に対して第2の部分20を選択的に動かすために第2の部分20に機械的に結合されたアクチュエータ8と、
を含む。
【0020】
第2の部分20は弾性変形可能でもあるため、第2の部分20が第1の部分10に対して静止しているとき、第2の部分20は、少なくとも流体回路内の圧力の変動に応答して機械的に変形されるように適応し、少なくとも部分的に、上記の流体回路内の圧力の変動を補償するために、決定された容積に対するリザーバ5の容積を調整するようになっている。
【0021】
従って、埋め込み可能なシステムの流体リザーバ5の第2の部分20は、移動可能でもあり、弾性変形可能でもある。流体回路内の圧力の変動は、部分的又は全体的に補償することができる。
【0022】
「流体回路内の圧力」という用語は、流体回路の要素の各々において、言い換えると、リザーバ5、可膨張性要素3、及び流体接続部2において確立された圧力を示すために使用される。
【0023】
「セットポイント圧力」という用語は、可膨張性要素3内の、言い換えると流体回路内の所望の圧力を示すために使用される。
【0024】
第2の部分20は、アクチュエータ8による第2の部分20のいかなる作動もない状態において、言い換えると、第1の部分10に対する第2の部分20の所与の位置において、「第1の部分10に対して静止している」と呼ばれる。
【0025】
第1の部分10は静止しており、アクチュエータ8によって第2の部分20が動くと、リザーバ5の容積に変動が生じる。従って、第2の部分20は、セットポイント圧力に対応して、リザーバ5の決定された容積に達するまで動かすことができる。
【0026】
可変容積のリザーバ5は、流体で満たされるように適応している。リザーバ5の容積の変動は、流体回路内の圧力の変動を引き起こす。より具体的には、リザーバ5の容積の減少が、リザーバ5から可膨張性要素3への流体の移動をもたらし、流体回路内の圧力の増加を引き起こす。逆に、リザーバ5の容積の増加は、可膨張性要素3からリザーバ5への流体の移動をもたらし、流体回路内の圧力の減少を引き起こす。
【0027】
第2の部分20の所与の位置における第2の部分20の変形によって、リザーバ5内の圧力の変動が結果として生じ、これは、特に、可膨張性要素3内の圧力の変動を表すことができる。第2の部分20は、特に、リザーバ5内の圧力がセットポイント圧力よりも大きい限界圧力値を超えた場合に変形するように適応することができる。第2の部分20の変形は、流体回路内の圧力の変動を補償するために、特に流体回路内の過度の圧力を補償するために、決定された容積に対してリザーバ5の容積を調整することを可能にしている。
【0028】
第2の部分20の変形は、機械的な変形である。従って、当該システムは、測定誤差又は電子システムの故障のリスクを排除し、特定のソフトウェアによるいかなるデータ処理も想定していない。従って、圧力の変動の補償は、信頼でき且つ頑強な様式で実行される。加えて、圧力の変動は、センサによって事前に検出される必要もなく、第2の部分20のいかなる移動コマンドの動作もなく、機械的に、従って瞬時に補償される。従って、埋め込み可能なシステムは、これらの圧力変動が発生した時点で、流体回路内のあらゆる圧力変動のより迅速な補償を可能にする。
【0029】
従って、埋め込み可能なシステムは保護され、あり得る過度の圧力によって損傷を受けるリスクはない。可膨張性要素3内の過度の圧力はリザーバ5に移され、その後すぐに、流体回路内で、限界圧力以下の、好ましくはセットポイント圧力に実質的に相当する圧力が再確立されるように、第2の部分20の変形によって吸収される。
【0030】
特に、埋め込み可能なシステムが人工尿道括約筋である場合、例えば、システムが埋め込まれた個人の身体活動又は姿勢の変化の際、又は個人の尿道へのカテーテルの導入の際に、一時的な過度の圧力が可膨張性要素3内で発生することがある。過度の圧力は、第2の部分20の変形によって補償されるため、尿道又は膀胱頸部等の可膨張性要素3が配置されている場所の周囲の導管が、可膨張性要素3による過度の圧力が加えられることによって損傷を受けることはない。従って、人工尿道括約筋の存在による導管の病変のリスクは制限される。
【0031】
第2の部分20の変形は弾性である。従って、圧力の変動が無くなると、第2の部分20はその最初の形状を取り戻し、リザーバ5の容積は決定された容積に再び相当する。
【0032】
可膨張性要素
可膨張性要素3は、埋め込み可能なシリコーン、埋め込み可能なポリウレタン等の生体適合性材料で作ることができる。可膨張性要素3は、生体適合性エラストマー、例えば生体適合性シリコーン等から作ることができる。
【0033】
可膨張性要素3は、特に埋め込み可能なシステムが人工尿道括約筋である場合には、可膨張性閉塞カフであってもよい。可膨張性閉塞カフは、解剖学的導管を選択的に閉鎖するために、この解剖学的導管の周囲に配置されるように適応することができる。流体で満たされた可膨張性閉塞カフ3は、閉鎖されることになる導管を完全に又は部分的に取り囲むように適応することができる。
【0034】
或いは、可膨張性要素3は、特に埋め込み可能なシステムが勃起プロステーシスである場合には、可膨張性陰茎インプラントであってもよい。
【0035】
流体接続部
流体接続部2は、リザーバ5と可膨張性要素3との間に配置されるチューブを含んでもよい。チューブの第1の端部はリザーバ5に通じており、チューブの第2の端部は可膨張性要素3に通じている。
【0036】
流体接続部2は、埋め込み可能なシリコーン、埋め込み可能なポリウレタン等の生体適合性材料で作ることができる。流体接続部2は、生体適合性エラストマー、例えば生体適合性シリコーン等から作ることができる。
【0037】
可変容積のリザーバ
埋め込み可能なシステムは、第2の部分20が第1の部分10に対して静止しているとき、すなわち第2の部分20の所与の位置にあるときに「静的」モードである。埋め込み可能なシステムは、典型的には、リザーバ5内の流体の量が可膨張性要素3内の流体の所望の量まで調整されるとき、静的モードである。この静的モードでは、アクチュエータ8は作動していない。
【0038】
埋め込み可能なシステムは、第2の部分20が第1の部分10に対してアクチュエータ8によって動くように駆動されるとき、典型的には、リザーバ5内の流体の量を調整して、可膨張性要素3内の流体の所望の量を得なければならないときに「動的」モードである。
【0039】
静的モードでは、すなわち、第2の部分20が第1の部分10に対して静止しているときには、第2の部分20は、流体回路内の圧力が限界圧力以下のセットポイント圧力であるときに静止構成であってもよく、リザーバ5の容積は、決定された容積に相当し、第2の部分20は、流体回路内の圧力が限界圧力よりも大きいときに変形構成であってもよく、第2の部分20の変形は、流体回路内で限界圧力以下の圧力を再確立するように適応したリザーバ5の容積の増加を引き起こす。
【0040】
従って、流体回路内の圧力が限界圧力以下であり、リザーバ5が決定された容積を有する場合、第2の部分20は静止構成であり、すなわち変形を受けない。第2の部分20の変形は弾性であり、リザーバ5の容積が決定された容積に等しく、流体回路内の圧力が限界圧力以下である場合には、第2の部分20はその変形しない形状をとる。
【0041】
第2の部分20は、可動壁6、並びに、可動壁6と第1の部分10との間に延びる弾性変形可能なベローズ7を含み得る。ベローズ7は、可動壁6の剛性よりも小さい剛性を有する。従って、動的モードでは、第2の部分20の動きは、可動壁6の動きから生じ、第2の部分20の変形は、ベローズ7の弾性変形から生じる。
【0042】
アクチュエータ8は、第2の部分20の可動壁6の直線運動を制御するように適応することができ、第2の部分20のベローズ7は、リザーバ5の容積を変化させるように、アクチュエータ8によって制御される上記の可動壁6の直線運動に従って伸長又は圧縮するように適応する。
【0043】
従って、第2の部分20は、動的モードでリザーバ5の容積を変化させるように、軸方向に伸長可能又は圧縮可能である。アクチュエータ8による第2の部分20の動きは、第2の部分20の可動壁6の対応する直線運動を引き起こし、直線運動の方向における、特に縦軸Xの方向におけるベローズ7の伸長又は圧縮を引き起こす。可動壁6の動きは、ベローズ7の圧縮又は伸長と組み合わされて、リザーバ5の容積の変動を引き起こす。
【0044】
第1の部分10は、縦軸Xと実質的に同軸に延びる円筒状の壁と、円筒状の壁をその端部の1つにおいて閉じるように適応した底壁を含んでもよい。円筒状の壁及び底壁は、リザーバ5の外壁を共に画定する。
【0045】
第2の部分20のベローズ7は、縦軸Xと実質的に同軸に延びるリザーバ5の内壁を形成することができる。ベローズ7は、ベローズ7の第1の端部において第1の部分10の円筒状の壁に接続し、第1の端部と反対側のベローズ7の第2の端部において可動壁6に接続することができる。従って、第1の部分10の円筒状の壁が、ベローズ7をその第1の端部において閉じ、可動壁6が、ベローズ7をその第2の端部において閉じる。
【0046】
第2の部分20の可動壁6は、縦軸Xに対して垂直に延びることができる。アクチュエータ8は、縦軸Xに沿って並進運動で可動壁6を動かすように適応している。
【0047】
第1の部分10の円筒状の壁は、縦軸Xを中心とした回転円筒の形状を実質的に有してもよい。可動壁6は、第1の部分10の円筒状の壁の半径未満の半径を有して、実質的に円盤形状を有してもよい。第1の部分10の円筒状の壁の回転軸は、好ましくは、縦軸Xと一致し、可動壁6の円盤の中心を通過する。
【0048】
アクチュエータ8は、可変容積のリザーバ5の可動壁6の力と必要な速度での動きを可能にするために必要な出力を有した、電気エネルギーを機械的な動きに変換することができる任意の電気機械的システムから選ぶことができる。アクチュエータ8は、特に、圧電アクチュエータ8、ブラシ付き又はブラシ無しの電磁モーターを含んでもよい電磁アクチュエータ8であってもよく、減速ギア、電気活性ポリマー、又は形状記憶合金に結合されていてもいなくてもよい。
【0049】
可動壁6は、可動壁6と一体になった駆動ねじ17の作用によって、縦軸Xに沿って並進運動で動かすことができる。駆動ねじ17は、実質的に縦軸Xに沿って延びることができる。駆動ねじ17の位置は、実質的に可動壁6の中心に対応してもよい。
【0050】
アクチュエータ8は、例えばピニオンを回転させることによって、駆動ねじ17の回転を駆動するように適応している。縦軸を中心とした駆動ねじ17の回転は、縦軸Xに沿って可動壁6の動きを駆動し、その結果、ベローズ7は、縦軸Xに沿って圧縮又は伸長する。
【0051】
ベローズ7は、複数の弾性変形可能なコンボリューション71を含んでもよい。静的モードでは、すなわち、第2の部分20が第1の部分10に対して静止しているときは、コンボリューション71は、流体回路内の圧力の変動を補償するように機械的に変形されるように適応している。
【0052】
従って、好ましくは、第2の部分20の変形は、ベローズ7のコンボリューション71の変形に相当する。静的モードでの可変容積のリザーバ5内の圧力変動の場合に、特にリザーバ5内の過度の圧力の場合に、圧力変動は、ベローズ7のコンボリューション71まで移され、これは、コンボリューション71の形状を変える効果を有している。
【0053】
ベローズ7は、アコーディオンベローズ7の形にすることができる。ベローズ7のコンボリューション71は、アコーディオンの折り目に相当する。
【0054】
コンボリューション71は、可動壁6の移動方向、言い換えると縦軸Xの方向において互いに隣接して配置されるように適応することができる。
【0055】
コンボリューション71は、縦軸Xの方向、及び/又は縦軸Xに対して半径方向において変形するように適応することができる。
【0056】
各コンボリューション71は、接合部において互いに接続されたコンボリューション71の第1の部分711と第2の部分712とを含んでもよい。第1のコンボリューション71の第2の部分712は、接合部において、隣接する第2のコンボリューション71の第1の部分711に接続することができる。
【0057】
第1のコンボリューション71の第1の部分711と第2の部分712との間に形成される空間は、リザーバ5の外側にある第1のコンボリューション71の容積を画定する。第1のコンボリューション71の第2の部分712と隣接する第2のコンボリューション71の第1の部分711との間の空間は、リザーバ5の容積の一部である容積を画定する。コンボリューション71の容積の減少によって、対応するリザーバ5の容積の増加が引き起こされる。
【0058】
コンボリューション71の第1の部分711及び/又は第2の部分712は、実質的に直線のセグメントの形状にすることができるか、或いは、第2の部分20が静止構成である場合は、丸みを帯びた形状又は波状の形状を有することができる。コンボリューション71の部分711,712の丸みを帯びた形状又は波状の形状は、コンボリューション71の変形を容易にすることができる。
【0059】
コンボリューション71の第1の部分711と第2の部分712との間に角度を画定することができる。特に、角度は、第1の部分711と第2の部分712との間の接合部の近くに画定された内角に相当し得る。
【0060】
各コンボリューション71は、第2の部分20が静止構成である場合に、実質的に大なり記号「>」の形状を有することができ、大なり記号「>」の2つの枝は、コンボリューション71の2つの部分711、712によってそれぞれ形成される。
図3aは、第2の部分20が静止構成であり、直線セグメントの形の部分711、712によって形成された大なり記号「>」の形状のそのようなコンボリューション71を有する非限定的な例を示している。第1の部分711と第2の部分712との間の角度は、第1の部分711と第2の部分712との間の接合部に近い、コンボリューション71の2つの部分711、712によって画定された大なり記号「>」の2つの枝の間に形成される角度に実質的に相当し得る。
【0061】
圧力の変動がリザーバ5内で発生する場合、過度の圧力は、コンボリューション71の2つの部分711、712に影響を与える。次に、コンボリューション71の各部分711、712は変形することができる。
【0062】
特に、流体回路内で過度の圧力が発生した場合には、コンボリューション71は「平らにする」ことができ、所与のコンボリューション71の2つの部分711、712は接近し、言い換えると、コンボリューション71の容積が減少する。コンボリューション71の2つの部分711、712の間に形成される角度は、第2の部分20が静止構成である場合の2つの部分711、712の間に形成される角度未満であってもよい。
【0063】
従って、そのような過度の圧力がリザーバ5内で発生した場合には、各コンボリューション71は、変形されていないコンボリューション71の容積よりも小さい、その2つの部分711、712の間の空間によって画定される容積を有するように変形される。その結果、第1のコンボリューション71の第2の部分712と、隣接する第2のコンボリューション71の第1の部分711との間に延びる空間は、静止構成に対して増加する。従って、リザーバ5の容積は、決定された容積に対して増加する。
【0064】
図3bは、第2の部分20が流体回路内の過度の圧力により変形構成である非限定的な例を示している。
図3aにおいて示されているように、リザーバ5の容積は、第2の部分20が静止構成である場合のリザーバ5の容積に対して増加する。
図3bにおいて示されているコンボリューション71の変形は、実質的にコンボリューション71の縦軸Xに沿った変形に相当する。
【0065】
第2の部分20が変形構成である場合、特に、過度の圧力がリザーバ5内で発生した場合には、リザーバ5の容積を再び増加させ、従って、過度の圧力を補償するように、コンボリューション71も半径方向において変形することができる。
【0066】
ベローズ7は、リザーバ5内のいかなる圧力の変動の補償も可能にするのに十分な変形を可能にする剛性、及び、第2の部分20の動きが可変容積のリザーバ5の容積の正確な変化に対応するのに十分な剛性を提示するように適応してもよく:従って、リザーバ5内の一時的な圧力の変動の補償を可能にしながら、可膨張性要素3に注入される流体の量及びリザーバ5の決定された容積を正確に与えることが可能である。ベローズ7の剛性が低いほど、ベローズ7は、リザーバ5内の所与の圧力変動に対してより変形し、その逆も同様である。
【0067】
ベローズ7は、0.2から15ニュートン/ミリメートル(N/mm)のスティフネス定数を有してもよく、好ましくは1から4N/mmのスティフネス定数を有してもよい。スティフネス定数は、ベローズ7の剛性を表す特徴である。そのような0.2から15N/mm、好ましくは1から4N/mmのスティフネス定数は、所望の剛性に一致するベローズ7の剛性に相当する。
【0068】
必要に応じてベローズ7のスティフネス定数によって表されるベローズ7の剛性は、以下に記載される特徴の組み合わせのうち1つ又はその他を使用して調整することができる。
【0069】
ベローズ7は、3から15の弾性変形可能なコンボリューション71、好ましくは5から10の弾性変形可能なコンボリューション71を含んでもよい。ベローズ7のコンボリューション71の数が多いほど、ベローズ7の剛性は低くなる。3から15、好ましくは5から10のコンボリューション71の数によって、所望の剛性に一致するベローズ7の剛性に達するのが可能になる。
【0070】
ベローズ7は、チタンで作ることができる。チタンは、リザーバ5内の一時的な圧力の変動を部分的又は完全に補償するように適応した変形を可能にする。
【0071】
加えて、チタンは、生体適合性及び気密性を持つ材料である。しかし、リザーバ5は、埋め込み可能なシステムに属している。リザーバ5と可膨張性要素3との間で移動する流体が漏れた場合、又は、例えば流体接続部2又は可膨張性要素3等において浸透圧的交換が発生した場合には、流体は、システムが埋め込まれている体内に入ることができる。チタンによって、そのような漏れ又は浸透圧的交換がハウジング1の内側から体の内側へ、及びその逆も同様に広がるのを防ぐことが可能になる。
【0072】
或いは、ベローズ7は、生体適合性を持つステンレス鋼等の他の材料、又は、生体適合性を持つように金でカプセル化された別の材料から生成することができる。
【0073】
ベローズ7は、コンボリューション71の端部及び基部において溶接することができる。コンボリューション71の各部分711、712は、その端部の各々において、隣接する部分711、712に溶接することができる。従って、第1のコンボリューション71の第1の部分711は、第1の端部において、この同じ第1のコンボリューション71の第2の部分712に溶接することができ、第1の端部とは反対の第2の端部において、隣接する第2のコンボリューション71の第2の部分712に溶接することができる。この特徴によって、ベローズ7の気密性が改善される。
【0074】
ベローズ7は、0.01mmから0.3mm、好ましくは0.03mmから0.15mmの厚さを有してもよい。そのような厚さによって、所望の剛性に一致するベローズ7の剛性に達するのが可能になる。
【0075】
当業者は、必要に応じて数値シミュレーション及び/又は実験に頼りながら、変形させなければならないものに基づいた限界圧力に従ってベローズの幾何学的形状及び寸法を調整することができる。
【0076】
流体回路内の圧力を測定するための手段
埋め込み可能なシステムは、流体回路内の圧力を測定するための手段、言い換えれば、リザーバ5、可膨張性要素3、及び流体接続部2において確立された圧力を測定するように適応した手段を含んでもよい。
【0077】
流体回路内の圧力を測定するための手段は、リザーバ5内の圧力を測定するように適応した圧力センサであってもよい。或いは、流体回路内の圧力を測定するための手段は、リザーバ5内に含まれる流体によって可動壁6に与えられる力を測定するように適応した力センサであってもよい。可動壁6の表面積は既知であり、上記の可動壁6に与えられる力は、リザーバ5内の圧力を表している。
【0078】
一部の利用状況では、任意的に患者の活動及び/又は姿勢を考慮して、損傷のリスクを有することなく自然の導管を閉鎖するための可膨張性要素3内の十分な圧力に相当するように、可膨張性要素3内の所望の圧力を定めるセットポイント圧力を選ぶことができる。他の利用状況では、自然の導管を解放して排尿を可能にするために、セットポイント圧力を十分に低いものであるように選ぶことができる。
【0079】
いずれにしても、セットポイント圧力は限界圧力未満であり、限界圧力を超えると、第2の部分20は変形する。上記の限界圧力の値は、可動壁6の位置及び/又はセットポイント圧力次第であり得る。
【0080】
制御ユニット
埋め込み可能なシステムは、制御ユニットを含み得る。
【0081】
セットポイント圧力に対応するリザーバ5の容積を決定し、さらに、セットポイント圧力に対応する決定されたリザーバ5の容積に達するまでリザーバ5の第2の部分20を動かすようにアクチュエータ8を制御するように制御ユニットを構成することができる。
【0082】
より具体的には、
図2で例示されている例において、制御ユニットは、リザーバ5の容積の増加又は減少が必要であるかどうかに従って電磁アクチュエータ8のモーターを一方向又は他の方向において動作させる命令を送信するように適応しており、その時点で埋め込み可能なシステムは動的モードである。
【0083】
埋め込み可能なシステムは、動的モードから静的モードに切り替わることができ、第2の部分20は、例えば、可膨張性要素3が膨張したとき又は決定されたリザーバ5の容積に達したときに、所与の位置にある。
【0084】
代替的又は追加的に、第2の部分20の動きは、例えば、システムが埋め込まれた個人によって制御することができる。例えば、人工尿道括約筋の場合には、個人が排尿することを望むとき、リザーバ5の容積を増加させるように第2の部分20の動きを制御することができ、これは、閉塞カフ3からリザーバ5への流体の移動を引き起こす効果を有し、従って、閉鎖されることになる導管にカフ3が与える圧力を減少させる。
【0085】
制御ユニットは、代替的又は追加的に、圧力測定手段によって測定された圧力に基づき、第2の部分20の動きを制御するように適応することができる。特に、流体回路内で測定された圧力がセットポイント圧力に相当しない場合、制御ユニットは、流体回路内の圧力の変動を補償するためにリザーバ5の容積を変更するように、第2の部分20を動かすように適応したアクチュエータ8の作動を制御するように適応することができる。
【0086】
従って、過度の圧力等の流体回路内の圧力の変動は、まず第2の部分20の変形によって補償され、この補償は機械的、即時的、且つ直接的である。この補償は、部分的又は完全であってもよい。
【0087】
第2の部分20の変形を介した補償は、圧力測定手段が流体回路内の圧力の変動を検出するのを可能にし、さらに、結果として制御ユニットが第2の部分20の移動コマンドを調整するのを可能にするように適応している間に行われる。従って、第2の部分20の変形により、検出及び調整のコマンドの間、リザーバ5内の圧力の変動は減少するか、又はリザーバ5内の圧力は実質的に一定のままでさえある。
【0088】
第二に、流体回路内の圧力の変動は、第1の部分10に対する第2の部分20の動きによって補償され、埋め込み可能なシステムは動的モードに切り替わる。この第2の部分20の動きは、アクチュエータ8によって制御ユニットにより制御される。第2の部分20は、流体回路内の圧力がセットポイント圧力に相当するまで動かすことができる。
【0089】
次に、アクチュエータ8によって第2の部分20の動きは停止され、埋め込み可能なシステムは静的モードに切り替わる。
【0090】
特に、流体回路内で測定された圧力が限界圧力よりも大きい場合、言い換えれば、流体回路内に過度の圧力が発生した場合に、制御ユニットは、限界圧力以下であるセットポイント圧力に相当する圧力を流体回路内で再確立することを考慮して、決定されたリザーバ5の容積を増加させるように適応した第2の部分20の動きをアクチュエータ8によって制御するように調整することができる。
【0091】
ケーシング
可変容積のリザーバ5及びアクチュエータ8は、個人の体内に埋め込むよう意図した密閉された生体適合性ケーシング1に組み込むことができる。制御ユニット及び/又は流体回路内の圧力測定手段もケーシング1に組み込むことができる。
【0092】
可変容積のリザーバ5は、より具体的には、第1の部分10に面するベローズ7、可動壁6、及び第1の部分10によって画定することができる。リザーバ5は、さらに、流体接続部2を介してカフ3へとリザーバ5の外部から及びリザーバ5の外部へと流体を移動させるためのオリフィスを含む。
【0093】
ケーシング1、特にリザーバ5を取り囲むケーシング1の内部容積11は、ガス、例えば不活性ガス等を含有する。
【0094】
ケーシング1はチタンで作ることができる。チタンは気密性及び生体適合性を持つ材料であり、ケーシング1内に配置された要素、特に制御ユニット、電位センサ等の電子部品を外部環境から保護するために使用することができる。
【0095】
ケーシング1は、体内環境から又は体内環境への液体若しくはガスのいかなる移動も回避するために密閉されている。
【0096】
ケーシング1は生体適合性材料で作られており、例えば、埋め込み可能なチタンで作られ、レーザー溶接によって密閉することができる。リークチェックを、特にヘリウムを使用して実行して、装置が埋め込まれている間のケーシング1の完全な気密性を確実にすることができる。
【0097】
図2は、ケーシング1に組み込まれた可変容積のリザーバ5及び電磁アクチュエータ8を含む埋め込み可能なシステムの一例を示している。
【0098】
アクチュエータ8は、減速ギアに結合されたモーター13を含む。コネクタ12が、モーターの動作命令に従ってモーター13に電力を供給するのを可能にする。
【0099】
減速ギアは、モーター13のシャフトのトルク及び回転を駆動ねじ17に伝達するように、それ自体が駆動ねじ17に結合されている歯車18に結合されている。
【0100】
駆動システムは、アクチュエータ8によって駆動される作用の効果の下でねじ17の軸を中心として二重作用スラストボールベアリング上で回転可能であり且つ駆動ねじ17に結合されたナット14をさらに含む。可動壁6は、ナット14を介して駆動ねじ17に結合され、ナット14は可動壁6と一体であり、ねじ17の雄ねじと協同する雌ねじを有している。
【0101】
従って、ナット14の回転が、可動壁6の移動方向において並進運動でのみねじ17を駆動し、これは、ねじ17の軸に対して平行な方向において並進運動で、言い換えると、縦軸Xの方向において可動壁6を動かす効果を有する。可動壁6の移動方向は、モーター13の回転方向に依存する。
【0102】
歯車18は、ブロック15内でのその回転を可能にするボールベアリング16によってブロック15内に収容される。
【0103】
アセンブリ
その一例が
図1において示されている上記の埋め込み可能なシステムは、尿道、胃管、結腸、又は直腸のうち少なくとも1つの導管から得られるヒト又は動物の体の解剖学的導管を選択的に閉鎖するために、このヒト又は動物の体内に埋め込まれるように構成することができる。
【0104】
アセンブリは、上記のもの等の埋め込み可能なシステムと、例えばシステムが埋め込まれている個人によって等、個人によって使用されるように適応したリモートコントロールとを含んでもよい。
【0105】
埋め込み可能なシステム及びリモートコントロールは、それらの間で通信するように適応した通信手段を含む。リモートコントロールは、特にリモートコントロールの通信手段によって埋め込み可能なシステムの通信手段まで送信されるコマンドに基づきアクチュエータ8による第2の部分20の動きを制御するように適応している。
【0106】
埋め込み可能なシステムの通信手段は、ケーシング1に組み込むことができる。
【0107】
他の実施形態も可能であり、当業者は、本発明の範囲内にとどまりながら、上記のモード又は実施形態を容易に修正するか又は他のものを考えることができる。
【国際調査報告】